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2014-04-08 第186回国会 参議院 外交防衛委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年四月八日(火曜日)    午後一時二分開会     ─────────────    委員異動  四月三日     辞任         補欠選任      風間 直樹君     白  眞勲君  四月四日     辞任         補欠選任      難波 奨二君     藤田 幸久君      杉  久武君     山口那津男君  四月七日     辞任         補欠選任      白  眞勲君     藤末 健三君      牧山ひろえ君     大野 元裕君  四月八日     辞任         補欠選任      島尻安伊子君     山下 雄平君      大野 元裕君     牧山ひろえ君      藤末 健三君     白  眞勲君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         末松 信介君     理 事                 佐藤 正久君                 松山 政司君                 三木  亨君                 福山 哲郎君                 石川 博崇君     委 員                 宇都 隆史君                 岡田 直樹君                 小坂 憲次君                 牧野たかお君                 山下 雄平君                 脇  雅史君                 北澤 俊美君                 白  眞勲君                 藤田 幸久君                 牧山ひろえ君                 山口那津男君                 中西 健治君                 井上 哲士君               アントニオ猪木君                 小野 次郎君    国務大臣        防衛大臣     小野寺五典君    内閣官房副長官        内閣官房副長官  世耕 弘成君    事務局側        常任委員会専門        員        宇佐美正行君    参考人        元海上自衛隊自        衛艦隊司令官   香田 洋二君        政策研究大学院        大学学長     白石  隆君        元内閣官房副長        官補       柳澤 協二君        慶應義塾大学総        合政策学部准教        授        神保  謙君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○外交防衛等に関する調査  (国家安全保障戦略平成二十六年度以降に係  る防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画に関  する件)     ─────────────
  2. 末松信介

    委員長末松信介君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、風間直樹君、難波奨二君及び杉久武君が委員辞任され、その補欠として白眞勲君、藤田幸久君及び山口那津男君が選任されました。  また、本日、島尻安伊子君が委員辞任され、その補欠として山下雄平君が選任されました。     ─────────────
  3. 末松信介

    委員長末松信介君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  外交防衛等に関する調査のため、本日の委員会に元海上自衛隊自衛艦隊司令官香田洋二君、政策研究大学院大学学長白石隆君、元内閣官房長官補柳澤協二君及び慶應義塾大学総合政策学部准教授神保謙君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 末松信介

    委員長末松信介君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 末松信介

    委員長末松信介君) 外交防衛等に関する調査のうち、国家安全保障戦略平成二十六年度以降に係る防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画に関する件を議題といたします。  まず、政府から報告を聴取いたします。世耕内閣官房長官
  6. 世耕弘成

    内閣官房副長官(世耕弘成君) 政府は、昨年十二月十七日、国家安全保障会議及び閣議において、国家安全保障戦略を決定いたしました。以下、この内容について御報告申し上げます。  国家安全保障戦略は、我が国で初めて策定した国家安全保障に関する基本方針であります。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、脅威は容易に国境を越えてきます。どの国も一国のみでは自国の平和と安全を守ることはできず、国際社会協力して平和を確保していくことが不可欠です。  このような認識の下、本戦略においては、国際協調主義に基づく積極的平和主義基本理念として掲げております。我が国の安全と地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定、そして繁栄確保にこれまで以上に積極的に寄与していくとの考えであります。  この基本理念の下、我が国国益を明確にした上で、国家安全保障目標として次の三点を示しています。  第一に、必要な抑止力強化し、万が一我が国に直接脅威が及ぶ場合には、これを排除し、被害を最小化すること、第二に、日米同盟域内外のパートナーとの信頼・協力関係強化等により、地域安全保障環境を改善すること、第三に、普遍的価値やルールに基づく国際秩序強化紛争の解決に主導的な役割を果たし、グローバルな安全保障環境を改善することであります。  その上で、国家安全保障上の課題を特定しつつ、それらを克服し、目標を達成するため、我が国自身外交力防衛力等強化を始めとする戦略的アプローチを示しております。本戦略は、エネルギー等国家安全保障に関連する分野の政策指針を与えるものでもあります。  政府としては、国家安全保障会議司令塔機能の下、本戦略に従って、国家安全保障に関する政策を一層戦略的かつ体系的に実施し、国家安全保障に万全を期す考えです。  本戦略の下、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国民生命財産我が国領土領海領空断固として守り抜くとともに、地域国際社会の平和、安定、繁栄確保にこれまで以上に積極的に寄与してまいります。  皆様の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
  7. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございました。  小野寺防衛大臣
  8. 小野寺五典

    国務大臣小野寺五典君) 昨年十二月に策定した新たな防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画について御報告申し上げます。  我が国を取り巻く安全保障環境は、前防衛大綱が策定された三年前と比較して一層厳しさを増しています。北朝鮮による弾道ミサイルの発射や核実験実施は、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっています。中国我が国周辺海空域において活動を拡大、活発化させており、我が国領海への断続的な侵入や我が国領空侵犯等を行うとともに、東シナ海防空識別区の設定といった公海上空の飛行の自由を妨げるような動きを含む力による現状変更の試みを継続しており、不測事態を招きかねない状況となっています。  新たな防衛大綱においては、こうした現下の厳しい安全保障環境対応すべく、我が国自身努力日米同盟強化、そして安全保障協力の積極的な推進三つの柱でもって、国際協調主義に基づく積極的平和主義観点から、我が国の安全及び地域国際社会の平和と安定を維持していくこととしています。  第一に、我が国の平和と安全を守る根幹は、我が国自身が自ら行う努力にほかなりません。そのため、防衛力に求められる役割に十分に対応できるよう、防衛力の質と量を必要かつ十分に確保し、抑止力対処力を高めていくこととしています。そして、多様な活動統合運用によりシームレスかつ状況に即応して機動的に行い得るよう、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、高度な技術力情報指揮通信能力に支えられ、ハード及びソフト両面における即応性持続性強靱性及び連接性も重視した統合機動防衛力を構築します。  第二に、日米同盟強化してまいります。日米安全保障体制を中核とする日米同盟我が国安全保障の基軸であり、我が国の平和と安全の確保のみならず、地域及び世界全体の安定及び繁栄に極めて重要な役割を担っています。このため、日米防衛協力のための指針見直しや、自衛隊米軍との連携強化するための取組を幅広く推進し、日米同盟抑止力及び対処力強化してまいります。  また、米軍再編を着実に進め、特に沖縄県については、普天間飛行場の移設を含む在沖米軍施設・区域の整理統合縮小等により負担の軽減を図ってまいります。  第三に、安全保障協力を積極的に推進してまいります。具体的には、アジア太平洋地域につき、域内各国と協調的な各種取組を更に多層的に推進してまいります。また、地域紛争国際テロ、海洋、宇宙空間サイバー空間をめぐる問題を始めとするグローバルな安全保障上の課題等につきましては、平素から国際社会連携しつつ、各種取組推進してまいります。さらには、国際平和協力活動等を積極的かつ多層的に推進します。  防衛力に求められる多様な活動を適時適切に行うためには、整備された防衛力が最大限効果的に機能するよう、これを下支えする種々の基盤も併せて強化することが必要不可欠です。このため、新たな防衛大綱では、防衛力を支える基盤として、訓練・演習、運用基盤人事教育、衛生、防衛生産技術基盤装備品の効率的な取得研究開発地域コミュニティーとの連携情報発信強化知的基盤強化防衛省改革推進と、多岐にわたる事項を掲げております。  次に、新たな中期防について御報告申し上げます。  この中期防は、防衛大綱に定められた防衛力水準を達成するための最初の五年間の防衛力整備計画であります。この計画では、第一に、新たな防衛大綱に定められた防衛力役割対応し得るよう、特に、警戒監視能力情報機能輸送能力及び指揮統制情報通信能力のほか、島嶼部に対する攻撃への対応弾道ミサイル攻撃への対応宇宙空間及びサイバー空間における対応、大規模災害等への対応並びに国際平和協力活動等への対応のための機能能力を重視してまいります。  第二に、南西地域防衛態勢強化を始め、各種事態における実効的な抑止及び対処を実現するための前提となる海上優勢及び航空優勢の確実な維持に向けた防衛力整備を優先することとし、機動展開能力整備も重視してまいります。  第三に、装備品取得に当たっては、能力の高い新たな装備品の導入と既存の装備品の延命や能力向上等を適切に組み合わせることにより、防衛力を効率的に確保してまいります。  第四に、装備品高度化複雑化任務多様化国際化の中で、自衛隊精強性確保し、防衛力根幹を成す人的資源を効果的に活用する観点から、女性自衛官予備自衛官等の更なる活用を含め、人事制度改革に関する施策推進してまいります。  第五に、日米同盟抑止力及び対処力強化していくため、新たな防衛大綱に定めた各種協力取組等を積極的に推進してまいります。  この計画実施に必要な防衛力整備水準に係る金額は、平成二十五年度価格でおおむね二十四兆六千七百億円程度を目途としています。他方、本計画期間中、国の他の諸施策との調和を図りつつ、調達改革等を通じ、一層の効率化合理化を徹底した防衛力整備に努め、おおむね七千億円程度の実質的な財源の確保を図ることとしています。  以上述べました新たな防衛大綱及び中期防の下、国民生命財産我が国領土領海領空断固として守り抜くとともに、国際社会の平和と安定及び繁栄確保にこれまで以上に積極的に寄与していく所存です。  皆様の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
  9. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございました。  以上で報告の聴取は終わりました。  速記を止めてください。    〔速記中止
  10. 末松信介

    委員長末松信介君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  11. 末松信介

    委員長末松信介君) これより、国家安全保障戦略平成二十六年度以降に係る防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画に関する件について、四名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席いただいております参考人の方々を御紹介いたします。  まず、元海上自衛隊自衛艦隊司令官香田洋二参考人でございます。  次に、政策研究大学院大学学長白石隆参考人でございます。  次に、元内閣官房長官補柳澤協参考人でございます。  次に、慶應義塾大学総合政策学部准教授神保謙参考人でございます。  この際、参考人皆様に対し、本委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ、四人の先生方には本委員会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。  先生方から忌憚のない御意見をいただきまして、今後の調査参考にさせていただきたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございます。  議事の進め方について申し上げます。  まず、香田参考人白石参考人柳澤参考人神保参考人の順にお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。  また、参考人質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず香田参考人お願いをいたします。香田参考人
  12. 香田洋二

    参考人香田洋二君) 香田でございます。  今日、時間をいただきまして、十五分間、香田個人として、今回の戦略から中期計画に至るところ、少しでもこの戦略大綱中期計画を良くする観点から、高く評価をしているところではございますけれども、問題点を中心に摘出をさせていただきたいというふうに考えております。  お手元の資料に沿っていきますけれども、まず、全般的な評価ですが、やはりこれは一番大きなところは、歴代の内閣がなかなか手を着けることができなかった特に戦略安全保障戦略ですね、これを大綱中期と一緒にある意味三点セットで発出したということで、これは高く評価できるのではないかというふうに考えています。  また次に、特に九〇年代から二〇〇〇年代の初期までは非常にちゅうちょされたところだというふうに理解をしておりますけれども、中国というものを相当強く意識をして出したと。これが、いろいろ意見があろうかというふうに考えますけれども、やはり我が国の現在の情勢ということから考えて、中国をしっかりと見据えた内容になっているということについても評価をするところであります。  それから、先ほど副長官あるいは大臣からありましたけれども、エネルギー等まで含めた非常に幅広い国家戦略ということの捉え方で、特に防衛戦略というところから考えますと、ODAあるいは防衛装備技術協力ということも国家安全保障戦略一つの柱として、政策の柱としてやっていくということで、これについても非常に高く評価をするところであります。  特に私自身ASEAN諸国、これについては年に十回程度訪問をしておりますけれども、ASEAN諸国自体が、日本ODAを活用したいわゆる能力構築といいますか、キャパシティービルディングですね、あるいは防衛装備防衛技術協力というのについては非常に強い、そして高い期待をしていると。あるいは、オーストラリアでさえ、具体的には国家戦略遂行上、潜水艦が必要だと、それについて日本期待するところが大であるというふうなところもありますので、これを盛り込んだということについては、やはり今までとは違った、高く評価されるべき点だろうというふうに考えています。  問題は、やはり関連する省庁ですね。外務省あるいは経産省、さらに技術開発等ですと文科省といったところ、いわゆる我が国政府として各省庁横断的に。で、もう一つはスピードであります。各国、非常に速いテンポ期待をしております。これをいわゆるドキュメントとして発出するのだけではなくて、テンポよく周辺諸国にしっかりと目に見える格好で実行していくということが一つ求められているのではないかというふうに考えます。  以後、総合的な評価を終わりまして、より内容を高めるという観点から少し問題点的なものについて申し上げます。  まず、この三点セット意味、意義というものを捉えてみますと、恐らく誰を対象にするかという意味では、当然、周辺諸国同盟国である米国も含めてですね、そして国民、そしてやはりこれを現場で担う自衛隊という、この三つに対してこの三点セットというのは発信されているんだろうと。  この場合に、外国、国民に対しての発信、恐らくこの戦略ドキュメントというのはどこの国でも批判をされないことはないんですね。一番成熟していると考えられているアメリカでも、やはり出すたびにあちこちから批判あるいは所見が起こると。そういう意味で、非常に厳しいところではあるんでしょうけれども、今回これを出したということについては、繰り返しになりますけれども、高く評価をしていいんじゃないかと。  同時に、では、これを最終的に現場で遂行する自衛隊に対してどうかということについては、やや、後ほど述べますけれども、軍事色というものが薄いところが見られるのではないかというふうに考えております。特に、現場の二十四万人の自衛隊員がよく分かる、自分たちが最終的に国家に対して何をすればいいのかということについて少し色が薄いのではないかというふうに考えます。  例えばの例なんですけれども、島嶼防衛ということで、これは中国意識してクルーズミサイル防衛ということを書いています。ところが、弾道弾ミサイル防衛については北朝鮮しか対象にしていないと。これでは、現場指揮官中国弾道ミサイルどうなんだというようなところ、非常に細かいところなんですけれども、少し、読みようによっては相当の不整合が見られるというふうなところ。それからもう一つは、いかに戦うかということが、最終的に自衛隊から見ますと国から指示が欲しいところですけれども、それが少し薄いというふうなところが感じられました。  繰り返しといいますか、整理をしてみますと、戦略大綱中期というものについていいますと、戦略というのはやはり国益国家目標というのを意識をして国家の大方針を定めると、大綱というのはその戦略を踏まえて国防の基本方針、それから防衛力整備方針までを定めると、中期計画というのはその戦略大綱の中の具体的な防衛力整備を五年程度考えていくものだというふうに規定するものだというふうに考えております。  ただ、ここで、一部、特にマスコミ等を通じた情報から見ますと、やはりこの三点セットというものをいわゆる自衛隊の戦い方を書いているというふうに誤解している筋も見られます。これは、やはりもう少しクリアにこの位置付けというものを説明してよかったのかなというふうに考えております。  そういう前提で申し上げますと、例えばアメリカですと、国家安全保障戦略、これはNSCが作るわけですね、次に国家防衛戦略、これは国防省が作る、そしてQDR、いわゆる防衛力整備考え方ですね、それから最後に、国家軍事戦略という統合参謀本部が作る、大きくはこの四つの戦略というか体系があるというふうに考えていいと思います。  ここで少し混同されているのは、やはり国家軍事戦略といいますか、統参本部が作る国家軍事戦略に相当するものがやはり欠落をしているというふうに思われます。これは、考え方によりましては、より数を多くして屋上屋を重ねて複雑にするという見方もあるのかもしれませんけれども、やはり最終的に自衛権を発動して、で、戦うというところまで想定をした場合に、じゃ、具体的にどうするのかという国家軍事戦略的なところ、あるいは日本でいいますと、それは統合防衛戦略と言うのかもしれませんけれども、こういう、もう少し自衛隊レベルあるいは目線に落とした戦略ドキュメントというものもこの先考えていただきたいと。それを受けて実際の作戦計画日程、これがマスコミあるいは軍事評論家の方がよく言われますいかに戦うかということに落としていくのだろうというふうに思います。統合防衛戦略的なところが少し欠落しているというところでございます。  そういう意味で、統合軍事戦略アメリカでいう統合軍事戦略あるいは国家軍事戦略と、統参本部が担当するレベルまでできて初めて、防衛大臣への真のシビリアンコントロールをしっかりと機能をさせた防衛体制というものが構築されるのじゃないかというふうに考えております。  次に、今回の三点セットを読みまして、少し軍事的専門性というものが薄いのではないかと。これは、外から見ている感触でございますけれども、私自身、九五年、六年、七年と作業しました当時の大綱見直し、それから中期計画については数回携わっておりますけれども、当時は非常に、制服、各幕僚監部というのが非常に細かいところまで意見交換をし、意見を述べる機会があったということなんでございますけれども、今回についていきますと、なかなか、前回もそうなんですが、非常に制服発言、各幕僚幹部発言機会というのが限られていたというふうに認識をしております。  特に、あえて申し上げるわけですが、これは悪いという意味ではありませんが、例えば航空海上優勢という言葉を戦略、それから大綱、これ使っています。これは非常に、私は軍事的に、これ自体が悪いと言うつもりはありませんけれども、例えば航空優勢、海上優勢というものを、仮に南西諸島防衛を我が隣国に対して考えたときに、本当に優勢というものでいいのだろうかと。あるいは拒否、相手が来るのを払うということだけで、取られない、上陸をさせないということは軍事的には可能なんですね。ところが、その拒否という、中国でさえ今、拒否と言っています。ところが、一番守るときに、優勢を取る必要がなくて少ない兵力で拒否で守れるかもしれないというふうな事例が、今回まさに好個の事例南西諸島防衛というところであるんですけれども、この辺りはどこまで論議をされたのかということについては、まあ元専門家として非常に、もう少しやっていただければなというふうに感ずるところであります。  さらに今回、前回大綱も同じですけれども、戦略も含めて、警戒監視というものを非常に重視をされています。これは私は非常に適切なことだというふうに考えています。  ただ、警戒監視というのは、不測事態を防ぐ、奇襲を防ぐという意味で今日不可欠なものです。ところが、実態としまして、警戒監視根拠法規というものがいまだに防衛省設置法の四条の十八号の調査研究ということで、正規任務になっていない。当然、自衛隊の三条に基づく正規任務というのは基本的には我が国防衛ですから、警戒監視というのがそれに属さないというのは分かります。しかし、我が国安全保障活動の最も前提であり、日頃から二十四時間、三百六十五日実施すべき警戒監視、これで、この情報を得て国家が動くわけですし、意思決定をするわけですから、これが調査研究のままで置いていていいのかどうかと。重要性を指摘するというだけでは私はやや片手落ちというふうに考えるところでございます。  次に、グレーグレーゾーンについても昨今非常に論議をされていますけれども、これが戦略以下の三点セットに盛り込まれたということについては、これは高く評価するところであります。  ただ、これも軍事的に言いますと、実は軍事世界、特に海上航空につきましてはグレーというのは本当はないんですね。一旦出たらもう全てがグレーなんですね。要するに、いつ何をされるか分からない。ということで、航空自衛隊はレーダーサイトで空を飛んでいる目標を全部監視をする、海上自衛隊はレーダーとかソーナーに映るものについては全てどういうものかということをチェックをしているわけですね。これは平時でも有事でもなくてグレーなんですけれども。  一つこういう事態というのを今回の三点セットでは有事でもない平時でもない事態というふうに規定しているわけでございますけれども、この規定だけでは少し危険かなと。要するに、不測事態、奇襲というのは常にあるわけですから、そのときに警戒監視も含めて軍事的にどう対処をするのかということについてやや掘り下げが、いわゆる軍事的、専門的な見地から掘り下げが不十分かなというふうに考えています。  次に、防衛体制・態勢で、これは二つ、我が国防衛、それから日米同盟ということで考えますと、これ二つ一緒に申し上げます。  やはり相当、尖閣事案、南西諸島・東シナ海事案に影響されているなという印象でございます。特に相当西を意識をして力を入れているということは、もうこれは十分なことなんですけれども、同時に、冷戦時代の我が国防衛あるいは安全保障の基本戦略だった我が国自体努力、これは我が国防衛ですね、プラス米軍の来援基盤を維持をして有事に米軍と一緒に戦うんだと。特にこの二つ目の米軍の来援基盤の維持、冷戦時代でいいますとシーレーン防衛等でいろいろ相当精緻にやったわけですね。  ところが、今回、冷戦後、特に中国意識した場合に、実は冷戦時代のソ連と今の中国と何が違うのか。中国の海洋能力がどんどん増えているということは、実は冷戦時代のソ連の海洋能力とほとんど同じなんですね。そのときに、米軍の来援基盤の維持という日米共同の観点からの記述がいかにも少ないと。これは、ひょっとしたらワシントンに誤った信号を送りかねないという懸念を持っているものであります。  それと、あと、米軍のプレゼンスということについても書かれています。ただし、これは読みようによっては、基地問題の観点からしか書かれていないとも読めます。実際に、安全保障防衛活動というのを考える場合に、基地問題も重要ですけれども、来援する米軍日本に駐留する米軍能力機能をどう発揮させるかということがやはり一つの鍵になるというふうに考えています。ここの記述が非常に薄いというふうに考えるところであります。  最後に中期計画ですけれども、これも防衛大臣の方からありましたが、相当今回力を入れていただいたということについては現場も満足をしているものというふうに考えます。ただし、やはり調達改革等の七千億円程度の卑近な言葉で言いますと節約、それから陸海空とも部隊が増勢をする側面がある、その場合に人的にどう手を打っていくのかと。この二つの要素というのは、やはり国家としてしっかりと自衛隊の後を押していただかないと、十年先、実は看板は上がったけれども足腰が非常に弱くなるという懸念をこれは含むものであります。この点を御理解をして、今後の政策に反映をしていただきたいということであります。  最後に、まとめですけれども、これはやや繰り返しになりますが、今回、非常に、初めての安全保障戦略というものを作成をされまして、大変な苦労をされたと思います。特に関係者の方につきましては、深く敬意を表するところであります。その上で、更にこれをより磨き上げて、今後の良い戦略政策に結び付ける観点から申し上げさせていただきました。  これで終わります。どうもありがとうございました。
  13. 末松信介

    委員長末松信介君) 香田参考人、ありがとうございました。  次に、白石参考人お願いいたします。白石参考人
  14. 白石隆

    参考人白石隆君) 白石でございます。  今日はこういう機会を与えられまして、本当に光栄でございます。ありがとうございます。  この戦略及び防衛大綱中期防を拝見いたしまして、正直言って非常によくできている、全く違和感はないというのが全般的な私の感想でございます。その上で、私として、四点、重要だと考えるところを申し上げたいと思います。  一つは、安全保障戦略におきましてパワーバランスの変化ということが非常に強調されておりますが、これはもっと実は強調されてもいいかなと思うぐらいに、実は大きな今変化が起こっております。これは、大きく申しますと二つに分けて指摘することができまして、一つは新興国の台頭ということでございます。  細かい数字は一々述べませんけれども、二〇〇〇年には世界の経済に占めますG7、日本アメリカ、ドイツ等、G7のシェアというのはこれは六六%、新興国のシェアというのは二〇%でございました。それが二〇一〇年になりますと、G7のシェアというのが五〇%、新興国のシェアが三四%。二〇一八年になりますと、G7のシェアは四五%、新興国のシェアが四二%。恐らく二〇二〇年代の前半、つまり十年以内に、G7と新興国のシェアというのは逆転する、そのくらい急速に新興国が台頭しております。  では、新興国とは何かと申しますと、これは経済規模で申しますと、中国、ブラジル、インド等はG7の国と同じくらいの経済規模を持っておりますけれども、一人当たりの国内所得で見ると先進国の四分の一、五分の一以下のそういう国であると。したがって、国内的な要請、世界的にどういう役割を果たすのかということについて、先進国とは違う考えをともすれば持っている、そういう国だということでございますが、こういう新興国の台頭の結果、最近よく使われる言葉で申しますとGゼロということで、グローバルな課題世界として取り組むことがだんだんと難しくなっていると。  しかし、その一方で、グローバル化の進展とともに、環境にしても、環境エネルギーにしても、金融にしても、貿易投資にしても、あるいはサイバーにしても、こういうものについて世界的にルール作りをすることは極めて重要になっております。これがやはりきちっと安全保障上の課題なんだということが指摘されたというのは、これは非常に重要なことだろうと思います。  もう一つ、パワーバランスの変化ということで、もちろんこれは、日本人みんな、あるいは日本以外の地域の人、あるいはアメリカの人たちも意識しておりますのは、中国の台頭ということでございます。  二〇〇〇年にアメリカ日本がそれぞれ世界経済に占めますシェアというのは、アメリカが三一%、日本が一五%でございまして、中国は二〇〇〇年には四%でございました。それが二〇一〇年には、アメリカが二三%、日本が九%、中国が九%、つまり日本よりもちょっと大きくなった。それから、二〇一八年になりますと、これがアメリカが二二%、日本が六%、中国が一四%。二〇二〇年代の前半には、アメリカ中国の経済の規模が拮抗する可能性が十分にあると。  これがもう一つパワーバランスの変化ということで非常に重要なところでございまして、これは、当然のことながら、アジアにおいて特にはっきり意識されるところでございます。中国は、例えば東シナ海、南シナ海等において、二〇〇八年あるいは二〇〇九年以降、顕著に大国主義的な行動を取るようになっておりますけれども、これも今申し上げたようなパワーバランスの変化があって、これを前提として起こっていることなんだということが重要だろうと思います。  したがいまして、現在、日本の安全を、こういう非常に重要な世界的及び地域的なパワーバランスの変化の中で日本の安全をどう守るのか、またアジアと世界の平和と安定をいかに維持するのかというのは、これは日本にとっては極めて重要な問題、課題でございまして、安全保障戦略という形で、初めて安全保障戦略防衛戦略とは別に分けて提示されましたことは、私はこれは非常に重要なことであるだろうというふうに考えております。しかも、そこで理念として、平和で安定した自由主義的な国際秩序の維持ということを目指して、日本として国際協調主義に基づく積極的平和主義という、そういう理念を提示したというのも、これも非常に重要なことであろうと思います。  ここで少し翻りまして、第二次大戦以降、世界というのはどういう原則の上につくられてきたのかということをごく簡単に申し上げますと、私は、これは四つの大きな原則の上につくられてきたというふうに考えております。  国内的には、当然のことながら、自由民主主義、これは政治的な体制としての自由民主主義と、それから経済的な体制としての市場経済でございます。国際的には、アメリカの平和、アメリカを中心とした、ヨーロッパの場合ですとNATO、あるいは東アジアの場合ですと、アメリカを中心とし日米同盟を基軸とするいわゆるハブとスポークスの安全保障システム。それから、通貨におけますドル本位制。  これが、この四つ、自由民主主義、市場経済、アメリカの平和、ドル本位制、私はこの四つが第二次大戦以降非常に重要な言わば世界秩序の柱になってきたというふうに考えておりますが、今、先ほど申しましたようなパワーバランスの急速な変化とともに何が変わっているかと申しますと、このアメリカの平和をアメリカだけでは守れなくなってきていると。しかも、特にアジアにおいては、まだはっきりとは確実なところは言えませんけれども、あるいは中国アメリカの平和に代わる中国の平和をつくろうということを試み始めるかもしれない。そういうところにまで来ているというのが、これが今の現状だろうと思います。  その結果何が問われているかと申しますと、私は、やはり根本のところで世界のルールというのをどう作るのかというのが、これが問われているんだろうと思います。  ルールの作り方には、実は二つの作り方がございます。一つは、大国が自分でルールを作って、ほかの国にこれでゲームをしようと言ってルールを押し付けてくると。これが一つのルール作りのやり方でございまして、これはかつて歴史の中で帝国と言われたものはこういうルールの作り方をしております。もう一つは、みんなでルールを作って、みんなでルールを作るんだからみんなで守ると。ただし、ルールを作るときには強い国の言い分が相当通りますから、やはり強弱がルールには反映されますけれども、そこでできたルールについては強国も含めてルールに縛られると。そういうマルチのルール作りというのがもう一つございます。  国際協調主義に基づく積極的平和主義というのは、まさにそういうマルチのルール作りに日本としても積極的に関与するんだというのが私としては非常に重要なポイントだろうと、これが第一点でございます。  第二点目は、安全保障戦略そのものにつきましてでございますが、ここでは大きく三つの目的ということで、自助、つまり日本の国の強靱性強化するということと、共助、日米同盟強化する、それからさらにはパートナー国との協力、それから第三番目に、普遍的な価値に基づく世界的な多層的協力ということが指摘しておりまして、これはそのとおりでございますが、特に一九九〇年以降、つまり冷戦終えん以降の防衛協力あるいは安全保障協力を見ますと、このアジア太平洋の地域では、アメリカに次いで既にオーストラリアが第二のハブとして非常に活発に行動するようになっております。  したがいまして、日本としても、アメリカ同盟国、さらには豪州を日本戦略的なパートナーとして、やはりこの地域における豪州との連携、さらにはASEANの国々、フィリピン、インドネシア、シンガポール、さらにはインド、こういう国々との連携ということを、防衛協力にとどまらず、例えば海保におけます法執行における協力等も含めて非常に活発にやっていくというのは、これはこれからのこの地域の秩序の維持ということを考えますときには極めて重要だろうというふうに考えております。  ここで、私としては、特に一つ付け加えさせていただきますと、こういう防衛協力あるいは法執行の協力あるいは能力向上のための支援、こういうことをやる上で、日本としては、あくまで自由、民主主義、法の支配、人権、こういった普遍的な価値、原則に従って国際秩序の維持と進化を目指しているんだということを繰り返し繰り返し、しつこいくらいにやはり国際的に説明していく、それによって日本安全保障政策というものを提示していくということが極めて重要だろうと考えております。  三番目に、防衛の方でございますが、統合機動防衛力、つまり実効性の高い統合的な防衛力という考え方は、これは私としては、動的防衛力という考え方を更に発展させたものとして、これも非常に時宜を得た概念であろうというふうに考えております。ここで指摘しておきたいことは、この防衛力基盤には産業力、技術力ということがございまして、統合機動防衛力の構築のためには長期の技術開発戦略というものがやはり必要だろうということでございます。  安全保障戦略防衛戦略は、いずれも十年程度の時間の幅で考えられておりまして、それはそれで結構ですし、また今般、防衛装備移転三原則というのが新しく定められまして、国際的に共同開発、共同生産ということが可能になったのも、これも極めて重要ですが、同時に、統合機動防衛力の長期的な技術的趨勢ということを考えますと、これはほぼ間違いなくスマート化であり無人化、つまりロボット化であり、それからネットワーク化、つまり宇宙から海までのシームレスな監視、指揮統制システムの構築であると。  そういうことを考えますと、技術的な基盤としましては、情報通信技術、ナノテクノロジー、ロボティクス、ブレーン・マシン・インターフェース、地理空間情報等、こういう技術開発にもっと長期に国として取り組むことは、私はこれは非常に重要なことであろうと思いますし、それから、防衛予算が現在の厳しい財政状況の中で限られておりますことを考えますと、こういう技術開発については別途予算措置を考えることすら必要ではないだろうかというふうに考えております。これが第三点でございます。  もう第四点目、これについてはごく簡単に述べますが、日本の安全にとって南西方面の戦略的な重要性、この地域における防衛体制の充実というのは、これから十年、二十年の幅で考えますと、ほぼ間違いなくますます重要になってまいります。  ただし、それとの関連で、戦略の中には沖縄を始めとする地元の負担を軽減するという、そういうことの重要性が指摘されておりますけれども、ここで一つ是非考えていただきたいことは、日本の持つ防衛力のアセット、さらには米国が日本に持つ防衛力のアセットというものを空間的にどう配置していくのか、これを戦略的な合理性と負担の公平性を考慮しつつ、どうしていくのかというのは、これはまさに政治の問題でございます。これについて、やはり今考えておく必要があるというふうに考えております。  どうもありがとうございました。
  15. 末松信介

    委員長末松信介君) 白石参考人、ありがとうございました。  次に、柳澤参考人お願いいたします。柳澤参考人
  16. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 現役当時、何度も何度も汗をかかせていただいたこの場所に再びお招きをいただきまして、大変感謝申し上げております。  私は、やはりOBとして、防衛官僚OBとして、是非、私が現職のときにもやり切れなかったことも含めてではありますが、ちょっと辛口の視点で申し上げてみたいと思います。  それで、お手元にレジュメを用意させていただきましたが、ちょっと厚うございまして、これは私が個人用のメモとして作ったものをベースにお配りしておりますので、まず、時間の都合もございますので、恐れ入りますが九ページを御覧いただきまして、まず防衛大綱についての私のコメントから先に申し上げたいと思っております。  全体として、私、前回の動的防衛力というような概念がいまいちどうも戦略的な意味付けが詰め切れていないという感覚を持っていたわけでございますが、この今回の統合機動的防衛力でございますか、それもそれで、ネーミングは私は何でもいいと思うんですけれど、その中で特徴として言われているところに一応網掛けが、私がコメントしたいところに網掛けをさせていただいておりますが、事態の推移に応じて訓練、演習の戦略実施、部隊の機動展開を迅速に行うといったことが書かれておりますけれども、これは、確かに一種のこういう瀬戸際抑止のような行動というのも時には必要かもしれない。しかし、それは、一つアメリカが入らないと、要は抑止というのは相手よりも強いことを見せ付けなければ成り立たないということを考えれば、アメリカがしっかり組み込まれないと意味がないわけでありますし、それから、であるとすると、相手ももっと強くなろうとするという、一種の、相手の姿勢も強めるということで、一種の運用面における安全保障のジレンマに陥っていく危険性もあるということで、これの使い方は本当に政治のリードの下でよほど賢くやっていただく必要があるんだろうというふうに思います。  それから、この同じところで、装備の運用水準を高め、活動量を増加すると、こうあります。これは香田さんの御専門ですが、私どもの常識的な判断では、船というのは、大体、定期修理の期間、それから訓練の期間を含めますと、フルに動ける期間というのは三分の一ぐらいなんですね。そうすると、冷戦当時六十隻の海上自衛隊の水上艦艇があって、一千海里シーレーン防衛等周辺海域の防衛をやると、こうなっていたものが、今四十七隻です。これを五十四隻まで増やそうということですけれども、そのうちの数隻はもう絶えずソマリア沖の海賊対処に取られているというこういう現状で、どうやって、本当にこのコンセプトが成り立つのかということですね。もう現場に相当な無理を強いるのではないか、あるいは、それで動くだけなら動けるでしょうけれども、その結果、本来の、例えば潜水艦を探知する訓練というのは、これも相当時間を掛けて練り上げなければいけない技能ですけど、こういうところに隙間が空いてくるということになっては本末転倒ではないかというようなことも考えます。  この活動量を増加する、運用水準を高めるというのは、これは言うべくしてなかなか難しい。現場に無用の負担を掛けて、かえって本来の防衛の目的を損なうおそれがあるということを政治は是非御認識いただく必要があるんだろうというふうに思います。  それから、その下にございます日米同盟強化という項目で一言申し上げたいのは、日米同盟強化し、よりバランスのとれた、より実効的なと、こう書いてあるんですね。「より」というのは程度を表す副詞なんですね。ですから、本質的な、物事を質的には変えないけど、もうちょっと何とかしようと、こういうときに使う言葉なんですが、じゃ一体どこがより強化すべきところなのかという、そういう非常に大事な部分が説明されていない。これで、もうもちろん一〇〇%ということはないと思いますが、どこを高めたいのか、どこを改善したいのかということをはっきり言わなければ、必要な防衛力の根拠になる説明とは言えないんじゃないかというふうにあえて申し上げたいと思います。  それから、このページの一番下にございますが、厳しさを増す安全保障環境対応するため、西太平洋における日米のプレゼンスを高めると。これは私はもう極めて正しい認識だと思っているんですね。というのは、米中のアジアにおける、何というか、パワーバランスを軍事的に考える場合に、やはり西太平洋の行動の自由をどちらが握るかというのは非常に重要なポイントで、西太平洋にアメリカの空母がいれば中国全土が攻撃対象になる、逆に中国潜水艦が西太平洋に潜めばアメリカ本土がミサイルの射程に入るという戦略的に非常に重要な地域。ですから、ここでプレゼンスを高めるというのはそれはそれで私はいいんですけれども、一方で、じゃ、グレーゾーン事態グレーゾーン事態というのは多分尖閣で起きていることを言っているんだと思うんですけど、そのグレーゾーン事態におけるシームレスな対応って、これは私、何なんだと。  つまり、軍隊を使うのに、あえて軍隊と申し上げましたけれど、平時か有事かしかないのですね。対応するのは警察権か自衛権かしかない。グレーゾーンって一体何なんだと。要するに、確かに今の情勢を判断する言葉って難しいんですけれど、難しいからといって、グレーゾーンにシームレスなというような片仮名語を使って分かったような気になるというのは、実は安全保障戦略としては私は一番横着であり危険なことではないかということで、かねて批判的に見ているところでございます。  それから、十ページを御覧いただきますと、特に、一番上から四行目ぐらいのところに、これは大綱の言葉ですが、中国による我が国周辺における活動の急速な拡大、活発化に対しては、冷静かつ毅然と対応すると。「冷静かつ毅然と」って、これは国家安全保障戦略にも同じ言葉が書かれていて、それはまあそのとおりなんですけれども、これは防衛計画大綱でありますから、これがそのまま香田さんの言うように作戦計画ではないにしても、じゃ、防衛のコンセプトが入っていなきゃいけない。これを、ですから、政治はそれはそれで冷静かつ毅然でいいんですが、これはどちらかというと自衛隊の艦長、船の艦長が見て分かるものである必要がある。艦長に対して、おまえは冷静かつ毅然と対応しろと言ったら、艦長としてみれば何のこっちゃということですね、撃っていいのか撃っちゃいけないのかということが分からないという。こういうところが本当に詰め切れていないなという、正直そういう印象を持っております。  それから、十ページの下の方を御覧いただきますと、南西地域防衛強化を始め、抑止対処前提となる海上航空優勢を優先するとあります。これも私は正しい判断だと思います。島嶼防衛、島嶼の侵攻というのは、海上優勢、航空優勢がなければ、兵隊が泳いで渡ってくるわけじゃありませんので、これがもう非常に重要なポイントだと思うわけでありますが。  そして、最後のページにつながるところを御覧いただきますと、次のページの一番頭では、海上優勢、航空優勢を確保し続ければ、それは夜陰に乗じて少数の侵攻部隊はあるかもしれないけれども、しかし、侵攻があった場合には、上陸、奪還、確保するための本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備すると、こうなっているわけですね。つまり、本格的に島が取られちゃったということは海上優勢、航空優勢が確保できなくなっちゃった状態の下で起きるはずなのに、じゃ、こちら側は、自衛隊の方は海上優勢、航空優勢がなくても島を取り返しに行けるという、こういう一種ちょっと矛盾したものを含んでいる。  これは、私どもが現役当時からも、陸海空でやはり必ずしも防衛の仕方に防衛構想が整合性が取れていないとよく言われていました。まあ、そこの部分をどう解決するかというのは難しい問題なんですけれども、こういうところをこれから実はもっと検討するというような趣旨のことも書かれておりますので、そこは是非やっていただく必要があるんですが、しかしながら、それでどこまでやれるのかということ。  大綱別表ですと、さっき申し上げた四十七隻の船を五十四隻まで増やすことになっていますが、じゃ、五十四隻あればこれで全部間に合うのか、あるいはまだ足りないのか、これで中国軍事力がもっともっと増えていくようなことになったときに、じゃ、そこで、数で西太平洋の軍事バランスを維持する離島防衛の体制を確保しようとした場合に、どこまで増えていくのかということが説明されないわけですね。  そこは、今、ある意味で、日本に対する脅威が特定できる、量はともかく性質的には特定できるという意味では一九七六年の防衛大綱状況に非常によく似ていると思うんですね。あのときは、極東ソ連軍の限定的小規模な侵略に独力で対処するための防衛力整備するんだということにしておりました。じゃ、しからば、それを超えるもっと大きな脅威が来るときにはどうするかということに対しては、それはアメリカ抑止力とそれから政治の判断のリスクがそこでカウントされるという形で全体の計算が合うような形になっていたと思います。  今回、その脅威がある程度特定できているわけですから、じゃ、しからば政治は何をやるんですか、アメリカには何を抑止力としてあるいは対処力としてお願いするんですかと。それの足りない分が自衛隊役割になるという計算ができるはずなんですけれども。その辺が示されていないというところが、実は防衛大綱としては、前回のものあるいは私が作らせていただいた一六大綱、二〇〇四年末の大綱も実は同じ問題点は含んでいるんですけれども、これだけ状況が、ある意味脅威という意味で明確化してきているわけですから、そういう、是非、政治、それからアメリカ役割、それから軍事力以外の努力といったようなことも含めて、自衛隊に最低限ここはやってもらいたい、そのためには船が何隻要るんだと、こういう説明をしなければ、税金を投入する防衛力整備の説明として果たしてどうなんだろうかなという印象を持つわけでございます。  残り時間少のうございますが、一ページに、最初に戻っていただいて、私もこういう国家安全保障戦略というのを作ったことは試みとして評価していいとは思うんですけれども、あえて苦情を申し上げれば、対象期間をおおむね十年としている。これは従来の防衛大綱と同じなんですね。しかし、米中のパワーシフトが今日の情勢の特徴だということからすれば、十年では足りない、やはり二十年、三十年後の世界考えないと。防衛省内の個別の計画でも、一番長いものは十年後から十五年の統合長期戦略見積りというのがあります。それよりもまだ短い。新しい装備を研究開発して実戦配備に付けるまでに二十年から二十五年掛かるわけですから、十年のスパンでしか国家戦略を語らない、これは形だけのようなことではありますが、そういうところはもっと長いトレンドをちゃんと見ていただく必要があるんだろうというふうに思います。  それから、個別の内容的にはいいことが書かれていると思います。特に、さっき白石先生もちょっとお触れになりましたが、私は、安全保障の手段として抑止というのは当然必要ですけれども、自衛隊は特にその中で拒否的な、数において相手を圧倒する抑止ではなくて、相手が計算できない非対称的な進んだ技術、能力を持つことによって相手の侵略のコストの計算を不可能にするような、そういう形の力が恐らく自衛隊には求められている。そして、その背後にいるアメリカ抑止力というのは何かというと、いざとなったら徹底的な報復をするという、そういう抑止力。そのやはりアメリカ日本役割の違いというものを考えなければいけないし、抑止力というのはこちらが強くなれば相手も強くなるという、こういうジレンマの関係もある。  したがって、抑止だけではなくて、さっき白石先生がおっしゃっていたルール作り、これは何かというと、抑止というのは、来たら痛い目に遭わせるぞという意味の脅しで成り立つんだと思いますが、そのルール作りというのは何かというと、戦争をしたら損だということを相手に認識させる、戦争をしないことの利益を高めることによって武力、実力に訴えることの敷居を上げていくという、こういう努力ですから、その両面をしっかりやっていかなければいけない。  この安全保障戦略、具体的な提言部分、大変いいことが書いてあると思います。が、実際に今行われていることはどっちかというとその抑止に特化したような議論が多いように見受けられます。是非、これはバランスを取ってやっていかないと、最後の帳尻は全部自衛隊に行っちゃうような、そういうことでは、それは自衛隊のためというより国のためにまずいのではないかという印象を持たざるを得ないところであります。  ちょうど時間でございますので、私の陳述は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  17. 末松信介

    委員長末松信介君) 柳澤参考人、ありがとうございました。  次に、神保参考人お願いいたします。神保参考人
  18. 神保謙

    参考人神保謙君) 慶應義塾大学の神保でございます。本日は、このような貴重な場にお招きいただきましたことを委員皆様にまず深く御礼申し上げたいと思います。  既に三人の参考人の方々がこの国家安全保障戦略防衛大綱中期防課題について随分論点お触れになりましたので、私の方からは主に政策的な課題に絞って、これから十五分をちょっと使ってみたいというふうに思っております。幾つかかぶるところがございます。  今回、特に防衛大綱に絞って考えてみると、前回大綱が作られたのが二〇一〇年、三年前でございます。その前の大綱が作られたのは二〇〇四年で、そこから遡って六年間、そしてその前は九五年ですから九年遡って、そして一番最初にできた一九七六年は十九年という長い期間を経たわけですけれども、考えてみると徐々にこの大綱を改定するスパンというのが短くなっているわけですね。  この期間はなぜ生じているかというと、当然、日本国内の政治的な大きな構造変化と政権交代があったということは大きいわけですけれども、同様に、やはりこれは白石先生もおっしゃったことなんですけれども、国際社会の構造変化というものがかなりの早い時間でダイナミックに起きていて、それに、まさにムービングターゲットと呼びますけれども、動いているターゲットを定めていくように我々も戦略を日々アップデートしていかなければいけない。これが、この戦略をなぜこのような速いスピードで変更していかなければいけないかという、今日我が国が置かれている大変重要な情勢なのではないかというふうに考えております。  すると、我々が考えなければいけないのは、今回立派な戦略を二つ作ったわけでございますけれども、この戦略の賞味期限は一体どのぐらいなのかということを戦略ができた途端にこれは考えなければいけないことだと考えておりまして、私自身は、大体おおむね五年程度で今回立てた戦略はもう一度大きな転換が必要とされるのではないかという問題提起をこれからさせていただきたいというふうに考えております。  それをレジュメに沿っていろいろ説明申し上げますけれども、最初の大きな理由は、これは白石先生と同様でございます、マクロ的な世界のパワーの構造的な変化がすごいスピードで起きているということでございます。  こちらの、私、資料を三枚目、四枚目に付けさせていただきまして、カラーでお示ししたパワーポイントのスライドを御覧いただきたいと思いますけれども、この三枚目のスライドは、これは私自身が独自に試算してみたものなんですけれども、二〇三〇年にかけての主要国の国防費の推移でございます。これは推計値でございます。  当然ながら、このベースとなっているGDPの推計値があって、そこから各国の国防費のパーセンテージを掛け合わせたものということになるわけなんですけれども、これを見ていただきますと、仮にアメリカが大体二〇一〇年程度水準で国防費を支出し続ければ、二〇三〇年においてもアメリカの卓越した優位性というのは変わらないということなんですが、御案内のとおり、二〇一二年のアメリカの予算管理法において、おおよそ五千億ドルの向こう十年間の国防費の削減というものが義務付けられ、そして民主、共和の協議が成り立たなければ、プラス五千億ドルの強制削減という範囲におきまして、アメリカの国防費がこのペースで支出できるとは誰も考えていないということでございます。  したがいまして、これからアメリカの相対的な力の低下というのはどういうところから起きてくるかというと、具体的にアメリカがアセットとして使えるいわゆる量と質が大きく変化してくるということなんだと思います。  それを仮に、一九九九年、これはクリントン政権時ですけれども、アメリカの国防費が冷戦後最低に落ちたときが大体アメリカのGDPの三・〇%ぐらいなんですけれども、この水準まで落ち込むとどうなるかというと、ここで掲げた緑の破線ぐらいになるということでございます。それにぐっと追い付いてくるのが中国でございまして、GDPのレベル考えますと、これはよくエコノミストも言っていますが、二〇二〇年代の半ばぐらいまでには名目GDPでアメリカをいよいよ追い抜こうかというペースで現在のまさにプロジェクションが推移しているわけでございますけれども、国防費は遠く及ばないだろうというふうに今まで考えられていたわけですけれども、仮に中国が、ヨーロッパのシンクタンクが試算するGDPに占める割合が二・一%程度で二〇三〇年まで推移したということになりますと、この緑の破線と紫の実線はかなり近寄っていく。つまり、米中伯仲時代が安全保障世界でもやってくるということを我々は考えなければいけないということだと思います。  当然、アメリカのまさに世界的なアセット、展開力、RアンドD、戦闘経験といろいろなことを考えなければいけないわけですけれども、それに追い付いても、やはりこれからの中国がまさに国防分野に使えるアセットというものが飛躍的に増えていく世の中で我々は安全保障考えなければいけないということでございます。  そして、非常に、もう一つ見ていただきたいのは一番下の線、これは、青い色の線は日本でございます。仮に日本が今後とも国防費をGDPの割合として一・〇%を継続した場合ということですけれども、現在でも中国はドルベースにおきまして日本の二倍以上の国防費を使っているわけですけれども、二〇二〇年にはおおよそ六倍、そして二〇三〇年にはおおよそ十一倍の国防費ということになることが想定されておりまして、我々はこのような飛躍的なパワーシフトといいますかパワーバランスの変化の下で安全保障戦略と国防戦略考えていかなければいけないと、こういうことでございます。  そして、ここからまたレジュメに戻りますが、前回大綱と今回の大綱を策定したこの三年間でも、その変化は如実に表れている。表れているからこそ、概念が変わっていったんだということを幾つか事例を紹介したいというふうに思います。  まず第一番目ですけれども、中国の急速な台頭に伴いまして何が起こったかというと、二〇一〇年、これは北澤防衛大臣の下で策定された前大綱でございますけれども、このときにキーワードとなったのは、まさにこのグレーゾーン対応するための動的防衛力という概念でございます。  このグレーゾーンというのは、これまで参考人の方からも指摘がございましたけれども、平時でも有事でもない、まさにその中間領域における事態が特に東シナ海南西方面で活発に展開をされて、これに対応しなければいけない。これに対応するためには、常時継続的な警戒監視活動を行って、それによって中国がまさにこの領土領海に至るこの海洋活動の拡大を既成事実化しないような形で、我々もこの運動量というものを増やしていくというのが、これが二〇一〇年大綱の大変大きな概念だったわけなんですが、ところが、実態を広げてみますと、このような常続的なISR活動を行ったとしても、中国はそのISRの網を突破して様々な形で我々の主権を侵害する活動を取ってくると。  ということは、この動的防衛力の概念を更にプラスアルファとして加えなければとても今後の時代に対応できないというのがこの統合機動的防衛力の大変大きな意味だというふうに理解しておりまして、先ほど来議論されている海上航空優勢というものが強く意識され、また統合機動的な部隊展開がいかに重要であるか、つまり、エスカレーションが高まっていく段階の中で、柔軟に日本側としてもそのエスカレーションの高まりに応じたアセットを合わせていくということが求められている。これが柔軟抑止ということの大変大きな意味だということでございます。  二番目は、余り時間がありませんので急いでいきたいと思いますが、北朝鮮に関して見ましても、この三年間で、実は核とミサイル開発がかなり発展といいますか継続してしまっているということでございます。〇九年、一三年には核実験がありましたし、二〇一〇年においてはアメリカの科学者に数千基と言われる濃縮ウランの施設を見せたり、様々な形で北朝鮮は核の開発能力というものを着実に進展させているのと同時に、その運搬手段についても開発が続いているということでございます。  こうした事態が続いていくと何が起こるかということなんですが、将来的に、北朝鮮が危機的状況に陥ったときのその破壊力が増してくるというのも、これも大変重要な視点なんですけれども、同時に、短期的に考えなければいけないことは、仮に北朝鮮が核及びミサイル能力に自信を持った場合、つまり、自らの核及びミサイル能力で韓国及びアメリカの介入に対する拒否能力を彼らが持ったと自覚したならどういうことが起こるかというと、北朝鮮は、仮に小規模な、例えば以前起きた天安事件であるとか延坪島の砲撃事件のような小規模な軍事攻撃を起こしても、韓国やアメリカはどうせろくな反撃ができないだろうと思う領域を増やしていくという、こういうパラドックスに直面するわけですね。なぜこれがパラドックスかというと、戦略的に抑止がなされている状態であればあるほど実は小規模な軍事紛争はむしろ生じやすくなるという状態が現在朝鮮半島で起きているというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、このような中国の台頭と、先ほど申し上げましたパラドックスに対応するような有事エスカレーションを想定した防衛体制をこの三年間の中での変化の中でつくり上げる必要性が増したというのが、これがまさに非常に素早いこの情勢の変化ということの大変大きなポイントだということでございます。  そして、なぜ現在立てた戦略の概念が賞味期限が五年ぐらいなのかと考える根拠をこれから幾つか申し上げたいというふうに思うんですけれども、一つは、やはり中国日本の一対一の軍事バランスが大きく現在も日々変化しているということでございます。  例えば、現在、中国は第四世代戦闘機をおおよそ七百機近く保有しております。これから新型の潜水艦、駆逐艦、そして空母、機動艦隊になるかどうかは別として、増やしていく状況にあると。海上優勢という点で考えれば、しばらく日本に優位な部分があるかもしれませんけれども、航空優勢ということで考えてみますと、徐々に中国側がその優勢の度合いというものを深めているような、こういう展開にあるわけでございます。  したがいまして、いつまでもこの優勢獲得という概念が続くかどうかということに関しては極めて慎重な検討が必要であり、私は最初の参考人である香田さんとかなり意見を共有しておりますけれども、優勢概念ということに拘泥するよりは、むしろ我々が定めた国益をどのように守るかというまさに拒否力、相手が力で現状変更してくることに関して、そのような変更を許さない阻止能力をつくっていくということが、恐らく五年後辺りから大変重要なコンセプトになってくるのではないかというふうに考えているわけでございます。  二つ目は、時間の概念が大変大事だということでございます。  時間というのはどういうことかというと、有事対応型の迅速な展開能力と、特に南西方面での事前配備、集積の強化ということなんですけれども、ここでウクライナの事例を出したいと思います。ウクライナは、プーチン政権が電光石火のごとく併合し、そして住民投票を実施し、ロシアに組み入れていくということを僅かな期間で行ったわけですけれども、このような時間の概念を可能にしたのは、ロシア軍の事前展開があったからだというふうに私は考えているわけでございます。  仮にこれを南西諸島に当てはめると、当然、石垣島から百七十キロの尖閣諸島に我々がいわゆる巡視船、巡視艇を展開する時間と、そして二〇二〇年頃には中国の海警の船はおおよそ五百隻に増えます。当然、五百隻の運用ということになれば、中国側も常時監視ということで常に東シナ海に展開している状況があり、石垣島から展開する時間と常時監視している中国の海警が尖閣に展開する時間というものがはかりに掛けられる時代がいよいよやってくるということでございます。  このような時間の概念に鋭く対応するような防衛体制ができなければ、我々にとってのまさに主権の防衛というものが著しく危機にさらされる事態がこれからやってくるということになると考えておりまして、そのような関係の、そのような時間の概念を盛り込んだ防衛体制というものをこれからより強化していかなければいけないというふうに考えているわけでございます。  さて、具体的にどうするかということを二番申し上げて私の発言を終わりたいというふうに思うんですけれども、今後の課題ということで、大変重要なポイントが幾つかございます。  第一番目は、今年の終わりまでに現在予定されております日米の防衛協力のガイドラインをどのように改定していくかということだと思います。  これは、現在進められている安全保障の法的基盤に関する政府見直しにも直結する課題だと思いますので、まだどのようなオプションがあるかということは、幾つかの政治判断を経てみないと分からない部分はあるわけですけれども、特にその九七年のガイドラインで想定されていなかった事態、特にこれはグレーゾーン状況に日米がどのような共同行動を取れるか、あるいは日米の分担、役割分担をどうするかということについて、より具体的に詰めなければいけないということだと思います。とりわけ、この日米協力における日本側の役割の拡大というのは大変重要なポイントであるということを申し上げておきたいというふうに思います。  二つ目、(2)でございますけれども、仮にこの事態がより緊張を増してエスカレーションが拡大した場合の日本防衛体制日米同盟はどうなるのかということについても、より想像力を膨らませた政策体系が必要になってくるだろうというふうに考えております。  特に、中国側がよく言われます、A2ADと呼ばれますけれども、中国側の例えばミサイル能力、対潜水艦能力や対艦攻撃能力というものがより深刻さを増した場合に有事を迎えた場合どうなるのかということをより考えてみると、やはり日米同盟が、アメリカの現在QDRがよく掲げているまさにA2AD環境の中でも部隊の展開が可能なような環境を同盟協力として整えていくことが大変重要な課題になってくるということでございます。  具体的に言うと、この在日米軍基地がと書いてあるところですけれども、西太平洋の戦力投射プラットホームとして有効に機能するように強靱性、抗堪性を強化して、具体的に申し上げるならば、米軍施設の滑走路、港湾、そして仮に攻撃を受けた場合の復元能力、ネットワークインフラ、地下施設の設置など、こういったところに予算配分を振り分けるということがこれからの厳しい時代を迎えるに当たっては大変重要なポイントになるであろうということです。  最後でございますけれども、国家安全保障戦略防衛大綱、双方で挙げられていた重要なテーマは、アジアにおけるパートナー国との安全保障協力でございます。特に、フィリピン、ベトナム、韓国、オーストラリア、インドといった国々が注目されているわけでございますけれども、これを見るに当たって、最後のパワーポイントのスライドを御覧いただければと思います。  こちらに書かれているのが、実はアジアにおける主要国を除いた、白石先生の言葉ですと新興国の国々が一体どの程度の国防費を使うかということなんですけれども、二〇一〇年と比べますと二〇二〇年代、ぐっとインド、ASEAN、韓国、オーストラリアといった国々が伸びてくるわけでございます。したがいまして、台頭しているのは中国だけではなくて、実はアジア域内における新興国も相当程度の力を付けてくる。この力を付けてくる新興国をできるだけ日本のセキュリティーのパートナーにしていくということがいかに大事であるかということをこの二〇三〇年までのグラフは表しているのだというふうに考えております。  その点から申し上げましても、安全保障政策の方向性というのはまさに正しいと私は思うんですけれども、これを具体的に詰めていく作業がまさに今日から求められているということだと思います。  以上で私の発言を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  19. 末松信介

    委員長末松信介君) 神保参考人、ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  20. 三木亨

    ○三木亨君 自由民主党の理事の三木亨でございます。  初めに、御挨拶だけ。本日は、お忙しいところ当委員会にお越しいただきまして、ありがとうございました。また、非常に参考になるお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  時間もございませんので、幾つか早速お尋ねさせていただきたいと思います。座って失礼いたします。  今回の国家安全戦略の方では、例えば日米同盟以外にも周辺国との関係が大事だというふうなことが記されております。この関係をどうしていくかということを皆さん方に、まず、安全保障専門家である皆さん方にまず順次お聞きしたいと思います。  安全保障戦略の中では、具体的に、韓国、オーストラリアあるいはASEAN諸国及びインドといった普遍的価値戦略的利益を共有する国との協力関係強化することが大事だというふうに書かれております。また、ロシアとの関係につきましても、安全保障及びエネルギー分野を始めあらゆる分野でロシアとの協力を進め、日ロ関係を全体として高めていくこと、これも極めて重要だというふうな記述がございます。  こういった日本を取り巻く情勢、特に対中国との関係で非常に複雑な環太平洋の情勢となっておりますが、我々日本は今後、まあ基本となるのは日米同盟であろうとは思いますけれども、こうした周辺国とどういった外交防衛面で協力ができるか、あるいはこういったところで重視する点はどういうところかということを各参考人皆様方に簡単にお聞きしたいと思います。
  21. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、香田参考人から。
  22. 香田洋二

    参考人香田洋二君) 分かりました。じゃ、お答え申し上げます。  特に私は、自分のバックグラウンドである軍事面で申し上げます。  つい三年ほど前まではASEAN諸国中国の距離というのは非常に近かったということなんですけれども、今ASEAN諸国の現役の軍人あるいはOB、あるいは皆様みたいな国会議員で各国防衛を携わっておられる国会議員の方等とトラック2でよくお話をするわけですけれども、中国領土紛争のないインドネシアでも、非常に中国については、怖がっていると言えば大げさですけれども、非常に気にしている。領有権問題があるベトナム、マレーシア、フィリピンについてはもう恐れているという状況なんですね。  もう一つ、彼らが今、特に軍事面ですよ、で何かといいますと、しかし自分たちには能力がないんだと。これすぐにできればいいんですけれども、今、南沙諸島で何が起こっているか、例えばマレーシアの三七〇機が落ちたということをベトナムもマレーシアも最終的に分からなかったというのは、実は完全に海、空の監視能力とかないんですね。だから、そこについて早く構築をしたい。その中で、日本に対する期待というのは非常に高いということがあると思います。  オーストラリアはまた少し別ですけれども、韓国、オーストラリアはやはりアメリカとの距離も違いますし、それぞれ日本との戦略的関係が違いますので、これは非常に精緻なところが、政策判断が要るんだと思いますけれども。韓国にとってはもう日本に相当、国民感情としては悪いわけですけれども、彼らが自分たち状況を見たときに、朝鮮半島で何かあったときに、やはり米軍の拠点というのはもう日本以外はないんですね。その中でどういうふうに日本期待するかというのは、実は見えないところですごく持っているわけですね。オーストラリアは全く別の意味で、ASEANとの関係で持っている。  そういうものをいかに我が国が取り込んで、軍事的に、これはいきなり自衛艦とか飛行機じゃなくて、先ほど言いました空域、海域を監視する能力、あるいは、例えば韓国ですと、法制的にしっかりとお互いに支援ができるような事項ですね、そういうことをしっかりと構築していくことが一つ求められることではないかなと思います。  ロシアについて言いますと、これは戦略というのは、ある意味必要なときには、戦国時代の武将ですと娘を敵に嫁にやり、息子を殺したわけですね。何を言いたいかといいますと、国益国家目標というのを最重点に考えたときに、ロシアというのは中国との関係でプラスとマイナスと両面あると。例えば、人口のシベリア移入という合法、非合法の移民というのはロシアは非常に今怖がっています。あるいは、日本ではほとんど今注目されていませんけれども、資源獲得のための北極海に対する中国の進出というのは非常に怖がっています。しかし同時に、上海協力機構等で、対米という意味では、ある意味中国に近い距離にあると。我が国は何かというと、そこを読んで、我が国家目標国益に立脚してロシアといかなる距離を保つのかということが非常に重要になると思います。  それで最後に、中国は、日本のASEANに対する、私は去年、中国北京に四、五回行っています、中国は非常に封鎖主義だというふうに文句といいますかクレームを付けるわけですけれども、これは、冷戦時代のソ連のコンテインメントというのは、例えばNATOの国は一枚岩で、NATOの各国自分たちの都合でソ連とのお付き合いというのは許されなかったわけですね。今の日本のASEANへの進出というのは、恐らく日本は、日本国益でASEANの国と関係をつくりますと、ただし、ASEANの各国自分たち国益中国とどう付き合おうということについては日本は一切干渉しないはずです。これは全くコンテインメントじゃないんですよね。  ただし、日本がなぜするかというと、先ほど言いました、我が国国益達成上、ASEAN諸国が重要だから、インドが重要だから、ある意味間接的なキャパシティービルディングの支援をやっていくということになるんだと思います。そういう意味で、非常に実利的に、しかも中国との距離、各国との距離をしんしゃくしながらやっていただければというふうに考えております。
  23. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  一人の委員の質問時間が答弁入れて十五分でございますので、できましたら簡潔にお願いを申し上げます。どうも失礼をいたします。  それでは、白石先生。
  24. 白石隆

    参考人白石隆君) それでは、ごく簡単に申し上げますと、もう既に香田さんの方から触れられたことですけれども、中国の台頭によって、やはり、どうこれに対応し自国の安全保障を守るかということは、全ての国で大きな課題になっていると。そういう中で、日本安全保障協力ということを本腰を入れてやるようになっていると。これは既にもう民主党政権時代からそうでございますが。それから、同時に、武器輸出三原則等の見直しが行われ、今回、防衛装備移転三原則が決められて、ますますASEAN及び豪州では日本に対する期待が高まっているということは、これはほぼ確実に言えることだろうと思います。  ただ、個別に国を見ますと、これはそれぞれの国の安全保障戦略によって温度差は違いまして、私は、韓国は米中二国との関係をうまくマネージすればそれでいいという、そういう大きな戦略的な判断を今下しつつあるんではないかというふうに考えておりますし、ASEANの中でもタイ、それからカンボジア、ラオス、こういうところは特に中国から安全保障上の脅威を感じているわけじゃ恐らくないと。やはり、ベトナム、フィリピン、それからインドネシア、それから恐らく近い将来はマレーシア、こういうところがもっと日本に対する期待を高めていくだろうと。それから、豪州は、なかなかこれを事実上の同盟国というふうに言うわけにもいきませんけれども、戦略的パートナーとしては極めて重要になっているし、それは日本でも豪州でもよく意識されているというふうに考えております。
  25. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  柳澤参考人
  26. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) ごく簡単に補足をいたします。  安全保障面で日本が一番役に立つであろうことは、やはり南シナ海の海洋に関する情報をシェアすること、それから、何というんでしょうか、海洋監視もそうですが、海洋のパトロールなんかの能力向上を支援してやることだろうと思います。  それから、もっと全般の経済まで含めた大きな関係でいいますと、実は中国だってその影響を広めようとしていろんな関係を持っているわけで、なかなか各国日本と同じように中国を見ているわけでもないという現状がある中で、どこで日本の優位性を発揮するかということを絶えず意識する必要があるので、多分それは、例えば日本の企業の海外進出というのは、基本的に資源の収奪ではなくて、人材の育成であり、技術を根付かせてやることでありという、そういう日本の利点を生かすような形で、これは結構長い時間を掛けて中国との影響力競争のような形になると思いますので、単にそれを我々は封じ込め、閉じ込めてさせないわけにはいかないわけですから、その中で日本の利点をどう生かしていくかということを是非考えていく必要があるんだろうと思っております。
  27. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  それでは、神保参考人、よろしくお願いします。
  28. 神保謙

    参考人神保謙君) 私もほぼ答えは同じなので、なぜ日本がそのようなことをするべきなのかということを簡単にお話ししたいと思います。  一つは、南シナ海の沿岸諸国に対する能力構築支援が大事だと、そのとおりだと思うんですが、なぜ大事かというと、私自身の解釈では、フィリピンなりベトナムなりといった国々が特に中国の海洋活動に対する、対抗する独自の能力をつくることを支援してあげるということが日本にとっての国益になるからだというふうに考えているんですね。  どういうことかというと、特にフィリピンなんかは、沿岸警備隊の能力が大変劣っているというか、ほとんど活動ができていない状況なんですが、その状態で、例えば中国との海域で問題が起きているスカボロー環礁の問題で何が起こるかというと、フィリピンは沿岸警備隊がしっかりしていないものですから海軍を出すわけですね。海軍を出せば、中国は、これはエスカレーションが起きたということを判断して向こうも海軍を出してくるということで、突然危機のレベルが上がってしまうということなんですね。  つまり、日本がコーストガード、つまり海上保安庁の監視船を提供することによって何がいいかというと、それはフィリピンにとってのエスカレーションのラダーをつくってあげることなんだと思うんですね。したがって、フィリピンが中国との関係で危機を管理する能力が増え、より南シナ海は安定的に保たれる、これが能力構築支援の大変重要な意味だというふうに私自身考えています。  二つ目は米軍の展開をサポートすることだと思っておりまして、アメリカは今、あの評判が余り良くないリバランスをいまだに続けているわけですけれども、やはり大事なことは、東南アジア、オセアニア、そしてインド洋に至るアクセス拠点を維持することだというふうに考えております。このアクセス拠点には大変な投資が必要でありまして、仮に日本戦略的なODAやそして日本のその能力構築支援がアメリカのリバランスというコンセプトと重なることによって、実は米軍が面で展開する能力日本から支援することにつながるというのが二番目でございます。  三番目は、実はHA・DRという領域ですけれども、人道支援やそして災害救援の活動に軍が関わるケースが大変増えておりますけれども、こういった訓練や演習を増やすことによって域内の軍艦、当局者同士の信頼関係を高める、これがまさに域内での安全保障協力をするときの大変重要な意義ではないかと考えております。
  29. 三木亨

    ○三木亨君 ありがとうございます。  あともう少しいろいろ聞こうかと思ったんですが、少し時間なくなりましたので、私はもうこれで置きたいと思います。どうもありがとうございました。
  30. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 福山でございます。座らせていただきます。  本日は、参考人先生方におかれましては、貴重な時間をいただきまして大変参考になる御意見を拝聴できましたこと、心からまず感謝申し上げます。それぞれの参考人におかれましては、日本外交安全保障に本当に長年御尽力をいただき貴重な御示唆をいただいてきた皆々様でいらっしゃいましたので、本当に今日の話も中身の濃い話でございまして、以後の委員会審議につなげていきたいというふうに思います。ありがとうございます。  実は今日、私、お話を承ってから何を質問するか考えようと思っていたんですが、非常に中身が濃くて若干私の頭の整理が至りませんが、お許しをいただきたいと思います。  まず、率直に私自身の今の大綱やNSSについての感想を申し上げます。  我々、二二大綱に関わらせていただきました。その観点でいうと、先ほど神保先生からありました三年というのは本当に意味があったのかどうかということに対しては、若干疑念を持っております。国内政治の大きな影響の中でこういった形になったことというのは、一定、私も政治家ですから理解をしますが、日本外交安全保障という、特に自衛隊の部隊を動かす中心となるものをこういった形で三年の短期で動かすことが本当にいいのかどうかということについては若干疑問に思っております。北朝鮮のミサイルや中国の海洋進出、災害対応重要性、複合事態へのシームレスな対応統合運用等は実は二二にもう十分に表現を入れさせていただいておりました。これは、私の今横にいらっしゃいます北澤防衛大臣を中心にやっていただいたことでございます。  ただ、今日、三年間の短期間の中での大綱の変化について、神保先生から、より警戒監視活動を乗り越えたような状況が起こってきていることについて今回意味があるのではないかとか、それから機動的な、いわゆる我々の言っている動的防衛力以外のもの、統合機動防衛力についても、より意味があるのではないかという御示唆をいただきました。実は私、防衛省や防衛大臣の答弁よりかは、より神保先生の話の方が理解と納得をしましたので、そういった点については改めて考え直して評価をしたいなというふうに思っております。  具体的にちょっと質問に行きます。  まず、香田参考人神保参考人から共通して出てきたのは、いわゆる海上優勢、航空優勢に対して、このことを強調し過ぎると余り良くない状況が起こるのではないかと。拒否力という言葉を使われましたが、具体的に、この拒否力といった点についてどういうことを今後日本は想定をして準備をしていけばいいのかについて、香田参考人神保参考人から御示唆をいただければと思います。  それから、神保参考人には、余り今日言及のなかったNSCの体制について、今日それぞれの参考人余り言及がなかったんですけど、現状のNSCの体制並びに評価、並びに今後のNSCの運用について何かお考えがあればお聞かせをいただければと思います。  白石先生におかれましては、白石先生からは、国際ルール、いわゆるルールメーキングに対する日本重要性ということについて御示唆をいただいたと思っておりまして、私はその点については全く同意なんですが、しかし、私も若干なりとも外交に携わったものでいうと、今の国連における意思決定、ルールづくりの厳しさ、G7、G8に至っては今のウクライナ状況を見ればもうお分かりのとおりでございますし、逆に、今の時代は国際的なルールをどのように担保するかということについて非常に難しい時代になっているのではないかと私自身考えております。  ですから、我々も外交のときに、首脳会談等では当然国際ルールに沿って、のっとってというのはお題目のように言いますが、そこをどう担保するかについて、実は国際社会が今、次の時代のプラットホームなり何なりをつくることに対して少し模索をしているのではないか、というかそこに非常に苦慮しているのではないかという問題意識がありまして、そのことについて白石参考人から何かお話をいただければ有り難いと思います。  それから、柳澤参考人におかれましては、まさに官邸で外交安全保障をやられてこられた方でいらっしゃいます。私、今回の防衛大綱等を見ると、より協調的なとか、中国のより活動を活発化させているとか、これまで以上に積極的に寄与していくとか、安全保障環境がより厳しくなったとか、非常に定性的な表現が多いと。更に言えば、先ほど御指摘がありましたように、毅然として対応していくというのは、オペレーションとしては非常に問題だというふうに思っておりまして、これは、一体どういうふうにこのことを整理をしていいのかということをまずお伺いしたいのと、一方で重要なのは、それと並行してガイドラインの話があります。  今、防衛大臣、外務大臣にお話を聞くと、この年末のガイドラインについては、いわゆる安保法制懇の議論と切り離して、現状の我々のできる範囲の中で事務的には準備を始めているという話をされているんですが、安保法制懇のスピード感によっては、秋に例えば、本当に出てくるかどうか分かりませんが、法律の改正等が出てくるときに、年末のこのガイドラインの改定について本当に現場としてはどのように対応可能なのかと。柳澤参考人におかれましては、九七年のガイドラインについて現場対応されたこともおありだと思いますので、そのようなことについて何らかの形で御指摘をいただければというふうに思います。  私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
  31. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、先生方、お一人二分間ぐらいでの御答弁になりますが、よろしくお願いをいたします。  じゃ、香田参考人
  32. 香田洋二

    参考人香田洋二君) 拒否について申し上げます。  航空優勢、海上優勢というのは、ある意味軍事の基本なんですけれども、これをやるには、例えばですけれども、中国が四世代戦闘機を五百機持っているとやはり我々も五百機要るんですね、極端に言いますと。ところが、将来そうはいかないだろうということと、日本はロシアにも警戒をする必要もありますし、そのときに南西諸島を仮に一つの焦点とした場合に、要するに情報力、C4ISRを非常に高めるという前提で、相手の弱点とか相手の行動をある程度予想をしまして、来るのを払う、払うことによって相手の目的を達成させない、すなわち南西諸島を取られない、あるいは太平洋進出を阻止をすると。それは少ない兵力を効果的に使うことによって達成できるわけですね。  それが中国目標、目的を阻止するといいますか達成させないわけですから、ある意味それで少なくとも取られないという我が国目標は達成できると。それで頑張っているうちにアメリカが来るのを待つというふうな、非常に、二分間で言いますと、そういうイメージでございます。
  33. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  それでは、神保参考人、NSCのことですね。
  34. 神保謙

    参考人神保謙君) まず、拒否力の話はもう香田さんがおっしゃったとおりだと思うんですけど、大事なことは、やはり戦力のバランスがいかに中国に傾いていようとも、中国の作戦遂行能力が阻止されているという状態をつくることが拒否力の大変重要なことでございます。したがって、二〇三〇年の数字を見ると十一倍とか出てきて、もうとてもこれはバランス的には駄目なんじゃないかと思うかもしれませんけれども、例えば海上作戦行動一つを取ってみても、日本から見た太平洋は非常に広いわけですけれども、中国から太平洋に出ていくというのは本当大変なことなわけですね。それは海上交通路が大変限られていることでございまして、その限っているのはまさに日本の国土でございます。その国土を十二分にまさに利用して、活用して、そこに集中的に自衛隊のアセットを投下すればこうした数字のバランスのアンバランスというものは十分オフセットできるというのが、これが大変重要な拒否力の考え方だと思います。  もう一つ、NSCの体制につきましては、現在、六十七名の事務局で運営されていて、まさにトップダウン、迅速な政策決定と、そして省庁間を超えたインターエージェンシーのコーディネーションということが求められるというモデルの理想型は大変すばらしいものだというふうに考えているんですけれども、一つ私が気になりますのは、例えば、中国の台頭に日本がどのような戦略で臨むかといったときに、当然我々が安全保障戦略の中で持っているのは、一方で中国をエンゲージしていく、これは戦略的な互恵関係に基づく経済的な相互依存関係を増やしていくということと、もう一方では力による、力の偏向というものを阻止していくという力の局面があるわけですね。この二つの両輪をNSCが本当に遂行していける体制になっていくかというと、現状の体制というのは極めて対中対抗的な要素、つまりゼロサム的な要素で組織が成り立っているのではないかというふうに考えております。やはりバランスの取れた戦略が遂行できるような、例えば経済産業省であるとか、様々な、金融庁であるとか、こういった方々がNSCの中に積極的に関与すると、より総合的な戦略策定の場になるのではないかというふうに考えております。
  35. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  じゃ、白石先生、よろしくお願いします。
  36. 白石隆

    参考人白石隆君) どうもありがとうございます。  まず最初に、動的防衛力統合機動防衛力について少しだけ申し上げますと、実は私、二〇〇九年から一〇年の安防懇の座長代理をやらせていただきまして、そのときの私の理解からしますと、ほとんど概念的には変わっていないんじゃないかと。ニュアンスがちょっと違うとすれば、それは統合というところをより強調しているということではないかと。ですから、私としてはそれほど大きい変化はないんではないかというふうに理解しております。  それから、ルールメーキングについてでございますが、国連だとかG20だとか全然うまくいっていないじゃないかと。おっしゃるとおりでございます。唯一日本として今できるとすれば、しかもこれが二十一世紀のルールメーキングということで重要だとすれば、私はやはりTPP、それからTTIP、米欧の方でやっておりますけれども、このTPPについては日本としてプロアクティブにやっていくというのが、これ安全保障とは違いますけれども、ルールメーキングということから言うと重要だろうと。  それから、ルールをどう担保するか。これも極めて重要でして、なかなか難しいんですが、例えば既にフィリピンは領土の問題について中国との係争問題を国際仲裁裁判所に訴えるということをやっておりまして、私は日本政府としてこれを大いに支援すべきだと思いますし、それから竹島の問題についても、私は日本としてまさに毅然として国際司法裁判所に訴えてよろしいんではないかと。同時に、尖閣の問題については、ここは今の日本政府の立場とは若干違いますが、日本として幾ら領土問題がないと言っても、中国の方があると言えば第三者から見ればどうもあるように見えるわけですので、それであれば、中国にどうぞ国際司法裁判所で法的に国際法にのっとって対処しましょうということをサジェストするのは、これは私は、日本として国際法にのっとって国際紛争を処理していきますという立場から見ると、極めて重要なことではないだろうかと考えております。
  37. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  それでは、柳澤参考人、よろしくお願いします。
  38. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) ありがとうございます。  簡潔に申し上げます。  まず、全体を通して形容詞とか副詞が物すごく多用されている、私に言わせれば、片仮名語も含めてですけれど、私は防衛研究所長もやっておりましたけど、そのときに防衛研究所の研究者からこういう論文が上がってきたら突っ返します。つまり、詰めが甘いことの証明以外の何物でもないということですから、もっと定量的な分析をちゃんとすべきだということだと思います。  それから、九七年の日米防衛協力ガイドラインに私が携わっておりましたときには、もう従来の憲法解釈の変えない範囲内でやるという明確な政治のガイダンスの下にやっておりました。  アメリカという国は、ここのところ自分はどうしても弱いからここを何とかしてくれよということを言わない国、だからまさに軍事大国であるゆえんであるわけですけれど、日本は何ができるんだい、どこまでやってくれるんだいと、こう来るわけですね。それに対して、じゃここまでやりましょうということで、九七年のガイドラインが大変喜ばれたのは、集団的自衛権の行使には踏み込んでいないけれども、日本が何をどこまでやってくれるかがはっきりしたことでアメリカの方の作戦計画準備が立てられるようになったということを大変喜ばれたわけであります。  今そこの前提が非常に難しい中で議論をしていますから、ちょっと年末まで、恐らく私の後輩の防衛官僚は私よりずっと真面目で頭がいいと思いますので、恐らくサイバーの問題とか宇宙空間の問題とか、憲法解釈とは当たり障りのないところの作業はやっていけるんだろうと思いますけれども、実は一番、この種の問題をやるときに一番重要なのは、そこの政治のはっきりしたガイダンスだということだということを申し上げたいと思います。
  39. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ありがとうございました。  更に質問を続けたいんですが、残念ながら時間ですので、本当に大変貴重な御意見いただきましたことを感謝申し上げます。  以上で終わります。
  40. 石川博崇

    ○石川博崇君 公明党の石川博崇でございます。  四名の参考人先生方におかれましては、本日は本当に貴重な御意見を賜りましたことを感謝申し上げます。座らせていただきます。  時間もございませんので、端的に質問をさせていただきたいと思います。  まず、白石参考人とそれから神保参考人にお伺いをしたいのは、本日、お話の中で、太平洋地域におけるパワーバランスの変化というお話、将来の推計数字も出されてお話をいただきました。特に新興国の台頭、それから中国の台頭というものはここ近年顕著なわけでございますが、今後の推計ということについてあえてちょっと議論をさせていただきたいのは、特に中国なんでございますが、ここ数年のこうした軍事力あるいは経済力の台頭が果たしてこのまま進捗するのかと。国内の状況を見たときに、経済成長率は七%と当初期待していたほど余り伸びていない、あるいは国内の貧富の格差、内外格差、あるいは少数民族の抱えている現状等を考えたときに、あるいは人口構造で考えますと、少子高齢化がこれから日本以上に深刻になるということを踏まえて、中国の今後の台頭というのをどういうふうに見ていくべきかについて御所見があればいただきたいというのがお二人の参考人。  それから、柳澤参考人とそれから香田参考人に是非この際お伺いをしたいのは、今、先ほど来ありましたとおり、安保法制懇における有識者の議論が行われておりまして、今後、報告書が出てきてどのような議論になっていくかというのは全く不透明な状況でございますけれども、柳澤参考人、様々論評等出されております。四類型についての考え方、あるいは今各種注目を浴びております限定的容認論というものもございます。公海における米艦防護、これを特に日本近海であったときには、当然、日本国内の駐留米軍に対する攻撃も、軍事的意図を持って攻撃を米艦に対して行うのであれば、それに対する報復に対して備えなければならないということも考えると、当然、日本国内の駐留米軍に対する攻撃も同時に想定されるんではないかということから、個別的自衛権での対処というものが当然考えられるんじゃないかという御指摘もあろうかと思いますが、その辺も含めて柳澤参考人からいただきたいのと、それから香田参考人に対しましては、先日、元海上幕僚長の古庄幸一氏が新聞で出されていた論文について、論文といいますか御意見についてお伺いをしたいなと思いますのは、今そこにある危機というものに対処せずして集団的自衛権を容認するということを唱えるのは優先順位が間違っている、政治的パフォーマンスだというふうに断じておられるんですが、現場を預かってこられた香田参考人から見て、この今そこにある危機というものとその集団的自衛権の関係について、御意見をいただければというふうに思います。  よろしくお願いいたします。
  41. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、最初に白石参考人からよろしくお願いいたします。
  42. 白石隆

    参考人白石隆君) どうもありがとうございます。  中国の展望についてでございますが、昨年で大体七%台半ばの経済成長率ですが、正直申しまして、これから十年ぐらいこの七%台ぐらいで成長を続けるのか、それともこれから十年で七%台から三、四%台に緩やかに落ちていくのか、これは分かりません。分かりませんが、いろいろ中国の研究者、特に政府のシンクタンクの研究者などと意見交換をしておりますと、シャドーバンキングと地方財政の問題、あるいは国有企業改革の問題等はありますが、恐らくハードランディングはないだろうという辺りまでは言えるんではないだろうかと思います。つまり、どこかで中国が崩壊するなんて、そういうことはほぼ考えておく必要はないだろうということでございます。むしろ、緩やかに経済成長率は落ちていくぐらいのところかなと。  それから、二番目に、現在の習近平政権は、二〇二〇年までを、これ二〇〇〇年から二〇二〇年を中国にとっての好機だというふうに、これ江沢民政権以来ずっとそう中国政府は言っておるわけですけれども、そういう中で、江沢民政権の時代には二〇二〇年というとまだ随分先だったと思いますけれども、現在の習近平主席になりますと六年後には二〇二〇年ですので、やはり時間的には少し急ぎ始めているのかなと。  ということで、これから十年くらいはやはりこの絶好機に富国強軍、海洋大国というところに資源をどんどん投入していくというふうに考えておいた方がよろしいんではないかと。ということは、別の言い方をしますと、日本にとりましては安全保障環境というのはもっとこれから厳しくなるという、そういうふうに覚悟をして対処した方がよろしいかと思います。
  43. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  じゃ、神保参考人、よろしくお願いします。
  44. 神保謙

    参考人神保謙君) 私が提出させていただいたこの推計値でございますけれども、将来のプロジェクションデータというのはやはり幾つかの弱点がございまして、それは実質経済成長率のその値と、そして当然このGDPデフレーターと呼ばれている物価の変化とそして為替レートですけれども、これが数%変化すると将来の予測値も大きく変化するということなので、幾らでも将来は変化し得るというのが一つ前提なので、今回お渡ししたデータはあくまでも目安として考えていただければというふうに思うんですが、それでもそれに、その前提となる経済データはどこから来ているかというと、これはIMFの長期経済見通しと、そして最近アジア開発銀行が出したデータですね、そして古くは二〇〇七年のゴールドマン・サックスが出したデータを、リーマン・ショック以降の経済データをその誤差を修正して出したものだということであります。  これら全てに共通するのは、中国の成長率というのはこれから緩やかに減速していくと。二〇一〇年代の後半には七%、そして二〇年代には五%、三〇年代には恐らく三%ぐらいまで低下するというシナリオなんですけれども、大事なことは、やはりG7諸国に比べますとはるかに高い経済成長で、これから長期的に推移していく可能性があるということですので、当然ながらシナリオとしてはいろいろなクラッシュシナリオもあるかと思うんですけれども、あえてここではリニアなモデルをベースに戦略考え重要性ということを改めて提示してみたかった次第でございます。
  45. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、柳澤参考人、よろしくお願いします。
  46. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 御指摘のいわゆる限定的容認論というのがどういうロジックか私もよく分かりませんのですが、ただ、従来、政府が言ってきたのは、集団的自衛権というのは我が国攻撃されていないにもかかわらず反撃するということであるから、我が国攻撃されたときに自衛することの、その必要最小限度を超えるから行使できないと、こう言っていた。それは価値判断の問題じゃなくてロジックの問題なんですね。ですから、何か必要最小限度の集団的自衛権があるというのは、実は論理として成り立つのかどうかというところ、どんな御説明になるのかというのをこれから私は注目していきたいと思っております。  それから、大概のケースで、私も北朝鮮のミサイルの発射とかいろんなケースに官邸にいるときにも立ち会わせていただきましたけれども、例えば去年の三月でございましたが、北朝鮮がミサイルの発射準備をして、そのときに労働新聞が何を言ったかというと、三沢も横須賀も沖縄もハワイもグアムも我が方のミサイルの射程内にあると、こういう非常に挑発的なことを言っているわけですね。それは何かというと、軍事的には、本当にアメリカと事を構えるのであれば、一番直近にある報復力である在日米軍基地をほったらかしておいて、どこかとんでもない太平洋の上に浮いているようなアメリカの船をいきなり攻撃するというのは、軍事的には全く合理性のない行動だろうと思います。  ですから、本当に事を構えるのであれば、在日米軍は必ず私は標的になると思うし、そのときの自衛隊の一番やらなければいけないことは在日米軍基地を守る、もちろん日本の国土を守るということでありますが、在日米軍基地の防衛というのがアメリカの最大のニーズになると思いますし、それはもう既に中曽根内閣のときに出された日本有事の際の米艦護衛は個別的自衛権の範囲という考え方の延長上でできるのであろうというふうに思っております。  それから、そもそも本当に北朝鮮にそういう能力があるのかということ。北朝鮮はこの間、もう乏しい国家資源を核とミサイルにずっとつぎ込んで、それはアメリカに対する唯一の外交カードだと私は見ています。北朝鮮の通常戦の能力、まあ最近は無人機が飛んできたりで大騒ぎになっておりますが、米韓軍は、昨年、もうあらゆるスペクトラムの挑発から核の使用に至るまでに対応した作戦計画を作ったということを公表しています。今回のアメリカのQDRでも、実は日本については余り記述がないんですが、韓国軍はすごく優秀だという、これでもうそのうち米韓軍の指揮権も任せられるというような趣旨のことが書かれているわけですね。だから、かなりここは、北朝鮮に関する限りアメリカは相当自信を持っているということも言える。  そして、仮に、ですから北朝鮮のそういう典型的な有事がなかなか、ある蓋然性はそんなに、ほとんど高くないだろうと私は思いますし、仮にあったとしても、それは、日本有事にならなければ、そのような戦争にならなければ北朝鮮としてはとてもやれないという可能性の方が強いだろうという、そんなことを、そういう背景も含めて考えていく必要があるだろうということを申し上げさせていただいております。
  47. 末松信介

    委員長末松信介君) ありがとうございます。  それでは、そこにある危機と集団的自衛権の在り方について、香田参考人、よろしくお願いします。
  48. 香田洋二

    参考人香田洋二君) 申し上げます。  今の柳澤参考人の例を引きますと、去年の三月、仮に北朝鮮が三沢の基地に対してミサイルらしいものを撃ったと。当然、イージス艦は日本海にいます、それからパトリオットもそれなりに展開をしていると。しかし、これは破壊措置命令なんですね。ということは、自衛隊自衛権を発動されていない。ということは、理論上は三沢に落ちる、米軍に落ちるミサイルというのは自衛権で落とすものではないんですね。  要するに、古庄元海幕長が言っている今そこにある危機というのは、実は個別的自衛権の発動さえ不明確ですと。要するに、破壊措置命令というのは自衛権の発動ではないんですね。もう一回言います。いかに自衛隊が国を守るべきか、自衛権が発動なき今の戦略大綱でいえばグレーゾーンの中で自衛権をいかに発動してもらうか、国としてどう整理をするか、それの整理ができないまま集団的自衛権というものについては順番が違うのではないかということを古庄元海幕長は私は言っているんだろうというふうに理解しております。  私自身も自衛艦隊司令官のときに、最後に、自衛権の発動がいつ出るのか、すなわち防衛出動ですね、自衛権の発動による、武力を使用した相手の侵略の排除というものはこれは防衛出動しか出ませんので、集団的自衛権というのは極端に言うと全てその後なんですね。グレーゾーンでは自衛権の発動がありませんので、米軍にしても実は守ってやりようがない。特別なその法律、破壊措置命令とか出ないと守ってやれない。しかし、それは本当に守っていいのだろうかと。なぜかというと、自衛権の発動をさせてもらっていないわけですから。その論議をしっかりしてくださいというのが恐らく古庄の言った意味だと思います。
  49. 石川博崇

    ○石川博崇君 大変ありがとうございました。
  50. 中西健治

    ○中西健治君 みんなの党の中西健治です。今日は本当にどうもありがとうございます。では、座って質問の方をさせていただきます。  まず、香田参考人白石参考人にお伺いしたいと思います。何についてかというと、この国家安全保障戦略大綱、あと中期防対象期間及び更新の頻度といいますか、そうしたことについてお伺いしたいと思います。  柳澤参考人の方からは、対象期間、NSS、十年では短過ぎるのではないかという御意見がありました。それから、神保参考人の方からは、対象期間についてではありませんけれども、賞味期限が五年ぐらいと、こんなようなお話もありました。  今、新しく作られたNSSは十年ということになっていますし、大綱も十年、同じ年限ということになっています。あと、中期防は五年ということですが、最近の大綱中期防というのは同じときに改定をされていて、十年、五年と分けているはずが、二二もそうでした、この二十五年もそうでした、その前の十六年もそうだったと思いますけれども、同時期に改定というようなことになってしまっていますので、この十年、十年、五年という対象期間の在り方及び最近のこの頻繁な大綱の改定、これについてどういうふうにお考えになられるか、教えていただきたいと思います。
  51. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、香田参考人白石参考人の順番でお願いをいたします。
  52. 香田洋二

    参考人香田洋二君) 特に安全保障戦略について言いますと、何を書くかということだと思うんですけれども、一つは国際情勢認識ですね。その後、我が国安全保障防衛も含めての基本的な方針ということであれば、戦略自体はもう少し長いレンジで見て、ただし国際環境に大きな変化があれば、それを受けて部分的ということはあるんでしょうけれども、多分、例えば日米安保というのは恐らく三十年続けてもいいのかなと思います。  ただ、神保参考人も言われましたけれども、ここ数年の安全保障環境の変化というのが余りにも速いものですから、いわゆる国際環境の変化というものをどう盛り込むかということで、今回恐らく初めてぎりぎりのところで十年という判断をされたんじゃないかということで、私はこれは是というふうに考えています。  それから、大綱はそれでいいんですけれども、中期につきましては五年ということなんですが、実際には三年で見直すということで、これは東京勤務の担当のときから実際に携わっていますけれども、これは、国際環境というのも財政的要因で、国内的要因で実は三年目に見直すという要素が私は実感としては大きかったと思います。これについては国際環境も反映をして、何を言いたいかというと、見直して予算が増えたことがないんです。ここなんです。これは本当に理解してください。見直して予算が増えるような見直しをやっていただけるのであれば是ですということであります。
  53. 末松信介

    委員長末松信介君) じゃ、白石先生。
  54. 白石隆

    参考人白石隆君) どうもありがとうございます。  私も、安全保障戦略防衛大綱の時間の幅を十年ということで置いておくことそのものは結構なことではないだろうかというふうに思います。それが、政権が交代したときにまた見直されるということも、これは政治的には非常に納得できることでございまして、ですから、その意味で十年ということには全く違和感ございませんが、私が一つ申し上げたかったことは、防衛装備研究開発というのは十年では短いということでございまして、特に、現在のように、私はスマート化、無人化、それからネットワーク化というのがキーワードだと思いますけれども、こういう形で今非常に大きく武器装備が、防衛装備が変わっている。それが恐らく二十年後には軍隊の姿そのものも変えていく時代には、個々の研究開発については予算措置も含めてもっと長期に考える必要があるだろうと。  残念ながら、これは安全保障政策とは関係ございませんが、科学技術基本計画もこれ五年でございまして、日本では、国としては科学技術開発戦略というのは極めて短期でしか今考えてございません。これはやっぱり二十年、二十五年くらいで考える必要があるというふうに思います。
  55. 中西健治

    ○中西健治君 続きまして、参考人の皆さん全員にお伺いしたいと思います。  今回の防衛大綱におきましても専守防衛という考え方が踏襲されているわけでありますけれども、今、安保法制懇の議論の中でも、政府の答弁では、この専守防衛というのは集団的自衛権の行使容認ということになったとしてもこれは貫かれるんだというような話になっているんですが、この専守防衛と集団的自衛権の行使ということは相矛盾しないのかどうかということについて御意見をお伺いしたいと思います。相矛盾するということであれば、また防衛大綱を見直さなきゃいけないということにつながるんではないか、こんな問題意識を持っておりますので、是非御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  56. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、最初に柳澤参考人からお願いいたします。
  57. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 専守防衛というのは、我が国攻撃を受けたときにそれに対応して自衛権、自衛のための武力を行使するという極めて守勢的な防衛の体制をいうという定義からすると、ですから、どういうロジックで出てくるかが分からないんですけれど、我が国攻撃されていないにもかかわらず自衛権を行使するというのは、とっさに考えれば専守防衛とは矛盾をするんだというふうに思います。  そういうことも含めて、今度のNSSの中でも、あるいは総理の施政方針演説の中でも、我が国の平和国家としての歩みは不変ですと、こうおっしゃって、そして安保法制懇の報告を受け取ってから集団的自衛権については検討をしますと、こうおっしゃっているんですが、報告が出るはるか前からいろんな議論が出てきているということで今御指摘のようないろんな疑問が出てきているんだろうと思います。  私は、ここに書かれていること自体は、集団的自衛権あるいは憲法解釈を見直さなくてもできることばかり書かれているんだろうという意味では、このとおり是非すぐにでも実行していただくべきものだろうとは思いますが、その先にあるものがどうもいまいち見えないなというのが率直な感想であります。
  58. 末松信介

    委員長末松信介君) じゃ、次、神保参考人、よろしくお願いします。
  59. 神保謙

    参考人神保謙君) 私はやや学者然とした議論をしたいと思いますけれども、冒頭私の発言では時間の概念が大変重要だと申し上げたんですが、中西委員御質問の中では、やはり今度は空間の話というのがすごい大事だと思うんですね。  つまり、七〇年代に我々が見ていた防衛の空間と二十一世紀の空間というのは違うのではないかと。つまり、それはより広がりを持ったグローバルな脅威があるからということなんですけれども。二〇〇〇年代の初めには結構テロリズムがやはりもう地球をまさに、何というんですかね、横断するような脅威として、どこを止めればテロに効果的な対策かということは、水際というよりもむしろ、例えばテロリストが活動しているところだったり、資金だったり、ネットワークだったりというような形で広がっているし、大量破壊兵器の拡散という点でもそうだし、最近でいえば海洋安全保障ですね。  こういうことを考えると、例えば九九年の周辺事態法で我々が最初に定義した、そのまま放置すれば我が国に重大な事態に至るような事態というような意味での防衛的な空間というのは、非常に広がっているんだというふうに思います。その広がったところで活動するのはもちろん日本だけじゃないわけでありまして、アメリカや友好国が活動している際に、例えば離れた海洋空間の中で、そのような場所において敵性国家やそのアクターから攻撃を受けた場合に、我々が何かしら協力ができるのかという意味で集団的自衛権が適用されるということであれば、私の概念からいいますと、これは極めて自然なことであるというふうに捉えております。
  60. 末松信介

    委員長末松信介君) じゃ、もう一度、香田参考人、よろしくお願いします。
  61. 香田洋二

    参考人香田洋二君) こういう説明、いわゆる集団的自衛権、専守防衛という自衛隊ができた頃の解釈というのは、恐らく、集団的自衛権があって、自衛隊能力米軍能力、国際環境を判断した場合、一メーターぐらい距離があったのかもしれない。ところが、今は、集団的自衛権の解釈は私は変わっていないと思います、ただし、自衛隊能力の距離というのは更に縮まったと。そして、米軍能力、国際環境も入れた集団的自衛権の領域というのが、今、政府が伝統的に維持してきた集団的自衛権の解釈に物すごく近寄っている、もうほとんどオーバーラップの部分が出かかっていると。そのときにどうするかということだと思うんですね。  ですから、伝統的な、昭和三十年、三十五年に我々を戻せば非常に明確に分離ができたんですけれども、今は結果的に、国際環境、米軍の相対的能力自衛隊能力我が国の国力、中国能力というのが、全てが政府の解釈の方に寄ってきているという見方をすれば、もう距離がほとんどなくなっている。そのときにどうするのかということが、ひょっとしたら今の状況かもしれません。という説明で終わります。
  62. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、白石参考人、よろしくお願いします。
  63. 白石隆

    参考人白石隆君) どうもありがとうございます。  私の基本的な理解は、法制的な理解ではなくて安全保障戦略としての理解でございますが、安全保障戦略としては、日本が自助、これは日本強靱性強化する、それと並んで日米同盟強化する、この二つでもって日本安全保障を守ると。最近は、それプラスネットワーク化ということがございますけれども、防衛について申しますと、基本的には自助と日米同盟という共助、これで日本防衛を守る、日本防衛するということであれば、私は集団的自衛権というのはその一部を成すというふうに考えていいのではないかと思います。
  64. 中西健治

    ○中西健治君 どうもありがとうございました。  私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。
  65. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。    〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕  今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。  まず、白石参考人にお伺いいたします。  最初のお話で、戦後の世界を、自由と民主主義、市場経済、アメリカの平和、ドル本位制と、この四つを言われて、このアメリカの平和が守れなくなってきているというお話がありました。そういう中で今の日本がどうあるべきかということが問われるんだと思うんですが、G8などもなかなか機能しなくなり、G20になり、さらにはもっと全加盟国なんかが参加をするような大きなやっぱり国際的な流れの中にあって、アメリカだけでは守れなくなっている中で、日本がそれを補完をするというような方向でいいんだろうかという根本的な思いなんですが、そういう大きな今の世界の流れの中で、日本が弱くなったアメリカを補完をするようなことではなくて、もっと違う形での国際的な安定に貢献をする方向があるんではないかと思うんですが、そこのお考えはいかがでしょうか。
  66. 白石隆

    参考人白石隆君) これについては、私は、ですから二つの基本的な戦略があるんではないかというふうに考えております。  一つは、もうこれは既に安全保障戦略に定義されていることでございますが、日米同盟をあくまでもちろん基軸としながらですが、同時に安全保障協力をネットワーク的に展開していくと。そこで、日本同盟国、これはアメリカしかございませんけれども、パートナー国、戦略的なパートナーシップを維持している国々、例えば豪州であり、あるいはインドネシアであり、シンガポールであり、フィリピンであり、それからインドであると、そういうところとの協力強化していくというのが重要ではないかと。    〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕  これは決してアメリカを助けるということだけではございません。むしろ、私が非常に重視しておりますのは、力のバランスが急速に変わったときには国際秩序というのはともすれば非常に不安定になって、未来に対する予測可能性が下がってまいります。これを少しでも上げてやるということが安全のためだけではなくて経済活動のためにも極めて重要であって、ですから、私は国際秩序の維持、進化と申しました。進化。  ですから、決してパワーバランスが変わっていくことに抗して現在の秩序を維持するべきだということではございません。むしろ、パワーバランスが変化するに応じて二十一世紀にふさわしい秩序をつくっていく、それが進化させるということで、これのためには、一つはやはり力のバランスが大きくは変化しないように、徐々に変化するのはこれ一向に構いませんけれども、急速に変化しないようにしなきゃいけない、これ第一点です。  もう一つ、もっとポジティブな問題は、そのときにどうやってマルチで、つまり非常に平たく言いますと、みんなでルールを作っていくかというのが、これがもう一つ重要なことでございます。  ですから、あくまで日本安全保障戦略というのは、力のバランスの維持とそれを踏まえた上でのルール作り、この二つが基本的な考え方であるべきだと。これが、私は国際協調主義に基づく積極的平和主義ということの意味ではないかというふうに受け止めておるところでございます。
  67. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございました。  それに関連して神保参考人にお聞きしますが、三月二十八日の読売の「論点」に書かれておられまして、安全保障三つの層の重ね合わせが重要だとした上で、第三の層で地域安保のルール策定と制度化ということを述べられております。  その中で、少しさっきも出ましたけれども、南シナ海における中国ASEAN諸国のいろんな今問題があるわけですけれども、この「論点」の中では、今、行動規範に法的拘束力を持たせようという協議が行われていることも非常に強調されているわけですが、ここの今の状況や、そして、広域の海洋秩序を安定化させるという上で日本が果たしていく役割などはどうお考えでしょうか。
  68. 神保謙

    参考人神保謙君) ありがとうございます。  この海洋秩序の中でルール策定の果たす役割というのは大変重要だと考えております。なぜルールが必要なのかというのは、このパワーの世界考えると、例えば、イラク戦争のときの国連安保理におけるアメリカとフランスのパワーの差というのは歴然としていたわけなんですけれども、ところが、安保理常任理事国の中の一席というこの力というのは、いわゆる制度の中のパワーというのは一対一で同じなんですね。つまり、幾らこのパワーが変化しようとしても、実は制度というのは大変大きな力を持つということに秩序をつくっていく中では大変重視しなければいけない考え方だというふうに考えております。  委員御質問の南シナ海の行動規範の状況ですけれども、今現在のところ、二〇一二年の段階まで中国がASEANとの協議入りをすること自体を引き延ばしていたんですけれども、二〇一三年に入ってから協議入りすること自体には賛成をして、現在、どのような定義を、つまり海域の定義をするのか、具体的にそのルールの内容をどうするのかということに関して事務レベルでの協議が続いているというふうに理解してございます。  実際にこの行動規範ができるのか、そしてできるとしたらいつ頃なのかというのは実は諸説ございまして、最も楽観的な見方は二〇一五年、ASEANが三つの共同体という中での安全保障共同体を高らかに宣言する予定の年なんですけれども、ここに合わせて南シナ海のルール作りを同時にやっていきたいという強い意向がコーディネーターであるタイなどは持っているようですけれども、中国としましては、現在フィリピンとの間で海洋仲裁裁判所の、フィリピンが一方的にこれは訴えている議論なんですけれども、この結論が出るのがやはり二〇一五年ぐらいになるということで、大変慎重な形で議論が続いているということだと思います。  中国としては、ASEANとの能力ギャップがどんどん開いていきますから、今軽々にそのルールを作ってしまうよりは、引き延ばして、より中国とASEANとの関係が圧倒的に変化したときに作ったルールの方が有利なのではないかという議論も一部で見られるようでありまして、中国国内の中ではそのルールの位置付けについてまだまとまっていないというのが実態ではないかというふうに考えております。
  69. 井上哲士

    ○井上哲士君 様々な、何というか、問題がありながらも、やっぱり、しかし協議によって解決をしていくということは非常に大事なことだと思っておりますし、北東アジアにおいても大いに生かされるべきことだなと思っております。  次に、柳澤参考人にお聞きいたします。  先ほど来、集団的自衛権行使についての質問が出ているんですが、一つは、先ほどもありましたけれども、いわゆる限定行使の話なんですが、どのように限定をするかということについて先ほど少しお話がありました。それから、限定をすればそれが歯止めになるという議論もあるわけですが、一方で、例えば自民党の石破幹事長などは、情勢によって脅威がどんどん大きくなれば最小限の範囲も変わっていくというような発言もされているわけで、この限定容認論というのが果たして歯止めになり得るのかというのが一点。  それから、集団的自衛権行使容認で抑止力が高まるという議論も行われるわけでありますけれども、我々は、基本的安保の考え方は違うわけですが、言わば集団的自衛権行使がなくても日米安保条約が抑止力だという議論がされてきたわけで、そことの関係でどうこれを考えるのかなというのがあるわけですけれども、こういう議論についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  70. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 歯止めというのは、いろんな、何というか、認識の仕方はあるんだろうと思うんですけれども、少なくとも、従来の政府見解というのは憲法解釈によって憲法に内在する歯止めとして認識されてきたわけですから、そこを、そこを取っ払った上で、政府政策として、あるいは法律をお作りになるのかもしれませんし、少なくとも一政権の閣議決定ということが歯止めという意味になるかといったら、それは私は恐らくならないんだろうと。  というのは、立憲主義の観点からしても、そういうところは政府のフリーハンドに任せないというのが本来の立憲主義の意味でありますから、そこは、ですから、歯止めになるかどうかということで言えば、もう砂川判決との関係でいったって、日米安保条約を改定して、こういう国会承認を取って、それがどうかというところで議論しないと、なかなか歯止めというレベルのことにはならない、一番確実なのは、憲法そのものに書き込んだことが最大の歯止めになるということだろうとは思いますけれども。  それから、抑止力という意味でいいますと、私はやっぱり、さっき神保さんも言っておられましたけれども、冷戦時代と違って、小さな紛争、武力衝突もやがて核の打ち合いになるよというエスカレーションラダーがお互いに認識されているような意味での抑止というのは、今アメリカ中国の間では恐らく成り立っていない、機能していないんだろうと思うんですね。であるとすると、小さな紛争がエスカレーションの恐怖によって防がれるということがなくなるという意味では、衝突の危険は高まる。  だから、そこはむしろ危機管理の問題として扱っていかなければいけないので、そこで抑止力というのは、ですから、あえて抑止力という言葉を使うとすれば、さっきから香田参考人もおっしゃっているように、容易には相手の目的を達成させないような、そういう拒否的な力を持つということがあえて言えば抑止力になるんだろうということなんですけど。  事が尖閣の防衛であれば日本防衛の話ですから、これは、その文脈で集団的自衛権が出てくるというのが、そこが私は、まだよく議論の全貌を承知しておりませんけれども、そこがどうもよく理解できないところでもございます。
  71. 井上哲士

    ○井上哲士君 もう一回白石参考人にお聞きしますが、去年の十月に技研の防衛技術シンポジウムに出席もされてお話をされているんですが、例のImPACT、革新的研究開発推進プログラムに関連して、武器輸出三原則の見直しで国産装備のマーケット拡大を見込めると、そういう中で、司令塔となる総合科学技術会議には防衛大臣も入れてほしいというような趣旨の発言もされておりますが、このImPACTなどがそういう日本防衛技術、革新的防衛技術などにどういう位置付けになっていくのか、それから、この防衛大臣を入れるべきということの趣旨はどういうことなんでしょうか。
  72. 白石隆

    参考人白石隆君) ありがとうございます。  ImPACTは私が期待したほどには踏み込めていないというのが正直なところでございます。  ただ、安全保障戦略の中に、やはりデュアルユースの技術開発の重要性ということが示されておりますけれども、これは、これから二十年というくらいのスパンで日本防衛力基盤を成す産業力、それから技術力ということを考えますと極めて重要でございまして、ですから、これはひょっとして軍事に転用されるかもしれないからそういうところには国として投資しないという、これはないだろうと。私は、デュアルユースについても、これは民生、防衛両方に重要ですので、そこについて国としてやはり力を入れていくべきだと、それが私が申し上げたかったことでございます。
  73. 井上哲士

    ○井上哲士君 最後、香田参考人、済みません。  南西島嶼防衛の関係で、航空優勢、海上優勢がなくて、言わば上陸だけでどうかというようなさっきお話もあったと思うんですが、水陸両用車両の導入ということが言われていますけれども、南西諸島における島嶼防衛というふうに言われていますが、あの地域はリーフもあって余りそもそも使えないんじゃないかという議論もある中で、結局、軍事軍事というようなことでエスカレーションするだけにならないかというおそれがあるんですけれども、その点いかがでしょうか。
  74. 香田洋二

    参考人香田洋二君) まず、最大の要訣は取られないということなんですね。そのための能力構築をどうするかということなんですが、もう少し時間を戻しますと、そういう上陸作戦能力というのは、実はつい十年前まではタブーだったんですね。なぜかといいますと、海外派遣に、派兵につながるということで、戦略輸送能力、大規模な、あるいは水陸両用作戦能力というのについてはタブーだったのが、環境の変化で、島嶼防衛ということ、恐らく、に限ってということ、条件が付いていると思いますけれども、誰も言いませんけれども、これは国民が容認するところだろうと。  その中で、実は今、自衛隊というのは非常にまだ初歩的な段階なんですね。能力構築なんですよ。その中で、特定の装備が、ある場合には使えないけどある場合には使えそうだ、これは使えないから不要だという論理ではなくて、非常にプリミティブな能力、初歩的な能力をこの先しっかり、取られないという意味機能させる一つのステップとして、いろんな装備をしっかりと導入していくという意味で価値があるというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。
  75. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 元気ですか。今日は心臓の悪い方はおられませんね。これが挨拶なものですから。  今、ジャイアンツの、何という選手でしたかね、一瞬名前が出ません、外人選手なんですが、バッターボックスに入ると私のテーマミュージックで、それで今ホームランを打ちまくっているんですけれどもね。(発言する者あり)ああ、ロペスと言いましたかね。本当に、昨日も、ある会に出ますと、必ずびんたと、それから元気ですかと、最後に一、二、三、ダーが決まりなので。国会の中で、本当に委員長は優しい方なので、これを容認していただきました。  今日は、先ほどにも、尖閣の問題をお聞きしようと思いましたが、同僚議員から質問がありましたけど。何年か前でしょうか、私が上海で興行をやったときに軍の方たちもみんな来ていて、それで、私も余り知識がなかったんですが、ええ、それだったら尖閣諸島で興行やりましょうかと言ったら、向こうの人も乗りましてね、いいですね、観客は全部軍隊が行きますって。余り深く考えていなかったんですが。  そういうことで、一つに、パキスタンとインドの国境にワガという町があるけど、軍隊が向き合って、軍隊というか何人かで大声を出したりという、非常に何か平和的というか滑稽という感じもしましたが。今、一つには対立する構造へどんどん進んでいるので、本当に一方で平和的なメッセージ、先ほど平和主義という話をされていましたが、私が昔書いた詩なんですけど、ちょっと読ませてもらいます。  慌ただしかった一日が終わり 静かに時が帰ってきた 等身大の鏡の前で 裸の自分が向き合った 湯気に曇った鏡の前で 百面相よろしく いろんな顔をつくってみる 怒った顔には怒った顔で 悲しい顔には悲しい顔で 笑った顔には笑った顔で 大きな鏡は答えてくれた もしかして 鏡の真ん中に 我が取れたなら 心の真ん中に 神が住む  こんなことを書いたんですが。今、本当に対立構造へ、どんどん冷戦時代に戻っていくような感じがします。そんな中で、スポーツ交流あるいは文化交流が私の目標で、世界中を動いておりますが、そんな中で、尖閣について今後どういう形を取っていけばいいのか、ちょっとお話を聞かせていただきたいと思います。
  76. 末松信介

    委員長末松信介君) 猪木先生、どなたから。
  77. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 どなたでも結構です。猪木の常識非常識でして、済みません。
  78. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、神保参考人からずっと右へ。
  79. 神保謙

    参考人神保謙君) 猪木議員からの御質問、大変光栄でございます。  尖閣諸島をめぐる問題は、現在、日中間の最大のとげといいますか、障壁となっていると理解してございます。報道等によりますと、安倍総理と習近平国家主席のその首脳会談の設定自体にこの尖閣諸島の問題の解決といいますか条件設定が絡んでいるということもよく伺っておりまして、報道ベースで言えば、中国側は、日本がこの尖閣諸島の問題を問題とまず認めること、二つ目にはこの尖閣領域を安定的に管理するためにお互いの船が十二海里以内に入らない、まさにノーエントリーゾーンを設けて、これを首脳会談の条件にしようということが言われたようでございます。真偽のほどは私も承知しておりません。  ただし、こうした主権を絡む問題が首脳会談の前提となっているとすれば、これは大変大きな問題だというふうに思っておりまして、中国側がよく言う大局的な見地から立てば、まず、首脳が会うことに条件を設定せずに、そしてこの問題を、やはり主権問題を交渉の材料に上げるということにのせないような段階で、何といいましょうか、首脳同士が会える政治関係をつくっていくということが大変重要なのではないかというふうに考えております。  その際、どういうことがきっかけになって首脳会談が行われるのかというのがまだよく分かりませんけれども、一つのその解といいますか、日本側が中国側の現在の主張を聞く、つまり認識する、上海コミュニケ等の言葉を使えばアクノレッジするということは日本側も当然できると。  例えば、一九九二年に中国と台湾が一つ中国という問題をめぐってこういうことを言いました。中国一つである、ただし中国と台湾にはそれぞれの解釈があるということを言ったわけでございます。当然、日本側が尖閣を見るときの解釈というのは、これは問題の余地のない日本の固有の領土ということになるわけですけれども、中国側には中国の解釈がある。つまり、日本が実効支配をしているという状況を、もしチャレンジしないのであれば、お互いの解釈をもって首脳会談の条件といいますか設定にするというのも一つの方法ではないかというのが私が現在考えていることでございます。
  80. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 香田参考人にお聞きしますけれども、今、尖閣の中に、潜水艦が相当周りに潜っているという話を聞きましたけれども、どこのものか分からないという船が随分あるそうです。その中で、日本のレーダーというのが一番優れていて、そのレーダーのあれをアメリカ報告しているという話も聞いたんですが、どのぐらいの国の、もし分かればで、潜水艦が今、どこの国なのか、もっと言えば。お分かりでしたら。
  81. 香田洋二

    参考人香田洋二君) 今のその情報源というのを私は承知しておりませんけれども、常識的に言いますと、中国であっても今一番緊張している尖閣に潜水艦というのはまだある距離以内には近づけていないと思います。  それと、今、特に日本中国とも気を付けていますといいますか、合意して気を付けているわけじゃないんですけれども、やはり保安庁と向こうのコーストガード同士でのつばぜり合いで今抑えているということで、もし具体的にどういうところからどういうお話をお聞きになったとかということがあれば教えていただきたいんですけれども、まず私の承知している限りでは潜水艦が尖閣の近辺に来ているということはないと思います。これは実は、あれば非常に危険なといいますか、日本からしますと、ひょっとしたら特殊部隊が上がるとかですね、そういうこともありますので、実は非常に危険な、一歩進んだ状況になると思いますけれども、私はそれは存じ上げておりませんので、ちょっとこの辺でとどめさせていただきたいと思います。
  82. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 ありがとうございます。  次に、国家安全保障戦略外交政策防衛政策の両面が車の車輪のごとく折り重なっているということなんですが、特に外交政策については、国連外交強化ODAを通じた国際平和協力、人間の安全保障の実現、開発途上国の人材育成、人と人の交流の強化など、平和外交について記載されていますが、正直言って、国連の在り方も変わっていかないと、日本は国連中心主義という形で、国連の名前が出ると我々国民も、ああ、国連が言っているんだからと。  でも、その中身は本当に非常にずさんな部分があると思いますけれども、先ほど、実際に平和を標榜しながらも周りはこれほど今緊張が高まっているというのが状態ですけれども、その辺、今後の外国と日本の、そして国連における今まで平和維持軍、いろんなのが出ておりますけれども、そこについてちょっと参考人にお聞きしたいと思います。
  83. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、白石先生。
  84. 白石隆

    参考人白石隆君) 先ほども申し上げましたが、残念ながら、新興国が台頭し、やはり新興国というのは先進国とは国内的に違う要請を持っておりますので、二十世紀の後半につくられました国連だとか、あるいはもっと言いますとワールドバンクだとかIMFだとか、なかなかかつてのようにはうまく機能しない、非常に難しい時代に入ってきているということは間違いございません。  そういう中で、例えば日本ODAあるいは国際協力政策についても、これまでのような貧困削減、それからヒューマンセキュリティー、こういうことでいいのか、それとも、特にアジア太平洋のパートナー国支援ということを強調したような、少し見直しが要るのか、これは別途やはり是非検討していただきたい課題でございます。
  85. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 人間が営むあれですから、非常に防衛計画大綱といいますと難しいようにも聞こえますけれども、まあ人間は、争いの歴史というか戦いの歴史という中で、私もリングの上で相手を見るときに、まずどこが、相手の兵力というんでしょうかスタミナというのか、その辺を一瞬で見抜きながら勝負をしてきましたけれども。その辺が、これを読ませてもらうと、どうも一方的な、日本から見たそういう外交大綱になっていると。相手方からどういうふうに見ているかということが余り、足りないのではないかと思いますが、その辺について。
  86. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、柳澤参考人
  87. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) 先ほど、先生が冒頭お触れになった、自分と鏡の間に神様がいるというお話は大変味わい深いお話であると思いました。  結局、国家間の対立関係というのも相当部分は自分の認識の投影である部分があって、今の日中関係の中でも、中国は、俺はこんなに大国になったのに日本は何で今までのように上から目線で見下したような見方をするのかという感じがあるのかもしれません。日本にしてみれば、さんざんODAで面倒を見てやったのに中国に負けてたまるかみたいなのがあるかもしれない。  だから、それで、もうおっしゃるように、相手がどう考えるかというのは、もうこれは、これなくして実は外交軍事も勝負にならないことはおっしゃるとおりで、特に私、尖閣についてよくあちこちで申し上げているのは、クラウゼビッツの有名なテーゼに戦争の三位一体というのがあります。戦争をするための要素というのは三つあって、それは、国民の熱情と有能な軍隊と、それから政府三つが重なって戦争ができるんだと、こう言っている。じゃ、戦争をしないためにどうすればいいのかといえば、政府は、クラウゼビッツが言っている政府というのは国家の理性を代表するものということであります。ですから、国家の理性を代表する政府国民の熱狂を冷ますということが戦争をしないためには必要、逆に、戦争をしようと思えば、国家国民の熱狂をあおるということが必要ということ。  私は、今の北東アジアをめぐる危機の一つの大きな原因は、私は日本だけ悪いとは思いません。中国だって韓国だって、戦争を起こしてはいけないのと逆の方向の対応を政治がお取りになっているんではないかという、そこのところをもう一つお互い冷静になる。具体的には、神保先生がおっしゃったようなこととかいろんなアイデアは考えられると思うんですけど、改めて戦争の三位一体という言葉を、その中における政府の理性の果たすべき役割というのを、もう一度どの国も改めて考えていただきたいなという思いでいっぱいであります。
  88. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 我々は、スポーツ交流を通じてと、あるいは文化交流をという、国民国民の心をつなぐということで、これから私なりにまたやっていこうと思います。  今日はありがとうございます。
  89. 小野次郎

    ○小野次郎君 結いの党の小野次郎です。  まず、柳澤参考人にお伺いしたいと思うんですが、集団的自衛権の議論の際に、ちょっと今日は憲法との関係というのはおいておいて、なぜこの集団的自衛権に有効性があるのかという議論のときに、私は二つの機能に分けて考えるべきだと思うんですね。一つ抑止力抑止機能の部分と、もう一つ対処能力というんですか、対処力の問題だと思うんですが。  同僚議員からも、専守防衛と集団的自衛権というコンセプトは成り立ち得るのか、両立し得るのかという、たしかそういう趣旨の質問もありましたけれども、この対処する部分だけを考えれば、どう考えても専守防衛からはみ出るんじゃないですかと誰もが思うところだと思うんですが、もしこの集団的自衛権に合理性があるとすれば、いや、そうじゃないんだと、その何倍か抑止能力があるからだということにしか答えはないと思うんですけれども。  その際に、国際法上の一般理論としては私も分かっていますが、どこの国との関係で集団的自衛権を行使するかということについて、一般理論では、我が国と密接な関係があるその国から要請があった場合というふうになっていますね、もちろんこちらが受け入れた場合ですけれども。  ただ、抑止力ということだけ考えれば、事が起きてから要請があって、そこで、じゃ集団的自衛権の行使を我が国も受け入れるという形では抑止力としては極めて十分じゃないんで、本来、あらかじめ条約だとか国際間の約束で我が国とこの国とは集団的自衛権の共有する関係になっていますよということが明らかになっていないと、例えばNATOみたいになっていないと抑止力意味がない。つまり、さっきの話に戻れば、集団的自衛権を議論する意味がないじゃないかと私は思うんですが、こういう考え方についてはどのような認識をお持ちでしょうか。
  90. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) その抑止力という観点から考えると、今、日本にとって一番重要で、今なおかつ機能している抑止力というのは、まさに日米安保条約に基づくアメリカ抑止力だと思うんですね。米韓条約においても同じように、それは韓国がアメリカを助けるから抑止力が高まるんじゃなくて、その米韓条約に基づくアメリカのコミットメントが非常に明確であるがゆえに抑止力であり続けているんだろうと思います。  今言われているように、アメリカの力が相対的に下がっていくではないかというのは、それは日本だけでなく韓国でも、アメリカ同盟国に共通した課題ではあると思うんですね。  しからば、じゃ、そこで何かをプラスすることによってアメリカのコミットメントをどこまで維持できるんだろうかというのを、これは物理的にアメリカの足らざる部分を全部埋めるというのは、それはもうどの国にとっても無理なんだろうと思いますし、もう一つの側面から考えると、アメリカの力、だから私はさっきからやっぱり二十年、三十年のレンジでNSSは考えていただきたいと言ったのは、それは中国神保先生のデータのように、国防費のフローではそのうちアメリカを追い越すし、GDPでも追い越すと思うんですけど、今までのストックを考えればアメリカ自身がとても中国に劣るとは、ここ二、三十年のトレンドとしてはですね、少しずつ邪魔はされるかもしれないけど、中国に負けるとは思っていないと、私はアメリカはそう認識しているというふうに思います。  ですから、ここのところはもう物すごく、まさにその中で対処の仕方をどうするかという、あの昨年の五月のカーネギー平和財団のレポートの中でも、アメリカの優位は続く、しかしそれは徐々に侵食はされていく、その中で一番心配なのは、島をめぐる争いなんかの軍事衝突になって、そこにアメリカが巻き込まれないように危機管理をちゃんとしなきゃいかぬというような論評が出てくるわけですね。  だから、そこはなかなか単純に、抑止力そのものというものも私は冷戦時代と比べて変質してきていると思いますし、ちょっと私も、抑止力の文脈の中で日本が、もちろんアメリカは集団的自衛権日本を守る、それは抑止力に間違いないんですが、日本がそれをできるようになるというのがどういう意味があるのかというのは、そこは私は一概に頭から否定する気はないんですが、もっと分析的にしっかり論理立てて考えていかないと、本当にそうなんだろうかなという、取りあえず今私はそういう意味の疑問を感じてはおります。
  91. 小野次郎

    ○小野次郎君 私は、政治家になる前は官邸の安全保障・危機管理担当の秘書官を四年半やっていました。その中で、これ、香田参考人、もしお話しできるんであればお話しいただきたいんですが、幾つか思い出に残る事件があります。  それは、例えば二〇〇四年の中国潜水艦が石垣島の沖の領海に侵入したというか通り抜けたという事件がありますけれども、このときなんかも、官邸にいる私たちの受ける報告も、日本海上自衛隊が発見したというところから始まるんですが、太平洋をかなりぐるぐるぐるぐる回っていて、実際、よく船の遭難なんかなかなか見付からないじゃないですか。それがどうして見付かったのかなというときに、私は、これ別にお話しできなきゃできる範囲で結構ですけれども、恐らく、日頃から哨戒業務というのかコントロールに置いている領域というのがそれぞれの海軍にあって、台湾だとか韓国だとかフィリピンだとかと協力関係にあると思うんですが、アメリカ海軍が基軸になると思うんですけれども、そういった日常的な協力関係というのはどんなものがあるんでしょうか。
  92. 香田洋二

    参考人香田洋二君) まず一つは、例えば潜水艦の例を取られましたけれども、第二次世界大戦中の対潜戦というのは、商船とかが、例えばイギリスに向かう商船が攻撃を受けたら、潜水艦を、ドイツのUボートを沈めるというのが対潜戦だったんですね。今はまさに、今日一部ありましたが、もう相手の潜水艦がどんな動きをしても、平時、二十四時間、可能な限り追いかけるということなんですね。それは日米共にやっています。  ただ、ここであえて、ちょっと大げさですけれども、世界の中でこれができる海軍、海上自衛隊というのは五つか六つしかないんですね。海上自衛隊はその中の一つなんです。そして米軍が全て大丈夫と。ちょっと柳澤参考人にあえて重箱の隅をつつく気はないんですけれども、米軍が相当弱くて日本が補完できるところというのは結構あるんです。まさにこれなんかもそうなんですね。例えば、この地域に、日本周辺海域にこれだけの密度で潜水艦を二十四時間追いかける、世界の五つか六つしかない国の中でもこれだけの密度でできるという国はもう日本しかないんですね。ただ、それが集団的自衛権に直接結び付くかどうかは別にして、これはある意味、お互いの国益の許す範囲で情報は共有しているわけですね。その結果がたまたま出たということで、これは一般論ですけれども。  そういう意味ですと、先ほど、集団的自衛権の範囲は変わらなくても、解釈が変わらなくても、集団的自衛権自体が寄ってきたというのはそういうことなんです。日本の力が増えて、アメリカの力が相対的に弱ってきた中で、まさに日本が貢献できる分野というのは物すごく多くなっているんですね。そこの期待を、期待といいますかをどう埋めるかということは、先ほどの抑止力についてもしっかりとある意味結び付くんだろうと。それは、集団的自衛権という実際の武力行使まで結び付けるかどうかは別ですけれども、そういうイメージでございます。
  93. 小野次郎

    ○小野次郎君 大変興味深いお話をいただいたので、もう一つ。三年ほど前の話なんですが、二〇〇一年に奄美沖の不審船事件というのがありましたね、最後沈没しましたけど。あのときも国際協力があったんじゃないかと私は思っているんですが。  今の香田参考人の話は、普通の国内の霞が関の官庁でいうと、官庁間協力みたいなものはやっていますということだと思うんですね、集団的自衛権までいかなくても。そういう意味で、やはり日常的にその官庁間協力のような、アメリカ始め近所の海軍とは協力関係があるということですか。
  94. 香田洋二

    参考人香田洋二君) これは、同盟関係にあるアメリカ、極端に言いますと、だけですね。それともう一つは、その情報交換の際も、常に内局と調整して、最終的に重いときは官邸まで行くんでしょうけれども、これは、やはり情報提供が集団的自衛権に抵触しないという前提でやっているということについては、これは御理解いただきたいと思います。ですから、省庁間協力と言われましてもそこまでということですね、今のやり方というのは。  ということで、二〇〇一年の場合も、私、海幕の防衛部長でやりましたけれども、少なくとも私の知っている範囲においては、他国の存在というものについてはありませんでした。少なくとも、これは日本でクローズした対象だったというふうに考えています。私の知らない世界があるのかもしれません。
  95. 小野次郎

    ○小野次郎君 それは多分衛星の方からの話だと思いますけれども、今日はその話じゃないので先に進みますが。  それでは、最後になると思うんですけれども、私は、安保ただ乗り論というのが昔から言われていまして、これは後でどなたかお答えいただければ、ちょっと決めないで質問させていただきますけれども。  ただ乗り論という話があります。片務的だという議論があったわけですけれども、集団的自衛権というのを考えたときにも、やはり、ちゃんとそれを伴うだけの日頃からの汗と、何というか、金を割くという、日本にその覚悟がなければ、やはり同じように、ただ乗り論、手形だけもらったけど、この手形が額面だけでかくなったという話になってしまうんじゃないかと思うんですが。  それはどういうことかというと、さっきから抑止力対処力と言っていますが、日頃から、ある種のやはり警戒力というか、海上優勢というほどまで強いものかどうか分かりませんが、この範囲のものについては我が国も共同してある種のコントロールの下に置きますよというのを努力しないでいれば、何かあったときだけ集団的自衛権というのでは、会費を払っていない集団的自衛権の会員みたいなものになってしまうと思うんですが。  一体そういうことが、日本の経済力というか、今までの防衛力中期防なんかの考え方の中で、例えば面積で、これは陸海空の中で特に海がとにかく平べったいものですから大きいと思うのですが、今までの三倍とか五倍とかの海域について、さっき密度の話をおっしゃいましたけれども、密度を同じでやっていこうと思ったら、今までの物すごい何倍かの防衛力整備しないと、そういった部分について有効に、まあアメリカならアメリカ、あるいはもっと、ここ二、三日の報道だとオーストラリアとかあんなところと組むなんとなったときには、集団的自衛権という白地の手形は切ることができても、きちっとしたパートナーとして責任を日頃から果たしていなければ、抑止力にもならないし、何かあったときの対処力にもなり得ないと思うのですが、そういうことは日本の今までの防衛力についての考え方を根底から変えることになるんじゃないかと。  憲法理論と別に、そういうもっと物理的なというか予算的な意味でも異次元のことをしなきゃいけなくなるんじゃないかと思うのですが、その点について見解のある方がおられたら言っていただきたいと思うのですが。
  96. 末松信介

    委員長末松信介君) それでは、我と思わん参考人の先生、どなたか。  じゃ、柳澤参考人
  97. 柳澤協二

    参考人柳澤協二君) もし、私もかなり変な考え方かもしれませんので、訂正があればほかの先生方に言っていただきたいと思いますが。  本当に、その言葉本来の意味の集団的自衛権の正しい使い方というか、そういうことをしようとすれば、恐らくアメリカの、私がアメリカなら、その立場から考えて、じゃ、例えばインド洋はお任せできますかとか、南シナ海はお任せしていいですねみたいなレベルのものなんだろうと思います。だから、それは、じゃ、ここでちょっとアメリカの船が急に攻撃されたときにそこは何とか守ってよと、そういう話とはちょっと、本来の集団的自衛権の正しい使い方はそういうことではないだろうと思っているんですね。  だから、そういう意味での、本来的な集団的自衛権によって一つ地域アメリカとの協力関係において任せられるような、そこで秩序維持なりをするということになれば、それは、おっしゃるように恐らく今の三倍ぐらいの船の数が必要だし、海外の基地も必要だしという意味で、今までの防衛力整備とは全く質が違うものを目指さざるを得ないんだろうなというふうに思います。
  98. 末松信介

  99. 神保謙

    参考人神保謙君) 一言だけ。  私、日米同盟の片務性ということについては、よりもう少し我々として自信を持って認識していいバランスがあるんじゃないかというふうに考えていて、というのは、かつての朝鮮半島問題というのは、まさに韓国を守り、日本を守るためにアメリカが何をするかという文脈だったわけですけれども、現在、北朝鮮は長距離ミサイルを持って核を拡散させて、それはすなわちアメリカの本土防衛の問題になったわけですよね。海洋安全保障はもう我々の目の前の問題なんですけれども、これは、まさに自由な航行を守るとか海洋秩序をどうするとかいうアメリカのグローバルガバナンスをめぐる問題であるということは、実は我々が目の前で対応しようとしていることはアメリカ国益に直結する課題だという意味を持って実は防衛政策に取り組んでいるという意味においては、やはり日米同盟というのはかなりバランスを持って今語られるべきものなんじゃないかという気がいたしますので、まさに安全保障のグローバル化は日米同盟の双務性をもたらしているというのが私自身の捉え方でございます。
  100. 末松信介

  101. 白石隆

    参考人白石隆君) ありがとうございます。  もう、恐らく先生が言われたようなただ乗り論だとか安乗り論というのはなくなっているんだろうと思います。  一つだけ、私、ここで強調させていただきたいことは、日米同盟というのは、もちろんこれ日米の安全保障条約に基礎を持っているわけですけれども、同時に、日本アメリカ戦略的な利益を共有しているということと、それから、やはり非常に重要なのは、日本アメリカの間で非常に分厚い信頼関係がある、これをやっぱり担保するために集団的自衛権というのが私としては重要なんだろうというふうに考えております。
  102. 末松信介

    委員長末松信介君) じゃ、最後に香田参考人
  103. 香田洋二

    参考人香田洋二君) 双務性についてはそのとおりだと思います。加えて、特にアメリカのハワイ、グアムから西、アフリカの東海岸までで米軍が自由に展開できる軍隊を展開しているのは日本だけです。これはもうアメリカ世界戦略を支えていますので、仮に日本が有事にアメリカを助けられなくても、アメリカは、極端に言いますと、大統領が直接アメリカ国民日米同盟のメリットということで本当は言うべきぐらいの重さがあるというように思っています。  それと、最後に、軍事組織の一番弱い点というのは、日頃やっていないことはできないということなんです。もうまさにおっしゃるとおりで、北澤先生がおられますので非常に言い方は難しいんですが、オペレーション・トモダチというのをやりました。非常に成功したと思います。これは現場です。しかし、本当に国と国との調整がどこまで行ったかということについては、やはり大きな演習というのは、例えばヤマサクラとか海上自衛隊演習も全部、防衛出動が出た後、各部隊がどうやるかという大規模な演習をやっていたんですけれども、今まで一回も、日本アメリカ政府がどう調整するかというのは、実は個別的自衛権の中でもやっていないんですね。集団的自衛権になればなおさらです。  実は、集団的自衛権論議の中には、そういうこともしっかりと論議をして日本の将来の行く末というものをやっていただきたい、そうすると自衛官は安心して現場で臨めます。  以上でございます。
  104. 小野次郎

    ○小野次郎君 貴重な議論をありがとうございました。  これで終わります。
  105. 末松信介

    委員長末松信介君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  この際、一言御礼を申し上げます。  参考人の四人の先生方には、長時間にわたりまして大変有益な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。  安全保障環境は厳しいし、更に厳しくなると。それと、決め事、方針の賞味期限はやっぱり短くなってきておるといったこととか、中国の成長は減速化しているといったような、貴重な御意見をいただきました。また議事録を見ましていろいろと勉強させていただきたいと思っております。  今日は、本当に限られた時間の中、答弁しづらい時間帯もあったと思いますけれども、本当にお付き合いをいただきましてありがとうございました。感謝申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会