○長島昭久君
民主党の長島昭久です。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました、
自由民主党、
日本維新の会、
公明党、みんなの党四党
提出の
特定秘密の
保護に関する
法律案に対する
修正案に対し、
反対の
立場から
討論を行います。(
拍手)
冒頭に、
与党側の
修正協議担当者に改めて感謝を申し上げたいと
思います。
筆頭理事の中谷
先生、岩屋
先生、今津
先生、そして
公明党の大口
先生、上田
先生、この一週間余、私
たちの対案と真摯に向き合っていただきました。議会人として、その誠意ある姿勢に深く敬意を表するものであります。
あと二、三週間あれば、あるいは合意にこぎつけることができたかもしれません。まことに残念であります。
質疑を打ち切り、この
修正協議を頓挫させたのは、ひとえに、事を性急に運ぼうとする
政府の強引な姿勢にあるのです。
福島における
地方公聴会で
慎重審議を求められた翌日の
強行採決であります。しかも、共同
修正提出政党が欠席をしている。前代未聞であります。こんな異常な環境で、ここまで重要な
法案を強行するとは、まさしく、
立法府軽視も甚だしい。満腔の怒りを持って抗議を申し上げたいと
思います。
私は、十年前、初めて国政に送っていただいて以来、外交、安全保障に
与党も野党もない、あるのは国益のみ、その
政治信念に基づき、
国家安全保障問題に真剣に取り組んでまいりました。
したがいまして、さきに本院で
審議された
国家安全保障会議設置法をめぐっても、
日本版NSCがより
機能するよう、
修正案を提起し、
与党との合意を得るために汗をかかせていただきました。
NSCを創設し、
我が国のインテリジェンスを
強化していく。インテリジェンスを
強化するためにも、必要最小限の秘密を漏えいから防ぐ法
制度を整備することは当然であります。
したがいまして、決して、
平成の治安維持法などという極論を振りかざすつもりはありません。
主権
国家である以上、
国家の存立と
国民の安全を保障するため、一定の
情報を秘密にすること、そして一定期間秘匿しておくことの必要性は、十分
理解しております。実際、そういった認識に基づいて、
民主党政権下で秘密
保護法制の立法作業に着手したことも事実であります。
しかし、私は、今回
提出された
政府原案を見たとき、残念ながら、私
たちが策定しようとした秘密
保護法制とは根本的に考え方が異なると感じました。
基本的な
制度の設計
思想が異なるのです。
民主党の対案のポイントは、ことし六月に公表された
国家安全保障と
情報への権利に関する国際原則、いわゆるツワネ原則に沿ったものであります。
それは、公開の規制
対象を限定する、秘密指定の期限や公開請求手続を定める、全ての
情報にアクセスできる独立監視機関を置く、メディアなど非公務員は処罰の
対象外とする等、五十項目にわたる原則を列挙しています。これが、秘密
保護法制の国際スタンダードであります。
本
法案担当の森大臣は、このツワネ原則を読んだこともないと答弁し、失笑を買いましたが、私
たちは、こういった国際スタンダードを踏まえ、米国初め各国の
制度を研究し、今
国会の
審議を通じて詳細な論点整理を行いながら、
国民の皆さんの声にも耳を傾け、
民主党として対案を取りまとめ、
国会に
提出したのが、先週の火曜日であります。
提出が遅いという声が聞かれますが、たかだか十日余りの
国会審議で強引に
採決しようという方が拙速なのではないでしょうか。
世論
調査を見ても、明らかに、
国民は慎重な
審議を求めています。私
たちは、大半の
国民が納得できるような法
制度をつくろうと提案しているにすぎないのです。
私
たちは、条件反射的に
反対を叫んでいるわけではありません。安手の引き延ばし戦術を弄しようとも思っていません。
議論の大前提として、
行政の
情報は主権者たる
国民のものであるという、
民主主義の根幹にかかわる認識を、いま一度強調せねばなりません。
だからこそ、私
たちは、
情報公開法と
公文書管理法の
改正案も、あわせて提案させていただきました。
修正協議に臨んだ
与党の交渉担当者の皆さんは、
情報公開
制度の拡充や公文書管理の重要性を認めつつ、それら
改正案を検討するには時間がなさ過ぎると慨嘆されました。これは、時間をかければ、この
法案でも折り合える可能性があるということでしょうか。
一方で秘密
保護法案に関する
審議時間は十分だと言い、他方で
情報公開や公文書管理について検討するには時間が不十分と言うのは、明らかに自己矛盾しているのではないでしょうか。
民主主義社会においては、
情報公開と秘密
保護という二つの公益のいずれも重要なのです。時間をかけて、その二つの重大な公益を満たす一致点を見出すというのが筋だと考えます。
その筋を踏み外して、小手先の
修正で妥協してしまったみんなの党の執行部には、失望を禁じ得ません。
行政機関の長の長たる
内閣総理大臣が
第三者機関とは、笑止千万であります。
みんなの党の中にも、
日本維新の会の中にも、
慎重審議を求める議員が数多くおられたと仄聞いたします。
議場の同僚議員の皆さん、
国家存立のための秘密の
保護と、
情報公開や
国民の知る権利とのバランスに最大限配慮した私
たちの
民主党案について、虚心坦懐にもう一度検討していただきたいと
思います。その上で、最終的な投票態度を決めていただきたい。
民主党案は、
国民の不安や懸念に十分応えるものとなっていると自負しております。したがって、心ある
与党議員からも、有識者やマスメディアからも、一定の
評価をいただいております。
他方、
政府原案は
もとより、四党
修正案でも、依然として、本質的な問題は何ら解決されておりません。
以下、本質的な相違点につき、ポイントを絞って
説明させていただきます。
第一に、
修正案においても、指定される秘密の基準や範囲は、依然として広範で曖昧であり、その他という文言も数多く残されたままで、拡大解釈の懸念は拭えません。
国連人権高等弁務官事務所は、二十二日、言論の自由を担当する二人の特別
報告者が、
日本の
特定秘密保護法案に重大な懸念を表明したと報道されております。
これに対し、
民主党案では、その他という曖昧な文言を極力排し、防衛秘密、特別防衛秘密は現行
制度のままとし、外交と国際テロリズムに関して
外国の
政府または国際機関との
情報を共有する上で必要かつ不可欠な
情報に限定して、秘密の範囲を絞り込みました。
また、違法や
行政の瑕疵を隠蔽するなど、
政府の秘密指定を禁ずる項目も追加をいたしました。
第二は、秘密の指定や運用について、
政府を監視する
第三者機関についてであります。
政府原案では、有識者の
意見は聞くが、あくまで
政府が運用基準を定め、
行政機関の長が秘密指定することになっていました。
修正案では、附則に、秘密の指定や解除の基準等を検証し、監察できる新たな機関の検討が書き込まれましたが、いつまでに、どのように検討するのか、設置されるまでどうするのか、本当に設置されるのか、全く保証の限りではありません。
これでは、実際に
行政が決めた秘密が適正に運用管理されているのか、
国民の側から客観的に確認する方法がないままに、見切り発車することになりかねません。
民主党は、独立
行政委員会である
情報適正管理
委員会を設置して、
政府が秘密を適正に管理するよう監視するために、秘密の指定や解除、秘密を扱う公務員等の適格性確認など、運用の基準の決定、
調査、勧告、苦情の申し出への対応、
国会への
報告など、その任務と
権限を具体的に
規定した
法律案を
提出させていただきました。
秘密を取り扱う公務員等が不当な秘密指定の存在を知った場合、
委員会に通報する義務も定めています。さらに、この
委員会の独立性を担保するために、
委員は
国会が指名することとなっています。
第三のポイントは、
国会の関与であります。
四党
修正案では、
民主党の提案を受け入れて、
国会への
情報提供を義務
規定とし、
保護措置についても、
政府原案では、政令で定めるとなっていたものを、
国会で定めると改めたことは、
評価に値します。
しかし、依然として、
国会への
情報提供について、最終的には
行政の裁量に委ねられる余地を残しています。
これに対し、私
たち民主党案は、
国会法百四条の
改正案を
提出し、
行政情報の提供を求めるために
国会がどういう
措置をとるべきかを明記し、最終的な判断を、
行政の裁量ではなく、あくまでも
国会の自律権に委ねています。
この点は、恐らく、伊吹
議長にも十分御
評価いただけるのではないかと考えております。
第四に、処罰についてであります。
政府原案では、秘密を扱う公務員等による
情報漏えいとともに、
情報を取得しようとする者に対しても厳しい罰則を科しています。
修正案では、二十四条をスパイなどの
目的に絞りました。しかし、二十五条では、
情報漏えいを共謀し、教唆し、または扇動しただけで処罰の
対象となり、二十四条のスパイ
目的でも、秘密の管理を害する行為、これは未遂の場合までも処罰されるおそれを残しています。
このことにより、取材や報道活動が萎縮したり、公務員側が厳しい処罰を恐れて
情報提供しなくなれば、
国民の知る権利が侵されることになりかねません。
民主党案では、秘密の取扱者への処罰は懲役五年以下とし、また、不正取得への新たな罰則も全文削除し、処罰の範囲も現行の
国家公務員法の
規定の範囲内とし、
国民の知る権利と報道の自由に最大限配慮しています。
以上、申し述べた
理由により、
民主党は四党
修正案に
反対であります。
最後に、今や巨大化した
政府・
与党には、一段と謙虚な議会運営に努めることを改めて求めたいと
思います。
衆議院での
審議や
民主党案をめぐる
修正協議を踏まえて、ぜひ、参議院においても、改めて熟議を重ね、さらなる
法案修正に向け努力されんことを求め、私の
討論といたします。
ありがとうございました。(
拍手)