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公述人(
上念司君)
皆さん、おはようございます。(発言する者あり)ありがとうございます。
政治を志す
皆さんは、挨拶は人間
関係の基本だと思いますので、もう少し大きな声でお願いいたします。
皆さん、おはようございます。(発言する者あり)ありがとうございます。
経済評論家、
上念司でございます。
本日、私は、この場に来てお訴えしたいことは
一つだけです。ここは国の
政策を左右する場ですから、誤った情報によって誤った
政策を選んでしまったら国が大変になると、このことをまず肝に銘じていただきたいなと思って今日はこの場に来ました。
例えば、戦前の近衛内閣末期、そして東条内閣に至るとき、対米開戦という誤った決断を誤った情報に基づいて
日本国
政府は行いました。その結果、
日本はどうなったでしょう。一旦国は滅びてしまいましたよね。
税と社会保障の問題、それから今回の
経済、それから
金融の問題、これら全て、誤った決断をすれば国民が塗炭の苦しみを味わうんだと、このことをまず肝に銘じなければいけない、そのために我々は正しい情報が何かということを見抜く目を持たなければいけないと、そのように思います。
私の
資料はこちらの
資料になりますので、お手元に、二ページめくっていただいて三ページ目を御覧ください。
これまで、大変残念ながら、誤った情報に基づいた
政策が行われてきました。しかもそれが十五年間も続いていました。その誤った情報の根本原因というのは何かというと、まさにこの
日銀理論というものであります。幸いにして黒田新体制はこの
日銀理論を放棄しました。おかげで
景気は良くなりつつありますが、ここで一旦ちょっとこの
日銀理論というものを再検証していきたいと思います。
なぜ
日銀理論が間違っているか。彼らの主張は、
金融政策で物価を左右できない、物価は
金融政策で決まらないということを言っていました。その様々なバリエーションとして、
金利がゼロになったら何もできないとか、
銀行貸出しが伸びなければ
意味がないとか、
デフレは中国の安価な製品が流入してくるから起こるとか、しまいには
デフレは人口減少で起こるなんというとんでもないでたらめを言っておりました。
これら
一つ一つは簡単に論破できるんですけど、例えば、人口が減っているから
デフレになっているのであれば、
世界中の人口減少国全てが
デフレになっていなければ話のつじつまが合いません。ところが、
デフレになっているのは
日本だけです。中国から安い製品を輸入している国は
日本だけではありません。GDP比で見れば
アメリカやオーストラリアの方がたくさん中国から物を買っています。ところが、
アメリカもオーストラリアも
デフレではございません。
ということで、こういった誤った理論に基づいて旧
日銀の誤った
金融政策を展開したことによって
日本の
デフレは何と十五年も続いてしまったという大変恐ろしい状態でございます。仮に、
日銀の言うことが正しくて、もし
お金を幾ら刷っても物価に全く
影響を与えないということが正しいのであれば、これはこれで非常にいいことだと思うんですね。なぜなら、毎年百兆円
お金を刷ってこれを
予算にしても
インフレ起こらないわけですから、無税国家が誕生しますよね。
つまり、彼らの言っていることはもうそもそもでたらめだったんですね。ところが、この
政策を十五年間も我々はやってしまった。しかも、それを輪に掛けて増税までしようとしてしまったということで、
日本経済はこの十五年間塗炭の苦しみを味わいました。
一番端的な例は、一九九七年ごろまで自殺者数は二万人ぐらいでしたが、九八年から三万人に増えて、一万人増えた状態がもう十五年間続いています。合計十五万人の
方々が
経済苦を理由に亡くなっています。この亡くなった方の合計の人数は日露戦争の戦死者よりも多い人数です。一・五倍ぐらいです。まさに、とんでもない
政策によって国民が塗炭の苦しみを味わった、それがこれまでの十五年間だったと私は思います。
次のページを御覧ください。実際にデータで検証しましょう。
日銀は一生懸命やっていたというような人がいますけれども、
デフレと超
円高を招いた
日銀の大罪というこちらのチャートですね。御覧いただければ分かるとおり、
日銀は他国の
中央銀行に比べて
お金の発行量が明らかに少ないです。全く何もやっていません。よく絶対量が多いという話をする人がいるんですけど、
関係ないですね、
市場が見ているのは変化率ですから。二〇〇七年のリーマン・ショック以降、どれほど積極的に貨幣の増加に取り組んだかというのはこのグラフを見れば一目瞭然なわけです。
日本円の量が少ないから
円高になり、
お金の量が少ないからみんな
お金を大事にして物を買わない、これが
デフレの原因だったわけですね。ところが、四月四日の通称黒田バズーカによってこの誤った
政策は放棄されました。結果、何が起こったのか、一応データで確認しておきましょう。
次のチャートを御覧ください。
まず、白川時代ですね。包括
緩和という極めてインチキな、やったふりの
金融緩和を行っていました。これは、これまでの輪番オペとは別に六十五兆円程度の基金を用意して、この基金の枠を増やしたり減らしたりすることで
金融緩和をやったふりをしていたんですが、実際にはこれはほとんど何もやっていなかったに等しいです。六十五兆円のうち
長期国債に充てられた金額というのはごく僅かで、その他のものはほとんど
短期の債券と交換していただけです。
デフレに陥った
日本のような
状況において
短期の債券と貨幣を交換しても、
お金と
お金を交換しているのとほとんど変わらないんですね。つまり、六十五兆円もの
お金を用意して、ほとんどの
お金を
お金と
お金の交換をするような
意味のないオペレーションに使っていた、これが
日銀の包括
緩和の実態だったんです。
これを追及してくださいと、私は、民主党政権時代、民主党のいろんな幹部の方にお願いしたんですが、国
会議員の方、一部熱心な方はいらっしゃったんですが、残念ながら執行部の方は
余り熱心ではなく、これをやってもらえませんでした。
そして、安倍政権が誕生してからここを見事についていただきまして、こちらの表にあるとおり、白から黒へとオセロが反転するような
金融緩和の実行が行われたわけです。基金を増やすという包括
緩和を放棄して、二年でマネタリーベースを二倍に増やすという徹底した
金融緩和が行われました。これが
中心ですね。それから、
日銀券ルールも廃止と。買入れとなる
長期国債の対象も大幅に延長しました。
じゃ、その結果、何が起こったか。次のページを御覧ください。人々の予想が変わりました。
予想物価
上昇率というのは
市場で取引されている物価連動債というものを基に算出することができます。こちら御覧いただければ分かるとおり、私、丸を付けておきましたが、二月十四日に、自民党の西村康稔議員が
質問して三党合意で
日銀法を改正しろというようなことをおっしゃって、慌てた
日銀がいわゆるバレンタイン
緩和というのを行ったんですね。このとき、予想物価
上昇率は
マイナスからプラスに転換しました。
その後、
日銀がこの
効果を打ち消すために何もやらなかったんですが、その後、解散・総選挙、そして安倍内閣誕生、そして黒田バズーカ発射と続きまして、予想
インフレ率は一気に一・六%まで
上昇しております。明らかに
期待の転換の
効果がありました。
この
期待の転換を受けて、次のページ、御覧ください。
まずは、その
期待の転換の
効果というのは
資産市場に波及します。
実体経済に波及するのは
資産市場に波及した後なんですね。これ、よく株だけ上がって賃金上がらなきゃ
意味がないじゃないかとおっしゃる方いるんですけど、逆に、賃金が先に上がって株が後から付いてくるなんてことが歴史上一回でもあったか、これを証明していただかないと話にならないと思うんですね。
経済学のこれは基本中の基本ですけれども、
金融政策の
効果は最初に
資産市場に及びます、
資産市場に波及した後、時間を置いて
実体経済に及ぶんです。これが違うというんだったら、ノーベル
経済学賞を取れますので、是非論文をお書きいただきたいと思います。
実際に見てみましょう。
資産市場に大きな
効果が及んでいるのは、もうこのグラフを見れば一目瞭然ですね。現実を見なければいけないんです。現実を見ないということが一番誤った情報によって国の
政策を決めてしまう、そういう危険性をはらんでいるんですね。論より証拠、まずは
資産市場に及んだ
効果を見ましょう。このグラフ、どう見ても右肩上がりにしか見えません。右肩下がりに見える人は是非眼科の診断を受けたらいいんじゃないかなと私は思います。
では、次のページを御覧ください。
実体経済への波及について、先ほど
永濱公述人からも幾つか御指摘ありましたが、徐々にですが、波及が出ております。
私は二つの点について指摘したいと思います。まず、就業率の変化ですね。上の方のグラフを御覧ください。
実体経済への波及というところですね。図四と書いてありますけれども、これは労働力調査から抜粋しました。一、二、三月、今年に入りまして就業率というのは大幅に、趨勢的に増えております。それから
消費支出、こちらについても調べてきました。御覧いただければ分かるとおり、二〇一三年一月から急激に
消費支出は拡大しております。もう少しこれ様子を見てくればかなりこれは上がってくるんじゃないかと、
実体経済への波及というのもかなり出てくるんじゃないかと思います。
それから、私は各地方紙の
経済欄よく読んでいるんですけれども、何々新聞という地方の新聞に、今年の高卒、新卒内定率は過去最高ですと、ここ十年で最高ですみたいな記事をたくさん見るようになりました。東北各県を私全部見たんですけど、全ての県でこういった情報は出ています。高知でも出ていました。佐賀でも出ていました。どの県でも今、県内の新卒、高卒そして大卒、内定率は過去十年で最高のレベルまで達しようとしています。今後、時間がたってくれば、これが改めてマクロ統計にも出てくるのではないかと私は思います。
ということで、その次のページを御覧ください。
デフレ脱却に向けた五段階ということでまとめさせていただきました。この五段階というのは、現在
日銀副総裁を務めていらっしゃいます岩田規久男先生が学習院大学時代にあるシンポジウムで講演されたときの内容を私がまとめたものです。
デフレ脱却には五段階があります。まず
一つ目、
中央銀行の大幅な
政策転換、いわゆるレジーム転換が必要です。そして二つ目、予想
インフレ率の
上昇が必要です。いわゆる
期待の転換ですね。これは既に起こりました。そして三つ目、
インフレを予想した人々が値上がりしそうな資産を
買い求めます。実際に値段が上がってきました。これも先ほど確認したとおりです。そして四番目、資産の担保価値が上がり、その
効果が
実体経済に徐々に波及していきます。今はこの第四段階まで
デフレ脱却が来ております。
実は、小泉内閣、第一次安倍内閣当時の
量的緩和政策も、この第四段階まで
デフレ脱却は進行していたんですね。ところが、二〇〇六年、ある人が裏切りました。当時の
日銀総裁だった福井俊彦さんです。この人が二〇〇六年に
量的緩和を解除してしまった。しかも、実際にはまだ
デフレを
脱却していなかったんですね。にもかかわらず
量的緩和を解除して、そして安倍政権はその後、第一次安倍内閣は崩壊していくという悲惨な末路をたどってしまったわけです。つまり、病気が治って、まだ手術が終わったばっかりの人に校庭を十周してこいなんというのは、とんでもないしばき主義なんですね。こういうことをやってはいけないと。
日本経済は長らく病気だったわけですから、完全に病気が治るまでは
金融緩和をやめてはいけませんし、まして増税もやってはいけない、できれば緊縮
財政もやめた方がよいというのが
経済学のおきてなのであります。
ということで、このまましばらく第四段階を続けていけば、五段階、しばらくは積み上がった内部留保を放出するだけで
資金が賄えますが、やがてそれが足らなくなって
銀行貸出しが増えてくるという段階に進行していきます。この段階になって初めてマネーストックが増えて
インフレ率が
上昇するんですね。にもかかわらず、
アベノミクスを批判する人は、
金融緩和をやった瞬間にマネーストックが増えないとか、やった瞬間に
インフレ率が上がらないということをもって、
金融緩和に
効果がないというようなことをおっしゃいます。これはとんでもない間違いかなということでございます。
では、次のページを御覧ください。次に、
財政政策の役割について述べたいと思います。
ノーベル
経済学賞ポール・クルーグマン氏の提言ということで、ニューヨーク・タイムズの四月二十八日に掲載されたコラムの方を私はここに抜粋しました。クルーグマンいわく、国の
経済を家計で考えてはいけませんと。なぜなら、国の
経済というのは、誰かの支出は誰かの所得なんです。誰かの支出が誰かの所得であるということは、全ての人が支出をやめてしまったら全ての人の所得がなくなってしまうということなんですね。今、
アメリカやヨーロッパは緊縮
財政をやっていますが、これは大失敗しています。
次のページを御覧ください。
先行事例、イギリスにありますけれども、彼らは
金融緩和を一生懸命やったんですが、緊縮
財政に転じて
消費税を増税しました。その結果、
失業率は全然減りません、実質GDPも伸びません、これが現実です。私たちも、もし
デフレを
脱却する前に増税してしまってはイギリスの二の轍を踏む
可能性があります。
その次のページを御覧ください。
しかも、緊縮
財政派が根拠としていた論文、ケネス・ロゴフとカーメン・ラインハートの論文というのがあるんですが、これは
政府債務の残高がGDPの九〇%を超えると
経済成長率が
マイナスになる、このグラフでいうと青いグラフのような展開になるというふうに言っていた論文なんですが、実はこれ間違っていたことが今年の四月に分かりました。改めてデータを入れ直して同じ公式で計算し直すと赤いグラフの方になるんですね。つまり、緊縮
財政は
財政再建における理論的根拠を完全に失ってしまったわけです。理論的にも全く根拠がない話になりました。これ、実は唯一の論文だったんですよ、緊縮
財政を正当化するということです。
ということで、次のページを御覧ください。誰かの支出が誰かの所得であるなら、
政府がここは
お金を使って国民の所得にしていくということがとても重要です。
そこで、どうせ
お金を使うなら、
民間のリソースを食わない、
民間とはバッティングしないところに
お金を使うべきではないかと。じゃ、どこに使えばいいのか。東
日本大震災があって、南海トラフ地震、首都直下型地震が心配されている昨今、防災インフラに
お金を使うことはこれ非常にいいことではないかと思います。
民間が
お金を使わなくてしょぼくれているときには
政府が代わりに
お金を使って
民間を豊かにすると、これが大事なことです。
ここに書いておきましたけれども、今、我々
日本が抱えている様々なインフラはあと数年で耐用年数を迎えようとしています。これらの設備を更新するだけでも相当な
財政支出が必要です。今は緊縮
財政をやっている場合ではありません。より多くの支出をして国民を豊かにしていく、そういうことが大事ではないかと思います。
そして、次のページを御覧ください。
最後に
一つ、これだけ言わせてください。壊滅的損害の予防原則というものがあります。非常に小さな
リスクでも、もしそれが発生したとき国が滅ぶような大きな被害が及ぶのであれば、そのことを防衛するために使う
お金を出し惜しみしてはいけないという、こういう原則があります。これ気候変動の枠組み
会議なんかで言われている原則なんですけど、是非この原則を防災・減災ニューディールにも適用していただいて、
リフレ政策と大規模な
財政支出をどんどん進めていただいて、
日本経済を復活させていただければというふうに考えております。
御清聴ありがとうございました。