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参考人(
松村敏弘君) お配りしておりますパワーポイントの
資料に関して、二十二ページのところまでのことを
お話しさせていただきます。その後、
資料が少し付いておりますが、これは、ひょっとしてその後
質問が来たときに役に立つかなと思って付けているだけですので、基本的には二十二ページまでで。それから、最初の二ページ目と三ページ目のところにまとめとして要旨が書いてありますので、ここだけ読んでいただければ言いたいこと全て分かるように書いておるつもりです。
それでは、お開きいただいて、四ページのところを御覧ください。
御案内のとおり、
電力システム改革に関しては三段階で
改革をしていくということになっておりまして、最初に広域機関をつくり、その後、今回の改正で家庭用も含めた小売の全面
自由化というのを行い、最後の段階で発送電の法的な
分離によってネットワークの中立性というのを
確保するというスケジュールになっております。
今日は、第二段階の法改正の話ですので、ここを中心に
お話しさせていただきます。
それぞれの三つの段階で、
安定供給をいかに
確保するのか、それから競争基盤をいかに
整備するのか、それから中立性をいかに
確保していくのかということが
議論されていくことになりまして、結果として、今回にもそういう
議論というのは多く入っております。
イコールフッティングというのは非常に重要だと、非対称
規制というのに関して懸念というのをいろんな場面で聞くわけですが、イコールフッティングを口実として、総括原価と
地域独占と公益事業特権で守られてきたときに築き上げた競争優位というのを安直に引き継いで実質的な公平性が保たれないという事態にならないように、詳細のところをきちんと見ていく必要があると思います。具体的には、直近ではインバランス料金というので、形式的には公平だが、実質的には今の一般
電気事業者だけに極めて有利だという制度というのにしないようにということをこれから奮闘していかなければいけないと思っております。
さて、おめくりください。
自由化の意義というのはいろいろあると思いますが、基本的には消費者に選択肢を与え、
事業者にも選択肢を与え、その結果としていろんなアイデアの人が市場に入ってくることによって市場を活性化し、
電力価格を下げるというだけでなく、安定性にも資するということがあり、最終的には
電力システム改革とガスシステム
改革を合わせて総合
エネルギー企業あるいは総合公益企業同士の競争というのによって効率的な市場をつくっていくという道を開いていくことになるんだと思います。
そもそも、私自身は、望ましい政策というのに関しては、まず、国の基本的な価値、環境価値だとか安全保障の価値だとかという、こういう類いの価値を固定価格買取り制度や税、補助金、そのほかの様々な政策手段を使って補正するということを前提とした上で、これらの制度設計を前提とした上で、あとは消費者が選択されたものが生き残るという形によって
エネルギーの
ベストミックスが形作られるというのが理想だと思っております。
おめくりください。
電力システム改革においては、国の基本的な政策というのが非常に重要だというのは間違いないことですが、これらに関しては、地球環境の問題、安全保障の問題、資源外交の問題、
技術革新、こういうようなことが明らかになり、これに対して柔軟に国策というのが変わっていったとしても、どのように国策が変わっていったとしても柔軟に効率的に対応できるようなそういうシステムをつくるというのが
電力システム改革だと思っていますので、国の様々な基本的な政策が決まらないうちは
自由化すべきでないというような
議論は建設的な
議論ではないと思っております。
基本的には消費者が支持する
ベストミックスというのが実現すればいいと思っており、消費者は多様な
考え方を持っているということですから、どの
考え方というのが一番主流なのかというのは、
自由化をすることによってかなり明らかになるのではないかと思っております。
おめくりください。
仮に、アンケート調査で、あるいは世論調査で再生可能
エネルギー、支持しますかと言われれば、
国民の大半が仮に支持すると言ったとしても、そのために掛かるコストというのがあったときに、そのコストを負担してでもちゃんと普及させたいと思っているのか、あるいはコストは誰かが負担してくれるんだったらまあ進んでほしいと思っているのかというのは、それだけではよく分からない。よく分からないけれども、
自由化した上で、再生可能
エネルギーというのを主力とした
事業者から
電気を購入するというのは、自らその
電気代を払って支えるという言わば責任ある
意思表明というのになるはずだと思います。
あるいは
事業者にとっても、再生可能
エネルギーはもう化石燃料よりもコストが低いんだ、言うだけはただだから幾らでも言えるかもしれませんが、
自由化をするということによってちゃんと参入する、あるいはそれを支持する人が出資するという形でサポートするということは、まさにこの再生可能
エネルギーというのが十分競争力があるということの責任ある
意思表示ということになると思います。このような機会というのを
自由化によって
是非与えていただきたいと考えております。
おめくりください。
十一ページですが、しかし、現状ではそもそも家庭用の市場は
自由化されていないし、それから
自由化された大口の市場でも競争メカニズムはほとんど働いていないという、こういう状況で、しかもネットワークを中心として、公正で透明な競争環境というのが必ずしも
整備されていないという状況下では、自分がこの電源が
国民のために一番役に立つんだと信じていたとしても、それを表明する手段というのが与えられていないという状況になっています。このような手段というのを
是非自由化によって与えていただきたいと考えております。
ただし、これは
自由化するだけでは駄目だというふうにも考えていまして、現実の大口市場でもこの貧弱な競争基盤の下で競争がほとんど起こっていないということを前提とすると、もし家庭用まで
自由化して実質的な競争が行われなければ、一般
電気事業者に値上げをする自由だけを与えて、消費者に実質的な選択の自由を与えないという最悪の結果にもなりかねないということになります。
もちろん、このような最悪の結果というのを起こさないために最大限の努力をして制度設計をしていくわけで、そのためには、まずシステムの抜本的な
改革と競争基盤の
整備ということをして、ちゃんと競争が起きるようにするということが最も重要な点ですが、それだけではなくて、競争メカニズムが働くことが
確認されるまで、
一定の
期間、消費者保護のために
一定の
規制が必要だと考えています。これは非対称
規制というよりは、
規制なき独占になる可能性は極めて高いは言い過ぎかもしれませんが、
一定の可能性があるという
事業者に対してやる
規制ということですから、ある
意味で非対称にならざるを得ないというわけで、非対称
規制だから駄目だということを言えばこの手の消費者保護は駄目だということになってしまうということで、私はそれは建設的な
議論だとは到底思えません。
おめくりください。
規制なき独占を回避するためにはネットワークの中立化や競争基盤の
整備ということが最も重要な点で、この点については最大限努力してまいりますが、一方で、暫定的に
規制料金を残すということが
議論されています。この
規制料金というのは、一般
電気事業者にこの約款で売らなければいけないという形で
規制するのではなく、少なくともこの約款で
供給してくださいと言われたら消費者にはこれで
供給するという、選択肢の
一つとして
規制料金を残すということを言っているのにすぎません。したがって、一般
電気事業者がこの
規制された約款以外の形で
供給するということは自由だということになります。
消費者の方としては、最低限それが選べるという状況にありますから、ほかの選択肢が与えられてほかのものを選ぶということは、その最低限のものよりはいいから選ぶということになるので、最低限の消費者保護というのはこれで保たれる。
自由化したことによって、結果的に
規制なき独占になって踏んだり蹴ったりになるなどという事態はこれで防ぐ。
しかし、本当に理想的な状況というのは、このような
規制が無
意味になって、競争が十分働いて、このような
規制料金でないものをみんなが選ぶという状況になり無用の長物になるということが最も理想的な状況。それは競争が働いているということなので、こういう状況を目指してはいくけれど、しかし、必ずそうなるとは言えないので、備えとして
規制を残すということが計画されているということになります。
おめくりください。
それから、競争環境に関しては震災後大きく変わった点がありまして、
電力間の競争というのがほとんど起こっていなかった。元々の部分
自由化のときには、この
電力間の競争というのが期待されていたわけですが、ほとんど起こっていなかったこの
電力間競争がようやく起こる兆しが出てきました。
東京
電力が全国に
電気を売るという、こういう展開の表明をしたということと、それから中部
電力、関西
電力あるいはほかの
電力会社も東京
電力の管内で小売に参入するという動きが出てきています。これらは非常に歓迎すべきことなのですが、一方で、東京
電力は明らかに震災後、ガバナンスの構造が変わりました。
ここは、もうかなり本気で入るつもりなんだろうと思うんですが、中部
電力、関西
電力等が東京
電力管内に入るというのは、もはやガバナンスの構造が変わって、自分たちの仲間でなくなったような
人たちのところは荒らしても構わないから入っていくけれど、残りのところはまだ仲間同士だから市場分割しましょうと。もちろん市場分割なんて決してしていないと思いますが、そういうことが疑われるような形で競争はほとんど起きないというようなことだったとすると、仮に東京に入ってくるという動きが少しあったからといって、これでもう競争基盤が十分
整備されたと、競争は十分だと考えるのは少し楽観的過ぎると思います。
本来、連系線の
制約からすれば、中西
地域、中部
電力以西のところで激しい競争というのが起こっても全く不思議ではないという状況なのにもかかわらず、ここがもし起こっていないとすれば、やはり不十分だと考えざるを得ないと思います。
私たちは、この点をこれから十分に注視して、それこそ、トヨタ自動車の需要をめぐって関西
電力と中部
電力が激しく競争しているというような状況まで来れば競争は十分進んでいたというふうに
一定程度考えられるのかもしれませんが、そこについてはまだ注視していく必要があると思います。
それから、一般
電気事業者だけが競争するというのでは、やはり競争としては不十分だと思っています。
一般
電気事業者の方、申し訳ないですが、基本的には旧来の知恵で生きてきた
人たちということで、震災前であれば、太陽光の
電気が余っちゃうということになったら、じゃ、カレンダー機能を付けて止めましょうかなんという、こんなことしか思い付かないような
人たちというのだけが当システム、
電力市場というのを牛耳っているという状況ではなく、いろんなアイデアの人がどんどん入ってこれるという、こういう状況というのが必要になってくると思います。そのためにも、
電力間の競争だけではなく、新規参入者が公正な環境で入ってこれる状況というのをつくっていかなければいけないと考えております。
さて、
安定供給というのが最も大きな関心の
一つだと思いますが、十六ページ御覧ください。
現在の
安定供給体制、垂直一貫の下で極めて安定的な
電力供給がなされてきたという先入観は捨てるべきだと思っています。
日本の
電力系統は、今までは極めて安定的だった。世界に冠たる安定的な
電力供給という側面はもちろんあります。だから、世界に誇れる点はありますが、世界に比べても極めて脆弱だったという面も否定できません。
例えば、欧米諸国に比べて恥ずかしいほど僅かの風力しか入っていないのにもかかわらず、もうこれ以上入れられないと抽せん制を入れざるを得ないとかという、それぐらい脆弱な系統だったということも言えるし、大
規模電源を集中的に立地させて災害に弱いという、こういう系統をつくり上げてきたという面もありますし、それから、連系線の容量が極めて小さかった、特にFC、東
日本と西
日本をつなぐ周波数変換所ですが、震災前には、僅か三十万キロ増強するというささやかな計画に対しても見苦しいほど抵抗して潰してしまうというようなことが起こるぐらい、
安定供給に対する意識というのはもう必ずしも十分でなかったというようなことも言えるのではないかと思います。
こういうような点に関しては、ここばっかり言うというのはアンフェアで、
安定供給のために
現場の方々がどんなに苦労して支えてきてくださったかということに関してはもうどんなに感謝してもし切れないぐらいのところであり、それから
技術に関しても非常に優れたところというのはいっぱいあるわけですから、世界に冠たるという側面と弱いという側面の両方があります。
電力システム改革は、この世界に冠たるところを残しながら、弱かったところを何とか
改革によって更に高めるということを目指す
改革だというふうに
理解しております。
次、おめくりください。
電力システム改革によって安定性が更に高まるという側面に関しては、価格メカニズムを使って需給逼迫というのに対応するということが更に発展することになると思います。
それから、今までだったら競争が激しくなることを恐れて連系線の投資を怠ったというようなことが仮にあったとしても、これからは広域機関を中心にして全体最適を考えながら送電網を計画するというシステムに変わっていけば、
安定供給は更に高まると思います。それから、さらに、新
電力を含めた
発電の情報を全て送電部門に集めて、一般
電気事業者の電源だけではなく、
日本中全ての電源を使って
安定供給を
確保するという、こういう体制にしていくことによって安定性が更に高まるということになると思います。それから、価格メカニズムが全面的に入ってくることになるので、価格メカニズムをシグナルとして安定性が高まるということはあり得ると思います。
投資が行われなくて需給が逼迫するという懸念を表明する人は多くいますが、もしそうなるとすると、卸市場で
電気の価格は上がります。卸市場で
電気の価格が上がれば、当然
発電のインセンティブが増えます。
発電のインセンティブが増えるということになり、
電力不足というのを回避するという、こういうメカニズムが働きます。経済学者としては、本来であればこの価格メカニズムが十分働くので余計な
安定供給策なんというのは不要ですというふうに言うべきなのかもしれませんが、しかし今回のシステム
改革ではそう言っていません。
どうしてかというと、今の価格メカニズムが働くことは十分期待しているし、
一定程度働くとは思っていますが、必ず働くとは限らないということで、価格メカニズムがもし万が一うまく働かなくて投資が足りなくて大停電などというような事態になったらどうするんだというのに対しては、広域機関に電源入札という制度、世界的にも珍しいような強力な安定化策というのを取り、
発電所が足りないなどというようなときには、こういう公的な機関というのが電源を入札して十年後の不足に備える、五年後の不足に備えるというような強力な施策というのを取っているということで、
安定供給に関しても十分に考慮された制度設計になっております。
おめくりください。
安定供給に関しては、いろんな人がいろんな形で担うわけですが、抽象的にみんなが担うというだけじゃなくて、役割をきちんと明確にしています。その中で最も重要な点が広域機関が果たす役割だと思いますが、広域機関が、それぞれの
地域の部分最適ではなく全体最適をにらみながらきちんと計画し、きちんと送電投資を行い、電源の投資の不足があれば入札で補うという強力なことまでやるということで
安定供給というのを支えようとしております。
これに関しては、むしろ一般
電気事業者の御出身の専門
委員の方が、システム
改革の席で、三のようなことをやると市場メカニズムを乱すのではないかと、こういう懸念をし、経済学者が、市場メカニズムを多少乱すことがあったとしても
安定供給には代えられないからこういう制度が重要だと、こういうふうに発言しているという極めてねじれた状況というのが起こっている。決して
安定供給を軽視した制度ではないと、制度
改革ではないということは
是非是非御
理解ください。
さて、
電力システム改革ですが、基本的にはいろんな人が参入できるという状況が最も望ましい状況だと。これに関しては、震災前、例えば太陽光
発電に関しては今よりもはるかになだらかなペースで太陽光
発電が入ってくるという予測だったのにもかかわらず、もう二〇二〇年を待たずに
電気が余ってしまうから太陽光
発電、止めざるを得ないです、太陽光
発電の
電気、捨てざるを得ない、捨てるためにどうするかという
議論を大真面目で
議論していたわけなんですけど、そんなことをやるぐらいだったら、ゴールデンウイーク中は
電気が余ると分かっているなら、ゴールデンウイーク中だけ
電気の価格を少し下げたらどうですかと、それによって需要を促したらどうですかと、こういう当たり前のことを思い付かないような
人たちだけが制度を設計していた。
こういう状況にしないために、あらゆる人があらゆる知恵を持って入ってこれるシステムにしたいということで、もしこれを怠ってしまえば、今までのように太陽光の
電気を捨てないためには十五兆円も四十兆円も投資しないと駄目ですなんというような、こんな知恵しかない
人たちだけに任せることになってしまう。こういうことにしないためにも、何とか
電力システム改革を完遂させたいと思っています。
二十一、二十二が最後のまとめのところです。
ここの
法案のところが一番重要なところで、ここはもう基本方針を決めるわけですから、この基本方針というのがちゃんとしていなければ、もちろん立派なシステムはつくれません。しかし、基本方針だけでなく、その後の詳細な制度設計も非常に重要です。詳細な制度設計についても、私たちはずっと見ていって、本当にゆがんだ
方向に行っていないかどうかということをずっと見続けていかなければいけないと思っています。
それから、世界中でいろんな
改革がなされていて、世界中で大きな失敗というのをしている。私たちはそれを真摯に学んでちゃんとやっていかなければいけない。一番安直な回答というのは、あれは制度がひどい制度だったから、私たちはそんな制度にしないから大丈夫ですということを安易に言っちゃうんですけど、でも、欧米でもつくったときにはそれがベストだと思ってつくっているわけですから、そのことをちゃんと私たちは
認識して、自分たちがベストだと思っているものでも、ひょっとしたらうまくいかないかもしれないということを考えながら、先ほども言ったとおり、広域機関の入札のような強力な制度を設けてでも、うまくいかないことの防御というのを二重、三重に考えながら慎重な制度設計というのをしていかなければいけないし、現在までそのように
議論がされていると
認識しております。
それから最後に、この
電力改革を成長戦略だとか
技術革新というのにつなげる視点というのを
是非持ちながら、これからの詳細制度設計も含めて当たっていかなければいけないと考えております。
以上です。ありがとうございました。