○長
妻昭君 民主党の長
妻昭です。
私は、民主党・
無所属クラブを代表し、ただいま
議題となりました、いわゆる
社会保障制度改革プログラム法案について
質問をいたします。(
拍手)
この
法案は、当初の
趣旨とは全くかけ離れてしまいました。
そもそも、この
プログラム法案は、
社会保障制度改革推進法という、特に
年金と
高齢者医療の
制度改革を
推進することを大きな目的とした
法律に基づいています。
推進法には、
法制上の
措置を一年以内にするとの
規定がありますが、それは、
年金制度や
高齢者医療制度の
改革を
法律としてまとめるように定めたものであります。
ところが、この
プログラム法案には、
年金制度改革も
高齢者医療制度改革も入っていません。
医療、
介護に関する個別
法案の方針と
提出スケジュールなどが
規定されているばかりです。
推進法に基づいて
設置された
社会保障国民会議の場でも、
年金制度そのものの
改革が話し合われる場面は、全体のほんの一部しかありませんでした。
私たちは、
年金一元化、最低
保障年金という抜本
改革案をそのままのまなければだめだと言っているのではありません。
昨年、自民党は、
推進法
原案にあった、現行
制度を基本としてという条文の削除を民主党と合意して、
年金制度改革に踏み込みました。我々の案がだめだというのであれば、
政府・自民党の
制度改革案を示してほしいと言っているのです。
お伺いしますが、本当に、今の
年金制度や
高齢者医療制度を変えなくても将来も役割を果たせるとお考えですか。お答えください。
例えば
年金制度です。
日本では、会社で働いているのに厚生
年金に入ることのできない人が非常に多過ぎます。現行の
年金制度は、先進国では考えられないほど漏れの多い
制度です。
厚労省の調査では、会社で働いているものの、ルール上加入できないなどの理由で、厚生
年金に入れずに
国民年金に加入せざるを得ない人が、主婦を除く
国民年金一号被
保険者だけで六百万人近くいることが示されました。この中の学生アルバイトを除くと何人になるのか、お示しください。
また、
法律上、厚生
年金に加入させなければならないにもかかわらず、加入できない人が推計三百五十万人もいることが、さきの予算
委員会で初めて示されました。非常に大きな人数です。これらの対策をお示しください。
厚労省は、実際に、全体で、どれだけの人が会社で働いているのに厚生
年金に入っていないのか、人数も理由もわからないと繰り返していますが、理由のいかんを問わず、会社で働いているのに厚生
年金に加入していない人をサンプル調査して、その原因と属性の全体像を把握すべきと考えますが、いかがですか。
現在、
国民年金は、自営業の
割合が、家族従事者も含め、二割まで落ち込んでおります。
国民年金の未納は、自営業者よりも、会社で働いているのに厚生
年金に加入できない
国民年金被
保険者に多く見られます。低所得の、資産もない非正規雇用者等が、自営業のための
国民年金に加入せざるを得なくなり、
国民年金が、いわば不安定雇用
年金となっております。現在でも、
国民年金受給者の三四%もの人が、月額四万円未満の受給額です。
このまま放置すると、将来、低
年金・無
年金者が急増して、
生活保護にどっと流れ込むことになりかねません。今でも、
生活保護受給者半分が六十歳以上で、その
割合は
拡大をしております。
民主党の
年金改革案がだめだというのであれば、
政府・与党はこれらの問題をどう解決するのか、ぜひ、
制度の
改革案を
提出願いたい。いかがですか。
適用
拡大を数年かけて数十万人ずつ進めるというような焼け石に水の
修正案では、解決できません。
また、基礎
年金の半分には毎年十兆円もの税金の補助が入っていますが、高額
所得者には、この部分について、圧縮をお願いする必要があると考えます。
民主党は、昨年、高額収入者には徐々に基礎
年金の税金部分を削減する
法案を
提出しましたが、自民党の反対で、成立には至りませんでした。
政府・与党は、このような
考え方も否定するのですか。
現在の
年金制度の受給者を受給額の多い順に十分類した場合、最大と最小の受給額格差は七倍もあります。
保険料は支払った分に比例して給付に回す、税金は格差是正に使う、このような
保険料と税との役割分担が必要と考えますが、いかがですか。
世界の
年金改革の流れは、三つのポイントがあります。
一つは、職業によって変わらない
制度、二つ目は、最低
保障機能がある
制度、三つ目は、低賃金の人も
保険料を払いやすい
制度と持続
可能性です。これに少しでも近づく
改革案を御提示いただきたい。いかがですか。
昨年の三
党合意のときとはがらりと異なり、消費増税に関連して、公共事業の大幅な増額や法人税の復興増税打ち切りの
議論など、大盤振る舞いが目立ちます。民主党政権で設定した年間の国の借金の上限枠も撤廃をされてしまいました。
そもそも、
消費税を一〇%に上げるという厳しいお願いをした理由は、
社会保障の
充実と、借金の返済を進めて孫子にツケをこれ以上ふやさないためでした。公共事業に使うためではありません。
本当に
社会保障は約束どおり
充実できるのでしょうか。幾らを
充実に回すのでしょうか。また、二年後の基礎的収支の赤字半減、二〇二〇年の基礎的収支黒字化という借金返済の目標は、約束どおり
達成できるのでしょうか。大きな不信感を持っております。いかがですか。
達成する道筋をお示しください。
この
プログラム法は、
消費税一〇パーを前提とし、一部を
社会保障の
充実に充てるとしています。しかし、
充実の目玉である、
社会保障の自己
負担全体を合算して一定額で頭打ちにする総合合算
制度が、この
プログラム法からすっぽり抜け落ちております。いつから
実施するのですか。
仮に
消費税一〇パーが先送りされた場合、
社会保障の削減と
充実がセットのはずですが、削減だけが先行し、
充実が先送りされるということが起こり得るのでしょうか。
二つの
保障、安全
保障と
社会保障は、国家の礎です。安倍
内閣は、安全
保障に比べ、
社会保障を軽視しているようですが、
社会保障や人への投資である格差是正策は、決して経済成長のお荷物ではなく、むしろ、結果として経済成長の基盤をつくるものです。
確かに、
社会保障は、国の税金だけで年間一兆円ずつ増加しており、野方図に伸ばすわけにはまいりません。しかし、
社会保障を乱暴に切ると、かえってツケが国の財政に回ってまいります。
一例を挙げます。
介護の要
支援の
方々を
介護保険の枠外にし、受け皿のないままに地方移管するなど、乱暴な削減が、
プログラム法からかいま見えます。
しかし、民主党の強い要請で
政府が初めて明らかにしたように、
介護保険全体で、八割もの方が、一次判定で、軽いものも含めて、認知症となっております。要
支援と言われる分類の方も、半分が認知症でした。
介護保険サービスを受けている人のうち、要
支援者は、二割、九十万人もいらっしゃいます。乱暴に
介護を切ると、
予防効果が薄れ、かえって重い
介護度に進んでしまいかねません。
介護するために職をやめざるを得ない
介護離職は、現在、年間十万人もおり、年々増加の傾向にあります。
団塊の
世代全員が七十五歳以上になる二〇二五年に向かって、
介護離職が急増しかねません。
例えば、大手商社丸紅の社内アンケートによると、二〇一一年時点で、四十代、五十代で
介護をしている社員が一一%、しかし、二〇一六年には八四%もの人が
介護をする
可能性があると回答しております。
現在、働きながら
介護をしているのは二百九十一万人で、
介護をしている人五百五十七万人の半分以上が職を持っております。
介護を乱暴に切って、第一線で働く人の
介護離職がふえれば、短期的に
介護財政は助かっても、
安倍総理のおっしゃる成長戦略には大きなマイナスです。いかがお考えですか。
負担増をお願いする際にも、丁寧な
議論と手法が必要です。
余裕のある人がそうでない人を支える、この
考え方は、現役だけで
高齢者を支え切れない今、必要です。
しかし、本当に余裕のある人は誰なのか、この深い
議論が
政府に欠けています。単純に収入や資産だけで判断するのではなく、その人が持ち家か賃貸か、扶養者はいるかどうか、本人の健康状態など、幾つかの条件を勘案する必要があるのではないでしょうか。いかがお考えですか。
また、
国民負担率を乱暴に抑えると、かえって
国民全体の
負担は上がってしまうという事実にも目配りをするべきであります。
国民負担率は、税と
保険料の
国民所得に対する
割合であり、これを乱暴に抑えれば、かえって窓口
負担や自己
負担、家族の
負担等の全体の
国民負担が増加して、格差が
拡大しかねません。どうお考えですか。お答えください。
そもそも、
日本のような
国民負担率という概念は、海外では一般的ではありません。
社会保障給付費に自己
負担が入っていないというのも、
国民に誤解を与えます。
政府は、
社会保障削減方針に関しては、どの指標を目標としているのですか。かつては、財政赤字を含む潜在的
国民負担率を五〇パーを超えないとしていましたが、今後、給付費のGDP比を抑えようとしているのか、
国民負担率を抑えようとしているのか、どのような指標に基づく
基本方針を持っているのですか。
お尋ねします。
本来は、自己
負担や家族の
負担、
介護離職、育児のための離職であるM字カーブ問題なども含めた、金に換算できない、
国民全体の
負担率を考えるべきではないでしょうか。いかがですか。
日本が弱い
分野で、最も力を入れなければならないのが、
医療、
介護の
予防です。
予防を徹底させれば、
社会保障全体の供給量が抑制され、
国民の本当の
負担も抑えられます。特に、田村厚労大臣が立案した、
医療、
介護の
予防による二〇二五年五兆円削減プランの中身と意気込みをお聞かせください。
最後に、今、深刻なのは、格差の
拡大だと考えます。
世界の格差・貧困問題がテロの温床を広げ、
日本の格差・貧困問題が、
社会を不
安定化して、経済成長の基盤も損ないつつあると考えております。
格差を示すジニ係数も悪化し、相対的貧困率は、先進国で、米国に次いで二番目に高くなりました。
特に、子供の格差が深刻です。現在
生活保護を受ける子供四人に一人が、大人になっても
生活保護から抜けられません。新しい貧困層とでもいうべき階層ができつつあります。
親の年収による学歴格差についても、年収四百万円以下では、大学進学三割、年収一千万円以上であれば、大学進学六割です。非正規雇用者も二千万人となり、正社員との結婚格差も二・五倍まで広がりました。
我々は、格差が小さく、全ての人に居場所と出番のある
社会、ともに生きる
社会を目指していますが、今の
政府はどのような
社会を目指しているのか、明確ではありません。特に、
日本の格差の深刻さについては、どのような認識をお持ちですか。
地縁、血縁、社縁が薄れ、孤立化が進む今、
地域になじみのある中学校の学区ごとに、
医療、
介護、保育、教育、町会、ボランティアなどが
連携して、見守りのネットワーク、つまり、新しい地縁を下から目線でつくる必要があると考えます。現在の
地域包括ケアを拡充する概念です。いかがお考えですか。
デフレ脱却は最重要
課題であることは間違いありませんが、安倍
内閣は、バブルを生み出す超金融緩和、短期的利益志向、雇用の規制緩和など、アメリカ型資本主義をまっしぐらになぞっているように見えます。
意図したか意図せざるかは別にして、
内閣支持率が株価と連動した
内閣となり、株価維持を重視する
安倍総理は、証券会社の部長のようなマインドになっているのではないでしょうか。
日本が目指す
日本型資本主義は、バブルや格差を
拡大させるアメリカ型というよりも、GDPにあらわれない価値を重視し、長期的利益や安定雇用を目指すヨーロッパ型資本主義を参考にするべきではないでしょうか。
バブルを起こさない成長を志向し、所得再分配や
安心提供による消費
拡大を狙う、ボトムアップ型の経済再生を目指すべきです。
日本は、死ぬときに一番貯金を持っている国で、老後の不安が消費を抑制しております。また、所得再分配政策が消費を喚起するのは、低
所得者ほど所得を消費に回す、限界消費性向が高いからです。
政府・与党は、
安倍総理が目指す、
世界一企業が活躍しやすい国、その先にある、
高齢者人口が最大になる三十年後を見据えた
社会像をお示し願いたい。三十年後に向けて、
政府はどんな
社会を目指すのですか。お答えください。
それぞれの政党が、あるべき
社会像を提言、
議論し、競い合うことが、国益にかなうことだと考えます。我々民主党は、その
議論をリードして、目指すべき
社会像、少子
高齢社会に
対応する
日本モデルを
確立すべく取り組んでまいります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣田村憲久君
登壇〕