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除本参考人 おは
ようございます。
除本と申します。よろしくお願いいたします。
私はこれまでの先生方と少し違った角度から、私は環境経済学というのをやっているものですから、これまで環境被害の問題、環境被害の補償あるいは被害の回復等に対する
責任とか費用負担の問題を研究してまいりましたので、その観点から、今回の
法改正案につきまして二つの点で
意見を申し上げたいと
思います。
二枚物の資料をつけてございますので、適宜参照いただければと
思います。
一つ目に申し上げたい点なんですけれども、今回の
改正案を先ほど申し上げた
責任と費用負担という観点から見る場合に、どういう基本的な見方をすべきかという観点についてでございます。
私としましては、
原発事故の
収束ですとか
賠償に一定の国費を投入することが必要かもしれないんだけれども、ただ無原則にそれをやるというのはちょっとまずいんじゃないかというふうに考えているわけです。どういう基本的な原則が必要だろうかということを考えたいということでございます。
政府は、昨年の九月に、
汚染水対策に四百七十億円の国費を投入するという
方針を打ち出したわけでございます。それで、これも昨年でございますが、十二月二十日に
原子力災害
対策本部がいわゆる
福島復興指針を決定しまして、ここでは、中間貯蔵施設などに国費投入を広げていくということが決められているわけですね。
確かに、今まで先生方がおっしゃった
ように、
廃炉の
体制の問題、
事故収束の
体制の問題というのがございます。
原発事故の
収束とか
汚染水対策を
東電任せにするのではなくて、国が前面に出て、国内外の英知を結集して
収束を進めていくというのは必要だろうということでございます。ただ、そのことと国が無原則に国費を投入していくこととは全く違うことだろうというふうに考えているわけです。言いかえれば、
事故収束の
体制の話と費用負担の問題というのは区別をしなければならないということであります。
例でございますけれども、除染なんですけれども、放射性物質汚染対処特措法というのがこの原賠
機構法と同じ時期に成立しているわけでありますけれども、これの仕組みは、
御存じのとおり、除染の実施主体というのは国とか自治体ということになっているわけですが、その費用は東京電力が支払う、
東電に請求されて支払われるということになっています。これは、
原子力損害賠償法に基づく
賠償責任に基づく負担であるというふうに定められているわけです。もしここに国費を充てていくというふうになりますと、要するに
東電の
賠償責任を国が肩がわりするという構図になっていきますので、一方で東京電力の
責任が免除されるというふうに当然ながらなっていくということになります。
ただ、先ほど申し上げました
ように、国費の投入が一定必要であるという場合に、では、どういう条件が必要だろうかということを考えたいということでございます。
二つの前提が必要だろうというふうに思っておりまして、第一は、東京電力は、私は事実上経営破綻しているというふうに思っているんですけれども、法的な整理をきちんと行うことが必要だろうと
思います。これは、モラルハザードを避けるためにも必要です。
具体的な法的な整理の仕方というのは、電力
システム改革などとの
関係で慎重に制度設計をしていく必要があるかと
思いますけれども、基本的な考え方としては法的な整理が必要だろうということであります。株主に対して減資を受け入れていただいて、債権者に対する債権カットというのを行って、それによって東京電力の資産を吐き出させて資金を確保していくことが必要だろうということです。
ただ、先ほど国費投入が一定必要になるというふうに申し上げたのは、それでも全然足りないだろうと考えているからであります。いろいろな考え方があり得ますけれども、国費の投入というのは必要になるだろうというふうに思われるわけです。
では、その場合、何が必要か。今回の
事故被害に対する国の
責任をきちんと認める、それに基づく負担だという点を明確にすべきではないかということであります。
今、
改正が問題になっている
支援機構法の中身を見ますと、国は社会的な
責任を負っているんだということが述べられているわけです。では、その社会的な
責任に基づいて何をするのかといいますと、この
法律の中身は、国は
東電に対して資金援助をする、そういう立ち位置になっているわけです。これではちょっと十分ではないのではないかということですね。
国が
責任を認めるというのは、これまで
原発を推進してきた政策、これまでのあり方というのを真摯に反省する、そして行財政の
システムを見直して政策を転換していくんだ、そういうことが必要になるのではないかということであります。
以上、申し上げました二つの前提に照らしますと、
支援機構法にはそもそも大きな問題があるのではないか。
私、二〇一一年の七月十三日に衆議院の東
日本大震災復興特別
委員会で、
参考人としてお招きいただきまして、この点について
意見を述べさせていただきました。
福島原発事故を起こしたことで、東京電力は、先ほど申し上げましたとおり、事実上経営破綻をしているというふうに考えていますので、それに対して
支援機構が資金援助をすることで延命をさせるというのは、株主や債権者の
責任を曖昧にするものではないかというふうに考えています。
振り返りますと、私が研究してきたこととの類似性を考えますと、水俣病の事件で非常によく似た仕組みがあります。加害企業、チッソに対する金融
支援というのを行ってきた。ただ、これはいろいろな問題を引き起こしている。
東京電力に対して今やっている
支援機構の仕組みというのは、例えば、東京電力に第一義的な
責任があるということで、先ほど申し上げました
ように、国はその背後に退いて資金繰りを援助するという立ち位置になっています。したがいまして、東京電力の経営基盤を強化することが、
賠償や
廃炉を進めるためにも必要だ、だから
原発再稼働も必要なんだという話にどんどんつながっていく。先ほどの
原発事故を反省して政策を転換していくという
方向性と正反対の
方向に話が進んでいっているのではないかというふうに感じております。
以上の基本的な考え方に基づきまして、
支援機構法の今回の
改正案の具体的な中身について、二つ目の点として申し上げたいと
思います。
いきなりちょっと細かな条文に入りまして恐縮なんですけれども、
支援機構法の
改正案を見ますと、第四十一条のところに、
廃炉に関します第三項というのが新たに加わることになっております。
ちょっとこの解釈はよくわからない点もあるんですけれども、この四十一条自体が
原子力事業者に対する資金援助というのを定めておりますので、これは、
廃炉や
汚染水の
対策に
支援機構から資金援助をしていく、その範囲を
廃炉・
汚染水対策にまで広げていく、そういう趣旨なのではないかなというふうに読み取れるわけです。
特に、もともとあります四十一条一項一号に資金交付というのが定められています。これまで、
賠償とは違いまして、
賠償には除染費用を含むわけですけれども、
廃炉や
汚染水の
対策の費用にはこの資金交付が適用されないと考えられてきたというふうに私は理解しています。これが、今回、四十一条三項が加わることによってどう変わるのか、
廃炉・
汚染水対策の費用のうち、どういうものに対してどういう形態の資金援助を行うことになるのかという点をぜひ明確にしていただく
よう、先生方には御議論いただきたいというふうに思っております。
配付資料なんですけれども、
支援機構法の仕組みという図をつけてございます。
支援機構法の基本的な考え方というのは、四十一条一項一号に定められた資金交付によって、
支援機構が一旦
賠償の肩がわりをするんだけれども、後で
電気料金などから
原子力事業者が返納していくので、
国民負担は最小化される。特に、負担金の中でも、
電気料金に転嫁される
部分というのは一部に限定します、そういうことで
国民負担が最小化されるんだ、そういうたてつけであったろうと
思います。
しかしながら、昨年十二月の、先ほど申し上げた
福島復興指針でこの点に変化が起きています、転換が起きています。具体的には、
支援機構法の第六十八条というのがございますけれども、これに基づいて、中間貯蔵施設、これは一・一兆円というふうに言われていますが、この費用相当分を対象にして、国が
機構に資金交付をするということがうたわれているわけです。ちょっとややこしいんですけれども、要するに、東京電力などの
原子力事業者が返納すべき
部分を圧縮して、そこに国費を充てるんだということが、昨年十二月の復興指針でうたわれたということであります。
振り返りますと、
支援機構法ができたのは民主党政権時代なんですけれども、当時、国会での
政府答弁、二〇一一年十月二十四日でございますけれども、この
政府答弁、復興特の中身を見ますと、これを下につけておりますが、六十八条による資金交付というのは
福島の
事故での発動は想定していない、そういう答弁があったわけで、それを覆す
ような
方向が今打ち出されてきているというふうになっています。
こういう経緯を考えますと、まとめに入りますが、なし崩し的に、
賠償から除染、中間貯蔵施設、
廃炉・
汚染水対策というふうに国費投入の範囲が広がっていくのではないかという懸念が生まれても不思議ではないのではないかと
思います。
先ほど、
一つ目の点、基本的な考え方ということで申し上げましたけれども、本来、東京電力が負担すべきものを国が肩がわりするということであれば、明確な理由が必要です。無原則な国費投入というのは、東京電力の資金繰りを助ける救済措置でしかないということになります。電力
システムの改革、エネルギー転換を阻んでいくことにもなりかねません。
これだけの大
事故が起きていて、いまだに十三万人以上の方が避難生活を送っているわけです。にもかかわらず、これまでの
原子力政策に対する反省が曖昧にされる
ようでは、被害者は浮かばれないだろうというふうに
思います。
新聞報道によりますと、策定中のエネルギー基本
計画案の序文から、一度は
福島の
事故に対する深い反省という文言が削除されて、その後、また復活したという報道がありました。二枚目につけた資料でございますが、これに対して地元の
方々からは非常に深い憂慮の声が上がっているわけです。
最後に、繰り返し申し上げますが、国が前面に出るということは、国費を投入して東京電力を救済するということではないだろう。何をすべきなのかということをぜひ御議論いただきたい。このことを繰り返し申し上げまして、
意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(
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