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2014-11-18 第187回国会 参議院 外交防衛委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年十一月十八日(火曜日)    午後一時十四分開会     ─────────────    委員異動  十一月十三日     辞任         補欠選任      白  眞勲君     北澤 俊美君  十一月十四日     辞任         補欠選任      江島  潔君     吉田 博美君  十一月十八日     辞任         補欠選任      佐藤ゆかり君     豊田 俊郎君      松山 政司君     堀内 恒夫君      吉田 博美君     山下 雄平君      福山 哲郎君     金子 洋一君      石川 博崇君     新妻 秀規君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         片山さつき君     理 事                 北村 経夫君                 佐藤 正久君                 三木  亨君                 大野 元裕君                 荒木 清寛君     委 員                 宇都 隆史君                 小坂 憲次君                 末松 信介君                 豊田 俊郎君                 堀内 恒夫君                 松山 政司君                 山下 雄平君                 小川 敏夫君                 金子 洋一君                 北澤 俊美君                 小西 洋之君                 福山 哲郎君                 新妻 秀規君                 田中  茂君                 小野 次郎君                 井上 哲士君                 糸数 慶子君    国務大臣        外務大臣     岸田 文雄君        防衛大臣     江渡 聡徳君    副大臣        防衛大臣    左藤  章君    大臣政務官        外務大臣政務官  宇都 隆史君    政府特別補佐人        内閣法制局長官  横畠 裕介君    事務局側        常任委員会専門        員        宇佐美正行君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       武藤 義哉君        内閣官房内閣参        事官       木村 直人君        外務大臣官房参        事官       島田 順二君        外務省総合外交        政策局軍縮不拡        散・科学部長   引原  毅君        外務省北米局長  冨田 浩司君        文部科学大臣官        房審議官     田中 正朗君        資源エネルギー        庁電力ガス事        業部長      多田 明弘君        防衛省地方協力        局長       中島 明彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○原子力損害の補完的な補償に関する条約締結  について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院  送付)     ─────────────
  2. 片山さつき

    委員長片山さつき君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、白眞勲君及び江島潔君が委員辞任され、その補欠として北澤俊美君及び吉田博美君が選任されました。  また、本日、石川博崇君、佐藤ゆかり君及び吉田博美君が委員辞任され、その補欠として新妻秀規君、豊田俊郎君及び山下雄平君が選任されました。     ─────────────
  3. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  原子力損害の補完的な補償に関する条約締結について承認を求めるの件の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣官房内閣審議官武藤義哉君外七名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 原子力損害の補完的な補償に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 三木亨

    三木亨君 自由民主党の三木亨でございます。  本日は、原子力損害の補完的な補償に関する条約議題となっておりますので、これについて質問させていただきたいと思います。  本条約は、原子力損害に関する国際的な賠償制度でございますけれども、一部の報道とか、あるいはネットの話の中では、この条約はあたかも原発輸出を推進するための条約であるという論調もございます。  そこで、まず最初に、政府に対して、本条約は一体どのような内容の条約であるのか、そしてその根底にある条約そもそもの役割とは何なのかということについて十分な説明をいただきたいと思います。また、それに加えまして、本条約我が国締結することについてどのような意義があるのか、委員会条約審査出発点として、本条約締結意義というものを政府の方から御説明いただきたいと思います。
  7. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) CSC条約意義につきましては、大きく三つあると考えております。  第一は、国際的な原子力損害賠償制度構築に寄与することができるということです。こうした制度構築重要性につきましては、IAEA議論においても累次確認されています。福島第一原発当事国としてこうした国際的な賠償制度構築へ貢献すること、これは我が国にとって責務であると考えています。我が国CSC締結し、その早期発効に寄与することによって、こうした制度構築に貢献することができると考えています。  そして、第二の意義としまして、原子力事故時の賠償充実させることができるということが挙げられるかと存じます。事業者への責任集中事業者への無過失責任が定められることによって、被害者の迅速な救済が図られます。越境損害に対しましても、自国被害者に対して公平な賠償が確保されますし、一定額を超える場合には他の締約国から拠出金が得られる、原資が補填される、こういったメリットがあると考えます。  そして、第三の意義としましては、裁判管轄権集中、あるいは事業者への責任集中、こうした各国共通ルールを策定することによって法的予見性を高めることができる、これが挙げられるかと存じます。今後、福島第一原発廃炉汚染水対策との関連においても、知見を有する関連企業活動環境整備に資する、こういったことが考えられると存じます。  以上、大きく三点、このCSC条約意義として挙げることができるかと存じます。
  8. 三木亨

    三木亨君 ありがとうございます。  そして、もう一つ、この条約は一九九七年九月のIAEA外交会議において採択されたというふうに伺っております。じゃ、なぜ今なのかということがやはり疑問に湧いてくるかと思います。  そこで、条約採択当時のことをお伺いさせていただきたいと思いますけれども、本条約賛成多数で採択されたというふうに伺っております。これに反対票を投じた国はどこで、その反対がどのような理由であったのかということ。  そしてまた、日本条約採択には賛成票を投じているんですけれども、現在に至るまで署名をしていないという事実がございます。本条約署名国には幾つかのアジア太平洋諸国、含まれますけれども、この地域における国際的なこういった事項についての枠組み構築というものは本当に重要なことだと思っています。先ほど政府から、大臣の方から締結意義というのを伺いましたけれども、それにもかかわらず、我が国がこれまで署名に至らなかった理由というものをお聞かせいただきたいと思います。
  9. 引原毅

    政府参考人引原毅君) お答え申し上げたいと存じます。  まず、CSC採択当時の経緯でございますけれども、委員指摘のように、一九八六年のチェルノブイリ原子力事故というものを踏まえまして、原子力損害賠償について再検討する機運が世界的に高まったと。これを受けまして、九〇年代に入って、IAEAにおいて原子力事故時の損害賠償充実等目的としてCSC起草作業が行われました。そして、九七年九月のIAEAにおいて開催された外交会議で圧倒的多数で採択されたということでございます。  この会議において、拠出金制度構築とか、あるいはその負担の在り方ということで議論がなされた結果、この採決に当たって反対あるいは棄権した国もごく少数あるというふうに伺っておりますけれども、この採択当時、本条約にどこが反対したか、あるいはその反対理由等についてはこの会議の外に公表されておりませんので、それについては、恐縮でございますが、お答えを差し控えたいと思います。  我が国対応についての経緯でございますけれども、我が国といたしましては、CSC採択された後、国際的な原子力利用状況等を踏まえつつ、国際的な原賠制度への参加ということで検討を行ってまいりましたが、他方、当時、我が国原子力損害賠償制度が他の先進諸国等と比較して既に遜色ない水準であったというようなこと、あるいは、我が国が他の原子力利用国と陸続きでなくて、越境損害というものへの対応が現実的な課題として顕在化していなかったというようなことから、直ちに原賠制度の国際的な枠組み参加すべきという判断はするに至っていなかったわけでございますが、その後、アジアにおける原子力利用拡大が著しく進展したと。それから、CSCについて言えば、我が国締結すれば発効するという状況がつくられた。そしてさらに、福島第一事故、この発生を受けまして、IAEA等国際場裏において国際的な原賠制度構築することの一層の重要性ということが累次確認されてここに至った。  こういうことについて、改めてCSC締結可能性について検討を進めました結果、被害者の迅速かつ公平な救済賠償充実を図ること、あるいは国際ルールの適用によって関連企業活動環境を更に整えること、こういったことを念頭にCSC締結するという判断をするに至ったわけでございます。  今回、ここに御承認をいただき我が国CSC締結するということになった場合には、国際的な原子力賠償制度の更なる強化に向けて近隣諸国への締結働きかけ等にも努めていきたいと、そういうふうに存ずるところでございます。  以上でございます。
  10. 三木亨

    三木亨君 ありがとうございます。  まず、締結意義というものと、また、なぜ今なのか、今締結する意義というものが何なのかということ、この二点についてまずお聞きいたしました。  これからは少し各論の方に移っていきたいと思うんですが。  本条約やほかの原子力賠償責任に関する条約について、ほかにもございますけれども、これについては政府も御存じでございましょうし、また、締結の是非というものを検討された経緯もあるだろうというふうに思います。ただ、これまでの国際社会の流れというものを見てみましても、こういった賠償責任条約必要性というものは十分には認識されてはいたんでしょうけれども、現実味を持って恐らく考えられてきた機会というのは少なかったんだと思います。ただ、チェルノブイリ原発事故なんかの機会に、国際社会でもこういった機運は高まってきたでしょうし、また、我が国においても東日本大震災、それに伴う福島第一原発事故というものがございましたので、こういった点に関しても、我が国がこの原子力事故について国際的に協調を示すような姿勢を示すということは、本条約締結することによってそういった態度が示されるということについては大変意義があると思うんで、私はこの条約締結については賛成したいと思います。  ただ、本条約の性格から、本条約が実際に適用されて運用されるのは、実はあってはならない原発事故が起こったときだというふうに思います。そのときになって初めて、条約の解釈や何かで、これはどうなっているんだろうというふうにもめても、本当に遅きに失した、何のために締結しているのか分からないということになりますので、そこで本条約我が国関係法原賠法などの関係法などの関係について幾つ質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、原子力損害というものの定義について、本条約には原子力損害という言葉が定義されていますけれども、どのような損害によって本条約賠償補償が行われるのかという、その範囲がこの条約の中では定められております。そして、この原子力損害定義は大きく言って二つ分類されておりまして、一つ目が、人の死亡財産滅失など実際に条約の方に明記されているもの、二つ目が、各国法令によってその範囲が決定されるとした、例えば経済的損失環境の悪化、回復措置費用であるとか防護措置費用であるとかこういったもの、この二つに分かれると思います。このうち後者の方は、各国法令によってその範囲が決定されているものですけれども、権限のある裁判所が属する国の法令にのっとって原子力損害範囲が決定されるので、それはそれで各国それぞれのルールに従うことになるんだろうと思います。  しかし、この条約に記された一つ目分類条約本体に明記された部分で、人の死亡又は人的な損害、あるいは財産滅失又は損傷に何が含まれるのかということについては、締約国間で共通理解が必要になるかと思います。すなわち、例えば慰謝料逸失利益など、賠償対象になるのかならないのか考慮を必要とするものがここに含まれるのかということ、それとも各国法令で決定されるとした二つ目分類に入って各国ルールに従うのか、どちらの方のルールで決めていくのかということ。本条約の一条(f)の(1)と(2)で定義された原子力損害の中には、具体的にはこれ何が該当するのかということ。これを我が国はどのように解釈して今回の条約締結しようとしているのか、お伺いしたいと思います。
  11. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 今委員から御指摘いただきましたように、原子力損害定義ということで(1)から(7)まで並んでおりますが、そのうちの(1)が人の死亡又は人的な損害二つ目財産滅失又は損傷ということであります。  まず、これらの二つについてどういったものが含まれるかでございますけれども、もちろん具体的に何が該当するかということは、個々の事情を離れて一概に判断することは難しいわけでございますが、例えば人の死亡又は人的な損害に該当する可能性のあるものとしては、例えば体に対する障害であったり、精神的な損害であったり、それから、財産滅失又は損害に該当する可能性があるものとしては、例えば滅失した家屋の交換価値であるとか損傷した車の修理代等、そういったものが例えば含まれるかなということでございます。  委員から特にお尋ねのございました、一つ慰謝料ということでございますけれども、これは精神的な損害ということで、今申し上げました人の死亡又は人的な損害に含まれる可能性があるであろうというふうに考えております。それから、いわゆる逸失利益というものにつきましては、これはそのものの性質によって、人の死亡又は人的な損害、あるいは財産滅失又は損傷から生じる経済的損失、これは第(7)項でございますけれども、こういったところに含まれる可能性があるというふうに考えるところでございます。  以上でございます。
  12. 三木亨

    三木亨君 ありがとうございます。  今お聞きした原子力損害の中で、各国法令によってその範囲が決定されるとした方の原子力損害のことですけれども、実際に事故が発生した場合に賠償対象となる原子力損害が具体的に何を指すのかということ、これは各国ルールに従うことに当然なるかと思います。ということは、日本で認められるものがほかの国では認められないということ、あるいは逆に日本で認められないけれども他国では認められると、そういったケースも存在する可能性がございます。  本条約の特色であります拠出金による補完的な制度一定額拠出各国に求めるものですけれども、たとえ各国法令によって決定された原子力損害範囲が異なったとしても、ここはうちの定義の中の原子力損害範囲じゃないからといって言わば拠出金を拒絶されるとか、あるいは逆に拒絶されないであるとか、あるいは逆に拒絶できないというふうな、そういった理解でよろしいのでしょうか。その点、お聞きしたいと思います。
  13. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 今委員から御指摘いただきましたその定義についての各国法令との関係でございますけれども、このCSC本体第一条(f)(1)から(7)まで並んでおります原子力損害の具体的な項目の中で、委員指摘のとおり、第(3)項から第(7)項については、すなわち(1)の人の死亡又は人的な損害、あるいは(2)の財産滅失又は損傷を除く(3)から(7)までにつきましては、条約起草の際に、交渉参加国の合意によって、その具体的な範囲締約国法令の定める範囲とする、この点は各締約国法制度に委ねられるということになったわけでございます。  その上で、この(3)項から(7)項までに規定される原子力損害に係る拠出金についてでございますけれども、これは実際に原子力事故が発生して、その事故についての裁判管轄権を有する、その締約国法令において認められる範囲原子力損害についてこの拠出金が支払われるという、それはそういう統一されたルールがございますので、拠出金が拒絶される、あるいは何か問題が起きるということは基本的にない。事故が起きた国の裁判管轄権を有する締約国法令で決まるということで御理解いただければと存じます。
  14. 三木亨

    三木亨君 済みません、ありがとうございます。  次は、原賠法との関わりについて最後にお聞きしたいと思います。  少額損害賠償措置を超える賠償額の確保という点について、我が国の持つ原子力施設、そして核物質については、その規模性質など様々なものが存在いたします。本条約においては、原子力施設核物質に起因する事故によって見込まれる影響を考慮して、原子力事業者に対して、損害賠償額の設定についてより低い金額を設定することができるというふうにされております。この点について、日本原賠法においては、政令で定める原子炉運転等については少額損害賠償措置をとることを認めていることと整合性が取れているといいます。しかしながら、本条約においては条件が付されておりまして、その一つに、賠償請求を満たすために十分でない場合には、その国が設定した保証の上限まで必要な資金を提供することを確保する必要がございます。  我が国が設定している少額損害賠償、すなわち二百四十億円とか四十億円と、条約上の義務とされる約四百七十億円との間には差額が生じておりますけれども、万が一にも我が国が設定した少額損害賠償額を超えるような賠償額が発生した場合、条約違反とならないのか、またその差額はどのように補填されるのかということ、この一点について最後政府に確認したいと思います。
  15. 田中正朗

    政府参考人田中正朗君) お答え申し上げます。  我が国におきましては、原子力損害賠償法に基づきまして、万々が一に原子力損害を起こしてしまった場合の賠償資金を確保するために、一定額保険等措置することを原子力事業者に義務付けておりますけれども、原子力事業者はその保険等の額にかかわらず無限責任が課されておりまして、CSCで求められている損害賠償を確実に行うことが確保されていると解釈しているところでございます。  なお、賠償すべき額が措置を義務付けられております保険等の額を超え、原子力損害賠償法目的を達成するために必要と認められる場合には、原子力損害賠償法第十六条に基づきまして政府は援助するものとされておりまして、国もその責任を果たしていくこととしているところでございます。
  16. 三木亨

    三木亨君 ありがとうございました。  終わります。
  17. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党の小川敏夫でございます。  まず、本条約について質問させていただきます。答弁は大臣でも政務官でもどちらでも結構でございます。    〔委員長退席理事佐藤正久君着席〕  この条約見まして、国民という立場から見てどういう利益があるんだろうというふうに考えました。我が国国民という視点から見ると、事業者でもメーカーでもありませんから、外国原子力事故によって我が国国民被害を負った場合に、その賠償請求ができるという場面で国民視点からはこの条約関係するのかなと思うわけでありますが、外国事故我が国国民被害に遭うというと、相当に規模が大きな大事故でなければ、そういう可能性はほとんどないと言っていいと思うんです。そうした観点で見ますと、仮にそういうことがあった場合に、国民被害が完全に補償されているのかなと思うと、何かそうでもないように思うんですがね。  それで、ちょっと一つ想定例としてお尋ねしますが、基本は、外国事故の場合ですが、事業主体がまず責任を負う、賠償責任を負うと。それでも足らない場合があり得る。その場合には、その国の責任において、つくった仕組みにおいて、三億SDRですか、の範囲で、つくった仕組みにおいて補填すると。なおかつ、それでも足らなければ、今度は条約加盟国拠出し合ったお金で補填するということになるわけですが、それでも足らなかった場合にはどうなってしまうんでしょうか。  つまり、事業体支払能力がもうないと。その事業体が帰属する国が措置した仕組みお金条約では四百何十億円ですか、これも全部使い切ってしまうと。足らなければ拠出国が補填すると、百何十億ですか。しかし、東電の事故を見ればいいように、一兆円だ、十兆円だというときには全然足らない。足らない場合に、その足らない部分はどうも取りっぱぐれになっちゃうような気もするんですが、ここら辺の扱いはどうなるんでしょうか。
  18. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) お答え申し上げます。  日本以外の周辺諸国において、仮にということでしたが、事故が起こった場合、その賠償額を大きく、拠出金との合計額を上回った場合の御質問をいただきました。  原子力事故による損害額が、賠償措置額拠出金、これの合計額、これを上回った場合については、これは各国国内法令に従って対応がなされるということになっております。したがって、日本が仮に行った場合については、日本無限責任、全て事業者がこれ対応するということですので、我が国原子力事業者事故による損害額条約上の賠償措置額拠出金額合計額を上回った場合については、我が国国内法に従って、上回った額全額について当該事業者賠償責任を負うこととなっております。
  19. 小川敏夫

    小川敏夫君 いや、ちょっと何か仕組みが違うように思うんだけど。まず事業主責任を負うのは当たり前なんですよ、一時的に事業主責任を負うわけですよ。だけれども、この仕組みは、事業主責任を負い切れないときの仕組み構築している条約じゃないんですか。  義務的な賠償措置額というのがありますよね。これは三億SDRですか、これは、事業主賠償するよりも先にこのお金賠償するんですか。そうじゃなくて、事業体ですか、事業者と言っているね、事業者がまず賠償すると。でも、事業者賠償し切れない場合にこの仕組みを使うんじゃないんですか。事業者賠償しないで、まずこの賠償措置お金を使うんですか。
  20. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) お答え申し上げます。  この本条約CSCにおきましては、各国一定額以上のまず賠償措置というのを義務付けております。それと同時に、条約の規定に基づいて、事故発生国が整備している最低賠償措置額を超える場合については、全ての締約国から一定のルールに従って一定額拠出金を負担してこの賠償を補完するという制度になっております。
  21. 小川敏夫

    小川敏夫君 だから、原子力事業者が過失の有無を問わず賠償責任集中して負うわけでしょう。だから、原子力事業者が当然、その事故を起こした本人なんだから、一番基本的な賠償責任者だから、事業者がまず責任を負うわけですよ。それで、事業者責任を負って、事業者が支払い切れる、だったら事業者に全部払わせればいいので。  じゃ、私が聞いているのは、この義務的な賠償措置額というのは、事業者が払えなくなった場合に、この被害者を保護するために、こういう締約国においてそういう措置を設けなさいと、こういう仕組みじゃないんですか。つまり、事業主がまず先に払って、払えるんだったら事業主が払うんじゃないんですか。
  22. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) お答え申し上げます。  今委員がおっしゃったように、事業者にまずメーンの責任がございますので、事業者がまず払うということになっておりますが、国として最低これだけは払いなさいというこの三億SDRという額が決まっておりますので、事業者が払えなければ国がそれをしっかりと支払うことになる、その義務が生じるというのがこの条約でございます。  ちなみに、その上で、日本におきましては、毎年事業者お金を政令において積み立てさせて、事業者が払う形を国内の政令において補完しているという仕組みになっております。
  23. 小川敏夫

    小川敏夫君 それで、だから私が聞いたのは、まず事業主が一時的に責任を負うと。しかし、我が国の東電のように大きな事業主ばかりがあるわけじゃないので、もっと小さい事業主もあると、ですから賠償額を支払えないと。すなわち、まあ一般の言葉で言えば倒産ですよね、もう支払不能と。賠償額を到底払い切れないで倒産してしまう支払不能状態になったという場合に、このまず義務的な賠償措置額があって、それでも足らない場合には契約加盟国拠出した拠出金による損害賠償があると思うんです。だけれども、金額的には何百億円という単位です。この賠償措置額拠出金による補填額もね。  私が聞いているのは、東電事故のように、一兆円だ、十兆円だという規模被害が生じた場合には到底足らないんじゃないですかと。ですから、この一番最後の、拠出金による、加盟国が支援して拠出金を出して賠償額を補填するけれども、それでも足らなくて支払えない分はどうするんですかと聞いているわけです。どうなっちゃうんですかと聞いているわけです。
  24. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) 今おっしゃった部分につきまして、義務的な賠償措置額、それに各国の集める拠出金、これの合計額を超えた場合については補填されないんではないかというお話ですけれども、仮に日本事故を起こした場合については、これは原賠法において国内法で担保されますので、それは措置をされるということになります。  しかしながら、日本周辺諸国がもし事故を起こした場合については、この条約に基づいてですから、義務経費としては、元々その国が支払う三億SDRの義務的な賠償措置額に合わせて各国拠出金による損害補償、ここまでしか義務としては補填はされないということになっております。
  25. 小川敏夫

    小川敏夫君 だから、補填されないというのは、すなわち取りっぱぐれということですよね。    〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕  それで、今政務官がおっしゃられたように、我が国法制度においては原賠法があって、事業者が支払えない場合には国が支援するとなっておるわけです。だから、国が支援するというんだから、国の責任において被害賠償はするということになっている。ですから、その範囲においては取りっぱぐれの可能性はかなり低い、国が支援するんですから。でも、それは我が国原賠法なわけですよ。  じゃ、外国に、我が国原賠法と同じように、事業主がもう支払えないと、それから、賠償措置額でも拠出金による補填でも足らない場合にその国が支援するという法律は、この条約では求めていないわけですよね、求めていないわけですよ。  そうすると、外国人が、我が国原発事故によって補償する場合には、我が国が支援して補償するわけだから、かなり損害補償されると思うんですよ。だけれども、外国の場合には、その外国の国が支援するという法律がなければ、結局、小規模事業主体が倒産しちゃって、数百億円のこの条約に定めた措置額と拠出金というもので間に合わなければ取りっぱぐれになっちゃうと。  そうすると、この条約では我が国が損すると思うんですよね。やはり我が国が、そして国が支援するといって手厚く、原子力事故損害を生じた人、外国人、内国人を問わず、内外を問わず、被害者補償をより完璧にするという我が国法制度があるけれども、外国にはそれを求めていないとなると、外国事故日本被害に遭っても取りっぱぐれが生じちゃうと。外国は何の支援もしてくれないということになるから、ちょっと不公平で、我が国国民が理論上損するんじゃないかなと、こんなふうに思ったものですからね、それで私は聞いたわけで。  日本人が、海外の国の原子力事故によって、巨大な原子力事故によって損害を被った場合に、事業主体は倒産しちゃって、しかもこの条約で定めた数百億円の金額じゃ足らない場合にどうするんですかと、結局取りっぱぐれになっちゃうんじゃないですかと。私は取りっぱぐれになっちゃうと思うんですよ。その確認をちょっとしたいんですが。
  26. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) まず前提としまして、国籍云々にかかわらず、どこでその事故に遭ったかというお話をしますけれども、日本の国内、領域、領土内でその損害を受ければ、日本国内法において、外国人であってもそれは担保されることになりますし、我々日本人が外国の領土内において事故に遭えば、もちろんそこの国の国内法において、その法の枠組みにおいて補償されることになります。  今委員がおっしゃったのは、国境をまたいでといいますか、越境した形で被害を受けたときに取りっぱぐれがあるのではないかというお話ですけれども、この条約にもし加盟をしていなければという前提でお話をいたしますと、この条約一つの特徴であります無過失責任が適用されるという、これがなくなりますので、仮に隣国の大きな原子力災害で我が邦人が被害を受けて、まず我が国の裁判所にこれを起訴することもできます。もし仮に我が国の裁判所でこれを立件して、裁判で勝訴を勝ち得るとしましたら、無過失責任が適用されませんので、自分たちでこれを科学的に立証をしなければならないという義務が発生するというのが非常に難しいところです。仮にこれ勝訴したとしても、今度はその勝訴の内容について他国がそれを具体的に執行するかどうかというのは、これまた別の話になってしまいます。  逆に、向こうの国の裁判所にこれも提訴することはできますが、現行においてはこのCSCにおける適用地というのはありませんので、それは裁判をやってみなければ分からないということになってしまいますので、この条約に入らない方がよりいい、入ったら取りっぱぐれるというのは若干誤解があるのではないかなというふうな認識でございます。
  27. 小川敏夫

    小川敏夫君 いや、大臣、私の質問の趣旨を勝手に取り違えて誤解があると言われちゃ困るんですよ。大臣が答弁された後半の部分は、私の質問には全然関係していませんから。失礼しました、政務官でございます。  政務官が今の答弁の最初に言いましたよね。我が国原子力事故があった場合に被害を受けた外国人は、最終的には国が支援するんだから、補償されるわけですよ。ところが、外国日本人が被害に遭った場合に、その国の政府が支援するという法律がなければ、その国の政府は、その国は賠償してくれないわけですよ、賠償の支援してくれないわけですよ。そうすると取りっぱぐれちゃうから、だから、我が国にいる外国人の場合には、我が国が支援するからかなり確度が高く補償されるけれども、外国被害を受けた日本人の場合には、外国の国家が支援してくれなければ取りっぱぐれのまま終わっちゃうから不公平じゃないですかと、で、その不公平はこの条約では何も是正されていませんねと、こう私は指摘しておるわけです。そうでしょう。政務官も最初に答弁されたとおり。
  28. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、基本的には委員の言われているとおりであると思います。国内においては、我が国のこの賠償制度においてしっかりと賠償されます。そして、海外においては、もしこの条約がなかったならば、極めて不十分な制度しかなかったとしたら、もう極めてこの補償は乏しいことになってしまいますが、この条約に入っていることによって、この条約で義務付けられている部分までは最低限その他国においても我が国国民補償されるということになります。  こうした差は生じますが、最低限の補償が確保できるという意味において、これは国際的な枠組みをつくる意味はあるのではないかと考えます。
  29. 小川敏夫

    小川敏夫君 大臣あるいは政務官のお話聞いていまして、この条約がないと、我が国国民外国原子力事故によって被った損害について、救済手段がないか、あるいは著しく限定されていて事実上行使ができないかのような雰囲気の答弁をされるんですけれども、この条約がなくたって、いいですか、外国事故によって我が国国民被害に遭えば、外国の国の裁判所に行って、損害賠償しろという裁判を起こして賠償請求をすることはできるわけですよ。  これ、今、まあ北朝鮮はどうだか知りませんけど、普通の司法制度を備えた国であれば、被害者がその国の国民であろうと外国人であろうと、その国で被害に遭いましたという裁判をすることは認められているわけで、そこで不法行為で認められれば損害賠償の請求権は認められるわけだから、別にこの条約がなくたって、被害に遭えば、その国に行って、その事故を起こした国の裁判所に訴え出て賠償請求はできるわけですよ。別にこの条約があるから初めてできるわけじゃないので、今だってできるわけで。  そうすると、この条約で特に大臣政務官がおっしゃられたいのは、無過失責任が、事業主が無過失でも責任を負うということが条約によって求められるから、そうすると、我が国国民外国の裁判を起こしても過失を争わなくても請求しやすいと、因果関係損害だけ立証すれば勝てるという意味でいいのではないかということの無過失責任をかなり強く強調されていると思うんですが。  そこで、確認しましたところ、実際に外国原子力事故が起きて我が国国民被害を受けるというと、地理的気象条件を考えると近隣諸国、しかも風が西の方から吹いていますから、具体的には韓国とか北朝鮮とか中国かなと、あるいはロシアかなというぐらいのところが考え得るわけであります。北朝鮮はどうだか知りませんけれども、韓国と中国において、じゃ、今この原子力賠償についてどういう法制度になっているのか、あらかじめ外務省の方にお尋ねしましたところ、既に韓国も中国も事業主の無過失責任という仕組みになっているというふうにいただきました。  そうすると、今現在、条約結ばなくても、既に現実的には韓国も中国も原子力事故については事業主の無過失責任という法制度になっているということであれば、別にこの条約が、入ろうが入るまいが、我が国国民はその国に行って賠償請求できるわけですから、余りそこの点は、条約があるから新たに現実的に国民が裁判をやりにくいところがやれるようになったという面は、ないかあるいはかなり薄いんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  30. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) 無過失責任部分に関しては、まさに委員のおっしゃるとおりの部分があると認識しています。  あと、この条約には残り三つの特徴がありまして、そこのところを若干簡単に御説明をさせていただきますが、一点目に関しては、これは事業者への責任集中というのがありますので、例えば、それを造ったメーカー側に責任があるのか、あるいは輸出した国に責任があるのか、実際に運用している事業者責任があるのかというのを明確にしていますので、補償対象が明確になる分、被害者に対する措置というのがスムーズに進行するというのが、これが一点目のこの条約のプラスであろうかと思っています。  二点目に、内外無差別の原則というのを設けておりますので、たとえ海外においてこういう事故が起こったとしても、自国民等を優遇して賠償等を先に行う、あるいはその額に差を設ける等のことが、義務として、国際約束としてこれはできないことになっているというメリットも二つ目にございます。  最後の点でございますが、これは、一定の賠償措置額というのを国際連携で締約国に設けさせているという意味で、この額というのが非常に安いという見方もありますけれども、現行の各国国内法で考えられている賠償措置額にすると非常に有利な面があるんではないかと思っています。  今委員がおっしゃった隣国ということで韓国、中国等を例に出されましたけれども、例えば賠償措置額に関しましては、韓国、中国はそれぞれたったの約五十億しか賠償措置額として国内法で担保しないということですので、この額についてもこの条約意義は十分あるのではないかというふうに認識しております。
  31. 小川敏夫

    小川敏夫君 原子力事業者に無過失責任を負わせたというところはいいとしても、それから、その責任原子力事業者集中するというか限定していると。そうすると、普通ですと、製造物責任とか、あるいは、そういうことじゃなくても、機器に何らかの不具合があれば機器の製造メーカーが責任を負うわけです。あるいは、機器を設置する施工工事が誤りがあればその施工業者が責任を負うわけです。ですから、一般論とすれば、原子力事業者じゃなくて、本来事故が起きた場合にその責任を負うべき対象者はかなり広い可能性がある。  しかし、責任事業者集中するという、言葉は集中だけど、それは要するに事業者以外には損害賠償請求ができないということを決めるわけですよね。だから、そうすると、被害者の保護、被害に遭った者の保護を重点にすれば、責任があるという者は、事業者に限らず、メーカーだろうと施工業者だろうと資材の提供業者だろうと、責任がある者が責任を負えばいいのに、実際には責任が仮にあるとしても、そういうものについては全く無責任であって、事業主しか責任を負わないと。  こういう仕組みになっているのは、実際に被害を受けた国民の保護に欠けるんじゃないかと思うんですが、そういう見方に関してはどうでしょうか。
  32. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 御指摘事業者への責任集中原則ですが、これは被害者の立場に立ってみますと、これは損害賠償請求権行使の対象者が常に明確となるということによって法的予見性が高まるというメリットはあると存じます。このことによって被害者の迅速な救済が実現できる、こういったメリットはあると承知しております。  そして、こうした損害を補填する能力について、もちろん事業者にこの責任集中するわけですが、メーカーと事業者の間において個別の契約を結ぶこと等によってトータルで、万が一事故が起こったときにどう補填するか、こういった契約を結ぶことはこの条約において認められておりますので、そういった形によってトータルの補償能力は確保し、そしてあわせて、被害者の立場からいいますと、どこに請求したらいいか、こうした法的予見性を明確にする、こういったメリットを得る、こういった形で被害者救済という面においても合理性が担保できているのではないか、このように考えます。
  33. 小川敏夫

    小川敏夫君 事業者が無過失責任ということは、これは被害者の保護に非常に役に立つといいますか、有意義なことだと思うんですが、ただ、被害者から見れば、事業者が小規模だったり、事業者支払能力がないような場合には、これはほかに責任がある者に請求できる方が手厚いわけです。しかし、事業主とメーカーが求償権のということがあったって、それは事業主とメーカーの関係ですから、被害者はメーカーには直接は請求ができないと、こういう仕組みになっているわけです。  それで、それから裁判管轄権事故が起きた国の裁判所でということに限定されていると。そうすると、例えば、これは例だから、日本に隣接する国という意味で韓国を一つの例として挙げるだけですから、別に韓国について蔑視も何にもありませんけれども、韓国でそういう事故が起きたと。そうすると、今現在は、日本人が被害に遭ったら日本の裁判所に訴え出てもいいんですよ。ただ、判決もらってもそれを強制執行できるかどうかという問題があるけれども、それはできるわけです。  仮に、損害賠償する主体が原子力事業者だけでなくて、メーカーとか施工業者とか、それからそういう資材を導入したというものでも、資材に欠陥があれば、あるいはメーカーにも何らかの欠陥があれば、あるいは日本の業者が施工していれば、そこに欠陥があれば、そういうメーカーとか、そういう関連メーカー、関連業者も責任を負うと。原子力事業者だけが責任集中して負って、それ以外のメーカーは一切無責任と、責任を逃れるということではなくて、普通の一般法理であれば、責任があればその責任を負うというのが一般法理なわけです。  そうすると、今の一般法理からいえば、日本のメーカーがお隣の国に原発を輸出する、あるいは原発の材料を輸出する、あるいは原発の工事を請け負うというような場合に、メーカーでも資材の提供業者でも施工業者でも、過失があった場合には、一般法理に従えば、そういう過失があったメーカー等は被害者責任を負うわけです。そうすると、お隣の国の事故によって日本人が被害に遭った場合であっても、日本のメーカー、日本の業者、日本の施工業者に過失があれば、日本の国内で日本のメーカーを相手に裁判を起こすことができるわけです、一般法理によれば。  しかし、この条約では、責任事業者にしかない、事業者以外のメーカーは、過失があろうとなかろうと、これは免責、もう賠償請求できないと。しかも、その裁判は事故が起きた国でしか起こせないということになると、一般法理では、今私が挙げた例のように、国内にいる国内のメーカーに対して国内で裁判を起こせる理屈にはなる、それをできなくなるわけですよね。  そうすると、この条約が目指している世界は何かというと、やっぱり被害に遭った一人一人の、被害を受けた国民なりを保護する、補償するというよりも、メーカーあるいは施工業者という、つまり原子力事業主以外の原子力施設構築するためのいろんな関連業者、この関連業者等を免責にするということが一番この条約が目指しているものじゃないかなと私は感じたんですが、私のこんな感じ方は間違っているんでしょうか。
  34. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) 委員ありがとうございました。  実際にこういう被害に遭われた方の心中を考えると、その原因がやはりどこにあったのか、それは決して事業者だけではないのではないかという心理、そういう心情に関しては非常に共感する面がございます。  しかしながら、今、こういうような原子力賠償に係る条約は、三つの大きな枠組みで、パリ条約、ウィーン条約、そしてこのCSCとあるんですけれども、国際的な潮流も、やはり事業者責任を一元化させて解決をするというのが主流になっております。その背景にございますのは、やはり事業者間の言い争いであったり、果たして、言われている、例えば部品提供者であったりメーカー側の欠陥というのが本当にその事故につながったかどうかという科学的な立証、そういうのに時間が掛かっていては、結局その被害者が生活の糧のために即刻必要な賠償金というのが遅れることになりはしないか、そういう被害者救済の観点から、やはり合理的な流れとして事業者に過失責任集中させているものというふうに確信をしております。  委員のおっしゃることも心情的に非常に理解はできるんですが、決してこれはメーカー側を利するとか、そういった目的のものではないというふうに認識をしております。
  35. 小川敏夫

    小川敏夫君 そもそも我が国原賠法仕組みが今言ったように事業主集中しているわけでありますし、国際的に統一ルールがあった方がいいというようなお考えも分からないわけではないわけでありますけれども、しかし、どう見ても一番楽するのはメーカーかなという気があるものですから指摘させていただきました。  そうした点を、私の言っていることの意味は一応御理解いただいたようですので、この質問はこの程度にしたいというふうに思います。  今日は江渡大臣にお越しいただきました。  もう何回目になるのか、私も好きでやっているわけではないのでありますけれども、どうしてもなかなか腑に落ちないところがありますものですから、重ねて質問させていただきます。  まず、ここに来て一番大きく煮詰まってきた問題は、やはり大臣が間違いであったということを証明をするためには、人件費と言われている、受け取った人が人件費であれば確定申告をしているということが明らかになれば、特にその確定申告が今回問題が起きてからやったんじゃなくて、もう受け取った年の翌年の本来の申告期間の中にやっているのであれば、ああ、大臣もおっしゃられたとおり、もらった人が人件費として申告しているんだなということで腑に落ちる部分があるわけでありますが、大変残念なことに、江渡大臣理解してくれと熱く言葉では訴えるんですけれども、それを理解できるような資料としてはなかなかお示しいただけない。  この高橋さんの申告書についても、いつ申告したかということと、それから人件費ということになっている百五十万円を申告したかどうかは、申告書の写しをお見せいただければすぐ分かるわけでありますが、残念ながらお示しいただけないと。それで、それについて、高橋さんの方でプライバシーという観点があるのでお見せできないというような御指摘がありました。  ここでいうプライバシーというのは、要するに、収入に関することあるいは勤務先に関すること等は個人の情報であって、それを個人が希望しないのに公にされることはないんだという意味でのプライバシーの保護だと思うんですが、大臣が言われているプライバシーも、そういう意味のプライバシーの保護ということでよろしいですよね。
  36. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) 私は、全てのことに関してのプライバシーという思いを持っております。  特に、私自身もこの件についてはすっきりしたいと思っているわけです。ですからこそ、昨日もそうでしたけれども、Tさんの方に連絡をして、電話をして、何とか翻意を促せないかということで私もお願いをいたしました。そして、今までもずっとそれをやっておりますし、私ができないときにはうちの事務所の方からも連絡を取ってもらったりもしていたわけでありますけれども、御本人の方からは、自分はもう辞めている身でありますしと、それからもう今までも何度も言っていることですけれども、それは我々に対してですけれども、一応きちんと税務申告もしているし、そこの点は自分ももう人件費と受け取ったということも了承しているわけだから、これ以上は関わりたくないのでほっとさせておいていてくれないかというような言われ方をしております。  ただ、私としてみれば、もうここの委員会のみならず、ほかの方でも何度も何度もこれ言われております。ですから、何とかしてすっきりしたいものですから、何とかそこを考えてくれないか、できれば会って話合いをしたいので御理解をいただけないかということでの申入れをさせていただいているところでございます。  この委員会含めて、ほかの委員会においてもそうなんですけれども、しっかりとした形でお示しできないということ、そのことに対して、また委員会において審議が思うように進んでいないということに対して、自分もじくじたる思いもあります。大変申し訳ないことだと思っておりますけれども、今現在まだそういう状況だということで御理解いただければ有り難いというふうに思っております。
  37. 小川敏夫

    小川敏夫君 それで、プライバシーということですけれども、確定申告書を例えば全部見せろといいますと、扶養家族欄とかいろんなプライバシーのこともあるでしょうから差し障りがあるかもしれないと。ただ、私どもは、その確定申告書の全部を見せろと言っているんじゃないんで、今問題となっているのは、大臣資金管理団体からもらっている給料が本当にもらったかどうかを確認したいんだから、その給与所得の欄だけ見せていただきたいと。あとは、そのお名前と、高橋さんのものであることをはっきりしなくちゃいけないからお名前と、それから、いつ受理したのかという税務署の受理印があればいいので、そこの部分だけをお示しいただきたいので、ほかの部分は全部黒塗りでいいということでお願いしているわけです。ほかの部分は私ども必要としませんし、確認するのに必要じゃありませんし、高橋さんの扶養家族がどうのこうのとか、そういうことを確認する必要も全くありませんから。  ですから、まさに大臣資金管理団体から高橋さんが給与所得をもらっているというその給与所得の部分だけお見せいただけないかなというんですけれども、これも駄目なんでしょうか。
  38. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) 今のお話、委員からの御指摘、ここの部分は衆議院の安全保障委員会でも御指摘いただいていまして、その旨もTさん本人に対して私は申入れしております。  ただ、先ほど来から同じような形になるわけでありますけれども、今の段階では、もう自分は辞めた身であるから関わりたくないと、その一点張りでございますけれども、何としても私自身としては直接会いたいと、その申入れをしております。そして、会ってきちんとお願いして、そしてTさんの気持ちを何とかして翻意を促したいというふうに今思っているところでございます。  ただ、今の段階ではまだそこまで至っていないということ、そのことに対して本当に申し訳なく思っているところでございますけれども、今まさに小川委員から御指摘の点につきましても、私はTさんの方に対して申入れもさせていただいているということも御理解いただければ有り難いと思っております。
  39. 小川敏夫

    小川敏夫君 これまで大臣からお伺いしていた、大臣説明にあった、高橋さんが確定申告書を提出、協力できないということの理由は、プライバシーだからというふうにお伺いしたんですが、今日はプライバシーじゃなくて関わりたくないというふうにちょっと説明が変わっているんですが、どうなんでしょう。
  40. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) そこも全て含めて、プライバシーの点も含めて、今もう、特に前のときも御説明させていただいたわけでありますし、また衆議院の安全保障委員会の方でもお話しさせていただいたわけでありますけれども、御本人は関わりたくないしと、それからまた、報道等でいろんな名前が挙がっているということで自分ももういたたまれない気持ちでいっぱいだと。ですから、とにかく関わりたくないというのが、今、特に昨日も電話させていただいてお話合いしているときにおいては、そういうような御回答であったわけであります。
  41. 小川敏夫

    小川敏夫君 だから、これまでは高橋さんの拒否理由は、プライバシーだから、プライバシーを公表したくないという理由だったんだけど、今の大臣のお話ですと、関わりたくないというので、ちょっと理由が変わっていると思うんですがね。
  42. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) 初めは、彼はプライバシーの問題だからということをずっと言っておりました。そして、私も何度も何度も何度も電話したりとか、何とかお願いしたいということで言っていたら、先ほどの関わりたくないということは、これは衆議院の安全保障委員会の方でも答弁させていただいたわけでありますけれども、Tさんの名前がオープンになったと、そういうようなことで、やはりいろんな形で自分も今いたたまれない、ですから関わりたくないというような状況に変わってきたということであります。ですから、最初ここで皆様方にお話ししていたように、最初の段階ではプライバシーということで言っておりましたけれども、そういう状況になっていると。  ただ、私自身は、何としても御本人から翻意していただいて、そして私自身もすっきりしたいという思いでいっぱいではあるわけでありますから、ですから、これからも引き続き、何とかそこはTさんに対して気持ちを和らげていただきながら、そういう状況まで持っていきたいというふうに思っております。
  43. 小川敏夫

    小川敏夫君 例えば、高橋さんは名前が出てしまっているということですけれども、そもそも全ての国民に公表される資金管理団体の会計責任者になるということは、名前が公表されるということは、これは当然御承知の上でやっていることだと思います。  それから、人件費が幾らかと。収支報告書自体には高橋さんが幾らとは書いてありません。人件費が総額幾らとしか書いてありませんが、既にこの国会における質疑の過程の中で、大臣から聡友会に計上されている人件費は全て……
  44. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) いえ、全てでなく、ほとんどです。
  45. 小川敏夫

    小川敏夫君 いや、訂正前に計上されているものは高橋さんじゃないんですか。じゃ、ほとんどでもいいです。それにプラスして訂正して百五十万円、二十四年に関しては百五十万円が加わったということで。  それで、高橋さんの勤務状況も、もう既に定年を迎えたので週二回程度来るだけだということも大臣から説明がありました。すなわち、この聡友会において高橋さんが勤務している、それから週二回しか勤務状況をしないと。あるいは、どういう仕事ぶりか、議員会館でいろいろ仕事をするけれども、しかし地元の方に行っていろいろなこともしていただいたというような勤務の内容も明らかになっていると。  そして、この給料が幾らかということも、じゃ、収支報告書に当初記載された金額の全部じゃなくても、そのほとんど全部が、ただ、以前、何か全部、人件費は一人、高橋さんと聞いたように思うんですが、とにかく、そのほとんどが、じゃ高橋さんだということ、プラス百五十万円だということで、その給料の金額も公になっていると。  ですから、プライバシープライバシーと言っても、もう全部公の場で公になっちゃっていることであって、秘密でも何でもないんです。今私が話した、この聡友会における高橋さんの仕事ぶりということについて、給料も仕事の内容ももうみんな公になって明らかになっているわけです。それは、誰が悪いんじゃなくて、そもそもこの収支報告書、この資金管理団体の会計責任者になった以上、これは本人が意図して不利益に、公になったという面ではなくて、言わば資金管理者という責任上、当然伴うのかなと思いますけれども。  それで、結論として言いたいのは、プライバシープライバシーと言うけれども、既に秘密とするべき部分はもうないので、もう既に公になっちゃっていると。あるいは、申告しているということについてももう大臣がお話しになっているわけで、もうそうしたプライバシーのことについては大臣自身がお話しになっているわけですから。  ですから、秘密の部分もう何にもないというのに、なぜそれをまた守るために秘匿しなくちゃいけないのかなという点が大変に疑問なわけでして、もう既に公になっているわけですから、それを出していただくことについて何の不利益もないし、何のプライバシーの侵害もないので、これはやはり出していただかなくてはいけないのかなと思うんですが、どうでしょう。
  46. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) まず、人件費の部分、ほとんどと言ったのは、その年度年度において一時的にアルバイトなんか入ったりしたときありますが、基本的にはTさんの、ほとんどがTさんの人件費ということになるわけであります。  それと、今委員のおっしゃること、確かに私もそのとおりだと思いますが、ただ、今回、私自身が大臣になるという報道等があってから事務所等で見ていって、そしてミスがあったということが分かって、そしてこの収支報告書の訂正をさせていただいて、そこで初めて、その後、マスコミ等、新聞等で問題があるのではないかなというような書き方がされて、その後、委員会等でこういう議論がなって、そしてある程度の、このTさんのこと、それから仕事の内容とかあるいは給与等々というのがオープンになったわけでありますけれども、それがなければ全然こういうことが表に出ていなかったわけですから、彼はあくまでも今現在辞めてある元秘書さんというだけで終わるというふうな思いを持っていたと私は思っております。  また、そのような言い方のことを彼はしておりました。もう自分もとうに七十を過ぎていますしと、また、いろんな形でこういうところでと、自分自身もいたたまれない気持ちを持っているというようなことも言っておりました。そういう流れの中において、私は、もし可能であれば、それでも何とか御理解いただいて出してもらえないかということでお願いをしているわけであります。  ただ、昨日の段階でもそうですし、おとといでもそうでしたけれども、申し訳ないけれども、もう自分は関わりたくないと、電話されてきても、思うように自分は話したくもないとかといろんな話もしておりましたけれども、ただ、私としてみれば、そうではなくて、しっかりとお会いしたいと、会っていろんな話もしたいからということでお願いはしておったところでございます。
  47. 小川敏夫

    小川敏夫君 大臣の間違いだったという説明を、大臣側から見れば一番それを支える有力な方ですし、大臣の元秘書の方ですし。  そもそも高橋さんは、全く部外者であり、あるいは、たまたまもらっていた給料が誰かが間違えてとばっちりを受けているという方じゃないんですよ。高橋さん自身は会計責任者ですから。もし大臣の言うとおりなら、御自分が間違えた処理をしたんじゃないですか。ですから、そのことによって、もし大臣の御説明が正しいのなら、高橋さんの間違いによって大臣はとんでもない災難に遭われているわけですよ。高橋さんが間違えなければ、こんな小川敏夫に何回も何回も繰り返し質問されることもなかったわけですから。なのに、大臣を弁明するために、弁明する資料として最大の有力な資料を高橋さんは出してくれないんですか。
  48. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) 先ほどからお話ししているとおり、私もすっきりしたいからお願いしたいということでTさんにお願いしています。  それと同時に、このようなことを言うと、おまえはと言われるかもしれません。最終的にはどんなことあろうとも政治家が全責任を負わなければいけないというのは十分承知しておりますけれども、この場での委員会でもそうでありますし、また衆議院の方の委員会でもそうであるわけでありますけれども、私自身は、できるだけ公平に、公正で、しっかりとした透明性を確保するためということもあって、そして税理士さんからもしっかりとこの収支報告書を提出する前にもチェックを受けていたわけです。  ですから、自分自身の気持ち的には、このTさんに対してもそうですし、また、うちの事務所のスタッフに対してもそうですし、またこの税理士さんに対してもそうですけれども、それなりの思いは持っております。しかし、政治家というものは全責任を負わなければいけないというのが私は基本であろうと思っております。ですからこそ、皆さん方からのいろんな御指摘に対して、やはり可能な限りのものは、出せるものは出したいと思っていますし、また、できるだけ丁寧に御説明しながら皆様方に御理解いただきたいと思っている気持ちもそのとおりであるわけであります。  ですからこそ、そこの点、小川委員にも御理解いただければ有り難いなと思っていますし、また、私自身も引き続きTさんに対して、何としてもこれ出していただければ私もすっきりしますから、そのためにも今ずっと説得を続けているところであるということを御理解いただきたいと思っております。
  49. 小川敏夫

    小川敏夫君 私、小川委員に対して御理解いただきたいというのではなくて、私としては国民理解できるように御説明いただきたいという思いで聞いているわけです。  平成二十四年は高橋さんでしたけれども、平成二十一年は、お名前は存じ上げませんが、大臣のめいごさんですか、が受け取られたということになっておりまして、この方も申告しているというふうに大臣から聞いております。  こちらの方は、申告書の提出、同じように収入の部分だけで結構ですから、二百万円を給与としてもらっているという部分だけで結構ですから、このめいごさんは確定申告書の写しを、その部分を出してはいただけないんでしょうか。
  50. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) 身内のことでありますから、私はできるだけ出させるように努力いたします。
  51. 小川敏夫

    小川敏夫君 あれっ、今までは努力をしてくれていなかったんですか。求めていなかったんですか。
  52. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) 今までもお願いしますとは言っておりました。ただ、ほとんどずっと、一番きちんとクリアしなきゃいけない部分は私はTさんのことであろうと思っていましたから、ほとんどTさんにばかりずっと連絡していました。  今委員から御指摘ありましたから、改めて私も身内の方にももう一度お願いしたいと思っております。
  53. 小川敏夫

    小川敏夫君 大臣から見るとうがった見方ということになるかもしれませんが、やはりこうした大臣の御説明そのものもなかなか、収支報告書に書いてあることが間違いだったというのも、ああそうですかというふうにはちょっと腑に落ちないところもある。  そしてまた、この申告書というものがあると言いながら、それがどう考えても、もし大臣のおっしゃるとおりなら、すぐにも喜んで出せばいいものを、何回言っても出してこないということになりますと、結局出せないんじゃないかと。出せないというのは、出せば大臣説明が崩れてしまうというから出せないんじゃないかというようなうがった見方をしたくなってしまうものですから申し上げただけでして、やはり私は、大臣御自身がまいた種ですから、それで国民に対してきちんと私は説明していただきたいということを述べさせていただいて、私の今日の質問を終わります。
  54. 小西洋之

    ○小西洋之君 民主党・新緑風会の小西洋之でございます。  私の方から、まず今日の本題でございます原子力損害の補完的な補償に関する条約について伺わせていただきます。  先ほど小川委員質疑の中でも指摘がありましたけれども、この条約各国締結することによって、究極的には国民、市民のその被害についての賠償を確保していこうという条約でございます。  ただ、じゃ幾らの額が確保されるかということでございますけれども、条約に基づく義務的な賠償措置額は三億SDRで、これ日本円で四百七十億円。さらに、各国拠出をするお金が二階建ての二階部分としてあるんですけど、これ外務省に伺いましたら、一番この拠出金が大きくなるケース、これはCSCの場合は、アメリカの国内で事故が起きた場合ということですけれども、約二百八億円ぐらいと概算していると。そうすると、四百七十足す二百八億で、全部足しても六百七十八億円にしかならないわけでございます。  ところが、世界史上においても例のない過酷な原発事故を経験した我が国でございますけれども、福島における原発事故の今のその賠償額は、既にたしか四兆三千六百億円ぐらいだったと、四兆三千億円台でございますけれども、全く桁が違うわけでございます。そうすると、この条約というのは、実際、実態から見たときに一体どれだけの役割効果があるのだろうかという根本的な問いに行き当たるわけでございます。  そこで、まず外務大臣から御質問をさせていただきたいんですけれども、大臣質問の二問目でございます。二問目の方でございますけれども、こうした条約に加盟したいということでございますけれども、であるならば、先ほど申し上げました、いざ原発事故が起きたときに、およそ効果のない、スリーマイルは確かに今回の金額で対処できる、環境委員会の理事を私かつて務めて、スリーマイルにも、実際現地にも行ってまいりました。  ただ、実際のその大きな過酷事故が起きたときのことを考えると、およそその効果という面で甚だ合理性を欠いているわけでございますけれども、そうすると、この条約に加盟する我が国の在り方として、我が国は国際的な賠償制度構築するためにこの条約に加盟するというふうに言っているわけでございますけれども、そうすると、我が国の在り方として、本来、大変な過酷事故が起きた際にはこういう被害が現に生じると、かつ、こういう被害の対処の在り方として我が国はこういう法制度を設けてきたと。我が国の設けてきたこの法制度の在り方、原子力損害賠償支援機構法、これ実は復興委員会の理事として私もこの立法に携わったんですけれども、そうした我が国のこの経験というものを国際的にしっかり伝えていく、そうした役割が我が国にはあるんではないかというふうに思うんですけれども、大臣の見解、いかがでしょうか。
  55. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、委員指摘のように、我が国としまして福島第一原発事故のこの貴重な経験、知見を国際社会と共有するということ、これは我が国の責務であると認識をいたします。  そして、このCSC条約で申し上げるならば、たしか被害額の御指摘がありましたが、この被害額につきましては、福島第一原発事故被害等から考えますときに、これで十分なのかという御指摘は当然あるかと存じます。  しかしながら、現状において、三系統の原発賠償条約がある中で、最も金額においても充実した条約であるのがCSCでありますし、またあわせて、先ほど来議論しておりますように、裁判管轄権集中ですとか責任集中、こういったことによりまして、被害者にとりましてより法的予見性を明確にすることができるなど、その被害者の立場に立った様々な制度が設けられている、こういった利点も存在いたします。  そして、こうした条約我が国も加わることによって国際的な制度をつくる、これも我が国の責務を果たす一つの表れであると思いますし、あわせて、IAEAでも世界全体としてより充実した制度をつくろうと、こういった議論があります。是非、こういった議論にも我が国参加することによって、より国際社会における原発賠償に対しての充実した制度をつくるべく、しっかりと貢献していくのが我が国の進むべき道であると考えます。
  56. 小西洋之

    ○小西洋之君 賠償額が現実の問題に照らして妥当なのかどうか、この制度仕組みそのものがという質問をさせていただいて、現に六百七十八億しかなく、福島は四兆円を超えているわけですよね。百倍近い開きがあるのに、世界にある三系統の条約枠組みの中でこのCSCが一番金額が高いという答弁をいただいても、申し訳ないですけど、全然かみ合ってはいないんですけれども。  ただ、最後二つ目質問の先取りをしていただいたんでしょうか、将来的に世界でその各三系統の格差を埋めていくような、本来あるべき条約の形に、三系統別々に存在するんであっても、それぞれの格差、差異というものをなくしていくということと、あるいは場合によっては世界一つ条約ということも考え方としてはあり得るんだと思いますけど、いずれにしても、我が国としてあの福島の経験を踏まえて、世界的な、国際的な賠償制度構築に貢献していくと、そういう意思はあるということを確認をさせていただきました。  じゃ一点だけ、外務省に更にもう一つですけれども、このCSCを三系統ある中であえて選んで入る理由は、この制度目的そのものでございますけれども、我が国のみならず我が国近隣諸国原発事故が起きたときに日本国民の権利を救済するためであるわけですけれども、そうすると、我が国の近隣で原発を現に保有している国は中国、韓国、台湾なわけでございますけれども、中国、韓国、台湾がこのCSCに加盟するということについての具体的な分析、評価、それはどのようにされているんでしょうか。外務省、お願いいたします。
  57. 引原毅

    政府参考人引原毅君) お答え申し上げたいと存じます。  中国、韓国あるいは台湾についての将来の見通しということで、何分にも他国のことでございますから予断することは難しいわけでございますけれども、その上で申し上げますれば、中国あるいは韓国についてはそれぞれIAEAに加盟しておりますけれども、このIAEAにおいては原子力安全行動計画あるいは原子力安全決議等によって国際的な原賠制度構築重要性がうたわれている、こういうことは当然加盟国である中国、韓国も承知をしているわけでございます。  その上で、中国にしろあるいは韓国にしろ、例えばIAEAが主催する原子力損害賠償に係るワークショップに参加するといったようなことをしておりますので、CSCを含む国際的な原賠制度状況について関心を示しているということではないかと思います。特に中国について申しますれば、既に中国はCSC締結に向けた制度の準備、制度の整備のための議論を行っているというふうに承知をしておりますし、韓国につきましてもCSCについて調査、検討している段階であるというふうに承知をしております。  なお、我が国といたしましては、まず我が国が、できますれば早期にCSC締結、発効させると、それとともに、中国、韓国を含む近隣諸国に働きかけて、アジア地域における国際的な原賠制度原子力損害賠償制度枠組み構築に一層努力をしてまいりたいと思うわけでございます。  あと、台湾について……
  58. 小西洋之

    ○小西洋之君 いえ、もう結構です。
  59. 引原毅

    政府参考人引原毅君) はい、済みません。  以上でございます。
  60. 小西洋之

    ○小西洋之君 ありがとうございました。  今の答弁の中で、中国、韓国がCSCの加盟について検討しているというような趣旨の答弁がありましたけれども、確認ですけれども、中国、韓国はCSCのみの加盟について検討しているんですか。そのように政府としては承知しているんですか。  IAEAについての基準等々について中国、韓国がどうのこうのおっしゃっていましたけれども、この三系統のうちのウィーン条約IAEAのものを基にしたというふうに理解しておりますけれども、質問は、中国、韓国はCSCに加盟することを第一の目標として検討しているというふうに理解してよろしいですか。
  61. 引原毅

    政府参考人引原毅君) お答え申し上げます。  今すぐ、もう今日、明日にも中国、韓国がCSCに加盟するという段階ではございませんが、例えば中国については、ウィーン条約やパリ条約ではなく、CSC締結ということを念頭に置いて国内制度の整備を行っている、そういう準備をしているというふうに承知をしております。  以上でございます。
  62. 小西洋之

    ○小西洋之君 韓国はどうですか。
  63. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 韓国について我々が承知しておりますのは、CSCについていろいろな調査、検討をしておるということでございますので、ウィーン、パリについては必ずしも我々、十分承知しているわけではございません。  以上でございます。
  64. 小西洋之

    ○小西洋之君 済みません、もう一度。韓国は、中国と同じようにCSCを第一目標というわけではないと理解していいですか。
  65. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 韓国について我々が承知しておりますのは、韓国はCSCについての調査、検討をしているということは我々承知しております。それ以上、例えばウィーン条約であるとかパリ条約についてどのような検討を行っているのかいないのかということは、正確に承知しているわけではございません。
  66. 小西洋之

    ○小西洋之君 いや、何かそういう答弁でしたら、その三系統のうちであえてCSCを選ぶことのその根拠が根底から覆ってしまうように思うんですけれども。  そもそも、この三系統の地図をお示しさせていただいておりますけれども、必ずしも近隣諸国だけが入っているわけではないんですね。この飛び地のように入っている国もあって、一体これってなぜこういうことになるんですかと外務省にもお尋ねしたんですけど、なかなか明確な答弁がないんですけれども、条約に加盟するのであれば、やはり我が国の国益、国民の権利というものをしっかり守るという姿勢で、この国会に対してもきちんと御説明いただけるような外交をしていただかなければ外務省はいけないというふうに思います。  その観点で、ちょっとこの条約を少し離れさせていただいて、外務省のその外交について、我が国の主権と国益を守るという、そういう決意とそれだけの能力があるのかどうかということについて質問させていただきたいと思いますけれども。  先般のAPECのときの日中の首脳会談に先立って公表された、いわゆる四項目のこのペーパーですが、資料の二がございます。一つ目の資料の二は日本語の外務省が出しているものでございまして、次の紙は私が少し加工したものでございまして、その次は、これは外務省からいただきましたけれども、中国語版でございます。更におめくりいただくと、外務省が出している英語版でございまして、最後の資料の五は中国政府が出している英語版でございます。これも外務省からいただきました。  通常の日本語の能力と、あと英語の能力をお持ちの方が見ると、これどう見ても、両国の主張が、言っていることが食い違っているというふうにしか解されないんですけれども、そうではないのかということについて確認をさせていただきます。  先般の質疑の中で岸田外務大臣は、この中国語の文面ですね、資料の三番になりますけれども、資料の三番の中国語の文面と資料の二の日本語の文面、すり合わせをしっかりとやりましたというふうにおっしゃっておりました。ただ、一言一句についてはやっていないかのようなことはおっしゃっていたんですけれども、まず確認でございますけれども、資料の三番ですね、これちょっと読み方があれなんですけど、太い線で引かせていただいている、釣る魚の島と書いてチョウギョトウというふうに読むそうなんですけど、日本語で、この釣魚島という文言が中国語の文書にこのままの表現で入るということは、当然、事前、そのすり合わせの段階で確認をされていたということでよろしいですか。
  67. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 今回の発表というものですが……
  68. 小西洋之

    ○小西洋之君 事実だけで結構です。
  69. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) はい。  これは、それぞれ日中が今現在で一致している点についてまとめ、それぞれ日本語と中国語において発表したという性格のものです。中国側においては御指摘のような発表をされたと承知をしております。
  70. 小西洋之

    ○小西洋之君 釣魚島という文言を事前にそのすり合わせの中で確認していたというふうに理解させていただきますけれども、日中間で確認し合った、政府が確認し合った文書で、中国語のこの釣る魚の島という、釣魚島という文言が入った文書が、日中間で確認した文書でこの世に存在したのはこれが歴史上、本邦初だと思うんですが、そういう理解でよろしいですか。
  71. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 日中間で確認した文書という御指摘をいただきましたが、これは、日中間で話合いを行い、そして現状において日中間で一致できることについてまとめ、それを中国語そして日本語それぞれで発表したというものであります。  国際約束等ではありませんので、これ、厳密な意味でそれぞれの文言を一致させるということはしてはおりません。そういった結果として、中国側においてはこうしたこの言葉を使っていると承知をしております。
  72. 小西洋之

    ○小西洋之君 私もかつて霞が関で外交に携わったことがございますけれども、外交というのはもう言葉が命でございますので、今大臣がおっしゃられた、両国間で一致した考え方ですね、考え方をまとめて、一致した考え方をどうそれぞれの言葉で記すか、もうそれが全てでございます。普通こういう文書を作るときは、日本語と中国語をそれぞれの政府が交換し合って確認するんです。かつ、英語についても確認するんです。日中平和条約の英語バージョンというのはこの世に一つしかありません。なぜ一つしかないかというと、日本と中国政府が確認した英語の言葉というのは、使い方というのはもう一種類、一つしか存在し得ないからです。そういうことを全くしていないということです。  また、大臣は今、国際約束でもないし、法的拘束力もないからというようなことも前回の質疑を含めておっしゃっていましたけれども、そういう問題ではないんですね。我が国は、尖閣諸島は日本固有の領土であると、日中間に領土問題は存在しないというその主張の確たるものは、日本の中の様々な歴史文書ですとか、そういうものを我々は提示しているんですね。それは国際約束でもないし、法的拘束力があるものでもありません。ただし、日中間の間で、あるいはその日本と中国のそれぞれの歴史の中で間違いない歴史的な証拠物として示されたもの、それによって我々は尖閣の主権を主張しているんですね。ところが、新しいとんでもない歴史を領有権問題についてつくってしまったのではないかということでございます。  じゃ、もう一つ、中国版の資料三でございますけれども、太線で主張というところに、これ中国語で主張なんですけれども、これ日本語の場合は主張ではなくて見解というふうに書かれているところでございます。広辞苑、私の手元にございますけれども、日本語の主張は、自分の説を強く言い張ること。まあ、領有権問題でしたら、我が方の領土であるということを強く言い張ることということなんでしょう。で、広辞苑で見解という意味は、物事に対する見方や考え方や意見。随分、全くニュアンスが違うわけでございますけれども。  見解ではなくて主張という文言を、中国語にも実は見解という今申し上げた日本語と全く同じ意味の言葉があるんですけれども、ここを見解という言葉じゃなくて主張という言葉を使うことについても、事前のすり合わせで日本政府は確認したということでよろしいでしょうか。
  73. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 日中双方の表現とも、尖閣諸島等東シナ海の海域において緊張状態が生じていることについて考え方が異なる、こういった意味だと理解をしております。  先ほども説明させていただきましたが、この発表、これ、現在において日中間で一致できる点についてまとめ、それを日本語と中国語それぞれ発表したものであります。文言を厳密な意味で一致させることまではしておりません。結果としまして、日中間で異なる文言が使われている箇所は存在いたします。
  74. 小西洋之

    ○小西洋之君 日中間で了解に達したそれぞれの考え方というものをそれぞれの言葉で発表するのに、相手がどういう言葉を使うかというのを確認しない、それは外交なんでしょうか。外交の役割は、我が国の国益を守り、究極は国民を守ることですけれども、国民の自由と権利を守ることですけれども、それは外交の名に値するんでしょうか。  この資料の一番最後の資料六を御覧いただけますでしょうか。  今からちょうど二年前でございます、二年前の党首討論において、民主党の野田総理と自民党の安倍総裁が討論をいたしました。安倍総裁の最後のお言葉でございます。どちらが政権を担うにふさわしいか、そしてこの外交の敗北、民主党の政権のことを外交の敗北とおっしゃっているんですけれども、外交の敗北に終止符を打って、どちらの政党が、美しい海と日本の国土、領海、国民を守ることができるかどうか、それを決めていただこうではありませんか。  両国間が発表する文書、この文書については尖閣問題は議論していないというふうに、見解として含まれていないというふうにおっしゃってはいるんですけれども、後からお示ししますけれども、中国は、間違いなくそれは自分の領土だということをこの文書をもって言い始めているんです。  いずれにしても、中国が発表する文言、その主張という文言、そういうものを確認しないというのが我が国の美しい海と日本の国土、領海、国民を守る外交と言えるんでしょうか。大臣、お願いいたします。
  75. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 御指摘の発表ですが、これは、日中関係の改善に向けて両国政府間で静かな話合いを続けてきた結果として、日中双方で意見の一致を見た内容をそれぞれ日本語と中国語で発出したものであります。そして、この発表ですが、我が国の尖閣諸島に対する立場などには何ら変更がないということ、この点につきましても中国側に明確にさせていただいております。そういった上で発表された文言であると理解しております。
  76. 小西洋之

    ○小西洋之君 その後に英語バージョンを付けてありますが、もうイエスかノーかだけで結構なんですが、中国が発表した資料、この英語バージョンですね、日本は資料四ですけど、これ、それぞれについて事前の確認すらしていないという理解でよろしいですね。イエスかノーかで。
  77. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 今回の発表は、日中双方で意見の一致を見た内容を日本語とそして中国語で発表したものであります。英語につきましては、それぞれが仮に訳を付けたものであると理解しております。
  78. 小西洋之

    ○小西洋之君 恐るべき答弁をされましたけれども、世界最大の公用語である、また世界の外交の中での一番に使われている公用語である英語について、この日中それぞれの合意した見解をどう発表するか確認していないという恐るべき答弁をいただきました。  資料四と資料五のこの日中の英語、意味が全く違うんですね。どういうふうに違うか少し御説明させていただきたいと思いますけれども、まず資料の二の日本語の方を御覧いただきたいんですけれども、資料二の日本語の、項目でいうと三番でございますね。尖閣諸島など東シナ海の海域において近年緊張状態を生じていることについて異なる見解を有していることを認識しと言っています。  さきのこの委員会質疑で明らかになっておりますけれども、日本政府、外務省の見解としては、ここに書いてある異なる見解というのは、東シナ海という海ですね、水だけです、東シナ海というその水の上で緊張状態が生じている、中国の公船が入ってきたりですとか、そういうことだけを言っているのであって、この東シナ海の海域というところですね、ここのところには、いわゆる尖閣諸島、陸地としての尖閣諸島として問題は含まれていない。だから、陸地としての尖閣諸島の問題も含まれていないし、全体の意味として尖閣諸島をめぐる領有権の問題は一切含まれていないというふうにおっしゃっています。  資料四を御覧いただきたいんですけれども、日本政府が発表している英語文でございますけれども、なるほど確かにおっしゃっていただいたように、線引いているところですけれども、これ、「in the waters of the East China Sea,including those around the Senkaku Islands,」というふうに書いてありまして、あくまで東シナ海の海の問題を言っているかのように見えます。  ところが、資料五をおめくりいただきたいんですけれども、下の方ですね、下線を引いているところ、これ中国のものですね、「over the Diaoyu Islands and some waters in the East China Sea,」というふうに書いております。英語を我々中学校でも習っていますので、このオーバーですね、まさに尖閣諸島そのものですよ。これ、海じゃないんですよ、尖閣諸島そのものをめぐる緊張関係というふうに言っているんですね。プラス、アンド・サム・ウオーターズ、つまりほかの東シナ海の海がありますよというふうに言っているんですね。もう全くこれ意味が異なっているわけでございます。  それで、もう皆様御案内のとおり、中国政府はこれを発表して、日本が初めて中国との間に尖閣諸島をめぐる領有問題があるということを認めたというふうなことを言っているというふうに、これ、先般、小川委員質疑の中で中国大使館が出したコメントが示されておりましたけれども、そういうことを言われているわけでございます。  ちなみに、この資料の五、中国の英語版なんですけれども、何か非常に丁寧な前文がありまして、この資料四と比較していったら分かるんですけれども、ページの半分に至るがごとくのこの前文がありまして、その前文の中にもこのザ・ディアオユ・アイランズですね、尖閣諸島のことについて、これは非常にセンシティビティーなもので、グレートセンシティビティーな問題であるということをわざわざ書かれてしまっているんですね。  繰り返し岸田大臣に伺いますけれども、この安倍内閣の外交は、安倍総理が勇ましくおっしゃっていたような、我が国の美しい海と日本の国土、領海、国民を守る、そういう外交であるんでしょうか。恐れ入りますが、私、こんな外交を今まで一度も見たことがございません。
  79. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 御指摘の尖閣諸島等東シナ海の海域という部分につきましては、この我が国の発表においてその意味するところは文言上も明らかであり、海域にその島そのものは含まれないということであります。  それぞれ便宜上に行った英訳、仮訳について一々コメントすることは差し控えたいと存じますが、我が国の立場は全くこの部分において触れられておりません。我が国の立場は全く変わりないということ、このことについて、この文言を作成するまでに中国側との間においてしっかりすり合わせを行ってきたということであります。
  80. 小西洋之

    ○小西洋之君 両国間で意見の一致を見た見解について、それぞれ日中が日本語、中国語の文書を出し、かつ、それぞれ英語の文書を出す、その内容をあるいはその言葉の使い方を全く実質的に確認していない、それはもう外交じゃないですよ、これは。  APECで、このままだと安倍総理が、日中首脳会談も行われず、また日米首脳会談も行われず、日韓も行われず、何のために行くのか分からない、恥をさらすと。まさに自分のメンツを保つために日本の国益、日本の領土、その領有権問題を中国にこれ大きくポイントを稼がせた。私もこれ、国会、国権の最高機関の場ですので、言葉は慎重に申し上げますけれども、大きく向こうにポイントを稼がせた、とんでもない歴史上の汚点である、本当に外交の失態だというふうに厳しく指弾をさせていただきます。  総選挙が、あしたにも解散が打たれるかもしれないというようなことを言われておりますけれども、どちらの政党が本当に国益と国民を守れる政党なのか、しっかり国民の皆様に見届けていただきたいと思います。うなずかれました。こんな外交敗北はないですよ。  もう一つ、この安倍政治の外交の根本に関わる問題について質問をさせていただきます。今は、外交の能力があるのか、主権を守る能力があるのかということでございました。もう一つは、更にその前提である立憲主義や法の支配を守れるかということでございます。七月一日の解釈改憲問題について伺わせていただきます。  横畠内閣法制局長官にお越しいただいております。長官、長官は前回、何と十回連続、私の重ねて聞いた質問の答弁を拒否されました。委員長から明瞭に答えるようにという指示も受けたのに、またそれを拒否されました。質問自体は極めて簡単な質問でございます。  七月一日の閣議決定の新三要件のその第一要件、国民の生命などが根底から覆される、この言葉は、意味として、平成十六年の、これまでの九条の政府解釈、国民の生命や身体が危険にさらされる、国民の生命等が根底から覆されるという言葉の意味は、国民の生命や身体が危険にさらされるという言葉の意味と同じですか、違うんであれば、具体的にどういう意味において違うんですかということを私は十回重ねました。法制局長官は、そのたびに全く関係ないことを言って答弁をはぐらかせました。  今霞が関で横畠法制局長官は、法の支配の番人ではなくて安倍総理の顧問弁護士と言われていることを御存じでしょうか。笑い事ではございません。年俸三千万円の顧問弁護士でございます。法制局長官、副大臣級ですので、実は我々国会議員よりも年俸がいいんです。違うんだったら、手を挙げて訂正をしてください。しかも、その年俸はどこから来るんでしょうか。国民の税金ですよね。唯一、主権者国民のみがその所有者である、国民の自由と権利を守る、立憲主義の下で国民の自由と権利を守る、その憲法、それを守るのが法の支配の番人の法制局長官の役割なんですよ。そのためにあなたは国民の血税からお給料をいただいているんですよ。ところが、その血税のお給料で安倍総理の顧問弁護士をやってどうするんですか。そうした問題について厳しくこれから追及をさせていただきたいと思います。  ただ、ちょっと時間が押してきましたので、両大臣にお越しいただいています、両大臣に伺わせていただきます。  資料の一がございますね、資料の一、このベン図を描いた方の別の資料の一でございますけれども、両大臣、さきの委員会からずっと同席いただいていますので御説明の必要はないと思いますけれども、資料の一、これの一番上ですね。  両大臣にまとめて伺わせていただきますけれども、真ん中の(3)ですね、七月閣議決定の新三要件の言葉です、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」、その下にある(2)、平成十六年のこれは安倍内閣も踏襲すると言っている政府解釈でしたけれども、「国民の生命や身体が危険にさらされる」、これ言葉の意味として同じですか。これは憲法九条の下で我が国が武力行使が許容される、その理由根拠を日本語として書き表したものなんですね、理由根拠。その理由根拠として意味は全く同じですか。ずれがあるんでしたら、具体的にそのずれを説明してください。じゃ、岸田大臣から、次、江渡大臣、順番でお願いいたします。
  81. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 岸田外務大臣、時間が迫っておりますので、端的にお願いします。
  82. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 資料のこの真ん中の部分の……
  83. 小西洋之

    ○小西洋之君 (3)と(2)の間の部分です。
  84. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) (3)、この部分だけ捉えて同じか同じじゃないか答えろということでしょうか。  これは、要は今回の閣議決定とそれから平成十六年の答弁書の比較でありますが、この七月一日の閣議決定においては、この新三要件に該当することによって我が国の武力行使が認められる、こういった内容を憲法の当てはめという形で示した、こういった内容でありますので、この部分だけ捉えて同一かどうかということについては今たちまちお答えすることができません。
  85. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) お答えしたいと思います。  今、岸田大臣からもお話がありましたとおり、あくまでも、この七月一日の閣議決定の新三要件というのは、今までの考え方を踏襲して、その中においての考え方から導き出されたものであろうというふうに私は思っております。
  86. 小西洋之

    ○小西洋之君 では、安保法制担当の江渡大臣に伺わせていただきます。  おっしゃるとおり、安倍内閣は今までの基本的な論理を踏襲したと言っています。じゃ、今までの基本的な論理を踏襲したのであれば、七月一日以前の論理においては国民の生命や身体が危険にさらされる場合以外に武力行使はできなかったんです。その考え方を引き継いで、同じ言葉ですね、国民の生命等が根底から覆される、これは昭和四十七年、平成十六年と同じ意味なんです、を使ったというふうに言っているんですね。  そうすると、今、この二つの言葉ですね、七月一日の国民の生命等が根底から覆されると、平成十六年の国民の生命や身体が危険にさらされる、これは武力行使を許容する理由根拠という意味においてずれがあるんですか、全く同じですか。イエスかノーかでお答えください。
  87. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 江渡防衛大臣、お時間過ぎていますので、簡潔にお願いします。
  88. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) 先ほどもお話しさせていただいたように、昭和四十七年の考え方を基本的な考え方として、そのことから導き出されたのがこの七月一日の新三要件の決定であります。
  89. 片山さつき

    委員長片山さつき君) お時間ですのでおまとめください。
  90. 小西洋之

    ○小西洋之君 はい、もうまとめます。  安倍内閣は、七月一日の解釈改憲、閣議決定の一番の肝が説明できないわけです。武力行使のこれ理由根拠を示すものなんです。安倍総理が言っているように、外交問題やあるいはエネルギー問題だけで武力行使ができるような国になってしまったのか、そうではなくて、国民の命を守るその究極の場合にだけ許容されるこれまでの基本的な考え方のままなのか、その違いが外務大臣防衛大臣説明ができなかった。横畠長官は前回、十回にわたり答弁拒否をした。
  91. 片山さつき

    委員長片山さつき君) おまとめください。
  92. 小西洋之

    ○小西洋之君 これはもうまともな法治国家ではない。こういう安倍内閣を国民のために我々民主党は存亡を懸けて打倒することをお誓いして、質疑終了とさせていただきます。     ─────────────
  93. 片山さつき

    委員長片山さつき君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、松山政司君が委員辞任され、その補欠として堀内恒夫君が選任されました。     ─────────────
  94. 新妻秀規

    新妻秀規君 まず、内閣官房にお尋ねをします。国のCSCについての認識についての問題です。  本年六月の十二日に開催されました原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等の会議におきまして、座長を務めた世耕内閣官房副長官より、CSCについては年内の条約及び関連法案の国会提出が喫緊の課題と認識したとの発言がありました。そのときに、我が国原子力発電の再稼働、また新設が進んでいないその当時の現状においてもそのように認識した理由は何だったんでしょうか、お答えください。
  95. 木村直人

    政府参考人(木村直人君) お答え申し上げます。  御指摘の六月十二日に開催されました第一回原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣会議では、赤羽内閣府原子力損害賠償支援機構担当副大臣兼経済産業副大臣及び櫻田文部科学副大臣よりこれまでの取組を報告いただくとともに、石原外務大臣政務官よりCSC締結について説明をいただいた後、議論が行われております。  その中で、石原外務大臣政務官から、国際的な原子力損害賠償制度構築参加する重要性を認識し、福島第一原子力発電所の廃炉汚染水対策に知見を有する外国企業の参入の環境を整えるため、昨年秋、CSC締結に向け作業を行うことを表明したという説明がございました。また、赤羽経済産業副大臣からも、福島第一原子力発電所の廃炉には海外の英知を結集する必要があると、そのための前提としてもCSC締結することが必要という発言がございました。  こういった御発言を踏まえまして、世耕副長官から御指摘の発言があったというふうに承知をしてございます。
  96. 新妻秀規

    新妻秀規君 福島事故の収束の加速のためということは理解をいたしました。  じゃ、御退席いただいて結構でございます。
  97. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 木村参事官、御退席いただいて結構です。
  98. 新妻秀規

    新妻秀規君 次に、条約の遡及の適用についてお尋ねをいたします。  この条約は遡及適用されないと理解をしております。  条約第一条の(i)によりますと、「「原子力事故」とは、一の出来事又は同一の原因による一連の出来事」と定義をされています。この点については、十一月の五日、衆議院の文部科学委員会で松本委員が、福島第一原子力発電所の廃炉を進めていく中で事故が発生した場合、条約の適用対象となるのかと質問したが、一連のものであると認められれば遡及適用はされないという答弁でした。  一連のものとはどのようなものなのでしょうか、またどのような基準で判断をするのか、御答弁をお願いします。
  99. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 条約の遡及適用についてのお尋ねでございますけれども、今委員から御指摘のありましたとおり、CSCは遡及適用されないと。したがって、CSCが適用されるか否かということは、損害を発生させる原子力事故が起こった時点がCSCの締約、発効後か前か、発効後かあるいはその前かということで判断されるわけでございます。この判断の基準につきましては、これも委員から御指摘ございましたように、同一の原因による一連の出来事と判断されるものであるかどうか、そういうふうに判断されないのであれば、CSC締結、発効後の原子力事故ということでCSC対象となるわけでございます。  まず、前提として申し上げますけれども、二〇一一年の福島原発事故を含め、条約締結、発効以前に既に発生した原子力事故については、当然CSCが遡及適用されるとは考えられないわけでございます。他方、例えば我が国CSC締結し、その後、CSCが発効した後に福島第一原発廃炉汚染水対策等において事故が発生して、この事故が二〇一一年の福島第一原発事故とは別の原子力事故と解される場合にはCSC対象になると考えます。  ここで、この別の原子力事故という言葉の意味でございますけれども、条約の用語の通常の意味に即した現時点での政府の考え方というふうに申し上げたいと思います。実際に個々のケースでそれがどういうふうに判断されるかというのは、訴えが提起された時点で裁判所がその個々の事情、個々の事例を取り巻く様々な要素や事情を考慮して最終的な判断を下すということになるのかなというふうに思う次第でございます。  以上でございます。
  100. 新妻秀規

    新妻秀規君 先ほど内閣官房からも御答弁いただきましたように、この条約を急ぐ理由というのは福島事故からの収束を加速するためだということです。なので、海外の事業者にとって分かりやすい説明が求められると思うので、この点について、施行通知などの様々な媒体を通して基準の明確化をお願いをしておきたいと思います。  次に、事業者への責任集中がどのようにして国際標準の考え方となったのかの経緯についてお尋ねをいたします。  本来、原子力事業に起因する損害賠償コストは、原子力事業者とともに、原子力の機器のメーカーも責任を負担すべきであります。にもかかわらず、第四条第一項では、原子力事業者責任集中させて、原子力機器メーカーは責任を負わないという仕組みになっていると認識をしております。  こうした原子力事業者責任集中させるという考え方は、どのような経緯で国際標準の考えとなったのでしょうか、答弁をお願いをいたします。
  101. 引原毅

    政府参考人引原毅君) お答え申し上げます。  原子力事故事業者への責任集中経緯でございますけれども、これはかなり遡るのでございますけれども、一九六〇年にOECDにおいて、三つあります国際的な原賠制度一つでありますパリ条約というものが採択されております。  それから、一九六三年に、やはりIAEAにおいて同様のウィーン条約というものが採択されておりますけれども、もうこの時点で、それぞれの起草過程におきまして、被害者の迅速な救済等の意義に鑑みて、各国原子力事業者への責任集中の規定を置くということで一致をしたわけでございます。  その後、こうした流れの中で、一九九〇年代に入ってCSC検討、起草過程が始まるわけでございますが、そこにおいても、既に国際的な標準となっておりました事業者への責任集中の規定が設けられるということになったわけでございます。ちなみに、我が国原子力損害賠償法もこの原則を共有しておるものでございます。  以上でございます。
  102. 新妻秀規

    新妻秀規君 分かりました。  次に、CSC条約締結に伴って、米国の原子力企業がどのような責任を持つのかについてお尋ねをいたします。  アメリカは既にCSC条約締約国となっております。我が国原子力施設に米国のそうした事業者が納入した原子炉等の機器に対するアメリカ企業の責任は、この条約CSC条約の発効前後で変わることになるのかどうか、御答弁をお願いをいたします。
  103. 引原毅

    政府参考人引原毅君) CSCの規定の中には、もちろん原子力損害に関しての事業者責任集中というものがございます。ですから、我が国原子力事業者責任集中すると、事故が起きればそういうことでございますけれども、これは、現行の我が国原子力損害賠償法においても同様でございます。  ただし、我が国CSC締結しておらない段階では、裁判管轄権集中というのがございません。したがって、何か事故が起きた場合で、これによって越境損害等が発生している場合に、その当該メーカーが我が国以外の国において訴えを提起される可能性というのは排除されないわけでございます。  ところが、我が国CSC締結すれば、この裁判管轄権集中というのがございますので、必ず我が国の裁判所にこの損害賠償の訴えは専属するということになりますので、これを通じて被害者の迅速な救済が図られる、あるいは関連事業者の法的な予見性というのも高まるというふうに考えております。  以上でございます。
  104. 新妻秀規

    新妻秀規君 明快な答弁、ありがとうございます。  続きまして、今後の条約加入への働きかけについてお尋ねをいたします。  日本企業による原子力プラントの海外輸出に際しては、我が国から輸出相手国に移転される核燃料、また原子力の資機材が核開発などに利用されることがないよう、我が国と輸出相手国政府との間で原子力の平和利用、また核の不拡散、原子力安全関連条約の遵守等に関する法的枠組みを定めました二国間の原子力協定を締結することが前提になると理解をしております。  今後、日本企業が原子力プラントの輸出を新規に行おうとする場合、日本政府として、輸出相手国政府との二国間原子力協定の交渉に際して、本条約への加入を積極的に働きかけるつもりなのかどうか、御答弁ください。
  105. 宇都隆史

    大臣政務官宇都隆史君) 御答弁を申し上げます。  我が国は、福島第一原発、発電所事故当事国として、このCSCの加入を今回進めているわけですけれども、今後、二国間の原子力協定交渉に関しましても、いまだにこの損害賠償条約等に加入していない国に関しては、積極的にCSCへの加入を働きかけていきたいと存じます。
  106. 新妻秀規

    新妻秀規君 分かりました。明快な方向性だと思います。  次に、求償権についてお尋ねをします。  損害賠償した原子力事業者は、国内法原賠法の第五条のとおり、その損害が第三者の故意により生じたものであれば、その者に対して求償権を有するとされております。  現行の原賠法では、この第三者については自然人だけでなく法人も含むと解する余地があると考えますが、条約及びこれから審議をする国内法の法案におきましても、原子力事故損害を生じさせることを意図した自然人の作為又は不作為によって生じた場合においてということで、自然人という表現をしております。  現行の原賠法のこの第三者という表現と、今回の条約及び国内法案の自然人と表現が異なるわけでございますが、これによって問題が生ずることはないのでしょうか、御答弁をお願いします。
  107. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 委員指摘のとおり、ただいまの原子力損害賠償法改正案によりまして第三者から自然人ということに変更が生じるわけでございます。これは、条約の求償権の対象損害を生じさせることを意図した個人に限定すると、こういう条約の意図を国内法にも適用しているということでございます。  これの問題が生じることはないかというお尋ねでございますけれども、法人が故意に原子力損害を発生させるということは理論上はもちろん排除できないわけでございますけれども、現実には極めてまれなケースであるということをまず申し上げたいと思います。  それから、その上で更に申し上げれば、条約上も、原子力事業者は契約に定めがある場合は故意に原子力損害を発生させた法人に対して求償することができる、そういう仕組み条約の中に設けられているところでございます。  以上でございます。
  108. 新妻秀規

    新妻秀規君 次に、じゃ留保事項についてお尋ねをしようと思います。  今回の条約には留保事項が付されております。三つあります。一つ目に、少量の核物質等を我が国の基準により適用除外となるよう、二点目、我が国の領海内等において生じた我が国と他の締約国原子力事業者間の輸送中の原子力事故について、我が国原子力事業者責任を負うよう、三点目、原子力施設内の事業者以外の財産賠償対象となるよう留保を付した。この三点にわたる留保事項はなぜ必要なのでしょうか、御答弁をお願いします。
  109. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 今委員から御指摘いただきましたように、三点の留保を付しております。  最初の少量の核物質等につきましては、これは何がこの少量の核物質に当たるのかということをIAEAの理事会で定めるということにしておりますけれども、まだこの決定が行われておりませんので、我が国としては、我が国の国内で今適用しております基準を基本的に準用する、そのための留保でございます。  それから、二点目の国際輸送の場合でございますけれども、これは、現在、我が国法制度におきましては、我が国の領海内で国際輸送の際に事故が起きたという場合に日本原子力事業者責任を負うということになっておりますけれども、この制度を維持するための留保ということでございます。  それから、三点目の原子力施設と同一敷地内の他者の財産ということでございますけれども、これは、現在、日本では、事故が起こった原子力施設の敷地内にある財産については、それが事業者自身の財産でない限り必ず賠償対象とする、この制度を維持するためのやはり留保でございます。  ちょっと簡単に申しましたけれども、いずれも今回行う留保は我が国法令整合性との観点から行うもので、国内法令に従った運用を可能にするために取ったものということで御理解いただければと存じます。
  110. 新妻秀規

    新妻秀規君 明快な答弁だったと思います。ありがとうございます。  最後に、裁判管轄権集中についてお尋ねをします。これは、先ほどの小川敏夫委員との質問ともかぶる質問でございますが、改めて私からも問いたいと思います。  他国で発生した原子力事故について、裁判の管轄を原子力事故の発生国に集中させており、日本在住の原子力事故被害者は国内で訴訟を提起できないと理解をしております。また、準拠法は管轄裁判所の法となるために、裁判管轄地の損害賠償法令救済内容として不十分であった場合には日本在住の被害者に十分救済が及ばないことも考えられます。これについてどのように捉えていらっしゃるのでしょうか、答弁をお願いします。
  111. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 御指摘のように、CSC締結後は、締約国である外国原子力事故が発生し我が国越境損害が発生した場合、これは当該外国が管轄国となり、日本在住の原子力事故被害者は当該外国で裁判に訴える、こういったことになります。  CSC締約国においては、無過失責任、そして内外無差別等の国際水準に適合した賠償制度が整備されることになります。そして、一定額賠償措置の義務付けあるいは拠出金制度によって損害賠償資金的裏付けが確保されることになります。また、条約に基づき裁判管轄権を有する裁判所が下した判決につき、事業者に対して執行できることが確保されることになります。  このように、他の締約国で裁判が行われる場合であっても国際水準の被害者保護が確保されるということになりますので、被害者救済の観点から考えましても、この裁判管轄権集中等の制度は合理的であると考え、我々として前向きに捉えております。
  112. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 新妻秀規君、終了しておりますので、おまとめください。
  113. 新妻秀規

    新妻秀規君 はい、分かりました。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  114. 田中茂

    田中茂君 みんなの党の田中茂です。  早速ですが、今回の原子力損害の補完的な補償に関する条約、いわゆるCSCについて、一点のみお伺いいたします。今後、原発関連輸出が見込まれる国や周辺国への条約加盟の働きかけについてお伺いしたいと思います。  今回、日本締結すれば、アルゼンチン、モロッコ、ルーマニア、アメリカ、UAEに続いて六か国が締結することになります。ただし、この六か国は必ずしも近接しているわけではなく、近隣国への越境損害への対処という意味では、現在は実効性に欠けていると言わざるを得ません。  そこで質問ですが、確かに原子力プラントメーカーが、設備等の輸出の際にはプラントメーカーには賠償責任がなくなりますので、輸出推進という一面も確かにあるでしょう。それを踏まえると、本来なら、今後、原発関連輸出が見込まれる原子力新興国に対して、国内法の整備とともに、CSC条約加盟の働きかけを強くすべきだと思われますが、その点はいかがでしょうか、お伺いします。
  115. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) このCSC締結する意義ですが、これは原子力損害に関する国際的な賠償制度構築への貢献、あるいは原子力事故時の賠償充実被害者の迅速かつ公平な救済、こういったメリットを享受するというのが目的でありまして、CSC締結することは、原発輸出を推進する、こういったことを目的とするものではないということをまずしっかり確認しておきたいと存じます。  CSC我が国締結することによって発効する見込みになっております。福島第一原発事故の当事者として、国際的なこういった枠組み構築に貢献すること、これは国の責務であると思っております。しっかりと貢献をしていかなければいけないと思っておりますが、おっしゃるように原発輸出目的とするものではないものですから、おっしゃるような、原発輸出が見込まれる原発新興国に特に働きかける、こういったことは想定はしておりません。
  116. 田中茂

    田中茂君 やはり、これは新興国、あと近隣諸国への働きかけが一番大事であると私は思っております。  先ほど小西委員から質問がありましたが、韓国もこのCSC締結を目指し国内法整備を進めているとのことらしいんですが、先ほど質問があってお答えになったので、この辺は割愛させていただきます。  ただ、私自身これ思うには、韓国は二〇〇九年にUAEのアブダビから原発を受注しており、今後も原発輸出など積極的な海外展開を図っていくのではないかと、そう思われております。それゆえに、日本原子力協定を結んでいるトルコ、あとベトナム、その辺にも働きかけをするのが適切ではないかと私は思っております。  我が党は、この条約に対しては反対ではありますが、国益を考えた場合には常にその辺を考えて、さらに隣国、特に中国、韓国、原発の導入が進められているような国、インドネシア、タイ、その辺での加盟国を増やすというのが極めてこれは大事なポイントにはなると思うので、働きかけを十分にその辺は行っていただきたいと、そう思っております。  この辺でこの条約についての質問は終わりにいたします。  次に、江渡防衛大臣に対する質問であります。  私は、江渡大臣に対する政治資金の問題については今回初めて質問をさせていただきますが、今まで一回もしておりません、今回が初めてです。私は別の観点からお伺いしたいと思っております。  それは、まず大臣は、今まで防衛大臣を三回、また衆議院安全保障委員会委員長も歴任されたいわゆる防衛関係のエキスパートであると認識しております。それゆえ、日米ガイドラインの見直し、中国の脅威にさらされているこの時期に、防衛を任される人材として安倍総理より大臣に任命されたものと拝察いたします。  防衛省は、数ある省のうちで、直接国の領土、国民の安全、安心を守る最も重要な役所だと私は思っております。そこで、まずお尋ねしたいのは、この国には国や民間に様々な組織がありますが、最も危機管理に優れている組織はどこだとお考えですか。大臣、お聞かせください。
  117. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) お答えいたします。  防衛省・自衛隊ではないのかなと、そのように考えておるところでございます。
  118. 田中茂

    田中茂君 私も、まさに危機管理に最も優れ、緊急事態に備えて最も訓練されているのは自衛隊だと考えております。もちろん、警察また消防も同じように危機管理に優れた組織であると思います。これらの組織は、上意下達が徹底していると同時に迷いのないのが特徴であります。  防衛とは、まさに危機管理であります。危機管理には、大別すると、リスクマネジメントとクライシスマネジメントがあります。御存じのように、皆さん当然御存じだと思いますが、リスクマネジメントはこれから起きるだろうという危機に対する管理、つまり様々な予防措置とも言えます。また、クライシスマネジメントは今現実に起きている危機の管理になります。危機をいち早く克服し、安全を回復するための管理と言えるでしょう。当然ながら、防衛はこの二つの危機管理が機能し合って初めて成り立つものだと思っております。  そこで、少々抽象的な質問ですが、国家防衛と危機管理について、大臣御自身のお考えをお聞かせください。
  119. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) お答えさせていただきたいと思います。  まさに委員指摘のとおり、危機管理というのは大変重要なことでありますし、また国家の存立にとっても大変大事なことであろうというふうに思っております。特に、防衛省・自衛隊、特に自衛隊というのは自己完結型の組織であるわけでありますからこそ、なおさら平素からそのための訓練や、あるいは防衛力の整備、そういうことをしっかりとやっていかなければいけないというふうに私は考えております。  ですからこそ、防衛省・自衛隊というものは、平素から防衛力の整備、あるいは日米同盟の強化、また部隊訓練などによって抑止力の向上というものに努めているわけでありますし、また、万が一事態が発生した場合に対応するために、二十四時間態勢でありますし、また三百六十五日の即応態勢というものを現在も維持しているところでございます。  ですからこそ、私は、今大臣といたしまして、このように二十四時間三百六十五日の即応態勢を維持しているこの二十五万人の隊員を預かる立場といたしましても、また国民を代表する政治家としても、今委員が御指摘のような危機管理というものをしっかりと考えながら日々職務に精励しなければならないと、そのように考えているところでございます。
  120. 田中茂

    田中茂君 本年八月十九日、深夜からの豪雨により、広島市北部で大規模な土砂災害が起きました。また、九月二十七日には御嶽山の噴火もありました。この二つの大災害に対し、自衛隊が懸命な救助活動、復旧活動を行ったことは記憶に新しいところであります。  防衛省のホームページに災害派遣の詳しい情報が掲載されていますが、例えば御嶽山における噴火に係る災害派遣について、最終報を見ると、九月二十七日から十月十六日の撤収までの活動が、毎日それこそ時間単位で克明に記されております。これはホームページ上のものですから、本来の報告書は更に詳細だと私は推察しております。  このホームページの御嶽山における自衛隊の活動内容は御覧になっていらっしゃいますか。
  121. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) はい、見させていただいております。
  122. 田中茂

    田中茂君 自衛隊の組織としては、活動内容を多くの人に知らせると同時に詳細な記録を残すということでごく当然なことをやっておられると思います。  翻って、その長たる大臣の政治資金収支報告書のずさんさはどうなっているのかと。さらに、起きた問題に対する処理もひどいと言わざるを得ません。リスクマネジメントやクライシスマネジメントが全く機能していない。また、それ以前の問題でもあると思います。  我が国に対する武力攻撃は、いつ行われるか分かりません。訂正も弁解も利きません。失敗すれば多くの人命が失われるかもしれません。自らの危機管理もできずに国家防衛に力が発揮できるのか。多くの国民は不安がっていると思いますよ。いかがですか。お聞かせください。
  123. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) お答えさせていただきたいと思います。  委員の御指摘、まずもってもっともなことだと思っておるところでございます。と同時に、この収支報告書の訂正の経緯ということは、これまでもこの委員会始めほかの委員会等々におきましても累次御説明しているとおりでございます。  まず、今年の八月の下旬におきまして、大臣就任等々の報道もあったことから、事務所の方におきまして改めて収支報告書を確認したところでございまして、そのときにおいて記載に誤りがあったということの報告があったものですから、九月の二日及び十日に訂正を行わせていただいたわけでございます。  本件につきましては、実際には職員らへの人件費でしたけれども、いずれも私に対する寄附というふうに誤記されていたものです。このような誤記が生じたというものは、職員らに人件費を交付するに際して私名義の仮の領収書を作成していたために、後日、担当者が政治資金収支報告書の作成の際にこの仮の領収書を私への寄附と混同してしまったことによるミスでございました。  以上が本件の事実関係でありますけれども、やはり、これまでも政治資金収支報告書につきましては、法令に従いまして、登録政治資金監査人による政治資金監査を受けるなど、私自身はきちんと作成し、確認を行ってきたつもりでありましたけれども、今回の訂正によりましてこの委員会始め各所に御迷惑をお掛けしたこと、これは本当に心からおわび申し上げなければいけない点だろうというふうに思っております。  今後、このようなことのないように、確実に、そして適正に対応してまいりたいと思っておりますし、また、しっかりとした形の説明責任を務めるように努力していかなければ、二十五万人の自衛隊に対して私は示しが付かないというふうに思っておるところでございます。
  124. 田中茂

    田中茂君 私はそういうことを聞いているんじゃないんです。大臣の心構えを、常に危機管理を持っていただきたいということを言っているだけです。  今年の四月に統合幕僚監部が発表した緊急発進、スクランブル回数のデータがあります。ここに私、お配りしておりますが、それによると、平成二十五年度、つまり二十五年の四月一日から二十六年の三月三十一日まで、スクランブル回数は八百十回。今年四月から九月までの六か月では五百三十三回。平成二十三年度が四百二十五回。二十四年度が五百六十七回。急激に回数が増えております。ちなみに、これまでの最高回数は昭和五十九年の九百四十四回であります。これは、東西冷戦の最終章を迎え、ソ連との関係が極めて緊張していた時期だと思います。ちょうど、大韓航空機事件が起こった時期もこの頃でしょう。  昨年度の八百十回の内訳は、中国機に対するものが四百十五回、ロシア機が三百五十九回、北朝鮮機などがその他三十六回となっております。平均すると、一日に二回以上緊急発進をしております。パイロットたちは、危機意識を持って常に緊張状態でスタンバイしております。  そのような中に、尖閣諸島や北朝鮮をめぐって緊張の真っただ中にあるこの時期、二か月間以上御自身の寄附問題や失言で時間を費やしているわけです。正直じくじたる気持ちでおられると推察します。防衛大臣という立場は、国の安全と直結しているという意味で極めて特殊なものだと考えます。国家そのもの、国民の命だけじゃなく、直接的には先ほどおっしゃったように二十二万五千人の隊員の命が懸かっている、そういう立場であります。その責任の重さ、緊張加減は尋常ではないと思っております。  したがって、何度も言いますが、優れた危機管理が求められます。危機管理は、何よりも初動の速さ、動き出しの速さが必要です。そして、即断力と決断力を持った強いリーダーシップ、加えて展開力と終着点を見通す力が求められます。実際、尖閣諸島では一触即発の状態が続いています。北朝鮮のミサイルがいつ飛んでくるかも分からない。そういう状況にあって、場合によっては自衛隊員が地球の裏側に行ってそういう職務に就くことがあるかもしれません。  自衛隊の最高責任者はもちろん総理であります。最終的な判断は総理ということになりますが、防衛大臣は自衛隊を動かす現場の最高指揮官と言えます。国民や隊員に対して、改めて防衛大臣として責任と任務についてどのようにお考えか、お聞かせください。
  125. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) お答えいたします。  確かに、委員のおっしゃるとおり、この二か月間、私の関わることで議論が思うように深まらなかったという点に対しては心から反省をさせていただきたいと思っております。  ただ、その中においても、御嶽山のときにおいても、毎日ですけれども、五時前後には役所の方から報告がありまして、今日ヘリが飛べるとか飛べないとかという、そういう連絡も全部受けながら、私は私なりにやれることは精いっぱい今までもやってきたつもりであります。  ただ、その中において、今回自分のことに対して、このような形で委員会の審議が思うように深まらないということはしっかりと反省しなければならないというふうに考えているところでございます。その点については私自身も猛省をしなければいけないと思っておりますけれども、しかし、その中においても、現在自分ができる範囲内で職務だけはしっかりとやり遂げようというその思いだけは強く持っているつもりでございます。また、そのことを自分自身もやり遂げなければ、防衛省・自衛隊員の皆様方に対して示しが付かないというふうに思っているところでございます。
  126. 田中茂

    田中茂君 今回のこの資金管理の問題、何が問題かというと、防衛大臣の職にある人物のリスク管理が全くなっていないと、これが世間にさらされたということであります。私はそう思っております。この大臣の問題は、インターネットを通じて世界中に流布されておりますが、どれだけ国益を損なっているのか。平常時からリスク管理と危機管理を怠らないことで、どんな事態が起きた場合にも適切な対応が迅速にできるわけであります。危機管理に必要かつ重要なのは、トップの姿勢とも言われております。トップに立つ者のリスク管理ができていないということでは、防衛省の職員全体の士気にも関わってくると、私はそう思っております。  かつて防衛庁長官を務めた方で、これは余談になりますが、当時の総理大臣から別の重要ポストを提示されたにもかかわらず、あえて防衛庁長官を志願された方がいます。その志願の理由を問われた際に何と答えられたかというと、日本防衛体制及び世界との安全保障体制がいかになっているのか、それを詳細に調べると、さらに、日米関係の基軸は安全保障にある、日米関係をつなぐぎりぎりの線はどの辺にあるのか、日米関係の表に現れない底の底を知っておきたいからだと、そう言われたそうであります。  今現在、辺野古移設問題があり、海兵隊のグアム移転があり、新ガイドラインもあり、アジア太平洋地域のリバランスがある。その中で、我が国の国益を考えて、日本国家としての独自の視点を常に見据えて最大の注意を払っていただきたい。そういう意味でも、重責を担う大臣の一層の自覚と危機管理をお願いし、私のこの質問を終わりにしたいと思います。
  127. 小野次郎

    ○小野次郎君 維新の党の小野次郎です。  今日は、CSC条約について質問させていただきます。  まず、大臣にお伺いしますが、このCSC条約加盟によって、こういう声があるんですね。国内、さらには諸外国における原子力損害補償の額の一般的な相場観というんですかね、それを知っているのは、相場観というか、現実に一番経験しているのは日本なんですけど、そういった日本がこれにすんなりと入ってしまうことで、逆に一般的傾向を低いレベルに誘導してしまうんじゃないかという声があるんですね。  それでは、福島原発事故を経験して、このことは今日は特に深くは入りませんけれども、そんなものじゃ済まないということを一番全国民が体感した我が国では国民常識にも反すると思うんですけれども、そういった指摘、問題意識に対してはどのように大臣、御説明になりますか、この条約意義というものを。
  128. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、このCSC条約ができ上がる、採択されるまでの経緯ですが、一九八六年にチェルノブイリ原子力発電所の事故が発生をしました。その後、国際的に原子力損害賠償の強化に向けての機運が高まり、そしてIAEAにおいてこうしたCSC起草作業が進められました。そもそも、CSCはその議論の中で、原子力損害賠償の額を増やすべき、こういった観点から議論が進められた条約であります。そして、原子力損害賠償枠組み構築していく、こういった目的のために作成された条約です。  CSCにつきましては、賠償額等の観点からいいますと、現実と比べてどうかという御指摘、先ほど来ありました。これにつきましても、今現在国際社会に存在する三系統の条約の中では最も充実したものですし、そして拠出金制度も併せて持っている、こういった制度であります。  我が国としましては、まずはこのCSC締結し、そしてこれを近隣諸国等にもしっかりと働きかけて、そして国際的な枠組みをつくることにまず貢献することが重要だと思っておりますし、そして国際的な枠組み制度づくりについてはIAEAで今議論が引き続き行われています。我が国としてその議論に貢献することによって、より我が国の知見や経験に基づいて、ふさわしい制度をつくるべく、しっかりこれから貢献していくのが我が国として国際的な責務を果たすことにつながるのではないか、このように考えます。
  129. 小野次郎

    ○小野次郎君 お言葉ですけれども、どうにもすんなりとは受け入れにくいと思うんですね。  例えば、火災保険に入っている方が、地震特約に入っていなかったので、地震特約入っていれば家が再建できたのに大きな天災でカバーされないのは残念だという、そういう話はよく生活の中でも聞きますけれども、もう福島を経験した我々にとってみて、この金額というか、このベースのもので、入っていなかったからどうだった、入っていれば良くなったということを世界に対して何か言うような内容じゃないような気もするんですけれども。  別の聞き方をちょっとさせていただきますけれども、我が国の経験に照らして言えば、この原発の安全対策、今、自然エネルギーとの関係でいえば、この安全対策のコストというのはどれぐらい、今まで計算していなかった部分ももっと実はあるんだということを、議論が進んでいるわけですけれども、その安全対策のコスト、さらには事故の際の補償のコストというのは、これまで考えてきた常識より丸が幾つも違うものだということが、我々自身は自覚したわけですよ。  だとすれば、むしろ高いハードルなんだと、原発を維持するとか原発を導入するということは物すごく高いハードルが伴うものなんですよということを世界に説明することの方が、事故経験国としては日本責任なんじゃないかと。私たちもその皆さんのおつくりになったやつに入りますからと言っていたんではちっとも周りの国は理解しないじゃないかと思うんですけれども、大臣、もう一度お考え、お話しください。
  130. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) このCSC意義ですが、この締結意義は、やはり被害者救済を迅速に行えるような体制をつくるということだと認識をしています。  補償額について御指摘がありました。しかし、その金額だけではなくして、例えば裁判管轄権集中ですとか、無過失責任ですとか、責任集中によって、より予見可能性が高まる等を通じて、被害者救済がより明確になり、迅速に行われる、こういった点も大変重要なポイントであると思っています。このトータルによって被害者救済が迅速に進む、これがこのCSC意義としては大変重要なのではないかと思いますし、何よりも、こういった制度国際社会全体で共有する、こういった枠組みをつくる、これに日本が貢献するというのは大変大きな意味があるかと存じます。  そして、金額についての御指摘がありました。この点等につきましては、引き続き我が国としての知見や経験をしっかりと国際社会と共有して、より充実した、そしてあるべき制度をつくるべく、我が国として働きかけを行い、貢献をしていく、こういった態度が重要なのではないかと考えます。
  131. 小野次郎

    ○小野次郎君 あってはならない原発事故での被害者という立場から見たときに申し上げれば、この補償とか賠償について、自前で十分な資力というか、財政に力がない国が、こういったある種何か保険と似たような感じがする制度ですけれども、そういった制度を整備して、そのことによって原発依存を高めたり、あるいは新規に誘致しようという考えに走っていくんだったら、日本の、まあ日本であれどこであれ、被害者あるいは被害者になるかもしれない人々の気持ちからしたら、危険が増えるばっかりでちっともいいことないように思うんですけど、我が国にとってどんなメリットがあるとお考えですか。
  132. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、このCSC原発輸出を推進することを目的とするものではありません。やはり被害者救済を迅速に行われる、こういったシステムをつくるということだと思っていますし、また、各国においては、原子力賠償制度我が国と比較しましてかなり貧弱、乏しい制度しか持っていない国も存在いたします。こういった国においても、この条約において最低限のレベルのものを普及させる、こういった意味がこの条約にはあると思いますし、こういった枠組み国際社会において広めていく、共有する、このことが大変重要なのではないかと認識をいたします。  基本的に被害者救済の迅速化を図る、こういった制度でありますが、国際的な枠組み国際社会の中で広がるという点につきましては、今申し上げましたようなメリットもあるのではないかと考えます。
  133. 小野次郎

    ○小野次郎君 それでは、次は少し、この条約の定める国の責任原発事業者責任などについてお伺いしたいと思いますけど、賠償責任に関して、この条約は、原子力事業者が無過失の賠償責任集中して負うというふうになっていますけれども、簡単な話、その原子力事業者が、ああ、倒産です、経営続けられませんといったら、これ誰がその後責任を引き続き負うんですか。
  134. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 今委員指摘ありましたように、その電力事業者に対する責任集中というのがこのCSCの基本的な考え方でございます。  これは、まずこの考え方自身でございますけれども、原子力事故というのは、一たび発生いたしますと甚大な被害が発生いたしますし、また、その過失の立証というのも非常に難しい、そういった中で、速やかな被害者に対する救済の実現ということを図るためにこういう制度が設けられているわけでございます。  そもそも、原子力事故が発生したときに賠償責任制度をどのように構築するかということは、それは基本的には各国判断ということでございます。  その上で申し上げますけれども、今冒頭にも御説明したような事業者への責任集中、これは被害者救済という観点からメリットがあるということで、CSCではそういう考え方を取っておりますし、のみならず、そのほかの国際的な原子力損害賠償制度でありますパリ条約あるいはウィーン条約といったような条約でも共通の、言わば国際条約共通のスタンダードの規定ということになっているわけでございます。この条約の規定の下では、今委員が御指摘ございましたように、原子力損害について直接政府賠償責任を負うということにならないわけでございます。  ただ、実際に各国でどのような制度が取られているかということを見てみますと、事業者では賠償が履行できないと、こういったような事態が発生したときに政府が必要な措置を講ずるということは、実はこれは原子力損害制度の分野において、CSC締約国を含めまして各国で一般的に行われているような制度であるということは申し上げることができるかと存じます。  ちなみに我が国につきましても、被害者にとって、CSCと同様に電力事業者への責任集中というのがございますけれども、それと併せて、政府として必要な措置をとるということは原子力損害賠償法制度で規定をされているということでございます。  以上でございます。
  135. 小野次郎

    ○小野次郎君 何か僕の質問に的確に答えていただいていないと思うんですが、無過失で賠償責任集中して負う原子力事業者が事業を続けられなくなったら、この仕組みの中では誰が賠償を続けて行うんですか。
  136. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 今のお尋ねでございますが、CSCということでありますれば、それは、CSCというのは、国と国との関係といたしまして、これだけの例えば事故が起きたときに最低三億SDRの賠償責任というものを果たさなくちゃいけないということを規定しているわけでございますけれども、それを国内的にどのように担保するかということは各国判断に基本的に委ねられているということでございます。
  137. 小野次郎

    ○小野次郎君 原子力事業者賠償が払い切れなくて事業も続けられない、倒産したという場合には、このスキームの中では誰が賠償責任を引き続き負うんですか。
  138. 引原毅

    政府参考人引原毅君) ちょっと繰り返しになりますけれども、三億SDRまでにつきましては、そういうきちんとした賠償制度が行われるようにそれぞれ各国が、例えば政府保証でありますとかあるいは保険制度でありますとか、何らかの制度によってきちっとした賠償が行われるような制度を整える、そういう義務を負うわけでございます。  その範囲を超えて更に拠出金による賠償制度充実というのがございますが、その範囲も更に超えたら、これはもう各国制度に委ねられるということで、CSC上特段の義務を締約国が負うというわけではございません。  以上でございます。
  139. 小野次郎

    ○小野次郎君 そうすると、三億SDRの範囲でこの当事国事故発生国の政府原子力事業者について保証人みたいな立場になるということですか、連帯保証人みたいな立場に。
  140. 引原毅

    政府参考人引原毅君) それぞれの締約国におきまして三億SDRというのをどういう形で補償するかというのは、様々なやり方があるかと存じます。  今委員が御指摘なさいましたように、政府がそれを担保するというやり方もあれば、例えばそれぞれの電力事業者に民間の保険契約を結ばせて、それによって必ず三億SDRは担保できるようにすると、そういったやり方もCSCの認めるところでございます。
  141. 小野次郎

    ○小野次郎君 別の質問をしますけれども、この原子力事業者以外に大きな責任が追及される事故というのも幾らでも考えられると思うんですね。例えばプラント建設をした建設会社に大きな過失があったということもあるでしょうし、それから納めている様々な機器に製造物責任とか瑕疵があったというようなケースもあると思うんですね。あるいは据付けの業者にミスがあったということもあると思うんです。  更に言えば、いろんな事故の際に、必要な法律で定められた監督だとか立入りだとか指示だとかをしていなかった行政当局の責任が問われることもあると思うんです。それはさっきの締約国政府責任とは別に、具体的ケースについて、行政の例えば定期的な検査をしていないとか、当然直しなさいという指示を出すべきだったのにそれをしなかったとかというのが過失として問われるケースもあると思うんですが、そういう問題についてはこの条約の枠内ではどのように捉えられるんでしょうか。
  142. 引原毅

    政府参考人引原毅君) お答え申し上げます。  CSCの附属書第三条9でございますけれども、原子力損害が生じた場合に原子力損害賠償を誰に対してその請求をするかということでございますけれども、それは、そういう請求、要求は、責任を負う事業者、電力事業者に対してのみ行使できるという旨の規定がございます。これはいわゆる電力事業者に対する責任集中ということであります。  先ほども申し上げたわけでございますけれども、これは、原子力事故というのは一旦発生すると甚大な被害が発生する、また、なかなか、どこに責任があったのか、どこに過失があったのかということを立証することが困難である、そういう事情があるわけでございますから、事業者の過失を立証することなく事業者賠償を求めるということを、迅速な被害者救済等の観点からこういう制度を設けておるということでございます。したがって、今御指摘のございました、例えばプラント建設業者あるいは機器を納入したメーカーといったような責任を排除する形で、原子力事業者責任集中をしているということでございます。
  143. 小野次郎

    ○小野次郎君 国内法でのいわゆる求償権みたいな形で、それ以外の当事者の責任については原子力事業者から、事後にというか、並行してか分かりませんが、求償権的に当たっていくということですか。
  144. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 直接の被害者に対する賠償ということでは今申し上げたとおりで、電力事業者がその任に当たるということでございます。  他方、CSCの第十条に求償権の規定がございますけれども、一定の場合に事業者が求償権を他の者に対して有するという場合がございます。これは、一つには書面による契約であらかじめそういうことが定められている場合、その場合には、そういうその契約の相手方に対して事業者が求償権を有すると、そういう制度がございます。それからもう一つは、原子力事故が、損害を生じさせることを意図した自然人の作為又は不作為、つまり故意でございますけれども、によって生じた場合においては、当該自然人に対して求償するということがCSC上認められているところでございます。
  145. 小野次郎

    ○小野次郎君 僕も厳密には分からないんですが、日本の民法でいうと、別の人が本当の責任があるのに原子力事業者が代わりに賠償で払っちゃった部分は、どういう権利が本当の責任ある人との間で残るんですか。どうやってそれ決済するんですか。
  146. 引原毅

    政府参考人引原毅君) CSC、あるいはそれを受けた原子力損害制度ということで申し上げれば、この求償権については、民法、通常の一般のルールとは違う制限がございます。求償権が認められておりますのは、今申し上げたように、契約によってそれが明示的に認められている場合、あるいは損害を生じさせることを意図した故意の自然人の作為又は不作為による場合に限定されるということでございます。
  147. 小野次郎

    ○小野次郎君 それは、日本の民法なんかに修正掛けなくていいんですか、そういうことで。
  148. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 現在の日本原子力損害賠償法についても同様の規定が、基本的には同様の趣旨の規定が設けられていると、民法からの例外ということになるかと存じますけれども、設けられているということでございます。
  149. 小野次郎

    ○小野次郎君 この条約の立て付けというのは非常に難しい、分かりにくい制度になっていると思いますけれども、私は、まず何よりもこの原子力事業者の十分な資力というのか弁済能力というか賠償能力というものをやっぱり国際的に担保するような仕組みがこの今の現状では弱いような気がいたします。その保証人的になるのが、四百七十億円までしか国としても保証しないのであれば、とても大きな事故のときにこの原子力事業者補償できなくなるし、さっき僕が申し上げた高いハードルだということを業者は自覚しないで事業を進めてしまう可能性があると思うので、非常に不満でございますが、党の方の政調でも、小さな一歩か何か知らないけれども前進ではあるという評価を私の党でもしていますので、法案には賛成いたしますけれども、これはまだまだ前へ進めていただかないと不十分な条約だなと思いますけれども、今申し上げたような結論を私としては持っているところでございます。  質問を終わります。ありがとうございました。
  150. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  CSC条約の批准について、外務大臣は今日も、原発輸出目的としたものではないと繰り返し答弁をされております。  一方、二〇〇八年の原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会の第一次報告書では、このCSC参加検討する上での政策的課題として、我が国原子力産業の国際展開の支援が明確に挙げられております。  原発輸出の支援になると判断をしたから参加をするということではないんでしょうか。
  151. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、CSCは、個別の民間企業の商活動について取り決めるものではなく、また、原発輸出を推進することを目的とするものではありません。  CSCには、その前文におきまして、原子力損害賠償又は補償の額を増加することを目的とし、当該措置を補完し、及び拡充するための世界的な責任制度を設けることを希望する旨の言及があります。  このように、CSCは、原子力損害について、国際的ルールに基づき被害者賠償を得られるようにするための条約一つであり、被害者に対する賠償充実を趣旨とするものです。また、CSCは、被害者救済等の観点を踏まえて、事業者の無過失責任及び責任集中の基本原則を定めております。そして、このCSC締結によりまして、締約国間で適用される共通ルールが定められ、予見可能性が高まる、こうしたことも考えられます。  御指摘の報告書における記述については、CSC締結意義一つである原子力関連事業における法的予見性向上に関する一論点として資料に盛り込まれたものと承知しておりますが、いずれにしましても、冒頭申し上げましたように、CSCは個別の民間企業の商活動について取り決めるものでもなければ、原発輸出を推進することを目的とするものでもございません。
  152. 井上哲士

    ○井上哲士君 これ、業界の方は本音を語っているんですね。  これ、電気業界が出しております日本電気協会の新聞、電気新聞というものがありますが、二〇一二年六月二十七日付けを見ますと、「政府、原賠条約加盟へ メーカー免責、輸出に利」と、こういう見出しで、CSCに加盟すれば、仮に輸出先で原子力事故が起こっても日本企業の免責につながるため利点が多いと政府判断したと、こういうふうに書いております。  原発輸出環境を整えることになると、こういうことも否定をされるんでしょうか。
  153. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) メーカーは確かに被害者との間で賠償責任を直接負わないという条約の内容になっておりますが、書面による契約の範囲内で事業者から求償権を行使され得る、これはもう条約上定められております。原子力事故が発生した場合に、メーカーが常に一切の金銭的負担を免れるということではないと考えます。メーカーが被害者との間で賠償責任を負わないのは、無過失責任の下、事業者責任集中させることで被害者の迅速な救済を可能とするよう、被害者保護のための原則であると認識をしております。  このCSC締結によって予見可能性が高まるということは事実ですが、このことによって個別の民間企業の商活動について取り決めるものでもなければ、原発輸出を促進するという目的のためにこの条約があるというものではないと考えています。
  154. 井上哲士

    ○井上哲士君 衆議院の文科委員会質疑では、原発輸出環境を整えることになるのかといいますと、結果としてそういう環境が整えられることだということはちゃんと文科省の審議官が答弁をされている話でありまして、予見可能性という言い方でありましたけれども、そういうことにつながっていくということだと思うんですね。  政府は、今年六月の原子力協力に関する日米二国間委員会の第三回会合でも、今年中にCSCを国会に提出をし、他国にも加入を呼びかけると、国際的な原子力賠償枠組み構築して米国と協働すると、こういう意思を日米間で確認をしております。大体原子力のことというのは、日本政府の言うことよりもアメリカのことを見た方がよく分かるんですね。結果として、環境を整えるのではなくて、それなしに原発輸出ができないということじゃないんでしょうか。  アメリカはインドと二〇〇八年に原子力協定を結びました。インドはNPT条約に加入していないので核拡散への懸念がありましたけれども、原発輸出を狙って懸念の声を抑え込んで結んだわけですね。同年、インドは、CSC条約締約国になると決定して二〇一〇年に署名いたしました。アメリカはこれを重要なステップだと歓迎をしたんですね。  ところが、アメリカが予想しないことが起きました。インドが二〇一〇年に原子力発電責任法案というのを成立をさせました。この法律は、原子力事業者への責任集中ではなくて原子炉メーカーにも責任を負わせると、こういう内容になっております。この法律が、では、いかにアメリカを動揺させたかというのは、いろんな報道がありますが、例えば、同年十月十日付けのウォール・ストリート・ジャーナル、こう書いております。インドが八月下旬、原子力発電プラントの原子炉やその他設備を供給する事業者責任を負わせる法案を可決した。同法は、ゼネラル・エレクトリック社やウェスチングハウス社などの企業を動揺させ、これらの企業が原子力技術をインドに販売できない可能性を生じたと、こう書いております。  アメリカがこのように動揺したように、原発メーカーにも事故賠償責任が負わされれば原発輸出ができないと、こういうことがこの条約批准の大きな目的じゃないんですか。
  155. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) このCSCにおきまして、事業者の無過失責任あるいは責任集中の基本原則、これを定めておりますが、これは国際的にも標準となっている原則です。これは被害者への公平そして迅速な補償を趣旨とするものであり、被害者救済において大変合理的な原則であると認識をしております。  この条約目的は今申し上げたような点に中心があると思っておりますし、あくまでも我が国判断として、このCSC条約締結に関しまして努力をし、作業を進めている次第であります。
  156. 井上哲士

    ○井上哲士君 私は、今年の六月にわざわざアメリカと協働するという意思を確認をしている、その思惑は何かということを質問をしているわけですね。  アメリカがインドで困っているというのはこの報道だけではありません。アメリカのシンクタンクの戦略問題研究所が二〇一〇年の九月に、米国はだまされたのかと、こういう見出しの記事を書いておりますが、インドの新法は、事実上、米国の供給事業者が協定の主要な利点であったインド市場へ進出するものを阻みかねないと述べて、米国は既に法律の修正を確保するために動いていると当時述べております。ところが、このインドの法律はいまだに修正をされておりませんで、インドは、CSC条約署名したままで批准をしておりません。  今年の九月二十四日のアメリカの議会調査局の報告書を見ますと、この問題が米企業のフラストレーションの発生源であることに変わりはないと述べた上で、協定から九年たってもインドの国内法のためにアメリカ企業はインド参入を嫌ったままだと、CSC条約とインドの国内法は両立しないと、こういうふうに述べているわけですね。  アメリカも日本も、今国内での原発建設が非常に困難な中で、輸出で利益を上げたいという点では思惑が一致しておりますし、しかもGEは、日立と原発部門を統合しました。ウェスチングハウスは東芝が買収をしたと。まさに日米一体なんですね。  日本CSCを批准することによってこの条約を発効させて、インドにも批准を働きかけて、原発メーカーの賠償責任を課す国内法を修正させたいし、さらに他のアジアの国々にも批准を働きかけて原発輸出の条件を整えたいと、これがCSC条約で日米が協働する、こういう共通の思惑だということではないんですか。
  157. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) CSC意義は、あくまでも先ほど申し上げましたように被害者救済の迅速化あるいは充実部分にあると認識をしています。また、国際社会においても、このCSC我が国が加盟することによってCSCは発効するわけでありますし、そして、近隣諸国等にしっかり働きかけることによって国際的にしっかりとした原子力損害賠償制度構築することに貢献していく、こういった意義があると考えております。  そして、企業にとってこうしたCSC締結は、予見可能性を得る、こういったことになるとは考えますが、このことは、例えば今後、福島第一原発廃炉汚染水対策に知見を有する関連企業が活動をする、その際の環境を整えるという意味からも意義あることではないかと考えております。  こうしたCSCの様々な意義、これをしっかり総合的に判断した上でこのCSCを評価し、そして是非、前向きに取り組まなければならないと考えます。
  158. 井上哲士

    ○井上哲士君 私もアメリカ側のいろんな議会の報告書も含めて示しましたけれども、それについての正面からの答弁はありませんでした。  この原発輸出という点ではまさに日米が一体でありますけれども、そのための必要性ということをアメリカが非常に言わば露骨に表明をしていると。私は、これに協働してやっていくということがこの条約の大きな目的だということを改めて指摘をしたいと思います。  そのことが一体何をもたらすのかと。日弁連が意見書で、原発メーカーが製造物責任を負わない今のこの現行制度は、メーカーのモラルハザードを招いて、事故防止に対する責任ある取組がおろそかになると、こう指摘をしております。そして、この条約でも、原発メーカーが損害賠償責任を負わないことによって、賠償金支払のリスクを負わずに原発輸出を進めることの正当性は見出し難いと、こういう指摘をしておりますが、こういうモラルハザードを助長するようなことを許していいのかと。この点、大臣、いかがでしょうか。
  159. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、CSC締結されることによって、国際ルールに基づいて被害者賠償を得られることになります。被害者への公平かつ迅速な補償を確保する、このCSCの大変重要な趣旨だと認識をいたします。無過失責任あるいは責任集中、こうした原則、これは国際的な標準となっており、国際的にもこうした取組は合理的なものであるという認識が共有されていると考えております。  そして、モラルハザードについて御指摘がありましたが、CSC締結、これは今申し上げたような目的意義があると考えておりますし、特定の業界、業種への偏った支援を行うというものでは全くありません。  また、モラルハザードということで、例えば原発メーカーに対する求償についても先ほど来何度か御指摘、御質問がありましたが、この求償につきましても、書面による契約の範囲内で事業者が求償権を有する、こういったことは可能であるとされているわけでありますし、また、安全等厳しい規制については、様々な他の国際枠組みにあります。原子力安全についてはそうした様々な枠組み、規制によってしっかりと国際的な取組が求められているところでありますので、今おっしゃったように、全体としてモラルハザードを招く、こういった御指摘は当たらないのではないかと考えます。
  160. 井上哲士

    ○井上哲士君 福島事故の収束もできていない、そして賠償もきちんとできていないにもかかわらず、忘れたかのように原発輸出に進めること自身が私はもうモラルハザードだったと思います。こういう方向をやることは、福島事故を起こした日本が取るべき責務とは全く逆だということは強く申し上げておきたいと思います。  時間が少なくなりました。  沖縄の知事選結果について、江渡大臣にお聞きいたします。  十六日に行われた沖縄県知事選挙では、辺野古の新基地が大争点になりました。オスプレイの配備撤回、普天間基地の閉鎖、撤去、県内移設断念を求める二〇一三年の建白書、これに示されたオール沖縄の声を代表する翁長候補が、県民を裏切って辺野古基地を推進した仲井眞知事を十万票の大差で破りました。  なぜこんな大差になったのか。そして、新基地建設ノーの審判が下ったこの選挙結果、どのように受け止められているでしょうか。
  161. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) お答えさせていただきたいと思います。  まず、この沖縄の知事選挙であるわけでありますけれども、地方自治体の首長の選挙の結果につきまして、防衛省といたしましてはコメントするということは差し控えさせていただきたいと思うわけであります。  その上で、一般論といたしまして、選挙では様々な施策等の面で各候補者というものが主張というものを戦わせるわけでありまして、選挙結果はそのような前提で受け止める必要があろうかというふうに考えているところでございます。  その上で申し上げさせていただけるならば、この普天間飛行場の固定化というものは、これは絶対に避けなければならないということ、この点については、政府としても、また沖縄においても共通の認識であろうというふうに思っております。辺野古への移設というものが唯一の解決策であるということは政府の一貫とした立場でございます。  防衛省といたしましては、今後とも沖縄の負担軽減に取り組むとともに、一日も早い普天間飛行場の返還とキャンプ・シュワブへの移設に向けて引き続き全力で取り組ませていただければと考えているところでございます。
  162. 井上哲士

    ○井上哲士君 是非、世論調査、そして現地も含めた新聞もちゃんと読んでいただきたいと思うんですが、あれこれの争点の一つなんてどこも書いていないんですね。世論調査を見ても、県民の判断の第一はこの基地の問題でありました。  そして、同時に戦われた定数一の県議補選、那覇市でも名護市でも、日本共産党の前市議がこのオール沖縄の声の代表として、党派を超えた支援で定数一でありましたけれども勝利をしました。特に名護市の場合は、今年の市長選、市議選挙に続いて、三回続けて名護市は、市民、辺野古の地元ではノーの声を出した、明確な審判が下ったということをちゃんと直視をする必要があると思うんですね。  そして今、普天間を固定化させるわけにいかないという趣旨のことを言われました。そういうことを知事選の最中も、政府も与党もさんざん言ったんですよ。さんざん言ったけれども、県民はその脅しには屈しなかったと。建白書に示された方向しかないということを示したというのが今回の結果なんですね。  大体、仲井眞知事自身が昨年十一月の定例会見でこう言っているんですよ。政府は辺野古が駄目なら固定化しかないと、こういう発言をしているけれどもどうかと聞かれて、固定化ということの意味を軽々にお使いになるのは自分が無能だという表現なのですと、それをイージーに口にされる人がいれば、その人はその任に置いちゃ駄目だと思うくらい問題がある発言だと。当時知事は真っ当な発言をされておりました。ところが、知事自身が辺野古推進の立場に変わったので、県民は知事の言葉どおり、この人を知事という任に置いちゃ駄目だと、こういう審判を下したわけですね。  選挙では県外移設を公約しながら埋立てを承認をする、そのこと自身が民主主義に反することでありますし、それは県民が明確なノーの審判を下したと。私は、にもかかわらず推進をするようなことが民主主義の国ではあってはならないと思いますけれども、改めて、大臣、いかがでしょうか。この民意を無視する気ですか。
  163. 江渡聡徳

    国務大臣(江渡聡徳君) お答えさせていただきたいと思いますけれども、繰り返しになろうかと思いますけれども、やはり最も大切なこと、一番大切なことということは、住宅やあるいは学校等に囲まれて市街地の真ん中にあるこの普天間飛行場の固定化というもの、これは絶対に避けなければならないことだろうというふうに思っておりますし、また、そのことが大前提であるわけであります。そして、このことが、政府としても、また地元の沖縄の皆様方の共通の認識であろうというふうに思っているところでございます。  この普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの移設につきましては、地元の皆様方においても様々な意見があるということは承知しているわけでありますけれども、普天間飛行場の継続的な使用というものを回避するための唯一の解決策であるということは、これは日米間で累次確認させていただいたわけであります。  また、普天間飛行場の移設に必要な辺野古の埋立申請というものは昨年末に承認されまして、また、法治国家といたしましても、関係法令にのっとり既に判断が示されたものというふうに考えておるところでございます。  普天間飛行場の一日も早い返還こそが地元の皆様方の願いだと思っております。普天間飛行場の固定化を回避するために法令に従いまして辺野古移設を着実に進め、沖縄の負担軽減に全力で取り組んでまいりたいと、そのように考えているところでございます。
  164. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 井上哲士君、質疑は終了しております。
  165. 井上哲士

    ○井上哲士君 時間ですので終わりますが、SACO合意以来、結局、普天間が撤去されないというのは、移設条件が付いていると、ここに問題があるということを県民の皆さんは今度の選挙で改めて審判を下したということでありまして、私はこの県民の審判を正面からしっかり受け止めるべきだと。そうでなければ、今度は、県民の皆さんはそういう国会議員は任に置いちゃ駄目だと、こういう審判を下すに違いないということも申し上げまして、質問を終わります。     ─────────────
  166. 片山さつき

    委員長片山さつき君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、福山哲郎君が委員辞任され、その補欠として金子洋一君が選任されました。     ─────────────
  167. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。  私は、CSC質問の前に、同じく先ほど質問がございましたが、沖縄の県知事選挙の結果について岸田外務大臣にお伺いしたいと思います。  辺野古新基地建設を最大の争点としたこの沖縄県の知事選挙ですが、新基地建設反対を主張した前那覇市長翁長雄志氏が、現職の仲井眞弘多氏を含む三人の候補者を大差で破り初当選をいたしました。沖縄県知事選挙の結果について、岸田外務大臣の見解を伺います。
  168. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、先ほども江渡大臣からも答弁がありましたが、地方自治体の首長選挙について政府としてコメントすることは控えたいと存じますが、その上で申し上げることとして、まずこの普天間飛行場の固定化は絶対避けなければならない。これは政府のみならず、沖縄の県民の皆様とも共有している思いであると認識をしています。そして、政府としては、米軍の抑止力の維持、そして普天間飛行場の危険除去、これを考え併せたときに、唯一の解決策は辺野古への移設であるという考え方を今日まで取ってまいりました。この考え方につきましては今後も変わらないと思っています。  沖縄の負担軽減につきましては、引き続き沖縄県民の皆様方に御理解をいただくべく丁寧に作業を進めていかなければならないと思いますが、一日も早い普天間飛行場の返還が実現できるよう政府としましては全力で努力しながら、この辺野古移設について法令に基づいて粛々と進めていくべきであると考えております。
  169. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 先ほどもございましたように、一月の名護市長選挙においても、やはり埋立承認、それから辺野古新基地建設反対、その強固な意思をもって稲嶺市長が名護市は再選されました。この結果は、やはり名護市民もそうですが、今回の知事選挙も併せて考えていきますと、県民の多数意思が何を求めているのか、このことを明白にした結果だというふうに受け止めております。  同時に実施されました那覇市長選挙、こちらも、県と那覇でオール沖縄の旗を掲げた城間幹子候補が当選をいたしました。これ知事選挙とダブルで勝利を勝ち取ることができたわけですが、実はこのような状況になったのは、仲井眞知事が、御自身の四年前の知事選挙での公約、そのことは、まず埋立てを承認ということではなくて、仲井眞知事は、あくまでも普天間の基地の県外移設、このことを公約にして当選をいたしました。しかし、県民の前に何の説明もないまんまに、ほとんど独断で去年の十二月の二十七日にいわゆるこの埋立承認をしたことに対する県民の怒りの審判が、このような状況で、私はオール沖縄の候補者が当選したというふうに受け止めております。  こういうふうにして、やはり二度も、名護市長選挙から今回の知事選挙まで、県民が、普天間の基地を改めて辺野古に移すという、いわゆる新基地を造るということに対しては二度も拒否をしている、そのことを政府はきちんと認めるべきだというふうに思います。  元々、政府は、地元の頭越しにこの問題は進めないという、そういうことがスタートでありました。そもそも、普天間の飛行場の閉鎖、返還というのが実は動き出したのは、御存じだと思いますけれども、九五年の少女の暴行事件、このことがあり、九六年の返還合意から十八年間、県民にこういう状況で精神的な負担をずっと押し付けてきた、この日本政府のやり方に対しては、県民の怒りが、仲井眞知事に対する十万票の票差を付けて翁長氏が当選したというような結果になっていると思います。  普天間飛行場の初期の政府方針に立ち戻って計画を見直しをするために、日本政府は沖縄ときちんと話し合うべきではないでしょうか。岸田外務大臣にお伺いいたします。
  170. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、選挙というもの、これは民意の表れであります。やはり、誰もがしっかりと受け止めなければならないものであると認識をいたします。  その中で、この普天間飛行場の危険除去、これは政府とそして地元の皆様方とも共有する大変重要な課題である、普天間飛行場の危険は一日も早く除去しなければならない、これが政府と沖縄の皆様方との共有する思いであると思います。そして、政府としましては、その唯一の解決策を、辺野古への移設だということで今日まで努力をしてきましたし、これからも努力をしていかなければならないと思っています。  こうした負担軽減につきましては、沖縄の皆様方の声に耳を傾けながら丁寧に進めなければいけない、これは御指摘のとおりであります。是非、丁寧に作業を進めながら、沖縄の負担軽減に向けて政府としましてもしっかり努力をしていきたいと存じます。辺野古への移設について、法令に基づいて粛々と進めていきたいと考えます。
  171. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 先ほどから、この普天間の基地問題に関しては、辺野古への新基地建設が唯一の解決策であるとか、それから負担の軽減だということを大前提というふうにおっしゃいますけれども、これだけの民意が表れて、そのことに対してはノーだという声をなぜ受け入れていただけないのか、大変不思議でございます。先ほども申し上げましたけれども、新基地建設をこういう形で強行するというのは、やはり、何といっても県民に対する構造的な差別であり、沖縄の民意を尊重しないのであれば、もはや日本は民主主義国家ではないと言わざるを得ません。  当選いたしました翁長雄志氏は、沖縄の民意に配慮できないというのであれば、日本の民主主義はアジアや、それから世界から評価されないでしょうと、粛々と辺野古移設を進めていくというそういう発想は、世界から民主主義国家としての信頼を日本は失うのではないかという、そういう意味で大変な損失になるというふうに指摘をしております。私もそういう思いを込めて、何としてもまず普天間の基地を辺野古に移す、そのことはなぜ大前提なのか、なぜ沖縄県内移設、そのことが日本の取るべき道なのか、大変大きな不満を持っております。  これが、先ほどもございましたけれども、これから解散予定になっております、いわゆる衆議院選挙においてもそのような結果が出てくるのではないかというふうに申し上げまして、CSCについて質問したいと思います。  まず、安倍政権の原発輸出への積極的姿勢に対するこの状況は、やはり、東日本大震災に伴う東京電力の福島第一原子力発電所の事故によって原子力発電の安全神話が崩れたにもかかわらず、安倍政権はなぜその安全性が確保できない原発を海外に輸出することを推進していくのか、大変遺憾であります。まだ福島事故が収束していないにもかかわらず外国原発を売り込もうとすることは、国際社会に対して日本が無責任な国として映るのではないかと危惧いたします。  安倍政権の下では、さきの国会には日本とアラブ首長国連邦との原子力協定、そして日本とトルコとの原子力協定を提出し、そして今般、本日の審議で議題となっております原子力損害の補完的な補償に関する条約であり、まさに原発輸出を推進するためのその条約を矢継ぎ早に成立させようとしていると言っても過言ではないと思います。経済成長、いわゆるアベノミクスのために、国民、さらには世界の人々を危険にさらす原発輸出を進めていくことは容認できません。  まず、ここで、安倍政権の原子力の国際協力に対する現在の方針を伺います。経産省に伺います。
  172. 多田明弘

    政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。  東京電力の福島第一原発事故の経験から得られました教訓、こういうものを国際社会と共有することで、世界の原子力安全の向上あるいは原子力の平和利用、こういったものに貢献していくことが我が国の責務であると、このように認識をいたしております。また、東アジア、東欧あるいは中東、こういったところを中心といたしました新興国を中心に、海外で原発の導入あるいは拡大が進む中で、我が国が持っております原子力の安全技術に寄せられる期待は高いところでございまして、この点につきましては福島第一原発事故の前後で変わらぬところでございます。  原発の輸出につきましては、こうした相手国の事情あるいは意向といったものを十分に踏まえつつ、我が国の責務を果たすべく、安全性を高めた原子力技術と安全文化、こういったものを諸外国に提供していくというのが現在の方針であるというふうに認識をいたしております。
  173. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 安倍政権は、この原子力の国際協力について、福島事故の経験と教訓を世界と共有し、世界の原子力安全の向上に貢献していくと説明しておりますが、それでは、更にお伺いいたします。  この原子力の安全性について、福島原発事故から一体何を学び、どのような教訓を得たのでしょうか。また、原子力の安全について、どのような技術が改善され、それがどのように国際社会に貢献するとなるのか、改めて伺います。
  174. 多田明弘

    政府参考人(多田明弘君) 私の方からお答え申し上げます。  福島第一原発事故からの教訓ということでございますが、この福島第一原発事故が起きました原因につきましては、国会でございますとか政府等に設けられました事故調査委員会の中で報告書が取りまとめられております。その中で、事故の原因といたしまして、地震、津波の想定、対策が不足していたこと、また、炉心の溶融、こういった重大事故への対策が不足していたこと、さらには、既存の原発に最新の知見を取り入れる体制、いわゆるバックフィット制度、こういったものが導入されていなかったことなどが主に指摘されていると承知をしております。こうした指摘を踏まえまして、あるいはIAEAや諸外国の規制基準も確認して、さらには我が国の自然条件の厳しさ、こういったものを勘案しまして、原子力規制委員会が世界で最も厳しい水準の規制基準を策定、導入してきているところでございます。  こうした中で、我が国原子力の技術でございますが、こうした規制基準をしっかりと満たすような形で事業者対応していくということでございます。もちろん、安全の追求というものは、規制の基準を満たせばそれで終わりということではないというふうに考えております。事業者にとっての継続的な安全向上、不断の努力というものが重要であるということでございまして、事業者はもちろんでございますけれども、関係企業を含めまして自らの安全性向上に向けた取組が行われるものと承知をいたしております。  私ども経済産業省といたしましても、こうした自主的な安全性向上に向けた努力といったものをしっかりと促すべく、現在、総合資源エネルギー調査会の下で設置をいたしました自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループ、こうしたところで検討をさせていただいているところでございます。  今御指摘のような中でございますけれども、原子力安全技術、我が国が持つ技術に対する強い期待というものにしっかりと応えていくというところで我が国の責務を果たしていく、先ほどの繰り返しになりますが、これが現在の方針であるというふうに認識をいたしております。
  175. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 衆議院の議論やそれから政府答弁、これまでの答弁を精査してみますと、やはり、今回の条約とそれから原発輸出との関係を問われても、政府は、本条約締結原発輸出の推進を目的としたものではないというふうに先ほどから答弁もされています。この点をまず確認いたします。  そして、目的ではないと言いつつも、原子力産業の国際展開に資するという点については、結果としてそういう環境が整えられると理解していると述べておられますが、これは表向きには原発輸出のためではないと言いつつも、結局は原発輸出を念頭に置いているのではないかと思います。  それでは、まず一般的に伺いますが、我が国から原発を輸出し、相手国において万が一にも原発事故が発生した場合、相手国の国民から日本原発事故を起こしたと言われることになります。我が国はどのように原発事故責任を取るのか、伺います。
  176. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 我が国から原発を輸出した相手国で事故が発生した場合の我が国対応というお尋ねでございます。  まず、そもそも原子力発電の安全性確保ということは、基本的には、その原子力発電所が存在する、この場合、輸出先の相手国政府責任において判断されるべき事項である、これはまず原則としてはそういうことであると言わなければならないと思います。  他方、我が国政府といたしましては、もちろん原子力安全の重要性というのは十分に認識しておることでございますし、福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有していくと、そういうことによりまして世界の原子力安全の向上に貢献していくということは我が国の責務であるというふうに考えているところでございます。  その上で、万々が一、輸出相手先で事故が発生した場合、まず我が国政府としてはどういう対応を取るかということでございますけれども、これはやはり相手国の要望を踏まえた上で対応検討していくということでございますが、福島第一の事故の経験と教訓を踏まえ、是非積極的に協力をしていきたいというふうに考えるところでございます。  その関連で若干申し上げますと、例えば福島第一原発事故以降に、その年の九月でございますが、IAEAにおきまして原子力安全に関する行動計画が採択されております。その中で、原子力事故の発生等緊急事態に係る準備及び対応の強化ということがうたわれているわけでございまして、その中で、必要な支援が国際的に迅速に利用可能となる、そういう支援メカニズムを強化するべきであるというようなこともうたわれております。  我が国としましては、こういうIAEAの考え方、行動計画も踏まえまして、例えば原子力事故援助条約の運用上の手段として緊急時対応援助ネットワークというようなものが設けられておりますけれども、これで実際に事故が起きたときに様々な緊急時の対応を行うということでございますが、こういう枠組みを利用して積極的に事故への対応ということを貢献していきたいというふうに考えておるわけでございます。  以上、政府としての取組でございます。  CSC上、どういうことになるかということでございます。条約枠組みについてどうかということで申し上げますと、非常に大きな事故がもちろん原子力事故として起きた場合に、相手国がCSC締約国であれば、何度も議論に出ておりますけれども、その損害額の大きさによっては我が国一定額拠出金を負担するということはあり得ることだというふうに考えております。  以上でございます。
  177. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 時間が大分なくなりましたので最後質問といたしますけれども、本条約我が国国民のためになるのか否か、疑問もあります。仮に、他の締約国が、原発事故が発生し、我が国拠出金拠出する、その必要が出たとき、幾ら拠出することになるのでしょうか。また、その他の締約国拠出金額は幾らになるでしょうか。
  178. 引原毅

    政府参考人引原毅君) 我が国以外のCSC締約国での原発事故の場合の拠出金でございますけれども、これはまだCSCは発効しておりませんので、いずれにしても試算ということになりますが、この拠出金というのは、各国原子力設備容量、それから、それに若干国連分担率というものを加味いたしまして算出をされます。  それで、仮に我が国締結をしまして、これでCSCは発効いたしますが、我が国、そのほか米国、アルゼンチン、モロッコ、ルーマニア、アラブ首長国連邦、この六か国で発生した場合に、他の締約国事故が発生した場合に我が国拠出をする額の上限というのは約四十数億円というふうに見積もられているところでございます。  以上でございます。
  179. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 本条約のこの拠出金ですが、主に原子力設備容量の多い国、すなわち我が国のような国ほど拠出金が加算されるというふうに思います。こうした仕組みにもかかわらず、我が国国民がその分配を受けるためには外国の裁判所に訴えを提起する必要があるなど、その困難さは、本条約締結国民のためではないということが私は指摘されるべきだということを指摘をいたしまして、もう時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。  以上です。
  180. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  181. 井上哲士

    ○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、原子力損害の補完的な補償に関する条約反対の討論を行います。  本条約は、原発輸出を含む日米協力の枠組みを定めた二〇〇七年四月の日米原子力エネルギー共同行動計画に基づき、原発の新増設を計画、検討中のアジア地域等への原発輸出を日米共同で推進するためのものであります。米国は、日本締結すれば本条約の発効要件を満たすことから、日本参加を強く働きかけてきました。本条約締結は、日本がこの米国の要求に積極的に応えて、日米の原子力企業の国際的なビジネス展開を後押ししようとするものであります。  以下、本条約の重大な問題点を指摘します。  第一に、本条約は、原発事故損害賠償について原子力事業者の無過失責任責任集中を定めており、相手国が本条約締約国であれば、原発輸出に際し、当該国で事故が発生しても、その賠償責任は過失の有無を問わず事故発生国の原子力事業者のみが負うものとしています。これは、原発事故賠償責任原発メーカーには及ばないようにすることで、訴訟等のリスクを負わずに原発輸出に参入できるようにするためのものであり、認められません。  第二に、本条約の定める拠出金制度も問題です。他の締約国損害が発生した場合も日本拠出金を負担する義務を負うため、日本拠出金を受け取ることにも増して、原発の運転経験が浅く、リスクの高い国を支援することを迫られるものであります。政府は、この拠出金を捻出するために原子力事業者からの負担金を徴収する方針であり、電力料金に上乗せされれば国民に更なる負担増を強いることになり、容認できません。  第三に、本条約原子力損害に関する訴訟の裁判管轄権事故発生国にのみ認めていることも重大です。日本締約国となった場合、日本で起きた事故に関しては日本が管轄権を有しますが、他の締約国で発生した事故により日本国民損害を被った場合には、事故発生国に出向いて裁判手続を行わなければならなくなります。  第四に、本条約は各締約国国内法における原発損害の概念を完全に一致させようとするものではないために、日本国内法では賠償され得る損害が、事故発生国の基準に基づく訴訟であるために、賠償範囲が限定され、賠償額が低く抑えられるおそれがあります。  以上の点を指摘をいたしまして、反対討論を終わります。
  182. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  原子力損害の補完的な補償に関する条約締結について承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  183. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 片山さつき

    委員長片山さつき君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会