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堀江参考人 よろしくお願いします。
堀江と申します。
きょうは、何で私、ここに来たかといいますと、今回の
刑事司法制度改革というのは、十年間ほど、
刑事司法の
世界でいろいろやってきた私としましては、非常に重要な
制度改革だというふうに思って
注目をしていたんですけれども、いろいろ
審議をして法案が提出されるというところまで来ましたが、私が期待していたような
改革というのはほとんど盛り込まれず、今回の
制度改革の
趣旨というのは、恐らく、
郵便不正事件で
冤罪であるのにもかかわらず
逮捕、
勾留されて半年以上も
大阪拘置所に入っていた
村木さんであったりとか、ほかにも何件かそういった
事件が相次いだということもあって今回の
司法制度改革になったと思ったんですけれども、そっち
方向の
改革というのは、むしろ、
前進したというよりもほとんど後退しているんじゃないかというような事態になっていることもありまして、今回、ここでしゃべってくれということだったので、ぜひにということでやってまいりました。
最近の
マスコミ等の報道を見ても、今回、すごく重要な
改革であるにもかかわらず、全く
注目をされていなくて、
安全保障云々かんぬんの方がむしろすごく
注目をされていて、正直言って、
国民生活に一番関係してくるのは実はここなんですね。ということに実は私も十年以上前は全然気づいていなかったんですけれども、ここにいらっしゃる
法務委員会の
方々はもっと
注目されてしかるべきだと
思います。
というのは、身近なところで、
皆さん、
事件や事故といったものに巻き込まれて
司法の場に出てこざるを得ない
人たち、たくさんいらっしゃいます。私、一年九カ月間、刑務所にいましたのでよくわかったんですけれども、そちらにいらっしゃった
方々の半分以上はその辺で生活しておられる
方々でございます。そういった
人たちが
逮捕、
起訴されて、
裁判を経て、
有罪、
実刑判決を経てそういったところにいるという現実、これをまず、
皆さん、
自分のことのように考えてしかるべきだというふうに
思います。
それこそ、本当に、今回、
司法制度改革で
デモをやってもいいぐらい。国会前で
安全保障の
デモをやっていますけれども、僕はどっちかというとこっちの方が大事だと思っています。
具体的に言いますと、まず
保釈の問題ですね。
保釈の問題に関して言うと、
先進諸国に比べると、
日本は、
保釈に対してはかなり厳しい
状況、特に
被疑者、
被告人にとって非常に厳しい
状況になっております。
まず、警察官なり
検察官が
逮捕して
勾留している
期間、最大二十日
程度なんですけれども、その後も、
起訴された後も
起訴後
勾留というのが続きます。その
起訴後
勾留というのは、理論的には延々続けられるような
状況になっていて、私の場合も、
逮捕、
起訴されて九十四日間、
逮捕している
期間、
捜査期間も合わせてですけれども、九十四日間
勾留されました。
村木さんに至っては、その後、
裁判で
無罪判決が出たにもかかわらず、半年以上
勾留されておりました。要は、結果として
無罪になってしまう人がそれだけ
勾留をされてしまう。その
精神的負担というのは非常に大きいものがあります。
単なる
勾留ではなくて、私の場合は
経済事犯でしたので、
接見禁止命令というのがつきまして、担当の
弁護士さん以外は誰にも会えない、そして雑誌、新聞の閲覧もまかりならぬということが九十四日間続きまして、非常に孤独で隔絶された
世界におりました。これは、
被告人、
被疑者にとっては非常に精神的な不安になっておりまして、かなり
精神的プレッシャーになるので、脳の
記憶が書きかえられてしまうぐらいの
記憶になります。
これは
村木さんもおっしゃっていましたけれども、
自分がやっていないことをさもやっているかのように思ってしまう。例えば、あのときに
事件になった、
主犯格といいますか、書類を書きかえた元
係長は、
村木さんと一回も面識がないにもかかわらず、さも共謀したかのように
供述調書とかそういったところで
取り調べをやっておりましたけれども、そういったことが実際に起こり得る。その後の
村木さんの話ですけれども、
判決が出た後、実際にその
係長と会って、私
たちお互い会っていないよねというのを確認し合ったというふうに言われています。
私の
勾留中、にせ
メール事件というのがありまして、僕が送ってもいないような、自民党の元代議士の方にウン千万円送ったなんという
メールを、
民主党の
方々ごめんなさいね、
民主党の某議員が、送った
メールが出てきたといって大騒ぎになっていましたけれども、僕はそのとき
東京拘置所に
勾留されておりまして、そのときに、こんなの絶対俺やらないよなと。もちろん、そんな
メールは送っていないんですけれども、それでも不安になってしまう。もしかして、何か万が一、酔っぱらって送ったかもしれないとか、本当に思っちゃうんですよね。絶対にそんなことを
自分はしないと思っているのに、思ってしまうぐらい、
精神的極限状態に置かれます。
これは、
司法の
世界においては、本当に、
被疑者、
被告人と
検察官というのは、
立場的に言うとこんな
感じなんです。
検察官の方が物すごく
立場が高い
状況にありますので、これで本当にフェアな
取り調べが行えるのかどうかというのは非常に疑問です。
ですので、
刑事訴訟法第八十九条の
権利保釈について本当はもっと改善しなきゃいけないんですけれども、
審議会の方で
結論が出なくて、玉虫色の文章みたいになっていて、
現状でも
保釈については適切に運用されているということが
前提になって、ろくに
条文は書きかえられずに、今の
現状とほとんど変わらないような
状況になっている。
罪証隠滅及び
逃亡のおそれがあるときは
保釈しなくていいというふうになっておりまして、私の場合も、結局、
裁判官の
裁量保釈で
保釈されました。これは、
公判前
整理手続で
証拠が一応全部提出されているということを
前提にして、初
公判と同じような
状況だということで、
否認をしているにもかかわらず、割と
早期に、それでも九十四日間かかって
保釈をされました。
私のような人間、当然、
逃亡なんかできないわけですし、これだけ
衆人環視の環境にあって、パソコンとか全部押収されているのに、何が
罪証隠滅だというふうなことを申し上げたんですけれども、
否認の
被告人に対してはそういう運用がされるのが通例となっております。
そういった
状況に関して、
保釈に関しては、
権利保釈をかなり広い範囲に認めるべきであろうというふうに思っております。少なくとも今提出されている
条文では到底納得いかないというふうに私は考えております。
それと、もう
一つ言っておきたいのは、
司法制度改革の中の
司法取引制度なんですけれども、今回、
日本で初めて導入されました。
司法取引制度に関しては、
皆さん御存じだと
思いますけれども、
日本でも
司法取引的なことは実際行われています。例えば、
日本では、最近、
検察審査会でも
起訴はできることになりました、
起訴の取り消しはできないんですけれども。基本的に
検察官が
起訴できることになっています。
検察官が不
起訴であったりとか
起訴猶予というのを判断することができる、
検察官起訴便宜主義ですね、こういったことになっております。
あと、
検察官の
独自捜査権限があります。だから、
検察官は、独自に
捜査をして、独自に
起訴することができる。
自分が
捜査した
案件というのは、間違いがないと思って、大体みんな
起訴しちゃうんですけれども。
検察官は、今でもそういったすごく強い
立場を持っていて、特に、不
起訴であったり
起訴猶予にするという
権限というのは、実は、
主犯格の
人たちを追い詰めるときには非常に有効な手だてで、要は、そういうのをにおわせて、不
起訴になるかもしれないよとか、
起訴しても大して求刑しないような
感じの
雰囲気を、実際に明言している人もいるみたいですけれども、そういった
状況にある。
それに対して、私は、
司法取引を導入すること
自体には
反対ではありません。ただし、今回の
司法取引に関して言うと、
主犯格以外の
人たちが
対象、実質的にそういった
人たちが
対象になっていて、ターゲットとされる
主犯格の
人たちの罪を重くする
方向で
証言すると、あなたの
罪一等を減ずるというような
趣旨の
改革になっておって、諸外国、特に例えばアメリカとかの
司法取引制度というのは、
主犯格の
人たちも、
自分の罪を認めることによって
罪一等を減じますよ、例えば
執行猶予にしますよとか不
起訴にしますよとか、そういったことを交渉する余地があるんですけれども、今回、一方通行的な
改革になっておりまして、これではむしろ
検察官の
権限拡大につながるのではないかというふうに私は懸念しております。
特に、
郵便不正事件を例にとりますと、その
係長の
証言というのはより強固になってしまっていたのではないかと。つまり、今の
改革がそのまま通れば、
村木さんが悪い、俺は何も悪くないというような
方向の
証言を恐らくしてしまうだろうなということで、これについても私は非常に懸念をしております。
それ以外にもいろいろ言いたいことはあります。
例えば、さっき言った
検察審査会制度についても、不
起訴になった
案件を
起訴相当にするというようなことはできますが、
起訴になったものを不
起訴相当にするとか不
起訴にするというようなことはできない、
起訴方向の一方通行的な
検察審査会制度になっておりまして、例えば、
政治家の方で言えば
小沢一郎さんとかそういった
方々は、二回ぐらい
起訴相当が出て、
裁判になって、結局
無罪になったわけですけれども、そういったことが、今
現状、
検察官の
権限というのは非常に大きな
状況にありますので、これだと、またこれからも
冤罪事件というのが恐らく起きてくるのではないか。
それに対して私は非常に憂慮しておりますし、ある日突然、あなたが
冤罪事件に巻き込まれて、投獄、長期
勾留されてしまうというようなことにもなりかねないというふうに私は憂慮しております。その点に関して、ぜひここでいま一度議論を尽くしていただいて、せめて、特に
司法取引制度と
保釈に関しては、特に
保釈に関してなんですけれども、見直していただければなというふうに思っております。
以上でございます。ありがとうございました。