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松倉参考人 弁護士の
松倉です。
きょうは、
参考人として、この場で
意見を述べる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございました。
それでは、早速、本題に入りたいと思います。
私は、今回の
行政不服審査法改正の関連
法案につきましては、賛成の
立場であります。
まず最初に、日弁連の
行政訴訟センターの主な活動を若干紹介したいんですけれども、
平成十六年に
行政事件訴訟法が
改正をされました。このときに日弁連としましても、
改正案の条文をつくり、
改正をバックアップしたというふうな運動を行ってまいりました。
その後、住民
訴訟の国版である、いわゆる公金検査
請求訴訟、別名、国民
訴訟というものを提言しました。これにつきましては、幾つかの政党さんが、この前の衆議院選挙あるいは参議院選挙の中での政策の中にこれを盛り込んでいただきました。
それから、今回の
行政不服審査法の
改正につきましては、
平成十九年五月に
改正案、条文もつくって、公表をしております。
その
中身を若干紹介しますと、特に今回の
法案と違っている点に絞って紹介しますと、まず、
審査請求期間は六カ月で、
行政事件訴訟法と同じにしました。
それから、
審理方式は、不適法でない限り
行政審査院に諮問する。
行政審査院というのは、中央
行政審査院と地方
行政審査院の区別をつける。それから、その
審理を担当するのは
審理官。
審理は単独と合議が両方あり得る。それで、
審理官というのはどういう方かといいますと、これは
行政法審判官という、試験を受けてそれに合格した有資格者だけに限定される。しかも、その身分については、
裁判官並みの身分保障がされるというふうな
仕組みにしております。
実は、これの参考にしたのは、アメリカの
行政内部の
裁判所である
行政審判官制度、いわゆるALJというものがあります。これは、私、日弁連でも二〇一一年に視察をしてまいりました。そこでさまざまなことを聞きまして、非常に独立した強い
職権を持っていて、しかも七十年間の歴史があるというふうなことがわかりました。
それから、答申の拘束力、これにつきましては認める、つまり、裁決庁はこの
行政審査院の
判断に拘束されるという
仕組みにしました。これは、韓国の
行政審判法にそういった
規定があるので、それを準用したということであります。
それから、執行停止
原則。
原則として、
不服申し立てがなされた場合には
行政処分等の執行は停止をする。そして、公共の利益に重大な影響が生ずるおそれがある場合には続行できる。現在の
原則と例外を逆にしております。
これが、私ども日弁連が考えた
改正案であります。
今回の
改正案について日弁連はどういう見解を持っているかといいますと、私どもが考えた案は、確かに、世界水準のベストな案ではあります。しかしながら、五十年間も
行政救済
制度が
改正されてこないという中で、旧態依然たる救済
制度の中で国民が苦労しているという中では、今回の
改正というのはベターな
改正であるという中で、私どもとしては、やはり
段階を踏んで、これをまず実現していく必要があるということから、今回の
法案については賛成というふうになっております。
今回の
改正のコンセプト、改めて言うまでもないかもしれませんが、
公正性の向上、それから、使いやすさの向上、それから救済手段の充実拡大というふうな三点が指摘されております。
公正性の向上で私どもが注目しておりますのは、やはり、
審理手続は
処分に関与しない職員である
審理員が担当する。さらに、裁決をするに当たっては、有識者から成る第三者機関の諮問を経る。
審査請求人は、
証拠書類等の
閲覧、
謄写ができ、口頭
意見陳述で
処分庁に質問をできる。
それから、使いやすさの向上では、
不服申し立て期間が六十日から三カ月に
延長された。それから、
不服申し立てが
審査請求に
原則一本化されて簡素化された。それから、
不服申し立て前置が大幅に縮小、廃止された。
それから、救済手段の充実拡大、これは、私どもも、いわゆる非申請型の義務づけ
訴訟が
行政事件訴訟法で
規定されたということを受けて、
行政不服審査法でも同じような義務づけということをやるべきではないかというふうな提案をしてきました。それが今回は、
行政不服審査法ではなくて
行政手続法の中に、国民が法令違反の事実を発見した場合に、
行政に是正のための
処分等を求めることを可能にする、それから、
法律の要件に適合しない
行政指導を受けた場合に、
行政に再考を求める申し出が可能となる、こういった
制度が設けられることになっております。
私どもは、この中で一番問題であるのは、やはり
公正性の確保が特に大事であるというふうに考えております。
今回の
改正で
公正性が真に担保されるのか、同じ
行政内の
手続で一度
行政が決定した
処分を覆すことを期待できるのか、素朴な疑問があると思います。
これは、
行政不服審査制度の
仕組みが、
処分庁とその上級
行政庁の中だけにとどまる、そこで完結するというのであれば、私は、むしろそういった疑念を持つ方が合理的であるというふうに考えます。
今回の
法案の
行政不服審査の
仕組みというのは、
処分に関与しない上級
行政庁の
審理員が第一次
判断を行う。それを受けて、
原則として
行政不服審査会の諮問で第二次
判断を行う。しかも、その
行政不服審査会は、
処分庁とその上級
行政庁の外にある、縦の系列から外にある
総務省に設置される。この点が今回の
改正の極めて大きな特徴であろうというふうに思っています。さらに、
行政不服審査会というのは、第三者機関として構成される。
問題は、新たなこの
仕組みがどの程度構成として機能するのか。これは、恐らく皆さん、いろいろな
意見があると思います。
私は、単なる個人的な予測をするのではなくて、今これと類似して設けられている、
総務省にある年金記録確認第三者
委員会、この活動実績を見ることが参考になるというふうに考えております。私自身も、年金記録確認第三者
委員会の中央
委員会で第二国民年金部会長あるいは脱退手当金の部会長を務めていましたので、この
仕組みについてはよく理解しているつもりです。
この第三者
委員会の
組織構成と
権限なんですけれども、
仕組みは、旧
行政管理庁、現
総務省が行っている
行政相談の一環として構成をされたんですね。
行政相談というのは、国や地方公共団体などの業務に対する苦情などを受け付けて、公正で中立的な
立場から必要に応じて
関係行政機関にあっせんを行う
制度である。あっせんですから、
関係行政機関に対する拘束力はありません。受け入れるか否かは、その
行政庁の任意であります。
年金記録確認の場合には、安倍政権のもとで閣議決定がありました。そこで、総務大臣の年金記録確認に関するあっせん案について、社会保険庁はこれを尊重して記録の訂正を行う、こういった決定があったために、事実上の拘束力が生じたというわけです。
第三者
委員会というのは、中央
委員会、地方
委員会がありまして、そのメンバー構成は、弁護士、
税理士、社会保険労務士、それから旧社保庁の職員OBなどで、最大時に全国で九百五十名の
委員が確保されたわけです。その第三者
委員会の
判断が即、総務大臣がよほどおかしいと思わない限りは、総務大臣のあっせん案とみなすというふうな扱いになりました。
その実績を見てみますと、
平成二十五年の四月一日現在、発足から約五年余りですけれども、処理した件数が二十四万二千四百六十三件もあるんです。そのうち、もちろん取り下げが一万一千件もありますから、実質二十三万一千件ぐらいの処理がなされた。
次に、あっせん率、つまり年金の記録がおかしいから直しなさいというふうな国民の
意見を取り入れたあっせん率がどの程度あるのかといいますと、これは国民年金と厚生年金でばらつきがあります。国民年金は三七・五%、それから厚生年金は五三・九%、そしてあっせん率の平均が四七・八%になっています。現在の
行政不服の中の認容率というんですか、住民あるいは国民側の要求を受け入れたというのは、恐らく十数%にすぎません。三倍程度の数字が上がっております。
年金記録確認というのは、極めてずさんな
仕組みだった、いろいろ
制度が変わったとかいうことでありますけれども、そういった特殊性を考慮する必要はありますけれども、年金記録確認第三者
委員会の
仕組みとその実績には、私は注目すべきものがあるというふうに考えております。
今回の
法案で、
行政不服審査会が、
処分庁とその上級
行政庁の系列ではなくて、その外に置かれる、しかも、
行政相談という公正で中立な
立場から
行政機関にあっせんを手がけてきたその部門を擁する
総務省に設置されたということの
意義は、これは我々はよく見ておく必要があるというふうに考えております。
その他いろいろありますけれども、時間の
関係で、私の
意見表明は以上にしたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)