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2014-04-24 第186回国会 参議院 経済産業委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年四月二十四日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大久保 勉君     理 事                 有村 治子君                 岩井 茂樹君                 松村 祥史君                 加藤 敏幸君                 倉林 明子君     委 員                 磯崎 仁彦君                北川イッセイ君                 高野光二郎君                 滝波 宏文君                 宮本 周司君                 渡邉 美樹君                 小林 正夫君                 直嶋 正行君                 増子 輝彦君                 杉  久武君                 谷合 正明君                 松田 公太君                 中野 正志君                 真山 勇一君                 荒井 広幸君    事務局側        常任委員会専門        員        奥井 俊二君    参考人        京都大学原子炉        実験所教授    山名  元君        立命館大学国際        関係学部教授   大島 堅一君     ─────────────   本日の会議に付した案件原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、二名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席いただいております参考人方々を御紹介申し上げます。  まず、京都大学原子炉実験所教授山名参考人でございます。  次に、立命館大学国際関係学部教授大島堅一参考人でございます。  この際、参考人方々委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人の皆様からの忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で、山名参考人大島参考人の順に御意見を述べていただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。  なお、参考人質疑者とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず山名参考人にお願いいたします。山名参考人
  3. 山名元

    参考人山名元君) 山名でございます。皆さん、おはようございます。  十五分程度お時間をいただきまして、この法改正案に対する私の意見を申し述べたいと思います。  まず、私は、京都大学教授、特に原子力専門とする技術者立場として、また福島第一の廃止措置に必要となる技術研究開発関係者が担当するという目的でつくった技術研究組合国際廃炉研究開発機構理事長として、この福島第一の廃止措置に関して技術的な側面から深く関与してまいりました。その技術的な側面から私の意見を申し述べたいと思います。  まず、お手元レジュメに書いておりますが、総論といたしまして、基本的に東京電力は、損害賠償それから電気を安定に供給する、社会的損失を生まないということに加えて、福島第一の廃止措置を確実に着実に遂行するという責任を有しております。この賠償安定供給廃炉、三拍子、これに対しては、政府の包括的な支援監督を確実にするような体制、強くした体制が必要であるということをかねてから私は申し上げてまいりました。今回のこの法改正案はこの私の考えに沿っているものと考えておりまして、極めて重要なものであると思っております。  二のところに書いてございますが、この法改正案は、従来の賠償支援機構廃止措置廃炉支援機能を新たに加えるという提案になっているわけですが、当初、率直に申し上げまして、私は技術者として、廃止措置という技術的な取組とそれから賠償という社会的、経営的な取組というのは別な次元にあるものだなということを印象としては考えておりました。ただ、今その考えは改めるに至っております。  といいますのは、こうして一、二年廃止措置というのを見てきますと、この廃止措置の失敗というのは、多くの被災者方々が頑張っておられる努力をまた無にしてしまう、あるいは国際的な信頼を喪失してしまう、あるいは、この一Fの事故に直接関係していない国民皆さんにも多大な不安とか風評被害とか、そういった損失を与えているということがあります。これは現実にあるわけでありまして、そういう意味で、東京電力廃止措置をきちんとやるということは、この賠償電気安定供給国民への不安を解消するという様々な意味必要要件だろうというふうに思うに至っております。  そういう意味で、廃止措置というのは、東電がきちんと今後やっていく、賠償もやっていく、電気供給も絶やさない、この三つどもえの一環にあるという思いに至っているわけであります。そういう意味で、この廃止措置というのは、非常に大きな国の重大なリスク要因考えると、これに全力で取り組むという体制強化というのは必須のものであろうと、こう考えるに至っておるわけです。  では、その強化というのがどういうことかというと、このレジュメの三のところに書いておりますが、まず、廃止措置をきちんとやるにはここの三角形の絵が描いてありますこの三つが必要であると。つまり、廃止措置に関わる技術戦略技術判断をきちんと行うということ、これは非常に大局的な判断であり、高度に専門的な技術判断になってきます。それから、現場できちんと廃炉を進めるという現場オペレーションが大事でありますし、それには非常に革新的な技術開発する必要がございます。これは世界的にも未曽有状態にありますので、従来の技術だけでは乗り越えられないということで、技術開発が必要です。この三者が、この三本の矢が一体になって連携してきちんと進めないと、廃止措置がずるずると遅れたり、汚染水問題のように派生的なトラブルが発生して、それでまた多くの国家的損失を生むという可能性があるわけであります。  そういう意味でこの三者の連携が必要ですが、私はこの三者連携が現時点ではまだ完全な状態ではないと思っております。  まず、現場オペレーションというのは、これ東京電力が行うことであります。技術開発は、今私が担当しておりますような技術研究組合のようなところが担っていくものでありますし、また一般的な民間の事業者が入る可能性もあります。技術戦略技術判断東電責任でもあるんですが、これぐらい非常に技術的に難しい問題になってくる、あるいはその影響が多岐にわたるということを考えると、政府前面に出たような技術戦略あるいはロードマップの策定、技術判断が必要だということになってくるわけです。  現場オペレーション東電の問題は、率直に申しまして現状の東電では弱いというふうに私は判断しております。その弱さは、やはりその技術専門性が弱い、リソースの投入が十分ではない、技術的な判断のガバナンスが弱いというようなことがあるかと思います。そのために、東京電力は、社内分社化を行いまして廃炉推進カンパニーというのをつくって、これを強化していくということを特別事業計画で既に明確にしておるわけですが、さりとて自分たち強化にもまだ時間が掛かるという段階であろうかというふうに思っております。  それから、この技術戦略技術判断のところなんですが、これは廃止措置閣僚等会議のリーダーシップの下で、今エネ庁事務局的な立場廃炉対策収束室が頑張ってやってきているわけですが、この戦略のところにはまだまだ重要なタスクが控えております。  例えば、先ほど言った国家レベルでの廃炉戦略をきちんとやる、そのリスクをどうやって下げるかということを国レベルできちんとやっていくということ、それから、東京電力だけでは決め切れないものが幾つかあります。その一つが、放射性廃棄物の最終的な処理処分をどうしていくかと。この福島第一で出てくる廃棄物というのはもう従来の原子力では考えられないようなものがたくさん出てきます。これ最後どうするんだという話で、我々これをエンドステートと、最終戦略といいますか出口戦略というか、そういう呼び方をしているんですが、実は、今、国でつくっているロードマップにはこのエンドステートについては明確なことが決まっておりません。最終戦略を決めないと実は事が進まないというのが幾つかあります。そこを決めていくということは東電ではできない。  それから、もう一つ重要なことが安全規制の問題です。この特定原子力施設規制というのは通常の原子力プラント規制とは全然違う次元にあります。これは規制委員会独立案件でありますので、我々のような技術界にいる者としてはなかなかやりにくいんですが、いずれにせよ、そこで国民へのリスクを下げる、住民へのリスクを下げる、周辺影響を下げる、そういったきちんとした安全規制在り方を、今後、規制当局や当事者である東電やあるいは監督官庁であるエネ庁関係する技術者が集まって決めていく必要があるということであります。そういったことを戦略上は重要になってくる。  それから、技術開発に関しては、私の組合がここの部分を今請け負っておりますが、実はこの三角形の絵の中にあります矢印部分ですね、つまり現場オペレーション技術開発関係、これをもっともっと緊密なものにしていかないと実効的な技術開発できないという問題があるわけです。さらに、この開発というのは、当然、技術戦略ロードマップ、それに沿ったものである必要がありまして、この矢印をもっと太いものにしていく必要があるということであります。  しかし、政府の今事務局になります事故対策収束室は、超人的に頑張っておられるんですが、やはりそこに政府専門的知見を集めてくるというその仕組みには多分限界があると思います。つまり、有識者を集めて事務局はいろいろ考えておられるんですが、そのやり方にはやはり限界があると思います。むしろ私は、専門家をもっと本格的に集めたCOE、センター・オブ・エクセレンス、専門性の高い技術者集団をどこかに、政府の近いところにつくって、そこが政府事務局連携しながら情報を提供して高い戦略性をつくると。当然それを東電に対して、しっかりとした技術的専門性立場から助言、指導、監督すると。まあ監督と言うと言い過ぎになりますが、勧告を出すというような組織が必要であるというふうに思うわけであります。そのイメージがこの賠償支援機構廃炉支援機能を組み込むということであろうかと私は理解しております。  最後の四ポツのところになりますが、今まで申し上げましたことを実現するための一つの最も現実的で実効的な形として、この賠償支援機構の中に廃炉支援部門を組み入れると。賠償支援的な話、それから経営をきちんとさせるという話、廃炉をきちんと進めさせるという話、廃炉全体の国家的戦略開発在り方をもっと専門的に決めていくという話、そういったことを一括でこの機構で担っていくということは、実効性強化するとか、迅速性強化するとか、廃炉計画研究計画最適化を行うという意味で有効であろうというふうに考えるわけです。  最後に、今回提案されていますこの法改正の中に法定業務としては書かれておりませんが、情報提供とかその他附帯事項という形で理解しておるんですが、この新しい機能がこの機構の中にできれば、先ほど言いましたような廃炉に関わるような情報を集約できる。情報センターになれると。それから、人材育成というのが今後非常に重要になります。この廃止措置を四十年にわたって進めていくためには、しっかりとした技術者を集めていくということが重要になりますが、今の時点ではこの人材育成に当たっていく機能日本国全体としてやっぱり弱いんです。文科省文科省で施策を打っているし、経産省は経産省で何か考えている。私たち技術研究組合もそれは考えているんですが、どうしてもばらばらであります。これを統合的に考えるような人材育成戦略もこういうところで考えることができるんではないかというような期待も持ちますし、この廃止措置原子力過酷事故の結果どうなったか、どう対応したかという技術情報を集約して後世に残していく、技術アーカイブをする、そしてそれを国際的に技術情報として発信していくと。これはこの事故を起こした日本としての国際的な責務があると思っております。こういった情報を集めるという拠点としても、この機構に設置する新しい機能がしっかりと役に立つんではないかということを派生的な効果としてイメージしております。  以上申し上げましたようなことで、私は、この賠償支援機構を拡大していく、廃炉支援に向けて拡大していくというこの法案、法改正案については強く期待しているということを申し述べたいと思います。  以上でございます。
  4. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ありがとうございました。  次に、大島参考人にお願いいたします。大島参考人
  5. 大島堅一

    参考人大島堅一君) おはようございます。立命館大学国際関係学部大島と申します。  今日は、私、環境経済学専門でして、その観点から幾つか御意見を申し述べさせていただきます。体調がちょっと悪いので声がなかなか出ませんが、お聞き苦しい点があるかと存じますが、申し訳ございませんけれども、よろしくお願いいたします。  まず、私の意見概要は、お手元の「「原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律案」に対する意見」というところでまとめさせていただいております。  私の意見の第一点目は、廃炉汚染水対策にはやはり原子力規制委員会あるいは原子力規制庁責任を持つべきではないかというふうに思っております。  まず、その理由は、一点目は、原子力損害賠償廃炉廃止に関する事業は全く異なる、性格が全く異なるということであります。先ほど山名参考人もおっしゃっていましたように、技術を集大成し、様々な人材育成もするということに関して、私は非常に重要な業務だというふうに思っておりますが、それと損害賠償を適切にまた丁寧に進めることとは全く別だというふうに思っています。  さらに、今回の福島原発事故においては、どのようなことが原因になったのかというのが、もちろん政府事故調査委員会報告書ないしは様々な事故調査委員会報告書から出ておりますけれども、本当にどのように起こったかということは、まだサイトの中、原子炉中心部についてアクセスできておりませんので分かっておりません。そういう意味では、調査及びその事故原因調査も含めた総合的な対策が必要なわけです。そのときに、今ある原子力損害賠償支援機構法に付随的にくっつけてやることが本当の意味で国が前面に立つ対策になるのかどうかということについて私は疑問に思っております。  そのように申し上げますのも、二点目ですが、原賠機構、今の原賠機構ですけれども、政策決定意思決定ですね、意思決定プロセスが非常に閉鎖的で、情報が十分に公開されていないということが、私には懸念として持っております。  別の資料として、今回の原子力損害賠償支援機構のホームページの一部を持ってまいりました。これは最も最近の第三十一回の運営委員会議事要旨というふうに公開されているものですが、ここに、御覧いただければ分かりますように、「議事内容」と称して、「「新・総合特別事業計画」に基づく経営評価について等」と書いてあるだけで、一体それがどのように、どういう資料を基に審議されたのかというのが、議事録もないんです、あとどういう資料が使われているのかということもないので、これではおよそ情報国民に示しながら丁寧に議論しているということは分からないわけです。今度、これに今回非常に国民的な関心もある廃炉等業務が付け加わることになると、何の情報も出ないまま結果だけ出てくると。それが、結果が非常に適切なものであるかどうかということは、そういうふうに信頼してくださいということだと思うんですけれども、本当にそうかどうかというのは、やはり国民的な英知を結集して事業を行っていくべきだと思いますので、少なくともこういった閉鎖的な意思決定プロセスは改める必要がありますし、今の原賠機構にこういった重要な機能を付け加えるということについては私は懸念を持っております。  三つ目は、廃炉に関わって、今、山名参考人もおっしゃいましたが、原子力規制委員会、これは特定施設になっておりますので原子力規制委員会が関わりますし、経産省、あとその政府事故対策収束室あと原賠機構、IRIDですね、等々が関連するようになって、一層役割分担が複雑化するというふうに私は懸念しておりまして、やはりここは国が前面に立つ統一的な体制を取ることが必要であり、例えばですが、福島第一原発廃炉公社とか原子力廃止措置機関、これはイギリスにあるようなNDAみたいな組織を国としてつくって、そこに廃炉技術ないしは体制を一括して集中させてはどうかというふうに思います。これについては、お手元の冊子の方で、百八十九ページからもありますし、八十七ページからにこの技術的な取組についてはこうではないかというふうな提言をさせていただいております。これは原子力市民委員会、私も関わっておりますが、「原発ゼロ社会への道」というふうに書いてありまして、脱原発を政策提言しておるものなんですけれども、脱原発をしないという選択をしたとしても、重要なことについて政策提言しておりますので、是非御覧いただきたいというふうに思います。  意見概要の二点目は、今回の提案廃炉事故処理への国費投入が無原則に行われる可能性があるのではないかというふうなことを私は懸念しております。  なぜかというふうに申しますと、丸ポツの三番目ですけれども、四十一条三項に、先生方はもう既に御存じのように、廃炉汚染水対策についての書類を提出するようということでなっておりますが、そこと資金援助関係が明確ではありません。なぜこれが入っているのかということです。四十一条二項については損害賠償の要賠償額であるとか経営状態に関する書類を提出しなさいというふうにあって四十一条一項との関連があるわけですけれども、四十一条三項との関連がはっきりしません。実際には、ここに、四ポツ目にありますように、第六十八条に基づく資金交付というのがありまして、実際ここから、後でも申し上げますけれども、中間貯蔵関連費用が発動されて一・一兆円出ることになっております。そこからすれば、今回のここに廃炉機能を持たせるということによって国費投入ないしは国民負担廃炉にまで入ってくるのではないかというふうに私は懸念しているところであります。実際、少額ではあるとはいえ、廃炉等技術委員会人件費負担金からの拠出であるということが審議の回答の中であったというふうに私も見ておりますので、実際、既に負担金から廃炉費用が出てきているということでありますので、そこはやはり懸念しております。  少なくとも、ここの一番最後に書いてありますが、廃炉資金を国が肩代わりしてよいのかどうかというのをはっきりとやはり決める必要がございますし、超長期にわたる、少なくとも三十年、四十年にわたる巨額費用が発生する可能性があります。今は中間貯蔵や当面の汚染水対策に限定されていますけれども、最終的にはそこの原子炉を解体して、もし解体するとすれば、解体して様々な高レベル放射性廃棄物が、今までなかったような廃棄物が出てくるわけであります。それの最終処分どうするのかということになりますと、非常に多額の資金が必要になってくるわけですね。  そういう意味では、超長期に及ぶ巨額費用負担が発生するわけで、これがこの原賠機構を通じて行うということになってしまうとすれば、事実上の国費投入在り方が、その一認可法人である原子力損害賠償支援機構判断するということになってしまうわけです。やはりそれは国民関与国会の強い関与が必要だと思いますので、というのは、国民がお金を出すということですので、そういう意味ではいま一度慎重な審議が必要なのではないかというふうに思っておる次第です。  事故関連費用負担状況につきましては次のページと次のページに書いておりますが、例えば被害者への損害賠償は、今のところ東電が直接的な支払者になっておりますが、一般負担金を通じて消費者が負担するような仕組みになっていますとか、あと廃炉費用も、実際は効率化による捻出というのが一兆円なされておりますが、もしかすると、廃炉会計の変更が既になされておりますので電気料金への一部転嫁が可能になっているとか、あと、ちょっと飛ばしますが、中間貯蔵関連施設については第六十八条が発動されて財政措置がとられるようになっている。あと除染費用は二・五兆円東電株が上がることをまず見込んだ上で考えているわけですが、これ達しない場合どうするのかということも非常に大きな問題として残っているわけで、ここを見ますと、やはり消費者負担国民負担が増えてくる中で一体この費用をどうするのかということを、この際、損害賠償支援機構法改正案の御審議の中で御検討いただきたいというふうに思っております。  意見最後ですけれども、ページでいいますと六ページ以降になりますが、私は、じゃどういうふうにしたらいいのかと申しますと、やはり東電と国の責任関係を明確にした上で、その責任分担において費用負担なり事業を行うというふうにやはり整理し直した方がいいのではないかというふうに思っております。  私、東京電力は国の資金援助なしには損害賠償だけでもう一般の企業であれば存立し得ないような状況になっているというふうに思っております。もしそうでなければ、実際、東京電力が自ら損害賠償すればいいのであって、そうではなくなってきているというふうに私は思っています。  実際には、東京電力というのは、国会事故調査報告書でも明らかなように、事業者側規制者をとりこにしてきたということがあるんです。さらに、であるにもかかわらず、事故を起こして国が関与して絶対に破綻しない会社になってきていると。それは非常に倒錯したというか転倒した状況になってきているのではないかと。  損害賠償につきましても、大規模訴訟幾つも提起されるような状況になっておりまして、もちろん賠償はされているわけですけれども、原子力損害賠償紛争審査会が作る指針というのは、あれは基本的には東電も納得し得るような指針になっているがために、やはり中間的になっているわけですね。そういう意味では、被害者にとってはまだまだ十分な損害賠償がされていないというところで苦しんでいらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。そういう意味では、東電損害賠償在り方自体も非常に不十分で不誠実な状況に陥っているのではないかと。  更に懸念されますのは、事故を起こしても破綻をしないと。破綻といっても様々な形態あると思います。清算もあれば再生もあると思うんですけれども、それはどちらでもいいと思いますが、破綻処理もされずに実際国が大きく関与するということになれば、事業者に対するモラルハザードを引き起こすのではないかと。これは資本主義社会においてはあり得ない。民間企業が事故や被害を及ぼしたときに、国がほとんど見てくれるというか支援してくれるというのはほかの企業ではあり得ないので、それはモラルハザードを引き起こして、かえって原子力事業が不健全な状況になるのではないかというふうに私は懸念しております。  最後に、簡単に申し上げますが、やはり国の責任において、原発事故を防ぎ得なかったという責任あと原子力開発一辺倒であったということの責任を踏まえて、その事故を引き起こした責任が国にあるということを認識した上で、その反省に基づいて国家規模の統一的な事故収束、廃炉体制あと損害賠償体制をつくり直すべきではないかというふうに考えております。  以上、簡単でございましたが、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございます。
  6. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ありがとうございました。  以上で参考人の皆様の意見陳述は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 自民党の渡邉美樹でございます。質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、私、自分のことを少しお話しさせていただきますが、六年ほど前からエネルギー事業に関わっておりまして、原発事故の前からでございます。現在、秋田で風力発電三基、六千キロワットアワー、そして北海道でメガソーラー、一万五千キロワットアワーということで、グループ一千七百億の三分の一を再生エネルギーでできる状況を道筋を付けてから議員になったわけであります。  その中で、実は山名先生、大島先生の著書については大変興味深く勉強させていただいております。「それでも日本原発を止められない 日本にトドメを刺すエネルギーボケの国民世論」というような本も読ませていただいております。また、大島先生の「原発のコスト」という本も読ませていただいておりまして、今日はこの二冊の本から幾つか絞って質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず一点でありますが、お二人の御意見、全く読んでいて両極端でございますが、一つ、一番違うのが原発の経済合理性でございます。  コスト分析ということで、発電コスト、それからバックエンドコスト、これは廃炉等々のコストです。製作費用、研究開発、それから事故費用ということで賠償費用等々です。大きく分かれてこの四つのコストになると思うんですが、この四つのコスト、どれを入れてどれを入れるべきではないのか、そしてこれを入れるからトータル幾らになるのかというところで、概算で結構でございますから、お二人から原発のコストについてお話を聞きたいというふうに思います。
  8. 山名元

    参考人山名元君) 発電コストについては、前政権時代に国家戦略室の下でコスト検証委員会という場をつくって、そこでそれぞれの事業の、事業というのは、例えば原子力発電をやった場合、石炭火力発電をやった場合、天然ガスをやった場合、再生可能、全ての事業を四十年間やった場合の均等化コストというものの試算は既に行われているわけです。  その結果、御承知かと思いますが、原子力発電がキロワットアワー当たり九円、それから天然ガスが十・何円かで、石炭が九・数円ぐらいという結論が出ておりまして、そのときには非常に大きな議論があったんですが、特に原子力のコストの中身ですが、もちろんキャピタルコストとそれから運営コストとそれからウランなどの燃料コストとそれからバックエンドのコスト、それから、事故が起こったときの対策のコストを入れようということになりまして、そのときは、何というんですか、相互扶助制度のような仕組み考えて、ある一定額を原子力発電事業者はコストに入れるという仕組みで九円というのが出ているということであります。  この中身についてはまだ議論があるんですが、私はその結論はそこそこ妥当になっているというふうに理解しておりまして、微細調整は可能ですよ、だけれども、大体そういう考え方で発電コストは考えていいだろうというふうに思っております。  ただ、一つ付け加えますと、現在は再稼働の問題が議論されておりますですね。再稼働の場合は、施設が既にできて減価償却等が進んだ状態でのコストの比較というのが非常に問題になります。原子力発電の場合には、燃料コストが全体コストの中の数%にしかすぎませんから燃料費というのはほとんど掛からなくて、維持費、まあキャピタルコストはかなり償却されているということになりますが、火力発電の場合には燃料費が非常に高いということで、有価証券報告書で全国平均で評価すると、さる研究所が出していますが、火力全体で平均すると大体キロワットアワー十二円ぐらいと、既存の原子力だと六円から七円ぐらいというのが出ていますので、こういう感覚でこの発電コストのことは議論すべきかなというふうに思っております。  以上です。
  9. 大島堅一

    参考人大島堅一君) どうもありがとうございます。お答えします。  概要については山名参考人がお話しされたことだと思うんですけれども、私、二〇一一年に山名参考人とともにメンバーになって、コスト検証委員会委員として原子力のコストも含めたコストの抜本的な見直しということに関わってまいりました。そこでは、一度目の計算値では八・九円、原発のキロワットアワー当たりの発電コストは八・九円と、これは社会費用も含めての分であると。その後、もう一度見直しまして九円ということになったわけです。  そのときの考え方は、重大な考え方は、社会費用を含めるか含めないかということで、これは世界的にも非常に珍しいことだと思うんですけれども、事故のコストと国家が関与してきた様々な原子力開発費用を含めて原発をどのように評価するかということを考えたわけです。それを社会費用というふうに申しますけれども、そのように考えました。そのときの計算結果も、私はそれでまあまあ妥当だなというふうに、山名参考人もおっしゃっておりますように考えておりますが、その後事態はかなり変わっております。  というのは、そのときの考え方は、簡単に申し上げれば全部の総費用を総発電量で割ると。社会費用の総費用のところは、あのときはたしか五・八兆円だったか、なんですね、二〇一一年当時ですから。今の原発事故関連費用というのは、これは、私は政府委員として試算したわけではないので正確ではないかもしれないということを留保にした上で申し上げますと、この私の提出させていただきました資料の一番裏の八ページのところにありますが、これは二〇一四年二月ぐらいなので新しい予算も含めておりませんけれども、大体十兆円超えて十三兆円ぐらいのオーダーになるんじゃないかと。そうなりますと、事故のコストはもう倍になっているわけですね。  さらに、先ほど申しましたように、全部のコストを発電量で割るということですが、二〇一一年当初の考え方は今後四十年にわたって五十基の原発を従来どおり動かすことができるということを前提に計算しております。今、再稼働の議論がなっておりますが、たしか十八基だったと思います。ですので、五十基の原発を動かすということの前提はほぼ崩れているというふうに私は考えます。  さらには、安全対策に少なくとも、各電力会社が発表している資料によりますと一・二兆円要るというふうに言っていますので、そういったデータを全て勘案しますと、要するに、コスト全体は上がり、かつ発電量が少なくなっているわけですから、十二・六円ぐらいになっているというふうに私は考えていて、計算をしております。  ただ、それが本当に正しいかどうかというのはやはり政府委員会で再検討していただきたいなと。二〇一一年の当時の原発状況原発事故状況で九円なんだということを、もう二年も三年も前のことはこの問題に限って言えば大昔なわけですから、九円だということを前提にして議論をさせていただきたくないなというふうに私自身は思っております。
  10. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。前提によって山名参考人とそして大島参考人のその経済合理性についての考え方が違うということはよく分かりました。  次に質問させていただきます。  総理は、施政方針演説で原発依存度を可能な限り低減していくという発言をされているわけでありますが、今回、エネルギー基本計画において、原発ゼロではない、原発をベースロード電源とした形における計画を作ったわけであります。  私は、自民党の部会の中において、繰り返し、現在は仕方ないかもしれない、しかし二十年、三十年先から見てビジョンというものをしっかり立てた上においては、現状否定からできるかできないかということをしっかり探るべきではないかということを何回も繰り返し発言させていただいてきました。  そこで、お二人にお聞きしたいのは、この原発ゼロということに関して、今このエネルギー基本計画に基づいて、ゼロではない前提で今この国は大きく動いているわけですが、それについて、それは当たり前なのか、若しくはそれは違うと思うのかというところで、率直な意見を聞かせていただきたいと思います。
  11. 山名元

    参考人山名元君) あくまで私の私見ということになりますが、私は可能な限り下げるという現政府の方針はそのとおりだというふうに思います。どこまで下げれるかということになるんですが、それを判断する指標というのはたくさんあるんですが、恐らく我々が一番考えるべきはこの国のエネルギー安全保障であるというふうに思っています。  といいますのは、日本が今までこうやってそれなりの社会をつくってきた。それは、資源や燃料を輸入して、大量のお金を、二十数兆円のお金を使って燃料を輸入して、自国内のエネルギーはほとんどない、これでいい製品を作って輸出して、そのお金で燃料を買うというビジネスモデルでやってきたわけです。この形をやはり維持していくというのが安定な社会をつくっていく基本であろうというふうに思いますし、そうしますと、エネルギーを確保することに対する一つの保障、それを確保するというのは国の最も基本であるというふうに思うわけです。  原子力を、じゃ、できるだけ下げる、例えばゼロにした場合には、再生可能はもちろんこれから増やしていきますが、そのためにかなり大きな投資を必要とするということと、相当天然ガス火力とか天然ガスに依存する社会にならざるを得ないというふうに思っていますし、前民主党政権が描いたビジョンも、電力の中で天然ガスが四〇%ぐらいになるというような絵を描いているわけです。  しかし、今世界的に見ますと、アメリカのシェールガス革命等を見ますと、世界中のエネルギーマーケットは大きく変わりつつある。エネルギー輸入国が輸出国になり、輸出国だった国がエネルギーを輸入している。中東の国が天然ガスを輸入したり原子炉を輸入したりしているわけです。全てが変わってきている。それから、大きな国際的な政治関係も今変わりつつある。新興国が膨大なエネルギーの消費を増やしている。従来、エネルギー輸出国であった新興国がエネルギーの輸入国になっている。あらゆるものが変わっていく中で、日本がガスや石炭、石油一辺倒で生きていけるとはとても思えないわけです。  その中で、私は、この国の基幹的なエネルギーを供給する部分である、電力でいえばベースロードの部分に、相当安定で我が国が自国産製を持っているというか、完全にコントロール下に持てるようなエネルギーが必要だと思いまして、それは恐らく原子力だろう。そういう意味で、ベースロードは、石炭と原子力と水力と再生可能をどこまで増やせるか、この構造で決まってくるというふうに思っていまして、そのどこまで下げれるかというのは、これから分析的に世界の状況とかマーケットの状況考えて、投資がどれぐらいになるかを考えて評価する必要があると思いますが、その評価を待った上で、原子力がある一定規模必要だというふうに個人的には考えております。  以上です。
  12. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 今回のエネルギー基本計画において原子力の依存度をできるだけ引き下げていくということを決定したことに関しましては、今までの政策からすると大きな転換であって、このことがエネルギー基本計画に出てきたというのは初めて、私もずっと二十年以上エネルギー政策を研究しておりましたけれども、そんなことが出てきたのは初めてですので、それに関しては私は評価しております。  ただ、原子力のことを見ますと、相変わらず、原子力の位置付けというのを見直すというのが本来的にはエネルギー基本計画の役割だったわけです。そこに注目しますと、安くて安定供給に資して、かつ温暖化対策にも役立つと、しかも準国産エネルギーであるというふうに書かれているわけです。これは二〇一〇年の民主党政権下で作られたエネルギー基本計画と全く同じです。事故を経たとしても位置付けは変わらなかったということの宣言だったわけです。  私は非常に驚きまして、やはり安いということはほぼ覆っているわけです。国民負担も非常に多いわけです。さらに、安定的であるというのも、この長期にわたって止めなければならないということでも、安定していないわけです。こんな電源はないわけです。さらには、環境保全といっても、放射能汚染が出るのはここだけでして、しかも地域的にもう住めないような地域が出てくるのはここだけです。そういう意味では、事故を踏まえるとこういった位置付けがされてしかるべきであるにもかかわらず、元の位置付けを基にエネルギー基本計画が立てられたということについては、驚きとともに、ちょっと残念に思っている次第であります。  ゼロにできるかということですけれども、しばしば言われるのが、電源としての性格と、それがエネルギー全体に貢献しているんだということが、しばしば論点がずれて語られることがあるんですね。原子力は、電源については確かに二割、三割だったんですけれども、エネルギー全体からすれば数%でした。それは省エネや様々な対策をすれば十分取れるし、電源についても、再生可能エネルギーの世界の伸びからすれば、原子力をなくすという選択を取ったとしても十分賄い得る可能性を持っているというふうに私は思っております。
  13. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。
  14. 小林正夫

    ○小林正夫君 民主党・新緑風会の小林正夫です。  今日はいろんな角度からお話をいただきまして、本当に参考になりました。ありがとうございました。  まず、大島参考人にお聞きをいたします。  原子力損害賠償支援機構政策決定プロセスが閉鎖的で情報が十分に公開されていないと、このように先ほど指摘をされました。これはどこに原因があるのか、少し掘り下げてお話を聞かせていただければ有り難い。  さらに、原子力規制委員会責任を持つべきだと、このようにもおっしゃいましたけれども、原子力規制委員会はアドバイスをしないと、このように私聞いて、受け止めておるんですけれども、どのように原子力規制委員会がこの機構関与していくべきなのか、この辺についてお聞かせ願いたいと思います。
  15. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 二つ御質問をいただきまして、十分な回答になるかどうかは分かりませんが、私の個人的な意見を述べさせていただきます。  一点目の原子力損害賠償支援機構がなぜこんな閉鎖的なのかというのは、私もなぜこんな閉鎖的なんだろうなというふうに思っております。一つは、これ認可法人であるということがあるのかなというのもありますけれども、余りにも、これは数兆円も国費が、国費というか交付金が入っているわけです、実際上ですね、東電に対して。それに当たっての決定が、これほどまでに、数兆円というのは非常に大きい財源です、これほどまでに、なぜこういう決定をしているのかというのが分からないというのは私も本当に疑問で、本来的にはこれは国会審議にも関わるような巨額資金拠出なのではないかと思いますので、これにつきましては是非審議していただいて、なぜそうなのかということを追求していただければと思っております。  私も、これでは全く政策を、何でこういうふうに意思決定しているのかということを細かく追うことが、損害賠償であれ何であれ資金の拠出に当たっての、それが適切かどうかというような判断、研究者としては判断できるんですけれども、今はちょっと分かりません、結論だけ出てきますので。そういう意味では、ここで申し上げましたように制度改革が必要なのではないかというふうに思っております。一度是非御覧いただきたいんですが、ホームページも、数年前に作ったホームページじゃないかというぐらい貧弱なものです。ですので、それちょっと御覧いただきたいというふうに思っております。  二点目ですが、規制委員会在り方ですけれども、これは規制委員会が自らを、再稼働に当たっての審議というのが非常に忙しいということもあるんでしょうが、極めて限定的に捉え過ぎているんではないかと思っておりまして、やはり規制委員会の下に、例えばここで提言させていただいた福島第一原発廃炉公社というようなものをつくって、そこが指導監督するという体制をつくった方がいいのではないかと。今は、これは法律によるものなのか、自らの、規制委員会の自制といいますか、そういうものによるかは分かりませんけれども、やはり限定し過ぎていると。  アメリカのスリーマイル島原発事故の処理においては、あそこの原子力規制委員会で、NRCが深く関与しています。今回は余りにも関与が少ないというか、やはり規制者として原因の究明もここでして、新たな知見も得られるわけですから、やっぱり廃炉にも主導権を握って頑張っていただきたいなと。むしろその方が、あそこは全部、資料等も全部公開ですので、国民の納得や信頼も得られるんではないかというふうに思っております。
  16. 小林正夫

    ○小林正夫君 次に、山名参考人にお聞きをいたします。  参考人がある新聞で言われていたことを少し読まさせていただきました。その中で、最大の問題は一から三号機の溶け落ちた燃料の状態がよく分からないことであると、このようにおっしゃっておりました。どのような状態になっていることが最悪なのか、どういうふうに先生は考えられているのか。それと、この溶け落ちた燃料を取り出す最大のポイントは何なのか。  さらに、私は、防護服を新たに開発をして、少しでも今危険だと言われているところに人が行って直接見られるような、そういうような防護服を私は開発していく必要もあるんじゃないかと思うんですが、その辺についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  17. 山名元

    参考人山名元君) まず、炉心の中の状況がどういう状態が最悪かという御質問でありますが、とにかく我々がこれを廃炉で目指すべきは、この炉心にある非常に非定常な状態のもののハザードを早く取り除きたいということなんですね。つまり、もっとコントローラブルなところに移して安全を確保したいと、こう思っているわけです。つまり、取り出すことが非常に重要なタスクで、これに急ぎたいという思いがあるんですが、恐らく最悪というのは取り出しに圧倒的に時間が掛かってしまうような状況なんですよ。  今、既に過酷事故のシミュレーション等によって原子炉の中にどういう状態であるだろうということは大まか推定ができております。例えば、二号機ですと、三〇%が圧力容器の底の部分にありまして、七〇%は格納容器の下に落ちていると、こう考えられているんですね。したがって、それをターゲットに取り出しの開発はやるんですが、できればなるべく早くアクセスして、うまくすっすっと取っていくような体系に持っていきたいということで今開発を進めているわけです。それが結構手間が掛かるとか、何というか、分散がし過ぎているとか、そういう状態というのは私としては非常に嫌ですね。  ただ、これは、御注意いただきたいのは、時間が掛かると。別な言い方をすれば、多少コストが掛かるという視点での話です。要は、中がどうなっていようが結局全部取り出しますので、そういう意味では、リンゴがあろうがミカンがあろうが同じだと言えば同じなんですよ。要は、たくさんばらばらあるか、さっと出せるかというような話でありまして、その程度の話だというふうに御理解ください。  それから、取り出すためにはできるだけ炉心を水で満たしたいわけです。冠水法と呼んでいますが、今水が漏れているところ、漏れ箇所を発見して、水を止めて、水をいっぱいにすれば、作業員の安全等も確保しながら合理的な取り出しができると。その水をどうやって止めるか、あるいは水が止められない場合には、万一止められない場合には別の方法を考えるというようなアプローチが結局キーになってくると思います。  防護服の御指摘は、貴重なコメントとして頂戴したいと思います。といいますのは、既に我々、遠隔技術開発というのをチームをつくってやっているんですが、その中では、ロボットの開発に合わせてアシスト機能ですね、作業者が力を出せるような機能を持つとか、先生おっしゃるように、放射線防護についてもっと機能を持たせるようなアイデアもたしかあったと思うんです。おっしゃるように、作業員の安全確保というのは非常に重要ですし、高線量での作業になるので防護服をもっと快適なものにしていくというようなアプローチは今後必要であるというふうに考えます。ありがとうございます。
  18. 小林正夫

    ○小林正夫君 引き続き山名参考人にお聞きします。  原子力技術者が減ってきている。特に三・一一以降の、福一の原子力事故以降、原子力を目指したいという、そういう学生さんも随分減ってきたということを聞くし、また廃炉作業というのは三十年、四十年掛かる。廃炉現場にもしっかり原子力技術あるいは知識を持った方がそこに入ってこないとなかなかこれは進んでいかないんだと思います。  だから、日本全体として原子力技術者を養成をし、またそういう道に進んでもらう人を多くつくっていく、このためにはどういうふうにしていったらよろしいか、考えているか、お聞かせ願いたいと思います。
  19. 山名元

    参考人山名元君) 今の人材の話は、まず人材のスペクトルをどうするかという問題があります。つまり、現場オペレーションに当たっていく人と、それから比較的エンジニアとして動く人と、それから総合的にリーダーシップをやるようなプロジェクトマネジメントというような人間をどう確保するかと、それから関係する技術開発をやる人間をどうするかと、いろんな人材が要るわけですね。全部にわたって人材の強化が必要であると思いますが、恐らくやっぱりそのリーダークラスを確保するというのが全てに関わるというふうに思います。といいますのは、きちんとしたリーダーシップの下で体制ができていけば裾野というのは広がるという思いがあるわけです。  したがって、全体をリードしていくような、頭が良くて積極性のある人間をどう確保していくかというのがキーになってくるということで、それは実は私が関与している大学の話にもなってくるわけです。  今、私が大学の立場で感じているのは、学生に情報が行っていないんです。私たち授業とかゼミで話しますと、すごく分かってくれるし、自分もやろうというような意欲も出てくる。結局、今は報道ベースでやはりこの福島状況のようなネガティブな情報が満ちていますので、その情報も大事なんですが、こういう技術的な重要性があるとかチャレンジがあるとか意義があるということがやっぱり学生たちに伝わっていないんですよ。彼らにはもうメディアしか情報入手がないですから。ですから、そこをやっぱり強化していく必要があると。大学は、やっぱりもう少しそういうものに関わる基礎的な研究とか学問をしっかり教えていけば、彼らは、彼らというのは学生のことですが、必ず、そういうものに従事するということは、重要性を自分で感じ取っていくことになります。  だから、その仕組みをつくることが重要で、そういう意味では、やっぱりこういった原子力の安全、原子力廃炉技術に関わる基盤的な科学研究をもう少し大学にきちんと残していくような根本的なてこ入れ施策を文部科学省とか、場合によっては経済産業省なんかにお願いしていくということなんじゃないかと。そこに我々教授陣が集まって強化していくことで、若い人たちは必ずこういうところに向いてくれるというふうに思っております。
  20. 小林正夫

    ○小林正夫君 時間の関係最後の質問になると思いますけれども、大島参考人にお聞きをいたします。  先生は、昨年の十二月のある雑誌で、原子力発電所は国民にとって割に合わない電源である、再生可能エネルギーの利用で原発相当分の火力発電は減らすことができると、このようにおっしゃって、再生可能エネルギーを普及していくべきだ、こういう御主張だと思います。  私も再生可能エネルギーを増やすことは大賛成なんです。再生可能エネルギーは、しかし天候だとか、あるいは夜間発電できないとか、発電が非常に不安定だ、そういう点からいうと、再生可能エネルギーでつくった電気の分をどこかでバックアップ電源として用意しておかなきゃいけないということになります。  今回、電力システム改革で、自由化になった場合に発電と送配電と小売と、この三つ事業体に分かれる、こういう法案が今出てきておりますけれども、最終的にこのバックアップ電源、どこが、誰が持つことがいいのかどうか、もしこの辺の御所見があればお聞かせ願いたいと思います。
  21. 大島堅一

    参考人大島堅一君) お答えさせていただきます。  全部お答えできるかどうか分かりませんが、再生可能エネルギーはよく天候によって不安定だというふうに言われることがありますが、多くの再生可能エネルギーを入れてきている国々の経験によりますと、特に風力は予測技術が発達しておりまして、一日前、一時間前、十五分前というふうに予測をして、ほぼ予測どおりの出力が得られるということになっています。予測どおりの出力が得られれば、後は今御指摘のように調整用の電源を稼働させるということによって需給がバランスするようにしていけばよろしいということで、今、ドイツやスペイン、そのほかの再生可能エネルギーが二割、三割と入ってきているところだと、今のところ調整用電源としては確保できていると。それは電力自由化の下でも確保できていると。それを例えば四割、五割、あるいは八割にするんだということになりますと、調整用電源としてどこがどう用意しなければならないのかということになりますが、基本は自由化された電力市場をうまくコントロールして、調整用電源が高くなってくるわけです、価値が上がるわけですから。ですので、それのビジネスが発達してくるわけです。ですので、そのようなビジネスが発達するような規制と誘導を政府として行えば、十分再生可能エネルギーが、少なくとも三割ぐらいは今の状況でも入るんではないかというふうに考えている次第です。
  22. 小林正夫

    ○小林正夫君 ありがとうございました。  終わります。
  23. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合です。  今日は、お二人の御参考人の皆様、大変ありがとうございます。  私の方からも、一つ、人材の確保について両参考人にお伺いしたいと思います。  山名参考人におかれましては衆議院の参考人質疑出席されておりますので、そこでも言及されていたかと思うんですが、特に東京電力における技術的な専門性の集約の低さであるとか、技術的集約でも国際的な知見の集約ができていないというような御指摘もございました。  そこで、今、東京電力ということでいいますと、原発事故以降、累計で約千八百人の方が退職をされていて、特に三十代までの若年層の流出が三分の二を占めるということでございまして、特定の年代がごっそり抜けているというのは組織上、これは特に三十代が抜けているということは、ちょっと二十年先とか考えると非常に危機感を持って対応しなきゃいけないのかなと思っております。未来の人材を確保するということもそうなんですけれども、今をどうするかということだと思うんですね。  そこで、経済産業省、エネ庁としても、東京電力そのものをしっかりと賠償してもらいながら未来のある会社に戻していかなきゃならないというふうに今問題意識を持っているわけでありますが、まず山名参考人にお伺いしますが、今回新しい機構をつくろうとしております、廃炉賠償を一元管理する機構でありますが、これが東京電力にとって人材や技術を集約する手だてとする具体的な、何というんですかね、これは法定業務外なのかもしれませんが、具体的にどういうことを先生としてこの人材確保について、集約についてアドバイスをされるかということをお伺いしたいと思います。
  24. 山名元

    参考人山名元君) 仮にこの機構廃炉支援機能を持って、そこで人材育成についてのある種の、国としての人材育成戦略のリーダーシップを取るようなことがこの機構業務として、附帯業務としてできるようにもしなるのであれば、多分、東電に新たに入っていく人材の道筋を付けるような広い仕組みをつくるとか、その場をつくるとか、戦略をつくるというところにはかなり貢献していけるというふうに思います。先ほど言いましたように、例えば大学や文科省等の協力も得て大きな人材育成供給の流れをつくっていくことで、東京電力廃炉カンパニーやあるいは原子力関係技術者がそこに入っていくというような大きな流れは、誘導するというか仕組みをつくっていけるんじゃないかというふうに思います。  一方で、東京電力の先ほどの人材流出の御指摘でございましたが、この問題は、労働条件の問題とか、それからやっぱり非常にネガティブな仕事が目の前にあるというような、あるいは社会的なバッシングとかですね、現実的にいろんな問題がある中で起こっている話です。したがって、これは東電の一種の経営問題でありまして、経営問題として東電がきちんとそれができる人間を集めていくということが大事なわけです。  それは、東電は既に総合特別事業計画というのをこの機構東電で作って政府に出して認可をいただいているわけで、その中にも恐らく人材育成にきちんと向いていくよという経営方針が書かれているはずであります。それを東電がきちんと経営としてやっていくということをやっていただいて、それを、この機構側が考え人材育成のメカニズムなども生かしてそこを強化していくということになるんじゃないかというふうに思います。  したがって、もしこの法案が通れば、恐らくこの新しい機構は、東電特別事業計画としてきちんとした技術者を確保する経営戦略をつくって、それを政府に上げていくということを、この機構廃炉の面からも指導していくことになるんじゃないかと、こう期待しております。
  25. 谷合正明

    ○谷合正明君 大変ありがとうございます。  人材確保ということについては大島参考人にもお伺いしたいと思います。  参考人は、今回の機構廃炉賠償を一元化することについては反対のお立場ですから、もう少し広い意味で、廃炉であるとか原子力であるとか、この人材の、あるいは技術の確保について、先生のグループでやっているような立場の中でどんなような御提言をされているのか、お伺いしたいと思います。
  26. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 私は、東京電力という組織を維持すること、それを前提に議論を立てているからだと私は思っていて、人材が流出するのはですね、東京電力にこだわる必要はないと私は思っているわけです。東京電力を潰すか潰さないかとかそういうことではなくて、こだわっていることが問題の原点だと思っておりまして、これは人材流出についてもそうです。  東京電力というのは事故を起こした企業であって、やはり世間体にも悪いとか、その事故を、本来的には事故を収束したり廃炉にしたりというのは非常に使命感を持って取り組める課題だと思いますので、本来的には人材が集まってしかるべきものですが、東京電力の一、今度は廃炉カンパニーになるんでしょうが、カンパニーの人間としてやるのは、やはりなかなか働く者としても意義を持って働き切れないんじゃないかというふうに思っております。  そういう意味では、東京電力という存在を前提にするのではなく、一旦処理をしてすっきりさせて、廃炉専門の会社をつくり、それが国家的な役割を持っているんだというふうにした方が人材的には集まると思います。特に三十代の人材が抜けているということについては私も把握しております、聞いておりますので、これは非常に重大な問題で、やはりやりがいのあるものにする、あと労働環境も良くする、それによって人材を確保できるんじゃないかというふうに思っております。
  27. 谷合正明

    ○谷合正明君 ありがとうございます。  次に、廃炉について山名参考人にお伺いしたいんですが、いわゆる福島事故炉の廃炉とそれから通常の廃炉、あると思うんですね。今、世界で四百基を超える原発のうち、四十年を超えるものが一割で、三十年を超えるものが四割ということで、今後世界的にこの廃炉というのは大きく進むということであります。  この事故炉の廃炉と通常炉の廃炉というのは全く性質が違う部分もあれば、ただ一方で、何ですかね、応用ができるような部分もあるんだと思いますが、この事故炉の廃炉と通常炉の廃炉についての研究とか人材面についての整理について、参考人の御所見をお伺いしたいと思います。  また、茂木大臣自身は衆議院の委員会質疑で、通常の廃炉の問題、通常炉の廃炉の問題というのを、機能なりを集約してやることがいいのか、あるいはそれぞれの炉の設置者において、少なくとも通常の廃炉については技術的に確立された分野でもあるので、それぞれがきちんとした人材、ノウハウを持って進める方がいいのか、一体となってちゃんと通常の廃炉も進めるべきなのか、それぞれの炉の責任者がやるべきなのか、そこはちょっと真剣な検討が必要ですと言われているんですが、参考人の御所見をそこの部分についてお伺いしたいと思います。
  28. 山名元

    参考人山名元君) まず、福島第一と通常炉の廃炉関係の話でございますが、今、福島第一の非常に大きく損傷した炉に対する廃止措置は、かなり福島で起こっている特殊性に由来するものが多いです。つまり、溶け落ちた燃料の回収とか大量な汚染物質がビルティングの中にあるのでそれを除染するとか、そういう一Fに特化した技術というのがかなり入っていることは確かであります。  もう一つ一般的な廃炉は既に先生御承知のように世界的にはもう民間ビジネスとして行われておりますし、既に世界中で完全なデコミッショニングが行われた例も二桁ぐらいあるわけです。そういう意味では、通常炉の廃炉というのは技術的には商業ベースに既になっているし、そのノウハウも海外のメーカーにはある、メーカーというか海外の会社にはあるという状態です。  ただ、我が国の廃炉というのを考えますと、まだまだ改善の余地があると。改善の余地って、まだ始まったのは一つしかないんで改善ではないんですが、それは放射性廃棄物の発生をもっと減らしていくというアプローチとか作業員の被曝を下げるとか工期期間を短縮するとかコストを下げるとか、どんどん改善の余地というのは一般炉の廃炉でもたくさんあるわけです。そのために必要な研究開発も今、日本原子力研究開発機構で「ふげん」発電所を使ってやったりしているわけですね。そういう意味ではまだこれから伸ばしていく部分がかなりあるという、こういう状況にあるわけです。  福島で取り組んでいる技術は、福島の一に特化しているとはいえ、実はそれをうまく使えばそのまま一般炉の廃炉にも適用していく技術になるはずです。それはかなり高機能を持たせているから、絶対さっき言った工期短縮とかコスト削減に向いていく技術があると思います。ですから、この一Fの対応でつくった技術は確実に一般炉の廃炉にも将来展開していく余地を探るべきだというふうに私は思っております。  茂木大臣のその、個々にやるべきか、全体でやるべきかという議論はまだまだこれは分析的評価が必要になりますが、ある個人的な非常にジェネラルな考えでやりますと、人材の話とか、そのツールをどう使うかとか、時間的なずれがあるとかいうことを考えると、日本全体をうまく合理化してやっていく余地はあるわけですよ。それは、個々の会社がばらばらにやっているんじゃなくて、例えば一つの会社をつくって、それが今年はここをやる、来年はあそこをやるとか、そういうことをやっていけば技術としても知能としても人材としても合理化が発生するだろうという思いはあります。  しかし、大事なことは、あくまでこれは民営ビジネスですので、これがビジネスとして成立していくというビジネス環境をつくる必要があるわけですね。つまり、それが事業として成立するということが必要でして、そのためには、関係者が集まって大きな会社をつくるとか、何か産業界が自発的に、そういうことを合理化する会社をつくるというような動きがやっぱり自発的に動くということが期待されるということになると思いますね。そういう意味では、市場メカニズムでそういう動きになるかもしれませんが、技術的には福島技術などがどんどん民間で使われていくような流れをつくる必要があると、こう思っております。
  29. 谷合正明

    ○谷合正明君 それでは、あと二分ぐらいですから短く質問しますが、原子力広報ですね、先ほど大島参考人が今の機構の広報はなっていないという話があったんですけれども、山名参考人にではお伺いしたいんですが、新しい機構を今度発足させるとすれば、この汚染水だとか廃炉に関する広報について、どういったことをしっかり対応していかなければならないのか。諸外国では原子力広報についてはもっと進んでいるんだといった専門家の御意見もあるわけでありますが、そういった御所見をもしお持ちでしたらよろしくお願いします。
  30. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 山名参考人、時間の関係もございますので、答弁は簡潔にお願いします。
  31. 山名元

    参考人山名元君) 御指摘のとおりで、恐らくこの機構がもしできた場合には、情報の発信機能を相当高めていただかないと困ると思います。  実は、この廃炉状況というのはほとんど一般の方たち情報が伝わっていないんです。メディアが出していないこともありますし、東京電力のサイトで情報を見ようにしても、ややこしくて見てられないというのがありまして、これをもっと集約して、国として、ここを見たら何でも分かるよという舞台にこの機構がなっていただけるなら、これは大変あるべき姿だというふうに思います。
  32. 谷合正明

    ○谷合正明君 終わります。ありがとうございます。
  33. 松田公太

    ○松田公太君 みんなの党の松田公太です。  本日は、大変お忙しい中お越しいただきまして、誠にありがとうございます。大変勉強になっております。  まず、山名参考人にお聞きしたいんですけれども、IRIDの理事長として御所見を伺いたいんですが、廃炉汚染水対策というのは一体だと思うんですね。もちろん、その中では汚染水対策を、今見えている問題が多々出てきているわけですから、それをとにかく処理をしていかなくちゃいけないという中で、山側から流れてくる地下水の問題、これをどうにか食い止めようということで、私も福島原発に行きまして、今行われている凍土壁の実証実験、実証試験ですね、これを拝見させていただいたりしておりますけれども。  いろいろ、私は専門家ではありませんけれども、拝見させていただくと、またいろんな知見者の御意見をお聞きすると、やっぱり凍土壁というのは問題があるのかなと。様々な問題があってなかなか政府が思っているようにいかないんではないかと。しかも、今行われている実証試験というのが、たしか十メーター掛ける十メーターの小さな中で行われておりますけれども、これが一・五キロぐらいの大きなものになると全く違う次元の話になってくるのかなというふうにも感じているんですね。  IRIDさんは世界中の知見も含めて集められて、たしか八百件ぐらいのそういったノウハウを集められたと。私もざっと目を通させていただきましたが、その中には、凍土壁ではなくて、むしろ堀を掘ってしまおうと、その貯蔵タンクも含めてですね。そして、キャナル形式というんでしょうか、それは廃炉にもつながるというお話をしましたが、最終的には、例えば方向性としては冠水をするという方向性ではなくてドライ型を考えるということにもつながっていくのかなというふうに思っておりますけれども、今現在、山名先生が思われる凍土壁の問題点等ございましたら、またそのメリット、デメリット、また場合によってはそのキャナルの方も、お考えになったことがありましたら、それについてもメリット、デメリットを教えていただければと思います。
  34. 山名元

    参考人山名元君) この件は国の閣僚等会議の下の汚染水処理委員会技術的に考えておりまして、そこで凍土壁というのを最良の方法というふうに判断しております。  私たちは世界からアイデア集めまして、先生おっしゃるようにいろんな方法が提案されていて、御指摘のドライ・アイランド方式というのもその中には入っております。  ただ、凍土壁というのは、一メートル間隔で凍らせて、その間が凍るかどうかということがある程度確証できていけば、これを後はつなげていくということで、それさえ確証できればその実用性というのは十分判断できるだろう、こういうふうに私は、直接の担当者じゃないんですが、汚染水処理委員会判断はそういうふうに見ておりまして、まずそれを確証することが先だろうというふうに思っています。  それから、ドライ・アイランドの話は、もう少し長期的に見る話だろうというふうに思っています。喫緊にそれをやるとか凍土壁とそれを比べるとかいう話というよりは、長い目で見たときはそういうサイト全体を改良するというようなアプローチもあるというような見方で見た方が恐らくいいだろうと。  そういう意味で私は、今は凍土壁方式にまず全力を尽くして、まずあそこを区画を造るということに全力を尽くして、それからまたドライ・アイランド等のほかのオプションもゆっくりコストも含めながら検証していくべきだというふうに思います。
  35. 松田公太

    ○松田公太君 確認ですけれども、じゃ、将来的な廃炉ということを考えずに、地下水を止めるという観点においても、現状であればキャナルを掘る、堀を掘るという方式よりもその凍土壁を造るという方が成功の確率が高いというふうに思われているということでよろしいですか。
  36. 山名元

    参考人山名元君) 時間的にはまず十分早いと思いますし、一年以内ぐらいに十分実現できるアイデアかなというふうに思っています。
  37. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。  大島参考人、今日初めてお会いしまして、話を拝聴させていただきまして、実は昨日、資料も読ませていただいたんですが、初めて話をするとは思えないぐらい、実は私が今まで考えてきた原発の政策に非常に近しいものをお持ちだなというふうに感じて、非常に心強く思っている次第なんですけれども。  今日のお話でも一部ありましたが、私は原発は国有化をするべきだというふうに考えているんですね。その過程で、東京電力につきましては破綻処理をするべきではないかなというふうに考えております。その際は、送電網ですね、送配電網を国が一旦国有化をして、そこから上がる収益をもって廃炉対策汚染水対策にも投じていくべきだというふうに考えているわけですけれども、国有化について大島参考人がどのようにお思いかということを教えていただければと思います。
  38. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 今先生がおっしゃったように、一旦私も、これはなぜ国有化するのかとか、なぜ東京電力がしなくていいのかということを、その前提はもちろんございます、というのは、国が原発事故に関して重大な責任を負っているということを踏まえれば、そういうことを、むしろ国有化を行って全責任を負うという体制をつくった方が私は合理的だと思います。  今、国や東京電力、国の中でも様々な機構、今回の機構の話もありますが、様々な機関が関わっているがために統一的な対策が取られないでいます。ですので、今先生がおっしゃったような、送配電網も含めて一旦ちゃんと整理をした上で、破綻処理をした上で、国が持つなりあるいは売却するなりして資産をきちんとやった上で事業を統一的に、廃炉もですね、統一的に行った方が合理的だと思います。先生がおっしゃるとおりだと私は思っています。
  39. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。  それでは、同じ質問を山名参考人にもしたいんですけれども、山名参考人はお話の、今日の、中で、廃炉賠償安定供給ですね、ここが三つどもえで進めなくてはいけないというお話だったと思います。国が全力で取り組む強化が必要なんですよというお話もいただきましたが、お話を伺っていますと、であれば国有化するというのも一つの方策だと考えられるのかなというふうに思うんですが、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  40. 山名元

    参考人山名元君) 廃炉という事業に関して言えば、長期的に考えるともう少し国が入った組織というのはあり得ると思いますし、私もイギリスのNDAのようなイメージというのは前から持っておったんです。ただ、現実的に、今時点で取り組むためには、それを目指すことは今はできないだろうというふうに思っています。  それは、何というんですか、大島先生もおっしゃったように、国民負担在り方をどう考えるというような非常に重い議論がなされねば少なくともならないし、そのための人材の体制とか人材の育成とか、そういうものもそうそう一朝一夕にできるものでは少なくともないです。もしそれを考えるんであればもう少し長期考えるべきであって、私は少なくとも、当面、この賠償機構を使うというような方式が現実的にはフィージブルだというふうに思っているんです。  それから、もし東電を解体すると、国有化するというのが大島先生の御意見だったというふうに思うんですが、今大事なことは、やはり賠償も進めながら電気も安定に確保しながら廃炉も進めなければという喫緊の課題が今目の前にある、その中でそれだけ大きな体制変換をやっても、それを変えられる強固な体制をすぐつくるというのは現実的には難しいんじゃないかというふうに思います。これを、むしろ東電というあの事故を起こしたライアビリティーのある組織にきちんとやらせるということを、政府がこういった新しい機構できちんとサポートし、監督、監視しているという体制をやることがまずはでき得る最大の方法だなというふうに私は今考えています。
  41. 松田公太

    ○松田公太君 今るるお話をいただきましたが、例えば国民負担部分に関して言うと、もう私は、これも大島参考人と近いと思うんですが、もう既に全て国民負担なんですよ、結局は、最終的にはですね。それを考えると、国民負担というのは、国が一旦、例えば原発廃炉をしなくてはいけないということで国有化する、それをまたその送電部門の収益からしっかりと費用を出していくということを考えれば、私は長期的に見たらむしろ国民負担は減るんだろうというふうに思うんですね。その送電網も一旦国有化しますけれども、最終的には私は売却すればいいと思っているんです。そこで六兆円から八兆円ぐらいの収益が得られるのかなというふうにも思っておりますし、また、その人材が、体制がちょっと難しいんじゃないかというお話に関しても、私はそんなに大きくそう変える必要はないと思っていて、今東電が抱えているまさしくその廃炉カンパニーなんかを国が一旦そのまま受け入れてしまえばいいという話だと思うんですね。  私は元々経営をしておりましたけれども、経営にとって一番重要なのは、安定供給のために重要なのは、やっぱりキャッシュフローなんですよ。お金が投下されれば会社というのは倒産することはないんですね、どんなに赤字だったとしても。ですから、そこの部分は国がしっかり面倒を見るということであれば、明確に、国と東電責任を、しながら、国民にも理解をいただきながら、私は廃炉処理を進めることができるのかなと、このように思っております。  今の山名参考人のお話に対して、もし大島参考人の方から何か反論がございましたら、是非お願いできればと思います。
  42. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 私は、今委員がおっしゃったように、廃炉カンパニーが四月からできたということで、その廃炉カンパニーと今機構が持つような機能をもう国の中で合体させて公社なりなんなりをつくった方が公明正大にできますし、また効率的にできると私は思っているわけです。  あと、その組織改革がそれほど大きな事業だとは、また大変なものだとは思っていなくて、むしろ廃炉の方が大変なことですから、その廃炉に向けた組織をきちっとつくるということが国会なり政府なりの役割ではないかというふうに考えております。
  43. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。  ちょっともう時間がないので最後の質問とさせていただきたいと思いますが、先ほどコスト等検証委員会のお話が出ておりました。元々八・九円でしたっけ、二〇一一年に出された数字というのが。九円でしたっけね。現状は大島参考人は十二・六円ぐらいじゃないかというふうに試算をされていると。私どもも独自な試算をしておりますけれども、バックエンドのコスト、特に最終処分とかそういったものをもっと入れる必要があるのではないかなと思っていまして、その場合はもうちょっと高い、場合によっては十五円、十六円ということになってくるのかなというふうに思っております。  その根拠、そういった部分は今日時間がないのでもうお聞きしませんけれども、お二方にお聞きしたいのは、そのコスト等検証委員会最後に行われたのが二〇一一年、事故の後ということで、もう大分前になりますので、これはもう九円というのは全く今では参考にならない数字かなと私も思っておりますので、なぜこのコスト等検証委員会が開かれないのかということは私は非常に不思議に思っていて、国会でも質問したことがあるんですが、なぜこれが行われないのか。お二人は委員会のメンバーでもありますから、是非これを開いてくれというお話も委員の方からもしていただきたいなというふうに思っているんですが、いかがでしょうか。じゃ、山名参考人からお願いします。
  44. 山名元

    参考人山名元君) 私が答える立場にないんですが、経済政策、経済政策というかエネルギー政策として考えるときに二つあると思うんですよ。一つは、四十年均等化コストを新ビジネスに関して評価するというああいうやり方と、それから現在の状態、ここ近々の数年から十年ぐらい何がコストとしてどうだという話と二つに分けて考える必要があると思っています。  そういう意味で、四十年均等コストとしてああやって出したものは、ある過程でああ出したという一つの結論があって、それを見直すのはもう少し長いスパンで私はいいと思います。もっと大事なのは、これ、近々のコストですね。今、ここ数年、何をどうやったら一番安くて得なのかと、それが新しいエネルギーの、日本に生きるのかというのを考えるのが先だと私は思っております。
  45. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 私は、やっぱりあの原発事故の後に様々なコストが発生しているということは事実です。それをもう一度、独立したというか、相対的に独立した専門家が検証する必要はあると思っております。これは国民負担と直結するからです。ですので、政府の中かあるいは国会の下でか分かりませんが、是非国民が透明性がある場で監視できるような形で再検証していただきたいなというふうに思っております。私もそれについては微力ながら貢献したいというふうに思っております。
  46. 松田公太

    ○松田公太君 どうもありがとうございました。
  47. 倉林明子

    ○倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。  今日は両参考人に御出席いただきまして、本当にありがとうございます。大島参考人におかれましては、体調が悪いところ、押して出席していただいたようで、本当にありがとうございます。  最初に山名参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、今日の意見の陳述の中でも、考え方改めたということで強調されていたところで、本来、この廃炉については公的な専門機関が管理をしていくべきだということを主張されていて、その部分かと思うんですけれども、本来、公的な管理をしていくべきだという考え方をしていたというところをもう少し説明いただきたいと思うのと、先ほどの質疑の中でも、当面は今の機構提案しているやり方をしていくべきだと、維持してサポートと監視をしていくべきだという御発言だったかと思うんですけれども、じゃ、当面ではなくて本来機能に戻すというタイミング、どこでならそういう切替えをしていけるのか、していくべきだとお考えなのか、その辺お聞かせいただきたいと思うんですけれども。
  48. 山名元

    参考人山名元君) 私はかねて、英国が取っているようなニュークリア・デコミッショニング・オーソリティー、NDAのような仕組みというのは一つのアイデアだというふうに思っておりました。ただ、NDA、イギリスと日本の大きな違いは、英国のNDAは国営でやってきた原子力廃炉を国営でやろうという考え方ですが、こちらは東電という民間ビジネスの失敗を国がどこまで関与するかという問題なんです。  これは、先ほどから国民負担という議論が出ていますけれども、非常に大きな問題でして、私は個人的には、結局この一Fの廃炉の失敗というのは国民全体の損失になるので、非常に公益性があるという思いは持っておりました。したがって、そういう意味でNDAと、NDAと完璧には言いませんが、それとやや民間性を持ったものの中間ぐらいのイメージを持って、むしろ技術の集約という点を強調してです、そういう組織をイメージしていたということであります。  ただ、今当面と言いましたが、この賠償支援機構を拡大するという仕組みが確実に動くということをまずはやるべきだというふうに思います。そこに技術者を集約すれば、今目指していたような、技術を集めるという半NDA的な組織というのはまず一度できるわけですから、それがまずきちんと動くということに全力を傾注すべきだというふうに思います。ですから、当面というのは、いつ何どきどうするというイメージでは決してないということです。
  49. 倉林明子

    ○倉林明子君 国が今回前面に出るということで、国費投入仕組みということが賠償にとどまらず廃炉、汚染対策等に広がっていくということになるわけです、この法が成立すれば。  ただし、国と東電責任についての御発言もありましたけれども、負担の在り方ということではやっぱり大きく議論していく必要があると、国会としてもしていく必要があると思っているんですけれども、それぞれの参考人に負担の在り方についてお考えを表明していただきたいと思います。
  50. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 国と東電の負担の在り方なんですけれども、私は環境経済学なので環境経済学の観点から申し上げますが、環境汚染が出た場合の基本的な費用負担の原則というのは汚染者負担原則です。ですので、基本は東電が負担しなければなりません。これはどのような環境問題でも貫いていて、国費が基本的に汚染問題に対して支払われるということはないわけです。というのは、これはモラルハザードを引き起こしますので。なぜなら、汚染者がもし汚染した場合に、国が出てきて全てお金を払ってくれるということであれば対策はしなくてもよいということになりますので、それはモラルハザードを引き起こすわけですね。  ですが、今回の場合は、非常に大きな事故であるということもあって、国が出ざるを得ないというのはもう国民もしっかり認識しているというふうに思いますし、私もそのように思います。そのような場合は、やはり汚染者がどこまできちっと負担したか、要するに、汚染者の負担の在り方というのは、一般の自由主義的な経済原則でいうと、やはり出すところが出して自らを整理するというところから始まるはずです。さらには、国もこの汚染問題に対して大きな責任があったということをきちっと公的に認めることですね。これはあの国会事故調査報告書の中でも繰り返し指摘されているところでありますので、やはり今回の福島原発事故に関しては、規制者規制し切れなかったとか原発をむやみやたらと開発してきたという原則に立てば汚染者なんであるということを認識した上で、汚染者として賠償するということはあり得るだろうというふうに思っています。  ですので、この原則をきちっとした上で負担をきちっとしないと、お金が足りないから国が出すとか、それはいつまでも出すことになってしまうので、それは非常によろしくないわけです。モラルハザードを引き起こしてしまうわけです。ですので、モラルハザードを引き起こさないような原理原則を立てた上で、最終的には国民負担になるというのも必要かなというふうに思っています。  以上です。
  51. 山名元

    参考人山名元君) 御質問に対して、まず負担という意味では、東電がそのライアビリティーの下で負担すべきというのが全ての原則であるというふうに思います。  一方、国の方が担うものが幾つかありまして、それは、一つは、この事故に対して非常に難しい技術が要求されておりますので、技術開発が必要です。これも本来は東電の一義的責任になるんですが、東電がやっていたら多分相当時間が掛かったり技術を集約できないということから、国が一つの先端的技術開発を担うという考え方があっていいと思います。  もう一つは、この福島の対応を世界がどう見ているかという問題です。世界はこの福島の問題は日本国全体の問題として見ているわけです。東電なんて出てこないんですね。であれば、これを国として世界にどう向かい合っていくかという国際連携在り方、国際協力の在り方、そういったものについては国がそこを担っていくというのはあるべき姿かというふうに思います。  それから、この事故によって、東電の力がまだ不十分だということはさっき私申し上げましたが、その状態によって起こっている様々な広い派生的影響、国際的信頼の喪失、風評被害、この福島に直接関与していない国民の人たちもいろんな損失を受けているという国全体としての国家的損失を防止するには国がそれを負担して行うべきだというふうに思います。  それから、最後に、原子力安全規制の問題が議論されました。あるいは、放射性廃棄物最終処分なり、そういった国としてあるポリシーを決めていかないと進まないものが必ずあります。この部分については国が責任を持って行っていくということが必要だと思います。  以上です。
  52. 倉林明子

    ○倉林明子君 あれだけの原発事故を起こした企業がまだあるということの方が世界には不思議かもしれないなと率直に思っております。  この事故を起こした責任ということでもう一つ参考人にお聞きしたいのは、プラントメーカー、この責任についても私はしっかりはっきりさせる必要があるというふうに思っているわけで、原賠法では免責ということになっているわけですが、事故原因の徹底解明を進めて、果たすべき責任がやっぱりプラントメーカーにもあるんじゃないかというふうに思っていますが、お考えはいかがでしょうか。
  53. 山名元

    参考人山名元君) 原賠法で定義するという意味での責任はメーカーにはないというのは明確であると思います。  ただし、先生御指摘のように、福島の発電所を造ってきたメーカーというのは技術的にそれを造ってきたという問題がありまして、オペレーションの失敗、つまり東電側が、発電事業者側で起こったトラブルであるからそれを製作、設計した者については責任はないといえばそのとおりなんですが、実際は電力事業者とメーカーが一緒にプラントを考えてそれを導入してきたという歴史は確かにあるわけです。  そういう意味では、技術的にメーカーがこの問題を解決するという技術者としてのある種の責任はあるだろうというふうに思っていまして、そのことはまさに私が担当しています技術研究組合にメーカーは参画して、自分のお金を払ってですよ、これは自分の補助金の負担分を払ってその解決に努力しているということをやっておりますから、そういう意味技術責任について彼らは取り組んでいるんだろうというふうに思います。  以上です。
  54. 大島堅一

    参考人大島堅一君) プラントメーカーは、今の原賠法の下では東京電力賠償責任が集中しておりますので、賠償に関して支払責任はないというのは確定しておりますけれども、ただ、責任集中しているというのは損害賠償を容易に進めるためというのが基本だと思います。それを免罪するためではないと私は思っております。  ですので、例えば、今、山名参考人がおっしゃったような技術的な協力に加えて、例えばメーカーが、これは自主的なものになるのか法律的なものかは分かりませんけれども、メーカーがある種の基金を設けて、そこから一定程度技術なり損害賠償なりに資金を拠出する、そのような仕組み考えられると思います。これは大気汚染なんかでもメーカー責任が問われたときにやられていることですので、こういった手法を使って改善の余地はあると。  あと、もう一つは、原賠法の中で、メーカー、ほかのメーカーも含めて、原子力事業者事故を起こした原子力事業者がほかに求償できないという形になっていますが、原賠法を改正して求償できるという形にすれば、こういった問題は避け得るだろうなというふうに思います。
  55. 倉林明子

    ○倉林明子君 東電を存続させるということが前提となったこの機構法のスキームなんですけれども、このことによって株主、メガバンクの責任は問われていないと、これは本当に重大だなというふうに思っているんです。ところが、破綻させれば電力債が優先されるという現行法の仕組みがありまして、これを盾に被害者への賠償ができなくなるということを盛んに政府も説明としてしているわけですが、この現在の仕組みについて大島参考人に御意見を伺っておきたいと思います。
  56. 大島堅一

    参考人大島堅一君) このことについては、例えば私がお配りいたしました冊子の百九十二ページを御覧いただきたいと思うんですけれども、電力債、今御指摘いただいた電力債については、当然ながらルールを変えるわけにはいきませんので保護した上で、あと一般の商取引の債権については国が保護した上で、そういう意味で、それをすればいわゆる経済的な混乱は避け得ますし、また電気事業を維持するという意味での商取引が妨げられることはないので、そこに関しては保護した上で破綻処理するというのは可能だというふうに思っております。
  57. 倉林明子

    ○倉林明子君 今日、大島参考人から「原発ゼロ社会への道」ということで大きな冊子もいただいたので、ここも本当はもうちょっとお聞きできればよかったんですが、最後に、今回、エネルギー基本計画ができて、先ほども御紹介あったんですが、重要なベースロード電源と原発の位置付けが明確にされた。これについて最後大島参考人の御意見を伺って、終わりたいと思います。
  58. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 時間が迫っておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
  59. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 先ほどどなたかの御発言というか御質問にお答えしたとおりなんですけれども、やはりこういった位置付け後、更にもう一度今回のエネルギー基本計画の中で位置付けられたというのは非常に私は残念に思っておりますので、もう一度福島原発事故の現状に立って、反省に立って、原子力という電源の位置付けをいま一つ見直していただきたいなというふうに考えております。
  60. 倉林明子

    ○倉林明子君 ありがとうございました。
  61. 中野正志

    ○中野正志君 日本維新の会の中野正志でございます。  両参考人にお伺いをいたします。  ここ二、三日前でございますけれども、私は産経新聞で読ませていただいたんですが、国連の気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCC第三作業部会の報告書が明らかになりました。その中で、CO2に代表されるいわゆる温室効果ガスの削減を検討した報告書だと。それで、このIPCCの第三作業部会は、実効性の高い温室効果ガス削減の三本柱として、一つに再生可能エネルギー、二つ目、原子力エネルギー、三つ目、CCSを伴う火力発電、いわゆる、御存じのとおり、地中深くCO2を埋め込んでいるというCCSを伴う火力発電、この三つを掲げているわけでありまして、これらの低炭素エネルギーの比率を二〇五〇年までに今の三、四倍にすれば、何とか地球温暖化、せいぜい二度、三度ぐらいの上昇で済ませることができると、こう書いてあります。  私は、ノーベル平和賞をもらったIPCCでありまして、ここが、福島事故の後であるにもかかわらず、福島事故を理由に排除することなく温暖化対策の柱の一つとして大きなウエートをこの原子力エネルギーにも置いているということに実は注目したんです。原子力エネルギーの位置付けで、こう書いてあるんですね。成熟した低い温室効果ガス排出のベースロード電源と、こういうふうに位置付けをされているわけであります。  今年十二月にはCOP20、ペルーのリマで開催をされます。このときに、この温室効果ガス排出削減の新たな国際的な枠組みづくり、これもしなければなりませんけれども、原発を持っている国は原発による温室効果ガス排出削減を当然ながら織り込んだ数値を表明することができるのに対しまして、残念ですが私たち日本国はそういうわけにはいかない。  そんなことどもなども踏んまえながら、この温室効果ガスの、私は、無理に削減をしよう、あるいは結果的に電気代の高騰、こういうことになりますと、製造業、もう今以上に海外移転が加速されるということにもなるわけでありますけれども、こういったIPCC第三作業部会のこの報告書について、両参考人に感想をひとつお聞きをしたいと思います。
  62. 山名元

    参考人山名元君) IPCCの報告は、私も先生と同じように非常に重要であるというふうに思っています。  一番問題なのは、世界のエネルギー需要が今後急増するという問題、それから火力、火力というか化石資源のマーケットが世界中でこれから大きく変わっていくという問題ですね。そういう意味で、需要増、それから新興国の発展、それからマーケットが不安定、その中でもCO2下げていくためには何が必要かという非常に難しいことが問われているというわけです。  そういう意味では、世界全体をグローバルに見ると、原子力というのは私は不可欠であるというふうに思います。といいますのは、火力にCCSを付けるというのはやっぱりコスト的に非常に大きくなるということが言えます。コストという市場メカニズムで入っていくためには相当時間が要るだろう。再生可能エネルギーは当然世界中で増やしていきますけど、それがその投資としてどこまで入るかというのはまだ見極めないと駄目だと。そういう不確定性を考えると、原子力が世界的に拡大するということは、今の温室効果ガス低減のかなりプルーブンな手法の一つであるということになります。  以上です。
  63. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 気候変動問題については、私が気候変動枠組条約の第一回締約国会議から参加しておりましたので、非常に関心を持って見ております。  IPCCの第五次評価報告書の第三ワーキンググループの報告書が出て、このような、今後、二〇五〇年までに半減、二一〇〇年ぐらいまでにゼロぐらいにCO2を排出削減しなければならないということは、まさに環境問題が非常に大きな問題として出てきたということを表すもので、私も非常に関心を持って見ております。  ここで重要なのは、原子力というのは電気しか供給できないということです。よく、先ほども申し上げましたように、原子力はエネルギーの安定供給に資するんだというふうに言うんですけれども、電気なんですね。日本は三・一一以前はたしか原発電気の三割を供給しておりましたが、これ私は最大だと思いますけれども、それであってもエネルギー全体からすれば一割満たないぐらいのエネルギー源なんです。  ですので、温暖化対策の本命は何かというと、省エネと再エネです。原発が幾ら増やしたとしても、元に戻したとして、まあ無理だと私は思いますけれども、元に戻したとしても一割行かないぐらいなんです。その中で本質的に温暖化対策を進めて二一〇〇年までに温室効果ガスをゼロにするにはどうするかというと、全体的なエネルギー消費量をゼロに近づけて、エネルギー消費量を、どんどん需要を減らしていって、供給面では再生可能エネルギーを中心とした供給構造にするということによってしか多分解決できないだろうと、こういうふうに思います。  申し上げておけば、気候変動枠組条約の中で原子力というのは位置付けられておりませんで、まだ原子力を利用して促進すべきかどうかということについては、対策の案の中には、もちろんオプションの一つ、考慮のオプションとして入っておりますけれども、そこを促進すべきだというような条約はないわけですから、そこは誤解のないようにしていただければというふうに思います。  以上です。
  64. 中野正志

    ○中野正志君 大島参考人、この間、環境省、地球温暖化の日本への影響に関する報告書、発表いたしました。茨城大学の三村教授らの研究チームでありまして、洪水被害、今世紀末三倍になると。気温は最大で六・四度上昇だと。もうこういう形になりますと、今世紀半ばでも暑さが原因で亡くなる人が今の二倍ぐらいだろうと。あるいは、例えば米作りですね。私は宮城県ですけれども、もうどんどんどんどん、今北海道の米が一番うまいとかいろいろ言われるんでありますけれども、亜熱帯の結局は日本ということになったら、農作物を含めて大変な影響も当然ながら出てくると。  私は、そんなことを考えますと、やっぱりこの温室効果ガス、なかんずくCO2の問題を考えれば、当然ながら、やっぱり今、大島参考人とは逆な意味で、原子力エネルギー、これはこれでしっかりと確保されるべきだと考えます。  この原子力エネルギー、ゼロにしたときに、そのいわゆるエネルギー分、省エネとそれから再生可能エネルギーでしっかりと補填できるとお考えになられますか。
  65. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 原子力に関しては最大で電源の三割でしたので、それに関して再生可能エネルギーで賄うことは十分だというふうに思っております。  付け加えれば、これから、IPCCのレポート、これは第一次評価レポートなんかでも書かれておりますが、極端現象というのが起こるとされています。極端現象には、例えば台風が非常に大きくなって、風速、秒速八十メートルを超えるような台風が出てくると。これ竜巻並みですから、竜巻並みとなりますと原子力施設は大丈夫なのかということになります。竜巻になりますと、八十メートルぐらいになりますと、自動車が飛ぶとかそういうようなレベルです。一般の家屋は倒壊する、鉄筋も含めて倒壊するというレベルですので、そのときに原子力が維持できるんだろうかと、私、素人ながら、技術的には素人ながら考えたりしますので、原子力は過酷な気候変動の下で維持できるのかなというのを私はちょっと懸念しているところであります。
  66. 中野正志

    ○中野正志君 山名参考人、ただいまの大島参考人のコメントに、当然山名参考人の御反論もあろうかと思いますが、一言、二言、御反論いただけませんか。
  67. 山名元

    参考人山名元君) 再生可能で三〇%供給、これは率直に私は難しいと思います。  それは、その装置の投資、それから送電系統の、電力に関してはですよ、送電系統の全体的な強化、それから、保証できない電源になるので、大島さんは予測できるとさっきおっしゃっていたんですが、太陽光等含めて考えると、そうそうその供給を保証できない、予測できない、短期変動を伴うというようなことができますし、それからバックアップ電源の議論が先ほどありましたように、大量の動かさない火力発電所を持っているというようなことがペアになってきます。  そういうことから全体的に考えると、三割入れるというのは物すごい大きな投資と無駄な設備を維持することになっていくと思います。そういう意味で三割は難しいだろうというふうに私は思っております。
  68. 中野正志

    ○中野正志君 山名参考人とまさに考え方は共有できるかと思います。  さっき、技術の改善はますます進むというお話が山名参考人、ありました。IRIDをつくられまして、本当に日本技術の層、厚い、強い、たくましい、こういうことで、実はおとといのこの経産委員会でもIRIDの問題、私なりの評価度で紹介をしたばっかりであります。  このIRID、今回の新しい法改正に基づく機構もそうでありますけれども、廃炉研究というのは後ろ向きだけの研究ではないんだ、新しい技術によって新しいビジネスもしっかりと生み出し切れる、生まれる可能性も非常に大きいんだ、そう理解をしているところでございます。是非、この廃炉の後始末は明るい未来につながると、こういう確信で非常に期待感を持っておるんでありますけれども、山名参考人、感想を一言お願いします。
  69. 山名元

    参考人山名元君) 廃炉というのは、先生おっしゃるように、比較的ネガティブなレガシーに対する始末というふうに考えられがちですが、あらゆる技術、別に原子力だけじゃないんですよ、どんな産業でもある始末を付けながら次の産業につながっていく、そういう流れがサステーナブルに続くというのがまともな私は国家だというふうに思っています。  原子力廃炉もそれの一つでありまして、これをきちんと安くやることでまた新しい未来が、新しいエネルギー形態が生まれていくという一つのスタートのトライだというふうに私たち考えて取り組んでいるところでありますので、先生の御指摘に私は共感いたします。
  70. 中野正志

    ○中野正志君 ありがとうございます。  山名先生については、京大教授という大変御多忙の身でありながら、このIRID理事長ということで、大変お忙しい毎日であります。コメントをちょっと読ませていただきましたが、福島事故の後始末を早く終わらせることは福島を元どおりにする第一歩、早く意義深い成果を出したいと、こう書かれておりました。健康こそ命でございますので、御健康で毎日頑張ってください。ありがとうございました。  また、大島参考人、ありがとうございました。
  71. 真山勇一

    ○真山勇一君 結いの党、真山勇一です。山名参考人、そして大島参考人、今日はありがとうございました。  早速質問をさせていただきたいと思うんですけれども、大島先生からいただいたこの資料の中に原子力損害賠償支援機構のホームページというのがあって、私はこれ見てやっぱり私も驚きを隠せません。これが情報公開なのだろうか、そういう思いでいっぱいです。これは単なるお知らせじゃないかというふうな感じを受けています。    〔委員長退席、理事加藤敏幸君着席〕  情報公開ということは本当にこれ大事だと、もうどなたも繰り返しおっしゃることであって、今日恐らく、原発それからこうした賠償の問題に対しての賛成、反対、それぞれの御意見をお持ちの方も、やはり立場は違っても情報公開はちゃんとやらなくちゃいけないということでは共通だと思います。  先ほどの山名先生のお話の中でも、学生に情報が行っていなくて、学生が何も分からない。それから、先生の著作の中でも、放射能情報というのは正確に伝わっていないから放射能に対する誤解があるというふうなことも言われていますね。私も、本当にこの今の現在の世の中で情報公開がどれだけ大事かと、そう認識持っております。原発に対する、原子力に対する安全神話、それから放射能に対する逆に不安、これ両方とも情報不足から来るものではないかと私は思います。  これは本当に毎回毎回、もうこれまで何度も何度も繰り返されていることですけれども、情報公開、実現できていません。原発事故があったけれども、この原子力関係ではこうした反省が本当に生かされているのかどうか、私はそんなことをとても疑問に思う。何も変わっていないんじゃないかというふうに思うんですが、お二人にお伺いしたいんですが、この体質どうなっているのか、一体どうすれば変わるんでしょうか、処方箋あるんでしょうか、これをお伺いしたいと思います。じゃ、まずこの資料をいただいた大島先生からお願いします。
  72. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 原子力損害賠償支援機構に関してホームページを取ってまいりましたが、これは本当にこの原子力損害賠償支援機構がいかに秘密主義というか、情報を出さない機関かということが端的に分かるところであります。もちろん結果は出ています。結果は出ていますが、結果だけ出して、じゃそれでよいのかということが、実は福島原発事故の直後から原子力政策に関連して様々指摘されてきたことなわけです。    〔理事加藤敏幸君退席、委員長着席〕  これはもちろん国が非常に強く関わる、認可法人というのは国が強く関わる法人ですので、やはり審議在り方審議プロセス及び資料に関しては公開すべきだと思います。これに関しては原子力規制委員会が最も公開に関して進んでいると思います。というのは、全ての会議はビデオも通じて公開されておりますし、資料も出ております。利害関係者と会うときにはこういう記録を残すようにとか、そういうものまで付け加えられています。  ただし、これは原子力政策に関して、規制に関しては規制委員会で公開されるようになりましたが、原子力開発政策の本体である、原子力損害賠償支援機構もその一つですけれども、経産省の意思決定プロセスとかに関しては余り出てきません。もちろん審議会の資料は出てきますけれども、原子力規制委員会で取られているような厳しい情報公開、あるいは利害関係者と会うときの原則等々についてはまだまだ不十分だと私は思っていますので、この原子力損害賠償支援機構に関して資料をお持ちいたしましたが、全ての原子力政策に関わる行政の資料審議内容については基本公開であるということをすることによって初めて国民の信頼が得られると思っておりますので、これは国会先生方にお任せというか、こういうことがないように御指導いただければというふうに思っております。
  73. 山名元

    参考人山名元君) 御質問の件は、原子力に関わる全体の情報公開の話と、この機構に関わる情報公開の話に分かれるかと思います。  原子力について言いますと、先生の御指摘のように、原子力という非常に技術的になかなか難しい問題については、国民皆さんときちんと情報を共有するということがもう基本中の基本であるというふうに思います。したがって、情報公開というのはもっともっと進めていくべきものであります。  ただ、情報公開だけじゃなくて、対話ですね、コミュニケーションというのが非常に重要だというのはもうあらゆるエネルギー政策の場でも議論されてまいりました。いわゆるステークホルダーインボルブメント、関係する人たちにきちんと常にディスカッションと情報提供があるという何かの仕組みは、恐らくこれは政府が主導してつくっていくべきものであるというふうに思います。当然地方自治体も絡む話であります。  それから、この賠償支援機構に関する情報公開については、この絵も私はこんなものかなと思って見ていたんですが、賠償支援部分については私はちょっと論評できない立場にあります。立場にあるというか、専門性が低いということです。  今問題になっている廃炉支援に関してだけ申し述べますが、廃炉支援で大事なのは、やっぱり最新状態福島でどうなっているか、今何が起こっているかという情報をリアルタイムにお伝えすることが物すごく大事なんですよ。これをお伝えすればある程度安心していただけたりしますので、リアルタイムの情報を出す機能をこの支援機構には是非持っていただきたいというふうに思います。
  74. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。  そして、今回のこの廃炉というのは、海外ではもう既に行われていることですけれども、日本ではこれから始まるということなので、まだいろいろな情報がないということですけれども、一昨日のこの同じ経産委員会で私が伺ったら、今後、四十八基というかなりたくさんの原発が順次廃炉に向かっていくわけですね。その費用が、総費用が二兆七千億円という話があったんですね。これ、一基当たりは五百五十億円ということなんですが、このようにお金が掛かるということで、原発の稼働期間が四十年ないし六十年、原発というのは建設まで至る期間にいろんな、環境調査ですとかいろんなことがある、それから原発の使命が終わって廃炉というのもまた二十年から三十年続くということで、しかもまた核のごみと言われる処理の問題も残るというようなことがあります。  やはり原発というのはコスト、このコストというのは、やはり原発を存続させるのかなくすのかということで一番大きなこれまでの議論のポイントになってくるんじゃないかと思うんですね。そのためにやっぱり出てくるのが、燃料費ですとか発電効率ですとかCO2排出量とかというのはあるんですが、今回の福島第一原発事故を契機に、やっぱり電気料金のコスト計算の転換を求められているときに来ているんじゃないかというふうに思っております。  先ほどの大島先生のお話でも発電コストと社会的コストということがありましたが、これちょっと確認になりますが、今の状態でそういうことを勘案して原発というのは本当にコストに見合うものなのかどうかということと、それから、やはりこういう新しい段階に入った電気料金というものを、これを計算する、コストを計算する新しい計算式みたいなものというのを、一般の人が、こういう形で計算をするんだよねというのがやはりなくてはいけないのではないかな。  先ほど大島先生は多少遠慮がちにおっしゃいましたけれども、やはり影響力のある方が、原発コストというのはこうやって計算するんだというようなことを言っていただく、やはり原発をどうするかというのは、このまさにコストがキーポイントだと思っております。これをどういうふうにお考えになっているのか、大島先生にお伺いしたいと思います。
  75. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 原発のコストを含む発電コストの計算については、民主党政権時代にコスト等検証委員会がつくられ、そこでエクセル表となっています。私が先ほど申し上げた十二・六兆円ぐらいじゃないかというお話も、その計算に基づいて行っております。  ただ、その後、その計算方法について分かりやすく示す、あるいはアップデートするようなことは政府としてされていませんので、それはやはり今後もしていくべきだろうなと。特に原発のコストというのはどんどん増えております、事故を中心に増えておりますので、それは計算しておくべきだろうなと思います。  もう一つ原発のコストで大事な点は、先生が今御指摘のように、放射性廃棄物の処理、処分、あとその廃炉、今先生がおっしゃられたようなコストが今見込まれているわけですが、では将来本当にそれで収まるのかというと、あと次の事故がないかというと、誰も分からないわけです。それは要するに計算できない、アンカウンタブルだというところが原発のコストの大きな特徴です。ですので、計算できないというところが大きな特徴なんですね。  もう一つは、そのコストに関しては、計算できない以上、元々の事業を成り立たせる上で入っていないわけです、そのコストが。ということは、最終的に計算できないものが後で出てくると、今回の事故の処理でもあるように、必ず国家が関与しなければならないと。要するに、国家が関与なしに存立し得ないものであるということがこのコストを見ると分かる。そういう意味で、コストを見る上で、国民がコストを理解することは、原子力のエネルギーの国家への依存というか、というところが分かることでもありますので、今後も分かりやすく政府としても示していただきたいなというふうに私は感想を持っております。
  76. 真山勇一

    ○真山勇一君 次に山名先生にお伺いしたいんですけれども、山名先生ならではの答えをいただきたいと思うんですが、原子力技術者専門家というふうにおっしゃっていただいたので。  今回のやはり廃炉というのは、普通の廃炉でなくて、日本の場合はいきなり事故を起こしちゃった、それもかなり重大事故を起こした大変危険で難しい廃炉から始まる、それが廃炉のファーストステップになると。これはやはりそういう意味でいうと試練だと思いますね、大変な。  ですから、廃炉に、例えば先生の専門技術者という立場でいうと、どのぐらい専門家の方が必要で、どのぐらいの作業員が、この例えば福島第一原発のもし廃炉という実際の事業に入った場合、どのぐらい必要なものというふうに考えておられるのか。これはなぜかというと、今、人員不足が言われている、そういう中で本当にこれで果たしてちゃんとやっていけるのかな、大丈夫なのかなという不安が一つ感じるのと、その点をお伺いしたいのと、そういう今までにないものですから、やはり一大事業、これをやるためにはやはり専門の部門をつくった方がいいのではないか。  私が思うには、賠償というのはやはり負のイメージ、マイナスのイメージですね。先ほど先生は、廃炉はこれは次の技術開発、産業につながっていくとおっしゃった。私もそういうふうに思うんです。そうすると、やはりこれは、日本はこれから福島以外の原発廃炉にしていかなくちゃいけないんですから、やはり技術を集約するという意味で何か専門の方がいいというふうに思いますので、その二つ、お願いいたします。
  77. 山名元

    参考人山名元君) 人員の御質問ですが、これ私は時間によって変わるものだというふうに思っています。現在、東京電力は、月平均四千人とか六千人とか、かなり大量な人間を投入して対応していますが、これは要するに今非常に不安定な炉心の状態と汚染水の状態があるというところでの総動員体制でそうなっているわけです。今やるべきことは、それをできるだけコントローラブルな形にしていく。つまり、建屋の中を除染したり、凍土壁で地下水汚染の問題を小さくしていったり、炉心の燃料デブリを取り出すという作業をこれから十年、十五年でやっていくことになります。それが始まっていきますと、今度は人海戦術で投入する部分は減ってくることになるわけですよ。だんだんやりやすくなってくる、環境がそろってくるということになりますし、今も労働環境の改善というのは東電の中で進んでいて、それもうまく進んでいけば、投入する人間も減っていく方になります。したがって、今後減っていくというつもりで御理解いただいた方がいいかと思います。  それから、IRIDでの技術集約の問題は、IRIDがまさにそのためにあると思ってください。関係する技術組織が全部集まって、これをいずれ廃炉技術としてビジネスに生かしていくための最初のステップを連携してやっているということですので、先生の御指摘に沿っているかと思います。
  78. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。
  79. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 荒井でございます。最後になりますが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  大変、お二方のお話、それぞれ御自分の研究成果、それからまた人生哲学を含めて信念をお持ちの御発言で、大変それなりの共鳴を持ってお伺いをしていた次第でございます。  山名先生に最初にお尋ねしたいんですが、先ほども先生お話がありましたけれども、恐らく格納容器の冠水工作を進めて水で冷却する段階になって、工程表によってもですね、その次に燃料デブリを取り出す、こういう話だと思うんですね。  先生は、ハイテクというよりはむしろローテクなんだと、今日もそれに近いお話をされていたわけですが、例えば、この間も、トーラス室の管を止められないかと、格納容器の修復の、漏水のためにはですね。そのために空気を風船で入れて、風船は非常に強いもので、そうしたら、やっぱりいろんなものがそこに入っているので、そこからまた管の中を通っていく。そこで今度は水の中でも固まるコンクリートを入れるという作業ですね、こういうことをやっていらっしゃるんだと思うんですね。こういうことをやっていって冠水ができたということになる。中にどういうものが残っているか分かりませんからロボットを入れて、そのロボットも蛇のようなロボットを入れるということになって、そこが、中に降りたら、今度、マジンガーZか何か分かりませんが、何か組み立てて、今度は歩くようになって中を見れるという、こういう趣向ですね。  そういう意味でハイテクよりローテクだというような御指摘があったんだろうというふうに思うんですが、そういう工法でやっていったときに、私もスリーマイルに行ってまいりまして、スリーマイルのときは、結局燃料デブリは二、三メーターから取り出しなんですね。ところが、今回、今分かっている範囲では、更にその三倍、五倍という深いところからつるし上げてこれを取っていくということですね。そういう足場を組むにしても、放射線量が非常に高いということがロボットを含めて分かったものだから、足場組むところに人が入れないので、更にそのためのロボットを今研究していると。  こういうようなことで、確かに先生おっしゃるようにローテクのような気はするんですけれども、非常に危険といいますか、もう一度いわゆる溶融が始まらないとは言えない、そういう局面でもあろうというふうに思うんですね。ですから、やっぱりそこは、先生、是非、自信がおありなんだと思いますが、十分に御注意をいただきながら、念には念を入れた御対応をいただきたいと、こういうふうに思うんですが。  そこで、山名先生にお尋ねなんですけれども、いわゆるそういう作業に原子力規制委員会ってどういうふうに関わるんでしょうか。
  80. 山名元

    参考人山名元君) 規制委員会については、先ほど言いましたように、現在、特定原子力施設原子炉規制法で定義するこういった事故を起こした施設に対する特別な安全を確保するための措置を要求するというのを規制上やっているんです。しかし、これを修復するという、今の燃料デブリ取り出しのときにどういう規制をやるかというのは、実は全く規制委員会でも考えられていない状態にあります。それもある意味で当然で、それを実施する側がまだ技術開発中ですし、様々な手法を同時並行で考えておりますから、どういう規制に持っていくべきかというのは、今のところ、まだ規制委員会としてどうするかという立場も何もないような状況であるというふうに理解しております。  私は、こういう賠償機構が変わっていけば、そこを、本当に燃料取り出しをどうするかと考えている技術的な専門的なアイデアと、それを安全規制という意味でどう管理するかという規制委員会側の考えががっぷり四つに組んで、こういう規制でなるべく早く安全に済まそうという方向性を示せることができると思うんです。  そういう意味で、むしろ今御質問の規制委員会立場は、これからこういった機構などを母体に政府として進めていただくテーマであるというふうに思います。
  81. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 先生が冒頭そうした趣旨のことをおっしゃったんですね。ですから、まさに規制する側も、そもそも技術的に言えば、工程も含めて分からないでやっているんですから、なかなか規制のしようもないということですが、がっぷり四つに組むというのは一種私は重要なところ、プロセスであると思うんですが、そこはやっぱり、どちらかというと反目していくという緊張感は是非必要だと思うんですね。  そこで、規制委員会について更に、の関与についてお尋ねしたいんですが、これは大島先生なんですが、今のような技術的な側面以外に、規制委員会がやはり生ぬるいんじゃないかと、十分な規制しているんだろうかと、こういう御指摘はございませんか。
  82. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 今、山名参考人もおっしゃったように、特定原子力施設に指定されて福島原発というのは今廃炉廃炉というか、事故の収束と廃炉のプロセスにあるわけですが、ここで重要なのは、単に廃炉、もちろん廃炉をきちっとするということなんですけれども、事故調査もきちんとしないといけないと。それが、何でしょう、原因の究明と今後の対策あとさらには廃炉廃炉のプロセスを適切に管理、監視していくというものに必要なわけですね。そこが、もし仮に、ちょっと私もまだ今回の損害賠償支援機構法の改正では見えていないのは、どこがそういった司令塔になるのかというところなんです。  やはり私は、むしろ原子力損害賠償支援機構を拡大するのではなくて、原子力規制委員会機能を、先ほど申し上げましたように、福島原発廃炉公社みたいなものを原子力規制委員会の下につくって、調査廃炉を総合的に行うようなものをつくった方がよいのではないかということですね。  以上です。
  83. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 両先生、ありがとうございました。  そこで、関連してまいりますが、原子力規制委員会の法律は、これは物の見事に、私から言うと官僚にそのままやられちゃったんですね。ノーリターンルールを持ち出して、第三者委員会にしてというようなところにやられたんですが、九五%以上は全く三月十一日前の法律をそのまま持ってこられました。例えば、建設、再稼働、廃炉という文言は一切ありません、原子力規制委員会設置法には。建設、再稼働、廃炉、私はちょっとここの辺は、廃炉以外は問題があるんですが、明確にこれはしておかなくちゃいけない。廃炉というのを入れる。  それからもう一つは、特に山名先生、廃炉安全専門審査会というものを分科会程度に持っているんですよ。それを法定によってきちんと廃炉安全専門審査会を立てていく。この原子力規制委員会には、原子炉安全専門審査会と核燃料安全専門審査会はありますが、廃炉というところに集中した専門審査会というのはないんですよ。これはもう完全にやられた、我々議論の中で。ある一種悪意があるならば、物の見事に我々はここを捨て去られて、今やっているこの機構に若干それをやらせようという、まあ私から言ったら魂胆があったんだろうなと、こういうことなんですね。その意味で、どういうふうに受け止められるか。規制委員会廃炉安全専門審査会というのをつくるのはどうか。  そして、ちょっと読ませていただきます。  原子力規制委員会は、福島原子力発電所事故の教訓を踏まえ、その惨禍を二度と繰り返すことのないよう、福島原子力発電所事故原因の究明に当たるとともに、福島原子力発電所事故に係る原子炉施設の管理、当該原子炉施設の廃止に向けた取組等に関する安全の確保を図り、及びできるだけ早期に当該原子炉施設の廃止の措置を完了させるため、最善の措置を積極的に講ずるものとする。  この原子力規制委員会に、これだけの事故を起こしながら、福島のフの字もありません。当たり前の、炉規法、先ほどから先生方からあるように、炉規法の重大事故を起こしたという指定だけ受けさせるというやり方で経済産業省に置いているだけなんですよ。  そこでお尋ねいたします。山名先生から大島先生、お願いします。今この三つ廃炉を明確にする、廃炉安全専門審査会の設置をする、そして、附則でございますが、今申し上げたように、福島のこの原発についてしっかりやれということを明記するという改正案を自民、公明以外が提出しておりますが、背景としてですよ、その政党がどうのこうのでなくて結構でございます、この案についてどのように御意見をお持ちになられますでしょうか。
  84. 山名元

    参考人山名元君) 非常に難しい問題です。恐らく、この廃炉専門審査会の話は、廃炉というのは一つの定型ビジネスでは決してないような気がするんです。それは、一F対応の問題もあるし、一般的な原子炉についての様々な違った問題があると思います。これを専門的に審査する会議があった方がいいかと言われると、それを議論する、審査専門性の高いグループをつくるべきだというのは間違いなくそうだと思います。ただ、それを今の原子炉規制法の枠の中で、核燃料専門審査会と原子炉の方の審査会と同格にそれを持ってくることが適切かどうかというのは、申し訳ありません、私にはそれはちょっと判断できません。ただ、先生のおっしゃるように、この廃炉というものがいろんな様々な状態がある中で、そこに専門的に安全を審査するグループが要るというのは間違いないと思います。  以上です。
  85. 大島堅一

    参考人大島堅一君) 先生から御指摘のように、廃炉福島原発に関する専門的な機関なり委員会なりというのが必要になっているというのははっきり言えるかと思います。ただ、法案は私、拝見しておりませんので、それについてのコメントというか意見は差し控えさせていただきます。ただ、今回の原子力損害賠償支援機構がその先生がおっしゃられるような機能を持ち得るとは私は思っていませんで、やはり本格的な委員会なり組織なりというのは別に必要ではないかというふうに考えております。
  86. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 政治的には今、政党間でそうやって調整しているという背景を申し上げながら御意見をいただいたということなんですが、我々も対立する必要はないと思っているんです。つまり、念には念を入れていくという姿勢がやはり政治に、法律に必要なんではないかと、こういうことなんですね。  そういう意味において言うと、非常にこの過酷事故というよりも、いまだに避難している人がたくさんいる中で、果たしていわゆる我々が十分に応えていくためにはそういう姿勢というものも含めて非常に重要なところでございまして、そういうものを今我々は取り組んでいるというところを若干御報告をさせていただきたいというふうに思います。今のようなことを先生方にお持ちしましたので、資料を後ほどお持ちさせていただきたいというふうに思います。  山名先生のIRID、これも一つのつくり方で十分な意義があることなんですが、十七法人今入っておられるんだと思いますが、もうほとんど原発のメーカーと、それから沖縄を除く電力会社と日本原燃とかそういうところが入っておられるんで、私はちょっと一つだけ気になりますけれども、いわゆる国会事故調では、やっぱりメーカーや事業者に、とりこになって、そして政策が進んできたというところなんですよ。選挙運動もしかり、地元対策と称しての建物造りもそう。で、必要以上の雇用を生んで、その親戚がやっぱり原発がないと困ると。私も福島で推進してきましたから、そういうあざなえる縄のごとき関係というものを超えていくという社会をつくっていくということはすごく重要だと思うんですね、大島先生も。  やはり超原発社会なんですよ。脱原発という物理的電源の問題ではないんです。そうした我々の人間の弱さを構成しているそういう原発社会原発に象徴されるような仕掛けを変えていくと、こういうところがひとつ必要だと思いますので、是非、大島先生、山名先生にはお心のどこかに留めていただきまして、安全神話がこの災害を技術的にももたらしたという、どこかにその、やっぱりこの技術の不安定さ、特に核の問題というものを、私たちはどこかに恐ろしさを秘めた行動が必要ではないかなと、私自身、自戒しながら締めくくりにさせていただきます。
  87. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会