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萬屋参考人 ただいま御紹介をいただきました
公益社団法人千島
歯舞諸島居住者連盟副
理事長の
萬屋と申します。
歯舞群島の一つであります多楽島の出身でございます。
本日、
安住委員長初め
委員の
皆様方の御高配によりまして、
北方領土元居住者を代表いたしまして
意見陳述の場を与えていただきましたことに、厚く御礼を申し上げさせていただきます。
また、日ごろより、私
たち元
島民及びその後継者に対しまして御
支援、御
理解を賜っておりますことに、改めて心から感謝を申し上げる次第でもございます。
意見を申し上げる前に、
安住委員長には、平成十八年、
北方地域旧
漁業権者等に対する
特別措置に関する法律の改正におきまして、融資資格者の拡大及び元居住者に対する死後承継の導入の実現の際に、当時、
委員長として特段の御尽力を賜りましたことに、この場をおかりいたしまして、改めて厚く感謝を申し上げる次第でございます。
また、私自身、本年、
北方四島、国後、色丹、択捉、
北方四島交流、いわゆるビザなし交流において、大変御多忙の中、
北方四島を御訪問いただきました各
委員の
皆様方に大変御指導、御
協力を賜りましたことに、改めて厚く
お礼も申し上げさせていただきたいと思います。
最初に、千島連盟の設立の経緯、事業などについて申し上げ、その後、
意見、要望を述べさせていただきますので、よろしく
お願いを申し上げたいと思います。
六十八年前の昭和二十年八月でありますが、第二次
世界大戦が終結し、ポツダム宣言を受諾した後にもかかわらず、当時の
ソ連軍は、無抵抗の住民に銃を突きつけ、八月二十八日からの択捉への侵攻を皮切りに、九月五日までに国後島、色丹島、そして
歯舞群島を不法に占拠いたしました。
北海道本土から的確な情報がなく、元
島民は混乱に陥った次第であります。
私は、
歯舞群島でも最も北海道本土から離れた多楽の生まれでありますが、私の両親も含め、約半数の元
島民は、
ソ連軍の監視の目をくぐりながら、親族や近隣の
人たちと助け合いながら、闇に乗じて、危険を顧みず小さな船で脱出を試みたのであります。
北方領土周辺は、
世界有数の漁場でありますが、夏には濃霧に包まれ、お盆を過ぎれば荒々しい海と豹変いたします。正確な記録はありませんが、脱出を図り、本土を目の前に海に投げ出された
人たちの目撃証言も多数あります。
一方で、残りの半数の元
島民は、
自力で脱出できず、
ソ連の支配下に置かれ、財産や食料を取り上げられ、心身ともに苦痛の中に身を委ねざるを得なかったのであります。これらの元
島民は、昭和二十二年から樺太の真岡を経由し函館への引き揚げが開始され、昭和二十三年十月を最後に
全員強制送還されたものであります。
樺太真岡の収容所は帰還を待ち続ける
人たちであふれ、寒さの中でテント
生活を強いられたり、食料も黒パンと塩生ニシンの配給のみといった
状況もあり、こうした劣悪な
環境の中で、祖国の土を踏むことなく失われた命も多数あったわけであります。
北方四島から
自力で脱出した者も、また強制送還された者も、それまで築き上げてきた
生活の
基盤や財産の一切を島々に残し、裸同然で島を追い出され、国じゅうが戦後の混乱が続く中、親族や縁故などを頼りに、定住の地と職を求めながら、艱難の道をたどった次第であります。
元
島民の多くは、島で
漁業関係を営んだこともあり、また、すぐにでも島に戻れることを信じ、
根室周辺に職と
生活の場を求めたものであります。
こうした
状況の中で、
根室の地で
返還要求運動が始まり、元
島民たちも、出身地の島や集落ごとに島の会などを組織し、お互いを励まし、再び島に戻ることを誓い合うようになったわけであります。
昭和二十五年から、サンフランシスコ
平和条約の
締結の機運が高まったことを背景に、
根室市や札幌市を
中心に
北方領土返還要求を求める声が強まり、次々と元
島民団体が結成され、その後、大同団結が図られ、昭和三十三年に、全国唯一の元
島民団体として、社団法人千島
歯舞諸島居住者連盟が設立されたものであります。
また、当連盟は、公益法人制度の改革に伴い、
北方領土の早期
返還、
北方地域の元居住者等に対する援護の充実を図り、
北方領土問題及びこれに関連する諸問題の
解決の
促進に寄与することを目的に、本年四月、内閣
総理大臣の認定を受け、新たな公益法人となったところでもあります。
当連盟の主な事業でありますが、
北方領土返還要求運動の推進、元
島民の援護対策の推進、後継者育成対策の推進、さらに、
日ロ政府間の合意によって平成十一年度から始まった、元
島民とその家族が
ふるさとを訪問する、いわゆる
自由訪問事業の実施主体ともなっております。
北方領土返還要求運動の中核となっております署名
運動は、昭和四十年に、
国民世論の喚起と
ふるさとの祖国復帰を悲願する当連盟の元
島民が札幌において署名活動を行ったのが最初であります。この草の根
運動は、全国各地の婦人や青年などの団体、自治体などの
協力、共感を得ながら全国規模の
運動に広がり、今日に至っているものであります。
この署名数は、平成二十五年三月、八千五百万人に達し、この
北方領土の早期
返還を要求する
国民の意思が一日も早く達成されるよう、国会法第七十九条の規定に基づき、去る十一月二十日、百六十万人の署名を携えて衆参両院に請願を行わせていただいた次第であります。
その際、
安住委員長を初め本
委員会の
委員の
皆様には、強い決意と温かい励ましのお
言葉を賜り、改めて感謝を申し上げる次第でございます。
次に、私
たち元
島民の強い思いを含め、
意見、要望を申し上げさせていただきます。
第一は、
北方領土の早期一括
返還についてであります。
当連盟は、多くの先
人たちがたゆまぬ努力と不屈の開拓精神で築き上げた我が国の固有の
領土、また、
ふるさとである
北方領土の祖国復帰を一心に願い、
政府の
外交交渉を信じながら、
北方領土の早期一括
返還を掲げ、
返還運動の先頭に立ってまいりました。
私
たちは、この六十八年間、
日ロ間の
外交交渉があるたびに、大きな
期待を抱き、そして失望を味わうことを繰り返してまいりました。
平成二十二年十一月、当時のメドベージェフ
大統領は、突然、国後島を訪問いたしました。私
たちの憤りは言うまでもありませんでした。
本年四月、安倍総理が我が国の
首脳として十年ぶりに
ロシアを公式訪問され、共同声明において、
日ロ平和条約が
締結されていないことは異常であるとの認識で一致し、
平和条約問題の双方受け入れ可能な
解決策を作成する交渉を加速させるとの指示を双方の外務省に出し、
平和条約交渉が再スタートしたと受けとめております。
このときを含め、本年、半年で四回の
首脳会談が行われ、二度の
外相会談、八月に開催された
次官級協議など、
日ロ間における動きが
活発化していることに大いに
期待し、歓迎をしているところであります。
当連盟は、これまでも、
北方四島の帰属に関する問題を
解決して
平和条約を早期に
締結するとの
政府の方針を支持してまいりました。
私
たちは、
平和条約交渉が
北方領土交渉を前提に行われるものと承知しておりますが、安倍総理もおっしゃっていますように、
領土問題の
解決には魔法のつえはなく、
解決への具体的な道筋はまだ見えていない
状況であることはまことに残念であり、私
たちとしても、今後の交渉の動向を注意深く見守っていかねばならないと思っております。
当連盟は、
北方四島から強制的に追い出された元
島民の組織であり、
北方四島、すなわち、択捉島、国後島、色丹島及び
歯舞群島を一括して返してほしい、一人でも元
島民が元気なうちに
北方四島が返ってきてほしいと願うのは当然のことであります。
領土交渉において、少なくても交渉のスタートは四島であるべきだと考えております。
再び自由に
ふるさとへ帰ることなく他界した父母や仲間の無念の思いを胸に、私
たちの使命として、決して諦めずに
返還要求運動に尽力してまいりたいと考えております。
どうか、本
委員会の
皆様方には、元
島民の置かれている
現状と
ふるさとへの思いを御
理解いただき、
北方領土の早期一括
返還のためにさらなる
国民や国際世論の啓発、喚起に御尽力賜りますとともに、より一層強力な
外交交渉が
展開されるようお力添えを強く
お願い申し上げるところであります。
次に、元
島民の財産権の不行使に対する補償についてであります。
戦後六十八年を経た現在、苦難の日々を余儀なくされた元
島民約一万七千名も、既に一万名以上が他界し、生存している者の
平均年齢は七十九歳を超えております。元
島民は、父祖が築き上げてきた
生活の
基盤、財産の一切を失い、島に残してきた残置財産はもとより、この六十八年間、これらの財産の権利を行使できないまま現在に至っており、その損失ははかり知れないものがあります。
当連盟の小泉
理事長は、今年九十歳になりましたが、
理事長になってこの二十一年間、
北方領土問題の
解決のために全国、全道を奔走し、特にこの財産権の不行使に対する損失補償を最重点課題の一つとして、
政府、国会に全力を尽くして要望してまいった次第であります。
当
委員会におかれましては、小泉
理事長の願い、そして、私
たちには残された時間が少ないという
現状、さらには、北特法で示されている元
島民が置かれている特殊な事情、特別な地位を御
理解いただき、私
たちの要望に沿った直接的な補償措置を議員立法において早期に実現されるよう特段の御
理解、御
支援を賜りたく、
お願いを申し上げる次第であります。
また、北海道が事業主体となっている
北方四島墓参事業は、
政府見解では私的行為とされておりますが、自由に訪問できない
北方領土という特殊な
地域への墓参でありますことから、国が実施主体となるよう
お願いを申し上げる次第であります。
次に、後継者の育成強化対策についてであります。
先ほ
ども申し上げましたが、私
たち元
島民は
平均年齢が七十九歳を超えており、気力、体力ともに限界が近づいており、長引く
返還運動の主体はいや応なく後継者に託さざるを得ない
状況になっており、
返還運動において後継者の
役割はますます高まっております。
国
会議員の先生方の御尽力をいただきながら、
政府においては後継者の育成強化対策に
支援措置を講じていただいていることに感謝申し上げる次第でありますが、北対協融資制度において、融資対象者が同居等の子または孫のうち一人に限るとされておりますことから、例えば長男が承継を受けたにいたしましても、他の兄弟姉妹は融資対象とならない
現状にあります。このため、元
島民の子または孫の全ての者に承継が認められるよう要件緩和を図るように、切に
お願いを申し上げる次第であります。
最後の
お願いでありますが、
北方領土問題は、元
島民あるいは
地域の問題ではなく、
国家の主権と尊厳にかかわる最重要の課題であり、
領土返還の願いは
国民の悲願でもあります。
北方領土を御
視察いただいている国
会議員の
方々から、こんなに近いのかとの発言をいただくこともありますが、元
島民、我々にとっては、余りにも近く、余りにも遠い
ふるさとであります。
委員の皆さん初め一人でも多くの国
会議員の先生方には、ぜひ、
北方領土を御
視察され、私
たち元
島民や行政並びに
関係者の声に耳を傾ける機会をいただけるよう
お願い申し上げます。
終わりに当たりまして、私
たち元
島民も
高齢化が進み、残り時間も少ない中、これまで
返還運動に御尽力いただいている全国の仲間、
関係団体等と連携を図りながら、
政府の
外交交渉を後押しし、一日でも早く
北方領土の
返還が実現するよう力を尽くすことをお誓い申し上げますとともに、
安住委員長を初め
委員の
皆様方のますますの御健勝、御活躍をお祈り申し上げ、私の陳述とさせていただきます。
本日はまことにありがとうございました。(拍手)