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2014-06-10 第186回国会 参議院 厚生労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年六月十日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  六月九日     辞任         補欠選任      小西 洋之君     櫻井  充君  六月十日     辞任         補欠選任      櫻井  充君     小西 洋之君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         石井みどり君     理 事                 高階恵美子君                 西田 昌司君                三原じゅん子君                 津田弥太郎君                 長沢 広明君     委 員                 赤石 清美君                 大家 敏志君                 大沼みずほ君                 木村 義雄君                 島村  大君                 滝沢  求君                 武見 敬三君                 羽生田 俊君                 足立 信也君                 相原久美子君                 小西 洋之君                 櫻井  充君                 西村まさみ君                 森本 真治君                 浜田 昌良君                 東   徹君                薬師寺みちよ君                 山口 和之君                 小池  晃君                 福島みずほ君    国務大臣        厚生労働大臣   田村 憲久君    副大臣        厚生労働大臣  土屋 品子君    大臣政務官        厚生労働大臣政        務官       赤石 清美君    事務局側        常任委員会専門        員        小林  仁君    政府参考人        厚生労働省医政        局長       原  徳壽君        厚生労働省社会        ・援護局長    岡田 太造君        厚生労働省老健        局長       原  勝則君    参考人        一橋大学大学院        法学研究科教授  山本 和彦君        患者家族と医        療をつなぐNP        O法人架け橋理        事長        患者視点で医        療安全を考える        連絡協議会事務        局長       豊田 郁子君        公益財団法人日        本医療機能評価        機構理事     後   信君        大分県杵築市長  永松  悟君        公益社団法人日        本介護福祉士会        会長       石橋 真二君        公益社団法人認        知症の人と家族        の会副代表理事  勝田登志子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○地域における医療及び介護の総合的な確保を推  進するための関係法律整備等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、小西洋之君が委員辞任され、その補欠として櫻井充君が選任されました。     ─────────────
  3. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省医政局長原徳壽君外二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律整備等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 櫻井充

    櫻井充君 おはようございます。民主党・新緑風会の櫻井でございます。  珍しいんです、本当に。久しぶり厚生労働委員会質問をさせていただきます。  先週の金曜日の午前中にもう質問通告しておりますので、きちんとした答弁お願いしたいと思います。よろしくお願いします。  ただし、そう言っておきながら、大変申し訳ないんですが、ちょっと通告をしていない質問を一、二問させていただきますが、一つは、薬価改定について、今、二年に一回ですが、これを一年に一回に変えようとしていると検討されているんです。どうしてそういうことをされようとしているのか、私にはちょっと理解ができませんで、こういうことをやると誰が利益を得るのかというと、まず診療報酬が変わりますから、結果的にはそのソフト屋さんがもうかるだけの話であって、現場は混乱するだけなんですね。  そういう意味で、こういう改定をするべきではないんじゃないかと思っているんですが、その点について御所見をお伺いしたいと思います。
  7. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) おはようございます。  久しぶり櫻井先生とこうやって御議論をさせていただくということで、大変光栄でございます。  今、薬価改定、毎年というようなお話、確かにこういう話が出てきております。これ自体は、薬価差というものをなるべくリアルタイムでなくしていくというようなお考えなんだろうと思います。  ただ、一方で、物理的にかなり難しい部分がございます。毎年毎年薬価調査をしていくというのは非常に難しい。  さらに申し上げれば、本当に正確なのか。妥結率を早めるというような診療報酬改定をさせていただきました。こういうような話の中である程度妥結率を早めていただきますが、それにしても、これ毎年毎年となると、どの時点でということを考えますと、かなり技術的にも難しいし、正確性、精度の問題もあるんであろうと。  さらに申し上げれば、これ、薬剤費全体のうちの半分ぐらいが医療機関収入になっておりますので、そう考えると、やはり診療報酬改定と合わせていかないと、医療機関等々の運営にも影響が出てくるんではないかという問題もありますし、あわせて、調査しようと思うと、卸や医療機関に協力をいただかなきゃなりません。かなりの費用を自己負担をいただいております。毎年毎年これをお願いをしていかなきゃならぬ、こういう問題もあります。  新薬開発等々への意欲をそいでしまうというおそれもあるわけでありまして、そういう種々の問題がございますので、これは慎重に検討をしなければならない、そんな課題だというふうに考えております。
  8. 櫻井充

    櫻井充君 大臣から心強い御答弁いただいたので、ほっといたしました。  ついでにもう一点だけ、これは御答弁結構ですが、我々の時代にどうしたのかというと、二年に一回、薬価がどんどんどんどん下がっていくというところを特例という形で止めました、これは足立さんなんかが本当に御尽力いただいたんですが。結果的にこういうことをやっていかないと特許期間中に初期投資を回収できないんだと思っているんです。その初期投資を回収した上で再投資できるようなシステムをつくってこないといけなくて、特許期間が終わった時点でそうするとどうなるかというと、長期収載品価格を中途半端な価格にして、今度はジェネリックとの価格差が出てきて、ここでどうするかという議論ばかりになっているんですが、是非御理解いただきたいのは、患者さんにとっても実は決していいシステムではないということなんです。  なぜかというと、精神的に不安を抱えているような患者さんは、自分が継続して薬を飲み続けたい、同じ薬を飲み続けたい、薬の名前は覚えていないけれどもこういう包みなんだとか、こういう形なんだと。そういう患者さんからしてみれば、ある日突然、ジェネリックは同じ薬効だから使えと言われても、決してそれをよしとしない方々がいっぱいいらっしゃるということです。  そうすると、ある程度まで初期投資が回収できた時点で今よりももっと更に価格を下げてしまえば、財務省がごちゃごちゃ言わないで私は済むと思っているんですよ。財務省の最大の問題は何かというと、中長期的な視点に立っていなくて単年度で会計の帳尻を合わせようとしているところでして、是非、厚生労働省として頑張って闘っていただきたいと思いますし、でき得る限りバックアップはさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それからもう一つ、ちょっとこれ大本営発表みたいなことはやめていただきたいと思っていて、これは資料ありませんので後で見ていただきたいんですが、厚生労働省が毎月の勤労統計調査というのをやっていまして、四月分の結果の速報をちょっと見てみたら、調査結果のポイントで、いいところだけ全部書いてあるんです、何とかが増えました、かんとかが増えましたと。ところが、賃金を見てみると、実質賃金は三・一%の減になったと書いてあるのは、今月のポイントの中に入っていないんです。悪いことは書かないでいいことだけ書くような大本営発表みたいなことはやめていただきたいと思いますので、この点もお願いしておきたいと思います。  その上で本題に入りますが、まず、我々も政権担わせていただいていて、負担給付の在り方がどうあるべきなのかということについて随分検討してまいりました。消費税を引き上げる際に、まあこれは個人的な反省も込めてですが、いきなり消費税社会保障に使うから引き上げましょうということよりは、この国がアメリカのような低負担給付の国なのか、イギリスやそれからドイツのような中負担給付の国なのか、フランスやスウェーデンのように高負担高給付の国なのか、どういう国を目指すべきなのかということをまず最初に検討した上で、その上で、負担は今度は税なのか社会保障なのかとか、そういう議論をした方がよかったんじゃないのかなと、これは個人的な反省を込めてです。  現状日本は、実際のことを申し上げると、アメリカイギリスドイツの中間ぐらいの負担で、給付の割合というのはイギリスドイツぐらいになってきていると。この無理がたたって財政的に破綻の懸念が出てきているということなんだと思っているんですが、改めて大臣として、我が国はどういうような、負担給付関係でいえばどのような国を目指していけばいいとお考えでしょうか。
  9. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 役所の作ったペーパーを読むと負担能力に応じた負担と、何のことかよく分からない、そういう答弁書を書いてきたものでありますから、なかなかこれ、多分、櫻井先生にこれ答えても、こんなの納得できないと言われるだろうなというような話を朝からしてまいりました。  中福祉負担を目指してきたのは間違いのないことでありまして、そういうことを今までも申し上げてきたわけであります。今、現状を見ますと、負担はまだ四〇%ちょっと超えたぐらいであります、国民負担率の中において。給付ということを考えると、今言われたように、イギリスドイツ並みだということになれば、まだ中負担までいくかいかないかぐらいなんだと思います。  ただ、一方で、潜在的な国民負担率は五〇%を超えました。ということを考えれば、もう既に中負担に本来入らなければならない、若しくは将来の世代に向かって負担を強いるということを考えれば、もう中負担になっているんだろうと。  ですから、中福祉負担を目指しつつ、ただ、問題は、更にこれから高齢化が進んでまいります。一方で、医療高度化というものが進んでまいります。この中において、負担というもの、国民負担率がどこまでが中負担なのかということの国民的な議論をしていかなければならないのではないか。それによって、我が国が中負担福祉と言えるのかどうか、こういうことをこれからいろいろと我々勉強をしていかなければならないなと、こんなことを考えております。
  10. 櫻井充

    櫻井充君 私がお伺いしたいのは次のポイントなんですが、現状国民負担率というのはどこまで引上げが可能なのかということなんです。  今、低所得者対策をちゃんとやりましょうとか、消費税引上げに関してそういう話がありますが、ドイツイギリスと比較してみたときに、家計からの支出で決定的に違うものが二つあると思っています。一つ教育コストです。これはヨーロッパなど御案内のとおり大学は無料ですし、それから住宅などは、例えば中古住宅市場でいうと、イギリスは八八%、つまり、日本は一三%ぐらいですから、住宅は造ったら完全に消耗品になる国と、売買できて金融資産になってくる国と、大きく違うんだろうと思っているんですね。  そういう点でいうと、現時点において日本の場合、国民負担率はどの程度まで引き上げられるとお考えでしょう。
  11. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 御通告をいただいておりましたが、なかなかこれそう簡単に答えられる話ではないわけでありまして、それは、国民負担率は低ければ低い方がいいのは間違いないわけでありますけれども、しかし一方で、これだけ高齢化が進んでまいりますと、一定の負担というものは進んでくるわけであります。  元々これは橋本内閣のときに申しておりましたのは、潜在国民負担率、これが五〇%を一つの目安にしてまいりましたが、今も申し上げましたとおり、これは若干超えました。  そういう意味からすれば、次に向かってどれぐらいが国民負担し得る負担率かというものはなかなか、先生、申し訳ないんですけれども、一厚生労働大臣が答えられる、そういう話ではないわけでございまして、これは内閣全体でいろいろ議論をしていかなきゃいけない問題だというふうに思います。
  12. 櫻井充

    櫻井充君 いや、田村大臣のような優秀な人が答えられないという話は私はないと思いますけれども。  だけど、これをお考えいただきたいのは、我々の時代社会保障と税の一体改革を行わせていただいて、あれはやっぱりよかったと思っているんですよ。それは何がいいかというと、今でも厚生労働省の中、縦割りになっていて、年金年金負担介護介護負担医療医療負担で、更に税の負担ということになっていて、ばらばらやっているものですから、トータルとしてどうなるかという議論というのはなかなかできていないんですよね。  やっぱりそういう意味では、トータルとしてどうするのかという議論がないと、済みませんが、来年の秋にまた更に消費税一〇%まで引き上げるのかどうか。私は、これ引き上げていかないと財政的に厳しいところがあると思っています。ただし、申し上げたように、例えば教育コストとか住宅の関連のところの整備をしていかないと、なかなか国民負担率というのは上げられないんじゃないのかなと、そう思います。  であれば、済みませんが、所管の分でお伺いしたいんですが、国民年金加入者というのは、今の保険料負担というのはどこまで耐え得るとお考えなんでしょうか。つまり、国民年金というのは、元々でき上がったときの積算根拠として介護保険料というのは入っていなかったはずなんです。この介護保険料が入っていない中で、今もうどんどんどんどん介護保険保険料増えていますよね、負担が増えていますよね。どこまで負担能力があるとお考えなんでしょう。
  13. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 国民年金といいますか、基礎年金平均受給額五万五千円であります、これは厚生年金方々も含めてという形になりますが。  すると、これ、介護保険料自体月額二千五百円ということでございますから年間三万円、さらに後期高齢者医療保険月額三百七十円でありますから四千五百円ということでございまして、これだけ見れば三万四千五百円という形になるわけでありますが、年間であります。問題は、そういう方々が個人で生活されておられれば多分生活保護という形になりますので、他に収入貯蓄がなければということでございますから、なかなかこれ、どこまでということが言いづらいわけであります。  ただ、これも委員も御承知のとおり、国民年金は、そもそもの成り立ちというものは、稼得能力等々が年とともに、加齢とともに落ちていくと、それをフォローするために国民年金というものがある、元々自営業者制度設計されているものでありますから。そういう意味からすると、国民年金で生活される方は、元々の制度設計は、将来に向かって老後の貯蓄というものがある、又はフローの収入が若干なりともあるという中でございますので、なかなかこれに対してどこまで負担できるかということは、我々としてはこれは答えづらいと。  ただ、おっしゃるとおり、多分念頭に置かれているのは、そうはいったって、これからはもう自営業者だけじゃなくてそれ以外の方々国民年金方々の比率が多いではないかと、それに対してそれはどう考えておるんだということだというふうに思いますが、いずれにいたしましても、そういう方々も含めて、これから被用者年金等々の拡大も含めていろいろと年金制度改革というものは、御党とも三党合意の中で決めさせていただいておりますので、検討していかなきゃならぬと、このように考えております。
  14. 櫻井充

    櫻井充君 済みません、ここは所管省庁ですからね、所管省庁大臣としてどうなのかということは御見解述べられるのが私は当然だと思いますよ。私は金曜日に通告しているんです。これは別に無理筋の話でも何でもなくて、どこまでなんですかということを検討しなかったら、消費税だってこれ一〇%に引き上げるかどうか、こういうことも全部含めて検討しなきゃいけないんでしょう。であれば、所管省庁大臣としてそれなりの考えを持たれるというのは私は当然のことだと思うし、役所全体としてどうあるべきなのかという議論をしておかないといけないと思いますよ。  それから、これはよく夫婦で二人分だからこのぐらいの額なんだという話になるんですけれども、だけれども、平均寿命からいえば、今の日本の結婚の形態からいうと、女性の方の方が年下で、一般的に言えばです、結婚されていない方も最近出てきていますが、もしこれが、モデルは、よく厚生労働省答弁していたのは、これは結婚している世帯なんだという話をされています。だけれども、女性平均寿命と男性の平均寿命と結婚しているときの年の差を見ると、まあざくっと言えばですよ、十年ぐらいは女性の方って独り暮らしになるわけですよね。じゃ、そうすると、いずれ一人でこの年金で生活しなきゃいけなくなるということになるわけですよ。そうすると、この方々に対してどういうふうに手当てしていかなきゃいけないのかということは、これは所管省庁として考えるのは私は当たり前だと思いますよ。この点についていかがですか。
  15. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 低所得者という意味からすれば、だからこそ、今般、一千三百億円を投入して、介護保険料、これ、まさに低所得者方々には更に深掘りして保険料軽減をするわけでありまして、いろんな介護負担増が言われておりますが、介護保険料の低所得者軽減だけ見れば、一千三百億円というお金を今回実は充実分として用意をさせてきていただいておるわけでありまして、所得の低い方々に対しての介護保険料という意味では、そのような形で対応していくという形になってこようというふうに考えております。
  16. 櫻井充

    櫻井充君 正面から答弁していただけていないので、済みませんが、これ本当に根本的な問題なので、抜本的に考えをきちんとまとめていただきたいということだけお願いしておきたいと思います。  今ちょっと気になったんですが、充実分で一千数百億という額が出てまいりました。消費税が八%に引き上がった中で、介護のところの充実分というのはそんな一千何百億ありましたっけ。三千億がたしか子供たちのために使っていくことであって、単純に介護に行っているところは四十数億円しかなかったはずですけれども、この今の数字はどこから出てきた数字なんでしょうか。
  17. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) これは来年度からスタートということでございますので、今般のやつは来年度の部分かなり入っておりますから、この法律改正は。まさに来年度に向かっての法律改正お願いをさせていただいておりますので、その中で一千三百億円、これは介護保険料の低所得者分引下げという形で盛り込まさせていただいております。
  18. 櫻井充

    櫻井充君 ですから、これはまだ今年やっていないんですよ。そうすると、今年のことと来年のこととごっちゃにして答弁しないでいただきたいんですよ。  済みません、それじゃ改めてお伺いします。今年度は充実分は幾らですか。
  19. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 地域包括ケアシステム構築分、四十三億円でございます。ただ、法案審議でございますので、この法案審議の中での御議論ということでお許しをいただければ有り難いと思います。
  20. 櫻井充

    櫻井充君 要するに四十三億円なんですよ。消費税が引き上げられて、これは社会保障充実のために使うんですと、そういうふうに言っておいて、初年度で四十三億なんです。じゃ、四十三億は内訳どういうことなんですか。何が改善されるんですか。  そして、もう一つ申し上げておきますが、結局のところは更に負担を強いられる方々が出てくるわけですね。一部の方々は二割負担になってくると。ということになると、話が違うと思うんですよ。消費税を引き上げるということは社会保障充実に使うんですと、そういう話だったと。しかし、社会保障の中でいうと、僕は別に子育てにあれだけ使ったことについて問題視をしているわけではありませんで、我々は、借金の返済にする分は少し初年度は多めに充実に充てて、一兆円程度社会保障充実に充てる分だということを我々は主張しています。ですが、とにかくこの四十三億円程度で一体何ができて、このことで国民の皆さんに本当に納得していただけるとお考えなんでしょうか。
  21. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) この四十三億円は、認知症に係る地域支援事業ということでございますので、早期の対応というような形を含めてこの中に入れさせていただいております。詳しい項目は、ちょっと待っていただければ──認知症生活支援事業、この二つということであります。  二割負担は、これはこの四月から始まったわけではないわけでありまして、先ほど言いました一千三百億円相当の保険料引下げ分等々との見合いという形になってまいりますので、確かに二割負担でありますとか、あと補足給付等々の見直しで国費で多分七百とか八百億ぐらい、これは負担が逆に増える、増えるといいますか、この分助かるわけでありますが、逆に一千三百億円は軽減で、これは国費負担をさせていただくという形になろうというふうに考えております。公費ベースです、済みません。
  22. 櫻井充

    櫻井充君 いずれにしても、まず消費税引上げ分について、消費税引上げ分でどれだけ介護充実させられるのかということがまず大事な点だと思うんです。今のは、御答弁だと、この法律が通って二割負担になって、それである程度の財源が生まれてきて今度はそれで手当てしましょうということだとすると、消費税引上げ分で一体何ができるのかという議論もきちんとしておいていただかなきゃいけないと思っているんですね。  その上でですが、時間がないので、ちょっと介護労働者のことについてお伺いしていきたいんですが、これは局長で結構でございます。  介護報酬というのは一体どういう積算根拠で決められているのか、その点について御説明いただけますか。
  23. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) お答えを申し上げます。  介護報酬は、介護サービス提供の対価として事業者に支払われるものでございますけれども、介護事業者が介護サービスを提供するのに要する平均的な費用を勘案して設定をするということが法令に書いてございます。  この報酬の設定の仕方でございますが、介護保険制度が創設された当時、介護報酬の単価は、当時の診療報酬や措置費等を前提に平均的な費用を推計し要介護度別に仮単価を設定した後、実態調査を行いまして、その実態調査に基づく人件費等の結果に基づいて仮単価を見直した上で、当時の関係審議会からの答申を得て報酬を具体的に設定をしたということでございますので、当初は実態調査に基づいて平均的な費用というものを反映させたということでございます。  その後でございますけれども、三年に一度介護報酬改定を行っておりますが、これは改定率というのを、まず実態調査や産業計の賃金、物価といった市場価格の動向等を踏まえながら予算編成過程の中で介護サービス全体の改定率をまず決定をいたします。その上で、介護サービス全体の改定率を前提にした上で、それぞれ介護分野の関係者の御意見を踏まえながら各サービスの報酬単価というのを具体的に見直していくということで、これも厚生労働大臣より関係審議会へ意見を求め答申を得ているということでございまして、当初は実態調査を一応やったけれども、その後は賃金の伸びとかそういったものを踏まえながら、全体の改定率を踏まえながら、適宜意見を聞きながら単価の見直しをしてきているということでございます。
  24. 櫻井充

    櫻井充君 ありがとうございました。  じゃ、原局長、先ほど人件費というお話がありました。時給幾らで設定されているんですか。
  25. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 具体的に賃金というものは労使間で決定をされるものでございますので、当初は実態調査をやっておりますけれども、具体的に現時点で、例えば何々施設の何々の職種は賃金は幾らというようなものを明確にした上で改定をしているということではございません。
  26. 櫻井充

    櫻井充君 いや、局長、自分で答弁したじゃないですか。介護報酬積算根拠はどうですかと言ったら、人件費と明確におっしゃったじゃないですか。だから、人件費は時給幾らで積算されているんですかと聞いているんですよ。
  27. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 当時は、当初のいろんな前提となっていたサービス等いろいろございますので、そのときにはそういうものを積み上げたと思いますけれども、実際に調査をして把握をしたと思いますが、現時点ではそういう内訳までは明確になっていないということでございます。
  28. 櫻井充

    櫻井充君 通告していますからね。もう一度お伺いしますけれど、これは止めるということも私は申し上げていますからね。  何でこんなこと言っているかといったら、介護労働者賃金が低いからどんどん辞めているんじゃないですか。だから人件費の設定が幾らになるのかということは大事なことですよ。それを労使とか言って逃げていますよ。最初に介護報酬があるんじゃないですか。じゃ、この介護報酬の中で一体、例えばそこの特養なら特養の施設がどのぐらい取って、それから労働者にどれだけ分配して、だからこのぐらいになるんですというモデルだってないでしょう。  これは後で、じゃ、もう一回聞かせていただきますが、改めてお伺いします。人件費は幾らで設定されているんですか。
  29. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 現時点数字がございませんが、当時、どういうような数字を前提に設定をしたかというのは、資料をちょっと探してみないと何とも申し上げられませんけれども、考え方としてはそういうことでございます。  一応、私どもは経営実態調査を三年に一度やっておりまして、そこでいろんな施設ごとに、いわゆる人件費比率あるいはその収支率、そういったものも全部把握した上で、適切な報酬単価というものを個々に決めているということでございます。
  30. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  31. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 速記を起こしてください。
  32. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 最初に実態調査をしたときに把握した人件費の単価については、資料を探してできるだけお示しをしたいと思います。
  33. 櫻井充

    櫻井充君 それでは、委員長お願いですが、この積算根拠になっている人件費等について資料の提出を求めたいと思いますので、よろしくお願いします。
  34. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。
  35. 櫻井充

    櫻井充君 介護労働者の人件費、賃金と言っておきましょう、賃金については、それではこれは大臣にお伺いした方がいいと思いますが、介護労働者現状賃金については適正だとお思いですか。それから、このような賃金で持続可能な介護が行われるとお思いですか。
  36. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 現在の介護労働者賃金というのは低いわけでありまして、だからこそ、ここ数年上げて、月額、これはおおむねでありますけれども、平均すると三万円ぐらい上げてきたわけであります。しかし、まだそれでも、いろいろと実際問題、いろんな他の産業との調査見比べるんですが、正確な数値出てきません。それはなぜかというと、平均年齢が違っていたりだとか、全ての要素が統一されていないので、どれが本当に適した数字なのかというのは分かりませんが、しかし、それでも概して低い、他のサービス業と含めてもやっぱり低いということはございますから、それも含めて次の介護報酬改定に向かって引上げの努力をしてまいりたいと考えております。  適正な金額は幾らかというお話でございました。なかなか難しいと思います。やはり製造業と比べるとサービス業は全体的に低いです。どこと比べるべきなのか。しかも、一方で、これから若い方々が、特に景気が良くなってまいりますといろんなところに就職されてまいります。今まで以上に介護労働者のなり手が少なくなってくる可能性があるわけでございまして、それに関して、いろんな要素はあると思いますけれども、賃金という要素で少なくとも介護という仕事を辞めようというふうに思われないその数値というものは、今より高いことは確かでありますけれども、なかなか今具体的にどの金額だということを申すことができないということは御理解いただきたいというふうに思います。
  37. 櫻井充

    櫻井充君 大臣、これ、公益財団法人社会福祉振興・試験センターというのは多分厚生労働省所管のところの財団法人だろうと思いますけれど、ここで、介護福祉士で男女になぜ辞めたのかということを聞いてみると、男性の場合に収入が少なかったという人が四四・四%なんです。女性は二一・一%ですね。それから、将来の見込みが立たなかったという人は男性で三三・五%、それで女性だと九・八%ぐらいです。  私、いろんな方々と話をしてみると、大体ですよ、三十歳ぐらいになると辞めようかとか、それから結婚を機に辞めようかとか、それから子供さんが生まれて辞めようかと。要するに、何かというと、収入的に不十分だから辞めようと。これは介護関係に就職されてそうだったわけですよ。ところが最近はこういう状態なので、三十歳ぐらいになってから転職するのは難しいから最初からもう介護の職に就くのはやめましょうという人たちが増えているわけですよね。これ、超高齢社会を迎えるに当たって、介護の職に就く人たちが減っていくということ自体に大きな問題があると思っているんです。  それから、田舎はですよ、職はどういうところに求めていくのかといえば、これから先も人がどんどん減っていく中で、今までみたいに道路をがんがん造っていきましょうとか、トンネル掘りましょうという時代じゃなくなっているわけですよね。であったとすると、こういったところに職を求めてくるのは当たり前であって、この人たちのある程度賃金確保しなかったら、これは継続できないと思いますよ。  例えば、介護で働いているところの子供さん方は、例えば大学に行くということになってくると、親の賃金って一体幾らぐらいが適正なんでしょうか。四人で家族で生活されていて二人子供さんがいらっしゃって、今の日本というのはアメリカほどではないにしろ学歴社会ですよね。学歴がなければこの先、社会で出世もできないかもしれないということになってくれば、親の賃金で自分の出世が妨げられるなんということがあってはならないと思っているんですよ。  そういう点でいうと、一体どのぐらいの賃金を支給しなければいけないのかと。これは先ほど労使で決まると局長は言っていますが、労使で決まる問題じゃないんですよ、根本的に言ったらば、国がその単価を決めてきているんだから。  ですから、最後に残された、医療介護というのは多分社会主義のシステムで、私、決して悪いと思っていないんです。悪いと思っていないけど、今のようなことだと介護のなり手がいなくなるんじゃないですか。生活もできなくなるんじゃないですか。  だからこそ、もう一度申し上げておきますが、介護報酬というものが、単価が、その人件費で時給幾らで設定されているのかということがきちんとされていなかったら、適切なですよ、適正な介護報酬というのは私はつくれないんじゃないのかなと思っているんですよ。この点について、大臣、どうお考えですか。
  38. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 確かに二十四年度の数字を見ますと、全体で一四・八%が離職しているわけでありますけど、介護は一七%と、比較すると高いわけであります。これは介護も含めてサービス産業は全体的に高くて、他の飲食業、宿泊業が二七%、生活関連サービス、娯楽二一%、サービス業、他に分類されないもの二一%、サービス業全体的に離職率は高いという傾向にあります。製造業から比べると、多分、賃金が全体的に低いというところもあるんだというふうに思います。  一方で、介護の中身を見てみますと、実は半数ぐらいが離職率一〇%未満という数字が出ております。  じゃ、なぜこんなに高いかというと、実は三〇%を超える離職率が、こういう事業所が二割あると。つまり、ここが引っ張っているわけでありまして、そういう意味では、辞めた理由、私の持っている資料は、これは財団法人社会福祉振興・試験センターというところの資料なんですけれども、これでは離職する理由は、結婚、出産、育児、これはまあ女性なんだと思いますが、これが三割で、あとは大体二四、五%で、収入が少なかった、人間関係、あとは会社の理念等々、こういうことでございますので、様々な理由はあるんだと思いますが、確かに賃金というものが低いという現状があるのは事実であります。  これを国が決められると、確かにそのとおりでありますが、これ来年度の診療報酬改定に向かって我々も努力しようと思いますが、あっ、ごめんなさい、介護報酬、あくまでもこれはこの二・八兆円充実分、この中ですよね、まだ二・八兆円にならないわけでありますが、これの中から入れていくわけであります。財源、あくまでも国が入れる公費、また地方が入れる公費というものが掛かってくるわけでありまして、そこはやはり一定の制約がある。あわせて、一方で、保険ですから、保険料も引き上がるという問題もある。そういう問題を総合的に勘案しながら上げていかなければならないということでございます。  一方で、もちろん国がある程度の単価、単価といいますか、報酬を決めますが、やはりそこは労使間はあるわけでありまして、これは介護報酬が上がっていないときでも賃金は上がっています。例えば、よく言われますけれども、内部留保が多いと言われるところ、こういうところに関しましても、当然、雇用市場がタイトになってくれば高くしなければ雇えないわけでありますから、全体としてやはり労働市場がタイトになってくれば賃金は上がってくるということもあります。  ですから、普通の企業と比べれば、公定価格が入っているところで賃金の上げ下げ、労使の交渉というものは、幅は少ないとは思いますけれども、しかし全くないわけではございませんので、そういうところと勘案しながら介護報酬改定、我々としても上げられる限りはしっかりと頑張ってまいりたいというふうに考えております。
  39. 櫻井充

    櫻井充君 財務省大臣答弁されるなら、私、それでいいと思いますよ。厚生労働大臣がそういう答弁をされること自体、私はおかしいと思います。要するに、介護側の立場に立つ人間がいなかったらどうするんですか。財務省と闘っていくんでしょう。要するに、最終的には財務省との闘いじゃないですか。まあ私は両方役所にいましたからよく分かっていますけれども。ですが、そこのときに介護労働者側の立場に立って、やはりこのぐらいのことの引上げをやらなきゃいけないんだとか、そういうことを私は厚生労働大臣としておっしゃるべきだと思いますよ。  それから、済みませんが、飲食と比較されるのはおかしいと思いますよ。飲食は国は全く関わっていないんです。これは民間の話ですよ。ここは介護報酬という単価を国が決められるから、だからここで大臣としてどうお考えなのかということを申し上げているだけです。それから、これは資料が違うのかもしれませんけれども、役所は結局は都合のいいところだけ持ってきますから、是非、都合のいい資料だけではなくて、実態をちゃんとチェックしていただきたいと思いますが。  これは、今度逆に言うと、介護労働安定センターというところの離職率を調べてみると、非常に興味深いんですが、常勤労働者の離職率というのがありまして、産業界全体ですと離職率は一一・五%です。ところが、介護になってくると離職率は二三・四%なんです。ところが、短時間労働者の離職率はどうかというと、産業界全体でいうと二五%ですが、これが介護になってくると一六・七%で決して高くはないんです。ですから、どういう統計を取ってきてどういうことを調べられるのかによって全然立ち位置が変わってまいります。申し上げておきたいのは、常勤の人たちの離職率が高いということ、これは安定的な職に就けないということを意味しているものだと思っています。  それから、平均賃金についてどうしてこういうデータしかないのかなと思うんですが、これも介護労働実態調査介護労働安定センターのところから出てきている資料です。おっしゃるとおり、わざとずらしてあるのかどうか分かりませんが、全産業の平均年齢四十二・五歳で勤続年数が十三・二年という数字を使っているので、これは三十六万二千三百円という数字が全産業では出ています。一方で、福祉施設の職員について見ると、平均年齢が三十五・六歳ですから、六歳から七歳程度低くなっていて、勤続年数が五・三年なので、八年ぐらい短くなっている人たちのわざと数字を持ってきていて、二十三万一千四百円です。ただし、これは定期昇給が五千円程度だったとしても追い付きませんからね、この年齢で。ですから、この統計を出してくる出し方も、非常に、何というか、恣意的なんじゃないかと思うんです。  これは男性に対してなんです。男性に関してはこういうものを持ってきておいて、女性はどうかというと、全産業が平均年齢四十歳、福祉施設の職員が三十九・七歳でほとんどそろっていて、女性の場合には、それでも女性の方はやっぱり低くて、全産業で二十四万九千円、それから福祉施設だと二十一万一千円ぐらいでして、女性は余り差がないんだということをこれから、根拠で、多分いつも言われていることだと思っているんです。  いずれにしろ、大事な点を申し上げておきますが、男性の賃金の格差と、それから常勤の人たちの離職率が高いということ、ここに対しては、私は絶対的に問題があると思っているんですよ。大臣はこの点については、まずお伺いしておきたいのは、問題はあるとお考えなんですか。
  40. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) これは恣意的というよりかは、平均が多分こういう年齢構成になっているんだと思います、介護職の場合、男性は。女性はやはり介護職等々、古くから御活躍をいただいていたという部分もあるので、平均年齢が近いという部分があるんだと思いますが。  私は、問題意識持っています。持っておりますが、今御承知のとおり、二・八兆円という、これは三党で合意した中での充実分であります。この中から使うというのが大前提であるわけであります。それはほかにも財務省から持ってくればいいじゃないかという話はあるかも分かりませんが、しかし、それができないから消費税という財源に我々は頼らざるを得ないということで、消費税を上げることを三党で合意したはずです。でありますから、やはりこの二・八兆円から使う。  ほかにもいろんな部分に使っていかなきゃならぬ中において、介護だけではありません、ほかに障害者福祉やられている方々医療関係方々もおられます。賃金だけ考えても、かなり方々賃金というものは、やはり医療職も含めて低いわけでありますから、そういうものも考えていかなきゃならぬわけであります。あわせて、それだけではなくて、今ほど来申し上げたとおり、低所得者に対してのいろんな軽減策でありますとか、これもやっていかなきゃいけない。  つまり、二・八兆円の中でどうやって分配するかということを考える中において、その中において、我々としては、介護報酬として賃金を上げる分どれだけ使えるかということを省内で頭をいろいろ悩ませながら検討をしていかなきゃならぬということでございまして、その点は財務省と、財務省の立場で言っているわけではなくて、限られた財源の中でそれをどう使うかということでございますので、また委員からもいろんなお知恵をいただければ有り難いというふうに思います。
  41. 櫻井充

    櫻井充君 いろいろな立場で考えなきゃいけないということは、そのとおりだとは思います。  ただ、やはり今のような賃金では残念ながら、これ女性議員の方もいらっしゃる前でこう言うとまた袋だたきに遭うことは覚悟で申し上げますが、男性の賃金がやっぱりこれだけ格差があるということ自体、僕は問題だと思うんですよ。ですから、じゃ、一生の職になるのかというと、これでは一生の職にならないですよね。ですから、そこを考えていただきたいんですよ。  繰り返しになりますが、田舎では職が本当になくなってきていて、だけど高齢者の方々はいっぱいいらっしゃって、介護に就くしかない。だけど賃金は安くて、とてもじゃないけど生活もできないと。ですから、どんどんどんどんまた田舎から、じゃ、とにかく都会に行って仕事を探そうかという話になって、それでまた過疎の町は更に過疎になってくるということなので、この点については是非御検討いただきたいと、そう思います。  こうなると、結局は介護保険自体を、もしかするとある程度パイを大きくしていかなきゃいけなくなるかもしれないんです。私はそれでもいいと思っているんです。ただし、そうなってくると、今の負担の在り方だと一対一になっていますね、税と保険料と一対一になっていて、税も今度はどうかというと、税の中でいうと半分が国、それから四分の一が県と市町村になってくると。  市町村自体が小さい町になってくると、この財政に耐えられないところも出てくるんではないのかと思っていて、今のような、税が一、それから保険料一という構造を改めて考えていく必要性があるんじゃないかと思っているんです。消費税をもし仮に今一〇%まで引き上げますと、今後更に引き上げなきゃいけないんじゃないかという検討がなされているとすれば、この引上げを検討しなければいけないんじゃないか、我が党の中でもそういう議論があります。  確かに、今の国の財政を考えてくれば、借金の返済を考えてくれば、これは当然のことだと思っているんです。そうだとすると、税を引き上げていく中でいうと、保険料まで併せて引き上げろということにはなかなか難しくなってきていて、税で引き上げるのであれば、今の介護保険の一対一の比率を、税の部分を例えば極端に言えば二にして保険料を一にするとか、だから、社会保障と税の一体改革負担割合のところを検討するというのはすごく大事なことだと思っているんですけど、そういうことをやるということと、それから市町村単位で金を集めるんではなくて、相当格差が出ていますから、市町村間で。県単位にしていかないと、医療と同じような形で介護保険そのものも町としての財政負担ができなくなるんじゃないかなと、そう思っているんですが、この点についていかがでしょうか。
  42. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 保険、今五割、一対一という形であります、介護保険。公費が五、保険料が五という形であります。これは、言うなれば税が多過ぎると、財政状況が厳しくなると切られるんじゃないかであるとか、受益と負担考えた場合に、二分の一保険料が入った方がそれが分かりやすいんではないかだとか、この保険の理屈というのはいろいろあるんだと思います。  少なくとも、今一〇%では無理なことは間違いないわけでありまして、これはなぜかといえば、三党合意の中のいろいろな中身を見ますと、二・八兆円、完全に決まっていないといえども、皆様方も大綱を作られる中で大体のものは決まってきておるわけでありますので、二分の一を例えば六〇%にするような財源はその中に含まれていませんから、これなかなか難しいんであろうと思います。  実は、ここからは私見です、大臣の言葉じゃありません。  私ども自民党が消費税一〇%上げるときの案の中には、介護保険公費六〇%、そのうちの一〇%は国が国費で出すというような、市町村、都道府県は大変でありますから、そういうような案も実は盛り込んでおったんです。ただ、それは三党協議の中でいろいろ使い道が変わってきました。その中において我々も断念したわけでありますが、そういう考え方は一つあるんであろうと私は個人的には思っております。  ただ、これは厚生労働省では検討いたしておりませんので、そこだけははっきり申し上げておきながら、そういう委員の御見識、我々も勉強させていただかなきゃならぬなというふうに思います。  それからもう一点、何でしたっけ。
  43. 櫻井充

    櫻井充君 市町村格差。
  44. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 市町村格差、これは今、調整交付金のような形で調整をしております。これは、高齢化の率であるとか、それから所得ですね、第一号被保険者の方々所得、これに合わせて財政調整をさせていただいておるわけでありまして、そういう意味では二五%のうちの五%ぐらいだったと思いますけれども、やりくりはいたしております。  ただ、これから保険料の格差がどこまで許容できるのかということも含めて我々は注視をしながら、これからも制度設計、不断に見直す部分はあってもいいんだろうというふうに思いますが、今のところはそういうような仕組みの中で調整をさせていただいております。
  45. 櫻井充

    櫻井充君 保険料の基準ですけれど、全国の平均で今約五千円ぐらいです。一番高いところが新潟県のこれは関川村というんでしょうか、六千六百八十円でして、一番低いところは北海道の奥尻町で二千八百円になってきていて、これだけの格差が付いてきているんですね。県内でも多分そのぐらいの、ここまでではありませんが格差が付いてきていて、なかなか難しくなってきているんじゃないかなと、そう思います。  最後にもう一つ。今回、介護を地方に移していく、私は、地方分権の流れの中ではこれは当然のことじゃないかと、それから予防もやっていくと、保険者機能を発揮させるためにはそれはそれでいいと思っているんですけど、要するに伸び率を、六%ぐらいだった、なぜ地方に行ったときには四%の伸び率で抑え込もうとするんでしょうか。そして、その上で、国が地方にもう任せると言ったんだったらそのまま任せればいいのに、あなた方、これを減らすためにボランティアを使えとか、何で国が地方に命令するんでしょうか。地方の自主性に任せて、できるところはできるし、できないところはできない、どういうやり方にするかはそれはその地方地方に任せればいいのに、何でこういう指示出されるんでしょう。
  46. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) ボランティアがちょっと余りにも先行し過ぎておりまして、これは修正をしなきゃならぬと思っておりますが、決してボランティアが大半なんてあり得るわけないわけでございまして、私も無理だと思います、それは。ただ、進んでいるところではボランティアをやられるところはあってもいいんだというふうに思います。ボランティアというよりかは、やはりそこは雇用という形、その中には私は、元気な高齢者の方々が雇用という形で入り込んでいく、NPOなんかの中で雇用されて介護を担っていただくということはあるんだというふうに思います。  そういう意味で、ちょっとボランティアが余りにも前に出過ぎちゃったものでありますから、私も、余りボランティア、ボランティアというと、それはもう自治体はちょっと無理だよという話になりますので、決してそういうことを、ボランティアが全てやるようなことは念頭に置いていないということは御理解をいただきながら、しかし、ボランティアも貴重な担い手でありますので、ボランティアで活躍いただける方々にはボランティアいただきたいというふうに思います。  いずれにいたしましても、地方がいろんな取組をしていただければいいと思っておりますし、全ていきなり地方がこれを導入できるとも思っておりません。その場合には既存のサービスを使っていただきながら、一つの市の中でまだら模様で、いろんな、市の中でもこの町は新しいNPO等々が始めるサービスがあって、それがだんだんだんだん他の地域に広がっていくような形で、年数掛けて結果的にはその市自体が新たな総合事業の方に移っていっていただくと。もちろん、地域支援事業でございますから介護給付ではありませんけれども、一定程度は今の事業者等々が活躍いただく時期もあるのであろうというふうに思っております。  それから、決して給付を削減することありきでやっておるわけではございません。我々考えておりますのは、これ総合事業等々、まあ二次予防事業といいますと委員はいろいろと懐疑的であられるというふうにお聞きをいたしておりますが、総合事業というそれとは違う事業もやっておりまして、ここでもいろんな好事例等々があります。  そういう好事例等々を含めてそういうものを活用していただく中で、悪くなりづらくする、つまり症状を悪化させないといいますか、状態像を悪化させない、若しくは悪化させるのでもそれを緩めていく、場合によっては良くする、こういうようなことによって全体として要支援者等々も減るでありましょうし、もっと言うと、要介護になる方々も減っていくというふうなことを念頭に置いて、高齢者の伸びで何とかこの給付の伸びを止めていこうといいますか、そういう努力をしてくださいという意味で申し上げておるわけでありまして、サービス切って何かよこしまなことを考えておるように思われるかも分かりませんが、下手なことをやると要介護度が悪化するわけでありまして、結果的には介護保険自体の財政が悪くなるということは我々も重々分かっておる中での提案であるわけでございます。
  47. 櫻井充

    櫻井充君 よく分かりませんでしたが、国がきちんとできなかったんですよね、今のお話ですと。国は六%の自然増だった、これは市町村に任せると四%程度になるだろうと。ですから、国がギブアップしたという言い方なのかどうか、そこは分かりません。  ただ、予防のところについて、じゃ、成功した例があるんですかと。それで資料いただきましたが、国が確かに今まで考えてきたような予防事業ではうまくいっていないんです。  私は、前の委員会でも申し上げましたが、例えばパワーリハビリの私は推進者ですよ、推進者です。だけど、パワーリハビリというのは、あの当時の要支援、要介護一、要介護二の人たちにやった場合に、三分の一自立になった、予防には有効だという数字は全く出ていないんです。ですから、こういうものを予防に使っても無意味ですよということを申し上げたんです。データに基づいてやらないから、結果的にうまくいっていないんですよ。  ですから、こういうことをやるよりは、ここにあるように、地域の人たちが集まって知恵を出してくるようなやり方をすればいいんだろうとは思っています。別に委員長が歯医者さんだから申し上げるわけではありませんが、歯科医療というのは随分認知症の予防とかそれから介護予防に有効なんですよ。ですから、こういう中に本当はそういう事例も挙げていただければ有り難いなと。ちゃんと入れ歯の入っている人たちの方が認知症になりにくいとか、そういうデータもあって、むしろそういうことを国全体として積極的にやっていくということなら分かるんですが、何となくですよ、何となく地方に任せて、その間に財務省に言われたから介護の費用全体を抑制しましょうみたいな感覚で取れているので、そうならないように是非お願いしたいなと。  最後に申し上げておきますが、介護というのはやっぱりこれから日本として雇用の受皿として非常に大事なところだし、超高齢社会で極めて大切なところなので、国でほとんどが決まってくるので、是非財務省に負けないで頑張っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  48. 東徹

    ○東徹君 日本維新の会・結いの党の東徹でございます。  先ほど櫻井委員の方から人材確保のことについて質問がございました。非常に誰もがこれからの超高齢社会に向けて介護人材の確保、ここが本当に大事な問題だというふうに私も思っておりまして、そのためには、介護人材の確保をしようと思えば、やっぱり処遇を改善していってあげないといけない。そうすると、財源はやっぱり必要になってくる。じゃ、その財源はどうやって生み出していくのか。これは、介護報酬を上げるのか、税を上げていくのか、こういった議論にならざるを得ないだろうというふうに私も思っておりまして、これはしっかりとその辺のところも覚悟の上で検討していかなきゃならないというふうに思っております。  ちょっと質問の順番を入れ替えさせていただいて、介護人材に関連する質問を先にさせていただきたいと思います。  先般の六月二日の参議院本会議の代表質問介護人材の確保に関する質問を私もさせてもらいまして、田村大臣の方からは、平成二十七年度の介護報酬改定に向けて、財源を確保しつつ、更なる処遇改善を進めるというふうに御答弁いただきました。  介護職の処遇改善、人材確保のためには非常に大事だというふうに思っておりますけれども、一方、また医療の分野から言わせると、医療においても、病院の看護助手とか、そういった資格が必要とされていない人材については流動性があるため、介護職の処遇改善が進んでいくと、医療分野と介護分野の間で人材の奪い合いが生じるというような議論もありまして、医療介護も人材確保が必要であるということにはやっぱり変わらないわけでありますけれども、このような人材の奪い合いが生じることのないよう、介護人材の確保についても、また医療分野においても工夫していく必要があるというふうに考えるんですが、今後、介護従事者の人材確保をどのようにその点考えていくのか、お聞きしたいと思います。
  49. 土屋品子

    ○副大臣(土屋品子君) 東議員のおっしゃるように、これから本当に介護のニーズの高まりに伴いまして約二百五十万人の介護人材が必要と推計されているわけでございますが、まさに医療の人材確保介護の人材確保でお互いに戦い合いみたいな形になることは好ましいとは思っていないわけでございます。  先ほど、櫻井委員大臣とのいろいろな議論の中でもありましたように、介護報酬の問題も大変重い問題でありますけど、そのほかにやっぱり介護のイメージアップも大事ですし、またキャリアパスの確立なんかもしていかなければならないし、そういう一体としての形を整えていかなければならないとも思っています。  こうした中で、今後、介護人材確保方策全般について早急に一定の方向性を示すために、福祉人材確保対策検討会というのを開いておりまして、六月四日に第一回開きましたが、更に六月二十日に開催予定でございますけれども、二十六年、今年の秋頃をめどに一定の方向を出していくわけですけれども、その中でも、今後、医療分野と介護分野の間での緊密な連携を図りつつ、あらゆる施策を総動員して社会全体で、医療も大事ですし介護人材もしっかりと確保していくという観点に立って、しっかりと全力で取り組んでいきたいと考えています。
  50. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございます。  是非とも、私も、介護というと介護施設においての介護職というイメージが非常に強かったんですが、病院においてもやっぱりそういう末端で患者さんを支えていただいている、そういった方々もいるということも目を向けていかないといけないなというふうに思いましたので、その点についても質問させていただきました。  続きまして、養護老人ホームのことについて質問をさせていただきます。  これから超高齢社会を迎えるに当たって、介護人材もそうですけれども、施設のことについてもやっぱり大きな問題になってくると思います。養護老人ホーム、これは、ここにおられる方は養護老人ホームとは何ぞやということはよく御存じかとは思いますが、もしその経緯が御存じでしたら、ちょっと教えていただいてよろしいでしょうか。それと養護老人ホームの入所要件。
  51. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 養護老人ホームにつきましては、介護保険制度創設前からある、いわゆる老人福祉法に基づく施設でございまして、主として六十五歳以上の者であって、環境上の理由及び経済的な理由により居宅で生活することが困難なものに対して市町村が措置を行い、入所者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導、訓練等を行うことを目的とした施設ということでございます。
  52. 東徹

    ○東徹君 じゃ、主に恐らく経済的な理由で、六十五歳以上の方でそういうところに入っておられる方というのが多いかと思います。大方の方は自立されているということが大体前提条件だというふうに思うんですけれども。  この養護老人ホームですが、全国に何か所あって、定員が何人あるのか、お聞きしたいと思います。
  53. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) お答えを申し上げます。  社会福祉施設等調査の基本票によりますと、養護老人ホームは平成二十四年十月一日時点で全国に九百五十三施設ございます。また、定員でございますが、約六万五千でございます。
  54. 東徹

    ○東徹君 全国に九百五十三施設、そして定員が六万五千人の定員があるということなんですが、養護老人ホームというのは、もうこれ、今本当にサービス付き高齢者住宅とか、生活保護の方でも入れる、そういった住宅も出てきた中で、この養護老人ホームという意義、今になってこれはもう大分変わってきたんじゃないのかなというふうに思っていまして、その点についてどのようにお考えなんでしょうか。
  55. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 養護老人ホーム、議員おっしゃいましたように、単に要介護になった人ということではなくて、いろんな環境上の理由とか経済的な理由によって在宅で生活がしにくい方ということでございます。  都市化だとか社会のいろんな変化とかが進む中で、あるいは単身が増えていくとか家族の機能が低下していくというふうな中で、やはり生活困窮者の増加とか、あるいは社会的に孤立するなど、介護ニーズ以外の面で生活困難を抱える高齢者が増加をしていると考えておりまして、養護老人ホーム以外の施策では十分な対応が難しく、制度のはざまに陥っている方も実際おられるわけでございますので、こうした高齢者に対して養護老人ホームが適切な支援を行うことは求められているのではないかと考えているところでございます。
  56. 東徹

    ○東徹君 もうこれだけ、先ほども言いましたように、養護老人ホームに入るといっても、自立している方々で経済的に困難な方々が主に入ることがケースとして非常に多いというふうに思います。これから一番大きな問題は、やっぱり介護という問題になってくるわけでして、この養護老人ホームの果たす役割は、ちょっとこれはもう、今後見直していかないといけないのじゃないのかなというふうに思います。  それに加えて、養護老人ホームって、何かこれ全国見ますと、非常にまた隔たっておりまして、北海道が最も多いんですよね。北海道が五十四施設。東京都でさえ三十四施設なのに北海道は五十四施設もあって、東京都は三千八百六十二人の定員しかないのに北海道は四千五百五十三人の定員なんですよね。これは物すごい偏っているんですよね。兵庫県なんかは、またこれ大阪に比べて人口は少ないのに四十二施設もあって、定員も大阪よりも多かったり、福岡県も大阪よりも十一施設が多くて、定員も若干ですけれども大阪よりも多い、こういう非常に偏った在り方になってきているわけですね。  これ、元々、何でこんな偏った数字になっているんですか。
  57. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 先ほどその制度の創設の経緯を申し上げましたけれども、実際には新規、これ措置制度になっていまして、実際、地方公共団体の財源で整備をすると。小規模については今国の方でも助成はしておりますけれども、通常型については地方団体の財源に基づいて整備をするということで、実際にはなかなか新規のものが建つというよりも、過去整備されたものが今に継続されてきているというのが大方の実態だと思っています。  むしろ、我々としては、これ非常に限られた資源の中で養護老人ホームというものも、議員は経済的理由の方が多いとおっしゃいますけれども、もちろんそういう方も多いと思いますが、環境上の理由で、やっぱりケースワークをしっかりして、そこで自立に向けた訓練をしてもらうというような役割も非常に大きいところがありますので、我々としては、市町村に、これ結構今措置控えみたいなことが起きているところもございまして、そういうことがないように、是非今ある施設については活用していただきたいというようなことを考えているところでございます。
  58. 東徹

    ○東徹君 都市部では非常にサービス付き高齢者住宅、圧倒的にどんどんどんどんと増えていっていますよ。そんな中で、これ都道府県によっても状況は確かに違うだろうと思うんですけれども、そこは都道府県によって見直すべきところについてはやっぱり見直していく。養護老人ホームであったけれども、もう養護老人ホームの役割はちょっといかがなものなのかなというところは特養に変えていってもいいんじゃないのかなというふうに思うんですが、それはいかがですか。
  59. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 設置主体が市町村等の場合、もちろんそういう地域の中で特養のニーズが足りなくてというような場合は、もちろんそこは判断としてあろうかと思いますけれども、我々としては、やっぱり養護老人ホームというのは、先生、サービス付き高齢者住宅をおっしゃいましたけれども、サービス付き高齢者住宅というのは見守りとか相談みたいなことはやりますが、やはりソーシャルワークというんでしょうか、そういう社会的なお困りを持っているような方に対してのサービスはやりませんので、そういったような高齢者に対して、やはりこの養護老人ホームというものはもっと役割を果たせるのではないかと思っています。  それで、平成二十五年度に老健事業の中でこの養護老人ホームあるいは軽費老人ホームの今後の在り方についてもいろいろ御検討をいただきました。そういう中で、やっぱり有識者の方からの御意見としては、この養護老人ホーム等は、ソーシャルワークを生かした専門的支援機能をもっと強化すべきではないかとか、あるいは地域で暮らす高齢者等の社会生活上の課題を解決するためにアウトリーチを積極的に実施して必要な支援を行うべきではないかとか、あるいは入所者の自立支援や社会参加を促進し、地域移行の方についてその環境調整を行うべきであると、こういったようなちょっと御提言もいただいておりますので、私どもとしては、是非養護老人ホーム本来の役割というものをもっと果たす方向でこれを活用していきたいと考えているところでございます。
  60. 東徹

    ○東徹君 何でこんなことを言うかというと、養護老人ホームの職員の方からも、養護老人ホームって要りますかと、そういう声って本当にあるんですよ。なので、本当にもう一度実態をやっぱり調査すべきだというふうに思いますので、是非お願いしたいと思います。  あと、最後に一点質問させていただきたいと思いますが、これからサービスを提供していく中で、今の要介護一、二、三、四、五とありますけれども、その要介護の枠の中だけで、サービスがそれしか提供されないんじゃないのかと、そういうふうに思っている方々も多いんではないのかなと。自己負担でもいいから、例えばデイサービスをもうちょっと増やしたいとか、それからホームヘルプサービスを増やしたいとか、やっぱりそういったニーズに対してはこれどういうふうに普及促進していくのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  61. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 土屋厚生労働大臣、時間を過ぎておりますので、答弁は簡潔に願います。
  62. 土屋品子

    ○副大臣(土屋品子君) 東委員のおっしゃるように、まさに保険外サービスと併せて提供する必要があると思います。そういう中で、ケアマネジメントを通じて利用者の合意の下で民間事業者が提供する介護保険外のサービス、例えば配食とか健康増進施策、家事支援等も組み合わせながら、利用者の希望に合ったサービスが必要だと思います。特に多いのが今配食サービスでございます。  そういう中で一番大事なのは情報でございまして、市町村が積極的に情報を利用者に提供していくというか説明していく、こういうことが必要だと思いますので、その点も、民間主体のサービスを、できるだけ情報を皆さんに受けられるようにしたいと考えております。
  63. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございました。  終わります。
  64. 山口和之

    ○山口和之君 みんなの党の山口和之でございます。  先ほど櫻井さんがいらっしゃったんですけれども、今はいなくなってしまってあれなんですけれども、パワーリハのところで予防の効果がなかったと、どこのデータを切っておっしゃっているのかよく分からないんですが。  私は、パワーリハをずっと推奨してきて使ってきた人間としては、介護予防の中に一石を投じて、行動変容のベースツールとして、廃用症候群と言われます生活不活発病があれだけ横行している中で、慢性期のリハビリテーションに対してどうやっていくか。横断歩道が渡れない、あるいは家から出るのがおっくう、立ち上がるのが大変、だからこたつにずっと座っているというような方々をどれだけ元気にしたか、今度データを持ってきたいなと思うんですけれども、いらっしゃらない。行動変容というベースツールであるということをまず。ただ、ちょっとなんちゃってパワーリハが随分横行して、よく理解せずにやられている方がたくさんいらっしゃったので、リスクも含めてちゃんと啓蒙していかなきゃいけないなとは思います。いらっしゃらないのが残念ですけれども、次回またデータをお示ししたいと思います。  それで、まず資料の一なんですけれども、資料の一を見ていただけると、どなたがどちらに行ったかではなくて、左の方を見ていただくと、左の方です、左の方に、質問通告が前日の夕方になると帰りは明け方近く、仕事と子育ての両立の障害になっている、霞が関の女性官僚六人の訴えは切実な思いがこもっていたと。後ろの方にちょっと行って、与野党はこれまで質問者が二日前の正午までに質問内容を政府側に伝えるとの申合せを重ねてきた、しかし徹底されることはなかったということです。  先ほど、金曜日に質問通告していますといっても、これは金曜日だと二日前のことです。火曜日ですからね、今日は。そう考えますと、二日前にちゃんと通告することは大事だなと自分の反省も含めて、していかなきゃいけないと。  話は本題に戻りまして、(発言する者あり)いや、大事だよと言って終わりです。  前回、みんなの党の薬師寺委員の方から、チーム医療、特定看護師、六十分一本勝負でさせていただきました。チーム医療がそれだけ大事だということだと思います。私の方からも大臣質問したいのですが、チーム医療についてどう考えるか、期待を含めてお答え願います。
  65. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 冒頭、質問通告のお話がございました。実は、衆議院の厚生労働委員会で次世代法をやっているときに、私も各与党、野党の皆様方にお願いといいますか、これなかなか難しいのは、委員会の日程等々がある程度決まっておればいろんなことができるんでありましょうけれども、私も筆頭理事やっていた経験上、なかなか国会との調整で日程が組めないという中において、与党も野党の先生方も御苦労いただいておるという実態があることは重々承知であったわけでありますけれども、なるべくよろしくお願いいたしますとしおらかにお願いをさせていただいた、そんな記憶がございます。  それはそれといたしまして、今のお話でございますが、チーム医療でございますが、まさにこれだけ医療高度化、多様化してくると、そういう意味からいたしますと、多職種の方々がやはりいろんな働きをしていただくこと自体が質の高い効率的なサービスを提供いただくということでございますので、チーム医療に対する期待、我々も大変大きなものを持たせていただいております。  でありますからこそ、今般、看護師の特定業務の研修事業、こういうことを法律の中に入れさせていただいたりでありますとか、診療放射線技師、さらには臨床検査技師、さらには歯科衛生士の皆様方の業務範囲でありますとか業務の実施体制の見直し、そのようなものを提案をさせていただいておるわけでございます。  これからますますチーム医療が盛んになっていただく中において、より質のいいサービスを患者の皆様方に提供いただければ有り難い、そんな思いでございます。
  66. 山口和之

    ○山口和之君 ありがとうございます。  お医者さんだけ頑張ってくださいと、あるいはお医者さんだけ質を向上してください、これはもうそういう時代ではなくて、本当に総合力で底上げしていく、医療全体を底上げしていくと、これは極めて大事なことだと思っています。  そのチーム医療の質の向上についてどういうふうにお考えか、どういうふうにしたらいいのかお考えか、お答え願います。
  67. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 当然、チーム医療、それぞれの職種の方々の能力の向上ということは大事であります。職能団体が、それぞれ例えば研修でありますとか学会でありますとか、私も先生の元の学会に以前挨拶にお邪魔させていただいたことがありますけれども、大変重要なことだというふうに思います。  その養成所の教育内容というもの、これは比較的弾力的に見直していただけるような制度になっておりますので、その時々の必要な能力を付けていただくための教育、こういう教育を盛り込んでいただければ有り難いのではないのかなというふうに思いますが、この後、まだ質問がこれに続くのでありましょうか。じゃ、ここまでにさせていただきます。済みません。
  68. 山口和之

    ○山口和之君 先ほど櫻井委員からのお話もありましたけれども、給与の問題も、やっぱり医療職、大臣も先ほど、介護だけではなくというお話がありましたけど、実際そういう話なんですね。どこに価値を持つか、大切なところをどこに持つかというふうに考えていくと、総合的に考えていかないと、いい人材を確保するというのは、これからますます少子化の中、難しくなってくると思います。  そこでなんですけれども、資料の二を見ていただくと、次のページなんですけれども、チーム医療の推進についてという報告がありました。その中で、チーム医療がもたらす具体的な効果というのが一段目にあるんですが、その後に、今後、チーム医療を推進するためには、各医療スタッフの専門性の向上、あるいは各医療スタッフの役割の拡大、医療スタッフ間の連携、補完の推進といった方向性を基本としてということでありました。  ですから、今回の特定看護師については、本来であれば、パラダイムの大転換を図る一つの大きな機会であったのかと思います。しっかりと本当は教育を担保して、質を担保して、試験までやるかどうか、自分としてはやるべきだろうと思いますし、更に向上していくためにはどういう道があるんだろうということを模索する絶好の機会だったと思いますし、世の中を大きく変えていく大きな先駆けになったのではないかなと思います。  資料の二の二を見ていただきます。  これは理学療法士、自分の仕事なんですけれども、日本の理学療法士の養成校は二百五十一校です。大学教育はまだ三六%ということで、ただ、修士・博士課程を有しています。  世界理学療法連盟というのがありまして、ここでのガイドライン、二〇〇七年に出しているものは、最低四年教育しましょうと。これは世界のスタンダードです、当たり前ですよと言っているのが、これは理学療法士会にかかわらず、看護師会もそうでしょうし、いわゆるコメディカルのスタッフのところはそういう方向でいると思います。米国では、もうドクターコースで理学療法を学びましょうというふうになってきています。すなわち、世界標準はもう四年教育、大学レベルのところでいきましょうというふうになっています。  総合的に各々の分野の責任をしっかりと取ってチームで総合力として上げていくという、日本はどういうスタンスを取りたいのか。グローバルスタンダードなのか、日本だけのスタンダードでいくのか。グローバルスタンダードを超える、もっと世界の標準、見本になるような日本医療体制、提供体制を整えていくのかというふうに考えると、ちょっとちょんまげと刀は捨てて、そろそろ大きくかじを取っていく時代なのではないかなと思います。  世界標準、世界最強のチームをつくっていく、それを目標にすべきだと思いますが、どう考えますか。
  69. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 四年制というものに向かって御要望があるということは私も知っておるわけでありますけれども、業務において必要な教育内容というのはどういうものであるかという点、そして、その教育内容を修得するためにはどれぐらいの年限が必要なのかという点、さらには、これ、仮に四年制を全面的に導入すれば、養成数にも一時的に影響は出てくるんだろうと思います。  そういうことも勘案しながら、また全体の機運も見ながらこれは慎重に検討していかなきゃならぬ課題だというふうには思っております。御要望があるということは私も存じておる次第であります。
  70. 山口和之

    ○山口和之君 命があっての物種、やっぱりベースがしっかりして安心して健康でいられるという状態をつくった上で、その上の経済であったりいろんなことが広がりが見せるわけですから、短期間に集中して治療ができて、いい効果が出されて結果がいいという、これが当たり前の社会になるようにしなければならないと思います。  そこで、地域医療にはかかりつけ医が重要だという話をしたかったんですけれども、ちょっと余計な話というか前段にいろいろ入りましたので、時間がなくなってくるので少し飛ばさせていただいて、ちょっと確認したいんですけれども、いろいろ質問が出て不安になってきたので再度質問させていただきたいんですが、これは要支援者の地域支援事業への移行についてなんですが、必要であれば通所介護、訪問介護は受けられるんでしょうか。  というのは、ちょっと資料の四を見ていただきたいと思うんですけれども、これは資料の四は要介護の原因です。要介護の原因を見ていただくと、もうこれは、脳卒中は特別な病気として、一旦病気になれば障害を残していく、あるいは大変な思いをしていくという意味では脳卒中はとても大事な病気ですけれども、それの予防、再発予防もあるし、あるいは認知症、それから先ほど言いました廃用症候群、生活不活発病ですね、それから骨・関節疾患等々、これらの病気等々を考えていくと、全く素人の人たちだけではということは非常に不安に思っています。  そう考えていくと、プロ、まあいろいろプロでもピンからキリがあって、ちょっと不安なプロもたくさんおるんですけれども、ここはしっかりとした教育をした上でプロの介護を入れていくということ、絡ませていくというのは非常に大事だと思うんですが、御意見を。
  71. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 例えば、脳卒中で入院をされている方が退院をされて、退院直後の在宅での生活を支えると、そういうような場合とか、幾つかそういう専門的なサービスを必要とされる方というのはいろんな場合があろうかと思います。  議員からの御質問にお答えするとすれば、必要な方については、ケアマネジメントに基づきまして、今後も専門的なサービス、通所介護と訪問介護についてはきちんとサービスにつなげていくということでございます。
  72. 山口和之

    ○山口和之君 ニーズを把握する目利き、いわゆるちゃんとしっかりと判断できる人が関わらなければ、分からない間に通り過ぎてしまいます。例えば、プロの介護といっても、本来であれば家事あるいは掃除、それを代行しちゃったのでは自立の支援もできないし何もできないという、プロでさえ危ないのに、更に素人が入ってくると、これは大変なことになってしまうわけなんですが。  もう一つ確認事項があります。地域支援事業に移管後、要支援者はケアマネジャーを選ぶことができるのかということです。身近にケアマネジャーさんがたくさんいらっしゃいますけれども、それを選ぶことができるのか、これ重要な話だと思います。
  73. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) まず要介護の方でございますけど、これは要介護者のケアマネジメントは、利用者は自由に介護支援専門員すなわちケアマネジャーを選定できるという今制度になっております。  次に、予防給付ですね、要支援者でございますが、これについての現行制度でございますけれども、要介護の方とは異なり、法令上、サービスの利用を希望する方の地域を担当している地域包括支援センターの専門職、これは具体的に言うと主任介護支援専門員とか保健師とか社会福祉士でございますけれども、こういう方が必置でございますけれども、こういう専門職を通じて行われることとなっており、地域支援事業への移行後も同様の仕組みとなります。  なお、地域包括支援センターは居宅介護支援事業所にケアマネジメントの業務を委託することも可能でございますけれども、委託された場合も利用者がケアマネジャーを自由に選ぶ仕組みとはされておらず、この点は事業移行後も同様とする方向でございます。
  74. 山口和之

    ○山口和之君 以前に、要支援も幅があって、要介護に行ったり要支援に来たり、あるいは要介護状態から要支援になられた方、生活を今までずっと見ていただいて地域ケアを行ってきた方々も、そうしたら自分のケアマネジャーさんを使えなくなるということですか。  例えば、要介護状態になっていた方々が、自立を支援したケアをちゃんとしっかりして要介護から要支援に移りました。結構幅がありますから、認定審査会で変わりますよね。そのときに要支援になりました。そうしたら、またケアマネを替えなきゃいけないんですか。
  75. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 制度的には、先ほど言いましたように、要支援者の場合には地域包括支援センターがケアマネジメントをするという規定でございますから、必ずそういうふうになるということは制度上は申し上げられませんが、ただ、いろいろ御本人の御意向だとか、最終的にはやはりその方の自立支援につながるようなケアマネジメントでなきゃいけないと思いますので、御本人にもよく納得をしていただきながら地域包括支援センターの方で御判断いただくということではないかと思います。
  76. 山口和之

    ○山口和之君 何というんでしょうかね、顧問弁護士じゃないですけれども、代弁者で、自分の人生をマネジメントしてもらうときに、これをお願いできないということ自体がそれはちょっとおかしな話だし、今までの経緯を知っていらっしゃる方々が関与していけば一番いいわけです。今まで、地域包括支援センターが地域のケアマネにお願いして、そのままマネジメントをやられる方もたくさんいらっしゃるし、その方の歴史、人生を知っていただくというような意味でも、この方から離れてはちょっと考えられないという方もいらっしゃるので、そこは柔軟にちょっと考えないといけないと思います。  それから、地域包括支援センターで本来町づくりをするわけだったんですけれども、これができなかったから今このような形になっているのかもしれませんけれども、そのとき、ちゃんと町づくりまでできたらよかったんですが、介護予防のことでもう精いっぱいで手いっぱいで、町づくりまでいっていなかったわけです。  実は、自分としては、地域包括支援事業に少し移動して町づくりをできるところはしていこうというのは実は賛成なところもあって、オランダで少し見させていただきましたけれども、プロの介護が入るところ、それ以外の方が入るところとちゃんとうまくチームができて、地域の中でそういう生活ができている方々たくさん見てきましたので、これはちょっと理想的にできたらいいなと思います。そのきっかけになるのではないかという期待感は非常にあります。  ただ、先ほどあちらの方から声がありましたけど、しゃくし定規にそれをしてしまうと、本来その方をマネジメントしている方ができなくなってしまう可能性もあるので、ここはケアマネが選べるように、この方だったら信頼が置けるということがあると思うので、是非、地域支援事業から移管して、地域のケアマネさん、例えば訪問看護あるいは訪問リハビリ、ほかのサービスも要支援者は受けることができますので、そう考えていくとケアマネジャーとして選べるような社会というのが大事だと思います。多分、恐らく、今までどおりであれば、地域の中で移管してケアマネさんが使えるようになるとは思いますけれども、そこは何とか担保していただきたいと思います。  その次に、特別養護老人ホームについてお聞きしたいんですが、特別養護老人ホームの、ちょっと飛ばしまして九番目に行きたいと思うんですが、入所条件の厳格化について、要介護度を三以上にする理由を、大臣、お伺いしたいんですけれども。
  77. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) これは以前申し上げましたけれども、要介護四又は五の方で今入所申込者数が八・七万人と。特別養護老人ホームがたくさんあって幾らでも受け入れられる状況ならば、それは三以下の方々に関してもという話はあるんでありましょう、三未満ですか、例えばあるんでありましょうが、やはり重たい方々から入っていただくというのが普通の考え方であるであろうと。    〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕  もちろん、一、二の方でも当然必要な方はおられますので、それは排除するものではないわけでありまして、そういう方々は、例えば、認知症を大変患っておられて御自宅ではなかなか介護ができないというふうな方々も含めて特別養護老人ホームへ入っていただくのは、これはいいわけでありますが、ただ、基本的には重い方から入っていただくということを明示的に今回しっかりとお示しをする。今までもそうであったわけでありますが、地域や施設によってかなり差がございましたので、そこを改めて統一をするという意味で、今回このような形を提案させていただいたわけであります。
  78. 山口和之

    ○山口和之君 自分も、通達で優先順位を重度の方からという話があって、それはそうだよね、当たり前だよねとずっと思っていたんですけれども、ちょっと違うぞと最近、最近違うぞと思うようになりました。  資料の五の一を見て、介護保険法を見ていただくんですが、「国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、」云々と下の方に書かれています。  また、資料七を見ていただきたいんですが、ちょっと飛びますが、資料七の黄色いところを見ていただくと、特養ホームに入りたいかという質問で、入りたいと答えている方が多いんですけれども、それは大体、家族に迷惑掛かるからとか、あるいはその下の方で、本当は、今これは老健だと思うんですけれども、違うところに入っている方ですが、現在いる施設、病院で生活を続けたい、在宅で生活を続けたい、場所を変えて生活はしたくないということなんです。  つまり、いつも介護を受けている方、先ほどのケアマネの話もそうですけれども、いつも介護を受けているメンバーで年を取ってもいきたいんですけれども、重度になったらここに移って、また重度になったらここに移って、要介護状態でひどくなったら特養に移ってという社会が本当にいいのかなんですね。これって、障害者を昔そういうふうな形にしていたときの名残のような形です。つまり、本来は自分の地域、いつもの顔なじみの関係介護を受けながら暮らしている人たちが、一たび重度になっていくとまた違うところ、また重度になっていくとまた違うところで受けていくような社会が本当にいい社会なのかということをもう一度考えるべきなのかなと最近思うようになってきました。特別養護老人ホームは重い人が入るところ、これは当たり前のことというふうに思いましたけれども、そこに百人そろってどんといて、それがいいことなのかと。  であれば、自分はちょっと小規模多機能、すごく興味があって、小規模多機能の資料を見ていただきたいんですけれども、資料の六の一のところです。  これは、小規模多機能に入られて、リハ機能を強化している小規模多機能なんですけれども、要介護状態が改善されて、四、五でもここに関わっている方がいらっしゃいます。ここに、もし将来重度になったときに、このメンバーあるいはここで重度の人が受けられるような社会になったら、地域でそのまま介護を受けながら、重度になってもここでいる。要するに家族ですよね。家族の代わりになるか、あるいは、家族と一緒にこうやって地域で一緒に見ていくような社会になるかもしれません。    〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕  ですので、特別養護老人ホーム、要介護三以上、これは今の現状ではありかもしれませんけれども、でも将来はちょっと違うぞと。特別養護老人ホーム、中規模、二十九人以下のものを広げようとしておりますので、そういう考えからすると、できるだけ地域で、その中で人生を全うしていけるような社会をつくっていく必要があると思うんですけれども、これはちょっと大臣に聞いていいですか。
  79. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) まさに我々はそういう世界をつくっていきたい、環境を整えたいということで、在宅等々のシフトも力を入れていこうということであります。  でありますから、今言われたように、小規模多機能居宅介護事業、これもしっかりと核に据えながら、もちろん二十四時間型の定期巡回・随時対応型訪問介護看護、こういうものも大きな軸であります。地域で重くなっても暮らせる、暮らしたいと思われる方は暮らせる、そういう環境をつくりたいという思いなんです。  ただ一方で、それでもまだ特養に行きたい、若しくはもう特養に行かざるを得ないという重い方々がおられるわけで、そういう要望で申請者がこれだけ、八・七万人ほどおられるということでございますので、まだ、特養が十分であるならばいいんですけれども、十分じゃないという結果があるものですから、そこは重度の方々を優先的にということでありまして、我々が目指すのは、望んでおられれば是非とも地域で暮らせる、そういう社会を是非とも実現していきたいと、そういうような思いの中で今回の介護保険法の改正等々も含めて提案をさせていただいておるというふうに御理解いただければ有り難いと思います。
  80. 山口和之

    ○山口和之君 いろいろそういうふうに考えていくと、特養だけがやっぱり違和感があるんです。なぜ違和感があるかというと、まとめてどんと重度の人だけがそこにいる社会というのは、重度の人だけが百人いる社会というのは不思議な社会なんですよ、やっぱり。だから、そう考えていくと、特養という形が、どんと重度の方がいらっしゃるところの社会がいいのかということをもう一度、改めてこれは時間を設けて説明したいなと思います。  ありがとうございました。
  81. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。引き続き、介護利用料二割負担の問題を聞きます。  これまで厚労省の説明で一番はっきり言っているのは、去年九月二十五日の社会保障審議介護保険部会での、夫婦の世帯が三百五十九万円というモデルの場合は二百五十万円から三百四十九万円という辺りの消費支出が近いということで、この二百四十七万円を当てはめると、可処分所得三百七万円から二百四十七万円を差し引き約六十万円が手元に残るという説明をしておりました。だから二割負担は十分に可能だと言ってきたんですが、今日は厚労省が新たな資料を出してきて、これは厚労省の方で今日配っているんですが、この資料について簡潔に説明いただくのと、改めて聞きますが、年金収入三百五十九万円のこの表で言うと一番右のモデルの消費支出に近い世帯は、この三つの区分の家計調査のうちどれになるんでしょうか。お答えください。
  82. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) ありがとうございます。  お手元に、小池議員の方から資料要求という形で、三百五十九万円の収入に近い消費支出ということで、これはこれ以外にないものですから、これを配付させていただきました。  これは、右側の方に私どもが二割負担をしていただく場合のモデル収入世帯、年金世帯を書いてございます。それから、点線の左側がいわゆる平成二十四年の家計調査で分かる無職高齢世帯二人以上の場合の収入と支出の状況でして、一番左に平均、それからその中で三区分ございまして、三つございます。  私ども、これまでは利用者負担割合を二割に今回引き上げたいということで、その場合の介護費用を負担する際に、負担が可能な消費水準として比較対象としての階層はどれが適当かということを検討して、この表の中の真ん中、二百五十万から三百四十九万円の階層について説明をしてきたつもりでございます。  そうではなくて、今議員からお尋ねがございましたように、要介護状態になっていない現在の状態でという前提に立った場合には、年金収入が三百五十九万円であることを考えれば、モデル世帯の現在の消費支出は、強いて言えばこの表の右から二つ目のところ、年間収入三百五十万円以上の区分に近いと考えられます。
  83. 小池晃

    ○小池晃君 介護保険部会では、そうではなくて二百五十万から三百四十九万円が近いと言ってきたので、じゃ、この説明は撤回するんですね。
  84. 原勝則

    政府参考人(原勝則君) 言葉足らずの説明であり、大変おわびを申し上げたいと思います。六十万円が手元に残る、余裕があるといったような説明については撤回させていただきます。
  85. 小池晃

    ○小池晃君 六十万円残るどころじゃないんですよ。この右の三百五十万円以上が近いとすれば、これは可処分所得三百七万円ですから、消費支出三百四十二万円ですから、六十万円余るどころか三十五万円足りなくなるわけですよ。しかも、大体これ見ていただければ、どの年金世帯だって年金でお金が余るなんという家庭はないわけで、みんな貯金を取り崩している、そのことで生活が成り立っているという実態ですよね。  大臣大臣も、六月三日の質疑で実態に近い数字を使ったんだというふうに言いましたけど、これ、間違いですね、この説明は。実態に近くないし、実態に近いのは、今説明あったようにこの三百五十万の世帯ですよね。あの答弁は間違いだったということを認めていただきたい。
  86. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 前年収入という意味では、近いところはどこかといえば二百五十万から三百四十九万ということで申し上げたわけでありまして、三百五十万以上というのはそれ以上でありますから、これ、年金生活者の収入だけ、無職高齢者世帯とは書いてありますが、前年働いていた方々収入というのも入ってくるわけでありまして、でありますから、あえて前年の収入で近いところはここだというようなお話をさせていただきました。前年の収入が多いということになれば、当然、七百万、八百万、現役世代の方々では一千万を超える方々もおられるわけであります。ましてや年金収入が非常に多い方でありますから、そういう意味からいたしますと、そういうような方も入ってきておるということであえて申し上げたわけでありますが、委員のおっしゃられる意味の実態という意味からすればそれはおっしゃられるとおりでありまして、この三百十一万というところの方が近いということは間違いないと思います。  ただ、一方で、この三百四十二万という数字は、要は、実収入プラス今までの貯金の取崩しということでございます。三百四十二万ということは月々三十万近く支出があるということでありまして、かなり老後豊かな方々であろうということであろうと思います。
  87. 小池晃

    ○小池晃君 いや、僕が言った実態じゃなくて、皆さんが実態はこうだと言ってきたんだから、そういうことを言っちゃいけないですよ。  大体、要は、結局、何か今度の二割負担の人は、黙っていても二割負担やるような余裕があるんじゃないんですよ。やっぱりそういった人たちも、その水準の消費支出に比べると、うんと節約しなければ二割負担のお金は出てこないということを示すものじゃないですか。  大体、介護保険部会も、それから衆議院での審議でも、そんな説明は一切しなかったわけですよね。実態として六十万円余ると言ってきたんですよ。それでこういうことになった以上、この法案は撤回するしかないじゃないですか。これ、そもそも二割負担を可能にしてきた論拠が崩れたんですよ。これは潔く、これはもう法案撤回してください。
  88. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 何度も申し上げますけれども、この世帯でいきますと、月三十万近い、ほぼ三十万の収入がある夫婦世帯で、年金収入であります。そういう世帯であります。消費支出も三百四十二万、これは実収入が多ければ当然のごとく、それに貯蓄を取り崩すので、かなり豊かな、豊かなとは言いませんけれども、充実された支出もされるのでありましょう。そういう方々には、申し訳ありませんが、最大二十二万円ぐらいになると思います。それが二割負担の最大の方々であろうと思います。こういう方々に関しましては、何とか御理解をいただいて御負担をいただければ有り難いということであります。
  89. 小池晃

    ○小池晃君 二十二万円という数字も今まで言っていなかったんですよ。なぜか急に介護だけの話になっているわけですよ。介護だけで上限まで使うなんというのは実態としてはないわけで、上限まで介護を使うような人は医療だって上限まで使っているんですよ。だから最初の説明は二十二万なんて言わないで六十万と言っていたわけじゃないですか、医療介護の上限額使えば六十万だと。その説明も変えてきている。  私は、これは、こういう説明は今までしなかったことははっきりしているんです。参議院の審議になってから初めて説明しているんですよ。それは間違いないじゃないですか。そういう点でいえば、せめて、これから政令で定めるわけでしょう、二割負担のラインは。だったらば、今回のこの参議院での指摘を踏まえて、やっぱり政令で定める二割負担所得水準はせめて医療の保険の上位所得者と同じラインにするとか、そのくらいの反省の姿勢を示すべきじゃないですか。どうですか。
  90. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 反省はします。しかし、反省とか反省じゃなくて、負担能力のある方々には負担お願いをさせていただきたいということでございますので、その点はどうか御理解をいただければ有り難いというふうに思います。
  91. 小池晃

    ○小池晃君 反省と口だけ言ったって駄目なんですよ。だって、態度で示さなきゃ、やっぱり政策で示してもらわなきゃ、こんなの前代未聞なんだから。ずっと説明してきたことと全然違うことを参議院で言い出したわけだから、これは重いですよ。趣旨説明の文章にコピペがあったとかそういうレベルの間違いじゃないですから、これは。だから、これどっちかですよ。もし意図的に六十万という数字を導き出そうとしてやっていたとすれば、非常にこれは捏造だと言われても仕方がないし、もし間違っていてこれをやっていたんだとすれば、これは厚生労働省の能力が問われる問題ですよ、本当に。これは深刻な問題だと私は思いますよ。やっぱりこの指摘を踏まえて本当に見直していただきたい。  もうこればかりやっていると時間なくなっちゃうので、ちょっとこの問題は引き続き、今日の答弁も再検討させていただいて、これはまた取り上げていきたいというふうに思います。  医療事故の調査制度の問題について聞きます。  この第三者機関の創設については私どもも求めてきたことなので、ただ、今回のその制度には懸念もあるのでただしたいと思うんですが、今回の制度は、これは大臣も繰り返し答弁していますけれども、再発防止と医療の安全性の向上を図るものであって責任追及ではないということなんですが、ただ、再発防止というふうに言うと、これは原因究明必要になってきます。原因究明というふうになると、それは直ちにやっぱり責任追及に結び付いていく可能性もあるわけですよ。その懸念が医療界にもあるわけですね。  大臣はここにどう応えるのか。安全性の向上、再発防止という政策目的と責任追及ということが今回の制度ではどう遮断されているのかいないのか、説明していただきたい。
  92. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 平成二十年に医療安全調査委員会設置法案大綱案というものを示させていただきました。この中では、医療法二十一条、これを免除するということのために、公的な第三者機関、ここで故意であったりだとか重度の過失、こういうものがあった場合は報告を警察にすると、届け出ると。また、これは行政処分の対象にもなってくるわけでありました。  これでいろんな議論をしたんですが、やはり医療関係者も含めいろんな方々から異論が出ましたので今般の法案になったわけでございまして、この中は、まさにこの医療法二十一条、これに関しては、あっ、ごめんなさい、医療法じゃない、医師法二十一条、これに関しては対象にしていないと。そもそも、そういうような話ではなくて、あくまでも民間の第三者的な機関、つまり医療事故調査・支援センターなるものが、これが言うなれば届出を行ったりでありますとか、また行政処分の対象というような形で報告書をまとめたりだとかはしないわけでございまして、報告書等々を受け取った場合においても、これはもちろん遺族の方々にはお渡ししますが、その内容も、誰がどのようなことをやったという個人名でありますとか、過失があるだとか、責任があるだとか、そういうような書きぶりにはしないと。  これはガイドラインで具体的には定めてまいりたいというふうに思いますが、そのような責任追及というようなガイドラインの内容にはせず、あくまでも医療の事故、どういうような理由で事故が起こったか、さらには原因究明の後、それを再発防止のための参考資料として使っていくというような内容にしてまいりたいと、このように考えております。
  93. 小池晃

    ○小池晃君 その再発防止の問題なんですけれども、これは報告書の中に個別ケースの再発防止策が書かれていると、これは結果回避義務違反に問われる可能性もあると言われています。  局長に聞きますが、再発防止策については、一定の事例が集まった段階でまとめて、個々のケースが特定できないようにした上で公表するといったような配慮が必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  94. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) お答え申し上げます。  医療事故調査・支援センターでは再発防止に係る普及啓発を行うこととしておるところでございます。御指摘のような、一定の事例が集積された段階で類似事例についてまとめて普及啓発策を提案すると、そういうことも有効な手法であるとは考えております。  ただ、具体的にどういった形でやるかについては、今後ガイドラインを策定する中で検討する予定でございますので、責任追及や紛争解決を目的とした制度ではないということを踏まえて、医療従事者の氏名や過失の有無など個別の事例が特定できないような形での配慮は十分にしていきたいというふうに考えております。
  95. 小池晃

    ○小池晃君 条文の中には第三者機関に対する公費負担の規定はないんですけれども、やはり国が十分な責任を果たす必要はあると思うんです。  遺族の費用負担が事故調査をちゅうちょさせるようなものであってはならないと思うんですが、この点はどうお考えですか。
  96. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) 費用負担についてはどうするかということで、特にいわゆる医療事故調査・支援センターが調査に掛かる場合に、その費用についてどうするかについて、この検討会の段階では、当然ながら遺族や医療機関からの申請に基づき行うものであるから、一定のそれぞれの負担は必要だろうと。そのほか、一般的には、支援センターの運営には学会や医療関係団体からの支援、あるいは国からの補助金等々が必要だとされております。  その上で、遺族から費用をいただくとしても、その検討段階では、調査を申請した遺族や医療機関負担を求めるものの、制度の趣旨を踏まえ、申請を妨げることとならないよう十分配慮しつつ負担の在り方について検討することとされておりますので、そういうような観点で検討していきたいと考えております。
  97. 小池晃

    ○小池晃君 最後に、大臣に医師法二十一条について聞きたいと思います。  二〇〇一年四月三日の当委員会で、私の質問に対して当時の医政局長は、医師法二十一条の規定は医療事故そのものを想定した規定ではないというふうに答弁しました。しかし、その後の動きの中で拡大解釈が広がりました。改めて、医師法二十一条についての厚労省の解釈をお述べいただきたいと思います。
  98. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 医師法第二十一条でありますけれども、死体又は死産児、これにつきましては、殺人、傷害致死、さらには死体損壊、堕胎等の犯罪の痕跡をとどめている場合があるわけでありまして、司法上の便宜のために、それらの異状を発見した場合には届出義務、これを課しているわけであります。医師法第二十一条は、医療事故等々を想定しているわけではないわけでありまして、これは法律制定時より変わっておりません。  ただ、平成十六年四月十三日、これは最高裁の判決でありますが、都立広尾病院事件でございます。これにおいて、検案というものは医師法二十一条でどういうことかというと、医師が死因等を判定をするために外表を検査することであるということであるわけであります。一方で、これはまさに自分の患者であるかどうかということは問わないということでありますから、自分の患者であっても検案というような対象になるわけであります。さらに、医療事故調査制度に係る検討会、これ平成二十四年十月二十六日でありますけれども、出席者から質問があったため、我が省の担当課長からこのような話がありました。死体の外表を検査し、異状があると医師が判断した場合には、これは警察署長に届ける必要があると。  一連の整理をいたしますと、このような流れの話でございます。
  99. 小池晃

    ○小池晃君 これで医師法二十一条が何でも医療事故を届けるようなものでないということがきちっと確認されたと思います。私はきちんとこれは法改正もすべきだというふうに思います。  あわせて、やっぱり今回の法案全体でいうと、これはむしろ逆に医療を崩壊させるようなことになって医療事故を起こすようなことに私はなりかねないというふうに思っていますので、やっぱり医療事故の問題は改めて切り離してきちんと議論すると、法案としてもそういう処理を求めたいということで、質問を終わります。  以上です。
  100. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。よろしくお願いします。  介護についても相当聞きたいんですが、医療について、それから今ありました事故調についても聞かなければならないので、そちらに今日は集中したいというふうに思っています。  ところで、今二割負担の件があったんですが、この間、厚労省は年金についての、大分先の見通しですが、八通りの、五つは大丈夫、三つは大丈夫じゃないという八通りの予測を発表されたわけですよね。一・八から一・六という経済成長は無理ではないかとすると、現役世代の四割ぐらいしかやっぱり払えないんじゃないか、あるいは国民年金保険はもう三万円台になるんじゃないかというような厳しい予測もあって、八通りの中で私は最も厳しい予測が多分当たっていくんではないかというふうにもちょっと逆に思ったんですね。  今日の介護議論や二割負担の話なんですが、年金がどうなるかという問題ときちっとリンクして、Aという人の年金が下がる、介護保険料が上がる、医療負担が増える、そして介護負担が増える。介護の二割負担だけが単独で起きるわけではないんですよね。  この間、前回、厚労省に対して、それぞれいろんな試算を、モデルケースというのはないと思いますが、年金はこれだけ下がる、介護保険料は上がる、医療負担はこれだけ増える、で、介護負担が二割となったら、介護だけじゃなくていろんな条件が変わるわけで、やっぱり試算をしていただきたい。こういうケースは例えば一年後、二年後こういうふうになる人が多いとか、やっぱり個別的な試算をしてもらわないと、介護だけ二割負担をします、政令で決めますと言われても納得がいかないというふうに思いますが、そういう試算を、全体的な、制度にまたがった、人間は生きているわけですから、試算をしていただきたい。いかがでしょうか。
  101. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 先ほど年金の、今回の財政検証Hになるんじゃないかと。Hになると日本の経済自体がもたないわけでありまして、財政破綻に向かうシナリオのうちの一つだというふうに思います。我々はそのようなことにならないように、経済を再生をさせる、その上で、それだけじゃ駄目なんですよね、あれ見ていると。M字カーブをしっかり解消するということ。それから、高齢者の方々が、これ六十から六十四歳を一つ例に取りますと、今働いている率が七五%強、これを九〇%まで上げていく。ただ、これは御承知のとおり、改正高齢法で六十五歳までは継続雇用ということを企業に義務付けましたので、これはかなり実現可能であろうとは思いますけれども、こういうことをやっていきながらということであります。  今の委員の話で申し上げれば、二割負担に関しては、これは年金を一人で二百八十万、年間もらっている方でありますから、年金がそれよりも足さない場合には二割負担にはなりませんので、年金をたくさんもらっている方が要は二割負担になるということでございますので、それはちょっと試算をしなくても、もしそういう方々が減っていけば当然のごとく二割負担方々も減っていくということでございますので、それは試算しなくても御理解いただけるのではないかなと、このように感じております。
  102. 福島みずほ

    福島みずほ君 ただ、政令で二割負担の範囲を決めるわけですから、私は、これから経済が悪くなると二割負担の上限が、負担をしていただく人が、下がっていくとか、実は厚労省の年金介護医療負担増の中で、やっぱり三つどもえで生活が苦しくなる。政省令で下がれば、済みません、あなたたちも負担していただくなんということは将来起こり得ると思っているんです。  そういう個人の生活に着目した医療負担介護負担年金が下がっていく、これを考えて私は試算すべきだと。どうしてもリアリティーが何か欠けているようにも思うんですが、いかがですか。
  103. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) モデルケースというのは多分その時々出せるんだと思うんですが、個人の方々に対しての試算というのはなかなかもうパターンが多過ぎて難しいんだと思います。  今回の二割負担方々の対象という意味からすると、これはあくまでも国民会議の中でも負担能力に応じた負担ということでございますので、仮に全体の皆さんの年金の支給額が平均して全部下がっていった場合に、じゃ、その範囲が広がるかというと、下がっていくかというと、負担能力がなければそれは負担ができないわけでありまして、今般の考え方は負担能力のある方々負担お願いするということでございますから、そこは御理解をいただければ有り難いというふうに思います。
  104. 福島みずほ

    福島みずほ君 これは逆にこちらの方でアンケートを取って、これだけの負担に耐え得るかみたいな提起をしっかりやっていきたいというふうに思っています。  医療事故に関する調査の仕組みなんですが、これは私たちも事故調をつくるべきだと主張してきました。医療事故に遭われた遺族の人たちは、やっぱり事故原因を究明したいと。裁判をやったからといって原因究明がしっかり行われるわけではなかったりするので、やはりこういうのが必要。もう一つ、遺族や被害に遭った人たちの思いに応えると同時に、こういうことを積み重ねて再発防止につなげていくというのがやはり果たすべき役割だと思っています。  例えば、今回の法案では、医療事故が発生しても、医療機関の管理者が予期し得なかった事案と判断しない限り、医療事故調査・支援センターは調査に着手すらできない仕組みになっております。一種の拒否権を医療機関の管理者が持つような仕組みと言えます。たとえ医療機関の管理者が予期し得た事案と主張したとしても調査を開始できるような権限を医療事故調査・支援センターに付与すべきではないでしょうか。
  105. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 先ほど申し上げましたけれども、今般の制度は、責任追及という意味ではなくて、あくまでも原因を究明して、その上で次の再発を防止するという観点からの制度であります。  それは先ほど小池先生の御質問にもお答えいたしましたけれども、いろんな議論が今までやってくる中でなかなか関係者の合意が得られない。その中において、今般のような形の法案という中において一定の関係者の御理解を得ました。もちろんこれで十分じゃないと言われる方々もおられますが、しかし一定の第一歩だという御意見もございました。そんな中において、今般の制度が提案をさせていただいておるわけであります。  予期し得ないものであるわけでありまして、これに関しては、医療機関の管理者、この方が要は判断をするわけであります。でありますから、この方のやはり判断力というものが重要になってくるわけでありまして、そこでは、届出事例、これの標準化を図っていくことによってどういうものが届出の対象になるのかということ、さらには、もちろんこの判断をされる方に関しては研修等々を受けていただいてしっかりとした能力もお付けをいただく、こういうことも大事であろうと思いますから、こういうことは進めてまいりたいというふうに思っております。  いずれにいたしましても、今般のことは、そういう意味では再発防止が主な目的だということで御理解をいただければ有り難いと思います。ただ、その中において、報告書は遺族の方々のところにも渡るわけでございますので、それを見ていただく中において一定の御理解というものは生まれてくる可能性はあろうというふうに思っております。
  106. 福島みずほ

    福島みずほ君 しかし、いや、再発防止に重点を置くというのは理解ができるんですが、予期し得た事案と主張したらもう調査ができないわけですよね。つまり、私がもし医療機関だとしたら、やっぱりこれ、予期し得たというか、調査を開始しないような形にやっぱり行ってしまうんじゃないか。そうすると、医療機関の判断で調査が始まる事案と始まらない事案と出てきて、逆に言うと良心的な医療機関こそ調査が始まってしまう。これは、結局イニシアチブを、拒否権を医療機関の管理者が持つ仕組みは私は違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  107. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 要は、今般、先ほど来申し上げておるとおり、原因を調べて再発防止するための制度です。再発を防止するということがその目的でありますから、報告書は、先ほど局長から話がありましたが、個人名でありますとか責任等々に関しての追及、こういうものは入ってきません。要するに、客観的にどういうような理由でどのような事故が起こったというような話になってくるわけであります。  それは、責任追及をするためのものではないというような報告書、これをガイドラインで定めますけれども、作るということが大事でありまして、そうであるならば、管理者も責任追及をされるようなものではないからこれは報告しようということにつながってくるわけでございますので、そこが今回のこの法案の中においての大きな部分であります。あくまでもそこがスタートだという中において、数多くの事故に関して報告をいただいて、それが再発防止につながっていくということ、これが重要であろうというふうに考えております。
  108. 福島みずほ

    福島みずほ君 報告書に個人名も記されないということで、よく分からない報告書になってしまうんじゃないかとも思ったりするんですね。  それから、日航機事故、御巣鷹山の八・一二の事故があった以降、国土交通省に要請をしてヒヤリ・ハット、つまり、それまでは事件が起きなければ、衝突とかですね、報告がなかったのが、国土交通省が変えて、要するに、ヒヤリ・ハットや接近した事例や、事故が起きなくても問題が起きた場合には全部それは出せということで、そうすると、実は事故に至る前の段階でいろんな予兆が起きるということもあるので、というので、国土交通省自身が航空の安全のために一歩踏み込んだということがかつてあります。  だから、今回も調査に踏み込む前に、でも、私自身はこれがいろんな事例が集まることが大事であって、病院の側にというか医療機関の側に拒否権があるというか、予期し得たと言うと開始すらできないということはとても問題があるというふうに思っています。  医療のところで、都道府県知事は病院の開設許可の際に不足している医療機能を担うという条件を付けることができることとするとあります。条件に応じない医療機関の開設を都知事が拒む権利があるということなんでしょうか。その場合の条件とは、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能の四分類の選択だけか、ほかにもあるのか。例えば、我が県のこの地域には産婦人科がないので産婦人科開設を条件に許可を与えるなんということがあるんでしょうか。
  109. 田村憲久

    国務大臣田村憲久君) 開設、増床等々を行う場合でありますけれども、今これ、要は医療機能を担うという意味からすれば、必要な医療機能、今言われたような高度急性期、急性期、それから回復期、慢性期、療養期というようなものを念頭に置いていただきながらやはり開設をいただく、こういう条件を付けられることができるというふうに今般させていただいております。  これは、まさに開設するまではそういうような意思表示をしていただくわけでありまして、開設まではこれは止めることはできないわけでありますが、開設された後にそのようなお約束を守っていただかないということになれば、これは本来必要な医療機能以外のものをおつくりになられるわけでございますので、それに対しては約束違反であるということでございますから、これに対して一定のペナルティーを掛けるということでございまして、勧告でありますとかまた命令を行うことができるということでございます。これにも背かれる場合に関しましては、御承知のとおり、特定機能病院でありますとか地域医療支援病院でありますとか、そういう機能を承認しなかったり、また承認を取り消したりでありますとか、補助金、交付金等々の対象にしなかったりでありますとか、種々のペナルティーが掛かる可能性があるということであります。
  110. 福島みずほ

    福島みずほ君 このペナルティーなんですが、この四分類に関する知事の要請に従わない場合、補助金や融資から排除する権限を知事が持っているということでよろしいわけですね。  また、医療機関が都道府県知事の要請又は命令、指示に従わない場合、都道府県知事は地域医療支援病院、特定機能病院の不承認、承認の取消しを行えるとなっています。実質的に医療機関が廃院になるような権限を都道府県知事に与えるものであるということでよろしいですね。
  111. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) まず、補助金や融資の対象から排除する権限についてですけれども、これは都道府県知事が直接補助をしている場合には当然ながら知事がやると、それ以外に国が直接補助をしているものもありますが、そういう場合には国と協議の上やっていくと、そういうような仕組み上の違いはありますけれども、その融資の対象なり補助の対象から外すということはございます。  それから、もう一方の地域医療支援病院や特定機能病院の不承認あるいは承認の取消しということでありますけれども、これにつきましては都道府県知事又は国が行うことになるわけですけれども、それに当たりましても、いずれの場合も、目的は地域医療構想を実行していく、それを実行ならしめるための計画を作っていくわけでありますので、そのための必要な措置というふうに考えております。  したがって、逆に、これらがこういう措置が行われないように、十分にその地域地域の中での協議などの手続あるいは審議会での議論などをしっかりとやっていただくと、こういうことが肝要ではないかというふうに考えております。
  112. 福島みずほ

    福島みずほ君 結局、融資しないわけですよね。自分がやっている融資だけじゃなくて、国がやっているものもさせないとか、言うことを聞かないと廃院にまでできるわけじゃないですか。言うことを聞かないというか、だって、要請又は命令、指示に従わない場合は都道府県知事は取消しができると。廃院になるわけですよね。ペナルティーを科してまで病床規制を進めるようなことになってしまうんじゃないか。医療崩壊に逆に拍車が掛かるんじゃないか。  私は、介護部分も問題だけれど、実はこの医療の方も根本的な問題があると思います。巨大なお上の復活じゃないですか。都道府県知事がどうしてこんな強大な権限を持っていいのか。だって、とんでもない都道府県知事だって出てくるかもしれないじゃないですか。だとしたら、何で四つの機能に、だって四択ですよ、四択の中で一択を選べといって、中小病院が、いや、違うんじゃないのとか、うちの病院、こういうことをやりたいと思っても、ビジョンにがちがちに縛られて、いや、うちはこういう医療……
  113. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 時間を過ぎておりますので、質疑をおまとめください。
  114. 福島みずほ

    福島みずほ君 分かりました。  うちはこういう医療をやりたいと思っても、都道府県知事と、あるいは県の職員と意見が合わなかったらお取り潰しですよ、お取り潰し。これはおかしいですよ。結局、病床規制、費用抑制、基金をどう使うかの中で、私は、これはやっぱり医療を壊すというふうに思っています。問題がある、巨大なるお上の復活は許さないという、おかしいですよ、制度として。ということを申し上げ、質問を終わります。
  115. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  116. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ただいまから厚生労働委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、櫻井充君が委員辞任され、その補欠として小西洋之君が選任されました。     ─────────────
  117. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 休憩前に引き続き、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律整備等に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、医療事故調査制度及び介護保険について参考人から御意見を伺います。  まず、医療事故調査制度について、三名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、一橋大学大学院法学研究科教授山本和彦君、患者家族医療をつなぐNPO法人架け橋理事長患者視点医療安全を考え連絡協議会事務局長豊田郁子君及び公益財団法人日医療機能評価機構理事後信君でございます。  この際、参考人方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方でございますが、まず、参考人の皆様からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人質疑者共に発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず山本参考人お願いいたします。山本参考人
  118. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) それでは、一橋大学の山本でございます、私から御意見を申し上げさせていただきます。  まず、医療事故における原因究明、再発防止の重要性についてでございますが、これについては既に申し上げる必要もないかと思いますけれども、医療において不幸にも事故が生じ、患者が死亡などをした場合に、その原因の究明が重要な課題になるということに異論はないと思われます。患者、遺族にとって事故が生じた場合に最も望まれることは、その原因の究明と再発の防止であると言われています。また、医療側にとっても、原因究明、再発防止はプロフェッションとしての責任であると言うことができると思います。再発の防止が図られ、二度と同種の事故が起きないことにより、医療の質と安全が向上することは、医療を受ける可能性のある日本の全国民にとって大きなメリットと言え、その公益性は大きなものがあると思います。  ただ、従来、医療事故の原因究明の仕組みは必ずしも十分なものとは言えませんでした。その結果として、直接には原因究明を目的とした手続ではありませんが、民事訴訟や刑事訴訟といった裁判所の手続が代替的に利用され、それが当事者や裁判所にとって大きな負担となってきたように思われます。私の専門は民事訴訟法という法律でありますが、民事訴訟について言えば、医療訴訟は時間も掛かり、真相の究明が甚だ困難である訴訟類型の一つとなっております。医療訴訟の第一審の平均審理期間は現在約二十五か月、二年強であり、最近迅速化しているとはいえ、通常訴訟の八か月に比べてなおはるかに長期間を要しております。  また、そもそも民事訴訟の目的は損害の賠償、つまり被告にお金を払わせることに限られており、原因究明はあくまでもその手段にすぎず、再発の防止はその目的になり得ません。ましてや、刑事裁判が原因究明の目的を主眼として使われることがあるとすれば、それは正当なものとは思われません。その意味で、原因究明及び再発防止を直接の目的とする制度は日本において是非とも必要なものと思われ、今回提案されているような制度は社会にとって不可欠なものではないかと考えております。  次に、今回の制度の基本的な考え方でありますけれども、今回提案されている仕組みの大きな特徴は、私の見ますところ、医療側の自発性、自律性というものを重視し、そのプロフェッションとしての自覚に大きく期待しているという点にあるのではないかと思います。  まず何よりも、さきに述べましたように、この調査の目的は、医療機関医療従事者の責任の追及ではなく、あくまでも医療事故の原因の究明と再発の防止にあるとされている点であります。患者側と医療側を対立的に捉えるのではなく、全ては医療の安全と質を向上させ、国民全体がその利益を享受できるような公益的な制度として新たな仕組みを設けようとするものと評価することができます。  具体的な制度の構成としても、医療事故が生じた場合に、医療機関は、第三者機関に報告するとともに、まずは院内で事故調査を行うことが基本とされています。直ちに院外の第三者が介入するのではなく、自発的な調査が前提とされているわけであります。そして、院内で十分な調査ができないような小規模医療機関等については、地域でそれを支援する仕組みを設けることとしております。  また、院内での調査結果について遺族に十分な説明を行い、その納得を得る機会を設けることとしています。ただ、その調査結果について必ずしも十分な納得が得られない場合等には、医療機関側又は遺族側から第三者機関に調査の申出ができるものとされます。ただ、この第三者機関も、かつて検討されたような行政機関ではなく、中立公正、専門的な民間の機関とされており、その調査にも強制的な権限は認められていません。その意味でも、調査に対する医療機関側の協力は基本的にはその専門家としての自覚に委ねられているものと言えましょう。  以上のように、今回の制度は、行政など第三者が強制的な権限を持って実施するというものではなく、医療側が自発的に自らの責任を自覚して実施、協力するものとされていると思われます。そして、私自身はこのような制度が提案されていることを高く評価しております。  今回の議論のプロセスの中で、医療側に医療事故の原因究明、再発防止、医療の安全、質の向上を図っていくことはまさにプロフェッションとしての医療界全体の責任であるという認識が広く浸透してきたことは大変に重要なことであり、その機運を生かし維持していくことがこの制度を実効的なものにしていくために不可欠なことと考えているものであります。  さて、厚生労働省の検討部会においては、幾つかの論点についてかなり深く議論がされました。やや恣意的かもしれませんが、私から見て重要と思われる点について幾つか御紹介をさせていただきたいと思います。  まず、調査対象についてですが、これについては患者死亡の例に限られました。現実のリソース等を考えると、制度の出発点としてはやむを得ないところと思われますが、検討部会などでも、死亡に匹敵する重大な後遺障害が残った場合などには制度の適用を考えるべきであるという意見もあったところであり、この制度が創設された暁には、その運用の状況等を見ながら段階的に制度の適用対象を拡大していく必要があるものと考えております。  次に、院内調査と第三者機関による調査関係についても議論がありました。検討部会では、院内調査をまずもって基本とするものの、例外的な場面では遺族側から直接に第三者機関の調査を求める可能性を開いておくものとされました。法案においても、当該事故が予期しなかった死亡事例に該当し、医療機関が第三者機関に報告する限りにおいては、遺族側からの調査の依頼を認める形が取られております。  したがって、法案に言う医療事故に該当すれば、遺族側の申請により調査の対象となるわけですが、医療側がどのような場合にそれを医療事故と認め第三者機関に報告しなければならないかという点が重要であり、この点について、実務上の紛れが生じないような形で具体的な基準あるいは例示などによってガイドライン等においてその点が明確にされることが期待されるところであります。  また、第三者機関の調査結果の取扱いについても活発な議論がありました。調査報告書が遺族に交付され、それが訴訟の証拠等になるとすれば、医療機関の十分な協力が得られず、真相究明や再発防止の機能を果たせなくなるという懸念が示されました。  ただ、日本の訴訟制度は原則として証拠の制限を認めておらず、一旦遺族に報告された調査結果を証拠にしないとすることは困難とされ、この点の制限は設けられませんでした。法案の制度も同様の趣旨と理解しております。  このような懸念は確かに理由のないものではありませんが、この点は医療事故だけの問題ではなく、航空機事故や鉄道事故、また消費者事故などあらゆる事故調査に共通の課題と言えます。これらの全体について事故調査の真相究明を徹底する利益と、訴訟において真実を発見する利益とを比較考量しながら、将来的に共通の制度的な解を求めていく必要があるのではないかと考えております。  さらに、第三者機関の調査に要する費用についても議論がされました。最終的には医療関係団体などの負担金、国の補助金のほか調査申請者にも負担を求めることとされました。これは、調査は公益的な目的のものであるとしても、直接には申請によって起動する手続であるので、申請者にも一定の負担を求めることに制度上合理性があるとされたものであります。  ただ、議論の過程でも、十分な資力のない遺族が調査に掛かる費用を懸念して申請をちゅうちょするような事態があってはならないという点では共通の認識があったものと理解しております。他の様々な制度においても、資力の十分でない者について費用負担を免除、軽減するような制度は数多くあり、本制度の実施に際しても特に留意を要する点かと思われます。  最後に、刑事手続、とりわけ医師法二十一条の届出義務との関係も問題とされました。かつては、事故原因の調査制度の創設が医師法二十一条の廃止と結び付けて議論されてきたところですが、今回の検討においては両者は切り離して論じるべきであるという意見が強く、そのような方向で議論が進められました。最終的にも、第三者機関から警察への通報は行われず、他方で医師法二十一条は維持されるという形で、今回の仕組みは刑事司法とは完全に切り離されたものとされました。法案も同様の立場と理解しておりますが、私の意見でも、そのような形の制度が望ましく、医療事故に係る刑事手続の在り方については事故調査の仕組みの整備や運用の在り方等を踏まえて別途検討されるべきものではないかと思います。  以上述べてきましたように、私としては、今回の法案で提案されている制度については基本的に賛成するものであり、一日も早くそれが実現されることを期待したいと思っております。その意味で本法案の早期成立を期待しておりますが、最後に、その実施に当たって運用面等で希望したい点を何点か指摘して、私の意見を終わりにさせていただきます。  まず、今回の制度の要は院内調査充実であり、それが有効に実現できるような手当てを考えていただきたいという点であります。  法案では、医療事故調査等支援団体による支援が規定されているところでありますが、是非このような支援が実効的なものとなるように御配慮いただきたいと思っております。それによって、これまでやや曖昧になってきた可能性のある小規模医療機関における医療事故の原因究明や再発防止が更に進むことが期待されます。  次に、院内調査や第三者機関による調査が事故の再発防止につながっていく仕組みを確実なものにしていくことであります。  患者、遺族の切なる願いは、不幸にして患者の死亡に至ったその事故の教訓を日本全国の医療機関が生かして、二度とそのような不幸な事態を発生させないということでありましょう。その意味で、今回、医療事故調査・支援センターに日本全国の医療事故の情報が集約されることは極めて重要であり、その上で、再発防止のための普及啓発を行う同センターの責務は重大であり、それにふさわしい財政的な裏付けが確保される必要があると考えます。  また、検討部会におきましては、細部の制度設計についてはガイドラインを議論する別個のフォーラムに委ねることを前提として取りまとめを図ったところであります。実際の制度の機能やその実効性を確保するについては細部の制度の在り方が重要性を占める部分も多くあります。本法案が成立した暁には、できるだけ早期にガイドライン等運用の細則が適切に整備され、その周知が進められることが期待されます。  最後に、私の専門である紛争解決の点についても一言をさせていただきます。  患者側、医療側双方のニーズを満たすためには、訴訟よりも裁判外の紛争解決手続、いわゆるADRの方が適している場合が多いと思われます。当事者が話合いで合意によりその紛争を解決し、訴訟では実現できないような解決結果を得ることができるからであります。  しかしながら、医療分野のADRは必ずしも十分に発達していないのが現状です。その一つの理由としては、事故原因を解明する仕組みが十分でない中で、なかなか合意による紛争の解決を図ることは難しく、結果として訴訟にならざるを得ないという状況があったように思われます。本制度の整備によって事故調査が実効的に機能していけば、ADRが活用される基盤の一つが整うことになると思います。  ただ、ADRを充実、活性化するためには、それだけではなお十分とは言い難いところがあります。現在、厚生労働省では、医療裁判外紛争解決機関連絡調整会議という議論のフォーラムが設けられていますが、今後、ADRの人員や財政、さらにはその制度化なども含めて、ADRの充実を図っていく施策が求められるところであります。  以上で私の意見の陳述は終わりたいと思います。  御清聴どうもありがとうございました。
  119. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ありがとうございました。  次に、豊田参考人お願いいたします。豊田参考人
  120. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) 豊田郁子と申します。このような貴重な場で発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。  私は、医療事故における調査のあり方というスライドを配付させていただいておりますので、そこに沿ってお話しさせていただきます。  私は、二〇〇三年三月に当時五歳の息子を医療事故で亡くしました。事故から九か月たった頃、再発防止を願うようになり、医療事故や医療安全に関する講演活動を始めました。それは今も続いていて、全国の医療機関や公的機関に伺っておりますが、多くの医療従事者の声をそこでお聞きしています。  事故のあった翌年の二〇〇四年に、私は病院職員として医療安全と患者相談窓口の担当者になりました。今年で十年目になります。私が担っている役割は、現在、医療対話推進者と呼ばれ、業務内容につきましては、二〇一二年に厚生労働省から交付されました医療対話推進者の業務指針で内容が明文化されております。その上で、医療対話推進者として、医療安全管理者と連携しながら、現在も医療安全に関する業務を担っております。  また、患者としての活動といたしましては、患者視点医療安全を考える連絡協議会、略称で患医連といいますが、その事務局を担当しております。  患医連なんですけれども、ちょっとスライドでお示ししていますけれども、医療事故被害者、遺族、市民、医療従事者が参加しているそれぞれの団体があるんですが、その団体と連携して二〇〇八年に結成いたしました。医療事故の減少や医療の質、安全の向上を求めて活動しておりますが、今年の五月二十三日には、医療事故調査制度創設に関する集中審議を求める要望書を各政党の代表者様と厚生労働大臣宛てに提出しております。  息子の事故については、御覧のように大きな新聞報道になりました。この問題は、当時の衆議院厚生労働委員会でも取り上げられました。事故の概要については別紙で配付させていただきましたので、御覧になっていただきたいと思います。  息子がそのとき受診した病院は小児科を中心とする救急外来の充実をうたっていた地域の中核病院でしたが、病院にいながら治療を受けることができず、入院までしながら、その日のうちに亡くなってしまいました。病院は当初、診療には最善を尽くしたとしていましたが、内部告発があり、それにより、ずさんな診療体制が発覚しました。母親としてあのときどうすればよかったのか、何度考えても答えが出ず、苦しい日々が続きました。  その後、警察が介入し、当該病院から形だけの医療事故調査報告書は出されましたが、根本原因は究明されず、納得のいかないまま二年半の月日が流れました。ですが、その頃、病院の方から、病院としての責任を認めたいと和解の申入れがありました。  和解をしてからなんですが、当事者の一人である救急外来の看護師の方にお会いすることができました。その方とお会いできたことで私の心は次第に回復していき、その翌年、事故から丸四年たった命日の日なんですけれども、当該病院の医療安全研修会で自分の経験をお話しすることができました。その場で初めて職員の方々と対話をすることができました。  息子の事故を通して、あのときの状況をお話しさせていただきます。  当初私は、私が何より思ったことは、もうただただ息子が亡くなることになった原因、事実、それが知りたい、その一心でした。  今朝の読売新聞に、東京女子医大病院で起きた医療事故について御両親のコメントが紹介されていましたが、その紙面でもやはり、息子がなぜ亡くなったのか、原因を詳しく知りたいと書かれていました。  私は医療事故で家族を失った多くの方の声を聞いてまいりましたが、大切な家族が突然原因が分からずに亡くなったら、何よりも原因を知りたいと願うのは当然のことではないでしょうか。しかし、それを知るすべがないのが現状です。そのようなことから、私の場合にも、病院が対応を拒否したために弁護士に助けを求めるしかありませんでした。  それから、その当該病院に講演に行きましたけれども、つらい思い出しかない病院に講演に行ったのは、医療機関に同じような事故を繰り返してほしくないという思いからです。事故から四年たった命日の日に行きましたが、この頃やっと心から再発防止を願えるようになりました。我が子はもう帰ってこないのですから、心の底から再発防止を願うようになるには、どの御遺族も少し時間が掛かるのではないかと思います。  今、私はこのような場で発言させていただいておりますが、あのとき内部告発がなかったら、あのときマスコミ報道がなかったら、私たちは泣き寝入りをするしかありませんでした。遺族は仕返しをしたいわけではない、そう言いたいです。病院が対応しなければ、マスコミや警察や弁護士に訴えるしかないという気持ちになっていきます。  しかし、私たちが本当に望んでいるのはそういうことではなく、根本原因の究明を願い、求めるのは、二度と同じことが繰り返されないための再発防止です。  要望書にも掲載しておりますが、信頼される制度にするための課題として、今日は五つのことをお話しさせていただきたいと思います。  まず一つ目なんですが、遺族への説明、報告についてです。  事故調査では、聞き取りや事実確認をし、報告書を作成するまでの過程がとても大切ですので、カルテを含む情報開示や、それを踏まえた説明が必ず必要となります。ですから、実際に完成された調査報告書は遺族に渡すことを義務付け、報告書の内容も踏まえて遺族に説明していただきたいと思います。この過程がないと遺族の納得を得るのは難しいと考えています。  二つ目、調査メンバーの在り方ですが、調査や運営に医療事故を経験した家族医療事故の再発防止に取り組む者の参加が必要と考えます。  既に制度としてスタートしている産科医療補償制度や、医療安全調査機構で行われているモデル事業では、原因分析、調査分析のメンバーに、医療事故を経験した家族医療事故の再発防止に取り組む者が実際に参加しております。中立性、透明性、公正性を確保するためには必要不可欠ではないかと考えております。  三つ目ですが、調査の仕組みについてです。  中立性、公正性を担保するためには、各都道府県単位ではなくブロック単位にした方がよいと考えます。利益相反の防止、調査分析の均一性の早期確立が求められるからです。  四つ目の調査対象です。  医療機関が届出をしない事例や医療機関の管理者による意図的な事故隠しを少なくするために、遺族や病院職員が第三者機関に相談ができる窓口を設けていただきたいと考えます。先ほどより内部告発についても申し上げておりますが、病院職員が、原因が分からないことに疑問を持ち、相談したいと思った場合や届出をしたい場合など、相談を受ける窓口が必要不可欠だと考えます。その上で、第三者機関が精査して調査が必要だと判断した場合は、当該医療機関調査を要請する、そのような仕組みを組み入れていただきたいと考えます。  五つ目です。調査費用、公的な費用補助についてです。  院内の医療事故調査は公的補助を行い、医療機関に全負担を求めないでいただきたいと思います。医療機関が院内調査費用の予算が立てられないことで届出を怠ることや、真摯に取り組みたい病院が調査を開始できないことも予想されます。公的な費用負担を視野に入れていただくことを求めます。  日本医療安全と質の向上に資するための事故調査、再発防止を目的とする第三者機関の運営自体に公的費用補助を行い、国として医療事故防止、医療安全に真摯に取り組んでいただくことを求めます。そのため、遺族の負担する費用は当初は無料として開始すべきと、このように考えております。医療安全の費用としましては、患者が診療費に加算して支払うなど、事故調査の継続が可能になるための財源確保について、これは国民みんなで考える必要があると考えております。  事故が起きた際に全額負担を強いるのは大変酷なことです。是非国民みんなで考えられるような制度設計をしていただきたく、私の発言とさせていただきます。  ありがとうございました。
  121. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ありがとうございました。  次に、後参考人お願いいたします。後参考人
  122. 後信

    参考人(後信君) 日本医療機能評価機構の後でございます。  本日は、私ども医療機能評価機構で運営しております特に二つの事業について御説明をさせていただく機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。  私は、本日、パワーポイントのスライドのコピーをお手元に御用意しておりますのと、それから、医療事故の収集事業の成果でございます年報や報告書、それから医療安全情報集、パンフレットをお手元に、少し厚うございますが、御用意しておりますので、それを適宜参照しながら御説明させていただきます。  それでは、スライドの一ページ目、下の段をお願いいたします。これはスライドの番号の二になります。スライド番号は右下に書かれております。  まず、医療事故に占める死亡事例の割合でございますけれども、医療事故収集事業のデータでは七%ぐらいにこのスライドではなっておりますが、このように医療事故全体の一部を占めていると、そういう割合になります。  そして、次のスライド三をお願いいたします。死亡した事例、あるいは大半の死亡していない事例、これらの事例の中で、特に死亡した事例が重要か、そうでない事例は重要でないかというと、決してそんなことはございません。死亡していない事例、これが九割を占めるわけですが、例えば、別の患者さんの生検の検体でがんと診断して、別の方に肺切除術を施行したというような事例もございます。このような死亡していない事例であっても、これは二度と起きてはいけないと、これは再発防止を図らなければいけないという事例はたくさんあるという状況でございます。  これらの事例につきまして、スライド四でございますが、私ども医療機能評価機構では、医療事故全般を対象とする医療事故の収集事業、それから重度脳性麻痺を対象とする産科医療補償制度の原因分析、こういう二つの方法を運営しております。上の医療事故収集事業でございますが、これは二〇〇四年に開始した事業でございます。そして、特徴的なのは、医療事故を毎年三千件、それからヒヤリ・ハット事例を三万件、このような多数の事例を報告いただきましてそれらを分析しているという方法でございます。  それから、下の段の産科医療補償制度は、無過失補償という性質もございますが、特に今日は、原因分析という意味では、重度脳性麻痺という限られた事例でありますけれども、そこを詳細に分析していくと、こういう方法を取っております。こちらは年間、現在のところ百三十件の報告書を作ることができます。  この方法論の違いについて少し詳しく申し上げたいと思います。スライド五をお願いいたします。  スライド五でありますが、医療事故の収集事業は、あらゆる診療領域の様々な程度、これは死亡、死亡していない事例両方を含みます。これらを網羅的に分析するという方法論でございまして、我が国で発生する様々な診療領域の医療事故、ヒヤリ・ハットを対象として、重大な事象、死亡などが発生する前に予防することができると。例えば死亡事例が発生することを契機とせずに死亡しなかった事例、あるいはヒヤリ・ハット事例であっても、実行していたら死亡したかもしれないという事例に学んで将来起こり得る死亡事例を防いでいくと、そういうことができる方法論です。  それから、スライド六に参ります。次の方法は、産科医療補償制度でありますが、重度脳性麻痺という限られた事例でありますが、詳細に原因分析を行っております。これは特定の限られた事例について、患者、御家族の真実を知りたいというお声に応えることができますし、また再発防止につなげることもできると、このような方法論でございます。  我が国では、方法の一と二と書きましたけれども、このような二つの方法が育ってきているというふうに御理解いただければよいのではないかと思います。例えば、右手に方法の一があり、左手に方法の二があり、目の前で起こってくる事象に対してどのような方針で対処するかによって得意な側の手を出していくと。このように処理していく、対応していくということが望ましいのではないかと考えます。  そして、次、スライド七でございますが、予定されております医療事故調査制度は、どちらかというと産科医療補償制度に似ているのではないかと考えられます。死亡事例という限られた事例、医療事故全体の一部ではございますが、その詳細な原因分析を行っていくという意味で、限られた件数の特定の事例、死亡事例について、患者家族の真実を知りたいという声に応え、また再発防止にもつなげることができると、こういう方法論であろうと思います。このような意義がございますので、是非この制度の創設を進めていただきたいと、そのように考えております。  スライド八は医療事故の収集事業の経験というタイトルでございまして、スライド九に参ります。医療事故の収集事業の全体像を申し上げます。  まず、この事業は、厚生労働省補助事業として二〇〇四年から運営されておりまして、長きにわたり厚生労働省に補助事業として維持していただいておりまして、そのおかげをもちましてお手元の成果が生み出されております。九のスライドは左から右に流れます。医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例を多数収集いたします。その収集の方法はウエブ報告、コンピューター上の報告になっております。報告するとそのままコンピューターのデータベースの中に入りまして、そのデータを使って報告書や年報、それから医療安全情報などを作成しております。この具体的な内容は後ほど申し上げます。そして、それらの成果を医療界に還元していく、あるいは、透明度高くホームページにも公表いたしまして、どなたでも見ることができるような形で公表しております。  スライド十でありますが、この事業の報告の範囲でありますけれども、これは厚生労働省令に規定されております事業でありますので省令の中に範囲が書いてありますが、片仮名のイロハとございまして、イは誤った医療が提供されたようなイメージです。それから、ロは、必ずしも誤った医療が提供されていない、しかし医療に起因して、あるいは起因すると疑われて結果が悪かった事例です。それから、ハは医療事故の防止に資する事例です。このイロハのどれに該当するということは問うておりませんので、例えばイの誤った医療に該当するということを医療機関は決断して報告する必要はございません。  このようなイロハのいずれであるか問うていないということで、報告しやすい環境が整備されているということが言えます。また、報告したからといって、その報告の内容は一定の調査は必要でありますけれども、そのやり方は事細かく規定されてはおりませんので、医療機関に委ねられておりますので、様々、多数ある事例をどのように調査してこの事業で報告するかという点が医療機関が判断できますので、その点でも負担感の少ない報告の仕組みになって、そのおかげで事例が多数集まっていると考えております。  そして、スライドの十一ですが、スライドの十一が医療事故の報告件数でございますが、毎年増加しているという状況でございます。  そしてスライドの十二が、これはホームページ上で公表しているデータベースの事例でありますけれども、具体的にはスライドの十二にあるような内容が報告されます。特にスライド十二の下半分の赤く囲んだ部分ですが、事例の内容は、何が起こったかということが報告されますが、それ以外に、背景、要因、つまりなぜ起こったかということと、それから改善策、どう防ぐかということも医療機関に一定の分析をしていただいて、このような形で報告されているということでございます。  それから、スライド十三でありますが、先ほどのスライドに似ておりますけれども、この事業の特徴的なところは、報告がウエブ上の報告になっておりまして、つまりコンピューター上の報告で、報告した瞬間に、つまり送信ボタンを押した瞬間にデータベースに入るということになりまして、それを私ども基本的には三名の看護師がその数万の事例を扱いまして、選択項目を集計したり、それから類似事例を検索して探し出してテーマ分析を行っております。  そして、十四番のスライドですけれども、これは二十五年度に分析しましたテーマです。技術的、医学的ですので内容は割愛させていただきますが、お手元の報告書とそれから年報、厚い白い冊子がございますが、これらのページのちょうど中ほどでしょうか、最も多くのページを割いているのがこの分析テーマになります。事業開始後九年になりますけれども、これまでに累計百五十のテーマを取り上げております。  それから、スライドに戻っていただきまして、十五番でございますけれども、十五番は、これは私どもが次回報告書に取り上げようと検討しておる内容なんですけれども、十五の内容は、これは類似の事業を行っていらっしゃいます日本医療安全調査機構がお出しになっている警鐘事例でございます。  具体的な内容は、気管切開術後の一週間のリスク管理、つまり喉のところの気管を切開してそこにチューブを入れて呼吸を管理すると、そういう方法を行っている間に起こる危険な事例、死亡事例でございます。私も研修医の頃はこういう取扱いの中では死亡事例があるということを厳しく教えられましたし、現在も気管切開チューブの入替えをするときはかなり注意して行っております。この事例はモデル事業の事例ですので、当然ながら死亡事例ということになります。  次に、スライド十六をお願いいたします。この事例の類似事例を私どもの医療事故の収集事業のデータベースで見てみますと、十八事例、類似事例がございます。死亡事例もございますけれども、それ以外に死亡していない事例もございます。  このように、死亡していない事例から死亡事例まで事象というのは様々あるものでして、死亡した事例とそうでない事例とに全くきれいに分かれるというものではございません。また、死亡を契機として医療安全対策を図っていくという、これも現実としてあると思いますけれども、死亡を契機とせずに、その前に死亡しなかった事例に学ぶということも非常に重要であると考えております。  それから、スライド十七ですが、十七は医療安全情報と申しまして、毎月一回、それらの分析した内容を医療機関に配信しているものでございます。  スライド十八にありますように、現在、全国の病院を中心に五千三百余りの施設にファクスで情報発信しております。全国の病院の六割、二つに一つはこの情報を受け取っていらっしゃるということになります。また、ホームページにも掲載しております。  スライドの十九は、この事業で報告されました医療事故やヒヤリ・ハットをデータベース化しましてホームページで検索できるようにしておりまして、現在では多数の事例を御覧いただくことができます。  スライド二十ですが、このデータベースを活用して、例えば薬の名前が似ているもののブランド名が終了したり、あるいは似ているものの注意喚起が盛んに行われるようになってきておりまして、医療を取り巻く様々な業界の活動にもつながっております。  それから、スライド二十一でありますが、この有害事象の報告システムはよく知られましたWHOの報告書におきましても紹介されております。  それから、スライド二十二ですけれども、医療安全情報は英語版を作成しておりますが、海外でもいわゆるアプリが開発されておりまして、外国でも使用されているという状況でございます。  それから、スライド二十三は、この事業にはそのように海外からの関心も高まっておりまして、今年の九月にはアイルランドから講演依頼がございまして、この制度のお話をさせていただくということにしております。  続きまして、スライド二十四、二十五に参りますが、産科医療補償制度の経験に参ります。スライド二十五にございますように、特に赤く大きく太く囲んでおりますように、産科医療補償制度は詳しい原因分析を行って再発防止に結び付けております。  スライド二十六でありますが、原因分析を行うときには、たくさんの情報を使って、それから部会、本委員会という二層構造の委員会を設けて、それから助産師や法規に通じた事務系職員の支援をしっかり行いながら、報告書ごとにばらつきがないものを作ることに腐心しております。  スライド二十七ですが、これは報告書の一部を取り出してきたものですけれども、言葉遣いとして、一般的である、一般的でないという言葉にちょっと色を付けておりますが、これはスライド二十八にありますように、医学的評価、特に重要な部分で使う言葉遣いは段階を既に作ってマニュアルに定めておりまして、また原則としてその中から選ぶというようなことをしております。これは、報告書を横に並べたときに相互比較可能なものになっている必要がある、それからばらつきをなくす必要がある、こういった目的で行っておりまして、このようなことが、予定されております医療事故調査制度などでも求められるものと考えます。  そして、スライド二十九は、二〇一三年が一年間の最新の数字ですが、現在百三十件ほど作成することができるようになっておりますが、ここに掛かる労力も相当なものになってきておりまして、分析される先生方も非常に苦労していらっしゃると、こういう状況です。ですから、これが余りに多くの件数になりますと、なかなか同じ方法論ではやっていけないというようなことが実感です。  スライド三十ですけれども、このような詳しい原因分析報告書がかえって紛争を増やすのではないかというような御懸念が制度発足当時ございましたけれども、現在のところ、損害賠償件数の増加などは観察されておりません。  また、スライド三十一ですが、訴訟の件数を見ましても、医療分野全体は青い棒グラフも緩やかに減っておりますが、産婦人科の件数はもっと早く、急速に減っているということが観察されております。  スライド三十二ですが、原因分析が行われたことは良かったですかというアンケートを取っておりますが、分娩機関、保護者共に良かったとお答えになった方が多く、また、保護者は余り良くなかったというお答えも多かったわけですが、これは医学、助産学の限界で、どうしても原因が突き止められなかったということに対する御意見でありました。  スライド三十三は、このような事例を集積しまして、再発防止のために有用な情報を報告書にまとめております。  また、スライド三十四のように、この事業で集まってきた非常に重要なデータを集めて産科の先生方の日常の診療に役立つ教材も作成することができております。  そして最後に、スライド三十四以降でありますが、医療事故調査制度の創設のことについて少し意見を申し述べたいと思います。  スライド三十六ですが、この制度に関係する事業として、今日申しました二つの事業、それから日本医療安全調査機構のモデル事業があると考えます。  スライドの三十七は、これは厚生労働省の資料でございますけれども、これからガイドラインを作成することになっておりまして、医療事故の収集事業の知見も踏まえつつ検討するとなっております。  それから、スライド三十八でありますが、これも厚労省の試算ですけれども、死亡事例の年間発生件数は千三百から二千と、非常に多くの件数になっております。先ほど申しましたように、このような多数の件数が全国で同じような入念さで分析できるのかどうなのかというところはまだこれからよく考えてみる必要があろうかと思っております。  それから、少し話はそれますが、この千三百から二千のデータは医療事故の収集事業の結果に基づいて推計されたデータです。このように、一部ではなく全体を見る事業が並行して動いていることによって、仮に医療事故調査制度を今後改善していく、改良していく、拡大していくときに必要な基礎データを常に提供する、全体を見る仕組みが一緒に行われている必要があろうかと思います。  スライド三十九でありますが、これは今後起こり得ることを想像して書いておりますけれども、スライド三十九の中で、医療機関や助産所の中では①から④のような事象が起こり得ると考えますが、③が死亡以外の事例です。これは引き続き医療事故収集事業に通常の分析が行われて報告されると考えますが、①が医療に起因する疑い含みの予期しない死亡事例です。これが千三百から二千と想定されるわけですが、これが詳しく分析されるのか……
  123. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 時間を過ぎておりますので、御発言をおまとめください。
  124. 後信

    参考人(後信君) 済みません。  詳細な分析だけでいけるかという点がポイントかと思います。これらの方法論を組み合わせて行っていくことが大事であろうと考えております。  まとめは、ただいま申しましたように、報告しやすい環境を整えて、そして、今日申しました二つの事業の性質を組み合わせて行っていただければと考えております。  時間超過して失礼しました。以上でございます。ありがとうございました。
  125. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  126. 滝沢求

    ○滝沢求君 よろしくお願いします。自由民主党の滝沢求でございます。  参考人の皆様方には、非常にお忙しい中お越しいただき、また貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。  時間も限られておりますのでポイントを絞って伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、山本参考人にお伺いをいたします。  対象となる医療事故が発生した場合の具体的な内容でございますが、医療機関が、第三者機関への報告、この機関は医療事故調査・支援センターという名称でございますが、その後、必要な調査を実施、調査結果の遺族への説明や医療事故調査・支援センターへの報告といったような流れとなるわけであります。この調査対象が、診療行為に関連した死亡事例、予期しない死亡事例とのことでございますが、医療機関の管理者が医療事故を適切に判断することが重要であると思います。  そこで、その判断のためのポイントについてどのように考え議論がなされたのか、参考人にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  127. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) 御質問ありがとうございます。  委員御指摘の点が恐らくこの制度の実効性を左右する極めて重要な点であるというふうに認識をしております。  基本的な制度の仕組みとしては、先ほど私が申し上げましたように、医療機関の自発性、自律性というものを重視した制度の仕組みになっており、まず、医療機関が、当該事故がその発生を予期しなかったようなものかどうかということを、管理者がそれを認定して届出を行って院内調査に移っていくという仕組みにしておりまして、その点で、どういうものが予期しなかったと言えるかということについては、恐らく、その具体的な例示とか、あるいはどういうような手続に従ってそれを判定していくかというようなことを共通化していくということが必要になってくるんだろうと思います。  私の承知している限りでは、それは恐らく今後作成されるであろうガイドラインの中でそのような具体的な仕組みが設けられるということであろうと思いますけれども、いずれにしても、その点が、実務上、届けられるべきものが届けられないというような事態があってはならないわけでございまして、その点を明確にしていくということは今後の実務上の最も重要な課題の一つであろうというふうに私も認識しております。
  128. 滝沢求

    ○滝沢求君 どうもありがとうございます。  次に、この第三者機関、医療事故調査・支援センターについて山本参考人にお伺いいたします。  医療事故の過失の認定を行うためではなく、再発防止のために業務が行われることとなっておりますが、その性質や業務を考えていく過程でどのような議論がなされたのか、そしてまた、体制や財政面はどのように考えていたかも含めてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  129. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) ありがとうございます。  この第三者機関につきましては、その組織として、そもそも行政の関与したものにするのか純粋に民間のものにするのかということについてのかなり議論があり、最終的には、先ほどの繰り返しですけれども、医療界の自発的な原因究明、再発防止への取組という点を重視して、行政が関与するものではなく、民間組織によって行うということにしたものであるというふうに理解をしております。基本的には、全国に一つの機関という形で、その事故情報が全国的に一つに集約されるということを担保するという形になっている、ただ、実際の調査に当たっては、各地の組織に委託をしたり協力を求めるという仕組みになっているものというふうに承知をしております。  財政面につきましては、民間の機関ということですので必ずしも詰められているわけではないというふうに思いますけれども、先ほども申し上げましたように、やはり実際の事故の調査の費用につきましては、申請者から一定の負担を求めるにしても、特に御遺族の方から多くの費用の負担を求めるということであってはやはり私はならないんだろうというふうに思っておりまして、先ほども豊田参考人からも御指摘があったと思いますけれども、国からも十分な費用の負担がなされる、あるいは医療機関の側も、そういう医療関係団体の側からも負担がなされるという形で運営をされていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  130. 滝沢求

    ○滝沢求君 ありがとうございます。  次に、ガイドラインについて、これまた山本参考人にお伺いしたいと思います。  これまでの様々なやり取りやまた経緯から、法案が成立した後により具体的な運用の方法などがガイドラインで定められることとなると思います。例えば医療機関医療事故の報告の具体的な事項など、かなりの内容がガイドラインで示されることになるようでございますが、現状においてガイドラインで定めようと考えている事項はどのようなものが想定されるのか、伺いたいと思います。よろしくお願いします。
  131. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) ありがとうございます。  委員御指摘のとおり、この調査部会におけるまとめにおいても、院内事故調査の手順等、第三者機関への届出も含めてガイドラインを策定すると。そして、そのガイドラインを策定するためのフォーラムでその点を更に詰めて議論をするという形で取りまとめを行ったところであります。この法案が成立した暁には、そのようなガイドラインを策定するためのフォーラムというのが恐らく厚生労働省の下に設けられて、様々な関係方々、専門的な方々によってそれが議論されるというふうに理解をしております。  具体的には、先ほども話題になりました届出、どういうものについてその届出をしなければならないのかというようなことであるとか、あるいは院内における事故調査の具体的な手順、どういうような手続、あるいはどういうような方法でもってその事故調査を行っていくのか、あるいは第三者機関における調査についてもどのような形で現実に行っていくのか。現在の法案においてもその辺りの細かなところまではやはり定まってはいないというふうに思っていますけれども、ただ、現実には、その調査が実効的なものになるには、そういう具体的な手順というものが非常に重要になってくるというふうに思っておりますので、それから、先ほど申し上げた費用の負担の在り方ですね、これも恐らくガイドラインの中で定まると思うんですが、実際にはその辺りが非常に重要になってくると思いますので、是非このガイドラインというのが適切に、早急に定められるということを私も期待しているところであります。
  132. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 豊田参考人はよろしいんですか。
  133. 滝沢求

    ○滝沢求君 はい、山本参考人に伺ったので。  時間が来ましたので、大変貴重な御意見、ありがとうございます。これで私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  134. 足立信也

    足立信也君 民主党の足立信也でございます。  ふだんからいろいろお世話になっております。ありがとうございます。本日もまた貴重な御説明いただいて、ありがとうございます。  二〇〇八年、事故調設置法の第三次試案、それから大綱案、それから法律ももちろん役所の中では作っておりましたが、それに対して、二〇〇九年になったかもしれませんけど、星陵会館で全政党が集まって、このままの大綱案ではオール政党が駄目だということがありました。永井さんもいらっしゃったような気がしますが。  なぜかというと、警察に代わる公的な調査機関をつくるという趣旨であったんです。それは、遺族側の皆さんの希望もありましたし、医療者側も警察に届けられるのではかなわないということで、そういう趣旨だったですね。だから、全例であり、たちの悪いものは警察に届ける、その仕組みの中で全部が反対だったわけです。  二〇〇九年に政権が替わったときに、私は、正直申し上げて、一年間役所の中の考え方を変えるのに一年費やしました。それは、そういう考え方ではなくて、亡くなった原因をしっかり究明するということは医療の最終段階、医療の一環なんだということで、そこまではやらなきゃいけないと、だから医療法の改正でやるんだと。今回の改正法案の何か応援をしているみたいでちょっとあれなんですけど、そういう趣旨で、これ一年掛かりました。後任の岡本政務官のときに、今の産科医療補償制度ではない、過失の有無に関係のない無過失補償制度というものを創設するための検討会が開かれ、その中で、やっぱり事故調査制度が先にあるべきだと、そういう流れになってきたわけですね。  そこで、お三方がおっしゃったことのそれぞれにおっしゃらなかった部分を聞こうと思うんですね。  まず、費用負担のことが今ありました。豊田さんもおっしゃいました。山本先生にお聞きしたいのは、院内調査充実が何より大事だと、もう当然のことですね。できれば外部を入れる必要もあるし、そして支援団体の存在も非常に大きいと。  私は、そこでお互いに責任のなすりつけ合いになったらいけないと思っているんです、当事者である医療機関と支援団体、お互いにどっちかが調べていますみたいな形でですね。これは共通して責任を負うということが必要ですし、そこに外部の方を入れるにせよ、解剖を依頼するにせよ、費用が生じます。この部分は、平成二十七年の十月施行ですから、消費税が一〇%に上がるタイミングということは公費がここに入ってくるのかなと。医療法上に位置付けて安心、安全を高めると言っている以上、私は、今内閣府で検討されている死因究明推進に関連しても、費用はこれは公費であるべきだろうと私は思っています。  その点について、先ほど第三者機関への費用負担については話がありましたが、院内の段階、それから支援団体にお願いする段階でも必要な話なんです。そこのところを山本先生にお伺いしたいと思います。
  135. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) ありがとうございます。  お尋ねは、院内調査についての費用負担という点でした。  この点については、検討部会の取りまとめにおきましては、院内調査の実施費用については基本的には医療機関負担とするという形で取りまとめがなされました。これは、やはり院内で行われる調査の基本的な責任は、その医療機関が自らの責任で自分のところで言わば起こった事故の原因の究明を行っていくという考え方によるものだというふうに理解をしております。  ただ、国の側はその医療機関が行う院内調査における解剖あるいは死亡時画像診断等に対する支援の充実を図るように努めるということでまとめられておりまして、国側はそういう解剖等の部分において十分な支援を行って医療機関における調査が円滑に進むようにするという形でまとめられたということであります。  また、委員質問の支援団体につきましては、これは、基本的にはその医療機関地域の医師会でありますとか大学病院等が、特に自分自身で十分な調査ができないような小規模な医療機関に対して適切な支援を行っていくという部分であるというふうに思っておりまして、それについては、その地域において、それぞれの医師会、大学病院等がどのような形でその部分の費用の負担をしていくのかということが考えられていくのかなというふうに思っておりまして、そういうようなことであります。
  136. 足立信也

    足立信也君 充実した院内調査のためにはお金が掛かる、それから支援団体に依頼するにもお金が掛かる、そこで抑制になってはいけないということですね。私は、新たな基金制度ができますけど、これ使えるようにすべきだと私は思っています、個人的な意見ですけど。  それから、豊田さんにお聞きしたいのは報告書についてです。  第三者機関の報告書は申請した遺族の方にも出ますね。最初の院内調査のところはカルテ開示という手段もあるわけです。そこで異なった内容の報告書が手元に来た場合に遺族の方というのはどのように判断されるのか。必ずしもその報告書、カルテ開示ができる中で報告書が必ず必要なのか。そこら辺はどうお考えになるでしょうか。
  137. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) ありがとうございます。  これは私は病院の職員としても実際に対応しているんですけれども、カルテを開示されてもほぼ分からない、何が書かれているか分からなくて、それをまず説明していただくということから一つずつ、信頼関係を構築する意味でも、一つずつ、何が書かれているのか、何が起きたのかということを説明していただくという過程が大切なことと、話をしていく中で、説明している医療者自身もまだ分からないことがあって、これから調べていく中で分かったことはまたお話ししますということで経過をたどって説明していけば、前に言っていたことと違うだろうということにはならないと思いますし、それから、この報告書を誰が作るかということも明確にしていかなくてはならないと思うんですけれども、本当に第三者的な立場、当該の者が一人も入らないで作っている場合には、その結果はこうですが、私はこう考えますということはあってもそれはいいと思いますし、そのことで紛争化するというよりは、むしろ説明をしないとか対応しないということによって信頼関係を失ってしまうことが圧倒的に多いと思いますので、私は、それは一つずつそのプロセスを大切にしていけばそんなに問題はないと思います。
  138. 足立信也

    足立信也君 報告書が大事なのではなくて、そこで対話をすることが、説明することが、納得を生むことが大事だと、そういう主張だと思います。まさに、大野病院事件は県が作成した報告書が事件の発端といいますか、逮捕に至った。報告書の在り方というのは極めて大事だと思います。何を書くべきか、どのように書くべきか、そこはこれから大事なことだと思います。  後さんに最後にお聞きしますが、この制度は医師法二十一条と切り離してやった。医師法二十一条は、今日午前中にも、判例のこともありましたし、田原課長の発言のこともあり、大臣がそれをもう一度踏襲されました。  そんな中で、二十一条の解釈は、もうドクターですからお分かりですが、死亡診断書記入マニュアルにはその見解と違うことが書かれてある。例えば、外因の疑いがある場合は届出が必要となると。その法律なんかないわけです。それと異状死ガイドライン、法医学会のに従う、参考にするようにというふうに書いてある。それは二十一条の解釈とは違うんですね。  そのことについて、このマニュアル、恐らく何度かお読みになっていると思いますから、それと、今回の制度にとってこれが極めて大きな話になると思いますが、それをどのように評価されているか。
  139. 後信

    参考人(後信君) ありがとうございます。  御質問は、今日の私のお話しした事業とは少しそれるかと思いますが、臨床医といたしましては、やはり死亡診断書を書いたりするときの、今お示しいただきましたマニュアルを読んだりするということは実際にございまして、ただ、今御説明ございましたように、なかなかここはクリアに線引きができていないという中でかなり臨床医は不安を抱えているという状況でございまして、そういう状況の中、日々が一日一日過ぎているということになろうかと思います。  この十年、この問題については長く議論されてまいりましたので、この辺りで一大整理が行われてもいいのではないかと、私はそのように、これは一臨床医の立場ですが、そのように考えております。
  140. 足立信也

    足立信也君 ありがとうございました。
  141. 長沢広明

    ○長沢広明君 公明党の長沢広明です。  私の方からも、当初、いわゆる事案の対象の考え方とか、それから費用負担のことについてお伺いしたかったんですが、既にもう御意見を今伺いましたので、ちょっと残り一つ、私の方から少しお伺いしたいことがございます。  それは、今回の制度とちょっと離れますけれども、いわゆる無過失補償制度についてどう考えるかということを三人の参考人方々それぞれからお考えを伺いたいと思います。  昭和四十七年、一九七二年ですかね、日本医師会から報告書が出されて、その報告書の中の提言の一つに、いわゆる医師の過失によらず重大な障害が発生した場合、その障害に対して補償をする、国家的な規模で補償をする、そうした制度を用意すべきであると、こういう提言がされて、いわゆる無過失補償制度というものを用意すべきであるという提言があり、それについて様々なその後研究が行われ、検討も行われ、その中で、当面、緊急性を要する課題として、いわゆる分娩の脳性麻痺に対する補償というところから、ところからというか、それに限った形の産科医療補償制度がスタートをしているということです。  豊田参考人も言及、資料の中でされていますし、後参考人は、いわゆる産科医療補償制度の運営主体である日本医療機能評価機構でいらっしゃいますので大変お詳しいと思いますが、そうした補償制度、外国を見ると、フランスとか一部の国で医療全体に対する、産科と限らず、医療におけるいわゆる補償制度、こういうことを用意している国もあると。  それに鑑みれば、今、我が国においては産科医療補償制度だけであるけれども、この産科医療補償制度を、やはり医療が発達し、そして医療に対する期待が高まり、それがゆえに、逆に言うと様々な、過失もないけれども重大な障害が起こる例も決して少なくはない、そういう中で、患者あるいは家族の経済的な負担、あるいは精神的な負担、そういうものを軽減していくために、産科医療補償制度をある意味拡大すべきではないか、広げていくべきではないかという、こういう議論もあるというふうに思いますし、いや、そこまではする必要はないのではないかと、産科医療補償制度はそれはそれで緊急性を要する非常に大きな意味があるので、それとはまた別にこの補償制度を考えた方がいいのではないかという意見もあるし、様々な議論があります。  この分野にそれぞれのお立場で関与されている参考人方々に、専門家、法的な立場からも山本参考人に伺いたいと思いますし、患者家族の側の立場から豊田参考人に、そして今運営組織で運営されている立場である後参考人に、それぞれ御意見伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  142. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) ありがとうございます。  今回の医療事故の調査制度を設ける元々のきっかけといいますか、それは、この無過失補償制度の在り方、その課題について議論をするという委員会というか検討会が設けられて、ただ、その無過失補償制度の創設に当たっては医療事故調査の制度抜きには議論できないということで、取りあえずまず医療事故の調査についての制度の在り方について検討をするということで、その下に検討部会というものが設けられて、私がその座長を務めたわけでありますけれども、元々はその親委員会は無過失補償の制度をつくるものであったということでありました。  ただ、最終的には、その検討会におきましては、無過失補償の制度を創設するについては様々な大きな論点というものがあると。恐らく最大のものは、財政的な、費用の負担をどうするのかということが、これは患者負担を増やすのか、医療機関負担を増やすのか、保険制度みたいなものをつくるとして、どういうような、誰がどのような掛金を負担するのかというようなことを考える必要は非常に大きいと。そのほかにも、補償の範囲とか、あるいは過失、無過失の認定等の手続をどのように行うのか。これは私も若干委員御指摘のフランスの制度などを調べたことはありますけれども、かなり細かな制度の仕組みになってございます。  そういうところをかなり詰めていかなければいけないということだったわけですけれども、取りあえずは、やはりまずはこの医療事故調査というものをスタートさせて、実際の運用というものを見極めた上でこの無過失補償制度にもう一度返ってこようという、そういうことで、一応その検討委員会としては、何というか、しばらく様子を見るというか、状況を見るということで今推移しているというのが私の理解であります。  私個人の意見としては、もちろんそのような制度ができれば、それは患者の救済という意味ではそれにこしたことはないというふうに思っておりますけれども、ただ、やはり費用の負担の問題をどうするのかということは相当大きな問題として考えていかなければならないものだろうというふうに思っております。
  143. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) 私もその無過失補償の検討会に参加させていただきまして、やはりその構成員の中から出てきましたように、まずはその原因究明の仕組みをつくることが先ではないかということでしたけれども、私も同じように考えております。  産科医療補償制度の中の目的の二番のところに、将来の予防に資するために原因分析をして、それをフィードバックして将来につなげていくという目的が掲げてありますが、そこに賛同できたから家族の側もこの制度スタートすることに賛成しているのではないかと思います。  ですので、結果が悪かったから補償してほしいというだけではなくて、やはり私たちは何が起きたのか知りたいということが一番の願いですので、そこの部分をしっかり仕組みとしてつくっていただけましたら、おのずと補償の問題についても話し合える日が来るのではないかというふうに思っています。
  144. 後信

    参考人(後信君) 私ども、産科医療補償制度をスタートするときに、私はスウェーデンに参りましてスウェーデンの無過失補償制度を勉強したことがございます。ただ、スウェーデンは日本と比べまして随分と社会保障が手厚いですので、無過失補償は行っていても、その補償額は平均しても日本円にして百数十万程度と非常に少額なものでございました。  このように、国によって社会保障の手厚さが違うと、それに応じた無過失補償制度というものはあるべきだろうというふうに考えます。日本の場合は、産科医療補償制度は一律三千万円と、まあまあの高額なものになっております。  それから、ただいま豊田参考人もおっしゃいましたけれども、産科医療補償制度創設時には、単に金銭補償だけで満足するのではなく、やはり医療の質の向上につなげてほしいというお声は非常に多かったものですから、そういう点も留意する必要があろうかと思います。  それから、産科医療補償制度を見ますと、恐らくはうまくいくであろうと思っていたけれども結果はかなり悪い結果になって、その落差が大きくて、これが医学的にも今日なお、誰が悪いということをまあまあえり分けていくことすらできないと、こういう領域であれば、医療のそういう領域であれば、今後無過失補償制度の創設にはなじむのではないかと思います。  様々問題があるということは先ほどお聞きしたとおりです。  以上です。
  145. 長沢広明

    ○長沢広明君 大変参考になりました。  今回のこの制度というか法案が、ある意味では無過失補償制度へ進んでいく一つのステップになるように、また意味のあるものになればいいなというふうに思いますので、大変参考になりました。ありがとうございました。  終わります。
  146. 東徹

    ○東徹君 日本維新の会・結いの東徹でございます。  参考人のお三方、本日は本当にお忙しいところ、ありがとうございます。  私も、この医療事故調査制度、責任の追及ではなくて原因究明、再発防止になって、それが日本医療の質を高めていくことにつながっていけばいいというふうに私も思っております。  山本参考人の方に是非お伺いさせていただきたいというふうに思うんですが、先ほどのお話の中で、要望として運用面について一点お話しされておりました。私も、院内調査充実、ここをどうしていくのかというところが非常に大事だというふうに思っておりまして、有効な手法というものをやっぱり是非考えなくてはならないというふうに思うんですが、もう少しその辺のところについて、具体的にこの院内調査充実、もう少しイメージが湧くようにちょっとお話ししていただければ有り難いなと思うんですが。
  147. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) イメージが湧くようにと言われるとちょっと難しいところなんですけれども、一つは院内の、その調査に際して置かれるであろう事故調査委員会というものの意義ということであろうかと思います。検討会の取りまとめでも、やはり院内調査においても、中立性、透明性、公正性、専門性というものが必要であって、原則としては外部の医療の専門家の支援を受けるということとし、必要に応じてその他の分野についても外部の支援を求めるということにしております。  そういう意味では、院内で行われる調査でありますけれども、外部の視点、それから専門家の支援等を得ながらその調査を行っていくということが必要だろうというふうに思いますし、それから、先ほども触れましたけれども、特に小規模な医療機関を中心として、なかなか自前では調査ができないような場合に、地域の医師会とか医療関係団体からの支援を受けてその調査を行っていくということで、第三者機関に全て頼るということではなくて、院内で事故の真の原因というものが解明できるようないろんな専門的なリソースを投入していくと、そういうような必要性があるんだろうというふうに思っております。
  148. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございます。  じゃ、同じく豊田参考人の方にもお伺いしたいと思うんですが、豊田参考人の方からも、調査メンバーのあり方というところで、中立性・透明性・公正性を確保するためには、調査及び運営に医療事故被害者で医療事故再発防止に取り組む者の参加をというふうなことも書かれておりますが、そのことも踏まえて、院内調査充実について、それ以外にも何かあるんでしたら是非お答えいただければと思います。
  149. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) ありがとうございます。  院内は、全国的に見ると実際に事故調査をやるに当たってかなり調査の質に差が出てくることは確実に予想されますので、そこについてどこまでの支援ができるかということが非常に重要になってくると思います。  ですので、第三者機関にはそのような患者家族の立場の者も入って透明性とか公平性を求めたいと思っておりますが、まず一番最初に病院の中で取り組むときにそこまでするのは難しいと思いますので、では、代わりになるものとしての透明性の確保ってどういうものなのか、それから、公正性として支援団体が、先ほども各都道府県ではなくてブロック単位で担当してほしいというお話を申し上げましたが、そういったことも、質の担保だけではなくて、やはり利益相反になったりしてもいけませんし、本当に調査の仕方が偏ってしまってもいけませんので、いかに支援団体がしっかりとした仕組みになるかということに、すごくそこが大事だというふうに思っていますので、そこについて是非審議していただきたいというふうに願っております。
  150. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございます。  医療事故被害者でその参加をとなると、医療の専門家ではないのでそこはどこまで解明できるのかなと思ったりもするんですが、そこはどんなふうにお考えですか。
  151. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) これは産科医療補償制度やモデル事業の中で既に行われていることなんですけれども、決して医学的評価に口出しをさせていただくということではございません。きちんと公平、公正を保たれていて、しっかりとした議論がなされているかということも見せていただいておりますし、それから、言葉遣いなどに関しても、調査報告書を読んだときに専門的過ぎて余りにも分からないようなものが出てくると私たちが意見を言わせていただきまして、それで分かりやすい言葉遣いで、かつ報告書が余り差が出ないような形でまとめていただくというところに参加させていただいておりますので、そこで意見が食い違ってもめてしまうとかいう、そういうことではありません。
  152. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございます。  あと、後参考人の方にお聞きしたいと思うんですが、この公益財団法人日医療機能評価機構ですね、これまで医療事故に関する実績、それからノウハウもあるというふうに思っておるんですが、ということで今日お越しいただいたことになっているというふうに思うんですけれども、先ほどの、同じ質問なんですが、この調査の仕組みのことについて、もう少しこうすればいいんじゃないのかというところを何かお話ししていただければというふうに思うんですけれども。
  153. 後信

    参考人(後信君) ありがとうございます。  医療機関は、特に病院だけで申しましても全国に八千以上ございますし、このような調査自体を、ふだんのカンファレンスはありますけれども、調査という形でするのはこれから初めての経験をしていくということになろうかと思います。ですから、資料は何を使うのか、それから会議というのはどういうふうに行っていくのか、それから報告書はどのように書いていくのか。先ほど、書き方、言葉遣いとか論理展開などもありましたけれども、これは一つ一つ全部練習のようなことになろうかと思います。  私は、イメージいたしますのは、まず最初は少数でも確実にきちんとこういう練習を行っていくと。報告書を作っていくということによりまして死亡時以外の事例も報告するときの質が増してくるというふうに考えますので、医療界では、ふだんの専門性の高いカンファレンスなどはもちろんあるわけですけれども、今度は対外的な非常に説明にもたけた、そういう能力が病院の中で開発されてくると、そういうふうになることを期待しています。
  154. 東徹

    ○東徹君 以上で終わります。ありがとうございました。
  155. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 みんなの党の薬師寺みちよでございます。  本当に本日はありがとうございます。特に豊田さんのお話には、私も子供を持っている母親として胸が打たれた思いでございました。  そこで、セーフティーマネジャーでもあり、かつ御遺族でもある豊田さんにまずお伺いしたいんですけれども、先ほどちょっと足立委員のお話にもございました、報告書の話でございます。私、いろいろな御遺族の皆様方のお話を伺っても、結局訴訟に至る経緯の中で、かなり医療者側とそして御遺族側のコミュニケーションギャップというものがあるんではないかなと感じることがございます。  ここの、豊田さんの資料の中で、報告書も踏まえ説明する、報告書を義務化すべきではないのかなといったような御意見だと思うんですね。前日に医療安全調査機構の女性看護師さんのお話を伺いましても、カルテを見ただけでは分からないので、カルテの記載、医師の記載、そして看護師の記載、そして様々なデータを時系列的に並べ直してそれをもう一回分析をする。ですから、そういう詳細なものを御遺族の皆様方に分かりやすい形でまず説明をするところから話は始まるのかなと。ですから、そういうものも御遺族の方がやっぱりしっかり手に入れられてもう一度見直すということが必要だと思うんですけれども、報告書の義務化についていかがお考えなのか、教えていただけますでしょうか。
  156. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) ありがとうございます。  様々なところから裁判に使われるのではないかというような声が私のところにも聞こえてきているんですが、私はむしろ、報告書をしっかり提出して御説明するという過程をしっかり踏んでいけばそういうことにはならないのではないかというふうに思っています。カルテを開示するということそのものがなかなかそれをしていただけなかった時代があって、今はカルテを開示することが多くの病院でなされるようになったと思いますけれども、いざ開示されても、中身が、見ても全く分からない。記録を余り書かれない医療者も実際におりますので、どういうことがあったのかというのは聞き取りをしたりしないと分からない部分もあったり、記憶がない部分もあったりする。それを一つずつ正直にお伝えしていくことしか私はやはり信頼を取り戻すことは難しいのではないかというふうに思っています。  報告書がないままに口頭で難しい医学的なことを説明されても分かりませんので、そうすると証拠を残して録音するかみたいなことになって、むしろ私は、何か紛争の準備をしているようなことになってしまうと思いますので、その記録があることによって、記載があることによって一つずつ受け入れていったり納得していったりできるのではないかというふうに考えております。
  157. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございました。  今のそのコミュニケーションギャップのところでもう一点お伺いしたいんですけれども、豊田さんは医療対話推進者でもいらっしゃるということでいらっしゃいますよね。やはり、御遺族の皆様方若しくは医療事故を受けられた患者様といかに医療者をつないでいくかがとても大切な役割だと思うんですけれども、今回の事故調査に係る調査の仕組みの中で御自身がどのような役割を担われるのかなというところ、想定されるところでも結構でございますので、教えていただけますでしょうか。
  158. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) どうしても法案というようなそういう中ではなかなか具体的には書けないと思いますし、ガイドラインの中でもどこまで明確にできるのかという、医療現場の立場としてもそこは気になるところなんですが、実際に大きな医療事故が起きたときに、双方が物すごくショックを受けて、記憶が飛んでしまったり、はっきりここは絶対にこうだというふうに思う部分があったりという中で、そのような中で、当事者双方又は責任者、管理者だけで次々とこういうふうにして対応していこうというふうにはなかなか、次の対応をしていくということは非常に難しいと思いますので、そこで、医療安全管理者や医療対話推進者がそこの対話の部分をつなげていくという役割になっていくと思います。  ですので、まず、ガイドラインの中で示されていくとは思うんですが、一つずつ事故調査をやっていくに当たって、このような体制で行っていってくださいというようなことが示されていく中に、どうしても遺族の方に対しての連絡が滞ってしまったり、それから、事故で傷ついている医療スタッフに対してのケアの部分が遅れてしまったりすることで事実が分からなくなってしまったりということがあると思いますので、その辺りのすごく繊細な部分についてもサポートが必要になってくると思いますので、是非、まずは骨格の部分をしっかりつくっていただくことで、その部分とその部分の間で足りない部分をこの役割の人たちが担っていくと思いますので、今、全国の医療安全管理者や医療対話推進者がどのような形で私たちがこの役割を担うのかという心配な目で多分この法案について見ていると思いますので、是非その辺についてもしっかり審議の中に取り入れていただきたいというふうに思います。
  159. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございました。  ちょっと聞きにくいことを一つ質問させていただきたいんですけれども、結局、豊田さんのこのケース、内部告発によって分かってきた、大変傷つかれたと思うんですね。今回は院内事故調査というものを基本として制度設計されておりますけれども、豊田さんのお気持ちとしては、もし最初にそういうことを言われたとしても、もう既にそこで関係性が、最初、何でこんなことになってしまったんだということで受け入れられないという思いもあるかと思うんですね。ですから、その関係性が悪い中で院内事故調査の限界性といったような、遺族から見れば信頼できる調査結果なのかどうか、そこも疑わしいところだと思います。  四番に御提案いただいておりますように、やはり第三者機関に対して直接御遺族の方々やそして病院の職員の皆様方がアクセスできるような、最初にちょっと御一報いただけるような、そういう仕組みの必要性についてもう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
  160. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) ありがとうございます。  これは、やはり病院のその関わったスタッフ、当事者の人たちが、全ての人が同じ考えで結論を出したり動くことはできないと思う中で、自分が事故を起こしてしまったんじゃないかという思いでいるにもかかわらず、それを病院としてはこれは届出をしませんという形で結論付けてしまうと、内部の職員の人たちがそれでいいのかという疑問を持たれることというのも当然出てくると思います。そういったことで、内部告発というのは、残念ながら、息子の事故から十一年たっておりますが、いまだに何年かに何度か報道でも取り上げられていますけれども、大きな事故から事件に変わっていってしまうということが起きていますので、もちろん内部告発者の方もとても苦しい思いをされて、こういうことを勇気を持ってやらなければいけないという、そういった医療現場であってはならないと思いますので、やはり、そこは何でもかんでも受け付けてほしいと言っているのではなくて、まず相談を受ける仕組みをつくっていただいて、そしてそこの第三者機関が調査が必要なのではないかというふうに精査した上で判断した場合には、やはり当該の医療機関に要請をするという仕組みを是非つくっていただきたいというふうに思っております。
  161. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  最後に後参考人に短くお願いをしたいんですけれども、大変詳細な事故調査の結果をなされるに当たって一件当たり幾らぐらいの経費が掛かるのか、ちょっとそこのところを教えていただけますでしょうか。
  162. 後信

    参考人(後信君) 医療事故の収集事業のお話でございますか、産科医療補償制度の。
  163. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 はい。
  164. 後信

    参考人(後信君) 医療事故の収集事業は、これは医療機関の報告でございまして、その中の調査も余り詳細なものではありませんので、そう経費は掛かりません。産科医療補償制度につきましては、これは試算したことはございませんけれども、やはり会議で来ていただく先生でありますとか、その間の先ほど申しました手厚いサポート体制ですとか、そういうことまで全部入れますと、現在のモデル事業で試算されております百万円程度のお金を更に超えていくものと、そのぐらい掛かるものと思います。
  165. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございました。  私からは以上で終わります。
  166. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  私たちは、この法案全体としては医療介護の大改悪だということで反対をしているんですが、この事故調査制度についてはスタンスはちょっと違って、やはりこれは必要だということで以前から主張してきた問題なんですね。だから、本当は切り離してほしいというふうに思っていますし、集中審議を是非ということも申し上げてきて、今日こういった形でこの問題についての参考人質疑ができたことは大変よかったのではないかなというふうに思っております。    〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕  その上で、まず豊田参考人にお聞きしたいのは、先ほどお話があった信頼される制度にするための五つの課題、私も大変よく分かるんですね。しかし、そういう中で、今、ある意味じゃ、長年主張してきたことが実現という道が見えてきているという中で、僕も何度も集会に参加もさせていただいたし、どんな思いで今この議論、どんな期待を、どんな思いをお持ちなのか、率直な感想というか、この間取り組んでこられた思いをちょっと聞かせていただければなと思うんですが。
  167. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) ありがとうございます。  ここまでたどり着いたということでは、本当に、本日の発言の機会をいただいたことも含めて、大変有り難いことだというふうに思っています。  その一方で、やはり形だけの調査制度になってしまいますと、いつどこでどの場面で関係性が崩れてしまうか分からない、医療機関患者との関係性が崩れてしまうか分からないような制度にもしなってしまったとしたら、それは本末転倒だというふうに思っておりまして、実際に私も医療事故調査報告書というものは受け取った経験がございますけれども、その中を見ると、しっかりとした聞き取りを行っていないので事実関係が違っていたり、結論も私たちが求める根本原因を究明するためのものではなかったりということになっておりますので、調査の本当に医学的評価の部分だけをしっかりさせるということだけでいいわけではありませんし、それから最初の、今、入口のところの窓口のお話も出てきましたけれども、その入口のところで届出が行われない。  それは、先ほどから申し上げていますように、費用が医療機関負担できないから調査を行うことができない、届出をすることができないというところから、そこで階段を踏み外してしまうということにもなると思いますし、本当にどこの過程で何が起きてしまうか分からないというような調査制度でしたらつくってもらわない方がよかったということになってしまいますので、これは本当にそう簡単にできる制度ではないというふうに考えておりますことから、やはり是非集中審議お願いしたいというふうに思っております。
  168. 小池晃

    ○小池晃君 ありがとうございました。  本当に懸念とか課題とかいっぱい私もあるなと思っていて、今日お話聞いて、ちょっとこれは山本参考人の御意見をお聞きしたいと思うんですが、この仕組み自体医療機関側、しかも管理者が提起するということでスタートするという仕組みになっているわけで、やっぱり先ほどの豊田さんのケースなども、内部告発というようなこともあったわけですね。やはり遺族側からの提起、発議によって、そういう仕組みがないわけですよ。やっぱり一定の何か仕組みを、この制度とは別になるのかもしれません、この制度の中に仕組めれば一番いいとは思うんですが、そういう遺族側から発議をして解決をする、訴訟でない手段で解決していくという仕組みは、やっぱり何らかの形でできないんだろうか。  あるいは医療者の側でも、例えば東京女子医大の最近の例でいっても、内部で、それも中枢部で深刻な意見の対立があったりすることもあるわけですし、また逆のケースもいろいろあると思うんですが、そういった問題を解決していくという点で課題は何なのか、御意見をお聞かせ願えますでしょうか。
  169. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) ありがとうございます。  調査部会、検討部会の議論の中でも、委員のおっしゃるような制度が必要ではないかという意見、かなり強い意見はあったというふうに理解をしております。  ただ、先ほど申し上げましたが、基本的な考え方として、今回の制度をつくるに際しては、以前の制度とはかなり考え方を変えて、やはり医療機関の自主性、自律性、そのプロフェッションとしての責任に期待していくという考え方が基礎として置かれたということがありますので、まずは医療機関の方でそれが届出をすべき医療事故かどうかということを判断をしていただく、自律的に判断をしていただく、それを前提に院内調査の手続に入っていただくと。  ただ、そこが医療機関ごとにずれたり、あるいは本来は届け出るべきものを届け出なかったりということがあってはならないので、そこに共通の物の考え方、こういうものはやはり届けるんだということをガイドラインなり一定の共通の基準を設けていこうというスタンスで制度が組み立てられているということでございますので、今のところでは、患者側からの直接ということはややその基本的な考え方とずれがあるということなんだろうというふうに思います。  ただ、私自身はそういう仕組みがうまく機能していくということを期待していますし、現在の医療界の、自分たちのこれは責任でやっていくんだという機運みたいなものを私は非常に重視して尊重したいと思っているわけですけれども、ただ、もしこの制度がそういう意味で必ずしもワークしないような事例というものが多く出てくるというようなことがあるとすれば、委員が御指摘のようなことを、おっしゃるように、この制度の内か外かということは分かりませんけれども、考えていく必要が出てくる事態というのは、そういうのは起こってほしくないとは思いますけれども、そういうこともあり得るかなと、今のところそういうふうに思っております。
  170. 小池晃

    ○小池晃君 ありがとうございました。  私も、本当にこれはそういう意味ではガイドラインがすごく大事だと思っていて、ある意味では法律並みにというか、法律以上にかなりこれはきちっと作らないといけないものだと思うんですけど、それはちょっとなかなか議論ができないまま、やっぱり法律が先行してしまう。それは大変懸念を持っていて、やっぱりそういう点でもちょっとこれは切り離して、本当に集中的な審議をやる必要があるんじゃないかなというふうに思います。  あと、済みません、一言、後参考人に。  これ、報告書を拝見すると、諸外国の医療事故報告制度なども研究されておられるようですけれども、その点で日本が学ぶべき点というのが何かもしあれば、一言お願いできればと思います。
  171. 後信

    参考人(後信君) ありがとうございます。  こういう報告制度で、日本のように人口規模が一億人を超えていて、しかも全国の医療機関を対象にしていて、しかも報告される一例一例を見ると、麻酔の事故とか手術の事故とか、そういう実質的に非常に学ぶべきものが多く報告されているというような報告制度というのは、私は海外でいろいろお話をしても余りない、ほとんどないと。例えば、患者さん同士がけんかをしたとか転倒したとか、そういうものばかり、数ばかり報告するような仕組みになってうまくいかなかったというようなことは聞いたことはございますが、このような仕組みというのは非常に評価されておりまして、それで海外からも講演の御依頼など参っているということでございます。
  172. 小池晃

    ○小池晃君 ありがとうございました。  終わります。
  173. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  本日は本当にありがとうございました。  この法案審議されるまでには、ほかの委員からもありましたが、長い長い道のりがあったので、きっちり審議をして私たちはやっぱりそれに応えていくべきだというふうに思っています。  こういう事故調査、事故調というのは必要だというふうに社民党も私も考えているんですが、ただ、この法案がちょっと懸念事項としては、医療機関側が予測しなかったということでなければ調査が開始しないと。そうすると、医師の内心によるのか、あるいは、予測したかしないかということに医療機関側にイニシアチブがあると被害に遭った人たちは逆に不信感を持つとか、この制度設計について、山本参考人、豊田参考人、いかがでしょうか。
  174. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) 委員御指摘のとおり、その点がやはり非常に重要なポイントだというふうに思っています。  私の認識するところでは、当該事案の発生を予期しなかったものに限るというのは、もちろん医療機関側が恣意的にそれを予期したとか予期しなかったとかということを決められるという性質のものではない、ないはずであるというふうに考えています。    〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕  それは、もちろんおっしゃるように、最終的に主観で予期しなかったということなんですけれども、それは、客観的に見てもそれは予期しなかったことが当然である、あるいは予期すべきものであったという、そういうような客観的な観点からの判断というのは当然あり得べきところなので、そこが先ほど来出ていますガイドラインの中で、具体的にこういうようなものについては届出の対象になる、こういうものはならないというところを整理していく中で、そのような客観的な標準というかスタンダードみたいなものをつくっていくということが非常に重要なところであって、おっしゃるとおり、それが恣意に基づいて届け出られなかったり届け出られたりするのでは、この制度は崩壊してしまうということだろうというふうに思っております。
  175. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) ありがとうございます。  これも、私たちも、やはりこれ予期できるかできないかという部分になると、今、インフォームド・コンセントをしっかり取りましょうみたいなことでよくそういう話が、そこでしっかり取ればいいみたいなことが聞こえてくるんですけれども、患者さんに、御家族に説明する際に合併症の部分ということを説明されると思うんですけれども、例えば、手術を受けるとして、合併症がこういうことが考えられますという説明をすると思うんですが、そこに合併症あり得るということをたくさんこれから書き込んで、その中に該当しているから調査しないということになってしまうのではないかという懸念も私たちの中ではありますので、本当にまさに言われるように、どこからどこまでが予期できて、できないのかというのは、私たちも非常にそこは不安になっているところでありますので、これから本当に、規定の用紙ができて、そこにたくさん書き込んでそういう説明をするという、そういうことで片付けられてしまわないようにというふうには思っておりますので、やはりここについてもしっかり議論しなければいけないというふうに思っております。
  176. 福島みずほ

    福島みずほ君 医療機関側だけに唯一イニシアチブがあると、何か、理由にならないようなことが必要ではないかというふうに思っています。  それで、豊田参考人のお配りになられた資料で、御子息の死因に関しても、医師間だけでなく、看護師の申し送りや経過観察においても適切な引継ぎが行われず、チーム医療がなされていませんでしたという記述があります。  私も、事故が起きるのは、単に誰かの個別のミスというよりも総合的な問題だったり、例えば、ちょっと例が極端かもしれませんが、トラックやいろんなバスの事故なども、その運転手さんだけが悪いわけではなくて、過密労働や長時間労働や休憩が取れないという労働条件の問題もあるわけで、私は、事故調ができたら、個別の事案の解決、それを集積してどう防止できるかと同時に、医療全体、厚労省が嫌がるかもしれませんが、医療改革とか、もっと医師、看護師さんの待遇やいろんなことまで、制度的な提言、ここにやっぱり私たちは問題を解決しようみたいな、そういう提言に結び付くべきで、個別事案に矮小化すべきでないと思っているんですね。この点についての豊田参考人、山本参考人の御意見をお聞かせください。
  177. 豊田郁子

    参考人(豊田郁子君) ありがとうございます。  本当にまさにおっしゃるとおりで、今のしっかりとした原因究明を行っていない病院の対応ですと、私たちはむしろ個人の職員の個人責任を問いたいという思いになってしまう、そういう今のやり方なんだと思うんです。ですけれども、こうやって事故調査を行っていくと、そうではなくて、様々な場面でいろんなことが起きていて、その中でいい治療をしてくれているところがあったり、いい取組をされているところがあったりという、その事実も知ることができていて、全体的な体制の問題にも気付くことができますので、むしろ何もしないで、ただ、これはうちは悪くありませんということだけだと、もう個人、あなたがやったんでしょうという思いに私たちもなってしまいますので、そういった意味でしっかりとした調査をしていくということがすごく大事だというふうに思っています。  そして、そのことによって、どこを改善していったらいいのか、再発防止をしていったらいいのかということが分かってくると、それこそスタッフの人材不足もあるかもしれないし、この体制でこれをやるのは無謀だよということにもつながっていくと思いますので、様々な医療改善につながっていくと思いますので、私たちとしては、そこも全て含めて、医療全体の改善を願って、この調査制度がより良いものになっていってほしいというふうに願っています。
  178. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) 私も豊田参考人と全く同じでございまして、ここでいう原因究明、再発防止というのはやはり事故の真の原因を究明することであり、そうでなければ再発の防止というのはできないわけで、表面的な個人の、医療従事者個人の責任にまさに矮小化するということでは真の再発防止というのはできないだろうというふうに思っていますので、そういう意味では、医療体制の在り方も含めた原因の究明というのがここでは求められているのだろうというふうに認識しております。
  179. 福島みずほ

    福島みずほ君 医療事故はむしろ刑事事件に親しまないと私は思っておりますが、かつて富士見産婦人科病院やいろんな事件もあったと。そうすると、この事故調と民事事件、刑事事件との仕分、整理をどうお考えなのか。つまり、捜査機関がカルテを押収する場合がある、あるいは民事でカルテを差し押さえる場合がある、そういうことや、この事故調と民事、刑事の裁判、手続との関係の整理について、山本参考人、どうお考えでしょうか。
  180. 山本和彦

    参考人(山本和彦君) ありがとうございます。  今回のこの医療事故調査の仕組みは、御承知のように、訴訟事件というか、刑事とは切り離した形でつくられたということですので、例えば消費者事故の事故調査のような行政が関与する仕組みではございませんので、刑事の捜査との仕分というか調整というのはなかなか難しいという部分があるのだろうというふうには思います。  ただ、私の認識するところでは、やはり医療の事故の過失があったかどうかというのは、警察にしろ検察にしろ、その判断は非常に難しい専門的なところがあるというふうに思いますので、この調査が、院内調査も含め、第三者調査も含め、充実したものとして、実効的なものとしてワークしていくということになれば、それを覆すような無理な捜査といいますか、そういうようなものはやっぱり警察、検察も控えていくのであろうというふうに個人的には期待をしておりまして、そういう意味では、やはりこの調査国民に信頼されるようなものとして機能していくということが刑事との関係においても私は重要なことかなというふうに思っております。
  181. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございます。
  182. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 以上で医療事故調査制度についての参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  183. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  184. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 次に、介護保険について、三名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、大分県杵築市長永松悟君、公益社団法人日介護福祉士会会長石橋真二君及び公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事勝田登志子君でございます。  この際、参考人方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方でございますが、まず、参考人の皆様からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人質疑者共に発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず永松参考人お願いいたします。永松参考人
  185. 永松悟

    参考人(永松悟君) 大分県の杵築市長の永松悟と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  参考人として意見を陳述する機会をいただきましたことにつきまして、石井みどり委員長を始め、委員各位に心からお礼を申し上げます。  本日は、介護予防・日常生活支援総合事業について、杵築市が取り組むようになった経緯等についてからまず御説明を申し上げたいと思います。  大分県の杵築市でございますが、人口が三万一千人、それから六十五歳以上の高齢者人口が一万人少しと、つまり三万人の人口に対して六十五歳以上の高齢者が一万人いる、つまり三三・三%、三分の一が高齢者であると、そういった市でございまして、農林水産業、これが、第一次産業が基幹産業ということになります。あと、城下町ですので観光の方にも力を入れています。大分県の国東半島の南の方に位置する市でございます。  まず、今回、介護保険法の関係でお話をさせていただきますが、杵築市の要介護認定率、六十五歳以上に占めます介護保険を適用されている方の認定率ですけれども、今から八年前、平成十八年の三月末は二四・八%と、四人に一人ということで非常に高くて、当時、全国平均が一六・七%、私どもの大分県の平均が一九・三%ということで、それに比較しても突出して高うございました。このような状況の中で介護保険を運営していけば、制度を安定的に運営するというその取組自体が非常に困難なものになるなということで、苦慮していたところでございます。  そうした中、平成の二十三年、今から三年前ですけれども、埼玉県に和光市という市がございますけれども、今から三年前ですけれども、大分県が平成二十三年当時、先ほど二四・八%と介護認定率を申しましたけれども、平成二十三年当時でも、下がりはしましたけれども、二一・六%ございました。そのときに、今申しました埼玉県の和光市は一〇・一%ということで、やはりこういう和光市さんでの取組について非常に関心を持っていたわけでございます。  そして、大分県庁から杵築市に対しても和光市に先進地視察に行かないかということで、県庁の職員とそれから私ども杵築市の職員、それからあと二つの市、合計三つの市と県庁で和光市をお訪ねいたしました。お世話型の介護ではなくて自立支援型の、これは介護保険法にも書いておりますけれども、やはり本来の自立支援型をやられていると。  そして、県庁、杵築市を含む三市で二十名ほどで視察に行ったんですけれども、そこでやはり三市の市の職員が一番びっくりしましたのは、まだ三年前なんですけれども、市役所の職員自体が、介護認定を受けるとだんだん重くなるという常識でおりました。ところが、和光市の場合が、要支援一、二、軽い方ですけれども、その半数に及ぶ方々が自立に向かっていると。これは非常に市の職員にとってはショックでした。  そして、和光市の地域ケア会議等で、出席している方にお話を、ある市の職員が聞きました。どうしてこういうふうにごく当たり前のように自立支援ができるんですかねというお話をしたところ、どうして当たり前にできないんですかという答えが返ってきました。そしてさらに、要支援者を改善できない、又は悪化させることは利用者に申し訳なくて、私たち職員にとっては恥ずかしいことですと、そういうお話をいただきました。  三市の職員同士が訪問を終えまして、大分県の職員と三市の職員が話合いをしました。その中で気が付いたことは、介護保険料の増加とか、そういうことを目の前にして、自立支援につながっていなかった。やはり一番のネックは保険者である自分たちだなと、市の方にあるんだと。やはり全ては保険者である市に原因があるということでした。  そして、ケアプランを市の職員もきちんと見るようにはしているけれども、やはり見るといっても穴だらけのケアプランだったと気付いたと。そして、ケアマネ等にその都度指導を行っているけれども、反発もあるけれども、やはり自立に向けての方向性には間違いないというふうに感じたということで、要は、介護保険介護予防の取組、自立を支援することで、やはりいろんな職種が地域ケア会議でお話合いをするようになります。  杵築の場合、今現在、週一回のケア会議を開いております。多職種、多くの職種で会議を持つことによっていろんな高齢者を取り巻く状況が見えてまいります。そして、見えてきたこと自体で、例えば管理栄養士であるとか作業療法士であるとか歯科衛生士であるとか、そういった多職種の人がほかの専門家のおっしゃることが少しずつ分かるようになる。つまり、地域全体で一人の高齢者に対しての見る目が養われてくるということで、これは究極、地域づくりにつながるものだというふうに実感をいたしております。  そういうことで、あれから二年半ですけれども、私どもも、杵築市の場合も本当は、和光市に行って、あそこは都会だから人材も財源も豊かだからできて、うちなんかのような田舎の方ではできないなというふうに最初は少し諦めもあったんですけれども、ただ、実際、地域ケア会議のやり方等を県の指導で、埼玉県から和光市の方が直接指導しに来ていただいたりということで地域ケア会議を一生懸命することによりまして、介護保険を卒業する高齢者が現れてきました。地域ケア会議にかけた二百件中、現在では六十四件が改善をしました。そしてまた、そのうち六十四件中二十八件、一四%になりますけれども、介護保険を卒業していく人たちがこの杵築市でも誕生するようになりました。  そういうことで、やはりこの方法については、地域ケア会議、多職種による地域ケア会議を週一回こつこつ開いていくことで地域の中の高齢者の状態が多くの多職種に理解が及ぶようになるということで、非常にそれが成果として自立につながってきたということで自信を深めているところでございます。  ただ、新たな課題が出てまいりました。それは、せっかく元気になった高齢者が引き続き介護予防に努める、そのためには受皿が必要になります。そういうことで、厚生労働省の方から、今、市町村の判断で任意に実施することのできます介護予防・日常生活支援総合事業、これを一昨年の十月から実施し、そういう卒業した方もその受皿の中できっちり、また引きこもらずに元気なままで継続して地域生活が営めるようになっております。  そういうことで、杵築市がこういう介護予防に取組を始めましたのは、埼玉県の和光市に実際行って、そして市としての介護の方のやはり保険者ということの責任を自覚したというのが一番大きな取っかかりだというふうに思っております。そして、そのとおり実施をしてきたらやはり同じように自立につながる例が出てきたということで、非常に職員の士気も上がってきたということでございます。  配付資料の説明でございますけれども、これは、通所介護及び訪問介護総合事業で対応するために、要支援者の状態像及びサービスをそれぞれ二つに大別しております。  一つは、リハビリテーションを中心に心身機能や生活機能向上を図るためのサービスでございます。この対象者は、資料中央の通所型元気アップ事業、それと訪問型生活機能アップ事業、これを利用しております。この事業は、既存の保険給付で実施しているものと同様のサービスが受けられるようにしております。事業に要する費用や利用者負担もほぼ現行制度と同様に単価を設定しております。  それから、薄いブルーの方ですけれども、このグループは、心身機能には余り問題はないものの閉じこもりがちで認知症の進行が心配される方や、高齢に伴い負担の大きな日常生活、例えばごみ出しであるとか冬場の石油ストーブへの給油であるとか、それから、田舎です、ちょっと離れているところへ買物に行くにも支障がございます。そういった何らかの支障が、必要な方は、資料中央下の通所型予防サービス、訪問型生活支援サービスを利用しております。こちらの事業は、特に専門的な知識を有する者がサービスを提供する必要性は低いことから、事業に要する費用については低めの単価設定、おおむね六割程度の単価設定をしております。  そして、こういった介護予防ボランティアも必要になってきますので、今現在五十人ほど育成し、二十数名が実際介護予防ボランティアとして杵築市内で活躍をしていただいております。また、そのほかにも、介護予防の運動教室であるとか認知症の予防教室、これはMCIの状況を改善するといった意味で予防教室、それから高齢者の交流サロンなど、これは社協が中心になってやっておりますけれども、市内全域での普及をいたしております。  このような取組の効果といたしまして、要介護認定率、一番最初に杵築市の場合を申しましたけれども、大分県よりもかなり高かったんですけれども、今年の三月末現在では一九・五%と、県の平均が一九・六%ですので、県平均を下回るようになりました。そして、平成二十四年三月末と、二年前の三月末と比較をしまして、要支援者が約百五十名少なくなっております。要介護認定者全体では平成十八年当時と比較すると四百五十人少ないと。そして、介護予防の給付自体も約三千万円ほど減額できる見込みになっております。この三千万円は地域包括支援センターの管理栄養士であるとか、それから歯科衛生士であるとか、そういった雇用とかに、ケア会議の充実につなげてより更に予防効果が出るようにということで、そういったところに使えるようにしております。  これからもそういった取組はするんですけれども、何より職員、多職種にとって一番うれしいのは、畑に出られるようになった、諦めていた旅行もできるようになったという喜びの声を聞くことが一番モチベーションが上がっていると、そういう状況でございます。  あと、介護保険の制度全般につきましては、杵築の場合は既に高齢者数のピークを今迎えております。これから徐々に減少に向かっていくと思われます。ただ、少子化に伴いまして人口減少が甚だしいんですけれども、地域の支え合いの機能が低下してきております。やはりこれから人口減少の中で地縁、地域の縁ですね、地縁をベースに、行政、市の職員であるとか社会福祉協議会、社会福祉法人、NPO、医療法人、そういった人たちがやはり相互の連携を深めてだんだん疎になっていく人間関係を密にしていくと。  やはり、そういう市民に関わる公的な立場にいる、先ほど申しました行政、社協、それから社会福祉法人、医療法人、NPO、こういったところが密な関係、人間関係を取り戻さないと、これから先ますます田舎の方は難しくなるなということで、この地域ケア会議をてこにしながら、一人一人の地域で生活する高齢者を多面的に見ながら、週一回のケア会議を通じながら、三か月後、六か月後の望ましい実態に、理想像に合わせながら、協力しながら、こういった介護保険制度をより充実したものにしていく、それができるという自信を今深めているところでございます。  いずれにいたしましても、国がモデル事業で今やっております介護予防・日常生活支援総合事業につきましては、市町村の工夫次第でいろいろオプションというか、NPOを巻き込んだりボランティアを巻き込んだり、介護に関する知識であるとか意欲であるとか、それから何よりも、当人たちが、改善した当人たちが地域の中にどんどん出ていきますので、非常に啓発効果が高いです。行政が幾ら言ってもなかなか介護予防というのは進みませんが、こういう形で一人でも二人でも三人でも成功例が出ますと、非常に地域介護予防に対する取り組み方が真剣になっていくと、それを今実感しているところでございます。  以上でございます。
  186. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ありがとうございました。  次に、石橋参考人お願いいたします。石橋参考人
  187. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 御指名いただきました公益社団法人日介護福祉士会の会長の石橋真二でございます。  本日は、参議院厚生労働委員会にお呼びいただきこのような機会を与えていただきましたことに、委員長を始め委員の皆さん方には深く感謝を申し上げたいと思います。  本日は、国民介護サービスを担い、多くの介護現場で働く介護福祉士の代表といたしまして、介護福祉士及び介護を取り巻く環境につきましてお話をさせていただき、なおかつ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律整備等に関する法律案につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、介護福祉士についてでございますが、資料の方の一ページにありますように、介護福祉士の国家資格制度が創設されまして今年で二十六年が経過し、介護福祉士の登録者数も平成二十五年三月の段階で約百十八万人となっています。ドイツと並んで、介護の専門国家資格として、我が国介護福祉士は介護の現場にとって欠かせない、また中核的な人材となっています。  二〇一二年以降の新たな地域包括ケアシステムの中で、また今回の法案で目指す新たな我が国のそれぞれの地域における地域包括ケアの実現のために、看護師とともに介護福祉士は中核的な人材であり、在宅療養支援病院や診療所、開業医等の医療の支援の下で地域におけるより良い介護の体制の実現に努めます。  そして、介護をめぐるニーズも、高度化、専門化、また多様性といった大きな変化があります。認知症高齢者の増加に伴い非薬物療法による認知症ケアが求められており、それを担える介護人材が必要となってきています。  さらに、地域で高齢者が最期まで暮らすことができるためには、在宅限界を高め、単純な排せつ、入浴、食事の介護だけではなく、医療的な知識をある程度有し、介護のスキルや関連知識、応用力を持った介護人材が裾野の広い介護スタッフの中で中核的人材として求められています。それにより、幅広い地域介護力をより効果的に活用できると考えます。  人間の尊厳にふさわしい介護が求められている現在、本人の力を引き出し、自立に向けた介護が重要であり、介護保険制度の安定的発展のために、漫然とした介護ではなく、効率的、効果的、機能に着目したケアが求められます。また、適切なケアと人材の活用の面から中高年の人材が介護の世界に活用されなければならないし、そのことで利用者も安心が得られると考えます。  介護の現場におきましては、法人の経営理念などから、せっかく介護福祉士の資格を取っても早期に退職する者が増えています。このため、早急に介護職の労働環境の整備、キャリアパスの構築など、介護現場で働く者に対する社会的評価の向上への取組が行われなければ日本介護の明日はありません。  そのため、さきの社会福祉士及び介護福祉士法の改正の際、附帯決議を受けまして、また、昨年八月六日の社会保障改革国民会議報告で示されました介護人材確保のためのキャリアパスの形成の必要性との指摘を踏まえ、認定介護福祉士制度の取組を行っているところでございます。  その際、人材確保は、量の確保視点のみならず、質的確保視点の双方から量と質の好循環を生み出すための環境整備を進めていくことが重要であり、このことは、是非国を挙げて全力で取り組まれるよう要望いたします。  なお、日本介護福祉士会につきましては、提出資料の三ページに記載しておりますので、御参照いただければというふうに思います。  次に、現在審議されております法案につきまして、幾つか具体的な意見を述べさせていただきたいと思います。資料につきましては六ページになります。  まず、介護福祉士の資格取得方法の見直しの延期等についてでございます。  介護人材の確保が困難な状況を踏まえ、介護福祉士の資格取得に係る実務者研修の義務付け及び国家試験の義務付けの施行時期を延期するとともに、介護人材の確保のための方策についての検討を行うこととするとされています。  介護保険法等で示されているように、尊厳を守り、自立支援の介護を行うためには、高い倫理、十分なコミュニケーション能力、個別に応じた介護が実現できることなどが必要であり、そのためには中核的介護職員に高い教育と専門性が必要です。これにより、利用者像の変化や利用者のニーズへの対応、何よりも介護保険の効率化につながると考えます。  介護福祉士になろうとする全ての者が一定の教育課程を経て介護福祉士国家試験を受験し、資格を得るという資格取得方法の一元化により、介護福祉士の質が担保されるとともに、国民に対してのサービス向上につながるものです。また、介護福祉士の社会的評価が向上し、介護福祉士が魅力ある職業として確立され、介護の人材確保に大きく貢献するものと考えています。  七、八ページになりますけれども、この介護福祉士の資格取得方法におきまして実務者ルートの実務者研修の義務付けでございますが、実務者研修は現場の負担感が大きいとの見方があるかと思います。しかし、実務者研修は、介護職に対して、実務経験では習得できない知識、技術を体系的に獲得するためのまたとない機会であり、介護福祉士として質の担保に不可欠な要素です。また、この研修を受講することで実技試験が免除され、学科試験合格の近道ともなり、受講生にとって大きなメリットがある研修であると思います。今後は、更に一層研修の受けやすい環境を教育側も施設側も取り組むように切に求めます。  また、先ほど述べましたが、介護人材の確保考えるのであれば、介護福祉士としてのキャリアパスを確立して、介護という職業が魅力あるものとする必要があります。そこで、日本介護福祉士会といたしましては、キャリアパスの確立について次の四点の積極的な取組を提言しております。九ページになります。  まず第一に、認定介護福祉士です。これは介護福祉士の資格取得後のキャリアパスの形成や勉強する意欲に応え、また仕事をしながら学ぶ意欲を促進することにより、資質の更なる向上と長く働き続ける意欲を持たせるような仕組みとなります。  次に、専門的な知識、技術を研修しキャリアアップが図られるよう、職員に対する研修条件の整備です。施設や事業者、法人が取り組むことを明確化、義務化すべきではないでしょうか。そもそも、人的資源への投資は法人として必須と考えています。  あと二つは、実務者研修の円滑な実施と事業者又は管理者のマネジメント能力の向上のための対策などの推進があると考えています。  この中で、認定介護福祉士は、二〇〇七年の衆議院、参議院の厚生労働委員会附帯決議におきまして、「社会的援助のニーズが増大していることにかんがみ、重度の認知症や障害を持つ者等への対応、サービス管理等の分野において、より専門的対応ができる人材を育成するため、専門社会福祉士及び専門介護福祉士の仕組みについて、早急に検討を行うこと。」と明記されました。それを受けて、今後の介護人材養成の在り方に関する検討会報告書におきまして、介護福祉士資格取得後のステップアップの仕組みをつくっていくことが必要であり、その検討は、関係団体や学識経験者の参画を求めて、介護福祉士の職能団体が主役となり行うことが望まれるとされ、昨年度まで当会が中心となって検討を重ねてまいりました。  十ページにありますように、認定介護福祉士は、介護を提供する者としての知識、技能を身に付ける道程であり、その人の能力、可能性等を獲得する仕組みです。職務遂行能力をチェックするキャリア段位とは異なるものです。認定介護福祉士ができることで資格取得後の展望が持てるようになり、介護福祉士が継続的に研さんをするモチベーションが向上していくと考えています。  次に、十一ページになります。予防給付の見直しと地域支援事業充実に関してでございます。  予防給付のうち、訪問介護、通所介護につきましては、市町村が地域の実情に応じた取組ができる地域支援事業へと移行するとされています。生活援助サービスは利用者の自立した生活を支える必要なサービスであり、今後、在宅での認知症高齢者や独居高齢者が増加することを想定すればますます重要になってくることから、地域支援事業に移行してもサービスに支障がないような配慮が必要です。  また、地域支援事業のサービスの提供主体も、既存の介護事業者によるサービスに加えて、NPO、民間企業、ボランティアなど地域の多様な主体を活用して高齢者を支援することを目指しています。ここにおいても、提供されるサービスの質についての格差が利用者の不利益につながることも想定されます。そのためにも、地域における資源を十分に活用するためにも、それらの主体に対して介護サービスの質を担保するための助言や指導ができる専門家を配置するなどが必要であると考えています。  また、地域支援事業充実したものとするためには、地域包括支援センター機能の拡充と人員体制の充実が重要になると考えます。地域包括支援センターが取り組む事業は年々増加し、果たす役割は膨大なものになると考えられます。したがいまして、地域の基点となる地域包括支援センターの機能の充実はもとより、確保が困難とされている専門職の人員体制の充実を図るとともに、生活支援サービスの充実視点から介護福祉士の配置が必要と考えます。  以上、議員の皆さん方には、今申し上げましたことにつき御理解いただきまして、国民の信頼を得ることができるような介護保険制度にしていただくよう、よろしくお願い申し上げます。  なお、参考資料としまして、当会のリーフレットを一枚、それから外国人労働者に対する受入れについてということで本会でまとめたものを添付させていただいておりますので、また後で御参照いただければというふうに思います。  御清聴ありがとうございました。
  188. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ありがとうございました。  次に、勝田参考人お願いいたします。勝田参考人
  189. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 認知症の人と家族の会の勝田です。  このような機会を得ましたことを感謝します。  家族介護から社会介護へと声を上げ続けて三十五年、私たちの願いがようやく実現したと喜んだのもつかの間、介護保険は、創設以来十四年余り、見直しのたびに私たちの願いから離れていきました。医療介護総合法案は、当事者の思いとは真逆であり、認知症五か年計画として国際的にも国家戦略と位置付けたオレンジプランとの整合性もありません。  私たちは、やむにやまれぬ思いで、家族の会設立三十五年の歴史の中で初めて、安心できる介護保険制度を求めて署名活動に取り組みました。僅か二か月余りの期間に八万七千筆を超える署名が集まりました。会員は一万一千人ですから、その思いの強さを感じます。  手渡した原老健局長は、この署名に詰まった気持ちを重く受け止めるとしながらも、しかし、私たちは、経済的な問題ではなく、多様な主体の多様なサービスを提供することが適切だと思っていると述べられました。厚生労働大臣も、今回の目的は経済的な抑制ではないとおっしゃいますが、本当にそうなのでしょうか。  制度を維持するためという名目ですが、経済的抑制でないのなら、私たちに理解できるように当事者の分かる言葉でお答えください。不安の中で私たちは毎日二十四時間の介護を続けています。当事者団体として、介護保険を利用する立場から介護保険に大きな期待を持つからこそ、今回の後退は認めるわけにはいかないのです。  税と社会保障一体改革が提案され、消費税率アップが提案されたとき、私たちはそれで従来どおりのサービスが受けられるならという思いであえて反対の立場を取りませんでした。しかし、消費税率アップが決まった途端、今度は後退の内容が提案されました。  増税の一方で、負担増給付抑制は道理にも合わないと、昨年六月の総会アピールを決めました。同じく十一月の支部代表者会議では、安心を保障する介護保険社会保障制度を目指して行動しようと宣言し、反対の声を上げ、社会保障審議介護保険部会で制度後退に反対しました。  一方、昨年十一月より、市町村議会に向けて、今回の要支援外しについて国に対して意見書を上げるようにとの働きかけも初めて取り組みました。一千百七十七の市町村議会に要請を行い、家族の会単独では三十七の市町村が意見書を採択しました。  一昨日、六月七、八日と、私たちは第三十五回総会を若葉の香る京都で行いました。今お配りした、八万七千の署名は八百六十二万人の願いを代弁した、認知症の人の介護利用を保障せよの総会アピールを会員一致で採択しました。  今、私たち当事者団体は、認知症の人四百六十二万人、軽度認知障害の人四百万人の本人とそれを支える介護家族、そして介護従事者の多くの人たちがこの国会論議を見詰めています。  私たちの署名項目に従って、私たちの思いを伝えます。  第一は、要支援の人の介護保険外しをやめ、引き続き介護保険給付の対象とすることです。  認知症の本人、介護家族にとって一番つらい時期についてアンケートを取りました。認知症と分かって一番つらいのは一年から二年目です。認知症についての基本的な知識もなく、どのように対応すればよいのか分からなくて、家族は不安です。その思いはそのまま本人に伝わり、不安であるがゆえの行動が起きます。同じことを何回も繰り返し、怒ったり叱ったりします。そうすると本人は混乱し、認知症が進みます。この時期こそ、今、地域支援事業で対応するとしている人たちです。認知症介護の大変さは要介護度とは比例しません。この時期、善意であったとしてもボランティアでは対応できません。国が示しているオレンジプランでも初期の対応の大切さをうたっています。今回の提案との整合性はどこにあるのでしょうか。  介護保険部会でも、何回も、初期こそ専門的なケアが必要であり、重度化させないと主張してきました。経済的に見ても重度化させない介護こそ求められています。現在、要支援一、二で二つのサービスを利用している人は百二十万人になりますが、二〇一二年度の給付費は二千四百九十五億円で、給付総額の三・三%とささやかなものです。効率的なサービス提供ではないでしょうか。在宅介護を支える大切なサービスです。地域支援事業に移すことは、介護サービスを利用する受給権の侵害です。地域支援事業のガイドラインも示さないまま法案を通そうというのはいかがなものでしょうか。  相談窓口では、基本チェックリストでのサービス利用を進めるとの方向も示されています。必ず要介護認定を受けるようお勧めください。それでなければ介護給付が受けられません。要支援一、二を介護給付から外す今回の法改正には反対します。  次に、利用料の二割負担への引上げには反対です。  六月五日の参議院厚生労働委員会での質疑に驚きました。利用料の二割負担の論拠である負担増の対象者は年六十万円の余裕がある、このデータに誤りがあったとのことです。なぜなら、同じデータが介護保険部会でも示されていたからです。その折にも私は、現在介護中の方の費用を示しながら、年間六十万円では対応できないこと、少なくとも在宅介護では月十万円以上が必要だと述べました。  厚生労働大臣は、その根拠を撤回すると答弁されているようですが、介護保険部会には全く間違いのデータを示されていたのですね。それにしても、一挙に負担は倍になるという乱暴な提案はいかがなものでしょうか。例えば、食料品の値段が一挙に倍になれば国民は黙ってはいません。二百八十万という根拠が間違いであれば、二割負担の根拠そのものが崩れてしまいます。厚生労働大臣はどのようにお考えでしょうか。  会員のNさんから相談を受けました。要介護四の奥さんを介護中です。長年、夫婦でコンビニを経営しながら五人の子供を育ててこられました。数年前、奥さんがアルツハイマー病と認定され、コンビニを畳み、在宅介護をされています。ところが、昨年、介護中の御主人に大腸がんが見付かり、緊急手術をされましたが、その間に奥さんは二週間施設を利用しましたが、一気に重度化してしまいました。退院後、何とか在宅を継続したいと励んでおられましたが、夜中に暴れる症状などが出て、精神科に緊急入院せざるを得ませんでした。従来にも増して状態が悪化してしまいました。  Nさんは、毎日病院へ通院しながら、それでも何とか在宅で介護したいと頑張っておられます。歩けなくなってしまった奥さんは、現在の住居はエレベーターのない三階、引っ越すことになりました。家賃は倍近くになってしまいます。以前のコンビニをほかの人に貸したところ、国民年金と合わせて二百八十万を少しオーバーすることが分かりました。もし介護サービス料が二倍になったら、予定している通所介護などのサービスを減らさなければならない、受けたい介護も受けられない、どうすればいいのかと頭を抱えておられます。  再度厚生労働大臣にお聞きしたいのですが、二割負担、二百八十万の線引きの根拠は何でしょうか。根拠となったデータに誤りがあるのなら、当然この金額はおかしくなります。それでもこの金額は変えないのでしょうか。世代内の公平のためといいますが、二百八十万円は余りにも低過ぎます。お金が心配で必要なサービスが受けられないことは憲法が保障する生存権の侵害であり、介護保険法で言う高齢者の尊厳を守ることに反するのではないでしょうか。日本のどこかで介護心中や介護殺人が起きています。認知症があっても笑顔で暮らしたいという私たちのささやかな願いさえ踏みにじるものです。強い怒りを覚えます。  次に、特別養護老人ホームの入所を要介護三以上に限定することには反対です。  現在五十二万の待機者がいます。それは施設の絶対数が足りない、整備がされていないということです。要介護一、二の待機者は十七万八千人です。介護保険は四十歳以上の人が強制加入する社会保険です。サービスは国が責任を持って整備すべきです。  在宅へ在宅へといいますが、独り暮らしの人や老老世帯が増加し、今後もますます増えます。入れない人たちはサービス付き高齢者住宅へといいますが、これも看板に偽りありです。サービスは見守りと相談のみです。多くの人は入居費用が高くて利用できません。介護保険創設の折、介護保険は自己選択し、自己決定できることでした。この理念はどこに行ったのでしょうか。  一方、地域包括ケアの目玉である二十四時間対応の訪問介護・看護もいまだ全国で利用者は七千人に達していません。サービス付き高齢者住宅に入居している人たちも、いつの間にか二十四時間対応の利用者としてカウントされています。これはすり替えではないでしょうか。  本来の地域包括ケアは、住み慣れた地域で住み続けることを保障するものであったはずです。空き地に雨後のタケノコのように建設されるサービス付き高齢者住宅は、住み慣れた地域とは縁がありません。これが地域包括ケアの目指す姿なのでしょうか。在宅介護で頑張っている多くの家族はいざとなったら特養があるという安心感がありましたが、これでは遠い幻のようなものではないでしょうか。  次に、施設利用者の食費、部屋代の補助、補足給付を維持してほしいということです。  これも問題点が多くあります。預貯金が一千万以上ある場合や、本人が非課税であっても配偶者が課税対象であれば補足給付の対象から外すというものです。本来、介護保険はそれぞれの収入保険料を払っています。利用料の場合、配偶者の収入を勘案するのは制度的にも整合性がありません。正直に申告しなければペナルティーがあるぞという脅しも待っています。  確認したいのですが、介護保険部会の折、預貯金ばかりでなく、同世代のほとんどの人が同額の借入れがありました。事務方の回答では、その場合は借入れと相殺すると言われましたが、今回の改定案にその旨の記載がありますでしょうか。  この間、認知症の行方不明のことや、詐欺商法、そして私たちにとって驚きのJR事故の判決については見解を配付させていただきました。これでは安心して在宅介護を続けることはできません。いずれを取ってみても、今後、急激に増える認知症の人と介護家族を取り巻く状況は厳しさを増しています。追い打ちを掛けるような今回の法案には賛成できません。  家族介護から社会介護へと訴え続けて二十年、ようやく介護保険が創設されたときの喜びは改正のたびに失望に変わり、今回はまた在宅介護への逆行の流れです。私たちの切実な願いを良識の府と言われる参議院の皆さんに聞いていただきたいのです。  今国会では法人税率の引下げが決まりました。一方で、戦後の日本の復興の中心となり、平和を取り戻した高齢者が路頭に迷うような今回の法案が提案されています。お金がないのではなく、税金の使い方ではないでしょうか。平和でなければ介護はできません。認知症という病気があっても安心して笑顔で暮らせるためにも、今回の法案の撤回を求めます。  以上です。
  190. 石井みどり

    委員長石井みどり君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  191. 滝沢求

    ○滝沢求君 自由民主党の滝沢求でございます。  参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中お越しいただき、そして貴重な御意見をいただき、誠にありがとうございます。  時間の関係もございまして、全員の参考人の皆さん方にお聞きできないことをお許しいただきたいと思います。  それでは、質問いたします。  まず、地域包括ケアシステム整備について永松参考人にお伺いしたいと思います。  医療介護、住まい、予防、生活支援サービスが身近な地域で包括的に確保される体制、地域包括ケアシステム整備のため、地域支援事業充実のために様々な施策の取組が進められることとなっております。例えば、私の地元青森県では、地域包括ケアシステムの推進方策として、保健師の活用といった人材面や地域連携パスというツールに着目した取組で推進してきた経緯もございます。  そこで伺うのですが、地域包括ケアシステムを実現させていくためのポイントについて、また医療介護の連携といった視点からのポイントについて併せて伺いたいと思います。よろしくお願いします。
  192. 永松悟

    参考人(永松悟君) お答えいたします。  地域包括ケアシステムでございますけれども、先ほど説明を申し上げましたけれども、多職種による頻繁なケア会議、これがやはり肝になると思います。  一人の高齢者のケースにつきまして、それぞれの専門職からその専門性についていろんな角度、例えば理学療法士さんであるとか作業療法士さんであるとか、そういった方が高齢者の今の機能について御説明したり、リハビリの状況について説明があります。ところが、管理栄養士さんから言わせると、栄養を十分に取っていないのに訓練が少し厳しいんじゃなかろうかとか、そういった、その方は訓練をするということでやっているんですけれども、栄養状態まではこれはなかなか情報が入っていかない、例えば理学療法士さん、作業療法士さんの方にですね。  ところが、地域ケア会議をすることによって、その高齢者が置かれている日々の状況がそこに集まっている十数名の方が共有ができるということで、例えば一人の方が、ヘルパーさんが訪問するにしても、あのケア会議の中で、きちんと食事を取っているか、どういった食事を取っているか、そしてどういった訓練をされているのかしていないのか、足が遠のいているのではなかろうかとか、そういった、ほかの職種さんから言われたことを、自分が今度そこに訪問したときにやはりおじいちゃんなりおばあちゃんとお話ができて、そしてまた地域ケア会議に報告がなされるということで、非常に一人一人に目が行き届くようになる。そういったノウハウが、一人のケースを検討することによってそれぞれの専門職がレベルアップをしていくと。市町村の職員とかというのはなかなか増やすわけにはいきませんけれども、その専門職一人一人がマルチになって、マルチな目を持つというものが非常に地域ケア会議にとって大切なことだろうというふうに思っております。  それから、あと医療との連携でございますけれども、これは杵築市の場合、まだ実現はしておりませんけれども、市民病院がございますので、そこで地域ケア会議を開催できるようになるといいなと。要は、お医者様が常に参加できるような体制が整うといいと。  今は週一回やっているんですけれども、平日の午前中ですので、どうしてもお医者様が参加というのは診療の状況によって厳しゅうございますので、これから先は、やはり総合診療医を目指す方、ドクターも、地域医療充実するためにも、そういう目を持つ人たちも、国民の多くは希望しておりますので、こういった地域ケア会議にそういう総合診療を目指す方、それから、そういう指導をなさるお医者様が来ていただいて、地域ケア会議がどういったものなのか、そうすると、非常にスタートラインが、ドクターにおいても、要は疾病だけを見るんじゃなくて、ほかの生活上での悩みであるとか、家族が抱える悩みであるとか、そういった治療をするに当たってもバックとなるデータが必ずそこにあるわけですから、地域の中で保健と福祉医療地域ケア会議を通してみんなが分かってくると非常にいい。急にはそこまではなかなか行かないんですけれども、少しずつ、職員というか、そこに集まった会議のメンバーが育っているというのは間違いないことです。こういった方向でいきたいというふうに思っております。  以上です。
  193. 滝沢求

    ○滝沢求君 ただいま参考人のお話を伺い、また地域支援事業など、今回の見直しの内容を考えると、私は、この地域包括支援センターの果たす役割というのはますます高まるものと考えます。  そこで伺いたいのですが、地域包括支援センターの機能強化についてどのように進めていけばよいのか、そして財政的な支援も含めて、永松参考人、そして石橋参考人に伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  194. 永松悟

    参考人(永松悟君) 地域包括支援センターの機能強化といいますと、やはりドクターの参加が今後必要になってくるなというふうに思います。そしてそのドクターが、専門医を志向されるお医者様はたくさんいらっしゃいますけれども、やはりこの地域包括支援センターの中で取り扱われる高齢者の方を中心に、認知症の方を中心に、早め早めの対応をするにはどういったリーダーシップを執っていただくのがいいかというのはドクターが一番お分かりになると思いますので、ドクターの参加、もちろん杵築の場合もお医者様については支援を受けておりますけれども、よりたくさんのお医者様に、こういう多職種が集まっている会議の中でまたいろんな御意見をいただきたいと。それが一番医療福祉と保険と介護と、それが一体的に、解決するべき課題が地域で解決できるという一番の近道だというふうに思っております。  財源につきまして、今国の方からこういう形でモデル事業で実施をしておりますけれども、非常に多くのボランティアであるとかNPOであるとか団体が、この地域ケア会議、それから支援事業に参入してくれるようになっておりますので、理解者の輪が広がってくる、地域に理解できる人たちの輪が広がってくる、実数が増えてくるというのが一番の機能強化だと、そういうふうに思っております。  以上でございます。
  195. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) やはり、これから地域支援事業の方に移行してくると、地域包括ケアセンター等の役割が非常に大きくなるというふうに考えております。  先ほど申し上げましたように、その中でも、永松参考人の方もおっしゃられておりましたけれども、それぞれのやっぱり専門職がそれぞれの専門的な視点できちんと連携を取って、地域ケア会議が適切に行われるということが特に重要になるのではないかなと思います。その中で、やはり医療介護の連携というのが非常に重要になると思います。  その場合、やはり利用者のより身近でお世話するのが介護の人たちでございますので、介護の人たちがさらに今後そういう医療的な知識というものをしっかり身に付けて、何か急変した場合については、すぐ医療関係者の方と連携が取れるようになってきたりとか、気付きの点を多くしたりとか、そのような介護職の役割も今後拡大していく。そのためには、それなりのやはり専門的な知識、技術を持った介護福祉士がきちんとそこで育っていく、地域の中でそれぞれ育っていく必要性がまずあるのではないかなというふうに考えております。  財源については、ちょっとそれぞれ市町村の事情の方で努力してもらうしかないのかなというふうに思っています。  以上です。
  196. 滝沢求

    ○滝沢求君 大変参考になりました。ありがとうございます。  これで私の質問を終わります。ありがとうございます。
  197. 小西洋之

    小西洋之君 民主党・新緑風会の小西洋之でございます。  参考人の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。私の方から、勝田参考人の方からいただきました問題意識などを中心に、予防給付のこの度の制度改革の実現可能性といった観点についていろいろと御意見をいただきたいと思います。  まず初め、永松参考人と、あと石橋参考人に伺わせていただきます。  まず、永松参考人、まさに市長、あと保険者として、今度こういう制度改正が行われるわけでございますけれども、杵築市においては、先ほど和光市の視察の中で、まさに職員の皆様の気付きでございますけれども、介護サービスを受ける市民の皆さんのまさに生活、それと尊厳のための取組でなければいけないということですけれども、そういう観点でしっかり引き続きいろんな手だてを講じてやっていけるというような、そういう見通しがあられるのかどうか。また、重ねて、今、杵築市でやられている、厚労省の今でもできる生活支援総合事業でございますけれども、平成二十四年度の例ですと、全国でまだ二十七の市町村しか取り入れていないということでございますが、これまた市長の立場から、なぜほかの自治体はこういう取組がなかなかできていないのか。和光市は都会で、杵築市、歴史もある自然豊かなお土地柄というふうに伺いましたけれども、これ、全国のどこの自治体でもこの新しい予防給付の改革の後の取組というのは果たして可能なのかどうか、見通しを伺いたいと思います。  重ねて、石橋参考人、まさにそういうサービスを提供されるお立場として、この度のこの改革、全国の全ての市町村で、特に勝田参考人の方から初期の認知症の問題ということを指摘されましたけれども、初期の認知症の方に対する適切なサービスの提供も含めて、どのようにこの実現可能性というのを御覧になっているか、全国的な視点で、それぞれよろしくお願いいたします。
  198. 永松悟

    参考人(永松悟君) 小西委員の御質問にお答えいたします。  杵築市の場合、今、国の厚生労働省の事業で実施をいたしておりますけれども、こういう形で、要支援一、二につきましてかなり部分改善を、例えば要支援二の方が要支援一になる、要支援一の方が介護保険を無事卒業されるという実数が、私も、埼玉県の和光市の事例が杵築市のような人口の少ないところ、高齢化の高いところで本当に可能なのかというのは本当に心配をしておりました。  しかし、地域ケア会議というのをしっかりリードすることによって、その会議の進め方というのがやはりポイントになると思います。  杵築の場合は、大分県の指導もありまして、和光市の方から何回も地域ケア会議を実際進めていただいたり、そして今度自分たちがやらせていただいて、そして評価をしていただくと。その中で、やはりこういったところは見方が甘かったとか、それから、本当に多職種との連携ってこういうことなのかということで、目からうろこという事例を重ねることによって、一人の高齢者にとって、必ず見放すことのなく、地域の中でできるだけ長く、生まれた家を中心にしたところで生活できるというところを、やはりリーダーが結局しっかりするというか、会議を進める人間たちが、まずリーダーがしっかりする。それから、それに応じて、週一回ずつやってくると最初はなかなか大変です。なかなか大変ですけれども、繰り返すことによってポイントがはっきり見えてくる。自立を支援するというポイントが見えてきますので、そこで非常に効果が上がる。  そして、その分が、例えば、先ほど申しましたけれども、予算的にも三千万円ほど二十三年度に比べて予防給付が少なくなっていくということで、それは、自立をしたり要支援二が一になったりということで、その分の予算をまた次に、予防を広めるために予算を使っていくと、そういういい循環ができるかなというふうに思っています。  以上でございます。
  199. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) これから本当に地域包括ケアが推進されていく中において、認知症の方も本当に増大していく、そういう状況の中において、やはりこれからはその地域包括ケアセンターの中に認知症の初期集中支援チームというのが形成されると思います。  その中で、やはり医療職それから介護福祉士等の専門職が、きちんと認知症の人たちに対して、その地域の中において、それぞれ一人一人のアセスメント、状態像をうまく確認して、どのような対応をしていったらいいのかということについて、やはり早めにそのケア会議の中で対策、方針等を決めながら、チームで認知症の人たちに対してケアをしていく。早期発見、早期治療というような対応をしっかりしていくことが必要だと思いますし、それから一般のというか、一般の住民の方たちに対して、認知症の人たちに対する接し方、介護の仕方ということについても、やはりきちんと介護の専門職が広報していくというか指導していくという、そういう役割も今後担っていくのではないかなというふうに思っております。
  200. 小西洋之

    小西洋之君 ありがとうございました。  永松参考人に重ねて伺いたいんですけれども、先ほども伺いましたように、まだ二十七の市町村しか利用できていないということですけれども、要するに、全国的にこれは実現可能なことなのかどうかについてお願いいたします。
  201. 永松悟

    参考人(永松悟君) 済みません、お答えをするのが抜けておりました。申し訳ありませんでした。  大分県でも実は、大分県内十八市町村ございます。そのうち平成二十三年の十二月に先進地視察に行ったときは、県が募集を掛けて三市が応募しました、杵築市以下三市が応募しました。その三市はもう既に始めております、この事業とかですね。やはり、あと、もう今年度、来年度という形で広がっていきますので、身近な市町村、隣の市町村とかで始められると、やはりAができてどうしてB市ができないのという、そういった話になりまして、そして杵築の場合、特に人材とか財源に恵まれたわけでもございません。そういう形で最初の地域ケア会議の持ち方、これはかなり工夫が要ると思います。ただ、それを諦めずにやはり続けていく、もう継続しかないと思います。必ず、杵築ができたんですからほかのところもできるというふうに私は思っております。
  202. 小西洋之

    小西洋之君 ありがとうございます。  最後、永松参考人と石橋参考人と、あと勝田参考人、それぞれお伺いさせていただきたいんですけれども、今、政府の方ではこの度の制度改正に伴って、今現状五%から六%で伸びている保険の費用というものを、後期高齢者数の伸びである、年三%から四%に、全体の要は振り分ける費用を縮減するというふうな前提になっているというふうに理解しております。  これは、すなわち、新しい制度の下でより予防なりが進んで、より費用を縮減できるという前提に立っているというようなことだと思うんですけれども、そうした前提を、永松参考人はそういう実感があられるかどうかということ、あと、サービスの提供者の立場として石橋参考人も全国的な視野でどうかと思われること、最後、勝田参考人は、それぞれの永松あるいは石橋参考人様のこれまでのコメントも全て含めてどういうような見解を全体としてお持ちか、お願いいたします。
  203. 永松悟

    参考人(永松悟君) お答えいたします。  介護予防は、平成十八年の介護保険法の改正のときに介護予防を打ち出しました。そして、やはりなかなか進まなかった、国も県も市町村も一生懸命介護予防の大切さをPRするんですけれども、なかなかこれが進まなかった。  ただ、これはお答えになるか分かりませんけれども、実際、地域の中で要支援二が一になり、一が、先ほども言いましたように、介護保険から卒業していく人たちが身近に出ていくと流れが変わってまいります。やはり成功例が身近にあると。要するに、骨折をして入院して寝たきりになる方も多くいらっしゃいます。ところが、その方が二か月、三か月後に畑仕事に出ているとか、それからお孫さんと買物に行っている、これは近所の人にとっては非常にショックというか、いい意味で非常にインパクトのある、どうしてそういうふうになったのと。  大分県の中で徹底的にリハビリをするところがあります。通所、デイでありますけれども、そこでどんどんどんどん良くしていきました、自立できるように。そうしたら、もう潰れそうになりました。介護度が改善するわけですから、収入が減るので、そこは潰れそうになったんですけれども、ある時点から利用者さんがすごく増えました。それは、先ほど言いましたように、近所にそういう成功というか、卒業した人がどんどん増えてきたからですね。そして、今そこは、潰れそうになったところが既にもう三つ目を経営しております。そういうことで、株式会社ですけれども、そういう意欲のある人たちが、卒業した人たちが地域の中にどんどん増えていくという流れをつくればこれは可能だというふうに考えております。  以上でございます。
  204. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 石橋参考人、時間を過ぎておりますので、お答えは簡潔に願います。
  205. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 介護予防に当たっては非常に重要なことであると思います。そのためには、やはり理学療法士とか介護福祉士とか専門的な知識、技術を持った人たちがきちんとして対応していかないと、なかなか自立支援には結び付いていかないというふうに考えている。そのためには、NPO法人とか民間事業者とか、今後様々なところが参入するおそれがありますけれども、やはりそこのところについてはきちんとチェックしていかないと、介護予防に十分つながらずに、給付の抑制にはつながらないというふうにも考えております。
  206. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 今ほどお二人のお話も聞きながら、実はこの提出されている、伸び率六%でなく後期高齢者の四%に合わせるということでは、当然今の費用よりも少なくされるということです。  先ほど、杵築市長さんが、前年度よりも三千万ぐらい浮いて、それをほかの栄養士さんとかそういうものを雇えて良い循環になったとおっしゃいましたけれども、法案の中では、前年度掛かった金額よりも、必ず翌年はその掛かった費用よりも少なく目標をするという設定がたしか入っていたはずです。  ですから、そのような循環ができるのかどうかもちょっと不思議に思いましたし、そのモデル事業でされたところどころの、その卒業されたという方々、本当に、例えば認知症の初期の方たちがそのようになれば、それは私たちはとてもうれしいと思いますけれども、なかなか難しいですし、そしてその一番最初の入口である地域包括支援センターの周知度というのは、十人おられれば三割しかない。一番最初に介護家族の人たちはどこにどう相談していったらいいのかということがなかなか分からない。そういう現状の中でどんどん悪化しているという状況があります。  確かに、杵築市のようなことが全国に広がればそれは有り難いことですし、ただ、認知症に特化した場合、それでうまく本当に改善するのかなというふうに若干思いました。  以上です。
  207. 長沢広明

    ○長沢広明君 公明党の長沢広明です。  参考人の皆様、大変お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。私の方からは何点か伺いたいと思います。  一つは、石橋参考人と永松参考人にちょっとお伺いしたいんですが、今、永松参考人の方から、地域ケア会議が非常に効果があったという話が何度もございました。地域ケア会議を今回の法案介護保険上にきちっと位置付けて、そこで多職種協働によるケアマネジメント支援を行うと、これ一つの、今回の地域におけるケアを進めていくための一つの鍵になっております。  ここの部分で、その多職種連携というのは非常に大事なポイントで、永松参考人が先ほど指摘されたとおり、管理栄養士、薬剤師、あるいは理学療法士、それから医師、看護師は当然として、ケアマネ、ヘルパー、そういう様々な方々が、特に在宅の介護をスムーズに進めていくために、それぞれの専門性を有機的に組み合わせていくということがこの地域ケア会議の非常に重要なポイントになります。  ただ、永松参考人のところは非常にうまくいってきたと、こういうお話でしたけれども、いろんなところのお話を聞くと、やっぱり職種の間の壁をまず乗り越えるのが非常に大変だと。極端な話、お医者さんにはどうしても私たち遠慮してしまいますという方がいらっしゃったり、医療の現場で使う用語と介護の現場で使う用語がまずちょっと違ったりして、コミュニケーション上非常に難しいという話もちょくちょく聞くんですね。  そういう異なる職種間の中でこの多職種協働の連携の効果が上がるようにするために、永松参考人の御経験からはどういうところが鍵になるか。先ほどリーダーシップとか、何回も積み重ねていけば回転するとかというお話がありました。地域ケア会議を回転させていくポイントとしてどのようなことが、ほかの地域に向けてこれ大事ですよというポイントがあるかということが一つと、その多職種連携を進めていく上で、もし国にこういうことを求めたい、あるいは地域ケア会議を有効にしていくために国の方にはもっとこういうことも工夫してもらいたいという、国に対して要望するようなことがあれば何かということを永松参考人にお伺いしたいということ。  それから、石橋参考人には、やっぱりその中に入っていかれる一つの専門分野の代表として、この地域ケア会議、そしてそこの多職種連携ということを進めていくために、やはり国に求めていきたいことはどういうことがあるか、この二点、お伺いをしたいと思います。
  208. 永松悟

    参考人(永松悟君) 先ほど私も申しましたけれども、一つは、やはり繰り返し議論を深めていく。それから、三か月後、六か月後と目標を会議で定めます。そのときに、三か月後どうなった、六か月後どうなった、もしうまくいかなければ、いかなかったその理由を、やはりPDCAサイクルを回していくというのは必要だと思います。  それから、うちの方はまだ十分できておりませんけれども、お医者様の参加をいただきたいなと。これは国に求めたいということにもなるんですけれども、なかなか勤務の状況で週一回の会議というのが、やはり頻繁に、地域患者さんを抱えていながら、これは薬剤師さんにも言えるんですけれども、そんなにたくさん薬局に薬剤師さんがいるわけじゃないですから、その時間は店を閉めて来ていただかなければならないと。そうすると、やはり市町村の医師会であるとか薬剤師会であるとか、そういった専門職の団体に協力をお願いしたい、介護福祉士会であるとか理学療法士会であるとか作業療法士会であるとか歯科衛生士会というのは、非常に今協力関係がよろしゅうございます。  ただ、物理的に参加が難しいドクター、それから歯科医師、薬剤師の方々の参加も、これから制度的に大きな流れができてくると、本当に地域の課題を地域で解決する、それもドクターの御意見も拝聴しながら、それをまた、先ほど用語がなかなか理解できないということですけれども、例えばうちの方に市民病院がございますので、そこで地域ケア会議をすることによって、退院した患者がまた更に悪くなってすぐ入院してきたと、これは病院側にとっても非常に問題です。そういった問題をまた地域ケア会議の中にどうぞ出していただく。その中で、それぞれが、職種が学び合うことができる。そして、医師は地域全体を、患者さんを診る、患者というか住民を診ることができると、そういうウイン・ウインの形になるんじゃなかろうかと、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  209. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 先ほども申し上げましたように、やはり介護と看護、ほかの専門職ときちんと連携していくため、私たち介護福祉士の立場で言えば、やはり医療関係の、先ほど申し上げられましたように、共通言語というのをまず理解をやっぱりしっかり高めていく必要性があるなというふうに思っています。  そのため、先ほど認定介護福祉士の話が出ましたけれども、認定介護福祉士の養成課程のプロセスにおきましては、やはりそういう他職種ときちんと、特に医療関係職種と対等に連携を取れるためにそのような知識をしっかり身に付けてきちっと指導できる、そういう人材の養成というのはこれから必要かなというふうには思っていますし、また国においても、やはりそういう位置付けですね、そういう専門的な職員、認定介護福祉士等の配置を行っていただきたいと同時に、やはり地域ケア会議が本当にそれぞれ市町村の中できちんと行われているかどうかということのやっぱりチェック体制というのもこれから必要になるのではないかなというふうに思います。
  210. 長沢広明

    ○長沢広明君 ありがとうございます。  勝田参考人にも一点だけお伺いしたいんですが、ちょっと法案から離れるんですけれども、私、この間、国会の審議の中でもちょっと申し上げたことがあるんですけれども、いわゆる認知症の方の徘回による事故ですね。私自身も昔、もう十数年前にすぐ近所でそういう経験がありまして、残念ながら、発見されるまで一年掛かったんですね。残念ながら亡くなられていたんです。いわゆる徘回してしまう認知症の方の生命、身体を守るためにどのような手だてを取ったらいいのかという、そういう課題、私たち結構直面していると思うんですね。  私が経験したのは、すぐ目の前の、県をまたいで向こうの方へ行くバスに乗ったところを目撃をされたので、その向こうの県の警察まで捜索をしてもらうようにお願いするのが非常に大変だったんですよ。その当時、私、まだ議員でもない、ある意味で言えばサラリーマンでしたので、そういうことを手を打つってなかなかできないんですね。  ですから、あらかじめそういう仕組み、本当は捜索できるような仕組みとか必要だと思いますし、人は、ある人によっては、やっぱり名前付けていても外から見ていると分からないですね。内側開ければ名前が、連絡先とか入っています。だけれども、外から見ていると分からないので、分かるように何かした方がいいのではないかと言う人もいますし、極端な話、GPSを付けてもらう、今車はほとんどカーナビ、GPS、付いていますから、もうGPS付けてもらった方がいいんじゃないかとか、GPS機能付きの何か持ってもらった方がいいんじゃないかとか、いろんなことがあるんですけれども、認知症方々と直接関わっていらっしゃる方として、こういう徘回による不慮の事故から認知症の方自身を、生命、身体を守るためにどういう工夫したらいいか、何かちょっと参考になるお考えがあれば伺いたいと思います。
  211. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 私たちも、一昨日、総会の場でも、全国から仲間が集まりまして、この徘回の問題については本当に当事者組織としてもどうすればいいかということでの今おっしゃったようないろんな工夫をしています。例えば、お名前を書いたものを、やはり余り正面に付けると個人が嫌がりますので、襟の裏に貼り付けるとか、おかえりマークというものを統一してやろうとかいろんなことをやっておりますけれども、なかなか効果がありません。  私は富山に住んでおりますけれども、例えばJRの列車に乗って大阪とかそういうところで保護されておられるんですね。結構今は広域圏でやらないと、なかなか見付けられない。それから、本当に、亡くなられた方もおられますし、みんなで捜したこともあります。例えば警察の警察犬を出してもらったこともあります。それから、近くの放送局に行って、ニュースの後に言ってもらって捜したこともあります。  私たちは当事者団体として、何よりも、やはり認知症は恥ずかしい病気ではない、誰でもなり得る病気なんだと、そして徘回になったときにすぐにSOSが出せるような、私たち自身がそういうことで、恥ずかしい病気ではないと、やはり認知症だということを公表しようよということも呼びかけています。  ですから、認知症という病気を一般の方々にも正しく理解してもらう、そういうことも並行してやらないと、SOSネットワークも、広域圏でやることも、それからGPS付けることも、いろんなことを実は私たちもやっております。と同時に、やはり認知症の人の尊厳を守る、やっぱり個人としてのその方の大切なプライバシーも守ってあげるということのこの併記をどうすればいいのか。  私たちも是非、国を挙げて、やはり六十五歳以上の六人に一人は認知症になる時代なのですから、やはり国を挙げて、この政策が介護保険の中でも位置付けられるように願っています。
  212. 長沢広明

    ○長沢広明君 ありがとうございます。  終わります。
  213. 東徹

    ○東徹君 参考人の方、本当にお忙しいところ、本日は誠にありがとうございます。  私の方からも、余り時間がありませんのでちょっと偏ってしまうかもしれませんが、お許しをいただきたいというふうに思います。  まず、石橋参考人の方からお伺いをさせていただきたいと思います。  今回、介護福祉士の資格取得方法に関する見直しの施行、延期になりましたけれども、まず一点、この点についてどのように思われているのか、お聞きしたいと思います。
  214. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 資格取得方法の一元化の先延ばしに関しましては、先ほども申し上げましたように、これからの介護人材を確保していくためには、介護福祉士、介護職員のやっぱり社会的評価を向上していくということが非常に重要だというふうに考えております。  そのためには、やはり資格取得方法の一元化により介護福祉士の質を担保して、そしてその質を担保することによって国民からの信頼を得ることができて、介護福祉士の社会的評価が得られる、それが人材確保につながるということを思っておりましたので、今回先延ばしされたことに関しましては遺憾に思っております。
  215. 東徹

    ○東徹君 やっぱり介護福祉士に対する今社会的評価というのがなかなか高まりにくいというのが非常に現実としてあると思うんですね。一方、やはりそういう人材不足というか、しっかりとそういった資格を持った質の高い方を確保していくということも非常にやっぱり大事だというふうに思っておるんですけれども。  実は私は、実務経験ルートと養成施設ルートと二つありましたけれども、非常に今回の、今回は延期になりましたけれども、改正の内容から見ると、ちょっとハードルが高いんじゃないんだろうかというふうに思うところがありまして、従来の方法ではなぜ駄目なのかというところをちょっと御意見いただければ有り難いなと思うんですけれども。
  216. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 先ほども申し上げましたように、例えば養成校の方では、これまで卒業するだけで国家試験を受けなくても資格を取れるというような仕組みであり、また、実務経験ルートについては、三年間の実務経験だけで受験資格を得て国家試験に合格すれば資格を取れるということであったんですけれども、やっぱり、ほかの医療の専門職などを見てみますと、全ての国家資格というのは一定の教育課程を体系的にしっかり学んで、その上で国家試験をきちんと受けて、そして社会的評価を得るというような仕組みになっております。  介護福祉士の場合におきましても、やはりそのような仕組みになることが重要だというふうに考えておりましたし、例えば養成校の方に今国家試験を設けても、基本的に二年課程の中でしっかりとその国家試験に合格するだけの教育をしているというふうに思っておりますので、ほぼ全員が合格できるんじゃないかというふうに思っておりますし、また実務者研修につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、働きながらしっかり学ぶような仕組みとして、主に今実務者研修を行っているところの九割が通信課程で行っております。  したがいまして、ほとんど自宅で学びながら、そしてなおかつスクーリングに関してはほぼ一週間程度ということでございますので、六か月以上でございますので、平均すると月一日ぐらい通学すればそれで済むということでありますし、また受講生も、どちらにしてもその千八百五十時間の本当のカリキュラムをきちんと学んで、それでまた国家試験に合格するために勉強しなきゃいけませんので、それだったら、どっちみちであったら、実務者研修みたいな、体系的にきちんと学んで、なおかつ実技試験の免除にもなるし、国家試験の合格への近道にもなるということであれば、受講生にとってはやはりそちらの方が有り難いかなと思います。  ただ、おっしゃるように、ハードルが高い部分は、そういう時間的な問題よりも費用の問題だと思うんですね。だから費用の問題については、やはり今介護福祉士の昼間課程では修学資金というものがありますけれども、それを通信課程の方たちもしっかり活用していくとか、その幅を広げていけば、受講生本人の負担も少なくなるのではないかなというふうに思っております。  以上です。
  217. 東徹

    ○東徹君 おっしゃるとおり、やっぱり費用の問題というのも物すごくあると思いますし、私は、国家試験は、実務経験でも養成施設の方でも両方やっぱり受けるべきだというふうに思うんですね。ただ、実務経験の方が四百五十時間ですね、これはやっぱりちょっと費用的にも時間的にもなかなかきついんじゃないのかなというふうに思ったりはいたします。  今、介護福祉士であっても介護福祉士でなくても、できる業務というのは同じですよね、現場で。特別養護老人ホームにしろ老健施設にしろ、資格があろうがなかろうが、やれる業務というのは同じなんですよね。  そこはやっぱり何か介護福祉士の資格を持っていれば、ちょっと差別化を図っていくというところの部分というのは非常に大事でないのかなというふうに思っていまして、たんの吸引等は今度の介護福祉士の資格の中では入ってくるんだろうと思うんですけれども、やはり例えば、摘便であったりとか、それからストマの交換であったりとか、そしてまた、どうなんでしょう、胃瘻の何か介助的なところであったりとか、またインシュリンであったりとか、まあインシュリンなんかは恐らく自分でやっている人が認知症になってくると自分でできなくなってきたり忘れたりとかする方もいますから、それのお手伝いとか、そういった部分というのはやはり介護福祉士の資格を持っている方はできるとか、何かそういう業務独占的なところ、やっぱり必要じゃないのかなというふうに思っていまして、前にプログラム法のときに、公聴会があったときに公述人の方からもそのような意見がありまして、それについてはどのようにお考えでしょうか。
  218. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 確かに、介護業務に関しましては、掃除、洗濯から入浴、食事の介護等、それからまた、今介護ニーズに求められるものというのは、先ほど出ていましたように、介護予防からターミナル、非常に幅広い内容があります。  その中で、やはり専門的な知識、技術を持っていない方というのは、掃除、洗濯とか周辺的な介護業務はきちんとできるかも分かりませんけれども、介護福祉士の場合については、少なくとも介護福祉士の定義規定の中に、利用者さんの心身の状況に応じた介護ができるというふうに規定されております。  その心身の状況に応じた介護ができるということは、一人一人の利用者さんに対してそれぞれ個別のアセスメントがしっかりできて、そのアセスメントの中に日常生活の課題を見付けて、課題を解決するための目標を設定して、その目標を達成するための介護内容を考えて、それを実行して評価するという、その一連のプロセスの中で今より良くすると。利用者さんの状態像を少しでも良くする、自立に向けた介護を行う、これができるのは基本的には介護福祉士。残念ながら、そのことについてはまだ一般的に十分周知されていないというのが少し残念なところではありますけれども。  だから、そういう中核的なやっぱり介護福祉士等の介護職員をきちんと現場の中で配置していかないと、介護現場の中で行われる介護というのは、今後どんどんどんどんやっぱり要介護者が増えていく中で、逆に要介護度がだんだん悪くなっていってしまう可能性があります。そこで、やはりきちんと中核的な介護予防とか介護度を改善できるような介護福祉士がいることによって介護保険給付の抑制もある程度可能になるのではないかなと思っていますけれども、ただそれが十分伝わっていないというふうに考えています。そこのところを本当は評価していただきたいと考えています。  ただ、その医療的ケアも一部、今度法律改正で、延期になりましたけれども、一応できるとなっていますけれども、我々はあくまで生活支援の専門職であって、医療的ケアがいろいろあれこれできるから、それで業務独占になって評価を高めていきたいのではなくて、生活支援の専門職としての評価の部分をもう少し高めていただきたいというふうに思っています。
  219. 東徹

    ○東徹君 これからは、介護人材だけではなくて、やっぱり一人で生活されている方がおられると思いますので、医療的なケアというのもやっぱり非常に増えてくる場面も出てくるんだろうなというふうに思っておりますし、先ほどの実務経験のことについてお話しさせていただきますと、やっぱり何といっても介護というのは、利用者から学び、職員から学び、現場から学ぶというのが一番大事だというように思っておりまして、実務経験というのは非常にもうちょっと尊重されてもいいんじゃないのかなというふうに思いましたので、発言させていただきました。  以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  220. 山口和之

    ○山口和之君 みんなの党の山口和之でございます。  石橋参考人にまずお聞きしたいんですけれども、先ほど、通所介護と訪問介護地域支援事業の方に、介護保険サービスから外れることについてはそんなに強くおっしゃっていなかったんですけれども、御意見はないんでしょうか。
  221. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 通所介護それから訪問介護が要支援一、二の方から地域支援事業に移行していくことに関しては、基本的に、通所介護の役割というか訪問介護の役割って非常にやっぱり大切だと思います。だから、本来であればそのサービスを継続、維持すべきだというふうには考えてはいます。だから、地域支援事業に仮に移行した場合についても、きちんとそれが継続できるような仕組みというのが本来必要かなというふうには思っています。
  222. 山口和之

    ○山口和之君 つまり、しっかりとしたニーズ、プロに関わるニーズが把握できていれば、それに対してそこにちゃんとサービスがあてがわれるようなことをしなければどんどん悪循環、悪化していきますよと、そういうことでよろしいんでしょうか。
  223. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) はい、そのとおりだと思います。
  224. 山口和之

    ○山口和之君 次に、勝田参考人にお聞きしたいんですけれども、そもそも認知症と要介護認定は正しく合っているんでしょうか。
  225. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 私どもは、現在の要介護認定そのものはやはり廃止すべきという考え方を持っております。これは、二〇〇七年の私たちの介護保険に対する提言という中でやっております。なぜならば、特に認知症の初期の方たちは、その状態に応じてやはりきちっとサービスが付与されるべきだというふうに思っています。そういう点では、今の要介護認定は認知症には正しく対応していないと思っています。
  226. 山口和之

    ○山口和之君 つまり、そのニーズに対してサービスが追い付いていない、あるいは、改善するためにも、安心するためにも、地域で暮らすためにも、今の区分けあるいは判定ではちょっと合わないんじゃないかということでしょうか。
  227. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 確かにおっしゃるとおりです。私たちは、今言っている地域ケア会議のような形で、本人や家族も含めた、専門職も含めて、その時期にその方に適切なサービス、こういうことが大切だよということをみんなで決めてサービスを提供する、そういう体系に持っていきたいというふうに思っています。  特に、今の要介護認定の調査項目、チェックがありますけれども、特に在宅の認知症を抱える人たちにとっては、認知症の人にはきちっと対応していません。例えば、電話が掛けられるかとか火が使えるかという項目については、これは以前あったのでなくなりましたけれども、例えば、電話が掛けられるからいいのではないのです。いろいろ掛け過ぎるから困るのです。火が使えて、それはいいのかというと、そうではなくて、ガスを付けっ放しにするから駄目なのです。だから、そういう点では、きちっと認知症の人の症状には合っていません。
  228. 山口和之

    ○山口和之君 ありがとうございます。  ただ、プライドとプライバシーをしっかり守っていくためには、地域と一体的にその方あるいは家族を支援していくという在り方というのは、これは山口としては賛成なんですね。それで、そういう意味では、地域づくりというのがまずベースにあって、それで必要なサービスに対してプロが支援していくと。今まではどうしても、プロがやって、それから地域という考え方でしたので、必要なサービス、必要な町づくりをした上で、理解していただいて、プロでなければ対応できないところはしっかりプロがやっていくと、こういう社会につくっていかなきゃいけないんだと思います。まだ若干時間あると思いますので、認知症については、はっきり言って、ケアもばらばらで、確立した支援体制もできていないところですから、困らないような体制をちゃんと、多分皆さん聞いていますからね、聞いてくれているから大丈夫だとは思うんですけれども、支援、しっかりつくっていきたいなとは思います。  石橋参考人にまたお聞きしたいんですけれども、介護保険が始まっていろんなサービスは出てきたんですけれども、本当のことを言えば、十五年もたって、本来今度は質に入るべきなんですね。質をどうやって高めるかということをやっていかないでいろんな事業を矢継ぎ早に出しても、これは確保できていかないだろうと。ましてや、介護福祉士、自分は理学療法士なんですけど、理学療法士もそうなんですけれども、雇われの身の中でなかなかやりたいことができていかないような世の中ですので、本当に、介護保険が始まって質を担保していく、プロの仕事としてちゃんとやっていくという、これが極めて大事だと思うんですけど、もう一度決意をお伺いしたいんですけれども。
  229. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 私たちは、当然……
  230. 山口和之

    ○山口和之君 あっ、ごめんなさい、石橋参考人
  231. 石井みどり

    委員長石井みどり君) じゃ、石橋参考人
  232. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) おっしゃるとおり、やっぱり介護サービスの質を高めるということは、基本的にはやはり人材の質を高めるということだというふうに思っています。介護サービスというのは人が人に対して行うサービスですので、やはり提供するサービスの知識、技術が未熟であれば、当然ながら未熟なサービスにつながっていきます。やはりそれなりの知識、技術、高い倫理を持った人たちがきちんとサービスを提供していけば、どのような形態のサービスでもある程度質は担保できるんじゃないかなというふうに思っております。  そのためには、やはり介護福祉士の質を高めるということと、その介護福祉士の人たちが更に意欲を持って介護の現場に定着できるためのキャリアアップの仕組みということとか待遇面の向上とか社会的評価の向上というのがやはり今後の大きな鍵ではないかなというふうに改めて思っております。
  233. 山口和之

    ○山口和之君 済みませんでした。石橋参考人でよかったんです、申し訳ございません。  四百五十時間の研修をするということなんですが、果たして四百五十時間で満足なんでしょうか。
  234. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 本来であれば、やはり養成課程と同じ千八百時間を学ぶべきだというふうに思います。  ただ、そういいながらも、やっぱり現場で働いている方たちは、ある程度現場で学べること、実習とか実習指導とか生活支援技術とか、その辺りは現場で学ぶことは現場で学ぶ。ただ、現場で十分学び切れない、例えば先ほど申し上げておりますような認知症の人たちに対する知識とか対応とか、医学的な知識とかあるいは理学療法的な知識とか、そういうことなどについて、やはり現場で十分学べないことについてはそういう実務者研修等でしっかり学んで補っていただいて、そして質を高めていただきたいというふうに考えております。
  235. 山口和之

    ○山口和之君 試験をしないことで介護職が増えてくると考えている方もいらっしゃるようですけれども、何が必要かといえば、質の高い介護サービスが提供できることはいろんな広がりを見せてくると思うし、多職種の連携においても重要だと自分は思います。  永松参考人にお伺いしたいんですが、首長さんが本気になっているところと、あるいは職員の中でもそういう燃えている方がいらっしゃるところは、何かこういうことができていくんですね。大体一生懸命やっているところは、首長さん、市長さんとか町長さんが本気になってやっているところなんですよ。これを広げないことには話にならなくて、アリバイ事業で終わったのではもう話にならないと思うんですね。そういう意味では、首長さんを動かすポイントみたいなのを教えていただければと思います。
  236. 永松悟

    参考人(永松悟君) 私の場合は、やはり和光市に行った職員が、住民に謝らなくてはならないという言葉が非常に印象的でした。  やはり保険者として自分のきちんとした仕事をすると。やはり自立に向けて、何でもかんでもお世話型にしてしまうと、介護の現場、医療の現場でもそうかもしれませんけど、やはり医療事故であるとか、事故というのは医療ミスでなくて、例えば転倒して骨折を病院の中でさせてしまったとか、施設の中で死亡事故が起きたとか、そういうことになってくると非常に心配なので、やはり安全にということで車椅子にすぐ乗せたりとか、それとかベッドで余り動かなくても済むようにしてしまう。  でも、結果として、それが住民の、国民の皆さん方が希望する、つまり介護を受けたい、長期に入院したいという人は一人もいらっしゃらないわけですから、一日も早くその状態から、自立を支援しながらという、百八十度変えていくというのを職員から聞きましたし、私も県内の先ほど事例で出しましたけれども、どんどん自立をしていく人たちを自分の目で見ております。そしてお話も聞いております。  やはり市町村長にとってその現場を見るというのは、特に命や健康に関わることですから、それは是非お勧めしたいと思います。そんなに時間の掛かることではありませんので、それは私がそういう意味で啓発を受けましたので、それは全市町村が、市町村長さんも当然やっておられるところも多いと思うんですけれども、もしそういうところがなければ、どこでもそれは成功事例は出るはずですから、そのお話を聞く、要するに主役は国民ですので、その方が望むようにいかに支援の方を考えるか。つまり、地域で共有する、それからプロの専門家の方とお話、先ほど認知症のお話も出ましたけれども、やはりそういう専門家の方と制度が適合……
  237. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 時間を過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
  238. 永松悟

    参考人(永松悟君) しなければいけないということであれば、やはり制度の方を少しずつ変えていくとか改良していくとか、それは必要だと思います。  以上です。
  239. 山口和之

    ○山口和之君 ありがとうございました。  当事者の方もプロの方も地域の方も、もう総合力で日本地域を支えていくんだということでいきたいなと思います。ありがとうございました。
  240. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  参考人の皆さん、ありがとうございます。  勝田参考人にお伺いしますが、参考人介護保険部会の部会に出席をされて、繰り返し二割負担所得のラインがこれはおかしいということを提起されて、当時厚生労働省は、これは負担可能なんだと、六十万円手元に残るんだと説明をしておりました。  それが、この参議院の委員会での私の指摘で、六十万円手元に余裕があるのは撤回すると、これは何とかやりくりしていただくという意味だったと。今日の午前中は、大臣反省していると、こう言いました。しかし、反省で済む話ではないわけであって、これはやはり介護保険部会に私は差し戻すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  241. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 私もこれを聞いたときには本当に驚きと怒りと両方でした。私たちが介護保険部会で真摯に論議をしているその資料の出し方、それが間違っていたと、そして厚生労働大臣が間違いであったと認めたのであれば、当然、これは差し戻すべきだというふうに私は思っています。
  242. 小池晃

    ○小池晃君 重ねてお聞きしますが、厚生労働省は、これは説明不足だったんだと、言葉が足りなかったんだというふうに言うんですが、私は全く違うことを説明していたんだと思うんですが、会議に参加されていた参考人の受け止めはいかがでしょうか。
  243. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) おっしゃるとおりです。そういう点では、ほかの実は出される資料もいろいろと、これでは私たち委員が間違った判断をすると思われる資料が随分ありました。ですから、例えば高齢者は金持ちだという資料を出されるときでも、例えばゼロの方と一億の方で真ん中が五千万だから中央値とか平均値という出され方をしたので、そういうのは困るというふうに言いました。  ただ、今御指摘のあった部分についても、これは意図的だったのではないかと今は思っております。
  244. 小池晃

    ○小池晃君 私もその可能性は大いにあるというふうに思っていますので、ちょっと今日のお話も含めて、大臣にも総理にもしっかり伝えていきたいというふうに思いますし、これは撤回しかないというふうに思います。  それから、石橋参考人にお伺いしたいんですが、参考人は極めて紳士的にお話をされましたけれども、私が参考人の言いたいことを私なりに言うと、二〇〇七年に国会で一元化を決めたくせに、五年も準備期間あったのにそれをやらずに、それを更に三年延ばした上に今度また一年延ばすと、何をやっているんだというふうに多分おっしゃりたいんではないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  245. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) おっしゃるとおりです。
  246. 小池晃

    ○小池晃君 私は、介護福祉士の資質の向上、専門性を向上するということでやったわけであって、介護の仕事はやっぱり本当に高度な知的労働だと思うんですよ。それをやっぱりきちっとした基準で国家試験でやるというのは当然のことだと思っていますし、ハードルという話があったけど、六百時間と最初言っていたんですよね、それを四百五十時間に下げたわけですからね。  実は、これ一年間でこれからいろいろ検討すると言っているわけで、私、大変心配しているのは、更にハードル下げるんじゃないかと。厚生労働省は外国人労働者とは関係ないとは言うんだけれども、でも、一方でそういうことがざわざわざわざわやっているわけで、私は、これは全体として介護労働者の地位の向上という方向から見てまさに逆行でしかないというふうに思うんですね。その点では、この一年間でハードルをこれ以上下げるようなことはやっぱりやるべきでないと思うんですが、参考人のお考えはどうでしょうか。
  247. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 基本的には小池議員がおっしゃるとおりだというふうに思っています。  やはり二〇〇七年の法律改正のときには資格取得方法一元化をして質を担保して、そして社会的評価を得ようということが皆さんたちの合意だったはずだというふうに思っております。それが最低限の縛り、縛りというか、質の担保に必要だというふうに思っております。  今現在、介護福祉士の資格を取られている方の、ちょっとほかの話になるかも分かりませんけど、やはり半数近くは潜在介護福祉士といって、せっかく資格を取っても介護の現場に来ていないという非常にもったいない話です。その人たちの多くの方たちは、一部要件がきちんと満たされれば介護の現場に帰ってきたいというふうに思っています。それは、やはり介護福祉士としての社会的評価を得たい、それなりの待遇面とか労働環境の整備等もありますけれども、そういうような条件面の整備というのがやはり最優先するのではないかなというふうに思っています。
  248. 小池晃

    ○小池晃君 私は、こういうことも盛り込まれているんですよね、今回の法案ね。これはやっぱり、余りにももうごちゃごちゃにこういういろんな問題あることが盛り込まれているということだとこれも思います。  それから、勝田参考人、もう一度、要支援を保険給付から外す問題について聞きたいんですが、私、質問で取り上げたのは、やはり要支援二と要介護一というのは非常にもうさじ加減なんだと。これタイムスタディーでは全く同じなわけで、日常生活自立度ということで分けるという仕組みですよね。大体、そもそも日常生活自立度で分けること自体がおかしいんではないかなと。要するに、認知症というのはある意味では進行性の疾患なわけですから、これはもうとにかく、認知症と診断された段階ですべからく要介護というふうにすべきであって、しかもここで保険給付か否かという、何というか全く違う世界に入ってしまう。今までは違ったわけですけれども、今回はもう保険かどうかということで分けてしまうわけで、これはやっぱり、ちょっと認知症の御家族からしてもこれは本当に耐え難いやり方ではないかなと思うんですが、この点いかがですか。
  249. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) このことに関しましては、やはり要介護認定で調査項目が少なくなったときの厚生労働省は、私たちに、自立度二a以上だったら必ず要介護一と、一にすると約束しました。ところが、先日の出された資料を見ましても、要支援一、二で自立度二a以上でも、約一五%の方が介護一になっていないんですね。そういう点では、今おっしゃるとおり、要支援二と介護度一はほとんど同じ状況ですし、私たちとすれば、本当にそういう点ではおっしゃるとおり、認知症できちっと認定を受ければ当然要介護一以上にすべきだというふうに今後はしっかり主張もしていきたいというふうに思っています。
  250. 小池晃

    ○小池晃君 今おっしゃったとおりで、やっぱりそういうふうになっているということ自体が要介護一と要支援二というのはいかに微妙なラインなのかということを示すことでもあると思っておりますので、やっぱり線の引き方としてもおかしい。そもそも保険給付から外すということ自体が、保険料払っているのに給付から外すことに大問題だと思っていますけど、ちょっと線の引き方に、二割負担の線の引き方も大問題ですけれども、この線の引き方もやはり大問題ではないかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  251. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) やはり四十歳以上の強制加入保険ですから、払っておりながら、やはり受給権に関わることだというふうには思いますし、特にやはり認知症にとっては、要支援になるか要介護になるかによって本当に分かれ目になって、その方が要介護一になれば一定度きちっと専門的なケアが受けられるのに、要支援になったために受けられなくて一気に悪くなるという事例はたくさんありますし、最近、例えば要介護二の方が要支援に落とされたりするというのがあちこちから報告されています。  そういう点での、やはり要介護認定そのもののおかしさということは、私たちはやはりこれは、その人に合った適切なサービスをきちっと提供するべきだというふうには思っています。
  252. 小池晃

    ○小池晃君 ありがとうございました。  鉄道事故のあの本当にひどい判決が出て、やっぱりああいう判決が出ちゃうと本当にもう座敷牢に入れるしかないじゃないかという、本当に怒りの声が上がっています。やっぱり、認知症の人たちに対してこの国は本当に余りに冷た過ぎるし、施策がなさ過ぎるし、それを更に制度上区切っていってしまうというようなこういうやり方については、もう本当に私は認められないというふうに思っていますので、今日のお話も受けて、もうこれは廃案しかないということを与党の皆さんにもしっかり分かっていただきたいなというふうに思います。  終わります。
  253. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  本日は、現場で頑張っていらっしゃる三人の参考人の皆さん、貴重な御意見を本当にありがとうございます。  私も、介護保険制度は、とても、まあ私自身も個人的に助かっていますし、義理の母と、母と、父と。これを、要支援の一、二の通所サービスとそれから訪問サービスを介護保険給付から外すというのは介護保険を壊すんじゃないかと非常に強く反対をしています。  いろいろ問題はありますが、地域格差が起きて、結局、保険金詐欺じゃないけれども、四十歳から強制徴収され続け、実際本当に必要に、要支援一になって、通所サービス、訪問サービス欲しいなと思ったときに、その地域で十分受けられないということがあるんではないかと。  今日は、永松市長さんとか、和光市とか頑張っているところはあるんですが、実はこれはごく一部にしかすぎないんではないかと思っておりまして、石橋参考人も、資料の中で、地域におけるサービスの格差が生まれ、一方、介護保険の理念から外れるサービスとなることへの懸念。生活援助サービスは、今後、在宅での認知症高齢者や独居高齢者が増加することを想定すればますます重要になってくると書いていらっしゃる。  是非、石橋参考人、それから勝田参考人に、この要支援一、二を介護の通所と訪問サービスを外すことに対しての、とりわけこれが地域格差を生むんじゃないか、地域包括支援でやるといっても、という点についての御意見をお二人、お聞かせください。
  254. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) その点は本当に福島議員がおっしゃるとおりで、これまで要支援一、二の方が通所介護、訪問介護を受けられて生活が継続できている人たちが、一気に外されたおかげで地域によってはそのサービスが受けられなくなってしまうと、そういう懸念が大いにあります。やっぱり生活支援、また介護予防をしっかり行うためには、既存のサービスがきちんと受けられるようなやっぱり仕組みというのが必要だというふうに思っています。それが地域ごとでもうお任せということであれば、本当に同じ介護保険料を払っている人たちが地域、住むところによって全く公平、公正、中立なサービスが受けられないというようなことはやっぱり反対だというふうに考えております。そのために、ある程度、解決策の一つかどうか分かりませんが、やっぱりケアマネジメントをしっかりと行う必要性があるのではないかなというふうに思っています。
  255. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) おっしゃるように、私たちがやはりとても懸念しています。そういう点では、部会の中でも随分論議がありました。  それから、私たちは今回初めて各市町村を回りました。私は富山ですけれども、十五市町村のうち五つが採択してくれました。採択してくれたところは、要支援外しは困ると言ったのはやはり小さな市町村です。そういう点では、人材も含めてなかなか準備できない、それから財源的にも難しいというようなことが出ておりました。  先ほどの杵築市長さんのようなところは本当にまれなのではないかということと、モデル事業的な分野もあるのではないか。そのように広がることは私たちも、やはりどこにあっても、どこに住んでいても一律に受けられるのでなければ社会保険の体を成さないのではないかというふうに思っています。
  256. 福島みずほ

    福島みずほ君 その要支援一、二を介護保険給付から外して地域包括事業の中に入れて、厚生労働省はNPOやボランティアの活用、民間企業の活用ということを言っています。もちろん、NGOやNPOやボランティアは大事ですし、その活用は大事だと思うのですが、私は、訪問サービスや通所サービスでもやっぱりプロの方が見てもらって、様子はどうかとか、そしてきちっとやっぱりプロ意識で見てもらうことですごく支援にもなるし、変化を見ることもできるし、また、より向上させることもできるというふうに思っています。  その意味で、NPOやボランティアなど活用するということについての御意見をお聞かせ願いたい。石橋参考人、勝田参考人、いかがでしょうか。とりわけ石橋参考人には、私は、NPOやボランティアでやれるというふうになってしまうと、介護福祉士や介護労働者の労働条件どう上げるかという議論を国会でしているのに、更に労働条件が悪くなる可能性もあるのではないかととても心配をしています。お二人、いかがでしょうか。
  257. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) おっしゃるとおりだというふうに思っています。やはりこの地域支援事業の中で、今後、NPO法人とか民間企業などが参入してくると、当然ながら、やはりコストを下げるために人件費も下げ、質の悪いサービスが提供されるのか、それはひいてはやはり利用者のためにとっては非常に良くないことでありますし、介護保険の改悪につながってくると思います。その懸念は大いにあると思います。やはりそのためには、きちんと何らかの形で、いろんな企業が参入してきても専門職をきちんと配置するなど、ケアマネジメントの仕組みをしっかりとするということなどが今後必要かというふうに考えております。
  258. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) おっしゃるとおりで、私たちもボランティアとかNPOを否定するものではありません。だけれども、やはり代替にはならない。私たちも、全国で認知症カフェとか、いろいろ家族の会も取り組んでおります。私たちも、週一回ですけれども、認知症の御本人が主体的にそういうものをやって居場所づくりをやっています。そういう要支援の人たちが確かに来ていらっしゃいます。だけれども、デイサービスとか、そういう専門職が関わる部門とは全然違います。代替にはなりません。  そういう点では、やはりNPOとかそういうものが、例えば人材不足を補うもの、そして今回の提案の中に、例えば通所介護が十人以下のところが相当今後は報酬が下げられるおそれがあり、そして大きなところのサテライトにならないとやっていけないという、あくまでこれを潰して、その人たちが受皿になるようなものも準備されているのではないかというふうに心配をしております。  そういう点では、やはり専門職による専門的なケアが大切でありますし、そして先ほども言ったように、財政的にも本当に三・三%しか使っていない、それをなぜ継続できないのかというふうに思っています。
  259. 福島みずほ

    福島みずほ君 おっしゃるとおりで、介護保険給付の有り難さって要支援のところから始まると思っていて、この部分をまず切るというか、地域移管すると、ほとんど何か有り難みがないというふうにも思います。  ところで、本日、石橋参考人が、外国人労働者についてのペーパーを出していただいていて、その点についての見解を教えてください。
  260. 石橋真二

    参考人(石橋真二君) 最近、介護人材不足の懸念ということから、安易な形で外国人の方を介護分野に入れようと、特に技能実習生の仕組みを介護分野に導入しようということなどをお聞きしております。そのことに対して私たちは、日本介護福祉士会としては、その参考資料の方にありますように、基本的には、先ほどから申し上げておりますように、介護保険制度の質を担保していくためにはやはり高い専門性を持った人材の養成が必要だということ、そしてなおかつ、介護というのは対人援助サービスですから、やはり日本語におけるコミュニケーション技術をしっかり持っておく必要性が大切だというふうに考えております。  そしてなおかつ、日本でのやはり介護人材というのは、潜在的介護福祉士、またホームヘルパーの資格を取って働いていない方は八十万人と、結構多いです。そういう方たちをしっかりと戻す仕組みというか、それをまず十分行い、日本での介護専門職としての評価がしっかりなされ、若い人たちが介護職を目指すと、そういうような仕組みの上に、さらにまた、外国人の方が日本介護を学びたいという、そういうようなことになれば一番よいのではないかなというふうに考えているところでございます。
  261. 福島みずほ

    福島みずほ君 勝田参考人にお聞きをいたします。  本日は、二割負担のことと要支援一、二の通所サービスと訪問サービスの地域移管と、それから特養老人ホームにおける原則として要介護三以上にすることについて発言をしていただきました。  要介護一、二も例外的に入れるというけれども、しかし、待機者リストの中にはそもそも申請ができなくなるわけで、そうだとすると、確かに特養老人ホームがあるというふうに思っていたら、それがもう駄目というふうになってしまうということや、それから、じゃ、特養老人ホームに今要介護一、二の人も実際に入っているわけですし、ニーズはあると思っているんですね。それを地域で安価にというか、単に訪問のような形でやってしまうんじゃないかという、ここの切捨ても行われるんじゃないかと心配しているんですが、いかがでしょうか。
  262. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 勝田参考人、時間を過ぎておりますので、お答えは簡潔に願います。
  263. 勝田登志子

    参考人勝田登志子君) 確かに、介護保険部会の折も、要介護一、二で特養に今入っておられる方、例えば奈良県ですと二六%ぐらいで、一番最下位が実は私の住んでいる富山でしたけれども、そういう点では、例えばやはり要介護度と比例しないと言ったのは、例えば要介護一、二の場合、動ける認知症で、やはり一番逆に大変なんですね。例えば錯乱状態になるとか、いろいろあるんですけれども、そういうときに、逆に特養でないと、やはり在宅介護ではどうしても続けられないというケースもたくさんあります。だから、そこで要介護一、二だから入れないというのは、やはりこれは状態を見ていないというふうに思います。
  264. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございます。
  265. 石井みどり

    委員長石井みどり君) 以上で介護保険についての参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会