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2014-06-05 第186回国会 参議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年六月五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月四日     辞任         補欠選任      井原  巧君     森 まさこ君      堂故  茂君     堀井  巌君  六月五日     辞任         補欠選任      堀井  巌君     山田 修路君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 山下 雄平君                 若林 健太君                 小川 敏夫君     委 員                 石井 準一君                 堀井  巌君                 溝手 顕正君                 柳本 卓治君                 山田 修路君                 吉田 博美君                 有田 芳生君                 江田 五月君                 前川 清成君                佐々木さやか君                 行田 邦子君                 仁比 聡平君                 谷  亮子君                 糸数 慶子君    国務大臣        法務大臣     谷垣 禎一君        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    古屋 圭司君    副大臣        法務大臣    奥野 信亮君    大臣政務官        法務大臣政務官  平口  洋君    事務局側        常任委員会専門        員        櫟原 利明君    政府参考人        警察庁長官官房        審議官      荻野  徹君        警察庁長官官房        審議官      塩川実喜夫君        総務省総合通信        基盤局電気通信        事業部長     安藤 友裕君        法務省民事局長  深山 卓也君        法務省刑事局長  林  眞琴君        法務省保護局長  齊藤 雄彦君        法務省人権擁護        局長       萩原 秀紀君        法務省入国管理        局長       榊原 一夫君        文部科学大臣官        房審議官     有松 育子君        国土交通大臣官        房建設流通政策        審議官      吉田 光市君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (袴田事件再審決定に関する件)  (取調べ可視化に関する件)  (ヘイトスピーチ等人種差別に対する法規制  に関する件)  (更生保護施策現状刑務所出所者に対する  就労支援の充実に関する件)  (在留管理制度現状に関する件)  (建設分野における人材の確保外国人技能実  習制度在り方に関する件)  (児童虐待親権制度に関する件)  (入国者収容所等視察委員会在り方に関する  件)  (難民認定制度抜本的改革に関する件) ○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、堂故茂君及び井原巧君が委員辞任され、その補欠として堀井巌君及び森まさこさんが選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、警察庁長官官房審議官荻野徹君外九名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。  今日は、初めに、国家公安委員長にお越しいただきました。先般、袴田事件につきまして再審決定がありまして、その中で証拠品捏造ということ、これ断定されたわけではありませんけれども、そうした可能性が強いような指摘がございました。この件について質問させていただきますが、まず私は、警察始め検察も含めてそうなんですが、こうした機関社会生活あるいは国民生活を守るために大変な努力をしているということ、国民の生命や身体、財産を守るために本当に懸命に努力しているということはもう重々承知しております。  おりますけれども、その上で質問させていただくわけでありますけれども、どんなに捜査が苦労する、あるいは努力するということがあっても、やはり証拠捏造するということは、これは絶対にあってはならないということだと私は思っておるわけでございますが、まず、公安委員長基本中の基本のこの姿勢について、やはり、要するに捜査機関証拠捏造するというようなことはあってはならないというこの基本姿勢について、まず公安委員長の決意かお気持ちをお聞かせいただければと思います。
  7. 古屋圭司

    国務大臣古屋圭司君) 委員も、我が国の警察治安維持国民安心、安全のために全力で取り組んでおられることに対して御評価をいただきました。そのことをまず御礼を申し上げつつ、私も国家公安委員長として、やはり世界一安心、安全な国、治安維持のために、これからも警察にしっかりそういった使命感を持って取り組んでいくように引き続き督励をしてまいりたいと思います。  その上で、今御指摘の、いわゆる捜査に当たってはぴしっと対応していくということが当然の警察としての責務である、これはもう申し上げるまでもないことであります。
  8. 小川敏夫

    小川敏夫君 そこで、今回、裁判所から証拠捏造ということの疑い指摘されたということは、これは非常に重大なことだと思っておるわけです。であれば、私は、これは一つ裁判の中だけでいろいろ意見を言っていればいいということではなくて、もっと積極的に、ないならないで、そういう捏造という事実がないんならないということを積極的に私は国民説明する責任があるんじゃないかと思うんです。  また、万一そうした捏造が仮にもあったということであれば、これは二度とそういうことが起きないような体制をしっかりと構築しなきゃならないと思うんですが、こうしたところ、すなわち裁判所から捏造ということの可能性指摘された、それを踏まえて、このことについてやはり私は、重大性を認識して、より国民に事実関係をはっきり分かるような形で説明していただきたいと思っているんですが、いかがでしょうか。
  9. 古屋圭司

    国務大臣古屋圭司君) 今委員の御指摘は、今回の袴田事件について国民説明すべきではないかという趣旨の御質問というふうに受け止めましたけれども、御承知のように、この袴田事件については、現在、再審請求審係属中の刑事事件に関わる事柄でございまして、私からのそのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。  再審開始決定に対して即時抗告をした静岡県の検察庁は、その理由として、証拠について、合理的な根拠がないのに、警察によって捏造された疑いがあるなどとしている点で到底承服することはできないということを理由で挙げているということを私は承知をいたしております。
  10. 小川敏夫

    小川敏夫君 承服できないというお考えだということは伺ったわけでありますけれども、しかし、私も、この事件の中、詳細に事件記録を読んだわけでもありません。ただ、報道された範囲の中で理解していることでは、みそだるの中から出てきた衣類、特にその中のズボン証拠捏造だということで強く争われる争点となっているというふうに思いますが、その中で、特に具体的に言えば、そのズボンが長期間みそだるの中につかっていたのなら強く変色しているはずなのに、変色していないと。あるいは、そのズボン袴田さんがはけるサイズではなかった、小さ過ぎて。ということで、これについては、みそだるにつかっていたから縮んだんだというようなことがなされておるわけです。  これは、そうかどうかということは、同じ素材のズボンを同じ状況の中につけ込んで、同じ期間つけ込んで再現実験してみれば、私は、そうした主張がどちらが客観性があるのかどうかすぐ分かると思うんですよね。  どうでしょう、捏造指摘されたそのズボンについて、捏造と言われている根拠がそういうことにあるなら、これは堂々とそういう再現実験をして、国民の前に事実関係をより明らかにしたらどうでしょうか。それで、警察の御主張のとおり捏造ということはないんだということが証明できれば、それは大変幸いでありますし、しかし、そうでないので、やはり捏造だと考えざるを得ないような状況が出てきたんなら、これはこれでそうしたことを踏まえた対応をしなければならないと思うわけなんです。  どうでしょう、再現実験をやって、これは可能なことですから、客観的にもう少し国民の前にそうした事実関係を明らかにするということはいかがでしょうか。
  11. 古屋圭司

    国務大臣古屋圭司君) 今お尋ねの件については、現在、再審請求審係属中の刑事事件でございますので、もう先ほど申し上げましたとおり、私からお答えをするということは差し控えさせていただかざるを得ないというふうに考えております。裁判所に予断を与えるということもありまして、私からお答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  12. 小川敏夫

    小川敏夫君 具体的な事件内容と言うけど、これはもう言わば本来の裁判を終わって再審という特殊な状況の中であるわけでありまして、特に事案証拠捏造ということですから、やはり国民の前に私は、はっきりと捏造でないんなら捏造でないということを、総力を挙げて客観的にこれを明らかにして説明しなければならないし、捏造だということになれば、捏造だということを踏まえたきちんとした、二度とそういうことを起こさないという体制を構築しなきゃならないわけですよ。  一般論としてはよろしいですね。捏造でないということをしっかり明らかにする責務があるけれども、もし万が一捏造だということになれば、これは、それを踏まえた、そうしたことを繰り返さないという体制を組まなければならないという、この一般論に関しては、公安委員長、賛同していただけますよね。
  13. 古屋圭司

    国務大臣古屋圭司君) 捜査過程においてゆめ間違っても捏造と言われるような捜査をしないこと、これは当然でありまして、これは一般論として私は当然のことだというふうに思っております。  今御指摘の、これは具体的な事案でございますので、私から具体的なお答えをすることは差し控えさせていただかざるを得ません。
  14. 小川敏夫

    小川敏夫君 この事件はもう随分年数が経てしまった事件でありまして、当時の捜査を行った人たちももう現職としてはいないというような状況であると思います。  ここで今、やるのやらないの、すぐにやるとかなんとか言っても、押し問答してもしようがありませんけれども、いずれ、再審そのものは、これは手続、時間を経て決着が付くわけでありますが、仮に再審裁判が決着したという段階の後でも、やはり私はそうした裁判の中で捏造指摘されたということは大変重いというふうに受け止めなくてはならないと、そのことについてはやはり、裁判がどういう形で終わったかどうかということとは抜きにして、私は、しっかりと客観的な再現実験なりあらゆる手だてを尽くして明らかにする責任があると思います。  もし、どうしても今再審という手続中であるということであれば、再審が終わった後でも、私は客観的に再現実験をやって事実を明らかにするということを是非行っていただきたい。再審が終わった後で結構でございますが、そうしたことについても、どうでしょう、今再審中だからできないということですから、じゃ、再審手続が終わった後に、こうした疑問点について国民の前にしっかりと客観的に明らかにするような努力をしていただきたいと思っているんですが、いかがでしょうか。
  15. 古屋圭司

    国務大臣古屋圭司君) この現在の再審請求行方をしっかりと私ども見守りながら、対応を今後考えていくということに尽きると思います。
  16. 小川敏夫

    小川敏夫君 再審手続が終わった後に、再審手続中だからできないということなので、終わってからやってみてはいかがですかと聞いたんですが、どうでしょう。
  17. 古屋圭司

    国務大臣古屋圭司君) 現在、再審請求審係属しているわけでございますから、その行方をしっかり見守るということに尽きると思います。  国家公安委員長としては、これ以上の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  18. 小川敏夫

    小川敏夫君 本当に証拠捏造するということはあってはならないんだけれども、例えば検察庁においても、あの郵便不正事件において検事がフロッピーディスクを改ざんするというようなことが、信じられないような出来事が現に起きておるわけです。これについては、検察庁はそのことをしっかりと事実を明らかにして、二度とそういうことが起きないような体制を構築したわけであります。まあそれが十分かどうかは、私としては今必ずしも十分だとは思っていないという気持ちもあるんですが、しかし、やはりそういうことがあってはならないということで、事実は事実で認めて、そういうことが二度と起きないような体制を検討するということは非常に重要なことだと思うんです。  私は、今の段階袴田事件において警察証拠捏造したと断定はしませんけれども、しかし、やはり裁判所からそういう指摘をされたということは大変重い事実でありますので、きちんとした対応をしていただくことを要請いたします。  公安委員長に対する質問はこれで終わりますので、御退席いただいて結構でございます。
  19. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) それでは、古屋国家公安委員長は御退席ください。
  20. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、法務大臣質問させていただきます。  先般、取調べ可視化を含めた、いわゆる法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会事務当局試案というものが公表されました。その中で、取調べのいわゆる可視化、ここでは取調べ録音録画制度ということになっておりますが、それについて質問させていただきます。  この当局試案として、取調べ録音録画制度について記述があるんですが、これはちょっとこの記載の仕方が分かりにくいところがあるんですが、いきなり最初に、検察官が提出した自供調書についての任意性等が争われた場合にはその記録媒体を提出しなければならない、取調べを請求しなければならないと、こういう説明があるんだけれども、これだけ読むと、取調べ録音録画というものが、何か、任意性が争われたときのその供述調書の証明のためだけの制度のように読めてしまうんですけれども、しかし、その後の五項を見ると、何か一定事件については取調べの全過程録画するかのような記載もあるんですが。  この取調べ録音録画制度、この事務局試案においては、まず一番の基本の前提として、取調べ録音録画をどういう場合に行うのかということの一番その基本のところをちょっと説明していただけませんでしょうか。
  21. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今委員から四月三十日に事務当局が作りましてお示した試案記述順序、これについて御疑問をお持ちだということでございます。  そこで、この試案は、部会における議論取りまとめに向かう方策として、部会長の御指示を得まして事務当局において一つの案として作成したものでございますので、確定的なものではございません。今後、部会での議論を踏まえて、必要に応じてその内容を変更、改訂した上で最終的な取りまとめが行われることになるということでございますが、御指摘のように、試案では、取調べ録音録画制度につきまして、公判段階供述調書などの任意性が争われた場合に検察官取調べ録音録画記録証拠請求義務付けること、つまり検察官録音録画記録証拠調べ請求義務、それと、捜査段階において捜査機関取調べ録音録画義務付けること、捜査機関取調べ録音録画義務、この順序記載されているわけですね。  それで、委員の御疑問は、これは順序が逆ではないかということだろうと思います。これ何でこういうことになっているかといいますと、試案では、取調べ適正確保に資する、第一にそれに資する、それから第二に、供述任意性信用性の判断、立証に資する、そういった録音録画の効果といいますか有用性というのは、事後的に記録内容が吟味されるという録音録画記録の利用又はその可能性によるものと考えられるものでありますので、まずは事実認定者である裁判所録音録画記録を利用できることを担保する仕組みとして、検察官録音録画記録証拠調べ請求義務を先に記載したものと承知しております。  いずれにしても、部会においては、こういう記載順序の当否を含めまして議論、検討が行われているものだと思いますので、そのように私も承知しておりますので、まずは法制審議会審議状況を見守りたいと思っております。
  22. 小川敏夫

    小川敏夫君 五項で、検察官等は一に掲げる事件とありますけれども、これは一の中でA案B案とあって、A案は、裁判員制度対象事件対象事件とすると、B案は、裁判員制度対象事件に加え、それ以外の全身柄事件における検察官取調べ対象に含めると、このB案というのがあります。  これは、要するに、一に掲げる事件というのはこのA案B案のことを言っているわけでありますよね。ですから、A案にするかB案にするか、対象事件をどちらかにするかは別にして、この対象事件については全ての取調べ録音録画すると、こういう文章でございますよね。
  23. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) ただいま委員指摘のとおりでございまして、まず、A案B案というのは、これは対象事件範囲についての二つの案が示されております。  それで、対象事件範囲はこのように両案書いてありますが、それは別としまして、制度枠組みとしては、一、二、三、四、五と、こういう形で列記されているもの、これが全体の制度枠組みでございまして、この五のところでは、対象事件とされたものについては録音録画義務というものが取調べについて原則掛かるということになります。  その上で、一については、供述調書等任意性が争われた場合に供述調書等取調べ請求をするときには、その当該取調べ録音録画媒体を請求しなければならないという義務を更に重ねて掛けているという枠組みになっております。
  24. 小川敏夫

    小川敏夫君 中身じゃなくて記載の体裁について余り議論してもしようがないんですが、やっぱり、A案B案かは別にして、対象事件については取調べの全てを録音録画するんだというのが一番最初に来て、調書においての任意性云々のところはその後に来るような記載じゃなかったかと思うので。つまり、そうじゃないと、何か対象事件が、A案B案対象事件だって言いながら、しかし一番最初任意性取調べ云々かんぬんが来ると、何か任意性取調べが争われるような、そのことに限定されるかのような、何かちょっと誤解しやすい部分があるものですから。  僕も最初、この一番を最初に読んだら、読んだだけじゃ誤解しまして、要するに、録音録画していない調書任意性が争われたら証拠にできないだけ、その範囲でしか取調べ録音録画を導入しないんだと、一項だけ読むとそんなふうに読めちゃうんですよね。だけど、この五項に来たら、一の対象事件は全部取調べ録音録画するって書いてあるものだから、ああ、そうなのかと思うんだけど、何かちょっとすっきりしないような書き方が感じたわけですけれども。  それで、これ、A案B案A案ですと、裁判員制度対象事件。そうすると、例えば郵便不正事件の村木さんとか、人の名前を挙げなくても、郵便不正事件であるとか、あるいは公職選挙法で無罪になった志布志事件ですか、こうした事件、あるいは政治家贈収賄、公務員が関わるような贈収賄とか、こういうような、刑そのものはそれは重罪に比べれば軽いかもしれないけれども、しかし社会的には非常に重大な影響を与えるような事実が、犯罪が除外されてしまうということがあるのであります。  また、B案ですと全身柄事件ということだけれども、検察官取調べだと。そうすると、警察、まあ警察が悪いとは言わないけれども、一般的にはどうも検察よりも警察の方が取調べが少し荒いんではないかというふうに言われておるわけですけれども、そこら辺が除外されてしまうということで、どうも、A案B案とあるけれども、どちらを取ってもちょっと不十分だという気がするんですが。  これは、しかし、今ここでA案B案ということで取りまとめて、ここで議論が進んでいきますと、A案B案以外に取調べ可視化範囲を広げていくという議論はもうなされないということなんでしょうか。それとも、もうこのA案B案かでこれからの議論は進んでいくということなんでしょうか。
  25. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) この事務局試案に至るまでの経過といたしましては、まず、ある段階基本構想というものがございました。その後で、それに基づきまして各作業分科会等議論をして、それについてたたき台というものができました。それで、たたき台をまた全体の部会議論しまして、今回、事務局試案というものが出てきたわけでございます。  いずれにいたしましても、この事務局試案は、議論一定方向に収れんさせていく、取りまとめていく方向の中で、これまでのこの部会での議論を踏まえて事務局において試案を出すようにという形で求められて出したものでございまして、当然、対象事件範囲につきましては非常にその考え方、幅、様々でございました。様々の中で、確かに全事件全身柄事件対象とすべきであるという当然考え方もあれば、一方で、それを非常に限定すべきであるという考え方もありまして、その過程で、例えば、まずは検察官取調べを先行して義務付けるべきだというような意見もまた過程で出てまいりました。  そういった議論状況を踏まえまして、今回、A案というものとB案というもの、これにおいてもかなり対象事件範囲は非常に異なりますけれども、この二つの案を事務局として提示させていただいて、今後の議論に資するべく提示をさせていただいたものでございまして、もとよりそういう性格のものでございますので、部会において、今後、このA案B案いずれか二者選択であると、択一であるというわけではございません。今後の議論部会においてなされていくものと考えております。
  26. 小川敏夫

    小川敏夫君 A案B案、二者択一ではないということでありました。私の方は、よりこの可視化を広げる意味で、A案B案に絞ったものではないという意味ではほっとする部分がありますが、しかし、A案B案でもないというと、A案B案よりも更に対象を絞ってしまうというようなふうにも考えると、逆に不安にもなってしまうわけでありますけれども。  先般も別の事件の件で言いましたけれども、やはり、こうした法務委員会でいろいろ議論している、私どもは国民の声を代表して質問させていただいておるわけでありますけれども、そうした声がこうした審議会特別部会の中で参考にされるのかどうか、これはまたどうなのかというところもあるわけですけれども。やはりA案B案では対象事件が狭過ぎるんではないかという議論が国会でされたということも是非今後の議論の中で踏まえていただきたいというふうに思います。よろしくお伝えください、部会の方に。  それから、もう時間がなくなっちゃったんですけれども、この試案の中の五項の中で、対象事件と呼ぶのがあるけれども、しかし例外的に対象事件であっても録音録画しなくてもいいという、そうした除外の部分がございました。時間がないので少し抽象的に質問させていただきますけれども、結局、基本的には検察官の判断で一、二、三に当たるような事例があれば取調べ録音をしないということができるというふうになっている。あるいは、暴力団の構成員であるときには、もうほかの事由は問わず、それだけで除外事由になっているというふうになっております。  どうもこの除外事由の判断の仕方、あるいは暴力団構成員であれば全部自動的になってしまうというような意味で、少し例外が広いんではないか、あるいは例外が広く運用されてしまうんではないかと、このような危惧を私は抱いておるわけですが、この点はいかがでございましょうか。
  27. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) もとより、この試案というものが今後部会において議論されていくということでございまして、今後、部会議論踏まえまして、必要に応じてその内容を変更あるいは改訂した上で最終的な取りまとめが行われるものという、そういった性格を持っている試案でございます。  その中で、御指摘のとおり、試案では、被疑者が例えば録音録画を拒否したことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき、あるいは加害行為等のおそれがあることにより、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときと、こういったことがこういう録音録画義務の例外事由と記載されております。  この点につきましても、部会においては、今委員指摘のように、これは例外として広範に過ぎるのではないか、そういったような意見が一方であるものの、他方でこの例外事由というのは十分に限定的なものであるといった御意見もございます。そういったところで、今後そういった様々な観点からの議論がなされ、検討が行われていくものと承知しております。
  28. 小川敏夫

    小川敏夫君 終わります。
  29. 有田芳生

    ○有田芳生君 民主党・新緑風会の有田芳生です。  四月の終わりの法務委員会で私は、ヘイトスピーチ、差別扇動及びヘイトクライム、差別犯罪についてお尋ねをいたしました。それで、取り上げた事件についてその後どう結論が出たのかということと、それからいまだインターネット上で続いている部落差別の問題、そこに絞って今日はお話を伺いたいというふうに思います。  おととい、一時間質問をさせていただきましたけれども、そのときの反省がありまして、谷垣大臣に御感想を何度も何度もお伺いしたんですが、副大臣と政務官に御感想を聞く機会がなかったので、今日は短い時間ですけれども、お二人にもお伺いしたいというふうに思います。  まず、警察庁にお尋ねをいたします。  今年の二月に川崎の駅で、いわゆる差別デモに参加した若者が模造刀を持って、構内で差別に反対する人たちがまいていたチラシを見ていたのを、それをきっかけにして襲いかかったという事件がありましたが、その概要についてもう一度お話を下さい。
  30. 塩川実喜夫

    政府参考人塩川実喜夫君) お答えします。  議員御指摘事件は、平成二十六年二月二日にJR川崎駅において発生した事件のことかと思いますが、この事件につきましては、いわゆる右派系市民グループのデモに参加していた男が、JR川崎駅京浜東北線ホーム上において、持っていた模造刀剣類で被害者に切り付け、傷害を負わせたというものであります。神奈川県警察では、その後の捜査により、三月三日、同人を逮捕いたしたところでございます。
  31. 有田芳生

    ○有田芳生君 もう少し詳しくお伝えをいたしますと、差別デモに反対する人たちがチラシをまいていた。それを受け取った人がホームで読み、そしてごみ箱に捨てようとしたときに、当該人物が、模造刀、全長九十五センチ、刃渡り五十・五センチで殴りかかったと。そのとき、おまえ、それでも日本人かというふうに叫んだという事件でした。  これは裁判にもなりましたけれども、法務省にお尋ねをいたしますけれども、どういう判決が出ていますでしょうか。
  32. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) お尋ねの事件につきましては、本年の五月二十一日、横浜地方裁判所におきまして、被告人に対し、傷害罪により懲役一年、三年間執行猶予の有罪判決が言い渡されたものと承知しております。
  33. 有田芳生

    ○有田芳生君 その裁判では、被告人のお母様も証言に立って、もう今後そういうことはさせないと、それは父親の意思でもあり、本人の意思でもあるということで、四国の実家に連れ帰って両親の監督の下で更生を誓いますと。本人も、そういう活動には今後参加しないという表明をしております。  実はそういう事件が川崎で起きたわけでして、それを川崎の福田市長が記者会見でも尋ねられました。こういう事件についてどうですかということに対して、三月の記者会見で、そういうことはいけませんと、当然そういう発言をしてくださいましたと同時に、五月三十一日に区民の車座集会というのが川崎市で行われまして、やはり質問が出ました。そういう事件を踏まえて、ヘイトスピーチ、差別扇動についてどう思うんだということに対して福田市長は、本当にヘイトスピーチの話というのは聞くたびに怒りを通り越して情けないと。これは、安倍首相それから谷垣大臣、それから先ほどいらした古屋国家公安委員長なども憂慮する発言をされておりましたけれども、当然、福田市長も、差別するという心が生まれてくるということ自体本当に悲しいことだ、そういうことについてはこれからもしっかりと対処をしていきたいという発言をなされました。  それに対して、その差別デモを繰り返している中心である在特会、在日特権を許さない市民の会、在日特権なんというのは実はどう調べたってないんですけれども、それをいまだ主張している、あるいは、もうついでに言っておくと、在特会の副会長なども、在日特権で自分たちがチラシで広げてきた内容はないんだということを公言しておりますけれども、そういう人たちが、こういう市長は退陣させるべきだ、けしからぬ、大々的なデモをこれからやるというふうに言っております。つまり、まだまだこういうことが社会では広がっているということです。  ついでに一言添えておきますと、川崎というのは、横田滋さん、早紀江さんがずっとお住まいのところです。川崎においても、あるいは全国各地においても、この差別デモをする人たちは、拉致問題解決、日本人奪還、そういうスローガンを掲げて今でもデモ行進をやっております。実は、数年前に東京で行われた拉致問題の家族会、救う会などの集会とデモにおいても彼らが参加をして、シュプレヒコールの中で、朝鮮人を東京湾へたたき込め、たたき込めというようなことをずっと繰り返して、それを聞いた横田滋さん、早紀江さんがびっくりされて、何でああいう人たちをこのデモに入れるんですかということで怒っていらした。さらには、最近でも、彼らが横田めぐみさんの写真などを掲示をして、拉致被害者を取り戻せと言うだけではなくて、朝鮮人を東京湾へたたき込めというようなことをもう平然と言っている。  だから、一言で言うと、彼らは差別をするためにそういう拉致問題などをだしに使っているということは明らかなんですが、その川崎でもやはりこれからもそういった行動が準備されているということをお知らせしておきたいと思います。  さらに、二番目。四月の法務委員会での質問で、大阪の門真市民文化会館で在特会に所属する人物が講演会を開こうとしたというところまでこの委員会でも質問させていただきましたが、その後、門真市の私の表現では差別講演会はなぜ中止になったんでしょうか。文科省、お答えいただけますでしょうか。
  34. 有松育子

    政府参考人(有松育子君) お答え申し上げます。  本件につきましては、門真市の教育委員会から伺ったところによりますと、平成二十六年四月十四日に、五月十一日の門真市民文化会館の会議室の利用申請がなされまして、施設の指定管理者では、その時点では利用目的が学術的な講演会の開催であると判断をいたしまして利用許可を行ったところでございました。その後、申請者が活動しております団体のホームページ上で、善良な風俗を害すおそれがある表現や差別的と取られる表現を含んだ内容のものが掲載をされ、住民から利用施設の取消しを求めるメールや電話が寄せられたということから、指定管理者から施設の設置者であります門真市教育委員会に対し対応についての問合せが行われました。  これを受けて、門真市教育委員会は、本利用許可に反対の立場を取る者の妨害行為等によりまして他の利用者の安全確保が図れないと危惧されること、いかなる団体であれ、人種、民族、門地など、人が生まれながらにして持ち、自ら選択する余地のない点や国籍などの属性を捉まえての差別行為は許されないことから、利用許可すべきではないという考えを示しまして、平成二十六年五月二日付けで施設の指定管理者から申請者に対して利用取消しを行ったという経緯でございます。
  35. 有田芳生

    ○有田芳生君 結果的に中止となった、その対応を取られたということは非常に評価されなければいけないことだというふうに思いますけれども、実は、今お話がありましたように、四月十四日に在特会のメンバーが館の利用申請に来たときに、どういう中身で講演会をやるんですかと、で、その利用目的が、多文化尊重の時代、朝鮮の食糞文化、排せつ物を食べる文化を尊重しようと。そのときの担当者とのやり取りをこの在特会のメンバーはホームページ上でもアップしているんですよね。そのとき、いかにひどい差別的な内容の講演会を行うのかということは、もう何度も何度も彼は公言しているし、担当者は知っていたんですよ。ですから、そのとききっちりとした対応を取っていれば、これは条例などに基づいて、そこで講演会、駄目ですよという対応も取れたと思うんですよ。  これが例えば、これも御紹介しましたけれども、山形県で在特会が講演会をやろうとしたときに、山形県の生涯生活センターでしたか、断固として拒否をされた。それは、社会的に今問題になっていて逮捕者まで出ている団体が図書館も兼ね備えた山形県のその施設で集会をしようとすると混乱が起きる可能性がある、子供たちも来るところだからそれはお断りしますという断固たる対応を取ってくださいました。  門真市民文化会館の条例においても、やはり公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあると認めたときには貸出しすることはできないという対応を取ることができた。ただ、結果的にですけれども、しっかりとした見解を教育委員会が出してくださって、今も御説明いただきましたけれども、善良な風俗を害すおそれがある表現を含んだ内容の講演会は駄目なんだということ。さらには、教育委員会の見解にはこういう表現もあります。市のイメージ低下や市民、とりわけ子供たちに対する影響、そして今後の在特会の攻勢などを含み、在特会に対して毅然とした態度を取るべきとの考えに至ったと。まあいろんな紆余曲折ありましたけれども、市民の皆さんのおかしいじゃないかという声、あるいは全国からのそれでいいんですかという声が門真市に寄せられた結果、きっちりと教育委員会がそういう対応を取ってくださったということは、よしとしなければならないというふうに思います。  しかし、もう一点だけ指摘させていただくと、それぞれの条例に基づいてやはり公序良俗などに反するから駄目なんだという対応を取るべきだと私は思っているのですが、同時に、日本が一九九五年に加入をしている人種差別撤廃条約、これは日本がもう認めて法律になっているわけですから、そこの人種差別撤廃条約第二条一項の(d)、何が書いてあるかというと、各締約国は、つまり日本もですよね、日本の地方公共団体も含めてですけれども、全ての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人や集団、組織による人種差別も禁止し、終了させると。そういう条約の規定に基づいてでも、もう差別、扇動を事とする集会などは認めないという対応を取っていく方向を日本社会は進むべきだろうというふうに思っておりますけれども、しかし、山形県に行っても、新宿区に行っても、門真の担当者の方々に御意見を聞いても、やっぱり何か法律がないと難しいんですよねということをおっしゃる。だから、そこが今日本の一つの大きな課題であるだろうというふうに思います。  それで三番目、まず警察庁にお聞きをしますけれども、二〇〇九年の十二月から二〇一〇年にかけて三回行われた京都朝鮮第一初級学校の襲撃事件、これはどういう事件だったでしょうか、お示しください。
  36. 塩川実喜夫

    政府参考人塩川実喜夫君) お尋ねの事件につきまして私の方で承知しておりますのは、平成二十一年十二月四日に京都市で発生した事件でございますが、この事件につきましては、在日特権を許さない市民の会の会員らが、京都朝鮮第一初級学校が京都市の許可を受けずに隣接する公園内に設置していたスピーカーなどの線を切断し、同校門前において拡声機を使用して、北朝鮮のスパイ養成機関などと罵声を浴びせ、同校の授業を妨害するなどとしたというものであり、京都府警察では威力業務妨害罪などで十一人を検挙しているところでございます。
  37. 有田芳生

    ○有田芳生君 それも刑事、民事で裁判になりましたけれども、まず法務省にお尋ねしたいんですが、刑事裁判の結果、どのようなものが出ておりますでしょうか。
  38. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) お尋ねの事件につきましては、被告人四名が威力業務妨害罪等により起訴されまして、平成二十三年四月二十一日、京都地方裁判所におきまして、被告人一名を他の事件と併せて懲役二年に、被告人二名を他の事件と併せて懲役一年六月に、被告人一名を懲役一年にそれぞれ処しまして、その全員についてその刑の執行を四年間猶予する旨の判決を言い渡しており、この当該判決はその後確定したものと承知しております。
  39. 有田芳生

    ○有田芳生君 次に、民事の判決結果、昨年の十月四日でしたでしょうか、お示しください。
  40. 萩原秀紀

    政府参考人(萩原秀紀君) ただいま委員に御指摘いただきました、京都地方裁判所が言い渡しました判決で認定された事実によりますれば、被告らは、原告が設置、運営する朝鮮学校に対しまして、隣接する公園を違法に校庭として占拠していたということへの抗議という名目で、三回にわたり威圧的な対応で侮蔑的な発言を多く伴う示威活動を行い、その映像をインターネットを通じて公開したとされておりまして、京都地裁はこの事実関係を前提といたしまして、被告らの行為は原告の教育事業を妨害し、原告の名誉を毀損する不法行為に該当するとして、損害賠償請求を一部認容し、また一部の被告が同学校の移転先周辺において今後同様の示威活動を行うことの差止め請求を認容したものと承知しております。
  41. 有田芳生

    ○有田芳生君 この判決の特徴について、何かお考えになることはありますでしょうか。判決の特徴。
  42. 萩原秀紀

    政府参考人(萩原秀紀君) 判決の特徴という点に関しましては、現在この事件は民事訴訟が係属中でございまして、それに関わることに関してはお答えは、申し訳ありませんが、差し控えさせていただきます。
  43. 有田芳生

    ○有田芳生君 差し支えるとおっしゃるならば、こちらからお示しをしたいと思うんですけれども、私は昨年の五月三十一日、この法務委員会でもこの人種差別デモについて質問をしました。そのとき、新大久保で続いていた在特会を中心とする人たちのデモについて、その中身が、これ映像などでも見ていただいた議員の方もいらっしゃると思いますけれども、当時、新大久保のデモの中では、いい韓国人も悪い韓国人も皆殺せ、あるいは朝鮮人、毒飲め、首つれというようなプラカードを掲げ、そしてシュプレヒコールの中でもそういうことが繰り返されておりました。それに対して私は外務省の担当者に、これはもう差別じゃないですかと、日本が加入をしている人種差別撤廃条約の規定に基づいてもおかしいんじゃないかという質問をしましたけれども、頑としてお認めになろうとはしませんでした、差別だとは言いませんでした。人種差別撤廃条約に基づく禁止し終了させる内容じゃないですかと何度も何度も聞きましたけれども、差別とはお認めになりませんでした。  しかし、この京都地裁の一審判決ですけれども、そこの人種差別撤廃条約の規定を引用しまして、そういう差別については禁止し終了させる義務があるんだということを一審判決の中では書かれたんですよね。ですから、それが今後どう認定されていくのか。たしか七月八日に大阪高裁の判決は出るはずですので、それがまたどういう表現になっていくのかということを含めて注目をしたいと思うんですが、やはり判決の中で人種差別撤廃条約の規定が明記されたというのは、これは非常に大きなこれまでの裁判にない特徴だと私は理解しております。  そして、実はこの問題、何度も何度もなぜ取り上げるかといいますと、やはりオリンピック・パラリンピックを控えて、外国からも、日本に行ったら、例えばイギリスの大使館でも、日本に旅行する人たちは注意しなさいよと、人種差別的なデモなんかがあったら危ないからすぐにそこから立ち去りなさいという旅行者注意の喚起がホームページなんかでも堂々と掲げられてしまっている。非常に恥ずかしい状態をやはり克服しなければならないということと同時に、私は、まずこの問題の基本というのは差別された人たちの心の傷、そのことについてやはり私たち日本人は心を致さなければいけないというふうに思っているんです。  今紹介していただいた二〇〇九年十二月から二〇一〇年にかけての三回にわたる京都朝鮮第一初級学校の襲撃事件について、これは父親、母親たちも傷つきましたけれども、子供たちもいまだ傷ついているんですよ。もう事件から四年以上たちますけれども、夜尿が治らない、出てきたというような子供たちも含めて、とんでもない心の傷が、私たち、外から見ていると分からないんだけれども、やはりそういうことが続いている。それが京都の朝鮮学校だけではなくて、大阪鶴橋でも北海道でもやっていますし、名古屋でも福岡でも、いろんなところでいまだ差別行為が行われていることを、それを聞いている人たち、中国人も含めて、非常に心傷ついているという実態を私たちは知らなければいけないというふうに思います。  そこで、今日、皆様方に資料をお届けいたしました。公明新聞、今年の五月十九日付けの書評です。先ほど御紹介いただきました京都朝鮮学校襲撃事件について、元毎日新聞の記者がルポを書きました。幾つもの書評が出ておりますけれども、この一橋大学の名誉教授の田中宏さんが書かれたこの書評が最も優れたものだと私は判断をしまして、皆さんにお届けをいたしました。赤線を引いておきました。子供たちの心、読み上げます、子供たちが質問するというんです、朝鮮人って悪いことなん、朝鮮学校やからあかんのん。それで母親がこう言っております、近所のスーパーで娘にオンマと呼ばれたとき背中に冷たいものが走った、あるいは、こんだけやられても誰も守ってくれないのかな、そもそも私らに人権なんてないやないか。  これはまだまだこういう証言はあるんです。電車の中、バスの中で母国の言葉をしゃべっちゃいけないよということを親が子供に教えざるを得ないような状況が続いている。さらに、あえて言えば、二〇〇二年、小泉訪朝によって北朝鮮が本当にひどい、非道な拉致問題を認めてきたときから、こういう事態が日本ではずっと続いているんですよね。  だから、この人たち、朝鮮人だけではなく、中国人、フィリピン人、そしてブラジル人を含めとして、在日外国人たちがひどい差別に本当に悩み、心傷ついているという、その現実を少しでもやはり変えていかなければいけないという思いで、この問題、更に前に解決のために進めていかなければならないと思っておりますが。  谷垣大臣、そういう実態、つまり被害者の立場に立って物事を考える、もっと立派な日本をつくっていくためにも、この問題、どう進めていけばいいのかということを、少し所感をお話しいただければ幸いです。
  44. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 委員から公明新聞のこの記事いただきまして、私も京都選出でございますから、要するに京都で起こった事件、この本も一度読ませていただこうかなと思っております。  それで、個別的なこの事案の評価は別としまして、ずっと有田委員がこの問題を取り上げておられるわけですが、有田委員が取り上げておられる行動が、人々の気持ちの中に不安感とかそれからあるいは嫌悪感、こういうものを与えかねない、そこはそのとおりだと思います。それから、さらにそれが、今御指摘のように、場合によると心的な外傷といいますかトラウマといいますか、そういうものも与えかねないものであると、この参考資料はそういうことを言っておられるんだろうと思います。  それで、こういうことに対してどう対応していくかということですが、私どもの役所は人権擁護ということを果たさなければならない役所でもございます。この対応の仕方は、人権擁護という観点からいきますと、一番基本は、非常に生ぬるく聞こえるかもしれませんが、やっぱり啓発活動だというふうに思います。これは、繰り返し繰り返しその啓発はやっていかなきゃいけないと思います。  その上で、なかなか対応が難しいなと思っておりましたのは、今の委員のお話にもちょっとうかがわれたわけですが、何を、どこを改善していくのか。つまり、具体的に襲撃行為があったり、先ほど挙げられた事件のように模擬刀で襲いかかったというようなことであれば、もうこれは明確に刑事事件ということになりますね。それから、民事の損害賠償ということもあるでしょう。それが特に個人の損害賠償にわたるような事件であるとか、あるいは模擬刀で襲いかかるというようなことであれば、明確な個人の人権の侵害でもあります。  それから、それが更にもう少し枠を広げていきますと、言ってみれば社会の、先ほど社会の善良な風俗という言葉もお使いになった、社会の善良な風俗ということになってまいりますと、これはまたなかなか取締りとかそういう観点に立つと、どうやって社会の善良な風俗を守っていくかというのはなかなか難しい、手法としては難しい面がございます。  やがてこの法務委員会でも議論していただくと思いますが、衆議院の方では議員立法で児童ポルノ法案が、今日恐らく昼の本会議で衆議院は通るわけでございますが、あの問題でも、要するに対象となっているものは個人の権利なのか、それとも社会の善良な風俗を守らなきゃいけない点なのかということによって、法の仕組みも全然違ってくるんだと思うんですね。その辺りをどういう工夫をしていくかというのは、この問題でもなかなか難しい問題があるなということを委員の御質問を聞きながら頭の中で思いを巡らせていた次第でございます。  いずれにせよ、先ほど申し上げましたように、啓発活動というのは、これは粘り強く続けていかなきゃいかぬ、このことだけは確実に申し上げられると思います。
  45. 有田芳生

    ○有田芳生君 時間が短くなってきて、副大臣と政務官にもお尋ねしなければいけないので、ちょっと早口でやります。大臣、先ほどの「ルポ京都朝鮮学校襲撃事件」、私、二冊持っておりますので、後でお届けいたします。  インターネット上でいまだ部落差別が続いているということについて、まず政務官にお尋ねをしたいんですけれども、一九七五年に起きた部落地名総鑑事件というものはどういう出来事だったでしょうか。簡潔にお答えください。
  46. 平口洋

    大臣政務官(平口洋君) 御指摘の部落地名総鑑事件とは、昭和五十年十一月、全国の同和地区とされる地区の所在地等を記載した図書が販売されている事実が判明した後、平成元年七月までの間、法務省が人権侵犯事件として調査し、合計六百六十三冊の部落地名総鑑を回収した上、同図書の発行者、販売者等に対し、今後、部落差別にわたる行為のないよう特段の配慮をされたい旨勧告するなどした事案のことと考えております。
  47. 有田芳生

    ○有田芳生君 例えば水平社は、その創立以来、身元調査の禁止というのはずっと一貫して主張してきて、部落解放運動でもそれはもう基本になっているわけですけれども、しかし今のような事件が起きている。  〇七年に戸籍法が改正され、八年に施行されましたけれども、本人通知制度、あるいは申請書の本人開示ということも議論になったと聞いておりますが、これはなぜ改正の中に入れられなかったのでしょうか。副大臣お答えください。
  48. 奥野信亮

    ○副大臣(奥野信亮君) おっしゃるとおり、平成十九年に審議されて、二十年に改正されたわけであります。それがなぜそれで改正が進んだかといいますと、それまでの法律がかなりルーズな戸籍法であったように思います。それは何でかというと、その当時の個人情報に対する国民の意識の高まりからもう少ししっかり管理しなきゃいかぬなということで法改正して、そして第三者についても限定をし、認められる場合には認めようじゃないかということと、それから弁護士等については認めましょうというような話で法改正がされたと思います。  そのときに、個人情報管理の考え方が非常にシビアにし過ぎたように私には思えます。というのは、戸籍の内容を取った人を開示するということについては、今度逆にその請求をした人の個人情報が漏れるのではないかというようなことが裏にあったように思います。そういうことで、かなり厳格な形で法改正ができたわけでありますけれども、これから考えていくと、やっぱり地方自治体の中には条例といいますか何かルールの中でやっているところもありますから、そういうことも含めて考えると、全国一律というのではなくて、私の感じとしては、部分的に、どういうニーズがある場合はということで変えるべきだろうと思っているんですけれども、少し検討させてみたいと、こんなふうに考えているところであります。
  49. 有田芳生

    ○有田芳生君 時間ですので、もう事実の提示だけにしなければいけませんが、例えば今、インターネット上でも真宗大谷派被差別部落寺院というものが公開されておりまして、寺院の所在地、門徒の地所が記載されている。これに対して大谷派の同和関係寺院協議会が何とかしなければいけないと動き出したんですが、プロバイダーにこれを削除してくれと言っても、今のプロバイダー責任制限法には限界があって、それができないんですよね。もう放置されている。だから、この現実を変えていかない限り、差別というものをやはりなくしていくことはできないだろうというふうに思います。  今日、総務省にも来ていただいておりますけれども、もう時間がないのでやめざるを得ませんが、先ほど大臣は啓発ということを強調されました。もちろんそうだと思いますが、例えばフランスなどでは、出版の自由に関する法律で、公衆に対する電子技術によるあらゆる伝達手段による差別的表現というものは禁じられているんですよね。ですから、人種差別撤廃条約を含めて、OECD三十四か国などなど諸外国では、やはり差別に対しては、禁止法も含めて、議論がされるだけではなくて制定をされている。この日本でも、人種差別撤廃条約、基本法という理念をきっちりとする法律というものも議員連盟としてこれからも考えていきたいと思いますので、また改めて質疑に参加させていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  50. 行田邦子

    ○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いいたします。  まず初めに、私は、罪を犯したり、また非行に走った人たちの再犯防止、更生支援について伺いたいと思います。  再犯防止、またこうした方たちの更生を支援するのに大変重要なことというのは、居場所を与えることというふうに思っております。居場所というのは住む場所であり、また仕事である、職を得ることということだというふうに私は思っております。  そこで、まず初めに伺いたいんですけれども、保護観察の対象者である仮釈放者、それから保護観察付執行猶予者の方々の帰住先がどのようになっているのか、教えていただけますでしょうか。
  51. 齊藤雄彦

    政府参考人(齊藤雄彦君) お答えいたします。  平成二十四年における保護観察開始時の住居の状況を見ますと、まず仮釈放者でございますが、両親や配偶者等の親族の元に帰住する者が約六〇%、数で八千七百五十四人を占めるほか、更生保護施設に帰住する者が約二八%、四千七十四人、その他、単身居住の者が三%、雇用主の家に帰住する者が二%、それから自立準備ホームを含む更生保護施設以外の施設に帰住する者も〇・三%、三十九人おります。  他方、保護観察付執行猶予者につきましては、親族と同居する者が六二%、二千八十四人であるほか、単身居住の者が約二三%、七百八十九人、それから更生保護施設に居住する者が四%、百四十八人、自立準備ホームを含む更生保護施設以外の施設に居住する者が一・〇%、三十五人というふうになっております。  自立準備ホームに帰る者、数としては少ないんですが、これ以外に更生緊急保護等により自立準備ホームに入る者などもおりまして、自立準備ホームの方へは年間千二百人ぐらいが入所しているという状況でございます。
  52. 行田邦子

    ○行田邦子君 仮釈放者については二八%が更生保護施設に入っているということでありました。また、保護観察付執行猶予者については四%が更生保護施設に入っているということであります。  この更生保護施設について伺いたいと思うんですけれども、今全国に百四か所あるというふうに伺っております。私が住んでおります浦和のというか、家の比較的近くにも更生保護施設がありまして、この百四施設ある更生保護施設について、その数が十分なのかどうか、どういう認識をされているのかということ、それからまた、更生保護施設の抱える課題についての御認識を伺いたいと思います。
  53. 齊藤雄彦

    政府参考人(齊藤雄彦君) お答え申し上げます。  更生保護施設、委員指摘のとおり、百四施設ということでございます。定員は大体約二千三百人ということでございまして、年間約一万人の刑務所出所者等を保護しておると。平成二十四年度における収容保護率、要するに部屋が埋まっている率でございますが、全国平均で七九・四%という状況になっております。これだけのことをやっていただいていますが、まだ満期出所者で例えば年間七千人近くが帰住先がはっきり決まっていないというふうな者もおりまして、更に更生保護施設における刑務所出所者の受入れの拡大といったものが大きな課題になっております。  ただ、なかなか新たな施設を造るということは難しい面もございまして、当面、収容率が低い施設につきましては収容率を上げるように促すとともに、それから処遇を充実いたしまして、入っている入所者を早期に自立させて更にまた次の者を自立させていくといったようなことにも取り組みたいと思っておりますし、それから定員の増加などにも取り組んでまいりたいというふうに思っております。より多くの刑務所出所者等を受け入れられるよう、受入れ機能の充実に努めていきたいというふうに思っております。
  54. 行田邦子

    ○行田邦子君 なかなか、更生保護施設を増やしていくというのはこれ現実的に難しいのかなというふうに思っています。  というのは、先ほど申し上げた私の住んでいるところの近くにある更生保護施設、やはり近隣住民の方からすると、何か、どんな人が住んでいるんだろう、ちょっと怖いなということを言う高齢者の方も結構いらっしゃいます。実際そういった問題はないんですけれども、言ってみれば、そういう地域にとっては迷惑施設のような存在になってしまっていると。また、建物も非常に老朽化している場合が多いと思うんですけれども、建て替えは順次行っているかと思いますが、このままの建物だと収容がなかなか難しいという施設も多いかと思います。  そこで、百四ある施設ではありますけれども私はまだまだ十分ではないというふうに、いろんな問題を抱えている、重要でありつつもいろんな問題を抱えているというふうに思うんですが、そこで伺いたいんですけど、女子の更生保護施設について伺いたいと思います。今、女子を収容できる更生施設がどのぐらいあるのかということを伺いたいと思います。また、その数で今足りているのかどうか、どういう御認識なのか、まず伺いたいと思います。
  55. 齊藤雄彦

    政府参考人(齊藤雄彦君) お答えいたします。  現在百四あります更生保護施設のうち、女子の定員を有するものは全部で十四施設ありまして、定員の合計は百八十一人でございます。  ただ、女子の定員を有する更生保護施設がないという府県も多数ありまして、これらの地域への居住を希望する女子の刑務所出所者等の住居確保については課題があるというふうに考えております。更生保護施設以外の刑務所出所者等の受皿の拡大にも取り組んでいるところでございます。
  56. 行田邦子

    ○行田邦子君 今御答弁いただきましたように、十四施設しかないということです。百八十一人の定員ということなんですが、ただ、そもそも刑務所を出所される方、また少年院を出院される方というのの男女の比率でいうと元々女性の方が低いということもあるので、一概には女子更生保護施設が圧倒的に足りないとは言えないのかもしれませんけれども、先ほどの御答弁にもありましたように十四施設しかありませんので、女子を収容できる更生保護施設がないという県もございます。  その一つが私が住んでおります埼玉県なんですけれども、やはり保護司の方からよく言われるのが、女子の更生について保護施設がないと、地域に戻って更生をしたい、させたいと思っていても施設がないということ、これ何とかならないのかという声も聞かれます。また、分布を見ていますと、東北には一つも女子の更生保護施設がなかったり、四国にもないようであります。このような偏在ということもこれはやはり解消していくべきではないかなというふうに思っております。  そこでお伺いしたいんですけれども、更生保護施設を新たに造るというようなことはなかなか現実問題として難しいのかなと思います。そうすると、それに代わる何か施設といったものをやはり確保しなければいけないと思っておりまして、そこで自立準備ホームという制度があります。これについて伺いたいと思うんですが、この自立準備ホームの取組をなされるようになったその経緯、また問題意識をお聞かせいただきたいと思います。
  57. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 満期釈放者のうち、親族とか適切な帰住先がない者が相当おります。大体年間約七千人ぐらい、そういう適切な帰住先のない者がいるわけです。それで、先ほどの御質疑の中にありまして、齊藤保護局長から御答弁いたしましたように、更生保護施設は全部で百四、そして定員は二千三百五十八名ということでございますので、とても足りないと。しかし、先ほどの御議論の中にもあったように、やや迷惑施設と受け止められているところもあるし、あるいは、そこに入る人たちは、こういう罪を犯した人はここには入れないでくれというような御近所からの要請がある場合もあるというようなことで、なかなか増やしていくのが難しい状況にございます。  それで、やっぱりそれに代わるものとして何か緊急的に考えなきゃいけないと、こういうことで、平成二十三年度からNPO法人やあるいは社会福祉法人等が運営する施設の空き部屋等々を活用して、自立準備ホームということで緊急的な住居確保あるいは自立支援対策に充てていこうということを始めております。  それで、現在、全国各地の保護観察所で自立準備ホームの開拓に取り組んでおります。委員、先ほど女性施設が足りないという御指摘がございまして、確かに多くは男性用の自立準備ホームということになっているわけですが、女性あるいは少年、こういった入所者を受け入れるといいますか、取組ができるところもございますので、今後も、そういう女性とか少年とかいろいろな入所者の特性や地域事情に応じた自立準備ホームの活用を促進していく必要があると、こういうふうに考えております。
  58. 行田邦子

    ○行田邦子君 非常にきめの細かい対応が必要だと思うんですけれども、私は、やはり更生のための居場所をきちんと確保するということで、自立準備ホームのこの取組というのを更に進めていただきたいというふうに思っております。  次の質問なんですけれども、先ほどの大臣の御答弁でもありましたけれども、女性そしてまた少年の更生のための保護施設が不足しているということであります。  そこで、少年についての更生保護施設について伺いたいんですけれども、少年院を仮退院した後、また保護観察処分少年なんですけれども、こうした少年たちは保護観察を受けることになります。居場所について、帰住先についてなんですけれども、親がいれば親元に帰るというのが自然だと思いますけれども、ただ、親がいても、親元に帰さない方がいい、その子の更生にとって帰さない方がいいというような、適切ではないというようなケースもやはりあります。そうした場合に、じゃ、その子供たちはどこに帰るのかというところで、更生保護施設という選択肢が一つあるわけでありますけれども、そこで大臣に伺いたいんですけれども、今の更生保護施設が、こうした少年院を仮退院した子供たち、また保護観察処分少年にとって更生のための支援体制や環境が十分に整えられていると言えるのでしょうか。
  59. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 少年の場合、抱えている問題は様々でありますので、きめ細かな対応というものが必要でありまして、そのことが再非行防止あるいは社会復帰促進には欠くことができないと考えております。  それで、今も御指摘のように、更生保護施設に入所することになる少年は、多くの場合、親元に受入れを拒否される等々の事情があって、まず第一に考えなきゃならないのは、親との関係修復等々の問題をきちっと図っていくということがまず処遇上考えられなきゃならないことだろうと思います。  そこで、保護観察官の支援の下で、まず親と積極的に連絡を取らせるとか、あるいは面接、面会の場を設けるといった生活環境の改善といいますか指導がこれは必要でございます。  それから、子供たちの中には福祉的な支援とかそういうものを必要とする者もございますし、あるいは就労、やっぱり仕事をして自立を図らなきゃいかぬという子供たちもおりますので、福祉機関とかあるいは公共職業安定所、あるいは協力雇用主といったような方たちと連携して社会復帰を促進していく、こういうことも強く進めなきゃいけないことで、現に取り組んでいるわけであります。  それから、特に義務教育等々の関係、教育との関係ですが、義務教育中の少年が更生保護施設に入ってくるというのは余りございません。家庭における監護が難しい場合には一般には児童福祉施設等に入る場合が多いと思われますが、更生保護施設に入所した場合におきましては、やはり地元の教育機関などと協議して適当と認められる場合は更生保護施設から通学させる措置を講ずることもあり得るわけでございます。そのほかに、いわゆるBBSの会員等の協力を得て学習支援を行っていくということもあるところでございます。  いずれにせよ、更生保護施設の少年入所者に対する処遇の充実を図っていかなけりゃいけないということで現在努力しているところでございます。
  60. 行田邦子

    ○行田邦子君 少年の更生にとってやはりきちんとした居場所があるということは非常に大切だと思いますので、是非、これは更生保護施設での更生支援といったことの充実だけではなくて、それ以外の様々な更生のための居場所としての住居ということについてもお取組をお願いしたいというふうに思っております。  これは恐らく厚生労働省の所管だとは思うんですけれども、例えば自立援助ホームというのがあります。これもまたちょっと私の家の近所に自立援助ホームがあるんですけれども、たった七人ぐらいの収容ではあるんですが、一軒家で一つ屋根の下暮らして更生をしていくということです。やはりこういった自立援助ホームにいる子たちを見ていますと、親はいるけれども、親と一緒に暮らすことによってまたそれが更生には逆効果になってしまうというような子たちもたくさんいるわけであります。  このような自立援助ホームなどともうまく連携を取って、更生保護施設だけではなく、少年たちの更生といったことに取り組んでいただきたいというふうに思っております。  そして、もう一つ、再犯防止、更生のために非常に重要だと思うのが仕事を得るということであります。今、法務省さんからいただいた資料によりますと、無職者と有職者で比べると、職のない方の再犯率というのが四倍になっているということです。そしてまた、保護観察終了者の二割以上が無職のままと。そうすると、こういった方たちというのは再犯を犯してしまう可能性が高くなってしまうということであります。  そこで、就労支援について伺いたいと思います。  就労支援の取組についてなんですけれども、協力雇用主という制度があります。これはもう古くからというか、かなり前から制度としてあるわけでありますけれども、この数字を見ますと、協力雇用主として登録をしていただいている者というのが全国に約一万一千あるということです。これは随分多いなという印象を受けました。ところが、実際に出所者等を雇用している事業主というのは約四百、四百に欠けるというような状況で、これまた、登録者が多い割には非常に雇用の実績に残念ながら結び付いていないなという印象を受けております。  協力雇用主の登録数が一万一千と多いにもかかわらず、なかなか雇用実績に結び付かないその理由をお聞かせいただけますでしょうか。
  61. 齊藤雄彦

    政府参考人(齊藤雄彦君) お答えいたします。  刑務所出所者、少年院仮退院した者等々を含めまして、前科前歴があることを知りながら雇ってあげましょうというふうに手を挙げてくださっている協力雇用主さんの下での雇用の拡大ということがやはり一番重要だというふうに思っておりまして、法務省といたしましては、協力雇用主さんの数の増加、さらに実際の雇用数の増加に今取り組んでいるところでございます。  委員指摘のとおり、平成二十五年四月一日現在の協力雇用主さんの数は一万一千四十四事業者でありました。速報なんですが、平成二十六年、今年の四月一日現在で一万二千六百三ということで、約千六百増えまして、約一〇%余り増加しているというところでございます。  また、各時点で実際に協力雇用主が雇用されている刑務所出所者の数なんですが、平成二十五年の四月一日現在は八百七十九人であったものが、今年の四月一日は千二百三十人と約四〇%増加しているということで、委員指摘のとおり数は少ないんですが、少しずつ実際に雇っていただいている数も増えつつあるなというふうに思っているところです。ただ、重ねて申しますが、委員指摘のとおり、まだまだ全体の数からいうと少ないと、大きな課題だというふうに思っております。  その要因なんですが、いろいろございますが、例えば協力雇用主の業種が、現在、建築業、サービス業、製造業で、三業種で全体の七七%を占めていると、特定の業種に限られているといったようなことから、なかなか刑務所出所者等の希望やその適性に応じた柔軟なマッチングができていないというようなことなども大きな原因だろうというふうに分析しているところでございます。
  62. 行田邦子

    ○行田邦子君 私が先ほど申し上げた数よりか協力雇用主の登録者数というのは更に増えているということでありますけれども、せっかく刑務所出所者等を雇ってもいいよということで登録をしていただいている会社がこれだけ多いわけですので、非常にもったいないというか、うまく生かすべきではないかなというふうに思っております。  そこで伺いたいんですけれども、先ほどもお話がありましたけど、協力雇用主と刑務所出所者等のいわゆるマッチングをいかにうまくやっていくのかということが非常に重要だと思うんですけれども、今現在もお取組はされているかもしれませんけれども、更にハローワークそれからまた民間事業者等との連携というのを深めていくべきではないかなと思っておりますけれども、その点、いかがでしょうか。
  63. 齊藤雄彦

    政府参考人(齊藤雄彦君) お答え申し上げます。  委員指摘のとおりでございまして、法務省では、平成十八年から、厚生労働省と連携いたしまして刑務所出所者就労支援総合対策というものを実施しております。非常に多岐にわたっているんですが、ハローワークとの連携とかトライアル雇用の制度を導入するとかいろいろな形でやらさせていただいているんですが、さらに、最近始めたものの一つで、今年から始めたんですが、全国の刑事施設、刑務所でいろんな専門的な職業訓練をしているわけですね。どこの刑務所でどういう職業訓練をしているかといったような資料をハローワークに備え付けていただきまして、協力雇用主がハローワークへ行ってそれを見て、ああ、ここの刑務所でこういうクレーンの資格を取らせているんだなと、じゃ、そこへ求人を出すとか、そういう、よりマッチングが容易になるような制度も今年の一月から全国で実施するようにしております。  また、平成二十三年度から試行的に始めて今年から本格的に始めているんですが、民間の就労関係の専門の方、そういった方に就労関係の仕事を委託するということも始めていまして、刑務所に入っている段階から、民間の方に、そういう人と出所者と面接してもらって、どういう適性があるかとか本人の希望も聞いてもらう。就職先などについてもいろいろ世話をしてもらって、就職した後もずっとその職場に定着できるように支援していただくと。民間の力、専門家のノウハウを活用した事業なども開始しているところであります。  今後とも、こういったハローワークとの連携、さらに民間の力を活用して就労支援を強化していきたいというふうに思っております。
  64. 行田邦子

    ○行田邦子君 今御説明いただいたような様々なお取組、努力をされていると思いますけれども、引き続きお願いしたいと思いますし、また、いろいろな制度の中で、例えばいわゆる補助金が出るというようなメニューも複数用意されているようでありますけれども、単に、雇ってくださったのでお金を出すということ、金銭的なことだけではやはり足りないというふうに思っておりますので、とてもきめの細かいサポートが必要だと思いますので、そういう意味では大変かとは思いますけれども、更生、再犯防止のための支援として就労支援はとても大切だと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと思っております。  それでは次に、在留管理制度について伺いたいと思います。  新しい在留管理制度が導入されてから約二年がたとうとしております。そこで、まず伺いたいんですけれども、不法残留者の数について伺いたいと思います、非正規滞在者とも言っていいかと思いますけれども。今どのような推移になっていますでしょうか。そしてまた、減っているというふうに聞いているんですけれども、どのような対策を講じたのでしょうか。
  65. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。  入国管理局の統計上、不法残留者が最も多かったのは平成五年五月現在の二十九万八千六百四十六人であり、このような状況を改善するため、入国管理局では不法残留者を減少させるための諸施策を講じ、徐々にその数を減少させてまいりました。  例えば、平成十五年十二月には犯罪対策閣僚会議におきまして犯罪に強い社会の実現のための行動計画が策定され、不法滞在者の半減が目標として掲げられましたことを受けて、個人識別情報を活用した入国審査の実施などの水際対策、関係機関と連携した摘発の推進などを行いまして、本年一月現在、不法残留者数が五万九千六十一人にまで減少してきているところでございます。
  66. 行田邦子

    ○行田邦子君 かつては二十九万八千人、約三十万人いた不法残留者ですけれども、今は五万九千人と随分減ってきているわけであります。  この不法残留者、オーバーステイ、在留期間を超えて滞在している方たちなんですけれども、かつての、今の新しい在留管理制度ができる前は、外国人登録制度の中において、実はオーバーステイしていて在留資格がない方であっても地域住民として市町村の外国人登録制度、この台帳に登録をされていて、市町村も地域住民として様々な行政サービスを提供するための基としているといった状況がありました。不法残留者の約一割ぐらい、一万数千人ぐらいが、常にこうして、かつての外国人登録制度で登録原票として情報が保管されていたわけであります。  ところが、新しい在留管理制度になりますと、こういったオーバーステイ、不法残留者に対しましては在留カードが与えられません。そしてまた、外国人の住民基本台帳にも載せられません。要するに、地域社会の中で、また、あるいは自治体の中でそうした不法残留の外国人の情報というのははじかれてしまうというような状況になっているのかなということを私は危惧をしているわけでありますけれども。  そこで、伺いたいんですけれども、在留特別許可によって、非正規滞在者だった方が在留資格を新たに得るといったことがあるかと思います。これがどのぐらい増えているんでしょうか。
  67. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) 在留特別許可の件数の推移について、過去五年間の件数についてお答えいたします。  平成二十一年が四千六百四十三件、平成二十二年が六千三百五十九件、平成二十三年が六千八百七十九件、平成二十四年が五千三百三十六件、平成二十五年は概数でございますけれども二千八百四十件となっております。
  68. 行田邦子

    ○行田邦子君 在留特別許可なんですが、思ったよりかは多くの方がこの許可によって在留資格を得ているんだなという印象を受けています。不法残留者、オーバーステイという状況になっている人でも、この在留特別許可、出頭して在留特別許可を得ようとしたときに、実はこういった方たちの、数千人ですよね、毎年数千人の方が、オーバーステイ、不法残留ではなくてしっかりとした在留資格を得られるというような状況にもなっているということであります。  そこで、ちょっと最後に大臣に伺いたいんですけれども、新しい在留管理制度が導入されて二年が経過しようとしていますけれども、当時、この法改正のときの審議で様々な議論がありましたけれども、この制度の運用状況を踏まえて大臣の御所見を伺いたいと思います。
  69. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 平成二十四年七月にできまして二年たったわけです。そこで、今一番努力しておりますことは、中長期在留者の身分関係であるとかあるいは居住関係、活動状況、これを継続的に把握して、在留管理に必要な情報を正確そして最新のものにしていく、内容に保つように今努力を一生懸命しているところでございます。  それから、先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、新しい制度ができて、外国人住民が住民基本台帳制度対象となったわけですね。そうしますと、その住民基本台帳の事務を行う市町村、あるいは区も入りますね、市区町村等の連携が極めて大事になってまいります。市区町村と情報連携を密にしまして、住民行政サービスに寄与していくことが大きな課題でございまして、そこにも今努めているわけでございます。こういった努力を通じて、外国人との共生社会といいますか、そういうものがスムーズに回転していくように努力しなきゃいけないと思っております。
  70. 行田邦子

    ○行田邦子君 新しいこの在留管理制度ができて、市区町村でも当初かなり混乱もしていたかなというふうに思うんですけれども、また引き続きこの点につきましては別の機会に質問させていただきたいと思います。
  71. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  今日は、安倍政権が建設業人手不足の緊急対策として、外国人技能実制度の活用あるいは拡大をしようとしているという大問題についてお尋ねをしたいと思います。  三月の十七日のこの委員会で、私、技能実習制度を人手不足解消の方策として例えば今の三年を五年に延長するなどという類いのやり方は、技能移転による国際貢献という本来の建前からして全くの筋違いではないかと大臣にお尋ねをしまして、大臣から、法務省としてはどういう対応が適切なのか、具体的なニーズも踏まえながら、産業や治安や労働市場への影響など、様々なことを考えて検討をきちっと進めていきたいと考えておりますという趣旨の御答弁があったかと思います。  その後、四月の四日に関係閣僚会議のここの問題での取りまとめが行われまして、お手元に資料としてお配りしていると思うんですが、そこでまず、具体的ニーズという点について国土交通省にお尋ねしたいと思うんですね。  四月の九日に衆議院の厚生労働委員会で、我が党高橋千鶴子議員の質問に対して、国土交通省が、受入れが必要な人数の目標などについて、六年間で延べ七万人程度を想定しているところでございますという御答弁があります。  二〇二〇年のオリンピックまでのその六年間で延べ七万人程度の外国人建設労働者の受入れを想定するというのはどういうことなのか。つまり、建設労働者がどれだけ不足していて、国内の建設労働者を拡大していく、増やしていくという取組は別途行うんだと思いますけれども、国内での建設労働者を増やしてもこれだけなお不足するから、だから外国人でこれだけ充てる必要があるというような論理になるんだと思うんですけれども、どういう数字とどういう根拠でこの六年間で延べ七万人を想定するという、そういう考え方になるのか、お聞かせください。
  72. 吉田光市

    政府参考人吉田光市君) お答え申し上げます。  今回の建設分野における外国人材の活用に関する緊急措置でございますが、復興事業の更なる加速を図りつつ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けまして、増大する建設需要に的確に対応するため、まずは国内人材の確保に最大限努めることを基本とした上で、大会の成功に万全を期することが重要との観点から、即戦力となる外国人材を時限で受け入れるものでございます。先般、四月の関係閣僚会議で取りまとめられたものでございます。  足下の、国内の建設技能労働者の状況でございますけれども、この数年は被災地の復興事業の本格化等によりまして、一旦離職した方々が再び建設業界の方に戻りつつございます。平成二十二年の三百三十一万人を底といたしまして、平成二十五年には三百三十八万人まで回復しているところでございます。まずは、これらの国内人材の確保に最大限努めることとしてございます。  お尋ねのどのくらいの外国人材の活用を考えているかということでございますけれども、したがいまして、あらかじめ受入れの目標数といったようなものを定めるものではございませんけれども、対象者となる技能実習生の現在の在留数ですとか過去の修了者の人数を勘案いたしまして、六年間で延べ七万人程度の活用を想定しているということでございます。
  73. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の、対象者である技能実習生の現在の在留数や過去の修了者の人数ということがファクターとして挙げられたんですけれども、その数字そのものも延べ七万人などというものには見合わないのではないかという議論が当然あるわけです。  今日ちょっとそこをする余裕がありませんが、いずれにしても、今のその二つの要素というのは、これは給源の問題なんですよね。どれだけの対象とする技能実習生がいるのかということを言っているだけであって、国内の建設労働者を、戻ってきてもらおう、あるいは若手に本当に魅力ある産業として建設業を発展させていこうというこの努力がどれだけ実を結ぶか。今の大震災からの復興やあるいはオリンピックなどのそうした建設需要に、どう日本の若手、後継者、あるいはその下での技能の継承ということ、図っていくのか、その政策がどれだけ実を結ぶのかという、こことの見合いというのは今も述べられていないわけです。  お手元の取りまとめの資料によりますと、二枚目の基本考え方の二というところで、構造的要因による減少と一時的な需要増に必要な技能労働者(イメージ)というグラフがありまして、御覧のとおり、年度は書いてあるけれども、人数などの数字は記載されていないんですね。ですから、グラフと呼ぶこともちょっと差し障りがある思いがするんですが、上のピンク色で示されている図形、ここの部分が恐らく六年間で延べ七万人程度という人数のことをおっしゃっているんだと思うんです。一方で、下の方に破線で仕切られている青色のゾーンあるいは薄緑色のゾーンは、国内の建設労働者の例えば離職者の再入職だとか、あるいは若手、女性、そうした入職の拡大などによってこれから必要な技能労働者に増えていってほしいという、そこの数字なんだと思うんですよ。つまり、差引きの関係じゃないですか。建設需要がこれだけ拡大していくと、現に人手不足があると。となれば、国内のそうした人材によって賄える部分がどれだけあって、それでもここまでしか届かないから、あるいは見込まれるから、だから延べ七万人という数字が出てくるはずなんですよね。  国土交通省としては、どれだけ不足をして、そのうち、どうして七万人を外国人で充てなければならないと考えているのか。このグラフまで示しているんですからお答えになって当然だと思うんですが、いかがですか。
  74. 吉田光市

    政府参考人吉田光市君) 今後の建設投資需要全体を予測するですとか、また労働者数の予測、構造的な人口減少等の中で全体を予測することはなかなか難しい部分もあるわけでございますが、一つ、今回の試算推計に当たりまして、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会、これに向けまして、当然、大会の関連施設ですとか民間投資等による一時的な建設需要の増加が見込まれるわけでございます。これについて、六年間で合計で十五万人程度の技能労働者数の確保が必要なのではないかといったような試算をしているところでございます。  このうち、したがいまして、八万人ほどは国内の人材で、例えば離れていった方々に戻っていただくとか、そういった努力をした上で、七万人程度について外国人材の活用を図るといったようなことを想定しているということでございます。
  75. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の数字は初めて述べられた数字なんですね。延べ十五万人が必要である、国内建設労働者の確保策を頑張っても、つまり八万人にとどまるんだという推計をされているということなんですが、その根拠は一体何なのかと。  もう一枚資料をお配りしていますけれども、国土交通省のお作りになっている建設業就業者の現状についての資料です。御覧のとおり、ピークの平成九年から右肩下がりになっているんですが、特に不足とされている建設業就業者全体でいいますと、ピークから百八十六万人が減っている。技能労働者、鉄筋だとかあるいは型枠、土工など、こうしたいわゆる職人さんたちが百十七万人減っていると。  私は、もちろん高齢になって引退されたという方々もいらっしゃるとは思いますが、この間の建設産業の処遇の低さあるいは劣悪さ、特に賃金の低賃金構造、この下で離職を余儀なくされた方々がたくさんいらっしゃると思うんです。  皆さんの御地元でもそうかと思いますけれども、例えば私の地元でも、月にせいぜい二回か三回か現場の声が掛かるぐらいで、あとは仕事がないという思いで、本当に腕に職を持っているのに、腕はあるのに仕事ができずに悔しい思いをしてこられた建設業の皆さんや、特に後継者たるべき皆さんがいっぱいいらっしゃいました。その中で、コンビニのバイトをした方がまだ生活が安定するといったふうに、建設業で働くことそのものが魅力を失ってきたことがこの間のこうした推移をもたらしているのではないかと思うんですよ。その下で、技能継承も困難になる、災害復旧だとかあるいは老朽化対策など地域に必要な力が損なわれていくという現実があって、そこに大震災、そしてオリンピックと、これが今言われている人手不足ということなんじゃないかと思うんですよね。  だったらば、大震災からの復興あるいはオリンピックで建設需要が大きなものが来るというんだったらば、必要だということであるならば、若手、あるいは女性も含めて、建設業に働ける人たち、とりわけ、この間離職を余儀なくされた人たちに帰ってきてもらう、そのための待遇改善を徹底して行う、それが本筋であって、その本筋を本気になって挑戦すれば私は八万人程度にしかならないとは到底思わないんですが、いかがでしょう。
  76. 吉田光市

    政府参考人吉田光市君) 委員指摘のとおり、この十数年、長引く建設投資の減少が続く中で、仕事がなく賃金が払えないといったような要因から、多くの職人さん、技能労働者が建設業の現場から離れていったわけでございます。このこと等によりまして、大変、今担い手の問題が深刻化しているというふうに認識してございます。  この数年は被災地の復興事業の本格化等によりまして、一旦離職した方々が再び戻りつつあるわけでございますけれども、ピーク時である平成九年と比較いたしますと、委員指摘のとおり、百二十万人ほど技能労働者が減少しているという大変深刻な状況だと受け止めてございます。  これらの人手不足の問題を解消するためには、まず技能労働者の適切な賃金水準の確保など処遇改善に努めることが必要であるというふうに考えてございます。このため、昨年の四月と本年二月に公共工事の設計労務単価を大幅に引き上げたところでございます。また、加えまして、建設業の場合には社会保険の未加入といったような問題もあるわけでございます。こういった加入促進の問題、これらにも取り組んでいるところでございます。  今後とも、建設産業の担い手である技能労働者の処遇の改善にしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
  77. 仁比聡平

    仁比聡平君 例えば、今お話のあった公共工事の設計労務単価の引上げというのは、私たちも強く求めてまいりましたし、実際、国土交通大臣も先頭に、この引き上げられた設計労務単価が現実に働く建設労働者の賃上げにつながるようにということで努力を今されているところだと思うんですよ。  ただ、現実には、単価は引き上げられたはずなのに賃金は上がっていないということが全国にあるわけで、これを引き上げていけば、例えば建設業界が目標としている技能労働者については年収六百万円の達成をということだって、現実に見えてくる数字だと思うんですね。年収六百万円という、そういう水準が建設産業で働けば見えてくるということになれば、私、たくさんの若手や女性の皆さんも入ってくると思いますよ。そこをまずやるのが本筋だと。それをやり切るなら、これによって充てることのできる国内の建設労働者というのは、八万人には私とどまらないと思うんです。  その是非はどんな御認識なのか分かりませんけれども、そうしてこそ建設産業における技能をしっかりと若手に継承していく、今危機的と言われているその技能の継承を果たすことができるし、それが建設労働者やその御家族の所得ともなって地域に循環するということで、経済対策としても私はそれが一番ふさわしいと思うんですけれども、いかがですか。
  78. 吉田光市

    政府参考人吉田光市君) 建設業の人手不足の問題でございますけれども、まずは一旦離職をした方々に戻ってもらうということが重要であると思います。  一方で、これまで建設業の現場を支えていただいたシニアの方々、団塊の世代の方々が、ちょうど六十五歳前後を迎えるに当たって第一線を退きつつあるといったような構造的な問題もございます。こういった高齢者の方々にもしっかり踏ん張っていただくというようなこともあろうかと思います。また、若手、女性の方々に入っていただくような取組も進めていきたいというふうに考えているところでございます。  こういったもろもろの対策に最大限努めることにしておるわけでございますけれども、一方で、今後我が国全体として生産年齢人口が減少していくと、そういった厳しい事態も予想される中で、オリンピック・パラリンピックの大会の成功に万全を期すといったような観点から、外国人材を時限で受け入れることとした今回の措置があるというふうに受け止めているところであります。国内の人材確保対策についてはしっかりと当然のこととして取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
  79. 仁比聡平

    仁比聡平君 今のような国土交通省のお話なんですけれども、法務入管当局に伺いますが、今、国土交通省がおっしゃっている六年間でおよそ七万人、延べ七万人の受入れというのは、これは入管当局として責任を持っている数字なんでしょうか。
  80. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) 委員指摘の数値につきましては、国土交通省におかれまして、対象となる技能実習生の在留数や過去の修了者の人数から六年間で受入れが可能と想定される延べ人数を割り出されたものと承知しております。  こういった人数について、入れるとか入れないとかという形で責任を持って数字を出しているものではないと考えております。
  81. 仁比聡平

    仁比聡平君 入管当局からしてみれば、そのようなニーズが仮に国土交通省のおっしゃるとおりにあるとして、一人一人の外国人労働者が在留資格の申請をしてくる、その審査を行うということ、それから入国後、その一人一人の外国人労働者の在留管理をどのような形で行うのかというのは、これは国土交通省ではなくて入管当局の責任と仕事なわけですよね。  大臣取りまとめには関係閣僚会議のお一人としてもちろん入っておられると思うんですけれども、この取りまとめの中を見ると、今私が申し上げている具体的なニーズについての数字の記載はないように思うんですが、国土交通省のおっしゃっているおよそ七万人というこの数字は、この閣僚会議の取りまとめとして目標ないし想定として掲げられているわけですか。
  82. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 先ほど入管局長が御答弁いたしましたように、国土交通省でこういう確かに算定の中で六年間で七万人という数字を出されたのは私どもも聞いて承知しておりますが、これは今までの対象となる技能実習生の在留数であるとか過去の修了者の人数から、一応受入れの対象となり得るのはこのぐらいだろうと想定されたものだというふうに考えております。  だけど、これはあくまで受入れ対象として可能な延べ人数を想定したものであって、労働者の需給状況やあるいは現実に受け入れる外国人の人数等は変動し得るものだと考えておりまして、この取りまとめの中でも受入れの目標数を定めたというものではないというふうに認識しております。
  83. 仁比聡平

    仁比聡平君 建設関係の業界紙などを見ますと、この四月の四日の取りまとめの以降、こうしたやり方というのが、建設業が今挙げて取り組もうとしている担い手の中長期的な確保、育成の取組を阻害するのではないのかという声が上がり始めています。例えば、ある大手ゼネコンのトップの方は、建設業が外国人技能労働者の受入れを拡大している間に、担い手となる若年者確保で他産業に負けてしまうんじゃないかとか、あるいは受入れ拡大が本当に業界にとっていいのかを考える必要があるという専門工事業団体のトップの方もあるわけですよね。  こうした問題認識の下で、日本建設業連合会が四月に提言を出しておられますけれども、やっぱり、長年にわたる厳しい経営環境の中で悪化した技能労働者の処遇の抜本的改善が不可欠なのであると。  ゼネコンのトップの皆さんが集まっておられる提言を私が紹介するというのは、やっぱり今、日本の建設業をめぐる状況がどれだけ危機であり、かつこの解決が、ラストチャンスという言葉もありますけれども、今問われているかということだと思うんですよね。そうした下で、この取りまとめの中で示されている受入れの制度、仕組みについて、私は、これがこのまま制度化できるとはちょっと思えない。  入管当局に伺いますけれども、緊急措置の概要①というところにあるように、特定活動を大臣告示で増やすというわけですね。その考え方として、即戦力の確保を念頭に置き、建設分野の技能実習修了者について、技能実習に引き続き国内に在留している、あるいは技能実習を修了して一旦本国に帰国した後に再入国をするという者に対して、雇用関係の下で建設業務に従事することができる、そういう特定活動の資格をつくるというわけです。この即戦力かどうかというのは入管での審査で明らかにできますか。技能実習の修了者というのは、これは分かるかもしれませんが、技能実習を修了していれば即戦力なんでしょうか。いかがです。
  84. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) 本件の緊急措置におきましては、復興事業の一層の加速を図りつつ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けて一時的に増大が見込まれる建設需要に的確に対応するための人材の確保を目的としており、即戦力となる外国人材として、建設分野での技能実習を修了した外国人を対象とすることとされております。  そういった観点から、過去に建設分野における技能実習を修了している事実については、当局で保管する個人情報等で確認が可能と考えております。
  85. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、今お答えになっていないんですけれども。  例えば、確かに建設分野で技能実習を受け入れている企業があります。ですが、例えば全国建設労働組合総連合、全建総連の役員さんに伺いますと、実習生は言葉が余り通じない上に、現場はクレーンなどの騒音の中での作業になるわけですから、危ないと言ったときにその声が届かない、指揮命令がよく聞こえない。日本人でも転落などの事故がある中で、鉄骨だとか鉄筋、型枠、そうした躯体の作業は危険性が高いので、この生産の要のところにはすぐに働かせることができない、だから主力にならない、政府方針には現実性がないという声があります。  曲げだとか切断だとか溶接の作業を工場内で行うという研修はやってもらっていても、現場にそんなにたくさん即戦力という技能実習生がいるわけでは私はないと思うし、まして約七万人にはならないと思いますが、少なくとも技能実習を修了したから即戦力とはならないんじゃないですか。
  86. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) 採用される企業の方で、そういった技能実習生修了者につきまして、三年間の実習により安全面での日本語での理解ができるなど、そういった観点での判断をされて即戦力などを判断されるものと考えております。
  87. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、結局、入管の審査ではそこは分からないから、雇用契約で受入れ企業がそこは判断するでしょうというお話になるんですが、入管でそのことが確認できるのは、結局、契約書ぐらいの書面なんですよね。だったら実態はどうなるのかと。  もう一点、新たな特別の監理体制をつくるというのが措置の概要②のところにあります。ここで、優良な監理団体とか優良な受入れ企業というふうにどうも国土交通省が設計していきますということのようなんですけれども、その中身は右下のところに小さい字で書いてあって、過去五年間不正行為などがないということと、協議会への加入、あるいは技能実習生を上回る報酬を確保するというぐらいしか示されていないわけですよ。過去五年間不正行為などがあれば、初めから入国はできないわけで、だから、付け加わる優良さというのはこの協議会への加入程度の話なのか。この優良というのは一体、国土交通省、どういうことなんですか。
  88. 吉田光市

    政府参考人吉田光市君) 今回の緊急措置におきましては、技能実習制度自体について適正化が求められているといったようなことも踏まえまして、現行の技能実習制度を上回る監理体制を整備することとしてございます。その内容といたしまして、優良な監理団体や受入れ企業に限定することとしているわけでございますが、今御指摘がございましたように、過去五年間に不正行為や処分歴がないこと、また、監理団体にあっては、これに加えまして、関係者から成る協議会に加入することなどを求めることとしてございます。また、これに加えまして、元請企業による受入れ企業への指導ですとか、建設業許可部局によります受入れ企業への立入検査等の仕組みも検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。  現在、具体的な要件など、緊急措置の実施に伴い構築する新しい監理体制内容につきまして関係省と調整を進めているところでございます。
  89. 仁比聡平

    仁比聡平君 そう言うけれども、来年四月に受入れを始めたいなんて言いながら、今のような検討状況だと。加えて、建設業界からも先ほど紹介したような声が上がっていると。そうなってくると、これで何かすぐに制度化できるというみたいなことにはならないと思うんですよね。  もう一点だけ聞いておきます。今度のこの制度設計においては、技能実習制度とは全く違って、自発的な転職、つまり、入った受入れ企業といろいろな問題があったときにほかの受入れ企業に自発的に外国人が転職できるということを想定していると思うんですよね。そうすると、外国人技能実習生OBの一種の労働市場ができるということになります。どこにどんな条件で入るのか、次行った転職先がちゃんと本当に労働条件守られるのか、そうした市場の適正さというのは、これはどこがどんなふうに監理するんですか。これまでの労働だったら職安ということになると思いますけれども、いや、一体どうなるんでしょう、国交省。
  90. 吉田光市

    政府参考人吉田光市君) 今回の緊急措置につきましては、委員指摘のとおり、外国人材が日本で建設業務に従事することを可能とするものでございますので、殊更に移動の制限を加えることを想定していないわけでございまして、したがいまして、適切な監理体制ですとか労働安全衛生の確保といったような観点から特段問題がないと考えられるような場合には受入れ企業を変わることを可能とするように、今現在関係省庁と調整を進めているところでございます。
  91. 仁比聡平

    仁比聡平君 私は、この研修制度以来、建前は技能移転だと、けれども、実際には低賃金単純労働力を受け入れる手段としてこの技能実習制度が使われてきたじゃないかと繰り返し指摘をしてきました。その中で、例えば、特に団体監理型において、長時間労働や最賃違反、強制貯金やパスポートの取上げ、そうした権利侵害の下で自殺や過労死、失踪と、そうした深刻な事態が起こってきたからこそ、二〇〇九年の改正で監理団体による適正な監理ということを軸にした改正が行われたわけですよね。なのに、これまでもなかったような、今のようなお話のようなスキームを、法律の改正さえなしに大臣の告示だけでやっていいのかと。これ、実際に導入したときに、例えば入国した技能労働者が転職をして、そのうち、よく分からなくなった、行方不明になったとか、あるいは現場で深刻な労災が起きたとかいうようなときにどう責任取るのか。そうした事態が起こるようなスキームは絶対につくってはならないと思います。  本当だったら答弁いただきたいところですが、時間過ぎましたので、私の質問はこれにとどめておきたいと思います。ありがとうございました。
  92. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 午後一時二十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後一時二十分開会
  93. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、堀井巌君が委員辞任され、その補欠として山田修路君が選任されました。     ─────────────
  94. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  95. 谷亮子

    ○谷亮子君 生活の党、谷亮子です。  本日は、法務省における人権擁護の観点から、児童虐待と子供の人権についてお伺いさせていただきたいと思います。  現在、社会的にも大変深刻な問題となっておりますけれども、児童が虐待を受けたり、またその虐待によって亡くなってしまうという大変痛ましい事件がこれは後を絶ちません。このことは、報道を通じたり、また私のところにも相談に見える方もいらっしゃいまして、救える命、そして救えた命がそこにあるという現実に早急に取り組むべきであるというふうに思いますし、これは大きな課題であるというふうに受け止めております。また、司法行政等の正しい規律の中でこうしたことが執り行われ進んでいくということで、子供の虐待や虐待によって亡くなってしまうということを社会からなくしていくということを実現する、このことが一番今求められていることではないかなというふうに思います。  そこで、児童虐待相談の対応件数の推移を見てみますと、全国の児童相談所での児童虐待に関する相談対応件数は、平成四年度の千三百七十二件からこの二十年間で、統計は平成二十四年度で六万六千八百七件と、これは年々ずっと増え続けてきたという現況がございます。また、児童虐待によって子供が死亡した件数は、これも高い水準で推移をいたしておりまして、第八次報告では、平成二十二年四月一日から平成二十三年の三月三十一日までの統計でございますが、虐待死が五十一人、心中が四十七人、計九十八人、そして第九次報告では、平成二十三年四月一日から平成二十四年三月三十一日までの統計ですが、こちらは虐待死が五十八人、心中が四十一人、計九十九人と、このような現況が続いてきているわけでございます。  そこで、谷垣法務大臣に、このような実情と照らし合わせまして、児童の虐待、そして虐待によって命を奪われてしまう、亡くなってしまうということに対しまして、どのように感じ、またどのようにお考えでいらっしゃるのかをお伺いしたいと思います。
  96. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 児童虐待は重大な人権侵害であるということはもう言うをまたないことでありますが、児童虐待の事例等を見ておりますと、児童虐待をした親といいますか、それが実は小さいとき児童虐待を受けていたというような事例もあるやに聞いております。連鎖していくというふうに申し上げると適切な表現かどうか分かりませんが、こういう児童虐待の被害に積極的に取り組んでいくということは、そういう連鎖を止めるという意味からも極めて大きな課題だというふうに私は考えております。  私どもは、人権擁護局、人権擁護機関を持っているわけでありますが、従来から、この児童虐待による人権侵害について救済に取り組む、これは大変重要課題と位置付けておりまして、関係機関等々と十分連携協力して取組を一層進めていきたいと、このように思っております。
  97. 谷亮子

    ○谷亮子君 谷垣大臣、ありがとうございました。  児童虐待から救済をしていくということは重要課題として今後も取り組んでいかれるということで、是非とも、その取組によって虐待がなくなり、そして虐待によって命を奪われてしまう、亡くなってしまうということが一日も早くなくなっていくということをお願いしたいというふうに思っています。  そして、今お話しさせていただきましたように、統計やまた報道を見ましても、一向に途絶えることのない、減ることのない児童虐待や、また虐待によって大切な命を奪われてしまうという現実が続いてきておりますので、命を救う、また命を守るという人権擁護の観点からも、新たな取組を必要としている子供たちがやはり今もどこかで虐待に耐えながらじっと待っているという状況も考えますと大変心が痛みますので、その点もここで同時に報告させていただいておきたいというふうに思っています。  そこで、法務省の人権擁護機関調査、処理を行う人権侵犯事件現状について、御説明をいただきますようお願い申し上げます。
  98. 萩原秀紀

    政府参考人(萩原秀紀君) お答え申し上げます。  法務省の人権擁護機関は、児童虐待による人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を開始いたしまして、事案に応じた措置を講じているところでございます。  平成二十五年中に処理した人権侵犯の事件数でございますが、これは合計二万二千百七十二件でございますが、そのうち七百四十七件が親の児童に対する暴行虐待事案でございます。親の児童に対するそういう暴行虐待事案の処理件数は、ここ数年でいいますとおおむね七百件前後で推移しているところでございます。
  99. 谷亮子

    ○谷亮子君 ただいま御報告いただきましたけれども、いずれも過去最大の、また最高の件数であったというふうに思います。  また、報道を見ますと、昨年の一年間に、全国の警察が虐待があったとして児童相談所への通告対象にした十八歳未満の子供は、前年比三一・八%、五千二百十六人増の二万一千六百三人で、初めてこれは二万人を超えたと、二万人を超えて過去最多となったことが平成二十六年、本年三月六日、警察庁のまとめで判明いたしておりました。  人権侵犯事件児童虐待の通告件数の増加は、これは大変な社会的関心の高まりとともにこうした過去最大の件数となっておりまして、新しい取組というのが必要ではないかというふうに感じております。  そこで、法務法務局、地方法務局が開設している人権相談窓口にはどのような種類がありまして、それぞれ人権救済にどれだけの実績を上げられているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  100. 萩原秀紀

    政府参考人(萩原秀紀君) ただいま委員からお話がありましたとおり、法務省の人権擁護機関では、児童虐待を含む子供の人権問題につきまして、全国の法務局の窓口、電話、メール等で人権相談を行っております。特に子供の人権問題につきましては、フリーダイヤルの電話相談窓口である子どもの人権一一〇番、それからメール相談窓口でございますが、SOS―eメールを設けているほか、全国の小中学生に相談用の便箋兼封筒を配布いたしまして、児童生徒に悩み事を書いて郵送してもらい、それに人権擁護委員や職員が返信して相談に応じるという子どもの人権SOSミニレターの取組を行ってございます。  そういった人権相談などにより児童虐待など人権侵害の疑いのある事案を認知したときは、先ほど申し上げましたとおり、人権侵犯事件として関係者の聴取などの調査を行い、児童相談所などの関係機関と連携協力して、被害児童の保護を図るなどの措置を講じております。  具体的な実績というか例としては、母親の再婚相手から性的な虐待を受けているとして、被害者から先ほど申しました子どもの人権SOSミニレターが送付されて、法務局が調査を開始した事案がございます。それに対して緊急性があると判断した法務局は、直ちに児童相談所に通告をした後、速やかに被害者が通う学校に赴きまして、教員、児童相談所職員、法務局職員の三者で被害者への対応などを協議いたしました。その上で、法務局職員が被害者とも面接して事実関係を確認し、関係機関と連携した対処を行いました。その結果、被害者はミニレターが法務局に送付された当日中に児童相談所を介して一時保護されるに至ったという、こういう援助という形で対応させていただいた事案がございます。
  101. 谷亮子

    ○谷亮子君 ただいま御紹介いただきましたとおり、人権擁護機関においてあらゆる人権侵害に対して予防そして救済に努めていらっしゃるという現状が分かりましたし、子ども人権SOSミニレター、ここでやはり虐待があるというようなことが実際に判明しているということで、これは非常にいい取組であるというか、それを是非虐待防止につなげていっていただきたいなと、つながるようしていただきたいなというふうに願っております。  そして、続けてお伺いいたしますけれども、法務省が子供の人権侵害の被害を認知された場合、その瞬間からどのような救済方法が取られているのかお伺いしたいと思います。
  102. 萩原秀紀

    政府参考人(萩原秀紀君) それでは、先ほどの人権侵犯事件に関しまして少し詳しく申し上げさせていただきます。  法務省の人権擁護機関では、人権相談における被害の申告のほか、ほかからの情報などにより児童に対する虐待などの人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は人権侵犯事件として調査を開始いたします。調査といたしましては、関係者の任意の協力をいただき事情の聴取を行うなどしておりまして、必要に応じて児童相談所などの関係機関と協議、連携して調査に当たることがございます。  実際の救済につきましても、児童相談所などの関係機関と連携、協力して主として被害児童の保護を図るなどしておりまして、事案に応じた救済のための適切な措置を講じているところでございます。先ほど事例として申し上げましたように、特に被害児童の保護という観点から、援助として虐待が起こらないような見守り体制を構築するという形での解決を中心に図っております。
  103. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  ただいま御報告いただきましたように、関係者の任意の協力を得てそうした捜査取調べが進んでいくということでございます。  やはり人権侵害の被害を認知された場合、その瞬間から私は救済の措置というものを図っていっていただきたいなというふうに考えておりまして、被害があるということが認知された場合ということを考えますと、場合という言葉で、ある程度期間を掛けてしっかりと虐待があるのかどうかを調べていくというような状況にあると思うんですけれども、しかし、私が求めてまいりたいのは、被害、虐待があるということを知った瞬間から、認めた瞬間からやはりそうした救済の措置というのがこれは図られるべきであるのではないかなというふうに考えております。  子供からしますと、これは虐待なのかしつけなのかというのは子供自身がやはり一番よく知っていることで分かっていることだというふうに思いますし、また、更に小さい乳幼児、赤ちゃんにおかれましては、例えばたばこの火を押し付けられた跡があったりですとか、あとは体にあざがたくさんあったりですとか、そういったことが分かった瞬間、知り得た瞬間から対策を行っていくことがやはり命を救う、命が救えたということがはっきりとできるのだということを申し上げてまいりたいなというふうに思っています。そしてまた、そうした小さな乳幼児であったり児童の立場に立った救済の措置、救済方法というのを今後更に加速させていただきたいなというふうに思っております。  そして、こうしたことを申し上げさせていただいた上で、今日は民間の取組を少し紹介させていただきたいと思っております。  これは私も以前から報道等を通じまして存じている取組でございまして、熊本にある病院で「こうのとりのゆりかご」という取組がございまして、御存じの皆様もいらっしゃるかもしれませんけれども、ここでは赤ちゃんが生き延びる権利が最も重要で優先されるべきであるとの信念を貫かれまして、SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口ということで、二十四時間無料で全国からの電話相談も受付をしていらっしゃいます。また、赤ちゃんポストを病院の職員通用口のところにプライバシーが守られるという形で設置してあります。  しかし、このような取組を進めるに当たりましては、捨て子の助長にならないかとか、あと、赤ちゃんの出自が分からなくなるのではないかと迷われたそうでございまして、また、許可が二週間ほどで下りると言われていたんですが、いろいろとあり、四か月ほど要されたということでございます。  また、そうしたことが設置されたこの七年間で、平成二十六年五月二十二日の時点で百一名の赤ちゃんが全国各地からこの「ゆりかご」に預けられておりました。最初にその「ゆりかご」に預けられたお子さんは三歳ぐらいのお子さんだったということでございますが、里親さんに育てられまして、今は立派に成長されているという報告も届けられておりました。  そしてまた、赤ちゃんが預けられると、まず警察署と児童相談所にこれは報告をされるということで、赤ちゃんに異状がないと認められれば乳児院若しくは里親へと引き取られるということで、乳児院では三歳になると児童養護施設へ移されるということになりまして、このときその赤ちゃんは、やはり親だと思っていた職員の方から引き離されるということがありまして、ずっと泣き続けるという子もいるという状況があるということでございまして、また、この「こうのとりのゆりかご」は、そうした命さえ救えばいいと考えているのではなくて、その後も幸せに育っていってほしいという思いもありまして、そうした取組で、やはり家庭で子供は育てていくというのが望ましいという統計等も出されておりまして、子供を守るという観点から特別養子縁組をされるということもあるということでございます。また、その特別養子縁組につきましては、民法八百十七条の七、そして八百十七条の二によって家庭裁判所が成立させるとされているわけでございます。そしてまた、この乳児院には、そうした「こうのとりのゆりかご」を通じて、乳児院というのは全国に百三十一か所ございまして、約三千人の乳児が現在保護されているという現状でもございます。  いろいろと話はございまして、たくさんのこれは問題が含まれているんですけれども、やはりこちら、「こうのとりのゆりかご」さんの取組の中で、赤ちゃんポストに赤ちゃんやお子さんを預ける際に、預けてからもその場を立ち去ることができずにたたずんでいらっしゃる方もいらっしゃるということでございました。また、そのときに、同時に子供への愛情がよみがえる、またあふれる瞬間なのかもしれないということで、この背景にはいろいろなことを抱えていらっしゃるというふうに思います。これはたくさんあると思うんですが、子育てしたくても、子育てをしたいんだけれどもそういった環境にない方でいらっしゃったり、あとは、子供を育てるに当たってどうしても虐待をしてしまう、このままでは大変な状況になってしまうということ等々、いろいろな境遇にある方がいらっしゃるというふうに思います。  そこで、私は、こうした取組が、場所が実際に設置してあるという現実が、実際に救える命、そして救えた命が守られているということにつながっているということでございまして、法務省が取り組まれている、また目指されている人権擁護の観点から、子供への虐待や遺棄から命を守るために、法務省として独自に、あるいは法務省が中心となって他省庁と連携をされて、これは新たなところを創設されてはどうかというふうに考えているんですけれども、御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  104. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 先ほど人権擁護局長が御答弁申し上げたように、児童虐待等々で人権侵犯事件として調査を始めると、こういうことになりますと、一番大事なのは、児童相談所やそういったいろいろな関係機関との連携だと思うんですね。これをしっかりやっていかなきゃいけない。  それで、現在の行政組織では、こういう虐待を受けたりいろんな場合の児童の保護等の援助をするのは、児童福祉を図る観点から、厚生労働省の所管する児童相談所等々で行われているわけで、今、法務省が新たな組織をつくったらどうだというお問いかけでございましたが、行政組織の在り方としては、いろいろなところが同じようなことをいろんな形でやるというのは必ずしも望ましいことではないのではないかと。むしろ、児童の福祉という観点から厚生労働省がやっておられるので、そこにやはり物事を集中していくという方が望ましいのではないかと。  したがいまして、私どもとしては、人権擁護機関がいろいろな仕事をする場合に、そういった児童の福祉に当たる施設あるいは組織と十分な連携を図っていくということがまず取るべきことではないかというふうに考えております。
  105. 谷亮子

    ○谷亮子君 谷垣大臣、ありがとうございました。  やはり、他省庁との連携、そして厚生労働省が中心となって、確かに虐待がなければ、また虐待によって亡くなっていく命が、そうしたことが実際社会になければ、そうした取組はなくて済むんですけれども、それが一番望ましいんですけれども、しかしながら、現実としてやはりこうした児童虐待相談の対応件数を見ましても、六万六千八百七件、平成二十四年の時点でありまして、非常にこれは減ることなく伸び続けているという現状があります。  そして、やはりそこには、ただいま紹介させていただきましたように、熊本県の病院の方で「こうのとりのゆりかご」という、そうした場所を設置されて、そこで保護されたお子さんが乳児院そして里親さんに引き取られていくということで、どうしても子供を育てる境遇にない方たちがいらっしゃるという現状もそこにはあって、ですから、そうしたところがあることによって、子供の人権擁護を考えた場合には、やはりそうした場所があるということが本当に救える命、救えた命ということにつながるのではないかなというふうに私は思っています。  ですから、本当に全国各地にこうした「こうのとりのゆりかご」というような、ある意味そうした場所があれば、先ほども紹介させていただきましたように、親はそこに、「こうのとりのゆりかご」に預けるときに、預けたけれども、一旦やっぱりちゅうちょしてそこに立ち止まってしまう、そこでいろいろなことをやっぱり考えている状況があると思うんですね。  やはり、そうしたことと照らし合わせてみますと、家庭の環境の中で、家の中で虐待としつけは、子供がこれは虐待なのかしつけなのかということはもう一番よく知っているし、親もある意味、これは虐待なのかということはある程度私は理解できているのではないかなというふうに思うところもありますので、ですから、そうした本当に一旦立ち止まる機会が、やはりそうした命を救う、救えた命ということにこれはつながってくると思いますので、そうした場所があるというのと、そうした場所が近くにない、全国からここには集まられるということでありますので、そうした本当に、その場所さえあれば、また、相談する場所はあるんだけれどもそうした場所が実際になかなかないということで、非常に今回思ったのは、やはり法務省が独自でそういったこと全てを含めた上で中心となって、もちろん他省庁との連携もこれは必要になってくると思いますが、是非そうした人権擁護の観点から、児童虐待そして児童の虐待死を本気でなくされていくのであれば、そうしたことへ踏み出す姿勢があってもこれはいいのではないかと。そこには、やはりそうした子供であったり、ある意味、虐待を受けている児童が今まさに望んでいることであるということがそこにあるということを申し上げさせていただきたいなというふうに思います。  ですから、谷垣大臣がおっしゃられることも本当に重々承知をさせていただいておりますし、その反面、やはりこうして児童虐待相談の対応件数というのがもう年々伸び続けているというような状況がずっと続いているわけでございますので、何らかの対策を、やはり国の責務としてこれは対策を講じなければならないときに来ていると私は思っております。  そして、次に、児童虐待親権制度についてお伺いさせていただきたいと思っております。  児童虐待防止の観点から民法が改正をされた経緯がございますが、虐待を行う親から子供を引き離せない背景には親権の問題がこれはございました。そして、その後、親権が子供の利益のためのものであるということを明確化しようということで、そこで民法が改正されまして、親権が子供の利益のために行われることを改めて明確にするため、民法の親権の規定の中に子の利益のためという文言がこれは追加をされまして、平成二十四年四月一日から施行されております。  そこで、施行後二年が経過をいたしておりますけれども、その現況について、また成果があればそうした成果もお聞かせいただきたいと思います。
  106. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 今お話に出ました平成二十三年の民法改正におきましては、児童虐待の防止等を図り、親権に服する子の権利利益を擁護する観点から、従来から存在した親権、管理権の喪失制度に加えて、二年以内の期間に限っての親権を行うことができないようにする親権の停止制度というものを創設するといった法改正を行っております。  そして、今もお話がありました平成二十四年四月一日からこの新しい制度は施行されておりますが、新しくできた親権停止の審判事件の件数、申立て件数ですけれども、改正法が施行された二十四年四月一日からその年の十二月三十一日までの九か月間では百二十件、平成二十五年、昨年の一月一日から十二月三十一日までの一年間では百八十五件、合計一年九か月間で申立て件数は三百五件ございました。  この事件の処理状況ですけれども、この一年九か月間で既に二百五十四件は既済、処理済みとなっておりまして、その内訳は、親権停止が認容されたものが八十件、却下されたものが三十六件、取り下げられたものが百三十三件、その他が五件と、こういう内容になっております。  親権停止が認容された事件において裁判所が親権停止の原因として認定した内容を見ますと、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待等々が原因として認定されております。  他方、親権、管理権の元々あった喪失の方の事件、これの審判事件の件数を見ますと、この新しい停止制度の導入前は年間百十件台から百四十件台であったところ、導入後も実は年間百二十件前後で推移をしておりまして、その件数に大きな変化は見られません。  こういったことを考えますと、新しくできた親権停止の事件は、従来からあった親権、管理権の喪失の審判事件では要件が厳格過ぎてなかなか親権制限ができなかったような事案につきまして適切に申立てがされ運用がされているんではないかと、こう思っておりまして、この平成二十三年の民法改正が目指した親権に服する子の権利利益をより擁護するということについて、相応の成果を上げているものと考えております。
  107. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  ただいま御報告いただいたことで、やはりこうした親権停止制度といいますか、ここでの成果というのがいろいろな点があるというふうに思います。これはそうしたことが有効だった点もあると思いますし、現在問題になっている点もあると思いますし、その有効な点についてはこれは虐待等に対することもあると思いますけれども、手術の治療をする場合であったりですとか、ほかには実父が亡くなって子供に多額の保険金の問題等々、こうしたことへのそうした親権の問題というのがいろいろなところでつながっているということが背景にあるというふうに思っております。  今日は本当に時間が限られておりまして、もう少しこの親権停止制度について伺ってまいりたいと思っておりましたけれども、また機会がありましたら、いろいろと御教示いただきたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  108. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。  本日は、一般質問の中で入国者収容所等視察委員会についてお伺いをいたします。  茨城県牛久市の入管収容所で、今年の三月二十九日にイラン人男性が、三月三十日にカメルーン人男性が亡くなった事案が起こり、この件につきましては報道もされましたので、御存じの方も多いと思います。  四月二十四日の当委員会の一般質問で私も二、三質問をさせていただきました。その後、今日までに東京弁護士会など七つの弁護士会から会長声明が出されております。そのいずれもが、第三者機関を設置しての独立した調査機関を設置してほしい、それが再発防止、医療体制の確立にもつながるということでございます。  谷垣大臣も五月一日に牛久の入管収容所を視察されたと伺っておりますが、そこでお伺いをいたします。  まず、大臣はこれらの弁護士会の声明をどのように受け止められていらっしゃるのでしょうか。
  109. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今年三月、糸数委員がおっしゃいましたように、東日本入国管理センターで相次いで二件の収容者死亡事案が発生したということでございます。  それで、この件に関して、六つの弁護士会とそれから一つの弁護士会連合会、関東の弁護士会連合会でございますが、声明をいただきまして、いろいろなことがそれぞれ書かれてあるわけですが、大要を申し上げますと、一つは、二件の死亡事案の真相解明を図るために第三者機関の設置等による十分な調査の実施と、それからもう一点は、入国者収容所等での医療体制の改善、見直し等々について声明を出されたということでございます。  それで、まず医療体制ですが、入国管理局の収容施設の中には常勤医師の確保がなかなか難しいと、そういうところがあるのが実情でございます。そういう中で、非常勤の医師に来ていただくなどして被収容者に対する医療の提供に万全を期すよう努めておりまして、実はこれはこの入国管理センターだけではなくて、度々当委員会でも申し上げておりますが、刑務所等の矯正施設でも全く同様な事案でございますので、これについては大きな努力を傾けていかなければいけないと、このように考えております。  それから、この二件の死亡事案につきましては、収容中の対応についてより適切な措置の可能性がなかったのかどうか、しっかりと調査して報告するよう入国管理局に指示しているところでございます。  それから、現在、入国管理局において調査が進められているところでございますので、現時点で再発防止策とはこれであるということを申し上げる段階には行っておりませんが、今後とも、被収容者の人権を尊重しながらその適正な処遇を行うことができるよう、所要の医療体制確保等々努めていかなければならないと思っております。  それから、調査ですが、現在、入国管理局職員による調査を進めているところですが、今後、医学的見地から外部の専門家に意見を伺うということを予定しておりまして、ここは適切な調査を尽くす所存でございます。  それから、内部調査の結果につきましては、外部の委員により構成される、今、入国者収容所等視察委員会というのがございますので、そこに報告をしまして、同委員会からの御意見をいただくことにしたいと、このように考えているところであります。
  110. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 ありがとうございました。  いろんな問題を指摘、今されましたけれども、やはりきちっとした調査を要望しておきたいというふうに思います。  次に、入管の視察委員会が三年連続で医療体制について改善を求めています。今大臣もお話ございましたが、今回のような事件が起きてしまったことは本当に残念なことです。  実は、二〇一二年の秋に英国の視察委員会を訪問した弁護士さんたちのグループのレポートを拝見いたしました。それによりますと、英国の入管視察委員会では、視察後十八週間以内に視察結果の報告書がインターネットで公表される、そして、施設側はその報告書公表後二か月以内に視察の結果を踏まえた行動計画を策定しなければならないというふうになっているようです。さらに、この報告書、公表されて十二か月後には第二次行動計画を提示し、その進捗報告が義務付けられているとのことであります。また、前回の視察で問題があったと指摘された施設には、一年から三年以内に必ず全般にわたってのフォローアップ視察がなされて、前回問題点として指摘された事項一点一点について改善がされたかどうかということをチェックしているということであります。  そこで質問ですが、日本の視察委員会で出した意見とこれに対する措置結果については現在どのようなフォローアップ体制が取られているのか、お伺いいたします。
  111. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。  入国者収容所長等は、入国者収容所等視察委員会から御意見をいただいた後、措置について検討して、二か月以内に視察委員会に報告することとしております。この報告の段階では措置予定又は検討中とされた事項につきましては、当該事項を担当する入国者収容所長等が所要の措置を講じた時点で順次視察委員会に報告を行っております。また、視察委員会から個別にその進捗状況を問われることがあれば、適宜進捗状況を回答することになります。  いずれにいたしましても、入国者収容所長等は、視察委員会意見を十分に尊重いたしまして必要な対応を取ることとなります。  以上でございます。
  112. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、入管の視察委員会事務局は入国管理局が担当しているということでありますが、二〇一三年の六月二十八日、国連の拷問等禁止委員会は、日本政府に対して、入国者収容所等視察委員会に対して、収容施設を効果的に監視するための十分な資源と権限を与え、収容されている移民又は庇護申請者からの不服申立てを受理し、審査できるようにするため、その独立性、そして権限及び有効性を強化することとの勧告を出しております。  この勧告を受けて法務省ではどのような検討がなされているのか、お伺いいたします。
  113. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) 委員指摘のとおり、昨年六月、国連の拷問禁止委員会から、我が国の第二回定期報告に関する最終見解の中で、入国者収容所等視察委員会に対して、収容施設を効果的に監視するための十分な資源と権限を与え、収容されている移民又は庇護申請者からの不服申立てを受理し、審査できるようにするため、その独立性、権限及び有効性を強化することとの指摘がなされました。  もっとも、まず、視察委員会委員の任命につきましては、入管法六十一条の七の三に基づきまして法務大臣が行うこととなっておりますが、その人選に当たりましては、委員が特定の職業集団や団体の方に偏らないようにするとともに、選任方法が恣意的なものにならないようにするため、公私の団体から推薦を得て行っております。現在、東西の視察委員会で合計二十人の委員が任命されておりますが、その内訳は、学識経験者四人、法曹関係者四人、医療関係者四人、NGO、国際機関関係者各二人、地域住民代表者四人となっております。  また、その運営は同委員会によって決定されており、国とは一線を画した第三者機関であることから、第三者性は十分に担保されていると認識しております。  また、収容施設の視察や被収容者との面接に当たりましては、入管法六十一条の七の四第三項に基づきまして入国者収容所長等は必要な協力をしなければならないこととされており、また、被収容者は各収容施設に置かれている提案箱に意見や提案を書面で投函できますところ、原則として委員が提案箱を開封することとされているなど、視察委員が直接被収容者の意見等を把握できるように運用されているところでございます。  さらに、視察委員会からの意見は入国者収容所長等を直接的に拘束するものではありませんものの、提出された意見につきましてはできる限り施設運営に反映されるように配慮し、対応可能なものから順次措置していますので、設置目的を達成するために効果的に運営されるものと考えております。  先ほどの拷問禁止委員会の最終見解における指摘を受けて特に制度を改めたということはありませんが、いずれにいたしましても、当局としては、拷問禁止委員会指摘も十分尊重しつつ、視察委員会委員の方々の御意見も伺いながら、同委員会がその役割を適切に果たすことができるよう運用の確保に努めてまいりたいと考えております。
  114. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 今、二十名の方が委員になっているということでありますが、さきの英国視察報告書によりますと、英国の視察委員会のトップは年間一千六百万円ほどの報酬を得ているということですが、日本の視察委員の待遇はどのようなものでしょうか。
  115. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。  入国者収容所等視察委員会委員につきましては、一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第一項に基づく非常勤の国家公務員であり、会議、施設の視察及び被収容者との面接など、委員としての活動に従事するごとに、現在は一日当たり二万二千八百円の手当が支給されております。平成二十四年七月から平成二十五年六月までの任期について申し上げますと、東日本地区入国者収容所等視察委員会では四回の会議と七回の視察を実施していただいており、委員一人当たり平均で約十五万円を支給しております。
  116. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 確かに、この英国の視察委員会は独立性が強く、専従者も五十名弱いらっしゃるということで日本とは違うわけですが、でも、日本ではこの刑事施設の視察委員会が始まりもう七年余りが過ぎておりますけど、もう少しその人的体制強化と予算の手当てをしていただきたいというふうに要望したいと思います。  次に、法務省のホームページで視察委員会意見と入管の措置が表としてまとまって発表されておりますが、この委員会意見委員自身が書いているのでしょうか、委員会議論事務局である入管が取りまとめているということなのでしょうか、お伺いいたします。
  117. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。  入管法第六十一条の七の五に基づきまして、法務大臣は、毎年、入国者収容所等視察委員会が入国者収容所長等に対して述べた意見及びこれを受けて入国者収容所長等が講じた措置の内容取りまとめ、その概要を公表することとされておりますので、委員指摘のとおり、法務省のホームページで公表しております。  具体的には、法律の規定に基づき公表することとなる意見や措置の概要につきましては当局が作成することとなりますが、その作業に当たりましては、必要に応じて視察委員会等に内容の確認を求めるなどしております。  以上です。
  118. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、視察委員会の氏名でございますが、公表されておりませんが、これはなぜでしょうか。  入管法六十一条七の三では、委員は、人格識見が高く、かつ、入国者収容所等の運営の改善向上に熱意を有する者のうちから、法務大臣が任命するというふうになっておりますが、氏名それから所属が分からなければ、人格識見、それからその熱意の有無について有権者が判断できないのではないでしょうか。
  119. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) 委員指摘のとおり、視察委員会委員の氏名、住所、職業その他、委員個人の特定につながる情報は公表しておりませんが、これは視察委員会委員がその職務を円滑かつ適正に遂行できるようにするとともに、委員の私生活への影響等を考慮したものでございます。  委員の任命に当たりましては、先ほど申し上げましたように、いろんな配慮をして第三者性が確保できるように配慮しているところでございます。
  120. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 この視察委員会意見でございますが、余りにも抽象的に過ぎるという意見もあります。  例えば、これは平成二十五年の一覧表六でございますが、東日本入国管理センター、こちらにございますのは、申出の不許可告知の際には、被収容者に対して、より分かりやすい説明を行うよう努力されたいというふうになっております。  これに対しまして、英国の視察の基準では実に細やかな基準、指標を定めています。  苦情申立て手続についてというところを見ておりますと、被収容者は苦情申立て手続を秘密に行うことができ、その手続は効果的で時宜を得たもので、被収容者によく理解されていることというふうになっております。  もっと細かく申し上げますと、例えば一点目、これは、適切な言語により苦情申立て手続が公表されること、二点目は、適切な場所では、被収容者は、公式な苦情申立てをする前に非公式に争点を解消することを奨励されること、それから三点目に、被収容者は公式な苦情申立てをいつでも秘密に行うことができ、英国国境庁や独立査察委員会に対して苦情申立てができること、四点目に、苦情申立ての書式は、被収容者が理解できる言語のものが入手できる等々でございます。さらには、被収容者は苦情申立て手続安心して利用でき、悪影響を感じないようにし、不服申立て手続については知識があることとなっております。  これにつきましては、例えば一点目に、被収容者はいかなる苦情を出す場合もプレッシャーを増大させられないこと、二点目に、スタッフに対する苦情を申し立てた被収容者や他の被収容者は、起こり得る非難から保護されること、三点目に、スタッフへの苦情申立ては慎重に取り扱われ、必要な場合は苦情の対象となったスタッフとの関わり合いへの制限が実行されること、四点目に、苦情は適切なレベルのスタッフによって審査されること等々であります。  そこでお伺いをいたしますが、日本の視察委員会にはこのような視察の基準があるのでしょうか。もしなければ、このような基準を策定する予定がございますでしょうか。  手順についても、英国では視察手順を書いたマニュアルがあるとのことですが、日本ではそのマニュアルが存在するのでしょうか、お伺いいたします。
  121. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) お答えいたします。  入国管理局におきましては、視察委員会の活動に役立てていただくために視察委員会活動の手引を作成し、委員の方にお配りしております。この手引では、視察委員会の職務、委員の資格と身分、収容者、収容所等との関係などについて紹介しておりますが、そういった収容施設への評価に関する基準についてまでは言及しておりません。  英国におきまして委員指摘のような文書が作成されていることについては承知しておりますが、視察を受ける立場の入国管理局においてそのようなものを作成することが適当であるのかなどについては慎重な検討を要するものと考えております。もっとも、英国の文書で求められているような施設の備えるべき基準につきましては我が国にも当てはまるものと思いますので、それらをも適宜参考にしながら収容施設における処遇の在り方を検討してまいりたいと考えております。  また、我が国の視察委員会は、平成二十二年に発足したものでありますが、今後ともその活動を重ねる中で、視察委員会において御指摘のようなものを作成される場合には、入国管理局においても必要な協力をしてまいりたいと考えております。
  122. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 ありがとうございました。  視察委員会のこの勧告の実効性を高め、入管行政の透明性を高めるためにも是非ともマニュアルの作成も行っていただきたいと要望申し上げますとともに、英国の視察委員の待遇なども含めて、やはりこの問題に関するきちんとした専門性を持って対応するためにも、日本の視察委員会在り方、改めて処遇も含めて検討していただくように要望したいと思います。  次に、行政不服審査法整備法改正の点について質問したいと思います。  現在、国会で審議中でございますが、行政不服審査法の施行に伴う関係法律等の整備法についてお伺いをしたいと思います。同法案の七十五条二項六を見ますと、口頭意見陳述権の例外規定として、行政不服審査法第三十一条第一項ただし書の「場合」を、場合又は申述書に記載された事実その他の申立人の主張が真実であっても、何らの難民となる事由を包含していないことその他の事情により当該意見を述べることが適当でないと認める場合と読み替えることというふうにされております。  そこで、整備法でこのような改正をする理由について具体的に説明していただきたいと思います。また、ここで言うその他の事情とは具体的にどういうことを指すのか、このような無限定な規定ぶりでは全ての事情が含まれる結果となるのではないでしょうか、法務大臣にお伺いいたします。
  123. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今の読替規定に関するところですが、意見陳述権を、意見陳述の機会を与えることが適当でないと認める場合、それを判断するのは、改正法の下で今度新たに審理手続の主宰者となる難民審査参与員が個別の案件ごとに判断をするということになりますが、その中で、御指摘のその他の事情というのは余りにも漠然としているじゃないかという今御指摘ですね。しかし、これは申述書に記載された事実その他の申立人の主張に係る事実が真実であっても、何らの難民となる事由を包含していないことというのが前にございまして、その後にその他の事情というんですから、全く無限定に何でもいいというわけではないんですね。  具体的にどういう場合が考えられるかと申しますと、一度難民不認定処分を受けた後に改めて難民認定申請を行い、従前と全く同様の主張を繰り返す場合等々が一つ考えられる事案だと思います。それで、あと申し上げておきたいのは、難民認定申請の回数、何度も何度もやっているじゃないかとか、それから難民認定申請までの期間、もうすぐまたやったというようなことによって一律に口頭意見陳述の機会を制限するというようなことは、ここの事由としては想定されていないということを申し上げたいと思います。  それで、この現行制度においても、口頭意見陳述に立ち会って審尋するか否かは難民審査参与員の判断に現在でも委ねられておりまして、今回の改正によって運用面において実質的な変更はないものと考えております。
  124. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、この難民認定制度の改革についてでありますが、我が国の難民認定については、従来から難民認定率の低さや、それから異議申立て手続事件処理の滞留化など、様々な問題点が指摘されているところであります。そこで、大臣もこのような問題点に対応するべく、大臣の私的諮問機関である出入国管理政策懇談会の中に、各界の専門家から成る難民認定制度に関する専門部会を昨年十一月に設置し、今春から本格的な議論を開始したと承っております。  そこでまず、法務大臣に、同専門部会を設置した趣旨、同部会におけるこれまでの議論、そして同専門部会の結論を得た場合の今後の難民認定制度の改革に向けて、今後の予定なども併せてお伺いをしたいと思います。
  125. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 若干答弁が長くなるかもしれませんが、まず設置趣旨でございますが、今の難民認定制度は平成十六年に難民審査参与員制度等々の創設が行われて以来、既にかなりの期間を経過しているわけですね。その間に、申請件数が大幅に増加してくるとか、あるいは申請内容が非常に多様化しているということがございまして、そういうことから適正あるいは迅速な対応に関していろいろ問題も生じてきているということがございます。それから、難民認定数が少ないではないかと、少ないことに関連して公平性や透明性の確保というものがもっと必要ではないかというような御指摘もいただいてまいりました。  そこで、難民認定制度に関して専門的な検討を行おうということで、昨年の十一月に私の私的懇談会という形で第六次出入国管理政策懇談会の下に難民認定制度に関する専門部会を設置したという流れでございます。それで、この専門部会は、国際法それから行政法分野の学識経験者、それから難民支援団体あるいは日弁連から推薦のあった弁護士というような方を委員としまして、それから加えまして、国連難民高等弁務官駐日事務所からもオブザーバーとして参加をしていただいておりまして、専門的な観点から御議論をいただいているところであります。  そこで、検討課題は、一つは、難民認定申請が急増する中で適正かつ迅速な案件処理のための方策、それから二番目に、本国情勢等に鑑みて人道上の観点からの在留を認める処分、それにもっといろいろ考えるところはないかということですね。それから三番目に、難民認定申請者に対する生活支援とかあるいは手続支援といった支援策の在り方、以上のような三点が主たる検討項目になっております。  それで、専門部会における議論状況を踏まえまして、今年の末をめどに専門部会から政策懇談会に対して提言を行っていただくように今議論を進めていただいているところでございまして、それを踏まえて、法務省としては難民認定手続に関する制度運用の見直しを進めていきたいと考えております。
  126. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 ありがとうございました。  この難民認定の現状とさらに問題点についてでありますが、今大臣もいろいろお答えいただきましたけど、そもそも現在の難民認定では、迫害の主体や迫害の内容範囲など、政府の解釈が難民条約の解釈と適合しているかどうかということも争われていることが多いわけですけど、一定の事実の存在を前提としても、難民該当性の評価については争いがあるところでもあるというふうな指摘もございます。にもかかわらず、先ほども申し上げましたように、その他の事情というような無限定な規定ぶりに入管法が改正されると、例えば申請の回数などの申請に至る事情なども含まれることとなるわけですが、この異議申立ての大半が口頭の意見陳述を経ることなく棄却される結果になるのではないかという懸念もあると言われております。このような懸念に対してはどうお答えになるのでしょうか。
  127. 榊原一夫

    政府参考人(榊原一夫君) 過去三年間、口頭意見陳述において難民審査参与員が立ち会った比率につきましては、平成二十三年九七・六%、平成二十四年九七・五%、平成二十五年九九・一%となっており、高い水準で推移しております。  本改正後の口頭意見陳述実施率についてですけれども、口頭意見陳述を実施するか否かの判断は個々の案件の内容に大きく影響されると思われますし、手続の主宰者となる難民審査参与員が行うため、当局の立場から今後の実施率について推測を申し上げるのは難しい面があると考えております。しかしながら、これまでは、入国管理局職員である難民調査官が審理手続の主宰者であって、難民審査参与員は口頭意見陳述に立ち会い審尋することができるにとどまる地位であったものですが、本改正後は難民審査参与員が公正中立な立場から審理手続を主宰することになりますので、口頭意見陳述の実施を含め、これまで以上の役割を果たしていただけるものと期待しております。  しかも、今回の改正案によれば、形式的に申述書に何らの難民となる事由が記載されていなければ機械的に口頭意見陳述を付与しないということではなく、審理手続を主宰する難民審査参与員が口頭意見陳述の機会を付与することが適当でないと認める場合の判断を行うものとされているものでありますので、委員指摘のような状況にはならないものと考えております。
  128. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 時間でございますので終わるわけですが、このような難民認定の現状を踏まえると、今、国会で審議中、総務委員会でも今審議中でございますけど、やはり行政不服審査法の整備法、この入管法の難民認定との関係では著しく問題があると言わざるを得ません。これをやはり、先ほど大臣の答弁にもございましたが、出入国管理政策懇談会の議論を始めるとともに、その十分な検討を経た上で、難民制度の抜本的な改革を求めるべきだというふうに思っておりますが、一言、大臣の御答弁いただいて、終わりたいと思います。
  129. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今回の入管法の改正は、行政不服審査法の改正で審理員というのができますね。そうしたときに、難民認定では難民審査参与員制度というのがあって、その関係はどうなるのかということを位置付けを明確にするための改正でございます。ですから、これは、先ほどお答えしましたような、難民認定制度に関する専門部会における議論を制約するものではございません。あの部会の中で、専門部会でしっかり議論していただきまして、難民認定制度の見直しについても、そういった議論を踏まえて検討してまいりたいと、このように考えております。
  130. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 ありがとうございました。終わります。
  131. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     ─────────────
  132. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。谷垣法務大臣
  133. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  経済のグローバル化や少子高齢化の中で、今後、日本経済を新たな成長軌道に乗せるために、高度の専門的な能力を有する外国人材の受入れを促進することが求められております。また、我が国の国際化の進展とともに、観光立国実現に向けて官民一体の取組がなされた結果、昨年の外国人入国者数は初めて一千万人を超え、二〇二〇年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックに向けて、今後、その数が更に増加することが見込まれるところであり、出入国管理上、問題を生じるおそれが少ない外国人の出入国手続の簡素化、迅速化を図ることが急務となっております。  この法律案は、以上に述べた情勢に鑑み、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法の一部を改正するものであります。  この法律案の要点を申し上げます。  第一は、高度の専門的な能力を有する外国人材の受入れの促進のための措置であります。これは、現在、特定活動の在留資格を付与している高度の専門的な能力を有する外国人材を対象とした新たな在留資格、高度専門職第一号を設けるとともに、この在留資格をもって一定期間在留した者を対象とした、活動制限を大幅に緩和し在留期間が無期限の在留資格、高度専門職第二号を設けるものです。  第二は、クルーズ船の外国人乗客に係る入国審査手続の円滑化のための措置であります。これは、法務大臣が指定するクルーズ船の外国人乗客を対象として、簡易な手続で上陸を認める船舶観光上陸許可の上陸許可の制度を設けるものです。  第三は、一定範囲の短期滞在者に係る出入国手続の円滑化のための措置であります。これは、自動化ゲートを利用できる対象者の範囲を、頻繁に来日し、我が国に短期間滞在する外国人のうち、事前に指紋等の個人識別情報を提供して審査を受け、出入国管理上問題を生じるおそれが少ないと認められて登録されたものに拡大し、その外国人の上陸許可の証印を省略できるようにするとともに、上陸許可の証印に代わる上陸許可の証明手段を設けるものです。  以上が、この法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  134. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十四分散会