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2014-02-25 第186回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十六年二月二十五日(火曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 二階 俊博君    理事 上杉 光弘君 理事 金田 勝年君    理事 塩崎 恭久君 理事 萩生田光一君    理事 林  幹雄君 理事 松本  純君    理事 長妻  昭君 理事 山田  宏君    理事 石田 祝稔君       あかま二郎君    秋元  司君       穴見 陽一君    伊藤 達也君       池田 佳隆君    今村 雅弘君       岩屋  毅君   うえの賢一郎君       衛藤征士郎君    越智 隆雄君       大島 理森君    加藤 寛治君       金子 一義君    熊田 裕通君       小池百合子君    佐田玄一郎君       斎藤 洋明君    新谷 正義君       菅原 一秀君    関  芳弘君       薗浦健太郎君    高木 宏壽君       津島  淳君    辻  清人君       中川 郁子君    中山 泰秀君       野田  毅君    原田 義昭君       船田  元君    前田 一男君       宮崎 謙介君    宮澤 博行君       宮路 和明君    武藤 貴也君       保岡 興治君    山本 幸三君       山本 有二君    大串 博志君       岡田 克也君    篠原  孝君       古川 元久君    坂本祐之輔君       重徳 和彦君    杉田 水脈君       中山 成彬君    西野 弘一君       伊佐 進一君    浜地 雅一君       大熊 利昭君    佐藤 正夫君       柿沢 未途君    林  宙紀君       宮本 岳志君    青木  愛君       畑  浩治君     …………………………………    公述人    (株式会社野村総合研究所顧問)    (東京大学公共政策大学院客員教授)        増田 寛也君    公述人    (日本労働組合連合会事務局長)         神津里季生君    公述人    (桜美林大学リベラルアーツ学群教授)       藤田  実君    公述人    (一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)           山下 一仁君    公述人    (SMBC日興証券金融経済調査部部長)    (金融財政アナリスト)  末澤 豪謙君    公述人    (ソシエテジェネラル証券会社東京支店東京支店長) 島本 幸治君    公述人    (パーソナルケア株式会社代表取締役)       木村惠津子君    公述人    (日本金融財政研究所所長)            菊池 英博君    予算委員会専門員     石崎 貴俊君     ————————————— 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   秋元  司君     辻  清人君   うえの賢一郎君    武藤 貴也君   越智 隆雄君     池田 佳隆君   大島 理森君     熊田 裕通君   菅原 一秀君     穴見 陽一君   関  芳弘君     宮澤 博行君   西川 公也君     宮崎 謙介君   船田  元君     新谷 正義君   宮路 和明君     加藤 寛治君   佐藤 正夫君     大熊 利昭君   柿沢 未途君     林  宙紀君   畑  浩治君     青木  愛君 同日  辞任         補欠選任   穴見 陽一君     菅原 一秀君   池田 佳隆君     越智 隆雄君   加藤 寛治君     宮路 和明君   熊田 裕通君     大島 理森君   新谷 正義君     斎藤 洋明君   辻  清人君     前田 一男君   宮崎 謙介君     西川 公也君   宮澤 博行君     関  芳弘君   武藤 貴也君     うえの賢一郎君   大熊 利昭君     佐藤 正夫君   林  宙紀君     柿沢 未途君   青木  愛君     畑  浩治君 同日  辞任         補欠選任   斎藤 洋明君     船田  元君   前田 一男君     中川 郁子君 同日  辞任         補欠選任   中川 郁子君     高木 宏壽君 同日  辞任         補欠選任   高木 宏壽君     津島  淳君 同日  辞任         補欠選任   津島  淳君     秋元  司君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成二十六年度一般会計予算  平成二十六年度特別会計予算  平成二十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 二階俊博

    ○二階委員長 これより会議を開きます。  平成二十六年度一般会計予算平成二十六年度特別会計予算平成二十六年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位一言御挨拶を申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜り、まことにありがとうございます。平成二十六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を賜る順序といたしましては、まず増田寛也公述人、次に神津里季生公述人、次に藤田実公述人、次に山下一仁公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、増田公述人にお願い申し上げます。
  3. 増田寛也

    増田公述人 おはようございます。この場にお招きをいただきまして、大変光栄でございます。増田寛也でございます。  現在、野村総合研究所顧問と、そして東大の大学院の方で教えているところでございますが、きょうは、来年度の予算案につきまして、賛成の立場から陳述をさせていただきたいと思います。  そして、野村グループで、お手元資料を用意してございますが、日本経済現状と今後の見通しを我々の中で議論して、まとめております。その要点を本当にかいつまんで申し上げますと同時に、後半の、ページ数にいたしまして三十二ページ以降に、参考資料として、人口減少問題のテーマ、私が昨年の十二月号の中央公論の方にこの問題の論文を取り上げて書かせていただきました。この点についてお話を申し上げまして、また審議参考にしていただきたい、このように考えております。  初めに、我が国経済見通し野村総合研究所立場でどう見ているかということをかいつまんで申し上げます。  お手元資料の一ページから三ページまで、一言で言いますと、お金、資金先進国回帰ということであります。  一ページ目の一番左側実質GDP成長率が出ておりますが、世界で二〇一三から一四年にかけて、二・九から三・五に加速をいたします。先進国は一・二から二・二、これに対して新興国は、水準は高うございますが、四・七から四・九というふうに見ておりまして、ほとんど加速感が出てこない状況でございます。このように、資金の全体的な先進国回帰という現象が今後出てくるというふうに見ております。  その上で、四ページに日本経済見通し要約表が出ておりますが、一番上の実質国内生産、今年度で二・二%、来年度一・四、そして再来年度一・九、ついこの間まではもう少し高く見ておりましたが、六ページの十—十二月期の実質GDP成長率、先日発表になりました市場コンセンサスが二・八%ぐらいでございましたが、思いのほか低くて一・〇という、輸出が振るわなかったということでございます。そういったことで、今年度二・二と下方修正をしております。日銀の方での見通しは二・七ということでございます。恐らく二%台の前半ではないかというふうに見ております。  そして、さらに少し行きますと、八ページに、ことしの四月からの消費税率引き上げ影響が出ております。このことによりまして、実質GDP、マイナス〇・六八%程度影響が出てくるだろう。日本潜在成長率が〇・五ないし一%というふうに言われておりますので、それを打ち消すぐらいのものでございます。  したがって、九ページに、追加対策ということで補正予算五・五兆円を編成されたわけでございますが、的確な対応であったと思いますのと同時に、これを早期に、確実に執行していただくということが必要かというふうに思っております。  なお、この関係では、十一ページに建設業の実態が出ております。  特に、十一ページの右側でありますが、右側のグラフの左軸、黒い線が有効求人数であります。今、求人数が十五万人ほどおりますが、御案内のとおり、スペシャリストが特に足りない。型枠工を初めスペシャリストが足りないということでございます。外国人で今働いているのが実数で一万六千人ぐらいというふうに言われておりますが、こういった技能労働者不足は深刻な問題がございますので、これをどのようにするか、的確な御対応をいろいろとお考えいただければというふうに思うわけであります。  そして、これまでが財政の問題でありますが、十三ページ以下は金融関係でございます。  この金融関係は、足元インフレ率は当初の予想を上回るペースで上昇しておりますが、一言で言うと、円安エネルギー価格が上昇しているということでほとんど説明がつくかと思います。ただ、十四ページに書いておりますように、インフレの基調は変わらないと思いますが、今後、エネルギー価格が鈍化する、そして、消費税増税後、どうしても消費が低迷いたしますので、インフレ率が鈍化してくる。一五年中に二%という目標がございますが、その達成は、いろいろなことをしないとなかなか容易でないのであろうというふうに思っております。  そして、問題は賃金です。十七ページ以下がその分析でございますが、労働需給の逼迫が賃金上昇にきちんとつながっていくかどうかということでありますが、十八ページに書いてございますとおり、マクロ賃金雇用者報酬全体の伸び抑制をされておりますが、その背景には、パート化の進展によっていわゆるベースの所定内給与低下をしているという、十八ページ、左、右ともそれでございます。  したがって、十九ページに書いてございますとおり、特に非製造業における雇用形態の変化ということがポイントではないかというふうに思っております。  少し先を急ぎますが、あと、二十四ページ以下、二十三ページに生産実質GDP堅調回復を示唆しているというふうに分析をしておりますが、問題は、これだけの円安であるにもかかわらず、なかなか輸出伸びにつながっていかない、この点でございます。  なぜそうなのかということですが、二十五ページに少し書いておりますが、前回は、これが二〇〇五年から七年ぐらいはうまくつながっていったんですが、今回、一般機械輸送機械、いわゆる自動車関係勝ち組と言われていますが、電気機器が十分でない。ここに大きなイノベーションなどが必要になろうかというふうに考えております。  そして、これが最後になりますが、二十九ページ、いろいろと、設備投資にこうしたことがつながっていくかどうかということでございますが、ひとえに、輸出がうまくいくかどうかということで、輸出の増が生産増につながって、稼働率が上がって設備投資に向かっていく、こういう好循環を生み出すことができるかどうかでありますが、当面はどうも、三十ページに書いておりますとおり、更新投資中心のようでございます。この点が今後きちんとした政策によって打破できるかということだと思います。  三十二ページ以下、きょうは、審議の御参考に、人口減少問題について幾つかポイントを申し上げておきたいというふうに思います。詳しくは、昨年十二月に出ました中央公論の方にいろいろ書いてございます。  三十三ページに、「日本人口減少は、簡単には止まらない」ということで、よくこの問題を議論するときに使います図でございますが、出生率が二〇〇五年に一・二六まで低下をし、現在、一・四一まで上がっております。  このように、出生率が上がったにもかかわらず、棒グラフの縦軸出生数の方が一貫してその後も減っているということは、要は、第二次ベビーブーム世代、一九七一年から七四年に生まれた方も、もう七四年生まれの方がことし四十歳ということで、若い二十代、三十代の女性の数が今急激に減り始めている。したがって、出生率が上がっても、全体の生まれてくる子供はふえないという大変深刻な状況にもう突入してきているということであります。  そして、これを私ども市町村別にきちんと分析してみようということで、昨年三月に公表されました、社会保障人口問題研究所、いわゆる社人研数字を、データを使って分析したんですが、マクロで、全国数字で見ますと、三十四ページ、高齢者の数が二〇四〇年までにふえて、その後、横ばいから減少するということで、当面、この第一段階の様子にあるのが全国傾向でございます。  ところが、二〇四〇年あるいは二〇六〇年以降の第二段階、第三段階にもう突入している市町村が、実は全国でかなり存在をしている。大都市はまだ第一段階で、これから高齢者がふえるんです。地方の方は、岩手のところはおおむね第二段階、第三段階でありますが、高齢者横ばいから減り始め、若い者はもっと減るという、全国数字を三十年から五十年ぐらい先取りするような形になっております。それが、三十五ページ、三十六ページに出てございます。  市町村別分析をすると、このように、特に第二段階、第三段階にもう入ってしまっている市町村がある。これをどうするか。このままではすぐに、間もなく消滅をしてしまう。こういう地域によってのアンバランスがございます。  この先進国での出生率低下の問題は、実はこれはヨーロッパでも共通の問題でございまして、移民を実施したり、いろいろ婚姻制度などにもかわるようなことをしたり、それぞれの国の経験があるわけですが、これは我が国としても大いに学ぶべきところもあると思います。  もう一つ我が国人口減少を急激たらしめているのは、三十七ページ以下の、これは日本独特の、特有現象でございます。大きな人口移動我が国ではあって、三十七ページに書いてあるように、これまで三回ございました。高度成長期には、地方圏から三大圏の方に移る、これは三十七ページの左側の大きな山であります。真ん中あたりバブル期の山があります。このときは、地方圏から、関西圏や名古屋には移らず、東京圏に移っている。そして、その後、二〇〇〇年ごろから最近まで、だらだらと、同じように東京圏に若い人が地方圏から出る。これは恐らく、東京がさえていたというよりは、地方でもう生活していけない、端的に言うと、食っていけないということで東京の方に移ったのではないかというふうに思うわけです。  三十八ページに二〇一一年の地域別流入人口が書いてありますが、やはり東京都区部が非常に大きくて、特徴は、全国から東京は人を集めている、こういうことであります。  それでは、特にこれは若い層が中心なんですが、東京に人が集まるというのは、これは首都だから当然どこでも見られるのかということであります。  三十九ページにごらんいただきますように、実は日本だけの現象でありまして、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、いずれも戦後一貫して人口を集めているわけではありません。むしろ、減らしていたり、ずっと横ばいでそのままでありますが、なぜかしら日本、これは、この間ソウルを調べたら、同じように人口が集中しておりましたが、途上国のようなことなのかもしれませんが、こういう状況であります。  ところが、若い人が東京に行きますと、四十ページにございますとおり、東京出生率は極めて低い。東京は一・〇九。一番上が全国平均で、一・四一。沖縄が一・九〇と大変高うございますが、東京は一・〇九。住宅事情もあると思います。保育所がない、教育費が高い、いろいろ子育て環境が悪い、さまざまな問題があると思います。この点は世界共通の問題でありまして、人口稠密な地域では出生率がどこも極めて低い、一を切っている都市もございます。  したがって、東京出生率が高くなるように、これは男側意識もきちんと変えて、ここを改善していくのは必ずやらなければいけないことでありますが、しかし、その効果を期待するのはすぐにはなかなか難しいと思いますので、したがって、とにかく、東京に若い人が中心に人が集まるという状況、さらに言えば、人だけでなく、物、金が集まるというこの形態をどのように考えるかということ、ぜひこれは国全体として考えていかなければならないと思います。  そして、四十一ページに、今までのことをまとめて少し簡単に図示してありますが、大都市への若者流入ということが、日本特有の大きな現象として、これまで三回ございました。  今後また起こることになれば、どういうことが起きるかというと、地方部は、やはり若い人たち東京に出ていくということ、プラス、全体として我が国が低出生率でありますので、それによって、今、人口減少拍車がかかっている。一方で、三大圏、特に東京に若い人が行きますと、そこは、先ほど言いましたように、超低出生率、一・〇九ということで、そのことによって、さらに人口減少拍車がかかるということです。  四十二ページに少し書いてございますが、人口の再生産力ということで、これは人口学者が使う言葉ですが、二十代それから三十代の女性、二十から三十九歳女性人口を見てみますと、実はここで九五%の子供さんが生まれるのでこの年代を取り上げたわけですが、今、出生率が一・四。TFRというのは出生率です。  左側の、人口流出がないとした場合でも、合計特殊出生率が一・四だと、自然に三、四十年後には女性人口が七割まで減ります。したがって、人口規模を維持するためには、出生率を二に直ちに回復しないといけない。こんなに急激に回復するのは大変難しくて、二〇三〇年に出生率が二に回復する、これは実際にはなかなかあり得ないと思います。それでも、人口が安定化するのは六十年後の二〇九〇年でございますので、したがって、深刻さがおわかりかと思います。  一方で、モデル二の、右側の方ですが、今まで起こったとおり人口流出東京の方に行くということですと、さらに事態は深刻で、人口を維持するためには、TFR合計特殊出生率を二・八から二・九まで上げなければいけない。先進国いずれも、頑張っても二そこそこまででありますので、これがいかに難しい目標かということはおわかりだと思います。  したがって、最後に、四十三ページでございますが、今のこの傾向を各県別に、市町村別に全部分析をいたしますと、人口移動が収束をする、東京にもう若い人たちが出ていかないというのが国立社会保障人口問題研究所の推計の前提になっていますが、それでも、二〇一〇年から二〇四〇年にかけて、若い女性の数が半分以下になる自治体が二〇・七%、三百七十三の自治体。このうち、二〇四〇年に人口一万人以下のものは実は二百四十三ございますが、ここはそのまま存続するのが極めて難しいのではないかというふうに私どもは推測をいたしました。  さらに、これまでのとおり人口移動が収束しないという仮定を置きますと、この自治体数が四九・八%、何と半分、八百九十六までふえました。二〇四〇年、人口一万人以下のものが五百二十三でございます。消滅の危機に瀕するということでございます。  私は、東京も、これからいろいろな意味アジアの諸都市と競争して、もっともっと成長を遂げなければいけないだろうというふうに思うんですが、我が国地方から若い人を集める形で全部そういうことをやっておりますと、地方も崩れる、そのことによって東京自身もまた困る。実は、東京は、介護が大変厳しい状況になってくるわけで、二〇四〇年、後期高齢者が二倍以上ふえて、若い人たちが四割減っていくわけですから、そういう問題も出てきます。  したがいまして、やはり一方で、地方で、若い人たち地域で雇用できるような仕組みづくりを何としてもすると同時に、東京人材は、例えば国際金融センターになるのであれば、アジアのシンガポールやインドなどの優秀な人材で賄うような形でそれを維持するようなことも今後考えていく必要があるんじゃないか。  これは、大変大きな議論で、私もまだまだ十分考えがまとまっているわけではありませんが、いずれにしても、この人口問題、これは先の話ではなくて、間もなく起こり得る問題でありますので、これを大きな国家戦略として考えていく必要があるのではないか。そして、そのために、アベノミクスなり、これからの予算一つ一つ積み上げていく必要があるのではないか。このように考えているところでございます。  以上で、大変雑駁でございますが、私の意見陳述とさせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 二階俊博

    ○二階委員長 ありがとうございました。  次に、神津公述人にお願いいたします。
  5. 神津里季生

    神津公述人 おはようございます。御指名いただきました、連合事務局長を務めております神津里季生と申します。どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。  本日は、このような機会を与えていただいたことにまず感謝を申し上げたいというふうに思います。  働く者の立場から、取り巻く現状、課題、そういったことについての私たち問題意識を述べさせていただきたいと思います。  お手元にレジュメをお配りさせていただいております。四点にわたって発言をさせていただきたいというふうに思います。  まず一点目でありますが、私たちを取り巻く環境、そしてそのもとで今なすべきことということであります。  日本経済は、金融緩和による円高是正をきっかけとして、輸出型産業中心に高収益が相次いでおる、景気回復局面にあると言われております。しかしながら、日本全体を見れば、地方への波及はまだまばらということでありますし、私たち働く者、生活者にとっては、足元物価上昇からも家計が圧迫されているのが現実であります。そして、この二十年間に不安定な雇用形態が増大をしたということも相まって、国民の多くは景気回復を実感できる状況にはないと言わざるを得ないと思います。  このような中、私ども連合は、組織を挙げて、目下、春闘の取り組みに邁進をしております。ことしは、さまざまな形での前宣伝が効いておりまして、マスメディアの臆測報道も頻発をしておりますが、肝心なのはこれからであります。一つ一つの労使の間での真摯な交渉、その一つ一つの真摯な交渉の壮大な積み重ねであります春闘において全体が納得のいく回答を得ていくことは、極めて重要と認識をしております。  ことしの春闘は、いわば、四十年前の超インフレ抑制労働側が極めて重たい決断をいたしました、そのことの裏返しであると認識をしております。当時、私ども労働側先輩方は、かんかんがくがくの議論を経て、労働側として要求を抑制いたしました。今回は、経営側が、合成の誤謬に陥ることなく、全ての働く者への成果還元に向けて月例賃金引き上げをしていくことがデフレ脱却には不可欠だと認識をしております。  大半の経営者の方々は、依然として、収益の向上を報酬で還元するという言辞に終始をしておるのかなと思います。税制の恩典につきましても、年収全体の引き上げに呼応したものとなっておるわけであります。  しかしながら、収益が向上したところが一時金を引き上げるということは、ある意味で当たり前のことであります。結果として、この春闘、大企業正社員の一時金増だけで幕が引かれるとなれば、一体これまでと何が違うのかとなってしまうわけであります。そんなことでは、経済の好循環などは絵に描いた餅にしかなりません。私ども連合は、あくまでも月例賃金引き上げにこだわり、交渉を展開しておるところであります。  そして、私どもとして、もう一つのこだわりが底上げであります。全ての働く者、とりわけ二千万人を超える非正規労働者、あるいは働く者の七割を占める中小企業で働く労働者、この方々に対する処遇改善、格差是正を進めなければ、賃金デフレからの脱却は到底できないと思います。非正規労働者、あるいは中小企業で働く労働者、そしていわゆる低所得の方々の層を置き去りにすることは、将来の経済あるいは社会保障の担い手の不足にもつながるわけでありまして、日本社会そのものがさらに疲弊をしていくことになります。これでは、持続可能な経済の好循環は到底実現できないというふうに思います。  また、大手と中小企業の格差是正のためには、取引関係における不当な買いたたきなどの行為を許さない取り組みも重要であります。そのためには、適正な取引関係の確立、公契約基本法、公契約条例の制定に関する取り組みを強化する必要があります。加えまして、消費税率の引き上げに伴う転嫁拒否など、悪質な取引の抑制を図り、中小企業労働者の生活や労働条件等を確保する必要があります。  連合といたしましても、ホットラインを開設しております。具体的な取り組みとして展開をしております。政府としての一層の取り組み強化を要請しておきたいというふうに思います。  二点目の論点でありますが、デフレの元凶は何であったのかということ、これを真摯に振り返る必要があるということであります。  足元の雇用情勢、直近十二月の完全失業率三・七%ということで、全体の数値は改善をしておると思います。しかしながら、若年層の完全失業率に着目する必要があります。十五歳から二十四歳は五・九%、それから二十五歳から三十四歳の層においても四・七%ということで、相対的に失業率の水準が高い。その中身も含めて、直視をしておく必要があります。  全雇用者に占める非正規労働者の比率、先ほども触れましたが、依然として増加傾向にあります。雇用労働者全体の三八・二%、二千四十三万人に上る非正規労働者、これは、割合も人数も過去二十年において最大ということであります。産業間で多少のばらつきはあるにいたしましても、民間あるいは公務ともに、非正規労働者が占める割合は増加の一途にあります。  そしてまた、非正規労働者の処遇に目を向けますと、私ども連合の調査によれば、半数近くの非正規労働者が、実は、内容としては正社員と同じ業務内容であったり、あるいは責任や勤務状況についても正社員と同様である、そういった実態にあるにもかかわらず、賃金あるいは福利厚生といった処遇面においては正社員との格差が存在するところが多く、私ども連合として目指している均等待遇原則とは全くかけ離れた現実があります。  また、非正規労働者の約二割あるいは派遣労働者の四割が、みずから望まずしてその職についているいわゆる不本意非正規であります。一部の調査では、派遣の方々の六割が正社員として働きたいという回答もあるわけであります。  厚生労働省が調査をしたことは御存じのとおりであります。若者の使い捨てが疑われるいわゆるブラック企業に対しまして過重労働重点監督を集中的に実施し、対象とした五千百十一事業場の実に八割以上の職場で法令違反が発覚したことは御承知のとおりであります。  私たち連合といたしましては、二〇〇七年から非正規労働センターを立ち上げております。そして、本日に至るまで、非正規労働の組合員の仲間をふやし続けてきております。現時点でおよそ八十万人程度の組合員数となっておりますが、さらに、私ども連合として、広範にカバーをしていくべく、取り組みを強化しております。  そしてまた、ここ直近では、新たな取り組みとして、各地方連合会で、古賀会長との直接の非正規労働の皆さん方との対話集会、これを開催してきております。その中ではさまざまな悲鳴が上がっております。  一端を御紹介したいと思いますが、十年間同じ職場で働いているけれども時給が一円も上がらない、あるいは、低賃金もつらいけれども、それよりも心の安定が欲しい、そして、契約を切られる、いつ切られるかという不安を抱えながら仕事をしている、そういった悲痛な訴えに連日直面をしている状況であります。  そして、このような中で、御存じのとおり、年収二百万円以下のいわゆるワーキングプアと言われる労働者は増加の一途をたどり、現在約一千九十万人となっております。生活保護の受給者についても、二〇一三年十一月に二百十六万四千八百五十七人、受給世帯数は百五十九万世帯を超えて、ともに過去最多を更新し続けているわけであります。そして、働ける世代の受給者が急増している。そしてまた、将来を考えますと、不登校だとかニート、引きこもりなど、就労につながらない懸念のある若者も、今後、生活保護に至るリスクを抱えておるわけであります。  こういった働く者一人一人にとって悲鳴の上がる状況であるということとともに、その現象が、同時に、税や社会保険料の担い手を減らし、超高齢社会のもとで増加する社会保障給付費に対応できずに、社会保障制度への不信や将来不安を高め、結果として負の構造をさらに悪化させているわけであります。  日本経済社会を縮小均衡の世界に追いやった、このいわば悪魔のスパイラルこそ長引くデフレの元凶であったことを直視しておかなければならないと思います。  安倍政権は、大企業の賃上げをターゲットにした発言を目立たせる中で経済の好循環の実現を図っておられますが、本当の意味で、この間、長きにわたったデフレの元凶は何だったのか、その点を踏まえた施策の展開がなければ、今後の経済運営は空回りに終わってしまうのではないかという懸念を持ちます。  まして、伝えられるような雇用労働分野でのルール改悪の方向は、アクセルを踏み込む前にブレーキを踏んでいくようなものでありまして、自己撞着も甚だしいものと言わざるを得ないと思います。  産業競争力会議や規制改革会議では、総理の就任以来、日本世界で一番企業が活躍しやすい国にするために、雇用労働分野の規制改革が議論をされています。ほかの経済規制、参入規制などと同じ次元でこれらを岩盤規制と称し、扱うこと自体が私はミスリーディングだと思います。まず政府がなすべきは、デフレの元凶となった雇用の非正規化、不安定化をどのように反転させるかという視点での検討であると思います。ブラック企業の横行をストップさせることがまず先決であると思います。  現時点では、むしろ、総理主導で労働政策の基本施策を策定、検討する形をさらに強化される方向にあるようですが、ILOの三者構成原則を無視した進め方という問題点はもとより、本当に雇用の現場で何が起きているのか、そしてデフレの元凶は何であったのか、こういったことを深掘りしないままの議論で基本的な物事が決められる、決められようとしていること自体に、私どもとしては重大な危機感を持たざるを得ません。  三点目でありますが、将来世代への負担先送りをやめていかなければならないという点であります。  二月の六日に補正予算が成立をいたしましたが、その中身の多くは二〇一四年予算の前倒しといった色合いが濃いと思います。  低所得者対策あるいは待機児童の解消に向けた子育て支援など、国民生活に直結する緊急な支出と認められるものが相対的にわずかであったというふうに認識をしています。一方で、公共事業については、いまだに執行されていない予算があるにもかかわらず、約一兆円の積み増しとなったわけであります。  政府は、本補正予算につきまして、持続的な経済成長につなげるとされたわけでありますけれども、公共事業頼みの景気回復は限界があります。むしろ、財政面においては将来世代へ負担を先送りすることとなって、持続的な経済成長につながらないということは明らかではないかと思います。  さらに、二〇一四年度の予算案においても公共事業費は増額が図られようとしています。一般会計総額は当初予算として過去最大の九十五・九兆円というわけでありますが、消費税率の引き上げにより国民負担を求める一方で、公共事業のさらなる積み増しを盛り込むことは、全体のバランスを欠いており、問題だと思います。  また、社会保障と税の一体改革が進められていますが、抜本改革の道筋はいまだ示されておりません。貧困、格差の拡大につながる生活扶助基準の引き下げの継続、医療保険制度における患者、被保険者の負担増となる診療報酬のプラス改定、そして安易なリストラを誘発しかねない労働移動支援助成金等の拡充、雇用調整助成金の厳格化、こういった、国民生活の底上げや将来不安の解消とは逆行する内容も多く盛り込まれているのではないかと認識をしております。  デフレからの脱却、経済の好循環をなし遂げるためにも、質の高い雇用の創出あるいは社会的セーフティーネットの強化、安心して子供を産み育てられる環境整備、信頼の医療・介護・年金制度の再構築などに重点的に予算配分を行う必要があるのではないでしょうか。国会での十分な議論を通じた見直しを求めるものであります。  私たち連合は、いわば最大の納税者集団であります。そしてまた、源泉徴収制度により、最も明確に納税義務を果たしている集団でもあります。  私ども働く者一人一人が汗水垂らして働いて得た賃金から払っている税金が一体どのように使われているのでしょうか。オイルショック以降の年々の特例公債による借金がここまで積み上がってしまっていることに対して、私どもは、そういった集団として、重大な問題意識を持たざるを得ません。将来世代の負担を今から目に見えて減らしていかなければならないのではないでしょうか。予算審議のあり方そのものにも改善を図っていただきたい、このようにも思うところであります。  最後、四点目でありますが、二〇五〇年を見据えてまいりたい、こういうことであります。  目下、外国人受け入れ環境の整備が産業競争力強化の文脈で提起をされておりますが、私どもにしてみますと、外国人労働者をふやすとなぜ産業競争力が向上するのか、率直に言って理解に苦しむところであります。これが、安価な労働力を確保し、企業の雇用コストを低減させるということを含んでいるのであれば、デフレからの早期脱却の最重要課題とは矛盾する政策と言わざるを得ないと思います。  東京オリンピックに向けて外国人による建設人材確保が云々されていますが、率直に申し上げまして、安直なにおいを感じざるを得ません。むしろ、若年層を中心とした技能の保持、育成、あるいは安全面、環境面を含めた労働条件の向上など、魅力ある産業としての強化策こそ、まず確立すべきではないでしょうか。  そもそも、外国人受け入れということにつきましては、労働力確保の観点のみで検討されるべきことではなくて、社会での受け入れといった社会統合の観点からの可否検討が不可欠であります。国民的議論を丁寧に行いつつ検討すべきと考えます。欧米先進国で既に見られますような新たな差別感情を生むとか、あるいは無用な民族感情を助長するようなことがあってはならないと思います。足元の苦し紛れで禍根を残すような施策は、厳に慎むべきと考えます。  まさに、私どもにとって大事なことは、自分たち日本をどうするかということだと思います。これまでの間、幸せでない日本人労働者がふえてしまった、このことをこのままにして外国人労働者を受け入れるということは、不幸せな外国人労働者をつくり、ふやしてしまうことになるのではないでしょうか。私たちにはその前にやるべきことがあります。この国で働くことがすなわち幸せにつながるという、まず、その姿を全ての働く者の共通軸にしていかなければならないと思います。  そのためには、社会的セーフティーネットを強化することが必要であります。世界に類を見ないスピードで進展をする超少子高齢社会にあって、社会保障・税の一体改革関連法により実現を目指す全世代支援型の社会保障制度への転換及び制度の充実、安定化に向けた道筋を明確に示すことで、国民の将来不安を払拭する必要があると思います。  そして、税と社会保障による所得再分配機能を強化することであります。この間に行われたさまざまな施策により、所得再分配機能は弱められてきたと認識をしております。また、何度も繰り返しますが、非正規労働者の増大は、ワーキングプアを生み出し、これは被用者社会保険の適用とならない人を増大させてまいりました。このことが、先ほど申し上げた、悪魔のスパイラルダウンにつながっておるわけであります。今後、累進性の強化、あるいは人的控除の見直し、給付つき税額控除の導入などによって、基幹税である所得税を再構築し、税の所得再分配機能を強めることが急務だと思います。  こうした底上げ、底支え、格差是正につながる政策の実行は、今後、将来不安を払拭し、個人消費の回復につながり、デフレ脱却経済の好循環を実現することにつながるのであると思います。  そして、今後、さらなる持続的な経済成長を実現するためには、労働参加率と生産性の向上が鍵となります。  私どもは春季交渉に一斉に臨んでいるということは先ほど申し上げましたが、私どものガイドブック、連合白書でも掲げておるんですが、二〇五〇年段階日本社会を展望しつつ運動を進めよう、これが一つの私どものキャッチフレーズであります。  もちろん、この一年、そして足元の、目の前の春闘が決定的に重要であるということも論をまたないと思っております。しかし、一年だけでは到底問題は解決し得ないと思います。将来の日本社会を見据えるという観点からも、働く者が中長期的に不安なく生活をし、生き生きと働き、将来を展望できる、そういった安心社会の構築が重要であります。  私ども連合としても、その役割発揮に向けて努力を重ねてまいる旨を述べまして、以上、発言とさせていただきます。  本日はまことにありがとうございます。(拍手)
  6. 二階俊博

    ○二階委員長 ありがとうございました。  次に、藤田公述人にお願いいたします。
  7. 藤田実

    藤田公述人 おはようございます。桜美林大学の藤田と申します。  こういう機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。  私は、産業と労働に関する経済学を研究してきた、そういう立場から、日本経済現状成長戦略の問題点について意見を述べたいと思います。  まず初めに、この一年間の日本経済現状について、主としてGDP統計に基づきまして意見を述べたいというふうに思っています。お手元資料をもとにして、図表も若干つけてありますので、参考にしながら説明したいと思います。  まず、経済循環構造から見て日本経済は今どういう問題点を抱えているのかという話をしますと、家計最終消費支出の問題からいきますと、これが、まあ堅実によくなってきているというのは事実でしょうけれども、私の見方では、やはり弱々しいのじゃないか。  といいますのは、この間、成長率で見ると、実質で〇・七、〇・二、〇・五という数字でありまして、特に、この十月から十二月期というのは、消費増税前の駆け込み需要があるんじゃないかと言われておりましたし、それから株高ということで、高額消費が続いているという話がありましたので、そういう意味では、消費マインドは少し前向きになっている、そういうマスコミ報道が結構あったと思うんですね。しかし、実態的には、国民の広範な消費にはまだ結びついていないというふうに感じています。  それは一体なぜかというと、株高といっても、日銀の資金循環表に基づけば、株式の割合というのは八・五%程度なんですよね。投資信託を合わせても一三%程度ですから、株高の直接的な恩恵にあずかれる国民といいますか家計というのは、それほど私は、直接的な恩恵ですよ、多くはないんじゃないかと考えています。  それに対して、やはり駆け込み需要的な住宅投資がふえているということがありますので、これが全体的な景気を支えている、そういう感じがいたしております。  もう一つは、この間、政府は、補正予算と合わせると約十兆円近い公共事業に予算をつぎ込んできたというふうに思います。それで、この十兆円規模というのは、恐らくはバブル崩壊後の数年間、それから九七年からのいわゆる金融危機以後の数年間で行われた規模に匹敵するということですから、二〇〇〇年以後ではかなりまれなケースといいますか、そういうことだと思うんです。  そういうことで、一定程度、公的需要の部分では伸びてきてはいたんだけれども、それが民間需要にどう展開するかということが自律的な経済循環を考えるときには絶対必要なことなんだけれども、この動きは、民間需要が私はそれほど強くないと思っています。この直近の期でいうと、公的需要が〇・九で民間需要が〇・八ですから、逆転をしているということで、構造的な違いがあるんだというふうに政府は述べていますけれども、これだけで状況を見ることはまだできないんじゃないか、民間需要がどれだけ今後伸びていくかということを考えなければいけないだろうというふうに思っております。  それから、それ以上に私は問題だと思うのは、輸出の問題でございます。  これに関しましては、幾つか報道されていますように、輸出伸びない。輸出金額を二図表という形で入れておきましたけれども、一進一退という状態ですよね。それで、レジュメに書いておきましたけれども、二〇一三年三月に六兆二千七百九億円がいわば直近のピークで、これをいまだ超えていない、こういう現状でございます。  それから、金額以上に私は問題だと思うのは、輸出数量が依然として伸びていない。これも二ページ目の三図表に書いてありますけれども、二〇一〇年を一〇〇とすると、ほとんど二〇一〇年を超えていないという現状がございます。  というと、どういう問題が起きてくるかというと、輸出数量が増大しないと、当然ながら生産が増大しない、雇用が増大しない、賃金が増大しない、こういうことになってくる。結局は、一体どういうことを意味していくのかということを考えますと、輸出金額が一定程度伸びても数量が伸びないということを考えると、恐らく、輸出品目が変わってきている。つまり、付加価値の高いものに変わってきている可能性は十分ある。  そう考えると、つまり、普及品等は海外に行くという状態、海外生産が続いて、付加価値の高いいわゆる高級品が国内生産輸出に回っていく、こういう状態を考えていくと、今後とも輸出が大きく伸びるという可能性は僕は少ないんじゃないかなというふうには考えています。もちろん、海外の経済状況、新興国の経済がどうなるかに大きく左右される側面はあると思いますけれども、今のところ、そういうふうに感じている。  そうしますと、いわゆる内需が停滞していたのを輸出が補って、輸出主導で景気が回復していった、これがいわゆるあの二〇〇二年から二〇〇八年までのイザナミ景気のいわば実態だったんじゃないかなと思うんですけれども、こういうイザナミ型の景気回復の道というのはたどれるのかどうかということは、私は疑問には感じております。  それからもう一点は、設備投資における変化です。  設備投資、若干伸びてはいるということにはなっておりますが、確かに、今期では一・三%という形で、一定程度、公共事業もやりましたし、それから民間の住宅需要もあるという点で、伸びているということはあると思うんですけれども、先ほども話がありましたけれども、その中身、私は中身が問題じゃないかなと思います。  三ページの四図表に、日本政策投資銀行の設備投資計画調査から、投資動機のウエートの推移というのを引いてきました。二〇一三年度はまだ計画段階ですけれども、これを見て一目瞭然だと思うんですけれども、基本的に、以前は能力増強投資が最大であった、設備投資の中で能力増強投資が多かった。ところが、これが徐々に下がってきていて、現在は、二〇一三年度の計画段階の数値ですけれども、維持補修の部分が上回ってくるということになっております。  この維持補修という設備投資そのものというのは、日本の平均機械年齢が、たしかもう十年を超えていると数値的には言えると思うんですね。だから、そういう意味では、機械装置が古くなっていますから、維持更新するというのは、それはそれで重要なことである、日本生産力を維持していくためには、これは絶対必要なことだというふうに思うんです。  しかし、問題は、やはり能力増強投資が大きく伸びていくという状況をつくらないと、つまり、能力増強投資ですから、生産能力を高めていく。つまり、生産がふえてくる。そうすれば、当然それを通じて雇用もふえてくる。雇用がふえれば、マクロ的に賃金もふえてくる。こういう形の好循環が成立するはずだけれども、こういう好循環がどこまで成立していくのかという点については、これは今年度の計画段階ですから、これが今後も続くかどうかという点は、ちょっと時間を追って見ないといけないところはあるけれども、私は危惧の念を感じているということでございます。  それからもう一つは、海外設備投資がこの間、増加しております。これは、同じく五図表で、海外設備投資比率を出しておきました。自動車等に関して見れば、単体と連結の比較ということではございますけれども、一・八倍から二倍近く、海外に設備投資が流れていく、こういう状態になっている。  そうなりますと、結局、私は、円安転換しても、以前のように輸出が増大して、それによって生産が増大して、それがまた設備投資を拡大していく、雇用増と賃金増をもたらしていく、そういういわば循環が弱いんじゃないか、弱い状態のまま推移していく危険性があるんじゃないか。つまり、日本経済構造あるいは産業構造がこの間大きく転換してきている、そういうことを前提に考えなければいけないのではないか、こういうふうに考えてはいます。  こういうことを考えますと、結局、金融財政政策ということで、第一の矢、第二の矢ということでアベノミクスがやってきましたけれども、これの限界というものが出てきているのじゃないかなという感じがしております。  といいますのは、やはり、無制限の金融緩和をして、いわばインフレ期待を高めて国民の消費マインドに火をつけていくというのが、まあ物価は一定程度上昇はしていて一定程度最終消費支出も伸びてはいるけれども、これが大きく伸びるという現状にはなっていないということがございますし、それから、先ほど言いましたように、円安転換しても輸出伸びてこない、輸出数量が伸びないという状態を考えると、それから、設備投資に関しても能力増強投資の割合が少ない、こういう状態を考えると、好循環にはほど遠い状態になっているというふうに考えています。  そう考えますと、やはり成長戦略が重要だという点は私も同意見です。やはり成長戦略をしておくことが必要だ、きちんと考える必要があるというふうに考えております。  ただし、私は、現在の成長戦略というのは、企業部門中心成長戦略であるということで、極めて問題が大きいんじゃないかと思っています。  五ページのところに、日本再興戦略の概要ということで、閣議決定と当面の方針を私なりにまとめたものがございます。民間企業の活力というところから具体的な成長産業と考えているというところまで含めて、どういう目標を決めているのか、どういう内容を持っているのかというのをまとめてみました。  これを見ますとわかると思うんですけれども、基本的には、グローバル競争力をいかに強化するかという観点に貫かれている。例えばビジネス環境の整備だと、ビジネス環境ランキングで先進国十五位から三位以内を目指すとか、アジアナンバーワンの市場を構築するんだとか、インフラ受注額を伸ばしていくんだというような、基本的には、グローバル競争の中でいかに勝ち抜くかという観点になっている。  それからもう一つは、産業政策では、ターゲティング政策を重視している。エネルギー産業とか健康医療産業とか農林水産業。  ただ、これは、もうここ十年近くさまざまな政府の成長政策みたいな中で出てきたものであって、私自身は、ほとんどかわりばえしないという印象は持っています。もともと経済学的には、ターゲットを決めてそのとおりいくというのは、市場経済を前提にする限りはそういうことはあり得ないという意見がやはり強いという中で、産業政策だけをやっても、恐らく成長戦略にはなかなかなり切れないというふうに考えております。  その上で、企業部門中心成長戦略の問題点でございますけれども、グローバル化にいかに勝ち抜くかということを考えたとしても、グローバル化で日本の所得収支は、この間、特にイザナミ景気のときに日本の所得収支は増加したんだけれども、実は賃金増加には結びついていないということがございます。これは六図表です。  六図表の中で、日本の所得収支と賃金・財産所得の推移という形で調べたのを入れておきましたけれども、明らかに、日本のグローバル化、海外展開の進行に伴って所得収支はかなり大きくなっているということがございますけれども、その所得収支が国内には還元されてこなかったというのが現実だったのではないかと。つまり、グローバル化と国民経済あるいは国民生活は矛盾する側面が出てきているというのは、日本だけではなくて、欧米においても同じような状態なのではないかというふうに思っております。  同じように、この間の、下の七図表でございますけれども賃金と利益の関係を見ましても、営業純益は増加したけれども、結局は従業員給与には反映されていない、こういう状態が続いてきているということがございます。  この原因については、一般的には、もちろん、非正規雇用労働者の増加で雇用者報酬金額自体が低下したということがあるのは事実であって、先ほども連合の事務局長さんの方からも非正規労働者がふえているというのがありましたけれども、もう三六・七%以上に達している、三分の一以上だし、いわば賃金の低い二百万円以下の労働者も、私も八図表で示しておきましたけれども、一千万人を超えるレベルになってきているということがございます。  こういう現状はあるんだけれども、こうした形で、日本の場合は、低い非正規雇用をたくさん使ったということが賃金を下げていって、いわば名目賃金を下げていく、そのことがデフレを招いていったというのははっきりしているんではないかなと考えています。  それからもう一点、政府の成長戦略の中で、雇用制度改革ということに強く力を入れている。限定正社員制度とか裁量労働制を拡大するという方向が出されています。これについては、日本経済にどういう影響を与えるか、賃金にどういう影響を与えるかという観点からは、九図表で、労働運動総合研究所の雇用制度改革の賃金への影響という、総括表という形で出しておきました。  八ページからは、その総括表のもとになった試算を提示しておりますので、御参考にしてください。  これによりますと、これは最大見積もってということになるので、こういうふうになるかどうかというのはまだよくわかりませんけれども、最大だと四十一・九兆円の賃金減少が起きてくる。つまり、そうすると、労働者の賃金の七割が消費支出に回ると考えると、三十兆円近く消費支出が減少するじゃないか。そうすると、国内生産消費支出のほぼ一・八倍の影響を受けることになるから、国内生産は五十四兆円も減少してくる。国内生産額のほぼ半分は付加価値と考えることができるから、そうすると付加価値も二十七兆円減少する。二〇一二年度のGDPは四百七十二・六兆円だから、GDPは五・七%減る。数字上はこういう計算ができてくるというふうになるんではないかと思います。  それからもう一つは、新規成長産業という形で、医療、福祉産業とか観光産業ということを考えておられますよね。政府の目標だと、二〇三〇年には三千万人まで訪日外国人をふやしていくということですから、観光産業が一つ成長産業という位置づけが出てくる。  しかし、問題は、福祉とか観光の賃金が低い、そういう問題だと思うんですね。  福祉に関しては、七ページの十図表で、福祉職の所定内賃金の推移を、九七年を一〇〇とした数字で示しておきました。これで見ますと、二〇〇〇年前後から産業計を下回っていく、こういう状態になってきているということがございます。  宿泊業の数字で見ると、二〇一〇年は八九・二です、産業平均を一〇〇とした場合ですね。それから、旅行業を含むその他生活関連サービス業が九四・三です。いずれも産業平均よりも少ない。  こうなると、例えば、成長産業はもちろんこれだけではないわけですけれども、ここが一つのターゲットになっているというふうに考えると、まさにプアな成長産業ではないかというふうに私は考えざるを得ない。したがいまして、新規成長産業における労働条件の向上が必要なんじゃないか、このように考えております。  そう考えますと、私は、最後、もう時間がないですけれども、国民生活重視の成長戦略に転換すべきだと。  需要創出策は絶対必要なんだけれども、それは、健康とか教育、医療、介護、福祉、観光といったところの労働条件をまず改善する、そういう環境をどうつくっていくかというようなことがまず重要なんじゃないか。こういうところできちんと労働条件の改善ができるということは、結局、国民全体に豊かさと安心感を与えて、安定的な内需基盤をつくり出すだろうというふうに思っております。  それからもう一つは、やはり、地方においてはアベノミクスの影響はほとんど出ていないという話をよく聞きますので、そういう意味では、中小企業を中心とした形で地域経済循環をいかにつくっていくか、そういうところに成長政策の柱をつくっていくべきだろう。  農業の六次産業化というのを掲げておりますけれども、それは一つの方向ではあるけれども、そういう方向に地域経済循環をうまくどうつくっていくかという、単なる農業の六次産業化という話だけではなくて、そういう方向が求められているんじゃないか、こういうふうに考えております。  ということで、ほぼ時間になりましたので、これで私の意見陳述を終わりにしたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 二階俊博

    ○二階委員長 ありがとうございました。  次に、山下公述人にお願いいたします。
  9. 山下一仁

    山下公述人 おはようございます。よろしくお願いします。  実は私、五年ぐらい前に農林水産省をやめまして、その後、この研究所で研究させてもらっております。  きょうは、三つ、最初に、農業の現状はどうなっているのか、それから、農業政策の特徴はどうなのか、それから、アベノミクスについての評価と、あるべき農業政策はどういうものなのか、こういうふうな話をさせていただきたいというふうに思っております。  まず、資料なんですけれども、最初に、農業生産額の構成別の推移を掲げております。  これで見ておわかりのように、最初は、一九五五年ぐらいは、米は大体、半分以上のシェアを占めていたんですね。ところが、今は、野菜と畜産に追い抜かれて、今の米のシェアは二〇%を切っている、こういうふうな状況になっています。  ただし、数的には物すごくたくさんの人がやっていまして、日本の農家の戸数のうちの七割は米農家で、しかし、七割の農家が二割の生産しかやっていない、これが現状でございます。  次のページ、三ページでございます。  実は、機械化が進みましたので、米は、今は一番簡単につくれる農業になってしまっているということでございます。  それから、次の四ページですけれども、「歪んだ米農業」というふうに書いてしまったんですけれども、お叱りを受けるかもしれませんけれども、実は、農業については、農業生産額、農業所得の部分は物すごく低いウエートになってきているということです。つまり、兼業所得、農外所得、それから、高齢化が進んでいますので、その年金収入、これが農家所得のうちの大きな部分を占めるようになってきている。これが、ブロイラーとか酪農とか、そういうふうな産業とは極めて特異な特徴を持っているということでございます。  それから、次の五ページなんですけれども、この折れ線グラフは、農家所得を勤労者世帯の所得で割ったものです。これを見てもらうとわかるんですけれども、右の方の一〇〇%の部分のところが、これを超えると、農家所得の方が勤労者世帯の収入を上回っているというふうになります。  そうすると、どこで上回っているかというと、一九六五年に既に農家所得の方が勤労者世帯の収入をもう上回っている、こういう状況になっているということでございます。しかも、その農家所得の内訳を見ると、農業所得のウエートはどんどんどんどん下がってきているということでございます。つまり、今、農家は豊かになったということでございます。  もう一つの不思議がありまして、六ページなんですけれども、六月に農業改革についての議論がなされるということでございますが、JAの正組合員数、基本的には農家だというふうなことになっています。ところが、正組合員数の方が今は農家戸数をはるかに上回っている、こういう状況になっているということでございます。  実際には、一つの農家で二人組合員になっている人もいらっしゃいますので、農家戸数でいうと、正組合員の農家は四百万戸ぐらいです。ところが、農家戸数が二百五十万戸に対して四百万戸、組織率何と一六〇%の協同組合だということでございます。労働組合に比べると格段の組織率を誇っているということでございます。  それから、准組合員というのがございまして、これは、その地域の人であれば誰でも農協を利用できる、だけれども農協の意思決定には参加できない、こういう制度でございます。実は、これは歴史的な経緯で認められたものでございます。  戦後、農協法をつくるときに、GHQは、農協の組合員資格を農民に限れと言ったわけですね。つまり、地主的な支配を排除しよう。戦前の産業組合については、地主も組合員になれたわけですね。ところが、それはけしからぬのだと。だから農民に限ったわけですね。そうすると、地主の人たちは利用できなくなるということで、アメリカが、GHQが助け船を出してつくったのが、この准組合員ということでございます。  ところが、今は、准組合員の数がどんどんどんどん上回っておりまして、何と正組合員数を上回るような、つまり、本当は利用者が組合をコントロールするというのが協同組合の大きな原則なんですけれども、利用者が、組合をコントロールできない准組合員数の方が上回っている、これが今の農協の現状でございます。  それから、次の七ページなんでございますが、実は、農外所得がふえてきているということですね。これを、農協、JAの口座に納めてくれる。したがって、農業は衰退してきているんですけれども、農家、特に米農業について兼業農家が進んでいる、その兼業農家の人たちはその所得を農協の口座に預けてくれる、したがって農協が日本第二位のメガバンクになっている、こういう状況が生まれているということでございます。  八ページ、下のところですが、農協というのは、実は、日本でも極めて特殊な性格を持った法人だということでございます。銀行につきましては、ほかの業務を兼業することができないわけですね。ところが、農協の場合には、銀行だけじゃなくて、生保も損保も、ありとあらゆることをできる協同組合になっているということでございます。  したがって、米価を高く維持したので兼業農家が滞留してくれた、その兼業農家が兼業所得をJAバンクに預けてくれてJAバンクが発展した、こういう構図になってきたということでございます。  九ページなんですけれども、これはよく言われる指摘なんですけれども日本は規模が小さいので競争できないんだという御指摘があります。ただし、規模は重要なんですけれども、確かに、これを見ると、オーストラリア、アメリカに比べて小さいわけです。だけれども、もし規模だけが重要なら、アメリカは、オーストラリアの十八分の一しかないので競争できないということになってしまいます。何かこの議論はおかしいということですね。  つまり、同じ土地でも土地の生産性が全然違うということなんです。オーストラリアの農地はほとんど牧草地です。つまり、穀物を生産できないような土地がオーストラリアの農地のほとんどだということでございます。そういうふうな農地をアメリカの農地あるいは日本の水田と比べるというのは、比較の対象がおかしいということでございます。  重要なのは品質の違いでございます。競争力といった場合に、品質が重要だということです。香港での米の評価は、同じコシヒカリでも、これだけの品質の違いがあるということです。日本の米は世界一おいしいということですね。  十一ページを開いていただきたいんですけれども、実は、今の議論は、百年前も同じような議論を農業界がやってきたわけですね、規模が小さいから競争できないんだと。当時、農商務省という役所に入った柳田国男という人物がいます。彼が言っているのは、まさに同じことだ。  つまり、規模が小さいからアメリカと競争できない、だから関税が必要だというわけですね。だけれども、これに対して、関税の保護のほか何も対策はないのか、そういうふうに考えるのは誤りだというわけですね。じゃ、何が必要なのか、それは生産性の向上だ、そのときにわずか〇・三ヘクタール、〇・四ヘクタールの細農ではアメリカと競争することができないだろう、何が重要なんだ、規模を拡大して、農事の改良、生産性の向上を図るべきだ、これが柳田国男の主張でございます。  次に、今後の状況なんですけれども、先ほど人口減少の話がありました。これまで、二十年前の米生産から比べると、今の米生産は、一千二百万トンが八百万トンに縮小してきているわけですね。将来どうなるのか。高齢化が進む、人口減少が進む、ますます国内のマーケットが小さくなってくるわけですね。だから、相手国の関税を撤廃して相手国に輸出する、こうしたTPPなどの自由貿易の交渉が必要になってくる。これは、日本農業が生き残るためにもこういうことが必要だということでございます。  TPP交渉の行方なんですけれども、これは皆さん御案内のとおりなんですけれども、多分、落ちとしては、米だけ守ると。私はガット・ウルグアイ・ラウンド交渉を経験したわけですけれども、そのときの結論からいっても、やはり米以外の品目は関税を撤廃して、米だけは関税を維持する。ただし、その場合には代償を払わなければならない。代償は何かということでございます。新たにTPP枠という無税の枠をつくる、こういうふうなことで決着するんじゃないかなというふうに思っております。  ただし、それが日本の米産業にとっていいのかということでございます。無税の枠をつくるということは、ますます米の生産を縮小せざるを得ない、そういうふうなことになりかねないということでございます。  次に、農政の大きな流れなんですけれども、三つあります。  一つは、米価政策ですね。今は、食管制度がなくなっていますけれども、減反をすることによって供給を減らして、米価を高くして農家の所得を確保しよう、こういうふうな政策をずっと続けているということでございます。  それから農協制度、それからもう一つは農地制度でございます。  今の農地法のエッセンスは何かというと、戦後、農地解放をやりました。つまり、小作人に所有権を与えたわけですね。つまり、耕作者イコール所有者だ、これが農地法の大原則なわけですね。株式会社の場合には、所有者は株主になってしまう、耕作者は従業員になってしまう、この等号関係が成立しない、したがって株式会社は農地制度上認められない、こういうふうな整理になっているということでございます。  十五ページなんですけれども、アメリカとEUは、直接支払いという制度に、政府からの支払いによって農業を保護するんだ、こういう制度に、既に何十年前から移っております。ところが、相変わらず日本だけは、高い価格、高い関税で農業を守る、こういう政策をとってきているということですね。  次の十六ページなんですけれども、これは小麦の例です。消費量のうち、国内生産は一四%しかありません。外麦は八六%ぐらいあります。つまり、国内生産の、国内麦の高い価格を維持するために、外麦についても高い関税を張って、消費者に多大の負担をさせているということでございます。つまり、日本の農政の特徴というのは、消費者負担型農政、つまり、逆進的な行政だ、逆進性の塊が日本の農政だというふうに言えるんだと思います。  その典型が、十七ページの米農政でございます。  今は若干制度変更がありますけれども、減反の補助金と戸別所得補償制度、トータルとして、減反に関連する補助金としては五千億円。補助金を、財政負担をするならば、消費者に安い価格で供給するというのが普通の政策だと思いますけれども、この場合には、高い財政負担をして、農家に米を減産させて、米価を上げて、消費者負担を高める、こういうふうな政策を四十年間続けているということでございます。  その結果、どうなったかというと、米価が高いので、コストの高い零細な兼業農家の人が滞留してしまって、主業農家の人たちに農地は集まらない、したがってコストが下がらない、こういう構図になってきたということでございます。  その例が、ちょっとめくっていただきまして、二十ページでございます。規模が大きくなるにつれてコストは下がります。したがって、所得は上がります。こういう構図になるということでございます。  今、都府県の農村は、大体、左の一ヘクタール以下のところで生産しているということですね。つまり、ほとんどの農家は、農業所得はゼロかマイナスだということなんです。ところが、二十ヘクタール以上になると、所得が一千四百万円を超えます。つまり、秋田県の大潟村の農家は、大体、平均規模が二十ヘクタールですから、みんな一千四百五十万円ぐらいの所得を稼いでいます。したがって、親が所得がいいものですから、東京の大学に行っても、みんな大潟村に帰ります。大潟村の農家は全て後継者を持っているということです。つまり、農業収益を上げれば後継者は育つんです。農業収益が悪いから、今いる人たちが一生懸命頑張って農業を継続せざるを得ない、したがって高齢化が進む、こういう状況になっているということでございます。  それから、二十一ページでございます。  財務省の出身の方もいらっしゃるので、余り財務省の悪口を言いたくないんですけれども、減反をやってきたわけですね。したがって、十アール当たり幾らという減反の補助金を出してきたわけです。  単位面積当たりの収量が上がれば、これは生産性が向上するということですから、コストは下がるわけです。ところが、収量を上げると、必要な米の生産面積がどんどんどんどん縮小していくということになるんです。つまり、減反面積を拡大するということになります。そうすると、十アール当たり幾らという減反の補助金を出しているので、減反の補助金総額が上がってしまう。  したがって、財務省は農林省の技術系の人を呼びつけて何と言ったかというと、間違っても収量の上がるような品種改良はするなと言ったわけです。収量を下げるような品種改良をやれと。農林省は真面目ですから、お金を持っているところに言われると、もう言うことを聞かざるを得ないものですから、一生懸命やったわけですね。  その結果がこのグラフでございます。一九七〇年ぐらいまでは、カリフォルニアの米の収量と日本の米の収量はほとんど変わらなかったわけですね。今は、何と、空から飛行機で種をまいているカリフォルニアの米の収量の方が日本の米の収量よりも四割も高い、こういう状況になっているということでございます。  何をやればいいのかということでございます。それは二十二ページでございます。  減反をやめれば、米価は下がります。そうすると、零細な兼業農家の人たちが農地を出してきます。それに対して、主業農家と言われる、農家らしい農家の人たちに所得を補償するための直接支払いを払えば、主業農家の人たちの地代負担能力が上がりまして、農地は兼業農家から主業農家の方に移って、コストが下がります。コストが下がると収益が上がるということですから、主業農家の人たちが兼業農家の人たちに払う地代も上がっていくということでございます。  つまり、税の転嫁の問題と同じで、誰に税を課すかということと、誰がそれを負担するのかということは、別の問題なんですね。補助金を誰に交付するかということと、誰にそのメリットが及ぶかということは、全く別の問題だということでございます。  EUは、直接支払い制度を一九九三年から導入しました。OECDの分析があるんですけれども、耕作者に払っているんですけれども、その効果はどこに帰属したのか。九〇%が農地を出してきた人、それに帰属しているというのがOECDの分析結果でございます。  二十三ページを見ていただくと、日本と中国、カリフォルニアでも同じなんですけれども、米価は接近しています。一番上が、赤いグラフが日本の国内の米価の推移です。下が、中国から日本がミニマムアクセスとして輸入している米の値段の推移です。真ん中の黄緑のグラフは、日本が中国から輸入しているものを日本の市場で売ったときの値段ですね。  上の二つのグラフの差は、品質格差をあらわしています。大体二割から三割ぐらいの品質格差があるということです。だから、実際に品質格差を除外した内外価格差は、黄緑の線と青の線の差なんですね。これは今では三〇%を切っているという状況になっています。  つまり、減反をやめて価格を下げれば、実は関税はゼロでもやっていける、こういう水準まで国際的な価格は来ているということでございます。  さらに、今の価格でも、価格のトレンドで流していくと、十年かけて関税をゼロにする、そういう場合でも、ほとんどというか、全く影響ないという状況になっているのが二十四ページでございます。  二十五ページは、簡単に言いますと、米については減反の廃止と直接支払いで十分やっていけるという話と、畜産についても、実は、トウモロコシを無税で輸入しているんですけれども、それに、でん粉用のトウモロコシに転用を禁止するために特別な処理をさせています。それが、トウモロコシコストの二割増しになっているということですね。もしTPPで全ての関税が撤廃されれば、その横流れ防止策も必要なくなるということです。とすると、畜産物についても相当なコストダウンが図られるということでございます。  アベノミクスなんですけれども、確かに、価格に生産量を掛けてコストを引いた、これが所得なので、アベノミクスもP掛けるQマイナスCをやれば所得は上がるんですけれども、残念なことに、これは全て今までやった政策のリメークだということでございます。  特に、中間保有機構ということで農地を集積しようとしているんですけれども、米価を、減反政策を維持した上では農地が出てこないわけですから、こうした政策はやっても効果はない。農地が出てこないものを、どうやって集約して貸し付けるんだということになります。  それで、時間がないので、二十七ページを御説明したいと思います。  減反の見直しの問題なんですけれども、減反を廃止するという報道がなされていましたけれども、安倍総理が発言を修正されたように、この報道は間違っていたわけですね。何をやるかというと、戸別所得補償はやめますけれども、これまでやってきた減反の補助金を、餌用の米あるいは米粉用の米をつくるために出した補助金を大変な増額をする、こういうのが減反の見直しの内容でございます。  そうすると何が起こるかというと、大変膨大な財政負担が必要になります。それと同時に、国内の米、餌用の生産、米粉用の生産をふやすということは、アメリカからの小麦の輸入を抑制する、あるいはアメリカからのトウモロコシの輸入を抑制するということになります。そうすると、アメリカはこれをWTOに提訴すれば、アメリカは自動車に対して報復的な関税を課すことができる。そういうふうな関係にもなるということでございます。  時間が来まして、農地制度、農協制度を申し上げることはできなかったんですけれども最後に、三十一ページを見ていただきたいんです。  国内のマーケットが高齢化と人口減少時代で縮小する。その中で日本農業を維持、振興しようとすれば、海外に打っていかざるを得ないわけですね。そのときに、従来どおり高い関税で、高い価格で日本の農業を守って輸出ができないようにするのか、あるいは、直接支払いをやって海外のマーケットに打って出るのか、これが今回のTPP問題で問われているところだというふうに思います。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  10. 二階俊博

    ○二階委員長 ありがとうございました。     —————————————
  11. 二階俊博

    ○二階委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。
  12. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 自由民主党の薗浦健太郎でございます。  質疑を行わせていただきます。  その前に、四氏の公述人の皆様におかれましては、大変お忙しい中お越しをいただきまして、また、それぞれのお立場で大変貴重な御意見をお伺いできたことに、まずは心から感謝を申し上げたいと思います。  その上で、幾つか、お話をお伺いしていてこれを聞きたいなということを、ちょっと質疑をさせていただきたいと思います。  まずは、増田公述人にお伺いをいたします。  いわゆるアベノミクス、我々が行っておる経済政策でございますけれども、今はもちろん野村総研、東京大学というところで御研究をなさっておられるんでしょうけれども、知事という立場もございました。総理が常々、これから全国津々浦々にこの効果を波及しなければならないということをおっしゃっておられるんですが、この全国津々浦々に波及させるためにこれから何が必要なのかということを、御経験の立場から、まずはお伺いをできればと思います。よろしくお願いします。
  13. 増田寛也

    増田公述人 ありがとうございます。お答え申し上げます。  今、地域の数値を見ておりますと、全地域消費などが拡大をしてきている。したがいまして、この一年間のアベノミクスの効果がこれから地方の方にちょうど及んでいくかどうか。少しずつそれが浸透することは期待をしておりますが、中小がほとんどであります、中小が九九%の中で、これからどうやってそこを活性化させていくか。  実は、私は、マーケットも人口減少で大変縮小していきますので、今までと同じことであれば、いずれの中小も大変厳しいと。個別に、先ほど議論がありました農業ですとか、それから観光などといった、地域によって非常にこれからも期待できるものもあると思いますが、やはり地域にある知的な資源、それは大学であり、例えば県の試験研究機関等のようなものでございます、そうしたところで、地域の産業界と一体となって、他にない、いかに特徴のあるものを生み出すことができるのか。  よくイノベーションということが言われます。イノベーションというのは、本当に国全体として他国とかち得るだけの革新的なものを出すということなんだと思いますが、私は、地域でもこうしたイノベーションのようなものを、やはり地域地域の、必ずある大学ですとか試験研究機関などを通じて、よく地域の産業界の特色を生かしたものを出す。  それを全体としてどこまで応援できるのか。国としても、そういうことにできるだけ目配りをし、あと、知的財産権などでの保護をきちんとしていくといったような仕組みをつくっていくことが、これから必要ではないかというふうに思います。
  14. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。  それぞれの特色、特にイノベーションという言葉がありましたけれども、やはりそこを生み出すというのが我が国の強みにもつながりますし、それがそれぞれの地域であればもっといいなと思うんですが、先ほどおっしゃった、輸出が振るわないという話がございました。今の円安要因の中でもなかなか振るわない。  これはもちろんイノベーションも関係あると思うんですけれども、その要因をどう分析されているかということと、それから、これはもちろんふえた方がいい話だとは思うんですけれども、何をすればこれから輸出がふえていくのかということを、次にお伺いできればと思います。
  15. 増田寛也

    増田公述人 この輸出は、特に地域の方からも、私も大変痛感したわけでありますが、生産拠点をせっかく工場誘致しても海外の方に出ていくということがありました。さまざまな要因がありましたが、労働力の単価の問題等ございました。  これから、我が国がこれだけの円安環境の中で輸出をふやしていくことをしていくためには、やはり、今、産業のそれぞれの業態の中でも、いわゆる勝ち組と負け組に分かれているような感じがします。輸送、そして一般自動車、こういったものについては高い輸出競争力をまだ持っておりますし、それから電気、このあたりは大変厳しい。その持っている商品、製品、これがどれだけのものなのか、世界的に太刀打ちできるか、やはり根本はそこのところになるのではないかというふうに思います。  もちろん、自動車も、これからさまざまな、燃料電池ですとかハイブリッドですとか、どんどん形態を変えておりますが、やはり、そういった一つ一つのお持ちになっている商品をどれだけ競争力のあるものにしていくかとなれば、国内でそうした製品を企画開発する部門に我が国として最大限の英知を注ぎ込むということが、基本的に輸出を、環境をよくしていくことにつながるんだろうというふうに思っております。  そのほか、エネルギーの問題、さまざま要因はあると思いますが、私は、一言委員の御質問にお答えするとすれば、やはり、日本の原点に立ち返って、そうした今まで我が国が立国の中で非常に高い製品をつくり出してきた、そこの原点にもう一度立ち返るべきではないかというふうに考えております。
  16. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。  非常に含蓄のある御示唆をいただいたと思います。  もう一点、先ほど、一五年に二%を達成するためにはいろいろなことをしなければというお話をいただきました。  そのいろいろなことの中身を実は知りたいと思いまして、話せばすごいいろいろな、長くなってしまう話でしょうけれども、主要なポイントを幾つか、そのいろいろなことの中身を我々に御示唆をいただけませんでしょうか。
  17. 増田寛也

    増田公述人 インフレ率、日銀、さまざまそれぞれ言っておりますけれども、やはり、こういった達成をしていくためには、要は、なかなか難しいなと思いますのは、エネルギー価格が今後、将来予測として下がっていくであろう。これが、今までは、エネルギー価格の上昇が耐久消費財ですとかそれから食料にすぐきいてきますので、そのあたりでプラスの方に働いてきた。確実にインフレ率が当初の予想を超えるペースで上昇してきたと思うんですね。  実は、こういった将来の、エネルギーが今まで一番きいていたんですが、そういったことが今後なかなか期待できないとなると、私も、需給ギャップ、失業率を見ておりますと、我々の野村グループで予想しております予想ですと、一五年末に大体三・五%まで失業率が低下をすれば、今三・七ぐらいだと思いますけれども、三・五%まで低下すれば、コアコアのCPI上昇率が前年比でプラス一・〇%まで上昇する可能性があるというふうになっております。  したがって、実は非常に多様なことということで、これ一つということではないんですが、やはり、そうしたインフレ率の鈍化に対してしっかりとした、雇用政策ですとか、それは賃金も含めて、きちんとした、上昇をどこまで及ぼすことができるのか。とすれば、パートですとか非製造業の部分で顕著化しておりますけれども、そういうところの構造にもやはり手をつけざるを得ないということでありますので、実は、雇用形態ですとかそういったことも含めて総合的な対策ということで先ほど申し上げたつもりでございます。
  18. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。  雇用政策が非常に大事だというお話をいただきました。  そこで、神津公述人にお伺いをしたいと思うんですが、連合の事務局長さんという立場と、それから、基幹労連御出身だったと記憶をしておりますけれども、鉄鋼というような非常に景気の動向に左右されるところの御出身ということで、非常に敏感なお立場でいらっしゃると思います。  きょう、実は神津さんに質問できるときのうわかった段階で、これを最初にどうしても聞きたかったというのがありまして、お立場はあるでしょうけれども、ずばり、アベノミクスをどう評価されますかということをまずお伺いしたいと思います。
  19. 神津里季生

    神津公述人 ありがとうございます。  踏み込んで、私の出身元とのかかわりなども含めて御質問いただきましたので、私もそこにはきちっと答えながらというふうに思っています。  私ども、そういう意味では、産業構造が変化をしているとはいえ、稼ぎ頭としての製造業において、やはり一般的に為替の水準というのは非常に、このままで本当に日本は大丈夫なのか、こういう問題意識を長いこと持っておりましたから、これはいろいろ合わせわざがあってのことだというふうに私はあえて申し上げますけれども、為替水準が是正をされたということは、これは歓迎すべきことだというふうに思っております。  合わせわざというのは、そういう意味でいいますと、これは、安倍総理が野党の時代の最後のところでかなり思い切った発言をすることができたという、今のお立場であればなかなかおっしゃることができないようなこともあっただろうということなり、それと、前政権、野田政権のときに社会保障と税の一体改革ということで、日本も、ずっと消費税についてほったらかしにしてきたけれども、やはりやろうと思えばやることはできるんだなという意味で、国債の信認ということについて最低限の歯どめをかけたということがあってだということはあえて申し上げておきたいと思いますが、ただ、そういう合わせわざのもとに為替が是正されたということは非常に大事なことだと思っています。  ですから、それをスタート台にして、どうやって地方に波及をさせるか、中小企業で働く方々の処遇水準を底上げできるか、そして、非正規ということ、これはやはり不安定な雇用形態に働く方々の問題、これをどう是正を図っていくかということ、そこが、その意味でも第二の矢、第三の矢がないと、せっかくこういう環境、好条件を迎えたことがふいになってしまう、こういうことではないのかなというふうに思っております。
  20. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございます。  雇用の安定と賃金の上昇というのが、先ほど増田先生とのやりとりの中でも、非常に重要だという話になりました。  その中で、先ほど、若年失業率のお話をいただきました。やはり、きちっと就職できて、働くことができて、手に職をつけられて、技術も身につけて、社会の支え手になっていくというそのサイクルは僕も非常に大事だと思っているんですね。その若年者の、いわゆる不本意非正規含めた、自分の望む働き方ができない人への対策というのは、これは政府と、政労使一体となって進めていかなきゃならないと思うんです。  その中で、ブラック企業の話も先ほどいただきました。いわゆるブラック企業、いわゆる僕らで言うところの日本の資源を食い潰すただ乗り、経済学用語で言えばフリーライダーというところなんですが、政府も去年の九月ぐらいから、ブラック企業だといって労基署にいきなり若い人が駆け込むのはなかなか難しいだろうということで、電話相談窓口をつくったり、それから監督署に監督を強化したりということをやっておるんですけれども、連合さんでもそういうことをやっていらっしゃると先ほどお話がありました。  具体的にどうやってやっていらっしゃるのかというところと、あと、これは政府がやっているとか組合がやっているという話じゃなくて、みんなでやっているんだよという形にしないと、なかなかこれは撲滅につながらないと思うんですが、それは政府と、政労使一体となって取り組める課題の一つだと思うんですが、そこの御認識ももう少しいただけますか。
  21. 神津里季生

    神津公述人 ありがとうございます。  端的に申し上げますと、私どもとして、一つは、取り組みとして労働相談ダイヤルということをやっていまして、大体一月当たり千二百件ぐらい、常時、これは全国で、地方連合会とあわせて展開をしておりますけれども、そういう労働相談を受けて、アドバイスをして、必要なところにおいては、みずから進んで刺さり込んで解決を図っている、こういった実態にあります。  まさに、これは政労使挙げて取り組むべき課題だと思います。先日の政労使会議の中でも、やはり、キャリアアップをどう図っていくのかということにおいて、経営者にそこのところを最大限求めていく、こういったことの認識合わせもあったところであります。  まさに、そういう意味では、人手なりお金の問題も含めて、ブラック企業の撲滅ということについては、政府としてもっと力を入れていただきたいなというふうに思います。  以上です。
  22. 薗浦健太郎

    ○薗浦委員 ありがとうございました。  もうちょっとやりたかったんですけれども、時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  23. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、伊佐進一君。
  24. 伊佐進一

    ○伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。  質問させていただきますが、その前に、四人の公述人の皆様には、本当に御多用の中お越しいただきまして、また、御貴重なお話をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。  まず最初に、私、質問させていただきたいのは、増田公述人に、人口減少の話がございました。人口減少と国と地方関係について少し質問させていただきたいと思います。  今お話しいただいたのは、大都市に対しての人口流入がとまらない。しかも、これは単なる人口じゃなくて、この人口というのは若年層で、先生が使われていたのは人口生産力という、子供を産む世代がどんどん入っていっている。ところが、流入していく先の大都市は非常に出生率が低いという中で、東京だと一・〇九ですので、そういうような状況の中で、結局、論文の中で増田公述人が書かれていたのは、ブラックホール化している、若い世代がどんどん都市に集まって、しかもそこで子供が産めなくなる、これが人口減少にどんどん拍車をかけているんだというようなお話だったかと思います。  では、これをどうするか、この今の状況をどうやって食いとめて、反転攻勢していくかということです。  中長期的にどういう持続可能性のある発展を目指していくかということになると思いますが、これは、今中央にある権限を地方にどんどん移譲したらいいんだという、単にそういう話でもないと思います。例えば、各地域の行政ブロックの中にどういう経済社会活動の拠点になるようなものを具体的につくっていくのかということが大事じゃないかと思います。  そこで、私、注目してきょう質問させていただきたいのは、地方部局のあり方です。  最近の流れの中で一つ大きな話がありまして、PMDA—WESTという話がありました。これは何かといいますと、医薬品とかあるいは医療機器とか、そういうものの審査をする機関、PMDA、これは東京にありますが、これを関西にも持ってこようということで、PMDA—WESTというものを昨年の十月にオープンいたしました。関西というのは医療機器とかあるいは医薬品産業の集積地ですので、そういう場所でしっかりと審査あるいは相談できるようなものをつくっていこうということで、PMDA—WESTをつくった。  私はかねてから実はずっと申し上げていることがありまして、それは何かといいますと、関西特許庁というものなんです。つまり、特許の申請あるいは相談をするときに、わざわざ東京に行くんじゃなくて、それぞれの地域の行政ブロックでできないかな、知財戦略の一環にもなるんじゃないかな、そう思っております。  これを特許庁の方々に相談すると何と言われるかといいますと、いや、今はもう全部ITなんです、電子申請で全部できるんですと言われます。あるいは、この審査のプロセスの中で面接というのがあるんです。この面接も、今やもうテレビ面接できるんですよと特許庁の方は言われる。  でも、実際、地元を回って中小企業の物づくりの皆さんに話を聞くと何と言われるかというと、いや、そんなの全然だめです、やはり会って、例えば、部品を持っていって、審査官の前で、ここのところを実はもうちょっと削らないといけないんですよとか、あるいは、ここのこのカーブがこういう機能があるんですよ、こういうのを目の前で話をして、顔を見て話をすることによって、やっと物事が前に進むんだというのが中小企業の皆さんの声だと私は思っております。結局は、そういう意味で、中小企業の皆さんも、わざわざ一極集中している東京に足を運んで、そこで特許庁に相談するというのが今の現状です。  ちなみに、海外はどうなっているかといいますと、例えばアメリカの場合、特許商標庁というのがあります。本部はワシントンDCの郊外にあるんですが、例えば支部はダラスにあったりとか、あるいはシリコンバレーにあったりとか、いろいろなところにある。欧州も一緒で、欧州特許庁というのはミュンヘンにあるんですが、ところが、支社がハーグにあったりとかウィーンにあったりとか、さまざまなところに、ベルリンにもあります。中国も、北京に本部があるんですが、広州とかあるいは蘇州とかにある。  そこで、私の質問は、こういう地方部局のあり方について、今、行革の流れの中で、行革というと、とにかく地方部局を全部潰していけば、なくしていけば行革なんだというような発想で物事が進みかねないような状況にあると思います。やはりこういう地方部局については、しっかりと戦略的に、どういうところを残して、どういうところをつくって、あるいは拡大させていくのかという議論が必要だと思いますが、この地方部局の考え方について、増田公述人に質問したいと思います。
  25. 増田寛也

    増田公述人 お答えを申し上げます。  人口減少全体の問題は、出生率低下の問題、これは地方でもいろいろ努力できる。しかし、もう一つ大きな我が国の特徴は、東京に全部集まってしまうという、こちらの問題で、これは世界的にも例がなく、日本特有の問題で、地方で幾らやっても限界があって、地方も努力するんですが、やはり大きな国策として、そういうことをどう考えるかという問題だと思います。  その大きな枠組みの中で、今お話がございました地方支分部局のあり方も考える項目の一つであろうとお話を聞いておりました。  さらに言いますと、それぞれの地域でいろいろなことを完結してやれるような仕組みづくりをしていくということが、恐らく地域の雇用にもつながると思います。  確かに、特許などは、ITを使って中枢でいろいろな審査自体はできるかもしれませんが、正式な審査の過程と同時に、今お話ございましたような、実際にはその間にさまざまなやりとりが行われることが多いであろう。そうしたやりとりを通じて、その地域地域のいわば知的リソースがどんどん拡大していくような効果などもやはり期待できると思います。  私は、どういう手続が中央で、どういう手続を地方に残すかというのは、個別に見ないとわからないので今この場でなかなか即答はできかねますが、やはり全体として、地域でさまざまな審査体制をしたり、さまざまな手続を行うのがふさわしいものは、きちんとやはり地域に置いてそうしたものを行うということが、表面的な審査の過程のみならず、全体としての地域循環経済をつくっていく上で資するのではないかというふうに思います。  ありがとうございます。
  26. 伊佐進一

    ○伊佐委員 非常に有益な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。  もう一つ、ちょっと全く角度を変えまして、国と地方関係で、あるいは大都市と周辺地域地方との関係一つ大きなテーマになりますのが、原発のごみの話、高レベル放射性廃棄物、この処分地をどうしていくかという話なんです。  日本は、これまで長い間手挙げ方式で、地方のどなたか引き取ってくれますか、ところが、住民投票をすると全部ひっくり返るというような状況になっていました。今我々が進めようとしているのは、国が一歩前に進みまして、そこで客観的に、科学的な見地から候補地を探していく、その上で、地方の皆さん、自治体の皆さん、あるいは周辺住民の皆さんと議論を進めていこうというようなやり方を進めていこう。  当然、ごみの問題、もう世界じゅうが悩んでいますので、人類史的な課題だと言われています。フィンランドのオンカロというのが有名になりましたけれども、あれも結局原発二基分しかごみが捨てられませんので。脱原発ということでドイツもかじを切りましたけれども、ドイツでも二〇二二年までに原発ゼロにすると言っておりますが、結局、彼らも悩んでいるのは、高レベル放射性廃棄物、これをどうするか。  私、ドイツに昨年行ってきたときに、もともとゴアレーベンという場所に捨てようと決めていた、この方向で話が進んでいた。ところが、やはり最後、決め切れなくて、昨年の四月、全部ひっくり返して、白紙撤回しました。  では、今、ドイツは何をしようとしているかというと、国だけじゃなくて、地方自治体も全部入れて、予断なく、ゼロベースでもう一回議論し始めましょうと。すばらしいのは、そこに科学者も入れて、実は、さらに広く、例えば哲学者を入れて、宗教者も入れて、芸術家も入れて、国民各層からいろいろな参加を得てここで議論していきましょう、そういう取り組みを行っている。二十年かけて結論を出そうというようなことを行っているそうです。  では、翻って、日本はどうするかということですが、国が一歩前に出ますということで進めようとしています。でも、最終的には、当然、受け入れてくださる自治体とか、あるいは周辺自治体とか、周辺住民の皆さん、意見調整しなきゃいけない、御理解を得なきゃいけないというような状況で、たとえ受け入れてくださるところがあったとしても、恐らく周辺地域の反発というのは相当あるでしょう。そうなったときに、その自治体と周りの自治体との調整をどうするかとなると、当然、広域行政自治体といいますか、今でいえば都道府県が大事な役割を担っていくということになると思います。  そこで、お伺いしたいのは、原発の高レベル放射性廃棄物もそうですが、こうした課題について、国と地方がどういうような役割分担、どういうような連携をして進めていくべきかという御所見をお伺いしたいと思います。
  27. 増田寛也

    増田公述人 お答え申し上げます。  私も、今、経産省の高レベル放射性廃棄物処分問題のワーキンググループの委員長をやっております。  その中での議論も大分積み重ねてきておりますけれども、私、きょうの公述人立場で考えを申し上げますと、やはりこういった高レベル放射性廃棄物の問題というのは、いわゆる行政学上も、NIMBY問題、ノット・イン・マイ・バック・ヤード、うちの裏庭にだけは置いてほしくないんですが国全体としては必要な問題という、大変難しい問題で、この問題の解決の鍵は、やはり当事者間できちんとした信頼感あるいは安心感といったものが醸成されること、それが必要だ。したがって、各国とも、長い年月をかけて、そうした信頼感がお互いにでき上がることを醸成するような仕組みをつくってきているというふうに思います。  個々に選定のプロセスを変えることも必要だと思いますが、やはりそういう大きな信頼感をつくる枠組みとして、これはフィンランドも決めましたが、あとスウェーデンも場所を決めております。スウェーデンを調査しましたところ、それぞれの地域にLKOという、知的向上委員会と訳すようですが、関係者みんなが入って、長く議論できるような場づくりをきちんと原発ごとにしている。  あるいは、フランスも間もなく、ビュールというところが候補地に挙がっているようですが、いろいろ選定が大詰めに来ていると言っていますが、CLISと呼んでいる、そういう地域での議論ができる、関係者みんなが入った場がありまして、そこに国も自治体も、関係者、事業者はもちろんですが、入って、原子力発電の問題を当初から忌憚なくいろいろ議論していく、そういう積み重ねが長くあるようでございます。  したがって、今までは、とかく事業者と自治体が話し合う場はございましたが、まだまだそういった場への関係者の参加が十分でなかったのではないかというふうにも思っておりますので、こうした、今委員がお話ありましたような国と自治体、それから多くの関係者、県と市町村もまた立場が違いますし、それから事業者、そしてさまざまな地域の団体がございますが、そういった人たちがこの問題を議論できるような場づくりをどう設定していくのかというのが、これから大変大事なポイントになるのではないかというふうに思っております。
  28. 伊佐進一

    ○伊佐委員 ありがとうございました。  もう一つ伺いたいことは、実は、社会保障のあり方、ちょっと時間が恐らくないでしょう、言いっ放しで終わらせていただきたいと思います。  社会保障のあり方として、これから、今、地域包括ケアシステムというものをどうやって進めていくかという議論を行っているわけですが、その中で、当然、その意味というのは、地域地域の特色に合わせて、あるいはニーズに合わせて、どういったそれぞれに合ったモデルをつくっていけるかというのが大きな議論になっているわけですが、その中で、どうしても避けて通ることのできない、議論が必要だと思うことが、診療報酬のあり方だと思います。  今、診療報酬というのは全国一律で決められてしまっております。ところが実際は、当然、都市部もあれば、過疎地もあれば、山間部もあれば、それぞれによっていろいろな医療の状況が違う、あるいは、どういう病気になっていくか、疾病の状況も違うという中で、増田公述人もどこかで診療報酬について少し触れられていたことがあったんじゃないかと思いますが、地方都市という関係性を考えるときに、こうした社会保障の分野においてもまたさまざまな形を変えていくことが必要なんじゃないか、診療報酬のウエートについても考え直していく必要があるんじゃないかなということを、増田公述人もおっしゃっておりましたので、一言述べさせていただきます。  本当は、もう一つ、実質賃金について神津公述人にお伺いしたかったところなんですが、今、政労使の会議もやっていただきまして、実質賃金について、しっかり政府・与党としても、これを上げていくんだという決意だけ申し述べさせていただきまして、私の質問とさせていただきます。  ありがとうございました。
  29. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、篠原孝君。
  30. 篠原孝

    ○篠原委員 増田さんと神津さんと藤田さんの今の日本経済についての考え方は、大体似ていたんじゃないかと思います。円安になったけれども輸出はそれほどふえない、設備投資もふえないと。  増田さんに質問が集中しているようですので、逆の方からで、藤田さんの方にちょっとお伺いしたいんです。  わかるんですね、非常にきちんとまとめていただいて、我々の認識と大体一致しているんじゃないかと思います。新しい産業について、賃金が低いんだ、これが問題だ、日本経済成長というのは消費、内需型なんだ、だから、そっちの方をきちんとしなきゃだめじゃないかと。  新しい産業のところ、観光だとか福祉だとかは賃金が低い。これは全体もそうなんですが、今の政権は賃金を上げてほしいということを盛んに経団連や何かに言っている。では、こういう新しい産業の方の労働条件の向上が必要というのは、結局は賃金を上げろということですけれども、どんなふうにやって、こういうところは上げるようにしていったらいいんでしょうか。そこのところがちょっとよくわからないんですが、藤田さんはどのようにお考えでしょうか。
  31. 藤田実

    藤田公述人 御質問ありがとうございました。  なかなか難しい質問でして、これは、結局、計画経済という体制をとっておるわけじゃない中で、どう上げていくかというのは非常に難しいと思うんですけれども、例えば福祉職ならば、それぞれの介護報酬手当をどうするのかという、そういった政府の政策的な環境整備の問題がかなり大きな役割を果たしていくだろうというふうには思っております。  あとは、もう一つ、僕は、基本的に日本の労働組合の闘い方の問題だったんじゃないか。つまり、サービス経済化がどんどん進んでいく中で、日本の労働組合の組織率が、例えば製造業の部門は高いけれども、サービス経済化がどんどん進んでいくことによって組織率がどんどん低くなってきた。まさに観光とか福祉の分野だと、なかなか組織率は多くなっていないということがあると思うんですよ。  だから、そういう意味で、そういう分野できちんとした形で、特に、民間ですから、観光なんかの場合は労働組合の組織率を高めていく、そういう方向が必要だろうし、それから、僕は、最低賃金の問題も大きいんだろう、最低賃金をきちんと上げていくということが必要なんじゃないか。  最低賃金を上げると雇用が減るんだという議論が、結構、経済学の分野でもなされているけれども、実態的に見ると、一律の方向ではないような気がするんですね。僕が調べた限りでは、時期にもよるだろう。もちろん、経済環境が悪いときに上げればかなり問題は大きいけれども経済環境がよくなってきたときに上げていくということをやればそれほど影響はないと言うこともできるのかなと思うし、最低賃金を上げるために、例えば、観光等も含めて中小企業が多いわけだから、そこへの補助をどうするかというような制度設計も、僕は必要なんじゃないかと。  そういう形で、段階的に賃金を上げていくような方向をとるべきだろうというふうには考えております。  以上です。
  32. 篠原孝

    ○篠原委員 神津さんにお伺いいたします。  海外移転という、工場がみんな海外に行ってしまうというのが日本の問題です、空洞化というもの。  そのときに、賃金が安いというのはあるんでしょうけれども、私は、ほかの分野でもそうなんですが、地産地消というか、そこでできたものをそこで食べる、食べ物の世界でそういうのがあるんですけれども、食べ物だけじゃなくて、何でも最終消費地の一番近くで最終製品をつくるのが一番いいので、それは必然だと思うんですけれども、もう一つ大事なものがあって、非常にこれは問題だと思うんですけれども日本人の労働者としての質が低下しているんじゃないか。  例えば、昔は、田舎で、きちんとしたところで育って、非常に真面目でという人たちが多くて、例えば、建設労働者の話がちょっと出ましたけれども、技術者が少なくなっているということで増田さんの方からもありましたけれども、マンフォードという文明史家ですけれども日本の戦後の復興、こういうビルを建てたのは誰だ、別にそれは設計した人じゃなくて、誰が一体つくったのかと。日本の出稼ぎ労働者だと、びっくら仰天しているわけですね。  そういう点では、日本は、底辺というか、最末端の人の質がよかった、しかし、どうもそうじゃなくなっている、これも一つの要素のような気がするんですが、余り議論されていないことですけれども、その点については、労働組合の方等では議論はされておられますでしょうか。
  33. 神津里季生

    神津公述人 ありがとうございます。  ある意味で、篠原先生御指摘の視点、私どもも同様の議論をしております。私自身も、このままでいくと、やはり全体として雇用の質が劣化をして、取り返しのつかないことになるのではないのかなという懸念を持っています。  海外展開との関係で申し上げれば、経営者立場として、海外で需要があって、日本の優秀な製品を求められる、あるいは、さらに言えば、海外に立地を求められるということに対して、これに応えていくということは、一つの流れとしては、それは私どもとしても避けることができるものではないと思います。むしろ、日本製造業の優秀さが認められているという一端ではあろうと思います。  ただ、国内の方がなおざりになってしまうと、結果的に、気がつけば国内の事業所が閉鎖をされて、意図したことではないかもしれないけれども、海外への移転が進んでしまう、こういうことになってしまうんだと思います。  ですから、問題は、やはり、質の高い雇用をどうやって維持するか、あるいはさらに高めていくかということだと思います。  先ほどるる申し述べさせていただいたのはそういう問題意識にも基づいておるものでありまして、分断された雇用といいますか、有期雇用、半年ごとの有期をずっと何年も繰り返すみたいな働き方が当たり前のようになってしまっておる。こういう中で、本来、日本人の働き方というのは、自分の力を高めていきたい、そして、そのことによって企業、職場も発展をする、自分が打ち込んでいる職場が発展をする、そのことによって産業も発展をする、そういう好循環を前提にしていた働き方だったと思うんですが、そのことを、むしろみずから自分で自分の首を絞めるようなことをこの二十年近く進めてきてしまったのではないのかな。  これをどうやって反転させるかということにこそ、まさに政策を投入すべきだ、こういうふうに思っております。
  34. 篠原孝

    ○篠原委員 労働力の観点からやるといつも議論になるのは、外国人労働力の問題になってくるんですね。地方の方が出生率が高くて、沖縄なり鹿児島の島の地域が高い。地方に子育てを押しつけておいて、それで、その若い人たちをみんな東京に集めてという特殊な状況になっているんですけれども外国人労働力問題について、増田公述人はどのようにお考えでしょうか。
  35. 増田寛也

    増田公述人 お答えを申し上げます。  地方の、今一番手っ取り早いというか、若い人たちが一番働きやすい場は、ニーズのある医療、介護現場。高校を出て、専門学校でいろいろ研修して、それでそういうところに勤めるというのが、数字的にも全国で一番そこに就職する人が多い。それ以外の産業は全部人は減ってきているという数字がございます。  ところが、この様子が、地方高齢者がやがてどんどん少なくなっていくので、そこのニーズが今度は必要なくなってくる。したがって、考えられることは、東京の方で、一方で、高齢者が極端にふえると同時に若い人が減るわけでありますので、介護の担い手が、東京を初めとして大都市で、非常に多くの者が必要になってくる。極めてここにミスマッチが生ずるということがございます。  したがって、今の外国人労働力の問題でありますが、それを、今までのように東京に全てが集まるような形になる、そうでない仕組み、医療や介護に従事していた人たちがその地域で働けるような環境づくりをすると同時に、しかし、極端に施設も、さらには担い手が足りない東京などについては、私は、十分な議論と、それから仕組みを整えた上で、例えばインドネシアですとかフィリピンなどがそういった分野で入るということについて少しずつ試みられてきましたけれども、実際のニーズですとか、それから仕組みを十分考えた上で、そういう部分に外国人労働力を使っていくというのは、やはりこれから真剣に考えていくべきではないかというふうに思っております。
  36. 篠原孝

    ○篠原委員 神津さんにお伺いしたいんですが、労働規制です。  日本は非常に労働者の保護をきちんとしておる。TPPは、関税についてだけ非常にきちんと結果があらわれて問題になっていますけれども、私は、非常に問題なのはこの分野だと思っておりました。  アメリカがそもそもP4と呼ばれるところに参加するときに何を言ったかというと、労働と環境と投資と金融を入れてくれるな、それもTPPの中に含めるんだったらアメリカも参加すると。  どういうことかというと、私が見るに、日本に投資をする、企業経営に乗り出す、ところが困ったことが起きている、従業員の首を簡単に切れない、規制だらけだ、首を切りたい、こういうのがあったんだろうと思うんです。それを今、先駆けてやっている。  ですから、TPPについては、NAFTAの悪影響もあって、アメリカでは二大団体、絶対反対しているのが、自動車工業会、これはわかるわけです。もう一つ、AFL・CIO、日本の連合に当たる組織が大反対なわけです。しかし、日本の連合はそういう姿勢を全く示していないんです。  ここはちょっと、私はずっとおかしいと思っていたんですが、この点についてはいかがでしょうか。
  37. 神津里季生

    神津公述人 ありがとうございます。  TPPについては、連合全体としての考え方なんですけれども、基本的に、政府の基本方針に対してということで、三点、要素として留意すべきだということを申し上げています。中核的労働基準の遵守条項、それから環境条項を反映するということ、それから二点目としては、安易な人の移動については制限をすべきだということ、そして三点目として、強い農業の構築でありまして、これら三点に留意することを前提に、包括的経済連携の推進ということに対して注視をしていきたい、こういう考え方です。  足元、なかなかその交渉自体も混迷をきわめているやに報道で拝見をしますけれども、やはり、あわせて私どもとして求めているのは、国民への適切な情報開示ということであります。そして、国民的な合意形成に向けた丁寧な対応を求めたいということでありまして、最終的な参加の是非というのはそういった丁寧な国民合意のもとで進めるべきだということを、全体としては、政策として考え方をまとめておるところであります。  この労働条項に関して、中核的労働基準の遵守ということ、これについては、ITUC、私どもが加盟をしております労働組合の世界組織でありますけれども、このITUCが強くこの点を主張しておりますし、基本的な交渉の中での枠組みの中には、そのことが前提として議論がされておるというふうに認識をしていますが、予断を許さず見守っていく必要があるというふうに思っています。  そしてまた、そういう意味では、間違っても、アメリカ流のワークルールというものがこのことによって日本としても当たり前だみたいな、風潮も含めて、そんなことになってはならないということは言わずもがなかなということで、私どもとしては対応していきたいというふうに考えております。  以上です。
  38. 篠原孝

    ○篠原委員 最後に、ちょっと増田さんにお願いですけれども人口問題についていろいろ書いておられる。非常に、目からうろこというような感じのところがいっぱいあるんですが、私は、基本的には、都市にみんな集まるのはよくないと思っているんです。生涯学習という言葉をつくった榛村純一さんという掛川市の市長さんは、日本の明治以降の歴史は向都離村の歴史だった、都に向かって村を離れる、これを逆にしなくてはいけない、向村離都にしなければいけない。  さっきちらっとおっしゃいましたけれども、欧米先進国は、お金をためて地方のゆったりした中核都市というか、田舎に住むのが理想になっているわけです。日本は逆なんですね。このままいったら、ますますひどくなる。江戸時代は、三千万人のうちの百万人だったんですね、東京は。それが今、一億二千七百万人のうち、一割が住んでいる。これはやはりいびつなので、この制度を絶対変えていかなくてはいけない。  これは、日本のチベットとかと言われていた岩手県知事をされた増田さんなどが声を大にして言っていただければ、直ってくるんじゃないかと思います。その点からぜひ活動を続けられることをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  きょうはどうもありがとうございました。
  39. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、重徳和彦君。
  40. 重徳和彦

    ○重徳委員 日本維新の会の重徳和彦でございます。  きょうは山下先生に、お聞きしますときのうの夜アメリカからお戻りになられたということで、本当にお疲れのところ、我が党の関係者が無理やりお連れしたということで、大変申しわけなく、また心より感謝を申し上げます、山下先生に何点か御質問させていただきたいと思います。  農業は、本当に、従事者の平均年齢が六十五歳を超えてしまいまして、もう日本の農業は限界だ、改革が必要だということを言われて久しいんですが、なかなかそれが進んでこなかったということでございます。そういうこともありまして、やはり改革が必要だ。  安倍総理も、少し勢い余ってでしょうか、減反、廃止しますというようなことを施政方針演説においても述べられたところでございますが、これは、一般国民にわかりやすく、いわゆる減反を廃止するとおっしゃったようなんですが、関係者の中には、いや、これは減反廃止じゃないとか、非常に混乱をいたしまして、それで、この予算委員会でも、一体その真意はどうなんだということを何人かの委員の皆さんが問いただしたわけでございます。  それは、国、県による生産数量目標の割り当てをいずれやめるんだとか、あるいは農地をフル活用する、そういう意味なんだ、いろいろなことが言われましたが、いずれにしてもなかなか苦しい御説明で、これを改革ではないとまでは言いませんけれども、やはり、本質的な改革ではないんじゃないかというふうに思っております。  維新の会では減反の見直しということを公約に明言しておりますが、やはり、減反の見直しという以上は、最低限こういう結果が出なければ減反の見直しに値しないということをここで明確に山下先生からおっしゃっていただきたいんですが、よろしくお願いいたします。
  41. 山下一仁

    山下公述人 どうもありがとうございました。  減反の本質とは何かということであります。  減反というのは、農家に補助金を与えて、農家に米を減産してもらって、米の生産をしないでもらって、供給量を減らして米価を高める、これが減反政策の本質なわけですね。  今回の見直しは何かというと、これまで払っていた戸別所得補償を減額して、その分を餌米の米それから米粉用の米に、米をつくったら、農家にとっては麦や大豆をつくるよりも米をつくる方がはるかに簡単なわけですから、それに補助金を増額する。この十アール当たり十万五千円という補助金額は、実は、農家が主食用として米を売って得た収入と同額なんです。つまり、農家はこれから、餌か米粉用の米をつくったら、主食用として米の値段をもらうのと同じ額を政府からもらえるということになるわけです。  そうすると何が起こるかというと、農家が餌用に、あるいは米粉用に米を売れば何がしかの収入がありますから、そうすると、米粉とか餌用の米をつくった方が有利になってしまうということになります。そうすると、主食用の米の供給が減りまして、主食用の米の値段がさらに上がってしまう。  これは実は、戦後農政のコアなんです。これは岩盤中の岩盤なんです。だから、私は、去年十月にアメリカでシンポジウムで講演したときに、これは安倍内閣は絶対できないだろうと申し上げたんです。翌日、ワシントンの空港に行ったら減反廃止というふうに書かれていたのでびっくりして、私も失業するのかなと思ったんですけれども、よかったなと思っていますけれども、実は、それはできないんです。それぐらいできる根性があれば、随分できると思います。  実は、今回の見直し、減反、四十年間できなかったことをやったと言うんですけれども、実は、二〇〇二年に自民党は、二〇〇七年に生産目標数量の配分をやめると言ったわけです。二〇〇七年に戸別所得補償はありませんから、二〇〇七年の姿に戻したというだけの話です。二〇〇七年にもう、そういう意味での減反廃止ならやっているんですね。単に見直しをしただけ、むしろ害のある見直しだったというふうに私は思っています。
  42. 重徳和彦

    ○重徳委員 ありがとうございます。  本当に、政府の農政改革、どうしても小出し小出しというような印象を全国民的に持っているんじゃないかなと思っております。  それで、先ほど先生から、時間の関係で、農地政策と農協の改革につきましてはちょっとはしょられたわけなんですが、この二点につきまして御質問をしたいと思います。  まず、農地政策についてですが、これは、いわゆる株式会社の参入ということをどこまで、どのように認めるかという議論、これも長らく続いてきましたけれども、これもやはり、いまだに、リースでないとだめだ、それから、農業関係者が議決権の四分の三以上だとか、役員の過半を占めなきゃだめだとか、いろいろな規制がありまして、誰でも参入できるという状況にはありません。  一方で、もちろん、株式会社が入ってしまうと、本当に農業を続けてくれるのかとか、あるいは、ほかの目的にこの土地を使ってしまうんじゃないかとか、そういう懸念があるからそういう規制があるということではあると思うんですが、こういうことも、逆に言えば、行為規制と言われるらしいんですけれども、必ずこの土地はこのように使ってくださいね、そういう規制をかければ、別に、どういう法人じゃなきゃだめだというような、そういう種の規制でなくてもいいんじゃないか、こういう議論も長らく続いてきているわけでございます。  また、山下先生は、ゾーニングという規制をかけるべきだという御主張をお持ちでございますが、土地所有者も、農地の所有者からしても、下手に農地を貸し出してしまいますと、何か、転用してもうかるチャンスを逃してしまうんじゃないか、こういうこともあって、なかなか、いろいろな意味で土地の集約が進まないとか、株式会社が参入しづらい状況があると思いますが、こういった点につきまして解説をお願いしたいと思います。
  43. 山下一仁

    山下公述人 株式会社の話なんですけれども、一番問題なのは、トヨタとか日産が入ってくるという話じゃなくて、普通の人がベンチャーで、友達から株式を出してもらって、それで一千万ぐらいの出資金を集めて農地を取得しようとしても、それは実はできないことになっているわけですね。  出資できる人は、スーパーとかレストランとか、そういう、その農産物の、その農業生産法人のものを使うという人じゃないと出資できないという規制が、これは四分の一ぐらいまでしか認められない。そういうことで、普通の人がベンチャーで参入するということは一切認められないという規制になっているわけです。  これは、後継者がいないいないといって、実は、農業に後継者の参入を認めていないのは、ほかならぬ農地法だということなんです。農林省が農業の後継者の新規参入を抑制している、こういうことになっています。  それから、ゾーニングなんですが、ヨーロッパはゾーニングだけであの農地を守っています。農地法というのはないわけですね。日本には、ゾーニング、農振法という法律と、農地法という二つの法律がありますけれども、残念ながら両方ともざる法なものですから、水を上から流しても全部ざあざあ流れてしまう。本当にきっちりとしたヨーロッパ並みのゾーニングが必要だというふうに思っております。
  44. 重徳和彦

    ○重徳委員 それでは次に、話を農協の方に移したいんです。  農協という組織が、今、収益の多くの部分を金融関係で稼ぎ出しているということは、いわば世の中の常識になっていると思うんですけれども、その意味で、このあり方のままでいいのか、改革が必要なんじゃないか、これは多くの国民、あるいは農協の職員の中にもそういうことをおっしゃる方は大勢いらっしゃいます。  一方で、やはり歴史のある、地域に根差してきた団体なものですから、今のJAバンクとか共済とか、あるいはAコープといったスーパーなんかも、非常に地域で愛されている、密着している、こういう信頼を得ている存在でもあると思います。  その意味で、さまざま法律上の課題があると思うんですが、そういう改革の方向性、また、今こうして地域に定着している現状からして、どのように、どこから手をつけていくべきか、こんなことも含めて御説明いただければと思います。
  45. 山下一仁

    山下公述人 農協については、基本的には、農業のための組織なのか、それとも協同組合としての原則を守っているのか。  協同組合の原則というのは、利用者が所有して利用者がコントロールする、これが原則なわけですね。ところが、実態を見ると、農家に高い農産物資材価格を押しつけるとか、あるいは融資で、言うことを聞かないなら融資をしないとか、いろいろなところで、組合員である利用者を若干阻害するようなこともやっている。  それから、協同組合というのは、利用者が所有者ですから、そんなに規模は大きくならないわけですね。ところが今は、日本の農協は第二のメガバンクだし、保険についても第一に迫るような巨大なものになっている。  やはり、こういうふうな巨大な連合会組織についてまでも独禁法の適用除外を、実は独禁法の二十二条の要件を満たさないものですから、農協法九条というのをわざわざつくって、農協を独禁法の適用除外としてみなすという規定を置いているわけですね。それは明らかにおかしいので、やはり農協法の九条というのを廃止するとか、そういうふうな、根本的な、農協と独禁法の関係を見直す必要があるというふうに思います。手をつける最初のところはそこかなというふうに思っております。
  46. 重徳和彦

    ○重徳委員 さまざま構造的な課題があるという点につきましては、今お話しいただきました。  もう一つ、二つぐらいだと思いますが、やはり今、私の地元は愛知県の西三河の方なんですけれども、農業関係者、農業の方が大勢お見えになります。政府が、これからは日本の農産物をどんどん輸出していくんだというようなこともおっしゃっているし、もちろん、そうあってほしいと私も思いますけれども、いまだに、これからは農産物を輸出しようとか、あるいは六次産業化がこれからの時代の潮流だということを話をしても、なかなかぴんとこない方が多いですね。  これは、もちろん御高齢の方が多いので、今から新しいことをやるということにはどうしても消極的になってしまう方もいらっしゃいますが、一方で、中国のよく言われる富裕層は物すごく大勢いるので、中国では、日本の質の高い農産物を、たとえ価格が高くても好んで買い求める、こういう状況だから非常にビジネスチャンスが海外にあるんだという話を力説しても、若い方々も含めて、どこからどう手をつけていいのか、また、農業を取り巻く環境がなかなか、先ほどから小出し小出しと言っているように、大幅に変わってこないことから、何か踏み切れずにいる、そういう感じがするんですね。  これから、まさにTPPのそろそろ決着がつくべき時期に来ておりますし、また、減反見直し、減反廃止ではないようなんですが、生産調整の見直しということもこれからもっともっと加速させていかなければならないと思います。  その意味で、TPPとか価格支持政策の転換ということをするのかしないのか、さらには、現実問題として、輸出をする体制、それは国内の生産現場から、そして海外に、中国なら中国の受け入れ体制などなど、いろいろとあると思うんですが、こういう輸出に向けた取り組みについて、必要な環境整備について御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  47. 山下一仁

    山下公述人 プレゼンテーションで申し上げましたように、輸出をしないと日本農業は生き残れないわけですね。  そのときに何をするのか。今まで、確かに輸出を倍増するというふうな声はあったんですけれども、何せ価格競争力がないものがマーケティングをしただけでは売れないわけですね。  日本の米は世界一おいしいんです。間違いなくおいしい。それにもし減反を廃止して直接支払いをして価格競争力をつければ、これこそ本当に鬼に金棒なわけですね。  それから、TPPの話も、実は、関税を撤廃することだけに目を奪われていますけれども、アメリカが今回のTPP交渉で何を一番重要視しているかというと、国営企業に対する規律なんです。  実は、日本のキロ三百円する米が、中国の北京、上海のスーパーマーケットでは一千三百円で売られています。この差を事実上の関税として取っているのは中国の国営企業なんです。これにアメリカは規律をかけようとしている。つまり、アメリカのTPP戦略というのは、将来、中国も入れるというふうなことを見据えて、極めて壮大なビジョンのもとにアメリカはTPP戦略をやっているということですね。これに日本としても積極的に参加していく。  それから、輸出の仕組みなんですけれども輸出の協同組合というのをつくることも可能性としてはある。今まで、実は、農林省は、協同組合を農家が実質的につくれないという規制をずっとやってきたわけです。昨年、この規制が撤廃されましたので、今後は自由に協同組合を農家がつくれるようになる。こういうふうな仕組みを積極的に活用すべきだというふうに思います。
  48. 重徳和彦

    ○重徳委員 どうもありがとうございました。  政府・与党がなかなかスピード感が出てこないものですから、私ども日本維新の会がどんどん前に引っ張っていきたいと思っております。ぜひともこれからも御助言、御指導のほど、よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  49. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、佐藤正夫君。
  50. 佐藤正夫

    佐藤(正)委員 きょうはありがとうございます。  まず最初に、今賃金のことがいろいろ言われていますけれども、安倍総理みずからが連合に行ったり、それからまた、経営者の方に、経済界の方にも賃上げを要請する、これまでなかったと思いますが、こういう安倍総理の行動に対して、労働組合の神津さん、どのように思いますか。
  51. 神津里季生

    神津公述人 総理が財界の皆さん方にいろいろな発言なり要請をされていることとのかかわりは先ほども述べたとおりなんですが、連合にはおいでになったことはございません。  二つ申し上げておきたいと思いますが、一つは、政労使会議ということが昨年の九月から十二月、持たれました。私どもは、意図が最初ちょっとつかめないこともあって、少し注文もつけさせていただいて政労使会議に加わりました。  先ほども若干触れましたけれども、十二月、最後の五回目の会議では、私どもがかねてから主張しているような、要は、一部の大企業だけが報酬をアップしたとしても全くそれは好循環にはつながらないので底上げが大事だ、中小企業に働く方々の月例賃金を上げなきゃいけない、そのことに向けての公正な契約条件、そこに向けての政府の役割もお願いをしたいというふうなことですとか、あるいは非正規労働に携わる方々の処遇のアップということ、これはキャリアアップをいかに図っていくか。そういったあたりについても、考え方として最終的な文書の取りまとめに反映がされましたので、そのことについては多とするところです。  ただ、もう一つは、基本的に、労働条件というのは労使交渉で決められるというのは、これは当たり前のことでありますから、民主主義国家である我が国において、総理を初め政権の方々が右と言えば右で、左と言えば左というような、そういう国ではない、あるいは、そういう国にはなってほしくないというふうに思っておりますので、これも冒頭申し上げたとおりですが、新聞の見出しに躍っているようなことでは、現実は全くそんな甘いものじゃありませんから、一つ一つの労使の交渉の中で、それぞれが持っている課題をしっかりと認識し合う。  ただ、私ども労働側としては、これは、本当に日本の全体を挙げて、このタイミングで月例賃金引き上げというものが、そして、非正規あるいは中小企業で働く方々を含めた底上げというものがなければ好循環にはつながらないということをその一つ一つの労使交渉の中でも展開をしていますから、それこそが私どもにとっては重要というか、自分たちの責任なんだろうというふうに思っております。
  52. 佐藤正夫

    佐藤(正)委員 まさに、本当は労使交渉でしっかりやるべきなんです。しかし、それでも安倍総理が出ていったというところは、率直に、ある意味で評価するべきところはしっかり評価をしていただきたい、このように思います。  それから、山下先生、私は福岡なんですけれども、福岡というと「あまおう」、おいしいイチゴがあるんですけれども、私は、県議会議員をやっているときに、実は、中国の方に「あまおう」を持っていったことがあるんです。  そのときに中国の方から言われたのは、佐藤さん、こんな大きくて赤くて甘いイチゴを中国に持ってきたら日本人は食べられなくなるよ、全部中国人が食べてしまうよと。それぐらいおいしいんですね。そのときに中国の方から言われたことを今思い出すと、輸出もいいけれども、ある意味では、富裕層に、こういうおいしいものがあるよ、食べたかったら日本の福岡に来なさいと、来ますよ、こういうふうに言われたんですね。  私は、それ以来、やはり農業は攻めに入るべきだと思っています。そのためにやらなきゃいけないことはたくさんあるんです。  ただ、福岡県にも、僕らは消費者のところなんです、しかし、生産者のところ、変な話、ここにも自民党や、先生がいろいろいらっしゃいますけれども、それぞれ議員によって温度差が物すごくありまして、生産地の方で議員活動をされている方は、僕なんかがどんどん安いものをつくっておいしいものを食べさせてくださいよと言ったら、佐藤、そんな甘いものじゃないと言われるんです。  その一つの原因が土地なんですよね。いわゆる土地神話。  先生が先ほどこの中でおっしゃられましたけれども、再度先生にお尋ねをしたいのは、この土地神話をどうやって農家の方々、その土地神話は、まさに兼業農家の方々、土地を放さない。それがよく言われるのが、先祖代々の土地だと。しかし、考えてみたら先祖代々の土地ではないわけですが、そう信じ込んでいる方がいらっしゃいます。  先生、この辺について、何かいい策はありませんか。
  53. 山下一仁

    山下公述人 おっしゃるとおり、台湾の人が北海道に来て、北海道で農産物を買って帰るというふうなことがもう既に起こっています。北海道の生乳も、都府県に持ってくるんじゃなくて、台湾とか中国とか韓国に持っていく、そういう展開が可能だというふうに思っております。  土地のお話なんですけれども、先祖伝来の土地だから貸さないというのは我が農林水産省がつくった極めて壮大なトリックでして、実は、先祖伝来の土地というか、農地改革でもらった土地だし、先祖伝来でないし、貸すときは先祖伝来の霊が枕元にやってきて、売っ払うときはお隠れになるというのも何か奇妙な話なんです。  実は、本当は、農地を農地として守るから、農地改革をやっているはずなんですね。実は、戦後、農地改革をやってから、地主の人からあれは違憲だという訴訟が起こったわけですね。昔小作人だった人が農地を売っ払ってとんでもない利益を上げている、我々は長靴一足で政府に買収されたんだ、この思いが物すごくあったわけですね。  だから、農地は農地として利用するから、農地法の規制もあるし、農地の指定もあるし、それから、農林水産省も年間数兆円のものを農業のために投資してきたわけですね。農地を農地として利用するから食料安全保障も役に立つんだし、多面的機能にも資するんだ、こういう原理原則をやはりしっかりとして、農家も、単にお金をもらうだけじゃなくて、自分たちがもらう以上は責務を果たすんだ。  やはりゾーニングというヨーロッパがやっているような規律が必要だというふうに私は思っています。
  54. 佐藤正夫

    佐藤(正)委員 ありがとうございます。  もう一点、先生、お尋ねしたいんですけれども地方に行って、兼業農家の方は大体農協とかに勤めていらっしゃるんですね。農協に勤めていて兼業農家をやっている、もしくは、大体あとはお役所に勤めるとか、こういうケースなんです。実質、兼業農家にならざるを得ないと思い込んでいるんですよね。それがまさに、先ほどから話がちょっと飛ぶようになりますけれども、農協だと思うんです。  我々みんなの党は、農協を全て解体しろとは思っていません。我々は、やはり、農協があるべき姿に戻るべきだ、このように思っています。  まさに、農協は、今ほとんどの資産が金融。はっきり言って、金融業と言ってもいいと思います。先ほど重徳さんの方からも御質問がありましたけれども、再度先生に、あと短い時間でありますけれども、真の農協改革をするためには、まず一番に何を優先してやるべきだと、一点で結構ですので、お教え願いたいと思います。
  55. 山下一仁

    山下公述人 協同組合の基本原則があります。それは、利用者が所有し、コントロール、支配をするということなんですね。だから、そういう意味での協同組合の基本原則、これから照らして、どういうふうな組織であるべきなのか。准組合員という、利用者であるにもかかわらず農協をコントロールできないという人たちが過半数になっている。要するに、多数の人がもう農家でもない組織が、果たして農業の協同組合と言えるのかどうか、あるいは、農家のための組織になっているのか。そういう原則論から農協の議論はやるべきだというふうに私は思っています。
  56. 佐藤正夫

    佐藤(正)委員 ありがとうございました。
  57. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、林宙紀君。
  58. 林宙紀

    ○林(宙)委員 結いの党の林宙紀と申します。  四人の公述人の皆様、本日は、お忙しい中、本当にありがとうございます。  私、普段農林水産委員会にいるということもございまして、まず最初に山下先生にお伺いしたいなと思います。  先ほどのお話の中でも、また著書の中でもたくさん触れられております。今回、TPPに際しまして、関税を撤廃して直接支払いのスキームに変えるべきだということを主張されています。これについては、消費者負担が消滅するとかメリットがある一方で、関税の撤廃に非常に慎重な方々からは、やはり財政負担が大きくなってしまうだろうということで反論をされるということなんですが、このことについて、御見解を改めてお伺いしたいと思います。
  59. 山下一仁

    山下公述人 財政負担が大変かかるので直接支払いに移行できないという話をよくされるんですけれども、多額の財政負担がかかるということは、多額の消費者負担を今国民に強いているということと同じなわけですね。先ほどの小麦の例でいきますと、多額の財政負担がかかるというのは、その一四%の部分の高い価格支持から直接支払いに移行するというところだけがかかるというだけなんですね。実は、実際の消費者負担は、八六%のところまで消費者負担をかけているということでございます。だから、直接支払いに移行することによって、物すごい、それをはるかに上回る国民の負担が消滅するということでございます。  それと、内外価格差があるというのは大変な誇張があるわけですね。先ほど申し上げましたように、実は米の内外価格差は本当に、米もいっぱい種類があるわけです。日本の米は間違いなく世界一いい米なんですね。それと、失礼ですけれども、タイの米とかベトナムの米とか、あるいはカリフォルニアでも普通に売られている米、これの価格を比較して、内外価格差がたくさんあるので大変な膨大な財政負担が必要だと。これはやはりうそだと思います。だから、ベンツとタタ・モーターズを比べるような、こういうふうな議論はもうやめた方がいいんだというふうに思います。  関税を撤廃しても、必要な額はそれほど多くない、今の減反の補助金の二千五百億円の半分ぐらいで私は賄えるんじゃないかなというふうに思っております。
  60. 林宙紀

    ○林(宙)委員 ありがとうございます。  せっかくのこういった機会なので、もう一つお伺いしたいなと思うんですが、山下先生の御主張をお伺いしていると、私たちも非常に首肯する部分が多くあるんですが、山下先生が農林水産省におられた、そのような思想の方がおられたと。しかしながら、なかなかそこは変わることがなかったということもまた事実だったんだろうなと思うんです。一体何が障壁だったのか、お話しいただける範囲で結構ですので、思うところがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
  61. 山下一仁

    山下公述人 先ほど柳田国男のことを御紹介しましたけれども、あれが美しきよき農政本流の思想でございます。それから、いろいろな人がいらっしゃいました。最後に農政思想が本当に具体化したのが、一九六一年に、シュンペーターのお弟子さんの東畑精一という東大の教授と、我が先輩の小倉武一、政府の税調会長を十六年もやった、この人たちが、二人がつくった農業基本法だったということでございます。  ただ、農業基本法の考え方、構造改革をやって、規模を拡大して、農家の所得を上げるんだということは、農家の戸数を減らすということなんですね。そうすると、農家の戸数が減ると、票がなくなる、自民党は財務省に行って予算を獲得することができない。こういう、構造改革をするという表の話と、心の中で農家戸数を維持する。  実は、今の農家の定義は、〇・一ヘクタール以上が農家の定義なんです。今の農家の平均規模でも二・四ヘクタールなんです。その二十分の一の規模の、昔、柳田国男が百年前に細農と呼んだ規模以下の人たちまでも、いまだに農政は農家として定義をしているということなんですね。  つまり、後で東畑精一も言ったんですけれども、農林省百年史というのがあって、その中の座談会でも言っているんですけれども、どうも農林省として、農家戸数が減ることについて抵抗したんじゃないか、抵抗する意思があったんじゃないかと。そこが我々農林官僚の中でやはりわだかまりがあった。表座敷の構造改革と、心の中の今の現状維持、保身、これが農林省をして農政改革を本気でやらせなかった根底にあったのではないかなというふうに思います。
  62. 林宙紀

    ○林(宙)委員 本当に率直な御意見をありがとうございます。また、今後もさまざま御指導いただければというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  大変時間が短いものですから、最後にもう一問、こちらは増田公述人にお伺いしたいというふうに思います。  私は、地元というか出身も宮城なものですから、被災地の復興というところに関しては、これがいわゆる政治の原点だというところもあって、ここまでやらせていただいております。  お伺いしたいのは、きょうのお話の中には出てまいりませんでしたが、ずっと復興というところにもかかわってこられて、何よりも知事としてずっとかかわってこられたというところもあるというところで、現場主義というところを非常に御主張されていたなというところを記憶しております。これは資料としていただいていた中にもありましたが、去年の日経新聞の中にも、福島、東京二本社体制ということになったと。ただ、もっと徹底をさせるんだったら、福島、仙台二本社体制というのも必要なんじゃないかということをおっしゃっていました。  私も、選挙のときから、復興庁は仙台に移転をして、現場で即断即決でやっていくべきなんだということを主張してきて、当選してから復興特別委員会でもその話をしたところ、それについては、思想としてはわかるけれども、今このステージにおいて、去年の段階ですからもう二年たとうとしている中では、それよりも、東京、福島二本社体制の方がいいと判断してそうなっていると。  それはそれで一つの思想だと思うんですが、増田公述人におかれましては、今でも、例えば福島、仙台二本社体制ということにした方が、今後、効率的に進むとか効用が高いとお考えになっているかどうかというのをお伺いしたいなと思います。
  63. 増田寛也

    増田公述人 お答えを申し上げます。  先日、地元紙、河北新報さんの方で、市町村長さん方へのアンケート調査がございました。復興庁が発足のときには、大分復興庁の仕事ぶりに対して皆さん御不満をお持ちだったようでありますが、先日のアンケート調査を見ておりますと、ちょうど発足から二年たって、大分そのあたりが変わってきたという評価がそのアンケート調査に出ておりました。  復興庁のことを地元の市町村長さんが露骨に悪く言うのは、なかなか後のことを考えると難しいこともあるので、あのアンケート調査はそのとおりなのかどうかというのは若干、少し割り引いて見なければいけませんが、ただ、聞こえてくる声は、大分地元の声が通りやすくなってきている、そういう経験値は積み上がってきているという話はあります。  私が、できるだけ現場で、象徴的にはやはり仙台あるいは福島にきちんとした拠点を置くべきだと言いましたのは、そのことによって、現場の一人一人の復興庁の職員、これも大変多くの数が働いておりますが、そこの考え方とか士気が大分変わるのではないかという思いから、そう主張したわけであります。  ちょうど二年以上たちましたので、今さらいろいろ変えるというわけにもなかなかいかないかもしれませんが、私は、実際に仙台あるいは福島といったところにあるつもりで職員一人一人が即断即決の体制でやってほしい、そしてその上で、決めたことにきちんとした責任をとってほしいということを今でも思っているところであります。
  64. 林宙紀

    ○林(宙)委員 貴重な意見を本当にありがとうございました。  これで終了します。ありがとうございました。
  65. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、宮本岳志君。
  66. 宮本岳志

    ○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。  私の方からも、四人の公述人の皆様方に、心からお礼を申し上げたいと思っております。  まず、増田さんにお伺いしたいんですが、増田さんの資料、二十一というページを打った資料ですけれども、「消費増税分を考慮すると、実質賃金伸び率はマイナス」という表題がついております。消費増税分を含めたインフレ率を考慮すると、実質の賃金伸び率がマイナスとなる見込みだと。  こうなりますと、これから先、働く人の賃金が実質的にどうなるのかということが非常に不安なわけでありますけれども、少しこのことについてお話しいただきたいと思います。
  67. 増田寛也

    増田公述人 お答え申し上げます。  やはり、消費増税後の経済がどうなるかというのは大変気になるところでありまして、家計への影響がどのようになっていくのか。当然、一—三月期は、いろいろな見方がございましたが、消費伸びるけれども、その後、大きく落ち込むであろう。そしてそのことが、それだけではなくて実質の賃金伸び率にどう影響するかということでいろいろ見てみますと、私ども野村グループの予測でも、一人当たり賃金といったものについて、やはり全体としてマイナスに影響してくるのではないかというふうに見ております。  したがって、消費増税自身は財政を健全化する上で必要なことであり、そのことについて、今回八%をやったのは、私も、その前に政府の方で呼ばれた会議でもそう主張したところでありますので、必要であるというふうに思っておりますが、こうした家計への影響ですとか、それからいわゆる弱者への影響といったことをきめ細かくやはり考えていく必要があるだろうというふうに思っております。
  68. 宮本岳志

    ○宮本委員 私どもは、消費税の増税にもちろん反対をしてまいりました。ただ、消費税増税はやむないと考える方の中でも、四月からの増税をやるとやはり非常に大きなマイナスになるということで、四月の増税は中止すべきだという声も広がっているということも私は思うわけです。  それで、これが本当にこのままで終わりますと、日本経済に深刻な打撃を与えるということになります。だからこそ、連合の皆さんも、月例賃金引き上げ、そして全ての働く者の底上げということを掲げて頑張っていただいていると思いますし、また、先ほど藤田先生からも、やはり、働く者の生活をしっかり支えるというか、国民生活重視の経済改革に切りかえる必要があるという話があったと思います。  そこで、私は、国会で議論をやりましても、先ほども議論が出ていましたけれども、自由経済だから労使で決めるものであって、国が賃金を勝手に決めるわけにはいかないというような話が出るんですが、最低賃金引き上げというのは非常に有効なものであって、最近、オバマ大統領もアメリカでの最賃の引き上げということに言及いたしましたけれども、これをやはり政治の責任でやるべきだと。  私どもは、全国一律で千円以上に最低賃金引き上げる、こういうことを呼びかけているわけであります。もちろん、中小企業に対する支援ということも同時にやる必要があると思っているわけですけれども、このことについての神津公述人、そして藤田先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  69. 神津里季生

    神津公述人 最低賃金については、私ども連合としても、それぞれのところで各県の最低賃金委員を出しておりますし、引き上げに向けて、日々といいますか、その会議の中で闘っておる、こういう状況であります。  私も、最低賃金のさらなる引き上げが重要だと思います。ここ数年来、まず、せめて生活保護の水準との逆転現象は解消しなければならぬ、こういうことで、北海道を除いて達成をされた状況ですが、まだまだ水準としては低い、こういうことだと思います。今、生活保護との関係でそういう状況にあるので、ここで一段落というようなことであっては全くならないと思っていますので、やはり千円という一つ目標に向かってさらに進めていくべきだというふうに思っております。  いろいろな報道でも、米国なり、あるいはドイツ、イギリス、最低賃金の設定なり引き上げということの議論がかなりされておるようでありますけれども我が国においてはちょっと、低きにしばらく固定されていた、固定といいますか、じわじわと、本当に数円単位でしか上がらなかった、そういった長い時期を経ておりますので、これは引き続き大きな課題であるというふうに認識をしています。
  70. 藤田実

    藤田公述人 私も、最低賃金に関しましては、やはり全国一律の最低賃金制を早く導入すべきだと考えております。  現在、県別に最低賃金が設定されていると思うんですけれども、生計費を調査する限り、東北地域でも、大都市地域でも、生計費の差はそれほどないんですね。ほとんど大体十五万とか二十万程度、例えば単身者が暮らす場合は必要になってくるということを考えれば、なぜ地域別あるいは県別に差がつけられるのかというのは、生計費原則からいえば妥当しないだろうというふうに考えておりまして、そういう観点からすれば、全国一律の最低賃金を早く導入すべきだというふうに思っております。  それから、最低賃金議論のときにもう一点私が主張したいのは、最低賃金をいわば負担の面でのみ考える議論がある。つまり、最低賃金を上げれば、企業の負担、特に中小企業等にとっては非常に負担があって、企業の維持が危ないという議論もありますけれども、それはそれ、別個、そういう実態があるところに関しては、政府の方できちんとした形で助成する、補助をするなりということは必要だろうし、公正取引をどうやっていくかというようなことも必要だと思うんです。  マクロ経済的に見れば、最低賃金が上がれば、いわば低所得層の賃金が上がるわけですから、低所得層の賃金が上がるということは、低所得層に関していえば、データ的には消費性向が高いわけですから、それはかなり消費の拡大につながっていくということになると僕は思うんですね。  だから、そういう意味では、最低賃金を千円、僕はもうちょっと上げないとだめなんじゃないかなと思うんですけれども、もっと、千二百円とか、ある程度上げていくことによって、低所得層に安心感と余裕を与える。それがまた消費の拡大に結びついていく。そうすると、いわば消費拡大を軸にした経済成長が実現できる。消費拡大が実現できれば、ある意味で内需型の設備投資もふえてくる。こういう循環が起きるんじゃないかなというふうに私は考えております。  以上でございます。
  71. 宮本岳志

    ○宮本委員 アメリカの話が出ましたけれども、ニューズウィークの二月十八日号に注目したんです。七・二五ドルを十・一〇ドルに時給で引き上げる、これをやっても上位十カ国の平均を下回ることになる、一位はオーストラリアの時給十五・七五ドルだ、アメリカはいろいろな意味世界のトップを走るというけれども、最低賃金に関しては先進国の中では平均以下だ、千円に上げてもまだそんな程度だという議論がやられていまして、そこまで引き上げる上で、アメリカは五年間で八千八百億円の中小企業向けの補助をしてきた。  だから、やはり、しっかり中小企業を支えてそういう最低賃金引き上げを図ることが、内需の拡大というだけでなく、まともな賃金が保障されることによって、やはり労働者が定着するし、そして生産性自身も上がるわけで、中小企業にとっても、企業にとっても、これはプラスになることだというふうに思うんですね。  そういう中で、今、逆に、労働法制の改悪で賃金そのものが下がるような、藤田先生が先ほどその影響というのを出しておられましたが、そういう改悪が出されている。これは本当に逆行する事態だというふうに思います。  短い時間で、時間が来ましたので私は終わりますけれども、今後ともどうぞしっかりと御意見をお聞かせいただきますように、私どももきょうお伺いした声をしっかり受けとめて頑張ることを申し上げて、私の時間を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  72. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、青木愛君。
  73. 青木愛

    青木委員 よろしくお願いします。  公述人の皆様それぞれ、地方の視点を大変大切にされた貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  まずお伺いをいたしますが、安倍総理は、これは国際公約になっておりますけれども日本女性に輝く機会を与える場でなくてはならないということで、二〇二〇年までに指導的地位にいる人の三割を女性にしますということをおっしゃっています。女性の労働参加者率が男性並みになったら日本のGDPは一六%伸びるとヒラリー・クリントンさんがお話しになっているという御紹介を、安倍総理がされていました。  先ほど来から御意見をいただいておりますように、しかしながら、日本都市部は、やはり待機児童の問題で、安心して子育てと仕事ができる状況にはないということでございます。増田さんからも御指摘がございましたが、出生率東京では一・〇九という大変な状況でございます。  そして、地方地方で、自治体は何とか女性をつなぎとめなければならないという意識とともに、女性女性で、何らかの理由で地方を離れられないという事情を持っている女性もいらっしゃるわけです。一方で、女性地方にいながらキャリアアップができる、そうした仕組みをつくることも大切ではないかというふうに考えます。これは決して所得を上げるということだけではなくて、御自身の地位向上という部分もありまして、ぜひ、地方にいながら女性がキャリアアップできる、そうした仕組みをつくっていただきたいと願っているところでございます。  まだまだ、こうした環境整備も、そして意識改革も追いついていない状況だというふうに思うんですが、これで国際公約が何とか果たせるのかどうなのか、その辺のところと、今後の取り組みに対する何か御示唆がございましたら、お願いいたしたいと思います。公述人皆さんにお伺いをさせていただきます。
  74. 増田寛也

    増田公述人 お答え申し上げます。  まず私の方から申し上げますが、やはり、女性の皆さん方が生きがいを感じ、そしてきちんと社会で重要な役割を果たしていくというのは大変大事なことであります。そのためには、私は知事をしばらくやっておりまして、率直に申し上げますが、まだまだ私自身も力足らず、不十分なところがございましたが、女性の皆さん方というより、むしろ男性の視点というか意識というか、男性のいろいろな事柄、物の見方を根底からやはり変えていかないと、この問題の解決につながらない。  そして、やはり、例えば、地方の場合に、いろいろな会合に地域女性が出ていくことだけでも、家をあけるということだけでも、実は大変大きな、大変なことであって、そこに大きなバリアがあるということを、多くの女性の皆さん方、意欲のある女性の皆さん方から聞いたことがございます。同じようなことは都市部においてもさまざまな面であるというふうに思っております。  この問題の解決のためには、特に地方部においては、女性の皆さん方が働きやすい環境づくり、それから子育て環境等々、さまざまなことを解決しなければいけないわけで、国が三〇%、三割という大変高い目標、たしか現状は三%かそのぐらいじゃないかと思うので、大変高い目標でありますが、そういうメッセージを出すことは大変私はプラスに評価をしておりますが、それに続く政策、これはお金もかかるでしょうし、それから、具体的な政策を、子育てとかそういう部分だけじゃなくて、全体として、社会全体として盛り上げるための意識改革などにぜひつなげていただきたい。  地方もまだまだそういう意味で努力が足りないところが多々ありますし、大きなメッセージを出していただいたことについては、私は大変高く評価をしているところであります。
  75. 神津里季生

    神津公述人 二つの観点で申し上げておきたいと思います。  一つは、先ほど来るる申し述べたとおりでありますけれども、やはり若者、子育て世代、そこのところの働き方、これは実際に現場の声を聞くと、とてもじゃないけれども、将来を展望して、安心した形で結婚ができて子供をつくるというようなことができない、こういうことでありますから、まずそこのところの前提をどうやって反転させるのかということに意を砕くことがなければ、とてもとても男女共同参画社会ということは展望できないなというふうに思います。私どもとして、男女共同参画ということについて、一つの部局を持って力を入れております。  もう一つの観点は、そこが中心となって、これまでもそれぞれその政策関係の政府、各政党にも要請をしてきておるわけですけれども、今国会において、パート法について改正案の取り扱いが予定をされているというふうにお聞きをします。  三月の十二日に、私ども、春季交渉の中で、主要な製造業のところ、大どころが回答をすると思います。世の中、春闘は、高度成長期成長期においてはそこでやれやれという感じであったかと思いますが、肝心なのはそこからでありますから、ぜひ、国会においても、そういった、本当の意味で男女の賃金格差の是正に非常に大きい意味を持つパート法の早期の成立に意を砕いていただきたいなというふうに思います。
  76. 藤田実

    藤田公述人 私も、基本的に、やはり女性が生き生きとして働ける社会をつくることが日本経済の将来を左右する問題じゃないかと思っております。  ただ、そのために幾つか私が考えることは、やはり女性も働きやすい職場をどうつくっていくかということが必要なんじゃないか。  といいますのは、先日、私のゼミの、同じ会社に行っている卒業生が数人集まりまして、先生、久しぶりに飲み会をやりましょうとやったときに、女性の教え子も来たわけだけれども、結婚していて子育てしながら働いていると言っていたけれども、ともかく大変だと。  神奈川なんですけれども、認可の保育所に入れられないから無認可のところに入れていると、給与の半分近くが飛んじゃうんだ、それでいて、なおかつ、子育てがあるから早目に帰らざるを得ない、夫は自動車部品メーカーに勤めているので非常に帰りが遅い、したがって自分がやらざるを得ない、そうすると評価が低くなってくるというようなことを訴えていまして、だから、こういう社会は、先生、おかしいよねというふうに言われた。そのとおりだというふうに思ったんですね。  だから、そういう意味で、やはり企業の働かせ方の問題も僕は非常にあるんじゃないかというふうに思っておりまして、女性が生き生きとして働けるような働かせ方をどうつくるか。  そのためには賃金格差も、男女賃金格差は日本の場合、非常に多いわけですから、そういう観点からいうと、日本では依然として均等待遇という原則がないわけですよね。基本的には均衡待遇ですよね、いろいろなところで決まるのは。  そういう意味では、やはり均等待遇原則をいかにつくるかということが僕は必要なんだというふうにも思っております。政治でやれることというのは、そういう環境をどうつくっていくかということだと思いますので、ぜひ御努力いただきたいというふうに思っております。  以上です。
  77. 山下一仁

    山下公述人 通商交渉なんかをやると、今回も、テレビで、フロマン通商代表の横は女性が二人いて、日本側は、通訳の人だけが女性で、あとは全部男だということで、やはりおかしな関係だというふうに思います。  農業についても、実際やっているのは女性が多いわけですね。ところが、農協の役員とかそういうことになると、必ず男性になってしまう。  そういう現象面をとっておかしいというのはあるんですけれども、やはり、どうしたらそういうことができるのかということを、方策を考える必要があるんだと思います。  実は、昨日までアメリカに、ワシントンにいたんですけれども、有名な某シンクタンクの日本部長と夜、二人で食事をしながら、二時間、三時間ぐらい、TPPとかいろいろなことで議論していたんですけれども、彼女に言わせると、いや、これからうちに帰りますと。だけれども、もう夜の九時か十時ぐらいなんですね。子供は、十五歳と十二歳、二人の子供がいるということなので、そういうふうな人たちが生活できるような環境がやはりアメリカにはあるんだと思うんですね。  そういうふうな環境をやはり日本でも取り入れる必要がある、アメリカに学ぶことはまだ随分あるのではないかなというふうに私は思います。
  78. 青木愛

    青木委員 公述人の皆様方には、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  我が党といたしましても、国会でしっかりと取り組んでまいりますので、今後とも御指導のほどよろしくお願いします。  ありがとうございました。
  79. 二階俊博

    ○二階委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  80. 二階俊博

    ○二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成二十六年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位一言御挨拶を申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二十六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を賜る順序といたしましては、まず末澤豪謙公述人、次に島本幸治公述人、次に木村惠津子公述人、次に菊池英博公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、末澤公述人にお願いいたします。
  81. 末澤豪謙

    末澤公述人 よろしくお願いします。SMBC日興証券の末澤でございます。  何分、こちら初めてでございますので、ちょっと行き届かないところもあろうかと思いますけれども、ぜひ御容赦いただきたいと思います。  私の方からは、最近の金融市場の状況財政の持続可能性について御説明をさせていただきます。  ただ、まず、二〇一四年度政府案について賛否の意思をはっきりしろと言われておりますが、私の方は基本的に賛成でございます。内外の経済情勢に対応した、成長戦略と財政健全化の両面に目配りのきいた予算というふうに認識しております。  それでは、引き続き、まず、最近の金融市場の状況につきまして御説明をさせていただきたいと思います。資料の方は、こちらのパワーポイント資料でございます。  一ページめくっていただきまして、これは、左側、二〇〇八年以降のGDPの推移、あと、右側に、日本の株価、長期金利と、下に、米国の株価、長期金利の推移をお出ししております。  御案内のとおり、リーマン・ショックの後、どうにか経済が戻ってきまして、ここ四四半期は連続プラス成長が続いております。株価も、一昨年の末以降、右肩上がりが続いておりますが、実は、年初から株価はやや調整局面となっております。きょうは約二百円ほど日経平均が上がっておりますが、昨年末の水準に比べると、まだ相当低い状況です。  二ページなんですが、そういう背景、ことし年明け以降の金融市場が不安定化している背景を、ここで一応四つほど挙げさせていただいております。  一つが、米国の量的緩和の縮小が開始している。決定は昨年十二月でございますが、この一月から、米国債、MBSの買い入れ額が八百五十億ドルから七百五十億ドルに減額し、二月からは、また百億ドル減っております。  こういったことで、いろいろな、内外で、お金が減るんじゃないかということで、株が売られたり、為替が円高に振れたりしているんですけれども、ただ、青字で書いています、実際は、まだFRBのバランスシートの拡大は続いております。現行のペースでいけば、縮小に実際に転ずるのはことしの末以降ということです。やや思惑先行の部分があろうかと思います。  二つ目が、米国の経済指標が年明け以降、雇用、住宅関連を中心に大きく悪化している。この大きな背景が、米国南部、東部、中西部を大寒波が襲っている、この影響が大きいかと思います。ただ、実は、若干、大寒波のいい面もありまして、これによって、米国の債務上限の引き上げに関する法案が、急遽、二月十五日に成立しておりまして、そういったところは、財政問題が中間選挙後に先送りされたということもあります。  一方、中国の経済指標が悪化した。これは新指導部による構造改革の影響もございます。ただ、これは一方で、国内のみならず世界経済にも、輸出主導から内需主導型経済への転換は必要でございます。  また、新興国で、そういったことで通貨と株価が下落しているということです。  ただ、次のページをちょっとあけていただきたいんですが、ではどういった国の通貨、株価が下落しているかということで、三ページ目、これは、昨年年始以降の新興国通貨の対円レートです。ですから、上側に行くと円安、下に行くと円高になっています。  昨年の五月までは全体的に円安傾向が続いておったんですが、バーナンキ前FRB議長が、量的緩和を縮小しますよ、こう発言して以降、ちょっと動きが分かれてきています。上の方には、まだ円安が続いているのが、中国人民元、韓国ウォンのところですね。一方で、円高に反転してきているのが、トルコ・リラとかインドネシア・ルピア、インド・ルピー、またロシアのルーブルが最近下に来ている。  四ページをごらんいただくと、これは株価の動きです。これは特に大きな特徴はございませんけれども、全般的に、そういう量的緩和の縮小の影響も受けて、年明け以降やや軟調になっている。  五ページなんですが、ではどういった国で通貨が売られているかということなんですが、先ほどごらんいただいたように、中国とか韓国はそうでもなかったです。一方、ブラジル、インド、インドネシア、トルコ、こういった国が売られているんですが、これは全て、財政赤字かつ経常収支も赤字国でございます。  一方、ロシアは、実は財政収支、経常収支が黒字なんですが、量的緩和の縮小を受けて、原油、天然ガス等エネルギー価格は少し売られた、また、足元ではウクライナの問題等もあって、若干通貨安になっている。  ちなみに、ギリシャは、過去数年間、二〇一〇年以降、世界経済の大きな不安定要因だったんですが、二月十九日に中銀が、昨年の経常収支が十二億ユーロの黒字となったというふうに発表しております。これは統計開始以来初めてです。下のグラフで、上に来ているのがギリシャですね。  六ページです。ギリシャのお話をさせていただきましたが、ここでは、二〇〇九年ないし二〇一〇年以降の欧州財政問題の本格化によって通貨がどういうふうな状況になったかということです。  二〇〇八年からのグラフですが、実は、二〇〇八年当初は、日本以外のG7諸国の金利はほとんど四%ですね。その後、リーマン・ショック等あって、米国、イギリスの金利が下がる。ただ、二〇一〇年以降、ギリシャの不安、欧州財政問題が浮上してきますと、オレンジ色はスペイン、黄色がイタリア、こういった国々の金利が急騰して、一方、日本、ドイツといった金利が下がる。大きくスプレッドが拡大しています。実は、足元はまた同じですね、二〇〇八年のような状況に戻ってきているということです。  七ページなんですが、特に欧州財政問題で大きな不安定要因になったのがギリシャですね。先ほど、ギリシャは経常収支が初めて黒字になったとお話をしましたが、ここまでずっと赤字です。  その結果、七ページの左側をごらんいただくと、二〇一〇年—一二年ごろにかけては、実は、二年の金利が二五〇%という、ちょっと考えられないですね、日本の今の二年金利というのは〇・一を割ったところなんですが、二五〇%というような水準になっています。  これは、なぜかというと、やはり経常収支が赤字の中、右側のグラフをごらんいただくと、ギリシャのユーロ導入の二〇〇一年以降、海外の資金をどんどん入れて、一時、海外の国債保有ウエートは、欧州財政危機直前ですが、八〇%近い水準まで上昇しています。  八ページ、同じような国で、イタリア。ただ、こちらはG7国でございますが、やはり欧州財政問題が浮上する中、八ページの左側のグラフをごらんいただくと、長期金利がぐっと上昇しました。ただ、特徴として、十年、五年より二年の金利が上がる、こういった状況が発生しています。  これは、ギリシャでも同様なんですが、デフォルトリスクですね、国債が返ってこない、こういうふうに皆さんが、市場参加者が思うと、いわゆる逆イールドということになります。ただ、足元は改善している。  ただ、八ページの右下ですが、イタリアにおいても、ユーロ導入後、海外保有比率が五〇%を超えるというような事態になっています。  一方、では日本の長期金利はどうかということなんですが、日本の長期金利、九ページ、これは九八年以降の推移を出しております。このグラフを見ると、赤い長期金利、何か相当上下しているように見えますが、実はこれは〇・〇から二・五ですから、欧米の長期金利に比べると極めて安定した状況が過去十五年間続いているということになります。  なぜ長期金利が低位で安定しているのか。十ページなんですが、私は、ここで七つの要因を挙げております。  一つが、九八年以降、デフレ経済が継続している。二つ目、国内では極めてリスク回避志向の強い経済主体が多いということ。三つ目が、経常収支の黒字構造が継続し、対外純資産が世界一である。四つ目、膨大な個人金融純資産と、現預金や保険、年金への偏在、こういった問題がございます。五つ目が、少子高齢化の進展。六つ目が、日本銀行による金融緩和足元では量的・質的金融緩和、いわゆる異次元緩和が導入されております。七つ目が、国債管理政策の進展と市場との円滑なコミュニケーション。こういったものです。  ただ、この中で、青字で書いてある部分ですが、やや最近変化が出てきている部分もございます。政府も、今、デフレ脱却が最優先課題でございますし、今後、国内においても、いわゆるポートフォリオリバランスが促進されていく可能性がございます。  また、経常収支につきましては、足元、黒字ではございます。ただ、昨年の暦年の経常黒字は三・三兆円ほど、今年度は足元一・七兆円ほどでございまして、通年度、この二〇一三年度のところで見ると多分二兆円前後の経常黒字ということで、現行統計では過去最少にとどまると思われます。  また、少子高齢化の進展ですが、私は、短中期的には少子高齢化はデフレ要因だと考えておりますが、より長いタームで見ますと、供給がなくなってただ消費が残るということになりますので、むしろインフレ要因に転ずる可能性もある。  そういった問題では、日本の今の国債金利の極めて低位安定を支えている諸条件がこのまま持続するとも必ずしも限らない状況かと考えています。  ちなみに、十一ページをごらんいただくと、これはうちがよく使っているグラフなんですが、十一ページの右下です、これは、先週末の長期金利と国債の海外保有比率を比べたものです。  全般的にごらんいただくと、右上がりというんですか、国債の海外保有比率が高い国ほど金利が高い。ただ、ドイツに関して見るとこれは例外でございまして、欧州財政不安でドイツ国債がいわゆるたんす預金的に買われたことがあって、ドイツは、国債海外保有比率は高いんだけれども今は長期金利は極めて低い、こういった状況になっています。  十二ページなんですが、日本の長期金利の低位安定を支えている諸条件。私は、やはり大きいのは、膨大な個人金融資産。これが、純資産、資産負債差額、住宅ローン等をネットしてみますと、昨年九月で千二百四十二兆円ございます。一方で、国と地方の二〇一四年三月末の債務残高は九百七十七兆円程度の見込みですので、まだバッファーが二百兆円超確保されている。また、経常収支が過去三十二年間ずっと黒字だということですね。  また、右側の日米欧個人金融資産の比較という円グラフをごらんいただくと、日本の場合は、この赤い部分、現預金のウエートが圧倒的に多い。日本は五三%、米国は一三%、ユーロ圏は三五%という結果になっています。  ただ、次のページ、十三ページでございますが、日本の場合、長期的な国債市場のリスク、やはり私は、最大の要因は少子高齢化とグローバル化の進展だと思います。特に、団塊世代、一九四七年から四九年生まれの方々、今現在六百五十万人ほどが御存命でございますが、この方々が、二〇一四年末に皆さん六十五歳、二〇一九年末に皆さん七十歳、二〇二四年末に皆さん七十五歳に到達するということになります。  やはり、足元日本の国力が強い背景には、十四ページにありますように、まだ現状人口ピラミッドがややつり鐘形、若干ひし形に変わってきているんですが、こういった、人口のボーナス、つまり、過去、生産年齢人口がふえたことで、社会保障等のいろいろな問題がちょっと覆い尽くされていた。  次のページ、十五ページをごらんいただきますと、よく、我が国の場合、社会保障につきまして、低負担・中福祉という言い方がなされます。  十五ページのプロットした図は、横軸が国民負担率。これをごらんいただくと、OECD加盟諸国で、日本の場合、赤い丸がございますが、左側でございますね、低負担。一方、縦軸が政府の社会保障支出です。これをごらんいただくと大体真ん中ですね。真ん中よりちょっと、中の上かもしれません。つまり、現状は低負担・中福祉という、極めて居心地がいいといいますか、こんなに恵まれた状況は余りないとも言えます。  ただしこれは、十六ページの左下ですね、人口ピラミッドがここまではボーナス、つまり、生産年齢人口がふえて非生産年齢人口が少ない状況が続いておったわけでございます。  ただ、先ほども申しましたように、二〇一五年以降、いわゆる団塊世代が徐々に前期高齢者から後期高齢者に変わっていくということで、ある面、少子高齢化のリスクが本格化するのは、今後、これから十年間というタームになろうかと思います。  こうした中、十七ページをごらんいただくと、ここでは日本の国債の保有構造をお出ししております。  ちょっとこれはグラフが小さくて恐縮なんですが、十七ページの左側の、国債の保有構造の中、上のグラフでも下のグラフでも、実は、緑色の折れ線が急拡大しておるのがわかろうかと思います。これは、中央銀行、日本銀行です。  昨年から異次元緩和が導入されたこともありまして、右側のグラフをごらんいただくと、実は二〇一〇年度では、国債の全発行額の、これは利付国債と呼びますが、約七割を日銀が消化しておったんですが、ことしに関して見ると、国債の現存額は大体二十兆円しかふえていないんですが、日銀の保有額は三十四兆円ほどふえています。ですから、現状は、百数十%の規模で日本銀行が買っている、こういうことがあります。  その結果、十八ページの右下、実は、海外部門が保有する日本国債のシェアは、現状、極めて低い水準が続いております。クーポンがついている利付国債についてはわずか四%、Tビル、TDBを含めた全国債に占めるウエートも八%ということで、諸外国に比べては低い水準が続いているということでございます。  ただ、先ほど申しましたように、今後の少子高齢化の進展等を考えますと、こういった状況が必ずしも持続するとも限らないと考えられます。  ちなみに、こういった状況は、二十一ページ、二十二ページに、これはちょっと株のお話を書いておりますが、実は、株においても昨年来の株高の主因は海外投資家の投資なんですね。  二十一ページの左側の上のグラフなんですが、投資部門別株式保有率の推移をごらんいただくと、赤い折れ線、これのみが、バブル崩壊後、シェアを上げています。これが海外投資家です。  右上のグラフ、海外投資家の売買動向をごらんいただくと、昨年二〇一三年、暦年は十五兆一千億の買い越しということで、過去最高です。ただ、年明け以降は、実は一月は一兆円の売り越しにはなっています。  そういう意味では、国力を発揮する実は成長マネーといいますかリスクマネーも、海外に現状は頼っている状況になっている。  最後は二十三ページでございますが、そういう中で私が最後に御提言させていただきたいのは、そういう意味では、財政の持続可能性、サステイナビリティーを高めるには、やはり国力の充実が重要だということです。  ある面、経済対策、財政の体質も、私もちょっとメタボ予備軍なんですが、メタボから筋肉質に変わる。私はアンチエイジングという言い方をしておりますが、高齢化は国においても国民においても企業においても進んでおるわけでございますが、これをとめる。完全に若返りはできませんが、少し元気で長生き、また、産業構造も少子高齢化に対応した構造への転換、また、やはり引き続き少子化対策というのは進めていく必要があるだろう。  特に、成長戦略においては、日本のように今後国内の市場が縮小する状況においては、長期的なアドバンテージがないとなかなかもたないと思いますね。新興国との競争をするようなものではなかなかもたない。これは、諸外国、英国、米国を見ても、成熟国において現存している産業というのは、やはりその国の持っている強み、例えばエネルギーとか航空宇宙、IT、そういったところに絞られます。  そういう意味では、日本もそういう成長戦略を再度組み直す、再検討する必要があるとともに、やはり少子化対策、こちらももう一段力を入れていく必要があるんだろう。  また、成熟国としては、対外投資の運用利回りの向上が必要になるだろう。直接投資、証券投資の配当、利子収入で、今後想定される貿易・サービス収支及び経常移転収支の赤字を全てカバーする構造にすること、これが国際市場の安定化において極めて重要です。  また、やはり成長戦略と財政健全化は車の両輪ということかと思います。中長期的な財政再建プランを策定する。  私自身は、消費増税については、基本的に税率の引き上げ余地は海外に比べると大きいと思います、右のグラフです。また、経済への負荷も相対的に小さいと考えておりますが、ただ、今後、では消費税率が一〇パー、二〇パー、三〇パー、四〇パーと上がるような状況になれば、これはなかなか国内で生産活動、消費活動ができなくなります。どんどん海外に移転してしまいます。  そういう意味では、今後は、社会保障負担増を勘案すると、歳出改革の重要性もこれはもう間違いない。そういう意味では、引き続きやはり成長戦略と財政健全化を車の両輪として進めていく、こういうことが重要というふうに考えております。  以上でございます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  82. 二階俊博

    ○二階委員長 ありがとうございました。  次に、島本公述人にお願いいたします。
  83. 島本幸治

    ○島本公述人 ソシエテジェネラル証券の島本と申します。  平成二十六年度予算について、私なりの意見を申し上げます。  お手元資料があろうかと思いますが、国家予算ですから、日本経済現状、それから今後の課題を正しく認識することが大事だと思います。  今、日本経済についてマーケットがどう評価しているか。最初のページは、年初からの株価の騰落率をお示ししております。  日本株は、御案内のとおり、調子がよろしくないです。ただ、これは、日本に始まった話ではなくて、昨年は非常に経済が沸き立っておりまして、世界的に株価も好調でした。とりわけ、日本株がよく上がっていました。ところが、年初から雰囲気は一変しております。もちろん、マーケットですから、短期的な見方もあろうかと思います。上がり過ぎの反動という面もあろうかと思います。ただ、なぜこうした変化が出ているか、ここに耳を傾けることに一定の価値はあると思います。  一般には、年初からマーケットの雰囲気が変わってきた主因は新興国不安、こう言われております。  近年の世界経済を振り返ってみますと、まず日本で不動産バブルが崩壊して、アメリカで住宅バブルが崩壊して、ヨーロッパはちょっと複雑ですが、ソブリン、国債のバブルが崩壊して、先進国一様にバブル崩壊、金融不況の状況にあったわけです。ここで、各国ともに金融緩和に取り組んだわけですが、利下げだけでは足りないということで、各国軒並み量的緩和に取り組んでいるということは御案内のとおりかと思います。  こうした中で、先進国の半ば通貨切り下げ競争、量的緩和競争、こういう状況が発生しまして、例えば株式市場や債券市場では全面安があり得るわけですが、通貨の市場では全面安がないわけであります。そうすると、三極の通貨が下がりたがる分、どこかの通貨が上がるということで、新興国にお金が流れ込む、こういう状況が近年発生していました。ですから、先進国バブルの裏返しとして新興国バブルが発生していたわけです。  ここに来て、アメリカ経済中心先進国経済が安定してまいりました。いよいよこの量的緩和も終幕ということで、アメリカでは量的緩和の縮小、テーパリングが話題になっております。こうした中で、世界資金が新興国から先進国に戻り始めている。こういう中で新興国不安が起こっているわけですから、ある意味で、新興国不安の背景にはアメリカ経済の安定あるいはテーパリングがあるということで、ここは過度に心配する必要はないだろう、こういう認識で私も正しいかなと思っています。  では、なぜ日本がここまで弱いのか。繰り返しですが、一番上がったのが日本ですから、その反動という面もあります。ただ、ここに来て、例えば昨年の末であれば、日本株、ちょっとでも下がったら押し目買いだな、こういう見方が多かったのが、なかなか手が動かない。いろいろな不安がふえてきているんですね。  どういう不安がふえてきているか。私は、本来日本が持っている構造的な脆弱性に対して海外の投資家が心配し始めた、こういう面もあろうかと思います。では、その構造的な脆弱性とは何かということで、次のページをごらんいただければと思います。  これも今に始まった話ではありません。ただ、日本では、貿易赤字が定着し、経常黒字が急速に縮小しております。このスピードたるや、いかなるエコノミスト、アナリストもなかなか予測できなかったテンポであります。  もちろん、この背景には、日本以外の要因、あるいは事故の影響もあります。例えば、リーマン・ショックが起こった結果、世界経済が冷え込んで日本から輸出が落ち込んだ。これが二〇〇八年の赤字転落の主因です。その後、世界経済が回復して一旦貿易黒字に戻ったんですが、ここに来てまた貿易収支が赤字に転落している背景は、これは御案内のとおり、地震があり、津波があり、原発の事故があった結果、エネルギーの輸入がふえているということが主因であります。ですから、幾つかのアクシデントで赤字に転じた、こんな見方もあろうかと思います。  ただ、よくよくこのグラフを見ていただきますと、一九九〇年代あるいは二〇〇〇年ころから日本の黒字が縮小するトレンドは観測されるわけです。あるいは、中長期的に見て、日本の貿易黒字を維持するのは難しい、こういう見方が一般的だったかと思います。  一つの背景には、産業の空洞化、それから人口動態の変化、こうした構造問題が幾つかのアクシデントを受けて前に倒れてきているというのが今の日本経済の現況かと思います。  あるいは、貿易収支が赤字に転じてもまだ大丈夫だ、経常収支が黒字ではないか、こんな見方もあろうかと思います。国際収支の発展段階説の中では、貿易収支が赤字に転落しても、経済が成熟していれば、対外債権があるから経常収支はまだ黒字が維持できる、こんな見方もありました。ただ、今観測されているのは、この経常黒字ですら近いうちに赤字に転落してもおかしくないという事実が観測されているわけです。  私は、経常収支が黒字であるべきか赤字であるべきかという、この神学論争に参画するつもりはありません。ただ、経常黒字が急速に赤字の方に向かっている、こうした中で、足元円安による交易条件の改善を日本経済あるいは日本企業は十分享受できていない、ここはゆゆしき事態だと思います。  もともと、日本の黒字から赤字への転落というのは注目されていたわけです。ただ、昨年来からの円安の中でもこの状況に全然変わりがない、一体、日本経済で何が起こっているのか、本当に日本経済は生まれ変わったのか、ここについて、今、不安の目が向けられているという面はあろうかと思います。  次のページをごらんいただきますと、こうしたマーケットが抱く違和感、警戒感、この背景として、やはり日本経済の空洞化の問題があろうかと思います。空洞化というのは、産業の空洞化、そしてある意味人口の空洞化といいますか高齢化の問題であります。先ほどのチャートにもございましたが、日本人口動態はかなり特殊な形状をしております。戦後の事実上の産児制限の影響で、日本人口動態は急速に今高齢化が進展しているという状況であります。  特に、こうした人口動態にかけ合わせてネットの貯蓄分布を人口、年齢別に見ると、日本の貯蓄はかなり高齢者の方に集中しているという事実があります。こうした中で、ミクロ、マクロの統計を分析すると、この日本の貯蓄が明確に取り崩されているという動きが幾つかのデータで観測されます。  例えば、年齢別に消費性向というデータを見ますと、この消費性向は所得に占める支出の割合です、当然、高齢者の方はリタイアされて貯蓄を取り崩されるわけですから、高齢者の方の消費性向というのは高いわけですが、これがさらに上がっていくという現象が出てきております。  ですから、日本経済、昨年は非常に大きな期待を受けて株価も上がったわけですが、ここに来て低迷している背景には、もちろんマーケットの振幅もありますが、こうした日本経済が本来持っている脆弱性を突破できるのかどうか、ここをマーケットは見ているというふうに申し上げてもいいと思います。  では、今後どういった予算が必要なのか、あるいは、日本経済はどういった方向性でこうした問題を突破できるのかについて、少し長い時間軸でお話をしたいと思います。  私からは最後のチャートになりますが、五ページ目をごらんいただければと思います。この五ページ目のグラフは、世界経済を振り返ってみると、デフレとインフレを繰り返していたというグラフであります。コンドラチェフのサイクルという考え方でありまして、右半分は、物価が下がりデフレになる時代、左半分が、物価が上がりインフレになる時代。  今、先進国経済の一番の問題は何かというと、デフレです。では、三十年前は何だったか。これはインフレだったわけですね。  政府が肥大化して、金利が高い、インフレ率が高い、民間経済が圧迫される。いかにこのインフレを脱却するかということで、例えばアメリカではレーガノミクス、イギリスではサッチャリズム、市場主義、資本の論理、経済の効率性を求める、こういうパラダイムのもとで経済学も変わりましたし、あるいは、平等よりも自由の方が大事だ、こういうパラダイムが三十年続いて、確かに物価は下がった。  ところがその後、金融の力が強くなり過ぎて頻繁にバブルが崩壊し、世界市場が不安定化し、こうした中で、金融に任せ過ぎるのは一定の歯どめをかけるべきではないか、むしろ安定した社会を目指すべきではないかということで、今のパラダイムは、むしろ、デフレをいかに防圧して経済を安定化させるかということに先進国では関心があるわけです。  では、今度は六十年前はどうだったかというと、やはり今と同様に、世界経済はデフレに苦しんでいる状況がありました。一九二九年に大恐慌があり、世界経済がデフレに陥り、アメリカでは、やはり中央銀行が政府が発行する国債を買うことで、長期金利を無理やり抑えて、経済を安定化させようと、今と同じような取り組みが行われたことがあります。  そうしますと、今、世界経済はまだデフレに苦しんでおりますが、少しずつその出口が見えているという状況の中で、今後は左の半分、つまり、徐々にデフレを脱却していく中で、どういう政策が必要か、あるいは何が求められるのかということを考えるべき局面に来ているということだと思います。  私は、一つのキーワードは、資源配分を果たす役割の中で、政府が重要になっていくということだと思います。今までは、経済の効率化あるいは競争原理が大事だということでマーケットに委ねていたメカニズムが、今後は、政府がある程度リーダーシップを発揮し、成長にしっかり貢献していくという局面に今移ってきている。  こういう中で、予算のあり方というのは従来以上に重要になっているということだと思います。  では、日本では何がポイントになるか。これは、日本経済の強みは何かということだと思います。日本経済の強みを引き出し、あるいは切磋琢磨を促すために、何が必要か。  日本は、いろいろな弱点もあります。人口動態もある意味で弱点かもしれません。あるいは、島国という歴史的経緯もあって、さまざまな特殊性を持っているわけですが、例えば日本製造業の技術力、これは世界に冠たるものであります。あるいは、日本のソフト面でのおもてなしといいますか、もてなしの心、サービス産業のきめ細やかさ、これもあると思います。ただ、この製造業、サービス産業のことは随分言われていますので、私はもう一つの強みに注目したいと思います。  それは、統計で見ても明らかなとおり、日本世界最大の債権国であります。これを過去二十数年間維持しているというのが、日本経済一つの強みであろうかと思います。  先ほど、貿易黒字が赤字になっても経常収支はまだ辛うじて黒字を維持できている、こう申し上げましたが、この背景には、世界最大の対外債権から得られる利子配当によって、日本は辛うじてまだ黒字を維持できている、こういう構図があります。こうした強みをいかに生かしていくかということが、やはり予算にも求められると思います。  例えば、製造業の技術力、これを引き出すためにはさらなる投資減税、あるいは、企業部門を活性化するためには法人税率の引き下げ、少なくとも国際的な水準に近づけていくという努力がまず必要だと思います。  それから、サービス産業、もてなしの国民性をいかにアピールしていくかという点については、例えば国内コンテンツの海外のマーケティングももちろん大事だと思います。ここもしっかり国が支援する必要があると思いますし、あるいは、海外の観光客をしっかり日本に誘致する、ここも大事なポイントだと思います。日本経済、株価が大きく底入れしたのは、実は、IMFが日本で開催されて、海外から日本に随分人が来たことで、日本経済を見る目が変わった、こんな議論もあるわけであります。  それから、世界最大の債権国であるというメリットを生かすためには、金融、ここをもう少し大事な成長分野として見直すというところもポイントかと思います。  一般に金融というと、どうしても、これは金持ち優遇ではないかとか、なかなかここは日本人に向いていないんじゃないかとか、こういう意見もよく聞かれます。ただ、実は日本金融大国に既になっているわけであります。例えば、日本の貿易黒字と経常黒字の差額は随分大きいものになっています。それだけ海外から利子や配当が得られているということですが、ただ、日本が持っている対外債権の額と比べたら、これは極めて小さい。すなわち、日本の対外投資は非常にコンサーバティブなものにとどまっている。これをもう少し成長国に振り向けることで、例えば成長分野から得られる日本の所得のメリットがふえることに加えて、成長が必要な新興国に対して日本が貢献することにもなるわけです。  こうしたマネーフローを生かすためには、もちろんマクロファンダメンタルズも大事で、まさに今、物価がマイナスからプラスに転じてきているという中で、個人の対外投資、企業の対外投資もふえると思うので、ほっておいてもこうした方向に向かうとは思いますが、こうした流れを促進するためには、金融、税制での配慮であるとか、金融面での規制緩和も大事かと思います。  二十一世紀の日本に必要な、めり張りのある予算を期待しつつ、私の公述を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  84. 二階俊博

    ○二階委員長 ありがとうございました。  次に、木村公述人にお願いいたします。
  85. 木村惠津子

    ○木村公述人 こんにちは。このたびは、このような発言の機会を得ることができまして、大変うれしく思っております。ありがとうございます。  実は、私は介護事業者をしておりまして、四十人ほどの本当に小さな会社でございます。ですが、そこにお預かりしているお客様、それからお客様の御家族というものに対しまして、大変な心の痛みを覚えざるを得ないという現実がございます。  そういう現実のところから、きょうは、御意見また御提案をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  これから大介護時代が始まるというふうに言われておりますけれども、本当にそうですね。そして、こちらのグラフの資料でございます、十ページの方なんですけれども、これは、二〇二五年に介護費用のみで二十一兆円になってしまうということが書かれたものでございます。これは、上の方を見ていただきますと、二〇二五年改革シナリオと書かれております。改革をしたものでこれであるということなんですね。  でも、私が介護の現場で思っておりますことは、大変悲惨な現実がございます。  例えば、デイサービスに三十代の男性の方が飛び込んできまして、お父さんがおしっこを壁にしちゃっているんだけれども、どうしたらいいだろうと。でも、その方は受け入れられないんですね、その現実を。それはそうだと思います。  それからまた、お父さんが寝たきりで、お母さんが認知症になってきてしまっている。あけてはいけないお部屋というのがあるんですけれども、そこから異臭がしておりますので、何とかしなくてはいけないということで、手を尽くしてあけさせていただきました。そうしましたら、バケツ八杯にふん尿がいっぱい入っておりました。  それは、トイレが壊れているということを誰に言うこともできない、どうしたらいいかもわからないということで、お母さんが、とても美しいお母さんなんですけれども、そうされていたんですね。その中には、雑巾や割り箸やティッシュペーパーの丸めたものとか、たくさん入っておりまして、それをトイレを直してから処理するのも大変でございました。分別をして流したわけでございます。  介護の現場でおりますと、その方も息子さんもいらっしゃるんですけれども、なかなか連絡もとれない。本当に息子さんとしてもつらくてどうしようもないんじゃないかなと思うんですね。  ですので、私どもが考えますのは、こうなる以前に何か手が打てなかったのか、私たちは何かできる方法があったんじゃないかということを、本当に日々感じます。  私が今申しましたのは、ほんの、本当に一端でございます。毎日毎日いろいろなことがございます。そういうことでいきますと、では、どうしたらいいのかということですね。  そこで、私は、大予防時代にしていかなくてはいけないのではないかなと思いました。でも、よくよく考えていきますと、それではちょっとまだだめだ。これは大健康時代、日本の国が、国民のお一人お一人が健康に向かって目標をつくって、それに向かって行動されていく、そういう時代にしなくては、この二十一兆円を変えることはできないというふうに思いました。  これは、二十一兆円を変えるだけではなくて、それに至ります言葉に出せない苦しみ、痛み、そういうものをなくすためにも、何としても介護時代を変えていかなくてはいけないという決意に至った次第でございます。  私は、この四月から、日本スマートライフ研究所というのを立ち上げようと思っております。それは何をするところかといいますと、では具体的に、二〇二五年の二十一兆円を変えるにはどうしたらいいのか、そういうことでございます。そうしますと、まず皆様に、認知症とは何であるか、そして、その対応策はどのようにしたらいいのかということがとても大切なんです。そのことをお知らせしたい。  私が知り合いにしております地元の先生が申しておりました。認知症というふうにおっしゃっても、御家族が認めないので治療ができません、それでひどくなってから来るんです、それでは間に合わないですよねと。そうですね。  しかし、私がデイサービスのある地元の婦人会に行っておりまして、たまに行きますたびに認知症のお話をさせていただきます。そうしましたら、ついこの間、会が終わりましたら一人の方がやってまいりました。そして私に、木村さん、私、病院に行きますと言うんですね。どうしましたかと言いましたら、においがしなくなったの、これは認知症の始まりでしょう、だから私、行きますと言うんです。偉いですね、では、ぜひ専門医に見ていただいてくださいね、全然対応が違いますから、お願いいたしますと言いました。  ですので、その方は、認知症のことをわずかでも知っていたんです。知っていたことによって、ちゃんと自分から行くという行動を起こすことができた。これが大変大切なことかなと思いました。  ですので、私は、ぜひ多くの方になるべく早く研修をさせていただきたい。認知症を知ることを、ぜひ、企業にお勤めの方、それから主婦の方、PTAの方、小中高、大学生の方々、とにかく、なるべく多くの方に早く知っていただきたい。  私の目標は千七百万人でございます。これは団塊の世代、現在の六十四歳から七十三歳のおおよその人口でございます。その方たちの十一年後、二〇二五年、たった十一年しかないんですけれども、そのときの年齢は七十五歳から八十四歳となります。ですので、この方たちを、私の決意では、全く今の資料ですけれども、そこからいきますと二一%の認定率になりますが、それを一〇%にしたいと思っております。  二十一兆円を、もう本当に、こんな私が申し上げるのは恐縮ですが、半減したいという気持ちでいっぱいでございます。そうしなければ、苦しみも広がってしまうんです。ですので、その予算を考えていただくときに、申しわけございません、その研修に何とぞ予算をとっていただきたいというのが思いでございます。お願いいたします。  どこかから、誰かがその蛇口を閉めなければ、広がっていってしまうばかりなんですね。どうぞ、そこは御賢察をいただきまして、研修のためにも予算をとっていただき、また、企業の方ですとか、自治体、国、御協力していただいて、こういう理由があるからぜひ研修を受けていただきたいという御協力もお願いいたします。その両方がなければ、遅々として進みません。進まなければ天井に火が回ってしまうということでございます。皆様よくおわかりのことと思います。  それから次に、私は、財政再建のことにつきまして、未熟ではございますが、ちょっと御提案をさせていただきたいと思います。  二つございまして、私は、オリンピック後にXデーを起こさないためにはどうしたらいいのかということを大変真剣に考えてまいりました。それで、二つの御提案を申し上げたいと思います。  一つは、東京アニメランドというものを埼玉県につくっていただきたいということでございます。埼玉県が一番高齢化率が高くなっておりますので、ここをクリアするために、財政的な何かがあればもしかしたらクリアできるのではないか、そういうモデルができましたらちょっと違ってくるのかなと思いました。  その東京アニメランドというのは、東京ディズニーランドのようなものをちょっとイメージしていただければいいと思うんですけれども、赤ちゃんからお年寄りまでが来られる、アニメだけではなくて、昔の漫画ですとか、そういうものも見られるようなテーマパークというふうに考えております。  アニメは、世界におきましても大変すばらしい価値の高いものでありまして、日本の物の考え方であるとか、日本のたたずまいであるとか、大変美しい技術、心根を持って世界に紹介されているものでございます。一度、アニメ殿堂ということで挫折したことがございます。それは、ある限られた方たちのものになるかもしれないということがあったからだと思います。そういうところを修正していただいて、ぜひ足を一歩踏み出していただいて、お願いしたいと思います。  私が先日、茨城の社長さんとお話をしましたら、ある地域で毎年イベントをやっているんですけれども、五、六千人が来る。それが、たまたまその地域がアニメの舞台になったそうでございます。そうしましたら、十万人来たというんですね。それだけの集客力があるという事実なんです。この事実を確かに見ていただきたいと思います。アニメの持つ力を確かに、確実に見ていただきたいと思います。  これは今、たんすにしまってある状態ですので、ぜひ出していただきたい。それで、アジアからも若い方が来ていただければ、今のぎくしゃくした関係も少しは変わっていくのではないかということも考えられると思いますので、ぜひ、準備それから調査に対しての御予算をいただければありがたいところかなと思います。  もう一つは、日本の国に今、仕事が失われつつございます。では、それを具体的にどうしたらいいのかということです。  ないものはやはり生み出すということが原点だと思います。生み出すということは、仕事をつくるということですね。  今、団塊の世代の方が実はリタイアされて、私ども介護の現場から見ますと大変深刻でございます。何のやる気もない。実際、何もいたしません。これは廃用症候群に向かっている姿でございます。そして、奥さんはどうかといいますと、夫源病、夫が源の病気になっていく。これは私の友達もそうですが、救急車で何遍も運ばれております。もう自分ではコントロールができないんですね。そのような病気。  そうしますと、御夫婦がともに医療費がかかる人になってしまう、介護費がかかる人になってしまうのです。それをなくすためには、団塊の世代の人を世の中に引っ張り出すということが大切だと思います。その方たちに、ぜひ、企業化するというところになるべく加わっていただきたいと思っております。  それで、私の試算ですけれども、今の六十五歳から七十五歳の方が半分お仕事をされる、被保険者になられるということですね。済みません、六十五歳から七十四歳かもしれません。そうしますと、先ほどのグラフの四ページにありますけれども、二〇二五年に一人を支える人口が一・八人とございますけれども、それが二・五人になる計算になります。ですので、ぜひ御活躍する場をつくるということですね。そのために、つくること自体も、団塊の世代の有能な方たちがたくさんいらっしゃいますので、その方たちのお力をかりて、ぜひ企業化していくものをつくる。  それは細々考えておりまして、日本が今抱えております課題というものを分類別によく考えまして、そこから企業化できるというものを選定いたします。そうしまして、それを高校、高専、大学、企業、それから民間人の方々に課題として出します。そして、それで競っていただいて、それが人材育成にもなるんですけれども、それを、戻ってきましたら何とか企業化できるように、とにかく徹底して、できるまで動いていただくということをして企業化するということですね。それを繰り返し行っていく。  そして、特許もとります。特許もとりましたら、その分配は国にもしていく、地方自治体にもしていく、ここが大事だと思います。企業、発案者、発明者というものもございますけれども、税収以外に確実に、ちりも積もれば山となるというような収入のもとをつくっていく。  これは、もしよいものができましたら、国際貢献にもなります。また、外貨が入るということにもなります。先ほどの東京アニメランドも、埼玉でもし成功いたしましたら、世界の十五カ所ぐらいにつくることができますれば、もし日本に災害が起きましても、外貨の入る道にもできると思います。  私は、いろいろな考え方はあると思いますけれども、何をどう実行していくのか、そこに予算をどうつけていくのかということが最も大切だと思っております。予算がなければ何もできない。実行することがなければ、何も変わらないということでございます。それをできるのは皆様方以外にございませんので、どうかどうか御賢察いただきまして、私の提案それから依頼に対しまして、御賛同いただけるところがございましたら、何とぞ予算をつけていただきたく、少しでも実行していただきたく、お願い申し上げます。  以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
  86. 二階俊博

    ○二階委員長 ありがとうございました。  次に、菊池公述人にお願いいたします。
  87. 菊池英博

    ○菊池公述人 皆さん、こんにちは。菊池英博でございます。  どうも皆さん、大変お疲れのところ恐縮でございますが、私が公述人八人目、最後かと思いますので、あと二十分程度御清聴いただけたら幸いでございます。  私の資料は、実はちょっと欲張りまして、お手元に、こういうふうにクリップでとめてあります。出していただきますと、八枚ございます。時間の関係で、細かく書きましたけれども、重立ったところを御説明申し上げます。それからあとは、後の御質問等に備えまして、幾つかの関連の経済的なデータと、そのほか皆様方にお目通しいただけたらというような資料も用意させていただきました。お目通しいただければ幸いでございます。  それでは、この公述メモに基づきましてお話を申し上げます。  まず、「はじめに、」というところから申し上げます。  私は、二年前の二〇一二年三月二日のこの予算委員会で、要旨、次のように公述をさせていただきました。  日本のデフレは一九九八年に始まり、既に十五年目を迎え、昭和恐慌、一九二五年から三三年の九年間と、アメリカ大恐慌、一九二九年の十月から三三年の三月、三年六カ月をしのぐ最長のデフレである。既に昭和恐慌に匹敵する平成恐慌状態に陥っているので、デフレ脱却政策を最優先すべきである。  ところが、現在の政府、これは当時の野田民主政権です、にある危険な考えは、日本はデフレではない、低位安定で成長は期待できない、だから消費税増税しか財源がないという意見である。しかし、これは、まさにデフレを肯定して成長を放棄する危険な敗北者精神であり、国家の破滅につながる重大な誤りである。  日本のデフレは恐慌型デフレである。それは、民間投資も政府社会資本投資も、これは公共投資ですね、新規の投資が不足して、回収超過です。金融緩和ではこの種の本格的なデフレは解消できない。さらに、小泉構造改革と緊縮財政で、デフレが法制化され長期化されている。これらの諸要因を全面的に見直して、デフレ政策から成長政策に転換することが必要である。  そのためには、まず第一に、首相が経済政策のレジーム、基本方針です、これを転換することを宣言する。つまり、デフレ解消から経済成長路線に転換する。  第二には、日本のデフレは恐慌型であるから、財政主導、金融フォローでないと解消の道はありません。そのためには、緊急補正予算二十兆円、五年間実行を組成し、民間には、国内設備投資と正規社員増加を条件として投資減税を行うということを申し上げました。  これに対して、実は最も耳を傾けてくださいましたのが自由民主党さんでございました。そして、二〇一二年十二月の衆議院選挙で、デフレ解消優先、十年二百兆の政府投資を中心とする国土強靱化、デフレを促進するTPP反対をスローガンに掲げて、政権に復帰されたのです。公明党さんは、既にこの段階で十年百兆円の防災、減災政策を樹立されておられました。  次に、安倍総理、麻生副総理のレジームチェンジの宣言。  こうして、二〇一二年十二月二十六日、就任された安倍総理と麻生副総理は、十五年継続したデフレを解消しよう、成長こそ最大の財政再建であるという名言を発せられたのです。この瞬間、これはまさに歴史的なレジームチェンジの宣言でありました。これは、アメリカ大恐慌、一九三三年のルーズベルト大統領とか、一九三一年十二月の高橋是清の昭和恐慌のデフレ解消宣言と同じです。実は、この安倍総理の発言があったとき、私は、テレビの前で拍手したんですよ。このぐらい、これは歴史的に意義があったと思います。  ところが、三本の矢で構成されたアベノミクスのユーフォリア、熱狂的な陶酔感は終えんしており、このままでは、二〇一四年度の経済成長はマイナスになる懸念が強い。さらに、新たな利権確保のための規制緩和や雇用体系の破壊など、新自由主義的なデフレ促進政策が多く見られる。これらの政策はデフレ解消に反する政策です。安倍総理の政策と反しています。いかにデフレから脱却して成長路線に戻すか、そういう原点に立って、きょうお話を申し上げたいと思います。  次のページをごらんください。  まず第一、現下の経済情勢です。これは、このまま参りますとマイナス成長になる懸念が非常に強いです。データは細かく書いてあるのですが、時間の関係がありますから、ポイントだけ申し上げます。  まず第一に、昨年度といい、それから現時点、二〇一三年度といい、二〇一四年度といい、これは大体十五カ月予算なんですね、実質的に。ですから、二〇一三年度予算というのは、二〇一二年の補正として昨年二月に補正がありました。それが十三兆。それから本予算で九十二・六兆ですから、現在の二〇一三年度予算というのは、十五カ月で見ますと、百五・六兆予算です。同じ視点で二〇一四年度予算というのを見ますと、二〇一三年度補正予算が五・五兆ありまして、それから本予算が九十五・八ですから、百一・三兆円です。これだけを見ましても、実を言いますと、財政支出は四・三兆円のマイナスです。  問題はこの中身なんですね。実は、現在の日本経済というのは、まさに公共投資でプラスになっているんですよ。公共投資だけを見ますと、同じようにしますと、これは五・三兆円減っています。  どうして公共投資で見なきゃいけないかというと、その下に、二〇一三年七—九のGDP速報から見た景気後退要因というのが書いてありますね。そこに書いてあるとおり、これは先生方御案内のとおりで、昨年の四—六の実績が非常によかったということで、安倍総理は増税を決断されました。ところが、七—九からどんどん落ちまして、十—十二まで、まさにじり貧状態です。  この七—九を見ますと、実は、この上に書きましたとおり、実質成長が一・一%プラス、名目一・〇です。ところが、この一・一、つまり、実質成長に寄与した中身も見ますと、公共投資が一・二なんです。つまり、公共投資一・二があったから、結果、一・一プラスになった。民間投資はマイナスです。  ですから、結論的に言いますと、このままの流れでいって、消費税増税なしでも、来年度、二〇一四年度はマイナス成長になる懸念が非常に強いです。  一方、消費税を上げたらどうなるかというのが、その後の政府見通しになっておりますね。  この政府見通しも、実を言いますとなかなか甘い見通しでございまして、民間設備投資はプラス四・四ふえる。全体では、実質成長がプラス一・四、二〇一三年度に比べて一・二%減るという見通しですが、その中身として、プラスになる要因、消費税を上げてもプラスになる要素というのは、民間設備投資がプラス四・四になる。そうすると、二〇一三年度に比べてプラス〇・四、ふえるということです。  それから、実質輸出もプラス五・四になる。ところが、輸出は、現在のところずっと落ちてきていますから、果たしてこんなにいくかどうか。  それから、輸入実質を見ますと、プラス三・五にとどまるということです。現在はこれ以上ふえています。  そういうことから見ますと、非常に、この見通し、現時点から見る限りは、二〇一四年度はこのように、政府見通しのようにはいかないのではないかと私は思います。もし、二〇一三年度並みで二〇一四年が推移するとすれば、完全にマイナス成長になります。  せっかくここまで安倍総理が宣言されたんです。これは歴史的な意義があるんですよ。デフレを解消しましょう、成長こそ財政再建ですと。これは本当に、今までの総理の中で、麻生総理は一時おっしゃったことがありますけれども、それ以外の方はみんな、冷酷な、デフレ宣言のような顔をしてばっかりの首相であられたように私は記憶しています。それに対しては、非常に明るいムードを出された。  しかし、それが今、ユーフォリアが消えつつありますから、これをもとへ戻すためには、第二次の補正予算が必要だと思います。  ここに書きましたとおり、国土強靱化の加速のための政府投資、それから、減災、防災からの地域開発、教育施設の拡充など、それから、金額では、真水で二十兆、最低規模予算二十五兆、このぐらいしませんと、このまま落ち込んでしまいます。せっかく上がりかけたんです。ムードも消えます。  そういうことを考えて、ぜひとも、こういった現状をしっかりと直視して、二次補正予算が必要だということを私は申し上げておきたいと思います。  その次のページに行ってください。その次のページでは、超金融緩和が果たしてどういう状況なのかということです。  これも既に皆さん、いろいろな数字で御案内だと思いますけれども、この異次元の金融緩和というのは、現在ではむしろマイナス効果の方が大きいです。  黒田総裁とか、それから浜田宏一さん、岩田規久男さんの理論というのは、そこの真ん中辺の右のちょっと上に書いてありますけれども、マネタリーベースの資金をふやせば、マネーサプライがふえるし、景気がよくなるし、物価が上がってデフレが解消するというんですね。  そのメカニズムは左に図解しましたとおりで、日本銀行にありますマネタリーベース、これは、社会に出回っている現金と金融機関の当座預金です。これが、二〇一二年末が百三十八兆。これを二百七十兆に倍増しようと。  しかし、中身を見ますと、実際には、金融機関にある当座預金を、三・七倍ぐらい、四倍ぐらいにするということになるんですね。大変な数字なんです。  ところが、去年の四月から十二月までのこの流れを見てみますと、その右に書いておきました。確かに、マネタリーベースは六十七兆ふえました。しかし、マネーストックというか、一般に回ったお金は三十三兆です。しかし、これも、住宅関連で駆け込みがありましたから、これは恐らく、このままいきますと、消費税が上がると、落ちると思います。  この差額三十四兆というのは、どこへ行ったか。これは全部、日本からアメリカへ回って、アメリカのヘッジファンドが使って、そのヘッジファンドが実は日本の株を動かしているんです。さっきから、外資が株を動かしているとありましたが、ベースは日銀マネーです。  ですから、結果的には、こういう形をして、円の切り下げ、結果的に百円を超しましたけれども、かえって貿易収支は赤字になりましたし、特に切り下げ効果というのがほとんどないんですね。輸出は余りふえていません。輸入はというと、減らないんですよ。普通なら減らなきゃいけない。減らないんです。  ですから、結局、私は、個人的意見ですけれども、円というのは、九十円ぐらいが一番いいと思っています。今のままでは、そういうヘッジファンドなんかにかき回されていますから、投機的な動きが非常に強いと思います。     〔委員長退席、上杉委員長代理着席〕  アメリカでも、実を言いますと、バーナンキがやめましたけれども、その背後には、こういうことがあるんですよ。  二〇〇八年の九月を一〇〇にしまして、ちょうどリーマン・ショックの後ですね。マネタリーベースというのは大幅にふやしました。法定準備率の十六、七倍ということで、物すごくふやしたのです。ところが、マネーサプライ、マネーストックというのは、逆に、減っています。  つまり、超金融緩和というのは実体経済にはプラスにはなっていないということは、アメリカで既に証明されています。  では、アメリカはどうしてデフレにならないかというと、アメリカというのは膨大な軍事費がありますね。あれは公共投資です。これで需要を抱えているわけですね。  そこで、最後のところに書きました。やはり日本でも、しっかり財政主導、金融フォローで有効需要を喚起する。  仕事をつくらなきゃいけないんですよ、仕事を。今足らないのは仕事です。お金がないんじゃないんです。それには、マネタリーベースの増加がしっかりとマネーサプライ、マネーストックに直結するようにしなきゃいけない。  そういう方法があります。その次をごらんください。これがまさに国土強靱化、それに関する計画です。まず、そこを読みます。  経済の好循環と競争力強化対策としては国土強靱化が最適である。安倍総理の経済界への賃上げ要請は評価できます。しかし、好循環経済的に生じるような政策の仕組みと長期的期待感が必要であり、それは、輸出立国から内需主体の立国、そういう理念に基づいて、長期的な国内需要の喚起政策が必要なんです。  これをやらないから、国内でも、経営者も賃上げをしようと思わないんです。まだデフレが続いています。数字の上では、デフレは一段と進むと思います。  では、今までどういう好循環があったかというと、その下に図表があります。これでお読みいただきたいと思います。真ん中から上の方ですね。  一番上が、財政の歳出額です。これは、一九七三年、石油危機から以降、ずっと四十年間とってみました。ずっと上に行っているのがその数字ですね。  それから、その下の、丸いのが税収です。これが、バブル崩壊後、特に橋本財政改革後、大きく開き、一時戻ったんです、小渕総理のときに。ところが、その後、小泉総理になったら、デフレ政策で一挙にワニの口のように開いてしまったということです。  その下、黒い点線でずっと上がっていますね。これは名目GDPの増加率です。つまり、一九七三年からずっと名目GDPは上がってきたんですよ。  これはどういうことかといいますと、その下に書きました。  日本は、一九七〇年代の石油危機を省エネ機器の輸出で克服し、国民の預貯金が増加した。そこで、余剰の預貯金は日本の民間投資だけでは使い切れないために、政府が建設国債を発行して吸収し、それを社会的インフラ部分へ投資することによって、民間投資を誘発し、官民一体となって、日本経済を安定成長させてきた。日本経済成長は、官民ベストミックスと言われるように、政府投資が民間投資を補完する経済体質なんです。  その下です。  ところが、バブル崩壊後、不良債権処理が一段落した一九九五年—九六年に公共投資の効果が出てきて景気が好転しているときに、九七年に橋本財政改革で増税と緊縮財政で一挙に経済成長がマイナスに転じて、その後、小渕総理の景気対策で持ち返したのに、二〇〇一年からの小泉構造改革、二〇〇二年からの特に基礎的財政収支均衡策というデフレの財政規律をとったことが大きなマイナスだったんです。それで、こういう惨たんたる状況になってしまった。  それで、グラフの下の真ん中にちょっと小さく描いてありますね。これは、GDPに占める公共投資の比率です。ピークでは一〇%に行きましたし、一九九五年ぐらいは九%だったんですね。それがもう半減しています。ですから、お金が回らないんです。  つまり、好循環というのは、中央にある、政府にある、都会にあるお金を地方に回さないといけない。回すためには、実はもう財政しかないんです。財政は、公共投資と地方交付税交付金です。ですから、公共投資をしっかり、生活に密着した公共投資、それをしない限り、もう好循環は生まれません。  安倍総理が、好循環に期待している、これはもっともです。私はサポートしています。しかし、それには、しっかりした政策が必要です。  その次のページをごらんください。  日本はなぜこんなに低成長かといいますと、投資が足らないんですよ、投資が。グラフをごらんください。二つ描いてありますね。左側は、これは民間投資です。  これで純投資という言葉を使っていまして、余り聞きなれないかもしれませんが、純投資というのは、設備投資の増加額から減価償却投資の回収を引いたネットの数字です。これがプラスなら、経済成長にプラスになります。マイナスなら、マイナスの足を引っ張ります。これで見ていけば、はっきりわかります。  左の方は民間ですね。これは、バブルで左の方が上がっていったのは、やはり投資があったんですね。それから、その後、マイナスが始まったのが、小泉総理になってからのデフレ政策です。それから、その後、民主党政権になって、またデフレを強化しました。だから、結果的には、もう、じり貧になっている。  一方、その右側は公共投資です。  左の上から下の方へ落ちているのが、公共投資の増加額です。  それから、左の下から右に上がっている、細く上がっているのが、減耗額、回収額です。二〇〇七年から、公共投資は回収額なんです。だから、笹子トンネルを初めいろいろなところで、もう既にみんな回収投資、必要な投資もしていないんですよ。それが大きな原因なんですね。  ですから、こういうことをしっかり考えて、やはりこれは財政支出をきちっと立てて、毎年二十兆、五年で百兆、自民党さんの十年で二百兆、これを私はサポートしています。  では、財政、金はどこにあるのか。実は、いっぱいあるんです。財政認識というものを見ていただきたい。  その下を見てください。まず、この予算委員会でもちょっと話題になっていましたけれども日本の債務というものをどう考えるかですね。  左のグラフを見てください。粗債務とありますね。粗債務というのは、政府の総借り入れです。これは中央政府だけとっています。それから、その右側金融資産。これも政府が持っています。  それで、粗債務は財務省が出しているんです。それから、金融資産は内閣府の国民経済計算に出ています。両方を合わせますと、こういう形になります。これは両方を合わせた政府の数字です。はったりは何もありません。根拠はそこです。  こういうふうに見ていきますと、左の方の粗債務、これは一般会計と特別会計に分けて考えないといけないんですね。これを混乱しているから混乱するんです、実は。ですから、ちょうどこれに九百九十七兆とありますね、しかし、一般会計は六百九十九兆、ざっと約七百兆、その下のざっと三百兆は特別会計なんです。  その下に書きましたが、特別会計というのは、端的に言うと、政府が銀行をやっているんですよ。それで、ざっと三百兆とすれば、その二百兆は財政投融資で使って、そしてそれを政府系金融機関で貸している。だから、返してくれるというのは、その借入人の人が返してくれる。国民の負担ではありません。  それから、残りの政府短期証券、前は百兆ぐらいだったんですが、今はもう百三十一兆となっていまして、さらにことしもふえそうですけれども、来年度予算でもふえそうですが、これはほとんどアメリカの国債を買っているんです。だから、これは、アメリカがそれこそ破綻すれば返ってきませんけれども、そうでない限りは、この特別会計というのは国民の負担にはならないんです。  ですから、ここで私はこの予算委員会の先生方にお願いしたいことは、政府債務を一般会計と特別会計に分離して国民に出していただきたい。そうすれば、混乱がなくなるんです。  それから、特別会計は国民の負担にはならないんだという認識を持っていただく。それが純債務の考えですね。そうすると、その上に書きました粗債務というのは九百九十七兆あるんですが、純債務で見ると、これは四百九十九兆。要するに、まさに半分です。  これは予算委員会でもちょっと声がありましたけれども、この辺のところはしっかりと、これはやはり、予算委員会といいますか、政治家の先生方が財務省にきちっとお願いしていただきたいと思います。  その次のページをごらんになってください。  私はかねがね、五年百兆の政府投資の経済効果ということを申し上げておきました。これは、毎年二十兆の政府投資を継続していきますと、経済成長で税収による増加があります。三年目には、実は税収増加がほぼ二十兆円近くになりますので、収支はとんとんになります。五年目でほぼ均衡いたします。そういたしますから、これで十年二百兆というもののベースも、最初の五年で十分ベースができてくる。だから、財政負担は特に生じないんです、税収が上がりますから。  それで、なぜこういうことがなかなか、政府筋の方でやや否定的な意見があるかというと、そこにグラフがありますね、これは、五兆円の公共投資を継続的に増加させたときの経済効果です。  これは、最初五兆円出して、二年、三年後どうなのかということで、いろいろなモデルを使って、乗数効果というのがございますね、投資をする、次々に波及する。これはアメリカなんかでもやっています。これで見ますと、乗数効果といいますか、大体、二から二・五ぐらいふえるんです。  ところが、下に、内閣府のモデルだけクエスチョンマークがついています。これだけがマイナスにおっこっちゃうんですよ。国際的に、これは全く比較もできない。  非常にいい証拠がありまして、その右のところに書きましたけれども、内閣府の狂った羅針盤、内閣府のモデルだけが異常に低い。アメリカの議会予算局が、三年で当初予算の二から二・五倍の経済効果が出るということを報告しています。これは、予算局が出している報告書、二〇一三年二月で、インターネットで検索できます。ですから、そういうことを考えれば、投資効果は十分あるんです。  あとは、その下に書きまして、細かく計算しておりますが、これからこういうモデルをきちっとやる。問題は、継続してやることと、それから、きちっと効果を見ながら有効なところに投資をしていく、生活に密着したような投資、そこからきちっと始めて展開させていく。減災、防災、これなんかは一番ポイントです。  そうしていけば、たとえ消費税が上がっても、マイナス効果を埋めることが可能になります。そういうことによって、消費税に頼らないで、実質成長をプラスにすることによる税収増加を図っていくべきだと私は考えているんです。  その次のページをごらんください。  デフレ型の財政規律を廃止して、成長型の財政規律にすべきであるということを申し上げたいと思います。  安倍総理がデフレを解消しようというのであれば、いろいろな指標も、ちゃんとデフレを解消する視点に立ったものをつくらなきゃいけないんです。ところが、デフレ型の財政規律の典型的なものが基礎的財政収支均衡策です。  なぜならば、そこに簡単な図式がありますね。財政規律の指標というのは、これは世界どこでもそうなんですが、分母は名目GDPです。分子は純債務です。あるいは、粗債務をとっているから粗債務でもいいんですが、純債務でとるのが一番正しい。これが数年かけて下がっていけばいいんです。  ところが、この基礎的財政収支均衡策をとるということは、分子だけを抑えよう、抑えようとするんですよ。そうですね、今。特に、経済財政諮問会議なんかは、いつもこればかり出ますね。  そうではなくて、いかにして名目GDPを上げるか、これが成長なんです。経済成長があって、それが初めて財政再建につながるというのは、この式から言える。  だから、二番目に書いたとおり、名目GDP成長率が純債務の増加率を上回る、こういうところが一番のポイントです。国土強靱化を継続していけば、二年、三年で、三年目ぐらいからずっとこの効果は出てきます。  それで、基礎的財政収支を使ったのは、世界じゅうでアルゼンチンと日本だけなんです。  アルゼンチンは、一九九〇年代でしたか、アメリカの指導でこれをやったんですね。ところが、二〇〇一年に、基礎的財政収支均衡ですから、均衡しました。均衡したときに国家破綻です。対外債務も不履行にされた。  つまり、デフレ型ですから、日本でもこれをどんどんやっていけば、まさにアルゼンチンの二の舞ということもあります。  それから五番目、産業競争力、成長戦略という毒矢と書きました。確かに、成長戦略、いろいろ必要です。しかし、ここには、成長戦略として、供給サイド強化、つまり、これは大企業優先です。  この経済学は、デフレ政策経済成長を阻害し、グローバル化と規制緩和はデフレを助長します。これは、新自由主義とか市場原理主義という、まさに悪魔の経済学なんです。  実は、もう既に自民党さんは、小泉内閣はこれをとってこられたんです。それで政権を失われたんですよ。だから、一旦民主党に行ったけれども、どうも民主党も余り期待に応えられなかった。さあ自民党さん、また頼むよというんですけれども、同じこれをやってもらっちゃ、ちょっと困るんですよね。  もちろん、自民党さんが全てこの考えだとは申し上げません、いろいろと御議論されていると思いますから。ですから、そういう視点に立って、やはり需要を喚起していくことが必要だということをよくお考えいただいて、タクトをとっていただきたい。  それから、岩盤はといって、岩盤にドリルで穴をあける、安倍総理もいろいろ語感がいいですけれども、この中には国民のセーフティーネットがあるわけですから、セーフティーネットまで破壊されては困ります、雇用の合理化とか。  それから、規制緩和ですね。これもやはり、レントシーキングといいますか、この規制緩和を新たな利権にしようという動きが非常にあるわけです。これは小泉構造改革のときにもありましたね。はっきり言って、竹中さんのことについていろいろ書かれた論文というか、あります。でも、私は、そういう個々のことを申し上げるよりは、本当に国民のためになるような規制緩和というのをもっと厳選してやるべきだということです。  それから次、六番目には、戦略的経済特区というのがあります。  実は、なぜこんなものをこの世界第三位の大国の日本でやらなきゃいけないのかと思います。これはアメリカからの指示ですよね。特に、二〇〇三年でしたか、アメリカから対日年次要望書で、こういうのをつくれということを言ってきたんです。それを結局、また蒸し返しになってきたんだと思います。  しかし、これで私が非常に気になりますのは、特区については担当大臣の行政権しか及ばないということを安倍総理もおっしゃいました。そうなると、これは憲法違反であり、こんなことが許されるんでしょうか。しかも、そんなにして外資を呼ばなきゃいけないのか。  日本は、世界一の金持ち国なんです。日本のために日本人が金を使おうとしないからいけない。それは、デフレ政策をとっているからです。だから、外資を呼ぶ必要はないんです、はっきり言って。  私は、これについてもぜひ、自民党さん、まあ現在はそうですが、慎重に、しっかりと、国益にかなうように御配慮を賜りたいと思います。  時間がもう参りますから、最後のページ、日本型資本主義を確立すべきである。これは私の考えです。安倍総理は、瑞穂の国の資本主義があるということをおっしゃいました。いいことおっしゃるなと思ったけれども、最近、何かその声も余り聞きませんね。  私は前から、日本型資本主義ということをいろいろなところに書いたりしていました。八つ書きましたけれども、ちょっと時間の関係で、重立ったところを四つ言います。  新自由主義とか市場原理主義から決別すべきです。あれは悪魔の思想なんです。  それから、輸出立国から内需中心の福祉型国家に転換すべきです。  それから、株主の利益よりも国民の雇用を重視する、そういうことをしっかり考えるべき。  それから最後、農業は、株式会社組織ではなくて組合組織でやるべきです。組合組織というのは、利益を分かち合うんです。株式会社というのは、株主が利益をまず持っていっちゃうんですね。  それから次に、法人税の引き下げ。  これは私は、必要ないと思います。むしろ、景気対策をしっかりとったら、法人税は引き上げるんです。  実は、クリントンがこれで成功しています、一九九三年。これは添付資料に細かく書いてありますし、ここにも書きましたけれども、クリントンは公共投資をずっと継続したんですよ、八年間。だから、財政の赤字が五年で解消して、八年目には三千億ドルの黒字になった。そのときには、八年継続して、同時に、最高税率を引き上げています。  そのことも考えますと、今、法人税の引き下げの議論がありますけれども、私はこれは全く必要ないと思いますし、後ほど御質問があれば、具体的にお答えいたします。  最後に、経済財政諮問会議に関しまして一言申し上げたいと思います。  実は、現在、安倍総理も一生懸命頑張っているし、デフレ解消ということを皆さん期待しているんですね。ところが、経済財政諮問会議から出てくる意見は、足を引っ張るようなことばかりです。何か貧乏神というか、これは死神かなという意見が非常に強い。  例えば、私、この前、海外に行って驚いたことがあるんです。日本は、死体ですよ、デッドボディー、死体とか遺体に消費税をかけるんですかと本当に言われたんですよ、海外に行ったときに。えっと驚きました。経済財政諮問会議のある方は、そういう提案をされておられます。  しかし、これは余りにも冷酷ですし、国内でも言われていますが、やはり人間性といいますか、ある意味では、市場原理主義的な考えが徹底してきますと、非常に冷酷になっているんですよ、人間が。  ですから、そういうことを考えまして、こういう国際的にもいかがなものかというような発言が出るようなことはぜひとも回避していただきたい。  ある意味では、経済財政諮問会議の方々は全部デフレ型です。これを総入れかえさせて、インフレ型で、もっと建設的な方に入れかえられたらいかがでしょうか。これをちょっとお願いして、公述を終わらせていただきます。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  88. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 ありがとうございました。     —————————————
  89. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。うえの賢一郎君。
  90. うえの賢一郎

    ○うえの委員 自由民主党のうえの賢一郎でございます。  各公述人の皆様におかれましては、大変御多用の中、それぞれに貴重な御意見あるいは御提言を頂戴いたしまして、本当にありがとうございます。また、当委員会の質疑にぜひ反映をさせていきたいというふうに思っているところでございます。  最初に、早速でございますが、末澤公述人と島本公述人のお二人にお伺いをしたいと思います。  先ほど、お二人から、今後のいろいろな経済見通しにつきましてお話を頂戴いたしました。もう少し短期的な見通しについてお伺いをしたいというふうに思いますが、その中で、先ほど来、株価の調整局面だというお話、アメリカの金融政策の変更であったり、あるいは新興国の経済の問題等々につきまして御指摘をいただいたところでございます。  この四月に消費税の引き上げがございます。九七年の引き上げのときと比べて、私どもが選挙区を回らせていただくその感覚で申し上げますと、九七年のときは、たしか三年少し前に決定をして、ある程度期間があったわけですが、直前になって相当混乱をしたという印象がございます。ところが、今回につきましては、段階的な決定のプロセスを経ているようなこともありますし、あるいは社会保障に関する認識が広がっているというようなこともありまして、九七年当時と比べると御理解をいただいていることも相当進んでいるのかなというふうに思います。  ただ、実際に消費税が引き上がったときのインパクト、これにつきましてはいろいろな見方があるようでございます。とりわけ私ども大事だと思っているのは、四—六それから七—九の経済指標がどのような形になっていくのか、それは非常に注目をしているわけでございますが、その点も含めまして、消費引き上げのインパクトにつきましてまず御説明をお願いしたいというふうに思います。  そして、それを踏まえてですが、もう一点の質問といたしまして、先ほど少し言及がございましたけれども、今回の予算案自体が今後の、当面の経済運営に即したものなのかどうか、それにつきましての御意見を頂戴したいと思います。  最初に申し上げましたが、末澤公述人と島本公述人、それぞれにお願いいたします。
  91. 末澤豪謙

    末澤公述人 それでは、まず私の方から御回答させていただきます。  まず、当面の金融市場の見通しでございますが、先ほど新興市場がやや混乱しているというお話を申し上げました。こちらはやや長引く可能性もございます。中国等でいわゆるシャドーバンキングの問題も出てくる。  ただ、先ほど申しましたように、アメリカの量的緩和は、まだこれは実は拡大が続いているんですね。縮小しているという報道がございますが、厳密にはバランスシートは年末まで拡大する見通しでございますので、その辺では、すぐにどんどんレバレッジ的な動きが本格化するというよりは、私は、むしろ数カ月後には一旦落ちつくのではないかと思っています。  また、アメリカの大寒波もさすがに三月になると少し落ちついてくるでしょうから、今後、アメリカの経済指標も春先にかけて上向いてくれば、やや、むしろ、リスクオンといいますか、株高、円安方向に春先以降は転換してくるだろう。そういう中で、四月に消費増税を迎えるわけですね。  私は、九七年との比較ということで申し上げますと、前回は、たしか、住宅投資、マンション販売等、いずれも約二割弱の落ち込みをもたらしております。ただ、今回は、住宅減税も相当、四月以降、増枠することもありまして、また、まだやや人不足の問題もありまして、どんどん足元で着工しているわけではございませんので、住宅関連についてはそんなに落ち込まないだろう。  ただ、やはり車だとか耐久消費財、こちらにつきましては、生産年齢人口自身が減ってきていることもありますので、四—六の反動というのはそれなりのものはあるだろう。そういう意味では、そういう状況に対して、今回、五・五兆円の補正、追加ベースでは、追加補正ではたしか七兆円規模だったと思いますが、組まれたこともありまして、執行率を早めるということになれば、相当そういった落ち込みをカバーできるんだろうと思います。  ただ、ここ数年、やはり復興事業の拡大、たび重なる景気対策もあって、やや執行率が落ちている、ないし、使い残し、不用が補正でも相当大きな金額になっていますので、やはり、そういう意味では、実際にそういう補正の効果を着実に打ち出していく、これが重要だろうと思います。それができれば、十分、七—九以降、リカバリーはできるのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  92. 島本幸治

    ○島本公述人 消費税率引き上げのダメージは相応にあると思います、駆け込み需要の反動が出てきますから。  特に、今回注意した方がいいのは、十—十二月期の成長率が若干下振れました。一—三月期、これは雪の影響でさらに下振れると思います。そういった点で、来年度の日本経済見通しは、恐らくこれから下方修正がふえてくると思います。  ただ、では、これで消費税は問題かというと、私は、そうではなくて、日本経済の大きな流れを変える要因にはならないと思っています。  むしろ、日本では、消費税トラウマといいますか、先ほど九七年の例も挙げられましたが、最初の消費税率引き上げは、その後、日本のバブル崩壊が始まりました。二度目の消費税率引き上げの後は、アジアの危機であるとかロシアの危機であるとか、九八年には日本金融危機も起こりましたので、どうしてもそのイメージが強いわけです。  ただ、先進国の中では、ヨーロッパでは、例えば付加価値税率を段階的に上げている国というのはそんなに珍しくないんですね。そのたびに経済が失速しているかというと、そういうことではないと思います。私は、むしろ、日本経済そのものが大きな岐路に立たされているので、しっかり日本経済そのものの信頼性を高めていく上で、必要な税制の中にやはり消費税率というのはあると思います。  それからもう一つ、ことしの短期的な見通しということであれば、私は、実は大事なのはアメリカ経済をどう見るかということだと思います。  そもそも、昨年来の日本経済の回復、株価上昇、あるいはドルの上昇、これらを大きく支えてきたのがアメリカ経済の持ち直しです。アメリカ経済そのものについては、緩やかに金融緩和を縮小していく動きはこれから続くと思いますが、アメリカ経済の実体経済はさほど弱くないと私自身は見ていますので、そうした点で、日本経済の腰折れ、下振れはさほど心配する必要はないだろうというふうに考えております。
  93. うえの賢一郎

    ○うえの委員 ありがとうございました。  お二人のお話でございます。いろいろな、若干のリスク要因はあるとしても、全体としてはいい方向に進むのではないかというような印象を持たせていただきました。  先ほど島本公述人がおっしゃったように、やはり日本消費税のトラウマが非常に強いわけですが、今回、五から八%に引き上げることで、そんなに大きな落ち込みがないということであれば、そのトラウマについてもだんだん解消されていくのではないかなというふうに、私なりにはそう考えているところでございます。  次に、中長期的な見通しにつきまして、これも末澤公述人と島本公述人のお二方にお伺いをしたいと思います。  先ほど来、共通したお話として、経常収支の赤字転落というお話がございました。あるいは、家計の貯蓄率の一段の低下というような御指摘もいただいているわけでございます。  こうしたものが、例えば、先ほど二〇一五年問題というお話もございましたが、これから十年、二〇二五年までの間、私は、これが一番日本が乗り越えなければならない大きな山だというふうに思っております。この山を乗り越えると、その後は比較的、財政運営、経済運営、ともにいい方向に行くのではないかなという感じを若干持っているわけでございます。  その二〇二五年までの経済状況、特に経常収支の赤字であったり、家計の貯蓄率の低下等々、御指摘いただいたことが日本経済にどういった影響を与えるのか、それにつきまして、もう少し突っ込んだお話をいただければと思います。末澤公述人と島本公述人にお願いをしたいと思います。
  94. 末澤豪謙

    末澤公述人 先ほども御説明させていただきましたように、日本人口構成は、ことしの末以降、大きく変わってまいります。いわゆる団塊世代の方々が、二〇一四年末には皆さん六十五歳、二〇一九年末には皆さん七十歳代、二〇二四年末には皆さん七十五歳代という、後期高齢者状況に入ってくるわけですね。先ほどの人口ピラミッドのグラフをごらんいただいても、いわゆる、かつての富士山形から、つり鐘形、ひし形、今後、つぼ形に変わっていく。しかも、つぼ形といっても、真ん中が丸いんじゃなくて、上が大きい、そういう形。  そうしますと、これはかつて世界でも見られたことのない構成でありますし、やはり社会保障費が大きくふえてくる可能性は高い。そこをどうやってしのいでいくか。  これは、負担増も必要ですけれども、やはり歳出改革もやっていかないと、企業にとっても、つまり、グローバルに競争する企業は社会保障のコストも相当上がってまいります。もう既に法人税の減税の議論が出ていますが、実は、社会保障費というのは、これは毎年、労使折半で上がるわけですから、これをずっと継続していくと、なかなか国内で生産活動、営業活動を継続するのは難しくなる可能性がある。そういう意味では、今後十年間において、そういった少子高齢化、当然、少子化対策ももう一段進める必要があろうと思いますが、そういった中で、どうやって産業を国内に残す、こういった検討をしていく必要があるんだろう。  あとは、今回、二〇二〇年にオリンピックが東京に招致されることになります。これは、私は、大きな面では奇貨といいますか、チャンスだと思うんですね。  オリンピック向けのインフラ投資自身は、これはやや貿易収支の赤字要因です。経常収支にとってもマイナスです。ただ、やはり観光立国ですね。昨年、一千万を初めて超えましたが、政府は二〇三〇年に三千万という目標を掲げていらっしゃいますけれども、これを、早い段階で三千万の海外からの旅行客を実現できれば、実は少子高齢化においても問題ないですね。つまり、グローバル化、新興国の生活水準がよくなること自身が日本に来る理由になりますし、別に、少子高齢化の日本においても観光客の受け入れは十分可能です。  ですから、今後、貿易収支の改善とともに、やはりサービス収支ですね。従来、サービス収支、経常移転収支は赤字が前提だったんですけれども、こちらを、なるべく赤字を減らし、できれば黒字化する。あと、パテント料だとか、海外の配当利子の運用利回りを上げることで、成熟国だけれども、場合によっては、貿易・サービス収支、経常移転収支の全体としての赤字部分を所得収支で埋めて、対外純資産は維持できる。  こういった状況になれば、日本に当然企業の立地が続くでしょうし、日本財政、国債市場にとっても極めて安定な状況は続くんだろう。そういう意味で、いろいろリスクは今後とも大きくなる局面だろうとは思いますが、まだ十分対応は可能だと考えております。
  95. 島本幸治

    ○島本公述人 二〇二五年まで展望した場合、日本財政再建は重要な課題だと思います。  日本財政をめぐる議論は非常に両極端で、そろそろ国債暴落が来るのではないかとか、あるいは、日本は債権国だから心配しないでいいんだ、もっと公共投資をふやすべきだ、両極端な議論があろうかと思います。  私自身は、短期的には、国債市場、暴落どころか、膠着が続くと思います。これだけ日銀が大量に国債を買っているわけですから。ただ、中長期的には、やはり日本国債市場あるいは財政のリスク、看過できないものがあると思います。  人口動態のポイント末澤さんが指摘されたので、私はまた別の点で、マーケットの視点でお話をしたいと思います。  過去の経済分析とこれからの経済分析で、同じことが繰り返される部分もあれば、不可逆な流れもあると思います。その不可逆な流れの中に、やはりマーケットのメカニズムが大きくなっているということです。  私の話の中で、今の世界経済状況は六十年前の世界の大恐慌の局面と似ているというふうに申し上げました。  ただ、今は、当時と違って、マーケットの影響も強いし、変動相場制がもう既に始まっているわけですね。つまり、日本財政が大丈夫かどうかということは、市場からのコンフィデンス、安心感をしっかり得続けることができるかどうかがポイントだと思います。  新興国のみならず、先進国でも、過去、いろいろな国が財政不安、財政危機を経験してきました。例えば、最近ではヨーロッパのギリシャの例が有名ですが、その前には、通貨統合する前のイタリアでも財政危機がありました。これは、やはりマーケットの見方が変わって、金利が上がったことそのものがまた財政負担につながる。すなわち、市場メカニズムが一定以上強くなっている経済社会では、悪循環が発生するリスクは常にあるわけです。  例えば、今の日本経済はアメリカ経済の好調に支えられていますが、アメリカ経済の好調が続いた場合、いずれアメリカは利上げを検討しなければいけない。こういうときに、アメリカと日本の金利差拡大が円の下落を促す、あるいは金利の上昇を促す、こういうリスクも中長期的には出てくるわけでありまして、マーケットの視点で考えた場合も、中長期的な日本財政再建の重要性はむしろ高まっている、こういうふうに考えております。
  96. うえの賢一郎

    ○うえの委員 ありがとうございました。  それぞれに示唆に富む発言でございまして、参考になりました。  済みません、時間の関係上、二人しか質問できませんでしたことをおわび申し上げまして、これで終わります。  ありがとうございます。
  97. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 次に、石田祝稔君。
  98. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。  きょうは、四人の公述人の先生、ありがとうございました。  余り時間もございませんので、早速いろいろとお伺いをさせていただきたいと思います。  まず最初に、木村惠津子公述人にお伺いしたいと思います。  ことし、二十六年度の予算で、初めて社会保障関係費が三十兆円を超える、こういう二十六年度になりました。そして、将来的に、先ほどお話がありましたように、団塊の世代の方が七十五歳になる、こういう二〇二五年というのが一つの基準というんでしょうか、そういうふうに我々も考えているんです。  そういう中で、年金、医療、介護、また子育てというのが社会保障関係費の中に入ってきたんですけれども、特に、年金は大体計算ができる、しかし、医療と介護がこれからどうなるのか、これが非常に大きな課題でございます。  特に、公述人は介護のことを重点的にお話をいただいたと思いますけれども、その中で、千七百万人に研修をさせたい、こういうお話でございましたが、そこの研修のことといわゆる介護の費用の低減、これについての関係をもうちょっと詳しく教えていただけますか。
  99. 木村惠津子

    ○木村公述人 研修につきましては、では、千七百万人というのがどういうボリュームであるかということなんですけれども、単純な試算ですが、六十人の講師がいましたら、大体十年間でできます。百人の講師でしたら、大体七年間。それは、準備も含めてそのぐらいでできる人数ということでございます。  先ほどの資料の中に実は二枚ほど入れさせていただいているんですけれども、私は、日本認知症予防学会というところに入っておりまして、これは、昨年の九月に行われた第三回学術会議の資料でございます。この中に載っております理事長の浦上先生、それから川瀬先生などが大変熱心に具体的なこともされておりまして、広報活動も行っております。  今回、その研修のお話を私もしましたら、日本認知症予防学会で全面的に協力するから、喫緊の課題なのでぜひ何とかやってほしいというお話をいただいておりますので、その辺はやっていきたいかと思っております。  大切なことは、今後、認知症が非常に多くなりますね、MCIも入れますと八百万人を超えるということになりますので、認知症状が出たときの初期対応というものが非常に大切になってまいります。適切な対応ができますと、非常におくらせることができる、費用もかからずに安定したことを長引かせることができるということでございます。そこのところを知っていると知っていないとでは、非常に大きくその後の財政にかかわってくると思います。  そういうことでいいますと、なるべく早い段階から多くの方にやっていくということで、多分、財政的には、私の試算で恐縮なんですけれども、二〇二五年、四・四兆円の削減ができるのではないかというふうに見込んでおります。これは単年度で四・四兆円ですが、二十一兆円には毎年行くわけですね。そういうことを考えますと、トータルで二十四兆円ぐらいの削減になるというふうに思っております。二十六年度の法人税が十兆円ぐらいの予算でございますので、そこから考えますと、四・四兆円の削減がもし本当にできますれば、それは大変大きなことかなと思います。
  100. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 今お話をいただきましたが、公述人資料の中でも、お知り合いの女性の方が、においがわからなくなった、これが認知症の始まりでしょうと、御自身でこういう御判断をなさったということがここに資料で書かれております。  認知症の方は、認知症とはなかなか自分ではわからない、周りも、認知症なのか、物忘れがひどくなって加齢の通常の現象なのか、なかなか見分けがつきにくいし、特に、自分の親がそういうふうなものにかかっているというのは、御本人も、また子供さんも、認めるのはなかなか勇気が要るというか、そういうことで、客観的なメルクマールが自分の中にないと、確かに一日一日と日延べをしておくれていってしまう。これは大きな課題だと私は思いますので、これは大変に参考になりましたので、しっかりまた勉強させていただきたいと思います。  それで、続いて菊池公述人にちょっとお伺いをいたしたいんですけれども、我が党のことも、十年間百兆の防災、減災、非常にいいと。その前には、自民党の二百兆がいいんだ、こういうお話でもございました。  それで、二百兆、百兆という数字の妥当性というのも当然いろいろ厳しく問われたわけでありますが、お金を出すには、当然、財源という形でどこで手当てをするかと。そうすると、今の税収でいくと、なかなか、実際的な税収の中からというよりも、やはり国債発行、こうならざるを得ないわけですね。そのときに、我々もいろいろな議論をする中で、国債の信認という点からいくと、今の非常に低い国債の利率、これが上がってしまうと大変な財政負担が生じてしまう。  ですから、財源で使う場合に、そういう国債の利率が上がってしまう、長期金利が上がるというリスクと、税収がふえるだろうというときまでに、結局、非常に乖離があって、ここのところはどうするのかという課題も出てくると思うんですが、公述人も熱心におっしゃっていただきましたので、ちょっとそこのところをいま一度教えていただければと思います。
  101. 菊池英博

    ○菊池公述人 先生、実は、御質問のまず最初の百兆円の根拠ということですけれども、これは数字的な根拠がございまして、添付の資料の三枚目をごらんいただけますか。こういう資料がついております。右下に三というのがございます。よろしゅうございますか。  百兆というのはここに根拠があるんです。  まず、このグラフです。これは、上が昭和恐慌、下が平成恐慌なんです。  私が先ほど申し上げたとおり、日本経済は既にもう恐慌状態なんだということは、昭和恐慌のいろいろなデータを見ればはっきり言えるんです。違いは、昭和恐慌はどかんと短期間に来たんですよ。ところが、平成恐慌は、じりじりじりじり十年たって真綿で首を絞められているから、みんなわからなくなっちゃった。しかし、数字からいいますと、はっきりと、もう昭和恐慌に匹敵する、あるいはそれ以上になっている。それは、こういうことです。  まず、上をごらんください。上が昭和恐慌ですね。昭和恐慌というのは、一九二五年からデフレが始まりました。二四年を一〇〇にして、ずっと指数化していきますと、昭和恐慌が始まりました一九三〇年のときには累積デフレ率が二一%になった。つまり、デフレは前年に比べて何%、何%と言いますから、実は、経済にはどんどんどんどん浸透していくわけです。浸透の度合いをはかるためには、累積ではかる必要があるんですね。累積デフレ率もはかりますと、ちょうど二一%ですね。一九三〇年、浜口雄幸さんがデフレ政策をやったとき。  一方、平成恐慌はどうか。その下をごらんいただきますと、今のデフレは一九九八年から始まっております。そこで、一九九七年を一〇〇にして、前年に比べてGDPデフレーターがマイナス幾ら幾らと、こうなっていますね。前年に比べて幾らだから大したことない、〇・五か一・五かと思っているけれども、累積していきますと、実は二〇一二年で二一%なんです。累積デフレ率は二一%です。  そうすると、既に二一%のデフレなんだ。では、一九九七年の基点のときの名目GDPは幾らだったかというと、五百十三兆です。五百十三兆に二一%掛けていますね。そうすると、百八兆です。だから、百兆というものは完全に累積デフレで、需要の不足になっているわけです。  だから、内閣府なんかが出すものは、短期間、前年に比べてどうかということですよ。それでも今、マイナスなんですよね。ちょっとぐらいよくなったとか、もうじき解消とか言っていますけれども、でも、累積で見ると、これだけひどいんです。ですから、やはり百兆というものを五年かけてしっかり戻さなきゃいかぬなということです。  そして、それの例はその上にありますね。まさに昭和恐慌はそうだったんですよ。こういう認識だったんですよ、高橋是清だとか当時の内閣は。そして、当時やりましたのが、一九三一年の暮れにデフレ解消宣言をしましたね。三二年には、財政支出を前年に比べて二二%、それから三三年には二〇%、三四年には一二%、ずっと上げていったんです。そして同時に、金融は、途中から日銀引き受けをやりましたけれども金融を緩めていったんですね。つまり、財政主導、金融フォローだったんですよ。  それと同じことが、実をいいますとアメリカ大恐慌でも言えます。これは、ちょっと時間の関係もありますから。  もう一つ、先生もおっしゃいます金利の問題ですね。  これは、先ほども私が申し上げたとおり、財政主導、金融フォローでないと解消できない。ところが、今、黒田さんが始められた超金融緩和というのは、財政というものはもちろん念頭にはあると思います。しかし、とにかく金融を緩めるということでしょう。金融をどんどんどんどん緩めて、結果的には、さっき申し上げたとおり、半分はアメリカへ行っちゃったんですね。アメリカへ行って投機マネーに使われているんですよ。一番喜んでいるのはウォールストリートです。ウォールストリートは、みんな、日本からマネーが来ると喜んでいる。  それからもう一つは、さっきからも出ていますとおり、アメリカは既にバーナンキの最後から、今イエレンになりましたけれども、少しずつ金融を引き締めています。出口戦略を日本が補完しているような形なんですよ。  ですから、そうではなくて、結局、一番日本が足らないのは、仕事がないんですよ。仕事をつくるんです。民間に任せておいたってデフレ脱却はできない。したがって、ちゃんと政府が仕事をつくる。公共投資で出すとか、生活に密着した仕事をつくって、雇用を維持する。  それによって、国債をきょう一兆発行した、日銀が市場から一兆、こうすれば、プラス・マイナス・ゼロです。金利は上がりません。これは、大恐慌のときにそうだったんです。大恐慌のとき、一九三三年から、実にその後、十年以上ずっとアメリカがやっていったのは、国債を政府が発行する、そうしたら、FRBというアメリカの中央銀行が同額の国債を市場から買う。だから、実にその十二年間、短期は〇・三七五、長期は二・七五でずっと推移しているんですよ。だから、そういう実例があるんです。  ですから、そういうことを考えますと、そういう財政金融との密着した形をとっていけば、ここは非常に順調に回復していくわけです。だから、財政危機でないというのも、それです。  それから、投機マネーで非常に変動を受けますけれども、投機に対して徹底的に立ち向かうのは日本銀行なんですよ。今までもありましたよ、日本は。あったんです。だから、白川さんとか、その前の方も随分立ち向かっていったんです。だから、黒田さんはいかがか、私は考えますけれども、みずから投機業者に金を出すような形になっていると投機筋に振り回されるんですよ。これが一番怖いんです、国債でも。私はそのことを前から言っておりますので、意見として申し上げておきます。
  102. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 最後に、時間がないので、末澤公述人にお伺いします。  八%に四月からしますが、来年の十月に一〇%にする、今はそういう予定で進んでいるんですが、総理は、それをことし中に判断をする、こういうことをおっしゃっているんです。これからの予想、経済見通しで、そういうふうに判断できるような状況になるのかどうか、率直な、御感想でも、個人のお考えでも構いませんので、お聞かせいただけますか。
  103. 末澤豪謙

    末澤公述人 先ほど申しましたように、米国経済が、春先以降、寒波の影響も剥落して、成長率が上がってくる。また、国内でも、過去または今後の経済対策がきっちりと執行できれば、二〇一五年十月の一〇%引き上げに向けた決定環境が年末には整ってくるだろうと思います。
  104. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 どうもありがとうございました。
  105. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 次に、大串博志君。
  106. 大串博志

    ○大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。  公述人の皆様には、それぞれのお立場から大変有益な御見識を御開陳いただきまして、ありがとうございます。大変勉強になりましたし、きょう、残りの時間を使って、いましばらく深めさせていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  私は、経済世界の出身なものですから、その世界中心議論させていただきたいと思うんですが、まず、末澤参考人にお尋ねしたい、こう思うんです。  この予算委員会、ずっと議論してきて、一つの論点は、今アベノミクスという経済政策が行われていて、円安になった、株高にもなった、経済指標がいい方向のものが出てきている、そういった中で、いろいろなところが統計をとってみると、約七割から八割の皆様がなかなか実感が得られないというふうに答えられる調査がほとんどであると。このギャップが非常にやはりありまして、何度も何度もこの委員会でも議論しました。  ちまたで、経済がよくなっているのかな、こう言われる中で、一方で、実感がないな、こういうふうに言われる人がどの調査をとっても七割、八割である、こういう状況が生まれるのは、エコノミストとして、虚心坦懐にどうしてだと思われますか。
  107. 末澤豪謙

    末澤公述人 やはり、昨年来、物価がプラスに転じておりまして、足元ではコアCPIが前年比でプラス一・三まで来ておる。今後、四月に消費増税が行われますと、これは、通常ですと、大体その三分の二、二%分は環境とは別に物価が上がります。ただ、現実に賃金がそういった格好で足元ないし今後四月以降上がるかというところについては、やはり相当不透明要因もあって、率直に言って、国民の皆さんが、そういう物価上昇の中で生活水準の向上が望めるのか、そういう不安感をお持ちなのは事実だと思います。  私は、実は、今の雇用情勢というのは相当跛行色が強まっていると思います。  きょうお持ちしました資料でも、最後の方にちょっとあるんですけれども、もしお手元にございましたら二十四ページをごらんいただきたいんですが、この二十四ページの右下、これは、雇用の過剰感という、日本銀行が三カ月に一回の日銀短観で出しております指標なんですね。これは過剰感ですから、要は、プラスだと人が余っている、マイナスだと人が不足しているということなんですね。  現状、青い部分、これは大企業製造業ですが、アベノミクスは一年たっていますが、まだ、依然プラスです。実は、左側の設備でもそうなんですね。緑色、中小企業製造業は大体ゼロ近辺。ただ、一方で、赤い部分、大企業非製造業、これは相当マイナスの方に来ておりまして、特に、中小企業非製造業になりますと、かつてのバブル期以来の不足の領域に入ってきているんですね。  ですから、やはり企業が求める人材と、実際皆さんが探されている仕事の内容、特に足元ですと、復興需要、復興の本格化だとか対策効果もあって、やはり、非製造業、建設、不動産等で人が足りない一方、グローバル企業は、将来の少子高齢化等を見据えて、なかなか国内で設備投資をやらない、結果的に人もふやさないという状況があって、一方、先ほどありました雇用、今後の介護、医療の方の潜在的な需要は極めて大きい。そういうミスマッチをどうやって解消していくかということが一つ賃金の上昇にもつながるのではないかというふうに考えております。
  108. 大串博志

    ○大串(博)委員 明快な説明、どうもありがとうございます。  もう一つ、私は、今回の政府予算あるいは政府予算の前提となる政府経済見通しを見ておって一つ気になったのが、今回、ずっとこの予算委員会でも経済状況財政状況議論してきたわけですけれども、政府の来年度経済見通し、名目で三・三、物価上昇率も含めて考えると三・三と極めて高いものになっています。実質で一・四。政府経済見通しが閣議決定されたころの民間各社のフォーキャストの総計からすると、大体どちらも一・五倍程度のある意味上振れになっているんじゃないかな。楽観的な面があるんじゃないか、こういうふうに報道されたところもありました。  末澤参考人にまたお尋ねしたいんですけれども、政府経済見通しは、いろいろな民間経済機関の見通しに比べて実質も名目も高い来年度の成長見通し、上振れした形になっているというのは、どの辺にその要因があろうかなと想像されますか。
  109. 末澤豪謙

    末澤公述人 これは私の極めて私見でございますけれども、政府、安倍政権が進めているいわゆるアベノミクス、三つの矢の効果に対する、一つは、やはり政府と民間とのギャップが若干ある。ただ、これはある面、当然だと思うんですね。いわゆる成長戦略等も、これはもう過去二十年続けてきたわけで、現実に、昨年、一昨年あたりまでデフレが続いていたことを考えると、当然、マーケットとしては過去の実績の延長で考えますので、やや日本の民間のエコノミストの方がより慎重。  一方で、私も、一昨年来、海外のそういう投資家さんとお話しすると、むしろ彼らの方は相当ポジティブといいますか、相当前向きなんですね。その結果として、昨年の日本株投資十五兆円という過去最高規模にもつながっているわけであります。  ですから、別にこれはどっちが正しいかというのは終わってみないとわからないんですけれども、着実な政策の執行の積み重ねがだんだんギャップを解消していくということにはなるんじゃないかと思います。
  110. 大串博志

    ○大串(博)委員 ありがとうございます。  この辺は、またさらに私たち委員会の中でも詰めていかなければならない論点かなというふうに思っているところでございます。  島本公述人にもお尋ねしたいと思うんです。  島本公述人は、マーケットの観点からも御専門でいらっしゃいます。これもこの委員会でも議論しました、日銀の金融政策についてです。  今、異次元の金融緩和政策ということで、二年で二%の物価上昇率を達成するという目標で黒田総裁は取り組んでいらっしゃるわけです。  私自身、この委員会でも、それが達成できる見通しかどうかというのはいろいろな見方があるとして、今ではむしろ追加緩和が必要ではないかといったような見方がある中ではあるんですけれども、もし、二年で二%という物価上昇率が、日銀総裁が目標とされるように達成された場合には、そのときにどういうふうに出口戦略をとっていくかということが大事ですねという議論をしました。  すなわち、物価が二%に上がる、そうすると、普通に考えれば、いろいろな金利も二%近傍をうかがいながらやはり上がっていくというふうに考えるのが普通ではないか。あるいは、国債金利に関しては、リスクプレミアムもあれば、そのほかいろいろな要因もあります。  こういったものも考えていくと、物価が無事、無事という言葉は変ですけれども目標どおりに二%に達したときに、長期金利、国債の金利だけ上がらないというふうにすることは可能なのか。すなわち、国債金利が一%でも上昇すれば日本財政に与える影響は甚大であるのはよく知られたことでございますので、物価が二%に達したときに金利を上げないという方法が可能なんだろうかというあたり、この辺は、マーケットの皆さんはどのようにごらんになっていらっしゃるんでしょうか。
  111. 島本幸治

    ○島本公述人 日本経済、あるいは今の異常な金融緩和政策の出口政策については、市場関係者の中でもコンセンサスがない状況です。  ただ、今のこの金融緩和策の是非については、一つ議論が難しいのが、世界的に異例な金融緩和政策先進国が一斉に取り組んでいるという異常事態ですから、こういう中では、日本も為替市場のバランスも踏まえて一定の緩和策は必要だ、こういう議論はあろうかと思います。  では、その二%にいった後どうなるか。まず、私自身は、二%はかなり遠い目標だなという印象を持っています。あるいは、消費税率引き上げ影響を除いて、物価が二%になったときに本当に日本人が幸せかどうか、これも議論が分かれるところだと思います。  つまり、先ほど来、経済、名目GDPで議論されていましたが、やはり実質のGDP、あるいは実質所得で考えるべきでありまして、物価が上がっても賃金がそれほど上がっていないという場合には、必ずしも国民経済は幸せにならないので、物価が二%にいかずとも、今の金融緩和策が本当にいいのかどうか、この議論は、さまざまな角度でこれから広がっていくんだろうなというふうに思います。  いずれにせよ、中期的にもし物価が二%になった際に、その後の出口政策が可能かどうか、あるいはどこがポイントかについては、やはり私は、日本経済、あるいは日本財政に対するマーケットの信頼が維持できるかどうかというところがポイントだと思います。  もし、物価が二%に上がって、いよいよ日銀が金融引き締めに転じなければいけない、このとき、当然金利は上がっていきますから、金利が上がると利払い負担が高まり、利払い負担の増加が財政の規律を緩め、財政を悪化させ、こういう悪循環のリスクが中長期的には出てくるので、そうした事態が起こらないためには、方向として、日本政府は財政規律を重視している、財政の節度がある、こういう信頼感を訴え続けることが大事だと思います。
  112. 大串博志

    ○大串(博)委員 ありがとうございます。  それと、あわせて、恐らく、財政赤字とあるいは貯蓄率と表裏の関係になると思うんですけれども日本の貿易収支と経常収支、御案内のように、貿易収支は過去最大の赤字を記録し、経常収支も相当な勢いで今縮小している、このような状況にあるわけでございますけれども、いろいろな見方があるんだと思います。経常収支は少なくなってきているけれども、海外資産からのリターンで食っていければいいんだというような意見、先ほど末澤公述人もおっしゃっていました。それは確かに、私もそうかなというふうに思います。  一方で、これも島本公述人にお尋ねしたいんですけれども、やはりトレンドが非常に心配だなという気がします。すなわち、貯蓄率が下がる中で対外収支が弱くなっていく、そのトレンド、これはもう非常に絵に描いたようなトレンドになっているわけですね。  これに関して、私たちは今どの程度構造的な問題として心配すべきものなのかどうか。これは非常に判断の分かれるところだと思いますけれども、私は非常に心配です、先ほどの財政の構造ともかみ合わせて考えると。  この辺について、どのくらい心配するべき点があるのかどうか、島本公述人の御意見をお聞かせ願えればと思います。
  113. 島本幸治

    ○島本公述人 目下は、毎月、政府が十兆円の国債を発行して七兆円を日銀が吸収しているという状況なので、物理的に金利は上がらない、長期国債の利回りは低位安定している、こういう状況です。  こうした中では、なかなか、マーケットを通じて財政のディシプリンを期待する、あるいは財政規律の重要性を認識することが非常に難しい、実感しにくい、こういう特殊な状況にあると思います。  ただ、大串先生御指摘されたとおり、今の異常な金融緩和が未来永劫続けられるということでは恐らくないでしょうし、未来永劫続いているということは、いつまでたっても日本がデフレから脱却できていないということですから、どこかで正常化が必要になるわけです。  このときに、金融緩和の縮小と税収の拡大がうまくバランスすることで財政がランディングできればいいわけですが、そうでない可能性もあって、そこでの一番のポイントが、やはりマーケットの評価ということだと思います。  もう一つが、今の日本の負債構造、政府の負債構造を見ますと、短期債での資金調達が非常に多いということですから、例えば外貨準備の調達資金も短期債で調達しているわけでありまして、そうすると、短期金利を上げたとき、あるいは金融緩和をやめたときに、日本の利払い負担は、緩やかに高まるのではなくて劇的に高まるリスクが出てきますから、まだ今は早いかもしれませんが、やはり中期的なリスクとしてしっかり認識しておく必要があると思います。
  114. 大串博志

    ○大串(博)委員 本当にきょうはいろいろな意見をいただいて、木村公述人、菊池公述人にもいろいろな御意見をお尋ねしたいところでございますけれども、時間の関係で、全部尽くせぬところが大変申しわけなくございます。  ただ、非常に、きょうの朝の公述人の方々のお披瀝にも人口減少社会の話がございました。これはやはりとても大きな課題なんだと思います。これまで私たちが学んできた経済学では恐らく解答のないぐらいの大きな課題に今、私たちは面しているんじゃないかという気すらしますので、きょういただいた御意見参考に、私たちもさらに深めてまいりたいと思います。  どうも本当にありがとうございます。
  115. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 次に、杉田水脈君。
  116. 杉田水脈

    ○杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。  きょうは、四名の公述人の方々、本当にお忙しい中、貴重な御意見をありがとうございました。  私は、四名の方それぞれに質問をさせていただきたいと思います。  まずは、末澤公述人と、それから島本公述人にお聞きしたいと思います。  まず、末澤さんの方は、こちらの資料の二十三ページの方で、次元の異なる成長戦略ということで書いていただいております。そして、島本さんの方は、一番最後に、日本経済の強みは何かということで、同じく成長戦略という部分について少し語っていただきました。  お二人とも、今のアベノミクスの一本目の矢、二本目の矢については効果を上げているというような、そういったお話であったかと思うんですけれども、三本目の矢に当たります成長戦略。  先ほどのお二人のお話の中では、割と長期的な視点に立って、こういう成長戦略が必要じゃないかといったことをお話しいただいたんですけれども、今、待ったなしでこの日本が取り組んでいかなくてはならない成長戦略をあえて挙げていただけるとすると、それぞれどういった分野を挙げていただけるのかということをお聞かせ願えたらと思います。
  117. 末澤豪謙

    末澤公述人 まず、金融市場では、期待感が高いのがやはり法人減税ですね。あとTPPの問題等もございます。  実は、私は法人減税は基本的に賛成なんですけれども、ただ、これは、減税したらすぐに企業さんが海外から日本に来るとか、日本の企業さんが全く外へ出ていかなくなるということはないと思いますね。ある面、日本は、このままいくと、少子高齢化のディスアドバンテージをほぼ毎年受けるわけですね。多分、それを和らげる効果がある程度にすぎないのではないかと思っています。  そういう面では、先ほど二十三ページにも書かせていただいたんですが、日本でしかつくれないもの、日本に来ないと見られないもの、食べられないもの、そういったものをやはり推進していかないと、長期的な成長戦略にはなかなかなり得ないというふうに考えております。  ですから、「医療、医薬品、ロボット、産業・工作機械、環境、自動車、食品、アニメ等」と書かせていただいていますが、これは実はどういうことかというと、いわゆる成熟国、英国、米国でも、今現存している時価総額の大きい企業さんというのは、ほとんど、その国がかつて、もう百年、二百年と培ってきた強みをまだ残して、それを生かしている企業なんですね。新興のグーグル、アップルなんかも、これはもともと、やはりITだとか英語圏だとか、そういう強みを生かしているものなんですね。ですから、そういうものにやはり注力していくということが私は必要だと思っております。
  118. 島本幸治

    ○島本公述人 マーケットが注目しているのも第三の矢でありまして、少なくとも年明け以降は、海外の論調では厳しいものも出てきています、スピードが遅いということで。ただ、私自身は、まだ評価が定まっていないということで、これから真価が問われるところだと考えています。  やはり、日本経済は、人口が縮小していくわけですから、経済の競争力を高めていく上で切磋琢磨が必要だと思います。私自身は、日本人はもっと自信を持っていいと思っていますので、もっと自信を持って、規制緩和、自由化路線、これを進めていくということだと思います。  個々のテーマは、もう言われているとおり、先ほど医療、介護の話もありましたし、それから農業であるとかエネルギーであるとか、もっと日本が規制緩和をして成長率引き上げられる分野というのは多々あると思います。  それに加えて、私自身は、金融においても、日本は、何はなくとも、対外債権の非常に大きい金融大国に既になっておりますから、例えば、今始動し始めたNISAの枠を拡大するとか、金融市場における規制緩和も検討対象になると思います。  ただ、一つ申し上げたいのは、こうした規制緩和が成果を結ぶまでにはどうしても時間がかかります。短期的な影響という点では、やはりマーケットに対して一定のサプライズを呼ぶ必要があるので、そうした点では、今、日本の法人税率の行方、市場も注目していますので、マーケットを通じたパスという点では即応性があるところかな、こう考えております。
  119. 杉田水脈

    ○杉田委員 ありがとうございます。  成長戦略のことをお二人にお聞きしたんですけれども、木村公述人には雇用のことをお聞かせ願いたいと思うんです。  例えば、先ほどお話しいただきましたお二人のような金融世界で働きたいという若者はすごくたくさんいて、就職も今はなかなか難しいというような形で、手を挙げる方もいっぱいいて、なかなか希望する職種にはなれないというような方も多い業界じゃないかと思うんです。  逆に、介護、これからどんどん人手が必要になってくる、そういった業界には今度は人が集まらない。特に若い方が、例えば、高校や大学を出て、即、自分がつく職業を、介護というところを見出すという方はなかなかいらっしゃらなくて、どうしても、再就職だとか、主婦の方が子育てが終わってから資格を取られてという方が多くなっているとは思うんですけれども、その上でもまだやはり人材不足というようなことが考えられます。  その雇用の問題、今一番感じていらっしゃる問題点ということについてお話し願えますでしょうか。
  120. 木村惠津子

    ○木村公述人 ありがとうございます。  介護の方面の雇用ということでは、大変困っております。これはミスマッチが起きているということなんですが、私は、もっと根本的な課題があると思います。  やはり、若者が夢と希望を持つというようなところに精神的なものが行っていないというところがまず土壌にありますので、その安心感、安定感を求めるために大企業に就職したいというものが非常に強いのではないかと思っております。  ですので、先ほど私は企業を創設するということを申しましたけれども、そういうところで、昔は寺子屋というようなものがございましたね、ですが、今、本当の人材にすべく、大人がきちんと、特に男性だと思うんですけれども、若者と向き合って話し合える場というものが非常に少ないのではないかと思っております。ですので、まずそういう場をつくっていただいて、働くということはどういうことであるかということをきちんと持っていただくことが大事かなと思います。  介護におきましての雇用ですけれども、これは、今後ますます働く人が少なくなっていくことが見込まれます。なぜかといいますと、正しい介護の、やりがいのある仕事であるということの広報がなされていないと思います。私どものスタッフでは、皆さん、非常に、大変であっても本当に喜びを持って仕事をしているという現状がございますので、そういうことをもう少しお考えいただければ雇用も広がるのかなと思います。
  121. 杉田水脈

    ○杉田委員 ありがとうございます。  菊池公述人にも、雇用のことについてお話をお伺いしたいと思うんです。  一番最後のところで、株主の利益よりも国民の雇用を重視する国家理念を確立することというふうにおっしゃっていらっしゃいました。また、菊池公述人のお話の中に、国土強靱化によって、公共事業によって雇用とかをきっちりと支えていくんだというようなことをおっしゃっていただきました。  ここの部分は、私も大切な部分だなというふうには思うんですけれども、実は、地元で建設業の方なんかが要望に来られたときに、要望書を手渡されるときに、でも、やはりおっしゃられるんですよ、自分たちはこの業界で一生懸命頑張ってきたけれども、息子とかには、やはり東京に行って、大学に行って、こういう業界じゃない業界に就職しなさいと、矛盾するんだけれども、どうしても親がそのように言ってしまう。  それで、建設業の若い方がなかなか育っていないという現状があるというふうになっていまして、今もう既に、仕事はあるんだけれども人手が足りないというような状況が起こってきていると思います。  今後、本当にこの強靱化とかを進めていくに当たって、そこの部分というのは解決していかないといけない部分だと思いますので、それについての御意見をお伺いしたいと思います。
  122. 菊池英博

    ○菊池公述人 雇用は一番大きな問題です。  私は、先ほど来こちらの皆さんのお話もお聞きしていまして非常に感じますのは、やはり、もっと日本が内需を拡大するという形に視点を持っていかないといけないと思うんですよ。  確かに、金融世界は重要です。しかし、はっきり言って、世界じゅう金融世界で振り回されてきて、もう惨たんたる目に遭っているのは、まずアメリカですよ。アメリカは、だから、先ほど申し上げたとおり、この前までバーナンキは超緩和をやっていたけれども、結果的には、全部投機に使われて、マネーサプライはゼロだった。彼が辞任した背景にそういうのがあるんだということを言われた方もいらっしゃいます。  ですから、金融だけでは実体経済は解決できないんです。これはもう立証済みです。  日本も実はそうなんです。小泉構造改革というのは、金融は緩和して、財政を締めたんですよ。それからあとは、構造改革で幾つかの手段をとって、幾つかデフレの法制化のようなことをしました。それで、結果的にはどうなったかというと、リーマン・ショックで破綻してしまったんです。  その破綻という意味は、国内の需要を抑えたから。輸出産業はよかったですよ。しかし、そちらはリーマン・ショックで破綻してしまった結果、輸出がのびちゃった。例えばトヨタはマイナスになっちゃった。そうすると税収は上がらない。では、国内はというと、内需拡大をしていないから、内需を抑えていたから、内需中心の企業は税収が上がらないんです。実を言いますと、それが小泉構造改革の結果なんです。それで、いろいろ歴史があって今に来ているんです。  では、今の時点も見ても私が思うことは、金融というのは、最終的にも、国民のプラスにはそうならないです。あくまで、実体経済を順調に促進する。だから、先ほどから申し上げているとおり、需要を拡大し、財政主導、金融フォローというのはそうです。財政だけじゃないんです。何か個人の人が仕事をやろうとしたら、では全体的にやっていけるなら金融がフォローしていくとか、そういう形が必要なんです。  ところが、今はその形は全くできていないと思います。私はもともと銀行屋ですから、私は、長く銀行におりまして、その後大学の先生をやっておりましたから、このことは実感としてよくわかるんです。ですから、まず視点を、国内の雇用にしっかり目を向ける形にしないといけないんです。  では、その雇用がどうして伸びないのか、投資が起きないかというと、デフレだからです。デフレだから、もう皆さん、銀行だって、金を借りてくれ、借りてくれと頼みに来るんですよ。誰もリスクをとりに行けぬからね。それから、銀行だって、株だけでやるのになんて貸せませんから。  だから、結果的には、国内で内需を拡大する、そのリスクをまず政府がとって、しっかりとした仕事をつくり、政府が主導すれば民間はついてくるんですよ、はっきり言って。  それからもう一つは、やはり長期的にしっかりとしたビジョンを持っていかないといけないと思うんです。  ですから、まさに先生今おっしゃいました、息子にはやらせたくないとかいうこと、それは二つあると私は思うんですよ。  一つは、このままほっておくと完全にもう、かつては、さっき申し上げたとおり、財政をうまく回して公共投資を出し、それがまた民間投資を誘発しましたね。だから、そういうことで、建設業というものも一つの主要な産業として、所得も上がってきたわけです。ところが、それが小泉構造改革で一挙に落とされちゃったから、だから建設業の方も、もう実質的には半分以下じゃないですか。  だから、今、建設業の方からこういう声が出ているそうですね。とにかく、今回補正予算を組んでやってくれた、これはよかった、いつまで続くの、続かないんだからもうできないよと。だから、子供にやらせたくないというのは、それが一つ。余りにもきつい。  それからもう一つは、そういう意味で、所得の面で非常に限界に来ていると思う。  ですから、やはり内需をしっかりと拡大していくということにしなきゃいけない。日本は、輸出立国といいますけれども、内需立国なんです、本質的に、ずっと。これで自分らは来たんです。  ですから、先生御存じのとおり、例えばGDPなんかに占める輸出比率というのは日本はむしろ低いんです、ほかの国なんかよりも。それで、内需の部分、公共投資ですとか、それに伴う内需の拡大、更新投資もあります、それによって結果的に経済が上がってきた。それをやめちゃったから、さっき言ったように、ぽちゃんと落ちちゃったというのが、もう数字の上ではっきりしていると思います。  ですから、そういう意味で、ぜひ先生方、国会で御指導をいただきたいと思うのは、本当にそうなんです。もう少し、くどいようですけれども金融なんかに頼るんじゃなくて、なんかというのは失礼ですけれども、私はもともと銀行屋だから軽蔑して言っているわけではありません。ただし、金融だけじゃなくて、ちゃんと実体経済をよくする、そこに視点を当てて、そしてあらゆるものを勘案していく。  それから、雇用について一言言わせていただければ、例えば最低賃金だって早く千円にしたらいいんです。そうするとみんなついてくるんです、一生懸命になって。  私は、そういうことを、もっと先生方の、これはやはり政治の力で押し上げていただきたいなと思っております。
  123. 杉田水脈

    ○杉田委員 ありがとうございました。  午前中からの議論の中でも、やはり少子高齢化というのがずっと話題にもなっておりまして、労働力、雇用ということになってくれば、そこの部分もいろいろ議論をしたかったんです。  例えば、末澤公述人資料の中には、今後は移民政策やフランスの人口政策を検討しないといけないというのもございましたが、移民政策というのに飛ぶのはやはり私は飛躍していると思いますし、フランスの人口政策というと、日本の家族制度を壊しかねないというような危ないリスクが伴う部分だと思っております。それよりは、もっと、今いるニートの人たちにいかに働いていただくかとか、そういうことから労働力の確保というのはやはりやっていかないといけない。そういう議論も深めたかったんですけれども、時間が参りましたので終わりにさせていただきます。  本日はどうもありがとうございました。
  124. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 次に、大熊利昭君。
  125. 大熊利昭

    大熊委員 みんなの党の大熊利昭と申します。どうぞよろしくお願いをいたします。  島本公述人、そして末澤公述人にお伺いしたいと思います。  まず、では同じテーマで、資料そのものは末澤公述人人口ボーナス、人口オーナスという資料でございますが、先ほど来、少子高齢化ということが出ているわけです。  いろいろな考え方があると思うんですが、それぞれの個人のお考えで結構なんですが、日本が今後目指すべき姿、要するに、ここで書いてあるのは、低負担・中福祉とか、そういうことは不可能だとして、そうすると、では、もう低負担・低福祉でいくのか、高負担・高福祉を目指すのか。もうちょっと、数字的に言うと、国民負担率というのをどのぐらい想定、例えば五年後とか十年後、考えていけばいいというふうに思っていらっしゃるか、教えていただければと思います。
  126. 末澤豪謙

    末澤公述人 ありがとうございます。  私は、このままの状況だと、先ほどおっしゃいました中負担・中福祉も、高負担・高福祉も、無理だと思います。要は、高負担・中福祉ないし高負担・低福祉か、もう中負担・低福祉しかないだろう。  ただし、やはり、高負担・低福祉になりますと、これはもう国内から優良企業がどんどん逃避する事態にもなりかねませんので、できれば中負担・中福祉を目指す。ただ、その過程で、場合によっては若干、高負担・中福祉的になる可能性もありますが、そこを、先ほどの成長戦略等でカバーしていくということが必要なんだろうと思うんですね。  人口ボーナス、人口オーナスというのは、これは五年、十年では解決できませんので、やはり長期的な少子化対策と中長期的な成長戦略を相互に組み合わせて実行に移していくことが必要なんだろうと思います。
  127. 大熊利昭

    大熊委員 恐縮ですが、同じ点を、島本公述人の御意見をいただければと思います。
  128. 島本幸治

    ○島本公述人 私も、日本は中負担・中福祉が合っているのかなと思います。ただ、もう一つ言うならば、中負担で効率的で有効な福祉ということだと思います。  日本人口問題はなかなか一朝一夕には変えがたいところがありまして、先ほど来御指摘もありましたが、移民もなかなかハードルが高い、あるいは人口政策出生率が若干上がってまいりましたが、こうした成果が出るまで相当時間がかかりますから、まずは、大事なのが、自律的に成長することで税収を拡大していくということが一番大事だと思いますが、それに加えて、もっと議論を深める必要があるのが、今の社会福祉制度が本当に効率的かどうか、もう少し、効率的で人々が幸せになれるような、こういう福祉がないのか、ここを考えることがこれから重要だな、こう考えております。
  129. 大熊利昭

    大熊委員 効率イコール小さくするということとも必ずしも限らない、そういう理解をさせていただき、大変貴重な意見だと思います。  次に行きまして、国、政府の方の財政状況をどうするかというのはもちろん一方で非常に大事なんですが、一方で、日本の民間企業の競争力をどう確保するか。  要するに、円安になっても貿易収支の赤字、経常収支はもうすぐ赤字になるという状態を、このままこの状況を前提にして考えなきゃいけないのか。それとも、構造改革といいますか、もともと、為替にかかわらず、日本企業の収益性というのは非常に諸外国に比べて低いというところが構造的な問題だと思うんですが、例えば、末澤公述人が書いていらっしゃるようなロボットとか医療とか医薬品、こういう、技術はいいものがあっても、それぞれの企業の数字を見ると非常に、正直言ってお粗末だという企業が多いわけでございますね。  こういうところを、国が頑張るというのはあるんですが、民間企業の方の構造改革をどうやってやっていけばいいんだということについて、一言ずつお二方にいただければと思います。
  130. 末澤豪謙

    末澤公述人 先ほども申しましたが、新興国とプライスで競争する時代はもう終わったというか、もう既に、今の円安においても、一〇%、二〇%円安では立ち行かない状況にあるわけですね。ですから、そういう意味では、国内でないとつくれないものをやはり今後そこに、選択と集中、長期的にはですよ、せざるを得ない。  実際、これは、今後の労働力人口の構成を見ても、当然女性ないし高齢者の活用という課題はあるんですけれども、場合によっては、海外から短期の労働者を受け入れるような可能性も考えざるを得なくなる可能性。  つまり、なるべく少ない人数でより付加価値のものをつくっていく、ないしは、先ほどのお話で、海外から日本に来てもらうということ、そういった対応を本格的に考えざるを得ないんじゃないかと思います。
  131. 島本幸治

    ○島本公述人 ちょうど今、円安が進んでいる中で、円安が進んでも貿易赤字がなかなか減らないということがマーケットでも話題になっています。幾つかの背景があって、一つアジア経済が弱いとか、もう一つ日本企業の海外展開が進んだだとか。ただ、十分為替のメリットを享受できない背景には、やはり、日本の本質的な技術力が十分高まり続けているのかどうか、ここも議論が分かれるところです。  私は、日本経済が活性化していくためには、労働力というのが本質的な生産要素ですから、この生産要素を効率化、活性化していく上では、やはり切磋琢磨していくという部分がどうしても避けられないというふうに思います。あるいは、企業においても、今まで以上にしっかり競争して強い企業の活躍の土俵が広がっていく、こういう環境づくりは私は避けられないというふうに思っています。  特に、日本企業は保守的で、ガバナンス構造の問題もあってなかなか資本効率が高まらない、あるいは資本主義に向いていないんじゃないか、こんな議論もありますが、私は必ずしもそうでないと思っていて、今まで経済そのものがデフレだったので、無理にリスクはとらない方が得だ、こういうファンダメンタルズが家計部門においても企業部門においても続いていたわけですが、まさにこれからデフレを脱却して物価の方も変わってくる中で、家計のみならず、企業においてもさまざまなリスクテークの動きが出てくると思いますので、こうした動きをしっかり支援していくことが大事かな、こう考えております。
  132. 大熊利昭

    大熊委員 ありがとうございました。  また続けて済みません、島本公述人なんですが、いただいた資料のコンドラチェフ・サイクルというところで、政府による戦略的な資源配分が重要ということなんですが、そうだろうと思うんですが、一方で、政府は大丈夫なのか、そういう考え方もあると思うんです。政府をそんなに信頼できるのか、してもいいのか、あるいは、するような条件ですね。  というのは、やはり、御承知だと思いますけれども、霞が関の皆さんは予算を消化することが大事で、普通、民間ですと、投資をして収益を上げるなんですが、収益を上げるのを考えていないんですね。とにかく、たくさん投資をすることを考えているので、つまり、もうからないものだけれども、かさばるものに行こうとするわけですね。  このカルチャーが延々としてあるので、そういう政府に任せていいのかという根本的な疑問があるんですが、この点、いかがでしょうか。
  133. 島本幸治

    ○島本公述人 そこは、まさにバランスだと思います。  過去の世界経済を見ても、政府による音頭が例えばアメリカでモータリゼーションを呼んだりとか、日本の重厚長大産業が成長する過程でも、やはり政府のきっかけづくりというのがあったわけですね。ただ、今はむしろ、市場メカニズムが大きくなり、あるいはグローバル化の時代ですから、政府ができる部分というのは、昔と比べると小さくなっていると思います。  ただ、これから日本の企業をどんどん強くしていく上では、例えばエネルギー分野であるとか、例えばクール・ジャパンでもいいんですが、政府が音頭をとってしっかり後押しということでできる部分というのも多いと思います。  例えば、私、最近感じるのは、日本の中小企業で、世界に進出すれば十分活躍できるけれども現状で満足している、こういう企業というのは結構多いんですね。ですから、こういう企業が海外に展開するきっかけづくり、あるいは後押しを政府でしてあげる。例えば、海外に展開するといっても、どうやってすればいいのかわからない、あるいは言葉の問題もあるし、誰を頼っていいのかわからない、こういう部分も多々見受けられるので、一定の政府の役割はあると思っています。
  134. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 大熊利昭君、時間が来ております。
  135. 大熊利昭

    大熊委員 ありがとうございました。  私も、政府は、財政出動じゃなくて、そういうコンサルサービスに徹するべきだというふうに思っております。  以上です。終わります。
  136. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 次に、柿沢未途君。
  137. 柿沢未途

    柿沢委員 結いの党の柿沢未途でございます。  四人の公述人の皆さん、本当にお疲れさまでございます。ありがとうございます。  まず、末澤公述人と島本公述人、お二人にお伺いをしたいと思うんです。  マクロ経済を見るのがお二人のお仕事だと思います、もちろん菊池先生もそうだと思いますけれども。そういう意味でいうと、アベノミクスによって異次元緩和が行われて、円の供給が行われることによってデフレ脱却の軌道に乗ってきたのかな、こういうところまで来たわけです。私も、ここまでの安倍政権のこうした量的緩和政策というものについては大変評価をしているところです。  その一方で、お金の供給量はふえたけれども、それが金融機関を通じた貸し出しの増加に十分つながっているかといえば、残念ながらそうではないように思います。  昨年十二月に発表された銀行百十三行の、貸し出しでいうと四百六十一兆、総預金量でいうと六百七十八兆あって、この預金量と貸し出しのギャップが二百十七兆円ある。これは過去最大級の預貸ギャップなんだそうですけれども、つまり、預金は集まってくるけれども貸し出しがふえない、こういう状況がずっと続いているわけですね。  そして、これから消費税の増税で最も影響をこうむる地域経済、この地域経済を支えている信用金庫などの地域金融機関を見ると、預貸率でいうと五〇%を割るような、五〇%ぐらいの、こういう水準になっているわけです。  我々は、資金供給量がふえて、そしていわゆるデフレから脱却が果たせるような道筋が来れば、自然と貸出量がふえて、こういうことになっていくんだというふうに思ってきたわけですけれども、必ずしもそうはなっていない。  こういうことについて、これからそうなるんだというふうに見るのか、あるいは、そうでなくて、何かやらなければいけないことがなされていない、こういう評価になるのか、ぜひお二方のお考えをお聞きしたいと思います。
  138. 末澤豪謙

    末澤公述人 今の御質問でございますけれども、あえてマクロ的に申し上げますと、本日お配りしました資料の十二ページの右下でございます。ちょっとこれはグラフが見にくいかと思いますが、実はこれは、日本銀行が発表しております資金循環統計というものなんですね。  ここで、ごらんいただきますと、実は、一九九八年、日本金融危機に見舞われたこの年が、いろいろな転換点となっております。  ここで、黄緑色、民間非金融法人企業、これは事業法人さんですね、ここが基本的には、九八年以前というのは大体マイナスの方向にあったわけです。マイナスということは、つまり、自己資本が脆弱で、銀行借り入れ等で設備投資をやったり運転資金を回すということだったんですね。それが、九八年から緑色が上に来ていますよね。つまり、資金余剰セクターに転換したわけです。  一方で、その年からぐっと下側に来ているのが、紺色の一般政府。つまり、国の借金がどんどんふえている。  ですから、私も、実は島本さんもそうなんですけれども、元銀行員なんですが、かつてはやや両建てで貸し出しと預金が、結果的にですよ、つくられた部分があると思うんですが、いわゆる金融危機の影響で、相当、企業さんも銀行借り入れだとか資金調達、外部調達に慎重になられまして、相当財務リストラを進められた。その結果として資金需要が低迷した部分と、ちょうどこの時期に生産年齢人口が減少に転じます。つまり、いわゆる住宅投資等の潜在的な需要が徐々に減ってくるわけですね。  ですから、金融危機によって、銀行の貸し出し態度も硬直化する、いろいろなそういう複合的な要因がこのタイミングで同時発生的に起きて、日本の銀行貸し出しがずっと低迷した状況が続いていたんだと思います。  ただ、足元、実は、少し銀行貸し出しについてはプラスの方向に変わってきています。地域金融機関さんの貸し出しは、預貸ギャップは拡大はしておりますけれども、貸し出しはプラスになっておりますし、都市銀行も最近プラスになっているんですね。  では、どうやったら貸し出しがもっとふえるのかということなんですが、やはり、本来、潜在ニーズがあるところに資金をつけていかないと、なかなか、追加的にお金を出しますよといっても、これは借りないですよね。  そういう意味では、例えば国内でいえば、私は、住宅というのはやはり諸外国に比べてもまだ見劣りする部分もあると思います。まず国民生活を豊かにする部分と、あと、国内でしか投資できない部分ですね。先ほども、国内でしかつくれないもの、国内でしか見られないもの、国内でしか食べられないもの、そういったものに集中投資をしていく。  ただ、それが続いたとしても、本当に貸し出しがどんどん伸びるかというと、場合によっては、今後の少子高齢化の過程で預金が減り出すリスクもあろうかと思うんですね。そうすると、それによって預貸ギャップが縮まる可能性もあります。ですから、そういう面では、経常収支の黒字を維持することも重要であります。  また、一方で、対外投資を、これは最近、酒造メーカーさんが大型の米国のスピリッツの、ウイスキーの会社を買収し、大手銀行さんが一兆円以上の融資をつけるという報道もございました。私も一行で一企業に一兆数千億という話は、過去聞いたことがないんですけれども。  そういった面で、国内企業さんも、国内で需要がない場合は海外向けの投資を拡大しているのは事実で、そういったところに日本金融機関が資金をつけて国内企業の海外投資を後押しする。また、海外企業が国内に来るときの投資のサポートをする。こういった両サイドの貸し出し需要の発掘が必要になってくるのかなと考えております。
  139. 島本幸治

    ○島本公述人 現下の統計を見ると、確かに、貸し出しというのはまだ明確にはふえてきていません。  今まで貸し出しが低迷していた背景には、やはり物価が下がっていましたので、実質金利が高い結果、投資をしないでお金は寝かせておいた方が得だ、こういう判断のみならず、例えば、日本人口動態の変化、あるいはアジア新興国の台頭を含めた地域の産業構造変化、さまざまな要因があると思います。したがって、今後デフレを脱却したからといって、物価が上がってくる中で、昔のように貸し出しがふえるということではないと思うんですね。  ただ、私は、企業の活性化は十分これから期待ができると思います。そのときには、必ずしも国内貸し出しにだけ注目する必要はなくて、日本企業が海外で活躍することも含めて、しっかり後押しする必要があると思います。  例えば、日本経済がどうなると一番国民が幸せかというときに、見た目の名目GDPが本当に幸せかというよりは、見た目の名目GDPよりは実質的な、物価を割り引いたGDPだと思いますし、GDPはグロス・ドメスティック・プロダクトで国内生産ですよね。日本人口動態、産業構造、いろいろな面が変わってきていますから、むしろこれからは、一人一人が豊かになる、すなわち実質のGNI、一人頭の国民所得をどうふやしていくか、こういう観点で、経済を運営していく際には、日本企業が海外で活躍するということは一人頭の国民所得にとっては大いにプラスですから、こういう視点で企業の活性化を後押ししていくことが必要だと思います。
  140. 柿沢未途

    柿沢委員 お二人とも銀行マンですから、この分野でお伺いをすると大変丁寧な御答弁をいただくことになって、あと一分ぐらいしかないんですけれども。  菊池先生、今、そこの部分について、やはり政府がそのギャップを埋めて、投資を行っていく必要があるんだ、こういう話だったと思うんです。生活に密着した公共投資、こういうワーディング、言葉の使い方をされました。  私は、生活に密着した公共投資を中央政府が行う必要は必ずしもないんではないかなと思うんです。生活に密着したものであるとすれば、効率的でニーズに合ったものをやるとすれば、地方政府がみずから財源調達して行うということも一つの方法だと思います。  中央政府がやっていることによって、結果として採算度外視だったり、現地のニーズに合わない、そうした、ばらまきとも言われかねないような事業を行うことを許してきた部分があると思うんですね。  こういう公共投資のあり方について国家の統治構造そのものに踏み込んだ見直しを行っていくべきだというのが私たちの考え方なんですけれども、それについてコメントを伺って、もう時間ですから、そのコメントをもって終わりとしたいと思います。済みません。
  141. 菊池英博

    ○菊池公述人 方向として、先生のおっしゃるとおり、生活に密着した投資なら地方中心で、中央政府から何も方針を出したりする必要はないかということは、それは一つの理屈として成り立つかと思います。  しかし、日本現状は決してそうじゃないと思うんですよ。  実は、財政で見たって、地方はもう随分締めつけられていますし、プライマリーバランスは地方はもう黒字なんですけれどもね。これは中央政府がかなり締めつけてきた。それからもう一つは、デフレですから。本当にデフレで、地方に行って、先生も十分御案内のとおりで釈迦に説法ですけれども、そういうときに、デフレ心理を払拭して、そして地方人たちもひとつ投資をしてくれというようなことに持っていくには、中央政府が働きかけなきゃ絶対に無理です。ということは歴史が証明していると思うんですよ。  それから、経済政策とか経済学ほど易しい学問はないと私は思っているんです。なぜかといえば、デフレのときになぜ成功したか、解消したかということは、大デフレのときは二十世紀には二つです。一つは昭和恐慌でしょう。もう一つはアメリカ大恐慌です。ともに中央政府が、まず、首相がデフレをやめるぞと宣言する。それで、財政主導で仕事をどんどんつくる。それで金融をフォローしてくれ。それで、昭和恐慌がそうだし、アメリカ大恐慌も成功したんですよ。  それから、戦後を見ますと、一つはクリントンなんですよ。クリントンは一九九三年に就任した。あのときはアメリカは非常にデフレでした。その前のパパ・ブッシュは増税するなどしたものだから、結局、再選されなかったんですね。それで、結局、クリントンが出したのは、財政中心は公共投資です。データがございますから、後ほどごらんください。図解も描いてあって、お差し出ししました資料にあります。  ですから、結局、中央政府、まさに政府が、そこは安倍総理がしっかりデフレ宣言をしていただいたのがまさに、本当にその旗をおろしちゃいけないんです。  その中身として言うのは、地方政府に、さあ、ついてきてくださいと言ったって無理なんです、今。ですから、ちゃんとした長期計画をしっかりつくって、単発じゃだめです、さっきからお話が出ている。単発では建設業者の方もついてこれない。長期、例えば少なくとも五年計画です。だから、十年二百兆という自民党さんの政策を私はサポートしているんですよ。私は五年百兆と言ったんですから。十年二百兆ですから。  そういう政策を立てて、国民に安心感を与えるんです。そして、それによって、地方、今までだったら、公共投資を出すとしたら地方に分配があるでしょう。これを嫌がっていた。これはある意味では、なしでもいいです。そのようにして、あるところから民間投資を誘導していく。それによって地方も活性化していく。  あとは配分の問題ですね。この後、恐らく共産党さんがいらっしゃるでしょうから、そういう問題が出てくるかと思います。私は、成長させた上で、その配分をどうするかということが一つの課題だと思います。そういうのが私の考え方です。
  142. 柿沢未途

    柿沢委員 ありがとうございました。
  143. 上杉光弘

    ○上杉委員長代理 次に、宮本岳志君。
  144. 宮本岳志

    ○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。  私からも、四人の公述人の皆様方に、心からお礼を申し上げます。  短い時間ですので、全ての公述人の方にお聞きできないかと思うんですけれども、きょうのお話を聞かせていただいて、末澤公述人も島本公述人も木村公述人も、少子高齢化が特に医療、介護に深刻な負担をもたらすというお話に触れられました。とりわけ、木村さんは、それをいかに抑えていくかという観点から、大介護時代を大予防時代に、そして大健康時代へ、こういう御趣旨に、非常に考えさせられるところ大だったわけであります。  ただ、そのためにも、急がば回れではないですけれども、木村さんの方は研修の予算をというお話がありましたが、結局は、医療費などを実態に合わずに絞り込むと、悪化して、医療費が逆にかさむ。それよりも、やはりしっかり早期発見、早期治療あるいは予防、そして日ごろからの健康づくり。  そのためには、ただ単に絞り込んでいけば金が助かるという話ではなくて、やはりきちっとした社会保障をまずは保証していくということが私は大事だと思うんですけれども、この点についての木村公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  145. 木村惠津子

    ○木村公述人 社会保障ということは、私ども民間から見ますと、両方あるのかなと思うんです。  困っている方に保障するというのは確かに当然なんですが、それによりまして、逆な差別というのも起きる可能性があります。私ども現場の中で、本当にいろいろなケースがございまして、この方が公的に支えられていていいのかなと思う場合もございますね。  ですので、そういう実態からいきますと、福祉というのは本当に大切なんですけれども、本当の平等というのは何なのか。一生懸命働いている方でも、非常にお困りの方もいらっしゃいます。でも、そういう方にはなかなか手が差し伸べられないということもございます。  よくよく、何が正しいのか。先ほどから、日本人が幸せになるためにはというお話がございましたけれども、本当の福祉というところでは、よくよく現実というものを見ていただいて、どこにどういうものが必要かというのは本当にケースによって違うと思いますので、そこは一辺倒に決めるのではないということが大切かなというのが実感でございます。     〔上杉委員長代理退席、委員長着席〕
  146. 宮本岳志

    ○宮本委員 こうなる前に手を打てなかったのかと先ほどおっしゃいました。僕も本当にそう思うんですね。高齢化というのは、今大騒ぎしますけれども、急に高齢者で生まれてくる方がいらっしゃるわけじゃありませんから、五年前も十年前も今の高齢者の方がいらっしゃったわけですから、早くやはりそのことについての手を打つべきだったし、社会保障をどうするかという点では、しっかり財源の確保を進めていかなきゃならないというふうに思うわけです。  それで、菊池公述人にお伺いするんです。  私ども消費税増税には反対という立場で、今からでも中止すべきだという立場でやっているわけですけれども、そうしたら財源をどうするんだという議論があります。  私どもは、法人税を引き下げに引き下げてきたわけであって、むしろ法人税は諸外国に比べても適正な水準まできちっと上げるべきだ、あわせて、国際的な法人税の引き下げ合戦のようなことをやはり国際的にもやめようということを、きっちり国際的に議論していくべきだ、こういうことも申し上げてまいりました。  法人税の引き上げという話は、我が党以外に、口にする党派がなかなか少ないのでありますけれども、先生のレジュメには、法人税引き下げは必要ない、むしろ最高税率を引き上げるべきである、こう書いていただいておりまして、意を強くしておるわけでありますが、この点について公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  147. 菊池英博

    ○菊池公述人 私の考えは、一つは、典型的なモデルが、クリントン大統領が一九九三年から実に八年間展開した実績があるんです。  クリントンが一九九三年一月に就任しましたときには、アメリカはデフレぎみだったんですね。前のパパ・ブッシュが増税をやったんですよ。  そこで、クリントンが考えたのは、財政規律改善のための数値目標とかそういうのはやめる、やることは、名目GDPをとにかく上げるんだ、だから、まさに財政主導、それで金融についてきてくれ、これをやったわけですよ。添付資料にございますから、見ていただくとわかるんですが、グラフなんか見ると、実に鮮明に出ている。  そのときには、政府はきちっとした公共投資を出して、それで継続して所得を上げるようにします、地方の方にも出す。それから、教育施設でも、学校なんかも全部建てかえたりなんかしたんですね。地下鉄をつくらせるとか、いろいろなことをやった。そうすれば景気はよくなるでしょう。それと同時に、よくなることを前提にして、ワンパッケージとして、法人税を引き上げる、それから個人所得税も引き上げるということをやりました。数字もそこのデータにございます。  それをやっていって、三年目、四年目、非常に税収も上がって、景気もよくなった。継続したわけですよ。大統領ですから、四年間できるから。それで再選されましたから、八年継続していった。五年目に財政は黒字になったんですね。八年目には三千億ドルの財政余剰になった。  それで、最後のときに、彼は、辞任するときに、ステートメントで、こういう演説をしたんですよ。こういうふうにして財政は改善されました、その効果は、七割は景気回復です、三割は財政構造の改革、つまり増税ですということだったんです。  ですから、私が申し上げていることは、とにかく法人税の問題だけじゃなくて、何しろ、私はさっきから申し上げているように、デフレ解消には、どうしても、政府が中心になって、公共投資を出して、リスクをとってやらなきゃだめだということは終始一貫している。  同時に、法人税の最高税率を上げるんです。あるいは、所得税も上げるんです。今回、所得税は少し上げておられますね。法人税ももっと上げるんです。下げるんじゃないんです。  去年でしたか、民主党さんが下げられましたね、三〇から二五・五。これははっきり言って大失敗ですよ。上げるべきです。しかも、あのときは、空で下げちゃった。それで、しかも、東日本の負担だって、結果的には法人税は下がっているんですから。ああいうことをやるから、結局は減税効果がマイナスになる。それで、ツケだけ回ってきて、結果的には消費税を上げなきゃいかぬということになりますでしょう。だから、これは逆のことをやってきたわけですよ。  ですから、それをもとに戻して、まさに歴史が教えるように、ちゃんとそういうふうにして、景気対策をするなら、法人税を上げる、もうかったらちゃんと政府に戻してよ、こういう考え方です。実績がありますから、それを申し上げているわけです。
  148. 宮本岳志

    ○宮本委員 先生が、日本型資本主義を確立すべきだとお書きになっている。私たち、先ほどお述べになった、新自由主義、市場原理主義からの決別、あるいは輸出立国から内需中心の福祉国家へ転換する、あるいは株主の利益より国民の雇用を重視する、そして農業は農業自給率の向上をしっかり目指していく、まさに大賛成でありまして、私たちは、ルールある資本主義、それこそルールある本来の資本主義だというふうに考えておりまして、そういう方向で力を尽くしたいと思っております。  午前中の議論でも出たんですけれども、アメリカは、オバマ演説で、最低賃金を十ドル余りに、千円程度引き上げるということを今やろうとしているわけですね。そのために中小企業に対しても独自の補助をやるというのがアメリカがとってきた政策であって、そういう点では、法人税の引き上げという点でも、それから最低賃金引き上げという点でも、アメリカに学ぶべき点は非常に多いというふうに思うんです。  先生のお話の中でも、例の戦略的経済特区ですか、こういうものはアメリカに言われてやるわけですけれども、なかなかいいところは学べないというのはどういうわけかと私は思うんですが、そのあたりについて一言だけ、先生からございましたら、お述べいただいて、私も終わりたいと思っております。
  149. 菊池英博

    ○菊池公述人 まさにこの戦略的特区、先ほど申し上げましたとおり、これははっきり申し上げて、やはりかつて上海にあったと同じような租界を日本につくるということじゃないかと思うんですよね。今先生もおっしゃられたとおり、アメリカからそう言われたことは事実だと思いますし、対日年次要望書の二〇〇三年のものに細かく書いてあります。それのまさに焼き直しですね。  しかし、では、どうしてそんなものをやって、アメリカのいいところを学べないのかというのが先生のお話なんですけれども、結局、何かそういう衝に当たる方がアメリカで勉強をされてこられたり、いろいろこちらへ来ても御勉強だと思いますけれども、やはり、時の政権のいろいろな思惑だとか、あるいは、はっきり言えば利権だとか、利権という意味は、言葉は悪いですけれども、例えば規制緩和をして、小泉構造改革のときに規制緩和というものをしましたよね。  では、一体、その規制改革の結果、利権というか、どうしたのか。これは、ジョセフ・スティグリッツというコロンビア大学の教授がこういうことを言っている。レントシーカー、レントシーキング、レントというのは、そういう政治的な動きによって新たな利権を得ることをアメリカでレントというそうですね。それをシーキング、求めている。そのレントシーカーが、結局、構造改革とか何かということであって、アメリカでも、結局、レーガン以来やってきて、得したのはそういう人だ。だから、結果的には一%だけに所得が集中しているんです。そこに図表もありますけれども、そういうことになる。  だから、そういうことにどうして日本はなっていくのかなと思って、この辺のところは、私は非常に自民党さんに対しては疑問を持っています。ただ、自民党さんの中は、こう言っては失礼ですけれども、私、何人かは知り合いの方とかいろいろありますけれども、全ての方がそういうことに賛成されているわけでもないと思います。  それから、国会議員の先生方にも、私、お願いしたいことは、やはりそういう視点から、本当に国益としてそれがいいのかどうか。例えば、特区をつくっても、あそこを最も働きやすい場にすると言いますけれども、外資の働き場所にするだけでしょう。日本国民にとってどうですか。あそこの中で、雇用なんか、いつでも首にできるようなことをするんじゃ、マイナスですよね。  ですから、やはり日本国民の立場に立って、何がプラスかという視点でいろいろとお考えいただきたいと、私はお願い申し上げたいと思います。
  150. 宮本岳志

    ○宮本委員 まことにありがとうございました。  以上で終わります。
  151. 二階俊博

    ○二階委員長 次に、畑浩治君。
  152. 畑浩治

    ○畑委員 生活の党の畑浩治でございます。  長時間、四人の公述人の皆様、お疲れさまでございます。早速質問させていただきます。  日本経済の六割が個人消費だということがありまして、最近、GDP速報値が出たんですが、これは余り伸びていない。私、家庭や生活者が安心してお金を使えるようにならなければ経済が本格的には回復しない、そういうことで、個人消費が回復しなければいけないんだろうなと思っております。  個人消費を回復するためには、よく言われる議論は賃上げですが、この賃上げの方法もいろいろ議論があって、本委員会でも、例えば、賃上げを強制はできないわけで、中小企業支援をして賃上げができる環境をつくるべきだという話があったり、あるいは、法人税を減税した方がいい、いやいや、そうじゃない、法人税の減税というのは内部留保にたまるだけで意味はないので、やるとすれば賃上げ促進税制、リンクさせた税制である、そういう議論もあったし、いや、そうではなくて、実は法人税ではなくて、社会保障の負担こそ高いんだ、社会保障の負担軽減の措置が必要だと、いろいろ議論があったわけですが、端的にはどのようなことが必要だとお考えでしょうか。  これは、末澤公述人と島本公述人と菊池公述人にお伺いしたいと思います。
  153. 末澤豪謙

    末澤公述人 先ほども少し御説明をさせていただきました。  実は今、日本企業でも、人が足りないということで日々求人をかけている企業さんと、いや、そうじゃなくて、なかなか人は採らないんだと、分かれていると思うんですね。  グローバルの製造業につきましては、やはり新興国等との競争が日々厳しくなっている。そういう企業においては、やはり、先ほどもお話ございましたが、社会保障費だとか法人税だとか、国内でのディスアドバンテージを引き下げるような工夫も必要でしょうし、一方で、人が本当は採りたいんだけれども採れていない企業さん、こういったところには、やはり国として労働者と企業とのパイプ役をきちっとつくる、ないし、そこに若干、税制等も含めて、雇用促進税制等の潤滑剤といいますか、そういったものをつけて、人がうまく、適材が適所に配分されるように、人、物、金の流れを潤滑にするような政策が必要なんだろう。  ただ、やはりパイをふやしていかないと全体の需要はふえませんので、日本潜在成長率を上げつつ、少子高齢化に対応できるような産業構造の変革が必要なんだろうというふうに考えております。
  154. 菊池英博

    ○菊池公述人 確かに、国民の消費をもっと喚起しなきゃいけないということは、おっしゃるとおりだと思います。消費税の値上げもありますから、いろいろあると思うんです。  それで、消費を喚起させるには、まさに消費というのは、みんな、給料から出るわけですから、やはり国民の賃金を上げないといけないと思うんですね。私は、まず最低賃金を千円に、本当に上げたらどうかと思うんです。  それから二番目には、国内にもっと投資をさせるように民間企業を持っていかなきゃいけないんですね。私の一つの考えは、法人税は今二五・五に下げましたが、これを三〇%に戻すんですよ。戻してから、国内に投資をし、正規社員を増加させたら投資減税で減税しますよということにすれば、減税の雇用効果、それから国内に対する経済効果が出るわけですね。そういうふうにまず一つ、きちっとすべきではないのかと思います。  それから、やはり何といっても、今非常に問題なのは、デフレというのは経済のパイが小さくなってきているわけですね、御案内のとおり。ですから、これを何とか大きくしなきゃいけないんですよ。これが、先ほどから、何をかなめにするかというので、私は、国土強靱化法、もう法案もできましたから、それに対してちゃんと肉づけをして、そして長期計画できちっとやっていただきたいな、こういうふうに思います。  それで、やはり内需拡大ということをベースにしないといけない。みんな外、外と言うんですけれども、結局、それよりも、何といったって、国内がおろそかになっているわけですよ。  例えば、先ほどもお話ししましたとおり、国内の公共投資でも、二〇〇七年から回収超過ですよ。だから、一年だけ更新投資をするだけでも、十一兆ぐらいかかるというんですよ。そうしたら、それは思い切って更新投資をするとか。あるいは、企業でも、もっとスクラップ・アンド・ビルドをやって、最新のものを入れるんです。  ですから、人口が減ったから財政がと言うんですけれども人口が幾ら減ったって、減っているというのは、今、大きな問題じゃないと思うんです。  時間の関係もありますから、ちょっと人口のことを一言申し上げますと、皆さん、人口が減っているからいけないと言うけれども、私は絶対にそうは思いません。  なぜかといいますと、過去十年間、人口の減少率が一番高い国がどこかというと、ドイツですよ。では、ドイツはデフレですか。隆々たる成長をしていますよ。  かつてフランスでも、ドゴールが出てくる前は人口が減ったんですよ。それでドゴールはどうしたかというと、経済を安定しろ、子ども手当を出せとか、経済だといって、ドゴールがどんとやったものだから、経済的なことで上がってきた。  つまり、デフレで給料が下がると、子供が産めないんです。私はもともと女子大の先生をやっていましたから、今もOGが集まります。すると、みんなそう言うんですよ。同棲したりなんかしているから、早く結婚しないかと言うと、いや、なかなか、いつ首になるかわからないからなんて、かわいそうです。結果的にはそういうような状況なんですね、いろいろな子たちが。ですから、何とかして、このデフレ解消ということを、大きくすることによって、そういうことをすべきだと思います。  それから、法人税の引き下げですけれども、アメリカが今みたいに惨たんたる財政状況になったのは、法人税を引き下げたからです。これはレーガンのときです。レーガンのときに、新自由主義、市場原理主義で、法人税を下げようと。その前までは、法人税は、高いところは五〇ぐらいだった。それをどんどん下げていった。それで三〇、もっと下げましたね。それから一方、個人所得でも、最高税率が、レーガンまでは七〇ぐらいあった。それをどんどんどんどん下げて、最後は二八にした。  だから、そうやって所得税の最高税率だとか法人税を下げても、経済効果はないんです。その結果、アメリカは一九八五年に債務国に転落したんですから。今日に至るアメリカの最大の失敗は実はそこにあるんです。でも、今は少しよくなっている。  ですから、そういう意味では、法人税を下げるんじゃなくて、さっき言ったように、上げる。同時に、法人税というのを下げるならば、ちゃんと目的を持って、法人税の減税効率、これをしっかりと出すべきだ。そして、経済をもっと大きくする。それが消費を拡大する、それから雇用の拡大ですね。  雇用の拡大についても、もっと正規社員を条件にすることです。ちょっと一言最後に申し上げますと、今まで非正規で五年まで続いた、これをまた十年までいいようにしましたね。これはまた非正規社員がふえますよ。  ですから、ぜひ、これは自民党さんの今やっていらっしゃる政策に先生方も御指導いただきたいことは、雇用に対しては、そういう社会的なインフラをもっと法的に整備していかないとだめなんです。デフレだから、みんな賃金を安くしようと。ですから、そういうことをしっかりと御指導いただきたいなと私は思います。
  155. 島本幸治

    ○島本公述人 個人消費の低迷が確かに続いています。これはバブル崩壊後の後処理がまだ続いているという問題や、確かに将来不安。ただ、私、デフレの事実も大きかったんだと思うんですよね。物価が下がっているので、今買うよりは買い控える、こんなセンチメントの影響が大きかったのかなと。そういった点では、まさに今、物価の符号が変わってきて、少しずつ家計の、個人消費の動きも動意が出てくるというふうに私自身は見ています。  ただ、さらに個人消費が活性化していく上で避けて通れないのが、私は、企業そのものも活性化する必要があるということだと思います。  先ほども意見ありましたが、家計の、賃金の出どころは企業ですから、企業そのものが成長して活躍して給料を払うことができるような、こういう経済社会にしていくというところの視点が一つ重要なのと、もう一つは、日本の家計部門というのは、人口動態が劇的に変わっている中で、必要となるサービスも変わってきているんだと思うんですね。例えば、医療、介護というのも今後は成長産業かもしれません。こうした需要の変化に供給面が十分対応できているかといったら、まだできていないところもあると思います。  こうした企業の対応を促す上でも、しっかり規制緩和する、あるいは企業が投資をしやすくなる、こういう環境整備も重要だと考えております。
  156. 畑浩治

    ○畑委員 ありがとうございました。  では、最後一つ、菊池先生にちょっと質問をしたいと思います。  デフレ脱却ということを盛んにおっしゃられておりまして、私も、今のアベノミクス、デフレ脱却政策の中で、矛盾しているものがあると思っております。  それは、国家戦略特区も、前、るるお話しいただいたんですが、TPPでありまして、TPPというのは、関税撤廃して、種々の規制撤廃によって経済発展を進めていこうとする政策でありますから、供給力強化政策ですよね、需要というよりも。TPPによって国際競争していって、地域経済が立ち行かない、そういう中で競争力をどんどんふやしていく。これは、逆にデフレがさらに進行してしまうんじゃないかなというふうな思いを持っております。  TPPの経済における効果というか、デフレにおいて問題ではないかという認識を持っていますが、ちょっとその辺の所見をお伺いしたいと思います。
  157. 菊池英博

    ○菊池公述人 TPPを採用すると、十年間でどのぐらい日本のGDP、言うならば経済規模がふえるかということについては、内閣府が既にデータを出されていますね。実質三・二兆円ですね、数字は。ということは、十年間ですよ、これは、実質と言っていることは、デフレが進んでいるんです。デフレが進んだ上で、GDPデフレーターがマイナスになるから、マイナス、マイナスでプラスになるということです。  ですから、既に内閣府が計算されているTPPを入れたときの経済効果は、デフレが進みます、それから同時に、十年間でわずか三・二兆しかふえませんということをおっしゃっているんですね。それなのに、なぜTPPについて、もっと入れようというふうにおっしゃるのか、私は本当にわからないんですよ。  同時に、規制を緩和するというけれども、結果的には、その規制を緩和して、結局そこで、さっきレントシーカーという言葉を申し上げましたけれども、その規制緩和によってどんどん外資が入ってくる。それで、外資が結局、日本の富をとっていっちゃう。とっていっちゃうということは、言葉は悪いですけれども、結果的には、外資が、特区なんか入れば、持っていってしまう。  私は、決して外資を否定するわけじゃありません。決してそんな攘夷論ではありませんけれども、しかし、先生方御存じのとおり、サーベラスなんて、西武、ありましたね、西武球場も潰してしまえ、それから電車も潰せと。やはり外資というのは、しかも個人の投資じゃなくてファンドなんですよ、大部分は。ファンドの利益をとらなきゃいけないから、そうなっちゃうんです。だから、そういうことに対して利権を与えるようなことは、私は必要ないんだと思います。そういう意味で、TPPというのは非常に、私は、はっきり申し上げて危険な選択だと思います。  それから、同時に、そのTPPの中には幾つかありますね。ISD条項だとかラチェット条項だとか。私がちょっと懸念していますのは、アメリカのTPPの係の人たちは、係というか主要な人たちは、米韓のFTAを結んだ、それと同じようなものを日本と結んで、それ以上の譲歩を日本に要求したいということは公言しているわけですよ。  そうなるとすると、例えば、日米FTAとかね。今、TPPはどうなるかわかりません、オバマも、全権をとろうと思ったら、議会で否決されてしまった。そういう形になると、まさに韓国自身がいろいろな面でかなり苦境に立っておられますが、それと同じような形になりかねないんじゃないか。  本当に、このTPPの問題は、はっきり言って、デフレは一段と促進されます。これでよくなるなんということは、私は全くあり得ないと思う。  ですから、そういう実態のことをよく御認識いただいて、政府の方々、特に国会の先生方、最終的には、これは条約になれば国会の批准が必要になりますから、国会が批准しない限りは、TPPをもし正式な条約として結ぶならば、成立いたしませんから、そういう意味では、国会の先生方がかなめなんです。  ですから、そういったことをよくお考えになって、ぜひ、デフレ解消の面からいくと、TPPは全くマイナスだと思います。また、個別にアメリカといろいろ話をするということは別の問題で、別にこれが日米間の対立を激化させるというようなことには全くならない、私はこういうふうに思っております。  先生方の御指導をひとつよろしくお願いします。
  158. 畑浩治

    ○畑委員 どうもありがとうございました。終わります。
  159. 二階俊博

    ○二階委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  公聴会は、これにて散会いたします。     午後四時十一分散会