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2013-11-21 第185回国会 参議院 国家安全保障に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十五年十一月二十一日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  十一月二十日     辞任         補欠選任      小川 敏夫君     長浜 博行君      和田 政宗君     真山 勇一君      井上 哲士君     山下 芳生君  十一月二十一日     辞任         補欠選任      藤末 健三君     牧山ひろえ君      増子 輝彦君     江田 五月君      福島みずほ君     吉田 忠智君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中川 雅治君     理 事                 佐藤 正久君                 島尻安伊子君                 西田 昌司君                 芝  博一君                 福山 哲郎君                 石川 博崇君     委 員                 岩井 茂樹君                 宇都 隆史君                 江島  潔君                 北村 経夫君                 上月 良祐君                 佐藤ゆかり君                 二之湯武史君                 松山 政司君                 三宅 伸吾君                 江田 五月君                 大野 元裕君                 神本美恵子君                 長浜 博行君                 牧山ひろえ君                 矢倉 克夫君                 山本 香苗君                 小野 次郎君                 真山 勇一君                 仁比 聡平君                 山下 芳生君                 中山 恭子君                 吉田 忠智君    事務局側        常任委員会専門        員        五十嵐吉郎君        常任委員会専門        員        矢嶋 定則君    参考人        日本経済研究セ        ンター・グロー        バル研究室長   春原  剛君        弁護士        東海大学実務法        学研究科教授   落合 洋司君        元毎日新聞政治        部記者      西山 太吉君     ─────────────   本日の会議に付した案件安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案  (第百八十三回国会内閣提出、第百八十五回国  会衆議院送付)     ─────────────
  2. 中川雅治

    委員長中川雅治君) ただいまから国家安全保障に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日までに、小川敏夫君、和田政宗君、井上哲士君、藤末健三君、増子輝彦君及び福島みずほ君が委員辞任され、その補欠として長浜博行君、真山勇一君、山下芳生君、牧山ひろえ君、江田五月君及び吉田忠智君が選任されました。     ─────────────
  3. 中川雅治

    委員長中川雅治君) 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人方々を御紹介いたします。  まず、日本経済研究センターグローバル研究室長春原剛参考人でございます。  次に、弁護士東海大学実務法学研究科教授落合洋司参考人でございます。  次に、元毎日新聞政治部記者西山太吉参考人でございます。  この際、参考人方々委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で、春原参考人落合参考人西山参考人の順に御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を受けることとなっておりますので、御承知おきください。  なお、参考人の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず春原参考人にお願いいたします。春原参考人
  4. 春原剛

    参考人春原剛君) ただいま御紹介にあずかりました春原です。よろしくお願い申し上げます。  本日は、日本経済研究センターグローバル研究室長シンクタンクの一員として、私の個人的な見解を述べさせていただきます。  私は、日本版NSCのモデルとなっていると言われておりますアメリカNSCについて、十年以上ワシントンに駐在した経験をベースにいろいろ研究をしてまいりました。昨年、アメリカのCSISというシンクタンク一緒にバーチャル・シンクタンクというのを今運営しているんですが、そのときにこういう報告書を出しました。これは、簡単に言うと日本版NSCに関しての提言であります。そうした経緯もあって、今日この場にお呼びいただいたものだというふうに理解しております。  そういった経緯を踏まえて、まず、アメリカNSCがどういった歩みをたどってきて今どういった問題を抱えているかというところからちょっとお話をさせていただきたいと思います。  御案内のように、NSCというのは、一九五〇年代にトルーマン大統領、広島、長崎に原爆を投下した、決断した大統領としても有名なトルーマンさんがつくられたんですが、実は、その動機というのは、その前の大統領ルーズベルトさんのかなり専横主義的な政権運営危機感を感じたということで、実はこれ大事なポイントなんですが、NSCは、ですから大統領という絶対的な権力の暴走を阻止するような性格を帯びる組織として設立されたということが言っていいんじゃないかと思います。  その後、そのトルーマンからアイゼンハワーに至るに至って、機関化、つまり組織としてだんだん充実していきまして、ケネディさんになりますと、マクジョージ・バンディというセキュリティーアドバイザー安保担当補佐官が出て、非常に側近型のアドバイザーとしてかなり効率的に活動したというふうに言われております。その後、御案内キッシンジャーさん、これはニクソン政権です。それからブレジンスキーさん、これは民主党のカーター政権です。いずれもかなり独善的、カリスマ性も帯びた独善的なアドバイザーということで、NSC存在そのもの権限がこの時期に一気に拡大しました。  その後、実はレーガン大統領になって、あのロン・ヤス同盟で有名なロナルド・レーガン大統領のときに、皆さん御記憶かと思いますが、イラン・コントラ事件というのがありました。これは、NSCが恐らく、恐らくというか多分決定的に、アメリカ政府機構の中でぬえのような巨大な権力機構になってしまって、かなり組織として、その前はキッシンジャーブレジンスキーというトップに立つ補佐官独善性だけが問題視されていたんですが、イラン・コントラ事件NSC組織として独善性を増したというふうに言われております。  その後、日本でも駐日大使としておなじみになりましたハワード・ベーカーさんという方がレーガン大統領に請われて首席補佐官になって、私は何度もベーカーさんにこの話は聞きましたが、かなりホワイトハウスでNSC改革というのを断行しました。簡単に言うと、シビリアンコントロールを徹底して独断専行をさせないようにするということをやった結果、そのときに一緒NSC改革を努めていたのがブレント・スコウクロフトという人です。この人が次の大統領、お父さんの方のブッシュさんの安全保障問題の担当補佐官になって、アメリカの、皆さんもよく御案内ハーバード大学の例えばジョセフ・ナイ教授なんかにも言わせても、このブレント・スコウクロフト補佐官が恐らくアメリカNSC歴史の中で最も理想的な補佐官のスタイルに近いんじゃないかというふうに言われています。  残念ながら、その後、クリントンさんが来て、経済重視でしたので、NSC権限というか、補佐官そのものもかなり権限というか権力が落ちます。子供の方のブッシュさんになると、これも御案内同時テロがあり、アフガン、イラク戦争があって、NSCというのが、コンドリーザ・ライスさんという人が補佐官でしたが、そのときラムズフェルドという国防長官、コリン・パウエルという国務長官がいて、日本の政界でもよく言われますが、高層ビルの谷間にたたずむラーメン屋さんみたいな存在でしたので、NSCがかなり形骸化したと言っていいんじゃないかと思います。  今現在、オバマ政権に至ってはどうかというと、これは今、現在進行形ですので歴史的な評価をするのは避けますけれども、かなりブッシュ時代傾向を引きずっているのではないかというふうに思います。  今のことをまとめますと、NSCに関して私が思うに、六つのカテゴリーができると思います。創成期トルーマンケネディ成長期ニクソンカーター肥大期レーガン再建期父ブッシュ迷走期クリントン低迷期子ブッシュオバマ政権と。こういった歴史をたどっているわけで、これを見ても、NSCというのは非常に難しい、運営は実は難しい面もあるということは強調しておかなければいけないと思います。  ただし、使い勝手は非常にいい組織でもありますので、後で申し上げますけれども、日本の今の置かれた状況においてはNSCというものが私は必要ではないかというふうに思っております。  必要な理由として幾つか挙げられますけれども、まず第一に、国際情勢変化です。御案内のように、中国の軍事的な台頭、北朝鮮の事実上の核武装化中国韓国の連携、あるいはロシアの南下政策等々、いろいろ国際情勢変化をしております。冷戦が終わり、ポスト冷戦後という世界に入って今非常に世界が流動的になっておりますので、これに機敏に対応する国家運営システムをつくらなければいけない。  第二に、これは同じことというか裏表なんですが、アメリカ一極支配体制がやはり終わりつつあるだろうということです。さはさりながら、まだ唯一スーパーパワーでありますけれども、かつてのような、冷戦が終わったときのアメリカ唯一世界に君臨する一極支配の国であるという時代はもう終わったと思います。特にそれはイラク戦争後加速化しているわけでありまして、今、さきのシリア空爆をめぐってオバマ大統領がしり込みした例を見ても分かるように、ややもすると、アメリカの伝統的な孤立主義にまた入り込むんじゃないかと。ベトナム戦争の後にそういう傾向が少しありましたが。ということは、対外干渉をやめるということですので、俗っぽいことを言いますと、警察官がいない世界になると。こういう中では、やはり自らが自警の念を持たなければいけないというのは当然の流れであろうと。  そのアメリカ一極支配の終えんということと裏表なんですが、三番目の理由としては、日米同盟をそういう時代だからこそある程度やはり機能的に運用しなければいけないだろうと。強化とは申しません。機能的、効率的に運用する。そのためには、NSCという組織を、今運用しているアメリカ同様の組織日本にも持つことがいわゆる片務同盟と言われる体制の是正にもつながるんじゃないかというふうに思います。  あともう一つは、国家としてのガラパゴス化を回避すると私は言っているんですが、これは何を言いたいかといいますと、イギリス、フランス、もっと言いますと、アジア中国韓国アジアの諸国、皆、言葉は違いますが、NSCのような組織を今つくっております。これはなぜかというと、G8、G20を見てもお分かりのように、今の外交首脳外交です。首脳直結外交ですので、首脳が常に自らの哲学と政策を具体的にインプリメントできるアイデアを持って相手国と接しない限り、これは国際競争力にさらされると負けてしまいます。ということで、このまま日本NSC的な組織を持たないとすると、国家としてガラパゴス化ということに向かってしまうのではないかということです。  最後に、自己責任国家の役割という話をさせていただきたいんですが、今、皆さんは最近、生々しい事件だったのでアルジェリアの日本人人質事件をよく口にされますが、その昔、ペルー日本大使館人質事件というのがありました。あれは相当苦労して、当時の橋本龍太郎首相が、御案内のように、アルベルト・フジモリ大統領とわざわざカナダまで行って会ったりして何回も情報を求めたわけですが、結果的に申し上げると、フジモリ大統領日本国政府にきちんと情報を与えずに突入作戦を決行したと。結論的に言うと、日本人は少なくとも一人も命を落とさなかったということで良かった良かったという話になっていますが、あれはあくまで結果論にすぎないと思います。  当時、随分流布されていたうわさは、CIAアメリカ中央情報局ペルー秘密警察と相当つながっていて、CIAは事前にその突入計画内容を知っていたと。しかるに、我が国はそれを一切、ペルーはもちろんのこと、同盟国であるアメリカからも教えてもらえなかった。それはなぜか。それは、NSCのような組織がなく、かつ秘密がだだ漏れになるという日本の特質をCIAが懸念して教えなかったんだというふうに言われております。信憑性は完全に確認したわけではありませんので定かではありませんが、それが通説として今かなり言われております。  ということで、今、日本は、世界中にグローバルな展開を企業も政府もそれぞれ個々人もやっているわけですから、日本国憲法がうたう国民の生命と財産を守るためには、やはり情報をきちんといろんな形で共有するネットワークをつくらなきゃいけない。そのためにも、やはりNSCというのは必要ではないかというふうに思います。  最後に、お時間もありますので、関連の案件として、やはりこれから非常に留意しなければいけない点というのは、今、当然、焦点になっております秘密保全の問題、これは、先ほど申し上げたように、秘密を守る体制というのが私は必要だと思います。近代二十一世紀の国際情勢において、それは国家運営に必要欠くべからざる要素だと思いますが、一方で、民主主義の根幹を成す言論の自由を守る、秘密保全との関係言論の自由を守るということがいかに、どういうふうに担保するのか、そこのバランスをどういうふうに取っていくのかということを考えなければいけないと思います。今、憲法改正論議も自民党さんの方では進んでいるというふうに理解しておりますが、例えば憲法二十一条をどうするのかとか、そういうことも含めて丁寧で深い議論を是非していただきたいと。  アメリカの例を申し上げますと、アメリカには合衆国修正憲法第一条、英語でファーストアメンドメントと言いますが、というのがあります。これは言論の自由です。例えば、最近世間を揺るがしたアメリカNSAスパイ機関NSAのエドワード・スノーデン氏が亡命していろんな情報を流していると。この契約違反アメリカのそのファーストアメンドメント合衆国修正憲法第一条がどこまで守れるのかという議論は必ずアメリカでします。  スノーデンさんのケースでいいますと、私の私的な見解を言うと、最初に国民のプライバシーを侵害しているということで、これは恐らくかなりファーストアメンドメントが守る範囲だったと思うんですが、その後、アメリカ外交活動についていろいろ機密を漏らしていますので、この辺になってくるとアメリカ世論もだんだん、むしろ、ファーストアメンドメントスノーデンを守れというよりは、彼は国家機密を漏らした裏切り者だという世論になっている。実際、今のアメリカのメディアを見ても、スノーデンを擁護する議論はだんだん少なくなっています。  かくのごとく、この二つの問題というのは非常にバランスを取らなきゃいけない問題なので、皆さんにおかれましては、非常に慎重かつ内容の濃い議論をしていただきたいというふうに思います。  それから、NSCをつくるに当たって、先ほどイラン・コントラ事件を言いましたが、これで暴走させたのはオリバー・ノースという中佐ですが、軍人が中心となったスタッフでした。これから自衛官がますます活動の領域を日本国でも広げていくと思われますので、それに見合った形で、新しい文民統制シビリアンコントロール体制をいかに充実させていくかと、これまで以上にですね、こういった観点に関しても留意をお願いしたいと思います。  最後に、インテリジェンスの問題が当然NSCには表裏一体で含まれるわけでありまして、今、秘密保全法焦点になっておりますが、この後いずれ、日本インテリジェンスコミュニティーと言われる組織の再編なり強化なり統合なり、いろんな議論がこれからあろうかと思います。これに関しても、先ほど申し上げた言論の自由、報道の自由との兼ね合いを踏まえまして、バランスの取れた議論をやっていただきたいと思います。  以上で、取りあえず私の冒頭の発言、終了させていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  5. 中川雅治

    委員長中川雅治君) ありがとうございました。  次に、落合参考人にお願いいたします。
  6. 落合洋司

    参考人落合洋司君) 弁護士落合洋司です。  私は、今年で二十五年目になる法律家で、その前半の十一年余りは検察庁仕事をしておりました。検察庁にいる当時には、平成七年、八年には皆さん御存じオウム真理教捜査東京地検公安部検事として従事をしておりましたし、それ以外にも、特捜部事件を担当したりとか様々な事件を担当していた、そういう刑事実務に携わっていたと。そういう立場から、今回の審議中の安全保障会議設置法等の一部改正案というものについて気が付いたことを若干申し上げたいというふうに考えております。  皆さん検事という仕事はどういう仕事をしているかというのは当然御存じだと思うんですけれども、やはり情報が非常に重要な仕事なんですね。ですから、いろいろな情報というのを捜査の中で得ていくと。そういう中で、得る先というのは主にやっぱり警察であることが多いですけれども、警察以外の、例えば海上保安庁とか、あるいは厚生労働省麻薬取締官事務所ですとか、そういったいろいろな各方面から情報を上げてもらうと。自らもその分析をしていくと。  そういった場合に、なかなか情報というのは上がってこない、思うようにですね。耳触りのいい、都合のいい情報というのは検察庁の方に結構上がってきますけれども、いわゆるマイナスの情報といいますか、やはりそれをきちんと検討しておかないと将来結構大変なことになるというような情報というのはなかなか上がってこないもので、そういう情報をいかにしてきちんと掘り出していくかということが検事検察庁における常に抱えている課題であると。そういったところで失敗をすると、公判段階になって非常に大きなそこが問題になってくると、後から実はこうでしたというふうな話が出てきて事件が迷走していくということが起きがちなんですね。  そういったことを私自身非常に経験をしているものですから、そういった観点でこの法律案というのを拝見した場合に、判断をするといいますか、物事判断していくという体制は非常に充実したものになるように作られているということを感じるんですけれども、ただ、その判断をする上での必要な情報といいますか、そういったものをきちんと得ていく、そこについて、それを目指して作られてはいるんですけれども、果たしてそれが実際に現実問題としてなった場合にはどうなんだろうかということについて、やっぱり懸念は感じざるを得ないというのが率直な印象なんですね。  検察庁でも判断する人というのは結構いるわけですよ。主任検事がいて、事件の、例えば次席検事とか検事正とか、大きな事件になると上級庁のいろんな幹部の検察官がチェックをしていくと。ですから、判断をするということについては非常に人を得てはいるんですけれども、元々の情報というものが正しくないとか、あるいはゆがんでいるとか、必要な情報が欠落しているというふうなことになった場合には、やはり正しい判断というのは得られないということが非常に自分自身としても感じているところですね。  いろいろ資料を拝見していると、いわゆるこれは、情報コミュニティーというところから情報というものをいかにして得ていくかということについての問題意識というのが随所に出ているんですけれども、私自身のやっぱり経験を踏まえると、なかなか情報というものが、出るべきものが出てこないということについては、もう大きく分けて恐らく三つほど理由があるだろうと。  一つは、情報コミュニティーといいますか、情報を持っているところというのは、やっぱりこれ、情報武器なんだと、武器である以上は安易に外に出してはいけないと、安易にそういった武器を出すことによって利用されたくないという意識がやっぱり働きがちなんですよね。  例えば、私が経験したオウム真理教での捜査のときに、警視庁の公安部刑事部というところが非常に大きく事件をやっていた、刑事部刑事部公安部公安部で、得た情報というのをなかなか相互に交換し合わない、検察庁に対してもなかなか上げてこないということで、そういった警察の内部の部の相互においてもなかなか情報というのを出してこないという、そういうふうなことを非常に強く経験したことがありまして、そういう外に出さないという一つの習性があると。  あと二番目としては、曖昧な情報を出してミスリードしたくないと、物事をですね、という、そういう心理が働く面があると思うんですね。情報というのは、確固たる情報もあればやっぱり何となく曖昧な情報もあると。そういう場合に、曖昧な情報を出すことによって自分たちに不利益な方向で物事が運ぶのは避けたいという心理がどうしても働くんですよね。  あと三つ目としては、これはやっぱり警察とかそういった捜査機関には特に強いですけれども、情報源を守りたい、やっぱり協力してもらって情報を出してもらっているそういった情報源を守り、今後の情報収集に支障を来したくないと、やっぱりそういう心理が非常に働きがちなんですよね。  そういったなかなか出てこない情報というものを出していくということについては、やっぱり今現在の現状としては、非常に迷うという場合には、出す先に対する人への信頼といいますか、人なり組織なりに対する信頼と。日ごろからの信頼関係というものに基づいて、良好なコミュニケーションを保っていて、そこで、いや、これだったらまあ出してあげてもいいんじゃないかとか、あるいは、出さないことによってその相手の人といいますか、自分から情報を取るべき立場にいる人といいますか、そういう人に迷惑を掛けたくないというふうなそういう心理が手伝って情報を出していくという、そういうふうになりがちですよね。  私も検察官をやっているときには、なかなか警察の方が建前上は情報というのは出してくれないところを、日ごろから信頼関係なりコミュニケーションを保って、こちらもいろいろな意味で協力をしてあげる、いろいろ親切にしてあげる、情報を出して教えてあげるというふうなことをすることによって、検事さんに迷惑を掛けたくないし、そこはちゃんと言いますという形で情報をもらったりということで非常に役立ったというふうな経験が結構あるんですけれども。やっぱり、そういう人と人との関係信頼関係というものがあってこそ情報というものは出てくるという、やはりそこは避けては通れないところではないかというふうに感じております。  そういった観点でこの安全保障会議設置法等法律案を見た場合、私の方で一つやっぱり懸念があったのが六条の関係で、各省庁は情報提供義務を負っているんだという、そういう規定になっていると。それについて、会議からの情報提供要求に対して各省庁が意図的に情報を提供しないようなことはそもそも想定はしていないというふうに、答弁ではそういうふうな答弁になっているんですけれども、ここはやはり、なかなかそういうふうに建前どおりに物事が進むんだろうかというふうには思わざるを得ないと。  もちろん、国家の重大なことが起きているということですから、そういった意図的に情報を提供しないということがそんなに頻繁に起きるとは思いませんけれども、いろんな思惑でそれぞれ情報コミュニティーというものがそれぞれあって、その中でこの情報というのは果たして出していいんだろうかというふうなことで、出てこないということがやはり現実に起き得るのではないかということは、私自身経験からしても懸念はされるところであります。  その関係で、法律の改正案を見ますと、国家安全保障局というものがつくられて、そこが一つの核になって物事を進めていくということになっているようなんですけれども、別にけちを付けるつもりはないんですけれども、そういった国家安全保障局というものが果たしてどれぐらい機能して情報というものをきちっと収集をして、収集した情報というのを取り扱っていけるのかということについてもやはり懸念は抱かざるを得ないと。  情報は、やっぱり上げようか上げまいかというふうなときに、先ほどからお話ししているように、人と人との信頼関係というのがやっぱり非常に重要だと思うんですね。それを国家安全保障局だから上げるとか、なかなかそういうふうに建前どおりに物事は進まないと。上げる方としても、できるだけステータスの高い人に上げることによってきちっと処理してもらいたい、配慮してもらいたいという、そういう心理が働きがちだと思うんですね。ですから、その辺りで、国家安全保障担当総理補佐官ですか、というそういう方が置かれるというふうになっていますけれども、やはり情報コミュニティー立場からすると、そういった内閣官房長官なり総理、首相に直結している人に対して情報を上げていきたいというふうにかなり思う場面というのがあるんじゃないのかなというふうに感じるんですね。  ですから、その辺りの役割分担というのがどういうふうにされるかというのが必ずしも明確にはまだ決まっていないようですけれども、そういった情報コミュニティーの特性といいますか、そういったところについてよく配慮して、そういった役割分担もきちんと明確にされた上で、日ごろから良好なコミュニケーションというものを情報コミュニティーとの間で保っていくと。そういう中で、日ごろからきちんと情報収集に励んだ上で、緊急、危急のときには出すべき情報をきちんと上げてもらうという体制を取る必要が非常にあるのではないかというふうに私自身は感じております。  今日は秘密保護法の話ではないので、それについては特段大きくは触れないんですけれども、私自身のやっぱり経験に照らしても、情報というのは、情報を提供する相手が、情報を漏らしたら厳罰にされるからじゃ提供しましょうかとかという、なかなかそういうものではなくて、やはり相手がきちんと情報を管理してくれる、きちんと適正にやってくれると、やっぱりそういう信頼関係があってこその情報提供だろうと思うんですね。ですから、そういった観点で、処罰、厳罰というふうなことにとどまらず、そういう情報をきちんと信頼関係の中で得ていくという体制を取っていただくということが非常に今後重要なのではないかというふうに感じております。  まあちょっと実務家の話ですのでどうしてもそういう実務的な話になってしまうのですが、今感じていることをお話ししたという次第であります。  御清聴ありがとうございました。
  7. 中川雅治

    委員長中川雅治君) ありがとうございました。  次に、西山参考人にお願いいたします。
  8. 西山太吉

    参考人西山太吉君) どうも、西山でございます。どうぞよろしく。  私は、このNSCというときにいつも思い出すことが一つあるんですね。それは、沖縄返還交渉のアメリカ政策立案の原動力になったのがこの国家安全保障会議で、今さっきおっしゃったようにニクソンのときですけれども、一九六九年五月二十八日に対沖縄返還政策というのを、これは本当の極秘なんですけれども、作って、それに基づいてもう一糸乱れぬ体制をしいて対日交渉に入ったんです。これ、国務省、国防省、全部超えてメモランダム十三号というものを作って、それに基づいて国務省も国防省もホワイトハウスも結束して当たったと、それはもう全く見事な機能を果たしたという、それをすぐ私は思い出すんですね。  それは、一九六九年中に俺たちが今から言うことを全部のめと。一九六九年の年末までに全部俺たちが今から言うことをのまないと一九七二年の沖縄返還にはオーケーしないよという、第一に核の問題、第二は基地の自由使用、第三は対米支払、この三つをきちっと作って、一糸乱れずそれこそ日本に迫ったわけであります。  日本はもうそのときに、大蔵省、外務省、全く、それから密使ですね、こういう外交というのは私は恐らく世界史上例のないような外交だったと思いますけれども、密使が核をやる、財政・経済問題は全部大蔵省がやる、外務省は一言も交渉に入れない。そして、片一方の基地の自由使用の問題だけ外務省がやると。もう各ばらばらで意思の疎通なしにやっていくわけです。そのために、アメリカは一糸乱れぬ、一致団結してやってきますから、こういう作戦、こういう作戦、こういう作戦という、それぞれ作戦計画を立てるけれども、全部一元的に後でもう一回練り直す、もう一回やると。これで勝てるはずがないんで、結局、一九六九年中に対日要求をはっきり言えば全部のまされてしまったと。  そういう経過を私は、それが今日の密約につながっているわけで、結局、一九六九年中に事実上膨大な要求をのまなくちゃいけないものだから、七二年までに返還しなくちゃいけない、時間がないわけですからもう片っ端から密約していく、そういう状態を私は見たことがあり、聞いたこともあるし、まあ勉強したわけですけれども。  そういうものに照らして言えば、今度の国家安全保障会議というものが十全に機能すれば、それはすばらしい威力を発揮します。これは、今までのような外務省、防衛省あるいはまたその他の省の縦割りというものを克服して、きれいな調整能力を発揮するという点、そういういいところが発揮されれば私はいいと思います。  ただし、私は、現在の状況を見ますと、必ずしもそれは楽観を許さない、必ずしも全部ウエルカムじゃない。というのは、なぜかというと、今非常に転換期なんですね、日本外交政策は。  御存じのとおり、アメリカは中東政策にある程度大きなミスリードして、イラクからも撤退した。撤退したけれども、今年になって七千人死んでいますよ、イラクは。完全な失敗です、これ。何のためのイラク戦争だったのかと。日本は全部加担しました。参加じゃなくて、応援じゃなくて、加担しているんです、航空自衛隊は。そういうこともあって、失敗した。アフガンのものも二〇一四年から撤退する。そのエネルギーを全部東アジアに持ってくる。そして、中国と東南アジアとの対立関係を利用して東南アジアに食い込んでいくと。アメリカの国際政治経済の主導権を再構築するという最後の戦略に出てきたわけです。  そうすると、東アジアですから、まさに日本の協力がなくちゃこれ実行できないんですよ。アメリカは十年間に三十六兆もの国防費を削減しなくちゃいけない。それこそかつてのような、二〇〇〇年当時のような状況じゃなくて、今の二〇一三年という年はもう莫大な財政赤字、一千兆を超える赤字を抱えて、国防費をどんどんどんどん減らしていかなくちゃいけない。減らしていきながらも、同時に、グアムを中心にして東アジアの主導権を握らないかぬという二律背反的なような要因を持っているわけで、そうすると日本の絶対的な協力が要るんですよ。  そうすると、アメリカという国は、政策を東アジアに全力を集中してくると同時に日本の協力を得なくちゃいけないという、このダブった一つの状況が発生してきているわけで、そうすると、日本がどういうふうに出るかということは、アメリカのこの空海統合戦略という、最後の戦略と言われている戦略が成功するかどうかというのは、ある程度鍵を握っている一つの大きなファクターは日本なんです。そういう非常に転機に立っているときにこの国家安全保障会議がスタートすると。  そうすると、私が申し上げたいのは、アメリカというのは、ある意味では、日本情報を盗聴しながら、聞くところは、自分たちのメリットになるような情報は盗聴している、同時に、自分たち情報は、自分たちの協力を引き出すような情報日本に出してくるという形になってくるんで、そうすると、情報が必ずしも円滑に交流しないんじゃないかという一つのおそれがある。アメリカは追い詰められていますから、この作戦をどうしても成功させなくちゃいけないんです。そのために日本の協力は絶対要るという視点から情報を出したり引っ込めたりするというおそれがあると。  それからもう一つは、日本の自衛隊とアメリカの在日米軍というのは、もうかなり共同体化して一体になって、指揮系統も統一化されつつあるし、あるいはまた、基地を共有するというものもどんどん進んでいますね。そうすると、日米の軍事共同体のようなものができていますから、この国家安全保障会議というものを舞台にして、日米の軍事力の共同体化というのが一層促進されていくという。  そうすると、日本の主体性が果たして本当に発揮できるかどうかという非常に重大な問題が出てきますね。そういういろんな、これがうまく機能していって、外務、防衛の分割したようないろんな利害錯綜をきれいに調整して統一的な機能をどんどん出していくといういい面が出ればいいんだけれども、必ずしもそのようなわけにはいかない。  アメリカ日本に対する期待は非常に大きい。例えば沖縄の海兵隊をグアムに持っていくという、これグアムに持っていきたいのはアメリカなんですね。日本が撤退しろと言う前にアメリカが欲しいんですよ。グアムこそが今度の空海統合戦略のハブなんです。そうすると、あそこのインフラ整備というのは、アメリカの国防総省の予算、なくなってきている。そうすると、日本の海兵隊の移駐費というのはグアムのインフラ整備にどんどん向けられていくと。もう既に三千億は計上されているけれども、それだけじゃなくて滑走路まで日本が造るというふうになっちゃう、グアムの。今度の空海統合戦略の、今言ったように、拠点はグアムですから、グアムのインフラ整備は日本がやらなくちゃアメリカはできないような状態になっている。そこまで日米同盟というのは深く入りつつあると。  そうすると、その情報というのは、アメリカ自分たちの都合のいい情報は出すけれども、アメリカにとって日本の協力を最大限に引き出すためには不利な情報を出さなくなるというおそれがあるということですね、そういう問題を私は提起したいと思います。  ただ、私は、これを契機に、一つの大きなターニングポイントに立っているときに一つ言いたいことは、中国と朝鮮半島というこの二つが日米同盟の抑止の対象になって、そしてその緊張関係を非常に、逆にあおることによって日米同盟を正当化するという、そういう動きが非常に急進的に出てきていると。これ、必ずしも日本のナショナルインタレストにとってどうだろうかと。日米同盟というものを適正に、日本の主権性を維持しながら日米同盟をうまく機能させていくということであるのならいいけれども、逆に、その日米同盟を聖域化するために、要するに外務、防衛官僚というものを中心にして聖域化し過ぎるために、逆に中国、朝鮮半島との緊張関係をエスカレートするようなプロパガンダをどんどんしている。  これが今の、非常に大きく私は警戒しなくちゃいけない一つの動きだと。適正に、緊張関係じゃなくて共存、中長期的に中国と朝鮮半島は日本の生命線なんですから、これをどうやって維持していく、共存関係をどうやって拡充していくかというのを基調に持った日米同盟でなくちゃいけない。  アメリカ中国というのはすごい陰では非常にパイプを強くしているんですから、日本もまたそういうような、それもアメリカのいわゆる国防的な見地じゃなくて、アメリカのいわゆる空海統合戦略に全面協力するというだけで日米同盟強化していくという形じゃなくて、日本の主権性を維持しながら日米同盟をうまく運用していくというやり方を取っていただきたいということ。  それから、最後に私が申し上げたいのは、情報というのは、これ国家安全保障会議というものにだんだん集結していくんですね。国家安全保障会議が機能を充実させるためには、外務省の情報、防衛省の情報と全部そこに集結していくでしょう。今度の国家安全保障会議を事実上運用、機能させるための局長というのは谷内という方がなられるようだけれども、谷内氏は元の外務事務次官であって、外務省におって最も力を発揮できる存在。そうすると、情報は私は必ずしも停滞しないと思いますよ、どんどんどんどん入ってくる。むしろ、国家安全保障会議日本の安全保障を中心とした外交政策の基軸であるということになれば、そこに情報が集結していく。そして、そこをシャットアウトしていると、もしこれが完全にシャットアウトされたとすれば、主権者、国民主権との見地から言えば、非常に、国家安全保障会議国民という形になります。  そのときに一つ、私は皆さんにお願いしたいことが一つあるのは、今度の国家秘密保護・保全法制の中心というのは、よくテロ対策であるとかスパイ防止だとかと言っていますけど、こんなものは、誰もがみんなそういうものの情報を隠そうとかいうものについては何もそんなに異論はないと思いますよ、私は。  一番の問題は、日米安保体制を軸とした外交安保です。これは日本国家の基軸なんだと、日本の安全保障の基軸は日米安保であるということを今盛んに自民党政権は、公明党政権は国民にアピールしているわけでしょう。日米安全保障体制こそが日本国家を存立させる基盤なんだと。であるとすれば、その線に沿って、日米安保体制がどのように動いているか、どのように機能しているかということを最大限国民に知らせなくちゃいけないと思うんですよ。私は逆だと思うんですよ。隠すんじゃなくて知らせなくちゃいけないと思うんです。  そういう意味で、私は、ここに非常に気になることがある。というのは、今度の特別秘密外交に関する事項、特別秘密の対象ですね。ここに、外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命、身体保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なものとなっている。こうすると、もう全部、ほとんど全部包括されるんです、外交に関しては。  ところが、ここで問題になるのは、外交交渉、軍事、経済、全部、政治、あらゆる分野に外交交渉ですよ。これ、日米安保に関する、安全保障に関する外交交渉です、これ最後は。日米間の折衝です。これを全部隠してしまおうという意思があれば、この条項に基づいてやれば特別秘密に該当できるわけです、指定できるわけです。それじゃいけない。  私は、外交交渉のプロセス、過程、あるいは又は向こうとのこういう意見の交換の過程、こういうものを一々公開する必要性はないと思うんです。私は、外務省でも長い、二回も外務省を経験して、クラブで経験して、最後キャップまでやって、外務省の高官と深い接触をした経験からいいましても、外交交渉の過程を一々一々公開する必要性はない。  しかし、ここではっきり言いたいことは、外交交渉というものは折衝あるいは話合い、もう小さなパターンから非常に大きな条約、協定の交渉まで、それこそすごい幅が広く、また奥行きの深いものです。ランクが非常にたくさんある。だけれども、日米間において、日本の安全保障及びその他の問題について、重大な問題について、もし物事が決まった、結論が出た、取決めが交わされた、あるいは又は了解されたと、そういうような事態になれば、それは全部国民に正確に伝達されなくちゃいけない。それを隠すということになれば、まさに国民主権、民主主義は崩壊しますよ。  ですから、外交交渉というものは一番大事なんです。今度の国家機密の中の問題でも、一番は外交交渉ですよ。日米安保体制機密の柱なんですから。だとすれば、このやり取り、了解事項、こういったものがもう必ず起こってきます。特に今のような激動する転換期にあれば、日米間の要するに今度の安保体制をどうやって運用するかという問題が、これは日本の存立にとってはもう一番大事なテーマです。だったら、そのプロセスじゃなくて、結論が出たら、必ずそれは一二〇%国民に正確に伝達し、そしてそれを説明して国民の共鳴を得ると。そうなれば、私は特別秘密というのはすごく限定されてくると思いますよ。なぜ、今、期間だとか、恣意的なものを抑制するためにチェックしなくちゃいけないとかということばかり言っているけれども、私は特別秘密というものをきれいに絞りを掛けられると思いますよ。  プロセスじゃなくて、結論は完全に国民に正確に伝達すると、そういう合意ができませんでしょうかね。そうすれば、国家安全保障会議というものが非常にリライアブルな、国民から見ても信頼が置ける、ああ、あれは決まったら必ず我々に知らしてくれるんだと、これだけの了解に達したら必ず我々はそれを知ることができるんだと、そこに非常に大きなダイナミズムが発生するわけですから、その点を一つ頭の中に入れて今後に対処していただきたいと思います。
  9. 中川雅治

    委員長中川雅治君) ありがとうございました。  以上で参考人方々意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 北村経夫

    ○北村経夫君 自由民主党の北村経夫でございます。  参考人の皆様におかれましては、急なお声掛けにもかかわらず御出席をいただきました。ありがとうございました。落合参考人には、ツイッターで急な声掛かりに調整が大変だったとつぶやいておられましたけれども、誠に恐縮でございます。  ただいま三人の方からそれぞれ意見陳述が行われました。このNSC法案、基本的には皆様賛成だったというふうに受け止めました。本日はNSC法案についての質疑でございますので、私はこの法案中心に質問をさせていただきます。  先ほどから話は出ておりましたけれども、私もこの日本版NSCの創設というのは日本にとって画期的なことだというふうに思っております。私は最近まで新聞社に勤め、政治記者をやってまいりましたけれども、今日御出席の春原参考人はワシントンも経験された、しかも今現役の編集委員でもいらっしゃる。そして、西山参考人は大先輩でもございます。その方々を前にお話しするのも恐縮ではございますけれども、私は記者の時代から日本の役所の縦割りの弊害というものを痛切に感じておりました。外交政策は外務省が、防衛政策は防衛省がそれぞれ作り、官房長官、総理大臣に上げていくと、こういう非効率なことが行われた。この状況を目の当たりにいたしまして、不測の事態が起きたときにこの国はどうなるのかというふうに大変危機感を持ったわけでございます。  これまで日本には国家安全保障戦略というのは、まさに戦略的、体系的に練り上げる横断的組織がなかったわけでございます。政治的に強靱なリーダーシップを発揮できるバックグラウンドもありませんでした。そして、十年先の安全保障環境を見越し取り組むべき方策を不断に検討、深化させるという司令塔もございませんでした。その意味で、私はNSCが設置されることは画期的なことだというふうに思っているわけでございます。しかし、先ほどからそれぞれの参考人が御指摘されましたいろいろな課題、問題等を抱えているだろうというふうに思います。私も、NSCが真にその機能を発揮するまでは時間が掛かるだろうというふうに思います。産みの苦しみは覚悟しなければならない、そういうふうにも考えているわけでございます。  そこで、春原参考人にお伺いいたします。  本家であるアメリカNSCは、第二次世界大戦が終わりました直後、一九四七年に今の体制ができたわけでございます。そして、五十年近くたって、いろいろな紆余曲折があって今日のNSCがあるわけでございますけれども、アメリカの場合、このNSCが設立したとき、同時にCIAも創設されております。戦略と情報が一体となって安全保障政策を進めていく体制ができたわけでございます。  日本においては、より有効な戦略を確立するためには質の高い情報が適時的確に官邸に上がる仕組みを担保する必要があろうかと思うわけでございますけれども、先ほどから出ておりましたインテリジェンスコミュニティー日本においてはまだ成熟していないわけでございます。  その点について、アメリカCIAというものがありますけれども、どのような組織、あるいはどのようなやり方で担保されるのか、お伺いいたします。
  11. 春原剛

    参考人春原剛君) 先ほども申し上げましたが、私もインテリジェンスコミュニティーの再編なり強化なり統合は必要であろうというふうに思います。ただ、これ非常に難しい、御案内のように難しい問題だと思いますので、これも情報保全と同じで時間を掛けてやっていかなければならないものだというふうに理解しています。  アメリカのことをつまびらかに理解しているわけではありませんが、何人か国家情報長官という人、例えばデニス・ブレアという人とか、ジョン・ネグロポンテであるとか、最近まで国防長官をやっていた元CIAの長官のロバート・ゲーツとか、そういう人と何度か意見を交換したことがあります。彼らが一様に口にするのは、やはりいかに異なる情報機関を束ねるのが難しいかと。先ほどお隣の落合さんからも御指摘がありましたけれども、日本国においてもそうだと思いますが、やはりそれぞれの情報は虎の子であり、どうしても出したがらないという傾向があります。  御案内のように、アメリカ国家情報長官制度というのは、米同時テロが起きた後に、対外的なインテリジェンスの機関であるCIAと国内的な治安の機関であるFBIの連携が全くないということで、インテリジェンスコミュニティー、幾つかあるコミュニティーを統合する形で国家情報長官というシステムをつくったわけなんですが、これに就任した方々の、ネグロポンテ、ブレアさん等に聞くと非常に難しかったと。成功したんですかと聞くと、必ずしも成功という言葉はお二人の口からは聞かれません。かくのごとく、この先駆者であるアメリカでも、まだトライ・アンド・エラーが続いているという状況ではないかというふうに思います。  これ、落合さんが先ほど言われたことにたくさんのヒントがあるというふうに僕は拝聴しましたが、やはり信頼関係が大事でしょうし、情報がきちんと漏れないということも大事だろうと思います。  それからあとアメリカの場合はCIACIAとよく出ますけれども、CIAのほかに、先ほども申し上げましたスノーデンさんがいたNSA国家安全保障局というどちらかというとテクノロジーを使った情報収集スパイ機関、あるいはDIA、国防情報局、国防総省の中にある軍部がつかさどる情報機関等々いろいろあります。あるいはスパイ衛星を使う画像だけを管理する機関等々いろいろありますので、そこまで多分我が国の人的資源なり国力を考えるとなかなか難しゅうございますということを言わざるを得ないと。  こういう中で、それぞれのつかさつかさ、今は防衛省にも情報本部という非常に優れた組織がありますけれども、そのつかさつかさのいいところを保ちつつ、いかにどういうふうに統合していくかということを、これから余り拙速ではなく時間を掛けて議論をしていくことが望ましいのではないかと個人的には思います。
  12. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございました。  その関連になりますけれども、NSC組織を機能させる上で、国家安全保障局の局長というのは大変重要でございます。一方で、補佐官の役割も重要かと思うわけでございます。  先ほど春原参考人が、過去、アメリカにおいては独善的な補佐官もいたというような御指摘もございましたけれども、この日本における補佐官の位置付けでございます。  本法案では、総理を直接補佐する立場となっております。しかし、日本補佐官はスタッフを持たない。ラインではないので官僚機構に対して指揮命令権限はないわけでございます。一方、アメリカは、国家安全保障担当の補佐官国家安全保障局の局長を兼務しております。この点についてはいかがでございましょう。春原参考人にお伺いいたします。
  13. 春原剛

    参考人春原剛君) 先ほどあえて申し上げなかったんですが、現時点で言われているNSC政府の構想に関して、幾つか改善をしたらいいのではないかと思われる点があります。その筆頭が、今御指摘のあったいわゆるセキュリティーアドバイザー、安全保障担当補佐官国家安全保障局の中のトップとして位置付けられている事務局長の役割分担であろうと思います。  アメリカNSC経験した多くの人たちと実は過去数か月随分意見を交換しまして、彼らも非常に関心を抱いております、いろんな意味で関心を抱いております。単に日本NSCを利用しようとかそういうことではなく、一体どういうふうに国家運営システムを変えるのかということで関心を抱いていますが、やはり彼らから一様に返ってくる答えは、今の現行の案ですと、国会議員バッジを付けた方が補佐官でいて、事務局の事務局長は準民間人、外交官OB等々ですねということだというふうに言うと、それは、よく言われる双頭の竜、二つ頭がある竜で、非常に混乱するだろうと、恐らくそれは失敗が極端に言うと約束されたようなものだという言い方をする人もアメリカの中にはおります。  ただ、日本において、やはりアメリカ大統領制と議院内閣制は違いますので、いろいろな役割分担はあろうかと思いますけれども、理想を言えば、やはりこの二つの役職というのは統合をされてしかるべきではないかというふうに私は個人的には思います。
  14. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございました。  もう一問、春原参考人にお伺いいたします。  NSCの役割というのは、中長期的な視点によって安全保障戦略を策定するわけでございますけれども、それと同時に、緊急事態にどう対処していくかも求められているわけでございます。北朝鮮による長距離弾道ミサイル、テポドン発射実験、それによって我が国を取り巻く安全保障環境というのは劇的に変化したわけでございます。  そして、二〇一〇年の九月、尖閣諸島の日本の領海内に中国漁船が入りまして、衝突事件が起きた。そのときの首相官邸の混乱の極みぶりを春原参考人は御著書「暗闘 尖閣国有化」の中で生々しく検証しておられますけれども、私は、NSCの今回設置ができれば、緊急事態への対応、これまでと比べれば強化されるだろうというふうに考えておりますけれども、参考人の御意見はいかがでございましょうか。
  15. 春原剛

    参考人春原剛君) あのとき、その後に、野田政権のときに、中国、香港の活動家が尖閣諸島に上陸するという事件があったのは御案内かと思います。  あのとき象徴的で、私はテレビ画面を通じて見ていたんですが、たしか野田総理は、あのとき日曜日だったと思うんですが、公邸に、もう既に外務省に戻られた河相事務次官と米村危機管理監、お二人をお呼びになって対策を練られていた。あのとき、たしか陸上警察方々を尖閣諸島に事前に上陸させて、すぐ逮捕して送還すると。今議員がおっしゃられた最初の衝突事故の処理の教訓を経て、すぐそういう対応をしたというふうに記憶しております。  あのときも、我が国の体制が、あれが象徴的だなと思ったのは、米村さんと河相さんを両方お呼びになるということで、まああれはあれで今の現システムの中において最高のベストミックスであり、最善の判断を野田総理はされたというふうに理解しておりますけれども、NSCという組織ができ、まあもちろん危機管理監というポストはそのまま残るわけなんですが、より一体的な運用ができれば、もっと効率的な、あるいはもっと臨機応変な柔軟な対応ができるのではないかという期待を込めて、そのように見ております。
  16. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございました。  最後の質問でございますけれども、お三方、いずれも特定秘密法案について言及されておりましたけれども、私は、外国との関係において秘匿しなければならない情報というのはある、それはお三方、皆様そう認識していらっしゃいましたけれども、まさに世界から見れば、特定秘密法案もない国は外交信頼されない国になるというふうに思います。国益のために秘密を指定するということは私は必要だろうというふうに思うわけでございますけれども、一方で、私も、これまでの経験からいたしまして、言論の自由、報道の自由や取材の自由は守らなければならないというふうに思っております。当然のことというふうに思っております。  今回、まだ衆議院の段階で審議されておりますけれども、今回、この報道の自由については、条文では、「報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」とまず規定しております。そして、出版又は報道の業務に従事する者の取材行為について、専ら公益を守る目的を有し、かつ著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とすると書いてあります。  この規定で報道の自由というのは守られるであろうかどうか、お三方に、簡単ではございますけれども、お聞きしたいと思います。(発言する者あり)じゃ、落合参考人、お願いします。
  17. 落合洋司

    参考人落合洋司君) 守られてほしいと私は思っていますが、なかなか、じゃ守られるかというと、懸念が大きく残るのではないかというふうに考えているというのが率直なところですね。  まあいろんな手段、方法で、秘密といいますか、行政機関の持っている情報に対するアクセスというものが行われてくると。その中には報道があり、知る権利の行使というものがあるわけですけれども、それについて私自身の考えとしては、法律の中で配慮するとか、あるいは著しく不当なものに限るというふうなことが規定されていたとしても、どうしても曖昧さというものはその法律の解釈には付きまとっていくと。  何が著しいのか、あるいは何をもって配慮するのかということについてはなかなか難しい問題があろうかというふうには考えておりまして、仮に現行の案で成立をするということに、秘密保護法が成立した場合については、やはり裁判所におけるかなり厳格な解釈とか、そういったものが施される必要もあろうかと思いますし、相当慎重に運用されなければいけないのではないかと。その前に、その法律自体についても十分御審議をいただきたいというふうには考えております。  以上です。
  18. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございました。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  19. 大野元裕

    ○大野元裕君 民主党・新緑風会の大野元裕でございます。  今日は、参考人の皆様、様々な見地から我々に御示唆与えていただきました。まずもって御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。その上で、今回の日本版NSCに関する法案に関しまして参考人の皆様にお伺いをさせていただきたいと思っています。  先ほど、アメリカNSCトルーマン大統領時代政府の専横性を抑制するためにできたんだ、こういう話がございました。今この日本において専横的になる政府なのかどうか私は分かりませんけれども、NSCというものは非常に重要性を増しているし、今だからこそ必要である理由は私は増していると思っています。  そして、正直、春原参考人、以前、我々、ちょっといろいろこのNSCに関しての議論を交わさせていただき、そしてその際には民主党案もお見せをして議論をさせていただいたことを正直非常に懐かしく思っておりますけれども。あのときにも、やはりNSCの設置というのは非常に大事であると。ただ、あのときああやって議論を我々がした中から比べれば、今回の本当に法案はすかすかでどうしようもないと正直思っています。  ところが、一点、唯一無二の我々が衆議院で賛成をさせていただいた理由は、NSCを置くことの重要性、これはやはりとても大きい、それが唯一無二の理由であったというふうに感じております。  当時のあの日経のCSISのバーチャル・シンクタンク、あれを基にも議論をさせていただきましたが、あのときにも本当に私も感心させていただいたのは、いわゆるNSCの大臣級会議だけではなくて、その下のラインの整合性や、あるいは今の内閣官房の安危の特性を生かしたいわゆる命令系統、そしてさらには事務局、それから様々な会議の在り方、本当にきれいに、日経さんがおやりになったものはすばらしいと私見ておりました。  そのころのアイデアというのは、私は、ベストかどうかは別としても、非常に高いレベルであったと思っていますけれども、それをお取りまとめになっておられた、また私の案についてもその案の中では御言及をいただいて、本当にありがとうございました。  そのお立場からいって、今のNSCの法案、特にその構造、構成について春原参考人はどうお考えになるでしょうか。
  20. 春原剛

    参考人春原剛君) 三つあると思います。  一つは、先ほども申し上げました、安全保障問題担当補佐官と事務局長の役割分担をどうするのかという問題。  もう一つは、安全保障会議が形骸化したことに伴う、あるいは随分、何でしょうね、時代遅れになったことに伴うNSCの設置という風潮が出てきたというふうに理解しておりますが、そこで四大臣会合というコンセプトが出てきて、であるにもかかわらず九大臣会合をまた残していると。縦構造がやはり二層、三層になっているというのも、本来の迅速な、国家的な危機に対処するための迅速な意思決定を行うというNSCの設立目的からすると、そこがいかがなものかという若干の懸念が残ります。  第三に、横系統ですね。先ほど申し上げました危機管理監もいらっしゃる、情報官もいらっしゃる、その中で安保担当補佐官、SAと安保担当の事務局長がいる。さて、この中で本当に、例えば東京電力の、思い出したくもありませんが、福島第一原発事故があった、あの後に大変な国家的な状況になったときに、そういう四頭、五頭の体制で果たしてどううまくストリームラインが流せるかというのは若干懸念があります。  今現在言われている方々のお名前、あるいは今の安倍内閣の充実ぶりを見ると、恐らく現時点においてはさほど懸念をする必要性はないのではないかと個人的には思いますが、それは必ずしも、常に担保されている、保証されているというわけではなく、やはり属人的なところがかなり大きいのではないかというふうに思います。  実際、我々がその参考一つとしているアメリカの例を見ても、先ほど申し上げたとおり、属人的な例がかなり大きゅうございます。子供の方のブッシュさんのコンドリーザ・ライス、あるいは現在のオバマ政権のスーザン・ライス、二人のライスと我々よく言いますけれども、この二人の、例えば安全保障問題担当補佐官としての力量はいかがなものかと考えた場合に、やはりかなり歴代の人から比べるとその力量不足は否めないと。  それが今のオバマ政権外交無策なり、先ほど西山さんの方からも御指摘がありましたが、アジア展開、ストラテジックピボット、あるいは対中国をにらんだエアシーバトル構想等々が、今実は非常に停滞して足踏み状態にあるというふうに言われています。アメリカの今のそのていたらくぶりは、やはりその今のNSC、あるいはなかんずくそのトップに立つセキュリティーアドバイザーの力不足によるものと無縁ではないというふうに私は思っています。
  21. 大野元裕

    ○大野元裕君 ありがとうございます。  是非、こういう答弁を、僕は政府ともやりたいというふうに思っていますし、膨らませていきたいと思っていますが、済みません、お時間もありますので、次に落合参考人に是非お伺いをさせていただきたいと思います。  落合参考人の方からは、情報を上げるのが難しいということ、あるいは共有するのがなかなか難しいということ、これらのことを多々御指摘を賜りました。そんな中で、実はNSC、戦略の部分ですけれども、戦略と情報を分けた上で、その上で、それでも非常に弱いと思う部分が我々はあって、二点、実は提言をさせていただいたんです。  そのうちの一つは修正案に入った部分で、いわゆるNSC情報提供を各行政機関の長に求めることができるではなくて、NSCの求めに応じ提供しなければならない、こういう義務規定に変えさせていただきました。  そしてもう一つは、残念ながら与党との協議調わなかったんですけれども、情報を束ねることがいかに難しいかという御指摘がありました。まさにその部分で、内閣情報官に実は情報は上がらないシステムになっています。NSCには情報を上げなければならないんですが、その情報分野を束ねる親玉のところに上がらない。これが今の制度なので、そこで我々が提案したのは、官房長官のところでいかに情報がきちんと情報コミュニティーから上がってきているかということを報告書として上げさせるという、二本立てじゃないとこれは動かないと思ったんです。  ところが、片っ方だけ与党は取っていただいたんですけれども、片っ方、実は置き去りにされています。そういった意味で、実は、今情報を束ねる、インテリジェンスコミュニティーとして情報評価をしてしっかりと上げていくという制度がないんですけれども。  これに関しては、落合参考人は、やはり何らかの担保する制度というものを、まあ我々の案がベストとは思いませんけれども、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  22. 落合洋司

    参考人落合洋司君) 今の御質問の点については、やっぱりいろんな考え方なり方法なりというのがあるのではないのかなというふうに思うんですね。それは一つの、今御質問になったような方法もあると。  私自身がいろいろ資料を見ながら思ったのが、先ほどもちょっと話しかけたんですけれども、やっぱり総理補佐官というのをもっと強化といいますか、どうもスタッフは置かないというふうな制度になるみたいですけれども、むしろそこにそのスタッフというのを置いて、五名というふうな予定になっているようですけれども、やっぱり情報コミュニティーとの関係というものはその総理補佐官がきちんと日ごろから保っていくと。  やはり、私自身実務家ですので、その情報コミュニティー側のどうしても視点に立ちがちなんですけれども、何か報告した場合に、やはり総理なり官房長官に直結している人に対して、ダイレクトに行って、必要があればその方と一緒に直接報告をしたいというふうな場面って、結構、特に重要な情報であれば出てくるんじゃないかと。  ですから、やはりそういった形に私自身の感覚としてはして、そこにその安全保障局がその事務方、事務局としてうまく関与していくという、むしろそういう仕組みの方がいいのではないかなというふうに私自身は資料とか見ながら思ったんですけれども、まあいろんな考え方もあると思いますので、そこはやっぱり十分御審議いただきたいというふうには考えております。  以上です。
  23. 大野元裕

    ○大野元裕君 ありがとうございます。  まさに補佐官のところが、まさにそのお二人の参考人から御指摘あったとおり、私も非常に議論をする余地があるところだろうと思っています。  そこで、改めて春原参考人にお伺いをさせていただきますけれども、補佐官とはいえ、アメリカとは似ても似つかぬ権限の、日本の場合、補佐官でございまして、ラインの中に入っていないとか、そういった議論が今までも実はこの委員会でも多く聞かれてまいりまして、恐らく情報は入ってこない、官僚からは相手にされない、そういう補佐官になるんだろうと私も思っております。  他方で、日経・CSISのバーチャル・シンクタンクの提言、それから実は私どもの民主党の案も全く同じなんですけれども、内閣官房副長官を、これがアメリカ側の補佐官と同格であろうというふうに春原さんもお書きになっていらっしゃいますけれども、そこにやはり権限を集める、ラインの中にいて情報が集まって、そしてアメリカと同格の人間を持つ方がしっかりとできるという御提言をたしかされておられたと思いますけれども。  今回の案におけるやはり新設の内閣官房副長官というのは、春原さん、今もそこがやはり肝だというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。是非お聞かせください。
  24. 春原剛

    参考人春原剛君) 今議員御指摘になったバーチャル・シンクタンク活動の一環として出したNSCのリポートにおいては、実は、その座長は政府の今諮問委員会等々いろいろされている北岡伸一国際大学学長さんでありまして、北岡さんの思想がかなり色濃く反映されているということをまず申し上げたいと思います。  北岡先生は、御案内のように、旧陸軍がなぜ失敗したかという研究をされている歴史家でもあります。彼の問題意識は、僕が仄聞している範囲で申し上げると、やはり日本の最大の弱点は縦割りであるということで、縦割りを何とか排除するためにはオールジャパンの体制、つまりNSCをつくるべきだと、こういう発想がありました。  その中において、じゃ、日本における安保担当補佐官というのはどういった形がいいかというと、日本は中央官僚機構がやはり圧倒的な力を持っておりますし、巨大な、日本で最高のシンクタンクという役割も兼ねておりますので、そこと直結して、英語でよくエンベデッドと言いますが、そこに埋め込まれた形で首相と官僚機構の様々なノウハウや情報をつなぐ役割をしなければいけないだろうということが一つ。  その上で、我々のシンクタンク活動の中で申し上げた提言は、安保担当補佐官というのは様々な経験なり知見なりが要求されますので、国会議員の方に兼務をしていただくというよりは専門の方にこれはやっていただく方がよろしいのではないかという提言を我々はたしかしたというふうに記憶しております。  それは、今の申し上げた問題意識に基づくものであって、決してもちろん国会議員の皆様を前に皆様を愚弄したり何かするつもりは全くございませんが、この分野は非常に専門的であり、しかも外国の要人とのコンタクト、海外出張等々もかなり要請されると思います。  御記憶のように、キッシンジャーニクソン政権で米中の電撃的な和解をやったとき、何度も何度も秘密に訪中したことは皆さん御記憶に新しいかと思います。パキスタンを経由してプロペラ機で中国に入った等々、そういうことを現職の国会議員の方に多分求めるのは無理であろうと。何も日本がそのようなドラスチックな外交秘密交渉をやるというふうには思いませんが、そういうことに鑑みても、議員バッジを付けていない方の方がいいんじゃないかという結論に達したというふうに記憶しています。
  25. 大野元裕

    ○大野元裕君 確かに、北岡さんともさんざん、まさにこのポイントについては、これだけで本当に三、四十分やらせていただいたというふうに記憶をしておりまして、大変大きなポイントである割には、やはり今回の法案の中ではとても弱いと思っておりますので、もし仮に国民のまた信が得られるのであれば、我々のときにしっかりと変えさせていただきたいというふうに思っております。  最後になりますけれども、西山参考人に是非お伺いをさせていただきたいんですが、先ほどのお話の中で、プロセスは別として、日米安保のような日本の安全保障の基軸となるものについては日本国民に正確に知らせなければいけない、これは私も大変感銘を受けました。本当にありがとうございました。  ところが、他方で、このNSCというのは、安全保障の基軸になる部分を議論をするところだと私は理解をしています。ところが、今回の政府答弁を聞いていますと、そもそもNSC議論自体は闊達でなければいけない、機微なので外に出さない、議事録に残さないというのは現時点での議論でございます。将来的には検討するとおっしゃっていますけれども。  ところが、これ実際には実質秘でございますので、NSCの中の議論は外に出さないということ自体のそういった議論自体、私は全くばかげた議論だと正直個人的には思っておりますけれども。まさに組織を、これから大事な組織をつくるときに、その前にここでやる議論は外には出さないんだって決めてしまうというのは、これは西山参考人のおっしゃったことと全く逆行しているように私は思われてならないんですが、重要な組織であればこそやはり出すべきだというふうに参考人はお思いになりませんでしょうか。
  26. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 極めて原初的なことを言うんですけれども、情報の管理というのは、よく隠蔽とか抑制とかという面だけ、視点だけで強調されやすいんですよね。しかし、情報の管理というものは、本質論的に言えば、情報を公開し、そして情報攻勢を掛けてリークを掛けて、自分たち情報によってその次に巻き込んでいくという、そういう非常に積極性を持った国家の攻勢的な情報管理があるわけですね。  そうすると、結局私が言いたいのは、国家安全保障というのは、日本の安全保障というのは日米体制によって支えられているんだと、日米安保条約がこの動脈なんだということを一二〇%強調しておきながら、国民主権に対して、国民の、主権者に対して抑制し、隠蔽し、安全保障というのは非常に大事だからこれは一々出しちゃ大ごとだよというようなムードをどんどんどんどん醸し出していって、それによってそっちの方にどっと、情報管理を政府側のペースに巻き込んでいこうというような、そういうのはおのずから政府の、本来的に政権というのはそういう性質を持っているものですけれども、今度の場合、それがすごく強調されているんですね。  情報管理というのは非常に大事なことであって、ある面では管理しなくちゃいけないんですけれども、抑えるべきものは抑えなくちゃいけないという分野はあるんですけれども、国民に、理解し、説得し、そして共感を得るという、真実を国民に伝えて、そして国民の共感を得るというこの努力こその方が上なんですよね。今の場合は、本末何か逆転しているような感じがしますね。だから、国家の安全保障というのは、日本国家にとっては、もう本当に国民にとってはそれこそそれ以上ないような重要なテーマですね、政治の。  そうすると、主権者に対して政権は、日米安保条約に基づいて双方が日米間で合意した内容、あるいはまた了解に達した、あるいはまた約束した、そのことについては一点の隠し事もなく正確に一二〇%伝達しなくちゃいけない。その上で、これは極めてある時期においては非常にこれは外交上隠蔽する必要があるとか抑制する必要があるということは、それなりにその価値を守っていいと思うんですよ。ところが、今の動向はまさに逆転しているんですね。隠そう隠そうという方ばかりにいわゆる力点が置かれている。  しかし、自分たちはどんどんどんどん情報をリークできるんですよ、政権は。幾らでもできるんですよ、やろうと思う意思があれば。私はそれをもうあらゆる面で体験してきていますよ。沖縄どうですか、核抜き本土並みじゃないですか。沖縄はただで返ってくるとどんなに洪水のごとく流されたか。  ですから、その辺をバランスを取って考えなくちゃいけないと。そのためには、約束事とか了解事項だけは、何もプロセス必要ないです、プロセスはどんどんどんどん変化しますから。そういうことです。それに力点をもうちょっと置いてくれということです。
  27. 大野元裕

    ○大野元裕君 終わります。ありがとうございました。
  28. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫でございます。  今日は、三人の先生方、大変お忙しい中、急なお呼び立てにもかかわらずお集まりをいただき本当にありがとうございます。また、先ほど来、それぞれの御専門また御経験に基づいて大変貴重な御意見を賜りましたことを感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。  お説をお伺いしておりまして、今回のNSC法案、今の日本の力を弱めている一つの原因がまず縦割りである、特に政策情報収集での縦割りであり、その打破に向けて意義はあるという点は皆様御一致されている御見解であると思います。あとは、その運用いかんをいかにするか、ここはまたこれからしっかり議論をしていかなきゃいけないところであるなという点を改めて実感した次第でございます。  私自身は、元々弁護士ではあったんですが、昨年の三月まで経済産業省に任期付職員として出向をいたしておりました。特に、貿易関係の国際交渉を担当しておりましたが、その中で、民間から来た役所の中に入った人間として、縦割りの一つの原因は、やはり情報の縦割りというのが非常に多いなと、役所自身もそれぞれの力を維持するためには情報をいかに出さないかというのを非常に腐心しているなというのを実感をした次第でございます。その意味で、私も、今議論をされている法案、方向性としては非常に重要であるし、作っていかなければいけないなと。ただ、今日、また改めてどうやってその制度設計をしていくのか御説明をいただきたいと思っております。  まず、春原先生にお伺いをしたいんですが、先ほど、特にこれまで余り議論がなかった、NSCは暴走を停止をするという機能があったと。今、アメリカ歴史も含めて六段階に分けて非常に詳細に御説明をいただいたところでございます。  お伺いしたいのは、NSCが一時期暴走をした、それが父親ブッシュのときに組織として機能をした要素に転換をしたと。これは、暴走すべき要素があったNSC組織的に何か変革をして、有効に機能したというような変革がなされたというふうに私推測したんですが、今の、できれば、アメリカNSC日本版NSC日本版NSCはむしろイギリスのNSCに似ているというふうに理解ではいるんですが、可能な限り日本版のNSC組織に照らし合わせて、アメリカではどういう変革がなされたのか、どういう部分の機能を強化されたのかというのを御説明いただければと思います。
  29. 春原剛

    参考人春原剛君) 先ほど申し上げました、レーガン政権のときにイラン・コントラ事件がありまして、これは御案内の方も多いと思いますが、イランとはいまだにアメリカは国交断絶です。しかしながら、イランのお金、オイルマネーを使って、サンディニスタ政権という当時あった中米の政権、左派政権を打破するために、そこの反政府ゲリラ、コントラにお金を回すということでイランに武器を売ったと。これは、オリバー・ノース等々NSCの軍人スタッフが考えた仕組みでありました。  これは、当時、レーガン政権がある種二期目に入って少し求心力を失っていたということもあり、NSCが肥大化したこともあり、そういった暴走を招いたんだと思いますが、これに対して、先ほど申し上げたハワード・ベーカー首席補佐官、あるいは議会の方でジョン・タワーというやはり国防問題に詳しい方がタワー委員会というのを創設して、こちらでいろいろ検討しました。そうした検討を受けて、父親のブッシュ大統領のときのスコウクロフト補佐官が導入した最大の改善点はデピュティーズコミッティーというものを導入したことです。デピュティーというのは英語で言うと次席ですね。今も実はホワイトハウスを中心とした、NSCを母体とした政府運営はこのデピュティーズコミッティーの役割がかなり高いというふうに言われています。  これは具体的に何を言うかといいますと、NSCアメリカの場合はデピュティー、副官がおります。この副官が主宰して、各省庁、国防総省、国務省、財務省、USTR、商務省等々、アメリカの有力省庁の次官クラスあるいは副長官クラスを集めまして、各省庁からの情報を吸い上げ、意見を統合し、ここで一つ政府としての意見をまとめるということですね。この上にあるのがプリンシプルミーティングという、よく彼らは言っていますけれども、長官クラス、大統領も出席する長官クラスのNSC会議であります。ですから、日本とそういう意味では似ているようなところもありまして、昔、事務次官会議というのがありましたが、事務次官会議をもう少し、しゃんしゃんではなく、実質的に各々の情報を持ち合い、意見を統合し、政府国家戦略として束ねるという、そういう性格を持たせたものがデピュティーズコミッティーであろうかと思います。  ですから、このデピュティーズコミッティーが今のアメリカNSCにおいていかにうまく機能しているかというのを、今後、日本版のNSCを創設、運営していく上においていろいろ研究、勉強する必要はあるのではないかというふうに思っておりますし、実際、アメリカの多くのNSC補佐官たちも、あのデピュティーズコミッティーをスコウクロフト、父親ブッシュ大統領が導入してからNSCは随分と近代化したと言われています。簡単な言葉で申し上げると、キッシンジャー時代キッシンジャーという非常にあくの強い人の個人商店であったNSCが、スコウクロフトの改革によって会社組織のようなものに変わったというふうに私は認識しております。
  30. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。  今のデピュティーズコミッティー、これ日本版でいえば幹事とかが役回りをするということになり得るという理解でよろしいでしょうか。
  31. 春原剛

    参考人春原剛君) 恐らく、日本版のNSCの構想においても副官が二人候補になっていると思いますが、そのうちのいずれかが例えば委員長役となって関連各省庁の、先ほど申し上げました日本の例でいいますと局長クラスでしょうか、あるいはその上なのか分かりませんが、そういう方々を集めて随時機動的に議論を行うというイメージではないかと思います。
  32. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。  今の暴走の関係にもあると思うんですけれども、近くはやはりイラク戦争のときの教訓として、今情報政策の分離ということがよく言われておりますが、実際、何で大量破壊兵器があるというような情報の下、政策判断なされたかというと、情報発注側の意向が、やはりあることを想定した情報を集めるというような発注がなされていたんだろうなというような推測が成り立ちますし、日本版NSC設計するに当たっても、やっぱりそういう部分の危険性というのは常に監視をしなきゃいけないところであるなと思っております。  それでまた、続けて春原先生にお尋ねするんですが、制度的にこういうカスタマー、情報のカスタマーとしての、今回であれば国家安全保障局、いかに発注するか、その適正を図る制度設計みたいなのをアドバイスいただければと思います。
  33. 春原剛

    参考人春原剛君) 今議員御指摘になったとおり、日本におけるNSC議論で少しごっちゃになっているなという印象があるのは、そのおっしゃられたインテリジェンスに関して、カスタマーであるNSCと提供元であるインテリジェンスコミュニティーの役割が少しごっちゃに議論されている。これは第一次安倍政権のときから少し見られた傾向なんですが、今御指摘があったとおり、NSCというのは、あくまで情報、上げられた情報に基づいて分析をし、戦略を考え、政策を総理大臣に提言するというのがファンクションであって、情報を集めるのが仕事ではないということです。  ただ、政府の諸機関からそれぞれが持っている、外務省、防衛省、あるいは警察なり経産省、財務省も含めまして、それぞれの有力省庁が持っている情報を吸い上げるという意味では情報を集めるということになろうかと思いますが、実際に、ローマテリアルとよくこの世界で言いますけれども、生の情報を収集するのは各省庁であって、NSCの役割ではありません。  ですから、どうもそこのところが、情報政府の中から吸い上げるということからして、そういう表現があるので、NSCそのものが情報を集める、だから秘密保全法案が必要なんだというようなちょっと議論になっているようなところもあるかと思いますが、そこは明確に区別を付けなければいけないというのがまず第一点。  であるからこそ、NSCというのはカスタマーですから、情報には一切手を触れない、これが大原則だと思います。御指摘になったとおり、イラク戦争のときは、例の有名になったテネットというCIA長官がブッシュ大統領の執務室でスラムダンクですよという言葉を使ったと。つまり、絶対確実にサダム・フセインは大量破壊兵器を持っているというふうにミスリードをしたわけなんですが、そのミスリードしたと言われる原因も、今これも御指摘のあったとおり、恐らく当時戦争を、対イラク戦争を仕掛けたいと思っていた人たちのことをおもんぱかった、やっぱりバイアスが大分掛かっていたのではないかというふうに言われています。  ですから、日本NSCをつくるに当たって最も気を付けなきゃいけないのは、政策判断をする、もちろん総理大臣、官房長官は当然のことながら、NSC方々が自らの行いたい政策だけに適合する情報を集めるのではなく、全ての情報をあまねく集めた上で自らの政策なり方向性が正しいかどうかというのを判断する、そういうような役割分担をきちんとしていただきたいというふうに思います。
  34. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。  やはり発注する側ですので、その発注の仕方いかんによって変なプレッシャーをインテリジェンスチームの方に与えないということも非常に大事な部分ではあるかなとは思っております。  それで、あと、逆に必要な情報がやはり集まらないというようなことも非常に重要な、大変な部分ではあるかなと思っております。私も先ほど、冒頭申し上げたとき、役所にいたとき、例えば係から課に、局から、どんどん上がっていくうちに情報というのはどんどん選別をされていく。いろんな理由があると思うんですけれども、やはり上げたくない心理の中で情報が選別されていってしまうというようなことは非常に大きいと思います。  今の法案の中では、情報共有、省庁を隔てた情報共有は官房長官をまた基点にして制度を設けているんですが、実際、行政機関の長から供与されたとき、行政機関の長に上がっている情報が選別をされて不十分な情報であれば法案自体も実効性がないかなとは思っております。  落合先生、先ほどまさに御経験の下、いかに情報というのが上げることが難しいかというようなことをおっしゃっていらっしゃいました。その御経験に基づいて、的確な情報をしっかり下から上に上げていくためにはどうすればよろしいのか、もし、アドバイスいただければと思いますが。
  35. 落合洋司

    参考人落合洋司君) いや、なかなか難しい問題なので、本当に非常に難しいことなんですが、ですから、情報というのはその辺に転がっているものではないので、やっぱり人が持っているといいますか、どうしても人というものが情報をそれぞれいろんな形で持っている、各省庁の中でも各段階でも持っていると。  ですから、私のやっぱりイメージとしては、そういう情報に対して日ごろから一つの人間関係信頼関係というのを保ちながら、偉い人だけを相手にするんじゃなくて、必要に応じて少し下の方の人たちとも接するというふうな人をきちっと設けておく。私のイメージではそれが総理補佐官というふうな感じのイメージなんですけれども、例えばですね。別に総理補佐官でなくてもいいんですけれども、やっぱりそういう人が日ごろからよく見て、誰がどういう情報を持っているかというのも含めてきちんと把握をしていると。必要があれば、上の人だけじゃなくて、もうちょっと下に下がった人に対していろいろ働きかけをして、情報というのを持っていないかという形でいい意味で拾い上げていくと。  だから、下からぐっと上がってくるのだけをただ口開けて待っているというのではなくて、そういう積極的に働きかけていくというふうなことをやっぱりやっていかないと、なかなかいい情報というのは拾えないと。そういったことをやるには、やはり専従で誰かが、ステータスのそれなりに高い方がよく見ておくという体制が必要なんじゃないかなというイメージは持っていますね。  以上です。
  36. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。  ちょっとまた話が戻るかもしれないですが、インテリジェンスチーム、やはり先ほど、情報を収集、要求をしたときに、ある程度の圧力を感じてインテリジェンスチームが上げる情報を仮に選別してしまうというようなことが、やっぱりプロ意識を持ったインテリジェンスのチームをつくっていくためにはどういうような組織の在り方、今やはりいろいろ問題になっているのは、省庁からの出向とかで来てしまって一時的に来ている人たちが集まると、元の省益をやはり維持をしたまま来てしまうと。そうではなくて、もうちょっと専門化、特化した恒常的な組織をつくるべきだという議論も一部あったと思うんですが、それについて、春原先生、御見解をいただければと思います。
  37. 春原剛

    参考人春原剛君) インテリジェンスを集める手法として専門の人たちがよく言われるのは、ヒューミント、人的情報源ですね、それからテクニカルミーンズといって、例えば情報収集衛星であるとか電波とかシグナルとかそういうものをとらえるのと、いろんな種類があろうかと思います。  そうした中で、先ほど申し上げたアメリカの場合は、NSAのようにいわゆる電波とかネットとかそういうものを中心としたものに特化する組織と、CIAのようにある程度工作員を抱えるような組織というものがあろうかと思いますが、後者に関しては日本で僕はやれるとは思いませんし、やるべきではないというふうに思っております。ただし、今、内閣の中にある内閣情報調査室が必ずしも政府の持っている全ての情報をうまく統合できていないという面もあると思いますので、ここをどういうふうにこれから強化していくのか、オールジャパンの体制を取っていくのかということが一つの重要なポイントになるんではないかと思います。  その一方で、先ほど申し上げました、例えば防衛省の情報本部の特性を生かしつつ、ここをどういうふうに伸ばしていくか、そういった議論も必要ではないかというふうに思います。
  38. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ちょっとまだお伺いしたいことが実はあったのですが、時間が来ましたので。  三人の先生方、本当にありがとうございました。非常に貴重な御経験の、また基づく御専門のアドバイスをいただきまして誠にありがとうございました。質問を終わりたいと思います。
  39. 真山勇一

    真山勇一君 みんなの党、真山勇一です。  三人の参考人の方、今日は本当にお忙しい中をありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。  お三方の御意見、やはりそれぞれの専門家、専門分野の立場からのお話ということで、これから日本がまさに新しい組織、新しいものをつくろうとしている、その一つ日本版NSC、そしてそれを動かすために支えるための特定秘密保護法案、これが今回焦点になってきているわけですけれども、これについての本当にいろいろ考えさせられる、そして、今私たちはそれを、作成過程、審議の過程に入っているわけですけれども、そこで是非やっぱり生かしていかなければならないことがたくさん、示唆に富んだことがたくさんいろいろ伺うことができたというふうに思っております。  私、お三方にそれぞれ一点ずつ、多分時間大丈夫だと思うので、お伺いをしていきたいというふうに思っているんですけれども。  まず、春原参考人にお伺いしたいと思っております。  アメリカNSCが戦後できて、そしてそれが、こういう組織の当然のことだと思うんですが、組織が強大化していって権限も強くなっていった、そしてやはりこれではいけないということで改革が起きたという。やはり、これから日本が新しい組織をつくろうとしているところでこれは非常に大事なことで、こうしたことを私たちはしっかりと歴史一つの形として学びながらこの新しい組織をつくっていかなければならないというふうな感じを持っております。  私が、春原参考人のお話の中で、ほかの参考人の方でも出ていますけれども、やはり情報を縦割りになってしまってはいけないということですね、その辺り。やはり日本の官僚組織を見ると、もうまさに縦割りという弊害がこれまでずっと言われ続けてきている、しかし一向になかなか解決しないということが、そんなことがあるわけです。  実は、アメリカNSCも、ホワイトハウスがあり、国防総省があり、国務省があり、そして情報機関としてCIAありますね。こうしたところから当然情報を集めて、その大事な特定のそういう秘密というものを収集していくんでしょうけれども、日本のこの縦割り、私はやはり今回のできた安全保障会議とそれから安全保障局、この辺り、そして情報の収集の仕方、これはやはり縦割りで情報が本当に集まるんだろうかという、そういう心配も感じています。  特に、判断していろいろ情報を分析することはいいんだけれども、その判断とか分析に必要な情報がなければまずならないと思うんですが、その辺り、春原参考人は、アメリカNSCの機能というものを今回の日本の中で、どんな点を日本は学んで生かしていくべきであるか。特に、縦割りをなくすため、情報の断絶というものが決してあっては私はならないと思うので、その辺りをどんなふうにこの日本版NSCの中に取り入れていけばよろしいかどうか、是非お聞かせ願いたいと思います。
  40. 春原剛

    参考人春原剛君) まず最初に申し上げたいのは、今御指摘があったとおり、アメリカにはNSCがあり、CIAがあり、さらにNSAもあり、先ほど申し上げた国防総省の中にもDIAというのがあり、実は余り知られていませんが、国務省の中にもINRという情報分析局があります。それぞれ実はとても仲が悪うございます。これは日本だけに限ったことではなく、当然アメリカ人も日本人も同じ人類でありますので、同じように官僚機構をつくれば同じように縦割り意識が芽生え、同じようにライバル意識があり、同じように裏ではお互いの悪口をさんざん外国人である私にでも言い合っています。それが現状です。  ですので、そうしたことを現状当たり前のことだととらえた上で、さて、それでも、向こうの場合はオールアメリカ、我々の場合はオールジャパンで、どのぐらい最大限国家の役に立つような情報をさて統合して引き出せるかということに知恵を絞らざるを得ないというふうに思います。これは人間の性悪説と性善説の両方だと思いますので、どっちが悪い、どっちがいいということではなく、それを現実としてとらえなければいけないと。  それを申し上げた上で、幾つかアメリカが試行錯誤してたどり着いた結論としては、先ほどの御回答の中でも申し上げましたけれども、デピュティーズコミッティーという、NSCの中で副官級の方が各省庁のナンバーツー、ナンバースリーを集めて定期的に会合する、あるいは案件に応じて臨機応変に会合するやり方をするのが一つ。それから、先ほど落合さんも何度か御指摘されていますけれども、やはり日本においては内閣総理大臣と官房長官が二大権力の源泉でありましょうから、そのお二方と直結している人物がやはりそのオーソリティーを持って情報収集に号令を掛けるというのが非常に重要であろうかと思います。  実際、アメリカの実はセキュリティーアドバイザー、安全保障担当補佐官の成功したか失敗したかというのは、実は最も大事なのは、その大統領にいかに近いかということです。ですが、この近いかというのが必ずしも絶対的な必須条件ではありませんけれども、成功するための十分条件ではありませんが必要条件ではあろうかと思います。例えば今のスーザン・ライスさんという人はオバマ大統領に非常に近いと言われています。コンドリーザ・ライスさんもブッシュ大統領に非常に近かったと言われています。  しかし、その二人がうまく機能しているかというと、先ほど申し上げたとおり必ずしもそうではない側面があるわけでありまして、ですから、それが必ずしも全ての答えではありませんが、しかしやはり、繰り返しますが、総理大臣と官房長官との連携、そこから生まれる、醸し出す権力のにおい、権力の力、空気というものがやはり情報収集を、集める上においては非常に大事じゃないかというふうに思います。  ですから、総理大臣のやはり信頼が非常にその補佐官なり安保局長には必要かなというふうに思います。
  41. 真山勇一

    真山勇一君 ありがとうございました。やっぱり総理大臣の信頼という今ことをおっしゃいましたけれども、最高責任者である総理の立場というのはやっぱりこの二つ、組織をつくり、そして秘密保護法案を運用するためには大事なことだというふうに私は理解をいたしました。ありがとうございました。  続いて落合参考人にお伺いしたいんですが、今のお話の中でもやはりなかなかうまく動かないという点で、落合参考人は先ほど、必要な情報を出すということには信頼コミュニケーションが大事だと。やはりかなりこういうものも人間と人間の関係だなと、組織はあってもその中の人間がどういうふうに、役割とか立場ではなくて、本当にお互いに信頼関係コミュニケーションが大事だなということをおっしゃっていましたけど、私は、落合参考人は、経歴からちょっとお伺いしたいことがあります、検察庁にいらっしゃったということで。  実は、この中で司法の問題ということが挙げられます。一つは、特定秘密保護法案の中で、特定秘密秘密なわけですね、全く表に出てこないと。そうすると、ある日突然容疑が掛けられ逮捕状が来て逮捕されると。容疑何ですかと。いや、秘密だから言えないというようなこと、分かりませんと。で、検察で送検される。これについてももう恐らくそういうことになってしまう。そしていよいよ裁判が始まると、被告人の弁護人が、この被告はどういう罪で今回裁判かけられたのか、起訴されたのかということになっても、いや、それは秘密だから起訴の内容は言えませんというようなことになりかねない。  しかも、今回のこの特定秘密保護法案では民間人も当然特定秘密にかかわってくるわけですね。そうすると、場合によっちゃ接触すればそういう容疑が掛けられてくるということがあるわけなんですが、この今の法案の中で、司法、特に捜査と裁判の在り方、これはこういう秘密の中で、これまでの司法、これまでの裁判制度というものと対峙したり対立したり、あるいは不可能になるような、そういう面という、心配とかそういうことは感じられないでしょうか。
  42. 落合洋司

    参考人落合洋司君) 特定秘密法案が成立をした場合に、特定秘密というものが当然今後出てくる。それに対して犯罪だというふうな形で関与した人が起訴されるという場合が当然起きてきますよね。その場合に、特定秘密というのは秘密ですから、それを明らかにすることはできない。だから、明らかにすることができないことを前提として、じゃ起訴できるのかということを検察庁はまず考えると思うんですね。恐らく、いろいろ報道なんかもされているところも私は見ているんですが、外形的にこれは特定秘密として、秘密という存在存在しているんだと、中身は明らかにできないけど、秘密というものが存在はしているということで、それで立証していくということで、恐らく起訴はせざるを得ないと思うんですね、やるとすれば。  ですから、それが秘密の中身を明らかにしないと有罪判決が得られないのであれば、検察庁は逆に言えばそれは起訴できないですよね。そういう一つのパッケージの中に何かよく分からないものが入っている、一つのブラックボックスなんだけど、それが秘密なんだという、そういう状態で起訴ができるというふうに判断できて初めて起訴ができると。どうも過去にそういう立証した例というのはあるらしいんですけれども、私は直接は知りませんが、ただ理論的にはそれはやってできないことではないだろうと。ただ、その場合には、その秘密については当然言えません、言えません、言えませんというふうになって、私が関与しようとした秘密というのは何も言えないんですかということで、非常に不信感を招くような裁判にはなるだろうと。  ですから、そういう意味で、特定秘密保護法案というのはそういう問題点を本質的に抱えてはいるものであると。ただ、それが、秘密を守るために必要である以上はしようがないというふうに割り切ってしまうのか、いや、そういうものは国民の権利をきちんと擁護しながら裁判をやっていくというものになじまないというふうに見るのか、そこは非常に大きな問題であると思いますよね。
  43. 真山勇一

    真山勇一君 問題を抱えているということがよく分かりました。私はやっぱりちょっと心配しているのは、冤罪などの生む要素になるおそれがないのかなということを感じておりますが、やはり今審議して、これからの法案ですので、そういう辺りも是非しっかりと審議をしていかなければいけないというふうに思います。ありがとうございました。  最後に、西山参考人にお伺いしたいと思います。  西山参考人は、実は私もジャーナリズムを目指して、テレビでニュースをずっと長い間作っておりました。ちょうど西山参考人の裁判のころ、新米のジャーナリストということでスタートをしておりまして、一つは、やはりジャーナリストの先輩として、特だねを取るというのはこれはやっぱりすごいことなので、これはもう大変なことだなというそういう感じも持っておりましたし、その一方で裁判の行方というのを大変興味を持って見守ってきた一人でございます。今日は質問させていただくというのは、その大先輩に、大変光栄に思っておりますが。  先ほどの西山参考人のお話の中で、とても私も、先ほども出ましたけれども、外交交渉、やり取り、いろいろな了解事項、そのプロセスはいろいろあるだろうけれども、その結論というのは国民に正確に伝達しなくてはならない、結論は明らかにすべきだと。私はもう本当に、まさにこういうふうなことができれば理想的な、いわゆる国民に知らせることをきちっと知らせるというそうした国の体制ができてくるんじゃないかなというふうに思っておりますが、なかなかやはりこれは現実を考えると難しいこともあるのかなという感じをしております。  その中で、例えばやはりアメリカなどは、日本から情報が漏れてしまうから、情報というのはお互いにギブ・アンド・テークだと思います。ですから、出てしまうということになると、その結論が漏れちゃいけないことかどうかは別にして、やはり大事な外交交渉のものが例えば漏れてしまうとなかなか難しいですね、日本の主体性というのが守れるのかどうか。その辺りで、果たしてそういうことができるか。特に私は、西山参考人立場、つまり二十一条にあるんですが、秘密保護法案の、国民の知る権利、報道の自由、こういう面から是非この辺りはどういうふうに考えておられるかということをお伺いしたいと思います。
  44. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 今の問題はもう非常に深くて広い問題で、私は、今おっしゃったように、日本を振り返ってみましょう、この半世紀の間に日米間の情報というものを。国家間の非常に重要な情報というのが日本から出たことありますか。日本の国内の官僚が内部告発をして、そして、あるいはまた、非常にこれ重要な違法性があるとか違憲性があるとかという認識を持って内部の告発をして、そしてそれが日本中を震撼させると。  私は、よく情報の漏えいが最近非常に怖いとかなんとか言っているけれども、この前、ある覚書みたいなのに書いてあったけれども、ずっと私はこの六十年を振り返ってみて、全ての、沖縄問題もそうだし、それから日米新安保条約の問題もそうだし、それからイラク戦争に関する問題もそう、ほとんどアメリカですよ、情報源は。日本から内部告発ないしは日本から情報が出ていって、むしろアメリカにいろんなトラブルを起こさせたというような話は、まず正確にずっと振り返ってみるとあり得ないです。ほとんどアメリカ情報開示です。情報開示がいかにすばらしいものであるかということを我々は勉強しなくちゃいけない。アメリカ情報開示のすごさは、一九〇〇年代に入って情報公開法をまたぐっと手入れて、今や二十五年、三十年たったら九九%開示しています、今ね。それだからこそ、機密を逆に厳重に指定できるという面があるんですね、ある時期において。相関関係なんですよ。情報公開と機密というのは相関的に相互に絡み合っているんですよ。  だから、日本の沖縄の問題にしても何にしても、原潜の日本への寄港という問題にしても、ラロックという人が初めてしゃべってから出てきた。全部、情報源アメリカなんですよ、日米関係の重大な情報は。ですから、私は、アメリカ日本に、おい、おまえたち、ちょっとよくしゃべり過ぎる、危ないやといって、情報を監督しろなんていう、私はそういう懸念はないと思う。むしろ、アメリカの方の情報公開の方が日本をどんどん揺り動かして、日本をリードしている。それをもうちょっと考えてほしいです。    〔委員長退席、理事島尻安伊子君着席〕
  45. 真山勇一

    真山勇一君 どうもありがとうございました。
  46. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。  お三方、ありがとうございます。  西山参考人にまずお聞きしたいと思いますが、先ほど、NSCが発足すればアメリカ日本に対して協力を引き出すための情報を出すようになるだろうと、こういう趣旨のことをお話しされました。  私は、もう既にNSC日本に発足する前からそういう傾向が往々にしてあると、その一つの苦い教訓が先ほどから議論になっているイラク戦争だと思います。ただ、イラク戦争の場合は、アメリカもそれからイギリスも間違いだったと誤りを認めました。ところが、日本だけはいまだに政府は誤りを認めません。しかし、誤った情報に基づくイラク戦争に対する支持をしただけではなくて、イラクに自衛隊を送った、空自は武装した米兵まで運んだ。憲法違反のことまでやったわけですが、私は、そういう下で政府情報を集中するというのであれば、まずそういうことがあったことについての深い反省をしなければ非常に危惧される事態が起こるんじゃないかと思いますが、西山参考人、いかがでしょうか。
  47. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 全くそのとおりで、私が一番日本の外務省の官僚連中に言いたいことは、ある過去の事実で、もし、日本がある大きな密約なり違憲性のある違法な密約をやったということが発覚したと。それも、しかもアメリカが、交渉相手アメリカが全部発表している、正式に詳しく。そして、それが何十年も後に分かったというときに、なぜ依然としてないと言うのかと。これが日本の、先進国群の中でこういう国は日本だけだという。アメリカはキューバ侵攻のときに失敗したと。失敗したら失敗したで、ケネディだって失敗したということを言うんですよね。アメリカイラク戦争で失敗した、大義名分はあれはでっち上げだったと。そうしたら、やがて、いや、あれは間違っていたと言うんですよ。イギリスもそうですよ。イラク戦争に参加したら、これは間違いだったかどうかというのを検証するわけです、徹底的に。そして、やがて、それは俺たちが間違っていたと、こう言うんですよ。  なぜ日本がそれ言わないか。言えばすごく簡単なんです。言ったら、こんなだらだらだらだらした、変なもやもやした不信感というのは生まれないです。なぜ外務省は沖縄密約をいまだにまだ否定するのか。ちゃんと認めたらいいんですよ。それを私は何遍も言っているんですよね。それが日本の今の政治の一番の根底にある一番ガンですよ、これはね。これを是正するということは、機密保全という問題にもある程度解決する糸口をつくるんです。全くそのように思います。
  48. 山下芳生

    山下芳生君 もう一問、西山参考人に伺いますが、私は、戦後、二度と戦争はしないと決めた憲法があるにもかかわらず、日米安保体制の下で戦争する国づくりにずっと進んできていると、こう認識をしております。その中で、日本政府は一貫して、先ほどお話があった核持込みあるいは沖縄返還についての日米間の密約を存在しないものと、先ほどから言っておられるように、米側が資料を出しても、また当事者が証言しても、そんなものはなかったというふうにずっとこれを認めることを拒否し続けてまいりました。そして、それを明らかにしようとする行いや取材に対して妨害や弾圧を加えてまいりました。  そういう流れの中で、今、安倍政権が日米同盟の一層の強化を図ろうとし、その下で、NSCの設置、それと一体の秘密保護法制を急ごうとしていると。この狙いはどこにあるのか。日本アメリカ政府の狙い、この間密約と闘ってこられた西山参考人の御認識を伺いたいと思います。
  49. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 私、二つあると思うんですが、一つは、やっぱり内閣の権限を一極集中化させようと、この際、一挙にね。御覧になってくださいよ。内閣人事局つくる、各府省の幹部が首相官邸で全部人選できるわけですよ。日銀総裁も自分の配下、いいですか、内閣法制局長官も自分の配下、NHKの会長を決めるNHKの経営委員も全部自分の息の掛かった連中。これはちょっと、幾ら権力の集中過程としても、こんなのを一挙にやるというのは異常なことですよ、これ。権力の集中というものは必ず秘密の保全を伴うんです。権力の集中一元化をやればやるほど秘密の保全というのは進行するんですよ。そういう悪循環を断ち切らなくちゃいけない。  私は、権力を集中させるということの意義が今分からないんです。なぜこんなに異常に集中させるかということです。そういうような流れも一つあると思うんです、大きなね、この際一挙にという。これはなぜかというと、やっぱり一つにあるのは、日米体制というものをこの際一挙に聖域化して、これによって日本国家の安全保障体系をもう不動のものにするという意思もあります。対中国、対朝鮮に対する抑止力を固定化させるというものと裏腹になって権力の集中一元化が進んでいると思います。  だから、私は、そういうようなことの前に、そういう権力の集中一元化を、恐らく、こんなに際立って集中的に一挙に出てきたというのは、私、戦後長い間見ているけど、まずあり得ませんよ。余りにもすごいですよ、これ。だから、その辺の中に秘密保全が必ず付きまとうんです。集中と保全というのは必ず一体、裏表関係にある。それをやっぱりもう少し反省していただきたいと思いますね。
  50. 山下芳生

    山下芳生君 続いて、春原参考人に質問したいと思います。  アメリカの要人にいろいろ直接取材をされていると承知しておりますが、米側は日本側の情報保全についてどのように見ているのかと。先ほど、ペルー大使館人質事件の際のことを、これは具体的な確証、証拠があってのことではないがというふうにおっしゃられましたが、別の具体例ももしあるなら挙げていただきながら、その辺り、いろいろな取材を通じてお感じのことを、御見解伺いたいと思います。
  51. 春原剛

    参考人春原剛君) 日本の安全保障に関する官庁、外務省はもちろんですが、防衛省にしてもそうでしょうし、経産省、文部科学省、警察庁、いろいろあろうかと思いますが、それぞれそれなりに情報の保全に努めているものと思っています。  ただ、アメリカ側から見たときに、どうしてもなかなか完全に漏れないという確証を得られないという実感を持っている人が時折いることもそれは間違いありません。特に最近の場合ですと、衛星情報とかがありまして、画像が例えばあります。これは私の著作にも書いていますけれども、アメリカ側はだから結構縛りを掛けますね。外務省なり防衛省の局長に、あなたには見せるけれどもその上の政治家には見せないでくれとか、ニード・ツー・ノウとか、昔スパイ映画のタイトルにもなりましたが、ユア・アイズ・オンリーとかいろんな言葉がありますけれども、おまえだけにとどめておいてくれと。だけど、昨今の政治主導、官邸主導の名の下に、今政治家の皆さんがどんどんいろんな政策において主導権を握ろうとしているという中で、今までのように官僚が全てを決めるわけにはいかない、最終的な政治判断を仰ぐためには情報を、アメリカから提示されたものも伝えなきゃいけないと。さて、これどうしようかというジレンマをここ数年日本はずっと抱えていたのではないかというふうに思います。  ですから、これは自民党の石破幹事長の持論でもあるし、私もそれは賛成なんですが、例えば、国会において、これはアメリカのモデルですけれども、先ほど西山さんがアメリカ情報開示の例を言いましたけれども、一方で、アメリカ情報の保全のために例えば上院に情報特別委員会というのがあって、この委員長は、何人か私も知り合いがいますけれども、非常に厳格に情報を管理しておられます。そこに入られた上院議員の方々にもちろん取材をしても一切コンフィデンシャルな情報は漏らさないと。例えば、そういった形での立法府におけるいろいろな施策も今後やらなければいけないのではないかと個人的には思います。そうすることによって、皆さん、国会議員に情報が共有されるわけであって、そこでもって初めて政治の主導なり政治の判断というのがもっともっと充実していくのではないかというふうに思っております。
  52. 山下芳生

    山下芳生君 今、春原参考人から、アメリカ情報保全委員会でしたっけ。
  53. 春原剛

  54. 山下芳生

    山下芳生君 特別委員会ですか。  私、最近ある本を少し読ませていただいたら、恐らくその委員会のことが出ていて、その委員会イラク戦争のときに、その委員にしかイラク戦争を開戦する際に必要な情報が開示されなかった。その委員がその情報に接しようと思うとある部屋に議員だけが行って、秘書も同行できない、コピーも取ることができない、その場で見ることしかできない、そういうところで膨大なイラク戦争開戦に当たる情報があって、だから、ほとんどの議員は大部のその情報を見ることができなかった、秘書も同行できませんから。その中にごく一部注釈として、国務省の情報として、イラクが大量破壊兵器を保有しているということは違うというのが一言あったけれども、それを見た議員は、そこまで達した議員はほとんどいなかった。それがいわゆる日本でいうと秘密会的なアメリカの議会の在り方。  もしそういうことになったら、これは戦争を回避するかどうかという非常に重要な国家の意思を決定するのに、国民の代表たる議員がその重要な情報に接することもできない仕掛けがつくられたことが一つ間違った戦争にアメリカが突き進んでいった大きな要因ではないかということもその本を読みながら感じたんですが、そういう点はいかがでしょうか。
  55. 春原剛

    参考人春原剛君) 確かに、アメリカ情報はたくさん開示されているんですが、今おっしゃられた秘密公聴会等々でも膨大な情報が提示されて、その中で、その砂浜の中で本当の光るダイヤモンドを見付けるのは非常に大変だというのはよく言われていることではあります。ですから、逆に言うと、例えばアメリカの例でいうと、上院の特別情報委員会に選ばれる議員というのは非常に優れた人たちで、国益を考えている人だというふうに尊敬をすごく集めています。  何が言いたいかというと、議員の皆さんも、恐らくアメリカにおいては非常にそこのところは鋭敏な感覚を持ち、日々切磋琢磨し、あるいは日ごろから行政側の人たちといろんなコンタクトをして勉強もされているんだろうと思います。ただ、それだけでも、今御指摘があったように、膨大な砂浜の中からたった一個のダイヤモンドを見付けられるかというと、それは個人の能力には限界がありますので、そこのところはやはりアメリカのシステムが、先ほどから申し上げましたように、全て我々の参考になるわけではなく、それがお手本になるわけではなく、一つのモデルとして見て、その足りないところは我々の日本流、独自の新しいシステムを構築していくべきではないかというふうに思います。
  56. 山下芳生

    山下芳生君 最後に、落合参考人に伺います。  参考人弁護士であり東京地検公安部経験もお持ちなので、ちょっと今日のテーマとは違いますが、秘密保護法案について私からも聞かせていただきたいと思います。  昨日のやり取りでも、この特定秘密保護法案は一般の国民には関係がないんだと、総理も、なぜなら、一般の国民は特定秘密に接することがないからだと、こうおっしゃいました。ただしかし、私は本当にそうだろうかと。例えば、森の中で野鳥を観察していた、そうすると軍事演習が近くの森林でやられているということに気が付いたと、そのことを仲間に情報をネットで提供したということなどが、その人は、本人は特定秘密とは知らない場合であっても突然逮捕される危険性はないのかと。しかも、知らないということを証明するのは本人ではなくて、それは警察権力の方になるであろうと。だから、一般の人は知らないから関係ないと言えないんじゃないかと、こう理解しているんですが、参考人、いかがでしょうか。    〔理事島尻安伊子君退席、委員長着席〕
  57. 落合洋司

    参考人落合洋司君) 端的に申し上げますけれども、やはり行政庁が持っている情報に対して様々な形でアクセスしたい、知りたいという人は今の世の中やっぱり多いわけですよね。その中に、もちろんテロリストのような人もいれば市民運動やっている人とか、いろんな方がいらっしゃると。やっぱりその知りたいというふうな希望があってそこに寄っていくということはいろんな形であり得るわけですから、ですから、一般人がそういった情報に接近していくというふうな中で、それが特定秘密というものにかかわるということは、それはやっぱり起きてこないとは当然言い切れないですよね。むしろ起きてくる可能性は当然あるんだと。  だから、そういったことがあり得るんだということを前提にして、やはり処罰をするにしても過剰な処罰に及ばないとかというふうな絞りを掛けていくと。私は検察庁にもいましたし、今弁護士ですから、刑罰というものは必要最小限度といいますか、にとどめなくちゃいけないという、そういう基本的な考え方を持っているものですから、やはりそういった危険性というものを踏まえた上で処罰の在り方というものを考えていかなくちゃいけないというふうには思っております。  以上です。
  58. 山下芳生

    山下芳生君 ありがとうございました。終わります。
  59. 中山恭子

    ○中山恭子君 日本維新の会、中山でございます。  今日はお忙しい中、また大変ショートノーティスだったかと思いますが、参考人として御出席くださいましてありがとうございます。  今日、春原参考人アメリカのお話をいろいろしてくださいました。私自身日本でこのNSCをつくるに当たって、アメリカの制度、アメリカの状況というのは非常に参考になるものであろうと考えております。  今日の中で、アメリカ情報機関、十を超える情報機関が今統合されていると思いますが、その統合されるときの、何というんでしょう、成り行きというか、難しい問題もあったはずでございますが、その当時のことをもう少し詳しくお話しいただけませんでしょうか。
  60. 春原剛

    参考人春原剛君) 御記憶の方は多いと思いますが、同時テロが起こった後に、多くのアルカイダと言われる国際テロ組織に所属している青年がアメリカ国内に潜伏し、セスナ機の操縦を習ったりいろんな活動をして、実はそういうことに関して国内の治安当局であるFBIのレーダーにはたくさん引っかかっていたと。  ところが、それが対外情報を取り扱うCIA、あるいはCIAから情報を吸い上げるNSCにそうしたものが十分伝わっていなかったということで、これはもう皆さん多くの方が忘れていますが、やはり政権というのは安倍政権、野田政権で区切れないのと同じで、実はアルカイダの攻撃というのはクリントン政権のときに既に何度か企てがあったというふうに言われています。そのときはサミュエル・バーガーという安全保障担当補佐官がいたんですが、彼らにもその情報が上がっていたにもかかわらず、ほとんどこれは、先ほどのあのダイヤモンド、砂浜の中のダイヤモンドじゃありませんが、そういうレベルにおいても見付からなかったと。実際、ブッシュ政権になっても、コンドリーザ・ライス補佐官も、実はそこに情報が上がっていたにもかかわらずこのアルカイダによる同時テロの危険性というのを十分に察知しなかったと言われています。  そうした反省を踏まえてアメリカは、結局、簡単に言うとCIAとFBI、国内と国外の治安機関の統合というのをやろうとしたわけです。結果的にそのCIAの長官というのを、国家情報長官という新しいキャップを、日本語で言うと屋上屋を重ねるかのごとく置きましてやったわけなんですが、今の現状を申し上げますと、これはアメリカの人たちの率直な意見ですが、実際にアメリカの行政府の中で、さて、どちらに権力があってどちらに尊敬が集まっているかというと、いまだにCIA長官であると。国家情報長官はほとんど張り子の虎であるというふうに言われています。それを多くの人にあれは何か変えなきゃいけないんじゃないかと問題提起を酒飲み話等々も含めてしますと、今まだトライ・アンド・エラーなんだという答えが必ず返ってきます。それはもう暗黙のうちに彼らは認めているわけであって、ただ象徴として、少なくともFBIとCIAが協力をするんだ、新しいテロの脅威に備えるんだという、そういうマインドセットをするという意味での意義はあったんだろうと思います。  ただ、本当に、今の日本版NSC、あるいは情報をどうやって吸い上げるかというこれまでの議論と同じですけれども、さて、落合さんが何遍も言われている人と人との信頼関係、あるいは権力に直結する人に情報を集めたいという人間本来の、情報機関、特に本来の性格を踏まえて、どういうふうにするかというのは多分アメリカもまだいまだに答えが出ていないのだろうと思います。  ついでに申し上げると、国家保全局というか保全省をつくりましたので、ホームランドセキュリティーというのを、新しい省をアメリカはつくりましたので、そこでまたいろんな、例えば海上保安庁であるとか移民局であるとかを全部統合したわけですね。やはりそういうことによるテロリストに対する心理的な圧迫感というのは、恐らく従来にはないものがあるんだろうというふうに思われます。
  61. 中山恭子

    ○中山恭子君 御丁寧に御説明いただきましてありがとうございます。  また、もう一つ教えていただきたいと思っておりますのは、補佐官であっても、やはり人によって組織を生かせるか又は自分のものにしてしまって生かせていないとか、いろいろあろうかと思います。その中で特にベーカー大使についてもう少し、どういうことをどのようになさってきたのか、具体的なものも含めてお話しいただけたら有り難いですけれども。
  62. 春原剛

    参考人春原剛君) ベーカーさんがレーガン政権の首席補佐官だったときに幾つかNSC改革というのを断行しました。そのうちの最大のものは、恐らく安全保障問題担当補佐官大統領執務室において二人きりで大統領に会うことを許さない、つまり密室による二人だけのアドバイスというのをさせないということをしたと。あるいは、その安全保障問題担当補佐官はたくさんのメモというのを出します。これが実はすぐ即時機密指示を受けて長い間機密になるわけですね。これ、機密解除されたものが、よくコンフィデンシャルというのが開示されてNHKの番組等々でも紹介されますけれども、このメモも当時は、今は知りませんが、ベーカーさんが改革をしていたときは必ず首席補佐官であるベーカーさんの目を通した後に大統領に伝わると、こういうことをしました。それによって、NSCが本来、いろんな情報なりアイデアなり、非常にある意味脆弱な立場にある大統領を守るんだと。  先ほど、権力の暴走装置としてのNSCというのがありますけれども、逆に、やっぱり大統領日本においては内閣総理大臣もそうだと思いますが、全てのことに目を光らすというのはよほどのスーパーマンでない限り難しいので、やはりある意味どうしても弱い面があります。そこを、その補佐官がさしで話して自分の自らの利益誘導かのごとく誘導してしまうということをできるだけ防ごうとしたというふうにベーカーさんは私に説明されました。
  63. 中山恭子

    ○中山恭子君 ベーカー日本大使でいらっしゃるときにも北朝鮮による拉致問題に関しましても非常にある意味で御尽力いただいた方でございまして、そのときのベーカー大使の動きを見ておりまして非常に何というか教えられるところが多々あったものですから、きっとアメリカにおけるベーカー首席補佐官としてのお仕事も見習うことがたくさんあるのではないかと思って伺いました。  もう一点、日本は戦後、こういった形の情報に関する組織というものがそれぞれの省にあるといいながら、やはり非常に弱体化されたものになってしまっていると。特にヒューミントに関しては日本の力というのは大変弱いと思いますが、これから日本版NSCをつくっていく場合、そういった情報を収集したり、扱ったり、分析したりする人材の育成というのをもう一度しっかり行わないといけないのではないかと思っておりますが、アメリカ、もしできれば、例えばイギリスやドイツでそういった育成というものがどのようになされているのか、御存じでしたら教えてください。
  64. 春原剛

    参考人春原剛君) 今の御質問の趣旨に必ずしも十分答えることはできないかと思いますけれども、アメリカ、ほかの先進各国もそうだと思いますが、リクルートを常にしているというふうには聞いております。  それで、アメリカCIA歴史に関する本等を読みますと、当初、第二次世界大戦が終わった後に発足したころというのは、いわゆるアイビーリーグと言われるハーバードとかイエールとかコロンビアとかプリンストン、そういうところの白人の名家の子息が多かったというふうに言われていますね。それだけ、だから国家を背負うという使命感が強かったと。逆に言うと、エリート意識も強い、独善性も強いという、それはもろ刃の剣だと思うんですが、そういう人たちがやはりCIAというのをたくさんつくっていったと。これは映画にも幾つかありますので御覧になったことあるかと思いますけれども、そのカルチャーはいまだに生きているというふうに言われています。  ただ、数年前、もうかなり前ですが、数年前といっても、CIAが一回リクルートの広告を新聞か何かに出したことがあって、当時、そのときまで恐らくほとんど白人で、女性もほとんどいない。ところが、そのころから、女性ももちろんなんですが、アフリカ系の人とか、いわゆる有色人種系の人にもCIAが触手を伸ばしたということでアメリカのメディアで大変な話題になりました。ですから、恐らく、かつてCIAができたころのイエール、プリンストン、ハーバード出の若い白人の名家の子息たちではもう賄い切れなくなっているんだろうというふうに思います。
  65. 中山恭子

    ○中山恭子君 ありがとうございます。  こういったメンバーはCIAとかNSAとかに入ってから教育されるものなのでしょうか。中にそういった教育組織というようなものを持っていると考えてよろしいんでしょうか。
  66. 春原剛

    参考人春原剛君) そのように認識しております。
  67. 中山恭子

    ○中山恭子君 日本ではこういった形のものというのがまだまだつくられておりませんし、今本当にやっと緒に就いたというところで、それぞれの省庁が持っている情報をどのように集中させていくかということも非常に難しい。あのセンタービルのテロのようなことでもあればまとまる可能性もあるのかもしれませんが、現在の日本でそれぞれの省庁の情報を集約していくということは非常に難しい。要求して、出さなければいけない義務があるとはいいながら、どこにどういう情報があるのかというのは持っている側しか分からない事柄でございますので、今後、この日本版NSCというものがこのままの形でいいとはとても思えないものですから、先ほどトライ・アンド・エラーとおっしゃっていましたが、日本の場合にも大体そのくらいのものだということで考えていった方がいいのではないだろうかと思っております。  そういったことについてもし御意見がありましたら、お三方からの御意見があったらうれしいです。
  68. 春原剛

    参考人春原剛君) 手短にお答えします。  全く同感です。恐らく、今の国際情勢、冒頭申し上げましたけれども、国際情勢に鑑みて、NSC組織がないと、なかなか日本がこれから国家として立ち行かなくなる状況があり得ると思いますので、取りあえずつくるということに意義があろうかと。先ほど大野議員からもそういう指摘がありましたけれども、つくるということに私も個人的には大変意義があるというふうに思っています。  ただ、つくったからといって、今般これができて発足したといって、それが完全なものということになるわけではなく、トライ・アンド・エラーを重ねて、だんだん日本に見合った、体に合ったジャストフィットのNSCのものができていければいいんじゃないかというふうに思います。
  69. 落合洋司

    参考人落合洋司君) 私が感じているのは、まず人材といいますか、やっぱりいい人を充てると、人を確保してその人を核にして更にいい人をリクルートしていくと、やっぱりそういう形でスタートしてほしいなというふうに思っていますね。  以上です。
  70. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 私は、外務省とか防衛省とかというような縦割りの中で生まれてくる非常にいびつな保守主義、情報の管理というのは、これは私は体験していますけど、非常に我々が想像だにできないほどかたくななものがあるんですね。そうすると、私は、こういったものを打破する意味でも、こういうNSCなんかができて、仮にもしそういうものから情報をかき集めてきて、収集して、そして国民に向き合うと。だから、外務、防衛というよりも、それを乗り越えた一つの、国民に直接話しかけ、対話し、そして新しい安全保障政策をつくり出していくという、そういうような機能を持つ国家安全保障会議になっていただきたいと思うんですね。
  71. 中山恭子

    ○中山恭子君 ありがとうございます。  西山参考人が先ほど、過程は必要ない、出す必要はないけれども、決まったこと、決まったときには国民に全て知らせるべしという、非常に私も共感を得たお言葉でございまして、それがただ、できる人物というのはなかなか存在しないということもあろうかと思います。考え方に完全な自信を持って動ける人物じゃないとできないことでしょうし、そのことによって、みんなと共有する、情報を共有して国の事柄を進めていこうと、こういうふうに私も含めて全員がそんなふうに考えていけば情報というのも生きてくるだろうと。  本当に今日はいろいろ貴重な御意見ありがとうございました。
  72. 吉田忠智

    吉田忠智君 社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。  三人の参考人の先生方には、お忙しい中、時間を取っていただきまして、貴重な御意見をいただきまして誠にありがとうございます。  まず、西山参考人に何点か伺います。  今日は日本版NSCについての参考人質疑でありますが、当然のこととして特定秘密保護法案も密接にかかわります。セットと言ってもいいと思っておりますので、含めてお伺いをしたいと思います。日本版NSCの設置によって日米の緊密な情報交換と秘密保持が日常化すると、そのように思っております。  西山参考人は先ほど、外交交渉の結果が出たら一二〇%を国民に知らせるべきと言われました。そうすれば特定秘密はごく限定されると言われるわけでありますけれども、このNSC設置法案あるいは特定秘密法案の、今衆議院で議論されておりますけれども、それらの法案の中身と議論内容がそのようなものになっているのかどうか、是非お考えを伺いたいと思います。
  73. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 今、特別秘密の別表を私ずっと読んでみて正確に分析してみますと、今言ったようなボーダーラインが、プロセスとコンクルージョンというものが何もないんですね。外交内容、方針というような、それが安全保障に重大な影響を及ぼすというふうになっているんですね。非常に抽象的なんですよ。私は、これが一番、拡大解釈されていけば外交交渉全般が、例えばどうも日本側にとって都合の悪い結論が出たといった場合には、それを都合の悪い部分だけを隠して、そして都合のいい部分だけを表示していくというようなことになりかねないと思うんですよ、これをこのままやれば。  ですから、私は外交交渉、折衝、あらゆる、日米の地位協定に関する問題でもいいですし、それからまた、日米関係の非常に重要な政治、経済、軍事、そういったような、これは私何遍も言いますけれども、国民にとって一番知らなくちゃいけないことです。日本国家の存立基盤は日米安保体制だと言っているんで、もう百回も二百回も言っているんですから、機会あるごとに。であれば、我々は、国民はそれに存立を委ねているわけですからね、生命、財産を。でしたら、その情報は、少なくとも結論が出たら、双方の了解が成立したら正確に国民に伝達して、そして協力を要請すると、これ民主主義のイロハのイだと思いますよ。  ただし、それは言うはやすくして行うは難しで、実際にまとまっても、都合の悪いものが余りにも多いと、どうしてもそれを極力伏せていくという政権の本能的な一つのテンデンシーです、これ。ですけれども、それを克服していかなければ、日本の本当の民主主義というのは自立できませんよ。  ですから、私は、与野党を超えて、これは統一的に私はできると思うんです。プロセスじゃないんです、結果ですよ。結果というものはあくまでも国民に伝達するというのは与野党共通の一つの土台にしていただきたいと思います。これは僕は可能だと思います。そうしたら特別秘密の領域は相当限定されていきます、それだけで。  私は何遍も言うけれども、スパイだとかテロだとかというものを防ぐための情報というのは、これはある程度それは国民の共通の認識として必要だというふうに思っていますよ。だけれども、一番大事なのは、私は外交だと思いますよ。外交情報ですよ。日米体制に関する機密条項というのが今度の根幹ですから。なぜかというと、日本の戦後のずっと歴史見てごらんなさい。日米同盟に関するものだけがいつも機密として問題になったじゃないですか。新安保もそうですし、沖縄返還もそうですし、それから米軍再編のときの、イラクの問題もそうですし、それからグアムに移駐する問題もそうですし、全部そうですよ。  ですから、その辺を与野党で話し合って詰めて、決まったものだけは正確に伝達しようと。これは、私は最大の公約数としてできないことはないと思うんですよね。ただし、それに至るまでのいろんな機微な問題、またそれにまつわるいろんな錯綜した問題を一々一々国民に公表する必要はないと思う。ただし、一番根幹を成すべき結論が出た、これで了解が成立したということであれば、これは全部国民に伝達し、かつ同時に解説し、そして協力を要請するということです。それが確立されれば私は特別秘密法というのはある程度タイドオーバーできると思うんです。
  74. 吉田忠智

    吉田忠智君 ありがとうございます。  対米関係において苦い歴史的な教訓で沖縄の密約問題があるわけですが、歴史の表現者として西山参考人にお伺いしたいと思うのですが、歴代自民党の政府は一貫して否認をしてきました。そして、民主党政権の岡田外相時代に一部認める報告を作成をしております。その一連の経緯を踏まえて、改めて西山参考人見解を伺いたいと思います。
  75. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 昨日でしたか、特別委員会で総理が、沖縄密約を今でもあなたは否定するのか肯定するのかという質問に対して、最近統一見解が出てきたんですね、政府の。民主党時代の報告を踏襲しますと。これ、密約をイエス、ノーと言わなくなった。これは、私は外務省の事務当局のアドバイスだと思う。民主党時代に出た密約調査というものの報告書がある。外務省の調査報告書と大蔵省の調査報告書と二本あるんですよ。ところが、今どうも余りこの理解が非常に浅くて、現在の政権首脳部は、あの外務省の北岡委員会の調査報告書しか頭にないようなんです。あれは、核密約なしですよ。私は、元の外務事務次官の大ボスの斉藤という人と一緒に外務委員会参考人に呼ばれたときに、斉藤という元外務事務次官でさえも、核密約は、これ以上の密約はないと言ったんです。それ以外ないんです、委員会では。これは、まあいろいろ言えば切りがないから。  それからもう一つは、私の四百万ドルの密約ですよ、これは。そうしたら、それは広義の密約性はあったとしても狭義の密約じゃないと言ったんです。そうすると、何ですか、結局、私は外務省がアドバイスしたとおりだと思うんです。密約はないという既定方針を貫かれるんです、ある程度。  ところが、大蔵省で出した膨大な報告書は、総額三億二千万ドルというのはうその八百であって、あれの倍近い密約をしているんだと認定しちゃったんです。そして、そのときに、裁判所の、東京地方裁判所、東京高等裁判所はいずれも膨大な財政密約を全部認定しました。  いや、それ、すごい、すばらしい、まあはっきり言えば選択だと思いますけれども、それはアメリカの開示した資料に基づいているんです、全部、日本にはないから、アメリカの開示した資料に基づいて日本は裁判で判決下しているんですよ。それほどすごいんです、このアメリカの開示の正確さというのは。  だから、そういうような面から見て、今私は、今の内閣も沖縄密約というのはあのときあったんだと認定すべきです、司法がもう完全にやったんですから。認定したからといって、別にこれが今の内閣の重大な責任であるとかなんとかという問題に波及するとは一つも私は思いませんよ。長い間の蓄積されてきた、要するに虚偽表示というものが外務官僚によってガードされてきた、それがずっと政治の内部に浸透してきて、それから外務官僚からのいろんなアドバイスが、こうなってきている。  ですから、この際そういうような、クリアに、ないものはない、あるものはあると認定した上で、自分たちのいわゆる今の立場を、ですけれども、機密機密、開示は開示だということで国民に相対する、これが政治のイロハのイで民主主義の一番の要諦です。そう思います。
  76. 吉田忠智

    吉田忠智君 ありがとうございます。  私も、その密約をまず認定することから今回の法案の審議は始まらなければならないと思っています。  その沖縄密約問題もそうでありますけれども、歴代自民党政府が幾つか密約を隠蔽している問題について、西山参考人は「世界」の今年の十一月号に三つの事例について出されております。  一つは、イラクに派遣された航空自衛隊が米兵を運んでいたという問題、あるいは海上自衛隊が米艦船に給油していたという問題。それから二点目が、オバマ大統領が広島を訪問を希望したけれども、外務省の事務次官がそれを止めたという問題。それから三つ目が、鳩山政権時代に鳩山首相が、国外、少なくとも県外ということを言われて、当時の外務事務次官がアメリカに対して、それらのことを米国は絶対に容認せず、従来どおり方針を変えないでほしいと進言したこと。  最近でもそういう密約の事例があるわけですよね。そのことについてお考えをお伺いします。
  77. 西山太吉

    参考人西山太吉君) 要するに、イラクの問題は、名古屋の高等裁判所が航空自衛隊の活動は違憲であると言ったわけですね。私はこれは大人げないと思うんですよ、自民党の、やはりもうちょっと大人になればいいと。  あのときに情報開示請求したら、市民団体が、真っ黒けですよ。イラクの航空自衛隊の活動についてという、真っ黒ですよ、分からない。そして、もう一回政権交代あった。今度は民主党のときにはこれだけは出しました。そうすると、六九%は米兵の、武装米兵です、これ運搬だった。ということはイラク戦争に参画しているということになるから、全部そういう連鎖されますね。そして、名古屋高裁で、名古屋高等裁判所が判決下したわけですよ。そのときの外務大臣、何と言ったかと。こんなつまらない下劣な判決は、俺が政界をやめてから、何もなくなってから見てやらあという、これが外務大臣の言葉ですよ。今現職におられるけど、あるところに。  ですから、私はそれは大人げないというんですよ。そういう事実関係は事実として厳正に認めればいいんです。認めた上で、今我々はこういうようなものは誤っていたと、これはしかしこういうふうに是正するとか、新しい政策を出せばいいんですよ。イギリスはそれをやっているんですよ、イギリスの議会は。徹底的にやりますよ、やるときは、アメリカも。  ですから、私は、日本がそういうところにいろんな変なこだわりを持って、過去の事例を自分たちの視点からちゃんと見詰め直して、そしてそれに対してイエス、ノーをはっきりさせて、それから今度の次のステップに入っていくと、これがまず一番大事なことだと思います、日本のね。歴史の検証ができないんですよ、何も、それだったら。そういうことを続けていったら本当の検証ができないんですよ、これ。はっきり言えば、何かレポートを書けといったって、日本、書けないでしょう、そういうことを全部隠していくと。今度、アメリカの国務省が沖縄返還交渉についてのケーススタディーという非常に詳しい本を出しましたよ。今度翻訳されますけれどもね、出版されます。そういうものができないでしょう、日本は、隠し事が多いから。  だから、私は、それはそれで、そのときはこうやったけれども今はこうだということを踏み切っていかなくちゃいけない、それは。それを克服していかなくちゃ、いつまでたっても日本というものは新しい一つのジャンルに入っていけないです、それを背負い込んでいるとね。そういうことです。
  78. 吉田忠智

    吉田忠智君 ありがとうございます。  春原参考人それから落合参考人に同じ質問をしますが、先ほど春原参考人は、両法案セットでというふうに私は受け止めましたけれども、言論、報道、自由が担保されなければならないと、法案に、それから丁寧で深い議論が行われなければならないと、そのように言われました。法案が言論、報道、自由が担保されているものになっているかどうか。そして、この間のそれぞれ衆議院、参議院における安全保障委員会議論が丁寧で深い議論になっているかどうか、お二人の参考人に伺いたいと思います。
  79. 春原剛

    参考人春原剛君) 今まさしく旬の議論であろうかと思いますので、現在進行形ですから断定的な評価を下すのは差し控えたいと思います。ただ、野党、与党の皆さんが衆参両議院でかなり深い議論をされているものだと、もちろんこうした国会の場を通じてもそうですし、国会の場を離れた形でもいろいろやっているのではないかと思います。  先ほど御指摘あったように、言論の自由はやはり民主主義の根幹だと思いますので、何としても守っていただきたいと。報道の自由という言葉と言論の自由が、どうもこれも混同されているように思うんですが、私は言論の自由をきちんと守っていただきたいと。  その昔、記者会見はサービスだとおっしゃった方がいました。これは、サービスというのは奉仕だというようなことを後で、僕にとっては詭弁にしか聞こえない言葉を言った人もいましたが、記者会見は私はサービスでも奉仕でもないと思います。公に尽くす方、それは政治家も官僚も含めて、記者会見というのは、つまり情報の開示は義務であります。ですから、その言論の自由は民主主義の根幹を成すものでありますから、その民主主義を守っていかれる皆さんの、公僕の皆さんに対しては、是非主権者たる国民に対しての義務を何としても守っていただきたいと、これは絶対に譲れない線だと思っております。  この線を守った上で、先ほど申し上げました、世界情勢も変化している、日米同盟も実は弱体化している、アメリカ国家戦略も今かなり揺らいでいる、日本がこのまま置いていかれてガラパゴス化になってしまう、そういう中でどういうふうに守るべき秘密を守っていくのか、開示すべきものを開示していくのか、そういった議論を是非この場でますます議論をしていただきたいというふうに思っております。
  80. 中川雅治

    委員長中川雅治君) 吉田忠智君、時間ですが。
  81. 落合洋司

    参考人落合洋司君) ごく簡単に、じゃ、よろしいですか。
  82. 吉田忠智

    吉田忠智君 簡潔にお願いします。
  83. 落合洋司

    参考人落合洋司君) 端的に申しますと、やはり特定秘密保護法案の処罰規定というのは、かなり広範囲な処罰が行われる余地があり、かつ法的に重いと。それについて国民の不安が非常に広がっている面があると思うんですね。それについて今までの報道等を見ていますと、十分な答弁がされているというふうには私は見えないと思っている。ですから、それについてはやっぱり慎重な議論、審議というものが必要だと思いますし、まず成立ありきというふうなやり方については非常に危惧を覚えているという状態であります。  以上です。
  84. 吉田忠智

    吉田忠智君 大変貴重な御意見、ありがとうございました。
  85. 中川雅治

    委員長中川雅治君) 参考人に対する質疑はこの程度といたします。  この際、参考人方々に一言御礼を申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十分散会