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平木大作君
ODA調査派遣第三班について御
報告をいたします。
当班は、去る八月十九日から二十九日までの十一日間、
フィリピン共和国、
ベトナム社会主義共和国、
モルディブ共和国及び
カンボジア王国に
派遣されました。このうち、
モルディブ共和国は
海外派遣調査の初
訪問国であります。
派遣議員は、
団長の榛葉賀津也議員、猪口邦子議員、
島村大議員、
儀間光男議員、そして私、
平木大作の五名であります。
本日は、
調査を通じて得られました
所見につきまして、その
概要を御
報告いたします。
最初に、まず
フィリピン共和国について申し上げます。
フィリピンへの
援助では、投資促進を通じた持続的
経済成長、脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定、ミンダナオにおける平和と
開発が
重点分野とされております。
まず、投資促進を通じた持続的
経済成長及びミンダナオにおける平和と
開発についてでありますが、バリサカン国家
経済開発庁長官から、マニラ
首都圏における交通インフラの
整備に対する
支援やミンダナオ島におけるロジスティック
整備への
支援に対する
期待が示されました。引き続き、両国間の十分な対話の下、
ニーズに即した
支援の検討が必要と考えます。
次に、脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定の
関係として、フィリピン気象天文庁を訪問しました。同庁に関しては、二〇一三年十一月の台風ヨランダ災害の教訓を踏まえ、適切な防災情報を迅速、的確に住民に伝達し、その生命、身体、財産を守るための
支援を図ることが
課題になると考えます。
また、台風ヨランダにより甚大な被害を受けたレイテ州を訪問し、
我が国が復旧復興に関する
支援を行っているタクロバン空港、東ビサヤ
地域医療センター、パロ・アラド小学校を
視察しました。これらの施設の復旧復興については、現在は
計画段階であり、復興の進捗を実感できる段階には至っていないように感じられました。被災地の迅速な復旧に向け、
支援の一層の加速化に留意すべきであります。
フィリピンの持続的
発展のためには、交通インフラの
整備や災害リスクの脆弱性の克服が鍵と考えられます。
我が国の
ODAで
建設した小学校は台風ヨランダの強風でも屋根が飛ばされず、フィリピンでは
我が国の
ODAの質に対する評価も高まっているとのことであります。引き続き、
発展の鍵となる事項に軸を置いた
援助を進めるべきと考えます。
次に、
ベトナム社会主義共和国について申し上げます。
ベトナムへの
援助では、成長と競争力強化、脆弱性への対応、ガバナンス強化が
重点分野とされています。
このうち、成長と競争力強化に関連し、
我が国が
建設等の
支援を行っているハノイ市環状三号線及びノイ
バイ国際空港を
視察しました。道路交通量、航空旅客輸送量とも限界に達しつつあり、これらの
建設、
整備は重要であります。本事案を含め、時宜にかなった
支援の実施が求められます。
次に、JICAの中小
企業海外展開
事業により、ベトナムにおいてガソリンスタンドの二重殻タンクの普及を目指す玉田工業の
事業実施サイトを
視察しました。普及のためには法制度の
整備まで視野に入れた
取組が必要とのことであり、
我が国の中小
企業が
途上国に
進出する上で公的セクターが力を発揮すべき分野は多岐にわたっていることを改めて
認識しました。こういった
観点を含めて、中小
企業への
支援を引き続き積極的に進めるべきであります。
脆弱性への対応に関連して
視察したワクチン・生物製剤研究・製造センターでは、
我が国の麻疹風疹混合ワクチンの製造
技術移転により、
我が国と同水準のワクチン製造体制の
整備を図っています。しかしながら、接種するまでの間、ワクチンを低温で輸送するコールドチェーンが確立していなければ、ワクチンの有効性が損なわれる懸念もあります。物流全般の
改善が
課題となりますが、
ODAの実施に当たっては、一過程に対する
援助にとどまらない、より広がりを持った
支援を検討することが求められると考えます。
ところで、
我が国の
ODAに関し、ベトナムでは二度にわたり不正事件が発生し、ガバナンス強化が強く求められております。これに関連し、ブイ・クアン・ヴィン
計画投資
大臣から、隙間のない法的体制を構築するため、既に公共投資法、入札法、投資家選定法の改正に取り組んできたこと、モニタリング体制を強化するため、
案件ごとに会計検査を実施すること、加えて、不正に対して厳しい処罰を科すようにする旨の発言を得ました。ベトナム側の今後の対応を注視していく必要があります。
また、ホー・スアン・ソン外務次官から、南シナ海をめぐるベトナムの中国への対応等について発言がありましたが、
我が国とベトナムは、
経済面のみならず
政治面でも利害を共有することが多く、ガバナンス強化に向けた
支援を検討しながら、
ODAによる
支援を進めることが重要であります。
次に、
モルディブ共和国について申し上げます。
モルディブへの
援助では、地球温暖化、気候変動による海面上昇の
影響を直接受ける小島嶼国という特殊事情を踏まえた気候変動対策分野、教育・保健を始めとする
社会開発分野が
重点分野とされています。
まず、気候変動対策分野に関し、ヤーミン大統領や
政府関係者からは、海面水位の上昇により多くの島で海岸浸食が深刻な問題となっているとの発言がありました。
我が国とモルディブとの間で緊密な対話を続けながら、より効果的な
援助の在り方を検討していくことが肝要であります。
次に、教育・保健を始めとする
社会開発分野に関し、
我が国が
建設の
支援を行ったヒリア小・中学校を
視察しました。なお、同校の屋上には、気候変動対策分野に関連する
ODAとして、
我が国が
支援を行ったクリーン
エネルギー促進
計画による太陽光パネルが設置されています。クリーン
エネルギー促進
計画では、つくった電気を自ら学校で使用することはできませんが、これを使用できるようにした方が、
子供の
環境学習に寄与し、国民の関心を高めていく上でより有効とも考えられます。
我が国の
支援により設けられた複数の施設に関し、
援助先の
政府と十分に調整しながら、より有機的、効果的な
活用が図られるよう留意していくことが重要であります。
また、二〇〇四年のスマトラ沖大地震・インド洋大津波に際し、
我が国の
ODAにより
建設され、首都マレ島を甚大な被害から守った護岸を
視察しました。これは、
我が国の
ODAが大災害から人命を救い、その品質の高さを世界に示した格好の事例であり、このことを風化させないことが、品質の高さという
我が国の
ODAの特性を被
援助国に強調していく上でも重要であります。護岸に設置された
ODA銘板に細かい穴が空き、傷みが生じていましたが、これらの点にも配意していくことが
ODAの
実績を風化させないためにも効果的であると考えます。
さらに、ヤーミン大統領からは、過密な首都から若者を移住させ、そこで若者の健全な育成を図るユースシティを
建設すること等への
協力要請を受けましたが、会談の中で、中国にも同様の要請をしている旨の
示唆がなされました。
事業の有用性や将来性を慎重に精査し、いたずらに中国や韓国などの国々と
援助を競い合うことは慎まなければなりませんが、今後とも、
我が国ODAのこれまでの
援助の経緯や、その高い品質などの特性を粘り強く浸透させていくことが必要であります。
なお、モルディブはシーレーンの
観点からも極めて重要な国と位置付けられています。このことも含め、効果的な
ODAの実施に向けた検討が求められております。
最後に、
カンボジア王国について申し上げます。
カンボジアへの
援助では、
経済基盤の強化、
社会開発の促進、ガバナンス強化が
重点分野とされています。
このうち、
経済基盤の強化に関して、国道一号線のメコン川渡河地点に
我が国の
支援により架橋を行っているネアックルン橋梁
建設現場を
視察しました。その開通は、
アジアハイウエーの一部としてメコン
地域全体の物流、交通、
交流の円滑化や
経済発展に寄与するものであります。今後は、ネアックルン橋梁部分以外の国道一号線の未
整備区間の
整備への
支援を進め、その効果が一層発揮されるよう図るべきであると考えます。
また、
社会開発の促進に関して、カンボジア地雷除去センターシェムリアップ事務所において、地雷の除去訓練を
視察しました。カンボジアでは、二〇一九年までに対人地雷の完全除去を目指していますが、カンボジア
政府が対人地雷除去
活動をより効果的、効率的に行えるよう、地雷除去
活動の更なる
支援についても検討すべきであると考えます。
さらに、カンボジアの母子保健の臨床、研修、行政機能の拠点である国立母子保健センターを
視察しました。カンボジアは、周辺
諸国と比べて高い乳児死亡率、五歳未満児死亡率及び妊産婦死亡率の低減を目指しています。そのためには、カンボジア全土で質の高い助産ケアが行われるようにすることが必要であり、地方における助産師の研修システム
整備のため一層の
支援を図ることが重要であります。
また、修復に関する
支援を行っているアンコール遺跡を
視察しました。アンコール遺跡については多くの国が修復に
参加していますが、修復に関する諸外国間の調整が十分に図られていないとの
意見も聞かれました。
我が国は、カンボジア人
技術者の育成を重視する
支援を実施していますが、
我が国の
支援方法とその
意義をより広く周知するとともに、カンボジア
政府が
各国間の調整を一層主体的に行うことができるよう、所要の
支援を検討すべきであると考えます。
カンボジアの
産業は零細な農業が主体であり、米が主要産品でありますが、食品加工を含めた製造業が
発展していないため、逆に米加工品を含めた多くの食料品、生
活用品を輸入に頼っています。
現地日本企業の
関係者からは、
ODAによる製造業の育成
支援の
必要性について多く
意見が寄せられました。
今後とも、
ODAを有効に
活用し、カンボジアがこれまで以上に主体性を持って諸政策に取り組めるよう促していくことが重要と考えます。
今回、東南
アジア、南
アジア諸国のうち四か国を訪問いたしましたが、同じ東南
アジア、南
アジアの
地域といっても、その国情はまちまちであります。
我が国の
ODAを含む
支援は、
関係者の尽力により高い評価を得て効果を上げているところでありますが、一層の効率的、効果的な
支援を進めていくためには、被
援助国との積極的な対話等を通じ、その国の特性に応じた
ニーズの一層の深掘り、掘り起こしを図っていくことが重要であることを強く
認識いたしました。
今回の
調査に当たり、
外務省、JICA、在外公館、JICA
現地事務所、
訪問先の
皆様には多大な御
協力をいただきました。改めて
感謝の意を表しまして、
報告を終わります。