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根岸参考人 おはようございます。
根岸です。
私がここでお話しする簡単なメモ、一枚紙を用意しておりますので、基本的にそれによりたいと思います。
私は、料理の
食材表示と
景品表示法の話をさせていただきたいと考えています。
今、
景品表示法の規制強化が非常に主張されております。それは必要な
部分があると思いますけれ
ども、まず、規制強化を検討する前に、その前提として、従来の商慣習を
徹底的に洗い直していただきまして、一般
消費者が料理について自主的かつ合理的に選択することを可能にするために、本来どういう
食品表示が適切であるかという
ルールの設定が必要だと思います。
正直言いまして、私、今回の報道、新聞などを見まして、お恥ずかしい話ですが、どちらが優良で、どちらが優良でないのかよくわからないものが非常に多かったです。私のような
食材知識の不十分な
消費者というのは少なくないと思います。その
意味で、私のような、レベルが低いという言い方、私はレベルが低いですが、ほかの方をレベルが低いと言うのも失礼ですけれ
ども、そういう方が多いと思いますので、そういう
消費者の目線に立っていただきたいと考えています。
表示を正確をきわめればきわめるほどよいというわけではないと思います。そんなことをやりますと、かえって
消費者の選択を誤らせることになるし、コストが飛躍的に増大する。
消費者の
利益にならないと考えていますので、まず、料理の
食材表示について、一般
消費者が自主的かつ合理的に選択する上で適切な
表示というものを、これまでの
考え方を
徹底的に洗い直していただきまして、
ルールを検討していただきたい、こういうふうに考えています。
二番目ですけれ
ども、こちらは先生方御案内のとおりであると思いますが、三番目にお話しする前提として少しお話ししたいと思います。
景品表示法の現状ということですけれ
ども、御案内のように、昭和三十五年のにせ牛缶事件が契機となりまして、昭和三十七年に独占禁止法の補完法として制定されました。その後、
平成二十一年、
消費者行政の一元化の動きを受けまして、所管が公正
取引委員会から
消費者庁に移管いたしました。
これに
対応して立法
目的も、かつては、公正な競争を確保し、一般
消費者の
利益の保護と書いてありましたが、今般は、公正な競争の確保がなくなりまして、一般
消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限、禁止、そういうことによって一般
消費者の
利益を保護する、こういうふうに改正されました。
しかしながら、公正
取引委員会が所管していた時代から、基本的に現在の
目的と実質的には同じ規制
内容が行われてきたというふうに私は
理解しております。ですから、その実体規制においては、従来から実質的な変化はないと
理解しております。
現在は、今回の
事例はいわゆる優良
誤認表示でございますけれ
ども、これは不実証広告規制を伴いまして禁止しております。そして、
消費者庁が優良
誤認表示がありますと措置命令をする。都道府県でも
調査、指示、措置を請求いたしまして、
消費者庁の方で措置命令をやる。そして、措置命令に違反した場合に罰則、こういう
仕組みになっております。
また、適格
消費者団体の優良
誤認表示、
不当表示に対する差しとめ請求権も与えられるに至っております。それから、公正競争規約、
業界の公正競争規約を
消費者庁及び公正
取引委員会が認定するという
仕組みで、現在、
景品表示法は動いているというふうに
理解しております。
これを、どのようにその
実効性を確保するのかということが課題になっていると思いますが、一番最初に私書いておりますけれ
ども、公正
取引委員会と
消費者庁の共同所管にするということがまず第一のポイントであります。
他の
消費者法というのは、
消費者庁ができましたけれ
ども、厚労省や農水省や経産省などと共同所管でございます。これは非常に重要なことでありまして、先ほ
どもお話がございましたが、
消費者庁はいわゆる地方事務所というのは基本的には持っていないということでありまして、他の省庁はそれを持っているということですね。
実際のところ、この景品
表示の問題というのは
全国で起こるわけでございますから、やはり地方での
調査等が非常に重要であります。そのときに、この
景品表示法は
消費者庁だけが所管であるというのには限界があるというふうに思います。
もちろん、
消費者庁は、公正
取引委員会の地方事務所に
調査を頼むということはできますけれ
ども、しかし、やはりそれには大きな限界がありますし、公正
取引委員会の職員の仕事のインセンティブということにも関係がございます。したがって、公正
取引委員会との共同所管にする必要があると思います。
もともと、この
景品表示法というのは、にせ牛缶事件が出てきたときには、独禁法で
表示を規制したんですね。現在では、欺瞞的顧客誘引、不当な
利益による顧客誘引、後ろの方は不当な景品の話ですが、前の方は、欺瞞的顧客誘引というのは、まさに
不当表示、優良
誤認表示などを独禁法でも規制ができることになっております。
その
意味で、
景品表示法が禁止する
不当表示と不当景品類の提供というのと独禁法上の不公正な
取引方法とは、連続、重なっているというところでございます。したがって、公正
取引委員会と
消費者庁との共同所管にするということが重要である、こういうふうに考えております。
二番目でありますけれ
ども、優良
誤認表示などに課徴金を賦課するか、そういう問題がございます。
これは、独禁法が、不公正な
取引方法について課徴金が入った当時、この
不当表示などについても同じことが考えられた
経緯がございます。したがいまして、それを検討するというのは必要かと考えます。
ただ、課徴金を賦課する場合に、その設計の仕方に十分注意しなければならないと思います。せっかく課徴金の賦課権限が入ったが、かえってそれが使いにくいということになりますと、動かないということになります。
ここでお話しするべきことではございませんが、独占禁止法の一部で、不公正な
取引方法について課徴金が入ったことによって、かえってその執行が鈍るということがあり得る、こういうことも十分御留意いただきたいというふうに私は考えております。
したがいまして、この課徴金の賦課につきましては、独禁法あるいは金融商品
取引法などにございますが、
義務型、違反があったら必ず課徴金を取るというふうにするのか、いや、裁量型にするのかなど、この設計方法について十分御検討いただきたいというふうに考えております。
三番目ですが、都道府県に、あるいは知事に措置命令権限を付与するかということでございますが、現状では、私はそれは非常に疑問です。
私自身も、自分の兵庫県等で
消費者行政の一端を担わせていただいておりますけれ
ども、予算と人員が全くございません。一人の人があらゆることをやるなんということは不可能でございます。したがいまして、国から幾らやれと言われても、事実上、不可能だと私は思います。実力をつけなければ、これはもう絵に描いた餅というふうに私は考えております。
それから、ほかの
消費者法、例えば、
特定商
取引法とか
消費者安全法についても類似の規定がございまして、今のところ、最終的な権限はやはり国にある、国にこれをやってくださいということを請求するということはございますけれ
ども、それにとどまっておりますので、それとの平仄も考えていただきたいと考えます。
それから、四番目ですが、優良
誤認表示があったら直ちに処罰するかという問題ですが、私自身は、現在では、それは比例原則に照らして不適切であると思います。
現在は、措置命令に違反したら処罰する、いわゆる間接罰になっております。やはり罰則というのは重いものでございますので、それに
対応する行為というのが行われることが前提でありまして、現在の行われている料理の
食材表示について、いきなり直罰規定というのは、これは
法律家の常識として非常に難しいと考えております。しかし、もちろん、これも未来永劫不適切というわけではございませんけれ
ども、やはり今後の状況を見なければならないと思います。
それから
最後、公正競争規約の活用でございますが、これは私が一番最初に申しましたように、私のような非常にレベルの低い一般
消費者は私は多いと思いますので、その人々にわかるような
表示をつくっていただくということでありまして、まず
業界でそれを検討してやる、そして
消費者の
意見を聞き、専門家の
意見を聞くということです。
公正競争規約をつくることは、多分、料理については非常に難しいかと思います。つまり、
業界が非常に多方面にわたっていて、まとまることは難しいかもしれませんけれ
ども、しかし、公正競争規約そのものでなくても、類似のものを検討していただいて、ぜひ、本来あるべき
ルールを提示していただきたいと考えております。
以上でございます。(
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