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2013-11-28 第185回国会 参議院 経済産業委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十五年十一月二十八日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大久保 勉君     理 事                 岩井 茂樹君                 松村 祥史君                 加藤 敏幸君                 倉林 明子君     委 員                 磯崎 仁彦君                 高野光二郎君                 滝波 宏文君                 宮本 周司君                 吉川ゆうみ君                 渡邉 美樹君                 小林 正夫君                 直嶋 正行君                 増子 輝彦君                 杉  久武君                 谷合 正明君                 行田 邦子君                 松田 公太君                 中野 正志君                 荒井 広幸君    国務大臣        経済産業大臣   茂木 敏充君    副大臣        経済産業大臣  松島みどり君    大臣政務官        経済産業大臣政        務官       磯崎 仁彦君    事務局側        常任委員会専門        員        奥井 俊二君    政府参考人        内閣官房内閣参        事官       吉川 徹志君        総務大臣官房審        議官       上村  進君        財務省主計局次        長        岡本 薫明君        文部科学大臣官        房審議官     常盤  豊君        厚生労働大臣官        房審議官     高島  泉君        厚生労働大臣官        房審議官     新原 浩朗君        経済産業大臣官        房地域経済産業        審議官      加藤 洋一君        経済産業大臣官        房審議官     西山 圭太君        経済産業省経済        産業政策局長   菅原 郁郎君        経済産業省産業        技術環境局長   片瀬 裕文君        経済産業省製造        産業局長     宮川  正君        経済産業省商務        情報政策局長   富田 健介君        資源エネルギー        庁長官      上田 隆之君        資源エネルギー        庁省エネルギー        ・新エネルギー        部長       木村 陽一君        中小企業庁長官  北川 慎介君        中小企業庁事業        環境部長     松永  明君        国土交通大臣官        房建設流通政策        審議官      吉田 光市君    参考人        東京理科大学大        学院イノベーシ        ョン研究科長   伊丹 敬之君        公益社団法人経        済同友会代表        幹事        株式会社経営共        創基盤代表取締        役CEO     冨山 和彦君        全国労働組合総        連合事務局次長        日本医療労働組        合連合会特別中        央執行委員    井上  久君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○産業競争力強化法案内閣提出衆議院送付) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  産業競争力強化法案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席いただいております参考人方々を御紹介申し上げます。  まず、東京理科大学大学院イノベーション研究科長伊丹敬之参考人でございます。  次に、公益社団法人経済同友会代表幹事株式会社経営共創基盤代表取締役CEO冨山和彦参考人でございます。  次に、全国労働組合総連合事務局次長日本医療労働組合連合会特別中央執行委員井上久参考人でございます。  この際、参考人方々委員会代表して一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様からの忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で、伊丹参考人冨山参考人井上参考人の順に御意見を述べていただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承をお願いいたします。  なお、参考人質疑者とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず伊丹参考人にお願いいたします。伊丹参考人
  3. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 御紹介いただきました伊丹でございます。日本経済の国際的な位置付け、発展の道しるべを考える上で大変重要な法案審議参考人として御招致いただきまして、光栄に存じます。  お手元冒頭陳述メモというのがございますが、そこで産業競争力強化三つ基本ということを書いてございます。それを中心に、法案内容に具体的に触れることばかりではございません、より一般論もございますが、十五分ほどお話をしたいと思います。  私、まず、産業競争力強化ということは現在の日本企業全体の世界の中の位置付けを考えるときに大変重要な問題だと思っておりまして、その強化を考えるときに、三つ基本があると思っております。一つは、日本得意技を生かせる産業とか企業をどうやったら支援できるか、二番目は、国際競争力のある企業誕生させるということが幾つかの産業分野で極めて重要になっている、三番目は、既存産業秩序への挑戦者を様々な意味で生み出すということが大切である、その三点だと思っております。  まず最初の、日本得意技を生かせる産業企業支援するということにつきましては、ざっくりとした言葉で申しますと、複雑性産業を後押しするということだというふうに思います。これはちょっと言葉をより詳しく説明しなきゃいけないんですが、複雑な機械、複雑な素材、複雑なシステム、複雑なサービス、そういった生産工程やら、あるいは物を売ったりする、あるいは開発プロセス等が極めて複雑なものに日本企業というのはかなりこれまでも強かった、これからも強いであろう、そういう得意技を持った企業が更に発展していくということをどうやって後押しするかということだというふうに思います。  複雑な機械代表例ハイブリッド車でございます。現在、コストパフォーマンス良くハイブリッド車を、ハイブリッド車というのはモーターとエンジンと両方持っておりますので、それの切替えとか実に複雑なものがトランクのボンネットに全部入っているわけでございまして、極めて複雑でございます。その車をちゃんとコストパフォーマンス良く造れるのは日本トヨタとホンダだけでございます。これは典型的な複雑な機械の例でございまして、ほかにもいろんな産業でこういう機械がございます。  もう一つ、複雑な素材と申しますのは、炭素繊維複合素材、材料、例えばジェット機に使われる構造体に軽い炭素繊維を使おう、あれは単に炭素繊維ができるだけでは駄目でございまして、プラスチックを様々な意味でそれに複合させてやっとあの構造体が造れる、そういう複雑なプロセスがございます。  複雑なシステムの例は新幹線のようなシステムでございます。あれだけのスピードの列車があれだけの短い間隔で全く事故もなく走り続けるというのは、極めて複雑なシステムが背後にあるからでございます。  最後は、皆様にもおなじみの、複雑なサービス典型例宅配便でございます。具体的な説明はいたしませんが、こういったようなタイプの製品が全ての産業複雑性セグメントがあり、しかも、これは国のかかわり合いとの関連で申しますと、そういうところで国際競争力のある企業というのは、実はそれほど複雑でないコモディティー分野と呼ばれるような分野生産技術を鍛えに鍛えられた企業がやっとそういうものがつくれると。したがって、そういったコモディティー分野での競争への間接支援をどういうふうにするかということが複雑性産業支援になるというふうに私は思っておりまして、その一つの例が、お手元メモのBのところに書いてございます中小企業への支援でございまして、現在、中小企業庁で新しいサポーティングインダストリー、様々な中小企業が得意とする技術体系分野の再整理を今行っておりまして、画期的な再整理に多分なると思います。それに従った中小企業支援ということをこれから考えていかなきゃいけない、そんなふうに思います。  基本の中で私が三つ挙げました二番目は、これが今日私は一番強調したいことでございますが、国際競争力のある企業誕生させるということである。幾つかの産業分野で必要になる産業の再編成による一つ産業の中の資源統合というのが主な手段でございます。今回の法案でいえば、様々な事業再編特定事業再編計画という分野の名称が付いております。その分野のことだと思っていただければよろしいかと思います。私は、この再編成、現在では既に待ったなし、実は十年ぐらい前から待ったなしになっているのに放置されたために、例えば携帯電話、例えば液晶といったような分野日本企業が続々と敗れていくということが起きていた、その背景の大きな理由一つがここにあると思います。  この問題、過当競争防止という視点で語られることが多いようですが、私は問題の本質は過当競争防止だとは思っておりません。一つ産業で複数の企業が似たような開発をするという研究開発投資あるいは設備投資重複の無駄の排除ということが最大ポイントだと思っています。  この投資の無駄を、例えば研究開発なんかは典型的にそうなんですけれども、技術開発するための投資は、どこかの企業がやれば競争相手もやらざるを得ないんですが、技術というのは一つですから、開発されたものはみんなで使えるということになります。そういう投資の無駄が実は日本企業にはとっても多い。携帯電話を例に取りますと、一時期、日本では十一社の企業携帯電話開発しておりました。アメリカではアップルを中心にしてそんなに多くない。ヨーロッパではノキアがメーン、韓国ではサムスンと、非常に少数の企業しかやっていないのに、日本はばらばらに分散してやっていた、それが典型的な例でございます。そういう無駄を排除して、企業がこれは様々な意味統合しなきゃいけません。それを、国際競争に勝てるようなポテンシャルを持つ企業誕生させることが肝要だというふうに思っております。  これは、競争を少なくすることがこの法案のこの部分本当意義ではなくて、日本という国全体にとって意味の大きい競争、つまりは国際競争ができる能力を持った企業を生み出すことが本当意義だというふうに思っておりまして、ここには私はこれまで以上に踏み込んだ政府の関与が必要だと思っております。  今回の法案では、第五十条で、市場構造調査ということをやるということが法的に明示されました。これは最大ポイントですが、調査だけでは恐らく収まらない、むしろ政府産業の再編成産婆役を務めるべきだと私は思っておりまして、これは民間の方から様々な異論が、政府に箸の上げ下ろしまで指示されたくないというような反対論があることを承知の上で、しかしそれをやらなきゃ駄目なんだと私は思っております。  お手元メモの二番目のところに、私が二〇〇七年に総務省で開かれましたICT産業情報通信産業国際競争力懇談会という懇談会発言した内容をそのまま書いておきました。二〇〇七年のことでございます。今から六年前。その懇談会は、大手のエレクトロニクスメーカー社長さんが全員おられました。そこで私は、数年後にこの中で何人かの社長さんがおられなくなる、つまり企業が消えてなくなるというぐらいの資源統合をやって初めて国際競争力が持てるでしょうと発言をいたしました。私はそんなことを発言して産業統合が進むとは思いませんでしたけれども、経営者方々にどこか心の中にとげを持っていただきたかった、それが趣旨でございました。その後、二社ほど携帯電話事業からは撤退なさった方が生まれましたけれども、私が思ったような産業統合は起きませんでした。やはり政府が相当の介入をせざるを得ないというふうに思います。  それから、新日鉄のことが書いてありますが、それはもう時間がございませんので飛ばさせていただきまして、あっ、例として申し上げましょうか。古い例でございますが、一九六七年でしたでしょうか、当時の八幡製鉄富士製鉄が合併いたしまして新日本製鉄誕生いたしました。経済学者がほとんどこぞって反対をいたしました。その反対を押し切って大きな企業誕生いたしました。それが誕生したことによる罪もございましたけど、功の方も私は大変大きかったと。日本鉄鋼業が現在に至るまであれだけの地位をその後四十年近く保ち続けている一つ理由はあのときの新日鉄誕生だったんではないかというふうに思っております。  三番目の産業競争力強化ポイントとして私が挙げましたのは、既存産業秩序への新しい挑戦者を生むという表現を取りました。私は、ベンチャー誕生ということだけをこの範疇に入れたくなかったものですから、こういう表現を取りました。もちろん、二つタイプの新しい挑戦者があり得て、一つベンチャーという新規参入者ですが、もう一つは、既存企業が他の企業資源統合して新しい企業に生まれ変わり、その既存産業での産業秩序を新しいものに変えていくというそういう役割をする人、これは事業再編と言われるこの法案の中でも書いてございます部分が大きな役割を果たすんだろうというふうに思っております。  典型的な例は、実は新日鉄誕生によって生まれた日本鉄鋼産業産業秩序が余りに硬直化してきたときに、JFEという競争者が生まれて、様々な意味産業が活性化したという事例が挙げられるかというふうに思います。JFEという会社は、旧川崎製鉄と旧日本鋼管が合併し、新日本製鉄というジャイアントに対する対抗をしようと思った、そういう企業でございます。  実は私、日本鉄鋼業について調べた本を書いておりまして、新日鉄誕生した後、日本の高炉五社、ほかに住金とか神戸製鋼とかあるわけですけれども、それのマーケットシェア新日鉄誕生と同時にほとんど動かなくなった。そのグラフを見まして、それは死んだ人の心電図みたいだと、こう書いたら、旧川崎製鉄社長がいたくこれは怒られたのか感動なさったのか知りませんが、一度話を聞かせてくれというようなことを言われた記憶がございますが、やっぱり競争が起きるということは大変いいことでございまして、この場合にはいい方に働いた例だと思います。  新しい挑戦者を生むといいますと、一般にはベンチャー支援ということがすぐに叫ばれます。しかし、日本ベンチャー支援政策はある意味では失敗の歴史だったというふうに私は考えておりまして、それは資金的な援助のところに過大な負担を掛け過ぎている。実は、ベンチャーというものがうまくいくためには、資金ももちろん必要なんですが、それをきちっと運営していく、成長させていく、経営者にたり得る人材がどれぐらいたくさん供給できるか、社会全体でということが私は最大ポイントだと思っております。  もちろん、お金の方が、長い視野投資を考えて、ベンチャーが育たなくても、最初の段階でなかなかうまくいかなくても、長い目で見る投資ということが起きることによって、実は仕事の場でそれまでは経営に不慣れだったベンチャー経営者がだんだん鍛えられていくというプロセスが十分あり得ますので、長い視野での投資を確保するということは極めて大切なことなんですが、しかし一方で、ベンチャー経営するためには財務のことが分かる人がいなきゃいけない、営業を見る人がいなきゃいけない、様々なことがあるんですが、技術ばかりやっている人では会社としてはうまくいかない。そういった人の、ベンチャー経営者に欠けがちな人材を供給することを支援する政策が必要のように思います。  さらには、起業家となりたがる人の何か基本的な教育のようなことの場も必要に思います。私はたまたま今そういう大学院で教鞭を執っておりますが、私どものような大学院支援してくれということを言っているのではございませんで、彼らが勉強する、本当に鍛えられるのは明らかに仕事の場であります。その仕事の場で鍛えられるプロセスの彼らに様々な自らを振り返る時間、自省の場というようなものを設ける、そういうことから彼らが仕事から学ぶことを支援するような、そういう支援策も必要のように思います。  実は途中で飛ばしましたので、この法案全体のトーンに関しまして一つだけ補足しておきたいことがございますので、一分ほど話をさせていただきます。  それはお手元メモの上の方で飛ばしたところにあるんですが、産業競争力強化するために様々な、一方では規制改革のような競争を激しくするような政策もあり、一方で今私が申し上げましたような新しい大きな企業誕生させるというような政策もございます。そちらの政策を取りますと、非常にしばしば競争制限的な措置になって、結局は甘えの構造が発生する源泉になるという反対論が多くございます。しかし、競争制限をして若干その企業競争の面では楽になって、しかし、そこで得た原資を、利益を国際競争の場での自らの成長のために投資していくということであれば日本列島に結局雇用が多く生まれる結果をもたらすことができますので、私は決して競争制限的だから駄目だというふうに一律に決め付けるのは間違いだと思います。  競争制限的な措置政府の、法案ではございませんが対策によって取られた膨大なというか有名な事例が一九八〇年代に二つございました。半導体産業における日米半導体協定自動車産業における対米自動車輸出自主規制の問題でございます。共に一種の政府公認のカルテルのようなものが実質的にはでき上がったのではないかと多くの人が思っている事例でございますが、そこで生まれたそれぞれの企業が獲得した新しい利潤がどう使われるかが結局問題だった。半導体の場合には、実はそれぞれのメーカーの他の事業部門にその金が流れた嫌いがある。自動車の場合には、自動車専業のところばっかりですから、自動車産業での再投資にその金が回った。したがって、自動車産業は現在も世界で隆々たる産業日本産業があり続けて、半導体産業は一方そうでなくなってしまった。結果は誠に見事な対照でございました。  したがいまして、産業競争力法案審議過程におきまして、競争制限的な措置に対する反対論というのが余り大きくならないような、ちゃんと過去の事例に照らし合わせたお話になるようなことを期待いたします。  以上でございます。
  4. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ありがとうございました。  次に、冨山参考人にお願いいたします。冨山参考人
  5. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) ありがとうございます。冨山でございます。  まずは、本日はこのような機会をちょうだいしたことを深く感謝しております。産業競争力強化法という重要な法案について、微力ながら委員会審議にお役に立てれば幸いと存じます。  私は、ちょうど今から十年前は産業再生機構というところにおりまして、政府部門だったわけですが、当時は産業再生が今回は産業競争力強化ということになったので、そういう意味でいうと、すごく十年たって前向きな議論ができることをそういう意味でもうれしく思っております。  とりわけ、今回の法案は全産業を展望した競争力強化条件整備という非常に大きな法律でありますので、そういった意味でも、私もちょっと政府部門にいた関係で、法律を作るのがいかに大変かというのは、ちょっとかじったものですから、これだけの短期間でこれだけ大きな法律を準備された各位の皆さんの御尽力には心より敬意を表したいと思っております。  まず、中身に、ちょっと総論的なことに入っていきたいんですが、実は産業的な話は伊丹先生、私、大ファンなものですから、ほとんど本を読んでいるものですから似たような話になっちゃうんで、ちょっとそこはできるだけ省きます、重複になるところは。  ただ、幾つか述べておきたいのは、まず、アベノミクスの三本目の矢と言われているものの担い手は、もうこれは明々白々、民間企業でございます。これは明らかでありまして、要は、今回の産業競争力強化法案の評価というのは、そのための環境整備あるいはフレームワーク整備になるかどうかというのが多分基本的な論点だと思っています。  そういった観点でいえば、規制改革議論とか新陳代謝とか、あるいは一部税制税制はちょっと微妙なものもありますが、ちょっとターゲティング的なにおいがするのであれですけれども、基本的にはフレームワーク型になっているということは私は高く評価しております。  ちょっとフレームワーク議論をしましたが、私はいわゆる古典的なフレームワークポリシーというのは余り賛成していない立場でありまして、インダストリアルポリシーというのは余りサポートしていませんで、むしろターゲテッドフレームワークポリシーみたいな方が正しい言い方ではないかという気がしております。要は、むしろ実際その企業がどの領域で自由かつ闊達にイノベーションを志向するような活動をしやすくするかということが実は大事な問題で、そういった意味合いでいうと、ターゲテッドフレームワークポリシーという立ち位置が正しいと思っておりますので、基本的には今回の法はその枠内に入っていると思っております。  これもちょっと伊丹先生の話とかぶりますが、民間企業底力、実は非常に日本企業はレベル高いです。失われた二十年間であるとかバブル崩壊後の三つの過剰を克服するとか、あるいはデフレの中の円高等の逆風とか、あるいはリーマン・ショックやら東日本大震災と、もう大変な厳しい環境を生き残ってきた会社が今基本的には存在しているわけで、本来底力は強いと思っています。ただ、結果的に今、トヨタみたいな、さっきもありましたように、グローバルトップに加えて、ニッチトップの高収益、高成長企業群というのはまさに複雑系のところにいっぱい実は存在します。そういった意味で、ポテンシャルは高いと思っています。  ただ、問題はそのポテンシャルをどう引っ張り出すかという、実際の雇用や賃金にしていけるんですか、あるいは企業の価値に転換できるんですかということが問いなわけで、そういう意味でいうと、そこは今まさに課題になっているということであります。  ちなみに、ちょっと環境論で申し上げると、私は別にまた日本企業には追い風が吹いてきていると思っていまして、一つは、新興国経済企業はいわゆる中進国のわなにはまりつつありまして、明らかに変調モードです。私はあのままずっと行くと実は思っておりません。それから、デジタル革命と言われているものも、いわゆるラディカルイノベーションといって、一人の天才的なお兄ちゃんが世界変えちゃうという段階はそろそろ過ぎていると思っていて、だんだんと連続的なイノベーションといいましょうか、むしろ複雑化する、洗練化するプロセスに移ってきていますので、どっちかというと日本企業は得意な領域なので、これは追い風かなと思っています。  それからもう一つ、これは皆さん御存じのように、世界の課題解決型産業というのは、いわゆる医療、介護とかのヘルスケア、ライフケア、あるいは環境エネルギーといった分野です。こういった分野の製品やサービスは、結局のところ、これも伊丹先生の話とかぶるんですけれども、要は複合技術的な、あるいはメカトロ的なすり合わせ系、複雑系なんですね。これは本来、日本企業のお家芸でありまして、これは製品にせよサービスにせよ日本企業のお家芸です。それから、かつ、そのホームマーケット、日本のホームマーケットがまさにその大規模な課題最先端市場になるわけで、そうすると、問題は、これらの市場あるいはその市場の競争のルールのデザインというのがどれだけ上手にできていて、日本企業がより闊達に競争イノベーションを起こしていく、あるいは、さっきありましたけど、ダイナミックな淘汰、再編が起きていくかというのが、多分これが鍵なんだと思っています。  ただ、こういった市場が難しいのは、素朴なレッセフェールで機能する市場でもないので、要は社会保障関係の市場であったりとか、いわゆる貿易財のように割と素朴にレッセフェール、まあ貿易財でさえもさっきの議論でいうとそう簡単にレッセフェールで機能しないというお話でしたが、そう簡単に機能する市場ではないので、それをどういうふうに上手なルールデザインをしていくのかというのが非常に重要な鍵になると思っております。  これはもう皆さん共有しているように、二〇二〇年に東京にオリンピックがやってまいります。そういった意味でいうと、こうした領域を中心日本企業が、日本はもちろん世界で金メダルをどれだけ取れますかというのが非常に重要なテーマになるわけで、私は相当数の日本企業はもう一度金メダルを取り戻すことができると思っているので、是非是非今回の法案がそういった活動をスタートする環境整備になればいいなと思っております。  ちょっと各論に入っていきます。  まず、今回の法案の中身で言うと、一つの目玉はグレーゾーン解消制度と企業実証特例制度関連になります。いわゆる抽象的な経済学の議論はともかくとして、私のような経営をやっている人間の現場感覚の経済学で言うと、よく需要サイドか供給サイドかと二つに割る議論はぴんとこないわけでありまして、要は、ちゃんと需要をつくり出して、それと供給がバランスして初めて会社企業成長するわけで、そう考えますと、大事なことは、新たな需要創造と同時に新たなビジネスモデルや産業創造をしていくような市場のルールになっているんですか、どうですかというのが基本的な問いだと思っております。  そこで、問題なのは、ちょっと先ほど申し上げましたが、規制の強弱というよりは規制の出来不出来と予測可能性、透明性が大事だと思っています。ですから、何かやってみたら実は違ったとか、OBぐいが刺さっていなかったのに、飛んだら、いや、実はOBですと言われると、これ一番困るわけで。かつ、規制を弱めればいいという単純な話でもなくて。  実は、私どもの会社、東北地方で今五社ほどのバス会社経営しています。バス会社の関連で、例の高速ツアーバスの問題が出てきて、規制がまた変わって、今新高速乗り合いバスという形に変わっています。これは、実は割と乱暴なルールにしちゃった典型的失敗例なんですが、結果的に何が起きたかというと、私どもがやっているようなちゃんとした路線バスの会社とそれから後から参入してきたツアーバスの会社と実質的に競争上のいわゆるレベル・プレイング・フィールド、イコールフッティングになっていなかったという問題です。全く違う条件で同じ高速道路を走っているバスが競争しなきゃいけなかったということになっていて、要は結果としていろんな事故が起きているわけですが、これに関しては今回の新高速乗り合いバスのルールの方が私はよくできたルールだと思っています。要は、完全に平等な条件でお互いに創意工夫を切磋琢磨するというルールに変わっていますので、ですからこういったことは一つ大事なのかなと思っています。  あと、例えば今後、予防、医療、介護のすき間にいろんな産業が出てまいります。あるいは、ビッグデータ関連でも、多分ビッグデータを活用するということになると、恐らく個人情報保護法との関係でいろんな問題が出てくるはずで、そうすると、これいわゆるグレーゾーンなんですね。そういった領域で自由闊達に事業を起こすということになると、やっぱりグレーゾーンをいかに解消するかというのは非常に大事な問題です。  企業というのはもちろんいろんな会社があるが、大半の会社というのは非常に真面目でございます、日本企業というのは。コンプライアンスに対しては基本的には真面目です。そうすると、グレーゾーンがあると、グレーゾーンはやっぱり黒とみなして行動しますので、そうすると、このグレーゾーンをクリアにするというのは、こういった領域で新しい市場、新しい事業をつくる上で非常に重要な役割を果たすと思っています。  もう一つ、こういう時代のレギュレーションが、私はこれをスマートレギュレーションという言葉と一生懸命あちこちで言っているんですが、要するにスマートなレギュレーションがいいわけで、ところが、市場というのは、事実は小説よりも奇なりで、スマートかどうかというのは実はやってみないと分からないところがあるんですね、そのルールがどう機能するかというのは。以外な機能をする場合が多いわけです。要は一生懸命考えていろいろなシミュレーションしてもですね。  そうすると、やっぱりある種の社会実験的アプローチというのがどうしても有効な方法にならざるを得ないということなので、そういった観点からすると、この企業実証特例制度のようなアプローチも一つの有効な考え方、要するにある種の特区的アプローチですが、これも非常に事業化の有効なアプローチなので、仮にこれ弊害が出てきてもすごく限られた状況でしか弊害が出てきませんし、それは途中でやめちゃえばいいわけですから。そういった意味で、こういった仕組み、グレーゾーン解消制度も企業実証特例制度も意義は私は大きいと思っています。  ただ、問題はこれが運用面でも本当に使いやすくなるかどうかでありまして、法律というのは運用が全てですから、これが簡便で迅速でクリアな運用がされないと、要は張り子の虎になってしまいますので、法律の段階はこれでいいんでしょうが、問題は、実際どういう運用がされていくのかと。これはもう行政サイドでやっていくわけですけれども、そこが一番大事なところなので、そこを是非是非国会の方からもウオッチしていただくとうれしいなと思っております。  それから次に、新陳代謝の促進の話に話題を移します。  持続的成長にとって、新陳代謝の重要性は論をまちません。ところが、この新陳代謝、要はコンソリデーションが非常に大きな要素なんですが、このコンソリデーションに関しては、要は弱体化している、あるいは負け戦になっている企業が撤退して、あるいは事業を売却して事業統合が起きていくというプロセスに関しては、今、伊丹先生からありましたように、実はこれは市場が完全に失敗をしております、日本の場合は。  どう失敗しているかというと、いろんな理由があるんですが、このコンソリデーションの議論、私も随分かかわったことがありますが、大手企業さんの皆さんはかなり早い段階からコンソリデーションが必要だと頭では分かっているし口ではおっしゃいますが、大前提は、自分の会社が他社をコンソリデートすることが前提になっているんです。死んでも自分の会社事業を売却するのは嫌なんです。そうすると、結局みんな買い気配のまま、MアンドAが成立しないまま、本当に追い詰められてどうしようもなくなってから、しようがないから切り出しをしようかということになるんですね。これはやっぱり明らかにある種の市場の失敗なわけで、そこをどういうふうにスムーズに進めていくかというのは、あめとむちと両方とも必要だと思います。  ある種、今回の政策の中にあめは入っているんですが、それだけでは私は十分じゃないと思っていて、やはり企業の側の選択と集中をめぐる経営規律やガバナンスがちゃんとしっかりしていないと、結局、企業の中の空気と、要するに日本会社って村型社会なので、その村の中の空気としては、自分の仲間の何割かの人がよその会社に買収されて、勝っている会社のところに何か引き連れられていっちゃうというのは物すごい抵抗感があるので、結局、もうしようがないよねというところまで追い詰められて初めてそういうリストラというかコンソリデーション、事業売却をやるんですね。  これも、やっぱり村の空気に流されてそういう不作為が進むというのは日本企業の典型的な負けパターンなので、これについては、やっぱりガバナンスを含めた企業経営の在り方、統治の在り方というものを見直していかないと、結果的にだらだらとやって、みんな負け戦になって雇用を失うということを今後も繰り返すことになるので、そこは是非是非この法案に加えて考えていっていただきたいと思っております。  経済同友会の中でも、これも皆さん御存じかもしれませんが、産業競争力会議の中で坂根さんがおっしゃっていたドイツのシュレーダー改革なんかはそういった意味で非常に一つ参考になるアプローチですので、そういった議論もしていただければうれしいなと思っています。  それから次に、ベンチャーです。  ベンチャー育成の件も、随分、伊丹先生に先に言われちゃったので余り言うことないんですけど、大事なことは、世界に打って出られるようなポテンシャルを持っているメガベンチャーをどうつくるかというのが非常に大事な課題で、これは結局、本格的な技術ベースのグローバルベンチャーということになります。やっぱりこの規模のものが出てこないと、さっき申し上げた世界での金メダルにつながってこないというのが一つの課題です。雇用もまとまったものが出てきません。  それからもう一つは、ただ、これを、日本というのはいろんな意味で社会環境がシリコンバレーとは違いますので、日本型の、どうやったらそういう、エコシステムですね、そういうものが継続的につくられるシステムをつくれるかというテーマです。  それで、実はここも鍵は、一つはやっぱり人材の問題です。これももう先生おっしゃったとおりで、一生懸命お金を用意する側を中心日本ベンチャー政策は打ってきたわけです。その結果として、一番お金を持っているのは大手金融機関ということになるので、大手金融機関の関連会社ベンチャーキャピタルをつくってもらってきたわけです。  ところが、大手金融機関に勤めておられる皆さんというのは、基本的にはこれ、ローン、お金を、銀行業をやっているわけで、銀行業というのは金融機関の中で最もリスクアバースな、要するにリスク回避的なタイプの金融機関です。ベンチャーキャピタルというのは金融の中では最もリスクシーキングな、リスク寄りに偏った金融機関といえば金融機関なんですね。ということは、一番最も向いていない人たちに向いていないことをやらせているということになります。これは別に優秀、優秀じゃないの問題じゃなくて、ベンチャーキャピタリストに銀行業をやらしては駄目です。とても危ないです、逆な意味で。ですから、非常にミスマッチが起きているわけで、ここをどう解消していくかというのが一つの鍵です。  ですから、今後、ベンチャーキャピタルをもしもう一度育成し直すということをゼロベースで考えるのであれば、日本に必要なのはアーリーステージのハンズオン型のVCモデルです。要するに、アメリカのクライナー・パーキンスはみんなそうなんですが、こういうところはどういうところかというと、基本的には超トップエリート、ほとんどが博士を持っている人たちです。超トップエリートでかつプロフェッショナルでかつ独立型の組織です。ですから、独立共同経営型のモデルですね。大体その持っている資本力というのは、やっぱりこれ、本格ベンチャーというのはお金が掛かるので、そこそこのやっぱり数十億のお金を大体集めるわけです。  そうすると、問いは、日本でも幾つか出てきています、そういうプロ集団の独立系のベンチャーキャピタルが。そういう人たちがどうやったら四十億、五十億のお金を集められるような社会環境をつくるのかというのがチャレンジです。要するに、本格ベンチャーって、何千万だとちょっと話にならないので、一つ一つの案件が。大体アメリカでIPOまで行っている、いろいろな調査があるんですけれども、一つ調査では、IPOまでに大体十億円必要とされると言われています。そうすると相当なやっぱり投資規模なんですね。となると、かつ、それを今申し上げたようなハンズオン型のプロの人たちがしょっているという状況をつくらなきゃいけないわけで、日本では、今非常にこのケースは少ないです。ということで、これをどうつくるかが鍵だと思っています。  それから、あと三つ目、ちょっとこれは今日は詳しくは述べませんが、今回の法案で一部触れていますが、もう一つ、ちょっとこの後、是非是非政策上突っ込んでほしいのが、サービス産業掛ける中小企業掛ける地域企業の問題です。  これももう皆さん御存じのとおりで、日本会社の九九%は中小企業です。雇用の七〇%も中小企業です。実は第三次産業で働いている人がやっぱり七〇%なんです。ですから、この掛け算のところが実は低賃金、低生産性のところでありまして、かつ企業による生産性のばらつきが非常に激しくて、かつ地域の雇用はほとんどこの企業が支えております。  ちなみに、ちょっと私どもが今バス会社をやっているということを申し上げましたが、今うちは福島と茨城と岩手県と栃木県で三千五百人ぐらいの雇用を維持しております、バス会社です、地域の。おかげさまで、ちゃんと利益を上げている、かつちゃんと正規雇用でちゃんと給料も払えるバス会社になっていますが、要は、みんなこれ、前、会社がおかしくなっちゃったケースです。要は、大事なことは、自分で言うのはちょっと言いにくいんですが、しかるべき経営者の下で経営をしていけば、典型的なもうからない産業と言われている地域のバス会社もちゃんと黒字で経営できるということであります。  ということなので、実はこの議論についても、ここはこれからの議論ですので、実はこの七〇%のところにそのアベノミクスの効果が及ばないと本当意味での持続的な経済成長につながりませんので、そこを是非是非今後議論してもらいたいなと。  最後に、今回の法案の中で、日本再興戦略の実行計画の閣議決定とPDCAの枠組みというのが設定されることになった、これは非常にすばらしいことだと思っております。同友会でも以前から、やっぱり政策のPDCA、この持続性、継続性が極めて大事だと。特に、経済成長というのはオーバーナイトサクセスはないので、やっぱり持続性が大事なので、これはたしか国会も今回かかわるような形になっていると伺っていますが、是非是非これは実際に実行していただけるとすばらしいなと思います。  以上でございます。
  6. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ありがとうございました。  次に、井上参考人にお願いいたします。井上参考人
  7. 井上久

    参考人井上久君) 全労連の井上と申します。本日はこのような機会を与えていただき、どうもありがとうございます。  私ども全労連も、働く人々や国民の生活向上と同時に、日本経済の健全な成長ということを強く願っております。しかしながら、現政権が進めておられる成長戦略ではそれを実現することはできないのではないかと私は考えております。以下にその理由産業競争力強化法案の問題点について幾つか述べさせていただきたいと思います。  安倍首相は、本年二月の施政方針演説で、世界で一番企業が活動しやすい国を目指すと表明され、国際先端テストを導入し、聖域なき規制改革を進め、企業活動を妨げる障害を一つ一つ解消していくと宣言されました。産業競争力強化法案においても、規制改革の促進と産業の新陳代謝が大きく掲げられています。  企業のために聖域なき構造改革を進めるという話でありますけれども、一九九八年の規制改革委員会の設置以降、一貫して同種の諮問会議が設けられ、規制改革が進められてきたのではないでしょうか。しかし、その結果として、失われた二十年と言われるとおり、働く人々の収入は落ち込み、個人消費の減退で内需も縮小し、日本成長を忘れた国と言われるようになってしまいました。その間も大企業の内部留保だけは増え続け、今や二百七十二兆円にも達しています。大企業がもうかれば、いずれそのおこぼれが働く者や地域経済にも波及するという考えはもうやめるべきではないかと思います。  今必要なことは、政治が役割を発揮して、賃上げや中小企業支援を拡充し、内需を活性化させることだと思います。特に、最低賃金の引上げや均等待遇の実現などで賃金の底上げを実現し、年収二百万円未満のワーキングプアをなくすことが急務だと考えます。  私は、二〇〇八年末からの年越し派遣村や、翌年の公設派遣村のときに実行委員の一人として携わり、その後も、派遣切りや非正規切りに遭った方々の相談を多く受けてきました。その中には、この衆参の議員会館の新築に従事された方が少なくとも三名いらっしゃいました。阪神・淡路や中越の大震災で大きな被害を受け、東京に出稼ぎに来たけれども、不安定な職を転々とせざるを得ず、結局は一家離散という方も何人か知っています。庶民の生活を支える制度が弱いために、一度つまずくと坂道を転げ落ちるように生活苦に陥るというのが残念ながら我が国の現実ではないかと思います。その経験からも、雇用の安定と社会保障の充実が経済の安定のためにも必要だと思います。  労働法制の規制緩和の結果、非正規雇用労働者は今や四割近くにまで増えました。大企業は今も彼ら、彼女らを雇用の調整弁と公言し、まるで物のように毎月の生産量に合わせて切ったり雇ったり、また切ったりということを繰り返しています。こんなことを続けていては、経済の再生はおろか、日本の社会の未来も危ういと思います。  厚生労働省が昨年八月三十日に発表された平成二十二年社会保障を支える世代に関する意識等調査報告書によれば、三十代の男性、非正規就業者の実に七五・六%が未婚という深刻な状況です。今回の規制改革論議の中でも、労働者派遣の大幅な規制緩和、常用代替防止という原則を削除するという話が出てきています。国家戦略特区をめぐっても、いわゆる解雇特区や残業代ゼロ特区などの雇用特区が取りざたされました。産業競争力強化法案にも企業実証特例制度の創設が盛られています。日本経済新聞などが報じましたけれども、プロフェッショナル労働制という名称で、一部の大企業に限って解雇規制や労働時間規制を緩和する企業特区の創設が検討され、実際に幾つかの企業には打診があったと私も聞き及んでいます。  しかし、解雇規制に関して言えば、労働争議などを通じた長年の議論と判例の積み重ねで整理解雇四要件が確立されています。残業規制に関して言えば、労働基準法は憲法に基づく最低規制であり、それを一部の企業に限って緩和することは許されない、我が国の法制度上できないことだと指摘せねばなりません。  その点で、法案の第八条は、「当該新たな規制の特例措置の整備を求めることができる。」とされているだけです。企業が求めることができる特例に何の制限もないこと、これは大きな問題だと思います。そもそも、一部の企業だけに特例を認めるという仕組み自体、公正競争という観点からいえば異端であり、もっと議論を深めていただきたいと考えます。少なくとも人々の安全や労働基準など最低規制に関するものは特区の対象としてはならないということを明確にしていただきたいと思います。  ブラック企業ということが社会的な問題になっています。私は、ブラック企業とは、若者などを使い潰すこともいとわず、低賃金でこき使うことをビジネスモデルとして、働く人々の犠牲の上に急成長している新興企業だと認識しています。そうした観点から見たとき、解雇特区や残業代ゼロ特区はまさに使い捨て労働を助長し、日本企業のブラック企業化を推進するものではないかと考えます。  規制緩和論の背景として経済のグローバル化がよく指摘されます。しかしながら、世界の国々は、グローバル化は是認しても、その弊害を和らげ、自国の経済や国民を守る努力を払っています。最近は特に労働者保護ということが強調されており、欧州だけでなくアジアなどの国々でも最低賃金の引上げや中小企業に対する支援が強められています。グローバル競争の荒波にそのままさらせば、賃下げ、コスト削減の際限のない過当競争になってしまうからだと思います。経済再生のためにも、労働法制の規制緩和を見直し、雇用の安定による所得増に政治のかじを切ることが必要だと思います。  次に、産業の新陳代謝という課題に触れたいと思います。  法案の背景として、国内の過当競争が是正されるべきだという指摘があるようです。もう一度世界のトップに躍り出るために、産業企業の新陳代謝を大胆に促進し、グローバル大企業を再編、強化することが狙いだと認識します。私も大企業の再編自体を否定するわけではありません。しかし、働く者や中小企業がその犠牲にされるということでは本末転倒ではないでしょうか。  日本再興戦略には、「古くなった設備・資産を大胆に処分し、型遅れの設備を最新鋭のものに置き換える。」というくだりがあります。前後の文脈から見ても、ここには生身の人間や中小企業が当然含まれているはずです。政府主導の大リストラ宣言と言わざるを得ません。こんなことをすれば、中小企業の大量倒産と大失業時代の到来は必至です。日本経済に急ブレーキが掛かることも明らかだと思います。  そうした企業再編のツールとして産業競争力強化法案が活用されるということであれば、私たち労働組合はもとより、大多数の国民も決して是認しないと思います。企業合併等の場合にも、そこにいる労働者や従前の労働条件を引き継ぐこと、それを原則にすることが必要だと思います。  次に、産業の新陳代謝のツールとして法案で大きく位置付けられているファンドの問題について触れます。  最近でいえば、西武ホールディングスに対するサーベラスの大リストラ提案が大きな話題になりました。近年、代替的なファンドによる企業買収が増えています。ファンドに支配された企業では、問答無用のリストラや企業そのものの解体、切り売りが矢継ぎ早に展開されています。十一月一日には、ウェッジホールディングスに四十億九千六百五万円もの課徴金を課すよう証券取引等監視委員会が勧告を行うという事案も発生しました。  問題は、こうした事例はハゲタカファンドなどと呼ばれる一部の不公正ファイナンスに限ったことではないということです。ファンドはその性質上、組成から比較的短期の一定期間で利益を最大化し、資金を回収することになります。金融自由化で金融機関や伝統的なファンドと代替的なファンドの垣根も下がりました。  したがって、官民ファンドなどの場合にも様々な問題が指摘されています。例えば、日本航空の再生には地域経済活性化支援機構の前身である企業再生支援機構がかかわりましたが、大リストラが行われ、最終的には百六十五名の解雇が強行されました。再生された日本航空はV字回復を果たし、昨年九月に再上場されましたが、三千五百億円を出資した機構は二倍近い売却益を得ました。翌年、日本航空の株主配当は一割九分という異例の高配当でした。しかし、職場はベテランが大量にいなくなり、不安全事例が多く発生すると同時に、人手不足から、休みもままならない、離職が後を絶たない状況に陥っています。客室乗務員などは年度途中の大量採用を繰り返している、そんな実態です。  マネー資本主義が広がり、ファンドの跳梁が言われる昨今、短期的な利益の最大化が企業経営の持続的な発展と相入れない事例がますます目立ってきたと感じています。そうしたファンドの弊害をよく理解し、情報公開を徹底してファンドを社会的ルールの上に乗せること、特に外国籍のファンドも含め、ファンドが日本で活動しようとする場合には例外なく届出を義務付け、監視体制を強化することが必要だと思います。  最近は一般投資家保護ということが強調されていますが、その企業に働く労働者こそ最大のステークホルダーだと思います。ファンドに乗っ取られた企業でも、例えば昭和ゴムの事例のように、そこに労働組合があったからこそ、ファンドの思いどおりにはさせず、結果として企業も守られてきました。労働者、労働組合の存在と権利を会社法などにも明記し、交渉権を担保することが必要だと思います。  我が国日本は、東日本大震災と原発事故という大惨事に直面しました。私も、石巻であるとかいわきなど、被災地の支援に何度か赴きましたが、国際NGOの方から、戦地の難民キャンプでもしばらくすれば温かい食べ物が出るのに日本はどうなっているのだ、震災から二か月もたつのに冷たい弁当やパンばかりではないかという指摘を受けたことが胸に刺さりました。  震災直後、日本政府は、「日本はひとつ」しごとプロジェクトということを立ち上げられました。聞こえはいいですけれども、実際にやられたことは、全国から寮付き、住み込みの仕事を集めて被災地のハローワークに送るという話でした。生身の人間、住み慣れた地や故郷の再生を願う人々がどういう受け止めをしたか考えていただきたいというふうに思います。  私は、復興を願う人々、それから真面目に働く労働者を置き去りにした復興や成長であってはならないと思います。大震災を経験した日本だからこそ、世界で一番企業が活動しやすい国ではなく、その前に、世界で一番人が幸せな日本を政治家の皆さんには目指していただきたいと切に願います。よろしくお願いいたします。
  8. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ありがとうございました。  以上で参考人皆様意見陳述は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 宮本周司

    ○宮本周司君 自由民主党、宮本周司でございます。  ただいまは本当にそれぞれの見地から貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。  今、この産業競争力強化法案、どちらかといえば、事業の再編も含めですが、成長路線の部分を強く推し進めていくと。今ほど井上参考人からの労働条件であったり雇用に対する影響を懸念するというお考えも理解はできますが、特に中小企業の現状におきましては、やはり成長というベクトルをしっかりとたどっていかれる企業体もあれば、地域に密着して維持継続というベクトルを選ばれるというところもある。その維持継続ということに関しましてはこの強化法案そのものは余り直接的には今は効果はないのかなと思っておりますが、それはまた次の常会を含めいろいろ今検討をされているところがあるので、そこに期待をしたいと思っているところでございます。  まず、伊丹参考人に御質問をさせていただきたいと思います。  先ほど、冒頭、お話の中で、日本世界に誇る得意技というところで複雑な機械であったりとかまた炭素繊維等の御紹介もございました。私、地元が石川県能美市というところで、ここには東レの石川工場がございまして、まさしく炭素繊維、そして地場産業と連携をして、地場の中小企業と連携をした、いしかわ炭素繊維クラスターというものも形成して非常に、繊維業界いろいろ低迷もささやかれる中ではありますが、この集合体は非常に今着実に実績を残していると。  こういった効果もあるのは十分に理解をしているんですが、片や、例えば精密機械も含めたそういった製作機械、工作機械、若しくはこの炭素繊維も含めまして、海外に輸出をする段におきましては、安全保障貿易管理の概要、要は武器とかそういったものへの利活用も可能性として秘めるということで、非常に規制が掛かっている。成長させようという動きとともに、まさしく、最終的に武器に使われるというのはそれは我々も望むところでは当然ないわけですが、やはり裏腹な部分もあると。  そういうことにおきまして、今、伊丹参考人の中で、先ほどはこの法案の強みの部分を特に強調いただいたかと思いますが、今想定されるデメリット、何かここはちょっと心配だなと危惧される点があれば御指摘をいただけたらと思って、まず質問をさせていただきます。
  10. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) お答えいたします。  大変法案全体にかかわる質問なので適切なお答えができるかどうか分かりませんが、私が見たところ、極めて大きなデメリットが発生するというふうには思えるところは余りございませんでした。むしろ、もっと踏み込んでもいいと思うことがございました。
  11. 宮本周司

    ○宮本周司君 ありがとうございます。  では、続けてなんですが、例えば、これからは伊丹参考人冨山参考人に御質問をさせていただきたいと思うんですが、今ほどの回答も含めてなんですが、政府が今回、産業企業の再編成に関与すべきだと。そして、その場合において、これまではやはりいろんな市場の変化とか若しくは市場の成長、いろんな条件の変更によって企業体そのものがこういったものに率先して取り組む、ここに対して今回政府が関与をしてくる。そういう意味においては非常に丁寧な仕組みづくりになってくるとは当然思うんですが、政府が関与し過ぎることによって例えば非効率な事業そのものを温存してしまう可能性、こういったところに対してはどのようにお考えでしょうか。
  12. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) その危険は明らかにあると思います。過去の日本政府産業に対する関与の中でも、その種のマイナスの事態が起きそうなときに、それを助けるために、実は人間でいえば延命装置を付けたに等しいような、そういった政策が取られたことはたくさん、先ほどお話しになった繊維産業に対しても、私は膨大にあったと思います。  しかし、今回は、そういう危険があるから、したがって積極的なプラスもあるところにも関与するようなことを余り明言しないような法律にするというのであれば、私は反対でございます。危険を冒すべきだと思います。
  13. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 法案そのものは弊害が出るほど強烈ではないので、この法案そのものから強烈な弊害が出るとは思えないんですが、例えば、私も元祖官民ファンドの産業再生機構のCOOだったので、あのときの経験から申し上げると、ちょっとストレートに言うと、こういった政策を展開するときに、先ほどちょっと御批判はありましたけれども、一応ファンドですから、資本の論理でやるんですね。JALは私は細部やっていないので。ちなみに再生機構のときのケースでいうと、資本の論理でやっていきますと。やっていくんですが、そこに当然いろんな声が、ストレートに言うと政治的圧力が働くわけです、分かりやすく言えば。基本的にほとんど圧力のとおりやらなかったんで、いろいろ私が嫌いな人もいるかもしれませんけど。  そのときに、圧力が働く原理というのは、どちらかというと、要は市場原理以外の原理、要するに社会政策的原理の圧力であったり、利益誘導的圧力だったりすると。要するに、市場の原理原則をゆがめるような圧力が働きますと。そこはやっぱりどう排除するかというのは常に大きなテーマでありまして、私自身、実は再生機構のときもそうなんですが、政府の注入したお金、あれはほとんど実は退職金に使われています。要は、本来であれば、破綻清算すれば、完全な破産清算に移行すれば退職金も払われずに労働者は解雇されるわけなんですけれども、それをいかに回避するかというのはもちろん重要なテーマでしたから、当然、多分JALの場合も恐らく政府出資の大半は退職金で、希望退職で使われているはずなんですが、そうやって使うことによって、要は、企業破綻が人々の人生とか生活の破綻につながらないような工夫はしましたが、さはさりながら、我々がやっていること自体は社会秩序が目的ではありません。要は、産業的により競争力のある企業をつくっていく、あるいは必要であればむしろそれは再編していくということが目的ですから、再生機構案件では例外なく経営支配権を別の会社に売却しています。要は統合を進めています。実は独立再生認めていないんです、再生機構は。今回のJALの件はその辺でちょっと問題があったような気はしますが。  とにかく、そういうことを進めているので、要は、そういう市場規律というものをちゃんと貫徹して、本来市場がちゃんと機能していればこうなるべきだという方向に、問題は政府介入という、矛盾に満ちた政策なんですが、そういう規律を維持できるかどうかというのは、こういう官民ファンドの場合にとっても大事なポイントで、そこは政策的には難しいところはあるかもしれませんが、ただ制度的には、これ産業再生機構法を全部ベースにしているので、できるといえばできます。やっている本人が、要は、体張って死んでもいいと思ってやればできます。だから、そういう人を選ばなきゃいけないということですね。
  14. 宮本周司

    ○宮本周司君 ありがとうございました。  また、先ほどのお話の中で、当然これからいろいろな規制改革、若しくは新陳代謝も含めました事業の再編を促進をしていくと。待ったなしという表現もあれば、当然そこにやはりビジネスチャンスというものは、極めて計画的に来るものでもなく、急に訪れることも多々あると思います。  そういう面においては、今回この、例えばいろいろな企業の実証特例制度もそうですし、グレーゾーンの解消制度もそうですが、事業所管の大臣、若しくは規制所管の大臣の協議によってのその審議までの、決定までの時間もできるだけ短くなることも当然理想だとは思うんですが、今、この中で、事例案件としてそういう書き方をしているので、実際のところ、この企業体と、若しくはその所管のある、事業所管、規制所管の大臣の中での今判断というような方向性にはなっておりますが、地域に根差した地場産業であったり、いわゆる地域産業、そういったものが、今回こういう制度を使って新たなチャレンジ、新規性を求めてやるという意味においては、その企業が所在する自治体若しくは都道府県、ここもその判断の段階においては関与する方がより有効に働くことがあるのではないかという個人的な思いもあるのですが、そこに対しては、伊丹参考人冨山参考人、どのようにお考えでございますか。
  15. 大久保勉

    委員長大久保勉君) まず、伊丹参考人からお願いします。
  16. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) おっしゃったような可能性が十分あり得て、地方自治体に大きな権限を渡すということはあり得ていいことだと思いますが、ただ一方で、全国的な意味でのフェアネスとかそういうことを考えますと、それともう一つは、各地方自治体が抱えている様々な人材のキャパシティーの限界を考えますと、余りそういう色彩を強く出さない方がいいかなというふうにも思います。  もう一つ、実は地方自治体の関与ということを大きくした場合に、プラスの面は、今、宮本議員がおっしゃったように私も想像できるんですが、マイナスの面も同時に想像いたしました。  それは、実は先ほどの質問に追加でお答えしようとしたんですが、政府が関与するということのマイナスみたいな話で、私がこれまで産業政策をいろいろ調べた経験で、そのマイナスが生まれるのはほとんどが政治家の方が様々に背後で動かれた例なんです。したがって、冨山参考人がおっしゃられた例は、実は市場原理以外の原理とおっしゃるのはそういうタイプの話で、実は社会政策の問題なんです。地元を抱えておられるんですから、ある意味で当然の行動なんです。しかし、それがもうちょっと大きな視野から見るとマイナスになることがあったなと、そういう例を私はたくさん見た気がいたします。
  17. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) ほとんど同じでございまして、これももう皆さんに釈迦に説法も甚だしいんですが、地方の議会というのはなかなか生々しい議会でございまして、首長さんもある意味ではちゃんと議会と協調していかないといろんなことができないという背景がある中で、こういういろんな新しいチャレンジというのが多くの場合、地域の既得権を持っておられる方とぶつかる場合が多くて、その既得権をお持ちの方がそのまま地方議員だったりすることも結構あるので、そういうところでむしろ逡巡してしまうような状況も出てくるかもしれないので、今の御議論がオアであればいいんですが、要は、窓口として中央の大臣のところまで持っていくのが大変な場合に、窓口として地方もありという議論であれば私はいいような気がするんですが、中央でやれる議論について首長が首を縦に振らないとできないみたいな話になってくると、かえって使える機会が減るような気がしています。  くどいようですけれども、これ、特区というのは恒久的な仕組みではあくまでもなくて、ある種の実験的な仕組みなので、そこで弊害が出れば、それはやめればいいわけです。ですから、そういった意味合いで考えると、実験機会というのは基本的には狭くてたくさん、ちっちゃいものがたくさんある方が実験としては有効です。ですから、そういった機会を減殺するようにならないようにしてもらった方がいいと私は思います。
  18. 宮本周司

    ○宮本周司君 ありがとうございます。  時間も限られていますもので、もう一問だけ皆様に御質問をさせていただきたいと思います。  今回、この法案の中には地域の中小企業の創業若しくは事業再生の支援強化ということで、特に大きく計画としては、地方の自治体、市、町、そして及びいろんな経済団体であったり、昨年、中小企業経営強化支援法によって選任された各種認定機関等がそこで大きく地域で連携をするということが想定をされています。  ただ、これまで地方を見る中で、国から発信をされて都道府県まではしっかりと浸透するんだけれども、市区町村までしっかりそれが伝わっていない、これがこれまでの現状だと思うんです。これを打開し、今回計画される各市区町村レベルでこれらのことが有効に作用するための特効薬と言うとあれですけれども、何らかこういったところの改善があった方がいいんじゃないかというようなそれぞれの専門的な見地からの御意見、アドバイスをいただけたらと思います。よろしくお願いします。
  19. 大久保勉

    委員長大久保勉君) まずは、伊丹参考人からお願いします。
  20. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 私は長らく中小企業政策審議会の経営支援部会長をやっておりましたんで、今おっしゃられたような実態が非常にあちこちにあって困っていると。政策は打つんだけど、現場にまで届かないという話ですね。  特効薬は残念ながら思い付きません。しかし、それでは質疑になりませんので、あえて一つ申し上げますと、どこか重点的にモデルになりそうなところ、それがやれそうな余り大都市でないところを選んで集中的に成功例をつくることだと思います。一つ成功例ができれば、あっ、そうかというのでみんなが注目する、フォローするということになると思いますので。それぐらいしか思い付きません。申し訳ありません。
  21. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 冨山参考人、お願いします。
  22. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 今の話にかぶせてという感じになると思いますが、私、再生機構のときの案件も相当数中小企業だったので、今自分の会社でも中小企業支援たくさんやっているので、実感として申し上げると、アプローチとして私も伊丹先生の感覚に近いです。ただ問題は、そこにもう一つ足し算があって、実は人材なんですよ、これもう最後は。それで、結局どういう優秀な経営人材がそこで仕事をするかというのにかかわっちゃうところがあって、これは実際、経営する人の問題なので中小企業診断士の問題じゃなくなっちゃうんですね。  実は、常にこの議論というのは、経営を助ける人の議論はするんだけれども、経営する人そのものの議論は避けられがちで、結局、うちのバス会社もおかげさまですごく生産性の高い会社になっていますが、これは実は私どもは百四十人ぐらいしかいないんですけど、二十人ぐらいがもう張り付いています。要は、中央レベルのかなりレベルの高い、渡邉さんなんかもよく御存じのようなレベルの高い人間がこの地方のバス会社経営に張り付いているので、それで本当にもう泥水すすりながら徹底的にいろんなことをやるのでいい会社になっているんですね。ですから、人の問題を今の議論にかぶせられれば一つの成果が出てくるような気がします。
  23. 井上久

    参考人井上久君) 少し観点が違うのかもしれませんけれども、私ども今、かがやけ憲法全国キャラバンというのをやっておりまして、全国四コース回っているんですけれども、私も東北であるとか幾つかのところへ行かせていただき、自治体の方や経済関係の方ともお話をしました。  一番意見が投合したのは、アベノミクスは遠い世界、むしろ、やっぱり地域に若者が定着していくために、雇用の質をどうつくるか、そうした技術を磨くようなことをどうするかということで、いろんな補助金やそうしたことをやられていましたが、私は、やっぱりもう一つ雇用の質ということを一緒に考えていただけたらなということを感じます。
  24. 宮本周司

    ○宮本周司君 ありがとうございました。  私も、今回のアベノミクスも含め、今回のこの法案も含めですが、やはり日本国が活力を取り戻すには地域に根差した中小企業、そして特にそこに小規模企業というカテゴリーの零細事業者も多うございます。いろんな観点で、やはり地域の経済がまず活力を取り戻す根幹だと信じておりますので、それぞれの参考人皆様方からの御意見もしっかりと受け止めながら努めていきたいと思います。  以上で質問を閉じさせていただきます。
  25. 加藤敏幸

    加藤敏幸君 民主党・新緑風会の加藤でございます。  三人の参考人皆様方には大変ありがとうございます。大変貴重なといいましょうか、なるほどなと思いつつお話を聞きながら、お話に沿って少しく質問をさせていただきたいというふうに思います。順番はその都度ということでお許しをいただきたいというふうに思います。  まず、伊丹参考人お話を聞きながら、私事ですけれども、携帯電話事業所、私の出身だったもので、参考人が言われた時期に撤退をしていったところで、現場を抱えて、私なりに今記憶がよみがえって、そのときは私もう議員をやっておりましたけれども、後輩が非常に苦労をしたということで、なかなか携帯電話事業の特性そのものが非常に複雑というんでしょうか、付加価値がどうつくられているかとか、今日は詳しい話をしませんけれども、機会があればまた分析ということで、七百人を超えるエンジニアの全国再配置という後処理の工程があったということ、また、半導体事業につきましても、大手事業半導体事業部門の再編を手掛けて、労働承継の問題も私が責任者として扱ったという二つ事例の中で、いわゆる産業再編の現場ということからいろいろな思いがあるわけですけれども、その辺も含めて少しお伺いしたい。  まず第一は、参考人が言われました競争制限政策であったとしても、その政策の結果として富、いわゆる付加価値が獲得できて、その付加価値を原資に国際競争に打って出て、言わばその競争に資源を投下をし勝利すること、すなわち利潤をグローバルに獲得することによって再度列島に、この日本列島に投下をするということが一つ政策としての正当性を逆に支えておるんではないかと。  その列島に投下するというのは、ありていに言えば、雇用を通じて雇用者所得という形で還元される、それから当然税と社会保険料を支えるという意味で還元される、それから三つ目は、国内に投下するということによって消費とか調達とか、そういうことによって国内でビジネスが行われると。そういうふうなことの一つのサイクルを描けば、たとえ競争制限政策的であったとしても、現下の日本経済企業産業の実情を鑑みれば、ある種の非常に説得性の高い政策ではないかという御趣旨ということでよろしゅうございますか。
  26. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 基本的にはそれで結構でございます。ただし、私は競争制限的な政策部分を申し上げたのは、万が一そういう意見が出てきたときにはということで書いただけでございまして、その部分を強調するつもりはございません。
  27. 加藤敏幸

    加藤敏幸君 ここが、この法案の次のステージを含めて、産業競争力強化ということのどういうカテゴリーをつくってそれを個々にやっていくかというときにテーマになってくるということで、非常に強調されないということで分かりまして、それはそれで今日は理解をしていきたいというふうに思います。  次に、井上参考人お話をお伺いしたいんですけれども、端的に言って、言わば二%の物価上昇を日銀が目標とされているというこういう現況の中で、仮にそれが成功すれば雇用者所得の実質は下がっていくという、そのことをどう補填していくかという課題を抱えるわけです。  それは、賃金につきましては、下方硬直性があると長いこと言われてきました。同時に、今その下方硬直性ということが本当に感じておられるのか。ここ十年、二十年は、賃金はむしろ上方硬直性があってなかなか上がりにくい、しかしトータルではやっぱり下がってきているという、賃金統計はそういうふうな傾向があるというふうに思うわけでありまして、その辺のところのことと同時に、物価後追い賃上げというのが過去の事例があったと思うんですけれども、本当に五千万雇用労働者のうち組織化されているのは一千万弱というふうに聞いておりますし、いわゆるどういう交渉場裏、交渉力、交渉場面、それを持つことができるのか、政府が旗を振ってみても、本当に物価上昇分を補填するだけのことすらも実現しにくいという状況もあるのではないかということで、その辺はどうでしょうかね。
  28. 井上久

    参考人井上久君) おっしゃるとおりだと思いますが、だからこそ私どもは、やはり政治が介入してきちんと全ての人々の賃金を引き上げていくこと、特に若者であるとか非正規労働者の今の処遇を変えるためには、最低賃金の引上げであるとか底上げをやっぱり重視して政策を進めていただく、同時にそのための中小企業支援をやっていただくことが重要だと思いますし、世界の流れもやっぱりそういうふうになっているというふうに感じております。
  29. 加藤敏幸

    加藤敏幸君 ありがとうございました。  それでは、冨山参考人にお伺いをしたいんですけれども、全体としてのお話は理解をいたしましたし、それから同友会の立場から規制に関する考え方も出されておりまして、各種団体の中では最も規制改革について意欲的な団体であるという認識をしております。  ただ、文章を読む限りにおいては、実はもっと具体的な規制改革の私はアジェンダがあるべきではないかと、同友会さんに対して。さらに中で議論されていることについてということと、政府自身が、例えばこの実証制度について具体的に何かと、こういうふうにお聞きをすると、アシスト自転車などと、こういうことが出てくるわけですけれども、何かそういうことで事例があれば言っていただきたいということと、それから新陳代謝の重要性というところの退出局面については非常に私もあって、企業レベルの退出ということと、先ほど申し上げました大手企業にあっても事業単位の退出、それと大手企業が新たにベンチャー化していくという、集団的な、組織的な集団がベンチャー化していくということの機能の方がはるかに大きなあれがあると思うんです。  そういうふうなことで、そのことについては今後議論をしていくと同時に、ベンチャーというイメージが非常に個人というイメージに直結しているところをやっぱり払拭していく必要があるというふうに思います。  もう一つお伺いしたいのは、例えば退出のときにもいろいろな、あるんですけれども、例えば東電というような特殊な事例で退出されて、これもなかなか難しいんですけれども、破綻処理の問題等含めて、何かお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
  30. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) ありがとうございます。  まず、規制改革関連なんですが、私の話の中でスマートレギュレーションということを申し上げましたが、じゃどこでスマートレギュレーションが大事なのかという話だと思いますが、これは恐らく一番メーンになるのは、いわゆる岩盤規制という言葉代表される農業と恐らく医療と雇用の関連、この領域でどういうふうにより良いレギュレーション、ルールデザインをしていくかというのが多分恐らくテーマだろうと思っています。  ここでやっぱり考えなきゃいけないのは、例えばの話、雇用は一番デリケートですが、あえて分かりやすいんで触れますが、えてしてこの雇用議論というのは、今大体、いわゆる大企業の中で典型的な正規雇用で働いているのは多分全就労者の二〇%ぐらいでしょうか、だと思うんですが、ここを軸に議論されちゃうんですね。ところが、現実にはその外側に八〇%の方が働いておられます。例えば、いわゆる解雇権濫用の法理ですか、現実に守られているのは、多くの場合、大企業で働いている人でありまして、中小企業においては、実はほとんど退職金も払われないような形でのかなりシビアな解雇が行われます。その場合、多くの場合泣き寝入りになっているという現状があるわけで、ですので、実はこの残りの八〇%の問題、その世界にどれだけ良質な雇用をつくっていくかというのが本質的な議論なんですね。  そうすると、従来型の、恐らく大規模製造業というものをベースにした雇用、こういうものにはすごくマッチがいいですし、この世界において大きな問題、実はないと私も認識しています。もう正直、再生機構でも、むしろ大企業の場合はリストラであるとかあるいは事業譲渡というのは比較的スムーズに行われていましたし、私自身も連合さんには大変お世話になって、いろんな形で、できるだけ働いている人の人生や生活が壊れないような形での事業再編を進めることができたんですが、実は難しいのは、その外側にいる中堅、中小のケースの方がはるかに問題が深刻化しますし、難しい問題があります。  ですから、そういった領域で、これまたもう一つ難しいのは、この領域が一番実は労働者のタイプが両極に分かれちゃっている世界で、いわゆるトップレベルの、それこそ弁護士さんとか会計士さんとか非常にプロフェッショナルな割と資格を持っている高度人材と言われている人とどちらかというといわゆる下層労働に近い人たちにすごく両極に分かれているので、いわゆる従来型の中間領域を想定したレギュレーションというのはすごく機能しない領域になっています。そうすると、ここをどうしていくのかみたいな議論は、是非是非スマートなレギュレーションをつくっていただきたい、議論していただきたいなというのが同友会の立場でございます。  それから、次のベンチャー議論なんですが、実は私も過去の経験上、大企業の再編をしていくときに、大きな事業の単位で別の会社さんに引き取ってもらうというケースと、それからスピンオフという形で自分たちで事業をやってもらうというMBO的なものと併用しています。  どっちもあってもいいと思うんですが、ただ、一つちょっとネガティブなことを申し上げると、大企業で長年働いた方というのは最もベンチャー企業に向かない人です、ありていに言うと。要は、ベンチャー企業経営者になった瞬間にお金回りの話、連帯保証入れて銀行からお金を借りる、あるいは日々の資金繰りの話、そういったことには一切かかわったことがない人たちですので、非常に多い確率で失敗します。  ですので、気持ちとしてはほかの会社に買われちゃうよりはスピンオフの方がいいってみんな言うんですよ。言うんですけど、実際MBO的にスピンオフさせた後は結構惨たんたる展開になっているケースが私も幾つか知っていて、ですから、おっしゃる議論はすごくよく分かるんですが、やっぱりここで問題になるのは経営人材です。しっかりした経営人材がそのスピンオフチームを率いてあげないと、全員一緒に路頭に迷うことになるので、そこの問題をどうカバーするか。もっと言っちゃうと、日本の今産業社会全般に、中小企業も含めて、優秀な経営人材というのが本当に希少資源です。もう絶望的なぐらい希少資源です。だから、この問題をやっぱり国を挙げてどうしていくかということを私は考えるべきだと思います。
  31. 加藤敏幸

    加藤敏幸君 あと、伊丹参考人の方に再び戻って御質問したいんですけれども、御主張されている過当競争防止ポイントではないというこの御主張につきましても、私大変同感でありまして、そもそも過当競争過当競争と言われると、もう私としては、俺のこと言ってるのかと、こう言いたくはなるんですけれども、正直言って、ここに言われている重複投資の無駄の排除ということを、私はより重要なことであって、これは自分たちもやってみて、経営資源をどうやっていって最も効率のいい展開と、それから従業員のスキルをどうそれにアダプトしていくかということを含めて大きな仕事をやっていくんですけれども、何でもかんでも過当競争がいかぬという、私、このレッテル張りが日本社会に本当意味で正しい理解を与えなかったと。したがって、言われるとおり、重複投資とか、いわゆる合理的な投資をやっぱりきちっとやっていくという経営学の原点に返っていくということの重要性をもう少し全体的に広めるべきではないかという思いもありますけれども、この点について御意見があれば。
  32. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 全く同意見でございますが、ただ、難しいのは、企業がそれぞれに分かれていると、それぞれの企業としては合理的な判断が国全体としては重複の無駄を生んでいる、その問題が最大の問題でございますので、私がここへ書いたのは、個々の企業が楽になるようにという意図は全くございませんで、国全体として無駄な資源配分をしないようにと。したがって、国家的な見地からの発言であるというタイプのことをもっと色濃く是非こういう委員会でも出していただきたい、そう思います。
  33. 加藤敏幸

    加藤敏幸君 もう時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、更にいろんなレベルでの議論を深めていく必要があるというふうに思いました。  ありがとうございました。
  34. 杉久武

    ○杉久武君 公明党の杉久武でございます。  本日は、三人の参考人皆様から貴重な御意見をいただきまして、大変にありがとうございます。  私自身は、私、三十代後半になりますので、本当に社会に出てからは常にデフレと言われた時代しか経験をしていなくて、ただ、今回のこの産業競争力強化法案については、やはり今までこの二十年間、デフレ経済本当に大変な状況の中で、再び力強い経済を取り戻すために、本当に国が積極的に関与をしていきながら、今のアベノミクスの三本目の矢、成長戦略をしっかりとやり遂げていくという強い意思がこもった法案であるというように感じております。  一方で、今私自身も、やはり実際本当に景気がいいということを、世の中の景気が全般としていいということを、個別企業であったとしても全般としていいということを感じたことがない世代になりますので、本当に良くなるのかということに対しては、やはりかなりネガティブなマインドも市場にしみついてしまっているのではないかなというように感じております。  そういった観点から、今回のこの産業競争力強化法案につきまして、やはり今までとは違う、こういった点は非常に評価しているという点、また逆に、こういった点は留意、物足りなさがあるのではないかという点について、それぞれの参考人からお伺いできればと思います。
  35. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 質問の趣旨をもう一回。どういうことについてのお答えをすれば私はよろしゅうございましょうか。
  36. 杉久武

    ○杉久武君 全般として、やはりこういった点は今までと違って十分に期待できる施策であるというふうに評価されている面があればそういった点と、この点についてはまだまだ力不足、もうちょっと踏み込んだ施策をすれば更に本当経済の回復というものを成し遂げられるのではないかという点でお願いできますか。
  37. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) この失われた二十年の間、成功とか繁栄とか発展とかということを実体験として持たない世代が日本の人口のかなりの部分になってしまっているということは私も大問題だと思いますので、多少空元気でもいいからそういう動きが出るならというふうに思いますので、ある意味でPR作戦が非常に大切。  それからもう一つは、この法案自体は、先ほど冨山参考人がおっしゃられたように、そんなにべらぼうに乱暴な踏み込んだものだとは私にはとても思えない。しかし、こういうもの自体が踏み込んだと一般的には受け止められる、その風潮こそがむしろ問題にすべきではないかというふうに思います。  余りお答えになっておりませんが、申し訳ありません。
  38. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) いい点は、これは今、伊丹参考人に近いんですけど、要は、ある種のメッセージ性として、最初に申し上げたように、産業再生的な話から競争力強化に向かうというのは一つのメッセージ性があると思うので、そういった意味でも、みんなを元気にするようなメッセージが出せるといいなと思います。  あと、物足りない点でいうと、ちょっとこれも先ほど申し上げたことと若干かぶりますが、どちらかというと、こういう法律の枠組みに反応してぱぱっと前に行くというのは、大企業であったり、あるいはベンチャーの中でもすごく能力を持っている、元々能力を持っている人たちがいろんなチャレンジをするという意味でいうと、アップサイドを引き上げるという力はあるんですが、ただ、現実に経済社会の七〇%はさっき言いましたように中小企業で働いているという現実があるわけで、サービス産業でまた働いているという現実があって、サービス産業というのはどうしても労働集約的な性格が強いのでそう簡単に生産性が上がりませんから、そう簡単に賃金が上がってこないという、要はこれはもう経済構造的な問題がございます。  残念ながら、今の日本産業構造というのは、いわゆる大手の企業さんとそういうサービス産業の間は産業的にはちょっと切れちゃっていますので、当然にこっちからこっちへトリクルダウンはしないんですね。そうすると、こちらはこちらでどういうふうに、繰り返しますが、サービス産業掛ける中小企業掛ける地域企業の生産性を高められるかという議論はやっぱりこの後やっていかないと、残りの七〇%のところというのが、実はここで断絶が起きるので、それをどうしていくかというのは、これはいわゆる社会政策的な観点とは別に、産業政策的な観点において、ここの競争力、生産性を高めるためにどうすべきかという議論はこの後是非ちゃんとやっていただければうれしいなと思います。
  39. 井上久

    参考人井上久君) 少し重複すると思いますが、一つエピソードを紹介させていただきたいというふうに思います。  これは、自動車のある大手で派遣切りに遭った女性の話です。本社の事務系の女性でしたけれども、優秀な一流大学を出た人たちが、若者は車離れだと、どうするかということで、販売戦略やいろんなことを議論しているんだそうです。延々と議論していたけれども、ひょっとしてこの人たちはばかじゃないのかと彼女は思ったそうです。だって私たち買えないんだもんというのがありましたけれども。  実際上、大企業がどうなるかという以上に、先ほどもありましたけれども、中小企業や地域ということを考えたときに、少なくとも雇用をこれ以上壊すということはやめていただきたい。今も、経済産業省やそうしたところが発信されて、先ほども言いましたプロフェッショナル労働制やいろんな話が出ていますが、労働者派遣を原則自由化するといいますか、常用代替防止を外すであるとか解雇特区みたいな話は間違いなく賃下げにつながるというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  40. 杉久武

    ○杉久武君 ありがとうございます。  続いて、今回の法案については、様々な踏み込んだ施策がある中で、やはり定期的な評価、先ほど少しお話も出ましたのは、PDCAということで、しっかりと施策ごとの評価がなされていかないと、ある意味絵にかいたもちになってしまっては本当意味がないというように考えております。  私自身は、十五年間、公認会計士をしておりましたので、様々な企業の実際数字を見てまいりました。昨今は特に、上場会社中心に内部統制ということで、しっかりやはり物事に対してのフィードバックをして次の改善活動につなげていく、そういったものがごく一般的な状況であるとは思うんですが、そういった民間では一般であることが、今度この行政の中で、本当にPDCAをしっかり回して、一つ一つの施策に対してしっかりと定期的なモニタリングをやって改善をしていけるのかどうかという点については、私、今回七月当選したばかりで、まだまだ不勉強なところ、分からないこともあるんですが、なかなか、この四か月の経験からすると、そこについても大きなチャレンジになっているんではないかなと思います。  それで、経済の実態をよく御存じの皆様に、この質問は伊丹参考人冨山参考人にお願いしたいんですが、その他について、やはり行政として留意すべき点、また、本当にしっかりとこの施策を、恐らくある程度試行錯誤的なプロセスも絶対必要になってくると思いますので、そういった観点から何かアドバイスいただけることがあればお聞かせ願いたいと思います。
  41. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 行政へのアドバイスという点で、二点だけ申し上げたいと思います。  一つは、余りちゅうちょしないでほしいということでございまして、この五年ぐらいでしょうか、特に過去二、三年の間、行政が様々なことをヘジテートして前に一歩足を出さないというような現象があちこちで行政の分野で起きていると思います。それは直していただきたい。せっかくこういう法案ができたのならば、行政として積極的に動いてほしいと、それが第一のポイントでございます。  もう一つ、PDCAについては、確かにこういう法案を作って行政側に実行してもらいたいと思っておられる国会の側からすればある意味では当然のリクエストかと思いますが、そのPDCAサイクルを回すためにも実は資源が必要で、人材が必要で、人間の時間が必要で、そこで過重負担になって、チェックチェックばかりで現場の実行が追い付かないという、そちらに対する配慮は是非していただきたい。
  42. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 私、仕事がPDCAを回すことなので、その観点で申し上げると、PDCAを回すときに一番大事なのはバッドニュースなんですよ。要は、グッド・ニュース・イズ・ノー・ニュースなんですよ、経営者の立場からすると。良かったね、ああ、そうかそうかでおしまいで。大体、優秀な経営者はバッドニュースが上がってきたときの方がアドレナリンが出るんですね。そういうものです。  なので、ですから、ただ、行政というのはバッドニュースがどちらかというと検閲で外される傾向があるところなので、無謬性の問題があるので、そうすると、この過程でバッドニュースがどう、くどいようですが、これ、ある種の社会実験的要素が今回の施策の中に入っていますので、ということはいろいろ不都合なことも起きます。  さっきのちょっと例で申し上げると、ツアーバスの自由化というのは当初は正しかったと思います、新規参入が増えましたから。ただ、問題は、それをどこまで引っ張るかという問題で、一定のある種競争状況が生まれたらむしろ、要するに非対称規制だったんですね。非対称規制というのはずっとやっているとおかしいことが起きるので、どこかで対称規制にすべきだったんですが、一回これでやっちゃったもんだから、もう今度は行政の方がかたくなで、実際に事故が起きて人が亡くなるまでこの非対称が、もう前から指摘されていた問題なんですけれども、これが回らないんですね。彼らの言い分としては、これでうまく回っているんだという言い分だったわけで。ですから、このバッドニュースをうまくつかむような仕組みを工夫していただけるとうれしいなと思います。
  43. 杉久武

    ○杉久武君 ありがとうございます。  本当に今のバッドニュースが必要だという点は、非常に適切なポイントだと思います。そういった問題点についてやっぱりしっかり洗い出すというところが今回の施策でも非常に重要な点になってくるんではないかというように考えております。  続いて、冨山参考人に続けてお伺いをさせていただきたいんですが、事前にいただいた資料等も拝見させていただく中で、やはり市場機能が不全のときは国の関与の許容度が高いということをおっしゃられると思うんですけれども、そういった観点で、今の市場の状況というものに対してどういうふうに今とらえ方をしていて、それとプラス今回の法案がかなり踏み込んだ関与をしていくということになっておると思いますが、その点についての評価を、評価というか意見をいただければと思っております。
  44. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 恐らく市場が、一般的な論理でいうと、やっぱり失敗しやすいのは先ほど来申し上げているように退出局面なんですね。それで、日本の場合、始めるときとやめるときに失敗が起きやすいんですよ。そこが最大の課題で、繰り返しになりますけれども、大きな会社のある種のコンソリデーションを促進するという意味でのあめの部分に関してはいろいろ考えておられるなというふうに思います。しかしながら、やっぱりあめだけでは現実に動かないという状況があるわけで、そうすると、むちの部分どうしていくのかというのは結局コーポレートガバナンスの問題になると思うんですが、そういった仕組みをどうしていくのかというところ、これが一つですね。  それから、あともう一つ中小企業サービス産業こそ実は新陳代謝、それを通じて優秀な経営者の下にいろんな事業体を糾合していくということが非常に効く領域でありまして、また手前みそなんですが、今いわゆる被災地のあの地域でも私どものバス会社はずっと人員募集中です。人が足りない状態です。ですので、もし知り合いがいたら本当、第二種を、大型を持っている人がいたら紹介してほしいぐらいなんですが、ちゃんと雇用はつくれるわけです、ちゃんとした経営をしていけば。  ですので、そういった意味合いでいうと、中小企業の淘汰、再編どうすると。実は中小企業が一番大変なのは、中小企業事業者にとって廃業するということは、自己破産をほとんどの場合意味します。御存じのように、もう大概いろんな保証を入れていて、大抵信用保証協会もつまんじゃっているので。信用保証協会って一番破産しないと許してくれないんですよ、やっぱり税金がかかわっているので。そうすると、一家そろって、それこそ破産して、下手すると首をくくらないと事業がやめられないという状況になっているケースが少なくないんですね。これは中小企業を社会政策的に救ってきた部分のある意味では負の側面でありまして、ですから、やめるにやめられない中小企業というのはすごく多いし、事業再編やりたくてもできないというケースがすごく多うございます。  この問題をどう解いていくかというのは、ちょっと今回の法案の域外ではありますけれども、是非是非考えていっていただきたいなと思っております。
  45. 杉久武

    ○杉久武君 ありがとうございます。  最後に、伊丹参考人に御質問させていただきたいと思います。  今回の法案と直接的な関連性は低いかもしれませんが、事前に拝見をさせていただいた資料の中で、地政学的にやはり中国の、経済的にも重要だということをおっしゃられていると思います。やはり当然引っ越しできませんので、隣の国という中国に対しては本当に重要性ということは私も十分認知をしておりますし、我が公明党として、やはり日中の関係というのも歴史的に本当に重要視をしてまいりました。一方で、今尖閣の問題も更なる問題も出てくる中で、やはり経済における中国の重要性の部分について御意見をいただければと思います。
  46. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 中国との国際分業あるいは経済の相互依存体制というのは、私は国を挙げてのある意味では安全保障の問題だと思っております。経済のことを安全保障という言葉を使うのはおかしいかもしれませんが、様々な理由で軍事能力を巨大に持つということの制限が行われてきた日本でございます。それはそれでいいことだと思いますが、しかし、国を守る、日本国民を守るということは政府の責任です。中国との間で極めて深い相互依存関係、国際分業体制ができ上がりますと、日本経済活動を邪魔すると中国は自分が損するというぐらい深く付き合っちまうと。これは結構総合安全保障になるなというふうに私思っておりまして、決して日本企業のもうけ先としての中国市場という観点だけからでなく、日本という国の総合安全保障の観点から中国との経済の相互依存体制をどれだけ深めていくかということは国にとって私は極めて大切な課題だと思っておりまして、広い視野で様々な議論が行われ、政策が実行されることを強く望みます。
  47. 杉久武

    ○杉久武君 ありがとうございます。  以上で終わります。
  48. 松田公太

    ○松田公太君 みんなの党の松田公太です。  本日は、お三方に大変参考になるお話いただきまして、ありがとうございます。  元々、今国会は成長戦略実行国会などとも言われておりましたが、いつの間にか若干その影が薄くなってしまっているなという嫌いがありまして、ただ、非常に重要な法案でございますので、しっかりと審議を深めていきたいと、このように思っております。  まず、冨山さんにお聞きしたいと思っております。  産業競争力強化法案では、事業再編の促進、これが重要な政策として挙げられているわけですけれども、先ほどターゲットフレームワークポリシーというお話もありましたが、私はこの事業再編の促進、今の考え方は過分にこのターゲティングポリシー的な発想が含まれているなというふうに考えているんですね。どうしても再編すべき企業産業を国がある意味認定をして促進していくと、優遇、支援で何とかそれを成し遂げようということだと思うんですけれども、私は、それよりも、やはり会社法であったり、例えば倒産法であったりを見直すことによってコーポレートガバナンス、これを強化して、自然とその再編が進むような新陳代謝の土壌をつくり上げるべきじゃないかなというふうに考えております。  そういう観点から幾つか質問したいと思っているんですけれども、例えば先ほどもドイツのシュレーダー改革のお話がありました。労働市場改革ですよね。この話、私も非常に今参考にするべきだというふうに思っているんですけれども、ドイツの例えば倒産法の改正で、債務超過や支払不能のおそれがある場合は、取締役が、積極的にといったら変ですけれども、適時にというんですかね、法的整理を申し立てる、これを義務として課している状況になっているわけですね。これも大変興味深いなというふうに思っております。  そういった部分を以前たしか冨山参考人のインタビューか何かを拝見して、ドイツに触れていらっしゃった部分がありましたので、もうちょっと掘り下げて教えていただければと思います。
  49. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) ドイツは御存じのように二〇〇〇年代の初めにシュレーダー改革というのをやりまして、それまではドイツはシックマン・オブ・ヨーロッパと言われて、要するにヨーロッパの中でとっても経済成長しない、生産性の上がらない国、要は東西統一のいろんなコストを負担している状況だったわけで、それこそ今の議論と同じで、より失業なき産業移動、労働移動を進めていこうということでいろんな改革をやっています。  私は、どっちかというと、企業再生をやってきた人間なので、やはり倒産法のところは非常に注目をしていて、その中で今、松田先生が言われたように、債務超過ないしは支払不能のおそれがある場合にはむしろ積極的に企業経営者はもう法的整理を申し立てなさいと、そういう義務付けをしますと。これ、考え方としては、債務超過、支払不能のおそれがあるということを認識しながら取引を続けること自体がある種詐欺的であるという、そういうことなんですね。もちろん、倒産の局面ではそういう色彩がやっぱりあるわけです、へんぱ弁済の問題というのはある種の差配的行為ですから。むしろ、早めに病院に行ってくださいということですね。自分がおかしいなと思ったら、早めに病院に行って精密検査受けてくださいという法体系であります。  いきなり導入するのは確かにちょっとショックが大きいといえば大きいんですが、実際、多くの場合、そういった企業体というのは相談に来るときには大体手遅れなんですね。何でここまでほうっておいたのというケースが多いわけで、どうせ再編を進めるんであれば比較的健康体の方が早く済みますし、債務超過になる前に申し立ててくれれば、例えば連帯保証していてもその人が資産で全部弁済できるわけですから破産する必要はないわけで、そういった意味で早期再生というものを促すある種のこれはむちの方ですが、としてすごく重要な要素だと思っているのと、それから、シュローダー改革にはコーポレートガバナンス改革も入っています。  要は、社外取締役を中心としたチェック機能の強化ということで、これちょっと先ほどの冒頭の話の中でも申し上げましたが、日本企業最大の弱点というかありがちな構図というのは、村の空気の同調圧力の中でやるべきことができないという不作為の暴走です。不作為の暴走を防ぐためには、やはり村の住人じゃない人が、よりある種客観的に、第三者的に、いや、これはもうやめた方がいいでしょうと、あるいはこれはやるべきでしょうということをやっぱりある種のいい意味での外圧を働かすことが大事で、ひょっとするとかつては金融機関が、メーンバンク制が華やかなりしころはメーンバンクがその一定の役割を果たしていたと思います。  しかし、今はメーンバンク制というのは事実上なくなっていますので、そうなると、やっぱり基本的には本来の会社法が想定している株主ガバナンスに戻るべきで、そうすると、株主ないしは株主の代表している要は外部取締役というものが村の空気の同調圧力を排して、やるべきことを経営者にやるように仕向けるということがすごく大事なので、そういった意味合いでやっぱりコーポレートガバナンス改革も大事だと思っています。
  50. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。  実は、みんなの党は、今回の法案に対して、衆議院の方ですけれども、修正案として、株式会社に社外取締役の選任を義務付ける、これを入れさせていただいているんですね。ですから、今おっしゃっていただいたことは非常に分かりやすくて良かったと思っております。例えば、病気になってしまった会社に対する社外取締役の役割もありますし、例えば、低生産性といいますか、低利益率、若しくは内部留保、これ進行しているような企業が残念ながら日本に非常に多いわけですから、そういった部分を是正するためにも社外取締役は重要なんじゃないかなというふうに考えております。  もう一つ、関連した質問なんですけれども、事業再編において多くの企業が直面している人員整理、これに対して具体的な施策が現状ないんですね。旧産業から新産業へ円滑に人材を転換するということが非常に重要じゃないかなというふうに考えております。これこそが産業の新陳代謝、これを促す上で必要だというふうに考えております。  これについては、実は先日、私も大臣に提案させていただいたんですけれども、今の事業再編制度と例えば企業実証特例制度、これを組み合わせて事業再編を行う会社には、解雇時の例えば金銭解決の制度、これを組み合わせてセットで提案してみたらいかがでしょうかと。その可能性はありやという話もあったんですけれども、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  51. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 金銭のかかわる問題というのは、私自身の問題意識は、現状でも、例えばさっきちょっと申し上げた中小企業の解雇事案とかでは、仮に解雇無効判決を取れても現実には職場復帰できないケースがほとんどなんですね。そういう実態がある中で、現実の運用というのは、裁判所が多くの場合判決を出す前に和解勧告をして、結局金銭で和解してもらうという方向に持っていくケースが圧倒的多数です。  そういう実態がある中で、かたくなに今の解雇要件で絶対とにかく正規雇用が正しいものであって、それを守るという立ち位置を取ると、実は会社がにっちもさっちもいかなくなるところまでいって、退職金を払う余力もなくなっちゃって、そこで最後の最後、整理解雇をやって、働いている人がかわいそうに退職金もらえずにおっぽり出されるということが実は起きています。これがさっき言った残り八〇%の現実です。  そういった意味合いでいうと、それを現実的に解決する方法として、私、今の仕組みはちゃんと機能しているとは思えないので、そういった意味合いで何らかの改革はおっしゃるように必要だと思っています。  それともう一点、要するに労働移動ということを考えたときに、日本的な問題としては、労働市場が現実には、例えばアメリカのように発達しているわけではないので、そうすると、その間にどういうふうにブリッジを架けていくか、次の職場に移るときの職業訓練の問題であるとか、それをどうブリッジ架けていくかというのも、これはセーフティーネットとして必要で、それをちゃんと完備するということとのセット、要は合わせ技としてそういった仕組みというのは整備していかないと。  実際、今、松田先生がおっしゃった問題は、これはもう残り八〇%で起こりがちです。二〇%よりも八〇%の中堅・中小企業あるいはサービス産業で、比較的新しい産業でそういうことが起こりがちなので、そういった世界というのは少なくとも今の仕組みの中ではどっちにしろ救われないので、そこは新しい、それこそスマートレギュレーションをつくっていただけるとうれしいなと思っています。
  52. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。  今の冨山参考人の残り八〇%という話を聞かれて、井上参考人はどのように思われますでしょうか。
  53. 井上久

    参考人井上久君) 私も似たような感想を持っていますが、日本の場合、一番私欠けていると思うことは、ヨーロッパやそうしたところと比べて生活保障が不備だということだというふうに思うんです。  失業保険制度が二〇〇〇年代、三度、大きく三度だと思いますけれども、改悪されて、私どもの見方からいえば改悪されてきました。今、実際に完全失業者のうちで失業給付を受けている方は僅か二割にとどまっています。多くの若者がどういう状況にあるかというと、今日明日の糧を得るために本当に劣悪な仕事だと分かっていてもひどい仕事に飛び付いている、そんな状況があります。そして、失業率がこれだけ低いというのも、そういう仕事にしがみつかなければならない人たちが多いからだというふうに思うんです。  失業なき労働移動という前にやはり成長産業をつくるということだと思いますし、もう一つは、安心して失業して、スキルを身に付け、次の仕事に移れる、そういう環境整備が少なくとも、どういう政策を取るにしろ必要だというふうに感じます。
  54. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。  本来でしたらもうちょっと議論を深めたいというふうに思っているところですけれども、ちょっと余り時間がありませんので、次に進めさせていただきます。  これは冨山参考人と、あと伊丹参考人にお聞きしたいというふうに思っているんですが、先ほどこれ冨山さんの方から、ベンチャーを育てるにはベンチャーキャピタリストをやはり育てなくてはいけないという話がありました。この産業競争力法案の目玉の一つベンチャー投資の促進だというふうに言われております。御案内のとおり、これはベンチャーファンドに出資する企業に対して、その出資額の八割を損金算入できると。かなり積極的なものだなというふうに私も感じております。  しかし、先ほどのちょっと話に似ているんですが、そのベンチャーファンドを国がやはり認定するということになっているんですね。私が危惧してしまうのは、それによって大手のファンドばかりがやはり認定されて、資金がそういったところに集まってしまう。これは先ほど伊丹参考人からお話ありましたが、玉が少ないといいますか、資金ばかりが今どんどん集まってきているような状況で、実際、じゃベンチャーが、それに堪え得るベンチャーといいますか、育っているのかというところは私自身もいささか不安に感じている状況ですね。多くのベンチャーファンド、キャピタリストとお話をしますと、玉がないんだという話を今はされます。ですから、ますますこの政策によってそういった偏りといいますか、が生まれてしまうのかなという危惧も実際しております。  この件に関して冨山さんはどのように感じているか、伊丹さんはどのように感じているか、お答えいただければと思います。
  55. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 御懸念はよく分かります。ですから、避けなきゃいけないのは、大手の企業が大手の企業っぽい人にお金を集めてなんちゃってベンチャーキャピタルをいっぱいつくっちゃうというのが一番困る話で。その一方で、ある程度これから育てていくベンチャーというのはやや資本集約度、知識集約度が高い本格ベンチャーということになると、お金も要るんですね。そうすると、さっきも申し上げたように、どうやったらインディペンデントでプロフェッショナルなトップクラスのベンチャーキャピタリスト、要はだから独立系の人ですね、の人が割とスムーズに何十億円という単位のベンチャーキャピタルをつくりやすいような環境をつくるかということが鍵で。  ただ、考えてみますと、十年前、国は、私、冨山和彦というほとんど一匹オオカミみたいな人間に十兆円預けたわけです。だから、できないことはないわけで、ちゃんとプラスを付けてお返ししたのですから、かつ、雇用を守って。守っていますので、そういう意味合いでいうと、それはできなくはないわけで。  ですから、問題は、この仕組みの中で、要はそういうなんちゃってVCじゃなくて本格派のベンチャーキャピタリストのところにお金が集まるような要件をどう定義するかということが私は大事なような気がしているので、これ、なかなか要件定義難しいんですが、くどいようですけれども、やっぱり結構出てきているので、そういう候補生、そういう動きを、活動している連中は出てきていますし、それこそ、今どきそういうのをやっているのって相当学歴はすごいやつが多いし、それこそ一流の弁護士、会計士出身の人もいっぱいいるので、そういった連中がプロフェッショナルにやっているところにお金が出やすいような制度をつくっていただけると私はいいなと思います。
  56. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 先ほどおっしゃられた問題のうちの玉不足、人材不足のところがどれぐらいシビアかということを、もっと法案を作る側、それを実行する行政の側が深く認識して、その人材が育つ場をどうやってつくるかということをきっちり法律の枠組みの中に位置付ける必要が、今回の法案では無理かもしれませんが、次にあるように思います。  私は、むしろそういう人材に対する手当てということを一方で考えないベンチャー投資の推進策というのは失敗することが目に見えているような気がするので、むしろ法案として削除すべきだぐらいに思っております。
  57. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。  あと残り二分ですので最後の質問とさせていただきますが、これは伊丹参考人にお聞きしたいと思いますが、産業競争力強化の観点から、イノベーション、これをどう起こすかというのがやはり一番重要だなと私も感じております。イノベーションというのは、先ほどもお話の中でありましたが、大企業からももちろん出てくるとは思うんですけれども、個人的にはやはりベンチャーからより多く起こる可能性が高いんじゃないかなというふうに思っております。  また、アメリカなどでは大学発のベンチャーがどんどん生まれておりまして、非常に今アメリカでも名前を幾つかもうすぐ皆さんが挙げられるぐらい知名度も高くなってきておりますが、日本ではまだまだ残念ながら少数派だと言わざるを得ません。  今回の法案には、実は国立大学によるベンチャーファンドの出資というものも入っているんですけれども、イノベーションを研究されてきた伊丹教授から是非お聞きしたいと思ったんですが、なぜ日本からは革新的なこの大学発のベンチャー企業が余り生まれてこなかったのか、どうすれば増えるようになるか、これを教えていただければと思います。
  58. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 最大理由は、国全体が、日本社会全体が大学セクターに対する投資を過去数十年にわたって軽視し続けてきた結果だと思います。  アメリカの大学が大学発ベンチャーができるように様々なことが可能になっている背後には、膨大な社会からの寄附金も含めた投資があって、そこで世界中の人が集まって膨大な研究開発が行われ、その成果が泉がちょうど入れ物からあふれるかのごとくに出ている。日本は足らない水を何とかくみ出そうとしていると。  したがって、長期的な対策としては、大学に今の二倍、三倍のお金を投資するぐらいのつもりにならないと本格的な解決にはならないと私は思います。
  59. 松田公太

    ○松田公太君 どうもありがとうございました。
  60. 倉林明子

    ○倉林明子君 本日は、三人の参考人の方に意見をお聞かせいただいて、本当にありがとうございました。  最初冨山参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど解雇の現実ということでお話がありました。問題は大企業の外の八割のところに問題があるんだということでございました。実態として、私聞き及んでおりますところによりますと、大きな名立たる大企業のところでも万単位の、何万人単位のリストラが進められると、こういう実態も一方ではあって、そこを首切りに遭った人たちも大変な苦労をしているという現実も一方であると思うんですけれど、御説明のあったその解雇の現実ということについてもう少し踏み込んで御説明いただければ有り難いと思います。あわせて、少しゆっくりお話しいただいた方が聞き取りやすいので、よろしくお願いします。
  61. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 大企業において今確かにまとまった、一万人とかという単位の人員削減とかというのが行われていることは事実です。私もそれにかかわったことがあります。  ただ、要は、そういう場合と、中小企業、例えば田舎の小さな旅館とか、そういうところで人に辞めてもらわなきゃいけないときの状況を比較したときに、どちらが要はより深刻な展開になるかというと、今のは大企業の正社員の話です、大企業の正社員の方にお辞めいただくケースというのは、多くの場合、かなり手厚い希望退職の形になります。少なくとも二十四か月ぐらい払うんじゃないでしょうか。その上でいろんな形で、グループ関係会社の中に何とか受皿を探すという努力をそれこそ組合さんと一緒にやって、相当なやはり手を掛けられるんですね、それでも。  ですから、私が申し上げたかったのは、ところが、それが例えば田舎の小さな旅館の場合にはそういう要するに持っていき先が実はありません。既に元々非常に賃金水準の低い方々です。実際、私の経験でいうと、そういう場合でもやっぱりぽんとおっぽり出されると大変なことになるわけで、それこそ自分の田舎に自分の子供を預けて子供に仕送りしているような方がいらっしゃいますので、そういった人たちの子供の人生も壊れないように最大限の配慮はしました。  なんですが、にしても、やっぱり相当切ない状況があるわけで、それを比較したときに、私自身の感覚でいうと、むしろそういう環境で働いている人が七割以上いるのが日本の現実ですから、後者の方が、そういった意味合いでいうと、この問題の深刻さというのは、これは比較の問題です、別にその大企業の問題が問題じゃないとは言っていませんけれども、比較の問題として、量においても質においても明らかにその八割の問題の方が深刻なわけで、ですから、そこにどうしていくのかという議論が深刻になされないと、私は結局大きな問題が放置されると思っていますし、加えて、この七割、八割の人たちの労働者というのは、ある意味では組織化されていません。  したがって、こういう議論をするときに、例えば政労使が集まっても、結局二〇%の雇主と二〇%の労働者がある意味では集まって議論するということになるので、この七〇パー、八〇%の議論はどうしても相対的に見過ごされがちなんです。ですから、そこに是非是非、私は政治はそこに光を当てるべきものだと思っているので。ここはくどいようですが、残念ながら、通常の市場原理とか経済原理の中で解決せよというのは直接的には難しいです。あるとすれば、くどいようですが、個々の企業が頑張っていい経営をして、少しでも生産性を上げて、高い賃金で安定的な雇用をつくるという、ある種経営者の努力以外に私は答えがないと思っているので、そこから先はある意味では市場経済で解決しろというのはちょっと酷な話だと思っています。
  62. 倉林明子

    ○倉林明子君 雇用の問題で大企業の二割のお話ありましたけれども、大企業の中にも正規雇用、非正規雇用、非正規雇用が極めて拡大してきているという実態があると思うんですね。  その上で、井上参考人に質問したいと思うんですけれども、大企業の現場でも雇用の在り方が現在でも多様化してきていると思うんですね。そんな中で、さらに、日本再興戦略の中では多様な働き方ということで掲げられているわけですが、今でも非常に問題あると我々は思っているわけですが、今後こういう戦略で描かれている雇用の在り方というのは一体現場にどんな影響が広がっていくと考えておられるか、雇用の在り方がどうなるかという辺りを御意見を伺いたいと思います。
  63. 井上久

    参考人井上久君) 幾つか挙げられていると思うんですが、最初発言でも触れさせていただきましたけれども、一つはやっぱり労働者派遣の常用代替防止という大原則を今度外せという話が出されていると思います。人を替えればいつまでも派遣を使い続けられる、それから、一生涯派遣という働き方が当たり前になりかねないということだと思いますし、そうなれば、やっぱり非正規が当たり前ということで、多くの職場で正社員が派遣や非正規に置き換えられていく、そんな事態になりかねないというふうに思うんです。  現政権も所得増、賃金を上げるということを言われていますが、そういう雇用破壊をする、不安定な雇用にしていくということになれば、賃金も下がっていきますし、最初発言でも言いましたけれども、ブラック企業が当たり前の社会にするということでは、経済成長と逆行する真逆の政策ではないかというふうに思います。
  64. 倉林明子

    ○倉林明子君 再び冨山参考人にお伺いしたいと思います。  いただいた資料の中で、冨山参考人の御意見として出されていたと思うんですけれども、国際比較をすると、日本の地方と中国の沿岸部、賃金比較では日本の地方の方が安いと、こんな状況になっているという御意見を述べられていたかと思うんです。  コストを考えれば地方への企業進出が進むのではないかというような議論があって、だけど進んでいないと、そのことに対して一体要因は何かということで、お聞かせいただきたいと思います。
  65. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) これ実際の雇用がどう生まれるかというのは、より個別的な企業の行動の中で決まってまいります。そうしてみたときに、中国の沿岸部の賃金の高さというのは、これは圧倒的に沿岸部に特に多い金融セクターであるとか、BツーBのサービスセクターであるとか、要はかなり高付加価値産業が実はもう沿岸部の主要産業になっていて、工場が実はもっと奥地に移っちゃっています。  そうすると、結局、この比較の問題というのは、そうなりますと、中国を生産拠点にするか、あるいは日本を生産拠点にするのかというのは、通常の割と平均的な量産工場ということに絞って申し上げると、要は、中国内陸部の平均賃金と、東北であれば東北の平均賃金の比較ということになるので、そうすると、そういった意味ではどうしてもまだ日本は比較劣位になります。  ただ逆に、日本の国内にも残した方がいいような工場労働もあるわけで、その典型が、先ほど伊丹参考人から話がありましたように、複雑系の物づくりというのは、実はマザー工場の役割が非常に重うございます。要は、生産工程というものを実はすごく創意工夫しながらつくり込むんですね。それを何か月、何年と掛けながら実は量産体制に持っていくというつくり方をしております。これは初期の携帯電話なんかもその典型だったわけですけれども。そうした過程というのはどうしたって日本国内に残していくということになりますし、逆に、日本国内においてはむしろ長期雇用が通常でありますので、長期雇用の方がそういったノウハウが外部に流出しないで蓄積することが可能です。  したがって、そういったタイプ複雑系生産工程、特にマザー工場的な生産工程、要はハイエンドの生産工程というのはむしろ国内に残していく動機付けが比較優位論としては強く働きますので、そういった工場は残っていくはずです。もっと言いますと、日本企業は国際的に圧倒的に成功して、例えば、平均的な日本の大手電機メーカーが今の十倍の規模になれば、当たり前ですがマザー工場の量は増えます。恐らく、現実的な工場労働、工場労働的な物づくり系の雇用を増やしていこうと思ったら、実はそれが最も現実的な私はアプローチだと思っています。
  66. 倉林明子

    ○倉林明子君 今のお話は、企業進出をどう進めるのかというような点からのお話だったかと思うんですけれども、一方、今、私、京都が地元なんですけれども、地方で下請で部品作っている、金属加工している、あるいは繊維加工しているというふうなところが、中国単価との競争というようなことが実態として起こっているんですね。本当にそういう世界競争を既にもう足下のところではやらざるを得ない、それでも受けざるを得ないというような状況になっているのが現実ではないかと思うんですね。  そこで、井上参考人に改めてお聞きしたいんですけれども、全国をお回りになっているという中で、そういう私が紹介したような働き方というのも現実進行しておりますけれども、雇用されて働いている方々のところで一体どんな実態が広がっているのかというところも是非御紹介いただきたいと思うし、雇用の質ということで御意見述べていただいたと思うんですけれども、その点でももう一つ踏み込んで御紹介をいただきたいなと思います。
  67. 井上久

    参考人井上久君) 雇用の質、まず一つ触れておきたいのは、日本の場合に、先ほどお話がありましたマスター工場で、マスター工場でありながら、そこで世界中を見渡したときに人員調整が一番やられているという日本雇用の現実といいますか、雇用保障の弱さということが一つあるんだと思います。  それからもう一つ、先ほどキャラバンで全国を回ってということをお話ししましたが、全てがグローバル競争の荒波の中にさらされているわけではないですよね。やっぱり地域で、本当にその地域循環型の中小企業や人々の生活があります。その場でやはり人々が普通に働けばまともな生活ができるということが必要だと思うんですけれども、一例を挙げます。  北海道で四十人の高校というのがたくさん実はあるそうなんです。入学時にはほとんどの人が進学希望だけれども、経済状況で卒業時には半数ぐらいが就職になると。三月には就職率は一〇〇%になるけれども、ほとんどの人が手取り十万円程度の仕事、最も多いのが携帯電話の販売員だというふうに言われていましたが。  こうした現実を考えて、今東北地方を回っていても、震災直後、高校生は地元志向というのがぐっと強まりましたけれども、やはり暮らしていけないということで、都会に出ざるを得ないというのが驚くほどこの一年ぐらいで変わったんだなということを感じましたが、やっぱりグローバル化とは別の地域経済ということを私は一番考えていただきたいなというふうに思います。
  68. 倉林明子

    ○倉林明子君 今回の法案の中では、企業実証特例制度というものも例外なく、農業、医療、雇用分野に例外なく使っていけるんだと。一方で、こういうものを使って雇用の不安定さが増すようなことはあってはならないということを非常に懸念しております。規制、雇用のルールをしっかり守るということを支援しながら、労働者の賃金の底が上がるというようなことがやっぱり本当は求められているんじゃないかというふうに思っております。  今日は様々な意見も伺って、質疑も更に深めていきたいと思っております。伊丹参考人には、最後、意見をお聞きできませんで申し訳ありませんでした。  ありがとうございました。
  69. 中野正志

    ○中野正志君 日本維新の会の中野正志でございます。  実は、国会対策の仕事がありまして荒井さんと二人中座をしてしまいまして、大変恐縮でございます。また、いない部分もございましたので、質問ダブりましたらお許しをいただきたいと思います。  先ほど、伊丹参考人冨山参考人お話の中で、日本民間技術力はすごい、私たちも確かにそのように誇っております。昔からよく言われるのでありますけれども、産学官連携と、産学協同路線とよく言われました。今回の法律が通りまして大学発信の企業がまあそれなりの数で出てきて大いに国際競争力も身に付けて飛躍していただきたいと念願はいたしておるんでありますけれども、伊丹参考人冨山参考人、この産学官連携あるいは産学協同路線、大学はすばらしい頭脳、知恵を持ってすばらしい成果を生み出す、それをこの日本で生産、製品化して国内に、あるいは海外にということで言葉はありましたけれども、なぜ進まなかったんだろうなと。  私は東北、仙台でありますけれども、東北大を始めとするすばらしい高等教育機関はあります。また、毎年毎年ちょっとずつでありますけれども、そういう産学連携の中で新しい企業も生まれていることも確かなんですけれども、しかし誇るほどまでにはまだまだ行っていないなと、大学界があるいはもう一つおどおどした気持ちがあったのか、あるいは資本の問題であったのか。このしっかりとした大学発信の企業、それを更に飛躍的に増加せしめるためにはどうすればいいんでしょうか。お伺いをさせていただきたいと思います。
  70. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 既に先ほどお答えしたことと重複する部分がございますが、日本の大学の現状を現実的にとらえるというスタンスがまず第一に必要ではないかと思います。  日本の大学の現状は、先ほど申し上げましたように、過去数十年にわたる社会全体からの大学への投資が極めて抑えられてきたために、世界に誇れる国際競争力がある大学というのが残念ながら非常に少なくなっています。その現実を踏まえた上で、そこをどうやって逆転させていくかという発想にしないと、今ある現在の大学でそれなりに確かに技術開発研究開発が行われておりますので、それをどうやって使うかという発想以上に、ネタを多くするというところへの国からの投資、社会からの投資を増やすべき、これが第一点でございます。  もう一つ、産学連携の問題を大学の現場で見ておりまして強く感じますのは、日本の大学というのは事務系の職員の数が圧倒的に少ない。先生が雑用をたくさんやらなきゃいけない。せっかく研究室で研究開発をやるのが得手の方が、書類書きとか企業の方との折衝とかそういうことに忙殺されて時間が回らないという現実が一方にある。  したがって、やるとすれば、大学の先生に研究開発のお金を差し上げるということだけではなくて、事務系の職員の体制を飛躍的に向上させることをしないと、実は日本の大学が抱えているせっかくポテンシャルのある人たちのポテンシャルをきっちり生かすことにならない、そう思います。
  71. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) まず、大学の問題に関しても私も伊丹参考人と同様の認識でございまして、私、大学は東京大学で、大学院はスタンフォードです。スタンフォードの同窓会長もやっていたので、中のことは詳しいんですね。あと、ちなみにスティーブ・ジョブズの奥さんは私の同級生だったのでよく知っているんですが。  そういった背景から申し上げると、実はアメリカの大学、特に上位五校ぐらいですかね、には莫大なお金が入っています。これはもう考えられないような巨額の資金が、公的資金も民間からの寄附でもこれはもう桁違いのお金が入ります。裏返して言うと、アメリカでのそういう産学官がすごくスムーズに動いている大学って上位五校ぐらいまでだとたしか言われているはずで、要は、これは一定量の集積がないと、さっきの泉が出るという、スピルオーバーというのは起きないんですね。そうすると、恐らく東海岸でいうとボストンを中心としたあのエリア、西海岸でいうとシリコンバレーが中心になるんですが、もうここは本当にすごいお金の量です。  かつ、その中身も、いわゆる本当の純粋な基礎研究的なお金もありますが、実はミッションオリエンテッドな、いわゆるDARPAのお金ですね、軍事用のお金、要するに、かなりミッションを明確にした実用のための、もう基礎中の基礎から応用とこの間ぐらいの橋を架けるところに物すごいお金が入っています。実はここからスピルオーバーでグーグルも出てきていますし、GPSなんかも出てきているんですね。いわゆるラディカルイノベーションと言われているものはほとんどそれのスピルオーバーです。それがずっと前史があって、前の歴史がずっとあって、最後のところにラリー君とか彼らが登場するんですよ。  ですから、実はここを抜きにしていきなり同じようなレベルのことをやれと言われるのは、少々というか全く酷でございまして、そういった意味で、伊丹参考人の言われたことに私は全く同感です。それが一つの問題。  ただ、さはさりながら、幾つかシーズを持っていることも事実なんですが、あと一方で、私、東京大学エッジキャピタルという東京大学でやっているベンチャーキャピタル、これは比較的成功しているんですが、割と早い時期からアドバイザーもずっとやっていまして、実際その現場にもいるんですが、もう一つの問題は、これはやや、また人の問題に戻っちゃうんですが、結局こういったゲームをやっていく主体というのは、基本的にやっぱりインディペンデントでプロフェッショナルな人たちなんですね。要するに、大企業のサラリーマンとしてかかわると、要は、例えば自分の会社で使えるもの、使えるアプリケーションしか考えようがないんです。ところが、出てくるアプリケーションというのはどこに行くか分からないんです、ベンチャーのシーズというのは。そういう意味で、非常に広がりに欠くんです。いわゆるオープンイノベーションにならないんですよ。そこはやっぱりすごく日本の場合、大学の教員もちょっとサラリーマンっぽい人が少なからずいらっしゃいますし、事務の方はまるでサラリーマンですし、要は大企業の人もサラリーマンなので、いわゆるオープンなイノベーションに、これはさっきのお金の、ベンチャーキャピタリストもそうなんですが、そういった方向に向いていかないんですね。それがもう一つの大きな問題。  あともう一つ人材の問題で申し上げると、今どきのベンチャーが成功する非常に重要な要因は、特に本格技術物ほどいきなり世界に行かなきゃ駄目です。要は、日本で要するに制覇してから世界というアプローチ、そんなのITなんか絶対勝負にならないです。やっとLINEが比較的それに近いアプローチでいきなり世界に行っているので私はすばらしいと思っているんですが。ワンステップで行かなきゃいけないんですが、そうすると今度は、そこにかかわる人たちのインターナショナリティーの問題があって、大学って意外とドメスティックなんですよ。なので、そこの問題も克服しなきゃいけないので。  ちょっと難しいことばっかり言っちゃいましたけど、そう言ってもいられないので、是非是非政策的にもそこを覆していくようないろんなサポートをいただければ私もうれしいなと思っています。
  72. 中野正志

    ○中野正志君 貴重なお話、ありがとうございました。  お三方にあえてお伺いいたしますけれども、原発問題、やっぱり日本成長経済に私自身は欠かせないと思っておるんでありますけれども、原発再稼働、あるいは元総理大臣まで出てこられて反原発の両様の議論がかまびすしいんでありますけれども、それぞれの参考人、私は、温室効果ガスの削減というのにもう一回私たちは取組を大胆にするのでなければならないという点からしても、再稼働という、安全にしっかり配慮して、また取組をしてという前提を置いてなんでありますけれども、原発問題についていかようにお考えになられますか。
  73. 井上久

    参考人井上久君) 私どもは、やっぱり原発から脱却すべきだということを強く感じております。  今見ておりましても、やっぱり、逆に中途半端なことが最も悪いというふうに実際上は思うんですけれども、被災地、先ほどいわきに行っているとかいう話もしました。実際、東電の中には、実は若い二十代の青年が現地採用としてたくさん働いているんですね。二百名程度まだ残っていると思います。震災直前に、数年間は四、五十名採用されていて、地元の最も真面目な優秀な青年たちですよね。彼ら自身が、しかし自分はここで働いていて自分の将来はないと思っているわけです。毎日二交代で現場に入っていって戻ってきてという生活を繰り返して、寮に住んでいますから日常生活ないんですよね。  それから、どれだけ多くの人たちが家族が離れ離れで生活をしているかとかといういろんなことを考えたときに、私、イノベーションという話がどんどん出ていまして、そんな夢のある話がたくさんあるわけではなくて、もっと底辺のことを議論していただきたいと言いましたが、まさにやっぱり、日本は実はそういう再生可能エネルギーやそうした部分でいえば強いはずです。もっと、原発問題でこそ、そうした夢のある議論をしていただきたいなというふうに感じます。
  74. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 先ほどちらっと申し上げたように、私どもは今、福島交通という会社と会津バスグループという会社経営しております。それぞれ九百人、四百人ぐらいの雇用をまさに福島県で持っております。それから、原発事故に際して、二十キロ圏からの退避、この主力の輸送力は私どものバスでございます。私どもの方から、十二日の早朝から百台のバスを出して、かなり命懸けの輸送を実はやっております、それ以外に輸送手段がなかったので。  そういうまさしく当事者であるということを一応踏まえて申し上げます。  これはすごく、何というんですかね、理想論としてどうあるべきかという議論と、目の前にある現実という問題がございます。その目の前にある現実として、私の正直な感じで言うと、ある意味では爽やかに脱原発というわけにはやっぱりいかない現実がいろんな意味であると私は思っています。やっぱりそこは、そこには現実の実は逆の意味で生活がありますし、いろんな意味でのステークホルダーがかかわっています。  むしろ難しいのは、これは多分長期的には縮原発だと私も思います。この狭い国土で原発事故のリスクを負っていくというのは非常に深刻だということは、当事者ですからよく分かっています。よく分かっていますが、ただ、非常にでき上がった仕組みというのが大きくて、かついろんな人がかかわっていて、産業界もそこに非常に依存している仕組みになっていますので、これをいきなり、はい、さようならということになると、そのショックはいかにも大きいです。  そういった意味合いでいうと、現実論としては、私は、当座はやっぱり再稼働、安全なものは再稼働しながら、長期的に縮原発を目指していくというのが基本的な方向性であると同時に、これはちょっと余計なことかもしれませんが、実は今回の廃炉というのは、ある意味では、大変過酷な労働を確かに強いている部分あるんです。と同時に、これ、人間が入れないところの作業が実はすごく多うございますので、実は日本の、ある意味ではそのまさに複雑系技術の粋を集めたことをやっています。こういった話というのはそれこそやりながらいろんな技術がつくられていくんですね。まさに複雑系技術です。  これ、現実問題として、日本以外では多分原発の稼働が続きます。造られることもあるでしょうし、今後事故が起きる可能性は当然あるわけで、そういった意味で、今回日本がここで蓄積する技術というものは、ある意味では世界の宝であります。ですから、そういったものもちゃんとやっぱり継承していくべきで、そういった意味合いでいうと、この脱原発論というのは、変な方向に行っちゃうと一流大学の原子力科には誰も行かなくなります、若い優秀な人が。  今回の廃炉は三十年掛かると言われています。三十年ということは、一世代替わります。今最前線で頑張っているエンジニア、サイエンティストというのは、もう三十年後にはいなくなっているわけですから、これをずっと継承していこうと思うと、その原子力政策そのものを私は日本は放棄すべきではなくて、原子力というものとどう世界が付き合っていくかという意味で、私は日本はむしろ課題解決最先進国であるべきだと思っているので、その原発の再稼働云々というのは別として、そういった領域というのはむしろ積極的に取り組んでいくべきだと私は思っています。
  75. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 福島の原発事故が日本全体に残した問題は二つあると思っておりまして、一つは原子力発電をこの国としてどういうふうに位置付けていくかという、今、私はその点については冨山参考人基本的に意見一緒でございまして、縮原発の方向を目指すが、しかし現実的に考えないと日本の国全体が破綻する危険がある、そう思っています。  一方、もう一つの問題は、そうはいっても、原子力発電所の新設ということが数十年の間、とてもできるとも思えない。しかし、二〇三〇年に国の電力の五〇%を原子力発電で賄うという計画を持って二〇一一年三月十一日まで動いてきた国が、急にかじを取るわけにもいかないでしょう。そうすると、国全体の電力消費量をどうやって下げるかということが極めて大きな課題。  したがって、私は本の中で電力生産性という言葉を使って、将来の日本産業構造というのは、電力一キロワットアワー当たり一体何円の付加価値を稼げるかという、そういうのが高い産業を国内に置いて、そうでない産業はだんだんだんだん縮小ないしは海外へ持っていくという、そういう大きな産業構造政策が必要だということを強く思っております。それを促進するための手段としては、私は電力税を掛けるべきだというふうに思っています。  以上です。
  76. 中野正志

    ○中野正志君 それぞれに大変ありがとうございました。  冨山参考人経済人の立場ですから、持続的な成長、これをやっぱりやり上げるためにはGDPの六割占める個人消費を私たちは持続させる、あるいは上昇させる、このこと大事だと思うんですけれども、以前から政治側からも行政側からも民間企業からも言われながら実現していない例えば休暇の分散化、あるいはそれぞれの企業の有給休暇……
  77. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 時間が過ぎておりますので、質疑をまとめてください。
  78. 中野正志

    ○中野正志君 はい。  有給休暇、これを強制的に取らせる。一言で、どうでしょう。
  79. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) 済みません、正直申し上げると、やっぱり消費を押し上げるベースは消費者一人一人が長期的に自分の所得水準が安定的に存在する期待を持つということと、それが願わくば増えていくという期待を持つことだと思うので、基本的には、済みません、経済人なので、どうしてもやっぱり生産性を安定的、持続的に高めていくことというふうに、済みません、なっちゃいます。
  80. 中野正志

    ○中野正志君 ありがとうございました。
  81. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 どうもお三方には、大変ありがとうございます。  中野さんと同じように、ちょうど今日は参議院に特定秘密の法が入ってきておりまして、野党としてどういうふうに臨んでいくか、また立法府として、ハウスとしてどう我々は行動していくかというようなことをやっていたものですから、大切なところを退席しまして申し訳ありませんでした。  中間層というところで少しお話を聞かせていただきたいと思っております。  まず、産業も究極的には雇用や賃金という意味で人に還元されるべきことだろうと思いますので、その一つの手段としてこの新しい法律をどう考えるかと、作るかということだろうというふうに思うので、いずれにしても、日本が内需型でずっとやってこれたというところはやっぱり、これは冨山参考人がよく言われる意味でも、組立て方含めた、そこに一定の設備と一定の人、技術が入らないとできないという御指摘がずっとあったわけですが、私も、いかに中間層を増やして、今減っている傾向にありますから、増やして、同時に継続していくかと。安定させて、先ほどのお話のように、皆さんが少しでも給料が上がることに期待ができるし、そうなるし、また見通しが立つという、中間層という、そういう方々が安定して増えていくことが目標だろうというふうに思うんです。  そこで、井上参考人にお尋ねしたいと思うんですが、やはり先ほどのお話のように、失敗すると坂道を転げ落ちていく、私も感じるところすごくあるんです。そういう意味で、今アベノミクスの私は一つの問題意識にはあっても、弱いなと非常に思っているのは、そういう人に注目して中間層をどう分厚くしていくかというところからのアプローチというんでしょうか、そういうところを、最初に目標を立てたところからどう手段として産業構造とか企業とかを見ていくかという視点に私はやや弱いんだろうと思うんですね。  この点について、井上参考人は、中間層が分厚いということの意義とアベノミクスに対する御評価を、先ほどもちょっと冒頭ありましたけど、改めてお聞かせください。
  82. 井上久

    参考人井上久君) 私自身も、最初に申し上げましたけれども、産業競争力強化とかイノベーションということを否定しているわけでは決してないわけですよね。でも、それがそう安易にいくのかという話だと思っておりまして、やっぱりこの間の失われた二十年というのを見たときに、雇用は驚くほど破壊されてきました。もう三十年近く前ですけれども、我々が大学や高校を卒業するころ、正規の職に就けないとか就職で何か困るということは全くありませんでしたよね。それが今や、就活自殺が、というか、大学生の自殺が三倍になるような状況であるとか、そんな状況が生まれています。  そうした点でいうと、やはり底辺の底上げをするといいますか、雇用を安定させる、今日の資料の中に、朝日新聞の記事でしたが、ヨーロッパで、労働者重視、生活賃金などの話がありましたが、そうした部分をやっぱり政治の力で支えていただくということがなければならないということをデフレからの脱却ということを考えたときにも強く感じております。
  83. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 中間層をもっと安定させて拡大していかないと、私は大変、いわゆる内需という面からも非常に問題だなというふうに思っているんですが。  冨山参考人にお尋ねをしたいと思っております。  先ほど来からお話がありますように、大変被災地でお世話になっておりまして、お礼を申し上げたいと思います。住民の足としては路線バス欠かせないので、一層お願いしたいと思っておりますが。  まさに、中間層、ここの厚みを増させるし、また維持していくということは、日本経済社会として、あるいは普通に取り上げるいわゆる社会構造として重要だと思うんですが、共働きというところが一つ視野に入ってくるのかなと、こういうふうにも思うんですが、いかがその辺のことをお考えになりますでしょうか。
  84. 冨山和彦

    参考人冨山和彦君) ありがとうございます。  まさに大事なポイントだと私は思っていまして、大量生産、組立ての比較的標準的なものをどんどこ造るという工場は、やっぱりどうしたって海外に出ていっちゃうんですね。そういった意味合いでいうと、実はこういう世界というのは、産業史でいうと、百年前にヘンリー・フォードがフォード生産方式を発明して賃金をどんどん上げていったわけです、彼は。それによってアメリカが偉大なる中産階級社会に一時期なったわけで、ある意味日本もそのモデルを戦後踏襲したわけです。  ただ、要はこれって産業構造の変化から実は起きている問題で、今残念ながら、残念ながらというか、起きている現実はグローバリゼーションという、要は労働が比較的移動しやすい、特に貿易財に関しては移動しやすいという現実と、それからもう一つは、デジタル化によって生産工程というのが割と高度なものと単純なものに分化されるという問題が起きています。  そういった現実を考えると、実は国内の中間層をつくっていく鍵は、先ほど来申し上げているように、やっぱりサービス業、いわゆる第三次産業世界の賃金をどう高めるか、ニアリーイコール生産性を高めるかという問題と、それからもう一つは、ただ、このサービス産業の生産性向上は限界があります。というのは、多くの、上の方はちょっと忘れましょうか、上の方の超高度人材というのはほっておいても年収一千万、二千万になっていく人たちなのでこれは忘れるとすれば、それこそ私どものバスの運転手に代表されるような割と平均的なサービス産業に従事している人の労働生産性というのは、やっぱり労働集約的なので一定以上上がりません。そうすると、私自身直感的に、持っていけてもやっぱり平均年収四百万から五百万ぐらいがいいところだろうなと思っています。  となりますと、今、荒井先生言われたような共働きというのがやっぱり大事で、要するに、夫婦で、世帯当たりで二人で働いて年収八百万、九百万、その中で無理なく子育てができるような社会システムをどうつくり上げるかというのが私は鍵だと思っていて、そういう意味で、世帯年収というのはある意味で一定レベルまで持っていける可能性があるので、そういった意味で、ある種、私はこれは新中間層という呼び方をしているんですけれども、そういったものを真剣につくるという努力をしていくべきではなかろうかと。  ちなみに、荒井先生の地元もそうですけど、地方の方が今実はこれは部分的に成立している場合が多くて、これは大家族でございますので、子供を親御さんに預けられる、預けやすい環境が実は地方の場合が多い場合がございます、全てではありませんけれども。そういったところでは比較的そういったある種いい循環が生まれつつあるので、それを要はより全国的に、あるいは都会でも生まれるような循環をつくれたらすばらしいなと私は思います。
  85. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 私も、その新中間層というところ、是非厚みを増すような一つの手段としてのこの産業構造の在り方というんでしょうか、改革というものも取り組んでいきたいというふうに思っております。  ちなみに、先ほど来から原発の被災地のお話が出ましたけれども、これは早稲田大学の調査でございますけれども、双葉郡の方々はほとんど大家族の方が非常に多かったんですね。ところが、現在、ほとんど仮設、借り上げ住宅で、家族がばらばらになっているんです。  我々のところでは、母屋と、同じ母屋の中に玄関口が別で隠居というところを持っていまして、おじいちゃん、おばあちゃんはそこに住んでいるということでしたから、全くばらばらなところに今生活しているということで、今おっしゃったような意味で子育てをお手伝いできるおじいちゃん、おばあちゃんと離れている。本当に社会が一旦崩壊したときの、原発によってですね、これほどの被害というのはないわけなんですが、そういうことをまざまざと今見せ付けられているというか、問題を気付かされています。同時に、そこからまた逆に今の良さ、日本の良さというものをどういうふうに見直して、それを維持したらいいかという、そういう一つの悲しいながらのヒントというのもあるなというふうに思っているわけです。  最後に、もう少し時間ありますが、伊丹先生にお尋ねしたいと思うんですが、先ほど来から大学発ベンチャーの話がありましたけれども、今度の、ちょっと私あれでしたけれども、二十条か二十二条、実は今日後半戦で私、大臣とやり取りするんですが、大学がいわゆる投資会社を設立して、大学発で育てたといいますか、そこから起業しようという、そういう企業に対していわゆる投資ができると、こういう環境をつくるということも今度の法律に盛り込まれているわけですが、改めて、先ほど来からの議論もあったんですが、この仕組みに対する御評価というのをお尋ねしたいと思います。
  86. 伊丹敬之

    参考人伊丹敬之君) 実は、私と冨山参考人は、この大学発、大学のベンチャー投資を認める、しかも一千二百億円という巨額なお金が動く、そのプロセスの制度設計やらチェックをするための文部科学省内に設けられましたワーキンググループのメンバーでございます。  私は、その話を聞いたときに、金額の巨額さと同時に、これで大学を揺さぶることになれば恐らくネットではプラスであろうと思いました。あれぐらいの大きな金ですと、ちょっとやそっとでは使えませんので、根本的に何かを考え直さざるを得なくなる。したがって、途中で様々な失敗が起きることを半ば覚悟しながら、大きな方向性としては賛成すべきではないかと思っております。
  87. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 これは経済産業省が専らと思いきや、文科省の部分なんですね。同時に、これにもう既に補正でかなりの額を付けまして、東大から東北大までに百億単位のお金が入っていくということになるんだろうと思いますが、初めて今度目利きするという意味でも、先ほど来から伊丹先生からも冨山参考人からもお話があったように、どのように経営を含めてマネージしていくかみたいなことも含めて、大学発のベンチャーでなあなあにならないで、また大学にとってはリスクをきちんと遮断できながらインキュベートできる方法が生まれたなというふうに思って、大変私も取りあえずは額の大きさに驚いているということでございます。  そういう中で、伊丹先生の一キロワットで幾ら稼げたかという新しい価値基準を作ろうというのは私はすごく大賛成でございまして、そういう意味では、排出量取引の、今度のCOPで妥協点でああいう形になりましたけれども、排出量も、きちんと電力から見てどういうふうに排出量を考えるかみたいなことでの新しい価値基準といいますかベンチマークの在り方というのはあったと思うんですが、私は電気からいかにその価値を創造するかということの視点を大変勉強させていただきましたので、今度はそういうものを大いに活用させていただきたいなと、このように思っている次第です。  繰り返しになりますが、私はやっぱり頑張ってる人が中間層に上がってもらいたいし、また中間層の方も自分で大いに更に活躍しようという道があってもいいし、しかし、基本的には、やっぱり福島原発などを考えますと、当たり前の生活の中に本当の幸せがあったというのもしみじみ思います。  ですから、将来に見通しが立つ、ああ、子供は三年後は中学か、私はそのとき何歳だと、そのときに、病気も含めて、職場の安定も含めて、そういうものが見通せるというものの中で生活できる社会というものを私はつくっていきたいというふうに思っておりまして、小規模ながら、小規模ベンチャーの新党改革というふうに言っておるんですけれども、一人事業者でございますが、そういう観点でいうと、やっぱりもう一回、中間層、まあ中間層って呼ばれることがいいかどうか分かりませんが、先ほどのような形で、共働きをしながらという時代に私は入ってきたのかなと。そうすると、そこに幼稚園問題もあれば、百三十万という現在のいわゆるパートの仕組みの問題、いい悪いが出てくるわけですが、こういったところも私たちも考えながら、産業構造の改革とともに、そういったことも進めていきたいというふうに思います。  どうもお三方には、ありがとうございました。
  88. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会代表して御礼申し上げます。  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  89. 大久保勉

    委員長大久保勉君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業競争力強化法案審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣官房内閣参事官吉川徹志君外十六名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  91. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 産業競争力強化法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  92. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 自由民主党の渡邉美樹でございます。  質問の機会を与えていただいたことに心から感謝します。  まず、自己紹介をさせていただきます。  私は、二十四で会社を創業いたしまして二十九年間、全くのゼロから一千六百億まで会社を立ち上げてまいりました。また、グループ企業日本及び海外で三十社を超えまして、そのほか社員の夢をかなえるために百社以上の社員独立の会社支援しております。そういう意味で、ベンチャーそれから中小企業がどのタイミングでどのような支援を必要としているのかということは身をもって分かっているつもりでございます。その経験を踏まえ、産業競争力強化法案のうち、第六章、中小企業の活力の再生について御質問させていただきたいというふうに思います。  まず、開業率目標についてでございますが、一〇%というものを設定されておりますが、欧米一〇%、日本四・五%という現実の中、非常に難しいんではないかということを感じております。  日本は優秀な人間は官僚になりまして、そして欧米は起業家になると言われておりますが、実際に私が二十九年間この起業というものにかかわってきている中で、例えば所得税、相続税、キャピタルゲイン等の創業者利潤が十分ではない、つまりハイリスクであってローリターンであるということ、そしてまた、中学、高校、大学におけるキャリア教育が十分ではないということ、そしてまた、起業において社会的評価が低い、アメリカのような称賛の文化ではないということ、また、社会の応援がない。ちなみに、私は年に一度、日本武道館で一万人の若者を集めて夢の祭典を開いております。そのような社会の応援が余りにも少ない。そして、社員が独立して起業する起業文化が欠如していると。また、何よりも金融機関が担保主義であると。このようなことが日本の開業率を下げている大きな理由だと思っております。  よって、このままでは一〇%というのは絵にかいたもちになってしまう、そのように危惧しておりますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  93. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) いつも銀座の土橋の交差点から高速に乗るときに坐・和民という店がございまして、先生がここに座っていらっしゃるとあの店のことをいつも思い出すところでありますけれど。  日本で開業率が上がらない原因につきましては、まさに委員が御指摘の点に尽きていると、こんなふうに思っておりますが、経済的また社会的な要因というのがたくさん様々あるんだと思っております。  経済的な要因としては、やはりそういった起業家に対して資金であったりとか経営のノウハウ、こういうのが十分提供されていない。また同時に、大企業からスピンアウトする、カーブアウトする、スピンオフする、こういう事業再編の制度整備、これが不十分で、起業のための環境がアメリカ等々と比べても整っていないと、このように考えております。  また、社会的要因としては、高度成長期以来、日本、言ってみますと終身雇用と。そのように、どうしても大企業で働くこと、これが何となく一般的という形でありまして、身近で起業に成功した人とか、そういった人が周りにいないとやはりそういう気持ちにもならない。何か、自分にとって業を起こすということが現実的な選択肢と、こういうふうに思えない、こういった問題もあると思っております。  ただ、遡ってみますと、日本もソニーであったりとかホンダであったりとか、元々はベンチャー企業と、こういうところから起こってきているわけでありまして、そういった素養が全く日本人にはないかとか日本にはないということではないと思っております。  こんなことも踏まえまして、起業に対する意識の変革であったりとかチャレンジ精神、さらには再チャレンジ精神、こういったものを育成しながら、この産業競争力強化法、これも含めまして起業家支援するような、促進するような環境整備、こういったものをしっかりとつくってまいりたいと考えております。
  94. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。  この開業率というものがあるのに対して廃業率というものもございます。日本の開業率は四・五%ですが、廃業率は四・一%でございます。イギリス、アメリカは開業率、確かに高うございますが、廃業率はもっと高く、イギリスが一二・九パー、アメリカが一〇・三パーというような形でございます。  私は、もう一つの質問としまして、ここでやはり、廃業すべきものは廃業するということがやはりこの開業率向上につながるんではないかと、そのように考えております。そういう面からいえば、以前ありました金融円滑化法案というのは本当に必要だったのかというふうに私は経営者としては疑問に思っておりました。私は、個人保証というものに対して限度額を設けて、自己破産せずに会社清算できる仕組み、つまり午前中の冨山参考人意見を借りれば、退出コストの最小化という政策が必要だと。つまり、やめたが言える、しかしちゃんと経営者も責任を持てる、そんな限度額というところ、つまり個人保証の限度額の設定含めて、この退出コストというものを意識するべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
  95. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 個人保証の制度につきましては今見直しを行っているところでありまして、一度失敗したらもう二度と立ち上がれない、こういう状況を変えていかなければいけない、そんなふうに思っております。  我々が目指しておりますのは産業そして事業の新陳代謝ということでありまして、新しいものが起こるということは必然的に古いものが変わっていくということでもあります。もちろん、廃業率の目標設定というものがいいかどうかというのはありますけれども、結果としてそういうことが起こってくる。そして、これまでの日本産業を見てもそうなんですが、例えば造船業、かつて日本、隆盛でありました。それがなかなか構造的に他国との競争で厳しくなる中で、造船から違う業種に転換を早く始めた会社の方が結果的には雇用を一番維持できた、こういう事例を考えても、早め早めに新陳代謝を進める、こういったことは極めて重要だと思っております。
  96. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。  続いては、産業競争力法案そのものに入っていきたいというふうに思います。  午前中の伊丹参考人もいわく、日本ベンチャー支援は失敗の歴史であったというような今日は発言をいただきまして、私もそのように思っております。産業競争力法案では、開業率を一〇%にするべく市町村が創業支援業者と連携して創業者を支援すること、そしてお手元の資料に、こちらにありますように、ワンストップ支援体制を組むということが一つのメーンになっていると存じ上げております。  このワンストップ支援、このメーンは、私は認定支援機関の存在だと思っております。認定支援機関、実は先日、私は認定支援機関の六十社の方々から呼ばれて、この認定支援機関の仕事を上手にするためにはどうしたらいいだろうかという相談を受け、なおかつ、認定支援機関に認定支援機関としての仕事をするために様々なことを教えてほしいということを頼まれました。実際に認定支援機関とこのワンストップ支援体制の仕組みをしっかり頭に入れた上で、彼らとディスカッションさせていただきました。  その結果、分かったことがあります。それは、認定支援機関の選定が間違っているということであります。それはどういうことかというと、認定支援機関一万八千のうち八四%が公認会計士、そしてまた税理士ということでありまして、コンサル、つまり民間コンサル企業においては一・五%しかないということであります。つまり、ほとんどが公認会計士、税理士の方々がこの認定支援機関をやっているわけでありますが、じゃ公認会計士、税理士が創業支援ができるかというと、できないわけであります。それはなぜならば、公認会計士とか税理士はそのスタッフ、つまりそのタレントとしての仕事はすることはできるわけでありますが、創業というのは全く違った技術、技能、経験が必要なわけであります。そうしたときに、私は市町村がこの創業者支援事業を、一つのものをつくり、そして、これからは創業者を応援していくから、じゃ起業が増えるよということは多分ならないだろうと。しかし、私はこの取組自体は大変いい取組だと思っております。  じゃ、これを実際に成功させるためには、この連携という真ん中のところでしっかりとしたボードメンバーを育成すると。ボードメンバーは何か。それは、マーケティングの専門家、ブランディングの専門家、ITの専門家というそのタレントですね、公認会計士、税理士も含んだタレントです。そして、そのど真ん中に、自ら起業し百億円以上の企業成長させた人材、このマネジャーたる人間が必要であります。彼はゼロから百まで、資金繰り、それからビジネスモデルづくり、そして労務、つまり、簡単に言えば、バランスシートを軽くするだけのコンサルタントではなく、その損益計算書を高めていくだけの力を持った人間をここに配置しなければこれは絵にかいたもちになってしまうと、そのように思います。  よって、私は、この連携のところにそのボードメンバー、つまり農業委員会とか教育委員会とかございますが、私はそれらの委員会は余り必要だと思っていないんですが、本当に必要な経営委員会というものを置くことによってこれは機能するんではないかというのはまず一つの提案であります。  それから、もう一つは認定支援機関でありますが、認定支援機関、非常に聞こえはいいんですが、誰でも取れる申込機関であります。よって、誰でも取れて、そこに人がいるんではなくて、本当にその方々が、一度申込みを受けたわけですから、この方々を例えばもう一段試験をするとか、若しくはこの方々を教育するとかいう形で本当に戦力化していくことが私は大事だと思います。なぜならば、その認定支援機関による経営改善計画策定支援事業ですとか経営革新支援事業ですとか、この認定機関を軸とした取組というのは非常に大きいわけですから、私はこの認定機関、これを高めていくこと、このレベルを上げていくことが大事だと思います。  以上二点、ワンストップのこの仕組みにボードメンバーの設置を、そして認定支援機関の能力向上のための仕組みを、これについて是非御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  97. 北川慎介

    政府参考人(北川慎介君) 二点の御指摘でございました。  一点目の創業ワンストップ支援体制、これに創業支援の専門家を中心としたボードメンバーをつくったらいいのではないかという御指摘であります。  私ども今回提案しておりますのは、全国の中で幾つかある先導事例、これを全国展開できないかというふうに思っておるわけですけれども、具体的には富士市あるいは板橋区あるいは福岡市、いろんなところでありますが、そういうところでは様々なマーケティング、IT、デザイン、あるいは実際に企業経営をやられた方、こういった方が中核となってチームをつくってやっておられます。こうした事例を全国展開していきたいと、こういう考え方でございますので、委員御指摘の、経験豊富でしかも実業に通暁している方を中核とした組織になっていってくれれば有り難いと思います。  まあこれはもちろんそれぞれ市町村の事情もあると思いますけれども、基本的には、ボードメンバーという名称を使うかどうかは別として、中核的なチームがネットワークを組織して創業を支援していくと、こういうことを期待しておるわけでございます。もちろん、そこにはこれまで創業支援をやってこられた商工会、商工会議所、そういう特性を持った方も入っていただいて、地域一体となってやっていただくことを期待しておるわけです。  それから、二点目の認定支援機関の件でございます。  認定支援機関は、委員御指摘のとおり、一万八千余を今指定いたしまして、地域の税理士さん、公認会計士さん、あるいは地域金融機関、こういう方に中小企業に寄り添っていただきたいという趣旨でやっておるわけでございますけれども、一方で、余り活用されていないとか、あるいは期待ほどではないんではないかとか、いろいろ御指摘があることは私どもも十分承知しております。  そして、そのため、この魅力を高めるということでまず研修をやっておりますけれども、研修に加えて、今後は一定の成果を上げたところの事例を評価してそれを公表していく、あるいは各支援機関の支援実績の掲載を通じて、中小企業・小規模事業者から見てどの支援機関が本当にやってくれるのか、そういうことが分かるようなそういうような形を取って、中小企業・小規模事業者にとってより役に立つ機関にしていきたいと、こう考えております。
  98. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。  続いて、この先ほどのお手元の資料の右側の中小企業経営改善、事業再生の支援強化ということで、この中小機構を拡充させるというような今回大きなテーマがあるわけでありますが、私は、先ほどの話と全く同じでございまして、この中小機構から専門家を派遣する、協議会にとなっているわけですが、この専門家が一体どこにいるのかということで、その中小機構に人がいないから実際にこの協議会において十年以上かけて二万八千五百件の相談しかなかった、つまり中小企業全体の〇・七%しかここの協議会を使っていなかったという、要はお金だけ掛けて結果として何も成果を残せなかったということの一つの表れではないかと、そのように思っております。  じゃ、どうしたらいいのかと。ここが一番大事でして、私は、中小機構に、ちなみに先ほど申し上げた、ゼロから百億までつくり上げて、もうオーナーでいいんです、六十歳、六十五歳でもう引退した人たち、この人たちを日本中から探してくるんですよ。そして、この人たちが仮に百人、いや三百人、もしいたら日本は変わります。この日本中小企業は変わります。これ本当なんですよ。  ですから、この仕組みはとてもいいものなんですが、そこにしっかりとした専門家を派遣する。専門家がいないのに専門家を派遣したり、連携させるといっても、連携してもそこに何の力もない、要するに能力のない人たちが集まったとしても何の結果も出ないわけです。ですから、私は、何としても今回のベンチャー支援、成功させなければならない。そうしたときに、最低で百人、できれば三百人、そしてこの中小機構の三百人の方はこの連携の委員会のトップであって構わないんです。仕事を兼ねても構いませんから、非常勤、常勤も含めまして。私としては是非、専門家、そして先ほど富士市のお話も出ました、富士市のトップ、彼みたいなのを三百人集めてくるんですよ。そのことに注力を是非していただきたいなと、そのように思っております。  そして、次に、済みません、質問はもう飛ばしまして、答えを自分で言っているものですから、次に進めさせていただきます。  私は、もう一つベンチャー企業を立ち上げていくということにおいて非常に大事なのが、信用保証協会制度とベンチャー投資促進税制というところだと思います。それはなぜかというと、やはりその立ち上げのところにおいては信用保証によってお金を支えてあげる、そして、それが立ち上がってきたらちゃんとベンチャー投資をすることによって、小から中、中から大にという形になっていくわけであります。ちなみに、私の時代といいますか、私が店頭公開させていただいたのはもう二十年前でございますから、そのころはこのような仕組みは全くなかったわけですが、今はこういう仕組みがあって大変すばらしいというふうに思っているわけです。  その中で私が危惧しておりますのは、やはりこの信用保証制度における目利きということであります。というのは、信用保証、実は私も大変助けてもらいました、これには。しかし、売上げが何ぼ、利益が何ぼ、若しくは何年間経営しているという定型的なところでただただお金を出している。つまり、全く創意工夫がない。つまり、本来ならばそのビジネスモデルにちゃんと投資をしていかなきゃいけないにもかかわらず、ここにおいて全く創意工夫がない。その結果、六%か七%、全体のですよ、そして六千億、七千億という国民の血税がもう無駄になっているわけですよ。  だから、私は、この信用保証協会というものをもっとしっかり機能させる、そしてここにしっかりと、ビジネスモデルをしっかり見れる人間を入れていく。そして、かつ、まあ言ってしまえば、やみくもに信用保証を使っている金融機関におきましては信用保証の枠を縮小するとかいうようなものを与えることによって、信用保証制度、もうどんなにいい会社でも二年たったら一千万とか決まっているわけですよ。いい会社だったら一年でも一億出すべきなんですというところの柔軟性が必要だと思っておりますが、いかがでしょうか。
  99. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 信用保証制度、これは御案内のとおり国費を投入して行っている公的な制度でありまして、信用保証協会が適切な審査を行わずに保証を付すると、こういうことがあっては規律の面からも問題があると思っております。  もちろん、決算の内容であったり返済の財源であったり、そういった数字の面も見なければいけませんが、委員御指摘のように、まさに目利きといいますか、その経営姿勢等々も総合的に勘案しながら審査を行っていくことが極めて重要だと、そんなふうに考えております。
  100. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。  まず、この信用保証制度、さはさりながら、この制度がもうベンチャーを育成する意味では物すごく重要な制度だということはもう一度申し上げておきたいと思います。  そして、ある程度大きくなってきたら、今度はベンチャーキャピタルの出番であります。ベンチャー投資促進税制というものについて、私は本当にすばらしい制度だと思います。ベンチャーファンドを認定して、認定されたファンドを通してベンチャー企業への資金供給を行う企業に対する優遇税制ということですばらしいと思います。  その中で、前回の委員会でも議論になっていたと思います、この認定の基準でございます。前回、大臣からは二十億程度ということの言葉も聞いているわけでありますが、実は私も多数のベンチャーキャピタルと付き合いがあり、なおかつ多数のベンチャーキャピタルから投資を受けた人間であります。それによって企業を大きくさせてもらったわけですが、ベンチャーキャピタルには二通りございます。  一つ目は、要するに本当にリスクを取って、私の家に何回も来ながら、そして投資をしてくるところです。つまり、徹底的に調べて調べて調べて、足を使ってというベンチャーキャピタルがおります。もう一つベンチャーキャピタルはどういうキャピタルかというと、銀行系であります。銀行系は、例えば私と銀行取引がある、そろそろ上場しそうだぞというと、支店長が来て、渡邉さん、悪いけど、ちょっとキャピタル入れてくれると。もう上場するの分かっていますから。今まで応援してきたんだからちょっと資本入れさせてよと言って入れるんです。これは本当なんです。そうしますと、私の多分場合には、八社のうち三社ぐらいがその足で稼いだ、五社は今まで取引の銀行にお礼も含めて投資を割り当てるという形になるわけであります。そうすると何が起きるかというと、この銀行系のファンドは大変大きいんです。大きいんですが、余り世の中の役に立っていないんです。しかし、こっちの方は小さいんです。小さいんですが、とっても有効なんです。ですから、まだまだ本当のアーリーステージで私の会社に出資をしてきてくれたわけです。  私は何を言いたいのかというと、二十億で切ってしまうと、そのアーリーステージで一生懸命足で稼いでいるところが集まらないですから、二十億。でも、こっちはすぐ二十億集まっちゃうんです、銀行ですから。そうしたときに、是非、そのアーリーステージにどのぐらいかかわっているのか、何かの基準でいいです、簡単な基準でいいです。その投資の、例えば簡単な話、原価で、原価の投資はないですけど、例えば二倍で買っているぐらいだったらすごいアーリーステージだと思います。例えばこれが十倍、二十倍で、もう上場寸前ぐらいの価格で買っているとしたら、これは多分、かなりもう銀行系だと思います。  ですから、そういう面でいえば、アーリーステージにどのぐらい投資しているかということは是非この認定の基準にしていただきたいと。それによって、その小さなベンチャーファンドを育てるという物すごく大きな役割を果たしそうな法律なものですから、是非そのことについてお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  101. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) 今委員お話、認定支援機関の人材も含めて、非常に、どんな参考人お話よりも面白く聞かせていただきました。  そういう委員にお答えするのはちょっと私では不足かもしれませんけれども、まず、このアーリーステージ、委員がおっしゃいましたのは、アーリーステージに非常に熱心にやってくれる目利きというか、自分で足で稼いでやるところに一生懸命国としても支援すべきであって、まあ大体大丈夫だというところに来てから手を出すようなところばかり大事にしちゃ駄目だろうと、そういうことだと思います。  一応、今これまでにやってきた制度の御説明をいたしますと、そのアーリーステージ、いわゆる魔の川とか死の谷とか言われている、本当最初の時期のときのベンチャー企業支援するファンド、もちろんこれに対しても重要であるという認識で、これまでにも、そのアーリーステージに投資するベンチャーファンド、そのベンチャーファンドだけだと金額が限られていますので、それと同じ額を中小企業基盤整備機構がそのファンドに出資して倍になるような、そういう形の事業をやっております。  これはちなみに、平成十一年に制度ができてから今年の三月末までですけれども、この中小機構も八十九のファンドに対してこれまで総額で五百四十五億円出して、そうやって、だからそれの二倍以上のお金がアーリーステージの段階のところに行っていると思われます。  もう一つは、エンジェル税制、もちろん委員もよく御存じのエンジェル税制ですけれども、これがなかなか使い勝手が悪いとか、余り、使われ方が不十分なものですから、これに対しては、やはりもっと宣伝というかPRもしてやっていかなければいけないと考えております。  先ほど信用保証の拡充のお話ございました。この法律の中で、地方自治体と民間支援事業者、願わくば本当民間支援事業者というのが経験があったり鍛え上げられた支援事業者であることが望ましいわけですけれども、これが連携して創業者支援を行う場合の、特に信用保証、普通の創業の信用保証よりも、こういうお墨付きが得られた場合には拡充する、そういうことも図ってまいります。
  102. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。  続いては、開業率を上げるということで、少し視点を変えて御質問をさせていただきたいというふうに思います。それは、簡単に申し上げて規制緩和でございます。  実は私は、この事業をやる中において、農業、これはワタミファームといいまして、日本全国、約八百ヘクタール、日本最大の有機農業法人を経営してまいりました。個人として病院も大阪で経営をしております。また、介護においては日本中で七千人以上の高齢者の方をお預かりさせていただいてきたわけでありますが、本当にこの産業力を強化する、そして経済力を高める第三の矢を、この的を射る、そのためには、例えば農業であるならば、株式会社が農地を所有できるような例えば農地法の改革ですとか、例えば医療においても、私はずっと十年経営していて分かりませんでした、なぜ株式会社が病院を経営してはいけないのかと、これ今でも理解していません、というような医療改革ですとか、例えば介護においても、特定施設において総量規制を掛けて、実際もっと闘わせればいいのに、競争させればいいのに競争させないという。この規制によって開業率ももちろん上がっていませんし、そしてまた日本経済力も止まっている、止めてしまう、あえて伸びようとしているものを止めているような気がしてなりません。  規制緩和とやはり競争法案、このセットでなければ前に進んでいかないと思うんですが、いかがでしょうか。
  103. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) まさにセットでなければ前に進まない、おっしゃるとおりだと思います。  そして、今、安倍政権が行おうとしておりますことは、全国単位の改革、つまり根本的に制度を変えるということ、そして地域単位の改革、さらに私どものこの法案が目指している企業単位の改革、その三段階があると考えております。  全国単位の取組といたしましては、規制改革会議で、去る六月に、今おっしゃいましたような健康・医療の分野、確かにいろんな規制がいっぱいある、こういった項目を含みまして規制改革実施計画というのを閣議決定しております。  また、電力システム改革におきましては、これは六十年ぶりでございますけれども、この国会、経済産業省が提出いたしまして電気事業法の改正法案、今月十三日に成立させていただきました。さらに、医薬品や医療機器の開発あるいは再生医療の実用化なども推進するために、薬事法の改正法案及び再生医療新法についても二十日に成立したと伺っております。  そしてまた、地域単位の取組としては、現在、参議院で国家戦略特別区域法案審議中でございます。これは、国が定める地域において、高度な医療を提供する病床の新設、増設ですとか、あるいは農業に関しましては農地の権利移転の円滑化に関する農業委員会と市町村の事務分担の見直しなど、まさにおっしゃいました医療の分野、介護の分野、そしてまた農地の分野についてはいろんな規制がある、これを地域というとらえ方で、ある地域で突破するという、そういうことのための法案審議をしていただいております。  そして最後、企業単位でございますけれども、これはまさにこの産業競争力強化法の中で、企業技術を持って新事業に挑戦しようとする、そういう提案がありましたら、企業単位で、安全規制などとのバランスも考えた上でですけれども、事業所管官庁に言ってきていただいたら、企業実証特例制度を利用して、安全性など確保した上で、先行的に規制の特例措置を、規制を取っ払ってその企業に新しいことをやってもらう。そしてまた、同じようなことができる企業があればもう直ちにほかの企業にもそれを認めていくという形で、個々の企業がどんどん新しい取組ができるように、それをやっていくのがこの法律であります。
  104. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございます。  それでは、もう最後の質問をさせていただきたいというふうに思います。  それは、今回の産業競争力法案を、やはり税制改革とセットでなければ大きな効果が得られないのではないかという御提案であります。  というのは、私は世界中で事業をやってまいりました。その地球というものを見たときに、三つ経済拠点が必要だという目で見ておりました。それは、一つは、八時間ごとに世界は常に動いておりまして、常に八時間でどこかの拠点があるわけであります。ですから、私は面白いなと思うのは、やっぱりヨーロッパであるならばロンドン、ロンドンの下にはずっとアフリカが広がっている。そしてニューヨーク、ニューヨークの下には南米がずっと広がっている。じゃ、アジアはどこかという。今この日本が一番考えなきゃいけないのは、この三つの極のうちの一つの極を取りに行くんだという発想が必要だというふうに思っております。  ちなみに、私は、アジアで事業をする中で、結局今、日本に拠点を持ちたいんですが、香港、シンガポールに拠点を持っております、持っておりました、今もう創業者として離れておりますから。というのはどうしてかというと、やはり一番大きいのは、法人税率が高いと、もっと言うと高過ぎるということで、日本の法人税率が三八パー、シンガポール一七パー、イギリスも二〇一五年には二〇パーにするということを表明しているわけですが、やはり日本がその三極のうちの一つを取るために、また我々が開業する中においては、この法人税は非常に重いものでございました。ですから、ビジネスの環境ランキングでも、世界でシンガポールが一位、香港が二位ですか、日本は何と二十四位という中においては、やはりこれから幾ら様々な法案を立てたとしても世界の中で勝ち抜いていくわけにはいかないということで、やはり法人税含めた税制改革とセットでこの法案を大きな効果を得るものにしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  105. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 今日は、委員の方から一人時間差のように質問と答弁もしていただいたり、さらに、やはり支援する側の能力、目利きの重要さと。恐らく、今の社長室がどういう状態か知りませんけれど、かつての委員社長室を見たら、なかなかアーリーステージであれだけぼんとお金を出すという人は、目利きがなければできなかったと思います、外形的なところを見ると。そういったところから、やっぱり目利きの重要さというのも教えていただいたと思っております。  そして、この法案、単にこの法案だけではなくて、税制改正も我々、設備投資減税であったりとか、進めていかなければならないと思っております。  そして、世界企業が一番活動しやすい国、こういうのをつくっていくためには、法人税の実効税率、引下げが喫緊の課題だと考えておりまして、これは欧米諸国だけではなくて、まさに今、日本が競おうとしている、さらには、そういった地球儀を見たときに、八時間区切りにした中で、成長センターであるアジアの中においても日本が劣後をしている、こういった状態を一日も早く解消する、極めて重要な御指摘だと思っております。
  106. 渡邉美樹

    ○渡邉美樹君 どうもありがとうございました。  私は、この法律本当に有効に機能して、ベンチャーがあふれ、開業率一〇%のような活力のある社会になること、心から希望しておりますし、そのために全力を尽くしたいと思っております。  本日は、質問させていただいて、どうもありがとうございました。
  107. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 民主党・新緑風会の増子輝彦でございます。  残念ながら、私は、大臣と違って、和民さんに行ったことがないんです。地元では、地元のお店が大変和民さんの攻撃に遭って厳しい状況にありますものですから、地元を守ろうということで一生懸命地元の飲食店に行っておりますが、そのうち是非お邪魔をさせていただきたいと思います。渡邉議員の今の話を聞いていると、大変元気が出ますよね。やっぱり成功事例としての姿が言葉の端々に表れているということ、大変参考になりました。  今日は、大臣所信に合わせて二回目の質問をさせていただきたいと思いますが、なかなかこの法案、私どもにとっても、長い間、必要なものの一つだという意識をしながら、ずっと我々もかかわってまいりました。私たちも直嶋経産大臣のときに新成長戦略を作らさせていただいたわけであります。これは直嶋先生からもお話があったとおり、成長率も、名目三%、実質二%ということで、ほぼ同じような目標を掲げていると。それに伴ってのエネルギー計画も作り上げました。残念ながら、二〇一一年の三・一一によってこれが実行できなくなったということ、本当に私どもも残念に思っているところであります。  二十年に及ぶデフレという状況の中で、どうやって日本をもっともっといい国にして強い経済をつくっていくか。これはもう与野党問わず大事な私たちの共通認識であり、共にやっていかなければいけないことだと思っています。ですから、今回のこの産業競争力強化法案が出たことについては、私たちも大変良かったと思っていますし、一緒になって是非成立をさせて、少しでも実行に速やかに入りたいという気持ちを持っております。  ただ、私自身としては、いま一つ、何となくすとんと落ちないところがあるんですね。役所の皆さんも一生懸命頑張ってこれを作ってきた。大臣のリーダーシップにも伴って作ってきたということはよく承知をいたしております。ただ、何となくいま一つ私自身はすとんと落ちないものがある。それは、いろいろこの法案審議の中でもお聞きしながら感じるところもあります。  しかし、いずれにしても、先ほど申し上げたとおり、一緒になって日本経済を良くしていくということ、様々なゆがみをなくしていくということ、全く同感でありますので、我々野党になったからといえども、重箱の隅をつつくような細かいことにいろいろやる気はありません。共に日本経済を強くし、雇用を増やし、そして地域が格差のない社会をつくっていくために、全力で私たちも取り組んでいきたいと思っています。  今回の産業競争力強化法案のひとつ比較といってはなんですが、実はアメリカでも二〇〇七年の八月に米国競争法という法が制定されていることは多分大臣も御存じだと思います。中国やインドの急速な経済発展などによりグローバル競争が激化する中で米国の競争力優位を確実なものにするために、研究開発によるイノベーションの創出の推進や人材育成の投資促進及びこれらの政府予算の大幅な拡充を一体的に認めているということでありまして、これは、経団連なんかもこういった米国の競争法のようなものを一日も早く作ってほしいという要望をかなり以前から出していたことも、私も承知をいたしております。  いずれにしても、産業政策はこれは持続性が極めて重要だと思っていますので、これは農業政策もそうなんですが、農業関係者も、政策は継続して持続をしたものをずっとやってほしいと、猫の目行政のようにくるくるくるくる変わるものでないものにしてほしいと。今回の実はTPPも含め、減反政策も廃止ということについて農業界も戸惑っているわけでありますが、いずれにしても、経済においても持続性というものが極めて私自身も大変重要だと思っています。  そういう状況の中で、この米国競争法というものについて、もう御存じだと思いますし、多分中身もよく御承知だと思いますが、これについての大臣の所見を、どのようにこのことを認識しながら、またこの米国競争法も多少なりともこの法案を作るときに参考にしたのかどうかを含めて、御見解をお伺いしたいと思います。
  108. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 委員御指摘の米国の競争法、アメリカ・コンピーツ・アクトでありますが、米国において御指摘のように二〇〇七年の八月に成立をいたしました包括的な科学そして教育の支援法でありまして、日本では、頭文字のこのアメリカの後のコンピーツ、これを取って米国競争法と、そういうふうに訳す文献は多いかと思うんですけど、コンピーツは幾つかの言葉の頭文字を取っておりまして、クリエーティング・オポチュニティーズ・ツー・ミーニングフリー・プロモート・エクセレンス・イン・テクノロジー・エデュケーション・アンド・サイエンス、つまり、技術、教育、科学の優越性を抜本的に推進する機会を創出する法律と、これの頭文字ということでありまして、必ずしも競争という言葉とは違うんですけれども、コンピーツということで全体的な競争力を高めると。  これ、恐らく、アメリカにおきましては、八〇年代にヤング・レポートが出されたと。また、二〇〇四年にパルミザーノ・レポートが出されると。このパルミザーノ・レポートの、イノベーションを起こす環境整備、これが重要であると、こういった機運の高まりを受けて米国において制定された法案であります。  この法案、今年の九月で満期ということでありまして、なかなかこの成果等々についてはこれから評価ということになってくるかと思いますけれども、イノベーションを重視していく、そして政府研究開発予算についても集中と増額を行っていく、さらには、基礎研究そして科学技術教育の重要性、こういった点につきましては、我が国における現状の問題認識と共通する部分が多いと。  そして、名前が似ておりますので、この競争力強化法とどう比べるかというのはありますけれども、基本的な考えとしては、認識は同じ部分は大きいと、そのように考えております。
  109. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 まさにアメリカの議会の私は優れたところだと思うんですが、この法案を作り上げるには、上院、下院ともそれぞれ違う法案を整合性を取って一本化にしてこういう法案にしたということがあります。今大臣のおっしゃったとおり、イノベーション中心とした様々な課題についてのこれをしっかり乗り越えていこうということでこの法案ができたということを私も承知をいたしております。  いずれにしても、アメリカ経済も、シェールガスが正式に生産体制になり海外展開までできるような状況になって、エネルギーのある意味では大きな革命になったことによってアメリカが経済回復をしてきていると。  同時に、アメリカ人の特性からいうと、宵越しのお金は持たないと言ってはどうなんでしょうか、持っているお金は全部消費に向かうということで、消費市場が拡大をしているというようなことで、大変今アメリカ経済も、株価も上昇していることはもう御承知のとおりであります。いずれにしても、アメリカと日本が今後緊密に様々な分野で連携していくことも極めて大事なことは言うまでもありません。多分、四年後にはシェールガスも日本に入ってくるんでしょうから、いろんな意味でこれから日本経済にもこの資源というものを含めて影響が出てくると思います。  そういう状況の中で、今回の競争力強化法の中で、先般もちょっと大臣と話合いをさせていただきましたが、私はやはり投資をどういうふうに増やしていくかということ、極めて大事な視点だと思っています。大臣がよくおっしゃるように、日本には三つのゆがみがあるというような形で、だから過小投資、過剰規制、過当競争と、この三つのゆがみをクリアしていかなければいけないという中で、やはり過小投資というところが、改めて今日少し議論をさせていただきたいと思いますが、前回も申し上げたとおり、やっぱり七十兆円まで今の時点から引き上げるには、かなり大胆な形を持っていかないとそう簡単ではないような気がいたしております。  先般の大臣からの答弁も、ここはいろんな御答弁をいただきましたが、改めてこの過小投資に対して、何とか七十兆円まで持っていきたいという、三年間です、それも、期限が決められています。かなりの経済成長もなければいけないでしょうし、また企業が、産業界が投資をするような環境条件もつくっていかなければいけないということで、これはもう大臣もいろいろ考えていると思いますが、改めて、この七十兆円を達成するためにどういう形でしっかりとやっていくのか、もう一度大臣、御見解をお伺いしたいと思います。
  110. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 御指摘のように、今日本経済にとって大きな課題、この過小投資を解消することであると思っております。この一年間、日本経済、回復基調にあると。一つには、行き過ぎた円高が是正される、こういったことによりましてかなり輸出が伸びている部分というのがございます。そして、まだまばらな部分はありますが、消費についても回復基調が見られる。そういった中で、設備投資については、回復しつつあるといえどもまだ本格化していないということでありまして、今六十三兆円、これをリーマン・ショック前の七十兆円に持っていきたい。  実は、これまでに取ってまいりました今年の対策、最初の補正予算、緊急経済対策等々含め、本年度の設備投資額、これは一・八兆円程度増加をする、こういったことが見込まれております。ただ、六十三から六十五に持っていき、それをまた七十に持っていくと、おっしゃるようになかなかこれは大きな目標であると、そんなふうに考えておりまして、今回新たにまとめました、十月にまとめました経済政策パッケージにおきましても、設備投資を更に促進するために、これまでにない大胆な設備投資減税、さらには中小企業・小規模事業者の成長分野への参入等を後押しする投資補助金等の政策を総動員して目標を達成していきたいと思っております。  入口のこの設備投資を促進する策と同時に、経済の好循環をつくる。企業が収益を上げる、それが賃金に還元をされて、所得が増えることによって消費が伸びる。それは、和民だけではなくて福島の御地元の店でも消費が伸びる、こういった状況が生まれ、それが企業の新たな投資を生む。こういう経済の好循環をつくっていくということも同時に考えることが重要だと考えております。
  111. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 設備投資も、大企業だけではなくてやはり中小企業、小規模企業もできるだけたくさん設備投資をしてもらうことが大事だと思うんです。と同時に、日本経済の七割はこれもう消費ですよね。ここのところの関係する業種がやっぱり良くなっていかないと大変だと。今大臣がおっしゃった、いわゆるベストサイクルですね。総理もよくおっしゃいますが、やはり企業が収益が上がり、そしてそれが賃金に跳ね返り、所得が増える、それによって消費がどおんと伸びると。それによって生産がまた増えていくことによって企業が良くなる。  これを持っていくにはやっぱりかなりの努力が要ると思います。この七割と言われる消費経済の中で、飲食店はもちろんですが、特に飲食店今大変なんですよ。特に和民さんとか、低価格の飲食チェーン店が結構大変ですよね。来年消費税が上がりますから、この負担も出てくる。それから、人件費がかなり高騰しているんです。それから、円安によって食材が上がっている。様々な要因がありまして、特に東北地方は本当に人的不足で賃金ががあんと上がっていますから、私の福島の上場企業がそういうことで栃木県に行きたいと今言ってますよ、宇都宮に。人件費が上がって、人を集めたら大変な人件費の負担になるから宇都宮に行きたいと言っていますから、今度紹介しますけれども。  いずれにしても、そういう状況の中で飲食店チェーンというのは今大変厳しい状況なんです。これは、ですから、こういうところも新たな店舗展開をしながら設備投資もしながらやっていける、あるいは小さな企業もどんどんどんどん設備投資をしていくということが大事だと思っているんです。  私は、いろいろ税制もやっていただいておりますが、私たちもやりました中小企業の少額減価償却資産の取得価額の損金算入、これが実は中小企業、小企業はすごく喜ぶんですよ。ねえ、松村筆頭。これを、今三十万で合計三百万なんですが、私は、こういうものにもう少し税制の幅を広げて、一気に三十万から引き上げる、総額も増やす、こういう税制の方が融資よりもむしろ中小企業は結構恩恵があるということで、皆さん望んでいるんです。こういう税制も含めて何とか七十兆円に持っていくためのあらゆる努力を私もしていただきたいと思っています。  今申し上げたこの中小企業の少額減価償却の取得価額の損金算入の税制についても、大臣、今度の税制改正の中で是非経産省を挙げてやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  112. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 中小企業、小規模企業、さらにサービス産業に対する支援策を充実していく、極めて重要なことだと思っておりまして、今回の設備投資減税におきましても、御案内のとおり、特に中小企業、小規模企業に対してはよりインセンティブが高い、そして幅広いエリアをカバーすると。さらに、サービス業でも使えるような設備と、こういったことに応用するということもさせていただきました。  委員の御指摘もいただきましたので、これから税務当局とまさに税制改正の議論やってまいりますが、中小企業、小規模企業が元気になるような税制をつくっていく、全力で取り組みたいと思います。
  113. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 是非お願いしたいと思います。  次に、先日の我が党の同僚、小林議員が質問させていただきましたが、産活法における実績評価といいますか、平成二十五年十月一日現在で全省庁で六百九件の再編についての計画認定が行われたという、この計画認定について少し私の方からも質問させていただきたいと思います。  経産省だけで四百件の計画を認定している、その中でも三百五十件については既に計画が終了している、その成果について検証できる段階まで来ておりますと。この三百五十件のうち八割超が計画期間中に法律の求める生産性の向上を実現したと。これは菅原局長からの答弁だったと思います。  これについて、私自身としては、確かにこの数字は上がっているものの、本当にこれがどのような形の中で我が国経済の中に大きな貢献といいますか影響があったのか。例えばGNPに対して、あるいは雇用についてはどのようなことが効果としてあったのか。加えて、事業再編をするときには無駄な投資をやはり整理をしていくということも大きな要因の一つだと思います。  これらについて、もう一度、この産活法に基づく事業再編の認定計画の実績及びその経済効果について御答弁をいただきたいと思います。
  114. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) 委員の方から数字については具体的に既にお話がございました。  この産活法の下で、過剰設備とか過剰債務といった問題については、二〇〇五年ぐらいにぐっと減って、かなりな過剰感が、これ全体として、これは対象となった会社だけじゃなくて全国レベルでですけれども、過剰感をなくすことができました。その後のリーマン・ショックの後にまた過剰感がぐっと増えて、ただ、そしてまたこの二、三年じわじわと減って、今も改善の方向に、解消に向かっております。  もちろん、この産活法だけによって何がどういうふうないい結果が出たかという直接結び付く数字というのは非常に難しいものでございますけれども、ただ、産活法で支援した企業の中には、あのときこの法律を使って再編に踏み切らなければ立ち行かなくなっただろうと、そういうような案件もございます。そのときの経済への影響ということを考えましたら、やはり確実な効果が上がっていたものだと考えております。
  115. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 産活法の効果については、これも菅原局長からの御答弁の中でありましたが、バブル経済後の景気低迷にあって、過剰設備、過剰債務、こういった問題を解決するに当たり、いわゆる産活法、これが大きな役割を果たしてきたと、私も決して否定はいたしません。  しかしながら、やはり、これについては一定の、できれば計量的なものも含めて何らかの数字が示された方がより産活法の効果とか評価とか、あるいは実績というものが表に出てくるような気がするんです。ともすれば、産活法、何回か改正をしながら来たわけですけれども、今回の産業競争力強化法も同じようなことになりやしないかというような若干危惧を持っていますので、このところはやはりしっかりと検証しながら今回の法案につなげていってほしいというふうに思っていますし、また、グローバル社会の中で、大変競争力の乏しい中小企業にとっても、業界の事業再編だとか過剰投資だとかいろんな問題をクリアしていくためにも国際競争力もつくらなければなりませんと。  そういう意味では、もう一つだけ、この産活法によって国際競争力は付いたのか付かないのか、この産活法によって事業が、そういった視点はどういうふうにお考えになっていますか。
  116. 菅原郁郎

    政府参考人(菅原郁郎君) 今ここで詳細にその数字をもって御説明することは難しいんですけれども、例えば、典型でございますけれども、委員御承知のとおり、この産活法で世界的に闘うためのいわゆる事業規模が足りないという分野鉄鋼業が挙げられていました。  まさに新日鉄、住金というのは、この産活法を活用しまして、登録免許税ですとか、あとは事前の独禁当局との調整と、これがうまくいきまして、過剰設備を増やすことなくうまく競争力を強化するための、いいところを持ち寄る形で合併が昨年できたと考えておりまして、もう少し競争力を増すには時間が掛かるかなと思ったわけですけれども、円高傾向の是正も含めまして、いろんなそういう外部の影響もあったと思いますけれども、やはりこの産活法の認定によってうまく両者が合理化を、リストラというか人の削減をすることなしにできたということで、御案内のとおりでありますけれども、今年はこの一年間で格段にある意味競争力を増すことができたということで、一つ典型例ではございますけれども、産活法によって国際社会で闘えるリーディング鉄鋼会社ができたということは十分評価していいんではないかというふうに思っております。
  117. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 私もそのことは否定する気は全くありません。それは一つの効果だと思います。と同時に、やはり中小企業、中堅企業も、いろんな形の中で国際競争力も付けていかなければならないし、今後とも日本経済の九九・七%を占めるこれらの企業の皆さんにもいろんな意味で強くなっていただかなければならないと思っています。  今回の産業競争力強化法の中にも、中小企業に対するいろんな問題がここにきちっと提案され、そのために何をするかということも具体的に今出つつあるわけですから、是非その視点を、中小企業、中堅企業等にもしっかりと光を当てながら、いろんな形の中で是非進めていっていただきたいと、そういうふうに思っております。  次に、今回の法案に基づく事業再編について少しお尋ねをしたいと思いますが、現在、想定している認定件数というものがあるのかどうか、あれば、この認定件数がどのぐらいなのか、教えていただければ有り難いと思います。
  118. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) これは、事業再編についてもそうでありますが、更に申し上げると、例えば企業実証特例の活用であったりと、できるだけ多くの企業に活用していただきたいと、このように考えておりますけれど。まさに政府役割というのは、そういった産業の新陳代謝を進める、経営者の判断を後押しする、そのための環境をつくるものでありまして、事業再編について何件であるとか、例えばスピンアウトについて何件であるとか、具体的な目標数字を設定しているものではございません。
  119. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 明確になくてもある程度は多分考えているんだろうと思うんです。  是非、これは多くに活用していただかなければならない法案だと思っています。是非、事業再編が進み、日本経済のゆがみを正すためにしっかりと取り組んでほしいというふうに思っていますし、これがまた経済効果としてどういう効果があるのか、先ほども鉄鋼のことがありましたが、合理化によって雇用が決して減らないようなこともこの事業再編によって大変重要だと思います。是非、経済効果を上げ、雇用を守り、そして日本が海外競争力が付くような形を是非進めていただきたいと思います。大臣、決意のほどを。
  120. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 造船業の例のお話を先ほどさせていただきましたが、まさに日本全体としていかに雇用を維持するか、さらには雇用を増やしていくかと、こういったことが極めて重要だと考えております。
  121. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 次に、この事業再編支援に当たり、過剰供給分野でその解消につながるものに限るとしているということがあります。具体的に過剰供給であるとされている、そういうふうに想定している分野というのはどの分野か、お示しいただければ、お願いしたいと思います。
  122. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) ある事業分野が過剰供給、そういう構造であるかどうかというのは、この法案の施行後、事業所管大臣が個別の事業分野ごとに判断することになっておりますが、その際の基準といたしまして、例えば過去二十年間と直近の三年間を比較して、一つ、商品やサービスの価格の動向がどう変わっているか、二つ目として、その事業分野における企業の収益率がどのように推移しているのか、三つ目、これらの国内市場と海外市場との比較などに照らし合わせまして、その長いトレンドの中と直近を見て、直近の状況のまずさというか、過剰感というものを判断していく。  そういう意味で、供給能力が需要に照らして著しく過剰である状態が長期にわたり継続していること、さらに、最近特にその過剰感が増していることというような観点から判断することになりまして、最初からどの分野をどうこうということは決めてはおりません。
  123. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 それはそうだと思います。しかしながら、大臣が認定するというときのいろんな分野が多分出てくるんだと思うんです。  私は、この三つのゆがみの中での過当競争、当然これは是正していかなければいけないと思っています。と同時に、反面、過当競争整理していくということは、一定以上の規模の経済が当然求められ、またそれが作成されてくるんですね。そうすると、寡占化に進むということも逆にあるんですね。そういう意味では、チェーン展開をどんどんどんどんする例えば小売販売業だとか飲食店だとか、あるいは医療関係もそうですが、そういう形によって寡占化が進めばますます実は中小企業や小規模企業がその過当競争の中にさらされて、実はこの法案でも目指している開業率が少なくなります。廃業率の方が当然多くなりますよね。  ですから、そこのところにやっぱり注意深く、この事業再編も含め、過当競争も阻止するという視点がやはりないと私はいけないと思っていますので、是非そこのところもしっかりと私自身としては視点を当てながらこれらのものを進めていっていただきたいというふうに思っていますので、これについては要望ですので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、本法案によるベンチャー投資促進策において、いろいろと先ほど来も渡邉議員からも話がありました。これは、先日の大臣所信に対する質疑でも、ベンチャーに対する考え方を私自身も申し上げさせていただきました。  やはりこのベンチャー本当に皆さん、なかなかチャレンジはしてもうまくいかないケースもあるけれども、いろんな形の中で制約があってできないということも当然あるんですね。  今回、この法案ベンチャー投資促進策をしっかりとしていくわけですが、今、これも多分ひょっとしたらまだ想定していないと言われるかもしれませんが、今回の投資促進策において当面想定している、国が認定するベンチャーファンドはこのぐらいの数が望ましいというようなものがあるのかどうか、そしてそのことによって、どういうベンチャーがそれによって出てくるのかどうか、そういうところまで含めてお考えになっているのか、お答えいただければお願いしたいと思います。
  124. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) 今、日本ベンチャーキャピタルの数は二百程度なんですけれども、認定要件に基づいて認定するベンチャーファンド、この法律の認定するベンチャーファンドの数は、これからの三年間、この三年というのは税制を適用させる期間ですけれども、この三年間で少なくとも数十件は、一年に十数件と考えて数十件はあると考えております。このようにしたいと思っております。  そして、認定ベンチャーファンドにつきましては、主として事業拡張期のベンチャー企業投資するファンドでございますから、一ファンド当たり少なくとも二十億円を超える規模、その何社の分も集まって、十社とかの分、十社、二十社の分を集めて二十億円を超える規模を想定しておりますので、ファンドの資金総額は数百億円から一千億円を超える規模になってほしい、成長させたい、それだけのベンチャーファンド、資金を出してまいりたいと考えております。  さらに、中小企業基盤整備機構が債務保証するわけですけれども、例えばベンチャーへの投資案件に迅速に対応せざるを得ないような場合ですが、ファンドへの出資を約束した、あっ、これはまだ質問していただいていないんですね。済みません。  つまり、さっきので言いますと、ファンドの資金総額は数百億円から一千億円程度と、そういうふうに見込んでいる、そういうふうにしたいところまででおいておきます。
  125. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 副大臣大臣と同じように先に答えていただくことが多いようでございますから、ありがとうございます。  いや、実はそこのところをお聞きしたいと思っていましたけれども、やはり今、数の大体の想定、資金の総額等がありました。これをしっかりとまた支えていくためには、この中小企業基盤整備機構を始め様々な金融関係の機関が必要なんですね。特に、私は、中小企業基盤整備機構が極めて今回重要な役割を果たしていくんだと思っています、様々な形の中で。是非、この中小企業基盤整備機構、この支援の形をよりスムーズに、ちゃんとした手続は必要ですが、まさにそれこそ手続も簡素にしながらしっかりと支援をしていくというような体制をお取りいただきたいと思っています。  ベンチャーの皆さんは、必ずしも全員が全て、プレゼンテーションがうまくいき、あるいは資金に対する調達のテクニカル的なものがあるとかいう人ばかりではなくて、とにかく頑張ってみようと。そして、それを実践しながらいろんなことを学んでいくということもそうですし、それが人材の実は養成ということにもつながっていきますので、是非そういう点についても御配慮をいただきながら、これを活用していただけるような体制をおつくりいただきたいと思います。  それじゃ、改めてお聞きしますが、それに対する支援の予算及び同機構の一件当たりの上限額等を含めて、中小企業基盤整備機構の役割、それについてひとつ御見解をお願いいたします。
  126. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) 先ほどは先走って、申し訳ありませんでした。  まさに増子委員がおっしゃいましたように、このベンチャー、これに投資案件、ベンチャーファンドがいろんなところから出資をしてもらって、それをベンチャーに向ける、ベンチャー企業に実際にお金を出す。その中には、企業が、出資するよ、でももうちょっと待ってくれとか、年度が替わってからとか、いろんな事情が生じて即使えない、これからお金は入ってくるだろうけど、すぐ出資することに足りない場合が生じてくると思います。そんなときのつなぎとして中小企業基盤整備機構が債務保証をして、一般の金融機関からもお金が借りられる、つなぎ資金を短期間融資できる、そういうような形を考えております。  これも、規模につきましては、既存の債務保証制度の基金、およそ四百億円ぐらいなんですけど、その一部を想定しているために、新たな予算措置は必要がないとは考えております。そしてまた、保証の一件当たりの上限金額ですけれども、制度の詳細は今後検討してまいりますけれども、例えば保証割合を融資額の五割、保証期間を一年以内にするなど、そのような制度内容にしていきたいと思っております。  また、増子委員経済産業大臣御経験されたときに、中小企業関係の審議会の中では、役所に書類出すのが大変だとか、こういうことをうまく書けないと、そういうようなお話がいっぱいあったりしたと思います。そういう点もしっかり留意していくとともに、さらに、これに限らないんですけれども、つなぎの問題ですが、経済産業省がやっているものづくり補助金ですとかあるいは商店街に対するイベントの補助金なんか、これも採択されてから実際にお金が払われるまでちょっと時間が掛かる場合がある。そういったとき、つなぎで融資がきちんとなされるように、そういうことも今指導しているところでございます。
  127. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 よろしくお願い申し上げたいと思います。  実は何度かいろいろレクを受けたり説明を受けましたが、改めて、本法案が成立してこれをしっかりと実行していくというときに、財政投融資を含んで大体予算額としてはどのぐらいを予定しているんでしょうか。
  128. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) それぞれの部分の積み上げ的に申し上げてまいりますと、例えば税制措置におきましては、例えば生産性の高い先端の機械装置への設備投資減税、これ、この法律の肝に、要になっているところでは四千四百億円程度の減税になると考えております。私どもからは、予算措置というよりは、減税をこれぐらいの規模にして企業の活動を盛んにしてほしい、それに対して予算が生じてくるというわけでございます。  二つ目として、ベンチャーファンドを通じたベンチャー企業への投資促進、これは先ほどもるる述べましたけれども、この場合の減税、つまり、ベンチャーファンドに対して企業投資をしたら、これは八割を損金に算入できることにしておりますから、これは積もり積もって全体で五十億円ぐらいになるように、そういう効果が出るようにと考えております。これは企業から見ると損金に計上することができて五十億円の減税ということになりますが、これを言い換えると必要な予算が生じてくるということでございます。  三つ目に、複数の企業事業部門を切り出して、その統合などによって経営支援をより有効に活用するようなそういう事業再編、これを促すためには、誕生する子会社などに対して出資や融資を行う際に七割を損金計上できるように決めておりますけれども、これに基づいて百五十億円程度の減税が、企業の側がメリットがあるだろうと。  こういうことを、今まで申し上げたのを足し合わせますと四千六百億円程度の企業から見ると減税、そしてそれに対する予算措置が必要だと考えて、我々としてはこの予算がしっかり獲得できるように頑張ってまいりたいと思っております。  予算措置でございますけれども、直接の補助金という、まあいろんな意味での予算措置ですけれども、リース手法を活用した先端的な設備投資を促進するための方策に関しましても、これも平成二十六年度に概算要求しているところでございますし、市区町村と創業支援事業者が連携した創業支援体制の整備、このために商工会とか商工会議所あるいは地域金融機関などの創業支援事業者が行う創業者の経営支援活動、インキュベーター的な設備を、商工会議所や商工会や信用金庫がそういう設備を新しいベンチャーに提供してあげるとか、そういったセミナーを開くとか、そういったことにかかわる予算としては十億円を平成二十六年度の概算要求で要求しているところでございます。さらに、全国四十七都道府県の中小企業再生支援協議会が行う再生支援の確実な実施のためにも四十八億円を要求しております。  これらの要求がしっかりと確保できるように、新年度の予算、そしてまた本年度の、今年度の補正予算の機会がございましたら、こうした機会も最大限に活用してこれが実のあるものになるようにしてまいりたい、そして委員各位の御協力をいただきたいと思っております。  最後に、財投に関しましてですけれども、この法案に基づく事業再編を行う企業に対して長期かつ低利の資金供給を行うために、これは国が日本政策金融公庫に融資を行い、その公庫が、指定金融機関、おおむね日本政策投資銀行、政投銀になるだろうと思いますけれども、この指定金融機関を通じて、今度は中堅や大きな企業に対しても融資を行うようにしております。これについては、財投として平成二十六年度五百億円程度を要求しております。ベンチャー企業への投資を含めたリスクマネーの供給、これのために産業革新機構に産投特会から出資するお金としては、平成二十六年度百億円。つまり、財投の融資としては、先ほどのと合わせて六百億円を現在要求しているところでございますが、これらについてもしっかりと確保していく。  そしてまた、今年度の補正予算で積み上げることができましたらしっかり積み上げて、これらのことが、予算の確保によって企業がしっかりと減税あるいはこうしたメリットを受ける、それによって事業の再編やベンチャーの育成がしっかりとできるように努力してまいりたいと思っております。
  129. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 ありがとうございます。大変大きな金額だと思います。予算を獲得することはもちろんのことですが、これをしっかり有効に使いながら、まさにこの法案の目的、理念である事業達成を是非していただきたいと思っています。  次に、実は、直嶋経産当時大臣の下で私が御下命を受けまして、日米イノベーション・起業・雇用創出促進のための日米対話というのを実はスタートをさせていただきました。過去に四回ほどやっておりますし、またシリコンバレー、スタンフォード大学でこのシンポジウムをやってまいりましたし、やはりこれ非常に日本イノベーション、起業、雇用という面からいえば重要な私はものだと思っています。  しばらくこれがやったというような報告も聞いていませんし、どうしているのかなとちょっと心配になっておりましたけれども、是非これを、私ども民主党政権がやったからやらないんだということではなくて、いいものは今の自公政権も引き継いでいただいていることが多々ありますので、是非このイノベーション、起業、雇用創出促進のためにしっかりと、形を変えるにしても、継続しながら、イノベーションをしっかり進めながら、それによって雇用、起業を増やしていくということが極めて大事だと思いますので、この件について是非お願いをしながら、これ答弁長くなるから結構です。要望だけしておきますので、よろしくお願いします。  それでは最後に、この法案関係、実は大臣、今日はあえてこの規制改革のところは触れませんでした、もう既にいろんな話が出ておりましたので。ここが本当に大事なところなんだろうと思うんです。ですから、今回の企業実証特例制度あるいはグレーゾーン解消制度、これをやるにはよほどのやはり決意と覚悟と腕力がないと私なかなかできないと思うんですね。  本来であれば、衆議院の方で修正させていただきましたが、もう一点、私は強く修正の要望を出していたところがあるんです。これは附帯決議の二項目めにあります、企業実証特例制度において、事業所管大臣と規制所管大臣の協議が調わない場合、法律の趣旨にのっとり内閣総理大臣は適切に調整を行うと、これを法案の中できちっと入れ込んだらどうだというふうに私は強く主張しておったんです。しかし、ここは附帯決議でいいではないかというようなことで協議が相調いましたので、それはそれとして、しっかりと附帯決議の中で、ただ書き置いただけではなくて、実行してもらおうということを含めてこれはこの附帯決議になったわけであります。  政府の全体戦略と各省の個別戦略との整合性が極めて重要だと思うんです。やはりこれらを解消するには、最終的にはどうしても省益出てこざるを得ないんですね。ですから、よほどの覚悟、決意、腕力がないと私はできないことがいっぱいあると思いますので、あえてここのところは是非大臣しっかりとやって、まさに、直嶋先生言っている岩盤の名前使いませんけれども、ここをしっかりと私は解消するための努力をしてほしいというふうに思っていますので、是非その決意を大臣、お願い申し上げたいと思います。
  130. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) この法案におきまして、新たな企業実証特例であったりグレーゾーンの解消の制度をつくったわけであります。これは事業所管大臣だけではなくて、規制の所管大臣も併せてしっかりとこういった制度を活用していく。委員の御要請も受け止め、さらには衆議院で行われました附帯決議も尊重してしっかりと運用してまいりたいと考えております。
  131. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 それでは、質問を変えたいと思います。  やはり日本が今後何で稼げるかというと、海外で稼ぐことも非常に重要なことはもう言うまでもありません。まさに海外へのインフラシステムの輸出ということによって、しっかりと日本が利益を生んでいくという体制をつくっていかなければいけないと思っています。その代表的なのが原発であり、あるいは医療であり、そして水であり、あるいは高速鉄道関連のものであり、様々な日本が持てるすばらしい実はインフラシステムがあるわけであります。これらを是非積極的に海外展開してほしいと思っています。  ただ、私自身は、原発というものの輸出はすべきでないと。三・一一以降、やはりこれだけの事故が起きてしまったという状況の中で、このことについては、私は、自分も副大臣としてサウジやベトナムやあるいはクウェートに売り込んできた経過がありますが、今はそれはもうできないということで、むしろ、これではない部分でもっともっと日本がしっかりと、外国の皆さんに喜ばれ、なおかつ日本のインフラシステムが大きな成果を上げ、また利益を上げることができるものの一つとして、医療の国際展開をしていくことが極めて重要だと思っています。  そういう意味で、医療国際展開をするため、総理もトップセールスをいろんな形の中で動いておられますが、この医療国際展開をするためのMEJを創設しましたが、現在どういう状況になっているか、教えていただければ有り難いと思います。
  132. 富田健介

    政府参考人(富田健介君) お答えをさせていただきます。  本年六月に新たに発足いたしましたMEJ、メディカル・エクセレンス・ジャパンでございますけれども、会員企業数も、発足当時二十三社でございましたけれども、おかげさまで現在三十一社まで増加をいたしておりまして、医療の国際展開を進める官民一体でのいわゆる中核的な組織として様々な活動に今着手をいたしているところでございます。  御案内のとおり、医療の国際展開につきましては、まずは現地の市場環境調査、あるいは事業内容の決定、体制の整備、あるいは現地の関係者との関係構築など様々な課題がございますけれども、MEJにおきましては、会員企業のニーズを踏まえながら、これらの問題に対応していく体制を構築をしながら具体的な案件形成に向けた支援を今取り組んでいるところでございます。  そうした取組の中で、やはり日本の優れた医療技術サービスを海外の医療関係者によく理解をしていただくということは大変有効かつ重要であろうということで、例えば、八月にベトナムにおいて、日本式の内視鏡診察トレーニングシステムの普及を図るためのセミナーを開催をいたしました。また、十月にはカザフスタンにおきまして、がんの早期発見につながるような病理診断あるいは画像診断の技術、さらにはそれに関連する機器の御紹介、こういったことのセミナーもやらせていただいております。  MEJが主催するセミナーでございますが、今年度内にまだ二か所予定されておりますが、これらの成果を基にして何とか具体的な案件形成が実現できるように取組を更に強化してまいりたいというふうに考えております。
  133. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 ありがとうございます。  実は、この海外展開をする際に、これ海外にも様々な実は規制があるんですね。日本だけではなくて、やはり海外にも様々な規制があるわけであります。そういう状況の中で、箱物として病院は造ったけれども、相手国の規制で日本人の医師がなかなかそこで活動できないとか、あるいは、相手国の薬事法の規制で、日本で承認を受けた医薬品、医療機器でも一、二年輸出できないという問題もあるんですね。せっかく総理もトップセールスをやる、あるいは茂木大臣もおやりになっているのかもしれませんが、そういう規制、やっぱりこれあるんですね。もちろん、我が国に海外から来るというときも同じような規制があるんです。  そういう意味で、海外に、多くの新興国は特に保険制度がないという状況もありますから、日本がせっかく投資をし、あるいはいろんな援助をして病院は造ったけれども、あるいは裕福な中東なんかでも、自分の国で病院を造ったと、しかしオペレーションの部分について日本にお願いしたいといっても、なかなか日本の医療団が行っても活動できないという点があるんです。特に、非常に保険制度が貧弱ですから、高度な医療を受け高額な診療請求をされると、本当に僅かな、数%の人しかせっかくの病院で利用できないというような状況もあるわけです。  厚生労働省として、医療の現在の国際展開に後ろ向きだと今まで随分言われてきたことがありましたけれども、是非、今回のこういった規制について、どのような課題と、またどういうふうにこれを解決していく考え方があるのか、これについて所見を伺いたいと思います。
  134. 新原浩朗

    政府参考人(新原浩朗君) お答えさせていただきます。  御指摘のとおりのところがありまして、ここで課題になっているのは医療の国際展開でございますので、物を売って帰ってくる、あるいは、箱物を造っただけで帰ってきたのでは医療にならないというふうに思っております。  御指摘の課題なんですが、もちろん資金面の課題というのはあるわけですけれども、そこだけがちょっとクローズアップされがちなんですが、今言われたように、公的保険制度がない国が新興国の大半でございます。したがって、その一部の、五%程度の富裕層しか日本が病院を造っても医療を受けられないというケースも出てまいります。  それから、相手国の法規制がありまして、実際に病院を造っても、医療機器なり医薬品を日本の病院に届けようとすると承認が取れないということで、日本で承認が取れているものでも一、二年掛かってしまうというふうな実態も出てきております。それから、相手国の規制で日本人の医師を送れないというようなことも出てまいっております。  これを医療としてワークさせるためには、やはりもう制度問題の解決が不可欠だと思っておりまして、私どもの役所では、七月二日に担当審議官、私のところをつくりまして、社内ベンチャーのような状態なんですが、五人ぐらいの若い人を集めまして、それでもう各国と調整をいたしております。まだ三か月、四か月ぐらいですが、十数か国、二か国ぐらいとかなり熟度の高い交渉をいたしておりまして、うち四か国については既に覚書を締結しております。その中で、日本人の医師とか看護師の派遣の問題、あるいは公的医療保険の制度整備についての導入の支援、あるいは外国での日本人医師の活動についての調整といったところについてパイプを開いて調整を始めているところでございます。  制度でございますので御指摘のとおり簡単にいかないところもあるんですが、とにかくここのところをきちんと整備をして、きちんと日本の医療が海外で貢献できるようにしていきたいというふうに考えております。
  135. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 これは本当に大事な、私はそれこそ成長戦略の肝になると思いますから、そういうことがしっかりと海外でできるような体制をつくってほしいと思っています。  大臣、これ、資金面は例えば経産省がするにしても、制度面は厚労省が担当するということになると思うんです。そうすると、ここもこれは非常に大事な整合性というか連携が必要だと思うんですね。ですから、両省が一体となってこれをやっていくときに、やっぱり海外展開のときも省庁でのいろんな整理が必要だと思います。まあ規制と言っていいのか規制に近いと言っていいのかを含めて、そこのところをどういうふうにしていくのか、そこのところを、大臣、ひとつお答えをいただきたいと。厚労省の立場でもしそのことについて考えがあれば、併せてお願いをしたいというふうに思います。
  136. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) もちろん、厚労省との間、関係省庁との間でしっかり連携を取っていきたいと思っておりますし、こういったインフラシステム輸出、政権の方針として進めるということでありますから、そこは同じ方向でできると思います。  ちなみに、今答弁をさせていただきました厚生労働省の政府参考人、人事交流で経産省から行っている人間であります。
  137. 新原浩朗

    政府参考人(新原浩朗君) 経産委員会にお呼びいただいて大変感激しております。ありがとうございます。厚生労働省でございます。  今、茂木大臣から答弁されたとおりでございまして、これはもうこの政権の大きな方針でございますので、健康・医療戦略推進本部というのが官邸にできておりまして、これは総理が本部長になっているものでございますけど、日々の調整としては、和泉という健康・医療戦略室長というのが事務方のトップを務めていまして、ここで経産省、外務省、私ども、それから先ほど出てきたMEJの山本理事長とか、八人を構成員として不断にタスクフォースをつくって調整をいたしております。  それから、私自身の日常業務としても、毎日外務省さんなり、あるいは大学を持っている文科省さん、あるいはもちろん経産省、一日二、三回ぐらいの頻度では連絡を取らせていただいて、一体となって推進していくようにしていきたいと思っております。
  138. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 ありがとうございます。両方でしっかりと稼ぎ頭をつくり上げてください。  丁寧な御答弁をいただいていましたので、実はもう時間が、余るかなと思ったら間もなく時間がやってまいりましたので、また質問が残ってしまいますが、実は、その中でエネルギー計画について、先日も質問の中でいろいろ御答弁もお聞きしておりますので、これまた次の機会にちょっとじっくりやりたいと思うんですが。  ただ、その中で一つだけ、天然ガスのパイプラインの問題について、やはり東北の復興を含めて、震災のときの様々な教訓からいって、やっぱり天然ガスのパイプラインの整備というのは非常に重要だと思っています。実は、東北のが今新潟に行って、新潟から白石に飛んで、そこから供給されているんですね。これは非常に脆弱です。  ですから、今後、原発に代わる火力発電所、LNGを中心として造っていく際に、このパイプラインの整備というのは極めて重要だと思っています。是非このパイプラインの整備をしていただかなければならないと思っていますので、それに加えて、実はこのガスパイプラインを造る際にも様々な実は規制があるんですね、大臣、御案内のとおり。道路法の道路占有の問題だとか、あるいは農地転用、権利移動、河川横断とか様々なここも規制がある。  ですから、これは競争力強化法と同じように、こういうエネルギーというものを確保していくことは日本にとって極めて重要ですから、こういう規制も何とか打ち破りながら、エネルギーの、特に天然ガスのパイプラインを造るということに全力を是非、経産省としても取り組んでいただきたいというふうに思っています。御所見をお伺いしたいと思います。
  139. 磯崎仁彦

    大臣政務官磯崎仁彦君) 今、委員の方から天然ガスのパイプラインの整備について御質問がございました。  今おっしゃっておりましたように、やっぱり天然ガスのパイプラインというのは、一つ、需要拡大にどう対応していくかというこの視点が必要だと思いますし、まさに三・一一の東北の大震災のときに、新潟から仙台へのパイプライン、これの有効性というのが実証されたわけでございますので、そういった大規模災害時のバックアップの強化、こういった観点からも、やはり整備を進めていかなければいけないというふうに考えております。  経産省におきましても、この天然ガスの供給基盤の整備につきましては、昨年の六月に総合資源エネルギー調査会の総合部会において、天然ガスシフト基盤整備専門委員会という委員会から報告書が提出されておりまして、この報告書の中で、民間事業者の活力を最大限に活用しながら、も基本としつつ国の考え方を整理をしていくと、そういう報告書が出されております。また、今月の十二日からも、天然ガス、このガスシステムの総合的な改革の議論というのをスタートをさせておりまして、実は今日、二回目の会議が開催をされているというところでございます。  そういった意味では、このガスシステムの総合的な改革という中でも、このガスパイプラインの整備促進という在り方についても検討をしていくと。その中で、委員の方から御指摘ございましたように、規制の改革というものについても当然議論内容になっていくものというふうに承知をしております。
  140. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 今日の日経の一面にも、「LNG船 特需二兆円」というふうな記事が出ておりましたけれども、やはりこのパイプラインを整備することによって、日本にも輸入ということも含めていろんな波及効果があると思います。是非これ進めていただきたいと思います。  残り時間僅かですので、最後に、実は原子力災害に苦しむそれぞれの地域の企業復興について、是非これについてお願いをしておきたいと思いますが、一つは、特定地域中小企業税制の資金制度の拡充ということが随分福島県の中でも要望されておりました。これ、間もなく正式な形ででき上がる、拡充されると聞いておりますが、この件と、それから、やはりこの特定地域内の工業団地の建物が実は残っております。工業団地に入居していた方々が別な地域で新たな工場を造り、そこで操業していると。そうすると、あのエリアの中に随分工場が残っているんですね。実は、解体、これなかなか自分のお金でできない、あるいは自治体もできない。これを何とか国でやってほしいという要望随分あるんです。ですから、特定地域内の工業団地等の建物解体の支援を是非してほしいという要望がありますので、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  141. 磯崎仁彦

    大臣政務官磯崎仁彦君) 今、増子委員の方から二点御質問がございました。  まず、一点目の特定地域中小企業特別資金、この制度の拡充についてでございますけれども、これはもう御地元でございますので、私から申し上げるまでもないことでございますけれども、原発事故で甚大な被害を被った福島県の中小企業・小規模事業者、この事業者に対しましては二つの観点からの資金が今準備をされていると。一つは、いわゆるA資金と言われるもので、県内の移転先において事業を継承、再開する場合。この場合に、現段階におきましては、新しいところに造るということで三千万以内というかなり大きなものが用意をされていると。  他方、B資金という資金につきましては、避難指示が解除された場合に、その区域内において事業を継続、再開するということでございますので、当初はこんなに戻ることが、長期にわたらないだろうという想定もありまして、小規模企業事業者で五百万、それ以外においては一千万ということで、県内の移転先においてよりも小さい規模のB資金というものが用意をされておったということでございます。これについては、この十月末で七百四十件という支援を行っているわけでございますが、このいわゆる避難指示が解除された地域、こちらにおいて事業を継続、再開する場合におきましては、やはりもう被災から二年半を経過をしているということでございますので、避難指示が解除された区域におきまして事業を再開する場合におきましても、やはり長期避難によって施設あるいはその設備自体が劣化をしているというこの現実的な問題を踏まえまして、多額の資金を必要とするというふうに認識をしておりますので、この融資限度額の引上げ等々につきまして要望をいただいて、今この制度の整備をしております私ども経産省と福島県の方で、制度の拡充に向けて今検討を鋭意進めているというところでございます。  もう一点、原発の、あと、じゃ簡単に申し上げます。工業団地の解体ということでございますけれども、今この解体につきましては、具体的な直接の支援先はないわけでございますけれども、やはり地元のニーズ等々も踏まえまして、原子力災害地域向けの様々な復興支援策の中で何ができるのかということについて引き続き検討してまいりたいというふうに思っております。
  142. 増子輝彦

    ○増子輝彦君 ありがとうございました。  終わります。
  143. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合です。  まず、私の方からは、日本の航空機産業の現状と課題について伺っていきたいと思います。  国内の航空機産業の生産額は、近年一兆円を上回る額で推移をしております。これを更なる発展を遂げさせていくためにも、基幹産業一つ位置付けて、腰を据えた育成策というのが欠かせないと考えております。  一方、世界に目を転じますと、新造旅客機の市場というのが今後二十年間で現在の二倍近い四兆ドル、四百兆円に拡大すると予測されておりまして、特に最大成長市場というのはアジア太平洋地域であります。この拡大する需要を戦略的に取り込むことが日本経済にとって何より重要だと思います。裾野が広くて技術波及効果の高い航空機産業というのは、まさに私は産業競争力を付けなければならない分野であると考えております。  午前中も伊丹参考人からも、産業競争力三つ基本ということで、一つ複雑性産業を後押しすると。複雑性産業というのは、複雑性機械、複雑性素材、複雑性システム、そういったものが含まれている産業と定義されておりましたが、そういった産業を後押ししていくものであると。二つ目は、国際競争力のある企業誕生させると。三つ目は、既存産業秩序への挑戦者を生み出していくということで言及がございまして、まさに航空機産業の現状を表しているのではないかなと思っております。  日本の航空機産業を俯瞰いたしますと、産業規模は国内の機械工業の一%程度でございます。その生産高というか生産額は米国の十分の一、またカナダの二分の一程度しかないということでございまして、機体やエンジンについては生産額、輸出額共に拡大傾向にあるものの、システム関係とか室内装備という装備品については伸び悩んでいる現状が見て取れます。  ここで大臣に伺いますが、こうした航空機産業の現状と課題についての認識と、航空機産業自動車や電機に次ぐ次世代産業となり得るのかと、そうした可能性ですね、これから各国もしのぎを削ってこの分野に入ってこようと考えているわけでありますが、こうした可能性について、まず経済産業大臣の見解を伺いたいと思います。
  144. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 委員の御地元には日本エアロフォージと、極めて優れた航空機の部品メーカーもあるわけでありますけれども、航空機産業、飛行中の厳しい環境の下で高い安全性を確保しながら、部品点数でいいますと大体三百万点ということですから、車の部品点数三万点の百倍ということになるわけですね。この多くの部品を経済効率性を追求しながら高度に統合していくという産業であります。また、素材そして電子制御システムなど、先端の技術を投入して幅広い裾野の産業の実力を結集することから、ほかの産業への波及効果も極めて大きい、そして付加価値の高い産業であると考えております。主要国では、こういったこともあって、この航空機産業、国家的な戦略産業位置付け、しのぎを削っているものと認識をいたしております。  そして、世界の航空機産業、これから大きく成長することが予想されておりまして、今後二十年間、アジア等々を中心にしながら需要も伸びて二倍程度になっていくと、このようなわけであります。こうした世界市場の拡大の中で、日本の航空機産業、欧米と比べて後発であるものの、機体やエンジンの海外完成機メーカーとの国際共同開発で大きな成果を上げていると考えております。  例えば、ボーイングの787、ここには、炭素繊維複合材の技術の強みを生かして、機体の三五%の製造を我が国の企業が受け持っております。かなり実力を備えてきておりますし、ポテンシャルも高いと思っております。さらには、従来の部品供給の立場からより高いレベルでのシステムの設計、開発への展開が重要でありまして、MRJ、こういった完成機の開発、そのための先駆的な取組でありまして、必ず成功させていきたい、こんなふうに考えております。  あわせて、次世代の耐熱ニッケル合金などの高機能な金属材料や炭化珪素繊維を使ったセラミック複合材の開発を進めて、日本の強みを更に伸ばすことが必要であると考えております。また、物づくりを支える中小企業底力も活用できる分野であると考えております。  自動車産業、電機と比べますと、今、事業規模で四十対一、五十対一と、こういうところでありますが、我が国の基幹産業成長するよう、今後とも戦略的に取り組んでいきたいと考えております。
  145. 谷合正明

    ○谷合正明君 大臣の方から、決意も含めて御答弁いただきました。また、冒頭、岡山の日本エアロフォージ社についても言及していただきました。  実は、私は今日この質問をなぜ取り上げたかというのは、まさにその岡山の水島工業地域に二〇一一年に設立されて今年竣工されましたこのエアロフォージを視察しまして、現状を聞いてきたと。それで、また、今審議中の産業競争力強化法がどのようにこの航空機産業に役立てることができるのかという観点で視察をしてきたものですから取り上げた次第でございます。  現地に行って私も認識を新たにしたわけでありますが、実は航空機産業で、我が国のいわゆる航空機産業のサプライチェーンというんでしょうかね、全体を見渡したときに、一貫生産できない部品があるということに気付いたと。それは何かというと、最新鋭機に不可欠と言われるチタンとか軽量かつ高強度な性質の、チタンですけれども、大型チタン材を成形できるプレス機が我が国国内にないんだと。鍛造工程が欠落しているので、これまではロシアやフランスから加工済みのチタン材を輸入してきたというのが実情であったということを私も初めて学んだわけであります。要するに、サプライチェーンが欠落しているわけでありますから、なかなか産業規模としてもこれまで大きく欧米に比べて見劣りしていたという課題も聞いてまいりました。  今お話しさせていただいたとおりなんですけれども、我が国でのこの大型チタン材国産化の実現に向けていよいよ第一歩を踏み出してきたわけでありますが、こうした我が国に欠けていた加工工程、サプライチェーンを持続的、安定的なものに構築していくということは非常に重要だと思っておりますが、本法律案で盛り込まれている支援措置やほかの支援策を活用して国としてどのような後押しをしていくことができると考えられるのか、経済産業省の認識を伺いたいと思います。
  146. 宮川正

    政府参考人(宮川正君) 今委員御指摘のように、このチタン材でございますけれども、確かに大型のプレス鍛造工程というところが国内になかったために、結果的に海外から持ってくると、こういうことでございまして、日本産業にとっても弱みになっておりました。こういうことで、先ほど委員からの御指摘のとおり、支援策を導入をいたしまして、日本エアロフォージの方に対しましても設備導入を図ったと、こういうことによりまして、大型のプレス鍛造工程が日本でもできるようになったと、こういうことでございます。  こういうことで、国内に一貫したサプライチェーンを構築することが可能となりまして、品質面やコスト面での競争力が高まります。また、例えばチタン材を使用した航空機部品の受注の拡大、こういったところも期待ができるわけでございまして、そのための攻めの設備投資の増加も期待ができます。今回、本法案のところで紹介されております設備投資減税、こういうことを大いに活用いたしまして、前向きな設備投資が強く後押しされることを我々も大いに期待をしております。  引き続き、サプライチェーンの強化に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
  147. 谷合正明

    ○谷合正明君 分かりました。  もう一つ課題として聞いてまいりましたことは、それは航空機用素材に関する国内データベースの構築が必要だということでございました。と申しますのも、アメリカにおきましては、これはアメリカと単純に比較できないわけでありますが、アメリカでは既に空軍を中心とした航空機用素材のデータベースが確立されていて、各企業がこれを利用して効率的な開発、試作が可能になっていると伺ってまいりました。我が国といたしましても、そうしたデータベースの蓄積であるとか、データベースの蓄積に必要となるシミュレーターの構築が求められるのではないかなと私は思いました。  ただ、こうした航空機用素材に関するデータというのは企業秘密みたいなところもあると思いますので、なかなかデータベースの構築というのは難しいとは思うんですが、しかしながら、産業競争力強化という観点を踏まえますと、国が主導して国内のデータベースを産官学連携しながら構築していく必要があるのではないかと思うんですが、この点についての見解を求めたいと思います。
  148. 宮川正

    政府参考人(宮川正君) 現在、民間航空機の点でございますが、この材料に関しますデータの保有者は大学、研究機関、それから航空機産業、まあメーカーそのもの、そして行政機関としては、当省のほか、文部科学省、国土交通省、こういったところが想定をされます。  確かに、御指摘のとおり、知的財産の観点から整理すべき課題はございますけれども、国が行っている航空機関連の研究開発データ、こういったものを中心競争力強化に役立つような情報を集約することは有用であるというふうに思っております。どういう情報が集約可能で、かつ効果があるか、また集約の方法につきまして関係省庁、関係機関と大いに議論してまいりたいと、かように考えております。
  149. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非、大いに議論していただいて、また結果を御報告いただきたいと思います。  もう一つ質問させていただきたいことは、それは航空機関連認証の取得促進のことでございます。  先ほど大臣の方から、航空機の部品点数が三百万点であると、これは自動車の百倍という話がありまして、これは裾野が広いので中小企業にとってみたら言わば魅力的な産業であるという話もございました。  実際、岡山県におきましても共同受注グループウイングウィン岡山というのも今誕生しているわけでありますが、ただ、航空機というのは、大臣も触れられたとおり、飛行の安全の確保などの観点から多くの部材に対して非常に高い精度と厳格な品質管理、また品質保証が求められております。日本工業規格の品質マネジメントシステムでありますJISQ9100やNadcapを取得する必要があります。さらには、これらに加えて機体メーカー各社、欧米の機体メーカー各社の固有の要求も満たさなければならないということで、なかなかこれが参入障壁となりかねない状態になっております。  そこで、我が国の航空機産業におけるサプライチェーンの強化のためにも、また中小企業がしっかり参入していくためにも、意欲ある企業の取組に対して国として参入に必要となる認証の取得促進に向けたより一層の支援を行う必要があるのではないかと考えますが、経済産業省の見解を伺いたいと思います。
  150. 宮川正

    政府参考人(宮川正君) 委員御指摘のとおり、航空機は非常に高い品質を要求されておりまして、これは他の産業に比べても非常に高いものがございます。御指摘のとおり、JISQ9100またNadcap、こういった国際的な認証の取得も必要となってまいります。航空機分野に新たに参入いたします中小企業、ここではこうした認証の取得が参入のハードルとなっている面があると私どもも考えております。こういったことで、国際認証の取得に向けた業界経験者の長期派遣、また認証取得を支援する体制の構築、こういうことを現在検討しております。  また、企業立地促進法に基づきまして助成金を出しておるんですけれども、飯田市、ここの方ではこの取得のための研修制度も行っておりまして、こういったところで地域に向けた支援というのも私どもしっかりとやらさせていただきたいと、かように考えております。
  151. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非きめ細やかに支援、対応していただきたいと思います。  先ほど鍛造工程の誕生という話をさせていただきましたが、これがいわゆるサプライチェーンができますと、今度は何が必要になるかというと、希少金属の国内リサイクル体制の構築というものが必要になってまいります。  チタン材などの希少金属については、鍛造工程以降の工程で素材の約七割が加工くずとして発生しているというふうに私は勉強させていただきました。ですから、ほとんどは加工くずになってしまうんですが、しかしこれは全くくずではなくて、宝の山でございまして、基本的にはロシアであるとかフランスなんかはそれをしっかりリサイクルとして活用しているということを伺ってまいりました。  そこで、現状では国内のリサイクルの流れがうまく確立していないのではないかなという懸念を持っています。先ほど申し上げたとおり、チタン材の国内一貫生産体制の整備によりまして各工程のネットワークが構築されることから、希少金属の国内でのリサイクルが可能になるのではないかと期待されますので、国内リサイクルの現状及び今後国としてどのような対応を取るのか、経済産業省の見解を伺いたいと思います。
  152. 宮川正

    政府参考人(宮川正君) まず、現状でございますけれども、委員が御指摘されましたように、これまで大量のスクラップが発生してまいったのは、これは海外で鍛造プロセスがございますので、そしてまた、実際にはチタンのメーカーというのはアメリカに依拠しておりましたので、そういう意味ではリサイクルをしてもこれはアメリカのところに戻っていってしまうと、こういうことでございまして、国内でのリサイクルは困難であったというふうに認識をしております。  ただ、今回、先ほどちょっと冒頭申し上げましたように、平成二十二年の補正予算におきまして日本エアロフォージに対しましても大型鍛造のできる設備を導入をいたしまして、まさにこの十月の三十一日には初出荷と、こういうところまで行っておるところでございます。さらに、上流のチタンメーカーに対しましても、チタン合金のスクラップを原料とするための様々な必要となる粉末制御技術、こういったことに対しましても当省として開発支援をやっております。  こういうことでございまして、今後、素材メーカーまた加工メーカーとも協力しまして、国内でチタンのリサイクルが促進されるように努めてまいりたいと、かように考えております。
  153. 谷合正明

    ○谷合正明君 ありがとうございます。  先ほど来、局長とやり取りをさせていただきましたので、また大臣と是非質疑させていただきたいと思っております。  我が国の航空機産業振興策は、当初、国産機開発、この挑戦があったと。この挑戦を経て国際共同開発へとかじを切ってきたわけであります。政府は、航空機工業振興法を一九八六年、昭和六十一年に改正いたしまして、国際共同開発を促進するための機関として、航空機国際共同開発促進基金というものを設置してまいりました。この基金を通じて国際共同開発に対する助成の業務を行って、その結果ボーイング777や787の共同開発やV2500エンジンの共同開発に参加するなどの一定の成果を上げてきたと私の方も認識をしております。  冒頭、私の方から申し上げましたけれども、ただ、機体やエンジンの方は生産が伸びている一方で、装備品がまだまだ割合が、シェアが低いものですから、この装備品も付加価値の高いものがございます。是非、この機体、エンジンのみならず、装備品に関しても積極的に育成をしていくべきではないかと考えるわけでありますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  154. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) まさにおっしゃるとおりだと思っております。電源システムを始めとします装備品、飛行機全体でいいますと付加価値の三割から五割を占めると、このようにも言われておりまして、この装備品産業の育成、強化日本にとって極めて重要だと、そのように考えております。  今どうなっているかといいますと、電子部品であったりとかセンサーであったりとかギア技術、そういう要素技術日本メーカーは持っているわけであります。その部品を結局は装備品を作っているところに納入するという形でありまして、より大きなものは海外がそれで作るという形に結果的にはなっているということでありまして、今後、これを更に推し進めるといいますか、によりまして、より大きな単位での構成品としての装備品の開発、これを強化していくことが必要である、このように考えております。  例えば、飛行機、着陸するときの脚装置の研究開発であったりとか、今委員の方からも御指摘をいただきました航空機国際共同開発促進基金を通じました電源装置の国際共同開発支援、こういったことをしっかりと行うことによりまして、装備品産業の育成ということに取り組んでまいりたいと考えております。
  155. 谷合正明

    ○谷合正明君 多少時間が残っておりますので、改めてこの航空機産業の全体の育成ということで、今回、産業競争力強化法審議しているわけでありますが、先ほど来の議論で、国内サプライチェーンの構築であるとか、データベースの構築であるとか、認証取得支援、あるいはレアメタルのリサイクル体制、装備品の育成といった議論のやり取りを踏まえまして、改めて、大臣が中長期的な視点でこの日本の航空機産業をどのように持っていきたいのかと。  と申しますのも、なかなかすぐには受注できないとか、すぐには、何ですか、利益を上げる、できないとか、航空機産業特有の特徴があるとは思うんですね。やはりこれ、中長期的な視点で経済産業省あるいは国を挙げて取り組んでいかなければならないんだと思っておりますが、改めて、今回の審議しているこの法案とも関連しまして、日本一つのこれからの柱でもありますこの航空機産業をどのように育成していきたいのか、最後、御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  156. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 冒頭申し上げましたが、この航空機、部品点数が三百万点と。これを様々な要素技術から組み上げて一つの製品にしていくということでありまして、国際的に強い航空機メーカー、何が一番勝負かといいますと、基本コンセプトを固めてから実際に実機を造るまでの期間をいかに短くするかと、これで実際のところは決まってきます、航空機というものは。そこの中にどう日本のサプライチェーンであったりとか装備品を組み入れていくかと。まさにこれが国際競争になってくると思っております。  同時に、やはり完成機を造るということも夢であり、またそれが大きな産業にもつながっていくと、このように考えております。
  157. 谷合正明

    ○谷合正明君 ありがとうございます。  特定の分野を取り上げてまいりましたけれども、この産業競争力強化法がしっかりワークするのかどうかというのは本当に現場に行けば一目瞭然でありまして、総論だけでなくて各分野で具体的な成果を上げられるよう、そういう法律となることを、しっかりそういう制度設計をしていただきたいということを申し上げたいと思います。  また、このエアロフォージにつきましても、是非、大臣お忙しいとは思いますが、もし時間可能でありましたら視察もしていただきたいと思いますし、政務官は恐らく香川から瀬戸大橋を渡ってすぐでございますので、是非視察もお願いしたいというふうに思っております。  そのことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。以上です。
  158. 行田邦子

    ○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いいたします。一昨日に続きまして質問させていただきます。  まず初めに、グレーゾーン解消制度について質問させていただきます。  このグレーゾーン解消制度は、ノーアクションレター、法令適用事前確認手続ですけれども、これでは解消できない部分を補う、言ってみれば変形というか進化形ととらえることができると思うんですけれども、まず初めに、ノーアクションレターを所管されている総務省に伺いたいと思います。  このノーアクションレターなんですが、これまでの件数実績はどのようになっていますでしょうか。
  159. 上村進

    政府参考人(上村進君) お答えいたします。  今先生お尋ねの行政機関による法令適用事前確認手続、いわゆるノーアクションレター制度でございますが、平成十三年三月の閣議決定により設けられた制度でございまして、この平成十三年度から平成二十年度までの八年間について見ますと、平均約十五件、一番多いのが平成十六年度の二十三件、最少件数は平成十七年度の八件となってございます。  以上でございます。
  160. 行田邦子

    ○行田邦子君 平均十五件と。非常に少ないという印象を受けていますけれども、なぜこのノーアクションレターという手続制度の実績が少ないのか、どのように分析をされていますでしょうか。
  161. 上村進

    政府参考人(上村進君) このノーアクションレター制度の利用件数、必ずしも多くないという点は御指摘のとおりかと思ってございます。  その理由といたしましては、制度発足当初、この対象となる分野が限定されていたことや、照会者の氏名が公表されていたこと等も考えられましたので、これらの点につきましては、対象分野の拡充、それから照会者名の原則非公表などを行ってきたところでございますが、いずれにいたしましても、件数自体、今申し上げたようなところでございますので、必ずしも利用件数は増加していないと。  一つ理由といたしましては、このノーアクションレター制度は、個別具体的な事実を書面によって照会をしていただくと、こういう制度であります一方で、一般には、行政機関といいますのは、書面によらず電話等で法令に対する解釈の問合せに丁寧なお答えをされていると、こういうことも一因ではないのかなと思ってございます。  いずれにいたしましても、本制度は行政運営の透明化のために重要な制度であると思っておりまして、制度が幅広く活用されますよう、今後とも周知に努めてまいりたいと思っております。
  162. 行田邦子

    ○行田邦子君 非常に件数が少ないその理由を述べていただきましたけれども、それでは、このグレーゾーン解消制度は、ノーアクションレターの足らざる点を補うような進化形だと思うんですけれども、そもそもノーアクションレターとグレーゾーン解消制度の違いはどこにあるんでしょうか。
  163. 菅原郁郎

    政府参考人(菅原郁郎君) 今、総務省参考人からもありましたけれども、ノーアクションレターでは、そもそも照会できる条文といいますか、そこが許認可ですとか行政処分に係る条文だけに限定されております。  例えば、この委員会でもさんざん議論になっています産活法でございますけれども、産活法は百条程度の法律でありますけれども、その中で、このノーアクションレターでこの条文についても聞いてもいいですよという条数は、許認可にかかわる部分ですので八条程度しかございません。そうしますと、例えばその定義のところにはまるのかどうかというようなところが本当は問題になるような場合には、ノーアクションレターの聞ける対象条文となっていないというようなところがあって、そのノーアクションレターでは利用件数が少なかったのではないかというふうに思われます。  それに対して、今回のグレーゾーン解消制度でありますけれども、対象となる条文については一切制限を設けておりません。政令、省令、通達、いかなる分野であっても、グレーと思われる部分については問合せ可能になってございます。  それともう一つ重要なところは、ノーアクションレターでは、まさに事業者が規制官庁そのものに、規制される人が規制官庁そのものに問合せをするというところだったわけですけれども、今回のグレーゾーン解消制度は、事業所管官庁を通じて規制官庁と事業所管官庁の間でそういった問合せに対して対応していくということで、問合せ者に対してはいろいろなアドバイス、きめ細かな指導、そういったものも併せてやっていくことによって、規制のある意味で難しい言葉をしっかり懇切丁寧に事業所管官庁として解説してあげるですとか、ちゃんと規制官庁と橋渡しをするというようなことを今回の制度の特徴としまして、そういう面では、周知徹底をしっかりすればより多くの人に活用していただけるんではないかというふうに考えてございます。
  164. 行田邦子

    ○行田邦子君 御説明ありがとうございます。  このグレーゾーン解消制度、事業所管官庁が窓口となって、そしてその企業事業計画で確認をすべき法律、政令、省令、あらゆるものをチェックをする窓口になるということでありますけれども、そしてまた規制所管官庁に照会をし確認するというようなことでありますけれども、大変いい制度のように思います。    〔委員長退席、理事加藤敏幸君着席〕  ただ、ちょっと私が危惧しておりますのは、高い専門性が求められるものについて、その窓口になる担当の方が高い専門性、理解力であったり判断力であったりセンスを備えていないと、かえって逆に邪魔になってしまう、時間が掛かってしまうというようなことも大いに起こり得ると思うんですけれども、その点、どのようにお考えでしょうか。
  165. 磯崎仁彦

    大臣政務官磯崎仁彦君) 今局長の方から話をしましたとおり、やっぱり今回の特徴というのは、直接企業が行くのではなくて、間に事業所管官庁、これが入るということでございますけれども、逆に行田委員の方からは、それによっての弊害があるんではないかという御質問だったと思います。  ただ、やはり事業所管官庁はその企業事業計画、あるいは技術サービス、そういったものには一番精通をしているところだというふうに思っておりますし、先ほど話にありましたように、やはりなかなか直接話をしたのでは難しいというときに、事業所管官庁が企業と密接に連携を取りながら、やはりその意向を十分に酌み取って規制所管官庁に働きかけを行うという、やはりそこが非常に大きい意味を持っているだろうというふうに思っておりますので、企業にとってできるだけ分かりやすい回答をできるだけ早期に働きかけを行うことによって取っていくということで機能をしていくというふうに思っております。
  166. 行田邦子

    ○行田邦子君 その窓口となる担当者というのは、高い専門性と理解力、判断力、そしてまたコミュニケーション能力と、それに加えて、その立ち位置がはっきりしていなければいけないというふうに思います。あくまでも企業側の立ち位置ということを、そこが揺らいでしまうとこの制度というのはうまく機能しないのかなというふうに思っております。    〔理事加藤敏幸君退席、委員長着席〕  大臣に伺いたいと思います。  今回のこの法案では、グレーゾーン解消制度など人員を必要とするもの、それからあとは企業実証特例制度、ベンチャー投資の推進制度、企業再編の促進制度等々、多くの認定作業など、要はマンパワーを要するものが含まれていますけれども、大臣としてはこのことによって増員というのを考えていらっしゃるんでしょうか。
  167. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 省として忙しくなることを考えています。そうあってほしいと思っています。こういった企業実証特例制度であったり、また事業再編を促進する制度、様々な制度を今回の法案の中に盛り込んでおりまして、できるだけ多くの方に活用してもらうということが重要でありまして、そのための幅広い周知も行っていきますし、執行についてはスピーディーに行っていきたいと、こんなふうに考えております。いろんな申込み、申請が来て大変になる。しかし、一部の部局だけではなくて、もう省全体として、そして地方の経済産業局も含めて、総員で当たっていきたいと思っております。  もちろん、経済産業省としてエネルギー政策もしっかりやらなきゃなりません。通商政策もやっていかなきゃならない。さらには、中小企業政策、こういったこともやっていかなくちゃいけない。経済は生き物でありますから、その時々の変化、ニーズに応じて的確、そして柔軟、さらには適材適所で臨んでまいりたいと考えております。
  168. 行田邦子

    ○行田邦子君 商売の世界では忙しいのは何よりということではあるんですけれども、ただ、個々の認定作業というのが余りにも増えてしまうと、逆に官僚の皆さんが、企業競争しやすい環境をつくるような政策立案とかあるいはルール変更といった本来のそういった政策立案の仕事に時間が取れなくなってしまうのではないかということを私は危惧をしておりますということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  官民ファンドについて伺います。今回のこの法案にも関連する官民ファンドについてまず伺いたいと思います。官民イノベーションプログラムです。文科省に伺いたいと思います。  この官民イノベーションプログラムの概要と、それから予算、またその進捗・執行状況をお聞かせいただけますでしょうか。
  169. 常盤豊

    政府参考人(常盤豊君) お答え申し上げます。  官民イノベーションプログラムにつきましては、本年一月に閣議決定をされました緊急経済対策におきまして、実用化に向けた官民共同の研究開発を推進することとされたことを踏まえまして、平成二十四年度補正予算(第1号)におきまして国立大学法人に対する出資金が措置され、創設をされたものでございます。具体的には、新たな需要や市場を創出するため、国立大学と企業が相当な期間をもって大学の研究成果の実用化に向けた共同研究を推進するものでございます。  なお、緊急経済対策では、大学等からの大学発ベンチャー支援ファンド等への出資を可能とする制度改正を検討することとされておりまして、その後の各大学の体制整備の進捗等を踏まえて、今回の産業競争力強化法において制度改正を盛り込んだところでございます。  この進捗の状況ということでございますけれども、このプログラムにつきましては、実用化に向けた共同研究を推進するために、平成二十四年度補正予算に一般会計から一千億円が計上されまして、国から四大学に対し出資を行ったところでございます。この四大学におきましては、予算措置以降、事業化に知見を有する人材雇用を始めといたしまして学内体制の整備を進めてきておりまして、予算の円滑な執行に向けて、現在は共同研究テーマの学内公募選定やその準備を行っているというところでございます。
  170. 行田邦子

    ○行田邦子君 平成二十四年度の補正予算で一千億円が予算措置されて、もう既に各国立大学に配られているということです。ところが、この一千億円の使い道というのは、元々国立大学が自らの研究成果を事業化、それから実用化しようとするような企業支援するためのファンドに出資するための軍資金ですけれども、ところが、この今の法律だと国立大学はファンドに出資ができないということであります。私は本当に疑問に思うんですけれども、そのことはもう最初から分かっていたはずなのに、今の法制度ではできないことのためになぜ先に予算を付けてしまったのかなというのが非常に疑問なんです。  私は、あくまでも、官民ファンドの一種とこれは見られていますけれども、このスキーム自体というのを私は有効に使ってほしいというふうに思っているんですけれども、予算を付けることと、それからそれを実行可能とする法制度の改正が逆になってしまっているということを非常におかしいなというふうに思っています。平成二十四年度の補正予算は、こういった駆け込みのファンド、急増するということが随分見受けられています。  もう一つ質問させていただきたいファンドがあります。それは国交省とそれから環境省のファンドなんですが、耐震・環境不動産形成促進事業のファンドです。老朽化した建物を耐震化したりとか、あとは環境対応するというような改修を行うための事業促進のファンドですけれども、これも平成二十四年度の一般会計で予算が付けられました。けれども、ファンドはまだできていません。予算が付けられて、しかも緊急的なものだから補正なんですけれども、八か月間使われていないという状況です。なぜなんでしょうか。
  171. 吉田光市

    政府参考人(吉田光市君) お答え申し上げます。  耐震・環境不動産形成促進事業、これは老朽化したビルなどについて、耐震性や省エネに優れたビルへと改修、建て替えを促進する事業でございます。地域の活性化にも有効なものであり、潜在的な需要は極めて大きいものというふうに認識してございます。  この事業につきましては、本年七月にプロジェクトに携わりますファンドマネジャーの募集を行ってございます。十社が応募してきてございます。この十社につきまして、これまで不動産投資として適切かどうか、そういった審査を進めてきているところでございます。  本年十月に第一号のファンドマネジャーの選定を行わせていただいたところでございます。これにつきましては、年内には基金から実際に出資が行われる予定となってございます。また、今後、引き続きましてファンドマネジャーの選定等を進めまして、年度内には更に数件の選定ができるものというふうに考えているところでございます。  この事業の活用に当たりましては、地域の金融機関との連携が大変重要であるというふうに考えてございまして、これまでにいろいろ御相談をする中で百五十五の金融機関とパートナー協定を結ぶなどしてございます。こういったものを通じまして、地域における案件発掘にも並行して取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。  国土交通省といたしましては、こうした取組を進めながら、民間投資の呼び水としての機能が十分に発揮されるよう同事業を有効に活用してまいりたいというふうに考えてございます。
  172. 行田邦子

    ○行田邦子君 今質問させていただいた二つ以外にも、今年になってから、二〇一三年になってから新たにつくられた官民ファンドというのが内閣官房に伺った限りでは六つあるということであります。これ以外にも、経済産業省の所管の海外需要開拓支援機構、それから日本政策投資銀行における競争力強化ファンド、また民間資金等活用事業推進機構などなどでありますけれども、これら六つのファンドに対して、もう既に政府からは三千五十億円、三千億円を超える出資が既になされていて、これから更に増える見込みであります。これらは全て平成二十四年度の補正あるいは今年度の本予算から出ているということであります。一般会計のものもあれば、財政投融資の投資勘定からのものもあります。  そしてまた、それだけではなくて、新しいファンドだけではなくて、今既にある既存のファンドというのもありまして、大きいところでは産業革新機構で、平成二十四年度の補正で一千四十億円政府から出資が追加されました。また、中小企業基盤整備機構でも幾つかファンドを持っていますし、それから地域経済活性化推進機構もあります。  これらは、民間投資をなかなかしないんで、民間投資の呼び水になるというような意図で、地域経済活性化推進機構はその限りではないかもしれませんが、基本的には民間投資の呼び水になるということでファンドがたくさんつくられていますけれども、ちょっとこれは余りにも公的支援としては行き過ぎではないかなというふうに私は思っております。民間投資の呼び水に本当になってくれればいいんですけれども、逆に民業を圧迫するおそれ、また競合他社との競争を阻害するおそれもあるのではないかなと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  173. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 圧迫されるほど民業が大きく育っていれば問題ないんだと思うんですよ。御案内のとおり、日本におけますリスクマネーの供給、アメリカと比べると四十分の一なんですね。なかなかリスクマネーの供給が行われないと、こういうことから、こういった官民ファンドを呼び水にしまして民間資金を引き出していくと、こういった仕組みをつくっているわけであります。  御指摘いただきました幾つかのファンドにつきましてお話をさせていただきますと、中小企業基盤整備機構、これは民間ファンドに対して出資するファンドであります。それから、産業革新機構、それから今年つくりました海外需要開拓支援機構、いわゆるクール・ジャパン機構でありますが、これは民間との協調出資を原則として、あらかじめ定められた設置期限内に限った活動とするなど、いずれも民間の活力を引き出す仕組みとしております。  もう少し詳細について答弁をということでありましたら、実際にこういった機構等を担当してきました政府参考人がおりますんで、お答えをさせていただきます。
  174. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございます。  私も民間投資本当意味での呼び水になってくれればいいとは思いますけれども、やはり私が思うには、公的資金を投入するというのはあくまでも限定的であるべきだというふうに思っております。かつてのファンドへの投資というのは、例えばバブルの崩壊直後、金融機関が健全に機能しないとき、危機的な状況であったり、あるいはリーマン・ショックの後であったりということで、企業の再編や事業の再編といったことに注力をされていたと思いますけれども、今回は民間投資の呼び水ということであって、本当にこれが公的資金をこれだけ投入するのに効果的に機能するのかなということ、また、きちんとした規律を設けてやっていかないと失敗をする可能性というのもありますし、また、その失敗をした場合に一体誰が責任を取るのかなということも、どうしても行政が介入をすると曖昧になるというふうに考えております。  そこで、内閣官房に伺いたいんですけれども、この官民ファンドと言われているものが幾つあるんでしょうか。
  175. 吉川徹志

    政府参考人吉川徹志君) お答え申し上げます。  官民ファンドに関しましては、政府一体となって官民ファンドの横串チェックを行う必要があるという観点から、運用状況について検証を行うためのガイドラインを作成をいたしまして、本年九月に菅内閣官房長官を議長とする官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議を開催して会議決定をしたところでございます。  今後、このガイドラインに基づいて運営状況の検証を行うこととなる官民ファンドの数で申し上げますと、全部で九つでございます。
  176. 行田邦子

    ○行田邦子君 内閣官房でフォローアップをしているものについては九つということでありますけれども、それ以外にもあるのではないでしょうか。
  177. 吉川徹志

    政府参考人吉川徹志君) お答え申し上げます。  官民ファンドの定義についてはいろんな数え方があります。切り口によって外延は変わってくるものでありまして、今回、特に政府が横串チェックを行うという必要があるものとして、成長戦略の実施に関連が深いものの九つについて官民ファンドとして検証の対象としているものでございます。
  178. 行田邦子

    ○行田邦子君 内閣官房で検証の対象としているのは九つということですけれども、ほかにも各省庁で官民ファンドというものが組成されているというふうに私は認識をしております。ここは是非、自民党政権になって官民ファンドというのが増えています。これだけ公的資金を投入するわけですので、是非内閣官房において、政府全体で官民ファンドというのはどのぐらいあるのかと、どのぐらい政府が出資をしているのかといったことの把握も必要だと思いますので、実行していただきたいというふうに思います。  大臣に伺わせていただきます。  官民ファンドですけれども、言ってみれば政府の別働隊のような形で、ある程度の選択の自由度を持ちながら出資をしていくわけでありますけれども、この投資の成果というのはすぐには出ないものが多いと思います。数年後あるいは十数年後かもしれません。そして、先ほども申し上げましたけれども、仮にその投資が失敗した場合、責任の所在はどこにある、誰が責任を取るのでしょうか。
  179. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) こういったファンドも当然規律を持って運営することが重要だと考えておりますけれども、例えば、アーリーステージのベンチャーに資金を投入すると、一〇〇%成功するということはないと思います。そんなことがあったらやはりアーリーステージじゃないんです、その定義自体が。私はそんなふうに思いますけど。  いずれにしても、これらのファンドは、政策目的によって株式会社の形態を取ったり独法の形態を取ったりと、様々な形態ありますけれども、その投資の結果に対する責任、これは一義的には各ファンドの経営責任者が負うと、こんなふうに考えております。それぞれのファンドにおきまして、例えば投資決定委員会であったりとか、そういった機関をつくったりして意思決定を行っているわけでありますけど、そういった部分も含めて経営者が負うというのは当然のことだと思っております。  そして、各ファンドの投資の成果についてでありますけれども、例えば産業革新機構について申し上げますと、個別の投資案件については五年から七年で案件からの退出、エグジットを原則としておりまして、その成果について定期的に時価評価を行い、適切な案件管理を行っているところであります。  もちろん、国が何にもしないということじゃないです。国としても、この九月に決定をいたしました官民ファンド運営に係るガイドライン、これを定めた上で、政策目的の達成や出資の毀損の回避に努める観点から、監督省庁であり出資者でもある国が、投資内容投資決定のプロセス及び背景、投資実行後における各投資先についての財務情報、財務状況、回収見込額、出資に係るエグジットの方針、そして投資決定時における見通しからの乖離がどうなっているか等々につきまして、各ファンドから適時適切に報告を受けるということにしております。
  180. 行田邦子

    ○行田邦子君 こうした投資の場合、民間であれば、その民間である投資者が責任を負うというのはこれはもう分かりやすいと思うんですけれども、ただ、官民ファンドの場合は、大臣の御答弁ですと一義的には経営者が負うということでありますけれども、その出資元というのは公的資金でありますので、やはり政府が何も責任を負わないということはないと思います。どうしても、ただ、行政が介入すると、責任の所在というのが曖昧になるというふうに私は思っていまして、そういう意味でも官民ファンドというのは極めて限定的であるべきというふうに思っております。  そこで、質問をベンチャー投資の促進に移りたいと思います。  官民ファンドにつきましては、政府の出資がこの平成二十四年の補正と平成二十五年度の本予算で四千億円を超える規模の出資がなされているわけでありますけれども、一方で、ベンチャーキャピタルによる投資額は二〇一二年度、平成二十四年度では一千億円ちょっと、一千二十六億円ということであります。まだまだ育っていないというか、リーマン・ショック後、元に戻っていないという状況であります。  そこでこの法案では、ベンチャー投資の促進ということで、ベンチャーファンドに出資をした企業がその出資額を損金算入することができるということが盛り込まれていますけれども、私はこれはとても良いスキームではないかなと思って、うまく活用すればいいというふうに思っているんですけれども、ただ、これまでもいろいろな質疑でありましたけれども、なぜ敷居を高くするのかなと、ハードルを高くするのかなということを疑問を感じています。  経産省の説明でも事業拡張期のベンチャー企業投資するベンチャーファンドを対象とするというふうに説明を聞いておりますけれども、一方で、日本再興戦略のKPIでは開廃業率一〇%台を目指すといったようなことも掲げていますし、また、やはりベンチャーの起業時の資金ニーズ、支援ニーズというのはこれは依然としてあるわけでありますので、そういうことを考えれば対象を何も事業拡張期に絞る必要はないと思うんですが、いかがでしょうか。
  181. 磯崎仁彦

    大臣政務官磯崎仁彦君) お答えいたします。  恐らくベンチャー企業に対する支援というのはいろんなステージでやっていくものだろうというふうに思っております。準備段階から起業時から拡張期というやはりそれぞれのライフサイクルに応じた支援というのが恐らくあるんだろうというふうに思っております。  今委員から御指摘ございましたように、今回のベンチャー投資促進税制制度につきましては、御指摘のように、主として事業拡張期のベンチャー投資するファンドに出資する企業、この税制優遇を講じるということでございますが、これは私どもとしての問題認識としては、やはり我が国のベンチャー企業にとって、特にその事業拡張期、ここのまとまった資金提供の不足が深刻であるという、そういうような問題認識からベンチャー成長が阻害をされていると、そこにやはり資金提供していくのが喫緊の課題だろうということでこういう仕組みを取ったということでございます。  ただ、もう一つ、恐らく、こういうことを措置をとることによりましてやはり株式公開がなされていくと、そうなると、成功したベンチャーが増えれば、その後、やはり私もそういうふうになってみようという、そういう起業家も増加をしてくるというふうに認識をしております。  また、優れたベンチャーキャピタルに新しくやはり投資をしていくということになれば、そこに資金が集まる。そして、そういう優れたベンチャーキャピタルの目利き等々によって更に新しいベンチャーが育成されるという、これは今回の経済産業の中でも、いわゆる好循環という話がありましたけれども、やはりこういうベンチャーにつきましても、今申し上げたような好循環を取ることによって、単に事業拡張期ということではなくて、それ以外のベンチャーについても資金提供が今後増えていくんだろうというふうに思っております。  更に言えば、事業のいわゆる立ち上げ期におきましては、やはり一〇%というのはなかなか容易なものではないというふうに考えておりますけれども、現在におきましてもいろんな融資とか保証の制度、あるいは中小企業基盤整備機構の起業家に対するファンドの出資であるとか、あるいはエンジェル税制等々に加えまして、今回のこの法律の中におきましても、今日もお話ございましたように、地方自治体と民間支援事業者が連携して行う創業支援でありますとか、あるいは平成二十四年度の補正、これで予算を取っております女性や若者を始めとした創業者を支援する創業援助金、こういったいろんな制度を立ち上げ期等々にも準備をしておりますので、こういうものが総動員する中で、事業の立ち上げ期におきましても、ベンチャー支援、これからもしっかり取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  182. 行田邦子

    ○行田邦子君 時間になりましたけれども、私は、極端な話、認定というのをしなくてもいいんじゃないかと思っているんです。例えばですけれども、例として適切かどうか分かりませんが、政治家あるいは政治団体への個人献金というのを日本に根付かせようとするときに、所得税の税額控除があります。これは、どの政治団体に、どの政治家にといった認定なんかありません。それと同じように、ベンチャーファンドに対しても、極端な話、認定しなくてもいいんじゃないかと……
  183. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 時間が過ぎておりますので、質問をまとめてください。
  184. 行田邦子

    ○行田邦子君 というふうに思っておりますけれども、是非、せめて認定の要件というのを緩和、もっと低くできないものかというふうに考えていますが、最後に大臣、一言お願いします。
  185. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
  186. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 政府の出資は最小限にと、一方で認定について要件は緩和しろと。是非、次回は方針を決めてから質問していただけると有り難いと思います。
  187. 倉林明子

    ○倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。  いわゆる岩盤規制ということで議論にもなってまいりましたが、名指しをされています医療分野について質問したいと思います。  国民の命にかかわる分野でもありまして、様々な規制、これは多くは命を守るためということで、検証も積み重ねてつくられてきたものだというふうに思っております。大臣は、企業実証特例制度の対象分野について、特定の分野を対象外とする仕組みとは想定していないという答弁をされております。  それでは、具体的な事例について伺いたいと思います。  株式会社が新たに医療機関の経営に参入するという場合、企業実証特例制度の対象となるのかどうか。いかがでしょう。
  188. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 簡潔にお答えいたします。  特定の分野を対象外とはいたしておりません。
  189. 倉林明子

    ○倉林明子君 つまり、御紹介したように、株式会社が医療機関の経営に参入するという場合も例外ではないということで受け止めさせていただきました。  そうなりますと、厚生労働省にお聞きしたいと思います、現在の医療法では営利を目的とする株式会社の参入は認められておりません。その理由はどういうことになっているでしょうか。
  190. 高島泉

    政府参考人(高島泉君) お答えいたします。  我が国の医療制度は公的医療保険で運営しております。このため、医療提供者には患者に良質かつ適切な医療を効率的に提供することが最大の使命であると、こういうふうに考えております。一方、営利法人であります株式会社、これは利益を出しまして株主に還元することが法人としての使命であります。経営者もその責任を負っているという状況でございます。  こうした中で、営利法人である株式会社の医療への参入につきましては、利益を上げる目的で診療が行われ、適切な医療が提供されないとか、過剰な医療が行われるとか、こういった形を招き、医療費の増大を招き、その結果として公的医療保険の財政に悪影響を及ぼすおそれがあると考えられております。このため、原則として認めないということにしております。
  191. 倉林明子

    ○倉林明子君 今の規定では原則認めないということになっております。この規定ができているというのも、先ほど理由のところで御紹介もありましたが、国民が平等に医療を受ける権利をこういう側面でも支えているという大事な規制だというふうに思います。  昨今、TPPの交渉参加の議論の中で一つの焦点になっていたところでもありまして、TPPの参加ということになれば、この営利企業が医療経営に参入してくるのではないかと多くの懸念が医療関係団体からも提示されている問題なんですね。それが今度、この実証特例制度を使えば企業単位でできるようなことになっていくとなれば私は大変なことだというふうに思っております。  私、看護師を十一年間しておりまして、二人子供を育てながら三交代現場で働いてまいりました。当時、看護の現場というのは、きつい、汚い、五Kとも、化粧ののりが悪いという七Kとも言われておりました現場で、もうとにかく離職率が高かったんですね。夜勤が続けられないということが一番の理由でした。  大変な社会問題にもなりまして、一九九二年、これ、自民党政権の下で看護師確保法というものが制定されました。本当に私たちも歓迎して、ああ、やっとこういう法律で規制が掛けられていくんだろうと歓迎したものでした。そのとき、基本的な指針に盛り込まれた夜勤負担軽減、働き続けるには本当にここが大きなネックになっていたものだったわけですが、この夜勤負担の軽減等を具体的にどう定めましたでしょうか。
  192. 高島泉

    政府参考人(高島泉君) 委員御指摘のとおり、看護師等の人材確保の促進に関する法律というのが作られまして、その法律の下で看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針というものを作っております。  この中におきましては、看護師の継続勤務を促進するためには勤務する上で最も大きな負担となっております夜勤負担の軽減が必要であると、こういった認識の下に記述をしておりますが、具体的な措置としましては、入院患者の状況等に応じて複数を、これは二人以上で行う夜勤でございますが、二人夜勤以上を主として、夜勤回数は月八回以内の夜勤体制の構築に向けて積極的に努力すると、こういう必要があるということとされております。
  193. 倉林明子

    ○倉林明子君 実は看護師のところはもう長年、かごの鳥と言われるほど病院に張り付いて夜勤をやっているという状況が続いておりまして、いわゆる二・八ということがずっと目標として私も労働組合でも活動もしてきたんです。  ところが、一九六五年に既に複数、二人以上で月八日以内という夜勤の上限が示されたものの、改めて一九九二年に指針に掲げざるを得ない、現状そうなっていないというところで指針に掲げざるを得ないということになったんですね。同時に、週四十時間の労働についても推進していこうという指針が盛り込まれました。  現場の声が国民の支持も得てこういう指針につながったんですけれども、看護現場が一体あれから二十年たって今どうなっているのか。この指針が定着して守られているような実態になっているのか。いかがでしょう。
  194. 高島泉

    政府参考人(高島泉君) 夜勤の実態でございますが、いろんな調査がございますけれども、厚生労働省として把握しております最新の数値としては、日本看護協会が平成二十三年の病院看護実態調査というものをやっております。  これによりますと、常勤看護職員の月平均夜勤回数は、三交代制を取っている病棟で七・七回、二交代制を取っている病院では四・四回と、こういう数字が出ております。また、看護職員の夜勤人数でございますが、指針では複数ということで書いておりますが、二人夜勤以上の夜勤体制を取っている病棟は九九%を超えていると、こういう状況でございます。
  195. 倉林明子

    ○倉林明子君 雇用の質をどう引き上げていくのか、離職を防止してどう雇用を守っていくのかという点からも私大事な問題だと思って取り上げております。  実は、今紹介がありました二〇一一年の看護協会の調査は、一体なぜ調査されることになったかと申しますと、九二年に看護師確保法ができて指針も作られた。しかし、実態は変わらなくて、二〇〇八年に二人の若い看護師が過労死するという事案が起こりました。在職死亡が過労死と認定されたわけですけれども、この過労死をきっかけにして日本看護協会の実態調査ということに至ったわけです。  この看護協会の調査をした結果、看護協会もびっくりして、看護職の夜勤や交代制勤務に関して勤務編成の基準というものを作って、厚生労働省も五局長通知、二〇一三年にはさらに六局長通知ということで改善を求める通知も出されておりますね。  看護師の夜勤、拘束時間、労働時間、具体的な中身ということでどんな通知になっていたのか、説明してください。
  196. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  197. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 速記を起こしてください。
  198. 高島泉

    政府参考人(高島泉君) 今委員おっしゃいましたのは、厚労省でも二回にわたって雇用の質ということで調査して報告書を出しておりますが、その件でよろしいでしょうか。
  199. 倉林明子

    ○倉林明子君 どうぞ。
  200. 高島泉

    政府参考人(高島泉君) 厚生労働省では、平成二十三年に看護師等の雇用の質の向上に関する省内のプロジェクトチームの報告書というものを出しております。それから、平成二十五年には医療分野雇用の質向上プロジェクトチーム、こういうのを立ち上げまして報告書を出しております。それぞれに看護師の勤務の状況につきまして調査をし取りまとめたものでございます。  この中で、勤務の状況につきまして取りまとめておりますのは、最初の二十三年に取りまとめたものにつきましては、実態としてどうなっているかということにつきまして、病院における夜勤の体制については、三交代制、二交代制、いずれにつきましても看護師二人以上の体制を取る病棟がほとんどであるという状況を述べております。それから、夜勤の時間につきましては、二交代制においては、標準的な夜勤の時間設定が十六時間以上となっている割合が八七・七%であるという調査結果もここに記しているところでございます。  それから、次に出ました医療分野雇用の質の向上プロジェクトチーム、こちらではデータを幾つか載せておりますが、この中で載せておりますデータは、時間外の労働時間数が月平均で十六・八時間になっているという話とか、それから、これはまた、先ほどの御説明と似たような観点でございますが、月当たりの夜勤時間が二交代制で月平均四・六回、三交代制で月八・五回となっているという実態を述べております。
  201. 倉林明子

    ○倉林明子君 局長通知でも具体的に、重ねて改善を求める数字を通告では伺っていたつもりなんですけれども。  実際に複数を主として月八日以内の夜勤体制、十分なインターバルの確保、インターバルとしては看護協会の方は十一時間以上必要だと、こういう労働時間やインターバルにかかわっても重ねて考え方を示していると。要は、看護師の働き方、離職を防止するためにもそこがポイントになるということを分かって繰り返し規制するようにとそれぞれの経営体、事業所のところに指導しているんだけれども、実態はますます悪くなっている。  これが、日本医労連が夜勤の実態調査を三十年余りにわたって続けているんですね。一番最新が出ておりまして、その中身を見てみますと、十六時間拘束する夜勤、この実施割合が増えているんですね。原則八時間以内、これが労働基準法だけれども、十六時間以上働くという夜勤形態が増えていて、こういう夜勤回数が増える傾向にあるんですね。  法律、指針、通知ということで基準を呼びかけても、なし崩しに現場の実態が深刻になっているということなんですが、厚生労働省としての受け止めはいかがでしょうか。
  202. 高島泉

    政府参考人(高島泉君) 夜勤の体制につきましては、病院ごとに、二交代制、それから三交代制取るところがございます。たしかに、二交代制を取っているところにおきましては、通常の勤務と夜勤がつながりまして十数時間、非常に長い勤務体制になっておりまして、こういったものは、基本的な長時間勤務につきましては検討を加えていく必要があると思います。  しかし、もう一つ、病院の形態としては、今、二交代制とそれから三交代制を併せながら、看護職員としても、二交代制でいきますと休みの時間が長くなりますんで、休みの長い形態を望む方と、それからやはり三交代制で回すやり方を望む方と、いろんな需要がございます。各病院におきましては、そういったことを踏まえて、組み合わせて対応しているというふうに聞いております。  それから、いろいろ通知等を出しておりますけれども、なかなかやっぱり改善が進まないという御指摘を受けているところでございます。先ほど申し上げました医療の雇用の質の向上に関する報告書というのを受けて、今度、厚生労働省としても、もう一歩それを改善できるような取組をしようというふうに考えております。具体的には、来年度予算で要求をしておりますが、労使が合わさって勤務環境改善計画と、こういったものを作って、その実施に当たりまして、医療勤務環境改善支援センター、これはまだ仮称でございますけれども、こういった支援センターをつくって、個々の医療機関ごとに取組を、改善計画を作ったものについて、それをしっかり改善できるように指導していくと、こういった取組も始めることとしております。  こういった中で、その勤務状況、それぞれの、個々いろんな状況が違いますけれども、その中で最も適した勤務状況になるような取組が進められるようにこれからも推進していきたいと、こういうふうに思います。
  203. 倉林明子

    ○倉林明子君 要は、こうした指針や通知が法になっていないということで結局守られない事態が看護の現場の労働の質ということを劣化させている大きな要因だったと私は思っているんです。  そこで、先ほど、冒頭に紹介しました株式会社の医療機関への経営の参入、これは法律で今禁止されているから実際参入がされないで担保されているというんだけれども、こういうところも企業実証特例制度ということで穴が空くと広がっていくという危険があると思うんです。私はこれは広げるべきじゃない規制緩和だと。  多くの規制は、過労死、公害、国民の命と健康と、こういうことに重大な被害があってつくられてきた経過のあるものもたくさん含まれているんですね。こういうものを特例措置として認めることができれば規制緩和なんだということで乱暴に持っていくやり方というのは、私はやるべきでないと思いますが、いかがでしょうか。
  204. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 御意見としては承りました。  先ほどの厚生労働省、原則認めないという答弁であったかと思います。我々は、企業実証特例制度なんです、ちゃんと言葉が。原則認めないんですから、特例制度というのをつくるわけであります。  そして、仮に株式会社が病院の経営主体となることに関して、その制度を活用した具体的な提案があった場合には、事業の所管官庁がその内容、そして必要性、そして規制が求める安全性等の代替措置、こういったものについて検討を行い、提案が適切であれば規制所管官庁と協議、調整を行っていくと、そういうことであります。
  205. 倉林明子

    ○倉林明子君 これまでも、個別、法で規制を掛けているというものについて見直す場合は、審議会などで検討を重ねる、見直しの必要性、そして根拠、これらを明確にした上でやっぱり見直してきた。それでこそ国民の納得と理解が得られるものだと思うんですけれども、今度は国民が関与するシステムじゃないんですね。企業がこれは邪魔な規制だということでこの企業実証特例を使って突破しようと思えば、命や国民の安全、こういう分野まで特例の対象にするということなんでしょうか。私は本当にここは歯止めが必要な部分だと思います。どうでしょう。
  206. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 若干御理解が間違われていると思うんですけれども、今回の規制の特例措置、それは法律レベルのものも出てまいります。恐らく、政省令、それから通達レベルのもの、様々なものが考えられると。その検討プロセスにおいて、情報公開であったりとか透明性の確保、対象となります特例措置内容によって当然異なってまいります。パブリックコメントを行うかもしれない、審議会を行うかもしれない。  しかし、全部審議会をやっていましたらむちゃくちゃ時間が掛かる。例えば通達でも、通達について全部審議会にかけてやっているなんということになったら、いつになっても具体的な成果は上がってこない。それぞれの案件の内容について適時適切に対応してまいりたいと考えております。
  207. 倉林明子

    ○倉林明子君 国民の命や安全、これを守るための規制まで企業の利益優先というようなことで外すと、こういうことはやるべきではないと指摘をして、終わります。
  208. 中野正志

    ○中野正志君 日本維新の会の中野正志でございます。  まず、規制改革の総論として、国が考えている規制改革の考え方についてお尋ねいたしたいと思います。  いろいろ議論もありましたけれども、市場経済においては、国民生活の安全、安心を確保するためにある程度の規制は必要でありますけれども、経済活動を阻害するような規制はおおむね改めていくべきだと考えております。  安倍政権がゼロベースでエネルギー政策を見直したように、既存の様々な規制も是非ゼロベースで見直すことが、失われた二十年を取り戻すことができると、そのことにつながると思いますけれども、この産業競争力強化法案に反映されている規制改革及び規制緩和に対する政府の考え方、また更なる徹底した規制の撤廃及び緩和に対する将来の方向性について、大臣に改めてお伺いをしておきたいと思います。
  209. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) エネルギー政策のゼロベースでの見直し、これはこの国会でも電力システム改革、六十年続いてきた今までの地域独占の制度をゼロベースで見直す、こういった法改正の第一弾、これを成立をさせていただいたところであります。  様々な分野での規制の改革を今後、日本経済成長のためにも行っていきたい。規制改革会議で行っております全国レベルのもの、そしてまた国家戦略特区で行います地域単位のもの、そして、この法律の中にあります企業実証特例のように、企業単位から始めて、先端的な取組に対してそれを支援して、最終的にはそれを全国レベルに広げていくと、こういうアプローチも組み合せながら、しっかりした規制の改革、進めてまいりたいと考えております。
  210. 中野正志

    ○中野正志君 大臣には、是非、なお更に頑張っていただきたいと思います。  次に、先日、中小企業の海外展開、これについて質問をさせていただきました。その際、創業支援体制として、開業率一〇%、一万社の新規海外展開という目標を掲げておられました。また、日本再興戦略では、二〇二〇年までに黒字中小企業・小規模事業者数を倍増する、すなわち現在の七十万社から百四十万社にするという目標を掲げられておりますけれども、正直、いまだもってこの目標もかなりハードルが高いのではないだろうか、こう思っております。もちろん、大胆に、また意欲的な数値目標は大いに結構でありますけれども、絵にかいたもちに終わらせない、このことも重要であります。  そこで、改めてお尋ねしたいのでありますが、この二〇二〇年までに黒字中小企業・小規模事業者を百四十万社にする、その目標を達成するための具体的なスケジュールに沿ったマイルストーン、これをお示しをいただきたいものだと思います。
  211. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) お答えいたします。  委員御指摘のように、確かに現在、黒字中小企業、七十万社を倍増させるというのは非常にある意味では野心的な目標でございます。これを考えますと、現在の中小企業、中小法人って二百五十四万社ですから、半分以上を黒字にするということになってまいります。  歴史的に振り返りますと、平成三年度に、この平成三年度というのは大体バブル期の終わりごろだと思いますが、中小法人のおよそ半数が黒字でありました。このときのGDPの成長率は実質二・三%でした。今、安倍政権が掲げておりますのは名目三%、実質二%のGDPの成長でございますから、これをしっかりと実現させることによって底上げを図ることができると考えております。  具体的な施策、申し上げたいと思います。  平成二十四年度の補正予算、つまり今年度使われている補正予算で非常に中小企業から評判が良かったものに、ものづくり補助金というのがございます。全国一万社の中小企業を対象に合計で一千七億円、これを、ものづくり補助金というのを創設して、実際に一万五百十六社採択することなど決めている次第でございます。  実は、これを今度、来週末にも新たな五兆円規模の経済対策をまとめますが、この中で、このものづくり補助金というのを少し形を変えて、と申しますのは、これが物づくりだけですので、中小企業というのは物づくりだけではありません、サービスも商業もありますので、物づくり、そして商業、サービスにわたってその補助金という形で新しいことをやろう、チャレンジングなことをやろうという会社に対する補助金という制度に変えて、と同時に、これまでずっと指摘されてまいりましたのが、中小企業といいましても製造業は三百人以下ですから、かなり大きめの中小企業は使いやすいけれども、私の地元など五人以下の会社、工場がざらでございますから、そういうところはなかなか手を挙げにくい、そういう書類も書きにくい。ですから、別枠というような形に分けて、手を挙げてもらいやすいような、そういう制度の設計、見直しを考えております。  この補助金というサイドと、もう一つ税制面で、委員既に御承知かと思いますが、中小企業投資促進税制、これ、現在年間三万七千社が御活用いただいておりますけれども、これを更に高めてまいります。  具体的に申しますと、中小企業の生産性向上に役立つような設備については、一つのやり方として、特別償却の割合、三〇%の特別償却、三〇%をもう即時償却にするということ、そしてまた、税額控除のやり方の場合は、今までより上乗せしまして、資本金三千万円以下の小さな事業者の場合は、これまでは七%だった税額控除、これを一〇%までに、法人税のうち一割が返ってくるというシステムに、また、資本金が三千万円を超すけれども一億円以下だというそういった中小企業には七%の税額控除というのを適用することにいたします。さらに、先ほどもお話出ましたが、三十万円未満の資産を取得した場合には、少額減価償却資産の特例、これの制度の延長も考えております。  このような補助金、税制、さらには金融、いろんな支援によって、黒字企業が倍増するように、全中小企業の法人のうち半分が黒字になるようにしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
  212. 中野正志

    ○中野正志君 本当にいい意味で夢のある方針でございまして、是非実現されますように我々も共々頑張り合っていきたいなと、そんな気持ちでございます。  事業再編についてお伺いをいたします。  競争力を高める、また日本成長力を高める、この共通目的を達成する上では、生産性の向上、それからビジネスの量そのものの拡大が重要になってまいります。  失われた二十年が到来するまでの日本企業は、午前もありましたけれども、様々な分野世界をリードしてきたことは間違いありません。特に、日本の家電メーカーなどはよその国の追随を許さないほどの競争力を誇っておりましたけれども、最近ではかなり韓国勢に押されてきております。いろいろ有名なメーカーも、撤退でありますとか、この分野はもうやめたとかいろいろな情報があります。  そんな中、この法案の五十条では、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認められる場合、政府調査するという条文があります。この条文の狙いを確認しておきたいのでありますけれども、これは、政府事業の再編が国益につながると判断した場合、事業者に対して再編を働きかけるというものなのか、それとも、事業者が主体的に事業の再編を考えているときに必要の有無を判断するというものなのか、どういう趣旨でこの条文が設けられているのかを確認をさせていただきたいと思いますし、そのどちらの場合であっても、この条文を根拠に事業の再編に国が関与して積極的に再編を進めるということを想定している業界が現にあるのかどうか、その辺も併せてお伺いをいたしたいと思います。
  213. 西山圭太

    政府参考人(西山圭太君) お答えを申し上げます。  この第五十条を含めまして、この法律全体といたしまして、国の役割はあくまで事業環境の整備でありまして、再編を含めまして具体的なアクションは事業者という、こういう役割分担の思想に立っております。  その上で、この第五十条では、これまで事業再編が進みにくい過剰供給構造過当競争の問題があるような事業分野について、客観的な調査を実施した上で公表するということを定めております。これは、その事業分野に属する経営者あるいは市場関係者、金融機関等々の関係者の問題意識を喚起するとともに、事業再編に向けた経営者の具体的な判断に資する材料を提供する、すなわち事業環境の整備を行うということを目的としているものでございます。  したがいまして、この法律、この条文の趣旨といたしましては、政府が特定の事業分野やあるいは個別の具体的な企業の再編を具体的に主導したり、あるいは政府がその個別企業の考える再編の必要性を政府の側で判断するという趣旨のものではございません。  そういうこともございまして、現時点において、政府として、具体的にこの事業分野がこれに当たる、これについて現時点で調査をするというものがあるわけではございません。
  214. 中野正志

    ○中野正志君 ありがとうございます。  続いて、我が国の経済を活性化させるためには、日本という社会環境でビジネスをすることが魅力的でなければなりません。それは日本国内に限らず、海外企業にも同様に映らなければなりません。それこそが政府が緊急経済対策でも言われた、世界で一番企業が活動しやすい国を目指すということの意味だと思いますけれども、今回の法案では、外資系企業日本における活動、日本に働きに来る外国人サラリーマン労働者に対して何か特別に措置を講じられているのか、あるいはこれからこの領域も充実させていくという計画があるのか、現時点での政府の考えをお尋ねしたいと思います。
  215. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) お答えいたします。  まず第一には、これは、この法案に盛り込まれておりますグレーゾーン解消制度とか企業実証特例制度というのは内外無差別でございますから、外国勢の皆さんにも御活用をいただけます。  そして、特別に外国の方々に対しての配慮という意味におきましては、今年の九月にジェトロで新しい試みを始めました。これは、外国企業からの行政手続などの相談、外国企業方々日本企業以上に、どこの役所のどの部局へどう行ってそれを解決していけばいいか分からない方が多いですから、ジェトロが一括して相談を受け付ける。どの国の方にも、どの言語の方相手にも一括して相談を受け付けて、じゃこれだったらこの役所のこの部局だろう、これだったらこの役所のということも含めて、関係省庁との面談への同行をしたり、実際に付いていく、それから外国語サポートを行う。ここまでして、一生懸命サービスサービスというか、外国の企業方々が入ってきやすいような状況を整えてまいります。  ちなみに、対内直接投資残高、これ二〇二〇年には、これから七年後には三十五兆円になるように目標としておりまして、これは現在の倍増させるという、そういう目標値でございます。  さらに、御質問にありました、ほかにも具体的にどんなことがあるかということですが、これはこの国会で、私どもとは別のところですが、法案審議していただいております国家戦略特区の問題でございますが、これを活用して、例えばビジネス環境の整備を進める、そういったことを考えております。例えば、高度な医療技術を持っていらっしゃる外国人医師の方の受入れの促進とか、そういったことをこれは国家戦略特区というものの活用によっていろいろと取り込んでまいりたいと思っております。  委員がまさにおっしゃったように、企業世界で一番活動しやすい国を目指して、経済産業省はもとより、政府一丸となって頑張ってまいります。
  216. 中野正志

    ○中野正志君 企業活動のグローバル化、これを考えたとき、日本国内に本社を置く日本企業が社内公用語を英語にする、そういう企業もだんだんと出てまいりました。私自身は、日本文化はまさに世界に誇れるものだ、それはそう思っておるんでありますけれども、ただ、終身雇用あるいは年功序列型賃金体系、こういった日本的な経営が必ずしもグローバルスタンダードだとは言えない一面があることも否定できません。  今後、ますます日本企業のグローバル化が望まれ、まさにグローバルな考え方を身に付けていくことで日本企業競争力を再構築するということが必要だと思いますけれども、日本企業経営体質や企業人としてのマインドを変えていくというソフト面の施策、これも重要になると思いますけれども、何か具体的に検討されておられますでしょうか。
  217. 松島みどり

    ○副大臣松島みどり君) 終身雇用や年功序列というのが経営の在り方としていいのか悪いのかというのは、いろいろ考え方が、それぞれいい面も悪い面もあると思いますし、委員は私より七つ八つ御先輩でいらっしゃるんで、私どもの年代では、何か大学を卒業して、終身雇用と思って入った会社が合併したり潰れたり、多々そういうこともあるようなのでございます。  それはいずれにいたしましても、具体的なことでございますが、今年六月に政府が策定した日本再興戦略におきましては、例えば社外取締役の活用の促進、あるいは機関投資家が企業と建設的な対話を行い、適切に株主として働きかけるための原則、そういった政策を盛り込んだところでございまして、これは、その働き方について、人事の、雇用の仕組みについて企業内で考えると同時に外の目も取り入れていくという、委員の御質問の趣旨にかなうかなと、そんなふうに思っている次第でございます。  いずれにいたしましても、労働者が無用に路頭に迷うことはなく、そういう形、失業なき労働移動も含めてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
  218. 中野正志

    ○中野正志君 是非しっかりと、なお更にお願いをいたします。  午前の参考人お話で、ブラック企業云々の話も出ました。私は、親ばかでいいますと、息子は外資系企業に働いておりますけれども、朝も七時半に自宅出て、帰ってくるのは夜の一時。何でそんなに一生懸命やるのや、夢を持っているからだと、こう言うんですね。やっぱりブラック企業云々で、例えばいろいろな名前出ましたけれども、今日大学の先生もいらっしゃいましたが、事務員が必要だと。ところが、私たちの地元にある東北大の事務職がブラック企業だと書かれてあるんですね。そんなに、決して私の感覚でいうと忙しい仕事しているとは思えない。ですから、ただ単にブラック企業だ、何だかんだと言うのはやっぱり間違いでして、日本だって、あるいはお隣の韓国だって、やる気に燃えたやつは夜遅くまで私はやっぱり働くと思うんであります。  そういったいろいろな、とにかく労働文化も含めて、グローバルな企業、グローバルな文化、それでいてやっぱり日本らしさというのも、私たちも考えていかなければなりませんし、企業の人たちとそういった意味での交わりも深めながら、是非、この法案は私は個人的に賛成なんでありますけれども、いろいろ党の事情ありますけれども、何としても私は、名実共に日本のために、企業のために、また労働者のために、日本国の成長する経済のために必要だと確信はしております。頑張ってください。
  219. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 今朝の話でいうと、小規模ベンチャー企業ということになりますが、新党改革の荒井でございます。  私は、脱原発ですと、脱というのは脱衣所の脱、お風呂でいうと、脱いだら後に何を着るのかということになりますので、むしろ社会全体、生き方の問題としてとらえて、超原発社会、今の原発に依存するような、原発を代表例とするだけでございまして、こういう構造の社会から大きく転換する超原発社会ということを訴えております。  その場合に、ベース電源がないだろうということですから、今日の参考人の皆さんの意見の中にも当面は再稼働というような御意見もあったんですが、じゃその当面というものをいつまでに持つかということにいうと、ベース電源の積極的な創造というところと表裏一体だろうというふうに思っております。  そこで、今日、私が事例を出しますのは、具体的事例の方が分かりやすいので、マグネシウムを使った電池、あるいは最終的には発電、こういう考え方で政府にその芽出し、まだまだ実用化以前でございますので強力に支援してもらいたい、こういう観点で経済産業省、文部科学省、そして財務省に同席をしていただいているわけです。  マグネシウム発電ということについて経済産業省はどのように、あるいはマグネシウムの活用でも結構ですし、電池というのでも結構ですが、どういう仕組みで成り立つか、簡単にお願いします。
  220. 片瀬裕文

    政府参考人(片瀬裕文君) マグネシウム発電について御説明申し上げます。  先生御指摘のマグネシウム発電ですけれども、マグネシウムと酸素を反応させて電気を取り出す、そういういわゆるマグネシウム燃料電池という原理を用いた発電システムのことであると考えております。それが発電をする際、マグネシウム酸化物というものが生成をされるわけでございまして、これにエネルギーを加えて還元する、要するに、酸素とマグネシウムを切り離してマグネシウムを再生をするということになると、マグネシウムをエネルギー媒体とした発電サイクルといったものが構築されるというものでございます。もちろん、その還元のためにはエネルギーが必要になるわけでございますけれども、そのエネルギーを、例えば太陽光ですとか太陽熱ですとか、そういう自然エネルギーから得ることができれば、化石燃料に依存しないエネルギーシステムが形成されるわけでございます。  そういう意味では、この技術というのはその再生可能エネルギーを運搬、貯蔵するという技術一つでありまして、これが実用技術になるかどうかというのは、水素を用いた燃料電池あるいはリチウムイオン電池、そういった同様の技術との優劣関係において決まってくるものであるというふうに考えております。
  221. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 言外には、まだ水素、リチウムには及ばない、こういうところなんだろうというふうに思いますが、今ほど分かりやすい御説明をいただきましたが、実はマグネシウムから熱を取って発電、電気などを起こすと、これが劣化してきましていわゆる酸化マグネシウムというものになる。それに太陽光の光とか熱によってそれをまたマグネシウムに戻していきますので、循環型になってくるわけですね。  こういうことが非常に大きな将来を開くものだと期待、私はしているんですけれども、こういう研究について日本ではどういう大学が携わっているか。今日も午前中出たんですが、大学発のベンチャーというのもこの法律の重要なキーワードですね。どういう大学が携わっているでしょうか。
  222. 片瀬裕文

    政府参考人(片瀬裕文君) お答え申し上げます。  私どもの承知している範囲でお答えさせていただきますけれども、日本の大学では東京工業大学の矢部孝教授、それから、これは最近退職されたと承知していますが、東北大学におられた小濱泰昭教授が取り組まれているというふうに承知しております。
  223. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 私もそう承知をいたしております。  両先生が非常に頑張ってやっておられるんですが、なかなか応援団がいないんですよね。まさに午前中の伊丹先生の話、冨山参考人お話、そのとおりなんですよ。そこをやっぱり解決するというものを法律にした以上、それが入っていなけりゃこれ話にならない、こういうようなことでございますけれども、経産大臣にお尋ねしてよろしいんでしょうか。  電力危機と言われる中で、大臣も、様々なベース電源になり得るような創エネをしていこう、また循環型エネルギーの創造、それをしていこうと、こういうことで努力をされていますけれども、このベース電源になるという意味では、私はこのマグネシウム発電というのは非常に大きなコアになるだろうと、こう私も期待しておるわけで、大臣としてはどういうふうにこのマグネシウムの利用による発電等について御見識をお持ちになっているか、お聞かせください。
  224. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 毎回新しい斬新な御提案をいただきまして、本当にありがとうございます。  ベース電源という場合、基本的にはやはりこの安定性、一つは調達面、そしてもう一つは供給面、これの安定性が求められると。そして同時に、ほかの条件が同じだとしましたら、電源としては燃料費、安いものから使っていくわけであります。そういった経済性、これが基本にされるんだと思っております。  マグネシウム発電、まだ技術的にも課題も大きいわけでありまして、なかなか今の段階で実用化に至っていない。今後どうなっていくかということにつきましては分かりませんが、今の段階でベース電源と位置付けた上で研究開発を進めるということは困難かと思いますが、今も政府参考人の方からも答弁ありましたように、大学等におきまして、様々な燃料を活用した発電方法につきまして優れたシーズ、これを具体化する、こういった研究も進んでおりまして、国としても様々な支援策を使ってそういった取組を支援してまいりたいと思っております。
  225. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 宮崎県の日向市ですかね、ここで小濱先生、東北大学が研究しているというので行ってまいりましたら、与党の竹谷とし子議員、それから松下新平議員が既に熱心に取り組んでおられました。  小濱先生は、燃料をつくる時代に入ったんだということを非常に言っておられるんですね。そして、そのマグネシウムは、実はマグネシウム燃料と言ってもいいんですが、これはほとんど石炭、石油に、いわゆる反応熱という意味では若干劣りますけれども、そう遜色がないんです。ということは、現在の石炭あるいは石油に代わる、化石燃料に代わる循環型のエネルギーになり得ると、こういう位置付けを非常にしていらっしゃるんですよ。  ですから、そこに対してなかなか周りのいわゆる協力体制、それは経営という意味もそうでしたし、人材ということが今日は随分言われましたが、そういう意味も含めて、なかなか資金、これは当然でありますが、これが付いてこないんです。こういう議論をやっぱりどんどんして、そういったところの可能性というものにやっぱりみんなで実現するように支援するということが本当に必要だと思って私は考えているんです。  ちなみに、それを言う背景には、いわゆるマグネシウムの作り方というのは、製錬という言葉を使うんだそうですけれども、先ほど言いましたように、元に戻すという意味では、酸化マグネシウムはMgOをMg、マグネシウムに戻すということでは何をやっているかというと、石炭でがあっと熱を加えて製錬しているんです、最後はですね、最後は。そういうやり方が一つあるんです。これを熱還元法と言うんだそうですが、もう一つは、海水とか砂漠に無限にマグネシウムありますから、そこからマグネシウムを取り出すんですが、これを電解法と言うんだそうですが、この熱還元法をやっているのは、石炭で熱を与えてマグネシウムにしていきますから、最後に地金にしていきます。どこか。最大のマグネシウム保有国は中国です。そして、電解型で一番持っているところはロシアです。もう既にこの分野においても、マグネシウムといういわゆるこの燃料というものをどのように人工的に作っていくかということは、まさに国家の安全保障です。  こういう位置付けを基に、大臣に改めて聞きますが、いわゆる今度の競争法というんでしょうか、強化法というんですか、これもそういうところもターゲットに置きながらの競争というのを促進していくんだと思うんですが、これら、今日は分かりやすくマグネシウム発電についてこうやってお話ししていますが、このマグネシウム発電、今二つの大学がやっているということですが、この競争法の中で、強化法の中で、そのスキームにこれらも対象になり得るということで、大臣、よろしいんでしょうか。
  226. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) マグネシウムが化学記号でMgだということをようやく思い出したところでありますけれど。  今回、産業競争力強化法では新しいビジネス、成長分野、こういったものを、民間主導でありながらも、国が様々な形でそういったものが生まれる環境整備をしていきたいと考えております。そして、様々な制度であったりとか税制上の措置につきましては、基本的に、この分野は対象にするけれどこの分野は対象にしない、そういった枠は設けずに、様々な民間からの提案、そういったものを取り上げてまいりたいと考えております。
  227. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 是非、今日の午前中も、法律は運用が命であるとも言って、参考人の皆さんもいらっしゃいました。どうぞ、そういう姿勢で臨んでいただきたいんです。  そうなりますと、実質として、文科省にお尋ねします。  文科省もこの十九条から二十二条ぐらいのところに、二十二条かな、でありますけれども、二十条か二十二条、ちょっとうろ覚えで済みません、法律の。つまり、大学発のベンチャーに対して支援をしていくという新しいスキームを作られたはずです。これがこの強化法の一つの私は大きなコアだと思うんですね。こうした取組、この二つの大学の取組はそういう対象になり得るということでよろしいですね。
  228. 常盤豊

    政府参考人(常盤豊君) お答え申し上げます。  今回の法案におきましては、国立大学法人等がその研究成果を活用する大学発ベンチャー等を支援する事業を行う会社等のうち、一定の要件を満たすものに対して出資等を行うことを可能とするという措置を盛り込んでいるところでございます。具体的な支援対象につきましては、国立大学から技術の評価に関する情報提供を受けつつベンチャー支援会社等が市場性や事業計画について審査を行いまして、その専門性を生かした判断に基づいて決定することとなります。  このような前提の下で、一般論となりますが、国立大学における優れた研究成果を用いて設立された大学発ベンチャーについては、支援の対象となり得るものと考えております。
  229. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 最近はターゲットポリシーというようなことも言いますが、これだけの原発で人も経済もダメージを受けているんですから、この苦境をばねにして今までとは違ったステージに上がっていくという意味では、エネルギーの創造というのが一番だと思うんですね。電力制約というのを解き放っていくと。  そういう意味において、今ほどお話がありましたが、いわゆる認定特定研究成果活用支援事業者というのを、大学がそこに出資をして、その長たらしいのが政府らしくて非常にいいんですが、民間だったらもっと違うことを言うんだと思いますが、このいわゆる目利きをしながらファンディングしていく。そういうところが大学の、いわゆるベンチャーに出資やらアドバイスあるいはシーズの提供などをしていくということになってくるんだと思うんですね。  そういう意味で、この研究というのはそういうものになり得るということですから、やっぱりそういう新しいシーズを研究している人たちはたくさんいるんですよ、そういう人たちに是非活用してもらいたいと思うんですが、問題は、今までもうちまちまとやっていたわけですよ。金額的に一千何百億というので、があんとやるということだから、これはもう大臣も安倍総理も随分踏み込んだなと思って私は評価しているんですが、ちまちまやっていたらもうどうしようもない。ですから、その点評価を申し上げまして、このそれぞれの、マグネシウム電池の今日は事例を申し上げましたけれども、そういったことが、シーズが実現化するようにしていきたいと思うんです。  ちなみに、この場合の問題は、低コスト化なんですね、戻す場合の、還元するの。そこに競い合いなんです。ですから、複雑系代表選手でありますし、私から言うと、こういうのは非常に難しいので難解系というふうに私は呼んだらいいのかなというふうに思っていますが、これを、後になってみたら、何だそうかと、こういうことかもしれませんけれども、何げなくこなして、ああ、再生可能エネルギーになっているんだと、こういうことが本当のスマートだろうというふうに思います。  そこで、財務省にわざわざ来ていただいたんですが、随分今回は踏み込んでいただきましたけれども、まだまだこの電力危機の中で様々なシーズがあるんです。そういうものを目利きをして、それを育てていく。例えばこの場合ですと、戻すときの熱を、石炭などを燃やしてやるんじゃなくて太陽光とか太陽熱というやり方で今競っているんですけど、そういうものを開発していくというのがなかなか難しいんですね、その前後も含めて。実用炉それから商業炉、そういった、炉という言葉を使っているようですけれども、そういう段階に行くまで息の長い支援をしなくちゃいけないんです。ですから、このファンドもかなり長い間支援はすると聞いておりますが、財務省が途中で打ち切ったらどうしようもならないんですね。  そこで、理解があると思う財務省でございますが、こうしたシーズを一生懸命やっている、今回はマグネシウム発電の例を取りましたけれども、こうしたベース電源創造の取組を評価し支援する理解を持っていただいていると思いますけれども、改めて積極的に支援していくという御見解をいただきたく、質問いたします。
  230. 岡本薫明

    政府参考人(岡本薫明君) お答えを申し上げます。  財務省といたしましても、今後のエネルギー政策を考える上で電源構成の在り方ということが非常に重要な課題であるということは十分な認識を持っておりますし、そのために様々な研究開発関係の財政支援につきましても関係省庁とよく相談の上、講じているところでございます。  一方で、またどういった分野にどのようにやっていくかということにつきましては、関係省庁におきまして分野ごとのポテンシャル、コストを整理、勘案して優先順位を明確化していただくということも必要であると考えておりまして、また今後、関係省庁とそのような検討が行われて、要求を受けました段階ではまたそれを十分精査させていただきまして、適切に対応してまいりたいと考えております。
  231. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 財務省の理解もあるようですから、どうぞ大臣、安全保障上も今のような形で、外に取りに行くんじゃなくて自らつくるという意味でも獲得競争です。御検討を祈ります。お願いいたします。
  232. 茂木敏充

    ○国務大臣(茂木敏充君) 御提案ありがとうございます。エネルギー政策につきましてバックアップをしていただいていることは心から感謝を申し上げます。  今、中小企業予算に関しまして財政当局に働きかけを行っているところでありまして、更によろしくお願いできればと思っております。
  233. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 終わります。
  234. 大久保勉

    委員長大久保勉君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会