運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2014-04-09 第186回国会 参議院 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年四月九日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月二十六日     辞任         補欠選任      難波 奨二君     田城  郁君      浜野 喜史君     藤末 健三君  二月二十七日     辞任         補欠選任     渡辺美知太郎君     山田 太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鴻池 祥肇君     理 事                 西田 昌司君                 松村 祥史君                 山田 俊男君                 江崎  孝君                 石川 博崇君                 山田 太郎君                 辰已孝太郎君     委 員                 高野光二郎君                 鶴保 庸介君                 舞立 昇治君                 宮本 周司君                 山本 順三君                 吉川ゆうみ君                 渡邉 美樹君                 石上 俊雄君                 大塚 耕平君                 田城  郁君                 広田  一君                 藤末 健三君                 藤巻 健史君                 真山 勇一君                 吉田 忠智君    事務局側        第二特別調査室        長        山内 一宏君    参考人        一般財団法人キ        ヤノングローバ        ル戦略研究所研        究主幹        独立行政法人経        済産業研究所上        席研究員     山下 一仁君        慶應義塾大学大        学院経営管理研        究科准教授    小幡  績君        大阪経済大学経        営学部客員教授  岩本 沙弓君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関  する調査  (デフレからの脱却財政再建在り方など経  済状況について)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ただいまから国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月二十七日までに、難波奨二君、浜野喜史君及び渡辺美知太郎君が委員辞任され、その補欠として田城郁君、藤末健三君及び山田太郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと思います。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事山田太郎君を指名いたします。     ─────────────
  5. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査を議題といたします。  本日は、デフレからの脱却財政再建在り方など経済状況について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  御出席をいただいております参考人は、一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所研究主幹独立行政法人経済産業研究所上席研究員山下一仁参考人慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授小幡績参考人及び大阪経済大学経営学部客員教授岩本沙弓参考人でございます。  この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。  先生方には、御多忙の中、本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  先生方の忌憚のない御意見を頂戴して、今後の調査参考にさせていただきたいと思います。何とぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず山下参考人小幡参考人岩本参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃をめどに質疑を行います。御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、山下参考人からお願いいたします。山下参考人
  6. 山下一仁

    参考人山下一仁君) 山下です。よろしくお願いします。  今日は、TPP農業の話について二十分ぐらいお話をさせていただきたいというふうに思っております。(資料映写)  まず、TPPなんですけれども、成長戦略としてアジア太平洋地域成長を取り込むということが強調されているんですけれども、外国に輸出したり、あるいは投資を受け入れたり、投資をしたりすることによって企業生産性が大きく向上するということは、経済学的にもいろいろ実証分析なんかがなされています。経済成長しなければ、財政が破綻して国債が暴落して金利が上昇して不況になると、こういう大変恐ろしいシナリオもあるんで、やはり経済成長するためにはTPP参加するということが重要なんだろうというふうに思います。  次に、真ん中に書いてあることなんですけれども、中国が、数年前に中国の漁船と称するものが日本の海上保安庁の監視船にぶつかってきて、日中関係が非常に悪化して、その結果、レアアースの輸出禁止を、日本にだけ禁止したわけですね。実はもう中国にODAをやっていませんから、中国のその力に対して日本は対抗する力を持っていないわけです。  じゃ、力に対して何も対抗できないかというと、そうではないわけですね。かつて日本通商法三〇一条ということで大変悩まされたわけですけれども、今、三〇一条というのはあるんですけれども、実は日本に対しては適用できない。なぜかというと、WTOをガット・ウルグアイ・ラウンド交渉でつくって、WTO紛争処理手続を取らなければ、どの国も制裁措置は講じられないというふうなルールを作ったからです。これは、日本政府の功績は極めて大きなものがあったというふうに思っています。  つまり、力に力で対抗できなくても、力に対してルールで対抗できる、これが今回のTPPの意義だというふうに私は考えております。関税がなくなるということによって取り分が増える、さらに企業生産性向上することによってより多くの取り分が増えるというふうな図が、成長戦略が描けるんだというふうに思います。  それと、今回、日豪EPAが結ばれたわけなんですけれども、一つの大きな推進力というのは、韓国と豪州の間にFTAが結ばれて自動車の関税が来年一月から韓国に対しては撤廃されるというのが大きな推進力になったというふうに理解しています。経済連携協定自由貿易協定、まあTPPもその一つなんですけれども、経済連携協定の、自由貿易協定の本質とは何かというと、差別するということなんです。中に入れば物すごくメリットはあるんですけれども、中に入らないと物すごい不利益を受けるということですね。  したがって、この二に書いてありますように、野田首相TPP参加を検討するというふうに表明した途端に、カナダとメキシコの首脳はその場で国内と全く相談することなく決断したわけですね。つまり、アメリカ市場には北米自由貿易協定があるのでアクセスはできる、ところが日本が入る広大な自由貿易圏ができてしまう、それから排除される恐怖感がこの両国の首脳にその場でTPP参加を決断させたということでございます。つまり、TPP参加しなければ、日本産業は広大なアジア太平洋地域から疎外されてしまうという悪影響が生じるということでございます。  いろいろあるんです。TPPお化けという表現もあったんですけれども、いろいろな論点がありました。ただ、一般に認識されていないということは、TPPというのは協定ですから法律の体系だということなんです。そのベースにあるのはWTO協定だということです。例えば、公的医療保険制度TPPで議論されて国民保険制度がおかしくなるという議論もされているんですけれども、実は、公的医療保険というのは政府によるサービスですから、これはWTOサービス協定の一条から、はなから除外しているわけですね。  したがって、WTO協定に、土俵にのらないものは幾ら日米協議で過去、要求されたものがあったとしても議論されないというふうなことになるんだろうと思います。したがって、アメリカの、今も来ていると思いますけれども、カトラーという通商代表補日本に来て何を言ったかというと、アメリカTPP国民保険制度を取り上げるつもりはないというふうに言ったというのは、整合性が取れているということでございます。  それから、農業の話に、これから申し上げるんですけれども、農業はどうなるのか。  一九九四年に日本の米の生産量は一千二百万トンございました。ところが、今は、今年の生産目標数量は八百万トンを大きく下回るということになっております。この二十年足らずの間に米の生産量は大幅に減少したということでございます。将来はどうなるのかというと、高齢化人口減少で更に縮小するということですね。それに合わせて生産をしようとすると、農業は安楽死するしかないというシナリオになります。  それが嫌ならどうするか、輸出するしかないわけです。輸出をするためには、相手国関税が一〇〇%がいいのか、五〇%がいいのか、〇%がいいのかということになると、それは〇%がいいに決まっているわけですね。つまり、日本農業を今後とも維持あるいは振興していくためにも海外のマーケットを活用する、そのためには海外の、相手国関税率を削減する自由貿易協定に積極的に参加することが日本農業の生き残りのためにも必要だということでございます。  これが日本農業現状です。特に注目していただきたいのは二番目のポツなんですけれども、食料安全保障に必要なものは農地面積なわけですね。これが最盛期には六百九万ヘクタールあったんですけれども、その後、農地造成をして百五万ヘクタール追加されています。ところが、現在四百五十五万ヘクタールしかないということなんですね。つまり、二百五十万ヘクタールは転用と耕作放棄でなくなってしまったということです。これは、日本の今の全水田面積に相当する農地面積がなくなってしまったということでございます。  特に、農業の中にもいろんなものがあるわけですけれども、一番減少の激しいのが米だったということです。一番保護しているにもかかわらず、一番減少したのが米だということですね。一九五五年のときは米はナンバーワンの品目だったわけなんですけれども、野菜、畜産に抜かれて今は国内生産額のうちの約二割を占めると、そういうふうな状況になっているということでございます。  よく言われているんですけれども、米と書いて八十八と読むんだと、それだけ手間暇掛かるんだということが言われたんですけれども、これで見ていただくように、機械化が進みましたので労働時間が物すごく減少したということです。今では、一ヘクタールぐらいの規模だと年間三十日働くだけで米は作れる、米は一番作りやすい作物になったということでございます。  小農は貧しいと言われているんですけれども、これは農家所得です。このうちの中で農業所得はこれしか占めていません。ほとんどは兼業所得だということでございます。農家は、じゃ貧しいのかというと、そうではなくて、実は右目盛りの一〇〇が、その折れ線グラフなんですけれども、農家所得サラリーマン所得収入比較したものなんですけれども、一〇〇を超えると農家所得の方が高いということになります。もう既に一九六五年において農家所得サラリーマン所得を上回って推移するようになったということでございます。  品目ごとに見ると、米だけが高齢化も進んでいるので年金収入が多い、それから兼業化が進んでいるので農外所得が多い。ほかの酪農とか畜産とか、そういうものに比べて兼業化高齢化が米については進んでいるということがうかがえます。  よく規模が小さいので競争力がないというふうなことが言われるんですけれども、確かに日本規模は小さいんですけれども、確かに規模は重要なんですね。だけど、これでアメリカオーストラリアを比べてみると、世界最大農産物輸出国であるアメリカオーストラリアの十八分の一でしかないということになります。つまり、規模は重要なんだけれども、規模だけが重要じゃないということですね。  何が違うかというと、オーストラリアは四億ヘクタールあるんですけれども、ほとんどが草しか生えない牧草地なわけですね。そこで牛を放牧して牛肉を作って、それをアメリカ輸出しているんです。だから、アメリカのマクドナルドのハンバーガーはほとんどオーストラリア産の牛肉だということです。これにはアメリカも勝てないわけです。じゃ、アメリカは何を作っているかというと、トウモロコシ、大豆、小麦世界なわけですね。これにはオーストラリアは全く勝てないということです。だから、アメリカ世界最大農産物輸出国になっているということでございます。  つまり、規模だけが重要じゃないということですね。規模も重要なんだけれども、それだけが重要じゃない。もっと重要なのは品質の違いです。  同じ米です。コシヒカリです。日本産、カリフォルニア産、中国産、中国一般ジャポニカ米、これは香港市場の評価だということですね。つまり、同じものを作ったとしても気候風土の違いによって大きな品質格差価格差が出てくるということです。これは日本でも同じです。新潟県魚沼産のコシヒカリ一般の産地のコシヒカリは一・五倍から二倍の差があるということですね。日本の米は世界一、世界に冠たる品質を持っているということです。ところが、残念なことに、価格が高いから価格競争力がなくて世界市場に参入できないという問題を抱えているということでございます。  実は、先ほど規模が小さいので競争できないと。全く、百年前にこれは柳田国男が書いた本の一節です。柳田国男というのは、実は大学を卒業して最初に入ったのが農商務省だったわけです。農林省法学士第一号だったわけです。日本農業は到底土地の広いアメリカと競争することはできないということはよく耳にすることだと、だけど、これに対して関税の保護のほか何も対策がないのかというふうに考えるのは誤りだというわけですね。じゃ、何が必要なのか。彼が言うのは、農事の改良、つまり生産性向上だというわけです。そのときに、たかだか三反、四反の細農の目には、そんな生産性向上なんかできないだろうと。だから、ある程度の規模の大きい中農を養成すべきだと。これが柳田国男の美しい農政思想だったということでございます。  いろいろ言いたいことはあるんですけれども、これは日本農政構図です。  小麦を例に取りますと、国内生産国内消費の一四%しかありません。その一四%のために、国産小麦のために高い価格を課している。その高い価格農業を保護するために、輸入麦についても関税によって高い価格を維持している。正確に言うと、旧食糧庁が徴収している課徴金なわけですけれども、そうしたものを徴収しているということです。つまり、この仕組みというのは全く逆進性の塊だというわけです。つまり、消費者負担を課すことによって農家を保護するという政策をずっと我が国は取ってきたということでございます。  もし価格を直接支払に、アメリカEUがやっているように直接支払に置き換えれば関税も必要なくなるわけですね。つまり、価格から直接支払に移行することによって、輸入麦についても消費者負担をゼロにすることができるということです。だから、消費税を上げて、逆進性を緩和するために軽減税率なんか導入する必要はないわけです。このシステムを改めれば、十分、消費税逆進性は大幅に緩和できるということでございます。  農政は、三つ流れがあります。  一つは、米政策です。食管制度によって高い米価農家所得を保護しようとした。食管制度が一九九五年に廃止されて以降は、減反によって供給を減らして米価を高くするという政策をずっと維持してきたということでございます。  それから、農協制度ですね。これは、戦前の大恐慌のときに大変な農業恐慌が起こった。これを解決するために当時の農林省がつくったものが産業組合で、それが戦後、農協に転換されたということでございます。  それからもう一つは、農地制度です。農地制度というのは、今の農地制度は何かというと、戦後に小作人を解放して、それに所有権を与えた。つまり、耕作者イコール所有者だと。この農地改革成果を維持しようと、そのためにだけ作られた法律だったわけです。実は当時の農林省はこれに反対したわけですね。つまり、農地改革からこの次は農業改革をやろうと。つまり、柳田国男以降の美しい農政思想はそのとき生きていたわけです。  ところが、実は、この農地改革の政治的な成果に気付いたのがマッカーサーだったわけです。それと、保守党の中でもこの農地解放の政治的な意味に気付いたのが池田勇人だったわけです。つまり、農地解放をやることによって小作人が保守化したわけですね。このシステムを維持したいというのが農地法の背景にあったということでございます。  これは各国の農政比較です。アメリカEUは直接支払で保護している。ところが、日本は高い価格農業を保護していますので、高い関税が必要だということになります。  米政策です。普通なら、財政負担をすると消費者に安く物を供給するというのが普通の財政だと思いますけれども、これは減反をさせるために農家にたくさんの減反補助金を出します。それによって、供給量を削減して米価を高くして消費者負担を高めるという政策をやっているわけです。国民は、一・八兆円の米産業に対して五千億円の財政負担、六千億円の消費者負担、合わせて一・一兆円の負担をやっているということですね。その結果、日本農業が、米農業が良くなったかというと、左の下に書いてありますように、米価が高いんで規模が拡大しなかった、零細な兼業農家が滞留した、それから、減反生産量を抑制しますから収量が上がらなくなったということです。  その結果をお示ししたいと思うんですけれども、これは、トン当たりコストというのは、一ヘクタールで幾ら掛かったかというコストを一ヘクタールの収量で割ったものですから、規模を拡大すると分子は下がります。収量を上げると分母が上がって、トン当たりコストが下がります。これは、その規模が拡大するとその生産費、青の折れ線グラフですけれども、生産費が下がって赤の所得が上がるという構図です。  今、二十ヘクタール以上、秋田県の大潟村の一戸当たりの平均が二十ヘクタール以上ですから、みんな一千四百万円ぐらいの所得を持っています。したがって、大潟村の全ての農家は、東京の大学に息子は入れますけれども、必ず大潟村に帰ってきて農業を継ぎます。三百万、四百万、大企業から給料をもらうよりも、一千四百万もらった方が有利だということになります。  ほかの都府県農業は、米農業はどうかというと、一ヘクタール以下なんです。つまり、都府県の平均的な農業というのは大体〇・七ヘクタールぐらいだと思いますけれども、所得はとんとんかマイナスぐらいですね。そうじゃなくて、規模の大きい人に農地を集積して、それをいろんな人に地代として分配する、そうした方が日本農業ははるかに活性化するということでございます。  それから、これは減反を始めてから日本の、これは赤が日本の米の収量ですけれども、頭打ちになりました。青はカリフォルニア収量なんですけれども、これが順調に伸びて、今は四割ぐらいもカリフォルニア収量が高いというふうなことになっております。  いろいろあるんですけれども、ここら辺で、時間がないので、できるだけのところまで行きたいと思いますけれども、これは日本中国米価比較です。上が日本国産米価です。一番下が中国産、中国から輸入している米の値段です。真ん中がその中国から輸入している米を日本で売ったときの値段です。上の価格真ん中中国価格品質格差を表しています。だから、実質的に品質格差を除いた内外価格差真ん中グラフと下のグラフの差なんですけれども、実は今、三〇%ぐらいにこの内外価格差が縮小しております。更に言うと、この上の一万二千八百二十六円というのは減反で維持されている価格ですから、減反政策をやめると価格はすとんと八千円ぐらいになります。そうすると、関税がゼロでもやっていけるという水準になります。さらに、収量が上がるとか規模が拡大するとか、そういうことができれば更に生産性向上して輸出がどんどんできるというふうなところになるんだろうと思います。  これは私が長年申し上げてきたことなんですけれども、減反を廃止すれば米価は下がるので、零細な兼業農家人たち農地を出してきます。これに対して、主業農家に限って直接支払をすれば、主業農家人たち地代負担能力が上がって、農地兼業農家から主業農家の方に移ります。そうすると、主業農家人たち規模が拡大してコストが下がります。コストが下がるので収益は上がります。収益が上がるので兼業農家人たちに払う地代も上昇すると、こういうふうな好循環が生まれてくるということでございます。  最後に一つだけ、農地制度のことを申し上げたいと思いますけれども、実は今、先ほど申し上げましたように、耕作者所有者であるべきだというのが農地法の考えなわけですね。株式会社については、農家が法人成りをしたような株式会社しか認めていないということです。農外企業も出資できるんですけれども、その出資できる企業というのは、流通業であるとかあるいは外食産業であるとか、そういう人たちしか出資できない。したがって、群馬の農業をやっている友人に対してサラリーマンしかやっていない私が出資しようとしても、それはできないということなんです。つまり、資金のない若者がベンチャー株式会社をつくって親や友人や親類からお金を集めてきて農業に参入しようとしても、それで農地の取得はできないということになっているわけです。つまり、後継者がいないいないと言われているんですけれども、日本農地政策自体日本農業に対して後継者を参入できないような仕組みにしているということでございます。  あと、いろいろ申し上げることはありますが、時間もなくなったのでここら辺でやめたいと思います。  ありがとうございました。
  7. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、小幡参考人にお願いいたします。小幡参考人
  8. 小幡績

    参考人小幡績君) 小幡です。よろしくお願いいたします。座らせてやらせていただきます。  参考人関連資料という青いやつの三十三ページに「経済教室」という、日経新聞に書いた、私としては珍しく良く書けているものがあるものですから、もし退屈でしたらこちらをお読みいただければ、まあ私の話が退屈かもしれませんが、お読みいただければと思います。  スライドの方は、日本経済の真の課題ということで、時間も限られていますので、ポイントだけ話したいと思います。(資料映写)  まず、必ず世界経済なしには日本経済を語れないので、世界経済現状はどうかと。一言で言うと、世界は非常に好景気だということです。  アメリカは非常に順調です。金融も引締めに向かっています。それは、雇用も大分改善してきたということです。  欧州は、雇用は改善しているというわけでもないんですけれども、金融危機を脱却していますので、こちらも非常に、一時に比べれば大分いいと。  新興国は、ブーム終わりまして、ちょっと混乱も一部ありまして、今年一月にはアルゼンチン危機みたいなものはあったんですけれども、良かったのは、これが世界に波及しなかったと。これは、世界の新興国における金融政策が非常に進歩したというか、一昔前と大分変わったと。これはなぜかというと、やはり景気が悪くなると金利を引き上げるのを非常にためらう、政治的にもためらうところが新興国にはあったわけですけれども、何よりもインフレ抑制、通貨防衛が非常に重要だということを新興国はリーマン・ショック、その前のパリバ・ショックで理解しまして、いずれも金利をすかさず引き上げると。特にインドの、これは元シカゴ大学の先生、ラグー・ラジャンという人が中央銀行総裁をやっているわけですけど、引き上げたり、トルコですら引き上げて、非常に危機を収めるのは成功したということで、世界的にはかなり順調かなと。中国の問題等いろいろありますけども、基本的には順調。  日本も、御存じのとおり、昨年、厳密に言うと二〇一二年の秋から景気が回復しまして、非常に昨年は良かったと。今年も、消費税も引き上がりまして、その分の減速もありますし、去年ほどの勢いはないと思うんですけれども、取りあえず今のところ好調だと、ただ注意が必要ではないかということです。  それはなぜかというと、財政金融政策世界で最もフル稼働というか思いっ切り出しているわけですね。財政はそもそも債務残高的にも世界一ですし、アメリカは一時、リーマン・ショック後、非常に財政赤字が膨らんだわけですが、また一気に縮小していると。政府が、よく破綻するというか、政府閉鎖になるとかデフォルトするという話ありますが、あれはよく御存じのように、共和党側が非常に財政赤字を急速に削減しようという余りに過激な主張をするのでいろいろもめるわけですけれども、基本的にはもう急速に赤字を、もう半減、この先どんどん黒字へ向かっていくだろうと思われます。  欧州は、非常に不景気で失業率も高いにもかかわらず、やはりユーロを守るということを、身にしみて重要なことが分かりましたので、財政赤字はGDP比三%以内と、あのイタリア等ですら遵守するという流れです。日本の場合は、債務残高も今や明らかに世界一悪く、単年度でも非常に飛び抜けて悪いという状況です。金融の方も、先ほど世界経済のところで述べたように、世界は引締めの方向に向かっている中で、日本だけ昨年から異次元の金融緩和ということで非常に激しくやっていると。  こうなってきますと、財政、金融共に短期的には景気刺激策、底上げですね、非常に大きなものとなっていますので、非常に好景気にその分なっているということでございます。一方、これは短期的なものですから、長期的には円安や金利上昇により長期的な経済成長力が衰退するという弊害をはらんでいるということでございます。  より重要なのは、短期と長期の話はもちろんそうなんですけれども、ここでやっぱり注意しなきゃいけないのは、景気は余り重要じゃないということをもう一度認識しなければいけないということです。そう言うとちょっと言葉的には過激なんですけれども、経済学的に厳密に言いますと、景気というのは景気循環でして、経済学の方も悪くて、いわゆる経済成長経済成長論という分野で長期的なモデルで議論し、景気の話は短期的な、いわゆる教科書的に言うとケインズ的なもので、短期に失業が物すごいあったときにそれをどうするかということの二つに全く分かれてそのまま議論しているので、じゃ日本の停滞を打破して一気に日本の活力を取り戻そうといったときに、この景気刺激の議論と長期の成長力を上げようという議論と一緒くたに議論をされてしまうと。  ここは非常に注意が必要で、分けて議論するべきじゃないかと。もちろん、短期に景気が悪いこともいいことではありませんから、良くできるんであればやるにこしたことはないんですけれども、現状でいえば、短期的な景気循環でいうと物すごくいいということです。政策的な底上げもあって物すごくいいということです。  ところが、よく言われる景気回復の実感がないとか、東京なんかはいろんな外食産業等ですと人手不足が顕著になっておりまして非常に厳しいと。人手不足で厳しいという、需要が少ないということではなくて、いわゆる供給サイド、サプライサイドが厳しい。ところが、地方へ行くとそうでもないね、若い人は出ていっちゃうしという話になったときに、これは別の問題で、地方における持続的な経済の長期的な成長力がずっと構造的に落ちてきていると。それに対する解決策がなかなか現実的にも、これは政策の問題というよりも非常に難しい問題ですので解決できないまま来ていると。それと一緒になっているので、そういう問題が起こりやすいということです。  ちょっと、スライドにはありませんが、一言だけもう一つ重要なことを申し上げておくと、いわゆる経済成長といったとき、成長戦略とかそういう政策の文脈で議論をされるんですけれども、GDPの伸び率が、GDP成長率が経済成長、まあこれは経済学上もそうなっていますけれども、これには注意が必要で、もう一言で言うと間違いだと思うんですね。  つまり、GDPというのは財政出動すればもちろん増えるので、財政出動をした分、GDP成長率はプラスに転じましたとかプラス三%になりましたと言いますけれども、これは持続できなければ意味がないわけで、いわゆるそれは経済学的に言うと潜在成長率とか潜在的GDP、あるいはよくデフレギャップなんという言い方をしますけれども、長期的に持続的な経済の巡航速度といいますか、伸びていける底力、これが我々がイメージする経済成長、それを上げるのが経済成長ということですから、短期に景気刺激するのは、一時的に萎縮均衡になって、つまり、みんなが総悲観になる、失業が町にあふれて社会不安にもなってしまうと。そうすると、みんな防衛が先行して、リーマン・ショック直後とか、あるいは昔でいえば大恐慌のときとか、そういうときは政府が代わって出動しないと経済が回らない、そういうイメージなんですけれども、現在の問題は、景気循環的にはいいと。そうすると、経済を回せとか、多少無駄遣いしても景気刺激のためにちょっと飲もうかというのは、実は、まあ悪くはないんですけれども、長期的な日本の問題を解決するのとはまた別問題ということを認識する必要があるのではないかと思います。日本の、ですから真の問題は、景気循環ではなくて成長力だということです。  賃金上昇の話も、これはもちろん賃金は上がった方が皆さんハッピーなわけですけれども、これは問題でなく結果です。つまり、まあ大企業であれば労使交渉みたいに伝統的にあるわけで、どっちが持つかと。短期に言えば、企業はお金使わなくて個人の方がお金使うのであれば、個人に金を回した方が目先は良くなるんですけれども、本当に大事なことは、企業も理由があってお金をためているわけで、長期的な投資戦略、海外への投資戦略等もあって、これは世界的に、日本企業だけじゃなくてアップルもグーグルも、よく御存じのように、世界のあらゆる優良企業は金をため込んで、銀行に頼らずに即刻一兆円、二兆円の企業も買収できるような体制でいると。そういう世界的な構造の中で、企業も結果的にお金をためている面もあります。  ですから、大事なことは、賃金は、どうしても賃金を上げたくなる、つまり、いい人材が町にあふれていて、ああいう人材をうちに雇ったらもっとうちはもうかるなということで人を採りたい、あるいはほかの企業の人を採りたい、海外にいる人材を高いお金を払って採りたいと、そういうことが国内で、いろんなところで起きるということの結果、結果としてみんなの賃金も高くなる。  つまり、労働者として、特に若い人の人的資本ですね、これは大学側にも責任があって、大学はろくなことをしていないんじゃないかという批判はまあ半分以上そのとおりだと思うんですけれども、そういうことが言われる理由というのは、もっといい人材で優秀な人材がどんどん育つ、潜在力的にですね、即戦力じゃなくてもいいと思うんですけれども、そうなってくれば企業も育てがいがあるし、お金をいっぱい払っていっぱい雇って長期的に育てようという流れになるんですけれども、そういう人材でないという、あるいはそういう余裕がないというところに問題があるのであって、そういう循環に回っていくということが重要ですので、目先お金を回して、ぐるぐる回せば長期的な問題は解決するというのとは大分違うのではないかと思います。  デフレというのも大分言葉が、もうこの十年間で経済学的に言うと大分意味が広がってきたなと思います。元々、経済学的にはデフレというのは物価だけのことでして、そうしますと、物価が原因で世の中悪くなるという考え方もあるので、まあそうなんですけれども、一般的には、デフレと言いますと景気全般というか、世の中の悲観、楽観も含めて、何となくもう経済調子悪いなというとデフレということになっています。そういうときは大体物価も、結果的に需要が弱くて下がってくるので、需要が足りないとか物価が下がると、それイコール景気は悪い、潜在的な、長期的な力も落ちていくと。これが同時に起こってきたものですから、それを全体をまとめてデフレだということで議論が一般になされてきていますし、今更それを、まあ定義は経済学とはちょっとずれてきているねということを言うことはそんなに意味があることじゃないんですけれども。  もう一回整理すると、そうしたときに、じゃ、物価だけ上げればいいのかというと、物価は、景気が良くなる、あるいは経済の底力が上がって人手不足になって賃金もどんどん払いたくなって仕方なくなる、その結果、賃金をもらう。そういう状況で賃金は上がっていますから、自分の賃金は将来上がるということを働き手も当然信じる。だから、将来に向けて、いい家があれば買っておきたいし、いい物があれば自分のためになる投資はすると。  そういう循環になるということなので、やはりデフレ脱却、結果として物価も上がってくるということにはなると思うんですけれども、まず物価を上げればということとは違うのではないかというのが私の意見です。余りちょっと、政策の誤りというと言い方が過激かもしれませんが、そういうところが非常に、政治の側だけではなくて、我々経済学者やエコノミストの側にもきちんと整理せずに議論してきた責任があると思います。  もう一度整理すると、構造的な問題としてはいろんなリスクが高まっているんじゃないかと。繰り返しになりますが、短期の面では非常に現在はすばらしいと。長期の面の問題だと。やっぱり財政というのが世界的には問題に続々なっていて、日本だけはたまたま国内金融資産があったり国債の買手がいるということで顕在化はずっとしてこなかったわけですけれども、顕在化してこないからといっていいというわけではなく、つまり、国債にお金を使うよりはいろんなものに民間で投資した方がもちろんいい。民間に、国内投資機会がなければ海外投資して、その収益所得収支で、経常収支、今年度赤字になる可能性も十分にあるわけですけれども、稼いで、その分国民所得になった方がいいと。そういうことがあるわけなので、財政政策としては構造的には非常に問題ではないかと思っています。  金融政策も、後で昨年アベノミクスと言われることから起きた事件について私の解釈を説明しますが、去年、一言で言うと、起きたことは、総悲観論を脱却したと。デフレマインド脱却という言い方は、私自身は反対なのでいろいろ言いますけれども、まあデフレマインド脱却でいいと思います。要は、悲観論を脱却して日本が自信を取り戻したと。そういう意味で、非常にアベノミクス、とりわけ金融政策が株価を上げることを通じて効果を発揮したということは事実だと思います。私自身は、その金融政策自体にはいろんな意味で反対しているところがあるんですけれども、ただ、結果として起きた、総悲観論、日本はもう駄目じゃないかという雰囲気一色だったものが、非常に、日本も捨てたものじゃないと、それどころかいいところいっぱいあるし、これからまだまだやれるというふうに、昨年、世の中の雰囲気が良くなったということが昨年良かった理由の大きな一つであり、これはすばらしいことだったのではないかと思います。  ただ、円安は、円安になると株は上がるという過去の実績といいますか経験則みたいなのがあるものですから、一時的には盛り上がるんですけれども、最近やっぱり賛否両論になってきたと。私自身は、日本の現在のステージからすると、円安よりも、今の水準よりは円が強くなった方がいいのではないかと思っておりますけれども、輸出企業には有利であることは間違いありません。  ただ、現在、輸出数量が伸びないということが問題になっていますが、これは当初から予想されたことでして、円換算の輸出価格が上がるだけなんですね。つまり、日本のものというのはすばらしいものですから、もう価格勝負する。例えば洗濯機とかそういうものは、日本で使うものですらマレーシア産とか海外産になっているわけです。日本で作って海外輸出するものというのは、ほとんどがどんな値段出してもどうしても欲しいという人がいたり、やっぱり日本のものが一番いいねということで日本の車を買うということですから、価格の問題ではないわけですね。  例えば、五万ドルで車を輸出しているときに、じゃ造るコストが四百万だったら、一ドル八十円だったら五万ドル掛かっちゃうから利益出ませんと。ところが、百円になると、四百万で造っていると四万ドルですから利益が一万になって、ああ、利益出たねと。じゃ、五万ドルを四万ドルまで下げるかというと、いや、五万ドルで十分欲しい人はいっぱいいて、五万ドルで一番売上げ、金額的にはいけると分かっていますから、下げる必要は全くないわけです。今まで利益なしで頑張ってきたけど、今度は一万ドル利益が出ると。じゃ、下請にも、ちょっと無理頼んでいたけどちょっと分けましょうとか、ボーナスで従業員も頑張ってもらったから分けましょう、そういう流れになっていくと。  だから、すばらしいことなんですけれども、これ、輸出数量、生産、そして雇用、あるいは設備投資に向かうかどうかというのは、ゼロとは言いませんけれども、そのままストレートに増えていくわけじゃないと思います。ですから、Jカーブ効果はこれから出るという意見もあります。それは、必ず出ない、一〇〇%出ないと言い切れるわけじゃありませんが、私は余り出ないんじゃないかなと思っていますが、意見分かれていますが、分かれている理由はそういうところです。日本のやっぱり構造変化が起きているので付加価値の高いものは出ていると。  円安のデメリットは、皆さんよく御承知のとおり、特に地方の内需企業、生活者にとってはコスト高です。経済学的に言うと交易条件の悪化という型にします。パソコンが上がっているのもそういう理由だということです。  デフレというのは、結果としてデフレ脱却できる、そのためには、じゃ、インフレにすればいいかと、そういうわけじゃなくて、インフレになるためには消費者の購買力が増える、あるいは労働者の力が上がるということで、交易条件の悪化と同じことで、消費者の力が増えていかなきゃいけないという問題です。  それで、ですから、賃金上昇というのは結果なので、下がれば生活苦しいですから、それは上がった方がいいんですけれども、じゃ、上げれば何かいいのかというと、これ持続的に上げるという構造にならなきゃいけないと。  賃金はなぜこれまで下がってきたかというと、企業が意地悪していたからというわけでもなくて、いろんな理由があると。これはバブル期までにちょっと雇い過ぎました、払い過ぎました、これはあります。硬直的な賃金コスト構造になっていた部分を、どうしてもグローバルで変化激しいですから、柔軟にするので、硬い部分がいっぱいあったわけですから過度に柔軟にしないと全体としてバランス取れませんから、ちょっと過度に柔軟にし過ぎたところがあります。  国際競争力の維持ということです。これは一橋の川口先生の議論が非常に優れていると思うので、私なんかが言うよりも、言った方がいいと思うんですけれども、あえて言えば、これ、消費者物価は意外と下がっていないんですね。ところが、GDPデフレーターというので見るとすごい下がっているんですね、日本のいわゆるデフレレベルって、すごい。これ、どういうことかというと、GDPデフレーターというのは生産ベースなので輸出価格とかはデフレに含まれない。つまり、企業が物を作るときに直面している物価というのがGDPデフレーターと考えればよくて、そうすると、国際競争激しくなりますし、海外で安い物を作りますからどうしても安くしなきゃいけない。じゃ、その分、国内産で作るのは賃金はそれに合わせて下げなきゃいけない。だからGDPデフレーターに合わせて下げていく。生産性上がっている分は上げるけど下がっていく。  ところが、国内消費者物価というのは原油の値段が上がっているのですごい交易条件が悪くなっている。これは円安と同じ効果なんですけれども、買うガソリンの値段が上がっちゃっていると。そういうので見ると消費者の生活物価はそんなに下がっていない。逆に言えばそうなんです。そのギャップがあって、物価よりも賃金の方が大きくこれまで下がってきたということなんですね。ですから、競争力を上げることによってしかないと。  つまり、実感なき景気回復って二〇〇三年以降あったんですが、あのとき、円安と原油高が起きたので、実際に同じ賃金もらっても、あるいは国全体で同じだけ稼いでも買えるものは減っていたわけです。エネルギー以外は買えるもの減っていたと。だから、GDPは伸びていたのに何か生活苦しいなと、何か景気いい感じしないなというのはそういうことです。人によっては今もそうだと思います。つまり、賃金上がっていなくてコスト上がっているところはそういう実感なんだと思います。  ですから、交易条件を良くするということが大事で、これは円安から円高にした方がいいと私は思っていますが、それだけではないです。ですから、エネルギーが上がったのなら、その分日本の製品の価値も上げて高いものを売ろうということがいいと思います。  自動車がすばらしいのは、一言だけ言うと、電機よりも国内で付加価値を多く積める。つまり、部品から労働力からもう全部、国内でいろんな付加価値を積み上げて全部造ったものが車になって出ていくわけです。ところが、家電製品とかいろんな電気機器というのは、いろんなパーツは海外で買って、日本だけで組み立てて、元々、相当でき上がったものを作っていますから、日本で生み出された付加価値は小さい。なので、これはやっぱり自動車、それは有り難いということがよくあるんだと思います。  ですから、ちょっと時間もなくなったのであれですけれども、一三年、景気良かったのは、世界景気良くなりました、政策も出動しました、アベノミクスはショック療法ですね、総悲観論からの脱却、ショック療法としては良かったと。ただ、これ三つとも全部、今年からはそうでもないなと。つまり、政策はある程度締めなきゃいけないし、世界経済もずっといいわけじゃないと、ショックも一度限りなんでということ。そうなると、やはり人に投資をして、人的資本を蓄積して給料が伸びるという展開にしていかなきゃいけませんねということです。  ちょっと時間も過ぎましたので、何かあれば後ほどということにして。  どうもありがとうございました。
  9. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、岩本参考人にお願いをいたします。岩本参考人
  10. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 岩本沙弓でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  大阪経済大学で現在客員教授を務めております。本日は、このような機会頂戴しまして誠にありがとうございます。不慣れでございますので、パワーポイントの資料を見ながら、ペーパーを読みながらの発表とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(資料映写)  日銀は物価安定目標二%を掲げておりますが、一般国民からしてみれば、ただ単にデフレから脱却し、インフレになればよいというわけではございません。御承知のとおり、同じ物価上昇でも、需要が物価を引き上げるディマンドプルインフレと、それからコスト高が物価を押し上げるコストプッシュインフレというものがございます。国民生活のためのデフレ脱却を掲げるのであれば、目指すは前者のディマンドプルインフレの方になるかと思います。  しかし、今、日本では国民生活の弊害にしかなり得ないコストプッシュインフレが、円安による輸入価格の上昇それから消費税の増税で発生しつつあります。平均給与などを見れば顕著ですけれども、この十数年、多くの国民、特に現役世代の所得は下がったままです。このまま物の値段だけが上がればスタグフレーションという状態になりまして、一般国民にとっては最悪のシナリオということになります。  この二十年弱、雇用の流動化に伴いまして所得はどうしても増えにくい状況が続いています。そうした状況下においては、せめて政府国民から所得を奪わない努力をしていただきたい。しかし、実際には、消費税という国民から直接所得を奪う政策が積極的に採用されております。何とか需要をつくり出そう、そのためには国民所得増を図り、分厚い中間層の維持に努めて安定的な経済成長をと考えているときに、それを妨げる消費税増税をするのはちょっと理解に苦しんでおります。  そこで、税の在り方を考える、これが国民生活にも財政の健全化にも役立つのではないかというお話をしていきたいと思います。  一般会計の税収の推移でございますけれども、これまで景気拡大期には税収が伸びております。財政再建を言うのであれば、順番としましては、景気が回復して需要が増加してきて企業収益が伸びたところで、まずは法人税で徴収をすると。次に、景気が所得に波及してきた段階で、所得税として徴収する。さらに、それが個人の消費行動へ確実に結び付き、物価上昇が見られる段階で、それでもなお必要であるという場合に最終消費者への徴税を実施する。これが安定した成長財政再建を効果的に進める手段であると考えます。現状はその順番がややおかしくなっていると言わざるを得ません。  こういうことを申し上げますと、いや、日本の法人税は高過ぎるんだという御指摘を受けるかと思いますが、国が決めた税率、つまり表面上の税率である法定正味税率、これ現在は三八・〇一%まで引き下げられております。この税率でも、二四%台の韓国ですとかイギリスに比べましたらまだまだ高いですけれども、実際にこの三八・〇一%の高い税率のままに大企業が法人税を払っているのかといえば、そんなことはありません。免税、補助金、それから控除制度などを利用する結果、実際に三〇%以上の法人税を支払っている大手企業さんはほとんどいないというのが、複数の専門家からの指摘があります。  それから、世界の潮流として租税回避を取り締まる動きが昨今顕在化しつつありますので、日本の法人税は高いといって放置しておいても、今後は外から見直しを迫られると、そういうことになるかと思います。そもそも論ですけれども、ここまでグローバル化した経済であるにもかかわらず、税制だけは国境があるというのはおかしな話でございまして、OECDは昨年、税源浸食と利益移転に関するアクションプランというものを発表いたしました。透明性を重視した租税条約などが今後結ばれていくことと思いますけれども、これは、現在低い率の法人税しか払っていない大企業にとっても決して悪い話ではございません。世界中でしっかりと法人税が納められるようなスキーム、これができ上がりましたならば、日本の法人税率、今の半分で、先ほどの三八%よりもうんと低くしても大丈夫だろうという指摘もあります。したがいまして、考えるべきは消費税の増税よりもこうした国際的な新しいスキーム構築の場にいかに日本が積極的に関わっていくかということかと思います。  消費税についてですが、消費税の納税者は事業者です。そして、売上げに掛かってくる税金です。つまり、その企業が赤字であっても黒字であっても、売上げがあれば必ず支払わなければなりません。消費者負担はもちろんですが、それ以上に事業者にとって非常に大きな負担となります。たかだか三%の引上げといっても一・六倍の増税です。これを機に体力がない中小零細企業が潰れることで新陳代謝が促されるという意見もございますけれども、それは我が国の税制度に免税措置や特例措置などが一切存在せず、全て公平であれば成り立つ議論です。しかし、そうでない以上、乱暴な指摘としか言いようがございません。  事業者にとって消費税負担、いかに大変かということについてですけれども、税項目別の滞納状況、国税における滞納額、最も大きいのが消費税です。滞納率は年々増加している傾向で、今や五三・五%、今回の引上げを機に一層滞納となるでしょう。滞納する業者を非難するのは簡単ですが、実質的に納税できない状況にあるわけです。  税の考え方の根幹に、憲法とも関わってくる点で応能負担がございます。つまり、税金を払える者が払うという税の原則を逸脱している、それがこの消費税ということになってしまいます。本来であれば、この滞納額の多さ、滞納率の高さから欠陥税制なのではないかという分析がされる必要があるわけですが、なぜかそうした議論は封印されたままとなっております。  二〇一五年十月には、一〇%へもう一段の増税が控えております。政府は、経済状況を見ながら実施の判断をするとのことですが、予算の前倒し執行、四月から九月に集中させる方針という発表がございました。短期的には、国内需要の下支えとなりまして、一〇%増税の判断基準とされる七—九のGDP、これも良い数字が見込まれます。秋以降にこの前倒し効果、剥げ落ちる可能性が当然あるわけですが、一〇%の増税だけが正式決定されてしまうおそれがあります。そうなりますと、二〇一四年はこの予算の前倒し執行によって、また、二〇一五年十月の増税までは駆け込み需要が再度喚起されることによって、二〇一五年度末までは何とか景気持ちこたえることになるかと思います。  しかしながら、増税の影響というのは、事業者が実際に納税する二〇一六年の春以降出てくることになります。しかも、二〇一四年、二〇一五年、二回の増税の影響がダブルで出てくるわけですから、二〇一六年の春以降、中小企業以下零細企業、個人事業の倒産が相次ぐことが予想されます。増税時期からはタイムラグを伴ってボディーブローのように日本経済に深刻なダメージを与える、そうした消費税の増税が果たして国民生活を豊かにするのか。  例えばカナダですけれども、一九九一年に消費税に当たる付加価値税、七%で導入しましたが、今や五%まで二度引下げを実施しております。増税一本やりの議論ではなく、景気に少しでも陰りが見えた段階では消費税の引下げもあり得る、政策に柔軟性を持たせることがまずは必要かと思います。  御覧いただいている図表でございますけれども、これは財務省が発表しております一般会計における歳出歳入の状況です。一般会計の歳出、年々増加しまして、歳入は減少している。この図表の形、称しましてよくワニの口が広がった状態と言われます。広がったままでは困るので消費税増税が必要だという論理なんですが、しかし、ここでよく見てみますと、ワニの口、広がったその起点、これは消費税が導入された一九八九年になります。さらに、中ほどで一段とワニの口が広がってしまったところ、これ九七年、三%から五%へ引き上げられた時点です。つまり、消費税導入からこれまでの二十五年、消費税財政再建には一向に役立たなかった、財源を確保しようにも消費税の増税だけではいかんともし難い、そういうことを消費税の歴史が証明しております。  何もここで、増え続けていく社会保障費、そのままにしておいてよろしいと、そういうことを申し上げているわけではなくて、消費税だけで財源確保をというその発想にそもそも限界があるのではないか。なぜ消費税は増税しても財源確保に至らないのか。その原因は、消費税の引上げとセットになってきた法人税、所得税の引下げが大きく関係していると言えるかと思います。であるならば、出ていくお金の見直しと同時に、消費税だけでなく所得税、法人税なども見直す必要がある、そういう俯瞰した議論が必要なのではないでしょうか。  海外では付加価値税と呼ばれている消費税ですけれども、今や百四十か国で採用されている税制度です。一九五四年にフランスで初めて体系的に導入されて以来、瞬く間に世界に広がっていった非常に新しい珍しいタイプの税金でもあります。  そんな中で、アメリカは唯一消費税、付加価値税の採用を見送り続けています。なぜアメリカ消費税、付加価値税を採用しないのか。これは税制が非常に不公平であると考えているためです。そして、アメリカが指摘する不公平な部分こそが日本経済を長年疲弊させてきた原因につながっていると考えます。  アメリカには州税という日本消費税に相当する間接税があるとおっしゃる方がおられますけれども、州税は通称名でございまして、正式には小売売上税と申します。小売売上税と日本消費税、これは全く違うタイプの税金でございまして、日本人の多くの方が自分の払った消費税アメリカの小売売上税のように事業者を通じてそのまま納税されるものだとちょっと錯覚をされているようなんですけれども、皆様御承知のとおり、実際には消費税、もうちょっと複雑な構造でございます。  消費税の場合、仕入れの段階で自分が支払った消費税、販売した段階で預かった消費税を相殺して納税する。しかも、こうしたことが生産、加工、卸、小売、全ての流通行程でなされまして、複雑になっている結果どうなっているのか。アメリカの公文書ではリベート、販売奨励金と書かれてありますけれども、そのリベートを輸出企業に渡すことが可能になります。このリベートについて、日本では還付金ですとか輸出戻し税など幾つか呼び方がありますので、ここではそのままリベートとさせていただきます。  御参考までに、この点について自民党の野田税調会長に確認をしたことがございます。事前にお配りいただいている参考人関連資料の中に野田税調会長との鼎談が入っております。七十ページ下段になりますが、世界中で付加価値税がスタートしたときから輸出業者に対する補助金的な色彩はあったとおっしゃっておられます。アメリカでも日本でも、税金に携わっておられる方であれば、消費税、付加価値税といえば輸出にリベートが付いてくるあの税金ねというぐらいに浸透しております。  このリベートの話をいたしますと、これは輸出製品をつくる際、国内で部品を調達した段階で国内の子会社に既に払った消費税を還付してもらっているだけ、海外消費者から日本消費税を受け取れない以上、還付してもらわなければ輸出企業は一方的に消費税支払うだけになってしまうと言われます。  しかし、この点についてなんですけれども、アメリカは、例えば企業課税特別委員会を設立しまして、消費税、付加価値税に関して第一回目の報告書を一九六九年十二月に大統領へ提出しております。同時期に書かれた米財務省の報告書の内容と併せて端的に申し上げますと、幾ら輸出企業さんが国内の取引先に対して消費税を払っているといっても、それは建前にすぎない、物の値段が一律である統制経済を採用しているならともかく、自由経済の下では必ず価格競争がある、値引きが日常的にされているところに消費税を上乗せしたといっても、それは売手からしてみたらば商品代金の穴埋めにしかすぎず、事業者から無理やり消費税だといって徴収したところで事業者が自腹を切っているだけ、これでは消費税ではなく、事業者の負担となる事業税ではないか、したがって消費税、付加価値税を採用する必要はないという結論を出して、いまだに踏襲しているということでございます。リベートは国内企業へ払った消費税分の還付だといっても、消費税は物価に埋没してしまう以上消費税を払ったことにはならない、にもかかわらず、消費税払ったのだとしてリベートを自国の輸出企業に渡すのであれば、それは自国企業の保護策であり、自由貿易に反するとしております。貿易相手のほとんどが今消費税、付加価値税を採用しておりまして、自国企業にリベートを渡しているためにアメリカは実損を被っているという認識です。  ちなみに、この消費税、付加価値税にリベートが付くということは、かつてガットの例外規定で認められておりまして、現在もWTOに受け継がれているために、国際ルールに違反するというわけではありません。しかし、WTOのこの例外規定こそ見直すべきだという意見アメリカ国内には強く残っております。さきに紹介したOECDのアクションプランと同様に、たとえ合法的であっても巨額な租税回避は見直すべきというスタンスです。  具体的には、中小企業庁というのがアメリカにございまして、そこの関連団体から、海外消費税、付加価値税による実損として二〇〇六年で日本円で約三十二兆円と試算が出されています。また、アメリカの通商代表部ですけれども、毎年、外国貿易障壁報告書というものを発表しておりまして、海外の付加価値税はアメリカにとって非関税障壁であるという位置付けをしまして、国ごとにその状況を列挙しています。  リベートの金額というのは、付加価値税率が高ければ高いほど多くなります。最近、このリベートでアメリカが最も問題視しているのは、一七%の付加価値税を採用している中国でございます。  我が国における輸出企業へのリベートの状況ですが、日本消費税収は一%で二・五兆円出てくる試算です。五%であれば十二・五兆円になるわけですが、五%の段階で年間の消費税収は十兆円前後にずっととどまってまいりました。差額二・五兆円が輸出企業へのリベートに渡されていたという計算です。今後、一〇%まで引上げとなった際に、単純計算で五兆円がリベートとして渡されるために、せっかく税率を上げても徴税額がかなり落ちてしまいます。  そこで、財政再建の側面からの提案ですけれども、最終消費者からどうしても税金を徴収したいと、財源の確保が急務というのであれば、消費税ではなく、アメリカで採用しているリベート機能のない小売売上税を採用すればよろしいということになります。そうすれば、八%の段階でリベート分浮きまして、年間四兆円ほどの徴税額が増えて財源の確保に役立ちます。  戦後間もなくは輸出主導の経済に依存せざるを得ず、輸出優位策が各国で採用されてきました。付加価値税はその延長線上にある税制度という位置付けです。昨今、円安が進んでも輸出増にほとんどつながっていない輸出企業が、生産拠点を国内に回帰する、あるいは国内の雇用を増やすといった動きもほとんど見られないことがその象徴ですが、輸出企業への過度の優遇策が今国内経済へ波及効果をもたらす可能性は極めて低いわけです。であるなら、何のための輸出企業へのリベートなのかをいま一度考える必要があるのではないでしょうか。  消費税価格に埋没してしまいます。しかし、輸出企業以外の事業者はきっちり納税をしなければなりません。結局、消費税とは名ばかりで、内需型の中小零細企業、個人事業、事業税の負担を多くすることになってしまいます。小規模事業主の破綻が相次げばグローバル企業に全てが集約しやすくなり、その方が経済効率はよろしいという発想が根底にあるとすれば、それは全くの見当違いです。経済効率も全くよろしくないことは、消費税導入から二十五年の日本状況、すなわち、一部を除いて景気は一向に上向かず、一般国民所得は下がり続け、閉塞感だけが漂っていることが雄弁に物語っております。日本の会社数でいえば九割以上、従業員数でいえば七割を占める中小以下零細企業を痛め付ける政策が採用されれば、経済全体が疲弊するのは当然の帰結かと思います。  かつて、中曽根政権下では、間接税の導入の際にアメリカ型の小売売上税を推進しておりました。支払う側の国民としては、小売売上税であっても消費税であっても同じ金額です。国内で払った消費税の還付をしてもらっているだけでプラス・マイナス・ゼロだというのであれば、小売売上税でも何ら問題ないはずです。複雑な事務処理上の手続もない小売売上税ではなく、どうして消費税にこだわる必要があるのでしょうか。  最後に、アメリカの財務省、四十年前の公文書を御紹介したいと思います。  どんな大企業も、ベンチャー企業として中小零細企業からスタートしております。黒字転換する前に消費税と称した事業税負担を課せば、せっかくのベンチャーの芽も潰れてしまう。ベンチャー育成のためにも、消費税、付加価値税を採用する必要はなく、法人税で十分であると言っております。アメリカではベンチャー企業が隆盛しているのは御承知のとおりですけれども、安倍政権が例えばベンチャー育成を掲げるのであれば、採用すべきは消費税の増税ではなく引下げになるかと思います。  社会に多様性があること、つまり、大企業、中小零細企業、小規模事業、自営業、小規模農家と様々な業態が存在することが実は社会の安定、経済安定にもつながる、大企業に全て集約した方が経済効率がいいのだという発想はおかしいと、そんなことを実はアメリカは四十年前に議論しております。  グローバルに活躍する大企業が多い日本だからこそ、世界的な税制度の改革にイニシアチブを発揮することが国内経済にとってもグローバル企業自身にとっても有効と申し上げました。その前の段階として内需を疲弊させる消費税制度の見直しが重要であり、それこそが国民生活を安定したものに、そして財政の健全化にも役立つものと考えております。  以上でございます。
  11. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  まず、各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず発言いただけるよう整理してまいりたいと思います。  質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようお願い申し上げます。  質疑及び答弁は着席のまま行い、質疑の際はその都度答弁者を明示していただきますようお願いを申し上げます。  なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるよう御協力のほどお願いを申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  西田昌司君。
  12. 西田昌司

    ○西田昌司君 自民党の西田でございます。  三人の先生方、ありがとうございました。  それで、ちょっといろいろ、今日は三人ですので質問がしにくいんですけれども、まず小幡先生に御質問しますが、先生のお話の中で、ちょっとこれ説明なかったと思うんですけど、七ページに、要するに、日本経済の真の問題、政策の誤りというところで、金融政策、実質的な財政ファイナンスであることが明確化、ただ国債の暴落はないというふうに書いておられるんですけれども、この国債の暴落はないというのはどういうことでおっしゃっているのかということですね。私もないと思っているんですけど、ちょっとそこの説明を聞きたいと思っています。  それから、最後に、必要な政策というのを、ここも説明まで行かれなかったんですけど、二十ページにありまして、目標、円高、まず財政赤字を削減させろと。そこで、要は財政出動を少なくしていくと。景気刺激策廃止で、社会保障、年金削減で生活保護対策ということで言われていまして、かなり大胆なことをおっしゃっているんですけれども、実はこういう小さな政府路線は結構小泉改革のときにやってきたと思うんですけれども、やった結果、かなりデフレになってしまったという認識を私はしているんですけれども、ちょっとその辺のところ、なぜこういう政策になるのかということを教えていただきたいと思います。  それから、岩本参考人には、消費税問題ばかりで、デフレの話がちょっとよく分からなかったんですけれども、私も消費税、どんどん、入れたときに、消費税はそれなりに、直接税、間接税、いろんな税制で必要だとは思うんですけれども、法人税とか所得税を下げ過ぎたなという気はしているんですね。その結果、やっぱりいわゆる高額所得者の方々のお金が政府の吸い上げで予算で配分されなくなって預金でずっと滞留していると。それがデフレの大きな原因の一つではないかなと思っているんですけれども、先生のデフレの話がなかったので、今言ったことも含めて、ちょっと御意見をお聞きしたいと思います。  それから、最後に山下先生なんですが、ちょっとTPPの話で、その結果、農業政策の先生のお考えは何となく分かるんですけれども、デフレ脱却とどうつながってくるのかというのがちょっとまだ、そこまで行かなかったのかどうなのか分かりませんけれども、それどうつながるのかというのが、教えていただきたいんですけれども、よろしくお願いします。
  13. 小幡績

    参考人小幡績君) 小幡です。よろしくお願いします。  国債暴落ですけれども、私自身は、「ハイブリッド・バブル」という本を昨年書きまして、それは国債市場の分析をしたものなんですけれども、国債危機が現状での日本経済における一番の危機、リスクだと思っております。ですから、国債市場を健全化というか、まともにすること、財政問題を少しでも改善することが一番政策的には重要だと思っています。  その中で、暴落しない理由は、暴落しないからこそ問題といいますか、国債市場自体が普通の金融市場としての機能を発揮せずに、価格がリスクを反映しなくなっておりまして、金融市場というのは価格がリスクを反映して決まるところに意味があるので、そこの価格付けがリスクやいわゆるファンダメンタルズを反映しないということであれば、国債の本当のリスクを反映しないのであれば余り意味はなくなるんですけれども。  ですから、現在の国債市場を見ますと、日本銀行が何としても買い支えるという構造ですので、今後もし国債価格が暴落するようなことがあれば、それはまず一義的には日銀が金融市場の混乱を抑えるために買い支えるでしょうし、財務省、財務省というそういうプレーヤーの分け方が正しいかどうか分かりませんが、全ての関係者にとって今国債暴落されるのは非常に困るので、全力で止めると思うので、結果的に暴落させることはないと思うんですけれども。  それはどういうことが起きているかというと、せっかく日本に個人金融資産、あるいは日本の金融資産千五百兆、六百兆というものがありながら、それを国債市場に寝かしておいているわけで、それは付加価値を基本的には余り相対的に言うと生まないと。民間投資政府投資とどちらが効率的かという本当は議論があるところかもしれませんが、現状でいうと、平均で見れば少なくとも民間投資の方が付加価値を生み出すというふうに一般的には思われていると思いますので、その分、資金が効率的でないセクターにたまってしまっていると。その結果、日本成長力が落ちているというのが認識です。  私は、もうちょっと過激な言葉で、国債市場の安楽死みたいな言葉を使ってはいるんですけれども、そういうことで、国債市場が暴落しないからといって、じゃ国債を幾らでも発行したら大丈夫なのかというと、まあ破綻しないという意味では大丈夫なんですけど、日本経済にとってプラスかというと、どんどんひずみが大きくなってマイナスだという認識です。  円高については賛否両論あると思いますが、小さな政府の話だけすれば、小さな政府というか、現状非常に、社会保障政策が率直に言って空約束といいますか、過去にコミットした政策がやっぱり維持できなくなってきていると。あるいは、維持できないことがある程度予想されていながらこのままずっと来てしまったのが、現状どう見てもやはりその財源が足りなくなってくることが明白になってきたので何かしなきゃという状況だと思っています。  じゃ、よく消費税を三〇%にしないと足りないとか、三〇%でも足りないというんですけれども、三〇で経済がうまくいくとは思えないので、現実的にいうと、やっぱり社会保障は何かカットしなきゃ始まらない、増税もある程度しなきゃいけない、歳出もカットしなきゃいけない、経済成長ももちろん重要だと。それを全部やれることを全力でやって、やっと長期的には財政持続可能ぎりぎりじゃないかなと思っていますので、大きな政府、小さな政府で、極端に小さな政府がいいと思っているというよりは、財政あるいは国債市場を長期的に持続可能にするためには今やられていることの全てを加速しないと間に合わないのではないかという認識だということです。  以上です。
  14. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 岩本でございます。  消費税の話を重点的にしましたのは、やはりその失われた二十年というのがつまり消費税の歴史と重なっておりますので、やはりここの部分考えないというわけにはいかないかと思います。したがいまして、消費税の影響はかなり実体経済に大きかったのではないかなと思っておりましたので、本当の回復を考える際には、やはり税制というところも一つ考える必要があるかと思っております。  それから、先ほど御紹介しましたように、OECDでもう既に、国際的な法人税一律にした方がいいんじゃないかとか租税回避の話がにわかに出てまいりまして、非常に速いスピードで今進んでおります。二〇一四年、二〇一五年には具体的な案なんかが出てくるのではないかと言われておりますので、やはりそういう世界的な潮流に日本が乗り遅れるというのも損でございますので、そういった面も併せて考えていく必要があるのかなと。討論でも申し上げましたように、それが決して大企業にとって悪いニュースではございませんで、皆さんでしっかり税金を払えば、高い税率ではなくて低い税率でも大丈夫なんだと、こういうことで、安定した財源を各国とも確保できるということで、非常にいい方向ではないかなと思っております。  それから、具体的にどうやってデフレ脱却していくかというか、国民生活の中で安定した経済成長をという部分なんですけれども、経済産業省が、前月だったと思いますけれども、グローバルニッチトップ企業百というのを発表したかと思います。これ何かといいますと、ニッチ分野でグローバル市場で高いシェアを誇っている、こういった企業を百列挙いたしまして、すばらしい技術力を日本も持っているんだよということを発表しておりました。  ちょっと間違いがないように手元のメモを読ませていただきますけれども、例えば香川県にある会社ですけれども、水族館の大型のアクリルパネル、これ世界シェア七〇%とか、それから東京の本郷にある会社ですけれども、杉田クリップというのを作っておりまして、これ脳動脈瘤手術のクリップに使うんですけれども、世界シェアが五〇%、あるいは、福井県にありますけれども、視力補正の高屈折レンズというのを作っておりまして、こちら世界シェアが九割といったところがございます。  決して大企業さんではないんですけれども、地方の中小企業さんで非常に頑張っておられるところがありますので、こういったところは、先ほどの小幡先生の御指摘のとおりなんですけれども、高付加価値、高品質で、グローバル化でブランド化に成功しているという企業でございますので、やはりこういった企業を応援していくのが非常に有効かなと思っております。  そういう面においても、やはり消費税、事業税ですので、こういったところの負担、大きくなってしまうので、せっかく頑張っておられる中小企業の方たち、もっと頑張っていただきたいので、消費税の見直しが必要かなと。  キーワードとしては、ハイパーローカルと我々の仲間内では言っているんですけれども、やはり地域活性化、地域ごとの頑張っている企業さんをベースにして地域が活性化して、ボトムアップしてつくり出していくような需要増と、そういった企業さんに雇用も確保していただいてと、そういうイメージを持っております。
  15. 山下一仁

    参考人山下一仁君) TPPデフレの関係なんですけれども、二つ申し上げたいと思います。  最初の点は、実は三枚目の私のその資料の中にあるんですけれども、三枚目の上の方です。ページが消えていますけれども、五ページのところなんですけれども、その真ん中デフレ論というのを書いております。  よくTPPで、TPPが問題だという人の中に、関税が下がって安いものが入ってくるとデフレになるんだと、デフレを更に加速するんだという議論がありました。ところが、日本の場合には鉱工業製品の関税は既にほとんどゼロかなしですから、幾らその関税を、ゼロのものをゼロにしたからといって輸入が増えるというふうなことは余り期待できない。更に言うと、食料品、農産物が、高い関税がなくなって農産物が入ってくるかもしれません。だけれども、農産物、食料品で、いわゆるデフレ論というのは、将来物価が下がるだろうと思うと買い控えが起こる、したがって需要が減るので国内経済にマイナスの影響が起こると、こういうふうな議論がデフレ論だったわけでしょうけれども、食料品の場合には、将来、来年、米の値段が下がるからといって今年米を食わずに生きていけれるのかということですので、全くその食料品についてはデフレ論とは関係ない世界だというふうに思います。  そういう意味で、TPPに入るからといってデフレが加速される、そういうふうなネガティブな議論は、それは間違いではないかなというふうに思っております。  もう一つですね、先ほど小幡さんもおっしゃったように、いかにして国内生産性を上げていくかということが重要でございます。国際経済学を勉強した人間として申し上げると、国際経済学の中心の概念は、ザ・タームズ・オブ・トレードです。交易条件です。交易条件をいかにして良くするか。したがって、小幡さんもおっしゃったように、実は円安よりも円高の方がいいんです、そういう観点からするとですね。  その交易条件の一番の基本的な考え方というのは、いかに少なく働いていかに多くのものを買うかということが国際経済学の中心的な概念ですから、そのためには、いかにして国内生産性を上げていくか。そのためには外国に輸出したり、あるいは外国から投資を受け入れたり、あるいは外国に投資をすることによって外国の技術等を国内産業の中に取り込む、そういうふうなことがやはり必要なんだろうと思います。  そういう意味で、実体的な経済を改善させる、全要素生産性という言葉もあるんですけれども、そういう意味で、国内経済全体の成長率を上げていく。このためにはTPPというのは絶対必要なものだというふうに私は思っております。
  16. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  大塚耕平君。
  17. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 民主党・新緑風会の大塚耕平と申します。  今日は三人の参考人の皆様方、本当にありがとうございました。山下さんと小幡さんは従前から大変お世話になっておりますし、考え方は私ほぼ一致しておりますので、大変改めていろいろ勉強させていただきましたし、岩本さんにおかれては、新たな視点を御教示いただいて、本当にありがとうございました。  もう一分ぐらいしゃべっていると思いますので、あと三分ぐらいしゃべって、その中でそれぞれに一問ずつ御質問申し上げますので、二分ぐらいずつお話しいただければ幸いであります。  まず山下さんなんですが、二十七ページで、農業は衰退するのに農協は繁栄するということで、ここは御説明にならなかったんですが、ここは本当に重要な問題でありまして、農業は発展させたいとみんなが思っているわけですね。しかし、なぜか発展しないと。原因はどこにあるかということで、農協改革、これから今の政府・与党も一生懸命やるということのようなので期待はしているんですが、独占禁止法に独占をしてもいいという独禁法の例外を認められている一つ農協であるわけであります。  農協ももちろん重要な機能を果たしてきたと思うんですが、一般論として、独占というのは、ある一時期までに何かの問題を解決したり、公益性のある事業をやるために許容されることはあっても、ある時期を超えると独占というのはデメリットの方が大きいわけですね。だから、まさしく農協改革が必要だと思うわけであります。  まさしくここに書いてあるようにいろんなことができるんですが、もう冠婚葬祭から旅行代理店まで何でもできるわけですね。もし日本の金融機関が冠婚葬祭や旅行代理店やろうなんていう議論になったら、これもう大論争になると思いますが、現に農協はそういうことができる。  まあ、その是非は別にして、山下さんには、農協改革についてどうあるべきなのかということについてお伺いしたいと思います。そして、その結果として農業が発展すればデフレ脱却につながる成長産業になると思いますので、是非そういう観点で一点お願いします。  それから、小幡さんには、資料の七ページ、先ほどの西田委員の御質問に私もお答えする形で質問をさせていただきますが、まさしく実質的な財政ファイナンスで国債暴落はないと。これなぜかというと、西田さん、二〇〇六年から七年の竹中さんと福井さんのときの日銀の金融緩和は、日銀のバランスシートの国債の残存期間は半年だったわけですよ。だから、ある時期が来たら自動的に緩和は解消されるんですが、もう今その残存期間が七年とかになっていますから、これ多分出口はないんです。七年になった残存期間の国債を償還が来るまで持ち続けるしかないので、小幡さんがおっしゃる国債暴落はないということで先ほどの御説明になったんですが。  そこで小幡さんにお伺いしたいのは、せんだって私、予算委員会で安倍さんに金融抑圧のことを質問して状況を御説明したんですが、それなりに深刻に受け止めていただいたと思うんですが、つまり、国債暴落はないという状態をあと七、八年続けるということは、その間の金融抑圧で国民の皆さんの逸失金融収益というのが膨大な金額になるわけでありまして、これは必ず消費の足を潜在的に引っ張るんですが、目に見えないですからみんな認識できないんですね。この金融抑圧の問題をどう考えていらっしゃるのかということを小幡さんにはお答えいただきたいと思います。  最後に、岩本さんには、岩本さんの資料の十三ページなんですが、米国でこういうことが言われていたというのも大変参考になりました。その上で、確かに、日本では消費税導入の頃から農業や自営業の衰退が加速をしたというデータと確かに整合性はあるような気がするので大変興味深い御指摘なんですが、一方、消費税とはちょっと違う付加価値税を導入しているヨーロッパでは、日本よりもベンチャーであったり自営業も農業も発展しているんですが、ヨーロッパについては付加価値税を導入して、かつ日本状況のようにはなっていないという点について、どういう御見解でいらっしゃるのかということについてお伺いしたいと思います。
  18. 山下一仁

    参考人山下一仁君) まず、農協の改革なんですけれども、二十九ページに書いていること、まあこれも全てじゃないんですけれども、一つ御紹介したいと思いますけれども、おっしゃっているように、農協は独占禁止法の適用除外になっています。ただし、農協は生協と違いまして准組合員という、その地域であれば誰でも組合員になれる、ところが、利用できるんだけれども農協の意思決定には関与できないと、こういう組合員制度を持っていますから、実は独禁法の二十二条の適用除外の要件を満たさないんですね。したがって、ここに書いてありますように農協法九条で独禁法二十二条の要件を満たすというみなし規定を置いて、これを独禁法の適用除外にしているということなんです。  常識的には協同組合というのは大企業に対抗するための小さな組織ですから、それは独禁法の適用除外してもいいだろうということなんですけれども、前のページにありましたように肥料については物すごい内外価格差があるんですけれども、実は農協のシェアは八割、農薬については五割とか六割とかですね、そういうふうな極めて大きな独占企業体になっていますから、その独占企業体に対して独禁法の適用除外を認めるというのは、やはり問題ではないかなというふうに思っています。  そうすると、何ができるかというと、農協法九条を廃止するというのが一つの提案としてあり得るんだろうと思います。農協法の九条を廃止をもし提案すれば、農協はどういうふうな対応をするのか。准組合員制度を廃止するというのも手だてです。准組合員制度を廃止して独禁法の適用除外を受け続けるのか、あるいは准組合員は維持して、准組合員というのは金融の住宅ローンとかの融資先ですから極めて重要なものですから、今は准組合員の方が正組合員よりもはるかに多くなっていますから、准組合員制度は維持して独禁法の適用を甘んじて受けるかと。そうなると、全農とかそういうふうな独占的な支配力は弱まるということになると思います。  いずれにしても、農協法の九条の廃止を提案することによって相当のことが変わるんではないかなというふうに私は思っています。
  19. 小幡績

    参考人小幡績君) 大塚先生に何か加えることは余りないんですけれども、金融抑圧といいますと、不必要というか、本来あるべき状態よりも金利がすごく低くなって、その状態が長引くと何が問題かと。  そうすると、お金預けた方の利子がもらえないと、お金借りる方は安く借りられて、これ所得移転で、預けた方は損して借りた方は得するという、それがあるんですけれども、一番の経済学的な問題は、先ほどもちょっと申し上げましたが、資源配分がゆがむということが一番問題なので、金利が低過ぎると、もうかる企業ももうからない企業もどっちもお金が借りられるので、もうからない企業で効率が悪い企業もずっと残っちゃうと。かつてはゾンビみたいな言い方されましたけど、それで競争が健全に起きなくなって効率がどんどん悪くなると。強い者がきちんと勝って、いっぱい人も雇えるし、お金を預けた方も得するという世界から、みんなが生き残るんだけど効率が物すごい悪いという状態になるということが一つと、異時点間での無駄が起きると。つまり、本来投資すべきでないのに、低い金利なので、とりわけ金融投資的なものが非常に過度に、簡単に言えばバブルですけれども、ということになると、将来低金利維持ができなくなった瞬間にそれが全部はじけるので反動が大きくなる。つまり、将来へ向かって有効なものだけ投資すべきなのに、不必要なバブル的な投資を実物でも金融でも行ってしまうので将来の反動が物すごい大きくなると。この二つの問題だと思っています。  以上です。
  20. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 欧州との違いということなんですけれども、例えば、お配りしております資料の十二ページになりますけれども、ベンチャー企業投資額というのをOECDが発表しております。これは二〇一二年の段階のデータなんですけれども、やはりベンチャー企業投資額、一番大きいのは断トツでアメリカということになっておりまして、実は二位が日本でございます。三位がカナダということで、アメリカの場合は消費税、付加価値税〇%、日本は五%、カナダ五%、そのほかのOECD各国は二〇%前後の付加価値税採用しておりますので、ベンチャー企業投資額はぐっと落ちているという状況がございます。したがいまして、やはり付加価値税、消費税、〇%あるいは低い方がやはりベンチャー企業にとっては非常に助かるのではないかというような推測ができるかと思います。  それから、欧州ですけれども、先ほど小幡先生から御指摘ありましたけれども、今欧州、債務危機はちょっと落ち着いていますけれども、付加価値税をそもそも採用しましたフランス、債務危機に陥っているような状況でございますので、やはり消費税、付加価値税だけでこういう問題クリアにするというのはちょっと限界があるのではないかなというふうに思っております。  以上です。
  21. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、石川博崇君。
  22. 石川博崇

    ○石川博崇君 公明党の石川博崇でございます。  三人の参考人先生方、今日は大変貴重な、また興味深いお話、ありがとうございました。  端的に私から御質問に入らせていただきたいと思います。私からは、小幡先生と岩本先生に御質問させていただきたいというふうに思います。  小幡先生のお話の中で、今のアベノミクス、景気の循環と成長力というのをきちんと分けて考える必要があるという御指摘、大変興味深く拝聴させていただきました。  その中で、十一ページ以降、政府による賃上げ要求はナンセンスであるということ、それから、賃金低下の理由について指摘された上で、解決すべき問題として、日本の労働者の付加価値を高めるというふうに指摘をされております。  先ほど、西田先生からの御質問にはっきりお答えがなかったのかもしれませんけれども、後半部分で、先生触れるお時間がなかった、必要な政策というお話が余りなかったかと思いますが、この付加価値を高めるという点で必要な政策ということをどういうふうに考えていけばいいのか、二十ページのパワーポイントの中からだと必ずしもはっきりと読み取れないなというふうに思ったので教えていただければというのが一点と、それから、二十二ページ以降の、ジェネレーションギャップについて書いておられますが、この点について触れるお時間がなかったかと思いますので、簡単におっしゃっていただければと思います。  それから、岩本先生に対する御質問でございますが、消費税についてるる御指摘を賜りました。  消費税と、それから法人税、所得税、一緒にやはりこの財政再建というのを考えていかなければならないという問題意識は私も共有させていただきますけれども、一方で、よく言われる議論としまして、景気の状況に応じて、社会保障に充てる財源として考える場合、より安定的な財源で賄う必要があるのではないかということについてどのようにお考えか。法人税、所得税はリーマン・ショックのときに大きく落ちたこともございますが、そういった点、今後の少子高齢化に対して安定的なやはり財源を獲得していく、確保していく必要があるのではないかということについての御意見をお聞かせいただきたいことと。それから、非関税障壁としての消費税ということで、リベートのことをるるおっしゃられて、アメリカで取られている小売売上税の方がよりベターなのではないかという御意見だったかと思いますが、この小売売上税ということにしたとしても、やはり最初に先生がおっしゃられた景気の腰折れとか、そういった部分は余りクリアできることにはならないんではないかなというふうに思いますが、この点についてお考えをお聞かせいただければと思います。  以上でございます。
  23. 小幡績

    参考人小幡績君) お答えします。  労働者の付加価値を高めることが何よりも重要だと。これはどうしたらいいかというと、本当に難しいと思うんですね。政策でできることはやっぱり限られていると思います。即効性のあるものもないと思います。だから、手間暇を掛けて人を育てるということ以外なくて、これは企業でも国でも同じことだと思います。  そうなってくると、我々を含めた初等教育から高等教育まで学校の役割は非常に大きくなりますし、八十五歳まで生きるとしますと、人生五十、六十になってから仕事の経験を踏まえてもう一度学び直し、もう一度その人的資本を、学校で基礎力的なものを積み直してそれで実践力をまた得ていくと、新しい働き方ということになっていかざるを得ないと思います。  そういう大きな変化の中で政策は何ができるかというと、本当に限られていますが、ここで後半で書いたものが、直接結び付かない、この趣旨をちょっとうまく書けていないんですけれども、どういう趣旨かというと、政府にできることは限られているので、むやみに短期にお金を使って財政破綻へ向かうよりは、長期の息の長い、これから長くお金が必要になってくるので、できる限りまず財政を健全化して、本当に必要なとき、景気刺激が必要なときにお金の余地を残しておく。  長期の、育てるというのは、お金じゃなくて手間を掛けなければいけませんから、学校でいえば、要は、いい先生がいない、足りないわけですよ。だから、まず、いい先生を育てなきゃいけないし、その仕組みをやらなきゃいけない。そうすると、文部省も問題いろいろあるとか、大学もいろいろ問題あります。こういうのを直していくということから。そうすると、あとは、いわゆるモンスターペアレンツは小学校だけじゃなくて大学にもおりますので、こういうのでいうと社会的な価値観の問題。もう話は広がってしまいますので、できることは本当にやれることから一つずつやるんですが、そのためにも、将来お金が必要なときのために、できる限り財政破綻がすぐ起きるのを避けるということを望むという意味です。  ジェネレーションギャップのところでも、まあこれは余計な補論ということで今日、じゃ載せるなと言われそうなんですけれども、余り話すつもりなかったんですけれども、アベノミクス、いいところも悪いところもありますし、私は割と反対で問題点を指摘させていただいてきておりますけれども、一つ気になるのは、やっぱり古い世代といいますか、私なんかはぎりぎり古い世代へ入っているかなと思うんですけれども、団塊あるいは団塊ジュニア以上の正社員、終身雇用もう当然というような世界、ホワイトカラーはですね、の世界ではそうなんですけれども、やっぱり現実、二十代の学生見ていると全く違いますから、年金もポータブルじゃないと問題になりませんし、一生勤めるということはありません。仕事をいろいろしながら自分でいろんなものを学んでいくと。そういう現実に対応できていないというか、感覚もないのかなという感じがありまして、そういう形で政策を余り強力に打ち出していくと、下半分といいますか、全く響かないですし、関係ないなという感じがどんどん強まるのは問題かなという点で指摘させていただきました。  ただ、私などに、ちょっとそこで、じゃ何をやったらいいかと。本とかでは、高等専門学校、日本でいわゆる有力と言われている高専、安倍首相なんかはその輸出しようというお話を報道されていますけれども、輸出する前に国内にもっと高専を増やして、せっかく日本で、まあ唯一と言ったら大げさかもしれませんが、成功している学校制度あるわけですから、もっといろんな分野に、工業だけじゃなくて増やしていったらいいのではないかという提案はさせていただいています。  ちょっと長くなりましたが、以上です。
  24. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 御質問いただいた点なんですけれども、社会保障費などの財源を安定させるために消費税の場合は安定財源になり得るんじゃないかということで、それは間違いないんですけれども、安定財源を確保した結果、社会全体が不安定になってしまうということであれば、これは元も子もないわけですので、全ては、やはり物事というのはあんばいですとか調整とか、そういうところの具合を見てからということになるかと思うんですけれども、余りにも過度の財源確保のため、安定財源を確保のためにといって重点的に消費税ということになりますと、結局は社会全体が不安定になって、それから社会保障費がかえって増えてしまうというようなこともあるかと思いますので、やはりこれは全体のバランスかなというふうに考えております。  それから、三ページでも申し上げましたように、景気が拡大期には必ず税金というのは、税収は上がっておりますので、やはり景気の波に合わせて、どこの税金で依存していくかというのは割と柔軟性を持って考えていくべきなんじゃないかなというふうに思っております。  それから、小売売上税ではどうだろうかということを申し上げまして、小売売上税ももちろん完璧ではございませんし、最終的な一般消費者負担が非常に大きいので、これをしてくれと強硬に言っているわけではないんですけれども、やはり負担が大きいという点がありますから、そういう場合には、やはりその法人税の見直しですとか所得税の見直し、それから出ていく方の見直しも併せてバランスよくあんばいを見ながらということかと思っております。
  25. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、山田太郎君。
  26. 山田太郎

    山田太郎君 みんなの党の山田太郎でございます。  山下先生、小幡先生、以前からお世話になっておりまして、またお会いできるのは光栄でございます。岩本先生も今日はありがとうございます。  まず、小幡先生からお伺いしていきたいと思いますが、この調査会を通じて私も最近感じるのは、デフレのときはこういうふうにしてデフレが問題だと言い、インフレのときは多分インフレが問題だと言うと。とどのつまり、もしかしたら物価と賃金が合っていないんじゃないかなと。  今のデフレ、先ほどの小幡先生の話によれば、物価の下がり方というのは小さいと、一方、賃金というのは下がってきちゃったという中で、このバランスの問題なのかもしれないと。インフレの場合は逆もありきでありまして、物の値段が急激に上がって賃金が追い付いていかないと。この差が結局、政治的には人の問題になってきますので、大きな結果として見えてくるんではないかと。  そうなってくると、ちょっと突っ込んで、じゃ、何でデフレ調査会がと言われちゃうかもしれないんですけれども、必ずしもデフレが悪いことなのかどうかというのは、だんだん調査会参加していて分からなくなっちゃったところがありまして、その辺を少し解いていく必要があるのかなと。そう考えると、賃金だけの問題でもない、物価だけの問題でもないというようなところで少し御意見をいただければなと。逆に言うと、もしかしたら物価がうまくスライドしていない。これ、よく、私も経済学やっていましたので、価格の下方硬直性というのもあるかもしれませんし、もしかしたらいろんな方々がいろいろいて物価を下げないようにしているのかもしれないと、こういうこともあるかもしれませんが、ちょっとその辺のメカニズムを教えてもらえればなと思っています。  もう一つ小幡先生に、二点目お伺いしたいのが、人材の観点でもって賃金が上がらないということですが、若年の労働者というのは完全に減ってきているわけだと思います。そうなってくるとそれは貴重になってくるから、逆に言うと、賃金は上げないと人が足りないということになるのかどうか。バランスも崩れてくれば生産性も高めなきゃいけないということですが、私も小幡先生と同じように実は大学の教官、先月まで十四年間、東大でゼミを持ったりとか東工大で教授やったりして教えてきたんですが、一番変わらないのは大学でありまして、十年間カリキュラムが変わらないのが東大だったんですけれども、そこから出てきた学生が今までのいわゆる学生よりもはるかに生産性が高いことができるような人材輩出の構造には決してなっていないと思っているんですけれども、その辺り、是非ちょっと、その人材が減っていく、労働生産性が減っていく中で、実は賃金というのはどう関係していくのか、その辺りを教えていただきたいと思います。  時間がなくなるといけないので、質問を全部先にやりたいと思うんですが。今度山下さんには、一つお伺いしたいのが、農政、二・二兆円ものお金を農水省、予算で付けています。私も政治家になってびっくりしたのは、経済産業省というのはこれだけ中小企業を支えているにもかかわらず、予算がどれぐらいかなと思って見たら八千億円ぐらいで、うちエネ庁は四、五千億ですから、政策投資予算って三千億円ぐらいしかないんですよね。農業に二・二兆掛けていて、これだけ人口で中小企業が七割、八割だと言っておいて、そこに三千億円ぐらい、もちろん補正で今回三千億掛けたんで結構ですけれども、足しても一兆以下なんですね。アンバランスではないかなというのは非常に思うことがよくありまして、これはやはり財政再建という観点からいくと、適正規模があるのかもしれないと。ただ一方で、自給率向上のためにお金は必要なんだよという議論が続いちゃっているんですが、どの辺が落としどころなのかということが、私も農林水産委員会等を含めてやってきてさっぱり分からなくなってきたところもありまして、元農政官僚だということもありますので、その辺の話をひとつ教えていただければなと。ちょっとマクロでアバウトな話になるかもしれませんが、お願いします。  岩本さんには、今ちょうどOECDのグリア事務総長が来ていらっしゃいまして、新聞報道なんかでも大きく伝えられていますが、彼は、消費税日本は一五%以上にするべきだと、法人税を下げてということで、目標は、安倍さんも第四の矢、つまり財政再建をもっと積極的にやるべきだと、こういう論でかなり言っていらっしゃいまして、昨日も懇親会があって私も出させていただきましたし、今日もあるみたいで行ってきますけれども、OECDなんかはそういう発想。何となく、彼はメキシコ人ではあるんですけどヨーロッパ的な発想なのかなというふうには確かに思いまして、この辺は大塚さんの方も質問をされていたと思いますが、考え方がそもそも違うのかどうか。  西田さんもいて、まあ西田さんは多分大きな政府ということで、政府の関与をということですが、私は立場違っていて、小さな政府ということで、その辺は違うんですけれども、欧州型それから米国型というのはあるのかどうか、その辺りでの論争なのかどうか、いや、そうじゃないんだよというような話、ちょっとその辺が分かればなと思って質問させていただきたいと思います。  以上です。
  27. 小幡績

    参考人小幡績君) 山田先生、ありがとうございます。  前半部分は私の今日のメッセージの一番のポイントの一つなので、ちょっと繰り返しにもなりますがお答えすると、やはり物価は消費者物価なので、買うものの値段、これはやっぱりエネルギーを含めて輸入のものがどんどんウエートが上がっていきます。それで、円安が進み、あるいはエネルギー価格が上がる中で、いわゆる交易条件が悪化して買えるものが減っていったと。  その一方で、輸出するものは昔と、相も変わらずと言ってはあれなんですが、半分は同じようなもので、競争が激しくなれば更にコストダウンをして頑張ろうとする。そうすると、付加価値を上げずに同じような土俵で価格で勝負したものを維持している以上、どこで調節するかというと、賃金を下げざるを得ないと。つまり、生産サイドの競争構造をそのまま反映したのが賃金構造になってしまったと。これは輸出関連が中心になると思いますけれども、その結果、物価と賃金のギャップが出てきたと。  じゃ、どう解決するかというと、やはり労働力に付加価値を高めて付加価値の高い製品を作る。まあまあ、先に付加価値の高い製品を作ってそれに応じた労働力ということかもしれませんが、いずれにせよ、付加価値を高めるということに尽きるということだと思います。  ですから、デフレ自体は賃金が上がっていればむしろ歓迎すべきことですから問題ないと。問題は、賃金がそういうふうにどんどん弱くなっていって、だけど物の値段がそんなに下がらない、そうすると買えないからますます需要も減って、そこから更に物価が下がると、この循環が悪い形のデフレとして起きてきて批判されてきたのだと思います。  人材は、初等教育の方が私はより重要だと思いますけれども、長期的視野でやっぱり大学を含め教育機関を立て直す必要はあると思います。ただ、即戦力というよりはもっと深いもので、応用力といいますか、現場に一回連れてきたときにそこで吸収する力、好奇心や伸びる力ですね、それを蓄えるためのものだと思いますので、必ずしも実践力、あしたから使えるものを学校で身に付けさせるというのは、むしろ企業の現場でやった方が効果的だと思いますので、それに堪え得る好奇心とか柔軟性とか、そういうものを学校で、もっと深いもの、教養を含めてやるべきだというふうに思っています。  以上です。
  28. 山下一仁

    参考人山下一仁君) 私も昔、農水省の予算と経産省の予算を比べてみて、とんでもない差があるなというふうに思ったんですけれども、額の問題というよりは、農林省の予算がどういうふうに使われているかというのが重要だと思います。実は、私も農水省で課長をやっていたときに、自分の課の予算もなかなか理解できない、隣の課の予算だと全く理解できないわけですね。つまり、細かい予算がぐじゃぐじゃぐじゃぐじゃあって、本当に果たしてそれが役に立っているのかというのが全く分からない構造になっているというのが事実でございます。  それと、世界的に見ると、日本の場合には、先ほど図で示しましたように、消費者負担農家を保護しているわけですね。アメリカEUはもうほとんどが、九割ぐらいが財政で保護しているわけです。消費者負担は、価格で保護するというのは物すごく、一〇%ぐらいしかない。ところが、日本はあくまで八割もの負担消費者負担、高い価格でやっているというところに大きな問題があるんだと思います。  それから予算自体についても、食料安全保障とか多面的機能というのは、これはいい概念なんです。じゃ、だけど、食料安全保障のために必要なのは農地面積です。多面的機能の働きというのはほとんどが水田の働きです。だけど、減反政策を四十年間やって、三百四十四万ヘクタール減反する前にあった水田面積が今は二百五十万ヘクタール、百万ヘクタールも少なくなっているわけですね。  これが果たして多面的機能を増進するための政策だったのか、それとも食料安全保障を確保するための政策だったのか、そういうふうなところを本当に、農林省は言っていることとやっていることが全く違うわけです。そういうふうなことをはっきり調べていく必要があるんだというふうに思います。
  29. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) OECDの事務総長が消費税一五%ぐらいというようなお話でございましたけれども、非常に厳密に言うと、先ほど来申し上げていますように、アメリカのタイプの小売売上税と日本のタイプの消費税は全く違うタイプの税制であると。それから、消費税と付加価値税も厳密に言うとちょっと違いがございまして、よく言われていることでありますけれども、例えば付加価値税というのは付加価値に付くわけですから、よく一般的に言われていますのは、チョコレートのクッキーの場合、チョコレートが乗っていないものと乗っているものでは付加価値税の掛かり方が違うとかということがあるかと思いますので、欧州の場合はあくまでも付加価値に掛かってくると。  間接税の場合は、もうこれは私が言うまでもないことなんですけれども、やはり逆累進性と言われているものが非常にきついものでございまして、消費税なんか最たるものですけれども、貧しい者にもそれから富裕層にも一律に課税掛かってしまって、これは差別じゃないかというか、非常にしんどいんじゃないかというような議論がありますけれども。  例えば、表面上は日本消費税一〇%とか八%とか低いわけですけれども、直間比率で見た場合に、ちょっと正確な数字、失念してしまいましたけれども、今回の八%、一〇%、恐らく一〇%になった段階では、多分、直間比率で言えば、かなり消費税というか間接税の比率が日本の場合は非常に高くなっていて、世界一になるんじゃないかなというふうに思いますので、そうすると、表面上の税率だけではなくて、一般国民にとって負担が大きいかどうかというところも併せて考えていく必要があるかなと思っております。  それから、食料品に〇%の軽減税率を入れているとかそういう国もございますし、私は別に消費税の中で〇%の食料品の軽減税率入れた方がいいと言っているわけではなくて、そうしますと、家に持って帰るものの食料品の場合は〇%、外で食べるものが例えば一〇%ということになって今後税率がどんどん広がっていきますと、例えば日本国内の飲食店なんかが、小売店、小規模な事業主さんなんかはどんどん潰れてしまうような可能性がありまして、今国内の雇用を確保しているのはそういった小さな店舗であったりするわけですから、やはり社会構造全体が変わっていってしまうというおそれがありますので、安易な軽減税率を全然推しているわけではないんですけれども、やはり多角的な見方、表面だけの税率の議論ではちょっと不十分ではないかなというふうに考えております。
  30. 山田太郎

    山田太郎君 ありがとうございました。
  31. 鴻池祥肇

  32. 辰已孝太郎

    辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。山下さん、小幡さん、岩本さん、お忙しい中、本当にありがとうございました。  まず、一問一問、質問をしたいと思います。  まず、山下先生なんですが、せっかくTPP農業のことについて語っていただきましたので、少し御意見聞かせていただきたいんですが、山下先生は、TPPの交渉に参加をすることで、まあ私たちは交渉参加は反対なんですが、日本の食料自給率、私たちはもう間違いなく下がるというふうに考えますけれども、先生は下がると思われるのか、いや、そうじゃないと思われるのか、また、どちらにしても、その下がることが、上がることがいいのか悪いのかという、どのようにお考えなのかということをまず山下先生にはお聞きしたいと思います。  そして、小幡先生と岩本先生、お二人なんですが、やはり四月一日から消費税が増税されたということで、私たちは増税に反対はしましたけれども、具体的にどれぐらいの負担になるのかというふうに見てみますと、これは総務省の統計からですが、お二人以上の世帯のうち、例えば年収が五百万円から五百五十万円までの人であれば、消費税負担率というのは、五%の段階で十二万八千円、これが八%になりましたので、年間でいいますと二十万六千円、つまり年間で約八万円ほど負担が増えるという計算が出ております。  ベアの問題で三月いろいろありましたけれども、しかし、名立たる大企業が賃上げしたといっても数千円ということでありますし、この間、イザナギ景気超えということが言われていた中で賃金を引き上げてこなかったということを見れば、消費税が上げられ賃金がさほど上がらない、また中小企業、非正規も増えておりますから、なかなかこれは需要の喚起ということにはつながらないんじゃないかというふうに思っております。  そこで、小幡先生にお聞きしたいんですけれども、先生はレジュメの七ページで、財政政策という中で、消費税の引上げは必須だと、しかし、景気腰折れ対策で財政出動は最大の無駄だというふうに書いていらっしゃいます。今回、政府の予算でも、消費税増税で景気を腰折れしてはいけないので、様々な財政政策ということで、公共事業をやりましょうということも含めていろいろ出てきているんですけれども、そのことについてもう少し、政府政策、先生はどのように見ておられるのか、では、じゃどうやって財政再建をしていくべきなのかということを是非お聞かせいただければと思います。  最後に、岩本先生なんですけれども、先生の消費税に対する考え方、ほぼ私たちと一致します。安定的な財源ということはそうなんですが、やはり先ほどのデータを見ましても、今、税金の滞納の半分以上が消費税であるということを鑑みますと、これが本当に安定的な財源だと言えるのかということも私、非常に疑問に思います。  先生にお聞きしたいのは、最後のページ、十七ページなんですが、消費税が上がって法人税が下がる、イコール報復ということなんですが、この辺、ちょっと説明が時間が足らなかったと思いますので、是非少し詳しく掘り下げていただければと思います。
  33. 山下一仁

    参考人山下一仁君) まず、食料自給率という概念なんですけれども、農林省がつくったプロパガンダの中で最も成功したもので、全く空疎な内容だと思います。なぜかというと、食料自給率というのは国内で幾ら生産できているかということを幾ら消費しているかというもので割ったものですね。したがって、飽食であればあるほど、同じ国内生産であっても食料自給率は下がってしまうわけです。だから、終戦直後の食料自給率は幾らだったか。あれは、あのとき飢餓が発生したわけですね。食料自給率は一〇〇%なんです。飢餓が発生しているときの食料自給率一〇〇%と今の段階の食料自給率四〇%、どっちがいいんですかということなわけですね。  それと、TPP参加します、関税が撤廃されます、価格が下がります、外国から輸入品が入るかもしれない、だけど、アメリカEUがやっているような直接支払を打つことによって農家は困らないわけですね。農家は今までどおりの生産ができる。さらに、価格が下がってより効率的な生産ができるようになると、国内生産が増える可能性があるわけです。さらに、価格が下がると輸出ができるようになる。そうすると、国内で消費するもの以上のものを生産して輸出するということであれば、例えばフランスが食料自給率が一二二%というふうに、あれは国内で消費する以上のものを生産して輸出するから、輸出すれば食料自給率は一〇〇%を超えるんです。つまり、TPP参加して相手国関税を削減して輸出をより増やすような、直接支払をやってですね、更に輸出を増やすようなことになれば、食料自給率は実は上がります。  これは、指摘したいのは、関税が下がって直接支払をやらないというふうなことを、そこについての言及が全くない。これは全くミスリーディングな、まあ農林省の試算もありますけれども、試算だったというふうに思っております。
  34. 小幡績

    参考人小幡績君) 消費税ですけれども、私がなぜ無駄かというと、先ほども滞納の議論ありますとおり、消費税は、消費者が実質負担するばかりではなく企業サイド、実際に納付義務があるのは企業サイドなわけでして、実質的にどっちがどの程度負担しているのかというのはいろいろ議論があるところですが、大ざっぱに言うと半々ぐらいというふうに考えています。そうすると、中小企業は赤字法人であっても消費税を払わなきゃいけませんから、払えなくて滞納するのがいいとは言いませんけれども、払えないところもあるわけですね。そういうことからいくと、このしわ寄せというのは中小企業、しかも弱っているところに行くと。  一方、財政出動でやることというのは余りそういうところに届かないわけで、中小企業政策で打てるものはほとんどもう打っていますから、追加でやるとなると、住宅が大きいから、じゃ住宅に何かやっておこうと、自動車も大きいから、じゃ自動車やっておこうと。そういう目に付くところは手当てしていきますし、支出面ではやりますけれども、本当に弱っているところで必要なところの売上げが増える形には絶対ならないので、行くべきところには絶対行かないわけですよ。だったらやめた方がいいんじゃないかということです。  それで、何でやめた方がいいかというと、要は消費税が必要な理由は、それは認識によりますけれども、やっぱり八、一〇じゃ終わらないというのが普通の認識で、まあ一五までか二〇までか分かりませんけれども、最終地点で社会保障も改革してもある程度これからは上がるわけです。じゃ、そのときの最大の中小企業消費者対策としては、次の消費税引上げをできるだけ先送りするというか、必要を減らすことですね。そのためには、今五兆円追加で使わずに、じゃ、その分を赤字削減に取っておいて、一〇から一二あるいは一〇から一五に上げるのをできる限り後に遅らすと、そういう形で使うのが最大の消費税対策じゃないかというふうに思っているので、歳出削減をするべきだという考えです。  以上です。
  35. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 共産党の方と大体意見が一緒ということで、一言。済みません、共産党の党員ではないので、あくまでもニュートラルな立場で話をしていると御理解いただいて。済みません。  最後の御指摘があったその報復の部分なんですけれども、済みません、お手元の資料十六ページなんですけれども、私は、アメリカの公文書館というところに行きまして資料を取り寄せて、実際に現地に行っていろいろ調べているというのが現在研究テーマとしてやっていることなんですけれども、例えばそのときに、アメリカの付加価値税の問題、既に一九六九年とか六八年の辺りから盛んに議論をされておりまして、当時の財務省も、それから先ほど言いました企業課税特別委員会というところも、やはりアメリカとしては消費税採用するのは反対であるという結論を出しまして、以来、四十年ぐらいずっとその見解を踏襲しているという状況が続いております。  そのうちの一枚なんですけれども、アメリカの財務省の六九年、七〇年当時のデータでございまして、実際に添付してありますのがその公文書なんですけれども、何て書いてあるかといいますと、一九六八年にフランス政府は四・二五%の給与税を廃止し、これは企業側が納める税金でございます、廃止しましたので、財源が不足したと。不足した財源どうするかということで、フランス政府、付加価値税を上げました。付加価値税を上げたこういう行動、アメリカからしてみるとどういうふうに映るかというと、輸出品へ補助金を与えているのと同じじゃないかというような見解を述べておりまして、そういうことをするのであればフランスに対して直ちに相殺対抗すべきであるということを言っております。  それから、赤字で書いてあるところ、リタリエーションと書いてありますけれども、これは報復措置という意味でございまして、もし他国が付加価値税やほかの還付金付きの間接税によって法人税の一部あるいは全部を置き換えるようなことをすれば、アメリカサイドは報復しますよと言っているわけです。  これを見た段階で、つまり日本消費税というのは消費税を引き上げて法人税を引き下げるという歴史でございますので、アメリカ側の立場からすると、別にアメリカがいいとかすばらしいとかそういうことを言っているわけではなくて、アメリカの見解としてこれは報復対象でありますよと、日本のその消費税の歴史というのは報復対象になっていますよということが言えるかと思います。  消費税の歴史と、それから法人税の引下げの歴史、それから、十七ページの段階ですけれども、日米通商交渉の歴史というのをもうただ時系列でこれ並べただけなんですけれども、消費税の引上げ法案を通す、あるいは実際に消費税を引上げすると、そういうことになりますと、日米通商交渉の歴史と重ねますと、非常にしんどい要求、きつい要求をアメリカ側が突き付けているということとぴったり重なりますので、やはり消費税というと、皆様、国内のあくまでも税制の問題だというふうな見解があるかと思いますけれども、そうではなくて、通商面でも一つ問題があるというのを今議論の中で見落としをされていませんかというお話でございます。  税金としてももちろんなんですけれども、通商問題として絡めて考えると、これからは引上げとなれば余計プレッシャーが多く掛かると思いますので、その辺り考えていく必要があるかなと思っております。
  36. 辰已孝太郎

    辰已孝太郎君 ありがとうございました。
  37. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、藤巻健史君。
  38. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 日本維新の会、藤巻です。  時間がないので、申し訳ないんですけれども、小幡先生だけにちょっと三問お願いしたいと思います。  まず、西田先生、大塚先生が国債暴落について触れられましたので、これは触れざるを得ないので触れさせていただきますけれども、私は、まず、小幡先生のおっしゃるように、財政問題というか、国債暴落が日本経済最大のリスクだと思っているんですね。私自身は国債暴落がいつかあるというふうに思っているわけです。  先ほど大塚先生が、日銀の今、保有国債が七年半あって、国債保有の七年、七年半で、それを日銀が売らないだろうから国債暴落はないとおっしゃったんですが、私はそうじゃないと思っているんですね。  毎年毎年借金が増えているわけです。要するに、今年度予算でいうと四十一兆円の赤字で、これ、四十一兆円の赤字ということは、借金が増えていますから、誰かがその四十一兆円を買い増してくれなくちゃいけないわけですね。保有しているだけじゃ、その四十一兆円を誰が買ってくれるのという話になるわけです。家計だって同じであって、借金が増えれば、それは誰かが貸してくれなかったらそれは元本、利息払わなくてもいいというわけじゃなくて、誰かがその増えた分の借金を貸してくれなくちゃいけないわけです。  毎年毎年四十兆円近くの借金が増えているということは、誰かが四十兆円分の国債を新たに毎年毎年買い増してくれなくちゃいけないということだと思います。今までは景気が悪かったですから、金融機関に対して貸出金が戻ってきている、そのお金で国債を買ってくれた。ところが、景気が戻ってくると、もう民間金融機関には買い続ける余力がない、買い増す余力がない。  となると、残っているのは誰かというと、今、日銀がやってくれているわけです。要するに、量的緩和ということで百四十兆のマネタリーベースを二百七十兆にすると黒田さんはおっしゃっている。それから、長期国債を八十九兆円から百九十兆円にするとおっしゃっている、二年間で。要するに、日銀が百兆円二年間で買ってくれるから何とか四十兆円ずつ国債がはけているわけです。  満期が、今年、黒田さんの二百七十兆のマネタリーベースの目標というのは、今年の十二月末に来てしまいますから、それ以上は決して黒田日銀総裁は国債を買い増すということにはコミットしていないわけです。  じゃ、その後、来年から誰が国債を買ってくれるのかという疑問が極めて多い。日銀が今度、百九十兆を今度二百五十兆にすると言うかもしれません。そうすると、今度、満期がまた半年後かに来たときに誰がその次に買ってくれるのかということで、どこかの段階で必ずやマネタイゼーションということで話が出てくると思うんですね。若しくは外国人が買ってくれるのか。外国人が買ってくれるんだったら、〇・六%なんかの国債買ってくれるわけがなくてどこかの段階で暴落すると思うんですが。じゃ、日銀が買ってくれなくなったら誰が買ってくれるのかということをひとつお聞きしたいと思います。  二つ目の質問ですけれども、今年の地方銀行協会の調査月報一月号に、私、アベノミクス検証ということで論文書かせていただきましたけど、あと二人のうちのお一人が小幡先生だったですよね。小幡先生、その中に、日本金融学会でリフレ政策、量的緩和政策についてどう思うかというふうに金融学会の研究者の方に聞いたらば、大多数が反対だとおっしゃったと書いてありました。私もまさに、それについては、私も金融学会に所属しておりますけれども、両手両足を挙げて賛成するというふうに、今度、来週発売の週刊朝日に書いたんですけれども、小幡先生の名前含めて。これ、どうして多くの研究者がリフレ政策に対して反対しているかということをちょっとここで教えていただければと思います。  三番目。これは長年、小幡先生と議論をしていて、私と一番違うのは為替政策、先生、大体御存じだと思いますけれども、私は円安こそデフレ脱却の最強の手段だと思っているわけです。先生の今日の講義だと輸出しかお話ししていませんけれども、別にこの為替というのは輸出だけに関わるるわけじゃなくて、労賃も物もサービスにも関わってくるわけです。値段というのは、売る方にとっていいのか買手にとっていいのかということであって、円が強いということは、日本の労働力、物、サービスに対して、日本人が円で買う方はいいですよ、だけど売る方は悪いということです。  世の中、要するに、買うためには働かないと、物を売らないことには買うお金なんか出てこないわけですよね。ということは、要するに、円安にならないと日本の労働力、稼げないということです。要するに、円高だと、高い円で外国人を安く買えますから、当然のことながら日本人は収入がなくなっちゃう。労賃は下がりますよ、だって外国人に仕事取られちゃうんですから。だから労賃もない。  それから、山下先生の出された、この十三ページに香港での米評価という表がありますけれども、日本コシヒカリ三百八十円、カリフォルニアコシヒカリ二百四十円なんですけれども、これ、日本円が一ドル百円から二百円になれば日本コシヒカリは百九十円になるということで、これはまさに日本コシヒカリアメリカコシヒカリよりも安くなっちゃうわけです。  ということで、円安というのは、別に農業だって輸出産業なんですから、それでもいいわけですよね。ということで、私は円安がいいと思うんですが、それについてどうコメントされるか、この三つ、三点をお教えください。
  39. 小幡績

    参考人小幡績君) お答えします。  まず国債、私は暴落があると思っています。この、ないと書いたのは当面ないということで、多分、本年、まあ今年度はないかなという意味です。  経常赤字が年度でもし確定すれば、それはかなりニュースになりますし、いつ仕掛けられてもおかしくはないんですけれども、ただ、おっしゃるように、誰かが買う限り、仕掛けても買手がいれば仕掛ける方が負けるので、買手がいなくなったときに仕掛けてくると。日銀が買わなくなればそこはもう終わりなので、そのときは暴落すると思います。そのときまでに何らかの対応を打ってほしいということであります。日銀が買わないときに買う人はいないのではないかなと思っています。まあ、そうですね。だから、そのときは暴落するときだと思います。日銀も、ただ、短期の金融市場が混乱すると困るので何らかの手段は取ると思うんですけど、ただ持続は不可能だと思うので、結局は藤巻先生がおっしゃるような形になると私も思います。  二番目に、リフレが、私が反対の理由というよりは、研究者がなぜ反対かというと、やはりその賛成する側であっても、所詮いわゆるデフレマインド脱却で、いわゆる私が先ほど説明したショック療法としてはいいと。だから、一時的にはいいけど、それだけで問題が全部解決するわけじゃないから、リフレやったのはいいとして、そのほかのことも当然やれと。ところが、リフレで全てが解決したかのような錯覚に陥っている状況、これは昨年の十月だったもので、何かもう日本経済大丈夫かなという雰囲気があったということもあると思うんですけれども、まあ良くないと。それで、増税にも割と反対するリフレ論者多かったものですから、そこの辺にポピュリズム的な感覚があって、ポピュリズムには反対という研究者も多かったと思います。  ただ、研究者の多くの意見は、その金融ショックはあくまで一時的なものであって、過度な悲観を解消するのはいいけど、やっぱり中身を何か良くしないといけないと。私が言った言い方がいいかどうか分かりませんけれども、いわゆる何らかの意味での長期的な成長戦略に移っていかなきゃいけないということはコンセンサスで、そこに動かずにリフレ政策だけやっていればいいというのはどう考えても反対というのが多くの意見だと思います。  為替については、まさにおっしゃるとおりで、はい、そのとおりだと思います。だから、輸出と輸入でいい面も悪い面もどっちもあるので、今の日本にとってどっちが得かというと、私自身は、やっぱり物を作って稼ぐという、その物を切り売りして、あるいは現在のサービスを切り売りする場合には円安の方が売れるというのはありますが、長期的に考えると、やっぱり現地生産だったり、いろいろアイデアを出して、結局ベトナムの何とかという企業とか、まあベトナムのイオンが今物すごいはやっているというニュースが最近出ていますけれども。いろいろ日本のノウハウとかサービスでいいものがあるので、それは現地の需要先の企業と協力しなきゃいけないと思うので、結局は現地の企業を買うとか現地の土地を買うとか現地の労働者を雇うということにならなきゃいけない。そうなると、物のやり取り以上に、資産やいろんなものを買うということが重要になってくる。そうなってくると、やっぱり円高の方がいいのではないかなというのが主な意見。  あるいは、資産防衛という意味もあります。よく海外の、アジアのいろんな投資家が日本の水を買いに来たりとか土地を買うというのも、円安になると彼らは買いやすくなるので、資産防衛という意味もあると思いますけれども、私は、資産市場を重視すると為替が強い方が得ではないかなという面がその貿易のバランスの部分のプラスマイナスを上回ってあると思うので円高ということですが、議論はおっしゃるとおりだと思います。
  40. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 あと一分あるのであれですけれども、やっぱり今、百二円になったから、円安になってもいいことが余りないんじゃないかとおっしゃる方は多いんですけど、百二円なんというのは物すごい円高であって、私は、今の日本の国力考えると百八十円とか二百円ぐらいだと思っています。百八十円、二百円になれば、日本企業みんな戻ってきて、労働市場も万々歳で、インフレになるかなというふうに私は思っております。  以上です。
  41. 小幡績

    参考人小幡績君) また勉強して、議論の機会をいただければと思います。  ありがとうございました。
  42. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、真山勇一君。
  43. 真山勇一

    ○真山勇一君 結いの党の真山勇一です。  今日は、三人の参考人の方、本当にありがとうございました。大変大胆ないろいろな経済の御意見をお伺いしまして、またいろんな考え方を持った次第ですので、その辺りから、ちょっと今日感じたことをお三人に伺いたいというふうに思っております。  まず、岩本先生には、お伺いしたいのは、私もこの春になってやはり一番気になるのは、景気どうなるか。もうまさにこれからが正念場になってくるというふうに思っております。消費税、上がりました。その一方で、春闘、大企業を中心に少し明るさが見えているというけれども、なかなか下流の方には行っていないんじゃないかというふうに思っております。川の流れの下流までです。そこまでは行っていないというふうに思っております。その中で、株ですとか不動産、確かに先生おっしゃったように、株ですとか不動産とか、それから物価というのは上がっていますけれども、やはり賃金の上がり方というのはそれに追い付いていないのではないかというふうに私は感じております。  こうなると、先生がおっしゃったようにインフレにも二種類あって、ディマンドプルインフレ、コストプッシュインフレ、むしろ今私は先生のお話を伺って、コストプッシュインフレ的ではないかなというような感じもしまして、そうなると、やはり心配は、デフレ脱却しても、インフレのところにまで行くのに物価だけということになってしまうと、いわゆるスタグフレーションという心配もあるというふうに思います。この心配が、その辺どんなふうに今の状況から見通しをされているか、その場合の取るべき経済政策というのはあるんでしょうかということを岩本先生にお伺いしたいと思います。  それから、小幡先生にお伺いしたいのは、やはり景気回復と経済成長というのは違うんだと、それが混同されているということを伺って、私もふだんなかなかその辺区別しないで使っているような感じがして反省をしておりますけれども。景気とかそれから経済力というのを判断する経済指標というのはいろいろあると思うんですが、やはり私も感じているのは、最近の日本経済を見ていると、今までの指標で判断しただけではなかなか正確な見通しができなくて、誤るところまではいかないけれども難しいなという面があるんですが、特に経済というのはやはり先生がおっしゃるように長期的な見通しで把握するため、その場合、その経済指標というものの見方を何か見直した方がいい、必要があるのかどうかということと、その場合どんな指標が大事になるのかなというようなことをお伺いしたいというふうに思っています。  そして、山下先生にお伺いしたいのは農業のもちろん問題なんですが、やはり農業、今振興しなければいけないのに衰退の一途をたどっているわけですけれども、その農業改革をする一つに、私は規制緩和をして、それこそ株式会社を導入すればまあ何とかなるんじゃないかというような考えを持ってきたんですが、今日先生のお話を伺っていて、やはりそれだけじゃなかなか今の日本農業を変えていくことはできないんじゃないかというような印象を受けました。つまり、今の農業政策ですね、農地所有者イコール耕作者でなければならないということになりますと。  今、若者が都会からJターン、Uターン、Iターン、地方に行って農業をする若者が増えています。どんどんどんどん高齢化して後継者いない中で、こうしたものは、若者が農業へ戻っているというのは大変な財産だと思うんですね。これを何とか定着させたいと思ったときに、その人たちが土地を持っていないためにできないということがあるし、それから土地を持っている農家の若者にとってもなかなか今度は大規模にできない、小規模しかできない。そうすると、そこへ大きな大企業がどんと農地を買って、いわゆる株式会社としては、運営としてはいいかもしれないけれども、やはりそうなると、本当に、じゃそこで働いている若者にふさわしい賃金が支払われるかどうかということなんですね。  そういう辺りも含めて、若者が農業をできるような何か対策、政策、どんなものが有効であるかということをお聞きしたいというふうに思います。  よろしくお願いします。
  44. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 実際の景気への影響というところなんですけれども、よく言われておりますのが、四月と同時にやっぱり駆け込み需要の反動で一気に落ち込むのではないかというような指摘もされておりますけれども、意外と駆け込み需要がそれほどなかったものですから、この辺りは軽微で収まるかなと思っております。ただし、住宅関連ですとか車なんかはちょっと落ち込みが激しいかなというふうに思っております。  実際に、消費税、納税義務があるのは事業者でございますので、事業者がお支払いになるのは、今年の増税分に関しては二〇一五年の三月以降ということになるかと思います。このときに、やはり納税義務のある方が消費税を払えるか払えないかと。払えない方が多くなるということになりますと、やはり二〇一四年の影響というのは実は二〇一五年の春以降出てくると。二〇一五年の十月にもう一段引上げということになると、今度はこれは二〇一六年の春以降に出てくると。  先ほど申し上げましたように、何となく二〇一四年も二〇一五年も前倒しの執行予算ですとか、あるいは駆け込み需要という二つの要因がありますので、結局は二〇一六年の春以降に、そこから景気がちょっと一気に悪化していくんじゃないかなというような見立てをしております。  株式ですとか不動産ですとか、これいわゆる金融部門のものばかりですが、こちらばかり上がっていても、これは株式だけで生計を立てておられる方というのはほとんどいらっしゃらないわけで、一般国民にとっては、やっぱり株価が上がっても生活が苦しくて、それで結構ですなんという方はいらっしゃらないわけですから、やはり、株は結果的に上がりましたよということであればいいと思うんですけれども、余り株式が上がった下がったとか、上がることだけに重点を置く政策というのもどうかなというふうに思っております。  経済政策としましては、やはり消費税というのは、カナダの例も出しましたけれども、別に引上げ一辺倒というわけではなくて、引下げという可能性もあるわけですので、経済に陰りが見えましたらば引下げという選択肢もあるんじゃないかと。  それから、全然別の話でございますけれども、やはり、今、日本には新しいビジネスとかベンチャーが生まれてくる可能性というか、必要があるかなというふうに思っておりまして、そういったところが新しい雇用ですとか分野とかを開拓していってくれるんじゃないかと。  例えば、メタンハイドレートがありますけれども、確かに、平成二十五年の海洋計画で、平成三十年からはもう商業ベースに乗せるんだというような話が出ていたかと思うんですけれども、メタン菌というのが実際はありまして、そのメタン菌がCO2を食べてメタンハイドレートをつくるというようなのがメタンハイドレートの仕組みでございますけれども、そのメタンハイドレート、一回取ったらばそれっきりということが言われていたんですけれども、実は、メタン菌の層というのが、たしか岩手沖だったかと思うんですけれども、海底の二千二百メートル辺りから分厚いメタン菌の層が出てきた。どういうことかというと、そこにCO2を送り込むことによって循環型のメタンハイドレートの生産なんかができてくるんじゃないかというような、循環型のエネルギー政策みたいなことも出てきているというふうに聞いております。  そういった意味で、新しいそういった分野に投資をしていくですとか、チャンスを広げていくというのが、これがやはり日本経済の増強というところになるかと思いますので、実質的なそういう投資ということも考えていく必要があるかなと思っております。
  45. 小幡績

    参考人小幡績君) ありがとうございます。  今日は景気と成長ということでお話しさせていただいたんですが、多くの経済指標が足下の景気を過度に重視しておりまして、長期的な成長力を反映しないということはあると思います。実際のところ、長期的な成長力の指標って非常に難しいのですが、例えば、部分的に今進んでいるのは、OECDなどで整備していることで、貿易収支、貿易黒字とか赤字とか言いますが、貿易額自体は余り問題じゃない。つまり、十万円のテレビを輸出して、じゃ、十万円輸出しましたというんですけど、それってどういう意味があるのかと。十万円は意味はないんですね。  つまり、中国から部品をいろいろ集めて買ってきて、合計十万円で部品を買ったものをただ組み立てて利益なしで出せば、それは付加価値ゼロですから、輸出したといっても何の意味もないわけです。ところが、自動車のようにゼロから組み立てて、労働力がほとんどその例えば車の百万円に蓄積されているとしたら、原料費っていろいろあるかもしれませんけれども、その分を除いても、八十万は要は突き詰めると何らかの人件費だということになれば、八十万円付加価値が付いているわけで、これは非常に大きいと。ですから、付加価値ベースで貿易収支を議論した方がいいんじゃないかと。この意味でいうと、日本輸出額は減っていなくても、付加価値ベースの輸出額は非常に急速に減っているという問題があるという指摘をOECDなどでされています。  さらに言えば、もうちょっと抽象的になりますが、やっぱり質が重要。GDPの増加というのが成長率ということになっておりますが、これも質が重要だと思っています。  僣越ながら、この青いやつの五十ページ以降、「視点 争点」というところ、何回かシリーズで書かせていただいた中に一部書いてあるんですけど、もし万が一御関心あれば読んでいただければと思いますが。  例えば、穴を掘って埋めてもいいとケインズが昔言ったんですけど、これは意味ないわけです。なぜかというと、何のノウハウも身に付かないので次の仕事にならない。だから、公共事業で穴を掘って埋めるのは無駄だと思います。ところが、例えば世界一の水の浄化システムか何かの受注をして、それを更に発注されたよりもいいものを造ったと。そのときは、このノウハウが将来的に世界中でニーズがあったり、あるいは更に進化したようなシステムを造るものになる。そうであれば、そこで例えば百億で受注したのが百億かというと、それ以上の価値を生み出すということになります。ですから、将来何を生み出すかと。将来への付加価値への礎になるようなものはすごく質が高いということです。  正規、非正規という問題も、アルバイトが全部悪いわけじゃなくて、問題は、次につながる、自分の勉強になる仕事じゃなくて、その場しのぎの仕事だけでお金をもらうというのは問題であって、給料が安くても、例えば何かリーダーになるとか店長になるとか、給料が安い店長をやらされたとしても、それでいろんな勉強をして次につながるような、成長する機会が与えられるんであればそれはすごくいい仕事だということだと思います。  ですから、そういう指標を作るのは難しいんですけれども、持続的な成長力というのを測る上では、次につながる仕事、付加価値のある仕事、質の高いものというものを測るように、貿易の先ほどの例、一例ですけれども、これを広く進めていく必要が本来はあるのではないかというふうに思います。  以上です。
  46. 山下一仁

    参考人山下一仁君) おっしゃるとおり、若い人が農業に参入できるようにする仕組みをつくるというのが極めて重要だと思っております。ところが、農業の場合には、普通の産業であれば二つ道があります。資金のない人が入ろうとすると、二つ道があります。一つは、借金をして入るやり方ですね。ところが、借金をして入ると、失敗したら借金をずっと抱え込むということになります。それからもう一つのやり方は、株式会社をつくっていろんな資金を集めて、一口十万円集めて、百人から集めると一千万円ぐらいの金が集まるわけですから、それをもって農地を買って、農地投資をして農業をやると。これが本当は望ましい姿なんだと思うんですけれども、ところが、農地法があるおかげでそういうやり方ができないということになってしまっています。二十五ページにそういうことを書いているんですけれども。  したがって、取りあえずは、例えば資本金が一定額以下の株式会社であれば、それは別に誰が出資したっていいじゃないかというふうな規制緩和を農地法でやるべきだというふうに思います。  それから、究極的にはヨーロッパはどうやって農地を守っているかというと、確固としたゾーニングシステムで守っているわけですね。ただ、日本の場合には、農地法による転用規制と、それから農業振興地域の整備に関する法律、農振法といっているんですけれども、これによるゾーニング。転用規制とゾーニングですね、土地利用規制、両方あるんですけれども、両方ともざる法なものですから水がじゃあじゃあじゃあじゃあ流れて、ほとんどその転用には余り抑制策がないと。したがって、二百五十万ヘクタールもの農地が失われてしまったということになったわけですね。  したがって、本当に農地を守ろうとすれば、ヨーロッパのような確固たるゾーニングを導入して、農地法はもう廃止してしまうということが一番いいやり方ではないかなというふうに思っております。
  47. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。
  48. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、吉田忠智君。
  49. 吉田忠智

    ○吉田忠智君 社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。  今日は三人の参考人先生方には貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  それぞれ先生方に質問をさせていただきたいと思います。  まず、山下参考人に対してでございますが、TPPが今大詰めの交渉を迎えています。日本で日米のバイの交渉も今行われているわけでありますが、TPPは原則関税ゼロ、そして規制、関税撤廃という原則の下で、時間的に猶予がどのぐらい与えられるかというふうに聞いておりますが、先生の先ほどの説明を聞けば、もうゼロでもやむを得ないというふうに聞こえるんですけれども、今の主要五品目が大きな焦点になっているわけですが、これからの見通しと、どうあった方がいいというお考えがありましたら。それと、RCEPが並行して始まっているわけですけれども、RCEPの場合はTPPに比べて随分柔軟で互恵的だというふうに聞いておりますけれども、TPPとRCEPの関係についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。  それから、小幡先生には、この資料の二十ページ、必要な政策ということで、目標、円高、そして緊縮財政にしていくべきだという中身だろうと思いますが、具体策の一番下の長期、生活保護対策というのはどういうこれは意味、御説明がございませんでしたが、どういう意味なのか。それから、税制について記述がありませんけれども、今後のあるべき税制についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。  それから、岩本先生には、先ほど質疑の中でハイパーローカル、ボトムアップの需要増という、そういう経済政策を言われておられました。私も賛成でありますけれども、踏み込んで、具体的にどういう施策をこれから打つべきなのかということについてお聞かせいただきたいと思います。  お願いします。
  50. 山下一仁

    参考人山下一仁君) TPPの見通しなんですけれども、まず論理的に言うと、関税ゼロでも十分だというふうに思います。関税ゼロでも直接支払で守るというアメリカEU型の農政に移行すれば、消費者にとっては価格が下がってメリットがある、農業にとっても、価格が下がっても財政からそれは直接支払を受けるわけですから、それは全く関係ないということになるんだろうと思います。  今後の見通しなんですけれども、実はアメリカは、TPAという、アメリカ連邦議会がその通商権限を持っていますから、それを通商代表部に授権されないと駄目なんですけれども、それがまだ通っていないし、それが通る見込みが少なくとも今年の秋の中間選挙までは見通せない。そうすると、来年ぐらいになってしまう。  だから、今、フロマンが来ていると思いますけれども、フロマンの交渉態度というのはかなり強硬な、レベルの高いTPPをつくれば、これをTPAという授権法がなくても議会に持っていけば、これは誰も反対できないだろうと。そのレベルの高いTPPを持っていくことによって逆にTPAという貿易授権法が通るんじゃないかと、もらえるんじゃないかという前提の下に交渉しているということで、そういう意味では、重要五品目を守るという日本政府の立場はかなり厳しいものがあるんだろうというふうに思います。  ただ、関税がなくても直接支払でやればいいし、それから畜産物なんですけれども、実は日本畜産物というのは、輸入トウモロコシの加工品なんですね。ところが、実はトウモロコシからでん粉も作れます。でん粉は国産の芋農家の保護のために高い関税を課していますから、関税ゼロで餌用の輸入トウモロコシは入ってくるんですけれども、でん粉用のトウモロコシに横流れを防止するために、加熱圧扁という特別な処置を要求しています。これが輸入トウモロコシの価格を二割も上げているわけです。もし全てのものについて関税が撤廃されて、でん粉の関税もゼロになれば、その横流れ防止策が必要にならなくなるわけです。そうすると、畜産農家にとっては餌というのは物すごくコストを占めていますから、その餌の価格が二割も下がるということは大変な競争力の強化になる。つまり、直接支払もそれほど大きな額は必要なくなるというふうなことにもなります。  それから、RCEPとの関係ですけれども、RCEPというのは若干ルーズなものであるというふうに思っています。それからレベルも低い。それから、今、国営企業に対する規律を、アメリカ中国の国営企業をにらんで高いレベルの規律を導入しようとしていますけれども、中国が入っているRCEPで中国の国営企業に対する規律を作ろうと思っても、それはできないわけですね。やはり、そういう高いレベルのルールを、規律を作る上でもTPPというのが必要だというふうに私は思っています。
  51. 小幡績

    参考人小幡績君) まず、税制の方から言いますと、理想論を言っても余りしようがないので、税収が今足りない中でどう変えていくかということだと思います。  法人税負担については、法人税減税という形よりは企業の社会保障負担を減らすということがより国際競争や正規、非正規の問題も含めて労働上のひずみを解消することになると思うので、そちらの改革で対応すべきだというふうに思っています。  所得税も消費税も低い方がいいんですけれども、なかなか減らすわけにもいかないので、やむを得ず、上げられるのは消費税ぐらいだから徐々に上がっていくということにならざるを得ない。これは理想の税制の形からは遠いと思いますけれども、現状、ほかをいじるといろんなひずみが出ますから、ということにならざるを得ないというふうに思っています。  生活保護の意味は、本当にここは舌足らずで申し訳ないんですけれども、これどう考えても長期的にすごく伸びていくと思うんですね。それで、そうすると生活保護を減らせという話に単純になってしまうんですけれども、なぜ起きているかということを考えるべきで、現状はまだ目立たないかもしれませんが、例えばアメリカのホームレスのほとんどは精神的疾患が原因だということもありますし、最近の若年を見ていると、精神的疾患と認定するかどうかはともかく、精神上の問題は非常に大きいので、この問題を解決するメカニズムを特に若年層に関してつくっていかないと、非常に若年のうちから生活保護層にやむを得ず入ってきて、切る切ると言われてももう抜け出せないし、見た目には何か働けそうなのにというジレンマが残るものですから、根源は社会的な特に都市部の精神的な状況の問題にあって、これを根本的に解決する方法を考えなきゃいけない。  私はそれは専門家ではありませんけれども、経済的にも、アメリカの健康保険は民間ですけれども、一番の問題は精神的な、精神病の部分をどれだけ排除するかというせめぎ合いですから、これをやっぱり解決しなければ日本としては非常に社会コストが大きくなるので、まあ私は、高校とかあれから健康診断でそういうカウンセリングなんかやったらいいんじゃないかとか、そういう素人的なアイデアありますけれども、そういう、とにかくこの問題を真正面から捉えるべきだということです。それが財政にもいいと、実は。  以上です。
  52. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 具体的なハイパーローカルというお話なんですけれども、今日なぜ消費税の話をしたかと申しますと、やっぱりどうしても消費税に代表されるように、どうも大企業ですとか輸出企業さんへ過度の優遇策というのが今まで取られていたんじゃないでしょうかと。それを全部否定するわけではないんですけれども、やはりそこがちょっとアンバランスになっておりますので、そこのバランス、見直しが今だからこそ必要じゃないかと思っております。  なぜそうやって大企業さんが優位、あるいは輸出企業さんが優位かというと、やはり大企業さんや輸出企業さんの方に全てを集約すると経済効率がいいんじゃないかという発想が根底にあるんじゃないかと思います。  ということは、逆に言えば、中小企業に対するポテンシャルというのを余り感じていらっしゃらないのかなということかと思うんですけれども、いや、実はそんなことはなくて、先ほど御紹介いたしましたように、中小企業さん、特に地方で頑張っていらっしゃる方が数多くありますので、その地方ごとに特色はありますので、ある地域で成功したものが必ずほかの地域でうまくいくということにはなりませんけれども、やはりその地域ごとのカラーみたいなものを生かして、なおかつ中小企業さんが疲弊しないような、まあ税制度も含めてということなんですけれども、少し今まで大企業シフトだったものを中小企業や零細企業側にシフトしていただくことによって内需が活発化する、あるいは高付加価値を生み出している中小企業さんも世界シェアが高いところたくさんありますので、そういったところを改めて見直していただいて、いわゆる内需をしっかり支えていただくのと、それから、そういった内需を支えることによって地域ごとの活性化が併せて盛り上がっていくというのが理想的かなというふうに思っております。
  53. 吉田忠智

    ○吉田忠智君 ありがとうございました。
  54. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 以上で各会派代表しての一巡目の質疑は終了いたしました。  他に質疑のある方は挙手を願います。  山田俊男君。
  55. 山田俊男

    山田俊男君 山下参考人、それから、関連して岩本参考人にお尋ねしたいというふうに思います。  山下さんにはちょっと謝らなきゃいかぬのかもしらぬのですけれど、本日のこの調査会のテーマが国民生活デフレ脱却財政再建というテーマだったわけですが、テーマとどうもお話聞いていて違うんではないかと。依頼の仕方が悪かったのか、それとも、何でもよいということでこのテーマを選ばれたのか。何かどうも雰囲気が違うということで、これはあなたの責任じゃないのかということでありまして、一つ聞きたいというふうに思いました。  二つは、日本農業が、先ほどおっしゃったように、世界に伍していけずに、そしてTPP参加の邪魔をしているというふうにおっしゃっている。その原因の一つ農地制度がありますよ、それから農協制度もありますよ、それから三つ目は、減反で高米価を維持してきたというふうにおっしゃっているんですよ。  ところで、あなたは農水省のまあ大幹部ですね。これを見ても大変な仕事をずっとやっておられたわけでありますが、農地制度減反や、それからそれに伴う高米価に関して、あなたがまさに批判されているこういう仕事にあなたは現役のときに関与してこなかったのかどうかということを聞きたいわけで、この政策をあなたは今批判されているんだけど、この政策に関わってきたのは自分じゃないと、自分以外の農水省の幹部であって、さらに、先ほど若干おっしゃっていますが、農協だったり自民党だったりしたんだという言い方の整理でちゃんと学者が務まるのかということを言いたいというふうに思います。  三つ目は、敗戦後、日本農地改革を行わなかったら一体どういう事態に陥ったかということは、当然、学者ですから、農地制度を批判されるんだから御存じだというふうに思うんです。私は、私の拙い勉強の限りかもしらぬけれど、あの状態の混乱の中では、私は、社会主義国になっていたかと、そういう選択になっていたかもしれないというふうに思います。農地解放で、それこそ砂地を、砂の地面を黄金に変えたんです。これはイギリスの経済学者が言っておりますが。そのことであの混乱の中で農地が財産になって、それで生産が拡大して、そして飢餓を克服できた、この時期は間違いなくあったわけですよ。  だから、あなたの空想的な牽強付会のその議論、すなわち減反を廃止し、そうでしょう、米価を低落させて、それで零細農家を潰して規模拡大して競争力付けてTPPに入ればいいというような形で果たして日本の好循環をつくれるのかどうかということ、これは大変疑問に思います。この点について御意見いただきたいと思います。  それで、岩本参考人はこっちの方に、十三ページに書いておられまして、社会の受皿としての中小企業の役割の重要性、アメリカの公文書から引き出されてあるわけで、その項目の一番下に、利幅は薄くても農業や他の自営業は、企業で働くという環境になじまない、その理由は幾らでもある、こういう人たちの重要な受皿を提供しているのだというふうに書いておられるわけでありまして、減反廃止、それから競争させて米価低落させて離農させて、そしてTPPに何の邪魔もなく加入できる、これがデフレ克服の方策だというふうにおっしゃる山下参考人の御意見についてどうお考えになるかというのをお聞きしたいと思います。
  56. 山下一仁

    参考人山下一仁君) 最初の御依頼の話は、既に西田先生にお答えしたとおりなので省略させていただきたいと思います。  それから、私の農林省にいたときの仕事なんですけれども、直接関わったということはそれほどはありません。ただし、間接的に関わったことはたくさんあります。ただし、減反政策、それから高米価政策、それから農地政策、そうしたものに対して、私が農林水産省にいたときに、既に二〇〇〇年の十二月に、小倉武一という農林水産省の大先輩が理事長をやっていた食料・農業政策研究センターというところから私の最初の「WTO農政改革」という本を出させていただきました。それによって、農林省の中では私の主張を粘り強く展開したわけでございます。  ただ、一回、外部に参考として招かれて京都のあるところで講演をしたことがあります。そうすると、持論を展開したんですけれども、ある農業団体の方から、こうしたやつはけしからぬというふうなことで私の上司に抗議のお手紙をいただいたということもあります。  組織ですから、一人が幾ら頑張ってもその組織の全体の力はなかなか動かせないということはあります。ただし、私が自身で、個人で担当した政策の中には中山間地域等の直接支払制度があります。これはほとんど自分で立案して、自分でいろんなところと折衝したりしてまとめ上げたものでございます。これにつきましては、民主党政権になった後も、今の自民党政権の中でもこの制度を法案化していただけるというふうなことも聞いておりますので、これは、世の中については、自分がやった範囲の政策については何らかの評価をいただいているものというふうに思っております。  農地制度については、まさにあの時期では極めて優れた政策であったと、農地解放というのは極めて優れた政策であったというふうに思っております。  戦前の農業を規定したものはやはり地主制度だったわけですね。この地主制度に対して、実は帝国議会、済みません、失礼ですけれども帝国議会は地主階級と同じ利益、利益を同じくしていたわけですね。これに対して、小作人の側に立って地主階級及び帝国議会に抵抗し続けてきたのは我が農林省の先輩だったわけでございます。この戦前の、ぶつかってははね返され、ぶつかってははね返されという戦前の農林省の努力が実を結んだのが戦後の農地改革だというふうに思っています。これは石黒忠篤とか和田博雄とか東畑四郎とか、小倉武一もいます、そうそうたる先輩がやったことで、これについては、私は農林省に勤務した一つの誇りに思っております。そういう先輩を持っていたことは誇りでございます。  ただし、先ほど申し上げましたように、当時はやはり柳田国男以降の農政思想が生きていまして、農地改革の後は農業改革をやるんだと、これから構造改革に移るんだというふうなことを考えてきたわけです。したがって、実は当時の農林省は、農地法の制定には極めて抵抗したわけです。にもかかわらず、GHQと自由党の圧力によってこれは制定させざるを得なかったということは若干の悔いが残る、歴史的に見ると悔いが残ることではなかったかというふうに思います。  それから、TPPについて、逆に私としては疑問でならないのは、なぜ関税で、高い価格農業を保護する必要があるのか、なぜ、アメリカEUがやっているような直接支払で保護することにどうして抵抗されるのか、そこが私は全く理解できないところです。消費税を上げるときには逆進性だと言いながら、逆進性の塊のような、高い価格国民の、貧しい消費者にも高い価格負担させるような現在の農政をどうして変更できないのか、そこについては私は今もって十分な納得いく御説明をいただいたことがないというふうに思っております。
  57. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 済みません、私は農業問題の素養がそれほどございませんので、具体的にお答えすることが難しいんでございますけれども、このアメリカの公文書で何を言っていたかというと、やはり何でもかんでも効率を重視するというのはどうかなということを言っておりまして、やはりそれはあんばいの問題であるということを言っていました。皆さんが、全員が全員大企業に勤められればそれはいいんだけれども、それぞれ個人の問題もあるし、それから自分の自営業をやっていた方がふさわしいと思っている方もいらっしゃる、それからメンタルな部分でいろいろ抱えていらっしゃる方もいらっしゃるわけで、なかなか大企業に全員が勤められていないような状況であるとすれば、やはり社会の受皿としての多様性というのを重視するべきじゃないかということを言っているペーパーでございます。  例えば、減反政策云々というところを踏み込んだ議論が、申し訳ございません、できないんですけれども、例えば補助金をもらって減反政策が悪いというのであれば、消費税ですけれども、消費税というのは補助金をこれ輸出企業さんに渡しているものと同じわけで、じゃ、何で農業さんは悪くて輸出企業さんは非難されないんだというところもあるかと思いますので。  それから、TPPとの関係ですけれども、TPPというのは関税を引き下げる効果があると。一方で、消費税というのは関税を上げる効果があると。一方で引き下げておいて、一方で引き上げておくような、そのアベノミクスの矛盾というのは私は感じているんですけれども、一体そこの落としどころはどこに持っていくんだろうかというのが今の私の疑問なんですけれども。  個別の事象を取り上げると様々な問題があるんですけれども、やっぱり全体としてのバランスというか、が欠いているかなということで、問題がどんどん複雑化になっていますけれども、一つ一つ整理して話合いをしていく必要があるんではないかなというふうに思っております。
  58. 山田俊男

    山田俊男君 ありがとうございました。  山下さんに。欧米型の直接支払仕組みをというふうにおっしゃっているんなら、あなたはそういう、学者なのか評論家なのか分かりませんが、しっかりとそのことについて提言していただきたい、こんなふうに思います。
  59. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 山下参考人、発言ありますか。
  60. 山下一仁

    参考人山下一仁君) それは、私が二〇〇〇年十二月に書いた「WTO農政改革」の間ではっきりと書いて、価格支持から直接支払へ、しかもアメリカEUがやっているような直接支払が望ましいんだと、OECDの研究成果も引用しながら議論を展開したことで、これは私が二〇〇〇年にその本を書いてから、この十六年間、一貫として変わらずずっと、日経の「経済教室」も含めて、ずっと今日まで訴え続けた政策でございます。
  61. 山田俊男

    山田俊男君 まあ、分かりました。ありがとうございました。
  62. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、藤末健三君。
  63. 藤末健三

    ○藤末健三君 民主党の藤末健三でございます。  本日は貴重な御講演をありがとうございました。  私、お聞きしたいのは、一つポイントございますのは、小幡先生からもお話ございましたけれども、日本がとうとう双子の赤字になってしまうというのは、これはどえらい変化だと思いますよ、私。貿易赤字がどんどんどんどん大きくなり、まあ藤巻先生、百八十円とおっしゃいましたけど、私は、個人的にはJカーブは働かないと思っています、もう、これだけ海外に製造業が出てしまった中では。また戻ってくる可能性はもうよほどの構造改革しなければないと思っておりまして、私は、この貿易収支の赤字の定常化、そして、恐らく貿易収支がどんどんどんどん赤字になれば海外に蓄えられた資産は引き揚げざるを得ない、そうすると経常収支も必ず赤字化するという中で、この二つの赤字、財政の赤字、そして経常収支、貿易収支の赤字をどうするかというのが非常に大きなテーマだと思っています。  特に大きなテーマとしては、一つは、いかに我が国の税収を増やすかという意味で小幡先生に伺いたいのは、一つは人的資本を充実させるか。今まで御質問の中でいろいろお答えいただいていますけど、私は今ある、先ほど議論がありました農業、この農業における新しいイノベーションを起こし、人的資本を形成すること、あとは介護と医療、そして教育という、大きく三つの分野があると思いますので、その分野における人的資本の考え方を是非小幡先生に伺いたいと思います。  そして、二つ目にございますのは、これは山下先生に伺いたいんですが、今日、山下先生から伺いました大きな論点は農業競争力強化ということでございます。  ただ、農業の収支を見ますと、例えば化石燃料は、大体輸入が元々二十兆円だったものが今は三十兆円近くになっている、どえらい赤字と。多分、渡邉先生が次質問されるみたいですけど、続いていただきたいんですが、食料、あれは六兆円なんですね、これも増えています、どんどん。六兆円の食料を輸入していると。ついでに言うと、薬は一兆円です、医療機器一兆円、二兆円。ですから、我が国は、国際収支若しくは貿易収支を黒字にしていなければ、電気はともらない、車に乗れない、食事もできない、ついでに病院も行けないという状況にある中で、農業の貿易収支についてどうお考えかということをお知恵をいただきたいと思います。  そして、三番目にございますのは、岩本先生に御質問なんですけど、この中で非常にインパクトがありましたのは、今まで消費税率を上げても財政赤字が縮小しなかったということで、理由まで伺ったんですけど、じゃ、この問題を突破するためには何が必要か、特に政治家に、我々において、ということを伺いたいと思います。  以上、三点、お願いいたします。
  64. 山下一仁

    参考人山下一仁君) 農業については、確かに大変な額を輸入しているということなんですけれども、実は、農業、農産物の輸入額というのは、トータルの飲食料品の支出額、これは八十兆円ぐらいあるんですけれども、そのうち実は農産物の輸入額は、原材料としての農産物の輸入額だと思いますけれども、一・二兆円ぐらいなんですね、国内農業生産額が八・八兆円ぐらいだったと思いますけれども。だから、実際に今国内で消費している額のうちの輸入額というのはそれほど大きなシェアじゃない。  したがって、二〇〇八年だったと思いますけれども、穀物の価格が三倍から四倍ぐらいに物すごく高騰したわけですね。じゃ、インドとかフィリピンとかでは大変な騒動が起こったんですけれども、日本であのとき食料危機が起こったのかということなんです。確かに、穀物の価格は三倍、四倍になっているんですけれども、あのときの消費者物価指数はたかだか二・六%上がっただけなんですね。という意味からすると、たくさんのものを輸入していますけれども、実はおっしゃるとおりに日本は裕福なわけですね。  したがって、食料安全保障というのは二つの要素から構成されていて、買える力があるかということです。日本は、それは買える力があるからインドとかフィリピンみたいなことは起こらない。それから、アクセスできるかということなんですね。買う者が力があってもアクセスできないという問題があります。これは、この前の東日本大震災のときに、あのとき、あの被災地の皆さん方はお金は持っていたわけです。ところが、物がないから食べられない、大変な思いをしたということですね。だから、この二つが食料安全保障の重要な要素になるということですね。  日本の場合には、買える力、これは今はあるんですけれども、将来とも買える力があるかどうかというのは分からない。そうすると、先ほど来議論がありますように、国内経済力をより高めていく努力を不断にやっていかないと買える力はなくなってしまう。これは食料安全保障上大変な問題になるということがあると思います。  それからもう一つは、アクセスできるか。幾ら買える力があったとしても、例えば日本の周辺でシーレーンが破壊されて、アメリカオーストラリアの船が日本に、港に入ろうとしても入れないという状態も想定されるわけですね。そのときは国内生産で対応せざるを得ない。そのために必要なのは、いかにして農地面積を確保していくかということなんですね。  そういう観点から、やはり農業政策というのはやはり必要なんだろうと。そのためにどういうふうな観点から農業政策を展開するのか。やはり食料安全保障とか多面的機能と言う以上は、やはり農地をこれ以上減らしてはいけない、そういうふうな観点から今の農政は再構築すべきだというふうに私は思っています。
  65. 小幡績

    参考人小幡績君) ありがとうございます。  税収の話は、私は税収増に対しては悲観的で、大きな政府、小さな政府と両方考え方はあると思うんですけれども、現状では、悪貨が良貨を駆逐するという言葉かもしれませんけれども、国際競争が激しい中で税率を上げるということはやっぱりできにくくなっているので、本来、税収を確保して大きな政府がいいと思ったとしても、今や実現困難となっていると思いますので、もうやむを得ず、税収の伸びを期待せずに歳出をどこかで絞っていかざるを得ないというのがやむを得ない現状だと思います。それがいいとは思いませんが、現実的にはそれしかないと思っています。  ただ、その中でもできる限り効率的に税収を確保するということで、イノベーションというのは藤末先生の一番お得意なところだと思うんですけれども、よく御存じのように、経営者ですらどうすれば企業内でイノベーションを起こすことができるかと分かっていないですね、経営学でも。イノベーション、どう起きるか分からないので、政策で起こすことは私は基本的には無理じゃないかと思っています。  それで、いろんな規制、介護、医療、教育、全部その規制が絡んでいていろんな問題がある分野ですけれども、結局は、政府が全くタッチしない場でイノベーションって必ず起きてきていて、グーグルにしてもアップルにしても、そういう企業日本にやや足りないだけのことですから。その規制改革ももちろんいいんですけれども、それ以外のところで自由に起きるのを見守るしかないというのは、残念ながら一つあるかなと思う。  ただ、その規制の範囲内でいえば、文部省の問題、厚生省の問題でいろいろ省の問題あるにしても、教育でも医療でも何かリーダーが中から出てこないといけないので、誰かに、その今の制度でも、秋田にある某大学ではうまくいったとか、いろんなところがありますから、誰か改革のリーダーが中から出てくるのを待つしかないので、政策の責任じゃ僕はないんじゃないかなと思っているんです。済みません、今日のには余り参考にならないかもしれません。
  66. 岩本沙弓

    参考人岩本沙弓君) 政治家の皆様にどういった御提案をというところなんですけれども、やはり、例えばリベートと今日申し上げましたけれども、この話をすると、これは大企業とか輸出企業さんのバッシングなんだとよくこれまでは言われていたんですけれども、やはり消費税の性質というのをいま一度皆様でお考えいただいて、やはりリベートありきの税金なんだというところが一つありますので、じゃ、これどうしていこうかと。別に輸出企業さんをバッシングしているわけでは決してないんですけれども、例えば消費税が導入されて以来、じゃ、輸出企業さんは消費税として納税をしているかといったら、そんなこと一度もなくて、全く納税していないような状態と。むしろ還付を受けているような状態だと。これが本当に果たして税金としてフェアなんだろうかという議論が必要かと思いまして、今の段階だと八%で四兆円ぐらい出てきますので、この四兆円を、申し訳ないんですけれども、輸出企業さんの方には渡さずに、やはり財源の方に維持していただくと。  ただ、もう一つ、もう一方で、とはいえ、輸出企業さんもグローバル社会の中で競争していて、非常に過酷な競争の中で生きていらっしゃるというのは重々承知しておりますので、じゃ、そこをどうやって日本政府として助けてあげられるかといえば、やはりOECDで出てきました世界同一税制のようなそういったところのスキームですね、日本企業が、グローバル企業が多いからこそ、政府主導で積極的に参加していただいていって、イニシアチブを取っていただくというのが非常によろしいかなと。  繰り返しになりますけれども、元々、アクションプランというのは言い出したのは実はアメリカであって、そこにイギリスが乗っかってという動きで、アップルさんですとかグーグルさんですとか、ついこの間はキャタピラーさんがアメリカの中で脱税しているとかといってありましたけれども、今何をしているかというと、今税金払っているというのは、どこの国民でも愚直な人たちが払っていて、ほかの人はどうも避税になっていると。節税は皆さんの権利です。脱税は違法行為です。グレーゾーンで避ける税金というのがありますけれども、このグレーゾーンをどうしましょうかという動きになっていますので、しかもスピードが非常に速いわけですから、是非ここに日本としても加わっていっていただけたらなと思っております。
  67. 藤末健三

    ○藤末健三君 ありがとうございます。  終わります。
  68. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 渡邉君。
  69. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 自由民主党の渡邉美樹であります。  お時間のないところ済みません。簡単に小幡参考人山下参考人に質問させてください。  一つは、小幡参考人に。  十六ページの二〇一四年以降ということで、いずれもどこかで下降に向かうということでこちらにコメントがございます。この調査会デフレ脱却でございますから、じゃ、脱却して下降に向かわせないためにはどのような成長戦略があるとお思いか。二十ページにその方策が書いてあると思うんですが、二十ページの方策ではデフレ脱却にはつながらないと思いますので、もしよろしかったら教えてください。  それから、山下参考人に御質問させていただきます。  大変共鳴いたしました。共感させていただきましたし、共鳴もいたしました。農協法第九条の廃止というのは私も本当に大賛成であります。  その中で一つだけ御質問をさせていただきたいのは、減反の廃止というところで、私も会議にずっと参加しておりまして半歩前に進んだのかなというふうに思っておったんですが、参考人の御意見聞きますと、減反の廃止どころか減反の強化につながるという、このような御意見がありました。どのような視点でこのようなことを言われているのか、それだけ教えてください。
  70. 小幡績

    参考人小幡績君) 端的に言うと、下降に向かわせないといけないということだと思います。つまり、景気循環ですから、下降させないように無理にカンフルを打ち続けると病気になってしまうので、循環ですから、いいときもあれば悪いときもあるので、良くなれば悪くなるんですね、波からいけば。だから、波が落ちているときに無理やりそれを上げる、短期的に戻したところで、それはもう一時的なカンフル剤打ち続けるしかないので、それは下降させる方がいいということです。それを無理に上げると、山高ければ谷深しということで下降もひどくなるということで、またそこで打たなきゃいけなくなるので逆効果だと思います。  そうではなく、多少の景気循環の波でも、いろんな企業が倒産したりいろんな人が食べていけなくならないように成長力の底上げを図らなければいけない。長期的な成長力の底上げを図るべきであって、そっちの方に資源を投入すべきであるので、循環に対して過度に下降するのを抑えようとしてお金を無駄遣いしない方がいいというのが私のメッセージです。  以上です。
  71. 山下一仁

    参考人山下一仁君) 詳しくはこの関連資料の中に、ダイヤモンド・オンラインというところに詳しく書いているのでそれを御覧いただきたいと思うんですけれども、減反補助金というのは二つあります。  一つは、民主党が二〇一〇年から導入した戸別所得補償ですね。これは米の生産目標数量、これは昔の減反の目標面積の配分なんですけど、これとリンクさせたわけですね。これを自民党は廃止するというふうなことをつかまえて、戸別所得補償を廃止すればそれとリンクした米の生産目標数量も自動的に廃止されるということで、これをつかまえて減反の廃止というふうに大変な大きな誤報をしたということだと思います。  ただし、従来から、一九七〇年から四十年間以上続けてきたいわゆる減反補助金、米以外のものを作ると幾ら払うというのは、戸別所得補償をやめたものを原資として、更にこれを厚みを増して増やしていると。特に、米粉とか餌用の米の減反補助金は、今十アール当たり八万円を最大十アール当たり十万五千円、十万五千円というのは主食用に売った値段とほとんど同じ収入額ですから、そこまで増やすと。これは基本的には減反の廃止ではないのではないかと、実はそういうふうなことを申し上げて、二月の五日ぐらいでしたか、衆議院の予算委員会で安倍総理も減反の廃止とおっしゃっていたわけですけれども、あれは分かりやすく国民に説明しただけだというふうにおっしゃられて、減反の廃止という発言を撤回されたというふうに理解されています。米農家にお金をあげて供給量を削減して米価を高く維持する、この減反政策の本質は一切変わらないということだったと思います。
  72. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 はい、分かりました。  ありがとうございます。
  73. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 他に御意見ございませんか。──意見もなければ、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  この際、一言御挨拶を申し上げます。  山下参考人小幡参考人及び岩本参考人におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただき、誠にありがとうございました。おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。  会長から一言御寛容のお願いを申し上げますが、熱心さの余りいささか過激な質疑があったと思いますけれども、どうぞこの調査の意味、熱心さをお酌み取りをいただきまして、先生方には御寛容いただきますようにお願いを申し上げ、また、我々の同僚議員にも御寛容いただきますことを会長からお願いを申し上げまして、終わりの御挨拶とさせていただきます。  お礼の御挨拶を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会をいたします。    午後四時散会