○松田学君
日本維新の会の松田学です。
私は、今般政府が改革提案を行っている独立行政法人
制度が、行政の効率化とスリム化を図る仕組みとして我が国に導入された経緯に鑑みまして、以下、行政改革への基本的な取り組み姿勢を中心に、政府の所見を伺いたいと思います。(
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この四月一日に消費税率が八%に引き上げられ、安倍総理は、来年十月から一〇%まで引き上げるかどうかを、経済情勢を踏まえて判断するとしています。
消費増税について、これまで多くの政党が主張してきたのは、国民に負担増を求める前に、まずは行革で政府が身を切る改革を、増税はしかる後にというシナリオでありました。
ただ、実質的には、社会保障目的税である消費税というものは、国民から国民へのお金の移転であり、政府は、そうしたお金の流れを仲介する立場と言えます。国民の誰かが負担したお金が国民の誰かに社会保障給付として移るわけでありますから、その限りでは、トータルで見れば、消費税を増税しても、国民経済的な負担がふえるものではありません。
消費増税の経済的な負担とは、将来世代にツケ回しをしていた分を減らす部分にこそあります。増税を先送りすればするほど将来世代へのツケ回しはふえるわけでありますから、それを是正する際のこうした経済的な負担は大きくなります。
その金額について、甘利大臣は、四月十一日の
内閣委員会で、消費税率を一〇%まで引き上げると、満年度化ベースで、後代へのツケ回しの軽減分では七・三兆円、基礎年金の部分が三・二兆円と答弁されました。つまり、この一年半の間に五%消費税率がアップすることで、年間で十兆円余りの国民経済的な負担増が生じる計算になります。
これは、必要な社会保障費の増加のテンポに合わせて消費税率を引き上げていれば発生しなかった負担増分でありまして、これまで既成の大政党が選挙を恐れて課題を先送りしてきたことがもたらした負担増分でもあります。
一〇%への引き上げを前に、今政治がとるべき責任は、この部分にこそあると思います。
私たち
日本維新の会は、安易な消費増税には反対しつつも、消費増税が、安易でない増税として容認できる前提として、国民が負担に向き合う上で納得が得られる改革を強く迫っております。
今日の事態が、国民と課題を共有できなかった政治の失敗にあるとすれば、国民が、みずから国家財政の真実を把握し、納得を持って政策選択ができるような、透明でわかりやすい
予算編成と、財政運営のインフラとなる公会計改革や、次世代への財政責任を
法律で政治家にも課すことを趣旨とする我が党提案の財政健全化責任法案、これは、政治がとるべき責任として不可欠なものと考えます。
こうした改革、立法
措置の必要性について、安倍政権はどうお考えでしょうか。
麻生財務大臣にお伺いしたいと思います。
国民の納得を得るために必要な行政改革もそうであります。
独立行政法人について、民主党政権は、法人数を百二から六十五法人へと三十七削減することを決定していたのに対し、今回の法案では、百から八十七へと、削減する法人の数は、十三にまで減っています。消費増税が
実施されている時点での政権の決定としては、行革に対する取り組みが甘いという印象を与えることになっていないでしょうか。
先般今
国会で成立した国家公務員
制度改革もそうでありましたが、どうも安倍政権に目立ち始めているように見えるのは、官僚主導という色彩であります。
公務員改革では、自民党が政権に返り咲いてから
提出した政府
提出法案は、自民党が野党のときに
提出した法案よりも改革色が後退し、官僚が困らない範囲におさまっていました。
独法改革も、官僚のもっともらしい言い分を聞いていれば、統廃合は難しいという独法が次々と出てきます。今般の通則法改正も、全体的に、民主党政権が提案した二十四年法案の内容を、官僚機構が受け入れやすいものへと微
修正したものにすぎないように見えます。
消費税を負担する国民がなるほどと言えるような、行政改革のわかりやすい目玉があるのかどうか、安倍政権の行革に向けた姿勢を、稲田大臣に改めて伺います。
さて、我が国では、政府の量的規模を小さくするということに行革の焦点が当てられてまいりましたが、量的な意味では、日本は、諸外国と比較しても、小さな政府であるという事実があります。
先進国三十四カ国が加盟するOECD諸国の中で比較してみますと、日本は、租税負担率も社会保障以外の政府支出の対GDP比も最低水準であり、総労働力人口に占める一般政府雇用者の割合も先進国でほぼ最少、一般政府の雇用者報酬の対GDP比で見ると、日本は、先進国の中で人件費が最も安上がりという数字になっています。
国、地方、政府関係企業などを合わせた公務員数の人口比は、英、米、フランスのほぼ四割、ドイツの六割にすぎません。
雑巾を絞りに絞ってきた日本では、今や、量的削減という意味での行革は、簡単なものではなくなっています。
政府は、既にOECD諸国の中で最も低い総人件費の対GDP比を、二〇一五年度には二〇〇五年度の二分の一にするとの目標設定をしてきました。世界で最も小さな政府を、どのようにして世界に類例のない極小の政府にするつもりなのか、目標達成の見通しも含め、稲田大臣、お答えください。
もはや、日本の行政改革は、量よりも、質的な改革の側面に注力しなければ、量的なスリム化も実現しないところまで来ています。
そのためには、行政の仕組みを大きく組みかえる改革が必要であります。それは、私たち
日本維新の会が主張しているような、統治機構の改革といったレベルでの大改革であり、よほどの覚悟で取り組まなければなりません。
今回の通則法改正の中には、肥大化防止、スリム化が掲げられていますが、政府案が、どのようにして行政の質的な改善につながり、それがどのようにして行政のスリム化にもつながるのか、その道筋をお答えください。
今後、さらに量的に小さな政府を目指す上で必要なのは、行政の一人当たり生産性を高めていくことであります。そのためには、これまで以上に、公共分野にすぐれた人材を確保していく必要があります。
独法も公募の
推進が課題となっていますが、現状では、独法への民間人登用は、期待された成果を上げていないと言われています。
その理由は何でしょうか。今般の法案で、それは、どのような仕組みによって是正されると期待されているのでしょうか。お答えください。
先般、iPS細胞で著名な山中伸弥氏は、
内閣委員会で
参考人として
意見を述べられましたが、その中で、新たに設立される独法である日本
医療研究開発機構の人事に関して、公務員人事が
内閣主導になる流れの中で、こうした機構の人事に政治が介入することについての不安を表明されました。
ポリティカルアポインティーを基本とするアメリカでは、大統領がかわるとNIHのトップや上層部もかわりますが、アメリカの場合、政府の周辺に、人材を受け入れるさまざまな機関があります。
官民ともに終身雇用を前提とした、労働市場の流動性が低い日本において、公務であれ独法であれ、民間から有為な人材が集まるためには、官と民との間でリボルビングドアを支える、層の厚い社会システムを新たに構築していかなければなりません。これは、今回の、
内閣主導への公務員改革が目指す方向の前提にもなるものであります。
行政改革は、今や、行政改革を超えて、国家全体の構造改革が必要な局面に至っていると思いますが、安倍政権にそのような認識と覚悟があるのかどうか、稲田大臣に伺いたいと思います。
さきの公務員
制度改革の法案審議に際して、私たち
日本維新の会は、幹部職員の身分保障の緩和などを主張いたしましたが、それは、公務員を身分から職業へという観点から、公務の分野を、各分野のプロフェッショナルが活躍できる魅力ある職業にしなければ、人材を確保できないと考えたからであります。
魅力ある職業とすべきなのは、独法も同じであります。
独法の役職員の創意工夫や、やる気を引き出す環境を整えることが、行政の効率化や生産性の向上に何よりも寄与するはずであります。
しかし、日本の独法は、
制度上、
事業の目標を主務大臣から一方的に与えられ、
事業実施の効率性には責任を持つものの、
事業そのものの適否については責任を負えないたてつけになっています。
現場は常にダイナミックに変化しており、現場からしか生まれてこない戦略もあります。創意工夫が現場から生まれるようにするために、今般の改革ではどのような配慮がなされているのか、お聞かせください。
独法改革の背景の一つには、独法に多額の税金がつぎ込まれて、官僚の天下り先として肥大化し、税金を無駄に食っているとの独法性悪説、独法シロアリ論があります。
ただ、組織の形態よりも、大事なのは、税金を投入することに見合う
説明責任であり、改革とは、
説明責任の向上であると考えます。
私たちが財政について提案している公会計改革もそうでありますが、改革の理想は、国民にとって、国家がガラス張りになることにより、無駄が省かれ、効率性が高まることにあります。
しかし、
説明責任とは、単に情報を開示することだけを意味するものではありません。
一般に、責任に対応する英語の言葉としては、レスポンシビリティーという言葉とアカウンタビリティーという言葉がありますが、前者が、職務の内容が思わしくない場合に非難を引き受ける意味なのに対し、後者は、一定の職務について
説明すべき権限と義務とを排他的に引き受け、違法あるいは不当な業務執行についてしかるべき事後
措置を講じるという意味での責任を意味するものとされております。
日本の独法
制度の参考とされたのが、英国のエージェンシー
制度であります。
メジャー首相は、中央省庁の多くの部局をエージェンシーに変身させる大改革を断行しました。
エージェンシーの最高責任者は、企画書を
提出して公募で選ばれ、独裁に近い権限が与えられる一方で、その企画書を守れなかった場合は賠償責任を負うため必死に仕事をするため、そのもとで働く若い職員からの提案が必要になり、公務員から移った者も含めて、職員たちにとっても、やりがいのある職場となり、成果に結びついたとされています。
英国の
各省庁で政策立案を担う
国会議員は、所管のエージェンシーのチェックについても責任を負うことになります。結果として、政治家も無理な要求はできなくなるメカニズムが働きます。
今般の通則法改正で、各独法の業績評価は、これまでの第三者
委員会ではなく、主務大臣が責任を持って行うなどの改革がなされますが、レスポンシビリティーとアカウンタビリティーに係る責任分担はどのように設計されているのか。また、
各省庁が官僚主導で運営されている日本の場合、それが、結果として、官僚の介入権限をいたずらに強めるおそれはないのか。加えて、改革は、官僚ではなく、政治家による
説明責任の強化につながらなければなりませんが、その上で、どのようなメカニズムが存在するのか。稲田大臣に
説明を求めます。
政府案では、独法を三つに分類し直し、それぞれ異なるルールを適用することとされています。
ただ、理研のような
研究開発法人に分類される機関については、その性格上、
各省庁との間で成果目標の達成を義務づけられる独法とはそもそも異なる設計思想が必要ではないでしょうか。政府内でも、分離派と
制度派との対立があったと聞いております。
研究開発には、結果が見通せない不確実性があります。山中伸弥
参考人も、アメリカで与えられた自由な
研究環境こそが基礎
研究の成果に結びついたことを強調しておられました。
政府は、特定国立
研究開発法人を別法で定め、政府の関与を強めることとしていますが、これは、その点を十分にクリアしたものなのかどうか、稲田大臣に伺いたいと思います。
最後に、成長戦略との関係について質問いたします。
政府は、今回の独法改革を成長戦略の
推進に貢献させるとしていますが、安倍政権は、本法案がどのようにして日本経済の成長につながると考えているのでしょうか。稲田大臣にお尋ねします。
今や、日本は、世界で最初に人類共通の課題に直面する課題先進国になったと言われています。それは、日本が、課題が何であるかそれ自体が課題である時代に入り、
法律で成果の最大化と定めても、成果自体が何なのかを特定できない時代に入っていることを意味するものであります。
このことを十分に踏まえ、今回の独法改革が真の成長戦略へと結実する道筋をしっかりと確保するよう強く求めて、私の代表質問とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔国務大臣稲田朋美君
登壇〕