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2014-11-11 第187回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年十一月十一日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十月二十八日     辞任         補欠選任      舞立 昇治君     有村 治子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         魚住裕一郎君     理 事                 熊谷  大君                 三宅 伸吾君                 有田 芳生君                 真山 勇一君     委 員                 猪口 邦子君                 鶴保 庸介君                 牧野たかお君                 溝手 顕正君                 柳本 卓治君                 江田 五月君                 羽田雄一郎君                 牧山ひろえ君                 矢倉 克夫君                 行田 邦子君                 仁比 聡平君                 谷  亮子君    国務大臣        法務大臣        国務大臣     上川 陽子君    副大臣        法務大臣    葉梨 康弘君    大臣政務官        法務大臣政務官  大塚  拓君    事務局側        常任委員会専門        員        櫟原 利明君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       藤山 雄治君        内閣官房法曹養        成制度改革推進        室長       大塲亮太郎君        内閣官房内閣審        議官       北村 博文君        警察庁長官官房        審議官      塩川実喜夫君        総務省総合通信        基盤局電気通信        事業部長     吉田 眞人君        法務大臣官房長  黒川 弘務君        法務省民事局長  深山 卓也君        法務省刑事局長  林  眞琴君        法務省矯正局長  西田  博君        法務省人権擁護        局長       岡村 和美君        法務省入国管理        局長       井上  宏君        公安調査庁次長  小島 吉晴君        外務大臣官房審        議官       河野  章君        外務大臣官房参        事官       鈴木 秀生君        文部科学大臣官        房審議官     中岡  司君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (ヘイトスピーチに対する規制に関する件)  (矯正施設職員の処遇の改善に関する件)  (成年年齢の引下げに関する件)  (特定秘密保護法の施行に伴う課題に関する件  )  (テロ対策法務省の取組に関する件) ○公衆等脅迫目的犯罪行為のための資金の提供  等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案  (第百八十三回国会内閣提出、第百八十七回国  会衆議院送付)     ─────────────
  2. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十月二十八日、舞立昇治君が委員を辞任され、その補欠として有村治子さんが選任されました。     ─────────────
  3. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣官房内閣審議官藤山雄治君外十四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 有田芳生

    有田芳生君 おはようございます。民主党・新緑風会の有田芳生です。  前回ヘイトスピーチについて質問をさせていただきました。三十分という時間でしたのでちょっと配分を間違えたようなところもありまして、三分の一ほどお聞きすることができませんでした。さらに、この問題というのは、この数年間、日本社会の大きな、あるいは政治問題ともなってきておりますので、新たな課題、例えばインターネット上で匿名でいかに差別扇動が行われているのかというところに少し重点を絞って、質問通告の順番を変えますけれども、じっくりとお聞きをしたいというふうに思います。  先般もお話をさせていただきましたけれども、今年の八月二十日、二十一日と、スイスのジュネーブで国連人種差別撤廃委員会日本審査が行われました。実は、日本からもNGOのメンバーがかなり現地に出かけまして傍聴いたしました。私もその一人でしたけれども人種差別撤廃委員会日本審査が始まる直前、一時間前に委員方々お話をする機会がありました。そのときに、日本から持っていった全国で繰り広げられているヘイトスピーチ、その現場について映像を上映しました。多くの委員方々、非常に驚いておりました。こんなことが日本で起きているのかと、そういう声が上がりました。それは、正式の人種差別撤廃委員会日本審査の中でも何人もの委員の方からお話がありました。  前々回でしたか、共産党の仁比委員の方からもヘイトスピーチ問題の質問がありました。そこで、どんな発言があるのかということで、例えば大阪鶴橋では、去年の二月に、南京大虐殺知っているでしょう、ここから出ていかなければ鶴橋大虐殺をやりますよと。あるいは、東京新大久保では、ホロコーストをやるぞ、新大久保を更地にしてガス室を造るぞというようなことが叫ばれました。実は、人種差別撤廃委員会日本審査直前に見ていただいた映像の中にも、大阪鶴橋のひどいヘイトスピーチ現状表現されておりました。  具体的に言いますと、こういうデモがありました。皆さんチョンコと言っても差別じゃないですからね、あいつら人類じゃありませんからと、そういう発言があってデモ行進が行われる。こんなことをこういう公の場で言うことははばかられると思いながらも、しかし、メディアなどが自主規制をせざるを得ないような現状の下で、事実にやはり向き合っていかなければいけないと思いますのでもう少し紹介しますと、大阪鶴橋、昨年の三月二十四日に行われたデモでは、こんなことを更に言っております。くそチョンコどもを八つ裂きにして家を焼き払うぞ、焼き払うぞというシュプレヒコールが重なる。一匹残らずチョンコどもを追い込んでやるぞ、追い込んでやるぞ。薄汚い朝鮮半島を焼き払え、焼き払え。東京新大久保集会デモなんかでも、出発のときには、殺せ殺せ朝鮮人。こんなことが白昼堂々とまかり通っているというのがこの数年間の日本社会でした。  まず、お聞きをしたいわけですけれども、更に一点だけ付け加えておけば、今日皆様方にお手元に資料を配付させていただきましたけれども写真右側の下、これは十一月九日、ついこの間、南越谷で行われたデモ行進ですけれども、見ていただければ分かりますように、ナチス・ドイツの象徴であるハーケンクロイツ、これをまとった男たちデモ行進をやりました。これは今回初めてではありません。六月には千葉県の西船橋でもハーケンクロイツを使ったデモが行われました。これはこの一年だけではありません。二〇一二年ぐらいから大阪などでもこういうことが続いております。  つまり、国際社会から見れば、日本というのは一体何なんだと。こんなことがドイツで行われれば即座に逮捕されるような事態日本では堂々とまかり通っている。二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを迎える国としてこれでいいのかと、特に海外からのメディアは厳しい目で見られております。  こうしたことについてまず法務大臣にお伺いをしたいんですけれども、こういうデモ集会というものが日本社会で続いていることについてどのようにお考えになっているのか。これは人権問題を担当なさっている大臣としてもやはり御意見を伺いたいということ。さらには、こういうデモ集会についての実態調査、それについては法務省のどういう部署で担当していらっしゃるんでしょうか、お聞きしたいと思います。
  7. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 特定人種あるいは民族に対して、先ほど委員が御指摘になりましたような様々な言葉において暴力的な発言をしてきているということに対しては、まさに社会に対しての大変大きな課題、問題だというふうに思っておりまして、極めてゆゆしきものだというふうに理解しているところでございます。  どういう実態になっているのかということについての把握というのは、それに対してどう対応するかということを考える上でも大変大事な前提になるというふうに思っておりますので、そこにつきましても、実態をどう把握するかということについて、担当の部局、人権擁護機関ということが全国にもございますので、そうしたところを通じてしっかりと把握をしていくということが大変大事だというふうに思っております。
  8. 有田芳生

    有田芳生君 今、大臣の方から、ひどい発言発言というふうに表現がありましたけれどもヘイトスピーチというのは、これ憎悪のスピーチですから発言というふうにどうしても捉えられてしまうんですけれども人種差別撤廃条約の元々の英文からいうと、これは憎悪表現というようなものではなくて、新聞などでもいまだそういう使われ方がしておりますけれども差別扇動なんですよね。  ですから、ここは議論になりますからこれ以上はやめますけれども、つまり言論、表現の自由の範疇なのか、あるいはもっと暴力的な、言葉そのものの暴力であると捉えるか、そういう問題もこれからも議論をしていかなければいけないと思いますが。まず、この問題でしっかり立たなければいけない立場と私が考えているのは、やはり差別されている人たちがどのような苦しみを被っているか、そこを出発点にしなければいけないというふうに思います。  そのことを前提にしながら、もう一つ、今お答えになった、人権機関調査をするとおっしゃってくださいましたけれども、実際にはこういう問題についての調査というのは進んでいるんでしょうか。現場からでも構いませんし、大臣からでも構いませんが。
  9. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) 私ども法務省人権擁護機関では、全国法務局地方法務局人権相談を行っており、また被害者からのメールなどによる被害申告も受け付けております。こういった申告などを受けて開始した人権侵犯事件調査を通じて現状把握しているところでございます。
  10. 有田芳生

    有田芳生君 被害者の方からメールあるいは現場に来られて相談をしたとき、それに対応してくださっているというお話なんですが、こういう差別扇動行為というのは日本全国で、東京新大久保だけではなく、この間は銀座の方でも行われました。毎週のように行われている実態について、被害が届かないと調査をしないというのはやはり非常に問題だというふうに思うんですよね。むしろ、これだけ社会問題になっているわけですから、率先して人権機関などが現場にも行ってその調査を進めるというのは、それがふさわしいと思うんですが、いかがでしょうか。
  11. 岡村和美

    政府参考人岡村和美君) 私どもでも、できる限りの、実際にネット上で既に載っているユーチューブなどの映像を見て確認しているところもありますが、なかなか全国全てのネット上の表現ないしは実際の街頭でのデモ行進など、全てについて網羅的な調査はなかなか難しく、行っておりません。
  12. 有田芳生

    有田芳生君 そこをやはり前に進めなければ、日本人権問題改善にとっても遅れている分野だというふうに思うんですよね。今、ネット上で全国各地状況確認はなかなか難しいとおっしゃいましたけれども、そうではなくて、やはりかなりまとまって自らの差別行為を在特会を始めとする団体が今でも出しているんですよね。  もう一つ指摘をしておきたいのは、やはり、先ほど私は言葉大阪鶴橋差別実態というのを御紹介しましたけれども映像だけでも実は残念ながら分からないんですよ。この委員会、前の委員方々には私から国連でお配りしたような中身についてDVDをお渡ししました。前回は谷垣元法務大臣も見てくださいまして、ああ、それはひどいものだなということをこの場でもお答えいただきました。  だけど、あえて言えば、活字を読んでもなかなか分からない、残念ながら映像を見ても分からないんですよ。これは、現場に行けば、どれほどおぞましいことが行われているかというのは肌感覚で分かる。在特会を始めとする差別団体がそういうさっきのようなひどいことをやっている、それに抗議する人たちがどんどんどんどん増えてきた、二倍、三倍、四倍と増えてきている現状があります。  さらには、やはりトラブルがあってはいけないので、警察方々が非常に多く警備をしてくださっている。去年のピーク時でいえば、東京新大久保の六月、九月辺りというのは、そういう差別をする人たち、それに反対する人たち、警備する警察官たち、恐らく千人近い人たちが、白昼、東京新大久保から新宿辺りを一千人以上の人たちが熱気を持って動き回るわけですよ。そこに通行人もいれば買物客もいる、あるいは新大久保の場合には在日コリアン人たちがいっぱいいますから、目の前で攻撃がやってくる。  だから、それはもう、申し訳ないんだけれども皮膚感覚でやっぱり感じてもらわなければ、どれほどひどいことが今日本で行われているかというのは、残念ながら人間の認識の限界がある。しかし、それを何とかしていかなければ、繰り返しますけれども被害者立場に立って差別をなくしていくという、これからの日本の新しい人権状況をつくっていくことにはならないと思うんですよね。  そのことを指摘しておいて、じゃ、そういった差別扇動集会デモが行われていることについて、警察庁にお尋ねしたいんですけれども、日常的な調査というものはなさっておられますでしょうか。
  13. 塩川実喜夫

    政府参考人塩川実喜夫君) お答えします。  今議員指摘の在特会につきましては、デモなどの活動に伴い違法行為を引き起こしており、警察は在特会について関心を持ち、情報収集を行っているところであります。
  14. 有田芳生

    有田芳生君 もう一言お聞きしたいんですが、関心を持ってとは、どういう関心なんですか。
  15. 塩川実喜夫

    政府参考人塩川実喜夫君) 今御答弁させていただいたとおりでありますけれどもデモなどの活動に伴い違法行為をしばしば引き起こしておりますので、そういった点から関心を持っているということでございます。
  16. 有田芳生

    有田芳生君 警察がそういう差別行為に対して反対する人たちに、私は近くで見ていても、これはちょっと取り締まる方向が違うんじゃないかと思うことは多々ありますので、それについてはまた改めて機会があればお聞きをしたいというふうに思います。  今日、私が特にこういうことを知っていただきたいし、これを何とかなくしていかなければいけないということは、そういう在特会などを始めとする集団が路上でひどいヘイトスピーチをまき散らしていることだけではなくて、その背景に、私たちのこの社会匿名ネットでいかにひどいことが続いているか、そのことについての対策も考えていかなければいけないということで、ネット上のヘイトスピーチについてお話をお聞きしたいというふうに思います。  今三十代の在日朝鮮人女性がいます。北陸地方に今住んでいらっしゃいますけれども、二〇一二年、ですから今から二年前に子供さんができました、妊娠をしました。ツイッター上で、非常にまだまだ今に比べると牧歌的な状況ツイッターの世界でもありましたけれども友人ツイッターやり取りをやっておりました。そうすると、そこに匿名攻撃を仕掛けてくる人たちがどんどんどんどん増えてきた。  資料皆様方にお配りをしておりますけれども右側の上、一部アカウントなどは消しましたけれども、ここに出ている写真も全くこの人物のものではありません。読んでいただけますでしょうか。妊娠した在日朝鮮人の今三十代の女性に対して、匿名でこういう攻撃がなされました。  「はあ?てめー餓鬼産みやがるのかよ?塵増やすなよ婆。」、これはおばあさんの婆ですね、「蛆ャ蛆ャ増殖しやがって害虫共。」、うじゃうじゃののウジウジ虫の蛆、「てめーごと二匹共死ね、有害種族。」、こういうことがもう当たり前のように今でも続いているんですよ。インターネット上、ツイッターでは、この書き込み、今でも残っております。後に、在特会ととても親しくて、ネット上でこういうことを繰り返してきた人物が別の問題で逮捕をされましたけれども、今でもこのような、同じような書き込みが続いております。  私は、この女性から話を聞きました。妊娠して安定期に入って友人と軽い気持ちでやり取りをしていたら、こういう攻撃がなされてきた。これをきっかけにいろんな人から同じようなひどい攻撃が来た。誰だか分からないわけですよね。そして、精神的にもう大変な思いになって、ストレスがどんどんどんどん高まっていって、一週間入院をされました。その後、無事赤ちゃんは生まれましたけれども、そういう被害を被っている女性がいる。  彼女が言っていたのは、ツイッターの中でも私たちは孤立しているんだ、一般社会でも差別がずっと続いてきて、嫌な思いを小さい頃からやってきた、マジョリティーで助けてくれる人はいなかった、見て見ぬふりばっかりだったと。だから、こういう攻撃されるのも非常につらかったし、苦しかったけれども、孤立する方がつらかったと。今でも絡まれることがあるけれども、それに反対してくれる人たちが多くなってきたのでだんだん気分が楽になってきておりますと、そういう発言、感想を述べていらっしゃいました。  こういうことが今でもずっと続いているんですよね。これは単なる一例なんですよ。ほかに攻撃されたある在日コリアンの人なんかは、死という言葉が自分の頭の中から離れなかったことがある、これは男性ですけれども、そういう人たちがこの日本社会でいっぱいいらっしゃる。  そのことを、私たち、このままでいいのか、これじゃいけないと、そういう立場で物事を考えていかなければいけないというふうに思います。特に、政治の責任としてこういうことをなくしていくこと、これは、人種差別をなくすだけではなく、やはり日本共生社会としてしっかりとこれから立派な日本になっていくためにも必要なんだというふうに思っております。  先にもう一点だけ指摘をさせていただきます。  今、社会問題にもなり、多くの週刊誌新聞などでも話題になっておりますけれども朝日新聞の元記者で、北海道の大学で今教鞭を執っていらっしゃる方が、多くのネット上あるいは電話攻撃を受けて、大学に爆弾を仕掛けるぞというようなことまで起きました。これは、警察庁、後でお聞きをしたいというふうに思っておりますけれども。  その元朝日新聞記者攻撃されることも異常ですけれども、同時に家族、娘さんに対する攻撃というのはひどいものがあるんですよ。上川大臣も二人の娘さんがいらっしゃると聞いておりますけれども、今十七歳の女子高生ネット上で顔写真をさらされて、とんでもない差別表現がなされている。  例えば、お父さんは売国奴です、お母さんは密入国朝鮮人売春婦です、私はとても誇りに思います、おい、涙拭けよ、娘は関係ないと言うなよ、ここで固有名詞が入っておりますけれども、さらすことで抑止力が高まる、こいつ死ねばいいのに、この餓鬼にも塗炭の苦しみを与えないとな、一族、血を絶やすべき、自殺するまで追い込めというようなことが、もう表にすれば異常なほど、今でもやられている。これは本当に異常な事態で、十七歳の少女がどれほど心を痛めているかだけではなくて、御家族だって大変な思いをしている。これが今の日本現状なんですよ。これに対してどうしていけばいいのか。  まず総務省にお聞きをしたいんですけれどもプロバイダー責任法でどういう対処ができるのか、あるいはどういう限界があるのか、まずそのことをお答えいただきたいと思います。
  17. 吉田眞人

    政府参考人吉田眞人君) インターネット上に流通いたしますいわゆる各種の権利侵害情報につきましては、今委員指摘プロバイダー責任制限法によりましてプロバイダー責任範囲を明確化しているところでございます。  具体的には、ある情報インターネット上に流通することにより、その個人権利が不当に侵害されたと認めるに足りる相当の理由がある場合には、プロバイダー等がそのような情報削除したとしても損害賠償責任を免れることとされております。また、名誉等権利を侵害されたとされる方からプロバイダー等に対して当該情報削除の申出があったような場合には、そのプロバイダー等発信者に対しまして削除に同意するか否かを照会いたしまして、七日以内に反論がない場合にはその情報削除したとしてもプロバイダー損害賠償責任を免れることとされております。これがプロバイダー責任制限法の概要でございます。  このような制度の下におきまして、実際にはプロバイダー等権利侵害情報等の違法な情報の流通に対応するに当たりましては、例えば約款ですとか利用規約の上でプライバシー侵害名誉毀損等禁止事項として定めまして、これに違反する場合には迅速に削除等対応を行っているというのが一般的であるというふうに承知をしております。またさらに、プロバイダー等事業者団体におきましても、個々のプロバイダー等のそういう円滑な対応に資するよう、プロバイダー等利用者との間で適用される契約約款モデル条項というのを作りまして、このような約款の普及に努めるとともに、権利侵害への該当性判断基準となりますガイドラインを策定しているというふうに承知しております。
  18. 有田芳生

    有田芳生君 だけど、それでは、先ほどのような書き込みというのは、いまだ残っていることを含めて放置されている。それに対しては、個人プロバイダーに依頼をするというプロセスのことは今お話しになりましたけれども、私はこの委員会が始まる前に、この十七歳の女子高生、元新聞記者の娘さんについて、今ネット上でどうなっているかを調べてきました。相変わらず何にも変わっておりません。こういう事態に対してはどうすればいいんですか、被害者は。
  19. 吉田眞人

    政府参考人吉田眞人君) 私どもといたしましては、現在のプロバイダー責任制限法とその法制度の枠組みの下で、プロバイダー等事業者が、ただいま申し上げました約款あるいは利用規約ガイドライン等の下で、不適切な権利侵害等情報につきましては可能な限り迅速に削除等対応がされることを期待をしているところでございます。
  20. 有田芳生

    有田芳生君 期待しても変わっていないんですよ。  インターネット皆さん御存じだと思いますけれども、こういう匿名書き込みというのは、どこの誰だかさっぱり分からない、しかも広範囲にわたっているわけですよね。だから、そういう状況の下で迅速かつ効果的な措置といっても、何にも迅速な効果生まれていないんですよ。先ほどの在日朝鮮人の三十代の女性についての書き込みは、これ二〇一二年から二年間ずっと放置されっ放しなんですよ。だから、今のお話しになったことを踏まえて、やはりインターネット上の様々な問題も新たな段階に進んでいかなければいけないというふうに思うんですよね。  札幌の十七歳の女子高生の場合、先ほど本当に一端だけお伝えしましたけれども、刑法二百三十条の名誉毀損だけではなく、刑法二百三十一条の侮辱だけではなく、刑法二百二十二条の脅迫に当たるというふうにこれは思います。告発もなされることでしょうけれども、やはりそういったことに対して、新しい問題に私たちが立法府としてどのように新しい問題解決の道というのを考えていくか、そこが非常に大事だというふうに思います。  更に言えば、個別の削除要求しても、さっきも言いましたけれども、イタチごっこでもう追い付かない現状なんですよね。それで、十七歳の女子高生だけではなく、多くの人たちが精神的に追い詰められていってしまうという、これが現状ですから、やはり新しい問題を前に進めていかなければいけないと思います。  御存じのように、名誉毀損や侮辱罪についても親告罪ですから、被害者自身が警察に行かなければならない、手続をしなければいけない。だから、そういうことを、なかなか普通の人は大変ですから、そういう差別扇動行為がネット上で今でもずっと吹き荒れている以上、それに対して現行法に基づいて適正、迅速に削除する仕組みをつくることも大事ですけれども、後ほどお話をしますけれども人種差別撤廃条約に基づく新しい法規制というものも考えていかなければいけないだろうというふうに思います。  警察庁にそこでお聞きをしたいんですけど、先ほどのようないろんな差別扇動匿名による書き込みがあったときに、現行法を用いて適正、迅速にそれを削除していく仕組みというのは今あるんでしょうか、あるいは、これから何か検討をされるということはありますでしょうか。
  21. 塩川実喜夫

    政府参考人塩川実喜夫君) お答えします。  取締りという観点からのお答えになりますが、警察は、在特会によるものも含めまして、ネット上での言動について、個別の事案にはよりますが、委員今御指摘のように、刑法の名誉毀損罪や脅迫罪などが成立する場合には、法と証拠に基づき厳正に対処することとしております。  警察におけるインターネットを利用したここ数年の名誉毀損罪、脅迫罪の検挙件数でございますが、平成二十三年が名誉毀損約八十件、脅迫も約八十件、平成二十四年が名誉毀損約百件、脅迫が約百六十件、平成二十五年が、昨年でございますが、名誉毀損約百二十件、脅迫約百九十件、こういった検挙件数となっているところでございます。
  22. 有田芳生

    有田芳生君 先ほどの北海道の十七歳女子高生の場合は、名誉毀損、侮辱あるいは脅迫に当たると私は判断しますけれども警察庁としてはどのように理解されますか。個別のことにはお答えできませんということではなくて、お答えいただきたいんですが。
  23. 塩川実喜夫

    政府参考人塩川実喜夫君) まさに個別具体のケースでございますので、ここではお答えを差し控えさせていただきます。
  24. 有田芳生

    有田芳生君 ですから、朝鮮学校襲撃事件、京都地裁、大阪高裁の判決が出ましたけれども、やはり新しい法規制というのを検討していかなければいけない段階に日本社会は入っているというふうに私は思います。これは、後で時間があったらまたお聞きをしたいというふうに思いますけれども。  もう一度総務省にお聞きをしたいんですけれども、例えば最近社会問題になった脱法ドラッグの規制について与野党を含めて議論が進んでおりますけれども、これは、今の段階でもうインターネット上の違法な情報への対応に関するガイドラインなどが変更されていますよね。その経過をちょっと教えてください。
  25. 吉田眞人

    政府参考人吉田眞人君) 先ほど申し上げましたように、事業者団体等では、総務省相談にあずかっているところでございますけれども、いわゆるガイドラインあるいはモデル的な契約約款というのを作っておりまして、また、これは様々な社会状況に応じまして随時改訂等を行っております。  いわゆる委員指摘の危険ドラッグ、脱法ドラッグ等につきましても、近時の社会状況を踏まえまして、関連する情報は違法なものであって、これは禁止事項としてプロバイダー等においてその削除対応が可能となるような形の改訂を事業者団体において行っているというふうに承知しております。
  26. 有田芳生

    有田芳生君 確認をしたいんですけど、幾つかの団体で協議会をつくって、そこに総務省もオブザーバーとして参加をされているという理解でよろしいですか。
  27. 吉田眞人

    政府参考人吉田眞人君) はい、委員指摘のとおりでございます。
  28. 有田芳生

    有田芳生君 そこで、各団体との関係ですけれども総務省がそこで指導的な役割を果たすことはできるんでしょうか。
  29. 吉田眞人

    政府参考人吉田眞人君) オブザーバーという立場でございます。また、インターネット上の情報の流通に関しましては、これはいわゆる表現の自由の問題、それと今問題になっている、議論になっている趣旨に沿いますれば、いわゆる権利の侵害の問題あるいは違法な情報の流出の問題、様々な問題ございます。いろいろ慎重な対応を要する問題ございます。  そういう意味でいいますと、総務省側で指導的な役割というよりも、そのオブザーバーとして参加をさせていただいて、行政の立場から民間の事業者の方とも意見交換をさせていただきながら、より良い適切な対応が図られるように、そういうふうに努めているということでございます。
  30. 有田芳生

    有田芳生君 私は、表現の自由を守るためにもヘイトスピーチ規制しなければいけないという立場ですけれども、やはり具体的に被害者が苦しい思いをしている、自ら命を絶とうかと思うようなところまで追い込められる、あるいは妊婦さんが一週間入院せざるを得ないような匿名の広範囲の攻撃が行われる。この新しい課題に対して、脱法ドラッグの問題とは次元が違いますけれども、やはりこういう問題についても総務省の方でも積極的にイニシアチブを取っていただいて、新しい問題解決の道を探っていただきたいというふうに思っております。  それで、このヘイトスピーチネット上の問題についてはもうここで終わりにしたいと思いますけれども、最後に上川大臣、先ほどお伝えしましたけれども、二人の娘さんをお持ちのお母さんの立場としても、こういう事態に対して、このままではいけないというふうに思われるでしょうけれども、どうお感じになりましたか。
  31. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 先ほど来、有田先生の方から、実際に現場の中でどんなにひどい状態にあるかということについては文書とかあるいは映像等でも限界があるという大変適切な御発言がございました。まさにやはり現場に行かないと分からないことというのはたくさんあるということでございまして、そういうことを踏まえた上での今日の御指摘であったというふうに、そういう意味では、いろいろな形で考えるということについての大変大きな示唆をいただいたというふうに思っております。  もとより、この差別的言動が、外国人の方を始めとして、また在日の方々も含めまして、いろんな形でほかの人の人権を侵害するということについては、これはあってはいけない大変大きな問題だというふうに思います。そして今、十七歳の高校生の娘さんのお話や、また同時に、妊娠をしながら大変苦しい状況の中でしかし見事に赤ちゃんを産まれて、またそのお子さんを育てるという今度は母親の立場でというようなことを考えたときに、そういうことをそのままではおいてはいけないという思いでございます。  いろんな人権の侵害案件がございますが、これまでいわゆるこのヘイトスピーチというところに焦点を当ててこのことについて向き合ってきたかといえば、私は、それについては新しい人権侵害ということの事態であると、まさにおっしゃったとおりだというふうに思っております。  こうしたことを機にしながら、いわゆるこのヘイトスピーチに係ることについての実態がどうなっているのかということにつきましても、特に、先ほど申し上げましたけれども、人権の擁護に関する法務省の中での様々な機関がございますし、また省庁との間の連携も含めまして、実態状況についての把握ということ、そして申告をされた事案がどのくらいヘイトスピーチに係る案件としてあるのかどうか、こういうことも含めてしっかりと取り組んでいくということについて指示をしたところでございますので、そういったことも踏まえまして適切に対応することができるように、しかも早急に対応することができるようにしてまいりたいというふうに思っております。
  32. 有田芳生

    有田芳生君 またまた時間がなくなってきてしまったので、先を急ぎます。  基本的なことで外務省に確認をさせていただきたいんですけれども人種差別撤廃条約を今批准している国は何か国になりましたでしょうか。
  33. 河野章

    政府参考人(河野章君) お答え申し上げます。  国連資料に基づきますけれども、本年十一月九日、おととい現在の最新状況といたしまして、この人種差別撤廃条約の締約国数は百七十七か国というふうに承知しております。
  34. 有田芳生

    有田芳生君 去年の五月三十日の法務委員会で、私はこのヘイトスピーチの問題について質問をさせていただきました。そのとき外務省に、OECD三十四か国の中で人種差別禁止法などの法律を持っている国はどれだけありますかと質問をさせていただきました。そのときは調べてみないと分からないというお答えでしたが、もう一年半たちますけれども、調べていただけましたでしょうか。
  35. 河野章

    政府参考人(河野章君) お答え申し上げます。  昨年五月の法務委員会、当委員会での御質問をいただきましたことを受けまして、外務省としまして、在外公館を通じましてOECD加盟国につきまして調査を行ったところでございます。ただ、ちょっと御理解いただきたいのは、各国それぞれ固有の法体系、法制度を持っておりますので、必ずしもそれぞれの国の詳細までなかなかつかみかねる部分があるということは、ちょっと正直に申し上げて御理解いただきたいと思うんですけれども。  その前提で申し上げますれば、調査を行いました範囲で、OECD全加盟国三十四ございますが、このうち三十一か国につきまして、人種等を理由として誹謗中傷する言動又は人種等を理由とする差別扇動、助長する言動等を規制する何らかの法令があると。何らかの法令と申しますのは、刑法である場合もあれば、あるいはそれ以外の法令もある場合もあり、両方ある場合もあると、そのような様々なケースがございますので、何らかの法令という言い方をさせていただきます。さらに、そのうち三十か国においては何らかの罰則を設けているというふうに承知しております。
  36. 有田芳生

    有田芳生君 つまり、そこでも明らかなように、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムに対する規制をどうするかというのは、国際的な人権基準をどうこの日本で作っていくのかという、そういう合わせ鏡のようなものとしてやはりこれから検討していかなければいけないというふうに思います。  最初に人種差別撤廃委員会日本審査についてお話をさせていただきましたけれども前回も中途半端に、副大臣にお答えいただいたんですけれども、その日本勧告のパラグラフ三十三で、日本がこれから強調しなければいけない四つの課題として、ヘイトスピーチ、それから朝鮮学校無償化問題、そして琉球、沖縄問題、そして難民問題、四つが取り上げられました。前回、副大臣にはお話を伺いましたので、残っている課題、例えば朝鮮学校無償化の問題について、文科省、どのような取組をこれからなさる予定でしょうか。
  37. 中岡司

    政府参考人(中岡司君) お答えいたします。  今年八月に国連人種差別撤廃委員会が発表いたしました日本の第七回、第八回、第九回の定期報告に関する最終見解におきまして、高等学校等就学支援金制度からの朝鮮学校の除外につきまして懸念が示されたことは承知してございます。  朝鮮学校への高等学校等就学支援金制度に係ります不指定処分につきましては、まず、朝鮮学校は朝鮮総連と密接な関係にございまして、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいるということなどから、法令に基づく学校の適正な運営が行われているとの確証が得られなかったため不指定処分としたところでございます。  また、朝鮮学校が都道府県知事の認可を受けて学校教育法第一条に定める高校になるなどすれば現行制度の対象となり、また、高校や他の外国人学校に在学する在日朝鮮人等は現行制度の対象になっていることなどを踏まえれば差別には当たらないと考えております。  今後とも、高等学校等就学支援金制度の適切な運用に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  38. 有田芳生

    有田芳生君 それが差別なんですよ。在日朝鮮人、コリアンも含めてとあえて言いましょう。日本で生まれ、日本で働き、所得税も払い、住民税も払い、どうして朝鮮学校の生徒だけが差別されなければいけないんでしょうか。  私は、現場に行っていろいろ調査もしました。教科書も読みました。多くの問題抱えています。朝鮮総連との関係もしっかりさせなければいけません。しかし、日本で生まれ、日本で育ってきた子供たちが、どうしてそういうことで差別をされなければいけないのか。実際、多くの先生や父兄の方々、話聞かれましたか。今の北朝鮮あるいは朝鮮総連に対して非常に厳しい意見お持ちの方がいっぱいいらっしゃいますよ。  そういうことを抜きにしても、やはり子供たちには何の責任もないわけですから、税金を払っている人たちにはきっちりとした対応を取るべきである。それをなさないならば、日本政府がやっぱり差別をしているんじゃないかという指摘があっても十分に答えられるのかどうか、そういう問題があるというふうに思っております。  とにかく、様々な問題があります。琉球、沖縄の言語の問題もお聞きする予定でした。難民の問題についてもお聞きしたいと思いましたけど、時間が来ましたのでもうやめざるを得ませんけれども。とにかく、安倍総理が国連常任理事国入りの意欲を語っていらっしゃるわけですから、やはり差別をなくしていく、国際人権基準にきっちりとして立つ日本をこれからつくっていくんだと、そういう立場にこれは党派を超えて立つべきだというふうに思っております。  マーチン・ルーサー・キングが、黒人はなぜ待てないのかという本を出しております。やはり被害者というのは待てないんですよ。黒人差別がなくなってからもずっと様々な差別がいまだあるということを含めて、日本においても人種差別というものが今日お話をしたようなことも含めてありますから、繰り返しですけれども、自民党、公明党にもプロジェクトチームをおつくりになって検討されておりますから、やはり党派を超えて、国際人権基準に立った、しっかりとした新しい共生社会、共生国家というものをつくっていかなきゃいけないということを締めくくりの言葉として、今日の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  39. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 おはようございます。公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。  私、昨日、事務局次長をさせていただいている再犯防止議連のメンバーとともに埼玉県の川越市にある少年刑務所を視察してまいりました。杉良太郎さんも御一緒でして、杉さん、御存じの方は御存じなんですけれども、五十五年間も刑務所視察等をずっと続けられて、この道ではもう大家と言ってもいいぐらいの方であります。  それで、職業訓練や矯正教育の状況など様々現状を見てまいりまして、終了後懇談をしたんですが、杉さんも強調されていて、また議連の座長である保岡先生も強調されていたことがありました。それは、刑務所というのは、かつてのイメージですと悪いことをした人を押し込めて懲らしめるというようなものでもあったかもしれないが、やはり世界一安全な国日本をつくるというためには、もう何度も強調しておりますように、今、犯罪の六割が再犯です。ですから、刑務所も、そういうようなイメージとはまた変わって、これからは更生するための施設として捉え直さなければいけないということを非常に強調されておりました。  この観点から、さらに、これ杉さんのお言葉を借りて、五十五年間刑務所をずっと見てこられた経験からおっしゃっていた言葉ではありますが、昔の入所者に比べて犯罪を犯す人の依存症というのが非常に強くなっていると。窃盗であったりストーカーであったり、依存に基づいて犯罪を犯しているという人が非常に多くなっている、これは顕著な傾向であるということを杉さん、強調されておりました。その上で、昨日議論になったのが、やはり入所した人のカウンセリングの体制をしっかりとつくっていくことだと、そのための人員確保が大事であるということが議論になりました。  昨日行った川越の少年刑務所なども様々な矯正教育をしておりまして、例えば薬物依存の離脱の矯正教育であったり、性犯罪の再犯防止の指導の矯正教育であったりします。ただ、本来であれば個別にやるべきような話だと思うんですが、どうしてもグループでやらざるを得ないと。人数的なものもやはりあるのかなと、その体制の面で。  この観点からまずお伺いしたいと思うんですが、この川越の少年刑務所に限らず、一般的なお話でも結構なんですが、このカウンセリングの体制、今現状どうであるか、また今後どのような取組をされるのか、法務省の方からお伺いをしたいと思います。
  40. 西田博

    政府参考人(西田博君) お答えいたします。  刑事施設におきましては、受刑者に対するカウンセリング的な業務を行っている職員は、主に心理学を専門とする調査専門官、それとあと臨床心理士等の資格を持った非常勤の処遇カウンセラーでございます。  少し具体的に配置状況を御説明させていただきますと、平成二十六年度、本年度ですけれども、刑事施設八十庁に百九十三名の調査専門官を、また七十八庁に百十一名の処遇カウンセラーを配置しておるところでございまして、そこでそれぞれ受刑者の処遇調査ですとか、施設内で不適応を起こした受刑者に対するカウンセリング等の業務を行っているところでございます。  また、高齢者や障害者等の自立困難な者もおりますので、その者に対して出所後の社会復帰に向けた相談とか助言を行う職員としまして、刑事施設十二庁に十二名の今度は福祉専門官、六十九庁に九十四名の非常勤の社会福祉士を、また八庁に八名の非常勤の精神保健福祉士を配置したところでございます。  なお、本年度は三庁の女子刑事施設において、各施設が所在します地域の医療、福祉等の専門家の協力を得ることができるようなネットワークづくりをいたしまして、看護師とか保健師、介護福祉士等の地域の専門家に、心身の問題を抱えた女子受刑者に対する個別指導を行っていただくという女子施設地域支援モデル事業というものを立ち上げまして、これを新たに開始したところでございます。  こういった状況でございますけれども、まだまだ十分とは言えないというふうに考えておりますので、平成二十七年度要求におきましては、福祉専門官十四名の増員、非常勤の社会福祉士四名の増配置、また新たに四庁におきまして女子施設地域支援モデル事業を実施するために必要な経費を要求したところでございます。  御指摘ありましたとおり、まだまだこれから充実化させなきゃいけませんので、当方といたしましても、いろんな方策について鋭意検討してまいりたいというふうに考えております。  以上でございます。
  41. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今御説明ありました、着実に進んでいるということは理解させていただいたんですが、やはり先ほどのような背景もあります。やっぱりいろんな多様な支えてくださる方を、どんどん人材を確保しなければいけないという方向であると思います。より引き続き努力をいただきたいと思います。  また、今、女子のお話もありました。地域で支えるという取組、非常によいと思います。ほかのところで聞いた話ですと、男子の場合の受刑者、入所者の人は、住居不定であったりそういうのが理由になるんですが、女性の場合は、やはり家庭内のストレスとかそういう部分で、心理的なものでも影響を与えるというようなお話も聞きました。そういう部分でのサポートを更に拡充させていって、男性の方にもしっかりと拡充できるようなモデルケースとしていただければと思っております。  それで、人の確保という話から今申し上げたんですが、やはりいろんな方に職員として入っていただくためには、職員の方の待遇の改善というのも当然これから必要になってくるかと思います。  それで、ちょっと今お手元に配らせていただいた資料がございます。昨日、川越の少年刑務所を回って印象的だったのが、施設が非常に老朽化しているという点。今、四枚の写真、お配りしております。  これは刑務所の職員の宿舎の写真になります。御覧のとおり、お分かりになりますとおり、壁はぼろぼろ、階段も本当に今にも崩れ落ちそうな感じの状況ですね。それで、和式トイレでもありますし、ベランダなんかはこれもうさびついてしまっていて、布団はとても干せないような、そのような状況でした。杉さんと一緒に状況を確認したんですが、杉さんも、こんな状況ですと、若い職員の人が例えば結婚してお嫁さんをここに連れてこれるかというと、これは無理だよねというようなことも非常に言っておりました。本当にそのとおりであるなと。  あと、今日お手元にはちょっと配らせてはいただいていないんですが、森田実さんという方が評論家でいらっしゃる、御案内のとおりなんですが。この方も私は個人的にもお付き合いもさせていただいているんですが、十月二十一日付けの日刊建設工業新聞というものを書かれておりました。  そこにこのまさに川越の少年刑務所のことを書いているんですが、トイレは和式です、風呂はありますが脱衣所はありません等々、その上で、刑務官らの矯正職員は刑務所に隣接した公務員住宅に住まなくてはなりません、二十四時間緊張状態の中で刑務官としての使命を果たしています、このような公務員の住宅としては余りにも劣悪であります、崩壊寸前の住宅では優れた若い人材を集めることは難しいのではないかと思います、中略させていただいて、国会議員と予算を決定する財務省の皆さんに訴えます、川越少年刑務所と職員宿舎を是非御自身の目で見てください、このような形でも書かれておりました。  職員の方にお聞きしたところ、やはり二十代の方、新しい職員の方が、いざ職員になってもどんどん辞めていかれる率が非常に今多いと。今後、この刑務所を支えて、まさに世界一安全な日本を支えていくために必要な人材である方々が辞めていかざるを得ないような状況にある、このようなことを言っております。  この点、改善が必要かと思いますが、この辺りをどのように今検討をされているのか、また御説明をいただければと思います。
  42. 黒川弘務

    政府参考人(黒川弘務君) お答えいたします。  法務省所管の施設には、委員指摘のとおり、昭和五十六年以前築のもので、現行の耐震基準を満たしていない施設が多数存在しております。法務省施設の整備は、災害時における来庁者及び職員等の生命、身体の安全確保や、被収容者の逃走防止等のために重要でございますし、また、特に今御指摘がありました矯正施設の職員宿舎の整備は、職員の士気の維持などの施設運営上の観点からも重要であると認識しております。  平成二十七年度においては総額約三百四十五億九千六百万円を概算要求し、これら施設の整備に向けて努めているところでございます。概算要求では、老朽度を総合的に検討し、整備の必要性が高いと考えられる矯正施設の職員宿舎の整備などの経費を計上しているところでございます。  法務省としては、いまだ老朽化が著しく現行の耐震基準を満たしていない施設が多数存在しておりまして、これらの施設の整備を短期間で完了することはなかなか困難でございますので、引き続き財政当局の御理解を得ながら所要の予算の確保に努めてまいりたいと考えております。  以上です。
  43. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今、一部若干御説明があったんですが、例えば庁舎なども約半数がまだ現行の耐震基準も満たしていないと。宿舎なども、全宿舎一万二千戸のうち約一二%、これは経年に達していると、様々、非常に老朽化が。これまで入所者の人の数が一時期わあっと増えたときは新しいものを造るというような方向だったと思いますが、やはりこれからは、今は減ってきている部分、逆に今度は老朽化のものをしっかり復旧していくという方向が大事かと思っております。今は、済みません、宿舎の話ではなく施設の話になりましたが。  当然ですけど、この刑務所の老朽化というのも問題であると思います。例えば、以前、宮城だったと思いますが、地震で塀が崩れてしまった、老朽化のせいで塀が崩れてしまったというようなことも聞いております。そういう事態になると、やはり地域の安全にも非常に影響も出てくる。  是非、今日お集まりの委員の方にも御理解いただきまして、その上で、法務省には財務省への働きかけをしっかりとお願いしたいと思っております。この件はこの程度で終わらせていただきたいと思います。  次に、ちょっと順序を変えまして、法曹養成の関係、質問させていただきたいと思います。  法曹養成といいますか、先週も質問させていただいたとおり、法曹を今養成していくのは、やはり様々な国際訴訟の部分も含めて法曹人材の育成というのは大事かと思っております。その上で、いかに多様な人材を確保するのかというところが大事なんですが、お伺いしたいのは、様々いろんな部分でも議論になっている司法修習生に対する経済的支援についてでございます。  今、昔に比べてロースクールに通わなければいけなくなる、そのためにも三百万から千二百万ぐらいやはり借金を抱えているという人が非常に多くなっている状態。他方で、所得というものが、昔に比べれば例えば弁護士になった場合も少なくなってしまったと。そういうようなときに、経済的支援というものがある程度図られない限りは多様な人材を確保するということはなかなか難しいかと思っております。  この辺りについて、今どのような検討をされているのか、御説明をいただければと思います。
  44. 大塲亮太郎

    政府参考人(大塲亮太郎君) 司法修習生に対する経済的支援につきましては、平成二十三年八月に、法曹の養成に関するフォーラムにおきまして、貸与制を前提にしながら、修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときはその返還の期限を猶予することができるようにすべきであるとされたことを受けまして、そうした返還猶予事由の拡大を行う内容の裁判所法の改正が行われたところであります。  また、昨年七月の法曹養成制度関係閣僚会議におきまして、貸与制を前提にしつつ、司法修習生に対する経済的支援の一環として、移転料の支給等の措置を最高裁判所において実施することが期待されると決定されまして、最高裁判所において既に実施に移したものと聞いております。  これらの措置が実施されたばかりでありますので、現時点では、最高裁判所と連携しつつ、これらの措置の実施状況を見ていく状況にあると認識しております。
  45. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございました。  私の個人的な経験で恐縮なんですけど、私も修習生時代、その前にいろいろ実家の事情等もあって借金等もあった部分があって、多分、それを返しながらの部分であったので、いろいろ支援がなければその後なかなかキャリアを積むということはできなかったのではないかなと思っております。そういう点でも、いろんな可能性のある人がその芽を潰さないような助成をしっかりと体制としてはつくっていただきたいと思います。  個人的な意見としては、例えば今は文部科学省が、奨学金の関係なんですけど、所得連動型で返還をすると、将来的な所得が見合ったときに初めて返還をするとか、そのようなアイデアも出しております。そういうようなアイデアも、これから具体的には貸与制が開始をして運用が始まってくる部分ではあるから、それ以降の検討にはなるかとは思いますが、その辺りのことも、制度設計の部分も含めて、是非引き続き、司法修習生始め有為な人材の経済的支援という部分、御検討をいただければと思います。  続きまして、また全然違う話になりますが、ちょっと時間もありませんので冒頭だけになってくると思いますけど、無戸籍のお話をしたいと思います。  一部報道でもあるところですが、まず、先月二十四日でしょうか、全国的に無戸籍者についての調査、これを法務省の方でされていると思います。その状況について端的に御説明をいただきたいと思います。
  46. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 今お話がありましたとおり、法務省では、本年七月三十一日に課長通知を発出いたしまして、市区町村や児童相談所などが業務の過程で無戸籍の方の存在を把握した場合には、その市区町村の戸籍担当者がその情報を集約して、さらにそれを法務局に提供するという仕組みによって全国的に無戸籍者の存在に関する情報を集約するということ、それから、その際には無戸籍の方に戸籍に記載をされるための手続を案内をするという取組を開始したところです。この取組の結果、十月十日現在、全国で二百七十九名の無戸籍の方を把握しているところです。  もっとも、この数は全国の市区町村の千八百九十六のうち約一割に当たる百八十七の市区町村からの情報提供によるものですけれども、一部の市区町村では、個人情報保護条例との関係から法務局に対する情報提供をちゅうちょすることがあるというようなことも聞きましたので、市区町村に対する情報提供の要請が法的根拠、具体的には戸籍法に基づく権限行使であるんだということを法務局から全国の市区町村に周知をしているところでございます。  法務省としては、今後とも、この取組、継続しておりますので、無戸籍者の一層の把握に努めてまいりたいと思っております。
  47. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今御説明いただきました、全国で二百七十九名。ただ、今もお話があったとおり、市町村の大体一割ぐらい。しかも、自ら相談のために自治体に来られた方の数であります。ですから、まさに氷山の一角の問題で、専門家によっては一万人ぐらいは無戸籍の方がいるのではないかということであります。  今日、ちょっと質問の時間がありません。大臣、大変恐縮ではありますが、ちょっと私の方だけでまずしゃべらせていただいて、次につなげたいと思うんですが。  無戸籍というのは、存在自体が行政の網からもやはり抜けてしまっているというような状態。先月も先々月も、大阪であったり神戸であったり、この無戸籍の方が戸籍に入るために、お母さんから見たら元夫との間の親子関係を否定するための裁判を訴えて、やっと三十何年たって、生まれて三十何年たって戸籍が回復したというようなことがありました。もうそれまで三十何年間、例えば住民票も取れないので、就職もできない、携帯電話も取ることができない。もう本当に普通であれば普通にできるようなことが全くできないというような方が一万人以上は、恐らく推計としてはいるんじゃないかというような状況。しかも、それはその方の責任ではないという状況があります。  これをしっかりと改善していくためには、例えば裁判を起こすときには裁判の手続等についてもしっかりと援助もする方向、その上で、戸籍の届出の在り方もやはりこれから考えていかなければいけないかと思います。  この件は引き続きしっかりとまた議論もさせていただきたいと思っておりますが、是非、こういう方が今後発生しないような体制、これをしっかりと法務省の方でもまた御議論いただきたいと思っております。この点をまずお願いいたしまして、中途半端になってしまいましたが、質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  48. 行田邦子

    ○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いいたします。  今日は、民法の成年年齢について主に伺いたいと思います。  さきの通常国会におきまして、憲法改正の手続に関する国民投票法の改正法案が成立して施行されました。ここでは、投票権年齢について規定するとともに、法施行後速やかに選挙権年齢についても投票権年齢との均衡を考えながら十八歳以上に引き下げるという検討を加え、そしてまた必要な措置をとるものとすることという条文が加えられました。  そこで、まず政府参考人に伺いたいと思いますけれども、今各党間で選挙権年齢を十八歳以上に引き下げるといった議論が行われていますが、こうした議論の中でも、選挙の公正の確保をするという視点から、十八歳、十九歳の少年については少年法の適用を除外したらどうかといった意見もあるようですが、この点について法務省としてはどのようにお考えでしょうか。
  49. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 公職選挙法を十八歳以上ということに引き下げた場合の少年法の適用の関係でございますが、選挙の公正という観点からは、十八歳、十九歳の者が選挙法違反、選挙犯罪を犯した場合に、少年法の適用関係で、選挙の適正が確保されるのかどうかということが問題となって少年法の適用を除外するということが、そういった指摘を踏まえて、少年法についても、選挙年齢が十八歳以上に引き下げられた場合に十八歳、十九歳の者の選挙犯罪について少年法の適用を除外するという案、こういったものが指摘されていると理解しております。  そういったことについては、現在、議員間で御議論いただいているものと承知しておりまして、その適否等について法務省として見解を述べることは差し控えたいと思っております。
  50. 行田邦子

    ○行田邦子君 PTやまた憲法審査会などでは、かつては法務省としての見解を述べられていたかと思いますけれども、今確かに各党間で協議がかなり進んでいる状況でありますので、法務省としてはその議論の経緯を見ていきたいということだと理解をいたしました。    〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕  そこで次の質問に進みたいと思いますけれども、仮に選挙権年齢を十八歳以上に引き下げた場合なんですけれども法務大臣に伺いたいと思います。  司法権に参加する裁判員、そしてまた検察審査員に選任される年齢なんですけれども、今のこの現行法では衆議院選挙の選挙権を得ている者の中から選任されるというふうになっていまして、法改正をしなければ、現行法のままですと、選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられた場合は自動的にこうした裁判員、検察審査員の選任の年齢も十八歳以上に引き下げられることになりますが、これについて法務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  51. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 先生御指摘の公職選挙法上の選挙権年齢が満十八歳以上に引き下げられた場合の裁判員、そして検察審査員、これが法律上連動しているということで、これについての御指摘であります。  まず、裁判員の選任資格ということでありますけれども、衆議院議員の選挙権を有するということでその選任の資格要件というのが定められているということでございますが、この趣旨でございますけれども、裁判員は三権の一翼を成します司法権の行使に直接参画をするということでありまして、少なくとも、同様に三権の一翼を成す立法権の行使に直接参画をする国会議員を選ぶことによって間接的に国権の行使に関与し得る資格を有する者であるべきというふうに考えられて、横並びということで指定されたところでございます。  裁判員制度の趣旨でございますが、できるだけ幅広く国民各層から様々な参加をしていただきたいということで裁判員が選任されるということが大変望ましいということでございますので、この衆議院議員の選挙権を有することのほかに、年齢要件につきましては、年齢要件という形では定められていないということでございます。このような考え方につきましては検察審査会についても当てはまるということでございます。  御指摘いただきましたけれども、公職選挙法上の選挙年齢の引き下げられた場合におきましても、裁判員及び検察審査員となることができる年齢については満二十歳以上のままとするという案もあるというふうに承知をしておりまして、これにつきましては議員間において御議論をいただいているという問題でございます。その議論の推移を見守りたいということでございますが、私としてもそうしたことの御議論をしっかりと考えてまいりたいというふうに思っております。
  52. 行田邦子

    ○行田邦子君 司法権に関与するには立法権に関与する資格がある者でなければおかしいんではないかということで、このような現行法になっているのかと思いますけれども、仮に選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられた場合、私ももう少しいろんな情報を得て自分自身の考えというものを確固たるものにしなければいけないとは思いますが、今の段階で確固たる根拠はないんですが。やはり裁判員となりますと死刑、無期懲役、また禁錮に当たる刑の刑事裁判に関与するわけでありますので、ここはその対象となる年齢の引下げというのは、これは様々な議論があってしかるべきですし、慎重に検討すべきではないのかなというふうに現段階では思っております。  そこで、一問飛ばしまして、次の質問に移りたいと思います。  そこで、民法の成年年齢について伺いたいんですが、まず局長に伺いたいと思います。  民法の成年年齢、二十歳以上でありますけれども、二十歳以上となった理由、また経緯は何なんでしょうか。
  53. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 民法は明治二十九年に制定されていますが、それ以来、成年年齢を二十歳と定めております。  民法の成年年齢を二十歳と定められた理由や経緯は、百二十年近く前のことですので必ずしも詳細が分からないわけですけれども、制定当時の日本人の精神的な成熟度、これは江戸時代の元服の制度などが十五、六歳で行われたというようなこと、それから当時の欧米と比べたときの平均寿命が短いということなどを考慮して、明治時代にはほかの欧米諸国では二十一歳、二十二歳という辺りが成年年齢だったんですが、それよりも若干下げるという趣旨で二十歳に決めたというふうに言われております。
  54. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございます。  昔のことなので、今の局長もなかなか確固たるものは分からないという御答弁だったと思いますけれども、いろんな説があるかと思います。  そこで、次の質問に移りたいと思いますけれども、お手元に資料をお配りしております。資料の一も関連することですけれども、仮に選挙権の年齢が引き下げられるなどに伴いまして民法の成年年齢が引き下げられるというような議論になった場合なんですけれども、この場合、どのような論点が生じるのか、想定される論点についてポイントだけお答えいただければと思います。    〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕  そしてまた、今、様々な法定年齢というのが、資料一、お配りしているとおりでありますけれども、この法定年齢への影響がどのようなものが生じるのか。  そしてまた、民法の成年年齢を引き下げるというこの法改正、これは非常に大きな法改正になると思いますけれども、法改正から施行までに要する期間というのはどのぐらいと見ていらっしゃるのか、お答えいただければと思います。
  55. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 民法の成年年齢の引下げにつきましては、平成二十一年の十月に法制審議会から法務大臣に対する答申がされておりまして、結論としては、成年年齢を十八歳に引き下げるのを適当としつつも、引下げのためには若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大を防止するための施策が実現される必要があるという指摘がされております。法務省としては、これまでも各種の環境整備施策に取り組んできたところですが、今後こうした環境整備がどの程度進んだのかというのがまず大きな論点になると思います。  また、今御指摘のとおり、様々な法律において各種の法定年齢が定められておりますが、成年年齢の引下げがこうした法定年齢にどのような影響を与えるのかという論点もございます。この点につきましては、成年年齢の引下げに伴って各種法定年齢を変更すべきか否かについて、それぞれの法定年齢の立法趣旨を踏まえた上で政府全体として検討する必要があるということで、相応の検討も進んでいるところと承知しております。  さらに、改正から施行までどの程度の周知期間が必要かという点も確かに大きな論点です。民法の成年年齢は契約を一人ですることができる年齢ということで、その引下げによって社会的に大きな影響が与えますので、一般国民、特に大きな影響を受ける若年者に理解しやすい形で制度改正の効果等の周知徹底を図る必要がございます。  こうした影響の大きさに加えまして、実際の周知活動というのは法律が成立してから行うことになりますので、本格的には、現時点でどれくらい必要かというのは明示的にお答えすることはなかなか難しいですが、少なくても、常識的に考えて法律成立後二年あるいは三年程度の期間は想定しておく必要があるのではないかと今考えているところでございます。
  56. 行田邦子

    ○行田邦子君 民法の成年年齢を変えるという、引き下げるということとなると、非常に国民生活にもまた様々な価値観にも大きな影響を与えるものだというふうに思っておりますので、一方で、選挙権年齢が引き下げられるであろうという現実性が増している中で、やはり法務省としても、それでは民法の成年年齢を引き下げるべきなのかといった、引き下げる場合にどのような準備が必要なのかといったことも検討に入るべきではないかなというふうに思っております。  それでは、大臣に伺いたいと思います。民法の成年年齢が十八歳以上に引き下げられる場合なんですが、少年法の少年年齢も十八歳未満に引き下げるべきとお考えでしょうか。
  57. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) この民法の成年年齢、満十八歳以上に引き下げられた場合ということでありますが、少年法、刑事政策的なテーマということで、関係についてということでございます。  少年法の適用対象年齢ということにつきましては、成長過程にある若年層、こうした子供たちがいかに取り扱われるべきかということでありますが、少年法固有の観点から検討を行う必要があるというふうに考えております。少年法の適用対象年齢を二十歳未満から十八歳未満に引き下げるということになりますと、現在保護処分を科すことができる年齢ということにつきましては十八歳、十九歳の者に対してということになりまして、ここに一律に保護処分を科し得ることができなくなるということになりますので、そういうことが相当かどうかということについて検討されるべき問題ではないかというふうに思っております。  こうした観点から検討をした結果でございますが、これにつきましては、十八歳、十九歳の者によります刑法犯の動向につきましてしっかりと把握し、また少年に対する刑事処分の在り方につきましては、過去少年法の改正ということがなされまして、十六歳以上から十四歳以上に平成十二年の段階で改正されたということがございます。こうしたことに照らしまして、現時点においては十八歳から十九歳について保護処分の必要性が一律に失われたかどうかということについてはまだ十分な事情が存在していないと、こういう認識でございます。  ただ、今後、少年法の適用対象年齢につきましての引下げの当否につきましては、民法あるいは公職選挙法の、より一般的な法律の動向等も含めまして、この年齢ということに焦点を当てながらしっかりと検討すべきことであるというふうに思っております。
  58. 行田邦子

    ○行田邦子君 もう時間も少なくなってきましたので、ちょっと質問はこれで最後にしたいと思いますけれども、お手元に資料二としてお配りしていますけれども、今世界、諸外国の成年年齢というのを見てみますと、かつて二十歳以上だったものが十八歳になっているといった国も多くございます。これは法務省が示しているデータですけれども、百九十六か国・地域の中で百四十一か国が成年年齢を十八歳以上にしているということで、成年年齢十八歳以上というのが、これが世界の趨勢なのかなというふうに思っております。  一方で、アンケート調査を行いますと、国民の意識としては、成年年齢を十八歳以上に引き下げるということは七割から八割が反対ということも出ています。こうした状況も踏まえながら、やはり大きな影響を与えるものでありますので、民法の成年年齢については様々な議論、検討をするべきだということを申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございます。
  59. 真山勇一

    ○真山勇一君 維新の党の真山勇一です。  昨今、私たちの周りでは大きな問題になっているのが消費税、この消費税を来年の十月から予定どおり上げるのかどうかということでいろいろ言われてきておりまして、そこにここへ来て突然政局も絡んで、大きな問題になってきているように思えているんですけれども。  ただ、実はその陰に隠れて大変重要な問題といいますか、注目されていた法律、これがもう一か月後にいよいよ施行されるということになります。特定秘密保護法、これが十二月の十日から実際に運用が開始されるということなんですね。上川大臣はこの特定秘密保護法の所管ということなので、今日はこの話をお伺いしたいというふうに思っています。  この法律は、去年の暮れに、大変な大騒ぎの中で大急ぎで何か成立をしてしまったという法案なんですけれども、それは中身にいろいろな問題点を抱えていて、そうしたものが残ったまま成立してしまい、そしてその後、そうした実際の問題については運用を決めた時点で少しずつ是正をしていくんだというようなことも政府の側から説明もあったわけですけれども、実際に、先月の十四日に運用基準というのが発表されました。  それを見てみますと、やはり本当に私たちが懸念していた、不安に思っているような、例えば秘密の範囲がどういうふうに決められるのかとか、監視機関が本当に客観的な立場になっているのかとか、それから、私はメディア出身ですけれども、国民の知る権利というものはどこまできちっと保障されているのかなという問題については一切、まだなかなかこれは改善、是正されたというふうには私は思っていないんですね。  そういうことからちょっとお伺いしたいんですけれども、お配りしている資料を御覧ください。ちゃんとした翻訳が出ていないので、大変恐縮ですが、英文だけでお配りをさせていただいております。これ、国連が出しておりますプレスリリースなんですね。私、ニューヨークに駐在していたときに国連を担当していましたので、このプレスリリースというのを、もう毎日毎日これもらうために国連へ行っていたんですが、いろいろな世界のこうした動きを世界のマスコミに向けて発信している、その文書が国連のプレスリリースなんですね。  この中で、これは今年の八月の二十日に出された文書です。この内容は、国連の人権委員会、これは自由権規約委員会というふうにも訳されるそうですけれども、ヒューマン・ライツ・コミッティー、人権委員会が出しているペーパー、日本についての問題について検討して、そして、七月に検討しているんですが、その検討した報告書を勧告という形で八月に出したものなんです。  これ全九ページなんですけれども、取りあえず表紙の一枚と、それから、一枚おめくりいただくと八ページというふうに書いてありますが、全体で九ページなんですが、そのうちの特定秘密保護法について書かれたところだけをちょっと今日は紹介させていただきたいというふうに思うんですね。  この国連の人権委員会の勧告の中には、先ほども有田委員の方から提起があったヘイトスピーチ人種差別という問題についても、このプレスリリースの中でも、やはり憎悪差別をあおるようなそうした行為に対しては断固たる措置をとるべきであるという内容の勧告が出されているんですが、そのくだりの中ほどを見ていただきたいと思います。二十三、アクト・オン・ザ・プロテクション・オブ・スペシャリー・デジグネイティド・シークレッツ、特定秘密保護法という項目が二十三番にあります。  この中で、いわゆる日本からの報告を受けて特定秘密保護法の問題点というのを指摘して、それに対する改善措置をとるべきだという勧告がなされているんですね。この中でも、やはり言われているような懸念が表明されています。  余り長くない文章なのでその主な要約をしますと、特定秘密の定義が広くて曖昧である、そして二点目に、指定の基準もまた曖昧になっている、そして三点目として、ジャーナリストや人権活動に萎縮を及ぼすような重い刑罰を科しているという三つのことを挙げまして、この三つの懸念に対し改善のための必要な措置をとるべきであるという勧告が出されている。  こういう勧告がこの夏に出されている。運用基準を見ても、なかなかその点改善されたのかどうかということの疑問が残るんですけれども、こうした、国連人権委員会から勧告を出されている、このことについて大臣はどういうふうに考えていらっしゃるのか、見解を伺いたいと思います。
  60. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員資料として御提出されました自由権規約委員会の、この八ページに掲げられているこうした御指摘につきまして、最終的な指摘があったということについては理解をしているところでございます。  時期的なところでいきますと、八月の二十日の段階で、七月ということでありますので、運用基準ということについての発表がなされる前の段階ということでありますので、そういう意味でのことを、この間、運用基準の中に盛り込むという中で今の時点があるということではございますけれども、このことについて様々な御懸念もありますけれども、そうした中で対応していくということで、こうした御指摘については対応するということで当たらないというふうな、そうした申入れを行ったところでございます。
  61. 真山勇一

    ○真山勇一君 こうした指摘は当たらないというふうな申入れをしたわけですね。  でも、実際に運用を見てみますと、当たらないというふうに断言して申し入れる内容、そこまでになっているのかなという私は気がしております。やはりこうした指摘に対しては真摯に対応する必要もあるのではないかというふうな気がしております。  現に、それでは、その中身の問題を見ていけば、例えば一つの例として、本当に特定秘密というのが、客観的に誰もが特定秘密というふうな納得ができるような、そういうふうな運用がされているのかどうかということで言えば、一つ申し上げると、監視機関、これの問題ですね。その監視をする、特定秘密というものがきちっと指定され、そして、それがきちっと扱われているかどうかということを監督する立場にある役割というのが、独立公文書管理監という役割が与えられているわけですね。  例えば、これ、本当にじゃ独立しているのかどうか。内閣府に置かれているということで、これは身内ではないかというふうなこともありますし、それからまた、基準に合っているかどうか調べたくても、相手から資料提出させる法的な強制力もないし、相手が嫌なら拒否することもできるようなそういう管理監という立場で、これ、私は独立と付いていること自体も納得できないんですね。独立していないからこそ、それを見せるために独立という名前を付けたみたいな、そんな気さえするような、そういうものなんですが。  こうしたことで、本当に、じゃ、この今回の運用でこれまでの不安とか懸念は解消されるというふうに大臣はお思いでしょうか。
  62. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 先ほど一番初めの国連の中での勧告ということに対して、ちょっと時期のことを少し触れたものですから、中身についてどういうふうな対応等を考えているのかということについてちょっと触れることができなくて大変申し訳なかったと思うんですけれども。  まず、こちらにア・ベイグ・アンド・ブロード・ディフィニションということで、非常に曖昧な指定ではないかと、こういう御指摘がございました。これにつきましては、この特定秘密に指定されるということについては、これまでも秘密として取り扱われてきた情報の中から、安全保障の観点から特に秘匿をする必要があるものということで絞っているということでございます。  したがいまして、特定秘密保護法によって、これまで国民の皆さんに開示をされてきた情報特定秘密に、この法律によって更に指定をされるというようなアディショナルな形で指定されるというものではないということで、むしろ狭められてきているという、そういう認識でございます。  それから、大変、ジャーナリストあるいはヒューマンライツ、そういう人権関係のところについての御懸念が出されているところでありますけれども、こちらにつきましても、法律とか運用基準におきまして、国民の知る権利、そして報道や取材の自由の尊重、さらに情報公開法の適正な運用ということにつきましては、この法律及び運用基準において明確に規定をしているということでございますし、またさらに、通常の取材行為ということにつきましては罰則対象とはならないということにつきましても法律に明示されているということでございまして、そういう意味での一連の御指摘の非常にメーンの部分につきましては、そのことについて、こういう形で対応しているという旨の申入れをしたというところでございます。
  63. 真山勇一

    ○真山勇一君 ただ、何というんですか、規定の曖昧さとか、はっきりしていない部分というのはやはりあるということは否めないと思うんですよね。その中で、今大臣もおっしゃったように、知る権利ということでいえば、その情報をきちっと公開すると、これも非常に不安が多いわけです。  運用基準の最初の方に、拡張解釈の禁止並びに基本的人権及び報道・取材の自由の尊重、これを厳格に運用するというふうなことは書いてあるんですけれども大臣もかつて関わっておられた公文書管理法というのがございますね。この特定秘密保護法というのは、この公文書管理法というふうな適用もこの秘密については受けるんでしょうか。
  64. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 公文書管理法の適用につきましては、全ての行政文書について適用されるということでありまして、その中の一部に特定秘密情報というのも含まれるということであります。  ですから、公文書管理法で規定している対象とする文書というのはもう本当に広いものでありまして、その中の一部に指定されるということでありますので、そういう意味では関係があるというか、それは密接に関係しながら運用していくということになろうかと思います。当然適用されます。
  65. 真山勇一

    ○真山勇一君 ただ、適用されても、非常にその特定秘密というのが曖昧だし、誰がどういうふうに決めるのかも分からないし、場合によっては秘密のままでずっと保存されたり、あるいは突然廃棄されてしまったりということが起こり得るような、そういう懸念があるわけですよね。  そういう中で、この公文書管理法ということでいうとレコードスケジュールという言葉を使われていますけど、どんな文書であって、それが何年間保存しなければならないかということを決めなくちゃいけないということですが、これでいくと特定秘密保護法の秘密というのは公文書管理法ではなかなか、それこそ管理ができない、その外にあるものになってしまう、やはり限界を超えたものになってしまうようなおそれというのはないんでしょうか。
  66. 北村博文

    政府参考人(北村博文君) お答えいたします。  特定秘密が記録されております文書等の取扱い、公文書管理法上の取扱いということでございます。現行法上、防衛秘密につきましては自衛隊法に位置付けられておりまして、これにつきましては公文書管理法の適用を除外するということになっております。それに対しまして、今回の特定秘密保護法上の整理でございますけれども特定秘密が記録された行政文書につきましては他の行政文書と同様に公文書管理法に基づいて管理を行うということになっておりまして、御指摘のレコードスケジュールでございますけれども、こちらにつきましても、特定秘密を記録した行政文書、またその行政文書ファイルというものが作られましたときにレコードスケジュールを作成するという整理となってございます。
  67. 真山勇一

    ○真山勇一君 そういう説明を伺えば伺うほど、やはり特定秘密保護法というのは公文書管理法の枠から出た部分が多くて、きっとなかなか国民に対して情報を開示するような、そういうようなシステムにはならないんじゃないかなという気がしています。こうした国の情報というのはやはり国民の財産であって、それは公開すべきであるという大原則があるわけですけれども、やはり今の運用基準のままではきちっとした公開というのがどうしても望めないというようなこの懸念はどうしても拭えないんですね。  それで、もうこれからあと施行まで一か月という時点でまだこういうことがあるんですが、この辺り、実際に運用が始まってからまたいろいろ改善するようなことということは政府としてあるんでしょうか。それを大臣にお伺いしたいと思います。
  68. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 上川法務大臣、時間ですので、答弁は簡潔に願います。
  69. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) はい。運用基準につきましては五年後見直しということで規定をされておりますので、そういう中で、実際に運用しながら、その課題等もございましたらその時点でまた評価に付するということだと思います。
  70. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。
  71. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  特定秘密保護法につきまして、秘密の恣意的な指定を防止する、適正な運用を確保するという重層的な仕組みをつくったと政府は説明をしてこられました。そのうち、実際に個々の秘密の提供を受けてチェックし得るとしたら、そうした機関は二つだけであると。お手元に資料をお配りをしておりますけれども、内閣官房に置かれる内閣保全監視委員会、それから内閣府に置かれる独立公文書管理監とその事務局としての情報保全監察室である、個々の秘密の提供を受け得るとしたらこの二つであると。このことは先週十一月四日の予算委員会において確認をできたと思っております。  この内閣保全監視委員会は、秘密保護法十八条に基づく内閣総理大臣の権限を、秘密を指定する官庁のトップ、事務次官級で構成される、つまり仲間内のこの委員会が補佐するというものです。  だったら、内閣官房の秘密、例えばNSCの秘密ということになれば、総理がその秘密を指定する権利者ですから、総理が指定して、総理がチェックするということになるではないか。そうした自分で自分をチェックするというのは何のチェックにもならないではないかという大きな批判の中で、昨年、強行採決の間際に持ち出されたのが、今、閣議決定でこうやって確立をした仕組みとおっしゃっているのは、右の独立公文書管理監なんですね。ですが、この管理監の任命権者、指揮監督者は誰かというと、これは内閣総理大臣です。総理の秘密指定を総理の任命した人がチェックする。保全監視委員会は、総理自身が指定した秘密を総理自身がチェックをするときに、仲間内が補佐する。  これが、例えば、総理が情報保全諮問会議の最初の会合のときに、しっかりとした外部のチェック体制を導入すると発言をしているんですけれども、これが外部のチェック体制などと言えるのかという問題なんですね。  そうなりますと、大臣、総理が、仮にですよ、仮にですよというか、仮にでもいいですよなんですけど、恣意的な秘密指定をした場合、あるいは都合の悪い情報特定秘密に指定して隠そうとした場合、仕組みの上では誰もチェックできないということになるのではありませんか。  大臣大臣大臣に聞いている、大臣
  72. 北村博文

    政府参考人(北村博文君) お答え申し上げます。  特定秘密の指定……
  73. 仁比聡平

    仁比聡平君 短く。
  74. 北村博文

    政府参考人(北村博文君) 承知いたしました。  内閣総理大臣が指定をする特定秘密というものもございますけれども、多くの秘密というものは防衛省あるいは外務省といったような役所によって指定されるところでございまして、全て内閣総理大臣が指定をする立場とチェックを行う立場を兼ねているということではないというふうに考えております。  また、独立公文書管理監の事務あるいは各行政機関との関係というものにつきましては、運用基準におきまして適切に規定をし、検証、監察が厳正に行うことができるようにしてきたところでございまして、これらの規定によりまして適切な検証、監察がなされるというふうに考えております。
  75. 仁比聡平

    仁比聡平君 大臣、今の審議官の答弁も、私の問題提起を否定できないじゃないですか。  総理が指定する秘密というのは現にあるわけです。それは、NSCに集中する国家安全保障に関わる情報の中で極めて重要なものだということが想定をされるわけです。総理は、自らこれを全てチェックして適正に判断するんだと言っていますけれども、そうやって総理が指定するという、そこに恣意性が入り込んだときに、仕組みの上では誰もチェックできないということになりはしませんかと、違いますか。
  76. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 先生からの御指摘の、結局のところ、チェックのとどまるところは内閣総理大臣ではないかという中での御指摘でございますが、このチェックの機能、チェックについては二重、三重の様々なレベルでの対応をしていくということの、そのことがきっちりと行われるということが非常に大事であって、そして、最終的にそうした一人の人がチェックするのではないかということについては、こういうところについて行き着かないまでにしっかりと対応していくということがこの運用の中で大変大事な視点だというふうに思っております。  その意味でいくと、この内閣官房内閣保全監視委員会、こちらについては適正な情報の指定がなされ、そして解除がなされ、そして適性評価がなされということについて、それぞれの行政機関に対して指揮監督をしっかりとしていくということでございまして、そのことができるような仕組みということで、それがうまく機能するようにというふうなことでございます。  もちろん、NSCにおきましての長につきましては、内閣総理大臣が指名を、指名というか指定をするということでございますので、そのことを論理的に動かしていけば最終的には総理大臣ということになりますが、そこのところについては、いろいろな形で仕組みの中にチェック機能を持たせていくということで対応するということだというふうに思っております。  また、内閣府の中に独立公文書管理監と情報保全監察室を設けるということでございますけれども、特に特定秘密の指定等の検証、監察を行うという独立した機関という形で、これは四党合意の中で、踏まえました上で内閣府に置くというような形になっていたものというふうに理解をしているところでございます。  内閣官房と内閣府ということで分離をし、なおかつ先ほど答弁いたしたところの防衛省とかあるいは外務省という行政機関と独立したところで対応していくということが本意であるというふうに思っておりまして、この指定を行う立場、それでチェックを行う立場、こうしたことについてしっかりとその機能を果たしていく、これをしっかりと内閣総理大臣がチェックをしていくと、こういう関係になっているというふうに思っております。
  77. 仁比聡平

    仁比聡平君 先ほどその四党合意の当事者の会派の真山理事から、いや、独立した立場になっていないじゃないかと批判があったところじゃないですか。論理的にはそういうことになると、私の問題提起をどうも受け止めておられるようにも思うんですけれども。  二重、三重のチェックと言いますけれど、独立公文書管理監について聞きます。  これ、管理監が、秘密を指定する行政機関の長、これが総理であることもあるわけですが、その指定が正しいかどうかを判断するために提供を求めると、秘密の。それに対して、いやいや、これは提供できませんと理由を疎明して断ることができる仕組みですよね。管理監がどこに対してどんな秘密の提供を求めたのかという件数や、それに対してどんな対応になったのかと、理由を疎明して提出できないとなったのだったらばその経過、これは国会に報告がありますか。
  78. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) この先生の提示されていらっしゃるチェック体制も見ても、国会というところに行政府の方から年に一度運用状況の報告をすると、こういうことでございまして、政府は毎年特定秘密の指定状況につきまして国会に報告をし公表するというふうにされているところでございます。  そして、御指摘の独立公文書管理監の報告、公表ということでございますけれども、これにつきましては、運用基準ということにおきまして、独立公文書管理監が年一回、独立公文書管理監及び行政機関の長がとった措置の概要につきまして内閣総理大臣に報告をし公表すると、こういう手続になっているところでございます。したがって、この報告とか公表につきましても適切に対応するということでございます。
  79. 仁比聡平

    仁比聡平君 何で繰り返して本当にそんな答弁をやりますかね。  適切に対応してまいりますと言うけれども、公文書管理監が報告の内容についてどうするか、これについて、そうしたらルールが決まっていますか。
  80. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 政府から国会への報告あるいは独立公文書管理監の報告等をどのような内容とすべきかにつきましては、法の運用状況も見ながら検討していくべきものというふうに考えておりまして、独立公文書管理監が行政機関の長に対して特定秘密の提供を求め、また行政機関の長が理由を疎明してその求めに応じないというようなことがございましたならば、その報告や公表につきましてもしっかりと適切に対応していくということでございます。
  81. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、つまり、独立公文書管理監がどういう報告をするかをこれから決めるということなんでしょう。決まっていないという、そういうことなんでしょう。  総理は、この問題について、私の質問の中で、我々がこうした体制でチェックをしていくということであります、この仕事自体を根本から全く悪意によって運用されるというふうに考えられてしまえば、これはもうお答えのしようがないわけでありますと言っているんですよ。  悪意という例は、核密約、つまり核搭載米艦船の事前協議なしの立入りを行っているのではないかというこの問題について、繰り返し日本の戦後政治において問われてきましたよね。明らかになっている文書を目の前で突き付けられても、歴代の総理はこれはないと言ってうそをつき続けてきた。つまり、総理大臣が悪意によって重要な情報を隠し立てする、これ現実に起こってきたわけです。  そういう悪意によって運用されるということになったら、それはもうチェックと言われてもお答えのしようがないと総理が言っているように思うんですけど、つまり、そういう場合には仕組みの上で防ぎようがないということになるんじゃないですか。大臣
  82. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) この今御指摘がございました悪意による運用ということでございまして、このことについて総理が言及されたということでございますが、一般論、そもそもということでありますけれども、総理を含むこの法律の施行に関わる公務員が、国会の定めた法律あるいは閣議の決定に従うことがおよそ期待されないことを前提としてこの制度そのものが、良しあしを論ずることは適当ではないというような御発言だというふうに思っております。  私もそのように理解しているところでございます。
  83. 仁比聡平

    仁比聡平君 何を言っているんですか。私が核密約のようなという問いに対して総理がそう言っている、答えているんですよ。  外務省の有識者委員会報告書、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書で、もう時間がないですから端的に一文だけ紹介しますけど、何より問題は、歴代の政府答弁が安保条約の事前協議に関して日米間には交換公文と藤山・マッカーサー口頭了解しかないとする、事実に反する明白なうそをつき続けたことであると述べているくだりがあります。これ、討議の記録という、密約かと言われている文書が存在しているからなんですね。明白なうそをつき続けたと有識者委員会の報告書でも言われている。そうした事態が起こったときに一体どうなるのかと。  総理は、私の質問に対してこうも答弁されたんです。
  84. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
  85. 仁比聡平

    仁比聡平君 過ぎていないんじゃないでしょうか。
  86. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 過ぎています。
  87. 仁比聡平

    仁比聡平君 政権が交代をしていく中において、後の政権によってそれは十分にチェックされるのであると。つまり、秘密保護法の仕組みの中では恣意的な秘密指定、とりわけて総理による指定がチェックされないということをお認めになっているのと同様ですよね。  こんな法律は廃止するほかないということを改めて強く申し上げて、質問を終わります。
  88. 谷亮子

    ○谷亮子君 生活の党、谷亮子です。  本日の議題であります法務及び司法行政等に関する調査につきましての一般質疑ということでございまして、次回、十三日の本委員会で予定されております公衆等脅迫目的犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案質疑に先立ちまして、本日は、我が国のテロ対策法務省の取組や、生物兵器に対する我が国のテロ対策について伺ってまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。  二〇〇一年の九月十一日のアメリカにおける同時多発テロ事件から十三年が経過をいたしました。また、昨年一月に、アルジェリア民主人民共和国で多数の犠牲者を出すテロ事件が発生しております。  そして、現在もなお国際テロが世界で発生し続けているという現況でございまして、アメリカ国務省が公表している国際テロに関する国別報告書におきまして、世界で発生したテロ事件の発生件数は、二〇一二年が六千七百七十一件であったのに対しまして、二〇一三年は九千七百七件、そして死傷者数につきましては、二〇一二年が三万二千七百五十人であったのに対しまして、二〇一三年は五万四百六十八人とされており、世界的にテロの脅威が拡大しているものと思われます。  そこで、我が国におけるテロ対策につきまして中心的な役割を担っている法務省として、二〇〇一年の九月十一日のアメリカの同時多発テロ事件以降、具体的にどのような対策を講じてきたのかについて、まず初めに伺いたいと思います。
  89. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 我が国におきましてのテロ対策ということで御質問がございました。中心的な役割として法務省の持っている役割は大変重いものというふうに考えているところでございます。  衝撃的な、アメリカで同時多発テロが平成十三年、二〇〇一年の九月十一日に発生をしたということでありますが、これを受けまして法務省の中に緊急テロ対策本部というのを設置し、そしてテロ対策のための施策につきましては講じているところでございます。この機関そのものも設置し続けているという状況でございます。  取組につきましての具体的な対策ということでございますが、まず水際で阻止する対策ということであります。特に、個人識別情報を活用した厳格な上陸審査等を実施していこうということで、これについて鋭意努力をしているところでございます。さらに、国際テロ組織を国内に浸透をさせないということでございます。水際で断固阻止するということの中で、そうした状況につきまして、内外の活動状況も踏まえた上で、国際テロに係る人、物、金の動向等を十分に情報収集しながら、また分析をしながら取り組んでいるところでございます。  二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックが首都東京で開催されるということで、世界から相当な観光客の皆さんが来日をされることが見込まれるということでございますので、この大会の成功のためにも、日本が安全、安心であるということの実態、それを守り抜いていくということで、今後もテロに対しましては怠りなく備え、効果的な対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  90. 谷亮子

    ○谷亮子君 大臣、ありがとうございました。  まず第一には、やはり国民の皆さんの命を守り抜くということで、水際での阻止を講じていただいているということが分かりました。やはり、今大臣からお話ございましたように、今後、オリンピック・パラリンピックの開催そして成功へ向けて、さらには政府が目指しております観光立国の実現に向けましても、更なる取組を、テロ対策そして治安の維持等に関しましても加速していっていただきたいなというふうにお願いを申し上げたいと思います。  そして次に、具体的なテロ対策について伺ってまいりたいと思います。今日は生物兵器に絞って伺いたいと思います。  生物兵器とは、そもそも細菌やウイルス、あるいはそれらがつくり出す毒素を使用し、人や動物に対して使われる兵器のことでございまして、主なところでは天然痘ウイルスや炭疽菌、ボツリヌス毒素などがございます。  本年八月二十八日に、アメリカの報道におきまして、地域の安全を揺るがす脅威を与えている組織の潜伏先に残されていたノートパソコンから、ペスト菌を使った兵器のつくり方を記した文書が見付かったと報じておりました。そしてまた、本年十月二十四日には、安倍総理と原子力協定を結んで、両国間での長期間にわたっての、安定的に核物質、原子力関連資機材及び技術を移転することが可能となり、また、これらの平和的利用が法的に確保されることになったばかりのトルコのイスタンブールで、アメリカ、フランス、ベルギーなどの五か国の総領事館に黄色い不審な粉末が入った封筒が届いていたということが判明いたしておりましたけれども、これは幸いにも生物兵器に使用されるような有害物質ではなかったと発表されておりました。  また、生物兵器につきましては、二〇〇一年のアメリカ同時多発テロ、九・一一後にアメリカ議会議員に対する炭疽菌テロ事件がございまして、このときもやはり多くの死傷者が出たということは皆さん御存じのとおりでございますけれども、今般、生物兵器についてのニュースが立て続けに報じられているということもございまして、また法務省におかれましても、そして国民の皆さんにおかれましても、さらには世界各国がこうした危機感を抱いているという現況にあるというふうに思います。  また、生物兵器につきましては、国連総会決議により採択された生物兵器禁止条約が一九七五年三月に発効いたしておりまして、生物兵器の開発、生産、保有等を包括的に禁止いたしております。また、我が国は一九八二年六月に同条約を批准し、二〇〇七年には国内法として、研究医療機関などが持つ病原体の管理強化を盛り込んだ改正感染症法、バイオテロ対策法とも呼ばれておりますけれども、こちらを制定しております。  そこで、我が国では、生物兵器の禁止、予防を通じまして国際社会の安全保障が高まるよう、生物化学兵器禁止の条約の専門家会合や締約国会合においてプレゼンテーションを行うなど積極的な取組を進めていただいているということは承知いたしておりますけれども、我が国の生物兵器に対する政府全体の取組の現状につきまして御所見を伺いたいと思います。
  91. 藤山雄治

    政府参考人藤山雄治君) 生物剤を用いてのテロへの取組どうかということでございますけれども、これは大量殺傷型テロということで位置付けて対策を進めてきております。具体的に申し上げますと、緊急医療体制の整備、医療関係者への情報提供、ワクチンの備蓄、医薬品の在庫、流通量の調査などを行っておりますし、警察のNBCテロ対応部隊あるいは陸上自衛隊の化学科部隊等が即応態勢を整えているという現状にございます。  そして、万が一、生物テロが発生をした場合ということでありますけれども、これは初動措置が非常に重要だということになってまいります。したがって、警察、消防、海保、自衛隊あるいは厚生労働省といったようなところが緊密に連携をいたしまして、被害者の救助、被害の拡大防止、さらには犯人の検挙といったようなことに当たるということはもとよりですけれども、国民に対して時宜を得た正確な情報の提供ということも行うこととしております。
  92. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  やはり、国民の皆様の命を守るということは国の責務でもございますし、そうした生物兵器によるテロを当然想定しておかなければならない現況にあると思いますので、ある意味、そうしたテロ対策に対する法律というものが成立をして、実効性ある法律として機能していくことを私も望んでまいりたいというふうに申し上げたいと思います。  そして、我が国では、主にバイオテロ対策関連研究費につきましては、時間が限られておりますので平成二十六年度の予算に絞って見ますと、厚生労働省が八億五千万円、そして文部科学省が五千三百五十一万円、防衛省が約五十一億円を計上してありました。また、この現状は、アメリカのバイオディフェンス、生物テロ防衛予算と比較してみたんですけれども、全く及ばないレベルでございました。アメリカにおけるバイオディフェンスの関連予算として生物テロ防衛として予算が付けられていましたけれども、平成二十六年度にこちらも絞って申し上げますと、約七千三百六十二億三千万円が計上してあります。  そこで、我が国といたしましても、今後、世界各国の取組や研究、そしてさらには法律とも照らし合わせた上で、今日本がどのような地位に位置付けられているのかということも考えますと、やはり今後、バイオディフェンスの、いわゆる生物兵器テロ対策の観点からも更なる取組を推し進めていくときに来ているのではないかなと考えますが、御所見を伺いたいと思います。
  93. 藤山雄治

    政府参考人藤山雄治君) 我が国におけるテロ対策の枠組みで申しますと、テロの未然防止に関する行動計画、これは従来からあったものですけれども、昨年の末には「世界一安全な日本」創造戦略というものを閣議決定いたしまして、こうした中でもバイオテロの対策についても記述をして、総合的な対策を進めるということで進めてきております。  ただ、御指摘ありましたとおり、このバイオテロ対策ですけれども、やはり非常に重要な課題であって、今後とも不断の検討をやはり重ねていくことが非常に重要だというふうに考えておりまして、政府としてもそのような取組を進めてまいりたいというふうに考えております。
  94. 谷亮子

    ○谷亮子君 今後も政府の取組に期待を申し上げてまいりたいというふうに思っています。  そして最後に、入国管理行政等の所管でいらっしゃいます法務省におかれましては、我が国でバイオテロを実行しようとする者の入国を阻止しようとするために、どのような入国審査及び管理を行っていらっしゃいますでしょうか、お伺いしたいと思います。
  95. 井上宏

    政府参考人(井上宏君) 入国管理当局におきましては、バイオテロを始めとするテロの未然防止のためには、テロリストの入国を水際できちんと阻止するということが最も重要であると考えております。  そこで、具体的には、旅券に記録された本人情報とか指紋、顔写真というような個人識別情報を活用いたしまして要注意人物リストとの照合を徹底いたしまして、上陸を拒否すべき外国人の上陸を確実に阻止するということがまず大前提でございます。  またさらに、その周辺のところで、不法行為をもくろむおそれのある外国人の情報をできるだけ広く早期に収集するということが重要でございまして、例えば本邦に入る航空機や船舶の長から提出される乗員や乗客の氏名等の情報、さらには諸外国で紛失や盗難に遭った旅券に関する情報等、そのような情報を集めましてこれを分析し、厳格な上陸審査に役立てているというところでございます。
  96. 谷亮子

    ○谷亮子君 やはり、そうしたテロをもくろむ者を水際で入国させないように対応策を実際に実行していくということでございまして、さらには、そうした渡航経路の確認というのが、ある意味その入国審査官の方たちの取組というのも非常に重要になってくると思いますので、更なる強化をお願いしたいというふうに思っています。  また、二〇〇六年に、国連総会におきまして、国連グローバル・テロ戦略が策定されております。この戦略を見てみますと、国家、地域、国際レベルでとるべき様々なテロ対策措置が盛り込まれておりましたので、やはり我が国といたしましても、更に予算を拡充していただきまして、その取組というものを実際に実行できるように取組を進めていただきたいということを申し上げまして、質問を終えたいと思います。  ありがとうございました。
  97. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     ─────────────
  98. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 公衆等脅迫目的犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。上川法務大臣
  99. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 公衆等脅迫目的犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  近年、テロの脅威は衰えることを知らず、昨年一月にアルジェリア民主人民共和国において、多数の犠牲者を出すテロ事件が発生したことも、記憶に新しいところであります。  国際テロ組織は国境を越えて活動しておりますので、テロ行為を抑止するためには、国際社会が幅広い分野において緊密に協調し、テロリストにテロの手段を与えないことが重要であります。  我が国は、平成十四年に公衆等脅迫目的犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律を制定し、公衆等脅迫目的犯罪行為の実行を容易にする目的で資金を提供する行為等を処罰する規定を設けておりますが、政府間の枠組みであって各国にテロ対策の推進を求めるFATF(金融活動作業部会)からは、平成二十年の対日審査において、資金以外のいわゆる物質的支援の提供、収集やテロリスト以外の者による資金等の収集等が処罰対象とされていないなどテロ対策が不十分であるとの評価を受け、その後も、改善措置が進捗していない旨厳しく指摘されているところであります。  我が国としましても、テロを許さない国際環境の醸成に努めていくことが必要であり、この法律案は、そのような観点から、FATFの指摘対応し、資金以外の公衆等脅迫目的犯罪行為の実行等に資する利益の提供等を処罰対象とするなど、所要の法整備を行おうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げます。  第一は、資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益についても、提供罪等の客体として処罰対象とするものであります。  第二は、公衆等脅迫目的犯罪行為の実行を容易にする目的で、これを実行しようとする者に資金等を提供しようとする者(一次協力者)に対し資金等を提供する行為及びその提供を受ける行為に係る処罰規定を新設するとともに、一次協力者による資金等の提供行為の実行を容易にする目的で、当該一次協力者に対し資金等を提供する行為及び一次協力者がその提供行為の実行のために利用する目的で資金等を提供させる行為に係る処罰規定を新設するほか、公衆等脅迫目的犯罪行為の実行のために利用されるものとして資金等を提供する行為及び提供させる行為に係る処罰規定を新設するものであります。  このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、この法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  100. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時七分散会