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2014-05-08 第186回国会 参議院 国土交通委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年五月八日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  四月二十二日     辞任         補欠選任      河野 義博君     山口那津男君  四月二十三日     辞任         補欠選任      山口那津男君     河野 義博君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         藤本 祐司君     理 事                 赤池 誠章君                 渡辺 猛之君                 田城  郁君                 広田  一君                 魚住裕一郎君     委 員                 青木 一彦君                 江島  潔君                 大野 泰正君                 太田 房江君                 北村 経夫君                 酒井 庸行君                 豊田 俊郎君                 中原 八一君                 野上浩太郎君                 森屋  宏君                 田中 直紀君                 野田 国義君                 前田 武志君                 河野 義博君                 室井 邦彦君                 田中  茂君                 和田 政宗君                 辰已孝太郎君                 吉田 忠智君    国務大臣        国土交通大臣   太田 昭宏君    副大臣        国土交通大臣  高木  毅君        国土交通大臣  野上浩太郎君    大臣政務官        国土交通大臣政        務官       坂井  学君        国土交通大臣政        務官       土井  亨君        国土交通大臣政        務官       中原 八一君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 利幸君    参考人        筑波大学システ        ム情報系社会工        学域教授     谷口  守君        関西大学経済学        部教授      宇都宮浄人君        富山高等専門学        校国際ビジネス        学科准教授    岡本 勝規君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○地域公共交通活性化及び再生に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。  都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案及び地域公共交通活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。太田国土交通大臣
  3. 太田昭宏

    国務大臣太田昭宏君) ただいま議題となりました都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案及び地域公共交通活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  まず、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  我が国地方都市では拡散した市街地で急激な人口減少が見込まれる一方、大都市では高齢者の急増が見込まれる中で、健康で快適な生活や持続可能な都市経営を確保することが重要な課題となっております。この課題に対応するためには、都市全体の構造を見渡しながら、住宅及び医療福祉商業その他の居住に関連する施設誘導と、それと連携した公共交通に関する施策を講じることにより、市町村によるコンパクトなまちづくり支援していくことが必要です。  このような趣旨から、この度この法律案を提出することとした次第です。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、市町村は、住宅及び医療福祉商業その他の居住に関連する施設立地適正化を図るため、立地適正化計画を作成することができることとしております。  第二に、市町村は、立地適正化計画都市機能誘導区域を定めることができることとし、この区域内に誘導すべき施設について容積率規制等の緩和や民間都市開発推進機構による民間事業者に対する支援を措置することとしております。また、この区域外において当該施設建築等を行おうとする者は、事前届出をしなければならないこととし、市町村長は必要な勧告をすることができることとしております。  第三に、市町村は、立地適正化計画居住誘導区域を定めることができることとし、この区域内において住宅整備する民間事業者による都市計画景観計画提案制度を創設することとしております。また、この区域外において一定規模以上の住宅建築等を行おうとする者は、事前届出をしなければならないこととし、市町村長は必要な勧告をすることができることとしております。  その他、これらに関連いたしまして、所要規定整備を行うこととしております。  次に、地域公共交通活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  我が国においては、人口減少少子高齢化が加速度的に進展することにより、公共交通事業を取り巻く環境は年々厳しさを増しております。特に地方部においては、公共交通機関輸送人員減少により、公共交通ネットワークの縮小やサービス水準の一層の低下が懸念されております。一方で、人口減少社会において地域活力を維持し、強化するためには、コンパクトなまちづくりと連携して、地域公共交通ネットワークを確保することが喫緊の課題となっております。  このような状況を踏まえ、地域総合行政を担う地方公共団体が先頭に立って、関係者の合意の下に、持続可能な地域公共交通ネットワークをつくり上げるための枠組みを構築することが必要になります。  このような趣旨から、この度この法律案を提出することとした次第です。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、法律の目的において、昨年末成立した交通政策基本法基本理念にのっとり、地域公共交通活性化及び再生を推進していく旨を追加することとしております。  第二に、地方公共団体は、国が策定する基本方針に基づき、持続可能な地域公共交通ネットワークを形成するための計画を作成することができることとしております。  第三に、地域公共交通再編を促すため、地方公共団体支援を受けつつ、路線や事業内容変更等を行う地域公共交通再編事業を創設することとしております。国の認定を受けた地域公共交通再編事業については、関係法律特例措置等各種支援措置を講ずることとしております。  その他、これらに関連いたしまして、所要規定整備を行うこととしております。  以上が都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案及び地域公共交通活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案を提案する理由であります。  これらの法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。
  4. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。     ─────────────
  5. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案及び地域公共交通活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会筑波大学システム情報系社会工学域教授谷口守君、関西大学経済学部教授宇都宮浄人君及び富山高等専門学校国際ビジネス学科准教授岡本勝規君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記を止めてください。    〔速記中止
  7. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  8. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) 都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案及び地域公共交通活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、参考人方々から御意見を伺います。  この際、参考人方々に御挨拶申し上げます。  本日は、大変お忙しい中、本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、谷口参考人宇都宮参考人岡本参考人の順序でお一人十五分ずつ御意見をお述べいただきます。その後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、よろしくお願いします。  それでは、まず谷口参考人にお願いいたします。谷口参考人
  9. 谷口守

    参考人谷口守君) 谷口でございます。よろしくお願いいたします。  済みません、それでは着席で御説明させていただきます。  私、都市計画専門としておりまして、特に都市構造、それと、実際にそこに住まれている方の交通行動とか環境負荷とか、そういうものを実際のデータで分析して研究している者でございます。そういう意味で、この審議にそういうデータ等参考になればということで資料を作成してまいりました。お手元の十五ページほどの、筑波大学谷口守と書いてございます「これからの都市の「形」」という資料で御説明させていただきます。  まず最初、繰っていただいて二ページ目なんですけれども、一応これ共通認識ということで最初にお話しさせていただければと思うんですが、今回の法改正都市再生特別措置法改正とそれから地域公共交通活性化再生法の件ですけれども、これは都市の形がいろいろございますけれども、この一番左側の形ですね、公共交通が主軸になっていて、その中で駅の周辺とかターミナル周辺がしっかり中心ができているという、コンパクトな形になるべく都市を持っていこうというふうな趣旨で考えられているものかと思います。  逆の、一番右側が、例えばアメリカロサンゼルスとか、もう完全に自動車に依存してしまうと右側のような都市形状ができるというふうなことで、都市形状というのは大体こういうふうに分かれるわけですが、なるべく左側の、そういう公共交通沿いにいろんな都市機能が集まってコンパクトな形で歩いて暮らせる町になるべくしていこうということのメリットは、当然その方がこれからの高齢化社会で暮らしやすいとか、あとエネルギー負荷が小さくなるとか、無駄な投資、それを減らせるとか、あと健康に良いとか、公共交通機関のそういう採算性も良くなるというふうな一石五鳥、六鳥の政策になろうかというふうに考えております。だから、いかにしてこの左側都市の形を持っていくかというふうなことがこれからの政策のポイントになろうかと思います。  繰っていただきまして三ページ目でございますけれども、三ページ目のところでこういう、済みません、研究分野資料で申し訳ないんですが、都市構造を議論するときに必ず出てくる図でございますので、御紹介させていただきます。  左側の方の図が世界の各都市でございますが、その世界の各都市が、人口密度、どれだけコンパクトに住まれているかということですね、ということが横軸になっておりまして、あと縦軸が、その町にお住まいの方の一人当たり自動車燃料消費量ですね、つまり、どれだけ車に依存している生活をしているかというのが縦軸になってございます。  ということで、一番人口密度が低くて左側の端っこにあるのが、ずっと上にサクラメント、ロサンゼルス、シカゴというふうに名前がございますが、これがアメリカの諸都市です。その下にカナダとかオーストラリアの都市が来ると。この辺りの都市が全然コンパクトでない町ということです。もっと分かりやすく言うと、これは新大陸の都市でございます。自動車ができてから、普及してからその都市ができたということで、自動車を前提にした都市づくりをするとこういうふうな形状になる。  右側にずっと行きますと、アジアの方の都市右側に出てくるんですが、一番人口密度が高くて一人当たり自動車燃料消費量が低いのは、例えばここでは香港という例で挙がっているということです。  右側の図が日本都市の実際のデータ分析ですが、形状としては同じようになっているということで、大体、市街化区域人口密度が倍になりますと一人当たりガソリン消費量は半分になるという、そういう構造日本都市はしてございます。  で、これは都市ごとのお話なんですが、もう一ページ繰っていただきますと、四ページなんですが、じゃ、コンパクトな町をつくりましょうといったときに、我々がいきなり香港をつくれるかというとつくれない、それは無理なわけでございます。どうしたらいいかということは、我々のできることを考えていかなきゃいけないということで、そういう意味でいきますと、この四ページの左上にございます、市全体の中でいろんなパーツがございます。町の中にはいろんなパーツがございます。駅の近くであるとか郊外とか、そういう個々の場所を、一つ一つ場所をどうやって手を入れていけばより良い町になるかということを考えていかなければならない、それが実際我々取れる手段だということになります。  そういうことで、同じような図を、全国の二千の住宅地を持ってきまして、それぞれのところに住まれている方の一人当たり自動車燃料消費量縦軸に、横軸にその地区の人口密度を取ると、この右側のような図になってくるということになります。右下に行くほど公共交通利便性が大きい住宅地であり、なおかつ土地利用のコントロールがしっかりなされている、そういうふうなコンパクトな住宅地というのが右下に来ると。あと、赤いところは商業系でございますけれども、そういう駅前のところとかが一番下側に出てくる、環境負荷が低くて歩いて暮らせるような構造になっているということになります。  五ページに行っていただきますと、そういう町でお一人一人がどれぐらい歩いているかというふうな情報も併せて整理してございます。これは、楽しく町中を歩いていただくという意味では、やっぱりこの上側の人口密度が百人以上、駅から非常に近いところにお住まいの方は徒歩量が非常に多くなっています。あと、下の方の郊外の準工業地域という土地利用計画が余りきちんとされていないようなところでは、車に依存するような形で、健康まちづくりの上でもうちょっと歩行を促進していくというふうな必要があるというふうな差も見えてございます。  六ページに行っていただきまして、このようなことで、日本コンパクトシティー政策が議論し始めたのは二〇〇〇年以降なんですが、現在に至りますまで、その重要性がいろんな、国ももちろんそうですし、地方自治体でも認識がされるようになってまいりました。地方自治体都市計画は基本的にマスタープランというものの中でその基本方針が記載されてございますが、その記載の中に果たしてコンパクトシティーという政策が掲げられているかどうかということを、これを丹念に全部集めまして読んで分析したのがこの六ページの例でございます。  これは、下の表にありますような大都市圏から地方圏都市で何年頃にマスタープランを作成して、それぞれの中に、コンパクトシティーとか、あと都市の低炭素化とか、関係する政策がどれだけきちんと記述されているかということを整理したものでございます。黒が割と昔からそういうプランを作られているところですね。青、赤になるに従って、最近になるに従ってそういうプランを作られた都市ということになります。  これを見ていただきますと、最近、赤の四角ですね、それがコンパクトシティーのところに非常に増えているということで、地方圏都市においてもそういうコンパクトシティー政策を積極的に取り入れようという自治体が増えてきたということがお分かりいただけるかと思います。その中でもいろんな目標を持たれてこういう都市集約化を進めようとされている。例えば、都市活力を高めようとする。あと都市経営ですね、郊外への投資よりも都心に対して重点的に投資をすることで都市全体の投資効率化を目指そうということで都市経営を目指される、改善を目指されている。あと、当然、周辺の緑を保全することにもなりますので、環境保全を主眼に置かれている都市というふうな形でコンパクトシティーを採用されている都市が倍々のような形で五年ごとに増えてきているというのが実態でございます。  次のページへ行っていただきまして、ところがなんですが、じゃ、実際にこういうプランはできているんですけれども、各自治体の方が本心ではどう思われているかということも実は興味の対象でございまして、いろんな地方講演とかさせていただく機会に、コンパクトシティー説明をさせていただくのと併せて、実際どう思われていますかということを地方行政担当者の方にアンケートをしてまいりました。  実際対象となったのはこの七ページにございます九百三十六名の方で、うち五百二十七名が地方公務員で主に都市計画担当をされている方で、百三十の自治体の方から回答をいただいております。一番北は北海道から南は沖縄まで、一番小さい町は鳥取県に日吉津村というのがございますが、そこの担当者の方からもいただいております。  その結果が結構ショッキングなんですが、八ページでございまして、八ページで、一回の講演でアンケートしておりますので、その講演を聞く前と後でどうでしたかという差をお尋ねしております。  これ、皆さん、聞いてくださっている方は非常に気を遣われている方ばかりで、私の話を聞いてよく分かったと赤の方が増えているんですが、そこを見ていただきたいのではなくて、見ていただきたいのはここ、オレンジで囲っております。たくさん質問項目あるんですが、その中のDというところのコンパクトなまちづくり実現可能性はあると思いますかというところに関しては、これは五段階評価の平均なんですが、一・七一なんですね。これ、考え方を受け入れられるかとか、ほかの項目に関しては皆さんそこそこ平均的に回答されているんですが、できると思いますかということに対してはネガティブ、行政担当者の方は無理だと思っているというのが実は実際のところでございました。だから、プランには書くんだけれども無理じゃないかというのが正直な気持ちだったのではないかと思います。  じゃ、なぜ無理ですかというのをお尋ねしたのが九ページの一覧でございます。  九ページのところで、どうしてコンパクトなまちづくり難しいと思いますかという、行政面での障害の部分に対して回答を抜き出したものなんですが、一番は予算がない、それに対応する予算がないということですね。あと、既に決定された計画があるということですね。あと制度がない。それから、公共交通サービスレベルが低過ぎる。あと都市構造公共交通利用に適していないなどといった項目上位に挙がってきております。あと、もうちょっと下の、星が付いております適切な事業手法がないというところまで合わせますと、いずれも今回の法律改正改善が期待されている項目だというふうに考えております。  実際問題、やろうというふうに各自治体の方は思われているんですが、なかなかできない。それはなぜかというと、ここのように書いてあるこういうことが大変だったということで、そこのところを乗り越えるという意味で今回考えておられる法改正というのは非常に意義があるものではないかというふうに考えております。  残された時間で、十ページ以下の、具体的なコンパクトシティーの例ということで、参考になるかも分からないという海外事例を載せさせていただきました。  十ページ以降にございますのは、カールスルーエというドイツの人口二十万人程度の町でございます。人口二十八万人なんですが、日本で申しますと、県庁所在地だと、人口二十万人ぐらいというと徳島徳島市とか、あと茨城県水戸市とかのクラスになるんですが、この町が、十一ページ、次のページを見ていただきますと、これは平日の午後、昼下がりなんですけれども、都心でこれだけの人が出ているということでございます。非常ににぎわっておりまして、これ道路の断面見ていただきますと、基本的に公共交通とそれと歩行者のみというふうな道路構成になっているということですね。  ここの町が、結構プランをきちんと考えようということで、次のページの十二ページにお示しするような形で、このFプランという、これはマスタープランに相当する上位計画のものなんですが、こういうプランを作っております。オレンジ色ラインというのは、これはLRTのラインでございまして、百二十キロもちょっと整備して、非常に整備している自治体なんですけれども、そこの大事なターミナルですね、そこをキーにして、A、B、C、Dというふうな形で都市機能をそこにうまく持っていこうというふうなプランを作っておられるということになります。  十三ページを見ていただきますと、その町中の典型を幾つか入れておりますけれども、例えばAですと、高齢者の方が問題なく町中を移動できるようにということで、沿道も含めて整備を考えるということですね。あとBですが、これはプラットホームとかをわざわざ造らないで、非常にコストを下げた形でターミナルをきちんと造っているとか、あとCロケーションシステムですけれども、どれぐらいの頻度で次やってくるかというのがこれ見えるかと思いますが、非常に高頻度サービスをしているということですね。そういうふうなサービスをすると、Dにありますように、大きな荷物を持った買物客の方でも自動車を利用せずに町中に出てきて公共交通を使って生活をしようということになるということでございます。  あと、十四ページ、これは最後の一枚でございますが、やはり日本空間づくり全体をもうちょっと見直さなければいけないということで、EとF、済みません、国内の事例ですけれども、対比的に入れております。  Fは、例えば交通安全を一生懸命配慮したんだろうと思うんですけれども、歩道とかをいっぱい造っていると思うんですけれども、実は結構逆に危なくなっているというものですね。Gのように、逆にこういうふうに女の子が遊んでいるような、車を入れないで、これトランジットモールと申しますけれども、公共交通歩行者だけのスペースを造るというふうな形が期待されるということです。  Hはカールスルーエ町中、平日昼下がりで、これ大学生が大学をサボって遊んでいるのかなと思うんですが、日本大学生はなかなか町中で遊ばないので、大学生町中で遊ぶような、そういう風景が生まれればよいかなというふうに思っております。  以上、雑駁でございましたが、説明とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  10. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) ありがとうございました。  次に、宇都宮参考人にお願いいたします。宇都宮参考人
  11. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) 宇都宮でございます。よろしくお願いします。  では、私も座ってお話をさせていただきたいと思います。  私でございますが、私は交通経済学あるいは経済統計学というのを専門にしておりますが、都市と交通の問題にはそういう意味で大変関心を持っており、これまでもそういった研究者あるいは一市民の立場から都市交通あるいは地域の問題について物を書き、あるいは発言をしてまいりました。今回も、そういう意味で、海外の調査や経験等も踏まえながら私なりの御意見を申し上げていきたいなというふうに思います。  今回のまず法律改正でございますが、あらかじめ申し上げれば非常にいい方向性であるなと思っておりまして、是非これを推進していきたい。言い換えれば、ただし、それを是非実効性のあるものにしていただきたいなというふうに思っております。逆に言えば、それが実効性がなければ結構日本の状況は厳しいのではないかと、そういう問題意識も持っているということで、海外の事例も含めながらお話をしたいと思います。  資料でございますが、三ページにまず海外の件をちょっとだけ載せております。  現状認識として、日本の現状がかなり厳しい状況であるということは先生方御存じかと思いますが、少し海外を見るとちょっと違った絵が見えてくると。つまり、ここではドイツの例を挙げてございます。実を言うと、ドイツというのも日本と同じように、人口日本より先に減少していて、さらに高齢化が進み、六十五歳人口が既にもう大分前に二〇%を上回ると。更に言えば、やはり車社会というのはこれはもう避けて通れないわけで、ドイツでもいまだに自動車保有台数は増えている。にもかかわらず、地域公共交通、ここでは都市圏の近距離交通も含めるわけですが、そういったものの利用は増加しているということです。  実際ドイツに行きますと、先ほど人口二十万とかいうお話ありましたけれども、そういったカールスルーエのような町が大変なにぎわいを見せている。日本であればシャッター街であると。この彼我の差は何かあるだろうなと、これはやはり何か政策的な問題があるのではないかという気がするわけでありまして、先ほど谷口先生の紙にもありましたとおり、LRT、公共交通が人を運び、町中が人でにぎわっていると、こういう姿があるわけです。  それで、一枚めくっていただきますと、今度フランスの事例もちょっとだけ書いてございますが、フランスは実はドイツと違って路面電車、このLRTと呼ばれるものを一度全部廃止しました。そういう意味自動車社会にやはりなったわけですが、実はドイツはかつてあるものをそのまま生かしている、フランスはそれを復活させているわけですね。しかも、これ見ていただくとお分かりのように、ほとんど二〇〇〇年以降に、人口十万前後、フランスの場合は都市の規模が小さいので日本でいうと六掛け、八掛けかもしれませんが、いずれにしても、日本でいうところの人口二十万前後の町がこういった新しいLRT、都市交通を導入することによってやはり同じようににぎわいを取り戻しているということです。  かつては自動車であふれ空気が汚れていた町が復活している、こういう事実があるということを考えると、言い換えれば、日本においても何かそういうことを考えていく必要があるのではないかということを感じるわけであります。  次のページは、実際に海外の地域公共交通の動向のうちLRTがどれぐらい増えているかというのをグラフで表しております。これは、ドイツのように、あるいは日本の広島のように、かつてからある路面電車は含まれておりません。全く新規、あるいは一回廃止してしまったものを新たに造り直したLRTと呼ばれる次世代型路面電車、これだけをカウントして、今やこの三十年余りに百四十を超えるに至っていると。ちなみに、日本は富山のライトレール一か所だけであります、廃止のケースはありましたけれども。こういう現状があるということで、やはり何か日本世界というのは、政策的な違いがこういうことをもたらしていないかということが考えられるわけです。  それで、次に、私の意見としては、日本の常識は世界の非常識という観点から幾つか、何点か申し上げたいと思います。  まず、日本の場合、公共交通は黒字経営が基本であると。これはこれで一つの考え方でありますし、実際民間事業者が頑張って収支を得ている、これは重要なポイントでありますが、経済学を勉強した人間からすれば、市場メカニズムというのは市場の失敗がある、交通というのはその典型であるということが書かれているわけです。  実は、諸外国では、例えば建設コストも含めた資本コスト、これはもう公的資金で賄うのが基本であります。イギリスの場合は一部それを民間資金を入れるPFIとか議論が始まっていますけれども、これはあくまで社会資本であるというのがもう当然のように常識なわけであって、日本はたまたま、戦後あるいは高度成長期からバブル期まで地価が上がり、右肩上がりで人口が増えと、こういう時代で建設コストが回収できたわけですけれども、そういうことというのはある意味で特別な時代の話であって通常はあり得ないよと、こういう発想であります。これが一つ。  更に言えば、日本の場合は、当然運行費用も運賃収入で賄う、これが当たり前なんですね。よく、これができていても金利払いがあるので赤字だよといっていろいろたたかれるわけですが、実は海外ではそもそも運行費用も運賃収入でカバーすることを求めていないわけであります。別に、都市の一装置である、社会資本である移動装置を、その単体の事業の収支で合わせる必要があるんですかと。それはあたかも、百貨店がエレベーターという装置を設置して、移動手段としての装置を設置していて、エレベーターに百円とか二百円取って、エレベーターのメンテナンス代、電気代、そういった費用を賄って、エレベーターだけで単体の収支取らないのと同じですね。こういう発想なわけです。  実際、それぐらい収支が合うぐらいであればむしろ安くしようみたいな発想すらあるわけで、次のページ見ていただくとかなりの補助率が出ているし、これちょっとデータ古いんですが、最近新しいデータで見ても、やっぱり五十都市辺りぐらい調べても、大体中央値は、運賃で賄えるのはまあ半分前後かなと、こういう状況が一つあります。これがまず一つ目の日本の非常識。  それから次は、都市内の公共交通事業者、当然民間ベースですので市場競争というのが原則になっています。私自身は、非常に、民間活力を生かし、効率的な経営を行い、サービス向上を目指す、これは重要だと思っているし、運行を民間でやること自体は全く異存はありませんが、実は、効率的な資源配分と経済学者は言うわけですが、それはやっぱり調整も必要なんですね。  例えば、ダイヤ調整。今回の法律出ていますけれども、もし競争して、ゼロ分、二十分、四十分のバスに対して次の競争相手はどうするかというと、一分前の五十九分、十九分、三十九分と、こういうバスのダイヤを設定するわけです。そうすると、確かに競争はしているけれども、利用者であるバスの利用者は結局、ゼロ分を逃した後、十九分まで待たされるわけです。これがもしダイヤ調整してゼロ分、十分、二十分になれば十分で済む。この待ち時間九分というのは、経済学的には極めて資源配分が無駄だという言い方をします。なぜなのか。待たなければならないわけですから、その間待つということはすごい資源の浪費なわけです。こういう非効率なことが起こる。  あるいは、日本の場合は運賃も統合されていません。海外では大体、交通計画主体が運賃統合までして共通運賃制、ゾーン運賃制やります。日本はそれぞれ異なる。どういうことが起こるか。例えば、本来であればJRと地下鉄とを組み合わせて行けば最も早い距離であっても、いや、そうすると高くなるから、ぐるりと回って地下鉄に乗ろうとか、あるいは電車は使えないからバスだけ乗ろう。これは結果的に、我々の労働も含めた資源を非効率にゆがめているわけです。だから、そういう意味では、経済学者からすると、こういう仕組みというのはやっぱりよろしくないわけですね。なので、こういう意味で、今の日本の市場原則というものを公共交通市場に単純に生かすわけにはいかないであろうということであります。  それから三点目として、道路の件ですけれども、自動車の円滑な通行、これが交通の発達、これ重要です。私は自動車を全く否定しませんが、やっぱり空間利用ということを考えたときに、自家用車に占拠されるのがいいのか、公共交通誘導する方が結果的に自動車も含めて便利になりますよというのが、この左の下の、これはストラスブールの図なんです。  それから、もう一枚めくっていただきますと、実は道路というのは、今実際各地でいろいろやろうとするとすぐ渋滞という問題が起こるわけですけれども、本当は、自動車の円滑な通行も重要だけれども、歩行者だって自転車だって、あるいは沿線住民も利用するわけです。  それで、先ほど谷口先生の写真にもありましたとおり、トランジットモール、歩行者公共交通の専用空間、これでき上がっているわけですね。これはもう世界中あるわけです。日本ではほとんどありません。厳密に言うとバスで一部ありますが、そもそも路面電車入れないんですね、これ道路交通法で。何でも、歩行者専用道路に車両が入る場合は一応許されているんですが、車両等となっていないので路面電車は入れないと。したがって、日本では路面電車は、トランジットモールは、現行制度では駄目らしいということが現行の法解釈であると、こういう非常にナンセンスなことが起こっているわけです。こういったことはやっぱり改めていく必要があるんじゃないかなと思うわけです。  ちょっと次、ページ飛ばしまして、三。じゃ、どういう形で総合的な政策を目指していくかということで、私なりに一つ、私というか、世界の交通経済学の人がシェアしている一つの考え方があります。STOと言われています。要は、より良い交通政策、社会を築く上でSとTとO、すなわち、戦略であるストラテジーと戦術であるタクティクス、そしてオペレーションがあると。戦略というのは、交通政策どうすべきかとか、市場シェアどうすべきかとか、どういう地域にどういうターゲットでやるかという長い意味での戦略。戦術は、例えば共通運賃にするのか、どんなイメージの車両を走らせるのか、あるいはどんなダイヤにするのか、こういった戦術がある。そして、実際の運行がある。こういう整理が大体世界の交通経済学者ではシェアされています。私もこのSTOをベースに少し整理をしてみました。  次のページですけれども、私は、今回、交通政策基本法ができ、あるいは今回の法改正の理念的な意味でのストラテジー、戦略というのは大分明確になってきたと思うんですが、じゃ、それを実現するための戦術はどうかと。幸い、ヨーロッパなんかでは実はこのオペレーションの部分も非常に問題になるんですが、日本の場合は、いろいろ問題があるとは言われますが、現場は結構堅実だなと思っていますので、私はやっぱりこのタクティクスをもう少し確立すべきであろうなというふうに感じております。  そこで、私なりに最後に意見を幾つか述べて締めたいと思いますが、まず一つ、真に総合的なということなんですが、これまでも総合という言葉は常に使われてきました。しかし、ともすると総花的になりかねません。海外では、かつては総合政策日本で訳していたコーディネーションポリシー、言わば個別単位の調整をやっていたわけですが、今はインテグレーテッドポリシー、つまり一つ一つの要素を組み合わせて一体化した政策にすると。さっきの運賃にしてもダイヤにしても、A社とB社が争ったのでそこを調整しましょうじゃない、都市計画全体の中で統合して交通を考えていく、こういうポリシーにしていく必要があると。これ、海外の状況であります。  したがって、単に単純なダイヤ調整ではなく、路線、ダイヤ、更に言えば、それは鉄道間だけではなく鉄道とバス、あるいはバスと場合によっては自転車、あるいは車の駐車料金政策も含めた、こういったものがなければいけない。言い換えると、日本の場合はパーク・アンド・ライドをしても、駐車料金を払ってその後もう一回電車賃を払う、こんなことするぐらいだったらそのまま車で行っちゃおうみたいな話になってしまうわけですね。ということがないようにする必要がある。  あるいは、公共交通に移動するのであれば、車も重要だけれども、都心まで車で来られる方、社長さん、忙しい方、そういう支払意思の高い方は来てもらってもいいよ、ただし都心の駐車場は高くするよと、こういった傾斜的な駐車料金の制度とか、こういったものを含めて全体、統合的な政策が必要なんではないかということが一つ。先ほど来申し上げている初乗り運賃が会社ごとに取られるなんていうのも、そういう意味で変えていく必要があるのではないかというのが一つ。  それから二つ目ですけれども、ここに書いてあるのは、自家用車との適正な役割分担ということも、これは法改正等でも出していますが、具体的に強力に推進してもらう必要があるということで、やはり中心市街地の道路というものは公共交通優先にする、もちろん郊外は車も使っていただく、こういったものをもう少し明確にメッセージ出してほしい。逆に、中心市街地であれば、多分日本で見たことないのでいろいろ問題あるんでしょうけれども、バスと例えば路面電車の通路共用、こういうのが当たり前のように海外では行われているわけですね。例えば、こういう形で公共交通というものを一体化してやっていくような制度も可能じゃないかなというふうに思うわけです。  それから最後、そういったもろもろの統合的な政策をするに当たって、やっぱり広域調整機能というのは担保していただかないといけない。交通というものは一つの行政、自治体で収まるものではありません。場合によってはそれぞれの自治体同士の利害が対立することもある。そこの主体を明確化することによって真に総合的な政策を目指していただくと。  とにかく、今回の法改正によってやはり強いメッセージを送っていただきたい。確かに県が調整に入ると。でも、私聞きますと、やっぱり県もできるんでしょうぐらいで、現場の自治体の方って何か腰がまだ引けているわけですね。そうではないんだと、今後はこういう方向でやっていくんだということをメッセージとして出し、先ほど日本の常識、世界の非常識と申し上げましたが、やっぱりこれまでの時代的な背景の中でとらわれている我々の社会通念、これは一般市民も含めてですけれども、そういった社会通念を今回の法改正によって大きく変化させていく、変革していく、そういうメッセージを発していただけたらなというふうに思います。  取りあえず、私の陳述は以上でございます。
  12. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) どうもありがとうございました。  次に、岡本参考人にお願いいたします。岡本参考人
  13. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) 岡本勝規と申します。本日はよろしくお願いいたします。  私は、専門が人文地理学で、フィールドワークとか聞き取りとか、そういった方式で研究を進めているタイプの人間でございます。高等専門学校というところで教員をしておりますけれども、富山というところで暮らす一市民として公共交通に関する市民運動にも関わってまいりました。今回こういう場でお話しさせていただく機会を与えてくださいましたので、コンパクトシティーを標榜する富山に住んでいる者として、理論というよりは実態のようなものを中心にお話をさせていただければと思い、お話しさせていただきます。  コンパクトシティーというふうに言いますと、まず大体名前が挙がりますのが青森、それから富山だと思います。富山でも確かにそういったことを標榜して久しいかとは思います。私自身は富山に住んで十五年ほどになるのですが、確かに来た当初、かなり中心市街地、寂しい印象を受けました。幼少の頃にまた北陸へ、別のところに住んでいたときに富山へ来たときはもう少しにぎわっていたのになという印象を受けました。  その後、コンパクトシティーの名の下、様々な再開発がなされたかと思います。  皆様のお手元の資料を見ていただきたいのですが、お手元の資料の方の一番後ろのこの図でございます、こちらを御覧いただけますでしょうか。三枚目の図でございますけれども、中心の商店街、富山においては総曲輪通り、総曲輪と書いてありますけれども、ここはソウガワ通りといって、ここと、それから中央通り、そしてその間に南北に市電が通っておる通り、この辺りが中心市街地、中心商店街となっております。昨今、コンパクトシティーということで、総曲輪通りの西の端っこ辺り、総曲輪フェリオと書いてある部分がございますが、この辺り一帯が再開発されたと。その目的というのが、やはり中心市街地の活性化、にぎわいを取り戻していくということ、言うなれば再編成の過程で新しい核をつくろうという動きだと思います。  その結果として、一つの例を示しますが、歩行者通行量の変化というものを御覧いただきたいと思います。一枚目を御覧ください。こちらは、この中心商店街の各地における歩行者通行量の変化でございます。  こちらの方を見ていただきますと、そこの総曲輪フェリオと呼ばれている再開発地区ができ上がりましたのが平成の十九年でございました。ですので、効果として平成十九年以降どうなっていくのかというのがやはり重要なのでございますですけれども、なかなか歩行者通行量というのが伸びていないという現状がございます。もちろん、一時的に、例えば平成十八年から十九年の動きを見ていただきますと、赤いラインで示した富山西武南側とか、あるいは青いラインで示している総曲輪フェリオ北西側といったところ、ここの部分は平成十九年に再開発事業が完了したときにぐっと戻しているわけですけど、その後また漸次下がっていっていると、そのような状況にあります。  また、商店の数というものに関しましても、なかなか増加というのが見られていないようでございます。といいますのも、これは私の方で調べたものでございますけれども、例えば総曲輪商店街の振興組合に加盟されている会員数というもの、これが平成二十年には八十三、会員数あったわけでございますが、八十三あったのでございますが、平成二十五年には五十八になってしまっております。  コンパクトシティーということに関する論文をつらつら見ますに、町中居住者というものについては一定の効果が見られて増えていく傾向というものが多いようでございますが、残念ながら、歩行者交通量とかあるいは商店の数といったような点に関しては余り成果が上がっていないというような見解が多いように思います。  実際のところ、そうなってきますと、そこの地元の商店は一体どうなってしまっているのかということになりますが、歩行者交通量の下に一枚写真が載っております。これは私がこの連休中に撮ってきたものでございます。五月の六日に撮ってまいりました。この写真は中央通り商店街と呼ばれている商店街の一角でございます。どの辺りかと申しますと、市街地のこの再開発の図を見ていただければお分かりになると思いますが、右側の紫のラインが中央通り商店街です。平成十二年にマンション中心のビル完成と書いてあるこの辺り、これより若干東側で撮った写真になります。連休中にもかかわらず余り人がいらっしゃいません。  このような状態ということになってしまいますと、実際に町中に住む人が富山でも増えてはおりますが、増えてはいるにもかかわらず、なかなか歩行者通行量であるなり、あるいは商店の客入りなりに反映してこないという現状があるということで、必ずしも結び付かないなという印象を持ちます。  また、もう一つ問題でありますのは、こういうふうに商店街が閑散としているのを見ると、何もないなというような印象を受けられるかもしれませんが、実はこのような商店街でもぱらぱらと店がございまして、そしてその中ではそれぞれの思いで頑張っておられるわけでございますね。そこへ再開発の事業が降ってくるというような、まあ本来はコンセンサスを得てやっているはずですから降ってくるという表現はおかしいんですけれども、やってきたときにどういう再編成がなされるかということですね。  例えば、総曲輪フェリオという再開発地域においては、かつては六十五の店舗数があったというふうに言われておりますけれども、その後再開発事業が完了したときに元あった店舗で残ったのは幾つだったかというと、六つだというふうに言われております。そうなってきますと、再編成といってもかなりの淘汰がなされて、それから新しい店が外部から招かれているというような傾向になりはしていないか。この辺では、例えば再開発地区に大きな本屋さんが入りましたけれども、そのあおりかどうかは分かりませんが、お向かいにあった老舗の本屋さんがなくなっていたりとかいうようなこともございます。  ですので、コンパクトシティーというのが新しいスクラップ・アンド・ビルドのコンセプトとしてかなり、何といいますか、魅力的なコンセプトにはなってはおるかとは思いますけれども、その過程で、地元に既に存在している、あるいは頑張っているというような商店の存在というものを生かし切れているかどうかというところが一つ懸念材料として残ります。  二枚目を御覧ください。  私が一つ懸念をしておるのは、このままでいった場合、いわゆるウィンブルドン現象と呼ばれている、要するに外側から来た商店で活発になっていって地元の商売が残らない、あるいは、外側から来た商店で一時的に活発にはなるけれども、しかしながら何らかの事情で撤退してまた非常に閑散とした状況に戻ってしまうというようなことを懸念をしております。  続いて、交通の方でお話をさせていただきます。  交通の方では、富山というのは公共交通に力を入れている日本においてもなかなか希有の存在だと思っております。その点は積極的に評価しなければならないと思います。ただ、例えばこの中心市街地において、公共交通が必ずしも政策の軸になっているのかどうかということについては少し検討が必要ではないかと。  というのも、現在中心市街地の駐車場の状況というのを、単純に地図の検索で見ただけでもこれだけばっと出てまいりました。これだけあるのでございますですけれども、中心市街地の再開発においては大体大規模駐車場が造られておりまして、今回総曲輪フェリオを中心とした再開発においても六百三十台の駐車場が造られております。また、今後計画されているシネマコンプレックス等を中心とした再開発においても百六十台ぐらいの駐車場が計画されていると。  先ほど宇都宮先生もおっしゃっておられましたけれども、公共交通というものを軸として考えていくのであるならば、マイカーというものについて、マイカーとの競合というものについても考えていかなければなりません。このままでいきますと、マイカーと公共交通の共存と言いますけれども、本当にマイカーから公共交通の方へ人を誘導しようとしているのかどうかというのがちょっと分からない状態かと思います。コンパクトシティーということに関してある程度腹を決めてやっているのであれば、公共交通についてもある程度腹を決めてそちらに軸足を移してほしいなと思っております。  富山においては、基本的に路線の整備であるとかあるいはフリークエンシーであるとかといったようなことについては割と積極的な対応が取られていると思っておりますけれども、しかしながら、やはり積み残しておるのは、これは富山に限らず言えると思いますが、運賃の問題だと思っております。やはり公共交通というのは、路線があって、じゃんじゃんやってきて、それでかつ安いというのが重要だと思います。やはり周囲の人に話聞いてみますと、公共交通で家族全員で移動するととても高いと言うんですね。本来であれば、車の購入費を考えるとそこまで高いと言えるのかなとは思うんですけれども、高いと言います。その点、先ほど来例に挙がっているカールスルーエなんかは、家族パスを利用すれば休日は無料にするとか、そういった非常に運賃面での優遇策も講じておられる。  また、初乗り運賃の問題というのもございます。本来であればゾーン運賃制を導入すべきだと思いますが、例えばソウル市なんかでは、ICカードで乗っていけば五回までは乗り換えられて、運賃を通算する、距離によって通算するというようなこともやっておりますから、是非そういったことも考えてほしいというふうに思います。  ただ、本来であれば、そういったことをやるに当たっては、自治体なり国なりにしても、何らかの法的な裏付けというものがあるべきではないかとは思います。昨今、交通基本法というのが出ましたですけれども、やはり移動権の問題というものをはっきり位置付けていないのも問題ではないかと思います。自治体にあっては移動権などを盛り込んだ基本条例などを制定するなり、あるいは国は交通基本法でそういったことも保障するなりして、その結果、それを根拠にして公共交通というものの整備に邁進をするというか前進するというような形が私は正しい道だと考えます。  最後に、この公共交通の問題というのはよく高齢者対象にして話が出てまいりますけれども、実は若年層も結構大変な思いをしております。私なんかの教え子に話を聞きますと、早く免許を取って自由に動きたいというような声を聞きます。そういったことを考えますと、やっぱり若者にもちょっと厳しい町になっているんだろうなと、地方都市は。そういったところに今後残ってくれるのかなというのを非常に懸念をしておりますので、若年層の側にも配慮した整備というのを考えてほしいなと思います。高齢者の行動パターンだけを念頭に置いての整備ではちょっと不十分ではないかなと思っております。  済みません。以上です。
  14. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、大変恐縮ではございますが、各委員質疑時間も限られておりますので、参考人の皆様におかれましては簡潔に御答弁をいただければと思います。よろしくお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  15. 江島潔

    ○江島潔君 おはようございます。  三先生におかれましては、大変貴重な御意見を拝聴させていただき、ありがとうございました。  私、前職で山口県の下関市というところの市長を四期ほど務めておりましたので、人口減少、高齢化、それから各地域の過疎化という問題には本当に直面をして頭を悩ませてきたところでございます。  また、幾つか本当に、実際に全国の自治体の職員が、コンパクトシティー化というものをお題目に上げながら、現実にはできないだろうなと多くの職員が思っているというところも非常に衝撃的だったんですけれども、一つずつ各先生方に是非質問させていただこうというふうに思っております。  まず、谷口先生に是非お伺いさせていただきたいのが、先生の御講演の前と後で、コンパクトシティーの実現は無理だろうなと思っていた職員が劇的にできるように気持ちが変わった、その辺のポイントが、どういうところに先生が力説をされてこれならばできるということを訴えられたのか、その辺のエッセンスを是非お聞かせいただければと思います。
  16. 谷口守

    参考人谷口守君) ありがとうございます。  自治体の方は皆さんやっぱり横のつながりがなくて、情報を余り十分お持ちでなかったように思うんですね。ほかの地域でこういう実例がありますよという情報をお見せすると、同じ人間なんでできるかなというのが基本的なベースのところにあったのかなということで、こういう実例、ほかのところでどうやって、具体的にどう乗り越えたのかという情報共有のようなものが非常に大切ではないか。  あと、この中でもお見せしたんですけれども、どうやったらいいか分からないというのがやっぱりベースにありまして、技術的なサポートとか、どういうレベルであれば十分というふうに周囲の方に納得できるかという、そういう判断できる材料、そういうものを併せてセットで技術的に提供していくということが非常に大事ではないかというふうに感じました。  以上でございます。
  17. 江島潔

    ○江島潔君 ありがとうございました。  コンパクトシティーというものの実現をしていくために、まずは職員教育をしっかりとしていかなければいけないということを先生のお話を通じて特に痛感をしたところでございます。なかなか、職員がこういう意識レベルであったということはちょっと私も盲点というか、非常に気付かなかったところでありますので、是非、先生の御意見はまたいろいろ関係の自治体コンパクトシティーを目指していくところに、まずそこら辺の教育からスタートしていかなきゃいけないということを是非また使わせていただこうというふうに思っております。  続いて、宇都宮先生に質問させていただきます。  公共交通機関が、かつては鉄道ももちろん黒字の時代もありましたし、それからバス路線も決して赤字のところばっかりではなかったんですが、今はもう現実にはバスは多分、市営、都営バスは皆赤字、また私立企業のバス路線も余り、黒字のところというのは都会の都市部のごく一部に限られるのではないかと思っております。  地方自治体の中でも常に、そろそろここはやめたいと思いますというバス会社の申出と、地元の何とか継続してくれという陳情と、じゃ、そこの折り合いを取って、幾ら地方自治体として補助金を出して、これぐらいまでの乗客があれば出しましょうと、本当に少ない財源の中から公共交通機関を支えるということに各自治体は苦労していると思いますんですけれども、バス路線がなくなると次に来るのは、今度は、じゃ、バスの代わりにコミュニティータクシーを走らせると。これも言わばいろいろな補助制度を使いながら、少なくなった乗客のための公共交通機関として、タクシー代よりも負担が低い、そういうシステムをそれぞれ工夫しながら取り組んでいるところでありますけれども。  先生の御講演の中で一番興味深かったのが、日本では言わば赤字になったらそれはやめるというようなことが常に俎上に話題として上るんですが、それは日本の常識であって、世界の常識的には、公共交通機関は別にそこで採算取れなくてもいいじゃないか、どんどんとそういうものは社会の公共財の一つとしてしっかりと国として支えればいいではないかという考えが定着しているというところに、非常に私も何か長い間染み付いてきた、何とか黒字にならないとこれは無理だなというような思いから少し気持ちを変えれるかなと意を強くしているんですけれども。  特に赤字路線と言われる、まあこれはコンパクトシティーというものよりかはもう少し大きな範囲になるのかもしれませんが、赤字路線はたくさん地方では現実にございます。こういうものに対して、そうするともう少し税金を投入をして維持をしていくということに対する、何といいますかね、正当性というか理論的な裏付けというか、その辺はいろいろなそういう諸外国の例なんかを参考にしながら、日本において、JRにしても民鉄でもそうなんですけれども、赤字路線を維持していくための税金投入というものに何かアドバイスをいただけますでしょうか。
  18. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) 御質問ありがとうございました。  赤字路線の問題というのは当然大変であるということでありますが、まず税金投入がどれぐらい掛かるかということについてもそもそも議論はしなければならなくて、多分日本の場合は公共交通に対する費用がそもそも決して多くはないということがありますので、莫大な費用が掛かるかどうかというのも、これは各自治体でもう一回検証していただく必要が多分ある。つまり、それは例えば橋を一つ架ける、バイパスを三車線を四車線にする、こういったいろいろなもろもろの費用の中で、いわゆる住民が例えば年間一万人乗る、十万人乗る、こういったケースに対して、例えば百円を補助すると幾ら掛かるか、この辺をちゃんと正当的に判断する必要はあるとは思うんですが、いずれにしても資金が掛かるだろうなと。  それで、まずその正当性ですけれども、先ほど来お話ありましたけれども、当然移動というのは、今回の交通政策基本法でもそうですけれども、我々人々が交通をするというのはある意味で基本的な生活のベースであるということがまず海外においては根付いているということが一つであります。したがって、その移動手段を何らかの形で多くの人が享受しなければならない、それはバスかもしれないし、タクシーかもしれないわけですけれども、それが大きな一点でありますが。  また、金額的に考えてみた場合、金銭的に考えてみると、交通手段があることによって人々が移動ができる。例えば、高齢の方、若者が町に移動する。そういうことによって、将来的に見ると、これもいろんな資料出ていますけれども、健康面でむしろより健康寿命が延びることによって福祉面で見た採算が良くなるかもしれない。若者が町に移動することによって、もちろん町が活性化することによって町全体の価値が高まる。価値が高まれば、当然地域活性化してくる、経済が好転する。こういう意味で、交通というのはある種の、外部効果と経済学で言いますけれども、そういった交通の存在によっていろいろな外部効果が生まれるということです。  さらに、その外部効果のもう少し典型的な例でいえば、実際にその地価が、土地の価値が高まれば地価が上がる。地価が上がるということは、結果的にはその都市、その自治体の税収、固定資産税なり都市計画税なり税収が増えてくる。そういう意味において、交通を便利にする、良くするということは、結果的に長い目で見るとお金が返ってくるんだよという意味で、決して今の支払が無駄になるわけではないということをまず中期的には見ていただく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。  そういう意味で、短期と中期ということも含めて考えていただく必要があるんじゃないかなと思っています。
  19. 江島潔

    ○江島潔君 じゃ、済みません、時間の関係で簡潔に岡本先生にも一つだけ聞かせていただきます。  公共交通機関のファミリーパスについて言及されたんですが、確かに長距離を、まあこれはコンパクトともまたちょっと違いますが、長距離を移動するときに、新幹線で行くと、一人だと車の方が高いなと、だけれども二人だと新幹線だとつっぺで、三人ならもう車の方が安いなというふうに実感は多くの人が多分していると思うんです。こういう場合に、いわゆるこれもう税金で支えるという形で、新幹線等にそういうファミリーパス制度みたいなものを導入をするということに関しては、先生はいかがお考えでしょうか。
  20. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) ありがとうございます。  新幹線にファミリーパスですか。
  21. 江島潔

    ○江島潔君 はい。ですから、今各事業者でそういうことをやっているんですが、いわゆる国の政策として、少しまとめて車からもう一度公共交通機関に移動させようという、そういう目的で公金投入をするという。
  22. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) 申し上げます。  中心市街地の活性化という観点からいえば、もちろん高齢者の方を引っ張り出すということも重要なんでございますですけれども、何といっても若年層の方とか、特に家族連れの方に来ていただくというのが重要でありますので、御家族で来られるときに、公共交通によって行った方が安いよとか便利であるよというような状況を何らかの形でつくり出すということはとても必要なことだと思っております。  新幹線の場合、長距離移動ですね。新幹線の場合ですと、国全体として見た場合はそれもいいことかもしれませんが、個々の自治体から見ると、果たして自分のところから流出するかもしれない、例えば私の地元で申し上げれば、富山でそういうことをやった場合、金沢に行ってしまうかもしれないとか、そういったことも考えてしまいますので、少しちょっと議論が必要ではないかなと思います。  以上です。
  23. 田城郁

    田城郁君 民主党の田城郁です。  お三方の先生方、大変お忙しいところ、ありがとうございます。簡潔に質問いたしますので、よろしくお願いいたします。  一点目は宇都宮先生に、そして二点目はお三方の先生方にそれぞれお答えいただきたいんですが、まず一点目、公共交通の無形の価値についてお伺いいたします。  先生は、著書の中でも、足というか実質的な交通の価値、公共交通の価値ということももちろんなんですが、無形の価値がたくさんあるんだと。コミュニティーを形成するとか、あるいは健康面もそうですけれども、そのようなことの無形の価値について少し御披露いただければと思います。  そして、二点目は三人の先生方にそれぞれ一つのことをお聞きいたしますが、これはもう具体的な事例として、東北のある都市で、六万五千人ぐらいの都市ですが、二つのバスが公共交通として運行している中に、百貨店がお買物バスということで無料バスを同じ行路で週三回ほど運行すると。スタートしてから一〇%売上げが落ちたと。採算ベースぎりぎりの中で、全然か乗らないところも含めて頑張ってバス会社は運行しているんだけれども、もうこれで、このまま続くと撤退せざるを得ないと。そうすると、町中はその無料バスが週三回ですけれども通るだけでいいんですが、人がそれほど住んでいないところも含めて頑張って保障していたところが足がなくなると。  こういう実態がある中で、今後こういうものをどのように考えていけばいいのかということを三人の先生方に二問目としてお聞きいたします。よろしくお願いします。
  24. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) それでは一問目ということで、宇都宮参考人、お願いいたします。
  25. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) まず公共交通の無形の価値ということですが、お時間も限られていますので一点だけ申し上げれば、公共交通というのがある、それ自体が存在が価値があるというふうに私は考えております。  先ほど来御質問でも、赤字だと、人が大分乗らなくなったよねという話があるわけですけれども、じゃ、今は車を運転しているけれども、十年後、二十年後はどうなのかということ。あるいは、例えば皆様でも先生方でも、家を買われるとき、例えば子供が将来学校に通うことを考えるとやっぱり駅の近くに家を買った方がいいかなとか、こういうことってあるんじゃないかと思います。これ実際あるからこそ、例えば公共交通の沿線とそれ以外では、地価、不動産の価格は異なります。  全員が全員使わなくても将来使うかもしれない。言わばその存在によって、我々は公共交通によって選択権が生まれる。今は使っていないけれども将来使えるかもしれない、あるいは使いたいときに使える。金融の世界ではオプションというのは非常に有名な価値観でありますけれども、要するにオプションの価値がある、選択権がある、こういうことが一つの無形の価値としては大きいのではないか。だから、公共交通とは、今使っていない、今収支が合わないというだけの問題ではない。更に言えば、それはひょっとすると将来的に人が来る手段にもなりますので、例えば今後のインバウンドなり観光も含めた地域全体の問題になってくるのかなということ。  さらに、そういう選択肢があるということは、私自身は非常にこれからの成熟社会にとって重要だと思っています。つまり、今回の法改正コンパクトシティーとかありますけれども、全員が全員車を捨てるわけではない。我々が望むのは、車も使えるけれども都心生活もできる、言わば人にとって選択肢が一定程度ある方が豊かな社会だと。これも経済学的にはそういうことが言われるわけですけれども、皆さんもお感じになるんじゃないかと思う。そういう意味で、そういう選択肢をしっかり提供してくれる公共交通の存在の価値というものをやっぱりもっともっと我々は認識しなければいけないのではないかというふうに考えております。  じゃ、一旦それで終わりにしたいと思います。
  26. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) ありがとうございます。  では、二問目につきましては、谷口参考人岡本参考人宇都宮参考人の順番でお答えいただければと思います。
  27. 谷口守

    参考人谷口守君) 大変重要な御指摘、どうもありがとうございます。  その問題に関しては、いわゆるクリームスキミングというふうに呼ばれる問題かと思いまして、各所で発生しております。要するに、クリームのおいしい上澄みだけを取っていっちゃって食い逃げしちゃうということですよね。これは公共交通計画上非常に問題でございまして、公共交通というのは本来ネットワークで存在してその利便性を確保するものでございますので、ネットワークできちんと計画するということがやっぱり大前提になっております。  そういう意味で、そういうふうな仕組みを許していること自体がやはり問題ということで、これは私の理解では、今回の地域公共交通活性化及び再生に関する法律改正についてという資料の中で、地方公共団体を中心とした地域の面的な公共交通ネットワークの再構築を推進するための特例制度というのが考えられているというふうに書かれてございます。これは、恐らく計画の維持を困難とするような行為の防止ということで、今おっしゃられたような行為をちゃんと阻止していこうというふうな意図で考えられているものではないかと思います。  あと、個人的意見で申し上げますと、先ほど来江島さんからも御意見がございました料金の問題とかお金の問題なんですが、この予算自体が三百億ぐらいという、トータルの額が非常に少のうございますというのが個人的な感触です。例えば社会福祉で百兆円以上のお金が使われているという現状を見ると、これは社会福祉の一環としてやっぱりお金をきちんと支出するべきで、二桁ぐらいはやっぱり少ないんじゃないかというのが個人的な感触です。済みません、個人的な意見でございます。
  28. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) 申し上げます。  そのような状況というのはほかの都市でも聞いてはおります。それで、価格差が生じて安い方に人が流れるというのはよく伺う話でございます。  やっぱり公共交通というのは規模の経済でございますゆえ、一定の規模というものが必要になる以上、そのような形でいいところだけ細分化していくのはやはり問題があろうかと思います。宇都宮先生も指摘されておりましたが、やっぱり調整が要るのではないかと私自身も思っております。  以上です。
  29. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) もう既にお二人の参考人からお話がありまして、私も全く同意見でありまして、やはりネットワークで機能させる必要があると。  一つだけ事例を申し上げれば、イギリスという国は日本に先駆けてバスの規制緩和を行って、まさに大変な競争が行われたわけですが、結果的にそれはやはり多くの人が失敗であったということで、徐々にそういうクリームスキミングというようないわゆる競争を少し調整して、まあ調整ではなくて先ほど申し上げたインテグレーテッド、統合した政策に移していこうということで、今イギリスは二〇〇〇年代に入って政策を変えてきたという経緯もございますので、試行錯誤はあろうかと思いますが、日本も今回の法改正によって政策の方向転換が図られることを期待したいと思います。
  30. 田城郁

    田城郁君 大変参考になりました。ありがとうございます。
  31. 河野義博

    河野義博君 公明党の河野義博でございます。今日はありがとうございました。  私の方からは、谷口参考人岡本参考人にまず同じ質問を一つさせていただきまして、その後、宇都宮参考人に一問、若しくは時間が許せば二問質問させていただきたいと思っております。  まず、今回のコンパクトシティーを実現していくに当たりまして、都市機能誘導する区域をどこに設定するのか、また居住区域をどこにするのか、誘導区域外、内、どうやって分けていくのか、また公共交通機関をどう整理、統合、運営していくのか、非常に政治の大きなリーダーシップが問われる問題であると考えております。  一方で、谷口参考人の方からは、事前に配られました論文の方で、コンパクトシティーの推進に関しては、短期的な利益の最大化に陥らないように長期的な最適解を導いていかなければならない、その観点から第三者が都市構造をチェックするような都市構造確認制度といったものが必要ではないかというふうな御提言をいただいております。また、岡本参考人からも、今日のレジュメの中で、元々住んでいた住民も取り込んで、まちづくりへの住民参与というものを御提言をいただいております。  そういった観点から、今後、第三者の意見もどうやって取り入れていくのか、そのメンバーをどうしていくのかというのも一つの大きな課題じゃないかなと私は思っているんですけれども、具体的なメンバーをどうやって選んでいくのか、その任期をどうしていくのか、どうやって選出していくのか、そういった観点からアドバイスを両参考人に頂戴できればと思っております。
  32. 谷口守

    参考人谷口守君) ありがとうございます。  まず、それも短期的な話と長期的な話と両方あるかなと思っておりまして、短期的なお話としては、今回の特措法の改正にも入っておりますとおり、都市計画審議会というのが現在既にある組織としてございます、そこの意見を聴くということになっているかと思いますので、当面はそのような対応で、まあしのぐという言い方をしたらなんなんですけれども、今ある専門家集団の意見を聴くという形で対応を進めるというのがよろしいのかなと思います。  ただ、長期的になりますと、もっといろんな観点からの、今の多分その専門家グループだけでは足らない部分とかもあろうかと思いますので、これは都市の体質改善だというふうに私は理解しておりますので、そういう体質改善を進める上で有効な意見を出してくださりそうな方ですね。専門分野はもうちょっと多岐にわたるかと思うんですが、例えば、中心市街地というかコンパクトにするエリアの中に病院をもっと持ってきた方がいいとかリハビリ施設を入れた方がいいとか、これは高齢者サイドのお話なんですけれども、そういう観点から見てくださる方とか、あと、先ほど岡本参考人がおっしゃったように、若い人をどうするかというふうになったときに、今度はネットベースで皆さんいろんなことをやられちゃって、実は自動車だけの問題じゃなくてネットに拡散しているという問題が別にあるんですよね。だから、そういうサイバーの問題を今度都市計画の中で一緒にどう考えていくのかとか、実は長期的に考えるとそういう問題も非常に重要になってくると思いますので、そういうことまで含めていろんなメンバー構成をじっくり考えていかなければいけないというふうに思っております。  以上でございます。
  33. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) ちょっと谷口先生とは違って、若干専門がずれますので個人的な意見として申し上げますが、本来、専門家集団等々のメンバーが入ってはおりますけれども、やはり忘れてはならないのは、活性化しようという商店街、確かに一見シャッター通りに見えるかもしれませんが、その中でも頑張っている商店というのはあるわけですから、当然そのような商店の方々から代表者を出していただいて、そういった方々がどういう思いでそこで商売しているのか、あるいはその思いをどう取り込むのかというのを考えねばならないと思います。  したがって、当然小売業者というのは入らなければならないと思いますし、にぎわいを創出するという観点からいえば、若年層とかあるいは家族連れといった消費者サイドからもメンバーを投入すべきものだと思います。  昨今はやりでは、例えば富山でもやっておりますけれども、大学生なんかに知恵を出してもらうための拠点の整備なんかをやっております。あれは確かに、私、とてもいいことだと思っておりますが、もう一つは、やっぱり家族連れの取り込みを図るために、その声を代弁できる人を何とか入れられないかなという思いでおります。  以上です。
  34. 河野義博

    河野義博君 ありがとうございました。  続いて、宇都宮参考人に伺います。  LRTの導入の有効性を数々教えていただきました。貴重な御提言、ありがとうございます。  一方で、そのLRT導入に向けての課題、一つは日本においては道路交通法が課題だというアドバイスも頂戴しておりますけれども、LRT導入に向けての課題、そして、もしあれば導入後の主要な想定される問題点、その課題に対してどう対応していくべきか、また外国の事例もあるかと思いますので、そういった観点からアドバイスいただけたらと思います。
  35. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) ありがとうございます。  日本における課題というのは幾つかあるわけですけれども、やはり先ほど来申し上げているとおり、まずその収支が合うのかという短期的な採算性でどうしても議論がなされてしまいます。  ところが、本来的には、その社会的便益というのを本来広く考えていくと、短期の収支だけではない、町全体の収益に及ぶんだと。先ほど来申し上げたオプション価値、外部効果もそうですし、更に言えば、無形の価値という意味では、町全体に人がにぎわいを取り戻してくるということから、結果的に地域活性化に回る、そういう中長期的な便益というものを計っていく必要があるんだろうなということ、そこが理解されぬまま短期的な収支だけでやると、これはもうからないんではないか、こういう問題が常に指摘されているので、そこを変えていく必要があるんだろうなというのが一つ。  それから、道路については法的な問題もありますし、一般住民も日々の暮らしではやっぱり車を使っているという現状がございますので、その辺りについて、決して車を否定するものではないんだけれども、これからのまちづくりの方向はこうだよということをもっともっと自治体の方も含めて、我々もそうでしょうけれども、ちゃんと語っていく必要がある。その辺りのまだ理解度が残念ながら浸透していないかなと。今回、交通政策基本法ができ、今回の法改正が通れば、その辺りのメッセージが伝わるとやっと一般の方もその辺の意識が変わってくるのではないのかなと、こういう意味での意識改革の問題が一つ。  あと参考までに言えば、よく財源の問題も指摘されるわけですけれども、私は、先ほど来ちょっと申し上げましたけれども、実はLRTというのは決して高いものではない、先ほど来社会保障の費用とかなんとかと比較しますと本当桁違いに安いものであるわけでして、私自身はそこのやる気さえあれば実際にはできるのではないかと思っています。  ただ、今後、その課題ということで申し上げれば、でき上がっても、あくまで、やはり交通は一つの町のツールではありますけれども、それを生かしていく上では、今回の法改正もまさにそれを狙っているんだと思うんですが、都市計画全体と調和したものでなければいけない。せっかくLRTを通したけれども、沿線の病院がどこかに行ってしまった、住宅が消えてしまった、これでは話にならないわけで、やはりそこの都市計画土地利用計画との整合性というものをしっかりと確認していく必要があると。  それから、事業者となる事業者に対しても、何でもかんでも事業者やってよと言えば彼らはどうしても短期的な収支になるわけなので、例えば上下分離、公設民営という形で、インフラ部分はしっかり公的に支えながら、一方でその運営の民間事業者活力なり知恵を生かす形でより良いサービスをすることによって人々に多く乗ってもらう、こういう仕組みが必要になってくるのではないかなと思っております。
  36. 河野義博

    河野義博君 最後、簡潔に。  今の御提言の一つ目と二つ目に関連をするんですけれども、社会的な便益、これは私は無形な価値ではなくて、恐らく定量化が可能なものだと思うんですね。これをきっちり定量化して皆さんにお示しすることができれば、この二番目の御提言である自治体が必要性を説くことができると、これは我々も本当に腹にすとんと落ちてくると思うんですが、こういう定量化の取組に関して何か御紹介をいただければと思います。
  37. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) ありがとうございます。  定量化の試みというのは研究ベースでは行われておりますが、残念ながら、現在マニュアル化されている費用便益分析という便益の中には、移動時間が短縮するであるとか、あるいは環境面での効果とか幾つか定量化される部分もございますが、先ほど来申し上げたような、例えばその存在価値としてのオプション価値であるとか、あるいはその鉄道が、何らかのLRTができることによってそこに集積がもたらされるメリットであるということについては現状研究途上で、残念ながら、いろんな方がやっています、やはり従来の方法ではかなり、二、三割過小評価だよねと。便益は過小評価されている傾向があるということは大体分かっていますけれども、じゃ、それが確定したものかということについては現在研究中である。  ただ、申し上げたいのは、費用は確定している、にもかかわらず便益の方は研究途上であるがために、極めて保守的に言えばちょっと曖昧な数字になってしまうからといって全部排除されてしまった結果、社会的な便益が過小評価されていると、こういうことは事実だろうと思っています。
  38. 河野義博

    河野義博君 ありがとうございました。
  39. 室井邦彦

    ○室井邦彦君 今日は、谷口参考人宇都宮参考人岡本参考人方々には、大変お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。貴重な御意見を聞かせていただいております。  私は、日本維新の会・結いの党の室井でございます。よろしくお願いいたします。  早速ですが、三名の先生方にまず一問御質問をさせていただき、そして、あと時間がございましたらまた各先生方に御質問をさせていただきたいと思います。  このようにしっかりとした二法案、法整備が整ってまいりました。月日が流れる中でまた法整備も一部改正していかなくちゃいけない部分も出るのかも分かりませんが、これだけ少子高齢化が続き、非常に地域日本人口減少するという中で、このコンパクトシティーというのは非常に一言では言い表せないような複雑な点もあろうかと思いますし、また、私もこの資料を読ませていただきまして、幾つかの難しいハードルがある、このように聞いておりますが、この法整備ができ、そしてまた整備ができてコンパクトシティーがいよいよアクセルを踏み前進をしていく。そういう中で、幾つか課題があるというふうに言われましたけれども、各先生方に、事業を推進していくに当たって課題はどういうところにあるのか、何であるのかということを二分ぐらいのコメントで聞かせていただければ有り難いなというふうに思います。  谷口参考人からどうぞ。
  40. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) では、谷口参考人宇都宮参考人岡本参考人の順番でお願いします。
  41. 谷口守

    参考人谷口守君) 大変本質的な御質問、どうもありがとうございます。  ずばり言ってしまいますが、政治家にあると思います。というのは、研究ベースではもうやり尽くしました、はっきり言って。データは全部こういう感じで。先ほど宇都宮先生がおっしゃられた費用便益の問題は残っております。法律としては、非常に行政の方頑張られてここまで持ってこられたということだと思うんですね。  あと、衆議院の方でも参考人で来られていた森市長さん、例えば富山市は実施されていますけれども、だから、森市長さんは、市長さんのリーダーシップとして自分が責任を取ってやると言って、反対があるかも分からないけどやられるということを明示的に市民に示されているわけですよね。だから、最後のステップはやっぱり各首長さんですね。最後、各自治体の方がやるぞと言ってくださると、ちょっと迷っていた自治体の職員の方も、じゃ、やろうかということになりますし、あと、これやっぱり市民の方に納得いただく必要がございます。その際にやっぱりきちんと説明いただかないといけなくて、そこのところのポイントを曖昧にすると、やっぱりうまくいきません。  そういう意味で、是非これからは、次のステップとしては市長さん、若しくは国政担っている皆様方ですね、政治家の方に是非期待しておりますというのがコメントでございます。
  42. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) ありがとうございます。  政治の問題、それからやはり地方自治体の問題があると思いますが、先ほどちょっと申し上げましたとおり、確かにいい法律はできて広域的な調整もなされるといっても、実際に自治体の方に聞けば、これは県もできるんでしょうと言ってまだまだ腰が引けている部分がある。そういう意味では、やはり国のメッセージとして強く出していく必要があるのが一つ。そういう意味で、これも先ほど来お話ありましたけれども、やはり自治体も含めたこういう法律の下で人材を育成していくということは重要なポイントになってくると思いますので、そういうことには是非積極的にやっていただきたいというのが一つ。  それから、お役所の体制にも一つ課題があるのかなということで、ちょっとこれは私の思い付きで申し上げますけれども、例えば今回、地域公共交通ということで法律ができましたが、現在、例えば多分国土交通省なり、そして多分地方の運輸局も含めて、基本的には移動手段は自動車交通と鉄軌道、大きくここで二つに分かれているわけです。ところが、本来であれば、高速鉄道や都市間鉄道と、場合によってはバスや電車も含めた地域公共交通と、こういう二分法の方がひょっとするとこういう地域公共交通を考える上では重要になってくるのではないかと。  私が参考資料の方で、例えば十五ページにお示ししました写真というのは、これ先ほど説明をはしょりましたが、これ、要するに同じライトレールの軌道を、右側の写真はバスが走っているわけですね。つまり、地域公共交通としては、モードというよりは一体のものであるということで考えているわけですが、これが日本でこういう形でスムーズにできるのかどうかということになると、いろいろ課題があるというふうにちょっと漏れ聞いております。  したがいまして、もう少し実際の公共交通の事業管理というものも、従来の鉄軌道対自動車交通ということからもう少し、地域公共交通であればバスと自動車はある意味で同じような形で統合して管理をしていく、こういったお役所の体制、今でいうと鉄道局と何とか局みたいな格好になるんだけど、そういうやり方があってもいいんではないかなというふうに感じております。  以上です。
  43. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) 申し上げます。  コンパクトシティーの問題に関して言えば、課題といいますか、やはり縮小再生産をしていく過程で一部の地域に凝縮をしていこうというわけでございます。そうなりますと、言い方は悪いですけれども、取り残されたり切り捨てられたりする部分が出てくるということですね。例えば、商店街が縮小して密度を濃くしていけば、その周辺となったところはどうなるんだといった問題が出てまいります。ですから、その辺りの再編成とか再配置というものに配慮をするというのが一番大きな課題ではないかなと思います。やっぱり夢を共有できないと、もう余計なことをしてくれるなみたいなことになってはいけないので、そこが重要ではないかなと思っております。  それから、公共交通に関して申し上げれば、公共交通の法案に関して言えば、課題としては、やはり今のところどうしてもマイカーの移動手段というものが重きを成しておりますゆえ、どうしても両にらみになりがちなところがございますけれども、まあ電車を通す一方で駐車場も整備するみたいな形ですね。しかしながら、ここはもう少しリーダーシップを発揮していただいて、思い切った政策を、公共交通の方により重い軸足を移してほしいというふうに思っております。  それと、繰り返しになりますが、運賃の問題をもう少し重視して考えてもらいたい。マイカーで行くよりもコストが安いですよとか、あるいはマイカーで行くより便利ですよというような形にして、マイカーに勝てるような感じに誘導していかないとなかなか難しいのではないか。それはもう交通事業者だけではちょっと難しいですから、やはり公のお力添えが必要かと思います。  以上です。
  44. 室井邦彦

    ○室井邦彦君 それでは、谷口参考人にお聞きをしたいと思います。  ドイツの件で事例を挙げられておられました。百五十二か所から五十四か所まで絞り込んだというような数字が出ておりましたけれども、この住民の合意形成、どのように行われたのか、その仕組み、合意形成を図るための仕組み、どのような仕組みが効果的であるのか、ちょっと参考に御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  45. 谷口守

    参考人谷口守君) 今の御質問は、皆様のお手元に資料があるかどうかちょっとよく分からないんですが、別途事前に論文でお送りさせていただいた、ドイツのベルリンの都市圏が、都市圏全体で百五十ほどあった拠点を五十に集約したという例に関する御質問かと思います。  それは、世界の中でもそういうふうに集約するケース、本当は拠点自体を厳選していかなければいけないという次のステップの問題がありまして、それをやるために次の知恵を絞らないといけないんですけれども、なかなかそこまでやっているところが今はないと。ドイツのその例だけが今のところそういう集約に、中心地の集約に成功しているということでございます。これは、都市圏で話し合う場があるということが一番最大のポイントでございます。  ということはどういうことかといいますと、日本の場合、今、地方分権というふうな話が中心になっておりまして、例えば国で決めていたことは県に、県で決めていたことは自治体にということに、どんどんどんどん下に下りていってございます。そうなると、こういうプランを考えるときにどういうことが起こるかというと、各自治体は自分のところに中心地が欲しいというプランを書くのは当たり前でございます。その場だけで決めるからいけないというわけであって、都市圏全体で協議の場をきちんとつくるという枠組みをつくる必要があります。ドイツの場合はそれができているということで、残念ながら日本はその枠組みがございません。だから、そういう意味では、ただ単に分権化、分権化と言うだけではなくて、調整の場をきちんとつくっていただくということも是非お願いしたいと考えております。  以上です。
  46. 田中茂

    田中茂君 ありがとうございます。  今日は、三名の参考人の方、出席、御臨席賜りまして本当にありがとうございます。お忙しい中、ありがとうございます。  私の方からも何点か質問させていただきたいと思うんですが、先ほどから委員皆さんほとんど大体同じような質問をされましたので、私の方からちょっと谷口先生にお尋ねしたいんですが、ドイツの例を挙げていただきましたが、ドイツのトラム、そもそもあのトラムに乗客されている方というのは、リピーターの方が多いんでしょうか、それともそこに住んでいる方がほとんどなんでしょうか、若しくは観光客が多いのか。  そもそもドイツにおいては、どちらかというと、もうコンパクトシティーができていたんではないかと思うんですが、歴史的、文化的背景から。その辺を谷口先生にお聞きしたいと思います。
  47. 谷口守

    参考人谷口守君) ありがとうございます。  リピーターというか、やっぱり居住者の方が今回紹介させていただいたケースではほとんどです。カールスルーエは一応観光客も参りますが、それほどその数が非常に多いというわけではないのでこういう形になっているということです。  御指摘のとおり、元々そういう形になっていたのではないかというのも半分そのとおりだと思いますが、それを維持しようという努力がなされているということが重要なポイントかなというふうに思います。  そういう意味でいくと、実は世界の中でも我が国は実はコンパクトな都市形態を持っている。持っていたと言った方がいいのかも分かりませんが、例えば東京にしても京阪神にしても、民間施設が実はしっかりとコンパクトシティーというか、自分の沿線沿いに住宅開発をしたり、果ては郊外の一番端っこにレジャーランドまで造ったりして日曜までお世話しようというふうな形で、実はコンパクトな都市形態を日本は一番持っていたわけなんですよね。それが損なわれているという認識をまず我々は持つ必要があって、その良いところをどうやってきちんとキープしていくのかという、そういう観点も大事になるかと思います。  どうもありがとうございます。
  48. 田中茂

    田中茂君 ありがとうございます。  今御指摘ありましたように、元々歴史的にはコンパクトシティー日本にあったと。そういう中で、ここ七年間、この法案ができてからずっと同じ改正を繰り返してきたわけなんですが、一体その原因は、先ほど先生おっしゃったように、政治家に一番あるとおっしゃっていたんですが、そのほかの最も大事な課題というものは何と思われますか。それを御三方の参考人の方に聞きたいと思います。
  49. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) では、宇都宮参考人岡本参考人谷口参考人の順番でお願いいたします。
  50. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) ありがとうございます。  最もと言われるとあれですが、先ほど私が申し上げた観点でいえば、やはり大都市圏はたまたま公共交通が黒字経営を維持できてきたためにコンパクトシティー的なものが成り立ったわけで、地方都市も高度成長期まではそうであった。けれども、不動産経営しているところが、むしろバブルがはじけてくるという形で傷んできた。つまり、やはり公共交通というのは、施設も含めていわゆる通常の民間事業としてやってこれたところが、結果的に、今となっては大きな社会構造の変化の中で対応できなくなっているということが交通面では一つ挙げられるのではないかと思います。
  51. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) 申し上げます。  やはり、最も大きな課題というのは、モータリゼーションの進展をどのように解消していくのかというところではないかと考えております。  少なくとも、地方都市においても、モータリゼーションがまだ始まったばかりの頃では、公共交通にたくさん人が乗って、中心市街地にたくさんの人が押しかけておりました。とてもにぎわいがございました。そして、それほど大幅に、もう人口が半減したとかそういうわけでもないにもかかわらず今は閑散としているということですから、明らかに自動車の影響が強いと思います。したがって、何度も言いますが、自動車と比較して公共交通を取るというスキームをつくるというのが何より大きな課題かと思います。  あと、より付け加えるならば、どうしても考え方として、例えば家族を持った場合、郊外に一軒家を建ててそこに住むんだというような価値観もあろうかとは思います。それはもちろん否定はされないわけでございますけれども、そういった人たちが自動車ではなくて中心市街地に公共交通で来れるようにすれば両立ができるのではないかと思っております。  以上です。
  52. 谷口守

    参考人谷口守君) 御質問の趣旨は、なぜコンパクトな市街地ではなくなってきているか、その理由をということだったと思いますが、一番の理由は、私は日本が非常に民主的国家だからというふうに思います。  というのは、郊外に農地を持っておられる方とかがやっぱり住宅開発をしたいというふうな要望が非常に強いわけですよね。自分のところの隣のところまではオーケーなのに私のところからは土地利用コントロールが掛かっているからできないのはおかしいじゃないかとかというふうな御意見というのは非常に強いわけです。そういうニーズと、先ほど岡本参考人がおっしゃった一戸建てが欲しいという個人のニーズがつながってそういうふうなことが起こっているというのが現実でございますので、これは極めて根が深い。政治家のせいではございませんで、これは日本人全員の問題でございまして、そういう問題があるよと、それは実はみんなが自由に好きにしようと思ってやっているから、結局、結果的に将来の自分たちのメリットを減らしているんだよというふうな理解の仕方をする必要があるのかなというふうに思います。  以上でございます。
  53. 田中茂

    田中茂君 ありがとうございます。  ただ、今おっしゃったように、日本の場合は文化、伝統が極めて地域に根差しているわけであって、その部分をどうにか解決しないことには難しいと思うんですね。特に日本人の場合のアイデンティティーというのは、すなわちふるさと、町、そこから源泉しているわけですから、その部分を考えた場合に、単に効率性、効果性ということだけで済まない部分があるのではないかと思うんです。その部分について、谷口先生、どうお考えですか。
  54. 谷口守

    参考人谷口守君) 面白くなってきました。  これ体質改善というふうに私申しましたけれども、基本的には、ここに僕も付いているんですけど、ぜい肉ですね、ぜい肉を取りましょうと言っているだけの話なんですよね。そのぜい肉の部分というのは、戦後、郊外化で人口都心に吸収できなくなった部分が外に広がってしまったという、そういうスプロールの部分であって、そういうことを繰り返すのはやめましょうというお話であって、よくこれコンパクトシティーの話で誤解されるんですが、何か地域を根本的になくしてしまいましょうとか、文化を消しましょうとか、中山間地から撤退しましょうとかという、そういう議論では全然ないです。だから、そういう議論ではないということをまず御理解いただいて、どうやったらぜい肉を減らせるかということに取り組んでまいりましょうという御理解いただければいいかなと思います。  以上でございます。
  55. 田中茂

    田中茂君 ありがとうございます。  それだったらなおさらのこと、これは一省の話ではないと思うんですが、極めて、先ほど戦略的と戦術的なお話されたんですが、戦術的には分かるんです。ところが、戦略性がないものに幾らいろんなことを付加しても戦術がうまく機能しないのではないかと。すなわち、ハード面を幾ら充実させても、ソフト面、特に地方自治体というのは様々な経営体があるわけですから、そのソフト面をどううまくそれとコンバインさせるのか、その辺が必要だと思うんですが、宇都宮先生、御意見を聞かせていただけませんか。
  56. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) ありがとうございます。  ソフト面、重要ですので、何がという答えはないんですが、ただ、今回の法律もそうですが、私、経済学やっている人間からすると、やっぱりある程度のインセンティブ、いわゆる動機付けという意味で、従来であれば、先ほど申し上げた公共交通は黒字でなければならない、だから運賃を上げなければならない、そうするか若しくはサービスを切り捨てなければならない。そうなると、結果的には運賃が高くなる、サービスが悪くなる。それでは、従来公共交通を利用して町に出ていた人も出なくなるわけですね。  そうなって一旦悪循環になると、じゃ、しようがないから車を利用しよう、そうするとますます公共交通に乗らなくなる、更にサービスが悪くなる、この悪循環が続いているわけなので、私は、どこか今回の法改正を、更に実効的なものによってこの悪循環を歯止めを掛ければ、あっ、そうではないんだ、公共交通使いやすいんだとなれば、全員が全員ではないんですけれども、もう本当に一割の人が転換するだけで大きく社会は変わってくるんだろうなと思うわけで、そういう一つの何か動機付けとして、今回の法改正で運賃制度が変わるとか路線が変わるとかダイヤが便利になるとか、こういうことが行われれば、私は希望を持っております。
  57. 田中茂

    田中茂君 ありがとうございます。  時間がもう来ましたので、これで終わりにしたいと思います。またいろいろと御質問させていただきたいと思いますので、そのときにはよろしくお願いいたします。
  58. 辰已孝太郎

    辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。  お三人の先生方、お忙しいところ、本当にありがとうございました。  三人の先生方に共通しているのはやはり自動車交通に過度に依存した社会の転換ということだと思うんですけれども、私の方からはそれぞれ違った質問を三人の先生にさせていただきたいと思います。  まず谷口先生なんですけれども、カールスルーエの例を挙げていただきました。百二十キロのLRTということで非常に私もびっくりしたんですが、このLRTに関してなんですが、日本で本格的なLRTの実現というのは富山だけだと思うんですが、ヨーロッパでは広く活用されていると。なぜ日本でLRTの普及がなかなか進まないのかということについて御見解があればということ、これ一点、谷口先生に。  もう一点、谷口先生なんですが、公共交通を担う機関としてバスの役割というのがどこでも大きいと思うんです。今日本ではバスの事故というのが増えておりまして、度々ニュースにもバスの事故というのが取り上げられております。  このバスの事故なんですが、やはりバスの運転手の待遇が私、非常に大きいんじゃないかと、長時間労働や低賃金ということなんですが。先生は海外の公共交通機関などの調査もされているということなので、海外、ヨーロッパなどでのバスの運転手さんの待遇であるとか社会的地位であるとか、そういったものを日本と比較してどうなのか、また日本ではどうあるべきなのかという御見解、御見識があれば是非お聞かせいただければと思います。  続いて、質問全部言わせていただきますが、宇都宮先生にですけれども、先生は関西大学で教鞭を執っておられるということなんですが、私も大阪出身なんですが、今、大阪の公共交通機関でいえば大阪市の市営交通があります。この大阪市の市営交通、この間、民営化ということが言われて久しいわけなんですが、私自身は民営化するべきではないと思っておりますが、先生も日本の非常識ということで、公共交通、黒字が基本という考え方、また市場に委ねていいのかという考え方を持っておられるということで、先生の地元である大阪の市営交通の民営化についてどのようにお考えであるのかということをお聞かせいただければと思います。  最後に岡本先生なんですが、岡本先生は富山にお住まいということで、この間、国の政策としても、青森や富山のコンパクトシティーの様々な取組、これを参考に広げていこうという流れが一つあると思うんですが、しかし、富山の例を成功例として全国に広げていこうというのであれば、しかし、住んでいる先生としては様々な課題があるよということもお持ちであるかと思います。そこで、やはり富山にしてもこういうところは改善するところあるよというところをお聞かせいただければと思います。
  59. 谷口守

    参考人谷口守君) まず一点目、LRTがなぜ普及しないかというのは、これは大分既に宇都宮参考人の方から最初にお話があったこととダブってしまうかと思うんですけれども、やはり赤字になってしまうのではないかという危惧で反対される方がたくさんいらっしゃるということですよね。  それで、ヨーロッパではなぜオーケーかというと、社会的に黒字になればオーケーですよというコンセンサスが取れているということで、単に交通機関だけで赤か黒かというのを議論するというのがばかげているというのがコンセンサスになっているというのが一番大きいかなということと、あと、やっぱり昔の路面電車のイメージを持たれている方が結構いて、いわゆる遅くてぼろくてというイメージで、あんなものをまた導入してもと言われている方も結構いるんですが、最近のものは非常に性能がよろしいですので、一度そういう実際に行かれて経験された方は非常に賛成派に急に回られるみたいな感じでびっくりしてしまうこともあるんですが、そういう実際のことを御存じになれば変わるんじゃないかなというのはあります。それが最初ですね。  あと、バスの運転手さんの待遇ということなんですが、私、済みません、その分野の専門家ではないんですけれども、ただ、日本の運転手さんに関して言えることは、一時期やはり規制緩和の影響をかなり強く受けられて、労働条件としてはかなり厳しい、今もそうかも分かりませんが、そういう状況ではないかな、タクシーの運転手さんなんかもやはり給料的にはかなり厳しいかなというところもあります。だから、そういう意味では、要するにこれは交通運輸業界だけの話ではなくて世の中全般の、労働者全般の話として、規制緩和的な発想でぐいぐいやるといろんなところにしわ寄せが行ってしまうというのは事実ではないかなというふうに感じております。  済みません、余り専門家的な回答ではなくて申し訳ないです。
  60. 宇都宮浄人

    参考人宇都宮浄人君) 御質問ありがとうございます。  大阪の公共交通の民営化ということですが、御質問いただいて大変恐縮ですが、私は多分先生とはちょっと意見を異にしているということでありまして、私は民営化には基本的には賛成ということで、実を言うと、黒字が基本ということに対しては、要は施設も含めて黒字であるという話とは別で、この私のお配りした資料で十二ページにSTOの枠組みで整理をしたいということが書いてございます。  つまり、今の日本というのは、戦略も戦術もぱっとしない中で、運行を全て民間が担っているということはいかがなものかと。これで黒字を求めたらどんどんサービスが悪化していくということなんですが、むしろしっかり方向性としての戦略、戦術を立て、その上でオペレーションとしての運行は民間の創意工夫と力によって行っていただく、これが私としては一番いい仕組みなのではないかと。  最近でいえば、公設民営とか上下分離ということを言われますけれども、多分、運行主体としてはやはり民間の力というのは大いに活用していただく、ただし、広い意味での戦略は当然のことながら、戦術面でも、小さな争いではなくしっかりと統合した政策というものを公共団体も含めて今回の法改正でやっていただくと、こういうことが重要なのではないかなというふうに思っているというのが私の考えであります。
  61. 岡本勝規

    参考人岡本勝規君) 申し上げます。  富山では確かに先駆けた取組が行われております。ただ、例えばレジュメで示しました歩行者通行量などを見ましても、いっときちょっと食い止めたかなと思ったら、だらだらだらっと下がってくるという、そういう状態にございます。  これ実は、この変化は八月のある特定の日曜日ばかりを追ってやっている変化でございますけれども、例えば別の、イベントのあるときなどはやはり通行量は増えてはおるんです。イベントのあるときには通行量が増えている、また一方で居住者は若干増えている、にもかかわらずイベントのないときの通行量が増えないというのは、これは一体何を意味しているかと申しますと、日常の拠点として再生がまだなされていないということではないかと思います。  本当に富山市に限ってしまって申し訳ないんですけれども、富山市では中心商店街を広域拠点として位置付けてはおられますけれども、その前に日常の拠点として再生していかなければいけないというふうに思いますので、今後改善すべき点としましては、人々が日常生活を営んでいく上で何が必要なのか、例えばお魚屋さんが必要なのか八百屋さんが必要なのかといったそういう細かいところを見て、その上でのまちづくり戦略というものを考えていくべきではないかなと思います。  以上です。
  62. 辰已孝太郎

    辰已孝太郎君 ありがとうございました。
  63. 藤本祐司

    委員長藤本祐司君) 以上で参考人に対する質疑は終了をいたしました。  参考人方々にお礼の御挨拶を申し上げたいと思います。  皆様方には、本当に貴重なお時間を割いていただき御出席いただきました。そして、有益な御意見を述べていただきましたことを感謝申し上げます。ありがとうございます。  今後、皆様の御意見をこの委員会審議の中で十分活用していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十三分散会