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2014-04-16 第186回国会 参議院 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年四月十六日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      田城  郁君     徳永 エリ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鴻池 祥肇君     理 事                 西田 昌司君                 松村 祥史君                 山田 俊男君                 江崎  孝君                 石川 博崇君                 山田 太郎君                 辰已孝太郎君     委 員                 高野光二郎君                 鶴保 庸介君                 松山 政司君                 宮本 周司君                 山本 順三君                 吉川ゆうみ君                 渡邉 美樹君                 石上 俊雄君                 大塚 耕平君                 徳永 エリ君                 広田  一君                 藤末 健三君                 河野 義博君                 藤巻 健史君                 真山 勇一君                 吉田 忠智君    事務局側        第二特別調査室        長        山内 一宏君    参考人        日本金融財政研        究所所長     菊池 英博君        関西学院大学経        済学部教授    林  宜嗣君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関  する調査  (デフレからの脱却財政再建在り方など経  済状況について)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ただいまから国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、田城郁君が委員を辞任され、その補欠として徳永エリ君が選任されました。     ─────────────
  3. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査を議題といたします。  本日は、デフレからの脱却財政再建在り方など経済状況について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  御出席をいただいております参考人は、日本金融財政研究所所長菊池英博参考人及び関西学院大学経済学部教授林嗣参考人でございます。  この際、先生方に一言御挨拶を申し上げます。  御多用の中、本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、忌憚のない先生方の御意見を承り、我々の今後の調査参考にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。  本日の議事の進め方でございますが、まず菊池参考人林参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いをいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、菊池参考人からお願いをいたします。菊池参考人
  4. 菊池英博

    参考人菊池英博君) 皆さん、こんにちは。御紹介いただきました菊池でございます。  今日は、この国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会の方にお招きをいただき、私の拙い意見を聞いていただけるということで、大変うれしく思います。大変光栄でございます。  それで、既に先生方大変御勉強でございまして、今回が四回目でございますね。三回の分は議事録事務局さんの方からいただきまして、全部拝読してまいりました。したがって、できるだけ既に皆様方議論されましたこととはダブらない範囲で私の意見を申し上げたいというふうに思います。  それで、まずお手元資料でございますが……
  5. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) どうぞお掛けください。
  6. 菊池英博

    参考人菊池英博君) 私、立ってお話しした方が気合が入りますので、誠にちょっと醜い顔で恐縮でございますが、立たせていただきます。  それで、まずお手元資料を確認させていただきたいと思いますが、まず一枚、このA4の縦長で九枚付いておりますが、ペーパーがございます。これがレジュメでございます。今日お話ししたいこと、少し時間も制限がありますので、かなり細かく書きましたけど、この中の、かいつまんでお話を申し上げたいと思っています。  それからもう一つ図表というのがございます。この図表は二十八枚まで一ページに出ていますが、二十枚まではこのスクリーンに出していただくようにお願いしてありますので、この上に出させていただきます。それから、二十一枚目から二十八枚目は別に参考資料として、例えばアメリカの大恐慌のときがどうだったかとか、それから、もう少し細かく幾つか個々の項目について参考になればということで、あるいは後ほどの皆様方質問にお答えさせていただくために必要かなとも思いまして用意いたしました。これは横っちょに置いておいてください。  それからもう一つ参考意見というこういう長いのをちょっと用意させていただきました。これは一ページが出ています。これは私の見解ではなくて、ここに、表にございますとおり、中野剛志さんとか、それからリチャード・カッツというアメリカ学者というか編集長なんですが、この方とか、そういう方々の考え方でございまして、これは、今進めておられますアベノミクス、私は是非これを成功して何とかデフレ脱却していただきたいと本当に強く念願しているんですけれども、かなり問題点もございます。これはこの後で、私の所見の中で申し上げますが、その裏付けといいますか、そういったものになる資料がこれでございます。これは、もう既にお目通しの方もいらっしゃると思いますけれども、御参考までにお持ちいたしました。  それではまず、このレジュメを御覧ください。まず、レジュメ、よろしゅうございますか、縦のやつです。それじゃ、これをまず読ませていただきます。  テーマとしましては、どうして日本はこんなにひどい経済になってしまったのか、こうすれば日本経済成長を取り戻せるということでお話ししたいと思います。  こういうテーマにいたしましたのは、実を言いますと、何人かの先生方とかあるいは私の友人に会いますと、何人かの方からこの質問を受けるんです。本当、どうしてこんなひどい日本になっちゃったの、あんなに高度成長も良かったし、なったじゃないか、どうしてなんだということをよく聞かれます。そして、それが実を言いますとデフレの根源にあるわけです。したがって、このテーマの下に、どうしたらいいかという方向で最後を結ばせていただこうということです。  まず、これを読みます。中身でございますね。長期デフレ発生原点、一九九六年六月、財政再建法閣議決定金融恐慌発生。二番目、小泉構造改革というデフレ政策の導入、緊縮財政金融緩和不良債権処理デフレ法制化。三番目、新自由主義市場原理主義という新しいイデオロギー。一、新自由主義というイデオロギーの誕生とその理念政策。二番目が、レーガン大統領経済政策アメリカ債務国へ転落してしまった、そういう事実。それから三番目、アメリカでの実験三十年の帰結。これはアメリカ議会当局が出しています。その資料です。四番目、歴史に学ぶデフレ解消成功例成功共通点財政主導金融フォロー政策による長期的な需要喚起政策です。一、戦前の大恐慌昭和恐慌とそれからアメリカの大恐慌、これは先ほどのように資料を別に用意してあります。それから二番目は、戦後のデフレ経済成長路線に導いた財政政策、この金融フォローアメリカクリントン大統領、これが、御存じのとおり一九九三年に就任して、五年で財政赤字を解消しましたそのときの政策。これは図解してきちっとお話しいたします。今、実はこれが一番日本に大切だと思います。平和時にきちっと財政を再建することができて、成長路線に乗せたんですね。それから五番目、どのようにして成長路線に回帰させるか、供給サイド政策デフレ促進デフレ解消長期的需要喚起政策以外にない。これが私の見解でございます。結びは、日本型資本主義の確立、新自由主義型資本主義から瑞穂の国の資本主義へと。そういう一つのしっかりとした理念を出していただきたいなと。これは事実、安倍総理瑞穂の国の資本主義ということはちゃんと書いてありますね。綱領にも書いてありますし、期待しています。まだはっきり出ておりませんけれどもね。  それで、私がここではっきり申し上げたいことは、まず、これから幾つかの資料で申し上げたいのは、現在の日本財政特徴です、デフレ特徴とか財政特徴。この現在の日本デフレというのは、恐らく有史以来最も悪質な長期デフレだと思います。歴史上は参考になるのは幾つかありますけれども、これだけ長期にわたった、今我々が直面しているようなデフレ歴史上初めてだと思います。それから二番目には、それを解決するに当たっての財政政策。これに対しては非常に誤解が多いです。その誤解がどこにあって、何かということを図解を含めてお話しいたします。それから三番目には、どうすればこういう悪質なデフレを解消できるのかと。私は本当にアベノミクス成功させたいと念願しています。この十五年間、デフレは悪い悪いと、本当に時には孤軍奮戦して言ってきたんですから。学者の中にはデフレの方がいいという人もたくさんいたんですよ。本当に、そんなのはとんでもないと言ってきた一人でございます。ですから、是非これは成功していただきたいと思いますが、まだまだ大きなこれからの、今まさにアベノミクスは正念場だと思います。どうしたらいいかということを最後に申し上げたい。  それでは、二ページ目ですね、本論に入ります。長期デフレ発生原点バブル崩壊後の日本経済は、一九九六年に回復し、名目年二・六%、実質〇・八%に戻りました。ところが、この時点で大蔵省、今の財務省は、政府債務GDP比率主要国の中で最も高い、さあこれは大変なんだといって、時の橋本総理を説得して財政再建法というのを成立させたわけです。  その下、一、一九九六年六月、財政再建法閣議決定をいたしました。橋本龍太郎内閣です。これは、五年間で財政赤字、これは地方も入ります、国と地方GDPの三%以内に縮小する、これは法制化して数値目標が付いております。これは後ほど、竹下元総理が、数値目標を入れて失敗だったなとおっしゃったということを自民党勉強会に行かせていただいたときに自民党先生からお聞きしました。  このときの大蔵省は、日本財政を粗債務だけで判断していたんです。この後ここへ出ますけれども、まず最初だけ、ポイントだけ先にお話しして、それからグラフで見ていただきます。  それで、このときの誤りは現在まで続いています。粗債務か純債務か。これは、この会議議論もありましたし、参議院予算委員会でも拝聴していましたので、幾つ議論はあるかと思いますけれども。それで、このときの誤りは現在まで続いております。それが、この日本の持っている金融資産が何かとか特別会計が何か、それから日本対外資産がどのぐらいあるか、こういうことをしっかりと認識した上で正しい認識を持つべきだと思います。  それで、日本長期デフレといいますのが国民閉塞感、特に若い人、それから成長の、経済阻害要因、これになっているんです。私は、本質的には、財政政策に対する間違いです、はっきり言えば。間違いの継続、それを今正そうとされているんですよ、自民党は。ですから、それが一番実を言いますと大きいポイントで、この十五年間苦しんできたんだと思います。  それから、日本財政危機ではない、政策危機である、これは海外の見方です。私もよく海外行きますが、日本が本当に財政危機だと思っている人に会ったことはありません。ただ、政策が悪いんじゃないの、デフレやってたら税収上がらないんじゃないの、あんなに金あるのになぜ自分のために使わないのと、これが私が聞いている共通点です。(資料映写)  まず、それじゃ、こういう、最初に、そこら辺のところで、図表で見てみたいと思います。まず、御覧いただけますか、この図表、添付の、皆様のお手元縦長図表がございます。それをめくってください。めくっていただきますと、一番上に粗債務GDP比率国際比較というのが出ています。それが実はこの数字です。  それで、財務省が、当時の大蔵省が、一九九五年に橋本総理に、とにかく日本財政は大変きつい状況だと、財政危機だということを進言された背景には、粗債務で見ていたんです。つまり、財政は、先生方御案内のとおり、粗債務と純債務と両方あるんです。これはOECD統計が出ています。それで、粗債務といいますのは借入れですね、借入総額です。それから、純債務といいますのは、それから金融資産を引いたものです。これはOECD統計はそうなります。ただ、純債務については、固定資産なんかも引くという考えをお持ちの学者先生もいらっしゃいます。しかし、OECDベースで私は考えて、金融資産だけを引くようにいたします。  そういたしますと、これで御覧いただきますと、一番左のところですね、ここです、ここのところで、橋本財政改革財務省が、さあ財政危機だといったときには、このときの粗債務数字だったんです。つまり、粗債務というのは総借入れですね。それを名目GDPで割ると。そういう統計資料が出ているわけです。それをOECDデータを使ってこのところを見てみますと、日本はこれの八〇%なんです。それから、その下のアメリカが七一、その下のこれはユーロ圏が六九、下のドイツが四七。これはこんなに多いからさあ大変なんだということを当時の、財務省は言ったわけです。これは新聞にも出ておりました。その後、国会でも認めたと思います。たしか、そういう話聞いたことがありますけれども。  ところが、純債務、純債務といいますのは、その粗債務から金融資産金融資産って、日本にある場合にはまず特別会計が持っている金融資産、これもこの後お話ししますけれども、それからもう一つ社会保障基金です。これが入るかどうかは議論ありますけれども、OECDでは入れています。それで見ますと、日本は何と一番下です。二〇%という非常に低い数字だったんです。ですから、これから見れば日本健全財政です。そこで、こういうことがありまして、アメリカも実はこの数字で、国際的には大体これで見ているわけですね。ですから、これを基にして、まず日本が判断をしたと。  そして、この粗債務と純債務の言わば混同が今日に至るまでいろんな誤解を、誤解といいますか、実体の財政を判断する上での見方が、分かれているというよりは間違っていると私は思うんです。  まず、これ最新のデータです。金融資産の関係で二〇一二年十二月末を取っているんです。  これで見ていきますと、財務省が発表する粗債務というのは九百九十七、千兆です。そのうち、特別会計が三百兆あるんです。それから、一般会計というのは残りのざっと七百兆があるんです。金融資産としては、特別会計に相当するものは全部金融資産としてこれは内閣府のデータに載っております。それから、載っているんですけど、社会保障基金、これは年金ですとか健康保険の組合、それの積立金です。ここでも国債を七、八十兆買っておりますから、資金の還流はかなりあるんですけど、こういう形になるんです。  ですから、粗債務だけ見ますと千兆だと。しかし、純債務は、これからこの差額を取ると四百九十九兆、つまり半分なんです。だから、ユーロ危機が起きた、何かしたら、さあ円を買おうと。一番世界で安定な国なんですよ、安心な通貨なんですよ。  それで、問題はこの特別会計なんですよ。特別会計って一体何なのというと、その下に書きました。図の下を御覧いただきたい。  これは二つに分かれまして、まず財政投融資特別会計に入る部分と、それから外国為替特別会計に入る部分と両方あるわけですね。この両方ありまして、その財政投融資特別会計部分は、国民から集めて、財投債とか借入金で集めた金で、政府系金融機関に回して、それを個人だとか外国政府とかいろいろなところに貸しているわけです。ですから、この特別会計債務というのは、全部最終借入人が負ってくれるんです。国民は負う必要ありません。  それからもう一つは、外国為替特別会計に入る、ざっとこれはもう百三十兆、これはどんどん増えているんですけれどもね。これを見ますと、これでは、この八割ぐらいの金を使ってアメリカ国債を買っています。ですから、最終的にはアメリカが、もしデフォルトになればこれ没にしますけれども、アメリカが負担してくれる。  つまり、特別会計は全て政府自分銀行をやっているんですよ、金融機関を。そして、それは、政府政府保証債を出したり調達していますから、債務には入れている。しかし、完全にこれは国民が負担しなければならない債務ではないんです。ですから、純債務と粗債務の一番の違いはここなんです。これが幾つかの誤解を生んできているわけですね。  その次に行きましょう。  それで、まず、財政から、これを見てみまして、これは、一九九六年まで遡ってずっと日本財政の規模を、借入金ですね、これを考えてみました。それで、これが一般会計借入金です。この上にプラスになっていますね。これが、特別会計がプラスされてここの一番上に来ています。  それで、一般会計は、この二〇〇一年から二〇一二年まで、三百十三兆円、確かに増えています。それで、小泉構造改革のときに建設国債よりも赤字国債が増えたんですね。だから、中身は少し悪くなりました。その前は建設国債中心だったんです。  一方、特別会計の中では、この左上に書きましたとおり、借入金としては十兆ぐらい増えています。しかし、政府短期証券、つまり、アメリカ国債を買うために、この間既に四十五兆買っているんです。ですから、その分でどんどんどんどん膨らんできているわけです。  ですから、財務省が、さあ千兆だ、大変だ、増税増税だと言いますけれども、一方、アメリカ国債を買わざるを得ない状況あるでしょう。これは、また後の議論として、もし議論ができればと思いますけれども。いずれにしても、今でも五十兆ぐらい今年買ってくれと言われているというような報道が流れています、市場には。  もしそうであれば、それはそれでしようがないと、たとえそうであっても、それも国民の負担だから、さあ増税をしろという理屈にはならないんですね。そういうことを言い続けてきているから、自ら財務省が首を絞めているんですよ。  これは、財務省の方には何回もお話ししましたけれども、なかなか聞いてもらえません。そして、彼らが言うには、そういうのは俺たちは判断できない、政治家先生がちゃんとリスクを取って判断してくださいと、こう言うんですよ。  したがって、私は、先生方にちょっとお願いしたいことは、政府が、財務省が発表するこの資料がありますね、さっきの資料があります。これですね、これ、この千兆。これを特別会計一般会計に分けて公表していただくようにお願いしていただけませんか。指示していただけませんか、財務省政治家先生方から。そうしますと、こういう実態、よく分かるんです。こういうことが一番あるわけです。それで、この混同から結局、この財政危機といいますかデフレが始まったんですね。  じゃ、ペーパーに戻ってください。ペーパーに戻っていただきますと、こういうことで財務省が、当時の、財政再建ということを法律で決めました。一九九六年六月に決めて一九九七年にそれを施行するということになったわけです。それによって、その後、本当に株価がどんどん下がりました。この株価が下がったことによって実は金融危機が起きるんですけれども、その前に、実は銀行は当時、株式の含み益、これを自己資本に入れていたんですよ。  それで、当時、大手行、全体では十九行ありました。十九行全体で、自己資本というのは四十兆あったんです。そのうちの一割の四兆円がその株の含み益だったんですよ。すると、八%の自己資本を維持しなきゃいけないということは、その十二・五倍の貸出しを回収しなきゃいけない。それで、当時は物すごい回収競争でした。  私自身は長く東京銀行におりまして、それから大学先生をやっておりましたので、ちょうどこの金融危機のときには文京女子大学という大学先生をやっておりましたし、ただ、当時の後輩なんかもたくさんおりましたから、銀行なんかによく聞きますと、各店別貸出回収計画というのを出していたんですよ。それによって物すごい回収されたんですね、金を回収をしたと。実際には、有価証券報告書で見ますと四十八兆円を回収いたしました。これで一挙に実は信用収縮が起きたんです。これに当時気が付かれたのが麻生太郎大臣であり、当時の亀井静香さんだったんです。  その一番下を御覧ください。  小渕内閣森内閣のときにデフレ脱却をやろうということをおっしゃって、それで当時の亀井政調会長です、亀井静香さん、それから麻生太郎先生、今の副総理は国務大臣であられました。今ちょうど財政金融担当大臣。それで、大臣として初めてデフレを認められたのは麻生太郎先生です。これ、今でも新聞記事持っていますけれどもね。それから、日本は純債務で見ればそんなに心配じゃないんだというこの実態国民にはっきり説明されたのも麻生先生です。  それで、景気はその後かなり良くなってきたんです。それで、結局税収は二〇〇〇年には五十一兆へ上がって、このままいけばデフレは解消したんですよ。ところが、二〇〇一年三月に森総理が退任されて、小泉内閣が成立した。ここで大きな逆噴射が出たんです。  その次のページを御覧ください。  時間の関係ありますから、項目中心に整理してまいります。  まず、ですからここで、一番上に書きましたね、デフレを始めたのは自民党、花を咲かせたのは民主党と、このデフレを解消するのが安倍内閣経済政策だと。  これは、実は自由民主党の参議院脇雅史先生が去年の三月の参議院予算委員会でおっしゃいました。これ、本当に名言です。ただ、これで私が思ったことは、自民党さんはちゃんと自らデフレをやったということを自覚されておる、それを何とかして解消しようというんだから、これは立派なものだと思っているんです、本当に。やっぱり自分の間違ったことは、説明あれですからね、みんな言いたがらないですからね。しかし、これをきちっと言われた。  それで、小泉改革というのはどうなったかということは、まあそこに書きましたから、ちょっともう何か時間が余りありませんが、とにかく自民党をぶっ潰すと。小さい政府公共投資削減地方交付税交付金国庫補助金削減。これは、林先生がいらっしゃいますからこの後お話ししますけどね。それから、あと政策理念供給サイド経済学と言ったんです。これはレーガンアメリカで言い出したことのまね事だったんですね、竹中さんが言い始めた。しかし、供給サイド経済学なんというのは、実はあり得ないんです、経済学としても。  なぜかというと、実はアメリカがやっていることは、供給サイド経済学と言って減税をしろ、企業に減税をしろ、富裕層の税金を下げろと言うんですが、レーガンがやったことは軍事バブルです。軍事という公共投資です。それで、その後、ソ連が潰れてからクリントンがやったことは、まさに公共投資経済を立て直したんです。今でもそうです。今でもオバマが一生懸命やっているのは、かなり公共投資です。今かなり良くなってきていますけどね。これは公共投資です。ですから、この辺のところが日本は大変に誤解をしているんです。アメリカ数字をきちっと分析すればすぐ分かります。  それで、問題なのは、そういうことになって、大きなデフレ、何がデフレ要因かといいますと、真ん中辺からちょっと上、下へ読みます。構造改革の主要政策。まず、緊縮財政金融緩和、これ財政デフレです。それから二番目、その下、不良債権処理、企業倒産デフレ。これは必要以上にやったんです。はっきり言って、ここで不良債権処理をする必要はなかったんです。これ、理由は後ほどでも御質問があればお話しいたします。これはむしろ竹中さんがわざとやったんです。UFJ銀行を潰したといっても、あれはわざと潰したんですよ。あの銀行は別に不良債権もそんなにありませんし、時価会計を取って、それで不良債権どんどんどんどんつくらせて、それで結局は破綻させたということが、これ事実です。これはみんな知っていますけどね。それから三番目には、時価会計デフレ。四番目には、自己資本比率規制というのを採用して、特に地方銀行までこれ入れました。だから、まさに金融行政デフレです。それから五番目には、雇用規制の緩和、実質的に解雇を自由にした。だからリストラデフレ。それから、その次のページですね、もう一つありますね、規制緩和として、幾つか規制緩和をしましたけれども。  いずれにしましても、竹中さんの時代にやった構造改革の各項目は、全部デフレ政策なんです。それをやっていけば全部デフレになるんです。だから、デフレ法制化したんです、はっきり言って。これが今日に至る大きな原点です。  それで、その結果どうなったかということです。それで、非常に大きな特徴は、まず、先へ参ります。この右下の七というのがございますね、これを御覧いただきたいんです。  これは何かといいますと、今よく新聞に出ます、最近は。どうして出るかというと、こんなに財政支出が増えているよ、税収が減っているよ、ワニの口のようだねと、こういうように評するんです。しかし、このワニの口のようだねという現象が発生したのは、実を言いますと、この橋本財政改革のときからなんです。それで、それが少し良くなって、小泉改革になって一挙にこれがどんとこういうふうに落ちてしまった。  そして、これはどういうことかといいますと、結局、石油危機ですね、一九七三年から始まった石油危機、七九年が、二回。石油危機以降、日本は非常に外貨が入ってきて、国民の貯蓄が増えたんですよ。そこで、この国民の貯蓄を国内で使おうと、だから建設国債を出して、公共投資を出す、それによってその貯蓄を国内に還流していったんです。それによって地方が、経済が発展する、そしてそれがまた中央に跳ね返ると。こういう、まさに非常にいい循環、まさに安倍総理が今おっしゃる好循環ですよ。好循環はここから始まったんです。それで、この好循環が始まっていますから、この間財政、支出の方が多いんですよ、税収の方が少ないんです。だけれども、名目GDPはずっと上がっていますよ、これ。ずっと成長しています。  しかも、もっと驚くべきことは、一九九〇年にバブルが破壊しましたね、破裂しました。それで、税収は落ちました。税収は落ちましたけれども、公共投資どんどん出して実体経済を支えていたんです。その結果、名目GDPも上がっているんですよ。ですから、これがベースになって実際にその後の税収にプラスになってくる、そういうやさきだったんです。そのやさきに橋本財政改革……
  7. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 先生、大変恐縮でございますが、そろそろおまとめをいただきたいと思います。
  8. 菊池英博

    参考人菊池英博君) はい、分かりました。  こういう形になっている。ですから、結局、こういう形にきちっと戻すというのが一つ重要なんです。ですから、こういうところにじゃ何が必要かというと、やはり国土強靱化法と、今出ておりますけれども、そういうものを柱としてしっかりと地方に対しても資金を、お金を回す、その循環を良くする、そして底上げをしていくということが非常に必要だと思います。あと細かいことはありますけれども。  それで、その次の五ページに行っていただきます。あと一、二分で終わります。  それで、小泉さんがなぜこういう、竹中さんがこういう話をされたかというと、結局、新自由主義というか市場原理主義と、新自由主義というのは一つイデオロギーです、市場原理主義はそれの経済的側面なんですけどね。それを市場原理主義市場原理主義と言った。そして、アメリカレーガンがやったことをそのまま、はっきり言えば模倣してきたんですね。それで本質的なことは忘れちゃったんですよ。軍事費で上げているとか公共投資で上げている、それからクリントンがそれで上げている。クリントンの話は後ほどできればどなたかから御質問いただけたらと思いますが、これは、クリントンはまさに公共投資経済を活性化して財政赤字を黒字にしたんです。  それで、レーガンが、新自由主義の人たちが言うのは、大胆な減税をしろ、それから規制緩和をしろ、もうけを優先しろということをして、徹底的にケインズ経済学というか福祉型の資本主義を崩壊しようとすることです。ですから、ここには大きなイデオロギーというか大きな対立があるんです。つまり、福祉型資本主義か、それとも新自由主義型資本主義。  新自由主義型資本主義というのは、まさに一%の国民富裕層に富を集中すればいい、そうすれば彼らが使ってくれるから下々は幸福なんだと、トリクルダウンといいますね、ここでも既に出ています、そういう思想だというんです。しかし、トリクルダウンはアメリカでは議会当局が否定しています。ですから、我々はここをしっかり考えなきゃいけない。  それからもう一つは、今、法人税を下げろということを盛んに言っていますけれども、法人税は下げるべきじゃありません。むしろ上げるべきです。クリントンは上げて成功しました。これも後ほどお話しいたします。  それで、アメリカは法人税をレーガンのときに下げた。下げて、物すごい下げ方だったんですよ、これ。これ下げた結果、アメリカ債務国に転落したんです。本来、政府に入るべき収入を、富裕層に行ってしまった。だから、政府債務国。今日に至るアメリカのあのもがきといいますか、失礼だけど、もがきといいますか、もう惨たんたる苦労は、この新自由主義というのを入れて、そして債務国に転落したことです。  そういうことを考えまして、最後に、アベノミクスをどうするかということですけれども、私はまず、やはり何といいましても、当初申し上げたとおり、重要なことは、日本デフレというのは長期デフレ恐慌型なんです。恐慌型というのは投資がもう回収超過なんです。これも図表がありますけれども、これ後ほど時間があれば御説明したいと思います。投資が回収超過。  それから、金融は効かない。これは、金融が効かないというのは小泉構造改革のときにもう立証済みなんです、実は。どんどんどんどん緩めていったらアメリカへ行っちゃったんですよ、お金が。それで、結局二〇〇六年に日銀が締めた。第一次安倍内閣のときに締めたから、安倍総理はやられたと言っていますけど、あれはもうしようがなかったんです。今でもそうです。この一年間、黒田さん、随分緩めましたね。緩めて、大体この一年間で七十兆緩めました。緩めるというよりはベースマネーを増やしました。しかし、国内で使ったのは僅か三十兆です。残りの四十兆は全部海外へ行っています。アメリカへ行って、ニューヨークでヘッジファンドがそれを使っているんです。ですから、この辺はそういう意味では大きな問題になってくると思います。これはもちろん議論があれば後ほどお話しいたします。  ですから、非常に重要なことは、やはり財政主導できちっと仕事をつくると。今仕事がないんです。だから、公共投資あるいはその関連、エネルギー、そういうものに関連して幅広く長期計画を立てて、そして継続していく。重要なことは、長期計画を立てて継続する、そして需要を喚起していく、そういうことです。そういう政策をきちっと、是非とも現在の安倍政権、自公政権に期待したいと思います。これ以外に私は解決の道はないと思います。是非やっていただきたい。  もう既に国土強靱化法は成立しておりますし、このことにつきましても、前回の藤井先生とかその前の宍戸先生等のお話がありましたから細かいことは触れませんが、ここには五年百兆の効果がどうかということも図表で示しております。そういう点で、是非とも皆様方の御指導を賜りたいと思います。  ちょっと長くなりまして、大変失礼いたしました。御清聴ありがとうございました。
  9. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、林参考人お願いをいたします。林参考人
  10. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) 時間もありませんので、もう早速お話をさせていただきたいと思います。二十分たちましたら途中でももうそれで打ち切らせていただいて、後の質疑のところでお話をさせていただきたいと思います。  私の申し上げたいことは、財政再建のためには地方の再生が不可欠だという点がまず一点。そして、その地方の再生のためには条件整備が不可欠であるということ、これが二点目であります。このお話をさせていただきたいと思いますけれども、先ほど菊池先生のお話の中にもありましたように、国の財政地方財政がもう非常に密接につながっていて、太いパイプの中でいろんな関係を持っていると。  実は私、今大学で国と地方関係論という講義を持っております。国と地方関係論というので、学生にどのようなイメージを持ちますかと言うと、仲が悪いとかといったような話が出てきます。ですけれども、重要なことは、やっぱり財政を両輪でやっているということをきちんと捉えて、そして議論をしていかなければならないということでございます。  資料を配付していただいておりまして、この右下のところにスライド番号が書かれております。このスライド番号を申し上げますので、そこを御覧いただきたいという具合に思います。  三つ目、三枚目のスライドでございますけれども、国の財政改革の諸側面ということで、実は私は財政学者でございます。したがって、社会保障改革とか行政改革とか税制改革、ここをメーンに今まで研究をしてまいりました。しかしながら、一方で、国と地方の関係がこれだけ密接になっているときに、しかも国から地方への財政支出が非常に大きな規模に上っているとき、この国と地方の関係を改善しなければ国の財政改革も実現しないと、こういうことの中で国と地方の関係について研究をしてまいりました。  五ページ目を御覧いただきたいという具合に思います。  これは、国の財政支出の中で地方に対して行われている支出がどれぐらいの大きさになっているかということを示したものでございます。比率でいきますと、大体三割弱ぐらいのところを横ばいで推移していると。つまり、国の財政支出のうち三割は地方交付税だとか補助金という形で地方に流れていると。  これにメスを入れなければ国の財政改革というのはなかなか進まないということで、今まで交付税改革であるとか補助金カットだとか、こういうようなことが議論になってまいりました。しかしながら、その金額を削減すればよいという話ではどうもなさそうだと。結果的に削減できるようにしなければいけないと。そのためには、地方の再生を図ることによって、地方が国に頼らないでも、あるいは頼り方が少しでも減るような形で地方経済を持っていかないことには駄目だろうということで、今日のお話をしているわけでございます。  六ページ目を御覧いただきたいと思います。  アベノミクスによってマクロ経済が随分回復をしてきている。今後、構造的な改革をどのように進めていくのか。ディマンドサイドの、菊池先生はどちらかといいますとディマンドサイドのお話をなさいました。金融サイド、供給サイド経済学では私はありませんけれども、やっぱり構造改革ということを考えていくということになりますと、マクロの国の指標でいきますと、要するに平均値で議論をすることになります。しかしながら、景気回復には非常に地域間格差が存在するんだということで、この六ページを御覧いただきたいと思います。  地価の減少率が随分歯止めが掛かってきたという具合に言われておりますが、地方に参りますと、やはり依然として地価の減少率がまだ高いままになっていると。これは明らかに土地需要によって地価が動きますから、この土地需要がこれからどのように動いていくかということでございます。  七ページ目は、歯止めが掛からない東京一極集中。  社会保障・人口問題研究所が人口予測をいたします。それが、後になればなるほど地方実態がますます悪くなるという、そういう予測が出ます。もう詳細は申し上げませんけれども、例えば秋田県は、総人口がこの二〇一〇年から二〇三五年の二十五年間に約三割減少する。若い人たちが出ていっておりますから、生産年齢人口ベースで考えますと二十五年の間に約四割減少してしまうと。これはもうとんでもない話だと。確かに日本全体でも少子化で人口が減少しますけれども、地方においてはいわゆる転出が非常に大きな人口減の原因になっている。これをどうやって止めていくのかというところが最大の課題でございます。  八ページ目に、人口減少は財政力の低下に直結と。  この全国の都市のデータを見ますと、人口減少率が大きければ大きいほど財政力指数が低くなる、これは当然のことでありますが、この右上がりの傾向が明確に見られると。したがって、財政力が弱くなり、国からの地方交付税に頼らないで済むようにするためには人口減少を抑制しなければいけない、止めなければいけないということでございます。  現状推移のシナリオがこのまま続いたとするならばどのようなことになるか、これが九ページでございます。  今、私は、地方によってはもう負の連鎖、負のスパイラルが起こっているという具合に捉えなければならないだろうという具合に思います。人口が減少する、それによって産業が衰退する、雇用の受皿、雇用がない、したがってまた若い人たちが減少するというような負の連鎖、これが起こっている。この負の連鎖をどうやって断ち切るかということが地方の最大の課題でございます。  人口減少、産業の衰退、これは地方税源の縮小につながる。そして、経費は人口減少ほどには減少いたしません。その結果、財源不足額が増加する。そして、これをそのまま交付税で補填するということになりますと、もう当然のことながら交付税を増やしていかなければいけないと。  従来、これまでは交付税あるいは公共投資でこの負の連鎖を事後的に断ち切っていたと。しかしながら、この事後的に断ち切るということであれば、もう常に巨額の資金を投入しないことには、これをちょっと緩めるとまた負の連鎖に陥ってしまうということになりますので、この辺りを何とかしなきゃいけないということで、この財源不足額を少なくするためには、九ページに書きましたように、義務付けを縮小するだとかそういうようなことがありますけれども、一番最後のところに書かせていただいております地方力の強化、人口、企業の流出を食い止める、負の連鎖を根本から遮断するということが必要になってまいります。  そこで、少しイギリスのお話をさせていただきたいと思います。  イギリスは、前労働党政権のときに、ヨーロッパ大陸の国々の都市に比べるとイングランドのロンドン以外の都市の力が非常に弱いと、これを何とかしなきゃいけないということで、かなり力を入れて調査研究をいたしました。そして、ヨーロッパ大陸の都市を研究するなどすることによって、地方力の推進要因って何だろうということを研究したわけであります。ここに、十ページ目のところに載せておりますように、経済的な多様性だとかあるいは生活の質だとか、こういうものがやはり総合的に備わっていかなければ、地域力がなくなり、地域の魅力がなくなり、人が出ていき企業が出ていく、競争に勝てないと、こういうような調査結果を出しました。  そこで、重要なことは、十一ページに書かせていただいておりますように、いわゆる経済と社会、この二つの要素が地域力を支える両輪だということでございます。つまり、その両者の要素の相乗効果によって地域の力が付いていくと。ですから、今までのように純産業政策的な、補助金を提供するとかあるいは企業誘致のために税の軽減を行うとかといったような純産業政策的なやり方では地域の力というのは大きくならないんだということがこの研究から出てまいりました。  よく最近では、いわゆる内発型の発展と、このように言われているのは、企業を誘致する、あるいは公共投資を呼んでくるということに期待したいわゆる外発型の地域の活性化、これはインパクトとしては重要なのでありますけれども、それをいかに内発型に変えていくかというところを議論していかなければならないというのが内発型の発展でございます。  十二ページ。これはOECDのレポートに書かれているものをまとめたものでございます。つまり、国土政策、地域政策のパラダイムが大きく変わってきているんだということがもう明らかだというのがこのレポートの結論でございます。  新しいパラダイムでは、古いパラダイムが弱いところを何とかかさ上げするというような政策であったものが、地域競争力向上のために全地域を対象にして地域のポテンシャルの掘り起こしをやろうと、これが新しいパラダイムだというようになりました。そのためには、支援の地理的範囲を行政区域という単位から経済活動という機能上の圏域単位に変えていかなきゃいけない、こういうことも言われております。部門別アプローチ、つまり縦割りのアプローチから総合的な開発プロジェクトあるいはアプローチに変えていかなきゃいけない。  そこで、じゃ、その実施主体は誰なんだという具合に考えたときに、これは、今までは中央政府中心になって地域の活性化あるいは地域の下支えをやっていたけれども、これからは、国は国の役割を果たす、広域自治体は広域自治体の役割を果たす、基礎自治体は基礎自治体の役割を果たすというように、複数の段階の政府がパートナーシップを築いて地域の活性化をしていかなければならないというのが新しいパラダイムだというように認識が深まってきております。  そこで、十三ページを御覧いただきたいと思いますが、自治体が、じゃ、どのような役割を果たしていけばいいのかということでございます。  まず左側から申し上げますと、いわゆる財政収支のバランスを何とか改善したいというのが今の地方自治体の最大の緊急課題でございます。しかしながら、財政収支のバランスが実現したら住民がハッピーになるのかというと、実はそうばかりとも言えない。そこで大事なのは、財政収支のバランスもさることながら、いわゆる最少の経費で最大の効果を上げなければならないという、地方自治法に規定されているまさに民間企業経営的な自治体経営をしていかなければいけない。これが次の課題として自治体経営が重要だというように言われてきております。  しかしながら、私は、この自治体経営すらもう時代遅れだと思っております。つまり、自治体経営というのは、現行の行政の守備範囲を前提にして、それを最少の経費で最大の効果を上げるということを考えていかなきゃいけない。しかしながら、今や、地域の課題を民間部門や他の地域と協力して解決をしていく、そして地域力の強化と魅力の向上を図るということが地域の大きな課題になっていると。  だから、自治体経営ではなくて、地域経営であったり都市経営というような発想でなければいけない。そのためにも、他の地域、民間を巻き込んでパートナーシップを築いて地域づくりをやっていく。それはまさに、今までは地域というのは民間の経済活動の入れ物でございました。この入れ物をどうやって修復をしていくかというのが大きな課題であったわけでありますが、今や地域や都市というのはプロダクト、つまり製品、商品だと。つまり、それを総合的に売り出していけるかどうかというところが、このグローバル時代にその地域が勝ち残れるかどうか、維持できるかどうかというところだという具合になります。  そうすると、自治体の役割というのは、今までは自治体はガバメントとして考えられておりましたけれども、これからはそういう自治体だけではなくて、いろんな主体を巻き込んだ形で考えていかなければならないとするならば、これを、ガバナンスをどのようにしていくのか、あるいはマネジメントをどうするのかというところにもう視点が移ってきているという具合に思います。  ちょっと飛ばしてまいります。十五ページを御覧いただきたいと思います。  時代がたつにつれて、そもそも自治体の役割というものが、あるいは自治体の行動原理が管理主義的であった。つまり、行政サービスを提供するという、こういう目的の中でむしろ管理をする、土地利用計画についてもできるだけ管理をするといったようなやり方であったものが、今や、地域をプロダクトとして捉えるということになりますと、やはり企業家主義的な行動をしなければいけないと。そのためにも公民連携と地域連携、この二つを同時に実現をすることによって、自治体だけではなくて民間も巻き込んだ形で地域のプロダクトとしての価値を高めていかなければならないということでございます。  十八ページを御覧いただきたいと思います。  連携がこれからの私はキーワードだと思います、地域連携、公民連携。しかしながら、この連携にも様々なレベルがございます。研究者によっては、日本の場合にはパートナーシップだとか連携だとかという場合は連携なんですけれども、英語でいきますと、ネットワークだとかコーディネートだとか、あるいはコーポレートだとかコラボレートだとか、このように連携の中身が随分違う、そういう表現がございます。  今までの日本の連携というのは、どちらかといいますとネットワーキングあるいはコーディネーティング。だから、例えばイベントを共同で開催しましょうとか、情報のやり取りをしましょうとか、時々意見交換やりましょうとか、あるいは一部事務組合のような形で行政サービスを共同で提供しましょうと、これはまさにコーディネーティング、せいぜいコーポレーティング。これからの連携というのは、公民も地域間もいわゆるコラボレーティングでなければいけない。つまり、相手側をもっと幸せなものにするために自分たちはどのように行動していかなければいけないのかということをお互いに考えながら連携をしていくというのがコラボレーションでございます。こういう時代にもう入ってきているのではないかという具合に思います。  そこで、イングランドで今地域連携、公民連携の動きが非常に活発化しているというお話を残った時間でさせていただきたいと思いますが。  このシティーリージョン政策というのは、前労働党政権の時代から、先ほど申し上げましたような、イギリスの都市の力が弱くなっている、ロンドンは別にして、他の地域の都市の力が弱くなっている、これを何とかしなきゃいけないということで、今までの行政区域単位ではなくて、核になる都市とその周辺を含めたいわゆるシティーリージョンという単位で様々な政策、これはとりわけ経済の活性化にターゲットを絞った政策、これをシティーリージョンでやろうということが言われました。そして、新しい今連立政権に変わっておりますけれども、このシティーリージョン政策はそのまま引き継がれております。  次に、新しい連立政権の改革でございます。  二十ページ。リージョナル・ディベロップメント・エージェンシー、これ日本語で訳しますと地域開発公社という具合に訳していることが多いわけですけれども、労働党政権時代にいわゆる総合出先機関として国がつくった、それをもって地域の開発をやるということをもうやめようと。むしろ、連立政権は民の力を強くすることが最大の課題である、目的であるということで編み出したものがローカル・エンタープライズ・パートナーシップ、LEPでございます。このLEPは、もう既に御承知の先生方いらっしゃると思いますけれども、政権ができてすぐに地方の代表あるいは経済界の代表に手紙、書簡を送っているんですね。そして、もう短期間の間にシティーリージョンを対象にしてLEPの計画のフレームワークをつくれというようなことの要請をいたしました。そして、その要請に応えたところに対して様々な地域開発のインセンティブを与えていくと、こういうやり方を連立政権が取りました。  そこで私はすごいなと思ったのは、このLEPのガバナンスをどうやってやるかというところで、ボードをつくるわけです。そのボードをつくるときに、自治体の代表者と同数の民間の経済人を委員にすると。そして、座長はビジネスパーソンが務める、原則ビジネスパーソンが務める。その中で、いわゆる戦略をつくり、そしてインフラの優先順位をつくっていくと。こういう役割を果たすのがLEPでございます。  ちょっともう時間がなくなってまいりましたので、東京一極集中を抑える勇気も必要というのは、これはちょっと後ほどお話をさせていただければという具合に思います。  そこで、いわゆる分権国家というところが今ヨーロッパではキーワードです。今までの地方分権というのは、どちらかというと現在の行政の守備範囲の中で、補完性の原理だとか、より効率的な住民のニーズに合ったサービスを提供していくということが地方分権の目的だという具合に言われておりました。しかしながら、最近では地方分権と地域の活性化、経済力、魅力、こういう関係の中で地方分権が捉えられているというのが一般的になってきております。  二十四ページを御覧いただきますと、これは二〇〇九年度の労働生産性の国際比較をしたものでございます。ここに日本の各地方の労働生産性を挿入をしております、購買力平価を使ったものでございますけれども。左側で労働生産性の高いところ、ルクセンブルクだとかノルウェーだとか、アメリカはちょっと別にして、北欧の国々が非常に生産性が高い。この北欧に位置する国々というのは、国民負担率が非常に高い国であります。にもかかわらず労働生産性が高い。  一体これはどこに秘密があるんだろうというふうなことを考えたときに、様々な理由があります。その一つは、北欧というのは分権国家だと。そして分権国家ということは、つまり実験ができやすい国家だということなんであります。人口九百万余のスウェーデン、それを分権をする。分権をした地域ごとに実験をすると。これ、日本の場合だったら、やはり実験をしたときに一億二千万、三千万の人口に影響を及ぼすことになりかねませんから、やはりなかなか実験ができにくい。だから特区でやろうという話になります。しかしながら、分権国家は実験ができる。といったようなこともいわゆる小国が一人当たりの生産力が高くなっている理由の一つだと私は思っております。  二十五ページ、地方分権が進んだ国ほど経済的成果が大きい、これもアカデミックな研究成果の一つでございます。最近はこのようなことが研究されている。つまり、分権度が高くなればなるほど経済パフォーマンスが大きいということでございます。  地方分権推進こそ地域の成長戦略ということで、二十六ページ、これはイギリスの政府が労働党政権時代にプロジェクトチームをつくった、そのプロジェクトチームの研究成果の中に書かれていたものでございます。  地方分権は地方に対してより大きな自治と政治的な裁量を与え、それによってヨーロッパのダイナミックな都市や地域の多くのリーダーに対して、自らが新たな政治的役割を展開し、地域のための新たな経済戦略を展開させることになった。対照的に、地方分権が余り進まなかった国では、都市や地域の権限は小さく、経済の再構築に対して地方の対応力は小さいままであった。地域そしてその核を成す大都市を強化することが私は国民経済の再生につながるんだという国の強い認識が今求められているのではないかという具合に思います。  イギリスでは、連立政権の樹立後、かなり積極的に地方分権、財源と権限の移譲が行われております。二十七ページにも書かせていただきましたように、元副首相のヘゼルタイン卿に、連立政権は、イギリスの経済力強化のための研究をしてくれということでプロジェクトチームを立ち上げてもらって、そしてレポートを提出をさせております。このレポートの中で八十九の勧告があります。その八十九の勧告のうちのかなりの部分は、地域への財源、権限移譲、地域の活性化が重要である、そのことがイギリス全体の活性化につながるんだというような調子が貫かれております。そして、この八十九の提案のうち、政府は八十一をそのまま実行するということを約束をしております。今現在、その約束が進行中だということでございます。  以上であります。
  11. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  まず、各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。  質疑をされる方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようにお願いをいたします。  質疑及び答弁は着席のまま行い、お立ちいただいても結構でございますが、質疑の際はその都度答弁者を明示していただきますようお願いを申し上げます。  なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますように、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるよう御協力をお願いを申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  吉田忠智君。
  12. 吉田忠智

    ○吉田忠智君 都合によりまして、順番を繰り上げて質問をさせていただきます。御配慮に感謝申し上げます。  社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。  両先生には大変貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。先生のお話しいただいたことは、ほとんど共感をするところでございます。  両先生に二問ずつ質問をさせていただきます。  まず菊池先生には、先ほど小泉政権のときに不良債権処理をする必要が本来はなかったんだというお話がありましたけれども、そのことについてお話をいただきたいと思います。二点目が、今現実に安倍政権が進めている経済政策、いわゆる三本の矢、先生の理論に照らしてどこが問題で、どのように見直して進めた方がいいということについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。  それから林先生には、地方分権がまさに大事だということでございますけれども、つまるところ、官僚機構の抵抗を抑えて政治がリーダーシップをしっかり図れということに尽きるのかも分かりませんが、地方分権をまさに日本において進めていくためにはどうしたらいいかというのをもっと具体的にお聞かせをいただきたいと思います。二点目は、菊池先生への質問と同じでございますが、先生の理論に照らして、今、安倍政権が進めている経済政策、三本の矢についてのお考え、しっかりこういうところを見直して進めた方がいいということについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 菊池英博

    参考人菊池英博君) それでは、まず最初の不良債権問題必要なかったと私が申し上げた理由です。  実は、私のペーパーの三ページ御覧いただけますでしょうか。三ページの真ん中から下の小さい丸で二と書いたところがございます。不良債権処理、これが企業倒産をどんどん進めて大きなデフレの原因になった。中小企業をどんどん潰していったわけです。これはこういうことです。  実は、二〇〇〇年の銀行等の不良債権比率というのは五%、これは内閣府の数字です、であったわけです。通常、私、元々銀行屋ですからいろんなデータもあるんですが、五%ぐらいの不良債権というのは大体あるんですよ。しかも、日本というのはちゃんと銀行の引当金というのをほかの国以上に積んでおります。有税で積んでいる場合もあります。ですから、この五%であればそれ以上踏み込んで不良債権処理をする必要はなかった。むしろ、その中であっぷあっぷした不良債権的に扱われているのを景気を良くして生かせばよかったんですよ。それを、そうではないと、これは不良債権だということをしてこれを潰そうと。これはまさに竹中さんです。  竹中さんにはこういうお考えが当時あったんです。テレビによく出ていました。不良債権がデフレの原因だと竹中さんはおっしゃっておられました。しかし、そうじゃない、デフレが不良債権の原因だと言う方は非常に多かったんです。事実、当時の内閣府の中にもその意見の対立があって、その意見の対立があって辞めた方もいらっしゃいます。そのぐらい、むしろデフレを解消すべきだという意見の方が強かったんです。ところが、竹中さんは不良債権がデフレの原因だと、不良債権取ればそのお金がなくなって、それが正常の債権、つまり現金になればお金はどんどん出ていくということ。結果は全く違いますね。  つまり、竹中さんの経済学というのは間違っていたんですよ。これは、はっきり言いまして議論の余地はないんです。いや、本当にあらゆるもので竹中さんの経済学が間違っている、これは学会では有名です、はっきり言いまして。いや、本当にそうです。私もいろんな学会、経済学会とか金融学会に入っていますけれども。申し上げたいことは、私は竹中さんにお会いしたことありませんから、個人攻撃していませんよ、誤解のないように、個人攻撃は全くしていません、結果から判断している。  ですから、処理すべきじゃなかったということは、このときに景気振興を取っていればよかったわけですよ。それを、こういうことをやって、それで次々に潰していった、それからまたその制度もですね。と同時に、ここにありますとおり、ペイオフの規則を入れたり、それから時価会計をやりましたね。時価会計を入れて、しかもデフレ政策を取ったからどんどんどんどん資産が小さくなって、不良債権どんどん出ていっちゃうんですよ。あえて不良債権をつくって潰していったというのが当時の過程だったんですね。それが結果的には、ちょっと債務が多い、苦労されている、十分活動できる中小企業まで潰してしまったと。これは大きなマイナスだったと私は思っています。  それから二番目に、安倍政権についてでございますけれども、まさに今、アベノミクス第一の矢、第二の矢が出ていますね。  それで、第一の矢は金融です。しかし、先ほど申し上げましたとおり、この一年間に七十兆ぐらいマネタリーベースを増やしましたけれども、国内では三十兆ぐらいしか使われていない。海外に全部出ていっちゃったんですよ。それは日銀の方も知っています。ですから、結果的には、幾らマネタリーベースを増やしても、国内のマネーストックといいますか、それは増えないんですね。今増えている、ちょっとこの間に増えましたけれども、これは消費税前の建設国債、住宅ローンです。これはこれから落ちると思います。ですから、そう考えますと、金融はもう限度が来ているということははっきりしています。  だから、この次、第二の矢だったんですかね、財政ですね。これも、だけど、僅か五兆円ぐらいの補正じゃ不十分ですから、私ははっきり申し上げて、まず二十兆円ぐらいの緊急補正予算をちゃんと組んで五年百兆につなげてもらいたいと思っております。それで、先ほど申し上げたような理屈から財政できちっとしていただきたい。  それから、三番目の矢ですね。その中で、結局、安倍総理が、本当にデフレ解消、この辺で解消しようと、それからもう一つ安倍総理の名言は、経済成長こそ財政再建の道なんですとおっしゃっている。これは名言ですよ。今まで十五年間、こういう首相、麻生先生はおっしゃっていましたけれども、それ以外の方は余りこういう発言はなかったと思います。  ですから、この二つの名言を生かす意味でいけば、その政策の中で、今、第三の矢の中で需要を喚起するような、つまりデフレを解消することはやっていく、そうじゃない政策、これは余りやるべきじゃない。だから、規制緩和もそうです。規制緩和したって、小泉構造改革のときに規制緩和してプラスになった、ほとんどないと思います。あったら皆さん教えてください、もし。私は何もなかった。むしろ、レントシーカーといいますか、何かいろいろそういう新しい利権を獲得した人の方が多かったんじゃないかと思います。だから、そういうことのないようにしたい。  それからもう一つは、特区なんかつくりましても、実を言うとあれは外資の一部だけで、余り皆さん期待していないんですよ。長期的にどうかといいますが、国内のためにはならない。ですから、やはりその点のところもしっかりと安倍総理には理解をしていただいて、それから是非先生方も御指導いただいて、この点は是非お願いして何とか。  それと、もう一つは配分です。配分について私が思うのは、やっぱり底上げをすべきなんですよ。底上げをすべきだということは、私は、最低賃金を早く上げたらいいと、千円に上げたらいいと思います。そうしますと、やっぱり底上げしてくるんです、いろんな回転が。私はそう思っております。
  14. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) 非常に難しいお答えをしなければならない。  一つ目の御質問と二つ目は非常に密接につながっておりますのでお話をさせていただきたいと思いますが、今、地方分権が随分、当時、一丁目一番地なんというようなことを言われておりましたけれども、残念ながら今は少し停滞ぎみだと。これもやはり、例えば事務事業の、これは国がやるべきなのか地方がやるべきなのかといったような非常に細かな事務事業を一件一件綱引きをやるというようなことは、私は本当は生産的じゃないと思っています。むしろ、地方のポテンシャルを上げるためには、やはり地方に権限と財源がなければこれは駄目だということは、もうイギリスではそういうことを現実にやっているわけですね。  だから、例えばヨーロッパのEUの資金も、地方に、いわゆる資金計画、あるいは投資計画を立てられるように自由度を与えるとか、あるいは国が行っている地域開発関係の予算をまず識別して、そしてこれを一つのポットに入れるんですね。それを競争資金として提供しながら、地方が、LEPが計画を立て、そしていい計画に対しては資金の支援をすると。そういうような形で地方のいわゆる創意工夫を生かしていくということがイギリスの今の最大のいわゆる国力、成長戦略なんですね。  だから、私は、やっぱりこういうことがなければ、需要喚起も確かに大事なんですけど、需要を喚起するために例えばある被災地が大きなスーパーを造ろうということを言っているわけですけど、でも外貨が稼げるような産業がないと、結局はそこは、まあ当初は恐らく商売繁盛だと思うんですけれども、その後はどんどんどんどん駄目になっていくだろうという具合に思いますから、そういう意味では、やはり地方の創意工夫、特に民間を巻き込んでやるということになりますと、地方のリーダーでしかそういうことは分からないはずなので、こういうことをもう勇気を持ってやっていただきたいということ。  そして、もう一つだけ、いわゆる運用の問題なのか制度の問題なのかということをきちんと切り分けることです。  今の日本政策問題点は、運用をうまくやりさえすればできるはずのものを全て制度の問題だという具合にしてしまっているから、問題が非常にややこしくなって結局は答えが出てこないということになります。だから、地方の側にはやはりそういうことの喚起をしたいと思います。  つまり、今の制度の中でやれることを徹底的にやってほしい。でも、これは制度が障害になっているから駄目なんだということになって初めて分権論が出てくるし、都政論も出てくるし、道州制論も出てくるんだろうという具合に思いますが、まず何か制度ありきがあって、そこから微修正、微調整というような、そういうやり方はもうやめた方がいいと。ヨーロッパではもうそんなやり方はやっていません。  要するに、機能から始まって、実態をきちんと分析をして、そしてこれに障害になっている制度を変えていきましょうと、こういうやり方をお願いをしたいという具合に思います。
  15. 吉田忠智

    ○吉田忠智君 ありがとうございました。
  16. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 続いて、西田昌司君。
  17. 西田昌司

    ○西田昌司君 自民党の西田でございます。両先生、ありがとうございました。  まず、林先生にお伺いしますが、今の質問の続きなんですけれども、要は、東京一極集中やめて地方にそれぞれ活性化が、出るようにやっていこうと、それを地方分権というふうに先生はおっしゃっているんですが、そういう言葉で今まで実はやってきまして、結局一番大きな東京にお金が回る仕組みになっているんですよね。ですから、ちょっと地方分権じゃないと思うんですね。  むしろ、東京一極集中、どう排除するかという話を前面に出しますと、地方分権というのは、やっぱり国が東京の権限を財源も含めて取って、吸い上げて、分散してやっていくということだと思うんですね。だから、そちらの方だというふうに僕、先生の主張は思うんですけれども、その辺のところの整理を是非ちょっとしていただきたいなと思っております。  それから、菊池先生には、まさに私が言いたいこと全部言っていただいて、ありがとうございます。  それで、結局、今言ったように地方にお金をやっていくにしましても、国が吸い上げて地方に渡していくと。交付税、これは一括交付金がいいとかいう意見もありますが、要するに、国が吸い上げてお金を出していく、足りないときには国債でやっていくと。これは、地方と中央政府と違うところはやっぱり通貨発行権があるかないかということですから、中央政府の場合には通貨発行権がありますから、どんどん国債を発行してお金を必要なところに出せるわけですよね。ですから、それを合わせていくと、今、林先生のおっしゃったようなことも含めてうまく機能すると思うんですけれども、その辺のところ。  それと、この意見を言いますと、毎回そうなんですけれども、必ず国債を出すには限界があるという話になってくるわけなんですよね。通貨発行権があるんですから基本的には破綻しませんし、限界というのは、要するにインフレになる、つまり、もっと言えば金利が上がるというところで出てくるわけですけれども、金利が上がらないという今の状況というのは、まさにまだまだ需要が足りないということの象徴だと思うんですけれども、その辺のところの理屈も先生から御説明いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
  18. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) 実は、私は関西の人間でございまして、いわゆる首都機能移転という議論が随分以前に出たときに、関西は、いや、首都機能移転、中央集権のままで首都機能を移転しても意味がないと、むしろ分権だということで、余りその議論には乗っかりませんでした。しかしながら、やはり首都機能を分散するとか移転するということも起爆剤になるかもしれないということで、そういう議論にも参加するようになったわけでございます。しかしながら、やはり究極には、危機管理も含めて、大規模直下型、首都圏の地震の究極的ないわゆる対応は分権だと私は思います。  そういう具合に考えると、地方分権を進めることによってある程度私は東京一極集中に歯止めが掛かるだろうという具合には思っています。つまり、東京の機能というのは、やはりこれは首都であるがゆえに様々な経済力が付いているということは、これは事実であります。そういうものに依存している東京でこのまま東京一極集中を続けていくことが本当に得策なのかどうかという具合に考えたときに、ちょっと二十一ページを御覧いただきたいと思います。簡潔にお話をいたします。  私は、東京一極集中を抑える勇気が必要だと思います。今、私がいろんなところで話をいたしますと、いや、そんなことを言うけど、東京が駄目になったらもう日本駄目になるからということで、そんなこと言わないでくれというようなことをよく私は言われます。しかしながら、東京一極集中を抑えるという勇気がやはり日本の再生にとっては非常に重要なんだということを申し上げています。つまり、日本経済の高コスト体質、これは東京一極集中がこのまま続くと構造的に残されたままになります。人件費も高い。いわゆる賃貸料も高い。  しかしながら、アメリカの企業は、これは二十二ページを御覧いただきたいと思いますが、アメリカの企業の本社は全国各地に分散しております。スライドの二十二枚目です。アメリカの企業は、当然、アメリカの企業の人たちと話をすると、どうして地価の高い、人件費の高いニューヨークに本社を置かなければいけないのだと、もっと有利な、企業に合った地方があるはずなんだからそこへ本社を置くのが当然でしょうというように合理的に考えているアメリカの企業が、日本に法人をつくったり事業所を構えるときには東京に構えてしまう、構えざるを得ない。これは恐らくアメリカの企業にとってみたら非常に面白くないことだと思います。むしろ、やはりそういう地域の特性ということが生かせるようなことをやっていかなきゃいけない。  そして、結局東京に、私も関西、大阪の人間なものですから、大阪でオリンピックを立候補して負けてしまった、東京で勝った。恐らく、これで東京にまた更なるインフラ投資が行われるんでしょう。そうすると、東京のキャパシティーがまた更に大きくなって、地方の人たち、若い人たちを吸い取ることになる、そうするとまた過密現象が起こる、そうするとまたインフラ整備投資をやらなきゃいけないというようなこと、私はこれは究極の財政の無駄だと思っております。  つまり、地方で、一方でインフラが遊休化するわけです。高速道路をせっかく造ったのに車が通らなくなる。それをもって、地方で車、通らないような道路を造るのは無駄だという話が出てくる。これは私は逆だと思っておりまして、むしろ車が通るような地方をつくらなきゃいけない。そのためには東京一極集中を、これ、イギリスはもう当然そういうことをやっているんですね。  だから、今ヨーロッパの国々では、第二、第三の都市をどうやって活性化するかというところに国も力を入れ出している。その結果として地方分権が進んでいるというようなことで、例えばパリだとかローマだとか、アメリカだったらニューヨークですが、ロンドンもしかり、対全国人口比は将来的にずうっと横ばいです。ところが、日本だけが将来的に、国連の推計でいきますと、東京圏の人口の比重がどんどんどんどんまだ右肩上がりで高くなる。これは先進国では類を見ないケースです。  こういうことが続く限り、いわゆる地方のポテンシャルというものを生かすことができないと思っていますので、結果的に東京一極集中に歯止めが掛かっていくだろうという具合に私は思いますが。
  19. 菊池英博

    参考人菊池英博君) まず、西田先生からの御質問でございます。  まず第一に、地方と国との関係ですね。それで、ここにちょうど、九番目、お手元図表の九という図があるんですよ。これが今、実は林先生がおっしゃられた地方財政と国との関係に直結した図表でございますので御覧をまずいただいて、それから始めさせていただきますと、まず第一に、この図はこういうことなんです。  ちょうど、この真ん真ん中にありますね、これ、ちょうど二〇〇〇年、小泉構造改革が始まる前の段階で国が地方へ出していたお金、つまり公共投資による支出、地方交付税交付金、国庫支出金、これが幾らだったかというと、四十三兆円あったんです。  ところが、それが、二〇〇一年から小泉構造改革、実際には二〇〇二年から具体化しています。これをどんどんどんどん落としてきたんですよ。落としてきてどうなったかといいますと、ここをベースにしてどれだけ落としたかということを累積してみますと、二〇一〇年には公共投資で十六・四兆、地方交付税交付金で四十三・一兆、国庫支出金で十五・九兆、これ全部合わせます、ここの累計ですね、この面積、七十五・四兆です。つまり、地方へ本来、この前まで、二〇〇〇年度までは回していたお金を十年後までに地方へ回さなくする、つまり国が地方から召し上げた金が累計で七十五兆あるんです。  実は、この間、こうやって結び付けるのは怒られるかもしれませんけれども、アメリカ国債を買ったのが八十兆あるんですよ。買い増ししているんですよ。ですから、何とこれ合うんです、数字が。ただ、これはちょっと、結果がどうなったか、これは別にしまして。  これによって、まさに地方が完全に疲弊した。だから、今でも一番疲弊しているのは医療と教育です。驚くべきことは教育で、先生なんか、私も地方へ行くたびに思うことは、小学校だって代用教員が担任やっているんですから。これは本当に嘆かわしいことで、先生方、是非こういう面は御指導いただいて変えていただきたいと思うんですが、これがなったんです。  それで、これはどういうことかといいますと、日本は元々、地方の方はお金を貯金するんです。でも、地方では使い切れません。したがって、地方銀行とか郵便局から全部中央に集まる。中央に集まって、中央がお金を貸すんですね。そして、金を貸していく。そうすると、当然、中央で法人税も所得税も上がるんです。だから、原資は地方からいただいているけれども、東京、中央で運用しているから、運用益を地方に還付するというのがこの思想なんです。これは昭和十八年です。昭和十八年の財政改革でこれをやったんです。当時、戦争でしたから、地方にどんどんお金を出して兵隊に、何といいますか、産めよ増やせよといいますか、地方を重視しなきゃいかぬというんです。この考え方は正しかったんですよ。戦後、日本が順調に成長したのはこの考えです。ところが、これをやめてしまったから、結果的に一方交通になってしまったんですね。  そこで、西田先生のお考えなんですが、やはり中央でお金を出す、当然、国債を発行する、そして運用して、そしてそのお金をこういう形で、公共投資とか、あとは収益が上がったものは地方交付税交付金という形で出したことによって地方に対してお金を回していく。それは先ほどの林先生で、運用等は林先生がおっしゃるように地方にかなり委託してやっていかれればいいんだと、こういうふうに思います。  それからもう一つは、じゃ、国債を発行して、限度はどうなのか、金利はどうかということですけれども、まず、一番心配しているのはいつも金利なんですけれども、結局一番重要なことは、有効需要をつくり出して、そのときに、だから国債を発行しようと。例えば、今日、国債を五兆発行しますよと、そうしたら、日銀がその五兆を市場から買い上げる形でしていけば、市場は五兆プラス・マイナス・ゼロですから金利は上がりません。こういう形のものを続けていけばいいんです。  これは経験がありまして、アメリカ恐慌のときに、一九三三年から実に十三年間、アメリカはずっと、ニューディール政策をやったり、その後は軍事費でしたけれども、やったのは、まず政府が今日五百万ドル出すよというと、中央銀行が五百万ドル買い上げて市場へ出す。それによって、この十三年間、短期は〇・三七五、長期は二・七五でずっと推移していたんです。だから、これ可能なんです。  それからもう一つは、五年百兆と私は申し上げますし、ほかの先生も申し上げていたと思いますが、ということになりますと、五年百兆出していきますね、毎年二十兆ずつ出す。そうしますと、税収が上がってきますから、今年二十兆出した、次、二十兆出した、三年目ぐらいになってくると、この二十兆出したときには、税収が実は出さないときに比べて十七、八兆増えてくるんです。三年目ぐらいでチャラなんです、財産は。四、五年先で、五年通して見ますと、これデータがございますけれども、大体百兆出しますと九十兆ぐらいは税収が上がります。これは、この前ここにいらっしゃいました宍戸先生のモデルです。  ですから、継続してきちっと需要を喚起する政策を取っていって、しかも、ちゃんとして需要と供給にマッチする形で金融政策を取っていけば金利は上がりません。これは経験的にできると思います。  ただ、今、黒田総裁のやっていらっしゃることでちょっと心配なのは、さっき申し上げたとおり、どんどん買って、需要のないところ買ってマネタリーベースばかり増やすものだから、アメリカへ行っちゃっているということの懸念です。  以上でございます。
  20. 西田昌司

    ○西田昌司君 ありがとうございました。
  21. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 藤末健三君。
  22. 藤末健三

    ○藤末健三君 民主党の藤末でございますが、本当にお二人の先生方に御厚意に感謝を申し上げたいと思います。  私、二つ、菊池先生、御質問させていただきたいと思っておりますが、基本はいかに地域に資金を提供するかということでございまして、まず、菊池先生におかれましては、新自由主義型資本主義から瑞穂の国の資本主義ということで、ずっと、御著書も読まさせていただき、ちょっと一つございますのは、その新自由主義的な動きの中の典型的な例として、先生もこの資料の中で書かれておられますが、郵政の民営化というのがあったと思います。  私自身思いますのは、郵政が民営化され、今はもう来年株式上場という話まで来ているわけでございますけれど、やはりこの郵政が持っているこの資金力をどう使うかというのは非常に大きなテーマだったんではないかと。これが今後民営化されることによって完全に市場に任せられる、それも、恐らく市場といってもグローバル市場の判断に任されることになると思うんですよ、我々国民の預けた貯金が。それについてどういうふうにお考えかということをちょっと教えていただきたいという点がまず一つ。  そして、私が次に林先生にお聞きしたいのは、林先生が、地域を主体としてイノベーションと申しますかアントレプレナーシップを発揮されるというのは、もうまさしくそのとおりだと思います。  私自身、二つございまして、一つは、分野としてはやっぱり介護、医療であり、そして教育であり、そして農業、まさしくニーズがあるけれど手当てができていないところ。これはなぜできないかというと、私思うには、中央政府が動かないからだと私は思っています。本当は私たち国会議員が動かさなきゃいけないと思うんですけど、やはり官僚機構が動かないがゆえに動かない。  逆に、私が思うのは、地域のやはりきちんとニーズが分かる方々が、地方政府、地域の方々がこのニーズに対応することによってイノベーションは起きるのではないかというふうに思っている。  ただ、一点ございますのは、新しい仕組みをつくるとしたら何かというと、資金の供給が僕は必要じゃないかと思うんですよ。先ほど菊池先生からもお話ございましたけれど、地域で集めたお金がどこに行っているかということを調べますと、例えば信金、信組もほとんどが国債買って国が吸い上げる、あと、先ほど申し上げた郵便貯金も全て国が吸い上げるような仕組みになっておりまして、私は、やはり信金、信組が地域にいかに資金を循環させるか、当然郵便貯金も、その地域の人たちが預けたものを地域に還元し、地域が発展するというふうに、やはり資金の循環の仕組みをつくるというのが一番大きなテーマではないかと思っております。その点を是非、林先生に教えていただきたいと思います。  以上です。
  23. 菊池英博

    参考人菊池英博君) まず、先生の今の郵政民営化の関連ですね。資料のこれ右下十一番、これをちょっと開けてくださいますか。ここに出しました。  これは、実を言いますと、二〇〇四年十二月末の数字です。その次に最新のもあるんですけどね。実は、二〇〇五年の九月十一日の選挙を先生方、思い出していただきます。あれだけ自民党の、私にはっきり言わせていただければ、良識派であり、国益を遵守する先生方小泉構造改革のこの郵政に反対された根拠は、実はここにあるんです、ここにあるんです。  といいますのは、これ御覧いただきましたとおり、当時五百兆発行していました。そのうち、郵便貯金、簡易生命、これで百六十六兆、三割、三割を全部この日本郵政公社が持っていた。これを民営化する。  そして、民営化するに当たって、民営化した狙い、これは外資ですよ。アメリカからのあれですから、日米構造協議とか、それからその後の対日年次要望書に出ている、二〇〇四年度版にははっきり出ていますね、郵政民営化をしてその金を市場に流せと。市場に流せということは、このお金、このお金が国債から違うところへ流れる。そうしますと、まさに日本国が持っている国債の三割はもう調達ができなくなってしまうんです。これ国家破綻します。本当に破綻しますよ、これは。そこで、当時の心ある先生方があれだけ反対されたんですよ。  それで、今でも実は同じ危機があるんです。その次のページ見てください、その次のページ。  これ、去年の末、済みません、先年度末です。現在九百六十七兆あります。このうちの、実はちょうど合計いたしまして、かんぽとこれを合わせて二〇%、二〇%をゆうちょ銀行、かんぽ生命が持っているわけです。  ですから、もしこれ郵政民営化しますね、今先生がおっしゃられたとおり。そしてこの金を、じゃ、国債は、新しい株主が出ます、これ外資が狙っていますから。御存じと思いますけれども、これは政権が交代して分かったことで、民主党の先生、あそこにちょうど大塚先生がいらっしゃいましたね。いや、大塚先生のレポートで私は読んだんです。大塚先生のレポートで読んだことは、政権が交代して驚くべきことが分かったと。それは、既に郵政民営化で旧郵政公社を民営化するときに、外資のある会社です、聞いていますけれども名前はちょっと控えますが、ある会社が幹事証券になって一挙に買収しようと思っていたんですよ。これをされたら、本当に一挙にこの金がなくなっちゃったんですよ。そうなると国家破綻しますよ、本当に。それよりも、まず金利が一気に上がりますね。このお金が外資に流れちゃう、国債が書き換えられませんから。だから、そういう危機だったんですよ。  ところが、現在、改めてこの時点の問題になっている。だから、今、藤末先生のおっしゃるのはこの時点の問題なんです。ですから、今自民党さんで進めていらっしゃるし、何か昨日の新聞でしたかね、早めにもう民営化を進めたいと。それから、確かにこの日本郵政の株を売っていろんな形で原資を使おうという話がありますから、それはそれで分かるんですけれども、その際、これ、日本国家として本当に考えていかなきゃいけないのはこの点なんです。  ですから、これ先生方、是非超党派でもお願いしたいことは、結局外資にマジョリティーを取られない。ですから、今、竹中法案、郵政法案はその後、改定されましたね。改定されましたときに最後まで問題になったのは、自民党さんの方が頑張られて、三分の一、これ、ゆうちょ銀行もかんぽ生命も残そうじゃないかと。ところが、自民党さんも、まあ俗に言う外資派と言われるそうですけれども、そういう方が、いや、駄目だというので、結果的にはそれはなくなって、今は努力目標になっていますね。しかし、これはしっかりと、少なくともその三分の一よりも、私はもうマジョリティーを日本で持つと。  そして、重要なことは、株が公開されるのであれば、日本グループで持つんですよ。かつ、今、先ほどから地方のお話が出ていますでしょう。まさに地方の信金さんとか生保さんとか、そういうのを全部買ってもらうんです、いろんな方に。それから、銀行でもそうです。それで、日本グループでその民営化してやった株の、ばっちりとした、七割から八割を取ると、外資はゼロとは言いませんけれども。  だから、結果的に、この一番の国家の危機につながるこの問題を絶対に回避できるように、経営権を是非持っていただきたい。ですから、大変いい御質問をいただいてありがとうございます。是非先生方、よろしくお願いを申し上げます。  どうも失礼しました。
  24. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) 御質問いただいて、やはり生活の基盤が地方からどんどんどんどん消えていってしまっていると、それはとりわけ担い手がいなくなっているということは、もうこれは非常に大きな問題だろうと思います。  じゃ、それは一体どういうところに原因があるんだろうという具合に考えたときに、例えば医療機関を考えます。これは、いわゆる公立の病院がどんどんどんどん地方から消えていっております。この原因は、一つは何かというと、地方財政健全化のためにいわゆる連結で財政状況を見ようと。そうすると、これはもう公立病院は非常に経営悪いですから、そこはもう閉鎖していこうと。じゃ、それは民に頼ったらいいじゃないかと。ところが、民間の診療所もやっぱり患者がいなければ経営成り立ちませんから、これもどんどんどんどん減っていくと。  今、一方で医療保険制度改革をしようというようなことは盛んに議論されておりますけれども、医療保険というのは医療に係る財源をどのようにファイナンスするかという、そのファイナンスの側面にすぎないんですね。だから、医療保険の財政が健全になった、よかったと思っても、一方で、病気になったときには医者がいないとかといったようなことになってしまったのでは全くこの医療保険を使うことができなくなってしまうと。現実にそうなりつつある。  だから、例えば公立病院で赤字であっても、これはやっぱり市民の生活のためには、赤字であっても財源を使って、公的資金を使ってでも残しておくんだという選択が、地方の住民がそれをするんだったらそれを認めるような、そういう環境をやっぱりつくっていかなきゃいけない。  介護にしても私は同じだと思っていて、例えば地方に講演に参りますと、その県の方と、あるいは市の方が、いや、我々の住んでいるところではまだ依然としてやっぱり子供が親の面倒を見なきゃいけない、そういう意識が強い、私もそのようにするつもりだと、つまり家庭内介護ですね。ところが、大都市に行きますとちょっと違ってくるわけですね。むしろ、親は安心できるところに預けたい、その代わり私はちゃんと働いてお金を負担します、つまり北欧型のこういうシステムの方がいいという具合におっしゃる方もいるわけです。  このように、介護ニーズにしてもかなり多様になってきている。つまり、公的介護を全国一律に、全ての国民に一律にこれでいくんだといったようなことができる時代では私はなくなっているんだろうなという気がしております。だから、地方分権というのは、それぞれの地域でそういうことの判断ができるようにしましょうということですから、当然非常に重要なことで、今後、住民のニーズに合ったサービスを提供していくためにも是非やっていかなきゃいけないと思います。  それから、信組、信金、これも、私も研究をしますと、必ず出てまいりますのが資金需要がない、地域にお金が落ちない。つまり、地域での資金需要がないからそういうところに使わざるを得ないんだということで、だから循環が良くない、ほかのところに行ってしまうということになるわけで、でも、これ資金循環変えましょうといったって、資金需要がつくられないことには資金循環は変わらないわけですから、その資金需要をどうやってつくっていくのかというところがやっぱり大きな、今日の私のお話はそういうところだったと思います。  それで、ちょっと一点だけ、十四ページ、スライド番号、御覧いただきたいと思います。  PFI、イギリスから始まって、日本でも打ち出の小づちのようにPFI、PFIという具合に言っておりました。ところが、最近ちょっとPFIが、まあ制度改革もありましたけれども、日本ではイギリスで考えていたほどまだ残念ながら普及しない。その原因はどこにあるんだろうという具合に考えたときに、このグラフは地方公共団体が実施するPFI事業の棒グラフでございます。これを御覧いただきますと、大都市圏においてほとんどウエートが掛かっていて、地方に行きますとPFI事業を地方自治体がやっているところって非常に少ないんです。  これはなぜなんだという具合に聞きますと、担い手がいない、マーケットが小さいからそういうことを引き受けてくれるような企業がいない、だからPFIはなかなか使えないんだというようなことをおっしゃる方が自治体の関係者の中にいます。それは違うでしょうと、マーケットが小さいから来てくれないんだったら、マーケットを大きくしてくださいと。単独の自治体あるいは単独の県でマーケットは大きくならないんだから、もっと連携をしてマーケットを大きくすることによって民の、それは別に外部の企業だって構わない、それを地域の企業にしていけばいいわけですから、そういうようなことを考えていくということをこれから進めていかなきゃいけない。そうすることによって、恐らく地域で供給された資金がそこにまた使われていく。  だから、PFIというのは、ただ単に財政の効率化ということだけじゃなくて、いわゆる新しいビジネスをその地域の中でつくっていくんだという、ビジネスチャンスを生むんだというように考えていかないと、信金、信組の資金需要はこれからも小さいだろうと思います。
  25. 藤末健三

    ○藤末健三君 ありがとうございます。
  26. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、河野義博君。
  27. 河野義博

    ○河野義博君 公明党の河野義博でございます。  今日は、両参考人ありがとうございました。時間も限られておりますので、早速質問させていただきます。  菊池先生に二問、林先生に一問伺います。  菊池先生の方からまず伺いますと、所得税、法人税の件で伺います。  累進課税をもっときつくしていって、中堅層はそのままに、個人の場合は所得税は高額所得者、上げていくべきだと、そういう御議論、私もそのとおりだと思っております。一方で、法人税に関しては上げたらいいのか下げたらいいのかという議論はまさに国会でもなされておりますけれども、私は個人的に、今まで民間企業で、銀行で、先生の後輩の銀行に当たりますが、四年間勤めまして、その後、商社で七年間、十一年間民間で働いてまいりましたが、肌感覚としてやっぱり税金が海外に取られているなと非常に思います。個人の富裕層は逃げていきますし、法人もなるべく海外で納税を完結させようとしております。  財務省に聞きましたところ、どのぐらい逃げているのか把握はまだできていないという状況でございましたので肌感覚でしかないんですが、やっぱり法人税が高止まりしているからこそ法人税が海外に逃げていっているんじゃないかなという、私、肌感覚を持っておりまして、その点に関してはまだ私は下げるべきではないかなと個人的に思っております。その点に関しまして、法人税の上げる若しくは下げるに関しましてアドバイスを頂戴できればと思っております。  二点目が、外国債権、対外債務の件でございます。純債務で考えて物事を考えるべきだ、当然でございまして、貴重なアドバイスかと思います。その中でも、対外債権、特に米国債が非常に積み上がっておりますので、米国債を何か資産背景とした資金調達というものも考えて、グロスのバランスシートもスリム化していくべきじゃないかなと私は考えておるんですけれども、この外国債権を利用した何か資金調達に関してアドバイスがあればお願いいたします。  林先生の方には一点伺います。  民間との民公連携、もちろん進めていかなければなりません。そして、地域間の連携も進めていくべきだと思っております。一方で、自治体の力量が本当に様々でございます。私は九州と沖縄を地盤、地元にしておりますけれども、県が必要ないぐらい力がある市もあれば、一般市町村においては、もう本当に、県の助けがなければもう何もできないようなところもございます。  そういった観点から、やっぱりある程度の規模感を持って広域の連携を進めていかなければならないのではないかなと思っておるんですけれども、そのエリアに関して具体的にアドバイスがあれば、どういった広さで取り組んでいくべきだというのがあれば教えていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
  28. 菊池英博

    参考人菊池英博君) まず累進課税、それから法人税の件でございますけど、先生もおっしゃいましたけれども、やはり、これ税制の基本的考えで、幾つ議論はあるんですが、応能負担といいますか、やっぱり税金というものは能力、要するに納められる能力があるという人、要するに高額所得者は相応に多く払わせていいんじゃないかと、これが累進課税のベースですよね。同時にそれが、福祉型社会といいますか、そういう一つの大きな考え方というか、そういう形になってきているわけです。  私はやっぱり、この日本財政がどんどんどんどん、特に法人税、所得税も減少してきましたね。収入の額が減ってきました。その大きな原因の一つが、やっぱり法人税と所得税は、もう高額所得者を下げてきたことです。特に地方税なんか、二〇〇七年でしたかね、フラット税制なんというのをまねて一律一〇%なんかにした。また戻しましたけどね。あんなものを、アメリカでもう失敗しているものをまた入れてくるというのは、本当にどうしてこんなことをするかと思ったんですが。いずれにしても、それはちょっと反省に入っている。やっぱり、法人税につきましても所得税につきましても、ある程度、高額所得者の最高税率を上げるということは、私はその方がいいと思うんです。  それで次に、じゃ、法人税との関係なんですが、これはアメリカでクリントンが成功している例があるんです。ちょうど今ここに、十八ページ、十八番出しました。できましたら、お手元の十八番を御覧ください。  これは、クリントンはまさに、その前の、これですね、十六番見ていただくと分かりますが、これは、十六番の右下、過去二十年間のアメリカ財政収支というのが書いてあります。そうしますと、今こうなって大赤字ですよ。今少し良くなっている。ところが、ここで、レーガンのときに非常に悪くなったけど、ここから、クリントンのときに実に黒字になっているんです。これは、クリントンは一九九三年に就任して、そのときは赤字でした。これが黒字になったんです。どうして黒字になったのということなんです。  これは、その上にも書いてありますけれども、まさに景気振興策を取る、景気振興策を取って、継続して、実はこれ八年間続けたんですけど、八年間ずうっと財政支出をしてきまして、公共投資に、どんどんどんどん増やしていったわけです。そして、それをやって、その結果、それと同時に法人税、法人税を、最高税率を三四から五に引き上げる。それから個人所得税、最高税率を三一から三六に上げる。税金を上げたんですよ。それから、法人税は三四から三五で少ないじゃないか、僅か一%といいますが、いろんな、この前のブッシュの、パパ・ブッシュの方ですね、パパ・ブッシュだとか、それからレーガンのときに加速償却なんかをどんどんやったんですよ。それをある程度整理したんですよ。だから、実質的にはこれは数字にするともっと高いと言われております。  だから、政府の考えは、公共投資を出すよ、ちゃんと所得が上がるように努力をするよ、それをちゃんと継続するよと。アメリカは任期四年ですから、最初の任期四年ある、結果八年続けたんですけどね、やるよと。四年計画を立てていたんですよ。同時に、それなら金持ちの人たち、所得が上がるでしょう、上がったらその分ちゃんと政府に納めてくださいよと言っている。だから結局、公共投資をやると同時に、法人税も所得税も最高税率を引き上げたんですよ。それが成功したんです。それで結局、最後は八年たって黒字でしたね。このときに、彼、ちょうど二〇〇〇年度の最後の一般教書で言いました。私の政策はこうなりました、このようにして財政改革ができたのは、七割は景気回復ですと、公共投資によって景気回復をした、三割は財政改革をしてそして高額所得者に負担をしてもらったからですということをはっきり言いました。  ですから、私は、現時点で、先ほど、安倍内閣期待しているのは、十年二百兆、自民党さんですね、賛成ですよ。だから、まず五年百兆と、これを出してほしい。  それと同時に、法人税は引き上げるんですよ。それから、特に、日本は民主党内閣のとき、二〇一二年の二月に法人税を三〇から二五・五に下げましたでしょう。あれ、本当に愚なる政策なんですよ。いや、どうしてかといえば、それを下げたところで何の効果もないんですよ、ああいう下げ方は。何の効果もない。それで、結果的にはどうなったのかというと、企業の内部留保が増えただけです。  だから、今の時点で何するかというと、まず法人税を三〇%に引き上げるんです。引き上げた上で、国内に設備投資をする、正規社員を雇う、そうしたら投資減税として減税しますよと。そうすれば、金を持っている人なんか、所得が上がった、このまま持っていたら税金取られちゃう、いや、それよりも国内に投資しようじゃないか、正規社員を雇おう、増やそうじゃないかと思うじゃないですか。だから、税制といいますか、財政政策の持つ景気効果、そういうものをきちっと数字で持たないと駄目なんです。  それで、安倍総理は、何とかしてもう上げてくださいとおっしゃっていますね、政労会議とか。これは姿勢として評価しますよ。でも、やっぱり経営者は勝手ですから、それから同時に、株主がいます。外資の株主なんですよ。そういうものを、もう要するに国内の一般の従業員の給料を上げるなとかボーナスを上げるなというのは外資の株主が物すごく言うんです。あれ、みんなファンドですからね。だからそういうことになる。  だから、そういうことを踏まえて、きちっと政策として法人税は上げるべきだと。今、下げるという議論がありますが、これは絶対に受けるべきじゃありません。これを主張しているのはみんな市場原理主義者ですよ、新自由主義者とか。はっきり申し上げて、菅先生とかそれから塩崎先生でしょう。皆さん、そういうお考えを持っていらっしゃると私は聞いています。  以上でございます。  それからもう一つ、対外債務ですね。対外債務につきましては、いいですね。
  29. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) 法人税、公共投資も、私、少しお話はしたいんですけれども、質問にございませんので、質問にお答えをしたいと思います。  自治体の力量を上げなきゃいけないということは事実です。これはもう運用をとにかく徹底的にやってくれ、だけど、それは残念ながらやっぱり自治体の規模が小さくてなかなかうまくいかない。つまり、今自治体の職員の数がどんどん減っております。これは、減っているのはどこが減っているかというと、いわゆる企画部門とか政策立案部門が減っているんですね、それから議会事務局だとか。こういう分権時代において非常に重要であるような部署の間接管理部門の職員の数が減っている。これは減らしてもすぐには直接市民生活には影響がありませんので、そういうところから減らしていくということになります。  しかしながら、これは物すごく中長期的に考えたときには大きなダメージをその地域に与えることになります。そういうようなこともやっぱりこれから考えていかなきゃいけない。研修もしなきゃいけない、人材育成が大事だと言われていても、それは単独では無理ですから、これを広域的にやる、場合によっては国が支援する、県が支援する、こういうことが必要だと。  しかしながら、一方で、やはり自治体自体が物すごく小さい。これを、エリアをもっといわゆる有機的につながっているところで行政をやっていかなきゃいけないというのがまさにシティーリージョン政策なわけです。ところが、これは残念ながら日本はなかなかうまくいかない。やっぱりそれぞれの地元の自治体が、やはりそれぞれが小規模な形でいろんな政策をやっていくというのが現実でございます。  そこで、じゃ、やっぱり広域的な行政をやらなきゃいけないといったときに、じゃ、エリアをどうするんだという議論が必ず出てまいります。そのエリアを考えるときに、日本である程度研究はなされているんですね。例えば、大阪だとか神戸だとか横浜だとか、いろんなところを中心にして考えると、いわゆる通勤圏、例えば五%通勤圏はこのエリアだと、だからこのエリアを一つの広域行政の対象としようということの研究はあるんですけれども、実は通勤圏というのは生活圏なんです。つまり、生活関連の行政サービスをどのように負担し、どのように提供していくかということにすぎないんですね。ですけれども、大事なのは、ビジネスをどうするかということになってまいりますと、いわゆるサプライチェーンとかあるいは企業の活動圏域はどうかということになりますと、生活圏とはまた違ってくるんです。  だから、イギリスがシティーリージョン政策を取ったときにどういう研究を政府がしたかというと、いろんな機能を様々な角度からマッピングをするんですね。例えば、住宅市場圏ここだと、通勤圏はここだと、あるいは原材料の供給はここだというように、非常にいろんな多面的なマッピングをして、そしてやはりそれぞれの機能に合った広域的な圏域を設定しなければいけないといったようなこと。シティーリージョンというのはどちらかというと経済対策が中心ですから、そういう意味ではこの圏域でいくのがいいのではないかといったようなこと、こんな報告書を作るぐらいにかなり研究を重ねてエリアの設定をしていくんです。  だから、やはり日本でも同じような、日本はやらなくていいということでは決してないと思いますので、そういう定型的な生活圏、通勤圏だというようなエリア設定ではもう駄目だというように思います。
  30. 菊池英博

    参考人菊池英博君) 済みません。河野先生質問で二番目がまだでした。一分で結構ですから、一分。
  31. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) はい。菊池参考人
  32. 菊池英博

    参考人菊池英博君) ありがとうございます。  河野先生、二番目の、外貨準備がたくさんあるじゃないか、何とか使えないかということです。  これ、実は二番目の表を御覧いただきたいんです。先ほども説明しました。問題は、やっぱり政府短期証券、百三十一兆ありますね。これがほとんど外貨準備になっているわけですよ。これの運用ということなんですね。ところがですよ、一九九九年の九月までは、この政府短期証券は全部日銀が引き受けていたんです。したがって、ここには出ていなかったんです、これは、実を言いますと。それが、一九九九年十月から、どうしたことか、これ何回聞いても本音は分からないんですけれども、この政府証券を市場に売りっ放すようにしたんです、日銀が。売りっ放すようにしたから国民の預貯金を吸い上げることになって、国民の預貯金でアメリカ国債を買っているんです。ですから、じゃ、アメリカ国債はどうかって、これ売れませんよ、やっぱり。いろんな諸般考えて、絶対売れません。  ただ、やり方はあるんです。つまり、一九九九年九月までの前に戻せばいい。つまり、ここにもあるこの政府短期証券、これを日銀資金で日銀が引き受ける、日銀資金で持ってもらえばいい。ですから、端的に言いますと、建設国債を今日、五兆出しますね。五兆政府が出したとすれば、日銀が政府短期証券を五兆市場から買い上げるんですよ。そうすれば、買い上げた分は、アメリカ国債売らなくていいんですよ、売らないけれども、結果的に日銀の資金で持っている。それで、同時に我々の預貯金が建設国債になるわけです。だから、そういう操作で可能でございます。それが私は一番現実的な方法じゃないかと思っております。
  33. 河野義博

    ○河野義博君 ありがとうございました。
  34. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 山田太郎君。
  35. 山田太郎

    山田太郎君 みんなの党の山田太郎でございます。  林参考人菊池参考人、本日は有り難いお話ありがとうございます。  まず、林参考人からお伺いしたいと思います。大きく二点であります。  一個は、まさに地方の問題どうするかというのは、この日本全体のデフレでも大きな問題だという認識があります。その中で、地域クラスターの崩壊というんですかね、いわゆる地方の中核企業がどんどん海外に出ていってしまう。私、仕事上、実は製造業向けのコンサルティング会社立ち上げて上場させたような人間なんですけれども、そういう意味で全国津々浦々、工場だとか製造業をお伺いしていたんですが、やっぱりしっかり、地域地域にはこんなところにも工場があるのかということで、雇用を生み出し、人材を確保していたんですが、それが次々と閉鎖されたり海外へ出るという実態があると思います。  そんな中で、もう一つ、ストロー現象じゃないですけれども、高速網や、今エリアの拡大という話がありましたが、結局は地域が中核企業等を失って不便になっていくと、どんどん外にというか、大都市に吸収されちゃうというのをかいま見たというか、一回はスーパーなんかが来ても、大型店舗もまたいなくなると、いわゆる大型スーパーが来て地元の地域の町が壊されると同時に、そのスーパーすらも最後いなくなって、何もない町がいっぱいできてきているというのを本当に地域を回って見てきております。  そうなってくると、やっぱりキーワードは地産地消、どうしてもやらなければ、そこの中での付加価値をまず地元が評価するという構造にしない限りは、結局はその地域は外から物を買ってきて、遊びは外に行ってしまうというこの構造を断ち切れないんじゃないかなと、こんなふうにも思っております。ただ、壊れてしまった地域クラスターを今後どういうふうに見直していくのかというのはそう簡単じゃないんですが、是非その辺りのお話あればと思っています。  二点目なんですが、それにも関係してくるんですけれども、国と地方の関係というのもありますが、官と民の関係というのもあるかと思っております。まさに、公共の施設等を地域でも、例えば病院とかそういったものは、地域や地域の政府がしっかりやるべきだという議論はあるんですけど、じゃ、誰がリーダーでやるのが最も適切なのかと。知事さんや市長さん、別に能力がないとは言いませんけれども、要は、そこには、民間の能力というか、活力をどういうふうに組み合わせていけばいいのか。  実は、私も大学なんかでの先生もやってきましたので、ずっと研究してきた内容が、やっぱり、かつて日本というのは、江戸時代から大名がいて地域地域を守ってきたというかつくってきた、米を作っても政府に召し上げられますので、地域地域で特産品をないしょで作って、それを大阪に流して、その特産品を作る過程で手工業を含めて、いわゆる手先が器用な労働者を地域地域に技術者を含めてつくっていった、こんな歴史を学んできたわけでありますが、そういうリーダーですよね。大名に代わるとまでは言いませんけれども、そういうリーダーは、それは役人の、地域の市長さん、首長さんなのか、いや、何らかの民間のコラボなのか、その辺り具体的に、どうある者がこのデフレを地域からも脱却していくのか、こんなヒントをいただければと思っております。  次に、菊池参考人の方にもお伺いしたいと思います。  私もみんなの党なんで、随分菊池参考人とは経済政策に対する考え方が違うなと思っているんで余り中身についてということを触れないんですけど、今の安倍政権の金融緩和ですよね。要は、金利を異次元の世界にまで緩和して下げていって、一方で消費税を増税したという構造、これはアベノミクスの中においても成功する一歩となるのかどうか。ちょっとその辺り、是非、興味深く伺いたいなと思って御意見いただきたいのと、もう一点、二点目なんですけれども、クリントンのやった経済政策、実は私もアメリカにある外資系の会社の本社の副社長をやっていましたんでボストンに住んでいたことがありまして、今でも確かにクリントンの経済政策は非常に評価されています。  ただ、私は、それ国内事情だけではなかった、ドメスティックなイシューだけではなくて、当時、八九年から九〇年というのは、共産圏が崩壊して、いわゆる平和の配当という形でもって市場が非常に拡大していた中で、レーガンの双子の赤字等が解消していく中にクリントンが引き継いでいくと、こういう国外事情というのがアメリカは非常に大きかったと思うんですね。そういった意味で、必ずしも、アメリカの税金をいわゆる上げただとか、財政出動をしたということだけが本当にクリントン政策として成功の要因だったとはとても思わないんで、海外との、いわゆるアメリカとの関係が一つ要因じゃなかったのかな。  その辺り、結果としては、確かにそういうことがあってもクリントン政権というのは経済再生してきたというのはよく分かるんですけれども、その辺りのメカニズムというんですかね、その辺りを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
  36. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) まず一点目、地域クラスター、産業クラスターという具合に考えてよろしいでしょうか。
  37. 山田太郎

    山田太郎君 はい、そうです。
  38. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) はい。残念ながら、日本の場合の産業クラスターというのは本当の意味でのクラスターになっていない。そんな中でとりわけ欠落しているのは、民同士の連携はあるんですけど、大学との連携あるいは自治体との連携ということが決定的に不足しております。  例えばフィンランド、これは人口数百万の国ですけれども、このフィンランドが非常に今元気だと。ヘルシンキが、じゃ、どういうことをやっているかというと、これ実は、ソ連が崩壊してフィンランドが物すごく打撃を受けているんですね。それを何とかしなきゃいけないということで、大学と自治体とそれから民間企業、これがもう完全に手を結んで、そして、例えば大学に対しては自治体が、いわゆる物流だとか人の流れだとか、こういうものがもっと容易に効率的に行われるようにするためにはどのような交通アクセス手段をつくればいいか、道路をどのように造ればいいかといったようなところまで考えながら連携していくんですね。そうすれば、もう当然、大学は自治体に対して、ああ、これは頑張らなきゃいけないという気持ちになるはずです。  残念ながら、その辺りがないです。大学に対して、小中学校は教育委員会がありますけど、私が勤めております大学は西宮市にあって、西宮には、やはり自治体との大学の連携というようなことは言いますけど、実はそれほど大きな連携にはなっていない。市長さんが出向いて講義をするとかいったようなことぐらいしかできていない。だから、こういうところをきちんとやっぱりやれるかどうか。  私は、やっぱり公民連携、これをもっと徹底的に進めるための、そのためのじゃリーダーを誰が担うのかという話なんですが、私はやっぱり民間企業だと思います。経済の主役はやはり民間企業です。ただ、全ての地域において民間企業がリーダーを担えるという、そういうことはありません。  私も、かつてふるさと創生の時代にいろんなところに行って話を聞きました。そうすると、やはり一旦大都会に出ていって、そこでいろんなことを経験し、そしてふるさとに戻った人がリーダーになっている、こういうところも結構ありました。そういうところにヒアリングに行くんですけれども、そういうところというのは、どちらかというと例外なんですね。  ただ、かなりのところは自治体がやっぱり頑張らなきゃいけない部分はあります。だから、自治体が頑張らなきゃいけないということは、民間企業もだんだんだんだん力がなくなっていって自治体依存が進んでいるというような中でいくと、やっぱり自治体が力を出さなきゃいけない。そのためには、今までのように自治体が全てやるんじゃなくて、民間を巻き込んだ形でやらなきゃいけない。ということは、自治体は、やはりコーディネーターであったり、あるいは触媒役を果たしたりとかといったようなことをこれからの仕事にしていかなきゃいけない。それを認めるようなリーダーが出てこなければ自治体にはいけないと。  今リーダーシップというのが非常に重要だという具合に言われていますけれども、リーダーシップというのは、何か独断的に決めてそれを部下にやらせるというのがリーダーシップでは私はないと思っています。つまり、もっといろんな柔軟なことができて、そういう戦略にもチャレンジできて、そういうことを認めていけるような組織をつくれる、そういう人が私は本当の意味でのリーダーシップだと思います。  つまり、首長さんも専門家ではありませんし、自治体の職員も専門家ではない。やはり専門家の意見を聞き、それを取り入れることのできるような柔軟な組織がつくれるかどうかというところに私は非常に重要なポイントがあるのではないかという具合に思っています。
  39. 菊池英博

    参考人菊池英博君) 先生の御質問最初の件でございます。消費税を上げる、金融緩和をする今の政策成功するのかどうか。私はもう行き詰まると思います。  その理由は、まず一つは、消費税引上げに伴う影響を余りにも過小評価していますよ、余りにも。これは新聞もそうなんです。もうはっきり申し上げて、全国紙なんというのは全く信用できません。全く信用できない。どうしてかといいますと、ちょっと皆さん方、もし語弊があったらごめんなさい。証券会社とかそういうOBとか、そういう方ばかりの意見を聞いているからですよ。  もっとまともな、書生じゃない、言葉は適切かどうかはあれですが、大学先生とか、宍戸先生とか藤井先生なんかはおっしゃったと思うんですけれども、消費税はその最初の段階なわけで、どんどん波及していくんです、これは。だからこそ、僅か三から五パーへ上げて、あのときはもっと、さっき申し上げたとおり、大きな引締めもやったんですね、緊縮財政。でも、どんどんどんどん波及して長期デフレの大きな原因になったんです。そういうことについてちゃんと研究した方がいらっしゃるんです。でもそういうことは新聞には出ません。先生方はよく御勉強かと思いますけれども。そういう意味では、消費税に対してはまず認識が甘過ぎている。したがって、この波及はこれからじりじりと出てきます。七—九から上がってくるということは私はないと思います。  それからもう一つは、金融緩和ですね。これは先ほどもちょっと申し上げましたけれども、去年の三月から今年の三月末までざっと七十兆、マネタリーベース増えています。そのうち国内で使われているのは三十兆ですよ。あと四十兆はみんな海外へ行って、はっきり言えばヘッジファンドに日銀マネーが行って、ヘッジファンドがそれで日本の株を動かし、日本の円をまさにドルを買って動かしているんですよ。だから今、随分売りに出ているんじゃないですか。細かいことは私は分かりません。  じゃ、問題は、やっぱり金融を緩めて、それがちゃんと有効需要につながらなければ実体経済成長しないんですね。だから、私が申し上げたいことは、財政主導金融フォローなんです。財政で仕事をつくって金融フォローしていけば、先ほど金利のお話もありましたけれども、金利は上がらないで済みます、日本みたいに対外的に大金持ちなんですから。しかもアメリカという実例があるわけです。  ところが、黒田総裁がやっていらっしゃるのは、さあ異次元緩和だといってどんどんやったけれども、まあとにかく国内が余り伸びていないと。反省されていると思いますよ、恐らく、顔なんか見ても余り自信のないように映りますね、私には。これからどうなるか。それから、日銀の審議委員の中でも、これ以上はもう緩めないんじゃないかと言う方がいらっしゃると聞いています。したがって、このままではうまく、成功はいかないと思っています。ただ、成功してほしいですから、さっき申し上げたことを期待しているんですよ。  それからもう一つ、クリントンのことですね。先生のおっしゃいますとおり、確かに、ここにちょっとクリントンの図を出しました、十七ページ。これ見ていただくと分かるんですけど、先生おっしゃるとおり、クリントン第一期目、国防費がどんと落ちているんですよ、三・七兆かな、これ。そして、この国防費が落ちた分を政府投資というか公共投資に使ったんですね。まさに国防費というのが公共投資だったんです。だから、公共投資が必要だと、だからこれを国内に使おうということで国内にどんどんどんどん使ったんです。地域開発だとか地下鉄を造るとか、道路を造るとか学校を建て替えるとか、もう徹底的にやったんです。だから、国民に非常に評判がいいと思います。第二期も同じようにやりました。  それで、確かにそれが原資として成功したことは事実で、じゃ、国際的に今との関係でどうかといいますと、やはり日本は、日本はやっぱり内需中心の国ですし、何といっても、アメリカはクリントン、これよくやったと思うんですよ。どうしてかというと、アメリカ債務国ですから、これ既に。国債を発行したって、全部、自分の国の貯金だけじゃなくて政府債務ですからね、政府債務が増えるだけ。それを思い切って計画を立てて長期計画をやったから成功したんですよ。日本は、預貯金はあり余っているわ、海外には三百兆の債権があるわ、金幾らでもあるんだから、それをきちっと計画立てていけば安定した形で成長できると私は思います。  したがって、クリントンは、平和時にアメリカがやった非常にいい例ですから、ここにも細かく書いてありますから、お時間がありましたら、細かいことも御覧ください。現在の日本でも一番参考にすべきモデルだと私は思っております。
  40. 山田太郎

    山田太郎君 時間になりました。ありがとうございました。
  41. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御発言ですか。林参考人
  42. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) ちょっと追加でお話しさせていただきたいと思います。  地産地消のお話が出ました。実は、菊池先生も随分公共投資公共投資とおっしゃっていて、私は財政学者なのに、実は余り、政府は、財政はできるだけ小さくしたいと思っているわけですね。つまり、政府というのは民間活動の補完なんだと思っています。だから、今まではどうも何か財政財政と言ってきたので、その辺りからもう少しちょっと引いてみませんかというのが私の今のスタンスなんです。  そのときに、公共投資なんですが、公共投資というのは確かに景気対策としては使えます。しかしながら、今までの公共投資というのはどちらかというと景気対策として考えられていて、公共投資というのは本来ならば社会資本ストックをつくるためのフローなんですね。ストックをつくるためのフローなんです。だから、量が問題なんじゃなくて質が問題なんです。にもかかわらず、その質はちょっとおいておいて景気対策だってやってきたものですから、それは国の役割として公共投資をやればいいと。だけど、質が第一ということになってまいりますと、どこに道路を造るのか、どういうネットワークにするのか、どういう施設を造ればいいのかというようなことを考えていくのは、これは当然やっぱり地域でなければ考えられないわけですから、そういう意味では、質を考えた公共投資をやらなきゃいけないということを申し上げたいと思います。  私も、実は近畿地方整備局の事業評価監視委員を十年間務めました。ですけれども、そこで出てくる案件は事後評価か再評価なんです。つまり、そこでどういう道路を造るのかという、いわゆる最初の評価は近畿ではやらないんですね。こういうようなことをやっていると、私は、その地域のニーズに合った、やはりストロー現象も考慮しながらあるべきネットワークをつくっていかなきゃいけないわけですから、造ってしまった、ああ、ストロー現象だったということにならないようにするためには、これはやっぱり地域の責任でもってインフラ整備をやっていかないと、これはやっぱり地域の責任がもっと重視できるような仕組みをつくらないと、どんどん漏れていくような地域の経済の中で幾ら公共投資をやったって、経済効果はほかのところに出ていきますから、穴の開いたポットに幾ら水を入れても駄目だということだと思います。
  43. 山田太郎

    山田太郎君 ありがとうございました。
  44. 鴻池祥肇

  45. 辰已孝太郎

    辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。  両先生、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。  まず林先生にお聞きしたいと思いますが、地方分権が日本経済社会にとって大事であるということはよく分かりました。一方で、地方財政が大変だということで、私、改めて、これの大きな原因の一つになったのが、やはり小泉改革の三位一体改革だというところをちょっと考えたいと思っておりまして。  当初、国庫補助負担金が五兆二千億円削減され、いろいろ税源措置はされたとはいえ一兆円が地方からなくなったと。公共事業も削減されましたけれども、やはり大きかったのが義務教育費であったり国民健康保険であったり、また公立保育所の運営費だったと思うんですね。今年度の予算見てみましても、実際に地方に交付される交付税特会の出口ベースでも前年度比で一千七百六十九億円の減少というふうになっております。  ですから、私は、やはり地方が今元気がない、しんどいという大本の原因はここの三位一体改革まで遡って一つ検証する必要があるんじゃないかというふうに思っているんですが、その辺の先生のこの三位一体改革に対する見解、総括というのはどのようになっているのかをまずお一つ聞かせてください。  もう一つ林先生になんですが、PFIの力、PFI、地方自治体と企業との連携といいますか、全て民間の力、知恵を活用するということを否定するわけじゃないんですが、しかし一方で、元々の地方自治の役割である住民の命であったり暮らし、生活を守る、また医療や介護をきちんとニーズに沿ったようにしていくというときに、余りにも民間に頼り過ぎるといいますか、ということになりますと、やはり民間企業というのはもうけが第一ですから、もうからなければ出ていってしまうであったりとか、もうけが第一の経営、運営になってしまわないかと。その辺の、何といいますか、ドローバックといいますか、欠点、注意しなければならないところがあれば是非教えていただきたいと思います。  続いて、菊池先生なんですが、先生の御意見はもうほぼ全て同意しますといいますか、同調したいと思うんですが、消費税についても語っていただきましたので、ほとんど私の考えとも一致するんですが。  一つ先生、やはり新自由主義という考え方を痛烈に批判をされております。私たちもこの新自由主義のその中核にある自己責任論といいますかね、こういうものが日本の社会にはびこって、若者、例えば最近ではブラック企業ということが大きな注目を浴びていますが、それも自分が悪いんだというふうに思わされてしまったりとか、やはりこの新自由主義というのを乗り越えていく必要があるというふうに思っておりまして、そこで先生に、なぜこの新自由主義がこの日本で台頭してきたかといいますか、もし御所見ありましたら。それと、どう乗り越えていく必要があるのかということも併せて御見解を聞かせていただければと思います。
  46. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) 三位一体の評価、これは、私もいろんなところで話するときに、やはり今の地方財政危機の原因が三位一体の改革にあるという具合におっしゃる方がたくさんおられます。ですけど、私は、それは地方財政危機を更に大きくしたのであって、あるいは引き金であって、それが根本原因だとは思っておりません。やはり税制、地方税制がどうなっているのかとか、あるいは地域の経済がどうなんだといったようなことを考えていかなきゃいけない。  その中で、やはり地方交付税をどうするかということは恐らくこれから非常に大きな議論が出てくるし、これまでも交付税がいろんな意見の中で増えたり減ったり、いっときどんどん交付税が減らされたけれども、合併後また交付税を増やして格差是正を図ろうといったような話が出てくる。  これを聞いていると、私は、合併をされた自治体の方というのは非常に苦渋の選択をされたと思っているんです。それはもう単独でやれるんだったら単独でやった方がいいんです。住民の声も聞こえるし、顔も見えます。だけれども、今のままでいくと地域の存続すら危ぶまれる、もう現実に人口がゼロになるところがこれから出てくるだろうと言われている中で、やっぱり住民で一緒になって合併を考えましょうということで苦渋の選択をされたんだと思うんですね。  ところが、そういう選択をしなかったところもあって、そういう選択をしなかったところは私はそれは立派だと思いますが、そういうところに対してまた格差是正のために交付税をきちんとやりましょうというような形になってしまったら、恐らく合併をしたところは、我々は一体何をしていたんだということで、恐らく国と地方との関係、つまり信頼関係は私は損なわれると思います。そういうことはやっぱりやってはいけないという具合に思っております。  だから、そういう意味では、やっぱり地方財政というのは地域の経済があってこその地方財政なんですね。そういうことを活性化させるためにはどうすればいいのか。合併したけれども人口は依然として減り続けているということをおっしゃる首長さんもいらっしゃいます。でも、合併してからどんなことをやっていますかと言うと、ほとんど何もやっておられない。これは現実です。だから、合併のために住民が、今まではもうそんなことは余り考えなかった住民が、女性も高齢者も若い人も含めて講演会を聞きに来て、そして地域をどうするかということを議論したにもかかわらず、合併が終わってしまったらその熱は完璧に冷めております。  私は合併というのは出発点だと思っていますから、そこから更にこの合併という環境をどうやったら生かせるのかという議論をしていかなければならないにもかかわらず、それができていないというのが私は一つ地方の問題ではないかという具合に思います。  それから、PFI、住民のニーズ。ただ、私は民営化と公民連携は違うと思っています。イギリスでも、同じように保守党政権のときに民営化がどんどん進んだ。強制競争入札までやらせると。そうすると、本来必要であったような行政サービスが民営化の結果として提供されなくなってしまった、ということはやっぱり問題だと。  だから、単なるいわゆるバリュー・フォー・マネーだけではなくて、これは大事なんだけれども、ベストバリューが大事だということで、お金が掛かっても住民なり国民がそれは必要だと思うんだったらそれは当然提供していかなきゃいけない。だから、公立病院だって維持しなきゃいけないかもしれない。しかしながら、それは公立病院でなければならないかどうかは私は話は別だと思います。つまり、行政が乗り出して公立病院ではない形でやっていく。だから、場合によってはPFIを提起をする。しかしながら、今のPFIは残念ながら、病院も使っているところもありますけれども、やっぱり中途半端だというようなことになりかねない。  だから、その辺りを、やっぱり民営化と公民連携は違うという具合に考えていただかないといけないのではないかという具合に思います。
  47. 菊池英博

    参考人菊池英博君) まず、先生の第一の質問でございますね、新自由主義批判と。  実は、私の拙著でございますが、「そして、日本の富は略奪される アメリカが仕掛けた新自由主義の正体」。これ、実を言いますと、国会議員の全先生に贈らせていただきました。実は、僣越なんですが、ある方にこれを寄贈させていただいたら、これは是非安倍総理に読んでほしい、そうじゃなくて全国会議員に贈ったらどうだと言われたものですから、実を言いますと、私、なるほどと思いまして全国会議員の方に贈らせていただきました。これは実は事実をずっと羅列したものでして、何のはったりもありませんし、ここにあるような資料は全部私が作った資料でして、それが入っております。  それで、まず、今の先生の、どうしてこんなのが一挙にはびこったのかということです。これはまさに一九八〇年代から、中曽根さんの頃から入ってきたんですが、まさに一九九〇年代、日本がバブルの崩壊後、停滞しているときに、ある意味じゃ日本が一番苦労しているときにどんと入ってきたんですね。まさに竹中さんなんかその先兵ですよ。いや、事実、テレビでそうじゃなかったですか。もうしょっちゅう出てきて、何か日本の構造改革、構造改革というのはそういうことですから、元々。構造改革というのは、新自由主義型の経済体質、それからイデオロギーも変えていけということなんですよ、構造改革ということは。  それで、こういうことで、それから、先ほど申し上げた幾つかのデフレがありましたね、例えば企業の雇用の自由化なんかでもって。さっき先生はブラック企業のことをおっしゃいましたけれども、あれでも、戦前、その前は、私の若い頃とか何かは、私は銀行にいましたけれども、組合というのは結構強かったですよ。それから、きちっと残業手当を払わないかぬ、企業もみんな遵守していました。しかし、そんなものどうでもいいんだと、おまえたちが悪いんだというような風潮がいつの間にやら出てきたし、それから、労働省も実は厚生労働省と一緒になって随分弱体化したこともあります。いろんな要素が出て、これがまさに一九九〇年代に出てきたんですね。それから、物すごくこれを宣伝したのはマスコミと新聞です。ですから、私のここにも書きましたし、ここでもたしか藤井先生がおっしゃったと思いますが、社説の八八%は新自由主義に賛成だというのがありますね。  だから、そのような形で本当に日本の弱いときに何か来ちゃったと。本当にそうなのかと思ったんですね。ところが、それ見たら、さっきも言ったように、結果ですから、経済は全て。大変惨たんたる日本になっちゃったと。  どう乗り越えるかです。これはやはり、この私のメモの最後に書きましたけれども、瑞穂の国の資本主義をやっぱりきちっとこれ是非安倍総理につくっていただきたいんです。これ、お願いします。  それで、いいことをおっしゃっているんです、その書いてあることに。例えば、それでこの最後ですね、私がここに書きましたから、ちょっとその瑞穂の国の資本主義、私自身の考えの要旨だけを一言、お答えとしてさせていただきますけれども、これには、まず第一に重要なことは、新自由主義から決別すると。ということは、安倍総理に私が、非常にちょっと、応援していると同時に疑問を感じましたのは、新自由主義的な考え方、つまり、特区を優先する、それから法人税は下げろ、それから消費税の問題はちょっと別としまして、そういうことになると、どうもどっちに向いていらっしゃるのかなという気がしてくるんです。何とかやっぱり瑞穂の国向いてちょうだいよと是非お願いしたい。ですから、新自由主義というのは、藤原正彦さんという、「国家の品格」を書かれた方が書かれたとおり、国家の品格を汚すと、けだものの論理だと書いていらっしゃいますね。  それから、重要なことは、やはり考え方を内需中心に持っていくことです、もっと。最後の九ページにありましたね。それから、産業構造を内需型にする。それから、社会的共通資本といいまして、いろんな公共施設なんかありますね。それをどんどんどんどん民営化するのは私は反対です。かえって民営化というのは、結局資本家の利益を優先するんですよ。公共財は公共の利益優先なんです。これ全然違います。アメリカは例えば牢獄も民営化したとか兵隊も傭兵が多いとかやっていますけれども、そういうようなことはまねすべきじゃないと思います。  それから、株主の利益よりも国民の雇用を重視する。これは伝統的に日本はそうだったんです。だからこれだけいい国になったんです、短期間に、戦後、苦労の中から。  それから最後に、農業は株式会社組織じゃなく、組合組織でやっていただきたいんです。どうしてかというと、株式会社組織ということは株主の利益でしょう。農業なんというのは、いつ天変地異で食糧上がらないかもしれない。そうしたら、そういう人が、もし株式会社の今の農民の方が全部従業員だったら、全部首ですよ。餓死しちゃいます。協同組合というのは富を分かち合うんですよ。これ全然違います。  ですから、もちろん私は農業を近代化して輸出産業にするとか、賛成です。しかし、あくまできちっと協同組合組織でやっていただくということを、これはもう本当に瑞穂の国の柱だと思いますから、是非ひとつよろしくお願いをいたします。  以上でございます。失礼しました。
  48. 辰已孝太郎

    辰已孝太郎君 終わります。
  49. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 藤巻健史君。
  50. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 日本維新の会、藤巻です。  まず、林先生に御質問したいんですけれども、まず地方分権というのは我が党の一丁目一番地でございまして、先生のおっしゃること、まさに納得で賛成なんでございますけれども、経済に関して申し上げますと、地方の疲弊をこの二十年間、三十年間の経済低迷の第一歩、一義にするにはちょっと弱いかなと私は思っております。この二十年間、私のちょっと記憶ですと、イギリス、先生が例に出したイギリスはたしか二・四倍GDPが増えております。日本は逆に減っておりまして、その差を地方分権化等に、理由にするのは難しいかなと私は思います。最大の理由は、私はやっぱり円高だったと思うんですよね。それが、地方疲弊化もやはり円高のせいだと私は思っています。  例えば、日本人一人を雇うのが十万円、それから外国人一人雇うのが千ドルだとすると、一ドル百円であれば、私が例えば経営者だった場合、日本人を雇うのも十万円、外国人を雇うのも十万円ですから、日本に残るというのは分かります。ただ、一ドル百円が五十円と、円が二倍になれば千ドルの外国人というのは五万円になってしまうわけです。当然、海外に工場を移します。本社は東京に残しますけれども、工場は海外へ移します。なぜならば、外国人の労賃が二分の一になったから。そして、そうなれば、当然のことながらシャッター通りになりますですよね。商店も駄目になるだろうし、バス会社も駄目になるだろうし、若者はみんな外へ出て行ってしまう、仕事がないからですね。ということで、円高が地方疲弊化の理由じゃないかなと私は思っています。  特に、それから農業もそうですよね。例えば、千ドルのお砂糖、十万円、どのぐらいだか量は分かりませんけれども、十万円と十万円、同じだったものが、百円が五十円と、円が二倍になれば外国産は五万円になるんですから、当然、外国産のものを買って日本の砂糖は駄目になる、農業も駄目になる、地方の農業も農村も駄目になるということで、私はひとえに円高のせいだと思っています。  私が大学の頃三百六十円ですから、一時は七十六円、すなわち四倍の、日本人の値段は四倍、外国人四分の一になれば、それは日本駄目になるのは当たり前であって、地方も駄目になるのは当たり前ということで、円高が元凶ではないかと思うんですが、その辺についてのコメントをお願いしたいと思います。  それから、菊池先生山田委員と同じように、私もちょっと、かなり意見が違うんでなかなかコメントしにくいんですけれども、最初ちょっと私の感想を四つほどずらずらっと言わせていただきます。これは回答要りません。時間があればいただきたいんですけど、時間がないと思いますので、最初の四つは要りません。それで、最後一つだけ質問をさせていただきますが。  最初のコメントですね、先ほど先生富裕層増税するべきだとおっしゃっていまして、クリントンのときには増税して景気が良くなったとおっしゃっておりましたけれども、富裕層増税って、アメリカ富裕層ってたしか一億円か二億円ですから、年収。日本みたいに千五百万円以上が最高税率ということとまるっきり違っていて、定義が全く、富裕層じゃなくて、日本で最高税率が適用される千五百万円って、アメリカだったら中間層の下の方じゃないかと私は思っておりますけれども、そういう定義が違うということをやっぱり考慮していただきたいなというふうには思います。  それから、二番目の、どなたのでしたっけね、河野先生だったかな、質問で、為替の、外為準備預金の話がありましたけれども、あれは先生、ちょっと逆じゃないかと思いまして、あれは為替介入をするためにTBを発行して為替介入をする。それで、円を売ってドルを買ったドル、それは外貨預金にするか若しくはアメリカ国債を買うしかないので、ちょっといろいろ先生の説明だと逆のようなことをおっしゃっていましたけど、それは認識がちょっと違うのかなと私は思いました。  三番目のコメントですけれども、一九九七年に財政構造改革法案、橋本さんが作った法案でおかしくなったとおっしゃいましたけど、あの法案第二条に、確かに財政は危機的状況にあるというコメントがあったと思います。あれで悪くなったわけじゃなくて、あれは一九九八年のロシア危機があって、九七年、それから通貨危機があって世界情勢がめちゃくちゃになったから日本経済が低迷したのだと私は思っております。  それから、純債務で問題考えるべきだというふうにおっしゃっていましたけれども、日本の持っている債権、債権の方ですね、大きいとおっしゃいますけど、社会保障基金、これ一番大きい二百兆円ですけれども、あれは年金の積立金で、あれは国のお金じゃなくてあれは私のお金ですから、それを国のお金と言われちゃ困るわけで、国のお金と言うんだったら私の年金はゼロということになりますので。やはり債務というのは、やっぱり純債務じゃなく粗債務でいくべきだろうと私は考えています。  最後質問なんですけれども、先生財政出動が必要だ、財政出動が必要だとおっしゃっていますが、一九九七年、先生がおっしゃった財政構造改革法案のときのあのときの国の債務は、ちょっとうろ覚えですけど、三百六十九兆円とかそんなものだったと思います。千十八兆円まで三倍に増えました。物すごい財政出動をしてきているわけです。それでも日本GDPは全く伸びていないわけです。それをもって、それでもまだ財政出動が必要かとおっしゃるのかということです。  先生は引受けをすればいいとおっしゃっておりましたけれども、引受けをするということは、要するに橋を造るのに日銀が紙幣を刷って渡すということですね。私、そんな円なんか要らないですからね。今、日本ではドルでも円でも支払可能ですから、私、もう円なんか受け取りませんよ、ドル。ということで、そういう引受けをやっていけば円は暴落すると思って、日本はそれこそ駄目になっちゃうと思うんですけれども、その辺のコメントはいかがでしょうか。
  51. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) 簡潔にお答えいたします。  地方分権を進めれば地域が活性化するというのは幻想です。地方分権というのは環境整備にすぎません。だから、したがって、どのような地方分権にしていかなきゃならないのかということを考えていかないといけないわけで、地方分権が目的ではないですということですね。  それから、日本経済の疲弊が円高だと、私もそのとおりだと思います。しかしながら、円高だけが原因であるわけでもないし、円高が最大の原因だというようにも思えないです。やはり、円高ということも含めて様々な環境が日本においては非常に厳しい状況になっている、その中の一つがやっぱり法人税だと思います。  企業がどこに投資をするかというのは法人税だけでは決まらない、これはもう当たり前の話です。もっと、マーケットの大きさだとか為替相場だとかいろんなもう要素があって、どこで投資をするかということを決めます。そこで、日本の環境がほかには良いものがたくさんそろっているんだったら、まあ、多少法人税ぐらいは高くてもいいでしょうという話にはなるんでしょうけど、それ以外の条件がどんどんどんどん日本に厳しい条件になってきている中で、法人税も条件が厳しいということが、果たして本当に日本がこれからグローバル社会の中で生きていけるのかという具合に考えていくべきなのではないかという具合に思っています。  だから、EUでも為替、もうユーロ圏であってもやはり経済のいいところと悪いところがあるわけですから、そういう意味では外国為替だけが影響しているわけでは決してないということでございます。
  52. 菊池英博

    参考人菊池英博君) 先生がおっしゃられた幾つかコメントは結構でございます。意見の相違等ありますが、ちょっと、ただ、事実に関して一言申し上げます。  三番目におっしゃった、九七年、財政改革法案のときに、あの危機が生じたのは海外からとおっしゃいましたが、これは全く私は違います、全面的に。  それは、そこに書きましたとおり、国内で信用収縮が起きたということはよく御理解いただきたい。これはもう金融学会でもみんな分かっていることです。先生も御勉強であり、大変国会でも発言なさっておる方、大変尊敬させていただいておりますが、この事実認識は全く私とは違います。これは事実、これが海外だけだったら、あんなにひどいことにならないんですよ。銀行回収する必要はなかったです。株が下がったのもそうです。株が下がったのはいろいろ背景ありますけどね。場合によったら、大変恐縮ですが先生にも贈らせていただいておりますが、これをお読みいただきたい。  これはなぜかといいますと、私は、構造改革というものをやっぱり一度日本が総括すべきだと思っているんですよ。これ、自民党先生もおっしゃっているんです、実は。自民党勉強会なんか行かせていただいて、随分私勉強させていただいています、有益な御意見。その中にそれがございました。それもあって、実はこれ、ちょっとこういうふうにまとめてみようと思ったのがこれでございます。  それから、その次、純債務は、年金、私のお金だ、これも国会でもおっしゃっていました。しかし、OECDデータに純債務というのははっきりあるということ。純債務OECDデータで私は申し上げているんです。  それともう一つは、日本の場合には、この年金基金が約七、八十兆の国債を買っているんです。例えば、アメリカだったら、先生は御存じと思いますけれども、国家の年金は全部国債を買わなきゃいけないんですよ。株投資禁じられています。これは一九三三年、四年でしたか、できて以来ずっと。クリントンが一回反対したんですが、民間を入れようと思ったけど、共和党すら反対したと。ですから、そういう意味では、これが入ること自身、私は、かえって資金の循環等もあって理解を促進するものだと考えております。  それから、その後は御質問になるんですね。  九七年のときに余り増えていなかった、それがその後どんどん増えてきたということで、これはもう先ほどちょっとお話ししましたから、その理由の大きなものは、数字上の、何というんでしょうかね、誤解があるわけですよ、さっき申し上げたとおり。特別会計というものを、二〇〇一年度に特別会計の法、財政投融資会計を改定しました。そのときに、今まで表面に出ていなかった政府債務、それを表へ出して、財投債という形で出したんです。それからもう一つは、郵便局が引き受けている政府保証債を、また、これまた表へ出した、借入金も出した。それによってどんと上がったんですね。さっき、数字ありますから御説明申し上げました。だから、その増加ですね。だから、特別会計というものは分けて考えるべきだということの根拠を申し上げたと思います。  それから、その次に、日銀に引き受けるばかりだったら破産するじゃないか。しかし、日銀引受けを継続するということを言っているんじゃないんです。なぜかといえば、最初の段階では日銀に引き受けて、いいですか、有効需要を喚起する、つくらなきゃいかぬ、だから商売やりましょう、道路を造って、あるいはこうしましょう、じゃ、この金出します、じゃ、日銀に今五兆出した、日銀に引き受けてもらう。その段階は引受けかもしれませんよ。しかし、それは、その後は収益になって上がってくるわけです。必ず上がってくる。  だから、さっきも申し上げましたとおり、五年百兆と言ったって、その百兆が全部出っ放しじゃないんですよ。その後、税収の増加、最初なら二十兆マイナス、その次、二十兆マイナスだけれども、ネットだったらせいぜい十兆ぐらいのマイナスで済む。三年、四年目で均衡する。四年、五年目は税収の方が増えるんです。これは、この前ここにいらっしゃいました宍戸駿太郎先生のモデル。それから、もっと細かくは藤井先生がきちっとされていますね。先生は工学部の教授だけあってさすがだなと思って、私も勉強させていただいた。そういうことになっています。したがって、全部日銀が引き受けてしまうのではありません。その過程の起爆としてやっていくんです。  それからもう一つ先生はまあ、先生のキャリアも拝見させていただいています、モルガン銀行とか三井信託でいらっしゃいましたかね、大変な金融のベテランでいらっしゃることも十分承知いたしています。ただ、ただ問題なのは、税収がどんどん上がっていくような形に持っていくことなんですね。ですから、先生はドーマーの定理というのはもちろん御存じと思いますが、ある意味では債務が幾ら増えたっていいんです。それを上回る名目GDPが増えれば、必ず財政は良くなっていくんですよ。それがまさに五年百兆、十年二百兆のモデルの原点なんです。  それからもう一つ先生がおっしゃったことで、ちょっと事実に反すると思いますとおっしゃいますが、先生はこれおっしゃいましたね。ここのところで、大変、バブルの崩壊後ですよ、バブルの崩壊後、この税収が減ってきた、国債だけ発行したけれども名目GDPは上がらないとおっしゃいましたね。違いますよ。名目GDPはずっと上がっているんです。ここが特徴なんですよ。つまり、バブルは崩壊しましたのが一九九〇年です、それによって税収はどんと落ちました、どんどん落ちたんですよ、実はね。しかし、公共投資を出し、地方交付税交付金も増やしたんです、政府は。それが結局、地方名目GDPにプラスになっていますから、実に一九九〇年に比べて、ピークに比べては六十兆以上増えているんですよ。だから、これがベースになって、そういうストックになり、そして同時に、こういうものは税収を上げるベースになるんです。これは、私だけじゃなくて、リチャード・クー先生とかいろんな方が指摘されていますから、ここは先生の御認識、事実に反します。  以上でございます。
  53. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 一分だけ。  名目GDPは二十年前に四百八十五兆、今も四百八十五兆で変わっておりません。それから、ドーマーの定理は二十年間ずっと反した動きがありましたということだけコメントしておきたいと思います。  それと、あとユーロに関して、林先生のユーロに関しましては、ドイツは確かに強いんですけれども、それは実力に比べてユーロが低過ぎるからだと思います。それから、スペイン、イタリアが景気が良くないのは、実力に比べて通貨が強過ぎるせいだと私は思っております。  以上です。
  54. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 真山勇一君。
  55. 真山勇一

    ○真山勇一君 結いの党の真山勇一です。  今日はお二人の先生、大変熱い議論をしていただいてありがとうございました。今日は、いつもだと三人なんですけれども、お二人で、何かじっくりとお話を伺えたなという気がしております。  早速質問をさせていただきたいんですが、まず菊池先生、いろんな話がもう出たので、私は、先ほどもちょっと出ましたヘッジファンド、日本のお金がどんどんどんどん外へ出てしまうと、これはもう大変私も気にしているところなんですが、このお話を伺いたいんですが、デフレ克服ということで、異次元の金融政策でとにかくお金がじゃぶじゃぶ出しているんですけれども、それが今度じゃぶじゃぶまた外へ持っていかれちゃうということは困ったことだなというふうに私は感じているわけです。  コンピューターでハイ・フリークエンシー・トレードという、一瞬にして巨額の取引を繰り返すということですよね、そういうことで莫大な利益をどんどんどんどん海外へ流出してしまうという、これは日本経済にどんな影響を与えているのかということと、この巨大な資金に対抗できるような有効な手だてというのはあるのか、そのことについて新自由主義に批判的な先生からのお考えを是非伺いたいということです。  それから、林先生にお伺いしたいのは、もう地方が大事、地方が元気にならなければ日本経済良くならないということ、本当によく分かります。  私も、実は東京生まれ東京育ち、東京の一極集中というのは、東京私大好きなので、東京がどんどんどんどん世界に冠たる都市になっていくということは、私自身もそれはうれしいことだという感じは持っていますが、日本の国の中で東京というのはどういうことかと考えると、やっぱりいろいろ問題、一極集中というのは問題があると思います。先生がおっしゃるように、東京の一極集中があれば地域の人口はどんどん減るという、これもまたこのスパイラルが起きているわけですね。  ですから、それを改めるためにはどうすればいいのかといういろんなことがなされているわけですけれども、やはり私は今、少しそういう中の議論で道州制、これなかなか国民の間にはなじみがなくて、まだまだその議論をしなくちゃいけないというふうに思うんですが、先生がおっしゃるように、運用でなくて制度を変えていかなくちゃいけないという面でいうと、まさに今の四十七都道府県をやはりブロックに分ける道州制必要だと思うんですが、先生がイメージしておられる道州制というのがあるのかどうかということと、もし、何かそれとは別な分権、ブロックのようなものを考えておられるのだったら、それを是非お伺いしたいということが一つ。  それから、今地方がどうも衰退しているということの一つの救済策として中心市街地活性化という事業をやっておりますけれども、これがなかなかやっぱりうまくいっていないような気がするんですが、私は非常にこれ中途半端だと思うんですが、先生のこの中心市街地活性化についての評価というのはどういうものかというのをお伺いしたいと思います。  以上です。よろしくお願いします。
  56. 菊池英博

    参考人菊池英博君) 日銀が金融緩和をすると、そのお金がどういうふうに回っているかということですね。  それで、確かに先ほど申し上げましたとおり、昨年の三月に比べて今年の三月、この一年間でざっと実際に七十兆円ベースマネーは増えております。国内で実際使われているのは三十兆から三十五兆円ぐらいと、ストックが増えたのは。残りの部分は全部海外に行ってしまっているということです。これは、証券とかいろんなことをやっていらっしゃる方はみんなそうだと思います。  ですから、それで、この現象は、実を言いますと、今回始まったわけじゃないんですよ。前回、小泉構造改革のときにあったんです。御存じと思いますけれども、私、この本にも記録として残したんですが、金融緩和でマネーはニューヨークへ渡ると。円キャリートレードというのがあったんですよね。これは二〇〇五年、六年頃、小泉さんの小泉構造改革政策財政緊縮、金融緩和だったんですよ。それで、日銀に、とにかく金融を緩和しろ、緩和しろと。それで、日銀はベースマネーを増やそうと思って、中央銀行にあります各金融機関の預金を三十五兆円まで増やしていったんです。銀行は貸したいんですよ、実際には。借りてくれ、借りてくれと言うんだけれども、デフレだし、借りられない。みんな借りたい、みんながどんどん返している。そこで、そのお金を結局コールマネー等で借りて、主として外資系の企業とか金融機関が借りて、それをニューヨークへ円で回して、それでニューヨークがそのお金で商品市場だとか株式市場をやったんですね、お金を回していたんですね。それで、結局、二〇〇八年の九月にあのリーマン・ショックが起きましたね。そのときに言われたのは、日本から来た金が三分の一あったじゃないかということを言われました。  それで、事実、こういう記録があるんです。二〇〇八年十月二十一日の参議院の運営委員会で当時の日銀の副総裁の、山口廣秀さんが、日銀が長年にわたって行われてきた低金利や量的緩和の一つの副作用として低金利の円を借りて海外で投資する動きを加速させ、海外の金融市場に何らかのインパクトを与えたことは否定できないと。ちゃんと日銀が小泉構造改革のときの問題点として指摘をされているんです。  ですから、今回、私は、黒田総裁が異次元の緩和どんとやるとおっしゃったときに、いや、ちょっと待ってくださいねと、こういうことを御存じなのかなと思ったんです。それと同じ現象が今起きているんですね。それで、何が問題なのかといいますと、もしこのままこれを、黒田総裁は、今年の暮れですね、たしか、ベースマネーを二百七十兆にされるとありますね。そうすると、二百七十兆ということは、ざっとこれ、GDPに対しましては五〇%を超しますよね。  それで、一方、アメリカは今もう縮小に入っていますね。バーナンキの、去年の暮れにまず縮小する、それからイエレン総裁になってから縮小もしています。縮小を開始させたときのベースマネーの量は名目GDPの二〇%です。だから、名目GDPの二〇%のときにアメリカは、いや、待てよ、これ危ないな、これ以降と、インフレになるかもしれない。  それで、事実、バーナンキがああいうことをして縮小しようと自ら言ったのは、実はこういうデータがあるんです。二〇〇八年、二〇〇八年のまさに九月にリーマン・ショックがありましたね。それからちょうど二〇一三年の六月まで、この間、アメリカのベースマネーというのは約もう三倍ぐらいになっているんですよ。ところが、ところがですよ、マネタリーベース、民間の、なるお金は九九、減っているんです。つまり、ベースマネーをどんどん増やしても、そのお金は実は実体経済にプラスにならなかった。結局みんな投機に使われたということですよ、市場で。  ですから、私があるアメリカ人から聞いたんですけれども、金融関係の方から、結局、バーナンキはそういうことを考えて、やっぱり自分のやってきたことは決して成功ではなかったと思ったんじゃないかと。だから、今年の一月、再々選されるのを、辞任しましたね。  したがって、我々は今気を付けなきゃいけないのは、先生のおっしゃった最後の問題なんですが、このまま二百七十兆まで行きますと、もう大変なお金が出ていっちゃって、実体経済にプラスにならないんですよ。だから、どこかの時点で今のやり方をもうちょっと変えまして、だから、先ほどから申し上げているとおり、もう今年なら二十兆ぐらいのちゃんと補正予算を組んで、それで有効需要を喚起するような形にして、それに対して金融を付けていく。財政主導金融フォローにすればベースマネーは即マネーストックに直結するんです。我々の生活、経済にプラスになるんです。そういう方向にしていただけるのがいいのではないかと私は思っています。このままどんどん突き進むのはちょっと慎重にされるのがいいんじゃないかというのが私の意見でございます。
  57. 林宜嗣

    参考人(林宜嗣君) まず、グローバル化社会というのはどういう社会なんだろうという具合に考えたときに、これは国際化時代と明らかに違うんですね。つまり、国際化時代というのは、主役はやっぱり国なんです。つまり、国と国の間の摩擦が起こる、これを何とか解消していかなきゃいけないということでやっぱり国が乗り出していく。だけど、グローバル時代というのは、もう明らかに国境を越えて地域と地域が競争する、連携をするという、そういう時代です。  その中で、東京が一極集中で今それなりに潤っていると。でも、これが恐らく北海道だったら札幌一極集中、九州は福岡一極集中。これはなぜ起こっているかというと、札幌に魅力がある、もちろん相対的には魅力はあるんですけれども、ほかのところではもう商売やれないというようなことがあって札幌に避難していっているんですね。  私は、東京は日本全国の避難場所だと思っています。それはどういうことかといいますと、東京に一極集中している企業、私は日本の企業がまだ完全にグローバル化していないから東京で本社を置いているんだと思います。つまり、もう最初からグローバルで、内需ではなくて海外の市場を当てにしなきゃならないような企業はもっと海外展開しますね。だけど、日本の場合にはやはり、だんだんだんだんマーケットが小さくなっているとはいえ、やっぱり一億人を超える人口があるわけですから、そういう意味では国内市場は大きいんです。だからこそ東京に本社を置いているんです。だけど、これは、企業がどんどんどんどん本当の意味でのグローバル化を意識し出したら、東京に本社を置くかどうかは分かりません。  つまり、グローバル化した社会の中で、日本という国が条件がいい、そういう条件をやはり国はつくっていかなきゃいけない。その上で、東京はどうなんだ、大阪はどうなんだという具合に考えていかなきゃいけないので、やっぱりそういう意味では、今東京は内部市場いろんな意味で潤っていますけれども、これからやっぱり東京大好きな方が増えてくると思うんですね。つまり、一極集中、これはやっぱり学者も一極集中しておりまして、そういう意味では、東京生まれ東京育ちの方が、東京大好きだという方がどんどんどんどん中央集権国家の中で地方のことも意思決定していくとなったら、もうこれは私は東京はどうなるんだろうと思いますというのが一点。  それから、中心市街地活性化、私はうまくいっていないと思います。それはやっぱり空間構造戦略がないからです。つまり、何かインフラを中心市街地に造るとか、コンパクトシティーもそうですけど、いろんなことをやったって、やっぱり、一つエリアの中で人たちはどのようにして居住地を決めていくんだろう、どういうような行動原理で買物をするんだろうというようなメカニズムが絶対あるはずなんですね。そういうメカニズムを踏まえて、それを誘導するような空間構造戦略、つまり土地利用戦略、こういうものも一体で考えていかないと、一方で郊外に居住するといったようなことも容認しながら中心市街地を活性化しようといったって、これはもうできっこない。だから、やっぱりその辺りをもっともう本格的にちょっと腹くくって考えていかなきゃいけないというように思います。
  58. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。
  59. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 以上で各会派一巡をする質疑は終了いたしました。  他に御質疑のある方もおいでと思いますけれども、時間が予定をしておりますよりも経過をいたしておりますので、以上で参考人に対する質疑は終了をしたいと思います。  一言御挨拶を申し上げます。  菊池参考人及び林参考人、両先生におかれましては、極めて御多忙の中、有意義な御説を我々にいただきました。おかげで大変有意義な調査を行うことができました。心から感謝を申し上げております。お二人のますますの御発展を祈念申し上げまして、御礼の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会