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2013-11-20 第185回国会 参議院 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十五年十一月二十日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員氏名     会 長         鴻池 祥肇君     理 事         西田 昌司君     理 事         小野 次郎君     理 事         辰已孝太郎君                 赤池 誠章君                 井原  巧君                 木村 義雄君                 松村 祥史君                 柳本 卓治君                 山田 修路君                 山田 俊男君                 山本 順三君                 吉川ゆうみ君                 渡邉 美樹君                 金子 洋一君                 小林 正夫君                 斎藤 嘉隆君                 芝  博一君                 田城  郁君                 津田弥太郎君                 石川 博崇君                 河野 義博君                 川田 龍平君                 藤巻 健史君                 吉田 忠智君     ─────────────    委員異動  十月十五日     辞任         補欠選任      赤池 誠章君     高野光二郎君      井原  巧君     鶴保 庸介君      木村 義雄君     舞立 昇治君      柳本 卓治君     松山 政司君      山田 修路君     宮本 周司君      金子 洋一君     広田  一君      小林 正夫君     江崎  孝君      斎藤 嘉隆君     石上 俊雄君      芝  博一君     大塚 耕平君      津田弥太郎君     藤末 健三君  十月二十八日     辞任         補欠選任      小野 次郎君     山田 太郎君      川田 龍平君     寺田 典城君  十一月十九日     辞任         補欠選任      石川 博崇君     杉  久武君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鴻池 祥肇君     理 事                 西田 昌司君                 松村 祥史君                 山田 俊男君                 江崎  孝君                 山田 太郎君                 辰已孝太郎君     委 員                 鶴保 庸介君                 舞立 昇治君                 松山 政司君                 宮本 周司君                 山本 順三君                 吉川ゆうみ君                 渡邉 美樹君                 石上 俊雄君                 大塚 耕平君                 田城  郁君                 広田  一君                 藤末 健三君                 河野 義博君                 杉  久武君                 寺田 典城君                 藤巻 健史君                 吉田 忠智君    事務局側        第二特別調査室        長        近藤 俊之君    参考人        帝京大学短期大        学現代ビジネス        学科教授     青木 泰樹君        慶應義塾大学経        済学部教授    駒村 康平君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事選任及び補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関  する調査  (デフレからの脱却財政再建在り方など経  済状況について)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ただいまから国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、山本博司君、小林正夫君、芝博一君、津田弥太郎君、金子洋一君、斎藤嘉隆君、赤池誠章君、井原巧君、木村義雄君、柳本卓治君、山田修路君、小野次郎君及び川田龍平君が委員辞任され、その補欠として江崎孝君、大塚耕平君、藤末健三君、広田一君、石上俊雄君、高野光二郎君、鶴保庸介君、舞立昇治君、松山政司君、宮本周司君、山田太郎君、寺田典城君及び杉久武君が選任されました。     ─────────────
  3. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 理事選任及び補欠選任を行います。  去る八月七日の本調査会におきまして、三名の理事につきましては、後日、会長が指名することとなっておりましたので、本日、理事松村祥史君、山田俊男君及び江崎孝君を指名いたします。  また、委員異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事山田太郎君を指名いたします。  なお、あと一名の理事につきましては、後日これを指名いたします。     ─────────────
  5. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 本調査会調査テーマについて御報告をいたします。  本調査会調査テーマにつきましては、理事会等で協議いたしました結果、三年間を通じた調査テーマは「デフレからの脱却財政再建在り方など経済状況について」と決定いたしました。  本調査テーマの下、調査を進めていくことといたしますので、何とぞ委員各位の御協力お願いを申し上げます。     ─────────────
  6. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査のため、本日の調査会帝京大学短期大学現代ビジネス学科教授青木泰樹君及び慶應義塾大学経済学部教授駒村康平君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査を議題といたします。  本日は、デフレからの脱却財政再建在り方など経済状況について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  御多忙のところ、本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、皆様方から忌憚のない御意見を承りまして今後の調査参考にいたしたいと存じておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず青木参考人駒村参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べをいただきました後、午後三時三十五分ごろまでをめど質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、青木参考人からお願いをいたします。青木参考人
  9. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 青木泰樹でございます。本日はひとつよろしくお願いいたします。  私は、今日、財政問題の正しい解決手順というテーマで二十分ほどお話をさせていただきます。しかし、時間の関係主要論点だけかいつまんでお話しいたしますので、不明の点等ございましたら、後ほど御質問していただければ詳しく説明させていただきます。  それでは、始めさせていただきます。(資料映写)  まずは、本日の論点であります。主要論点二つ一つは、先生方にまず、財政再建の道筋、手段というものは経済学説ごとに異なっているということを御認識いただきたいことが一つであります。二つ目は、私独自の財政再建手順財政再建策について御説明したいと、かように思っております。  それでは、まず出発点といたしまして、財政問題とは何なのか、その基本的認識、それを確認していきます。  まず、財政問題といいますと、財政赤字プライマリー赤字、そうしたものが継続的に、たって言いますと、徐々に国債残高が累増していく、国債残高が余りにも累増してしまうと財政持続可能性、そうしたものが危ぶまれるのではないかということで、将来的な財政破綻の問題、そうした問題も懸念されるということで、それではやはり財政再建が必要なのではないかということ、これが一般的な認識だと思います。  それに対応して、現在の財政再建策、その基本は、国債残高をこれ以上増やすなということだと思います。具体的な政策目標といたしましては、プライマリー赤字解消を、二〇二〇年、これをめど解消していこうというようなことが政府で決定されていると思います。しかしながら、プライマリー赤字解消策というものが経済学説ごとに異なるということ、これをまずは指摘しておきたいと思います。  ここで先生方に、経済学の性格に対する一つのイメージをお持ちいただきたいと思います。それは、経済学というのは一つではございません。経済学というのは多様な学説集合体であります。言ってみれば、富士山のような孤高の巨峰がそびえているというような話ではございませんで、八ケ岳のような様々な経済学説、これの集合体であるというふうに御認識いただきたいと思います。もちろん、そうした多様な経済学説の中には、現実分析に適したものもありますし、また数学的論理、それに適応可能な学説もあるということであります。  そのように様々な学説があるということは、当然デフレ原因に関しても様々な見解があるということです。デフレから脱却するためには、まずはデフレが何の原因で生じているのか、それを理解しなければなりません。もちろん、デフレ物価水準継続的下落であるという認識、定義に関しましては、経済学説間でももちろん相違はございません。その相違というのは、その原因をめぐるものです。  大きく分けて三つあると思います。今経済学主流派である新古典派経済学は、いわゆる貨幣数量説的見解に立脚しています。非常に分かりやすい。物価水準貨幣量変動によって決まるという話でありますね。それに対して、ケインズ派ケインズ経済学というのは、財市場における総需要不足、それによってデフレが生ずる、すなわちデフレイコール不況であるという考え方です。なぜ総需要不足が生ずるのかというならば、それはもちろん名目賃金、この停滞に存在するということであります。  そして、その中間なんですが、リフレ派という考え方があります。リフレ派というのは新古典派的な貨幣数量説に立脚しているわけなのですが、それではデフレ実体経済への影響ということになりますと、ちょっと違うようなんですね。新古典派の場合は、貨幣的減少貨幣的要因実物的要因実体経済は全く無関係という貨幣中立性という観点から考えておりますから、デフレであろうとインフレであろうと実体経済には全く問題がない、そういうふうに考えているわけですね。ケインズ派の場合はそうではない。実体経済貨幣経済共相互連関関係がある、相互依存関係があるわけですから、デフレ実体経済悪影響を及ぼすのは当たり前という考え方です。しかしながら、リフレ派は、これはデフレ原因マネー不足と考えているんですが、同時にデフレは悪、悪というのは実体経済に対して悪影響を及ぼすということなので、極めて論理的には矛盾していると思います。その点に関しても後ほど詳しくお話をいたします。  さて、それではここから幾つかの経済学説財政観についてお話をさせていただきたいと思います。  まずは新古典派からです。  経済が常に完全雇用状態にあると想定しているのが新古典派でありまして、そこから彼らのいわゆる財政観というのは、財政均衡主義であります。財政均衡主義、この見解、かなり広範に広まっているわけでありますけれども、この見解財政運営上正当であるかどうかということはいまだかつて論証されたこともございませんし、今後、将来にわたって決して論証されることはありません。なぜなら、それは新古典派経済学の仮定にすぎないからです。これは予算制約式なんですね。この予算制約式がないとモデルが発散してしまう。したがいましてそういうふうに考えているのですが、それが入るを量りて出るを制すという個人的経験、これにフィットするものですから、この考え方は広く広まっているということでありましょう。  次に、構造改革派論点についてお話しいたします。  新古典派政策に対する考え方は、自由放任主義、レッセフェールが基本であります。何もしなくていいということなんでありますけれども、現実経済に問題があるとすればどうするのか。それに答える論理一つ構造改革論であります。言わば新古典派亜流でありますね。彼らの経済観というのは、経済の中には効率的な部門と非効率部門があります、非効率部門雇用されている労働、資本、それらを効率部門へ移動させることで経済成長が望めるんだという考え方であります。その政策は、雇用流動化の促進、そして非効率企業産業、これを経済内に温存してはならない、経済から出ていけというような政策を取っています、スタンスを取っています。  しかしながら、これには問題点がかなり多い。これは新古典派理論前提としている関係で、この論理完全雇用前提であります。したがって、雇用流動化といっても、国内の雇用問題を全く考えていないのです。例えば、現実において雇用流動化というのは、解雇そして再雇用という過酷なプロセス、これを経なければなりませんが、それも無視。また、グローバル化による海外への雇用流出の問題も、これも無視構造改革を唱えていらっしゃる方は、自分より非効率と思われる企業産業を批判しますが、自分より効率的な企業産業もあるということを忘れてはなりません。効率追求の果てに残る勝者というのはただ一人。他者へ投げたつぶては巡り巡って自らを打つことになるのは必定であります。  次に、リフレ派考え方であります。  私は、貨幣現象というのは実体経済の動向を映す鏡だと認識しています。自分が動かなければ、鏡に映った自分も動かない。リフレ派は因果の方向を逆に見ていると思われます。最も大きな矛盾点は、先ほども少し指摘いたしましたが、貨幣中立性前提から論理を出発させながら、貨幣が非中立世界を論じている。これは完全に矛盾であります。貨幣が非中立世界では、物価水準貨幣量ではなく、財市場需給関係で決まるのです。  また、リフレ派支持者の中、唱えている先生方の中には、ワルラス法則現実経済へ適用する方が多いのですが、これは全くの誤りです。ワルラスの想定する貨幣というのは、物、物財金融商品等を買うための金、使うための金を考慮しているのです。現実経済には、それ以外にためられている金もあるのです。それをカバーできない。所得化する金を渡すにはどうしたらいいか。それは民間金融部門へ直接渡すしかありませんが、デフレ不況期金融政策だけでは無理があるのです。  リフレ派方たちは、金融政策至上主義金融政策だけでいいんだ、財政政策などは要らないというような話をよくなさる方が多い。しかしながら、金融緩和策量的緩和策、これはどういうことかと申しますと、図にしておきました。政府、日銀は、民間金融部門へ、金融市場へ金を渡すことはできますが、それが実体経済民間金融部門へ渡るかどうかは分からないのです。それは、資金需要の問題と銀行側融資姿勢に全て依存するのです。  したがいまして、金融市場にお金をたくさん入れるわけですから、ミニバブルは起こせます。それによって資産効果は出てきます。それが唯一民間金融部門に対するプラスの影響なのでありますけれども、しかしながら、ミニバブルバブルは必ずはじけます。はじけたときは逆資産効果です。日本は、日本人はバブルのはじけたときの怖さを十数年、二十年にわたって分かっているはずであります。したがいまして、金融政策至上主義、限界があるのではないか。  そこで、図の上の点線部分を御覧になってください。財政政策公共投資等を使えば、民間金融部門財政市場へ直接金を渡すことができるのです。  財政出動、それの意義といえばケインズ経済学、これが思い出されるわけであります。ケインズ財政観の非常に優れたところは、景気変動前提とした経済に関して裁量的財政政策意義を説いたことであります。そこから敷衍して考えるならば、先ほど申しました財政均衡主義の誤謬は明々白々であります。  例えば、出発点において、財政均衡状態から出発いたします。税収というのは景気に反応しますが、義務的経費の多い一般歳出は余り景気に反応しません。すると、不況期には税収が不足します。財政均衡を保つためには増税をせざるを得ません。それによってどうなるのでしょうか。不況増税を繰り返すことになる。景気はスパイラル的に悪化することになるわけです。まあ逆は逆ですね。したがいまして、景気変動前提とすれば、財政均衡主義より機動的財政運営が勝ることは理の当然なわけであります。  しかし、財政出動が大事だと言ったところで、ケインズ的な財政政策に対しては様々な批判があります。一番大きな壁は何でしょうかというと、それは小さな政府論だと思います。  しかしながら、この小さな政府論というのはかなり誤解されていると思いますので、ここでその誤解を解く必要があると思います。まずは、小さい政府の小さいは財政規模ではございません。小さくて安価な政府というと財政規模が小さい政府を思い起こされる方がいらっしゃいますかもしれませんが、そうではなくして、小さいとは政府のなすべき範囲が小さいことを指しています。国家は国防、治安維持、外交、法整備といった必要最低限のことだけをしていればよく、社会保障並びに景気安定化、そうしたことに関与する必要はないんだというような見解であります。いわゆる昔の夜警国家論ですね。  そして、小さな政府、これを支持する方たちは必ず、なぜ小さな政府がいいんですかというと、民間効率的で政府は非効率なんだよという話をよくなさいます。しかし、これも誤解に満ちています。民と官は活動範囲が異なるのです。民は収益の上がる分野で活動し、官は収益が上がらないが国家国民のためになる分野で活動しているのです。それを一律に経済効率、そうした観点から比較することはこれは不可能でありましょう。また、理論的になりますけれども、その論拠といたしましては、実は新古典派の想定にありまして、それは、個人公共財・サービスから効用を得られないという、効用関数公共財は入らないということにあるのですが、これは技術的な問題です。  さて、財政再建を考えるに当たっては、当然、国債問題、これを抜きにしては語れません。ここで、私は国債機能について貨幣循環観点から御説明したいと思います。  貨幣には二つ役割があります。経常取引に使われる金、これを活動貨幣といいます。これは所得になる金ですね。名目GDPを決定する金です。もう一つ金融取引に使われる金、資金貸借並びに有価証券取引に使われる金ですね。それを不活動貨幣といいます。滞留している金、遊休化している金です。どんなに増えても名目GDPに一円にもならない、そういう金ですね。  経済学というのは、従来、ケインズも新古典派もみんなそうなんですが、経済の中に貨幣市場という貨幣量プール一つあるというふうに想定しておりますが、私は、それは現実経済を分析するためにはちょっと不適切ではないのかということで、二つ貨幣量プールがあるということを提唱しております。もしも、この図で説明しますと、民間経済の中に活動貨幣プールと不活動貨幣プールがある、そして両者の行き来がなかなかうまくいかない。例えば、金利に活動貨幣が反応しないケースなどがそれに当たりますけれども、パイプが詰まった場合、どうなるか。そのときこそ国債役割機能があるのです。それは、滞留する金、不活動貨幣所得化する金、活動貨幣へ変換することです。つぼに入れて庭に埋まっている金を掘り出してそれを所得化する、それが国債機能であります。  さて、それではここで財政再建最善策と思われることをお話ししたいと思います。  前提条件は、新古典派と違い、完全雇用でない景気変動のある世界前提としております。正しい財政再建手順といたしましては、まず増税前にすることがあるのではないか。それは、まずはバケツの穴をふさぐことであります。具体的に言えば、公正なる制度運用、脱税、社会保険料未納問題等を防止する策、公正であることを、制度をまず確立して国民に納得してもらった上での増税だと思いますね。具体的にはマイナンバー制度、これから行われると思いますが、それを一層充実させていく、そして歳入庁の創設もできるだけ早めにやるのが正しい手順ではないかと私は思います。  また、もう一つ考え方は、やはりケインズ財政政策ケインズ財政出動にかかわる問題であります。まずは発想を転換し、歳出増によってそれから歳入増自然増収を図る、すなわち財政出動による不況脱却であります。現在、国土強靱化基本法が審議されていると思いますが、こうした計画を実現していく、非常に大事なことだと思います。そうした上で、増税するなら景気に配慮、すなわち、不活動貨幣に課税し、政府が代わりに使う、所得化を図るということであります。  しかしながら、消費税増税が決定されてしまいました。したがいまして、現段階における財政再建次善策についても考えていかなくてはならないと思います。一応三つ指摘しておきます。  まずは、デフレ圧力緩和を図ることです。消費税増税によって必ず来年から総需要減少が始まります。全ての民間経済研究機関はそういうふうな予想をしております。したがいまして、総需要不足分減少分、これを埋め合わせるだけの総需要創出が急務となってきます。名目賃金が低迷している現状では民需の増加は期待できません。それゆえ官需の出番なのです。  その具体策としては、積極的な財政出動、そしてその財源問題を解決するための量的緩和政策金融緩和策というポリシーミックス、それで対応するしかないと思います。具体的には、現在の国民生活にとって喫緊の課題である防災・減災並びに地方経済活性化につながる国土強靱化計画、これを単年度ではなく制度化していく、そうした方向性が必要なのではないでしょうか。  二番目の策は、プライマリー赤字二〇二〇年の看板を下ろす。プライマリー赤字を二〇二〇年に解消しよう、それはちょっとどうなのでしょうか。先月、アメリカが借金の上限を定めた法律、これが作動するかどうかということで、デフォルトの危機に直面したことはつい記憶に新しいところであります。何のために財政再建するのか。財政再建のために国民経済を潰す愚を犯してはならないと思います。  しかしながら、そういいますと、財政再建は国の信認を得るためにしなきゃならないという方がよくいる。じゃ、国の信認とは具体的に何なのか。これは国の信用のことです。それは、国の信用というのは長期金利の水準に反映されているのです。信用のない国ほど金利が高いのです。日本は十数年間世界最低の金利水準が続いています。これは世界一信用のある国なのです。消費税数%上げる上げないで国の信認が失墜するなどということは決してありません。  そして三番目なのですが、再度の消費税率引上げ、これは決してしないと。しないことが大事だと思います。消費税率引上げによってインフレが必ず生じます。これコストプッシュインフレなんですね。石油危機と同じことですよ。名目賃金が上がらず不況が続けば、それどうなるんですか。これはコストプッシュインフレの加速プラス不況イコール、スタグフレーションです。これは経済にとって極めて厳しい状況になると思います。  さて、もう一つ国債残高の累増問題、これも解消していかなければなりません。個人が借金を返すときと政府が借金を返すとき、これ全然違うのは、政府の場合は、増税だけではなく借換え並びに日銀引受け、国債買い切りですね、その手段を持っているということです。  ここに、国債償還時の資金調達経路と国債償還を図にしておきました。国債償還というのは、金融的流通、不活動貨幣化するということです。したがいまして、例えば、増税から取ってきた金をまたつぼに入れて庭でも埋めるかというような話にほかならないということなのであります。政府景気動向を見ながら適切な手段を取ることが必要でしょう。  そして、国債問題の最終解決策であります。  仮に日銀が全ての国債残高を保有しているならば、現行の国債問題は存在しません。その場合は政府と日銀間の貨幣循環が生ずるだけなんですね。でありますから、一般的解決策としては、民間国債を日銀へ移し替えることなのです。国債問題として言われているのは国債残高の問題ではございません。民間保有の国債残高が問題なのであります。民間保有の長期国債を少しずつ日銀へ移していくこと、日銀による国債の買い切り、もちろんその一部だけでいいわけですけど、それをすることによって日銀のバランスシートが拡大します。しかしながら、金利が上昇するわけでもないので、民間経済への悪影響はない。すなわち、このデフレ不況期こそ、国債残高解消する、政府の借金を民間の税金ではなく不況へ肩代わりさせることができるのです。  最後に一つ提言をさせていただきます。  災い転じて福となす、政策転換と書いておきました。まずは、経済通念化している財政均衡主義、そうしたもの、考え方から脱却すること、これが非常に大事だと思います。そして、提言の肝でありますけれども、デフレ不況期財政再建景気浮揚の絶好機と考える。そうすれば、民間経済悪影響を及ぼすことなく国債残高解消することができますし、国債を財源とする財政出動によって遊休化している労働、諸資源を雇用すれば景気浮揚の契機となるのです。デフレ不況期にはそれに応じた財政運営が必要だと思います。デフレ不況期にはただでランチが食べられるのです。経済学では、ノーフリーランチ、ただで食べられるランチはないといいますけれども、それは、何かを得るには何かを犠牲にしなきゃならないという意味であります。しかし、デフレ不況期には適切なる政策を実行することによってフリーランチがあるという話です。  最後になりましたが、先生方一つだけ言いたいことは、経済理論には古いも新しいもありません。ケインズは古いとか死んだとか言う人もいますよ。しかしながら、そうではない。あるのは、現実分析に適している学説か否かだけであります。先生方におかれましては、そうした適切な経済論理に基づいた政策を遂行していただきたいと切に願って、私のお話を終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  10. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、駒村参考人お願いをいたします。
  11. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 慶應義塾の駒村でございます。よろしくお願いいたします。  最初にお断りしておかなければいけないのは、私は財政学の専門家でもマクロ経済学の専門家でも金融論の専門家でもないと。私のメーンは社会保障、社会政策という分野でございます。そういう意味では、ちょっと今日のこの調査会の御下問に直接お答えできるようなスピーチができるかどうか分かりませんけれども、これから調査会が数年にわたって議論されていく一つの切り口と、こういう切り口も、こういう議論の見方もあるんだなという材料を提案させていただきたいと思います。社会政策社会保障というのはどちらかというとお金を使う研究を主にしておりますので、そういう意味ではちょっと、もしかしたらこの財政再建という議論とうまく合うかどうかはやや心配ではございます。  それから、今、青木先生のお話もございましたが、今のお話というのは、恐らく経済学の中でも大論争になっている、一つの問題になっている、いわゆる主流派経済学と言われている、新古典派経済学とも言われている考え方、方法論的個人主義とも言われているんですけれども、合理的な家計や個人が集まったのが経済だと、市場だと、こういう見方を取っているわけです。おまえはどうなのかと言われると、実は私は、方法論的には経済学という手法を使ってはいますけれども、いわゆるミクロ経済主体、合理的な家計の、あるいは企業集合体経済だと、こういうふうに完全に割り切っているわけではございません。  当然、経済学者の中には、サッチャー首相同様に、社会なんかないんだみたいな考え方ですね、そういう概念なんか要らないんだ、みんな個人集合体なんだと。あるいは人間特有の、人と人との関係の問題、あるいは制度が与える影響、文化が与える影響というのを非常に無視して、非常に抽象化された理論フレームの中からいきなり政策を出すケースが多いわけですね。私は必ずしもそういう方法論は取らないというふうに考えております。この方法論になると、答えは明確でありまして、市場メカニズムに全て任せればいいんだということになってしまいます。あるいは、私が専門としている年金についても、現在のような賦課方式の年金というのはそもそもあり得ないんだと、そんな仕組みなんというのは本来はなくて積立方式しか選択肢はあり得ないんだと、こういう答えになってしまいます。  私は市場が万能とは思っておりません。もちろん、私の社会保障分野というのは、国、政府役割は大変重要でございますが、もちろん、国、政府が間違ったことをしないというふうに考えているわけでもないと。どちらも得意、不得意の分野があるし弱い分野があるんだろうと、これを補っていろいろな経済政策が行われていくんだろうと思います。  それからもう一つ、またこれも青木先生とつながる部分もあるわけですけれども、経済政策の目標とは一体何なんだろうということなんですけれども、これも主流の経済学をやられている方は、効率だけでいいんだ、成長だけでいいんだという考え方でありますけれども、私は、この社会保障という分野をやっている以上、当然別の政策目標も大事であると、そこは公平公正であり、あるいは安定であるというものも大事なんだと。  これもケインズ経済を、かつてケインズ経済が主流だった時代は、経済政策の目標というのは、経済成長あるいは効率的な目標と、それから公正なあるいは公平な社会、そして安定している社会と、この三つをいかにバランスを取って経済政策を運営するのかという議論が主流だったわけですけれども、これは私が昔、経済政策をもう二十年も三十年も前に学んだころはそういう議論だったんですけれども、今はどちらかというと青木先生おっしゃるように効率一辺倒の方に向かいがちであるというのはかなり通じる部分もございます。  ただ、一方で、当然、国が政策を行えば国民は何らかの対応をすると。今の社会に対して国民がどう感じているのか、何を不安に思っているのかというのも把握しなければいけないと。国に政策あれば国民に対策ありと言われているわけですから、政策に対して国民はどう感じてどういう不安を持っているのかというのを、少し今日、最初に材料を御覧いただきたいなと、こういうふうに思います。(資料映写)  大変申し訳ないんですけれども、ちょっと手を動かしていただきたいのは、番号を振ってくるのを忘れてしまいました。したがって、後の議論のために、このページから番号一と付けていただければ幸いです。パワーポイントに番号を振ってくるのを忘れてしまいましたので、これはナンバー一というふうに見ていただきたいと思います。  そういう意味では、今日考えるのは、景気雇用・労働条件、経済成長、物価、財政、医療・福祉に対する国民の評価、危機感は、この二回の政権交代あるいはデフレの期間どういうふうに揺れ動いたのかというのを御紹介したいと思います。  さらに、実は、こういう問題に対して社会が、有権者の年齢によって、国民の年齢によって実は関心の強さがかなり違ってくると。場合によっては、世代間でかなり認識のギャップが生まれているようなところもありますねと。それから、私の専門である年金を例に挙げながら、デフレが続くとどういうことが年金財政上起きていくのか、それが若い世代と高齢世代にどういうインパクトを与えていくのかということを御紹介してみたいなと、こういうふうに思っています。  以上、これがまず今日の概要でございます。  大体、どこに行っても、こういうスピーチをするときはもうどこかで二、三回話した話でして、四、五回話した話で、聞いている人が違うだけで私もスムーズに話せるわけですけれども、今日これは私も初めて話すような話なので、スムーズに話ができるか分かりません。詰まるところもありますけれども、御容赦ください。  これから使う資料は、これは二枚目でございますが、これから使う今映っている資料は、これ二枚目と番号を打ってください。ちょっと注意しなければいけないのは、表記が誤ったところがありますので、これも今から修正しますけれども、この調査は、内閣府の社会意識に関する世論調査ということで、毎年一月あるいは二月に調査する項目であります。項目の中に、あなたは今現在の日本の問題で、いい方に向かっていると思いますか、その項目を挙げてくださいと、それから逆に、悪い方向になると思っていますか、それを挙げてくださいと、こういう質問をしているので、これでいい方向に思っている人と悪い方向に思っている人の差を取ってみて、国民全体としてその制度政策に対してどっちに向かってどう評価しているのか、これがその間どう変化しているのかというふうに見てみたいと思います。  三枚目になりますけれども、ここから「度」が付いていますけれども、この度はちょっと、申し訳ない、取っていただければと思います。これは平成二十一年の二月に行った調査というもので、度ではありません。ワープロが勝手に度を打ってしまいましたのにちょっと気付かなかったんですが。平成二十一年の二月の国民の評価ということであります。  私が取り上げたのは、もちろんこの中には治安とか国民考え方とか国防とかいろいろな政策が聞かれています。何十項目も聞かれているんですけれども、私は、この調査会のために、関係するだろうと思ったのは、医療・福祉だろうと、それから景気であろうと、雇用・労働条件であろうと、国の財政の状況であろうと、物価の状況であろうと、経済力に関する評価であろうと、こういうふうに幾つかピックアップをしております。  全部マイナスに出ているということは、国民は悪い方に向かっていると、こう評価しているんだと。だから、下に行けば行くほど悪く評価をしているんだと。だから、平成二十一年の二月のころに国民は何に対して一番大きく危ないととらえていたのかというと、景気とそれから賃金の下落ということになるわけです。このときには経済成長も非常に低い状態でございました。それから、失業率はそんなに高まっているわけではないんですけれども、賃金上昇率が極めて低いような時期であったということですね。  この二つ国民は非常に敏感に感じているということと、これから同じパターンが出てきますのでこれも見ていただければ分かると思いますけれども、実は世代によって感じ方が違うと。非常に、若い世代は景気とか雇用に関しては危機感がどんとあるけれども、高齢世代は社会保障に守られている分もあるわけですから余り、そんなに危機感が相対的には高くないという状態になっていると。ただ、若いところは若干危機感が弱い分野もあると。これはまだ一緒に家族と暮らしているので、学生だったりして、それほど経済活動としてビビッドに反応しない可能性もある。大体、今、世帯をつくるのは三十前半ぐらいからつくりますので、三十前半ぐらいからのところは独立した経済人になっているということなのかなと思います。  四枚目として、これは平成二十四年、この間、ほかの年も全部つなげてありますけれども、内閣府のデータが手に入る範囲でありますけれども、それは後の資料に付いていますので、一応、平成二十四年というところを見ていただくと、ここでは景気、賃金、財政、この辺がやっぱり悪いままになっているということです。  二十五年になるとこういう形でなっているわけで、これだけ見るとよう分からんわけですね。どれが、何がどう動いているか分からないということになりますので、項目別で少し分け直してみました。今のものを項目別に見ると、こんな感じになるわけですね。  まず、景気についてはどういうふうに評価が下がっているのかというと、これは景気ですから六枚目ですか、番号が六枚目になる、ナンバー六が景気になっていると思いますけれども、実はこの間、二十一年調査以来のころからずっと下にいたんですけれども、どうもここはかなり、安倍政権発足後の一月はどんと変わってきているということ。これはほかのいろいろな調査でも同じようなことが言われてはおりますけれども、どうも雰囲気はかなり変わってきている。期待が出てきているんではないかと。景気回復に向けての期待、これは実体よりも先に期待が上がってきているんじゃないか。これは消費者動向調査とかいろいろな市場のデータを見てもやっぱり期待はこういうふうな形で、この数年間に比べると大きく変わってきているように思えると。景気についてはこういう感じだろうと思います。  次に、労働条件の方、これが、七枚目ですね、番号の七枚でありますけれども、これもかなりこの数年間に比べると期待は上がっていると。ただ、平成十八年に比べるとまだの状態になっているということで、そこからぽんと上がってきているような雰囲気にはなっていますねということが分かるわけです。  次に、八枚目で、これは物価ですね。それぞれ国民がどういう意味でそれを答えているのか、なかなかこれはそこまでは分かりません。物価についても、デフレがいいと評価しているのかインフレがいいと評価しているのか、これは正直言って分かりません。財政についてもどっちに評価しているのかは分かりませんけれども、これから財政を見ますけれども、恐らく財政については、財政赤字、やっぱり膨らみ過ぎると問題なんだろうなと思っているんだと思いますし、物価についても、恐らくこれはデフレが続くということに対してやはり余りよろしくないと思っている可能性があるわけでありますが、確かに物価の上昇が可能性が出てきたということで、評価もそういう意味では改善をしていると。平成二十五年かな、ちょっと色が私の方から見づらいんですけれども、に比べると大きく変わってきているということです。  財政はどうでしょうかということで、財政の方は、九枚目が財政になっていますけれども、財政は実は余り良くはなっているとは思えないと。この辺は、その年その年にどういう状況であったのかというのは、事務局の方でこういう、巻末に資料がございますので、事務局の方で用意していただいたその巻末のピンク以降にその年その年の経済状況財政状況といったものがありますので、それと照らし合わせながら考えていくと、過大な評価なのか、やっぱりそれはかなり財政の膨脹に関してビビッドに反応したという結果なのか、これは大体傾向は読み取れるんではないかなと思います。財政については国民は依然として高い危機感を持っているということが分かるわけであります。  医療・福祉についてはどうだったのかというと、実は、これは平成二十一年の調査がボトム、一番最悪の評価になっていると。これは、この二〇〇八年に後期高齢者医療制度が発足して、スタートして、かなり批判が浴びたので恐らくぐっと下がっていると。その後、ほぼ、民主党政権時代を通じて、あるいは新政権のところも通じて徐々に評価は改善傾向になっていると。こういう国民のいろいろな項目に対する危機感あるいは問題意識というのが持たれているということです。  要約すると、経済項目については平成二十五年で大きく回復している、特に景気への期待は二十一年から二十四年の雰囲気と大きく変化していると。平成二十五年の調査では相対的に評価がまだ心配な分野として残っているのが財政雇用、これが非常に相対的には低い。それでも二十一年—二十四年よりは若干回復していると。ただ、構造問題である財政への評価はやっぱり改善は遅れていると。医療・福祉は毎年今言ったように回復傾向であると。それから、中高年と高齢世代で危機感に大きな差があるものがあるというわけです。それは、物価と雇用財政については特に二〇%ポイントぐらい中高年と引退世代で差が出てきているということであります。そういったことを、だから、年金なんかである程度守られている高齢者にとってみると、景気やその問題みたいなものは余り反応は弱い、物価に対する反応は余り弱いということがあると思います。  あと、こういうのを今後どう考えていくのかということで、必ずしもデフレ、インフレの話につながらないわけですけれども、世代によって政策目標政策評価は多様であるということを考えて、じゃ今後政策作るときに何にウエートを持っていくのか、どの世代にウエートを持っていくのかというのは考えなきゃいけないことになります。  もちろん、政治家の皆さんが、国民の単に心配な方に向いた政策をひたすら行うのではなくて、どういう社会をつくるのかという確固たるものが持たれて、こういう政策を、社会をつくるんだということで説得していかなければいけないのは当然だと思いますけれども、しかし、先ほど申し上げたように、社会保障の方で比較的、相対的には守られている、物価の変動とか景気変動に対して守られている高齢世代のウエートというのは、今後、有権者に占めるウエートというのはどんどん上がっていきまして、ここに出ているのは二〇〇九年の衆議院、二〇一二年の衆議院の投票率、年齢別投票率でウエートを取った有権者の構成比であります。  現在はこの辺ですので、まだ六十歳以上の有権者の割合は五割を下回っていますけれども、今後高齢化になることによってこの五割を大きく超えて、高齢者が、六十歳以上が政策に非常に大きな影響を与えていくと。そうなってくると、どうしても高齢者の方が利害関係としては目先の議論に寄りがちになってしまうということ、あるいは経済成長雇用の問題も相対的には関心が弱い、福祉充実の方にどうしても動いていってしまうと。  そういった状態のままで年金はどういうことになっていくんでしょうかという話を最後に少ししたいなと思いますけれども、年金というのは御存じのとおり百年有限均衡方式、百年間の財政収支をバランス取るようにセットされています。ただし、それをやるためには、保険料も上げないでそれを維持するわけですから、高齢化が進んだ分だけ年金は引き下げるということになるわけですね。ただし、その引き下げる条件としては、インフレのときしかやらないということになりますから、デフレがずっと続いてくれると、マクロ経済スライドというこの引下げが起動しないんですね。だから、デフレがずっと続くと、高齢者はそっちの方が実は年金削られなくてラッキーになるわけであります。  そうすると一体何が起きるかというと、そのひずみは、仮にデフレ分だけ年金が下げられても、マクロ経済スライドが毎年〇・九%あるいは一%効かないことによるメリットが発生しますので、その分だけ実は若い世代に全部ツケを押し付けていくということになるわけですね。つまり、デフレというのは、今の年金制度の下では、デフレというのは高齢者にとってみればメリットになって、できたらインフレになってくれない方がいいと。しかし、そのコストは全て若年世代に押し付けられていきますということになるわけであります。デフレが起きることによってそのリスク、負担は若い世代、若い世代へとこの現行の年金制度の中では構成されているというのがこのデフレが続くことの問題点だと思っています。  最後に、実際に最近の日本経済がどういう状況になっていて、年金財政上どういう課題があったのかというのは、これは厚生労働省の資料の十五枚目にありますけれども、これを見ると、実は財政的にまずいのはこことここです。こことここは極めて財政的にはまずい状態になります。若い人の賃金が落ちているのに年金の落ち方がそれよりもちっちゃい、あるいは年金が維持されてしまいますから、それは当然、年金財政的に危なくなっていきます。  これは実際に、平成二十一年がこの状態、ここでした。平成二十一年はこの状態に陥っていたわけですね。そして、平成二十三年はここです。ここに入って、悪い状態よりはまあまあ、ややましになったけれども、それでも実はマクロ経済スライド、年金の給付の実質給付水準引下げは動いていないと。だから、若い世代にツケを回すという状態は続いていると。  さすがにこの状態は、長いこと遡ればもしかしたらこういう時代もあったかもしれませんけれども、さすがにこの時代はないですけれども、平成二十二年でもこの状態です。平成二十二年でもここに来ているということで、これでもマクロ経済スライドは効かないと。平成二十四年がこの原点にほぼ近づいているという状態になっていると。  ただ、それでも物価上昇が大体一%以上出てこないと、賃金と物価が両方一%以上出てこないと実はマクロ経済スライドは動きませんので、実はマクロ経済スライドという年金財政を長期的に安定させる条件というのは物すごく厳しいと、今の状態では厳しいと。つまり、これは一%の上、こっちが一%の上で、まずここが一番マクロ経済スライドが効いている部分になるわけで、実際のこれからのアベノミクスの効果を見ていくと、恐らく、うまく効けば、うまく財政、このまま政策が有効になっていけばこういう、若干もしかしたら賃金の方より物価の方がやや先に動いていって、それでその後、上のこの部分にたどり着ける可能性は出てきているわけだと思います。  ただ、今後の日本の経済成長というのが名目的にそれほど安定したものになるかどうか分かりませんので、これがまた、こっちがこっちに落ちればまた年金財政は不安定になっていき、そしてそのツケは若い世代に全部押し付けるという構造になっているということですので、デフレの継続というのは世代によって利害関係が年金を通じても大きく発生しているということで、これを年金財政上どうにかしろと、もしいうことになるならば、答えは簡単で、インフレでもデフレでもマクロ経済スライドをやればいいということになるわけですね。デフレのときに年金をデフレ分下げて、更に一%マクロ経済スライドで下げるということですので、これはかなり政治的には負担が大きい問題になると思いますけれども、そのことによって年金財政安定化して、若い世代のコストは軽減されるという効果はありますけれども。  一番いいのは、デフレが、いかに防止するのかと、それは年金財政上極めて重要だと。ただ、そういうことも起き得るんだと考えれば、政策の選択肢としてはデフレでもマクロ経済スライドを効かすと。ただ、その場合の政治的なコスト、それから、もしかしたらそのこと自体がデフレをスパイラル化してしまう可能性もあるという問題も伴うということで、次のページにはその功罪というのを少しまとめてみました。  マクロ経済スライド以外に何かあるのか、方法はあるのかという話は、もし今日そういう議論がありましたら次のページの方に用意はしておりますけれども、取りあえず中心の話は以上にさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  12. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  まず、各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと思います。  質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようにお願いをいたします。  質疑及び答弁は着席のままで行い、質疑の際はその都度答弁者を明示していただきますようお願い申し上げます。  なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますように、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるよう御協力お願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  西田昌司君。
  13. 西田昌司

    西田昌司君 両先生、どうもありがとうございました。  まず、私、青木先生に質問させていただきたいと思います。  今お話しいただきまして、要するに、今、デフレの一番の原因需要不足であると、ですから需要をどうやって創造していくかと、単に財政、要するに金融緩和だけではお金は出ても需要に直接結び付かないんで、プラス財政出動が大事だと、そういう趣旨だったと思うんですね。  そこでお聞きするのは、今アベノミクスで三本の矢と言われているんですね。金融緩和して、それから財政出動して、それから民間投資でしょうか、やっていくということなんですが、ある種、先生の意見と似ているとも思うんですけれども、違うとも言えると思うんですね。そこで、率直なところ、今のアベノミクスと申しましょうか、安倍内閣のこうした政策をどのように評価されておられますでしょうかと。もし、もう少しここはこうした方がいいんじゃないかというところがありましたら、それも併せてお聞かせいただきたいと思います。
  14. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) お答えいたします。  アベノミクスの第一、第二、第三の矢の評価、どう考えるかということだと思います。  私は、形からすると私の考え方とかなり第一の矢、第二の矢は似ているんですが、第一の矢であります大胆な金融緩和政策、この政策は何の的に向かって飛んでいっているのかなと思いますと、それはリフレ派方たちの考えている的に飛んでいっているような気がしますね。リフレ派方たちは、結局、物価を上げる、物価が上がるぞという期待を高めれば何とでも経済はうまくいくんだと考えていらっしゃるかもしれませんけれども、それはちょっと違うのではないかというのが私の基本的な考え方です。  リフレ派方たちも一枚岩ではございませんで、人によってちょっと違うんですね。もう財政政策は不要だというリフレ派の方もいらっしゃれば、多少なりともやられた方がいいんじゃないかとか、いろんな方はいるんですが、私はアベノミクスの第一の矢は本来第二の矢の補完のための政策であるべきだと思います。  といいますのは、第二の矢は、機動的なということになってしまいましたけど、積極的な財政出動ということだと思いますけれども、それには当然財源マターが必要であります。財源、当然建設公債を発行しなければなりません。その建設国債民間で消化するとまた問題が起きてしまうかもしれませんから、建設国債発行分を日銀がマーケットから買い取れば、民間にある遊休化した金が実体経済に回るのではないか、そのように考えています。  したがいまして、アベノミクスの第一の矢は、リフレ派の的を射るものではなくして、第二の矢である財政出動、それの補完的なものというふうに考えるのが私は適切なんではないかと個人的には思っています。  あと、このアベノミクスの第三番目の矢ですね、成長戦略ということなのですが、これも私ちょっとよく分からないところがあります。  成長戦略、成長するにはどうしたらいいかという話だと思うんですが、これ経済学的に言いますと、もしも、成長させるにはどうしたらいいかというと、一応三つありますね。技術革新、そして人口の増大、そして資本蓄積であります。この三つなんですけれども、技術革新は民間企業頼み、そして、人口増加は今はちょっとこれは無理でしょう。したがいまして、考えられるのは資本蓄積だ、だからその資本蓄積でやるしかない。  じゃ、資本蓄積するにはどうしたらいいのかといえば、当然資本の収益率、これを高める。資本を持っている人たちにたくさん資本を蓄積してもらう。じゃ、資本蓄積するためにはどうしたらいいかというと、お金持ちの方と貧しい方、どちらがより多く貯蓄しますかということですね。貧しい方は貯蓄できないから貧しいんですね。お金持ちの方はたくさん貯蓄します。ということは、お金持ちを富ませればますます資本蓄積が大きくなる。したがって成長できるのではないかという考え方が実はアメリカのレーガン政権時代ありましたね。それをトリクルダウン理論といいます。富者を富ませれば、滴り落ちる水によって経済全体の人たちが潤うんではないかという考え方ですね。  しかしながら、そのトリクルダウン、それは、その効果は全く実証もされておりませんし、そういうような戦略をするよりも、今もちろん一番大事なことは、勤労者、ブルーカラー、ホワイトカラー含めて私は勤労者と呼んでおりますけれども、勤労者の方たち所得をどうやったら増やせるか、そこが私は肝要だと思います。  以上二点、アベノミクスの一本目の矢の的はできれば第二の矢の補完のためのものであってほしいということが一点目と、第二には、第三の矢の成長戦略、もう少し吟味が必要なのではないかというふうに考えております。  以上であります。
  15. 西田昌司

    西田昌司君 ありがとうございます。  私も全く同じ意見なんですが、それで、一つ問題は、要するに、一本目の矢と二本目の矢は、順番は多少違うんですが、取りあえず国債を出すことによって財政出動をできるようにしていったと、それを日銀が引き受けていってやっていこうという形なんですね。ただ、余り日銀だけの金融緩和だけでやると、先ほど一番初めにありましたけれども、バブルになったりしちゃうと。ですから、やっぱりそこのところはかなり気を付けなければならないと思うんですけれども、一番大事なのは財政出動だということだと思うんですね。  そこで、ちょっと先生に最後もう一つお聞きしたいのは、消費税の話なんですが、私も景気が悪いときに税金を上げるのは愚策だと思うんですね。しかし、今徐々に上がってきているという前提で上げているんですが、本当は消費税、それから増税などは景気が回復してからの方が望ましいと思うんですけれども、ここはやっぱり政治の判断がいろいろありますので、ちょっとそのところはおきまして、長期的に言えば、先ほどのこの先生の御講演の中にもありましたけれども、要するに、民間のお金は効率化を重視していきますと海外に出ちゃうと。だから、国内の需要というのは、民間需要を期待してもなかなか、そのまま直接国内投資というよりも海外に行く可能性がありますね。そういう意味で、国債企業がためたお金を吸い上げて国が使う、若しくは税で吸い上げて政府が使う、この国債と税の二つの組合せで、直接、税を使うことによって国内で需要をどんどん大きくできると思うんですね。  そう思いますと、増税の時期はちょっと別にしましても、要するに、今の日本の国民負担率四割というのが、今日はちょっと駒村先生には時間がないので質問できないので申し訳ないのですが、先ほどの年金の話も含めまして、実は負担率をもう少し上げていく、四割から五割とか負担率を上げていけば、どんどん政府が持続的に成長できるような財政出動、それからその福祉の話も含めてできるのではないかと。ところが、その話を誰もしないんですけれども。そこの辺をどのように先生は考えておられるかということをお聞かせいただきたいと思います。
  16. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 今、西田先生のおっしゃったことはそのとおりだと思います。  結局、今なぜ財政再建をしなきゃいけないかと言ったら、この財政欠陥はどこから生じたのかといいますと、結局のところ、十数年間にわたる度重なる所得税減税、それによって累進税率がフラット化いたしました。そして、さらに法人税減税であります。これ、大体、バブル絶頂期から比べますと、所得税の税収が半分以下、法人税に至っては三分の一以下に去年、おととしですか、なっていると思います。更にこれ、法人税減税をしようということですね。そうすると、ますますこの乖離、税収と支出の乖離がどんどん開いてしまう。それが、今待ったなしの財政再建に直面する基本的な原因があったわけですから、逆にねじを変えるということ、もちろん増税、これはもう不可避的だと思いますね。  法人税減税を繰り返しましても、今、企業の内部留保が二百三十兆円でしたか、たしか。そういうようなふうに結局投資にも回らずどんどんどんどん積み上がっていく。たまに投資をすると、今度は海外に工場を移転するという話になってしまう。どんどんどんどん国内が空洞化してしまうわけですね。まさに民間に全てを任せていれば、このグローバル化の時代です、もうどんどんどんどん国内から工場、雇用機会がどんどん喪失してしまいます。  でありますから、天下国家国民国家のために考える政府は当然お金を国内で使わなきゃいけません。そのためには、まだまだ、先ほど先生がおっしゃられたとおり国民負担率低いですから、増税の余地はあります。その増税をして、そして政府主導の成長戦略に変えていくというのは非常に大切な視点ですが、しかし、一つだけ問題は、先ほど私申しましたとおり、増税するのであるならば、所得になる金、消費税ですね、これよりも滞留している金、そこを増税すべきではないのかと思います。  消費税論議で言いますと、消費税は安定財源だとよく言われます。でも、なぜ安定財源かというならば、消費の項目というのは、必需品に対する消費と、また奢侈品、ぜいたく品に対する、不要不急のものに対する消費、二つあります。不要不急のものに対する消費というのは景気の波に応じて変動します。しかし、変動しない、安定的な消費は何なのか。必需品に対する消費なんです。そこに税金を掛ける。これ、政府は何もしなくても消費します。ですから、そこに八パー、あるいは、まあ八は決まってしまったからしようがないんですけど、更に一〇パー、追い打ちを掛ける。これかなり厳しいことだと思います。  世界各国においても、必需品に掛ける消費というのは、これは軽減税率が取られるのが当たり前でありまして、でありますから、国内にたまっている不用なお金、滞留している金、これをまずあぶり出すためにも、マイナンバー制度、今回、二〇一六年ですか、できますけれども、まだ利子所得の捕捉はできていませんね。そうしたものを拡充していく。そして、やはりアンダーグラウンドエコノミーのお金と滞留しているお金、それに対する課税、増税によって、それを政府が適切な箇所に使うことによって日本は成長できるのではないかと、かように考えております。
  17. 西田昌司

    西田昌司君 ありがとうございました。
  18. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 藤末健三君。
  19. 藤末健三

    ○藤末健三君 青木先生、駒村先生、本当にありがとうございます。  私、まず青木先生に御質問ございまして、先生が示された図でいきますと、十五番目の「国債問題の最終解決」という資料がございますが、そこでちょっと二つだけ御質問させていただきたいと思います。  一つは、私も日銀が大規模な国債の市場からの買入れというのはある程度はやるべきだと思うんですが、ただ、どこまで限界があるかということを考えますと、なかなかずっと買い続けることはできないんじゃないかなと。将来的に日銀のバランスシート、日銀がどんどんどんどん負債が大きくなると日本銀行券である円の信用が落ちてしまうのではないかということにつきまして、限界がどこまであるかということがまず一つ。  そして、もう一つは、先ほど西田委員からも話がございましたが、今、三本の矢ということで動いておりまして、今日まさしく産業競争力強化法の議論が参議院で始まったところでございますけれども、私、個人的に思っているのは、今企業などに余っている、止まっているお金、これをいかに動かすかというのが最大のポイントではないかと。  ですから、先生がおっしゃっている、政府がお金を使い財政出動を行い景気を回すということはある程度進みつつあり、あと公共事業などの消化率を見ると大分消化率も落ちていますし、どんどんどんどん今コストが上がっていると、物資なんかのコストも上がっていると。少しサプライサイド的にも供給する側がもう満杯じゃないかというふうに思っておりまして、今必要なことは、例えば企業が、医療であり介護であり、あと農業であり、新しい需要がある分野企業のお金が行くように持っていくことが重要じゃないかなと思っているんですが、そのポイントについていかがでございましょうか。  以上二点、御質問申し上げます。
  20. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 日銀買い切りの限界について御説明いたします。  この日銀買い切りの限界、あるいは日銀のバランスシートどこまで大きくなるかということですね。  今、日本の通貨制度は管理通貨制度です。信用があれば幾らでもお金が出せるという状況ですね。じゃ、その歯止めは何なのかといったら、二つしかない。日銀のバランスシートが拡大する、それによって民間経済悪影響が出たとき、そこがどういう状況かといいますと、その現象は二つです。インフレになるか長期金利が上昇するかの二つなのです。でありますから、インフレの動向、物価水準の動向ですね、それと長期金利の動向、これを注視することによって、日銀の買い切り、どこまでできるかというのが分かるのではないでしょうか。  私が先ほど提言いたしましたとおり、デフレ不況期にはどんどんどんどん日銀が継続的に買いを続ける。そして、また景気が良くなったらやめればいいんです。また悪くなれば続ける、また良くなったらやめる。そういう形で民間保有の国債を日銀に移し替えれば、国債の残高自体は変わりませんが、国債の問題は、先ほどから申しましているとおり民間保有の国債残高が問題ですからね、それを少なくすることができるのです。それが、日銀の買い切りの限度はインフレ若しくは長期金利を見ながらというふうに考えればいいということであります。  もう一つ企業の滞留している金、これをどうすれば投資に回るかということで、委員から、新しい分野に対する、医療とか介護、そうしたその他の分野に対する規制緩和をしていけばいいのではないかというお話がありました。それも一つ考え方だと思いますが、本当にこれ、そちらの方に行くのかというのは、具体的な緩和策を見てみないと一概に言えません。  なぜかといいますと、そういう適切な規制緩和分野というのは必ずあります。委員おっしゃるとおりです。そのとおりなんですが、規制緩和という一くくりにしちゃうと、全て規制緩和しようという方向になっちゃうんですね。ですから、規制緩和の議論自体は常に個別的な、ミクロ的な問題として論じた方がいいのではないでしょうか。かように思っております。
  21. 藤末健三

    ○藤末健三君 ありがとうございます。  まさしく先生のおっしゃるとおりでございまして、規制緩和という言葉ではなくて、やっぱり規制によりどれだけのビジネスが生まれるかということをきちんと計測しながらやらなきゃいけないと私も思っております。  では、時間がございませんので、駒村先生にちょっと御質問させていただきたいと思っておりまして。  先生の資料で、六十歳以上の投票者の割合が五〇%を二〇三〇年ごろに超えるということが書かれておられます。一番最後のページを見ますと、政治が世代間の利害調整を行うことができるのかという問いかけをなさっているわけでございますが、私が前読んだ外国のちょっと論文でございますけれど、先生が作られたような資料で、投票者の割合ということに投票率を加味したデータがあったんですよ。ですから、若い世代は投票率が低いんで、それだけ政治発言力が低い。一方で、六十五歳以上の方々は投票率非常に高いんで、その投票率を勘案したデータを見ますと、二〇〇〇年の半ばぐらいに、実は六十五歳以上の投票がもう既に若い世代、六十五歳以下の投票の割合を超えていると。そこに書いてあったのは、ポイント・オブ・ノーリターンと書いていまして、もう戻れないところを日本超しちゃったという論文だったんですよ。  どういうことかというと、高齢者の方々がもう完全に半分以上を占めてしまったと、投票者、投票する方々の中で、人口ではなく。恐らく日本はもう社会保障を拡大し続けるしかないんじゃないかということが書いてあったんですが、その点につきまして先生はどのようにお考えでございましょうか。また逆に、それを乗り越えるための道はどうあるかと。お願いします。
  22. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 実は、十二ページのものは、これは有権者掛ける投票率ですので、これはそれです。これは投票率を加味したものです。多分、ちょっと投票率の使っているデータが何か特殊な年を使っていてもう既に超えているときがあったのかもしれませんけれども、九年と一二年を見るとこういう感じです。九年は若い人が割と多く投票したので、比較的、九年のままで行くとタイミングが二〇三五年と、そして二〇一二年の方だとこの辺だと、三〇年前後だと。  これはまさにおっしゃる心配がありまして、高齢者が年金、医療、介護にもう利害関係があるわけであります。それで、私の今日お配りいただいた資料の方も、この五十一ページに短期、中期、長期の議論をしなければいけないということを書いていますけれども、この状況だと、ひたすらひたすら高齢者が社会保障を充実してくれと、負担は反対だと。  例えば、別の調査をやったときも明らかでした。年金改革は先送りでいいんだと、社会保障改革は先送りでいいんだと、高齢者になればなるほどその答えが大きくなってくるということになりますので、はい、おっしゃるとおりですと。そして、高齢者の方は、六十五歳や七十歳から余命があと何年かということになりますから、今更大きい改革はやめてくれということになりますから、もう先送り先送りと政策がどんどん短期短期に回っていくと思います。  ただ、それを、はい、そうですかと、政治家の皆さんがおっしゃるとおりですとやっていくとこれは何が起きるかというと、今度は若い世代が非常に制度に対して不安を持ち始めるわけですね。そういう意味では、五十一ページに書いてある、これは国民会議のメンバーだったときに書いたわけですけれども、二〇二五年以降の社会保障の姿は見せられていないわけですね。だから、二〇二五年で社会保障給付費は現在の百十兆から百五十兆まで増えると、その財政はどうやって賄われるのか、それで収まるのかということは全然明らかになっていないわけですから、政治家が、有権者が高齢化に行くから高齢者の方ばっかり向くと、今度は若い人が、もうこれは年金駄目なんじゃないか、社会保障駄目なんじゃないかということで家計の支出をどんどん抑えて、それがまた経済の活力を下げていくということになりますので、政治家の皆さんのやっぱり役割としては、これは両世代をいかに調整していくのか、説得するのかというのが大事ですし、場合によっては、やっぱり若い世代と高齢世代が全然一緒に暮らしていませんので、そこが交われるような、議論できるような空間があっていいんじゃないかと思うんです。  実は、年金の話も、若い世代と高齢世代を交ぜて議論させると、意外に、あっ、そうなの、あっ、そうだったんですかという具合に調整可能な部分もあります。これを討議型民主主義とか熟議とかいいますけれども、そういう場があってもいいのか、あるいは高齢の世代にもそういうことを勉強していただく、自分たちの年金は自分たちで払ったものを取り崩しているんではないんだということを知ってもらう場があってもいいんじゃないかと思います。  以上です。
  23. 藤末健三

    ○藤末健三君 ありがとうございます。  これで終わります。
  24. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に御発言の方。河野義博君。
  25. 河野義博

    河野義博君 公明党の河野義博でございます。  青木先生、駒村先生、お忙しい中、本日はありがとうございます。  まず、青木先生に質問をさせていただきます。  西田先生、藤末先生と若干重複も、重複といいますか、意趣がかぶりますけれども、国債問題の解決策、先生のプレゼンテーション十八ページ目の「民間国債を日銀へ移し替えること」ということに関して幾つか質問をさせていただきます。  戦後、日本のみならず国際社会において中央銀行が国債を大量に保有することということに関しましては、財政規律を保つという観点から厳しく規制をしてきたという歴史がございます。今回、アベノミクスではその国債のデュレーション、長いものも保有をし、また残高も二倍にまで、二〇一四年までに二倍に増やすといった観点から、異次元の金融緩和をいたしました。これはまあ、ある意味規律を保った緩和と私は理解をしておりまして、その金融緩和策が第一本の矢として放たれました。  そういった観点から、戦前日本が野方図な国債引受けを日銀にさせて失敗をしたという経験もございますが、そういった観点から何かコメントをちょうだいすることはできますでしょうか。
  26. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 財政規律を保つ条件についての御質問だと思います。野方図に日銀が国債を買い切ると大変なことになるのではないかというお話だと思います。  ただ、私思うんですけれども、財政規律を保った状態というのは何なんでしょうかということなんですね。私、いろんな話を聞くんですが、財政規律を保て、財政持続可能性を考えなきゃいけない、国の信認を考えろ、いろいろ言われているんですが、みんなこれ抽象概念ですね。抽象的なもので、じゃ、具体的に経済状況においては、どういった状況が財政規律が保っている状況で、どういった状況が財政規律が保たれていない状況なのか、これをつまびらかにする必要があると思います。  現在、デフレ不況の状況です。じゃ、今が財政規律が保たれているとしたならば、財政規律が保たれている状況はデフレ不況と両立する状況なのかどうかということなのであります。財政規律が保たれている状況は、インフレが高進する、あるいは長期金利がどんどんどんどん上昇する、そういうような状況に至ったら、それは財政規律は保たれておりません。しかしながら、現在、長期的に十数年間、長期金利は底ばいを続け、そしてデフレがずっと続いている。この状況はまさに、財政規律が保たれているというと、じゃこの財政規律が保たれている状況というのは、日本経済実体経済にとってはとんでもない状況だなというふうに私は考えています。  でありますから、もう少し買い切りを進める、そしてデフレ脱却する、不況脱却する、そういうことをする手段として国債の買い切りをすべきではないのか、もっともっと継続的にやるべきではないのかということなのであります。財政規律を保つためにこれ以上するな云々という話は、ちょっと私は違うのではないかと、かように思っています。すなわち、財政規律が保たれている状況等は、インフレーションあるいは長期金利の動向を見ればおのずとその限界その他は分かると思っております。
  27. 河野義博

    河野義博君 ありがとうございました。  先ほど藤末先生の御質問の回答として、日銀がどの程度まで引き受けたらいいのかという御質問に対しまして、金利が上がったときですとかインフレが進んだときに考えたらいいんじゃないかというようなお話でございましたが、マーケットというのは一夜にして変わるものでございまして、過去の、直近でいえばリーマン・ショックのときもそうですが、金利というのは一夜にしてぽんと上昇してしまう、インフレがどんと進行してしまう。上がり始めてからどうしようというのでは遅いんじゃないかなという気が私は、金融機関に勤めていた経験からもするんですが、その辺りはいかがでしょうか。
  28. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 一夜にして金利というものは変動しますし、マーケットも大変になりますね。そのとおりですね。  ただ、長期金利が上昇するということは、債券市場で長期国債が大量に売りに出されるということですね。大量に売りに出す人は、それによってどのくらいの利得があるんでしょうか。マーケットでは日銀が相当買い切りを強めていますから、売ってくる国債はみんな買い切ってしまうと。まさに委員おっしゃるとおり、みんなが、じゃ、国債危ないから全部売る、そのときこそチャンスなんですよ。そのときこそ一気に日銀に移し替えるチャンスだと私は考えています。
  29. 河野義博

    河野義博君 ありがとうございました。  駒村参考人に質問させていただきます。  本日のプレゼンテーション、また先生の今までの著作、また文献、勉強させていただきました。現在の状況におきましては、今のまま持続可能な社会保障というのを維持するのがなかなか難しくなっていくというような示唆もいただいておりますけれども、今後、この持続的な社会保障を可能にするという観点から、その制度設計、今後、国民の負担と一方で社会保障在り方、そのバランスについて何かアドバイスをいただければと思います。
  30. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 今日はこのデフレ財政再建の話が中心でございますので、そこ等も意識しながらと思っております。  まず、家計の状況を見て考えていく必要があるのかなと思っておりまして、若い世代を中心に非常に閉塞感があると。さらに、現在、限定正社員のような働き方も検討されていると。  まず、若い世代に今の生活と将来に対する生活の期待をちゃんとつくる必要があると。限定正社員もある種の考え方としてはありだと思っています。ただ、そうなると年功給ではなくなる、あるいは離職リスクが上がると。こういう社会モデルもありだと思いますけれども、だったら、ここに対しては、やっぱり一時的な所得保障政策、あるいは児童手当、住宅手当、奨学金、要するに年功賃金がない働き方でも生きていけるような社会保障にしなければいけないと。流動化だけして年功賃金は引き揚げます、セーフティーネットはありませんということであれば、ますます萎縮することになると思います。ここ十年、十五年の若年世代の収入の減り方というのは、やはりかなり深刻なものであったと思っております。  高齢世代にとってみれば、やはり寿命が延びていくと。日本の高齢世代の健康寿命というのは世界一、北欧よりも長いわけでありますね。この長寿と働く意欲は非常に高いということを活用して、やはり年金の支給開始年齢、高齢者の定義をもう変えなきゃいけないというふうに思っています。それに併せて社会保障の組替えというのをやっていくというのが長期の課題だと思っております。  それから、デフレにかかわる問題で一言だけ申し上げたいと思っていたのが、今、年金の経済前提会議の中でも、日本の家計の消費というのはやはり、貯蓄率ですね、貯蓄がどんどんどんどん家計の方は落ちてきています。そういう意味では、貯蓄余力というのが下がっているのは間違いないんですけど、実はそれをほとんど相殺する勢いで企業貯蓄というのが増えているわけですね。企業が日本のマーケットに対して期待を持っていない状況、あるいはデフレの状況を見て、やっぱりため込んで国債に回っていると。そういうところも考えると、若い人を元気にして、動けるようにして、そして企業が、日本のマーケットまだ期待できるなということで、このため込むというのをやめるということが必要だと思います。  そういう意味では、やはり給付を、今言ったように限定正社員、流動性を高めるというならば、それにふさわしい社会保障制度にする、これが北欧、ヨーロッパでやっている社会保障の組合せじゃないかなと思います。  以上です。
  31. 河野義博

    河野義博君 ありがとうございました。
  32. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次の御発言の方、挙手願います。寺田典城君。
  33. 寺田典城

    寺田典城君 みんなの党の寺田典城です。ひとつよろしく。  青木先生、それから駒村先生、勉強になりました。ありがとうございます。  私は、バブルが崩壊したのは一九九〇年とか九一年とか言われていますけれども、それ以来、経済が成長なし、デフレ傾向と低金利と。これはある面ではそれなりの役に立ったんじゃないかと、デフレと低金利が。私はそう見ています。  ということは、バブル崩壊で企業は経営的にも行き詰まっているし低金利になると。それから、国際競争の中で、今、青木先生は賃金アップ、これ、確かにしていかなきゃならないですよ、あとは金融緩和と公共投資ということでお話あったんですが、その中で、ここ十五、六年の状況においては、この時代のニーズがデフレと低金利だったろうと、ある面で極端な言い方すると。国際競争社会の中でそういう時代を過ごしたと。そして、リーマン・ショックの後ますます厳しい社会になったことは事実なんですが。  一九九〇年までは私、民間の経営者をやっておったんですけれども、何というんですか、給料を高く払うことが経営者のある面でのステータスというか、そういう考えはあったんですね、どこの中小企業でも大企業でも。ところが、バブルが崩壊してからは、労働賃金というのはコストに考えて、グローバルな競争の中で企業が生き残りをしていかなきゃならぬと、それから物を持たないことだというのが、それが経営者の一つの、何というんですか、資質というんですか、そういうふうに問われてきているんですね。そして内部留保をするということなんですが。  振り返ってみると、それから地方行政に携わったんですが、金利が安いことと、それまでは、日本の国は三百兆円ぐらいの、一九九〇年ですね、借金があったんですけれども、十兆円しか金利を払っていなかった。今は一千兆円で十兆円金利を払っていると。それがもし、あの当時の五%ぐらいの金利だったら、これは完全にもたないと思うんです。  そういう中で、私は、小泉改革が二〇〇五年に市町村合併をやって、三千二百から千七百ぐらいまでになったんですが、あの当時はプライマリーバランスはそれこそマイナス、今は六%、七%ですが、一、二%だったんです。地方はプライマリーバランスは大体ゼロ、ゼロぐらいで、二〇〇八年ぐらいまではそういう調子で行ったんですが。  これからどうすべきかということなんですが、私は、公共投資というのは景気対策のために、一九九〇年以降、小渕さんから含めて地方債発行してどんどんやってきたけれども、そんなに経済は成長しなかったというのは事実です、これは。地方は借金増えたというだけのことです。ですから、公共投資でまた景気を良くしようかというのは、私はこれは無理があるんじゃないかなと。簡単に言うとそういうことです。  それから、労働賃金アップするかというと、国際競争社会の中では、私は意外とそれ望めないんじゃないかと。だから、格差が付いちゃったなと、率直にそう思います。認めたくないけれども認めざるを得ないのが現実じゃないのかなと。その現実をしっかり見据えた上での政策というのは私はしていかなきゃならぬと思う、地方も国もですね。  ですから、やはりある面では、これから低金利をいかに維持できるかとか、それから、必要な公共投資は必要だけれども、グローバル対応な人材をいかに人材育成をしていけるかとか、それから教育ですね。何というか、チャンスは平等に絶対的に与えると、教育面で。だからそういうお金を使うとか。ですから、そういう形のものを進めていくことがこれからの国の在り方じゃないのかなというふうに、そう思います。  そういう点では、ですから青木先生に、何というんですか、低金利と経済成長というのは、それをどうとらえていらっしゃるのか。それと、デフレは、もう一度お聞きしたいんですけれども、どのような形で脱却できるのかということですね。  それから、駒村先生には、二〇二〇年になると日本の国民は高齢化率が三割近くなっちゃうので、そうなってくると、医療費の高騰だとか年金だとか、物すごく掛かりますね。だけれども、それよりも医療従事者、それも大事で、医療従事者の人材をいかに確保するかというのが、今まで例えば二週間入院できたものが一週間しかできないとか、医療対応できないとかという、そういうものも出てきていますしね。そういう面も含めて、二〇二〇年の社会保障政策をどうとらえるか、それをひとつ教えていただきたいと思います。
  34. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 今の御指摘、私かなり通じる部分がありまして、公共事業の誘発効果はかなり小さくなってきているんではないかと思います。賃金格差が広がっていくということでございますけれども、やはり先ほど申し上げたように、賃金格差を縮小するためには社会保障所得保障の充実が必要だと思っています。  そういう意味では、委員の御指摘のように、生活者向けの社会保障の充実と教育、奨学金、住宅手当、児童手当の充実といったものがまず大事だと。もう再分配で、公共事業よりはむしろ再分配でちゃんと守っていくと。それがむしろ競争的な社会のセーフティーネットという意味では、よりそれがあるから競争できるんだと、TPPにも対応できるんだということになると思います。  それから、地方にとっての人材確保、もう大変な問題でありまして、まず地方では、これから高齢化が進んでいきますと、実はもう既に、例えば高知なんかは非常に高齢化率が高いわけですけれども、年金が県民所得に占める割合がもう二〇%近くになり始めていると。これに医療、介護をくっつけると、社会保障が実は地域の経済を大きく左右することになります。これを圧縮するということは地域の経済がアウトになっちゃうということになりますので、特に医療、介護の部分はやはり賃金をちゃんと保障していくと、人材確保するというのが大事だと思います。  あと、ただ、これから高齢者の絶対数が増えてくるのは東京近辺ですので、そういう意味では労働移動も同時に、介護福祉従事者の労働移動、労働確保もやらなきゃいけない。このためには、今の想定されている医療、介護の費用よりももしかしたらより高い条件、労働条件を付けないと人員確保できなくなる可能性があると思います。そういう意味では、もうちょっと私は実は長期見通しは厳しいんじゃないかと見ております。  以上です。
  35. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) バブル崩壊後の経済状況デフレ、低金利、それが良かったのではないかという御指摘がありました。私は、その反対で、悪かったなと思います。それは、二つまず挙げておきましょう。  この間、実質賃金、名目賃金は下がり続けましたが、デフレ影響によって実質賃金は更に下がっています。ここ十数年間、勤労者の懐具合はどんどん下がってまいりました。デフレ原因であります。また、名目GDPがほとんど伸びておりません。名目GDPが伸びているとするならば、今、倍増、一千兆円あるはずです。そうすれば、この調査会財政再建する必要なかったのではないかと思います。したがいまして、私はバブル崩壊後のデフレ、低金利状況が悪いのではないかと考えております。  また、金利が低いということはどういう状況でしょうか。それは、資金需要がないという状況を表しています。委員からデフレ脱却のための話が出ましたけれども、資金需要がないから低金利、低金利にもかかわらず完全雇用が達成できないということは民需が低い、民需のない中でどうやって経済を拡張するのか。残された手段は公共投資しかないと私は考えています。  それも、公共投資も、不要不急のものを造るという話ではございません。やはり、京大の藤井先生が主導なさっていますけれども、国民生活の安定、そのための安心感をもたらすための国土強靱化計画ですね。防災・減災、そして地域経済活性化、それを起爆剤にしてやっていくしかないのではないか。藤井先生の研究によりますと、公共投資の経済成長効果というものがかなりあるという研究が今なされています。その本もありますけれども、そうしたことを考えるに当たって、やはりデフレ脱却には官需、国土強靱化計画を中心とした公需でいってやっていくしかないのではないかと、私はかように思っております。  以上です。
  36. 寺田典城

    寺田典城君 どうもありがとうございました。  三本の矢というのは、経済成長なし、デフレ、低金利、これ、ある面ではそこをとらえて、その点をとらえて政策を打っていく、国家的な政策を打っていくと。これを脱却するというと、例えば金利を上げるということが、五%に上がったら国債とかそういうのは維持できるのか、それから国民もそれでやっていけるのかと。デフレだって、物の値段が上がったらやっていけない、生活。低所得者が、百五、六十万の低所得者が四割いるということですね。  ですから、そういうことで、経済成長ってそんなにできるのかというと、それはやはり日本の社会の中ではなかなか、新しい産業は出てくるでしょうけれども、より困難なものがある。それを認めた上で政策を打っていく必要があるんじゃないかなと、私はそう思います。
  37. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 質問ですか、御意見ですか。
  38. 寺田典城

    寺田典城君 意見です。以上です。
  39. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それじゃ、よろしゅうございますか。
  40. 寺田典城

    寺田典城君 はい、ありがとうございました。中途半端で済みません。一分オーバーしました。
  41. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 続きまして、藤巻健史君。
  42. 藤巻健史

    藤巻健史君 日本維新の会、藤巻です。よろしくお願いいたします。  両先生、どうもありがとうございました。  青木先生にまずお聞きしたいんですが、質問幾つかあるので時間のあるところまで行きたいと思いますが、まず最初に、今までの議論のとおりなんですが、青木先生の民間の保有する国債を全部日銀が保有することということは、まさに究極のマネタイゼーションだと思うんですけれども、確かに全部日銀が買ってしまった場合、金利は上がらないかもしれませんが、明らかに円は暴落し、ハイパーインフレは来るし、また貨幣というものを誰も信用しなくなってしまうという状況に陥ると思います。全部日銀が購入しなくても、これ以上買っていくと国民の間の通貨に対する信用が失墜しハイパーインフレに進むのではないかなと私は思っています。  例でいえば、例えば昔の薩摩藩が堺の商人から鉄砲を買っていると。薩摩藩にお金がないからといって裏で紙幣を、藩札を刷っていれば、いずれは鉄砲なんか売ってくれなくなるし、それからまさに鉄砲の値段は物すごく高騰するということと全く同じでございまして、貨幣価値が、貨幣を誰も信用しなくなるということで、極めて危険だろうというふうに思っております。  国民に対する弊害というのは、当然のことながら、ハイパーインフレとなれば、国民というのは債権者でありますから、実質自分の財産をなくすということ、そしてひいては過去の中央銀行、確かに戦争中には大量のお金を供給していましたが、その結果、暴力的な資金吸収をせざるを得なかった、すなわち新券発行と預金封鎖という形になったと思います。ということで、マネタイゼーションというのは極めて危険な政策だと思っています。  先生は先ほど国債を日銀が持っていればいい、持ってしまえばいいというふうにおっしゃっていましたけれども、今のマーケットというのは現物市場よりも先物市場の方が大きいです。先物では幾らでもショート、先行の売りができますので、崩れるときは大きく崩れると思います。ということで、日銀が更に国債を買い増すというのは私は極めて危険だと思っております。  先生は先ほどインフレ率を見ながら調整をするというふうにおっしゃっていましたけれども、その議論というのは今いろんなところで出ている出口議論と同じでして、長期国債を買っている以上、もうインフレが進み始めたらセーブできないですね。  何を言いたいかというと、今、日銀が量的緩和をするのは簡単です。すなわち、国債を買って市中にお金を供給する。ですから、量的緩和の方は簡単ですが、逆になる、要するにインフレを抑えるということは極めて危険な方策だと思います。できない、出口がないと思っています。なぜかといえば、当然、今と逆なことをする、要するに持っている国債を売って資金を吸収するわけですけれども、金利を日銀が上げたい、すなわち価格を下げたいわけですから、誰がそんなあした下がる国債を買うかと、民間金融機関は誰も買わないということで、日銀は資金吸収をすることはできないということがあります。  それから、当座預金に付利する、日銀にある準備預金に付利して何とかインフレを抑えようという説を唱えていらっしゃる学者の先生も知っておりますけれども、それも今国債、〇・七%などという低い国債を買っていればそれも限界があるということで、インフレ率を抑える、インフレが始まったときに抑える手段は全くないと思っています。  そういう観点から、やはりちょっと、申し訳ないんですが、先生のおっしゃる民間国債を日銀へ移し替えるということは極めて難しい政策かなと思うんですが、いかがでしょうか。
  43. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 先に、前提条件がちょっと違っているので。  十八ページを見ていただければ分かりますとおり、民間保有の長期国債を日銀へ移し替える、これは日銀による国債の買い切り。もちろん全ての国債を移し替える必要はございません。国債民間の金融機関の大事な資産運用の手段です。これは取り上げてはなりません。これは、世間の方たちあるいは政治家の方たちが、これ以上国債残高が増えたら大変なことになるよ、そういうような誤解を払拭する程度でよいのです。  そして、御指摘のありました究極のマネタイゼーションなのではないかという話ですが、じゃマネタイゼーションというのは何なんですかというと、全ての国は現在マネタイゼーションをしているのです。すなわち、税収が入ってから政府支出をするのではございません、税収を見込んで、先に中央銀行から金を借りて、そして歳出をしているのですから、マネタイゼーションというのはみんなやっていますよという話でありますが。  そして、御指摘のハイパーインフレになってしまう、これもちょっと私は別の考えですね。ハイパーインフレになるということはどういうような原因でなるのでしょうか。これは、需要がそこそこある中で、供給施設が壊滅的な打撃が来る、戦争とか内乱によってぐちゃっと来る、そのときに需給関係がかなり需要増加で乖離してしまう、そういう状況においてのみしか過去ハイパーインフレになったことはないですね。今、日銀が多少マーケットの動向を見ながら買い切りを続けたとして、そしてハイパーインフレになる危険性というのは私はほぼないのではないかと考えているので、こういう政策手段についてお話しいたしました。  そして、先物で売ってくる場合はどうするのかということでありますが、先物で売るということは、結局、直物でいつか買い戻すということでしょうね。そのときに、売った額より直物の方が安くなっているという保証がなければ先物で売る人はいないと思いますね。今、国債を保有しているのはほとんど国内の民間金融機関ですね。彼らが一番恐れているのは保有している国債が暴落することです。したがいまして、ハイパーインフレの危険性はない。  そして、円が暴落するということで御指摘がありましたね。しかしながら、それはハイパーインフレと連動した話です。円が安くなるということは、その国の物価が上昇する、それによって貨幣価値が下落する、だから円の価値が下がるという話です。したがいまして、ハイパーインフレがない以上、円の暴落もございませんというふうに私は考えます。  以上です。
  44. 藤巻健史

    藤巻健史君 今の最後の議論は、私は鶏と卵の関係で、逆だと思っておりますけれども。  それはともかくとして、先ほどハイパーインフレのリスクということは、供給が崩壊して需要が過多になるというお話だったんですが、もし先生のおっしゃるように過度に日銀が国債を買っていた場合、円安はやはり進むと思います。進んだ場合何が起こるかというと、需要過多になるんです。  先生はいつも国内市場だけで考えておりますけれども、円が安くなるということは世界中が日本の優秀なる製品を買うということです。今なぜ供給過多かというと、日本の優秀な製品が円高ゆえに他国の外国人にとって高過ぎるんです。だから、需要がないからなんです。円が安くなれば需要は、例えば一ドル三百円、四百円になれば、きっと日本の製品に対して千倍、一万倍の需要が増えてきます。そうなれば明らかに日本はハイパーインフレになるかと思います。先生の議論というのは、国内だけの議論じゃないかなと私は思っておりますけれども。
  45. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 円安になるということはどういうことでしょうか。アベノミクスの第一の矢でなぜ円安になったんでしょうか。これは簡単な話です。今為替のトレードをなさっている方は、たしかソロス・チャート若しくは修正ソロス・チャートというものに従って為替レートの予測をしているんではないでしょうか。それはどういうことかというと、中央銀行の政策スタンス、金融緩和の程度によって、それを見て為替が変動するという論理であります。言ってみれば、簡単に言えば現代版の購買力平価説です。  したがいまして、量的緩和をした、そして恐らくリフレ派考え方のように、あるいは経済の中に貨幣市場一つしかないと考えれば、当然量的緩和をすれば貨幣量が増えるわけだからインフレになるだろう、インフレになるからそれを先回りして円を売っておこうと、そういう循環ですね。  しかしながら、私は、今このデフレ状況が続いているわけです。GDPデフレーター、七—九月期もマイナスでしたね。そのように低い状況です。ここがもしも、先にインフレにならないことには、円安のことを心配しても私は仕方がないのではないかというふうに考えるわけであります。  以上です。
  46. 藤巻健史

    藤巻健史君 時間がないのでこれでおしまいにしますけれども、一言だけコメントさせていただくと、私もマーケットに長年おりましたけれども、別にソロス・チャートで取引したことは一回もございませんで、今でもソロス・チャートで取引しているのは、ごく一部の為替のトレーダーはいるかもしれませんけれども、ソロス・チャートで為替が動いているというのは、ちょっと抽象的過ぎるかなと思っております。まあ、一応最後にコメントです。
  47. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次の御発言の方。吉田忠智君。
  48. 吉田忠智

    吉田忠智君 社会民主党・護憲連合の吉田忠智です。  青木先生、駒村先生、今日はお忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  青木先生に三点伺いたいと思います。  今、安倍政権が進める経済政策について、アベノミクスと言われておりますけれども、そのことについての先ほど言及がございましたが、私はやっぱりトリクルダウン、先生から先ほどお話がありましたトリクルダウンの域を出ていないのではないか。輸出企業、大企業を応援すれば、それが中小企業に、あるいは地方に、あるいは労働者に及ぶんだということでありますけれども、過去の経験からしてそのようなことにはならないのではないかということを懸念をしておりますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。  それから二点目が、賃金引上げ、これはもう全ての政党が望むところでありまして、その必要性についてはもちろん一致しているわけでありますけれども、ずばり賃金を引き上げるためにはどうしたらいいのかについての先生の御意見を伺いたいと思います。  それから三点目、今政府部内ではいわゆる雇用の規制緩和、労働法制の規制緩和がまた検討されています。派遣労働の更なる拡大や限定正社員を始めとする解雇ルール、それからサービス残業の合法化などが検討されておりますけれども、その労働法制の規制緩和の今検討されていることについての先生のお考え、見解をお伺いしたいと思います。お願いします。
  49. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 一点目は、アベノミクスはトリクルダウンではないのか、その懸念があるという話でありました。  確かに、アベノミクスの第三の矢ですか、それがどういう形になるかまだはっきりと確定したものではございませんが、唯一私が懸念しているのは法人税減税の実施であります。法人税減税を実施すると、これはまた企業の内部留保がたまるだけでありますので、これは非常に問題ではないのか。あるいは、消費税増税を同時にしているわけですから、それは民間の勤労者から企業に対する所得移転、政府を通じた所得移転になってしまいますので、それはちょっと企業優遇過ぎる。これ、トリクルダウンというのと、もう一つダム論というのが昔、日銀でありましたけれども、ダムの水を満たせば、すなわち企業収益企業に金を渡せば下流、川下の民間労働者も豊かになるんじゃないかという話、まあ似たような話だと思いますけれども、私も法人税減税の行方、これをはっきりと見定めなきゃいけないなと思います。それが法人税減税をやめる方向であるならば、一概にトリクルダウンとは言えないのではないかというふうに私は考えております。  二点目が一番難しいですね。賃金引上げをするためにはどうしたらいいかというと、これは難しいです。  今、デフレ不況の状況が一応継続して続いています。したがいまして、雇用は拡大するのですが、それは勤労者の数が増えるということで、賃金総額は確かに増えます。しかしながら、いっぱいにならない限り、この次の上昇圧力というのはなかなかないと思います。しかし、一部の建築、土木関係では需要がかなり増えているために賃上げの動きが出ていると思います。ただ、こればかりは、やはりもう政労間の協議といいますか、日本の国家国民のためにどうするかといった会議、協議の機関ですね、それで考えていくしかないのではないでしょうかね。  でも、一番の賃金引上げ、あるいは勤労者の所得の上昇、それを生み出すものは、当然のことながら景気回復、デフレ不況脱却でありますから、そこに邁進をすることによって、その次の標的として賃金引上げというものが視野に入るのではないかと思います。  第三に、労働の法制、規制緩和の状況についてどう考えるかということなんでありますが、私はこれは、この雇用流動化を図るということは、私、とんでもないことだというふうに考えております。  やはり、少子高齢化での若者の賃金が安くなる、そういうことの根本は何かといいますと、正規雇用されない人たちは、結婚をして子供を育てて温かい家庭をつくろうなんて思えません。もう一日一日食べているような話なのです。  でありますから、過度なる今労働に関する規制緩和が進行するということは極めて懸念すべき事項だと思います。私たちは、国民の大多数を占める勤労者の立場、目線に立って話をしなきゃいけないと思います。私は一経済学者として、それは当たり前のことだと思いますね。したがいまして、労働の規制緩和策に対しては、私は反対という立場であります。  以上でございます。
  50. 吉田忠智

    吉田忠智君 ありがとうございました。かなり先生と見解が一致する点がありまして、安心しました。  それから、駒村先生に次にお伺いしたいと思いますが、やはり三点お伺いします。  日本は税制やあるいは社会保障による所得再分配機能が極めて低いと、また世代によっては逆転をする、マイナスになるというふうに言われておりますけれども、その点についての先生のお考えと、ではどうしたらいいのか。  それから二点目が、年金制度について、今、自民、公明さんと、民主党さんもうちもほとんどそうでありますけれども、大きく見解が分かれております。自民、公明さんは今の制度の延長線上で進めていけばいい、で、何年かに一回再配分をすればいいという考えではないかと思いますが、社民党も民主党もやはり基礎的暮らし年金の部分と、あと所得比例年金という形で、今、年金制度そのものが、例えば国民年金も納付率が六割を下回っている状況の中で、まあ破綻と言っていいのではないかと思いますが、今の年金制度のそういう考え方と、それから今後の在り方について。  三点目が、先ほど青木先生に質問した同じ質問でありますけれども、今の労働法制の規制緩和の現状についての見解を伺いたいと思います。
  51. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 一番最後の労働法制の点からでありますけれども、一つの社会の新しいやり方としては流動化をしていくというのも解としてあると思いますけれども、先ほど申し上げたように、それをするならば、危なくなった、あるいは年功給でなくなった部分をやっぱり社会が補わなきゃいけない。これはヨーロッパの社会保障のモデルだと思います。  一方で、賃金を上げたいというならば、本当は規制緩和を、限定正社員とかいろいろ多様化していくとかえって労働組合の交渉力が落ちるわけですから、賃金上昇とはまた逆の動きかなとは思いますけれども。私は流動化はいけないという見方は持っております。その代わり、ある程度大きい社会保障になりますよと。それをしないで流動化だけやるのは良くないと私は思います。  それから、同じ話でして、一番目の再分配の大きさですけれども、私も極めてちっちゃい状況だと思います。もっともっと拡大する、特に低所得者向けの給付というのはかなり充実しなければいけないと思っております。そのためにはある程度大きい政府、今より大きい政府になる、それに必要な財源を確保すべきだと思います。  年金制度でありますけれども、私は社民党と民主党のいわゆる年金プランと自公の年金プラン案が対立的だとは思っていません。今、年金制度が抱えている問題、例えばマクロ経済スライドという方法を取れば、基礎年金は二割五分か二割七分ぐらい下がる、実質的に下がるわけですね。そうすると、生活保護受給者が出てしまうことになります。そうなると、やっぱり最低保障、基礎年金の下がった分を保障する何らかの仕組みが必要になってくる。そこに年金というラベルを付けるか、高齢者向け給付というラベルを付けるかという付け方の問題ではないかと思います。  働き方に応じて年金制度が違うということによって年金の空洞化が起きています。保険料を払わない人の多数派は非正規労働者です。自営業者ではありません。この非正規労働者に対して厚生年金を適用することによって空洞化を防止できると。これは、自営業者、年金加入者の僅か七%を別建てにしていたのを後にして、取りあえず適用拡大をずっと広げていくということは、また民主党と、あるいは社民党と同じような年金の一元化に向かった方向だと思います。  つまり、対立的に議論をすべきではなくて、対応すべき問題に対して回答策を見付けていくと同じようなところにたどり着くんではないかと。右から近づいているか左から近づいているかの違いじゃないかと私は思っております。  以上です。
  52. 吉田忠智

    吉田忠智君 ありがとうございました。
  53. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 以上、あらかじめ発言の御予定の先生方の御発言が終了いたしましたので、あとは御希望の方の挙手をいただきまして御発言をどうぞ。  まず、渡邉美樹君。
  54. 渡邉美樹

    渡邉美樹君 自民党の渡邉でございます。今日はありがとうございました。両先生に簡単に一つずつ質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、青木先生にお願いします。  私は基本的に非常事態以外は日銀が引受けをするべきではないというふうに考えているんですが、先ほど売りに出されたら買えばいいと。当然日銀がまた更に買うことによって円の信用不安ということになると思うんですが、質問は、先生は、その額の目安、日銀が買い取れる額の目安、日本の借金の額の目安でも結構です。GDPの何倍とか若しくは家庭の貯蓄云々とかいういろんな理論がありますが、その額の目安はお持ちでしょうかというのが一つの質問です。  それから、駒村先生に質問です。  この選択肢、年金の低下を抑える選択肢という御提案を五つもらっていますが、これは、三というのは、年金の水準の下げというのは、支給開始年齢の引上げ、つまり三をすることによって四を加速させるという意味でよろしいんでしょうか。  それから、もちろん年金以上に医療とか介護において非常に大きな問題になっているわけで、保険料増若しくは治療費の個人負担増以外に何か先生アイデアありましたら教えていただきたい。  以上です。
  55. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 日銀引受けの量を増やすと円の信用不安になるというお話が最初にありましたが、円の信用不安、円を持つとリスクがあるということはどういうことかと申しますと、貨幣価値が下がるということです。それは、日本の物価水準が上がる、インフレになればなるほど円を持つリスクが高まりますから円安不安になる。現在はデフレ状況でありまして、そしてアベノミクスの一本目の矢においてもデフレ解消できておりません。したがいまして、それはまだ問題ではないのではないかと思います。  そして、日銀の引受額の目安についてお話しいたします。  何%ぐらいが適当なのかという話なのですが、例えば、主流派経済学者の有名な先生方が以前、七、八年前でしたか、政府債務の対GDP比が二〇〇%になると財政は破綻するとおっしゃっていました。しかしながら、全くその傾向もございません。長期金利は底ばいを続けているわけなのであります。  したがいまして、この日銀引受け、どれぐらいやればいいのかというと、腰だめの数字でありますが、先ほど申しましたとおり、国民皆様方が余り多い借金は困るんじゃないか、解消する道筋をお示しして、そして不安にならない程度、例えば三割程度と、年間二十兆ぐらいを何年間か掛けて少しずつ買い切ればいいんではないか。そして、景気が良くなったらもちろん直ちにやめればいいし、またデフレ不況になればまた始めればいい、そういうふうにすれば国債問題は存在しなくなるということを国民皆様方にお示しする、それによって安心感が生まれてくるのではないか、私はかように考えております。  以上です。
  56. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 御質問は資料十七ページの三ポツの指摘だと思います。実はこれ、国民会議でも指摘されていることでございますけれども、ここまではっきりとは書いておりません。マクロ経済スライド、これは平均賃金に対して年金は何%にするかという話でございまして、これは次の十八ページにその数字が入っておりますけれども、かいつまんで言うと、マクロ経済スライドという賃金に対する年金の水準を下げるに当たって、厚生年金はおおよそ九%ぐらい下がる、基礎年金の方は二七%下がるということで、実は財政の構造上の問題で基礎年金ががくんと下がるわけですね。それを何とか止めるためには、実は厚生年金からお金を引っ張り出して基礎年金財政の方に流し込まないと止まらないと。だから、止まることによって共に一定幅の中に収まると。  何の意味があるかというと、両方もらっている人にとっては意味がないんですけれども、基礎年金のみの方にとってみれば、これは助かるということになります。だから、厚生年金に入っている方にとってみれば、二階の部分が少し圧縮した、その費用で基礎年金のみの方を救済したということになってしまうと。それがいいかどうかという問題はあるかと思います。  二つ目の、社会保障給付が今後伸びていくときに個人負担を上げるとかいう、窓口負担で調整するのではなくてというお話でした。  医療、介護の部分の問題というのは、需要と供給をつなげる間の人がないということで、例えば医療については、これも国民会議で議論しましたけれども、ゲートキーパーのような役割があってもいいんじゃないか。つまり、むやみやたらに病院に行くのではなくて、きちんとかかりつけ医を決めて日ごろからサポートをして、そして、この病気は僕には手に負えないからこういう病院へ行ったらどうなのかというふうに割り当てるという制度もあった方がいいんじゃないかと。これも昔から議論されているものだと思います。  長期的に見ると、やはり予防をちゃんとやらないとまずいと思いますね。健康日本21とかやっていますけれども、やっぱり個人に対してドライブが掛からないわけですね。健康寿命と寿命の乖離が広がれば広がるほど医療と介護のコストは掛かるわけですから、いかにその健康寿命を延ばすかと。これ、いろいろアイデアはありますけれども、取組が地域でやられています。それももうちょっと強化する必要があると思います。  以上です。
  57. 渡邉美樹

    渡邉美樹君 ありがとうございます。  済みません、青木先生、もう一度だけ確認させていただきたいんですが、実体経済が変わらずにお札を刷れば、これは貨幣価値が落ちてインフレになるというのは、僕はそう理解しているんですが、先ほどから先生、違うんだと、お札なんて幾ら刷っても大丈夫なんだということを言われて、どうしても理解できないんですが、もう一回だけ、そこだけお願いします。
  58. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) それでは、例えば、十三ページですか、図だけちょっと見ていただければいいんですけれども、民間経済の中に貨幣量プール一つだけあるというのが経済学考え方です。日銀の方たちはまた別のことを考えていると思います。私に近いことを考えているんじゃないんでしょうかね。しかし、経済学ではそうなんですね。  この中にお金を入れればどうなるか。すなわち、物を買う金とためてある金が区別なく貨幣、お金のプールに入っているわけですから、そこに金を入れると、貨幣数量説考え方からすれば物価が上がるのは当たり前じゃないかというふうに普通の方は考えるかもしれません。しかしながら、そうではないのです。日銀がお金を入れられるのは民間金融部門だけなんです。そこまでは渡せます。しかし、民間金融部門の方は物を買いに行くわけではないのです。物を買う人は民間金融部門個人企業、それが実体経済ですね。したがって、日銀が金融部門に渡した金、それが実体経済に渡るかどうかがインフレになるかどうかの境目であります。  今、民間金融部門に渡した金が滞っています。実体経済景気が悪いから資金需要がない。金融機関は信用供与に少し、貸し渋りとかそういう格好で不安だということで、この金融流通内の金、これたまっているんですが、産業的流通、すなわち実体経済が回っていない。でありますから、どんなに刷ってお金を民間金融部門に渡しても、それが回るのは金融市場です。ですから、バブルミニバブルは起きます。  具体的に言いますと、ちょうど黒田さんが二百六十兆、来年末までにやると言って、今百八十兆ですから、あと一年間で八十兆金を渡します。日銀が金融部門に金を八十兆渡すということは、金融機関が持っている現金が八十兆増えますね。そうすると、民間の金融機関はそれで何か買うわけです。金融投資をするわけです、株とか債券とか。それを、日銀は八十兆買うぞ、そして民間金融部門金融市場でやっていくぞということで、各国の中央銀行が緩和策を取れば必ず株式市場を始めとして金融市場活性化します。しかし、そこまでなんですね。活性化した後で実体経済影響を及ぼすのは資産効果だけですので、ですから道筋は非常に細いということです。したがいまして、日銀が買い切りを続けてもそれが直接に実体経済に渡るものではないということを御理解いただければ、それがインフレとかハイパーインフレにつながる、そういう懸念は払拭されると思います。  以上でございます。
  59. 渡邉美樹

    渡邉美樹君 どうもありがとうございます。  時間なんで終わらせていただきますが、私はやはり国際マーケットがそれを許してくれないと、そう思うということを言わせていただいて、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございます。
  60. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それでは、続いて御発言の方、挙手を願います。  石上俊雄君、その次に大塚耕平君、それから山田俊男君と、この順番でやりましょうか。
  61. 石上俊雄

    石上俊雄君 民主党の石上俊雄でございます。  今日は、青木先生、駒村先生、本当に貴重な話をありがとうございました。  青木先生と駒村先生に一つずつちょっと質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、青木先生に御質問をさせていただきますが、公共投資というか、公共事業というんですかね、そこの部分をしっかり突っ込んでいって財政の再建につなげていくんだというお話でございました。ちょっとよく考えてみると、事実、バブルが崩壊した一九九〇年辺りからもう建設国債というのはずっと積み上げてこられて、決してゼロじゃなかったというのが一つあります。しかし、デフレ解消されなかった。さらに、公共事業の内容も昔から比べるとちょっとずつ変わってきているんじゃないか。昔は、要は道を造ればその公共事業だけでも潤いますし、道を造ったことによって経済活性化されてそれでも潤ってくるということで、要は新幹線を造ったり道を造ったりというのが、案件がありましたが、だんだんとインフラが整ってきた現代において、公共事業という、ちょっとこの、先ほど、防災というのは大変重要なんでそこは突っ込んでいかないといけないと思いますが、しっかりと経済活性化につなげていくにはある程度のボリュームを突っ込んでいかないといけないんじゃないかなというふうに思うんです。  そうしますと、やはりどんどんどんどんこの国債費の、歳出に伴う国債費の割合が増えてくる、そのことによって何か別の副作用というのは考えられないのか。そこら辺をちょっとお聞かせいただきたいのが青木先生への質問でございます。  そして、駒村先生の方に一つ御質問をさせていただきたいんですが、事前にいただいた資料を読ませていただきました。さらに、先ほどの御回答の中でも、非正規労働者の方になるべく厚生年金に加入させる方向にしっかり持っていかないといけないんだというのは、多分、何ですかね、無年金になることをしっかり防いでいかないと、やっぱり生活が、老後もしっかり消費をするというか、そういったところを確保しないといけないんだというふうに私は思うんです。やはり生活する中で雇用に対しての安定と将来に対する安心、これが確保して初めて経済というのは回っていくんじゃないかというふうに思うんですね。  そこの中で、今本当に財政的に厳しい中で年金を維持するためには、今でさえ七十五歳以上の方の中で無年金の方が約七十万人ぐらいいるという何か厚生労働省の統計というか調査があるんです。一千四百万人、七十五歳以上の方がおられるんですが、そのうちの七十万人おられて、年間百万円以下、これ企業年金も含めてですね、の方が大体半分、五五%、六〇近くおられるという、そういう調査があるんですが、そういうふうに考えていくと、その一方、一千万円年間もらっている方もおられるわけでありまして、要はそこをぱっとならして全員が百万円、これゼロから百万円の方が五五%なんで、大体百万円を全員がもらえる、要はたくさんもらっている方からシフトしていくとか、そういう工夫をする中で何とか将来の安心の年金というのを確保する、そういったような考え方もどうなのかなというふうな思いもあったりするんですが、その辺のことについて御意見を賜ればというふうに思います。よろしくお願いします。
  62. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 公共事業をし続けたにもかかわらず、なかなか景気は拡大しなかったというお話を伺いました。  これは、バブル崩壊後、確かに公共事業を打ってまいりましたけれども、その流れを見てみますと、対前年比で考えていくと、確かに打っているんですけど、どんどんどんどん少なくなっているんですね。公的資本形成の額はピークの半分じゃないでしょうか、今。でありますから、ボリューム自体を絞って絞って絞っているので、当然それはデフレ圧力デフレ不況圧力として経済に掛かったのではないかというふうに私は考えます。  二点目に、国債を余りにも発行していくと国債費が増大する、拡大をする、これによって財政はどうなるのかという御懸念がありました。しかしそれは、私が再三再四申し述べていますとおり、日銀が保有している国債分、これに対する利払い費というのは、ブーメランのように日銀の経費を抜いた残りは政府に戻ってきます。したがって、日銀の保有分と、政府というのは広い意味での広義の政府部門ですから、そこにある分に関しましては日銀と政府間の資金循環が生ずるにすぎませんので、その御懸念はないのではないかというふうに私は考えます。
  63. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 日本の二十年にわたるデフレあるいは不況というのは、やはり非正規労働者の増加、あるいは中間所得層が壊れていったことによるものではないかと思っております。そういう意味では、やっぱり日本の活力、あるいは社会の信頼関係の実は回答率を見ても、中間所得層ではかなりしっかり社会に対する信頼を持っているわけですね。極端な高所得者と低所得者は社会に対する信頼度は低いです。したがって、やっぱりいい社会をつくるためには中間所得層の復活が必要だと思っています。ただ、なかなか難しいと。  そういった中で、非正規労働者の方が非常に大きくなってきて、将来展望ができない、非常に景気に対してブレーキになっていると。そういった点から、やはり非正規労働者も、国民年金というのは非常に逆進的な、定額負担ですから逆進的です。非正規労働者に厚生年金を提供すれば応能負担になりますから、そういう意味では、再分配としても、基礎年金ももらえますし厚生年金もダブルでもらえますから、非常に良いと思います。  ただ、先ほどお話があった、既に高齢になっている人たちに対してどうするかという話ですけれども、余り事後的に緩い救済を行うというのは、これは逆に言うと年金制度に対してなかなか良くないメッセージになると思います。最終的に何十年も掛けて年金制度を切り替えるということを前提に救済的なことをやるのは一個の手だと思いますけれども、そう考えると、今七十五歳以上あるいは六十五歳以上でかなり貧困な方に対する救済はやはり限定的なものになるんだろうと。ただ、それがどのくらい限定的なのかと。今回の年金改革で入れられた低所得者加算みたいなぐらいのものでいいかどうかと。ただ、あなた、保険料払わなかったから、自己責任だからもうどうにもなってくださいというような国ではありませんから、生存権は保障しなければいけませんから、そこのぎりぎりのバランスだと思っています。  ただ一方で、高所得の年金の人も一部にいるわけですね。一世帯六百万、七百万という方もいらっしゃるわけです、中には。こういう人に対しては、やっぱり年金課税をきちんとやっていただくということ。これは年金等控除の見直しというのがあると思いますし、場合によっては、基礎年金の国庫負担の二分の一部分はこれは税財源ですから、特に高所得の方については御遠慮いただくと。その費用をもって低所得者の方の給付にしていただくというようなこともあってもいいのではないかなと思います。  以上です。
  64. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございました。
  65. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それでは、次は大塚耕平君。
  66. 大塚耕平

    大塚耕平君 民主党の大塚耕平でございます。今日はどうもありがとうございました。  私なりにそしゃくをさせていただくと、経済政策的、とりわけマクロ経済政策的にはいろいろ工夫の余地があるということを青木先生がおっしゃり、さりながら、ミクロ的には、個々の国民、とりわけ先々の日本経済を、あるいは社会を担う若い世代が経済社会保障に対する期待値を余り低めると決して政策的工夫も成功しないと、こういうことで受け止めさせていただきました。  その上で、それぞれちょっと一点ずつ質問させていただきたいんですが、駒村先生の資料の後ろから二枚目の「マクロ経済スライドの功罪」のところの「罪」の方、報酬比例部分と基礎年金マイナスの結果、年金の価値が毀損というふうに書かれているこの部分は、要するにこの数字だけ下がると年金の負担と給付のバランスが崩れて、要は負担超になるということを意味しておられるのかどうか、そしてそうであるとすると、大体今の年齢でいうと何歳ぐらいからがそうなるのかということを指摘しておられるのかというのを御教示いただきたいというのが、先生への質問であります。  それから、青木先生への質問は、青木先生のお考えはアイデアとして理解できましたので、じゃ、仮に所期の目的を達成した後、先生は中央銀行の資本金というのは、適正規模はどのぐらいと考えておられるのか。あるいは、資本金と中央銀行の国債管理政策上のオペレーションとは何か関係があるとお考えなのかどうなのか。この辺り、ちょっと感想を聞かせていただきたいと思います。
  67. 駒村康平

    参考人駒村康平君) 御質問の点でございますけれども、まずこの記述は、世代間のバランスというよりは、保険料を固定してマクロ経済スライドを掛けることによって、高齢化が進んでも年金制度財政的には破綻しないわけです。逆に言うと、財政的には幾らでも下げられますから、年金をぺらぺらにしても財政的にはもつという議論が国民会議でもあったわけですね。ちょっと待ってくださいと。幾らでも下げたら年金の制度としての価値がなくなっちゃうじゃないですかと。そうしたら生活保護ががっと広がりますよという話なので、マクロ経済スライドをエンドレス、幾らでもやってもいいという話ではない。一応政府の見通しでは、下限はありますけれども、それに対応するというのに依存してはいけないということを言っています。  ただ、世代間の問題というのは既にもう発生してしまった問題でありまして、これは専業主婦モデルで企業負担を考慮しないと全ての世代で払ったよりも二倍以上はもらえるということになりますけれども、専業主婦世帯でなく企業負担も考慮に入れると、実は一九七〇年生まれ前後で、既に払ったものともらうものの給付率は逆転現象になっているということです。  ただ、マクロ経済スライドを入れることによって、上がるはずだった保険料が抑えられますので、給付は下がるんだけれども、二五%まで行くはずだった保険料が一八%でとどまりますから、相対的には若い世代は若干得をするということは言えますけれども、もう既に世代間のその計算の前提、入れ方によっては、一九七〇年生まれぐらいから、境に払い損になっていると。  ただ、私は余りこの世代間損得論には染めたくなくて、むしろきちんと機能する、世代間損得から離れて、きちんとそれでも機能する年金をどうやって維持するのかと、このぎりぎりの議論をやっているところでございます。  以上です。
  68. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 中央銀行の資本金、その適正規模についての御質問でありました。  中央銀行の資本金の適正規模、バランスシートの大きさというのは、先験的に決められるものではないと私は思っています。それは、インフレの水準とか長期金利の動向、いわゆる民間経済の動向が決めるものだと思っています。ある程度先にこういう規模があって、それまであと少しだねとか、それを過ぎたら困るよという話ではなくして、規模が拡大したところでインフレも起こらない、長期金利も上昇しない、そうした民間経済悪影響が全くないのであるならば、それは適正規模の範囲内だというふうに私は考えています。  以上です。
  69. 大塚耕平

    大塚耕平君 元々中央銀行員なものですから、ちょっと感想だけ申し上げさせていただきますと、最終的に先生がおっしゃるような方法で、あるいはそういうことを志向している方々もおられるわけですから、何が正解かはやってみないと分からないので。仮に収まった後、おっしゃるように徐々に国債をどういうふうに、じゃマーケットに戻していくか。これ、やり方を間違えると藤巻さんの御懸念のようなことになるわけで、そうすると中央銀行の保有国債、デット・エクイティー・スワップみたいなことをやるかやらないかという話なんですね。だから、これはそのとき多分議論しなきゃいけない話になると思います。もういい悪いの問題じゃなくて、そっちの方向に動き始めちゃっていますから。  これは国会でも議論しますけれども、是非、アカデミーの世界でもそういうことについていろいろと御議論を深めていただければ有り難いということを申し上げて、私は以上で結構です。
  70. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 続きまして、山田俊男君。
  71. 山田俊男

    山田俊男君 両先生、どうも大変ありがとうございました。  私はちょっと質の違う話になるかもしれませんが、まず青木先生、それから駒村先生、両方にお聞きします。  最初に青木先生、先生の経済学説の分析の中で、これは誰が言ったかということはおいておきまして、瑞穂の国の資本主義というこの考え方というのは、これはどういう範疇に入るのかというのをお聞きしたいなと思ったんです。私はこの方向に、方向なり言葉に大賛成なんです。  ところが、今は御案内のとおり、TPPの問題がありましたり、これはもう内容はそれこそグローバル企業のいろんな形の規制緩和の要求だったり自由競争の要求だったりしているわけです。自由な金融活動、それからそのことによる企業活動の活性化、それからそのことによって相当の利益を生むと、このことについては私も否定しないわけでありまして、そういう方向へ進んでいくということについては、ましてやスムーズな移行をしていくということであれば異議はないんですが、規制改革であったり、それから競争できる環境整備をやるということに相当力が入っているわけです。デフレ克服ということですから、思い切ってそれをやらなきゃ進まないという御判断なんだろうというふうに思います。  一方、翻って、今、御案内のとおり、新聞紙上でTPPの問題と関連させながら農業などでもいろんな議論がおありなんで、農業なんかは、農村なんかは、もうその方向をどうも邪魔するんだから競争を入れなきゃいかぬとか、それから小さい農家や中山間地の条件の悪いところは競争を入れて何とか大規模化できたり競争力を持てないかという議論があるわけですね。もちろん、それに対する一定の財政支出もちゃんとやっていくよということであるんですけれど、しかし、今いろいろ言われている成長産業をどう強化するか、成長戦略をどう展開するかという立場からすると、限定的なものになっているんではないかというふうに思うんです。  ところが、こうしたことが、この一連の規制緩和や規制改革が、本当にこのことで地方や農村が元気になるのかということを大変心配するわけでありまして、いろんな形での安定した地域や心温まる家族農業みたいな話、ちょっと情緒的に言っていますが、そういう部分は失ってしまうんじゃないかという気がするんですね。  今、農村部だけじゃなくて都市部におきましても、御案内のとおり、食品偽装、メニュー偽装、これびっくりするくらい一気に出ているわけですね。元々あったんだけれど、今出ていると。それから、考えてみますと、思い出しますのは、例の建築確認と検査の民間開放というのがあって、御案内のとおり、あのときは耐震偽装だったですね。あれも、もっと規模が大きく、すごい話だったんですが。要は、一面ではこれ、モラルという分野の問題が出てくるわけですね。もっと自意識があって、自覚があってもいいんじゃないかというふうに思うことはいっぱいあるんですが。  まとめますが、どうも、瑞穂の国の資本主義、これ、青木先生はどんなふうに受け止められるかなと、どっちの範疇に入りますかということをお聞きしたいんです。
  72. 青木泰樹

    参考人青木泰樹君) 私も瑞穂の国の資本主義ということは聞いたことがあります。私は非常に大賛成ですね。  どこが違うか、経済学説のどこに入るかというと、これは実は経済社会学という分野に入ります。経済社会学というのはどういうことかと申しますと、主流派経済学世界というのは、同質的な合理的個人、簡単に言いますと、一つ経済社会の中で、みんな同じ白い服を着ていただいて、同じ白い仮面か何かを付けていただいて、同じ性能のパソコンを頭に組み込んでいただいて、そして同じデータ、これを入れる、そうした社会、そうした経済社会を考えるのが主流派経済学、新古典派世界です。したがいまして、その中には親もいなければ子もいない、親戚もない、社会関係も全くないのです。しかし、あるのは効率という概念だけです。効率という概念は、実はグローバルな概念なんですね。どこへ行っても効率なんです。世界中どこへ行っても効率は同じ概念なんです。  しかしながら、公正の概念とか地域社会をどうすべきかという話になってきますと、その経済論理の別の論理が必要になってきますね。社会学の話、政治学の話、地域の共同体の話、様々なことが入り組んできます。そうしたことをトータルに考えてバランスを取っていくというのがいわゆる瑞穂の国の資本主義の基本理念だと私は考えております。  以上でございます。
  73. 山田俊男

    山田俊男君 ありがとうございました。  駒村先生、多様な社会意識、国民意識の分析をいただいたわけですが、先生、この今日の資料には載っていないんですが、都市と農村とか、それからさらには、職業別の社会意識みたいなものは、大分これはやっぱり格差が出てきているんではないかというふうに思うんですが、先生、一般的に、こうした日本の状況を見ておられて、どんなふうに受け止めておられますか。
  74. 駒村康平

    参考人駒村康平君) ありがとうございます。  かなり今の青木先生の議論にもつながる部分もあるかと思います。今回は時間も余りございませんでしたので、余り複雑にクロスをしませんでした。  私の研究の分野経済学社会保障分野も、やはりどっちかというと、リベラルデモクラシー的な大きい政府とそれから新自由主義的な小さい政府というところの議論になっていますけれども、もう一つ、やっぱり地域、地方の助け合いといったものはもう一回考えなければいけないと思っています。その中には、恐らく今の議論にもつながるわけですけれども、極めて抽象的な、自分のことしか考えない合理的な個人ではなく、そこには人とのつながりを大事にするものが強く生きているんではないかと思います。実は経済学の中でもそこについては物すごく反省があって、いろいろ実験をやると、人間は実は自分のことだけ考えて生きているわけではないと、非常に他人に対して配慮をしているんだと、つながりを大事にしているんだと。  ところが、市場経済学でいくとどこも同質でいき、そして、農村が衰退するのはそこに住んでいるやつが悪いんだと、こっち来ればいいんじゃないかという議論で終わりになっちゃうわけですね。その結果、失われる、もう何の特徴もない国になっちゃうと思います。そういう意味では、私は、やっぱりもう一つの軸としてはこの大きい政府もある程度必要、部分的には必要、そして市場の活力もある程度必要だと。  しかし一方、やっぱり地域のつながりというものが残っている。それをいかに、かつてもっと良かったものがあったわけですけれども、これはなくなっているわけです。市場と大きい政府の中でなくなったものを復活させる手掛かりが地域にあるんじゃないかと。実はもうここのところずっと地方のそういう取組を見せていただいておりますので、そういう切り口で分析すると、多分もう一つの日本の可能性が見えてくるのではないかと思います。そういう意味では、先ほどの瑞穂の国の資本主義にも似ている、特徴のある資本主義国家の可能性があるんではないかと思っています。これを潰してはいけないと私は思っています。  以上です。
  75. 山田俊男

    山田俊男君 ありがとうございました。
  76. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 他に御意見もないようでございますので、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  両先生に一言御挨拶を申し上げます。  大変長時間にわたりまして貴重な御意見をちょうだいいたしまして、有意義調査を終えることができました。ありがとうございました。  両先生のますますの御活躍を祈念申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会をいたします。    午後三時二十九分散会