○玉城
委員 絶滅危惧種がすぐ身近にいるということ、教育や生活の中で広く国民の
皆さんにそれを認知していただきたい、そういうことを考えますと、その指定をさせていただいた種、本当に貴重な種がこの
我が国にはたくさんあるんだということを、ぜひもっと幅広く伝えていただきたいと思います。
さて、実は、その
環境省のレッドデータブックの作成にも協力をしていただいているユニークな団体がいらっしゃいます。日本鱗翅学会と申しまして、鱗翅というのは、いわゆる鱗粉のある羽を持った昆虫、つまりチョウやガの仲間のことなんですが、日本鱗翅学会は、このチョウやガを研究対象とする学術団体で、アマチュアから
専門家まで幅広い層のメンバーが協力しながら活動しています。
そして、実は、この日本鱗翅学会は、昭和二十年創立ということで、大変歴史のある団体なんですが、学術活動、自然保護活動、その中では、日本鱗翅学会版・日本産蝶類県別レッドデータ・リスト二〇〇二を作成するなど、
環境政策に一生懸命取り組んでいらっしゃいます。
実は、この日本鱗翅学会から、このたび要望書が出されております。
この要望書の宛先は、防衛
大臣中谷元様、沖縄県知事翁長雄志様、そして、東村村長、国頭村村長と、沖縄本島北部の二村長に宛てて出されているものでもあります。
どういう
内容かといいますと、この
内容は、実は政治的な目的では全くありません。日本鱗翅学会が、本当に大切にしていただきたいという思いをしたためた要請書になっています。私の方からちょっと読み上げて紹介をさせていただきたいと思います。
南北に長く亜熱帯から寒帯の気候帯を含む日本列島は、非常に豊かな昆虫相を形成し、現在、約三万二千種が記録されています。中でも、琉球列島は鹿児島県南部から沖縄県全域にかけての多数の島々からなり、“東洋のガラパゴス”とも呼ばれるほど固有かつ多様な生物が生息していることで知られています。琉球列島の昆虫相は、九州から南下した旧北区系要素、台湾から北上した東洋区系要素、あるいはインド・インドシナ北部や中国大陸に起源を持つ西部支那系要素など、由来の異なる分類群が複雑に入り混じり、それらが海水面の変動や島の隆起沈降に伴う分布域の分断、隔離によって多数の固有種や固有亜種に分化したと考えられています。このように複雑多岐な生物地理学的、地史的背景を持つ南西諸島は、日本だけでなく
世界でも有数の生物多様性に富んだ地域となっています。
中略いたしまして、
こうした中で、一九九六年、SA
COの決定に日米が合意し、二〇〇六年、日本
政府が沖縄県国頭郡の東村高江および隣接する国頭村安波に合計六つのヘリパッドを建設すると発表しました。二〇一四年までに高江の二つのヘリパッドが完成し、二〇一五年二月、沖縄防衛局はこの二か所を米軍に先行提供しました。高江や安波を含む「やんばるの森」の上空では、すでにオスプレイ等の米軍機が低空で飛行しています。
この沖縄島北部にある「高江」および「安波」には、
環境省レッドリストの準絶滅危惧種であるリュウキュウウラボシシジミが多く生息しています。このチョウは沖縄島の国頭村、大宜味村、東村および西表島の自然度の高い清流沿いに局所的分布を示し、個体数の少ない種です。ところが、高江と安波の両地域では本種の個体数が多く、現在知られている生息地の中では
最大規模の個体群密度を維持し、本種にとっての「最後の楽園」と考えられます。幼虫も新川川沿いの林内で発生しており、その清流に強く依存しています。このため、ヘリパッド建設に伴う森林伐採や赤土の流出による生息地の衰退および消失、オスプレイを含む米軍機の低空飛行や離着陸に伴う爆風や高熱の下降気流による生息
環境の悪化などの
影響から、本種の存続に甚大な被害を及ぼし、絶滅する危険性が著しく高いと考えられます。
さらに、「高江」および「安波」には沖縄固有種かつ準絶滅危惧種のリュウキュウウラナミジャノメが多産する他、準絶滅危惧種イワカワシジミ、沖縄県指定天然記念物のコノハチョウやフタオチョウも生息しています。国指定天然記念物および種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」の指定種ヤンバルテナガコガネを含む、多くのやんばる固有種・固有亜種もこの地で
確認されています。つまり、わが国における生物多様性の保全上、極めて重要な昆虫類がヘリパッド
予定地に多数生息しております。島嶼という閉鎖的で面積の限られた場所での開発等による攪乱は、大きな面積をもつ日本本土等に比べて、個々の生物や生態系へのインパクトの
程度が極めて大きく、その
影響は計り知れません。
このような理由から、日本鱗翅学会は「高江」と、高江に隣接する「安波」における米軍ヘリパッド建設
予定地とその周辺域の
環境保全にあたり、すでに
環境アセスメントの
調査は終了しているものの、今後も昆虫類をはじめ動植物の
関係学会の
専門家を交えて、さらなる細部に渡る十分な
検討を行ない、同島の生態系に及ぼす
影響を最小限度に抑える努力が必要と考えます。
そこで、添付のとおり要望書を送らせていただきますということです。
つまり、極めて学術的に、純粋に、その種の保存と、その種が育まれている地域は保全されなければなりませんよということを明確に、この要望書で、政治的な背景は抜きにして語っていらっしゃる、要望していらっしゃるわけです。
沖縄本島北部陸域における生物多様性についてどのように取り組んでいるのか、
環境省の見解を伺います。