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2013-11-15 第185回国会 衆議院 法務委員会 第7号
公式Web版
会議録情報
0
平成
二十五年十一月十五日(金曜日) 午前十時
開議
出席委員
委員長
江崎
鐵磨
君
理事
大塚 拓君
理事
土屋
正
忠君
理事
ふくだ峰之君
理事
盛山 正仁君
理事
吉野 正芳君
理事
階 猛君
理事
西田 譲君
理事
遠山 清彦君 安藤 裕君
井野
俊郎
君 小田原 潔君 大見 正君 門 博文君 神山 佐市君 菅家 一郎君
黄川田仁志
君 小島 敏文君 古賀 篤君 今野 智博君 末吉 光徳君
橋本
岳君 鳩山 邦夫君
平口
洋君 三
ッ林裕巳
君
宮崎
政久
君 宮澤 博行君 郡 和子君 横路 孝弘君
鷲尾英一郎
君 高橋 みほ君 林原 由佳君
濱村
進君 椎名 毅君 鈴木 貴子君 …………………………………
法務大臣
谷垣
禎一君
法務
副
大臣
奥野
信亮
君
農林水産
副
大臣
江藤 拓君
法務大臣政務官
平口
洋君
政府参考人
(
法務省
大臣
官房訟務総括
審議官
)
都築
政則
君
政府参考人
(
法務省民事局長
)
深山
卓也
君
法務委員会専門員
矢部 明宏君
—————————————
委員
の異動 十一月十五日
辞任
補欠選任
池田
道孝
君
井野
俊郎
君
橋本
岳君
宮崎
政久
君
田嶋
要君
鷲尾英一郎
君
大口
善徳
君
濱村
進君 同日
辞任
補欠選任
井野
俊郎
君
池田
道孝
君
宮崎
政久
君
橋本
岳君
鷲尾英一郎
君
田嶋
要君
濱村
進君
大口
善徳
君
—————————————
本日の
会議
に付した
案件
政府参考人出頭要求
に関する件
民法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第二〇号) ————◇—————
江崎鐵磨
1
○
江崎委員長
これより
会議
に入ります。
内閣提出
、
民法
の一部を
改正
する
法律案
を議題といたします。 この際、お諮りいたします。
本案審査
のため、本日、
政府参考人
として
法務省
大臣
官房訟務総括
審議官都築政則
君及び
法務省民事局長深山卓也
君の
出席
を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
江崎鐵磨
2
○
江崎委員長
異議
なしと認め、そのように決しました。
—————————————
江崎鐵磨
3
○
江崎委員長
これより
質疑
に入ります。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。初めに、
土屋正忠君
。
土屋正忠
4
○
土屋
(正)
委員
きょうは、
内閣提出
の
民法改正
の
法案
でございますが、この
法案
のもととなるべきは、
平成
二十五年九月四日、
最高裁
大
法廷
における
違憲判決
がもとになっているわけでありますので、この
法案そのもの
は、たった一条の、至って簡潔なものでございますが、この
背景
にある
最高裁判決
についての評価をしながら
質問
をいたしたいと
思い
ます。 とはいえ、
大臣
のお
立場
は、
法務行政
の
責任者
としてのお
立場
でありますから、
最高裁
の大
法廷
が下した
判決
について、恐らく御発言をするのはなかなか難しいお
立場
だと
思い
ますので、どうしても、
質問
は長く、お答えは短くなるのかなと思っている次第でございます。いや、どしどしお答えいただけるのならどしどし
質問
をするんですが、そこで、しばらく私がしゃべるのが長くなるのをお許しいただきたいと
思い
ます。 まず
最初
に、
民事局長
に
質問
をさせていただきます。 今回の
判決
の中に、いわゆる
嫡出子
と非
嫡出子
の
区別
がなされているわけでございますが、非
嫡出子
は、事実婚の
子供
と、それから
法律婚
をなした人物が、男性が他の
女性
との
関係
においてなした、いわゆる世の中的に言うと不倫の子、
裁判
の用語的に言うと
不貞
の子、こういう
二つ
の分類があって、その両方を指していると理解していいのかどうか、
法律
上の
見解
をお尋ねいたしたいと存じます。
深山卓也
5
○
深山政府参考人
今の
委員
の御指摘のとおり、どちらも
嫡出
でない子に当たります。
土屋正忠
6
○
土屋
(正)
委員
よく考えてみますと、いわゆる信念を持って
法律
上の届け出をしない事実婚といわゆる
不貞
の子という二種類に分かれるわけでありますが、事実婚だけで、ずっと、
婚姻届
は出していないけれども、お互いに誠実に、
一夫一婦制
を守って生涯を終える、こういう人には今回の
判決
は全く意味がないわけですよね、それ以外に
子供
がいないわけですから。だから、今回の
判決
並びに
民法改正
によって、いわゆる具体的な
利益
を受けるのは、
不貞
の
子供
、こういうことが
利益
を受けるということになるんだろうと
思い
ます。 実は、このことが
国民
にさまざまな
影響
を与え、これから
議論
が進めば進むほど、
国民
の間にさまざまな
議論
が出てくるんだろうと
思い
ます。
谷垣法務大臣
に対する
質問
でございますが、九月の四日の
判決
以来、町でこの種の話題がよく出ます。そして、
女性
の
皆さん方
に、もちろん
統計
をとったわけじゃなし、メモをとったわけではないですが、押しなべて一般の
国民
に聞いてみますと、こういう
感想
があります、典型的な
感想
は。 これは
法律婚
の
女性
ですが、私が頑張ってきたのは一体何だったのよという
意見
が圧倒的であります。とりわけ、商店や小企業の
人々
は、
財産形成
に
自分
も重大な寄与をしてきた。にもかかわらず、突然、夫の死後に
不貞
の
子供
に請求されるのは理不尽である、こういう
思い
が非常に強いわけであります。ちなみに、どういう階層かというと、四十代、五十代、六十代、七十代、こういう世代の
人々
の
抵抗感
は物すごく強く、二十代、三十代の
比較
的若い層には強い
拒否反応
は
比較
的少ないという印象であります。これは一体どういうことなのかというと、
婚姻
の有無や
人生経験
の差が
見解
の違いになっているんだろうと思うわけであります。 これが平均的な
国民感情
であると
思い
ますが、こういう
国民感情
について、
谷垣法務大臣
はいかがお考えでございましょうか。
谷垣禎一
7
○
谷垣国務大臣
この問題で
国民感情
がさまざまであるということは、私もよく承知しております。
土屋先生
も当然いろいろな御
意見
を耳にしておられると
思い
ますし、また、その御
意見
の
背景
にあるそれぞれの
人生
、
家庭生活
、
親子関係
、これもまた多様なものがあるんだと
思い
ます。今お話を伺って、率直に申し上げますと、そういうことでございます。
土屋正忠
8
○
土屋
(正)
委員
それでは、
最高裁判決
について、私の考え方を述べ、
最後
に何か
谷垣大臣
から御
感想
があればお聞きをいたしたいと
思い
ます。 私
たち自民党
は、
家族
は、愛情と信頼で結ばれた、
国民生活
の基盤を形成する
最小
の単位であり、これを
法律
で保障し、支援することは健全な
国家
を形成するための最
優先事項
だ、このように考えてきたわけであります。 しかし、今回の
最高裁
大
法廷判決
は、
相続
において、
嫡出
でない
子供
も
嫡出
と同様の
権利
を与えるという
内容
で、
法律婚
の否定、
家族
の軽視につながると考えるわけであります。 なぜならば、
相続割合
を
嫡出
一とし
嫡出
でない子を二分の一とするのは、
相続財産
の
割合
が多くなるという
財産
上の
理由
だけではなく、
法律婚
で
夫婦
が暮らし、時には仕事をし、
財産
を形成し、
家族
を養い、ともに歩んできたという、その
人生そのもの
に対する
誇り
でもあるからであります。これが否定されたようなことになるわけであります。 したがって、
嫡出子
と
嫡出
でない
子供
を同等視するのは、結婚して
夫婦力
を合わせて長い
人生
をともに歩んできたという
自負心
と
誇り
を毀損することになるのだ、このように
思い
ます。 今回の
判決
は、たとえ非嫡であっても生まれた
子供
に罪はないなどという俗論にくみして、
国民感情
に反するものだ、このように考えております。
判決文
第十一ページには、「子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない
事柄
を
理由
としてその子に不
利益
を及ぼすことは許されず、子を
個人
として尊重し、その
権利
を保障すべきである」と判示をしております。しかし、この
見解
は、
個人
としての
権利
を尊重する
余り
、重大な視点が
欠落
をしていると私は
思い
ます。 まず第一は、
人間
は、
個人
として孤立して生きるのではなく、
親子
、兄弟、姉妹を身近な
最小
の
家族
として、さまざまな
人間関係
によって生き、
生活
をしているのだと
思い
ます。 二点目は、非
嫡出子
の
権利
を強調する
余り
、そのことによって傷つき、落胆し、無念に思う
法律婚
の妻や
嫡出子
に対する
思い
が
欠落
をしていると言わざるを得ません。 今回の
判決
によって、
法律婚
によって保護されるべき
家族
の
利益
は
物心とも
に失われるのではないかと危惧をするわけであります。 それに対して、
平成
七年七月五日の大
法廷判決
は、次のように述べているわけであります。三のところで、
憲法
二四条一項は、
婚姻
は両性の
合意
のみに基づいて成立する旨を定めるところ、
民法
七三九条一項は、「
婚姻
は、
戸籍法
の定めるところによりこれを届け出ることによつて、その効力を生ずる。」と規定し、いわゆる事実
婚主義
を排して
法律婚主義
を採用し、また、同法七三二条は、重婚を禁止し、いわゆる
一夫一婦制
を採用することを明らかにしているが、
民法
が採用するこれらの
制度
は
憲法
の
右規定
に反するものでないことはいうまでもない。 そして、このように
民法
が
法律婚主義
を採用した結果として、
婚姻関係
から出生した
嫡出子
と
婚姻外
の
関係
から出生した非
嫡出子
との
区別
が生じ、
親子関係
の成立などにつき異なった
規律
がされ、また、内縁の
配偶者
には
他方
の
配偶者
の
相続
が認められないなどの
差異
が生じても、それはやむを得ないところといわなければならない。
本件規定
の
立法理由
は、
法律
上の
配偶者
との間に出生した
嫡出子
の
立場
を尊重するとともに、 ここですね、
他方
、被
相続人
の子である非
嫡出子
の
立場
にも配慮して、非
嫡出子
に
嫡出子
の二分の一の
法定相続分
を認めることにより、非
嫡出子
を保護しようとしたものであり、
法律婚
の尊重と非
嫡出子
の保護の調整を図ったもの であると。実にいい
判決
ですね。実に情理にかなった
判決
だ、このように思っているわけであります。 そもそも、今回の
判決
が問題なのは、
論旨
が一貫していないことであります。
判決文
二ページにおいて、次のように述べているわけであります。これは今回の
判決
です。
相続制度
は、被
相続人
の
財産
を誰に、どのように承継させるかを定めるものであるが、
相続制度
を定めるに当たっては、それぞれの国の
伝統
、
社会事情
、
国民感情
なども考慮されなければならない。さらに、現在の
相続制度
は、
家族
というものをどのように考えるかということと密接に
関係
しているのであって、その国における
婚姻
ないし
親子関係
に対する
規律
、
国民
の
意識等
を離れてこれを定めることはできない。これらを総合的に考慮した上で、
相続制度
をどのように定めるかは、
立法府
の合理的な
裁量判断
に委ねられているものというべきである。 と、実に立派な前提を置いているわけであります。まことにごもっともであります。 ところが、
判決文
四ページあたりから、だんだん
論旨
が違ってくるわけであります。
前記
2で説示した
事柄
を総合的に考慮して決せられるべきものであり、また、これらの
事柄
は
時代
と共に変遷する こういう、
時代
とともに変遷するという抽象的なことが出てきているわけであります。 続いて、ドイツや
フランス
の例や、児童の
権利条約
、
法務省
の
婚姻制度等
に関する
民法改正要綱試案
、
離婚件数
の増大、
嫡出
でない子の
増加
などを挙げているわけであります。 さらに、
外国
では
婚外子
が五〇%、
我が国
では二・二%にすぎないと、明らかな
国情
の違いを具体的に示した上で、八ページで以下のように述べているわけであります。 しかし、
嫡出
でない子の
法定相続分
を
嫡出子
のそれの二分の一とする
本件規定
の
合理性
は、
前記
2及び(2)で説示したとおり、
種々
の要素を総合考慮し、
個人
の尊厳と法の下の平等を定める
憲法
に照らし、
嫡出
でない子の
権利
が不当に侵害されているか否かという観点から
判断
されるべき法的問題であり、 こう言っているんですね。 しかし、となると、不当に侵害してきたなら、今までの判例は不当に侵害してきたのか、こういうことにもなるわけであります。
国情
や
国民感情
によって決定されるとした
原則
に対して、真
反対
な
結論
を出しているわけであります。結局、
結論
は、十ページの下段(4)の
五つ
の抽象的な
理由
によって、それまで合憲としてきた
結論
を真
反対
に覆したわけであります。 この部分をさらに読んでみますと、「(4)
本件規定
の
合理性
に関連する以上のような
種々
の
事柄
の
変遷等
は、その中のいずれか一つを捉えて、
本件規定
による
法定相続分
の
区別
を不合理とすべき決定的な
理由
とし得るものではない。しかし、昭和二十二年
民法改正
時から現在に至るまでの間の
社会
の動向」、これが一ですね、
理由
は。「
我が国
における
家族形態
の
多様化
」が二番目、「これに伴う
国民
の
意識
の
変化
」「諸
外国
の
立法
」、そして五番目が「
我が国
が批准した
条約
」、こういう
五つ
の例を挙げているわけであります。 しかし、これらはいずれも抽象的なものであり、個別の論証をしたいと
思い
ますが、同時にまた、
変化
の具体的な事例として挙げた、
住民票
の
続柄
を
長男
、
長女
から単に子とすることを求めて起こした
裁判
の例を挙げているわけであります。 しかし、これは明らかに
引用
を間違っているし、この
訴訟
の
本質
、つまり、
住民票
の
続柄表記
に関する
訴訟
の
本質
の
実態
について理解していないと私は言わざるを得ないわけであります。 この
訴訟
は、誰に対して起こされたかというと、
武蔵野市長
に対して起こされたわけであります。
住民票
の
続柄訂正
を求めたものであり、特殊な目的を持った、
法律婚解体
を目指した
運動
であります。被告は、
武蔵野市長
たる私でありましたが、原告は、驚くべきことに、
夫婦
とも市の
職員
。独自の主張を展開し、
労働組合活動
を頑張ってきた
職員
でありますが、同時に、
労働組合
の中でも孤立した
活動家
でありました。ちなみに申し上げますが、この
夫婦
は私が採用したものではありません。 その
夫婦
が
武蔵野市長
たる私を訴えたもので、その
きっかけ
は、
住民票発行事務
の
窓口職員
であったときに、この
職員
だったんですね、この
女性
が、
住民票
で、
窓口
で。ところが、他区の
居住者
が同様な趣旨の
申し立て
をして、その苦情を受け付けた
職員
だったんです。この
案件
は
異議申し立て
の段階で終わり、
訴訟
には発展しなかったんですけれども、このことに学んだこの
職員
は、これはいけると思って、
自分
のことで
武蔵野市長
の
土屋
を訴えたわけであります。 当時は、
住民票
に
本籍地
を記載すべきかどうか、また、それを閲覧させるべきかなど、
住民票
の
公開原則
と
プライバシー
の
議論
があって、
訴訟
中に当時の自治省が
見解
を出し、
続柄欄
を、
長男
、
長女
など
身分
をあらわす
表記
から単なる子と変更したものであります。これは私が訴えられたわけでありますが、国も大いに
関係
するということで、
法務省
の検事さんが、
共同
の、追加の、
訴訟
に参加したわけであります。 私は、
続柄
を書いても一向に構わないと考えておりますけれども、仮に百歩譲っても、この一連の事件の
本質
は、
住民票
が
居住関係
を公証する
制度
であることに鑑みて、
戸籍簿
のように
身分
を公証する
制度
とは違うわけですから、
居住関係
を公証する
制度
の中にわざわざ
続柄
を書く必要があるかどうか、こういう
議論
になるわけであります。
住民票
は、
住民基本台帳法
に基づく
地方自治体
の
基本図書
であり、
自治事務
であります。
選挙権
を初めとするさまざまな
社会的権利
を行使するための
基本台帳
であり、
身分
を公証する
戸籍
とは明らかに性格が異なるわけであります。 したがって、
住民票
の
続柄欄
をめぐる
裁判
の
本質
は、
居住関係
の
公証制度
である
住民基本台帳
に
身分
を公証する
続柄
を記載する必要があるのかどうか、
プライバシー
はどうか、これは
住民票
は
公開制
になっておりますから、こういうことが問われた
裁判
であって。また、
住民票
をめぐる
裁判
は、それまで
国民
の大多数が異存なく受けとめていた
制度
を、一握りの
運動家
が一定の
価値観
に基づいて、あえて
訴訟
を起こしたものであり、
運動家
のための
運動
であるというのが
実態
であります……
江崎鐵磨
9
○
江崎委員長
御静粛に。
土屋正忠
10
○
土屋
(正)
委員
あなた以上に私がよく知っている。 この例を、
法律婚主義
をとる
我が国
の
婚姻制度
の変更の
理由
に挙げるなど、
引用違い
も甚だしく、かつ、
訴訟
の
実態
を十分承知していない
観念論
であると言っても過言ではないと私は思っております。 また、
判決
が
違憲
とした
理由
のうち、
嫡出
でない
子供
がふえている、また、
欧米
の
立法例
を挙げたことについても
意見
を述べたいと
思い
ます。
日本
において、
嫡出
でない子がふえているといっても、わずか二・二%であり、過去十年間の
統計
をとってみても、全部二万人台を推移しているわけであります。これは
法務省
から出された資料であります。したがって、
欧米
の五〇%と明らかに異なるわけでありまして、何をもって
嫡出
でない子がふえているというのでしょうか。この
欧米
との違いは二十二倍で、決定的な差があるわけでありますから、この
差異
は、
背景
にある
国民意識
の差と考えるべきではないでしょうか。 事実、
判決文
八ページの中段においても、「
婚姻届
を提出するかどうかの
判断
が第一子の妊娠と深く結び付いているとみられるなど、全体として
嫡出
でない子とすることを避けようとする傾向があること、」「
法律婚
を尊重する
意識
は幅広く浸透しているとみられる」と、この
判決文
の中でも説示をしているところであります。
結論
からすれば、
日本
では
嫡出
でない子はふえていない。また、今回の
最高裁判決文
二ページに記述されているように、「
相続制度
を定めるに当たっては、それぞれの国の
伝統
、
社会事情
、
国民感情
なども考慮されなければならない。」のだから、
嫡出
でない子が五〇%の
欧米
と
比較
をして、事実と
国民感情
に立脚すれば、
欧米
に倣って
改正
の必要は全くなく、
改正
の
必然性
に欠けると言わざるを得ないと私は思っております。 ここでは、なぜ
欧米
は
嫡出
でない子、事実婚が多いのだろうかと考察をしてみますと、
背景
には
キリスト教
に対する
宗教観
があると
思い
ます。
キリスト教
においては、男女の
婚姻
は当事者の
合意
ではなく、神の
恩寵
、
秘跡
、サクラメントとされているわけであります。誕生から始まり、死亡時の
終油
に至る
人生
のさまざまな過程には、神からの選ばれた
恩寵
があり、七大の
秘跡
があるというのが
ローマンカソリック
の基本的な
テーマ
であります。
近代国家
以前の
中世
までは、
婚姻
は
教会
で誓い、
婚姻届
は
教会
が
婚姻簿
に記載していたわけであります。私は、二十数年前に
フランス
の
地方自治体
を視察したとき、
教会婚
と
法律婚
が併存していて、
教会婚
には
離婚
が認められていないので、最近は
法律婚
に人気が移ってきている、このようなことを聞いたわけであります。まさに宗教的な
背景
があると言わざるを得ないわけであります。 天動説に異を唱えた
ガリレオ
・
ガリレイ
のそれでも地球は回っているという言葉は、神への挑戦であり、
宗教裁判
において
異端審問官
からはりつけの刑に処せられるという危険を冒したものなのであります。
ルネサンス運動
は、まさに神が支配する
世界
から
人間中心
の
世界
へと変換する命がけの
運動
でもあったわけであります。 十九
世紀
の
世紀
末に、ニーチェが神は死んだとか、エゴン・シーレやクリムトの
人間賛歌
の
美術運動
は、神からいかに自由になるかが
近世ヨーロッパ
の
テーマ
であった、このように考えます。そして、その
象徴
が、
サルトル
と
ボーボワール
のいわゆる事実婚だ、このように考えております。
ヨーロッパ
の
嫡出子
の比率の五〇%は、神からの自由という重要な
テーマ
が存在し、単なる
不貞
の話ではない、こういうふうに理解しなければ、なぜ五〇%もの人がそのような状態にいるのかわからないわけであります。 しかし、神から自由になった現代は、何を
きずな
として生きるのか。
イギリス人
の作家、サマセット・モームの大作の「
人間
の絆」は、そのような
問題意識
で創作されたものと理解し、この「オブ・ヒューマン・ボンデージ」という小説の中には、
家族
の
きずな
ということが極めて重大なファクターとなっているわけであります。 では、
日本
の場合はどうなのか。これは、やはり
日本
の
文化
や
国民意識
を形成していく裏づけは
神道
と仏教でありますから、これらの
二つ
のいわゆる
文化
の根底には、神から選ばれて、神の命令に従って生きるという発想はないわけであります。何といったって、
神道
はやおよろずの神で、八百万も神様がいるわけでありますから。 このような中にあって、それでは
中世
、
江戸時代
はどうであったのかということになりますと、しかし、寺社が重要な役割を果たしてまいりました。いわゆる過去帳だとか
人別帳
だとかというものがそれに当たるわけであります。
歴史人口学
という学問の中で
鬼頭宏先生
などが明らかにした
内容
でありますけれども、このような中にあって
国民意識
が形成されてきた、
共同体
を優先するという
意識
が醸成されてきた、このように考えているわけであります。 このような
国民感情
に立って今回の
最高裁
の
判決
を見てみると、
婚姻制度
は、それぞれの国において、
歴史
、
文化
、
宗教観
などを
背景
にした
国民感情
に立脚した
制度
でありますが、今回の
判決
は、
他国
の
比較
や
国際条約
など、
観念論
によって
結論
を導き出し、また、事実の指定の、いわゆる
婚外子
の
増加
ということも事実とも違うわけであります。また、
判決文
が一番
最初
に示した
論旨
とも
首尾一貫
をしていないわけであります。
婚姻
と結びついた
相続
を
日本社会
の根っこにある
国民感情
に依拠して
判断
するのではなく、
他国
との
比較
や
国際条約
など、それも
キリスト教国中心
の
価値観
で
判断
したところに違和感が生ずるわけであります。 この
最高裁判決
は、
国民
私
人間
の
法律関係
、とりわけ
親族関係
に言及した初の
違憲判決
でありますが、本来、このような
作用
は、
国民
から選ばれた国権の
最高機関
である国会の
立法作用
によって方向を見出すべきではないでしょうか。いささか、
最高裁
の、
司法
の能動が過ぎているような気がいたすわけであります。 とはいえ、
法解釈
の
最終審
である
最高裁
の
判断
は重い。今の
日本国
の
民主制
の三権分立の
立場
からすると、残念ながら、この
判断
は重いと言わざるを得ないわけであります。 そこで、権威の
象徴
である石の塔に立てこもる、象牙の塔とよく言いますが、あれは石でありますから、
最高裁
は、石の塔に立てこもる
最高裁
の
判事
の
皆さん
は、草の根の
国民
の
バランス感覚
や素朴な
正義感
などを深く省察して
判決
を出すことを今後期待いたしたいと
思い
ます。このことは、
最高裁判事
の
国民審査
の方法にも
影響
を与えることだろう、私はこんなふうに思っております。 この
判決
を
きっかけ
に、
民法改正
に当たって、私
たち立法府
にある者は、
国民感情
に根差し、おくれず、さりとて先走らず、
国民
とともに、
国民
の幸せと
日本国
の繁栄を果たすことを図り……
江崎鐵磨
11
○
江崎委員長
傍聴人
は私語を慎んでください。
土屋正忠
12
○
土屋
(正)
委員
引き続き、関連の法制の整備に当たりたい、このように考えておりますが、
大臣
、何か
感想
がありましたら、どうぞよろしくお願いします。
谷垣禎一
13
○
谷垣国務大臣
土屋委員
から、カトリックの教義から
サルトル
、
ボーボワール
に至るまで、また、儒教、
神道
も引いて、博引旁証の御
議論
でございました。それに対して
余り
事務的な答弁を申し上げるのは恥ずかしゅうございますが、
最後
におっしゃったように、やはり、通常、
司法
は
立法府
のつくった
法律
に従って
裁判
をする、しかし、その
法律
が
憲法
に適合するかどうかは、
最高裁判所
が
判断権
を持っているというのが
日本国憲法
の構造でございます。 したがいまして、
法務大臣
としては、その
判決
を尊重して、それに対応する姿勢を整えていくというのが私の責務であろう、このように考えております。
土屋正忠
14
○
土屋
(正)
委員
以上をもって終わります。どうもありがとうございました。
江崎鐵磨
15
○
江崎委員長
次に、
宮崎
政久
君。 その前に、
傍聴人
の方は私語を慎んでください。もし、御
意見
があったら、もう退場を命じます。お願いします。
宮崎
政久
君。
宮崎政久
16
○
宮崎
(政)
委員
自由民主党の
宮崎
政久
です。 本日は、
民法
の一部を
改正
する
法律案
について
質問
をさせていただく機会をいただきましたことを
理事
各位の皆様に御礼を申し上げます。 さて、今回の
民法改正
でございますが、
平成
二十五年九月四日の
最高裁
大
法廷
での
憲法
違反の
判断
、
憲法
違反が
最高裁
大
法廷
で示された、これは、
日本国憲法
が施行された後、六十六年の間にわずか九件目ということでございます。
最高裁
大
法廷
で法令が
憲法
違反であると
判断
されたことを受けて、国会が
立法府
としてその意思を示していく場でございまして、この衆議院の
法務
委員
会において、この
歴史
的な場所に立ち会わせていただいたことに感謝を申し上げる次第でございます。 さて、今回の
法案
の
内容
は、
民法
第九百条第四号ただし書きにあります「、
嫡出
でない子の
相続
分は、
嫡出
である子の
相続
分の二分の一とし」という部分を削除する、極めてシンプルな
内容
となっております。しかしながら、国会において、
最高裁
の
憲法
判断
を受けて、
立法府
としてその意思を示すわけでありますので、その意味するところは大変に重いものであるかと
思い
ます。先ほどの
土屋委員
の御発言にもありましたとおり、さまざまな
国民
世論がある中で、私たちは
国民
代表として
立法府
の意思を示していくわけであります。
最高裁
が
憲法
判断
をした、そのことによって、自動的に、何の作業もしないで、オートマチックに法令が書きかえられてしまうということは、
日本国
の法令
制度
の中ではないわけであります。私たちが、
最高裁
の
判断
というのを
背景
として、
きっかけ
として、今回、その意思を示していかないといけないと考えています。 そこで、今回の
法律案
関係
資料というものが
委員
会の中で配られております。これは冒頭のところに、
民法
の一部を
改正
する
法律案
の提案
理由
が記載されておるわけです。これは三行あるんですね。こう書いてある。これをちょっと読んでみます。「この
法律案
は、
民法
の規定のうち
嫡出
でない子の
相続
分を
嫡出
である子の
相続
分の二分の一とする部分は
憲法
違反であるとの
最高裁判所
決定があったことに鑑み、この部分を削除することにより、
嫡出
でない子の
相続
分を
嫡出
である子の
相続
分と同等とするものであります。」というふうにあるわけです。私は、これはちょっと寂しいなというふうに思うわけです。 今の
最初
と
最後
の部分は、
法案
の
内容
でありますので、
立法
の
理由
というか
立法
の趣旨として書かれているのは、「
憲法
違反であるとの
最高裁判所
決定があったことに鑑み、」という部分だけになってしまうわけです。 ですから、我々は
立法府
として、これを
立法
していくんだ、削除という形であったとしても、積極的な
立法
行為をしていくんだという
立法
意思が必要であると考えています。 そこで、
谷垣大臣
にお伺いをしたいと
思い
ます。 今回の
最高裁
決定、これは、
背景
であり、
きっかけ
であります。
立法
者としての意思を我々が示していく、その今回の
立法
の意思、
立法
の
理由
について、ぜひ
大臣
のお言葉で御説明をいただきたいと
思い
ます。
谷垣禎一
17
○
谷垣国務大臣
今の
宮崎
委員
の御
意見
のように、
最高裁
から
違憲
の決定が出た、これがこの法
改正
のまず第一の動機である、これは間違いございません。では、その中身はいかん、ただそういう形式的な
理由
だけかという御
質問
ですね。 これは、
最高裁
の
違憲
決定にも触れられておりますように、父母が法的な
婚姻関係
にはなかったという、
子供
にとっては
自分
で選択することのできない事由でございます。非
嫡出子
になりたくて生まれてきたわけではないだろうということになるわけですね。だから、
自分
の選択のない、修正する余地のない
事柄
を
理由
として不
利益
を及ぼすのは問題であるということでこの
判決
も出た。それが背後にある考え方だろうと私は考えております。
宮崎政久
18
○
宮崎
(政)
委員
ありがとうございます。 先ほど来、
土屋委員
から
意見
があった、実は、我が党の
法務
部会では、五回にわたってこの
法案
審議をいたしました。通常、自由民主党の部会というのは一時間が
原則
で行われているところ、各回一時間半で行われて、最終回は三時間を超えるほど、さまざまな
意見
を闘わせて、今回、
法案
を与党側として提出させていただいているわけであります。
最高裁
の
判断
に示されているとおり、
法定相続分
を含めて
相続制度
はどうするのかということは、当然、
立法府
が合理的な
裁量判断
をすることができる。これは当然のことであります、
立法
裁量論であります。その
裁量判断
に当たっては、
我が国
の
伝統
、
社会事情
、
国民感情
、
家族
というものをどう考えるか、そういう意味でいえば、
婚姻
や
親子関係
に対して、
法律
がどう定めているのかとか、
国民
の
意識
は今どうあるのかということを総合考慮した上で
判断
する。 今回、問題になっているのは、その中の
嫡出子
と
嫡出
でない子の間の
法定相続分
に二分の一という
区別
をつけるということの可否が問題になった
裁判
があったわけであります。 私は、先ほど
大臣
もお話しになりましたけれども、
我が国
の
伝統
的な
家族
観であるとか、
法律婚
を尊重する
意識
、これは当然であります。
国民
の中にあまねくある。このことは
最高裁
の
判決
の中でも触れられている。ただ、生まれたときに父母が
法律
上の
婚姻関係
にはなかった、これは
子供
にとってみれば、もちろん
相続
が発生するときは
子供
のときではないかもしれない、大人になってからかもしれない、だけれども、生まれた一時において決まることであります。
子供
にとっては選択もできない。後で修正することもできない。こういうことをもって、同じ親から生まれた
嫡出子
との間で
相続
分を区分して二分の一にするというのは、やはり合理的な
区別
の範囲を超えているんだと思うんです。 先ほど、
嫡出
でない子は数はそんなに多くないという御指摘がありました。
判決
の中でも、
平成
二十三年度で約二万三千人で、全出生に占める
割合
は二・二%だということであります。
立法府
が
司法
権の独立がある
裁判
所、
最高裁
の
判断
に対して、その当否を必要以上に論難するのは、私は
立法府
としては謙抑的であるべきだと思っています。ただ、
裁判
所の
立場
からすれば、
立法府
は多数者の意思で決めていきます、
国民
代表でありますから、選挙で選ばれた国
会議
員がこの中で
国民
の多数の意思を形成していく、しかし、
裁判
所は、少数であったとしても救われるべき人がいるのであれば
憲法
に照らして救うべきかどうかということを
判断
する場所なのであります。その一事をもって論難しているとは思わないですけれども、数が少ない、
嫡出
でない子が二・二%だということをもってして、だからといって救うに値しないというような趣旨ではよろしくないというふうに私は思っております。 事実の経過も、実は、
最高裁
の判例、四ページから十ページまで七ページにわたって昭和二十二年からの事実の変遷を延々と述べているんですね。そういうことも自由民主党の
法務
部会の中ではさまざまに
議論
されたということも一旦御報告をさせていただきたいと
思い
ます。 ただ、
国民
の
皆さん
の中にはさまざまな
意見
があることは当たり前のことであります。民主主義
社会
でありますから、いろいろな
意見
があっていいわけであります。今回の法
改正
によって
法律婚
が脅かされるのではないかとか、
家族
のあり方が将来的にどうなっていくのかということに対して不安があるという声が聞こえてくることも、これもまた事実であります。 私は、この法
改正
をもって
日本国
の、
日本国
民の
家族
や
家族
の
きずな
を大切にする
思い
、国柄というのが傷つくことはないと思っています。 翻って、昭和四十八年、刑法第二百条の尊属殺重罰規定が
最高裁
で
憲法
違反だと
判断
されたとき、当時、この法
改正
をすることは親をとうとぶ
日本
の道徳観念が損なわれるのではないかというような
意見
はありました。あったけれども、その法
改正
をした結果、私たちはどうでしょうか。親をとうとぶという気持ちを刑法二百条がなくなったことによってなくしたわけではないと私は思っています。 ということも踏まえて
大臣
にお聞きしたいのでありますが、ちまた言われている今回の法
改正
と
法律婚
を尊重する気風に対して毀損を生じるのではないかという懸念に対して、
大臣
御自身の御
意見
を伺えればと思っています。
谷垣禎一
19
○
谷垣国務大臣
私の認識は、
民法
をつくったのは明治二十何年でしたか、その当時、
法律婚
を明治の
民法
は採用しました。しかし、その当時、まだ多くの
日本
の
国民
は、なぜ
自分
が結婚したときに役場に届け出なきゃならないのかとすぐにはなじめなかったと
思い
ます。ですから、当時は事実婚をどう扱っていくかというのは大きな問題であったというふうに思っております。しかし、それから百数十年たちまして、
法律婚
を尊重する考え方というのは幅広く
日本国
民の間に浸透して現在に至っているというふうに私は認識しております。そのことは、今回の
最高裁
の決定においても指摘されているところですね。 それで、将来どうなるのかということになりますと、これは将来の予測で、私、神のごとき権能を持って断定するつもりはございませんが、私は、この
法律婚
を尊重する
日本
人の気持ち、広く浸透した気持ち、これはこれからもきちっと受け継がれていくだろう、このように考えております。
宮崎政久
20
○
宮崎
(政)
委員
ありがとうございます。 現在の法体系の中で、
我が国
において、
法律婚
を尊重するというのは、さまざまな法
制度
の中でどのような定めがされているのか、
法務省
から御説明いただきたいと
思い
ます。
深山卓也
21
○
深山政府参考人
現行法は
法律婚主義
を採用しておりますので、これから述べるような法
制度
によって、
法律婚
の尊重が図られているところです。 まず第一に、
法律
上の
婚姻関係
にある
夫婦
の一方が
不貞
行為をした場合には、
民法
上、不法行為が成立しまして、
不貞
行為をして
法律婚
を侵害した
配偶者
とその相手方は、
他方
の
配偶者
に対して損害賠償義務を負うことになります。 また、
法律
上の
婚姻関係
にある
夫婦
の一方
配偶者
は、
他方
配偶者
の
相続
について二分の一の
法定相続分
が認められておりますが、事実婚の
関係
にある男女の場合には、その一方に
他方
の
相続
権は認められておりません。 さらに、
法律
上の父子
関係
につきましても、
法律
上の
婚姻関係
にある妻が懐胎した子は夫の子と推定されますけれども、事実婚の
関係
にある男女の場合には、父子
関係
を生じさせるには認知が必要である。 主な違いはこういった点にあらわれております。
宮崎政久
22
○
宮崎
(政)
委員
ありがとうございます。 これはそれぞれ、
価値観
、
人生
観、思想、信条に近い部分でありますので、さまざまな
意見
が交錯するところであるということは十分に理解をした上でありますが、今回速やかな
立法
に導きたいというのが、与党の一員としての私の考えでございます。 次に、
立法府
としていかに対応するべきなのかということで、幾つか、ちょっと
法律
上の解釈の問題になりますが、
質疑
を重ねてみたいと思っております。 今回の
最高裁
の
憲法
違反という
判断
に対して、
日本国憲法
は、第四十一条において、「国会は、国権の
最高機関
であつて、国の唯一の
立法
機関である。」という定めがある。その
他方
、第八十一条で、「
最高裁判所
は、一切の
法律
、命令、規則又は処分が
憲法
に適合するかしないかを決定する権限を有する終審
裁判
所である。」こう規定しているわけであります。
我が国
の
憲法
では、事件の存在を前提としないで法令の
憲法
適合性を抽象的に
判断
していく
憲法
裁判
所は設置されておりませんから、
最高裁
の
憲法
判断
も、個別のそれぞれの事件を前提とする付随的審査制となっているわけです。そして、
違憲
判断
をされたときのその効力はどうなるのかということに鑑みては、これは事件を解決するためにその
判断
が行われますので、当該事件に対して効力があるという意味での個別的効力説になるというのが、判例を含めて一般的な考え方であります。 先ほどの
憲法
第四十一条との
関係
から、
最高裁判所
が
憲法
判断
をするに当たって、その
判断
の方法ですね。私は、
判断
の方法はさまざまにあります、法令
違憲
、適用
違憲
がございますので、
裁判
所はしっかりとした
判断
をしたと思っておりますが、まずこの法令
違憲
というようなものが許容されているという理解でよろしいのかどうか、御説明をお願いしたいと思っています。
谷垣禎一
23
○
谷垣国務大臣
今回の
最高裁判所
の決定は、
民法
九百条四号ただし書きの規定そのものが
憲法
十四条第一項に違反する、いわゆる法令
違憲
であるとした
判決
ですね。 それで、法令
違憲
というのは、法令の規定そのものが
憲法
に違反する。一方、適用
違憲
と言われているものは、法令自体が
違憲
というわけではないんだけれども、この事案に適用する限りにおいて
憲法
に違反するということですよね。 それで、先ほどおっしゃったように、今の
憲法
四十一条のもとでは、いわゆる付随的
違憲
審査制であるという理解、これが今までされてきて、私もそれが現在通用している考え方だと
思い
ます。付随的
違憲
審査制のもとであっても、具体的な事件の解決に必要であるということを前提とする限り、法令
違憲
という
判断
はこの
憲法
の中であり得るのだということだろうと
思い
ます。
宮崎政久
24
○
宮崎
(政)
委員
ありがとうございます。 幾つかの御指摘で、先ほど
土屋委員
からも御指摘がありました。私法の問題は、国権の
最高機関
である国会がまず考えるべきであって、
裁判
所の
判断
は抑制的であるべきだという
意見
があります。これ自体、私は当たっていると思っております。つまり、私法の領域は、さまざまに複雑な
制度
が絡み合った上で法
制度
ができ上がっておりますので、やはりこういうことを総合調整した上で法をつくるのが、私ども
立法府
がやるべき
判断
であるというふうに
思い
ます。 ただ、そうはいっても、さまざまに時間的な経過を経た上でであれば、
裁判
所が踏み込んで
判断
するということもあり得るものであるというふうに
思い
ます。 まず、
違憲
判断
の考え方として、私法の問題については
最高裁
が踏み込んで
判断
するべきでないということについての
大臣
の御所見をいただきたいと
思い
ます。
谷垣禎一
25
○
谷垣国務大臣
国会は
立法
機関でございますから、今、
宮崎
さんがおっしゃったように、これは私法であろうと公法であろうと、やはり国会でまずいろいろな利害状況と申しますか、全体の状況をよく
議論
し調整して決めていくというのが第一義であることは、これは間違いないと
思い
ます。 今問題になっている
夫婦
関係
、あるいは
親子関係
、男女
関係
、島倉千代子さんじゃありませんけれども、さまざまですから、
人生
いろいろですよね。だから、それをよく見て国会が
民法
なり
婚姻
法をつくっていく、それが第一義であるというのは当然のことだと
思い
ます。 しかし、今の
憲法
八十一条、先ほど私、四十一条と言い間違えましたが、八十一条のもとでは、これは、私法、公法を
区別
することなく、「一切の
法律
、命令、規則又は処分が
憲法
に適合するかしないかを決定する権限を有する終審
裁判
所である。」こういうふうに規定されておりまして、これはもう私法、公法の別なく、一切の
法律
に対する
違憲
審査権を持っている、こういうことだろうと
思い
ます。
宮崎政久
26
○
宮崎
(政)
委員
ありがとうございます。 まさに
人生
いろいろでありまして、
人生
いろいろ、議員もいろいろ、いろいろな考えがあるわけでございまして、その中で自由闊達な
議論
をしまして、今回こういう経緯をたどっているという非常に民主的な場がここに展開されているわけでございます。 今回の
最高裁
決定、今まで合憲とされていたものが、何の前ぶれもなく突然
違憲
とされたじゃないかというふうな御批判を受けているやに聞いております。 確かに、
平成
七年に
最高裁判所
大
法廷
で合憲の決定が出ているということは事実であります。その後、どのような経過をたどって
最高裁判所
が
判断
をしていって、今回の
平成
二十五年九月の
違憲
決定になったのか、その
判断
の経過について
法務省
から御説明いただきたいと
思い
ます。
深山卓也
27
○
深山政府参考人
今御指摘があったとおり、
平成
七年七月の大
法廷
の決定で合憲の決定が出ております。その後、小
法廷
ですけれども、
平成
十二年、十五年、十六年、さらに二十一年と合憲の
判断
が積み重なっております。 ちなみに、
平成
七年七月の大
法廷
の合憲の決定は、全員一致ではありませんで、
反対
意見
が付されておりまして、十対五でありました。その後の小
法廷
の
裁判
につきましても、五名ないし四名の
裁判
官のうち、いずれについても一名ないし二名の
裁判
官の
反対
意見
が付されていた、こういう状況でございます。
宮崎政久
28
○
宮崎
(政)
委員
ありがとうございます。 こういう経緯を経ているということも、我々は理解するべきところではないかというふうに思っているんです。
立法府
として
判断
をするべきときが今来ているというふうに理解をしています。
最高裁
は謙抑的に
判断
をしてきたのではないかと私は勝手に善解をしておりまして、その三対二、三対一などの中でも、
立法府
に対して法
改正
を求める補足の
意見
が付されているものもあった。 だから、そういうことも踏まえて、今回の法
改正
、速やかに行われるべきタイミングが今来ているというふうに思っておりますので、今回の最高の
判断
を私は尊重してまいりたいというふうに思っております。 仮に、
民法改正
を速やかに行わずに
違憲
状態を放置したということになると、具体的にどういう弊害が生じるのか。また、
最高裁
の
判断
は事実上の拘束力がありますので、下級審などで今回の
最高裁
決定を前提とした
判断
が既にされているのか、されていないのか。この点についての御説明をお願いいたします。
谷垣禎一
29
○
谷垣国務大臣
最高裁
の決定が出ますと、
最高裁
の
判断
は、その個別的事件を解決するということももちろんございますけれども、
裁判
所の
判断
がまちまちになってはやはり困る、要するに、
司法
部として解釈を統一していこう、そういう
作用
も持っているわけでございますので、今
委員
がおっしゃいましたように、今後、下級審はこの
最高裁
の
判断
に従って
民法
九百条を解釈していくというふうに想定されます。 御指摘されましたように、下級審において今回の決定を踏まえた
判決
が既に出ているという現状でございます。そこで、今御指摘のように
民法改正
がされませんと、条文上この規定はそのままになっているけれども、
他方
、
裁判
所の
判断
は違う方に行くだろうということになります。 それで、実際どういう紛争が私
人間
で起こってくるかというのは、これは一概には言えませんが、私の想像するところ、
嫡出子
だけの
相続
と非
嫡出子
も交えての
相続
、どっちが難しいかといえば、多分非
嫡出子
がいる方が
相続
は難しいんだろう、いろいろな問題が生ずるんだと思うんですね。そのときよるべき準則は何かという問題が出てくる。 私は、やはりそこをはっきりさせておく必要が余分な紛争を起こさないために必要ではないかな、このように考えておりまして、今回の
法案
提出も、そういう余分な紛争を解決するということを考えなきゃいかぬという気持ちも私の気持ちの中にはございます。
宮崎政久
30
○
宮崎
(政)
委員
ありがとうございます。 今回の
最高裁
の決定では、
嫡出
でない子の
相続
分を
嫡出子
の二分の一とする
本件規定
が
憲法
違反であるという
判断
が出たわけでありまして、先ほど
谷垣大臣
からも御説明がありましたとおり、
我が国
の
憲法
の
判断
、
裁判
所の
判断
の審査構造としては、付随的審査制でありますので、本件事件において
相続
が開始された時点での法令の
憲法
適合性というのが
判断
の対象となってまいりますので、本件事件において
相続
が発生した時点、つまり、本件では
平成
十三年の七月当時においてどうであったかということが
判断
の対象となるわけであります。 よって、
裁判
所の判示の中でも、付随的審査制であるがゆえに
平成
十三年七月時点における当該法令の
憲法
適合性が
判断
されたということになってまいります。 そうすると、
憲法
に違反する法令というのは無効でありますので、
平成
十三年七月以降に開始された
相続
についても、この二分の一の規定が無効であることが前提としてさまざまな処理がされないといけないのが
原則
となると言えます。 しかし、
最高裁
の決定は、この
平成
十三年の七月というときからするともう十二年以上経過している、全ての
相続
案件
について、この二分の一規定を適用したものは全部ひっくり返していくということになると、
社会
に大きな混乱が生じることは避けられないだろう、そういうこともあって
最高裁
は、
平成
十三年七月から本決定までの間に開始された
相続
について、現行法を前提として既にされた遺産の分割の審判などにより確定的になった
法律関係
には
影響
を及ぼさないというふうに判示されております。 ちょっとこの点わかりにくい部分もありますので、少しわかりやすく御説明をいただきたいというのと、こういう判示がこれまで
最高裁
でされたことがあるのか、御説明いただきたいと
思い
ます。
深山卓也
31
○
深山政府参考人
この判示は、
平成
十三年七月以降に
相続
が開始した事案のうち、既に遺産分割などが終了して解決済みの事案、こういうものにつきまして、
最高裁判所
による
違憲
判断
の事実上の拘束力が及ぶということになりますと、著しく法的安定性を害することになる、こういった事情に配慮をして、
違憲
判断
の事実上の拘束力を一部制限したものと理解されます。 このような
判断
手法というのは、過去に例はございませんで、
違憲
判断
についての新たな判例法理を示したものと認識しております。
宮崎政久
32
○
宮崎
(政)
委員
そうしますと、今回の
最高裁
の
判断
内容
、つまり
平成
十三年七月から
平成
二十五年九月四日までの間に開始した
相続
についても遡及適用をすることとした上で、一部のものについて、確定的なものについてはひっくり返さないということについて、本
法律案
の経過措置で反映させるということがされておられるのか、おられないのか、また、そういう検討がされたのかについて御説明いただきたいと
思い
ます。
深山卓也
33
○
深山政府参考人
この
最高裁
の決定を受けまして、
法務省
としては、
最高裁
の決定の趣旨を忠実に反映した経過措置を設けることを内部的に検討いたしました。ただ、このような経過措置の
内容
としては、
改正
後の
民法
の規定を、
原則
として
平成
十三年七月から決定があった
平成
二十五年九月四日までの間に開始した
相続
についても遡及適用することとしつつ、例外的にその効力を及ぼさない
法律関係
を限定列挙するというものになるのではないかと考えられます。 しかし、
最高裁
の決定におきましても、
違憲
判断
の
影響
を受けない
法律関係
の範囲が必ずしも一義的に明らかに示されているとは言いがたいということがございまして、新法の遡及適用の例外となる事項を網羅的に、しかも過不足なく条文上規定するということは極めて困難であるという
結論
に至りました。 そこで、この
法律案
では、
平成
十三年七月から
平成
二十五年九月四日までの間に開始した
相続
についての経過措置を設けないということにしております。
宮崎政久
34
○
宮崎
(政)
委員
そうしますと、要は、この
法律案
でいった場合に、
平成
二十五年九月四日以前に開始された
相続
について適用されないということになりますと、いわゆる
社会
における遺産分割における準則としては、何が準則になっているというふうに考えたらよろしいのでしょうか。
深山卓也
35
○
深山政府参考人
ただいま申し上げましたとおり、
平成
十三年七月から
平成
二十五年九月四日までに
相続
が開始した事案につきましては、この
法律案
による
改正
後の
民法
の規定の適用はございません。したがって、今回の
最高裁判所
の
判断
を前提とした取り扱いがされることになると考えております。 したがいまして、既に遺産分割の審判等がされたものについては、その効力が維持され、これから遺産分割の審判等がされるものについては、
嫡出子
と
嫡出
でない子の
相続
分が同等であることを前提とした取り扱いがされることになると思っております。
宮崎政久
36
○
宮崎
(政)
委員
この点は、なかなか難しいものであります。法というものが持っている限界みたいなものがありまして、法は全てのことを網羅的に全部について規定し切るということはできないし、それは予定されていないわけでありますので、このような趣旨で今回
民法
の
改正
がされるということについて、やはり
国民
の
皆さん
に対してもしっかりとしたお知らせ、周知もしていくことが必要になると
思い
ますし、特に法を取り扱うような職業についているような方々にも十分に理解をしていただいて、若干、やはり
社会
的
影響
が大きいものですから、混乱が生じないように、行政の
立場
から手当てをしていただきたいというふうに思っております。 いずれにしましても、
国民
の
社会
生活
を安定させるために、そして法の安定を図るために、そして
立法府
として適切にその
立法
の意思を
国民
代表として示していく、三権分立のもとで我々がなすべき仕事を今国会においてしっかりと果たしてまいりたいと思っておりますことをお伝えいたしまして、
質問
を終わらせていただきます。 ありがとうございました。
江崎鐵磨
37
○
江崎委員長
次に、遠山清彦
委員
。
遠山清彦
38
○遠山
委員
公明党の遠山清彦でございます。
谷垣大臣
、きょうはよろしくお願いいたします。 きょうは、
民法
の一部
改正
案が議題でございます。
土屋委員
の大演説もあり、そして
宮崎
委員
の非常に専門性の高い御
質問
もありました。私が本日伺おうと思っていた
質問
も少し重なるところがあるわけでございますが。 私ども公明党としては、この
最高裁
の
違憲判決
が
裁判
官全員一致で本年九月四日に出てすぐに
谷垣法務大臣
のところに参りまして、早期の
民法改正
を申し入れさせていただきました。その意味におきまして、まず、迅速にこの
改正
案を出された
谷垣法務大臣
のリーダーシップに率直に感謝を申し上げたいと思っております。 私ども公明党の中では、
法務省
が閣法として出すということを決めた後に、私が部会長をさせていただいております公明党の
法務
部会、そしてまた政調で審査をいたしまして、その結果、賛成するということを決めているわけでございます。 私どもとしましては、確立された
日本
の三権分立
制度
のもとで、
日本国憲法
によって
司法
に付与された、先ほども
議論
がずっとありましたけれども、
違憲
審査権を行使して、今回の
判決
は、
憲法
第十四条一項の法のもとの平等
原則
に違反するという
違憲判決
が示された以上、やはりこれは行政府としてその是正措置をとるということが行政府の義務であり、また
立法府
としても必要な是正措置をとることが、法の支配というものの
原則
を考えたときにも
立法府
の義務である、このように考えているわけであります。 また、先ほど来、
宮崎
委員
からるる御
質問
がありましたとおり、この
違憲
状態を放置すると、いたずらに
国民
の
生活
に混乱を招くということがあるわけでございまして、まずは、こういう考え方から、迅速な
民法
の
改正
というものをすべきだ、私どもはそういう
立場
に立っているわけでございます。 恐らく
法務大臣
も同じ考え方で今回の法
改正
案を提出されたと推察しておりますけれども、その点について御
見解
をいただきたいと
思い
ます。
谷垣禎一
39
○
谷垣国務大臣
この
最高裁
決定が出ました後、直ちに公明党の
法務
部会の皆様が私のところにおいでになりまして御
意見
をいただいたこと、大変ありがたく思っております。 それで、今、遠山
委員
がおっしゃいましたように、
最高裁判所
が法令
違憲
の
判断
をしたときには、内閣としてはできる限り速やかにそれに対応した措置をとることが期待されているし、また内閣としての責務であろうと思っております。 これがまず第一でございますが、それと同時に、今指摘されましたように、また先ほど
宮崎
委員
にもお答えいたしましたが、以前の尊属殺法令
違憲
のときは、仮に放置をしたとしても、検察官が尊属殺で起訴をしますと
裁判
所に行ったら負けてしまう、だから、普通殺で起訴するということをとっていけば大きな混乱は回避できる余地があったわけでございます。 ところが、今度は私
人間
で起きてくる。
相続
を起こすなといったって、亡くなることは防ぐわけにいきません、
相続
は自然に発生してくるわけでございますから、先ほど
宮崎
委員
にもお答えしたような混乱を避けることも、またこれは行政あるいは
立法
の
立場
としてもそうなんだろうと
思い
ます。
遠山清彦
40
○遠山
委員
それで、けさからいろいろありますが、本
改正
案が成立いたしますと、非
嫡出子
、いわゆる
婚外子
の
相続
分が
嫡出子
と同等になるわけでございます。
立法府
の義務だから賛成するということだけでは、我が党の
立場
を主張するのに弱いと
思い
ますので、これから少し
質疑
を通して、なぜ賛成なのか、
理由
を明確にしたいと思っております。 異論を含めてさまざまな
意見
があることは、私も承知をいたしております。しかし、党内でのいろいろな
議論
を経て、私自身、頭の中で整理をいたしますと、この規定が
民法
に盛り込まれた昭和二十二年当時から今日まで、
家族形態
や
価値観
の
多様化
、これが
日本
の
社会
で起こってきたということは事実だと
思い
ます。 また、この後
質問
で伺いますけれども、諸
外国
の
立法
状況、これも、昭和二十二年当時は、
婚外子
の
相続
権を認めない、あるいは現行法のように少し格差をつけるという国が多かったわけでございますが、その状況も変わってきている。また、
日本
におきましても、
平成
六年の
住民基本台帳
事務処理要領の一部
改正
におきまして、世帯主の子は、
嫡出子
であるかないかを
区別
することなく、一律に子と記載されるようになるということが決まっているわけでございまして、それがもう二十年近く
日本
で続いてきているという点も考慮しなければならない。 そして、この後少し
議論
したいと
思い
ますが、私は何よりも我が党の中で一番大事だと思った考え方は、
子供
は、児童は出生によっていかなる差別も受けてはならない、この
原則
が、二十一
世紀
の今日、ほぼ普遍的な人権規範、
原則
になっているというふうに私は考えております。 そこで、事務方にまず伺いますが、
婚外子
の
相続
に関する諸
外国
の法
制度
並びに関連の深い
国際条約
、国際規約の中身はどうなっているのか、お答えください。
深山卓也
41
○
深山政府参考人
まず、諸
外国
の法制ですけれども、フィリピン、インドなどごく一部の国では、
嫡出子
と
嫡出
でない子の
相続
分に
差異
を設ける法制をとっておりますが、現在では、
欧米
諸国のほか、韓国、中国など、
嫡出子
と
嫡出
でない子の
相続
分を同等とする法制をとっている国が圧倒的に多数を占めていると承知しております。 また、
我が国
が締結している
条約
の規定で、子が出生によって差別を受けてはならないという趣旨の考え方を示したものとして、次のものを
二つ
挙げることができます。 一つ目は、市民的及び政治的
権利
に関する国際規約、いわゆるB規約です。この第二条で、締約国は、その領域内にある「すべての
個人
に対し、人種、皮膚の色、」云々といろいろありまして、「出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる
権利
を尊重し及び確保することを約束する。」という規定がございます。 もう一つは、児童の
権利
に関する
条約
、いわゆる児童の
権利条約
です。この二条でも、「締約国は、その管轄の下にある児童に対し、」「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、」ずっとありまして、「出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの
条約
に定める
権利
を尊重し、及び確保する。」と規定しているところでございます。
遠山清彦
42
○遠山
委員
今御答弁ありましたように、
日本
が児童の
権利条約
に加入した段階でこの
原則
を受け入れているわけです。
子供
は出生によっていかなる差別も受けない。 そこで、
大臣
に伺いますが、この考え方が今普遍的な原理
原則
になっているという私どもの考え方について
大臣
はどう思われるか、お聞きをしたいと
思い
ます。
谷垣禎一
43
○
谷垣国務大臣
私自身は、今度の法
改正
、先ほど申し上げたように、やや官僚的
価値観
と言われるかもしれませんが、やはり
日本国憲法
の三権分立の仕組みの中で、世の中に混乱が起こらないようにその秩序を運営していくというのは、
大臣
としてもあるいは政治家としても
自分
の職責だろう、こういうふうに思ってこの
法案
を出させていただいた、これが私の考え方の第一義でございます。 しかし、今、遠山
委員
からお問いかけがありましたように、
子供
の人権というか、人は生まれによって差別されてはならないというのは、これは
日本国憲法
の理念でもあり、それから、国際的にも各種の
条約
において承認をされている
世界
共通の考え方になってきているというふうに私も考えております。
遠山清彦
44
○遠山
委員
きょう朝、
土屋委員
からいろいろお話がありまして、私もずっと拝聴させていただきました。共感する部分もございます。それは、
婚外子
の出生の経緯、
背景
にはさまざまな事情があり得るわけでございますし、その
子供
の親の行為の倫理的評価あるいは
社会
的評価も、
日本
の一般的な
社会
通念に照らして好ましからざる場合もあるだろうと
思い
ます。 しかし、私どもの考え方は、もし仮に問題がある行動の結果、非
嫡出子
、
婚外子
が出生したという場合でも、その責めを負うべきは親であって、
婚外子
本人ではない、
婚外子
として生まれざるを得なかった
子供
自身はその責めを負う
立場
にないという考え方でございます。 ですから、もし、
婚外子
の出生により
法律婚
の
関係
にある
配偶者
や
嫡出子
に精神的負担や経済的不
利益
を生じさせたとするならば、それらに対処する責任は一に当事者の親にあるわけでありまして、その
立場
に立つならば、
婚外子
の
相続
について、その子が不
利益
をこうむるようになっていた従来の規定を是正することは、私は妥当だと考えるわけでございますが、
法務大臣
の所見をいただきたいと
思い
ます。
谷垣禎一
45
○
谷垣国務大臣
婚外子
が生まれる
理由
というのは、先ほども申し上げましたけれども、本当にさまざまでございます。私自身も、国会に出る前、弁護士として多少経験したことから見ますと、生まれる
理由
で、これはひどいなというのもあれば、やむを得ないな、苦しい中でこういう選択しかなかったんだなとか、いろいろな事情がございますから、一概にはこれは申し上げられないと思っております。まさにさまざま。 しかし、今おっしゃったように、
子供
に責めを負わせるべきではないという考え方は、私はやはりきちっと踏まえなきゃいけないんだろうと思っております。今度の
最高裁判決
も、よって来るその思想は、今、遠山
委員
がおっしゃったことを踏まえているのではないか、このように考えております。
遠山清彦
46
○遠山
委員
ありがとうございます。 本
改正
案への典型的な批判的な論点の一つとして、先ほどもありましたけれども、今回の
相続
格差是正が
日本
で定着している
法律婚
制度
を崩壊させるのではないか、こういう論点があるかと
思い
ます。 私も
法律婚
制度
は
日本
で定着していると思っておりますし、崩壊させてはならないと思っておりますが、ただ、私は、今回の法
改正
で、この
日本
の
法律婚
を重視する
制度
、
文化
というものが崩壊しないのではないか、このように思っているわけでございます。 それはなぜかといいますと、そもそも現行規定、今までの規定も、
婚外子
が
嫡出子
の二分の一という格差はつけているものの、
相続
権自体は認めているわけでございます。ですから、今回は、
嫡出子
に対して非
嫡出子
が二分の一だという取り分を平等にするという措置であって、
相続
権自体は現行法でも認めてきているわけでございます。 そうしますと、もし仮に誰かが
法律婚
のみを重視する
立場
に立てば、そもそも
婚外子
に
相続
権を与えていること自体おかしいんじゃないかと言うことも論理的には可能でありますから、そこは、今回の法
改正
の前と後は、従来と
本質
的に変わらないわけですね。 ですから、これは法
改正
が成立した後の数字を見なきゃわからないわけでございますが、私は
個人
的に、今回の法
改正
をした後も、それによって事実婚というものがふえるとか、あるいは、先ほど
土屋委員
がおっしゃっていた
不貞
の行為がふえるとかというふうには必ずしも言えないのではないか、こう考えておりますが、
法務大臣
の
見解
を求めます。
谷垣禎一
47
○
谷垣国務大臣
先ほど
宮崎
委員
にもお答えしたことでありますが、私は、明治
民法
制定以来、いろいろ
最初
は葛藤がありながら
法律婚
というものが定着してきたことの意義というのは小さくないし、それは簡単に崩れるものではないだろうと思っております。 昨今では、何か時々、イデオロギーで事実婚、
サルトル
、
ボーボワール
じゃありませんけれども、イデオロギーでとる方もないわけではないんだろうと
思い
ますが、将来の予想はなかなか難しいんですが、私は、そうやって築き上げられてきたものがそう簡単にひっくり返るとは思っておりません。
遠山清彦
48
○遠山
委員
次に、もう一つ、これも既にきょうの
議論
で出ているわけですが、典型的な批判の論点として、
嫡出子
と
婚外子
は、
相続
をする
財産
の形成、それから維持への貢献度が異なるという批判があるわけでございます。貢献度が異なるのに取り分が同じなのはおかしい、こういう
意見
でございます。 貢献度が異なるということは実際あり得ることでございますので、この主張は私も理解をしております。実際に、九月四日の
判決文
、私も全部読ませていただきましたが、
判決文
の一番
最後
の方で、岡部喜代子
判事
の補足
意見
がありまして、この問題に言及をしております。少し
引用
させていただきます。これは岡部
判事
の補足
意見
です。 「
婚姻
共同体
の構成員が、そこに属さない
嫡出
でない子の
相続
分を上記構成員である
嫡出子
と同等とすることに否定的な感情を抱くことも、理解できる」、こう
判事
は
最初
に述べているわけでございます。この理解の上で、しかしながら、その後、こういう主張をしております。「
嫡出
でない子は、生まれながらにして選択の余地がなく上記のような
婚姻
共同体
の一員となることができない。」「多くの場合は、
婚姻
共同体
に参加したくてもできず、
婚姻
共同体
維持のために努力したくてもできないという地位に生まれながらにして置かれるというのが
実態
であろう。」と。 ですから、
結論
は、やはり私が冒頭から申し上げているように、
子供
に責任がないんですね、そういう地位で生まれてきたという事実について。ですから、
子供
に責任がないのに、経済的な格差をつけて不
利益
をこうむらせるというのは、私は、いろいろな考え方があるから、感情論としてはわかりますよ。しかし、
法律
論として、論理的に考えれば、今回の措置は正しいと。それはどういうことかというと、
子供
を出生によって差別しないというのは、やはり普遍的な
原則
として我々は理解すべきではないかということなんです。 ただし、先ほど冒頭に申し上げました、
子供
が
相続
しようとする
財産
への貢献度が違う、婚内子と
婚外子
で違う、これは十分あり得るわけでございます。これについては、
大臣
も御承知のとおり、生前の遺言で
相続
分の取り分をあらかじめ決めておくことができる、そこで差をつけておくことができるわけです。それから、仮にそれをしなかった場合でも、寄与分等の
制度
というもので、
司法
の場で調整することは可能であるわけでございます。 そういう意味でいうと、
法律
の中で、何分の一、何分の一、あるいは、平等、平等と決めるその定めというものは、あくまでも補充的な機能でありまして、貢献度が違うから今回の法
改正
はだめだという懸念は、実はそこで手当てを既にされているということからも問題がないのではないか、私はこう考えておりますけれども、
大臣
の御
見解
を聞きたいと
思い
ます。
谷垣禎一
49
○
谷垣国務大臣
相続財産
の形成に関する貢献というのも、これもなかなか一概に言えないんだろうと
思い
ますね。 糟糠の妻が
子供
と一緒になってお店を一生懸命守り立ててきた、それで、亭主が亡くなったら、どこかから
子供
が出てきて、私にも
相続
させろと言われたら、そういうさっきおっしゃったような感情が起こるでしょう。 しかし、反面、結婚したけれども、どうも
夫婦
仲がうまくいかなくて、それで
離婚
しようと思っても、
実態
上、
夫婦
関係
というか
婚姻関係
はもうなくなっているのに、なかなか
離婚
届に判こを押してくれない、そのうちにどこかで家庭を事実上つくって、
子供
が生まれて、そこで息子も親孝行で一生懸命やっているというようなことも、これは現実にはあって、まさにさまざまなんです。 しかし、あえて言えば、先ほどの
最高裁
の
判決
もそうなんでしょうけれども、
嫡出子
である方が
嫡出子
でない方よりも貢献度が多い場合が多いのかなと。これは実証的なものがあるわけじゃありません。ただ、それは、確かに
最高裁
がおっしゃるように、そういう非
嫡出子
で、家庭の中に入って一緒に協力をする機会がなかったという場合も多いというのも、これは事実だろうと私は
思い
ます。 だから、この解決は、
委員
がおっしゃるように、やはり遺言であったり、あるいは寄与分を活用する。
法定相続分
で全て解決しろといっても無理だと
思い
ますね。
遠山清彦
50
○遠山
委員
私も、
大臣
の
最後
におっしゃった部分、全く同感でございます。これはやはり、私
人間
のさまざまな
関係
というのは、正直に言えば、全て
法律
でしゃくし定規に解決できる類いのものばかりではないわけでございますし、逆に言えば、
家族
間の話し合いで決められれば、
司法
に行く前に全て解決することも多いわけでございます。 ただ、今回の法
改正
についての考え方、そして、私ども公明党の中の
議論
を経て賛成になった
立場
の根幹にある部分というのは、繰り返しで恐縮でございますが、
子供
が出生や出自、あるいはどういう
立場
でこの世に生まれてくるかという、
自分
がまさに生まれてくる前の事情によってある程度環境や地位や
立場
が決まってしまっている、そこに
子供
も責任をとらせるような法体系ではいけないということで賛成になっているわけでございまして、その点はぜひ強調させていただきたいと
思い
ます。
大臣
、恐縮ですが、
最後
に、
民法
と少し
関係
のない御
質問
をさせていただきますし、江藤拓農水副
大臣
もお見えですので、一問お聞きをしなければなりません。 それは、重要な
司法
判断
が最近下されまして、混乱が生ずるおそれがありますので、
法務大臣
の
見解
を伺いたいと
思い
ます。 長崎県の諫早湾の開門調査問題について、今月十二日、三日前に、長崎地方
裁判
所は、国に開門差しとめを命じる仮処分決定を行いました。三年前の十二月には、福岡高裁が開門を認める
判決
を出して、これは、菅直人政権が上告を長崎県に相談せずに断念したために、確定してしまいました。今回の
司法
判断
と三年前の確定した
判断
と、真っ向から相反するものとなっておりまして、地元では既に混乱しております。 そこで、伺います。 過去にこのような矛盾した
判決
が出た例はあるのか。その際の行政府としての対応は、どういう対応をとったのか。また、私
個人
といたしましては、今回出た
司法
判断
というものは、三年たっております、新たな事情を考慮した上で下されているので、そこだけに着目すればですけれども、新たな
司法
判断
の方が重視されるべきではないかというふうに、これは時差の問題ですね、考えますけれども、これらの点について、いかがでしょうか。
谷垣禎一
51
○
谷垣国務大臣
今月の十二日に長崎地裁で諫早湾の排水門開門差しとめを認める仮処分が出たわけですね。おっしゃったように、
平成
二十二年十二月に福岡高裁は、確定
判決
になっておりますが、この排水門をあけろという
判決
を出して、まさに私、どちらもの被告としては、股裂きと申しますか、平重盛の心境なわけでございます。 先ほど、
最高裁
は、
判断
をまちまちにさせない役割も負っているということでございましたが、これは高裁でとまって確定になっているということもございますね。 それで、国として、過去にこのような股裂き状態になった、同一事項について相反する意思決定を受けたことがあるかというと、そのような事例は承知しておりません。事務方にも調べさせましたが、そういうことがあるとは聞いておりません。 そこで、この
二つ
の
裁判
の
関係
は非常に難しいわけで、まさに忠ならんと欲すれば孝ならず、こういうことでございますが、今回の仮処分決定があったからといって、福岡高裁の確定
判決
が消えるわけではありません。それから、前後
関係
とおっしゃいましたけれども、消えるわけではないのは事実です。 したがって、まず、この今回の仮処分、これは大変分厚い仮処分なんですが、詳細に検討して、
関係
機関、きょうは江藤副
大臣
お見えですが、農水省等ともよく協議をして適切に対応していきたいと考えております。
遠山清彦
52
○遠山
委員
私も今、
大臣
の御答弁を伺って、これは
歴史
上初めての全く相反する
司法
判断
が出たということでございまして、
歴史
上初ということですし、先ほど
大臣
もおっしゃっていたように大変難しい状況になっているんだと
思い
ますが、そこで江藤副
大臣
の御活躍が期待されるわけでございます。 今、この開門への
反対
派と賛成派双方が、異なる
司法
判断
を後ろ盾として主張するという形になっているわけでございますが、新聞の社説なんかでは、
司法
判断
がこんなに分かれちゃっていますから、これはもう政治が解決するしかないんじゃないか、こういった社説も出ているわけでございますが、農水省としてどのように対応をされるのか、率直な御答弁をいただければと
思い
ます。
江藤拓
53
○江藤副
大臣
この
委員
会に呼んでいただいて、大変名誉に思っております。私は
余り
縁のないところでございますので。率直にお答えをしたいんですが、きょうはちょっと歯切れが悪いことをお許しいただきたいと
思い
ます。 昨日、午前中には、佐賀県知事以下、
関係
者の方々、国
会議
員の先生も大挙して私の部屋にお越しになられて、率直な御
意見
を伺いました。非常に緊張感を持って、今まで来られたときと比べて、はるかに目に、殺気と言うとちょっと語弊がありますけれども、迫力のある目線が投げかけられました。 その後、午後には、
大臣
室に今度は長崎県知事がお越しになられまして、私は担当副
大臣
ですから同席したわけでありますが、こちらは、今さら民主党さんの政権時の
判断
についてどうこう言っても仕方ありませんからもう言いませんけれども、こういう
判決
が出た、これをもって、今時差のお話もされました、この時差に新たな事象が生まれて、こういう
判決
、
司法
判断
がなされたんだから、こっちの方が優位性はあるんだ、
異議申し立て
なんかは絶対しないでくれというふうなことの真剣な御
意見
をいただきました。 五百九十三ページございます。私も、
判決
が出る日はずっとじりじりと待っていたんです。これは
関係
省庁が連携しなきゃなりません。もちろん矢面に立つのは我々でありますけれども、最終的には、総理も含めて、国全体としてこれは責務を負っているわけでありますから、官邸も含めて、
関係
省庁が連携して検討を今深めている最中でございます。
遠山清彦
54
○遠山
委員
江藤副
大臣
、現時点でおっしゃれる精いっぱいの率直な御答弁をいただいて、ありがとうございました。
法務大臣
、これは
司法
の部分での今後の対応というのもあり得るわけでございますし、また、既に報道されておりますけれども、間接強制というのをされた場合に、国が負った義務を履行しない場合に、履行されるまで罰金を国が公金から払わされる
制度
があるということでございます。両方、
司法
判断
が出ていますので、開門をしろというのと開門するなというのと両方ありますから、これは、開門すれば、するなと言った方に違反しますから罰金を払う、開門をしないと、開門しろと言った
判決
に違反しますから罰金を払う。だから、どっちに転んでも、国が罰金を払わざるを得ない状況もあり得るという中でのお話になっているわけでございます。 これは、時間がありませんので答弁は結構でございますけれども、私は、国と長崎県と佐賀県と、やはりしっかり話し合いをして解決策を見出す方途というものを、
司法
ではなくて政治の次元でもう一度しっかり考えることも必要だと思っておりますし、そういったことも念頭に置きながら、ぜひ
法務省
もお知恵を出して、こういう件は全ての人が納得できる解決というのはなかなかないかもしれませんけれども、一番いい方向に行くように御努力をしていただきたいということを申し上げまして、私の
質疑
を終わりたいと
思い
ます。 ありがとうございました。
江崎鐵磨
55
○
江崎委員長
これをもって
質疑
を終了いたしました。 次回は、来る十九日火曜日
委員
会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時三十分散会