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大隅参考人 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。
東北大学の
大隅でございます。
基礎医学研究を行っている
立場からということで、
意見を述べさせていただきたいと思います。
お
手元に配付させていただいております
資料に基づいて進めたいと思いますが、二枚めくっていただきまして、
パワーポイントを印刷したものの方からごらんいただければと思います。
今般、この健康・
医療戦略推進法案、そして新
独法のことが進んできたわけですけれども、そちらにつきましては、私の理解するところでは、
スライド番号の一、二、三のあたりのところというふうに思っております。
それで、本日は、
三つのことについて
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず第一に、
研究費の
制度ということなんですが、そもそも、
スライドの四番のところですけれども、丸い円グラフ、それから表が下の方にありますが、我が国が健康・
医療の
研究開発を推進していくという上で、本当に
予算というものがこれで十分なのかということにつきましては、今年度どうのこうのということではございませんが、長期的な視点からは、そこのところをぜひきちんと考えていただきたいというふうに思っております。
中でも、
シーズとなる
基礎研究ということなんですけれども、こちらにつきまして十分な
配慮がなされているかということもお考えいただきたいというふうに思っております。
四番の
右下の方の
米国の例でございますけれども、
NIHの
予算の中にも
基礎研究の
予算というのは含まれております。また、そのほかに、NSF、DOEなどにおいても
基礎系の
予算というのが入っておりますので、これから先ずっと持続的な健康・
医療研究の
開発を行っていく上では、この種がなくなってしまっては元も子もないということでございますので、
基礎研究というのは非常に重要であるということを強調しておきたいというふうに思います。
その次ですけれども、では、そういったボトムアップ的な、
研究者自身の方から芽が出てくるというところ、それを、
スライドの一番の方に戻っていただきますと、発掘した
シーズをシームレスに移行させて、国が定めた
戦略に基づくトップダウンの
研究としての健康・
医療推進のための
研究を行うというふうになっているんですが、ここの、要するに、どのようにして
シーズを発掘するのかということに関してどのように考えられているかということです。
機構の中に、新
独法の方の中にちゃんとした
目ききというのがいるのかどうか、あるいは、私もいろいろ
資料を今回調べたんですけれども、
既存の
組織の方から移管される方
たちが新
独法の方にあるというふうに見ましたけれども、そういった
人材だけで足りるかどうか、そういったことがあるかと思っております。
それから、その中身ですけれども、三番のところで、主な
取り組みとして、これは
既存の、これまで各
省庁が行ってきたものからここの
機構の方に移すというものが書いてあると思います。主には、
再生医療、きょう
山中先生もいらしていますけれども、
ゲノム、そして、
がん、脳、
感染症、
難病等々が書いてあるわけですけれども、これだけで本当に十分かということについて、一枚めくっていただきました
スライドの、消えていますけれども、五番のところになりますが、これは
米国の
NIHの
組織図になっておりまして、要するに、この
NIHの
仕組みでは、このように満遍なくいろいろな健康・
医療に関する
研究というのが行われております。
特に
日本の場合は、
米国よりも、より長寿、幸いなことに長寿なわけですから、より
高齢者のところに関する
研究というのは大事だと思います。具体的に申しますと、例えば
高齢者におけるリハビリテーションでありますとか、
顎口腔、口の中ですね、要するに、歯というのは年齢の齢という字でございまして、これが大事なのではないかなというふうに思っております。
二番目に、では、これらの
研究を行う
人材ということですけれども、
研究というのは、高額の最先端の
機器を買ったら、そろえたら、それで何か進むかというと、そうでは全くありません。これは、人が
研究を行うということが非常に重要です。
研究を行う
人材というのは、めくっていただきまして、七番の
スライドのところになりますけれども、
医学部出身、あるいは私、歯学部ですけれども、そういった
医療側の
研究医というような
立場の方、そしてさらに、多分もっと大きな人口としては、
理学部系ですね。
PhD出身の方で
医学研究を行う
人たち、こういった方
たちをどのように
育成し、こういった
研究の方に携わっていただくかという、ここが非常に重要だというふうに思います。
この辺は、
研修医制度の関係、あるいは現状の
理学部や
生命科学研究系の学部等々において人体に関する
研究というのが不足しているということもありますので、この
法案の中ということではありませんけれども、関連して、これは非常に重要なことかなというふうに思っています。また、
労働契約法等の問題と
人材の
流動性ということの間にはコンフリクトがありますので、これも
検討事項かなというふうに思っております。
それから、
研究を行うのは、いわゆる
研究者だけではなくて、それを支える
研究支援者というのが非常に大事です。特に、例えば非常に複雑な
医学の
研究、
生命科学の
研究を行う上で、具体的に、文字の方の紙の二枚目のところをちょっと見ていただきたいんですけれども、例えば
細胞を培養する、それから
組み換えDNAを取り扱う、それからいろいろなイメージングを行う、あるいは
組織の切片を作製する、
電子顕微鏡でそれを見る等々の、こういった
基礎医学、
生命科学の
研究を行う
支援者に対して、よりそういった方
たちを
育成し保護できるような、そういった
仕組みというのが必要なのではないかというふうに思います。
例えば、
工学系でありますと、これはJABEEという
システムがありまして、そういった
育成制度というのができ上がっているわけですけれども、これらの
生命科学医学版のような、そういった
資格認定などのコースというのもできれば、こういった
研究を
支援する方
たちの
人材の継続的な
育成ということに非常に大きな役割があるのではないかと思います。
また、いろいろな
医学研究におきましては、
治験コーディネーターでありますとか、それから
生物学統計や、情報科学的なバイオインフォマティシャン、そして例えば
ゲノムメディカルリサーチコーディネーター、何かちょっと舌をかみそうですけれども、こういった新しい職種というのも非常に必要になっております。クリニカルクラーク、
データマネジャー等もそうなんですけれども。
また、
ゲノム医療を推進する上では、
遺伝カウンセラーというような方
たちも非常に重要です。これは現在、二つの学会の
認定ということで行われているんですけれども、こういったものが今後、
国家資格などになって、もっと推薦されるということが必要じゃないかと思います。
広報、
アウトリーチの活動につきましても非常に重要だと思います。どのような
人材が必要なのか、そして、過剰にではなく、適切に、正しく
国民に対してそれを発信していくということは非常に重要だと思います。
残り三つ目でございますけれども、
機構において所掌する
研究倫理等なんですけれども、
最後の、
スライドの八番のところになります。これは
NIHの方で、下の方、緑色のところですけれども、どのような法、
倫理、社会、このような
対応の
仕組みがあるかということを
参考のために載せておりますけれども、こういったことが、
医療の
基礎医学そして
臨床研究につなげていくときに非常に重要ではないかというふうに思っています。
特に、
ゲノムコホートなどは
国内における前例に乏しい
プロジェクトでありますし、また、
J—ADNIなどがそうですが、大
規模な
ネットワーク型の
臨床研究を推進していくときに、精度の高いエビデンスというのが極めて重要だというふうに思われますので、こういった法令等々の
指針遵守のための環境というのが必要だと思います。
それから、
最後でございますけれども、連日のように新聞をにぎわせておりますが、
研究不正ということに対する
対応、これが非常に重要だと思います。
研究資金に関しましては、かなりの
制度が整ってきていると思いますけれども、論文不正ということに関して、どのようにその
対応をしていくか、起きてしまったことに対するその事例の取り扱い、そして、今後それらをどのようにして起きないようにするかということ、これは非常に重要な問題だと思いますので、この
機構の新
独法の中でも考えていただきたいことだと思います。
以上でございます。(
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