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遠山委員 おはようございます。公明党の
遠山清彦でございます。
安倍総理の五月十五日の
記者会見の後、
安保法制のあり方に関する与党協議が既に開始をされております。私も光栄にも参加をさせていただいておりますが、現在、記録係でございまして、発言ができないという立場で参加をさせていただいております。きょうは、そういう
意味で、発言ができますので、
総理と、ぜひ
基本的な
考え方について直接確認をさせていただきたい、このように思っております。
安全保障に関する国会及び
政府の
議論は、従来から神学論争とやゆされてまいりました。先日も、私、東京都内で、千五百人余りの集会で聴衆の皆さんに伺いまして、
集団的自衛権は自分はわかっているという方、手を挙げてくださいと言ったら、約二名だけ手を挙げられたということでございます。
その
意味で、現在、与党協議、そしてきょうから国会で
議論されるこの
安保法制の
議論につきましては、やはり、
国民の理解を得る、深めていただく、こういうことが最重要だと
考えております。それがあって初めて幅広い
国民的な合意も形成される、このように
考えているところでございます。
本日は、これらのことを念頭に、今日まで数十年間、そのほとんどは自民党政権のもとででございますけれども、国会あるいは
政府の中で緻密な
議論の積み重ねの結果として確立してきた現在の
憲法解釈における戦力と自衛権の問題につきまして、確認をし、
総理のお
考えを伺いたい。ぜひ、
総理におかれましては、テレビをごらんになっている
国民の皆様にわかりやすい御説明をお願いしたいと思います。
きょうは、パネルを五枚用意いたしました。まず、一枚目のパネルでございます。
総理はこれは言わずもがなの内容でございますけれども、
政府解釈の論理というものを、戦力をキーワードに確認したいと思います。
まず、左側の絵でございますけれども、極めて大ざっぱに、素朴に
考えれば、統治機構として
国家が持つ実力装置には、大別して、治安維持のための警察力、これは下段に書いてあります、それから、外敵から国土、
国民の
防衛をする戦力というものがあるわけでございます。
しかしながら、このパネルの左側に、見方によっては右側でございますけれども、書いてありますとおり、
日本国
憲法は、
憲法九条という、いわば
武力行使を原則として禁止する、こういう規範がございます。一方で、前文や
憲法の第十三条に、
国民の生命、自由及び幸福追求権を守る責務が国にあると読める内容になっております。
この一見矛盾する二つの規範を整合的に
解釈したものがこの右側の絵になっているわけでございますが、要するに、警察力と戦力の間に自衛力という概念をつくり出して、そして、「
憲法九条とともに」云々の下に書いてあるとおり、
国民の生命、自由及び幸福追求権が根底から覆される
事態に
対処して、国はこれを守る、それが自衛力である。それで、現行の
憲法解釈では、個別的自衛権のみに基づいてこの自衛力を
行使する。こうなっているわけでございます。
次に、パネル二番に参りたいと思います。
先日発表されました
安保法制懇の
報告書には、
総理も
記者会見でおっしゃっていたように、二つの異なる
考え方が示されておりまして、そのうちの
一つが、いわゆる芦田修正論でございます。
ただ、
総理、芦田修正論と言われてわかる
国民は、九九・九%いらっしゃらないと思いますので、きょうは絵にしてまいりました。
左側は、引き続き素朴な
考え方で、戦力と警察力。もちろん、素朴に
考えれば、
憲法九条のもとで戦力は否定されていますから、これはうっすらとバツと書いてあります。警察力はマルだと。
それで、芦田修正論というのは、これは下段の方に
憲法九条の全文を載せさせていただいておりますが、第一項におきまして、「
日本国民は、」途中、割愛しますが、「
武力による威嚇又は
武力の
行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」これが九条の第一項でございます。第二項の冒頭、「前項の目的を達するため、」そして「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」交戦権も持たない、こういう内容になっているわけであります。
芦田修正というのは、これは芦田均衆議院帝国
憲法改正小
委員長の発案で、この二項の冒頭に赤い下線がついているところがつけ加えられた。この読み方として、この「前項の目的を達するため、」というものが前の一項全体にかかるのではなくて、国際紛争の解決の手段としての
戦争だけにかかる、こういう
解釈をします。
そうしますと、上の絵に書いてあるように、自衛力という概念というよりも、警察力と戦力で、戦力の中に、
言葉が適切かどうかわかりませんが、よい戦力と悪い戦力があるという
考え方になります。悪い戦力というのは、バツになっておりますが、要するに、今私が申し上げましたように、国際紛争を解決する手段としての
戦争、すなわち侵略
戦争のための戦力を持つことはだめですよと。
しかしながら、それ以外の戦力はマルになっております。横を見ますと、では、どういう戦力がマルかというと、自衛
戦争、個別的、
集団的自衛権の
行使のための戦力、これはマルですと。それから集団
安全保障措置、いわば制裁
戦争、これもマルですよ、このための戦力もマルですよという立場でございます。
これがいわゆる芦田修正論の中身なわけでございますが、
総理は十五日の
記者会見で、
政府の
憲法解釈とは論理的に整合しないため、採用できないと御発言をされました。
まず、この点について
総理に伺います。
総理として、なぜこの
考え方が、芦田修正論の
考え方が採用できないという
判断に至ったのか、改めてわかりやすく御説明をいただきたいと思います。