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西田委員 ありがとうございます。恐らく常識的にはそういうことだろうなというふうに思います。
それで、この
法律でこういう文言が出てくるわけですけれ
ども、果たして、我が国の立法で
配偶者といったときに、ほかの
法律はどうなっているんだろうかということを思うわけでございます。
それで、いわゆる総務省の法令データ検索のページで、事実上婚姻関係と同様の
事情ということで文言検索してみましたら、何ともう既に六十一件もあるんですね。
配偶者というものを定義するときに、事実上婚姻関係と同様の
事情にある者、こういう定義がもう既に六十一件なされている。一番古い
法律で見ると、何と大正十一年なんですね。健康保険法というものがあるわけでございます。
では、大正時代からもうそのように
運用されていらっしゃったのかな、もしくは、当時立法されたときの立法
趣旨はどのようなものだったんだろうかなということを調べてみようと思いまして、そうしたら、健康保険法、大正十一年のものに関しては、昭和十七年に改正されているのがあるんですね。そこで、「
配偶者(届出ヲ為サザルモ事実上婚姻関係ト同様ノ
事情)」と、ここで出てくるわけでございますけれ
ども、なるほど昭和十七年かというふうに思うわけでございます。
それで、その後ですけれ
ども、これはもう昭和五十年の雇用保険法で廃止になっているんですけれ
ども、第一回国会で成立している失業保険法があるんですけれ
ども、ここでも同様の記述があるわけでございます。
法律ですので、先例先例ということで、
配偶者の定義をするときには恐らくさかのぼっていくのではなかろうかなというふうに思ったわけですけれ
ども、最初にこういう文言が使われたときはどういう立法
趣旨だったのかなということを思いますと、やはり当時の時代
背景、昭和十七年ということでございますし、第一回国会で昭和二十二年ということでございますので、まさしく戦時なんですね。戦時の混乱の中での立法ということが
背景にあったのではないか。
ここで、もう大分昔のことですので、限られた時間しかありませんし、この立法
趣旨はどうだったんだということを検証し切ることはできないわけでございますけれ
ども、二つ、私は仮説を立ててみました。
一つは、先ほど言ったとおり、戦時であったためになかなか届け出が困難であったという
状況。あるいは、その届け出を受理する役所の機能も、行政の機能も、全てをカバーするほど機能していなかった。そういうことがあって、こういう文言が記されたのではないかというのが
一つ目でございます。
もう
一つ、これは非常に想像力を働かせなきゃいけなかったわけですけれ
ども、当時から、いわゆる
法律婚ではなくて事実婚を容認していこう、そういう意図があったのではなかろうか。大正十一年そして昭和二十二年ということがありますけれ
ども、もうこのころから、例えば家族の廃止といえば共産党宣言でございますよね。さらには、エンゲルスは、婚姻の自由、恋愛至上主義なんということも言っていましたし、レーニンに至っては、それを確実に実行して、ロシアにおいて事実婚を容認していくわけです。時代は重なるわけでございますけれ
ども、そういった思想
背景の中でのことだったのではないか。
そういったこともいろいろ想像を働かせたわけですけれ
ども、いずれにいたしましても、先ほど申したとおり、ここでそれを検証し切ることはなかなかできないわけでございます。
ただ、私、通常国会でも申し上げましたけれ
ども、やはり家族の尊重といったものはしっかりとなされていかなければならない中にあって、長年こういった文言がずっと入ってきている。最初はもしかしたら立法
趣旨として違ったのかもしれないけれ
ども、今日に至っては、もう御答弁ありましたとおり、事実上の婚姻関係にある人、もしくはそういう実態にある人を認めるんだ、
配偶者と同等に扱うんだというふうに解釈されるようになってしまっているわけでございます。
私は、家族の尊重といったときに、やはり
法律婚といったものを大切にしていかなければなりませんし、
法律婚じゃなく事実婚を容認していくといったことは、必ず家族
制度の弱体化につながるというふうに警鐘を鳴らしたいと思うわけでございます。
前回の
質問でも、私は、家族というのは文明社会のパイプラインという表現をさせていただきました。国家、民族の中に宿る伝統であったり、慣習であったり、もしくは自由や道徳やそういったものが宿る温室でもあるのが家族であるわけでございます。
いつも、大抵私は
質問で何かを引用しておりますけれ
ども、きょうは、共同体の探求をされておりますアメリカのニスベット教授の著書から引用しなきゃいけないなと思っておったんです。家族が一番基本になるんですけれ
ども、共同体から離れてしまった個人というのは、根なし草人間であり、妄想人間であり、無規範人間であり、孤独にさいなまれる人間だと
指摘をされて、まさにそのとおりだなというふうに思うわけでございます。
また一方で、こういう家族といった共同体は、個人と国家の間にある中間組織として、国家権力が個人に対して過剰に介入するのを防ぐ、本当に大切な、自由社会にあっての存在のはずなんですね。
ですから、私は、家族といったものは本当に尊重していかなければならないし、家族を尊重しないような立法といったものにはやはり警戒していかなければならないというふうに思うわけでございます。
そういった中で、また今回の
法律に戻るわけでございます。
今回、
配偶者の定義の中で、事実上婚姻関係にある方を認めているということになるわけでございます。民法では、
配偶者というのは、明らかに、届け出をしてからその効力が発生するということになっているわけでございます。戸籍法でそうなっているわけでございます。そういった中にあって、今回は、届け出をしなくても
配偶者と同様の効力が発生するような
法律として提示されているわけですけれ
ども、やはり私は、民法とすんなり整合しないというふうに感じるわけでございます。ここについて、
大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。