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2013-03-28 第183回国会 参議院 財政金融委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十五年三月二十八日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      田城  郁君     川合 孝典君      那谷屋正義君     辻  泰弘君      上野 通子君     長谷川 岳君  三月二十八日     辞任         補欠選任      川上 義博君     田城  郁君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 幸久君     理 事                 金子 洋一君                 西田 昌司君                 野上浩太郎君                 竹谷とし子君     委 員                 大塚 耕平君                 川合 孝典君                 川崎  稔君                 田城  郁君                 玉置 一弥君                 愛知 治郎君                 鴻池 祥肇君                 長谷川 岳君                 古川 俊治君                 松村 龍二君                 溝手 顕正君                 脇  雅史君                 山口那津男君                 中西 健治君                 広野ただし君                 大門実紀史君                 中山 恭子君    事務局側        常任委員会専門        員        小野 伸一君    政府参考人        内閣北方対策        本部審議官    河合 正保君    参考人        日本銀行総裁   黒田 東彦君        日本銀行理事   田中 洋樹君        日本銀行理事   雨宮 正佳君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日までに、上野通子君、川上義博君及び那谷屋正義君が委員辞任され、その補欠として長谷川岳君、川合孝典君及び辻泰弘君が選任されました。     ─────────────
  3. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣北方対策本部審議官河合正保君の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、同理事田中洋樹君及び同理事雨宮正佳君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件を議題といたします。  日本銀行から説明を聴取いたします。黒田日本銀行総裁
  8. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融調節に関する報告書を国会に提出いたしております。平成二十四年度上期の報告につきましては、昨年十二月七日に提出いたしました。今回、我が国経済の動向と日本銀行金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。  最初に、我が国経済金融情勢について御説明申し上げます。  我が国経済は、海外経済減速などを背景に、昨年夏場以降、弱めの動きとなっていましたが、このところ明るい兆しも見られるようになっています。日本銀行は、景気現状について下げ止まっていると判断しております。こうした変化の背景にある要因としては三点指摘することができます。  第一に、米国中国などを中心海外経済減速した状態から脱する兆しを見せ始めています。地域ごとに見ますと、米国経済は、バランスシート問題のおもしが徐々に和らぐ中で底堅さを増しつつ、緩やかな回復基調を続けています。雇用環境改善傾向をたどる下で、個人消費は緩やかな増加を続け、住宅投資も持ち直しの動きが明確になっています。これまで抑制されていた設備投資にも持ち直しの兆しがうかがわれます。中国経済は、輸出が一進一退の動きを続ける中、個人消費が堅調に推移し、インフラ投資増加するなど、堅調な内需に支えられて減速局面を脱しつつあります。この間、欧州経済は、企業家計マインドの一段の悪化には歯止めが掛かりつつあるものの、緊縮財政金融面の引き締まりの影響もあって、設備投資個人消費が減少するなど、緩やかな景気後退が続いています。  第二に、最近の円安株高などを背景企業家計マインドが改善しています。国際金融資本市場についても、昨年夏場以降、欧州債務問題をめぐる政策対応一定の進展が見られたことや、本年初の米国財政の崖が回避されたこともあって、投資家リスク回避姿勢は後退した状態にあります。もっとも、キプロス支援をめぐる状況や総選挙後のイタリア情勢に注目が集まるなど、欧州債務問題の今後の展開などに引き続き注意していく必要があると考えています。  第三に、エコカー補助金終了反動日中関係影響など、景気下押し圧力となっていた要因が剥落、減衰しています。  こうした下で、我が国輸出は下げ止まりつつあります。設備投資は、非製造業に底堅さが見られるものの、全体として弱めとなっています。一方、公共投資増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にあります。個人消費は、高齢者需要などにも下支えされて底堅く推移しています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっています。  先行きについては、各種の経済対策が実行に移されることもあって国内需要が堅調に推移し、また、海外経済減速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、年央ごろには国内景気の持ち直しの動きははっきりしてくると見ています。  我が国金融環境を見ますと、緩和した状態にあります。金利面では、コールレートが極めて低い水準で推移する中、企業資金調達コストは低水準で推移しています。資金供給面では、企業から見た金融機関貸出態度改善傾向が続いています。CP社債市場でも、総じて見れば良好な発行環境が続いています。資金需要面を見ますと、運転資金企業買収関連中心増加動きが見られています。こうした中、企業の資金繰りを見ますと、総じて見れば改善した状態にあります。  物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はおおむねゼロ%となっています。目先数か月は前年のエネルギー関連耐久消費財動き反動からマイナスとなると見られますが、その後は、我が国経済が緩やかな回復経路をたどる下で、マクロ的な需給バランスは緩やかな改善基調を続け、消費者物価は緩やかな上昇傾向に転じていくと考えられます。  もとより、欧州債務問題の今後の展開米国経済回復力新興国資源国経済持続的成長経路への円滑な移行の可能性日中関係影響など、日本経済をめぐる不確実性は引き続き大きい情勢です。最近の金融市場動きは、世界経済減速した状態を脱して持ち直していくことを織り込んでいく動きと見られますが、今後、世界景気を取り巻く幾つかの不透明要因が順調に払拭されていくかどうか、引き続き注意深く点検してまいります。  次に、日本銀行金融政策運営について御説明申し上げます。  日本経済は十五年近くもデフレに苦しんできました。これは世界的に見ても異例なことです。物価が下落する中で賃金、収益が圧縮され、投資消費が減少することで更なる物価下落に陥るという悪循環は、日本経済を劣化させています。デフレからの早期脱却日本経済が抱えている最大の課題です。  物価安定は中央銀行責務であり、デフレ脱却における日本銀行の役割は極めて重要です。日本銀行は、これまでゼロ金利政策量的緩和政策を行ったほか、最近では包括的な金融緩和政策を通じた金融緩和の推進、金融市場安定確保成長基盤強化支援といった様々な取組を行ってきましたが、デフレ脱却には至りませんでした。  もとより、我が国物価低下圧力を与える要因としては、海外からの安値輸入品増加規制緩和などに伴う流通の効率化、それらと相まって生じた企業の低価格戦略家計の低価格志向の広がりなど、国内外に多々あります。しかし、そうした影響に対抗して物価の安定を実現するのが中央銀行としての日本銀行責務です。実際、世界中でこれほど長期間にわたってデフレが続いている国はほかにありません。政府が大胆な金融緩和、機動的な財政政策民間投資を喚起する成長戦略から成る三本の矢でデフレ脱却経済再生実現する方針を明らかにし、緊急経済対策などの対応を迅速に取ったことが好感され、景気回復期待を先取りする形で株価も回復し始めています。  中でも、本年一月の共同声明は、政府日本銀行がそれぞれの課題を明確に設定し、責任を持ってそれを実現することを宣言したものであり、デフレ脱却と持続的な経済成長実現に向けた大きな一歩です。日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で二%という物価安定の目標を導入し、この目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期実現することを目指すことを決定しました。日本銀行としては、この物価安定の目標を一日も早く実現することが何よりも重要な使命であると考えています。  これまで日本銀行は、デフレ脱却に向け、国債だけでなく、社債CP、ETF、REITなど様々な資産を買い入れてきました。これは中央銀行の伝統的な手法を踏み越えたものですが、その規模や具体的な買入れ対象等については、できるだけ早期に二%の物価上昇実現するという強いコミットメント実現するために十分なものとは言えません。量的にも質的にも大胆な金融緩和を推進していく必要があると考えています。  また、金利引下げ余地が乏しい現状では、金融政策運営において市場期待に働きかけることが不可欠です。市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向けやれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたいと考えています。  さらに、政府との連携確保も重要です。金融政策は、政府経済政策整合性を持って運営することで、より高い効果を発揮できるものです。政府日本銀行共同声明では、デフレからの早期脱却物価安定の下での持続的な経済成長実現に向け、政府及び日本銀行政策連携を強化し、一体となって取り組むことを明記しています。また、政府は、機動的な財政政策成長力競争力強化、中長期的な財政健全化に取り組むこととされています。もとより日本銀行は、自らの責任において物価安定の目標早期実現を目指して金融緩和を推進するものです。ただ、金融緩和と並行して、政府が実需を作り出し、消費投資の拡大を通じて賃金雇用を改善することができれば、そこから更なる物価上昇につながる好循環も期待できます。その際、財政運営への信認低下による金利上昇を避けるため、中長期的な財政健全化に取り組むことも重要です。共同声明に沿った政府取組期待したいと思います。  今後の具体的な金融政策運営については、政策委員会金融政策決定会合において、経済物価情勢の点検を通じて市場への影響なども見極めつつ、日本銀行が持つ全ての機能を最大限に活用し、何が最も効果的であるかを検討してまいります。  ありがとうございました。
  9. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 金子洋一

    金子洋一君 おはようございます。民主党の金子洋一でございます。  今日は、黒田総裁、そして田中雨宮理事、早朝からどうもありがとうございます。  今回、私は、三月二十六日の衆議院の財金委員会での前原委員の御質問を踏まえてお尋ねをさせていただきますので、その辺り余り重複はなさらないようにお願いをしたいと思いますし、また、野党ですけれども、別に揚げ足を取ったりというようなことをするつもりは全くございませんので、よろしくお願いいたします。  まず、よく行われる日銀独立性議論がございますけれども、これは言わば、例えば政治家の側が、選挙が近くなったので何とか景気を良くしたいということで、国債を大量に発行をしてそして様々な財政政策をやりたいというようなことが原因になって物価が非常に上がってしまうと、そんなことになったら大変だから、言わばファイアウオールとして中央銀行独立性というものを置いて、そこで食い止めるというような議論であると思っております。もちろん理論的にはそういう形でいいんだろうと思いますけれども、そういったケースというのは、政治家が非常に財政を拡張することに専念をしている、あるいは中央銀行インフレ景気ということを考えて、まあぼちぼちインフレは結構だからもう少し景気にシフトしようかというような形で考える、そういった中央銀行ケースを想定しておられるんじゃないかと思います。  これが、我が国になりますと、消費税の引上げでも見られましたように、政治家の方もかなり財政緊縮的な発想を取っておりますし、これは大変恐縮なんですけれども、日本銀行さんは、これまでの行動から判断をさせていただきますと、かなり引締めの傾向が強いというふうに私には思えます。  その二つを前提にいたしますと、こういった中央銀行独立性議論というのは、学問的に言うと、時間的整合性の応用問題の一つだと思いますけれども、また別の時間的非整合性の問題が出てくるんではないかと思います。それがこれからお尋ねをする名目GDP比で見た場合のベースマネーの増大というようなことになってくるんだと思います。  過去、日銀さんは、名目GDP比で見た場合に世界先進国の中で最も金融緩和を行ってきたというふうに主張をされてこられました。そして、現実にかなり足下金融緩和というのはやってきているということでいいんだろうと思います。  しかし、ここで問題になってまいりますのが、その足下マネーが幾ら大量にあったとしても、いつ引き締められるか分からない状態にある場合、例えば、一年後に引き締められるかもしれない、二年後かもしれない、その判断基準日銀が握っていると。非常に裁量的であるということになりますから、そうなると、生産計画だって一年後を見なきゃいけない、設備投資でも、だったら三年後、四年後を見なきゃいけない。一年後にマネーがきちんと出ているかどうか、三年後、四年後にマネーが出ているかどうか、これは分からないと。そういう状態でしたら、幾ら足下でたくさん出ていても、将来出るかどうか保証がないわけですから、非常に困ってしまうと。  となれば、将来的に金融緩和が続くか続かないかということが大切になるわけですけれども、そういった将来、今足下に出ていても将来出るかどうか分からないと。これ、出るという経済主体期待形成をされなければ、幾ら足下で出ていても金融緩和としての意味はありませんから、そういった問題が出てきているんではないか。  つまり、名目GDP比世界最高に出しているといっても、将来どうなるのか分からない状態では、この足下に出したお金というのが回っていかないんじゃないかと思いますけれども、その辺りいかがお考えでしょうか。
  11. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) ただいま御指摘のあったとおり、確かにこれまで日本銀行はマネタリーベースを大幅に拡大してきたわけですが、残念ながらデフレからの脱却という結果が出ておらないわけでございます。  そこは、ただいま委員指摘のことも踏まえて考えますと、三つの点がこのデフレからの脱却にとって重要だというふうに思っております。まず第一に、何よりも大事なことは、二%の物価安定目標を一日も早く実現し、それが達成されるまであらゆる手段を講じていくという強いコミットメント日本銀行がするということでございます。これは、既に一月の政策委員会で決定されたことでございます。そこで、第二に、こうした日本銀行の強い姿勢をやはり市場に分かりやすく説明していく、市場が理解しやすいような形で説明していくということも重要であろうと思います。そして、第三に、やはり市場期待を裏切らないように、実際にも大胆な金融緩和を行っていくということであろうと思います。  このようにして、二%の早期実現に向けた強いコミットメントの下で、質、量共に大胆な金融緩和を継続していく必要があると、まさに二%の物価安定目標が達成されるまでやっていくという強いコミットメントが重要であるというふうに考えております。
  12. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  つまり、強いコミットメントをすることによって、そういった後で日銀が裏切って金融引締めに移ることはないと、だから日銀のやることを信用してくれという御趣旨だと受け止めましたが、それでよろしいでしょうか。
  13. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) まさにそのとおりでございます。
  14. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  時間的非整合性議論をちょっと続けますけれども、このことは、やはり出口戦略についても同じことが言えると思います。論理的に、経済政策ですから出口がどこかに存在することは当然です。しかし、今おっしゃいましたように、無制限でやっていくということをきちんと市場に納得していただくということが強いコミットメント実力発揮につながってくるわけですから、事前に、いや、どんなことになったらやめますというようなことを言うと、あいつは本気でやる気があるのかないのかということを疑われるわけですね。  そういうことで、出口戦略を、私はこれは軽々に公衆の面前で議論をするべきではないんじゃないかと思うんです。中央銀行が何かもう、すぐ出たがっていると、出口に行きたがっているという思いを持たせては、これは逆効果になる。つまり、本気です本気ですと言って信用してもらっていれば例えば二年の金融緩和実現ができるところを、いや、これやってもうまくいかないかもしれませんけれども政治に言われるからやるんですというようなことをやっていると、五年たっても十年たっても実際に金融緩和としての効力が発揮できないということが出てくるんじゃないかと思います。つまり、国民の、まさにおっしゃいました期待形成のされ方が随分と違ってくると思います。  この点は、今申し上げましたけれども、これまでの日本銀行の場合にはやはり金融引締めに余りにも熱心だったと思われるんですが、そういったことが影響して、軽々しく出口のことを言ってしまうとか、あるいはこんな状態になったらもうやめますとか、そういうことを言い過ぎたんじゃないかと思いますが、総裁、どうお考えでしょうか。
  15. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私も同様な考え方を持っておりまして、金融政策を運営する中央銀行といたしましては、常にそのリスクというものを頭に入れながらやっていくということは当然でございますけれども、まだ足下物価が下落している、あるいはゼロ近傍でとどまっていると、二%の物価安定目標にはまだはるか遠くであって達していないというときに出口戦略議論するというのは、私も時期尚早であるというふうに思っております。
  16. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  そういったその信頼性市場からの信頼を得るということで考えますと、市場というのは、やはりマーケット参加者というのは、これまでの日銀行動を見て、金融引締めの傾向にあると誰もが思っていると思います。ここで一番必要になるのは、そういったもう過去の日銀傾向とは違うんだということを明らかにすることじゃないでしょうか。それが金融政策体制変換レジームチェンジにつながってくるんではないかというふうに私は思います。  そういった観点で見てまいりますと、過去の二〇〇〇年のゼロ金利解除、そして二〇〇六年三月の量的緩和解除といったものは、これは私、これまでも何回も主張してまいりましたけれども、早過ぎたというふうに思いますし、昨日のこの委員会での安倍総理との質疑でも、両方とも早過ぎたというふうに安倍総理自身もおっしゃっていました。  となりましたら、これ公式に、そのときの政策判断はその時点では最善だったかもしれないけれども、今になってみればやっぱり誤っていたということをお認めになることが、そういった金融政策レジームチェンジに一番、何というんでしょうか、レジームチェンジを果たしたんだということを明確に公に示すいい手段になるんじゃないかと思いますが、その辺りいかがお考えでしょうか。
  17. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 委員指摘の二〇〇〇年のゼロ金利解除それから二〇〇六年の量的緩和解除、いずれにつきましても、委員も触れられたように、その時々の状況を踏まえて議論を尽くした結果だとは思いますし、そのときとしては一定合理性があったかもしれませんが、結果的に見て明らかに適切でなかったというふうに私も考えております。
  18. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  黒田総裁も私も官僚出身でございますけれども、官僚というのは、やはり官僚の無謬性を守ろうとする余りに、ちょっとしたこと、最初はまあちょっとした食い違いであっても、その論理的な食い違いを上から塗り隠そうとしているうちにどんどんどんどんその食い違いが大きくなって、最後には手も足も出なくなるというケースが大変多かったわけですけれども、やはりそういったところをよく総裁御存じなんだろうと思います。そういった形で、きちんと、適切ではなかった、今から見れば適切ではなかったというふうにお考えいただくということは大変重要なことであろうと思います。  続きまして、次の質問に移らせていただきます。  できるだけ早く、総裁や岩田副総裁はできれば二年以内ということで二%の物価上昇実現をしたいというふうに御発言になっております。長期国債の買い切りオペがほぼメーンの政策手段になると思いますが、この長期国債の買い切りオペを行うことがどういうメカニズムによって二年以内、結構早い時期の二%の物価上昇、これは当然消費税増税分を除いての二%ということだと認識しておりますけれども、につながるのか、そこを簡潔に御説明願えませんでしょうか。
  19. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 先ほど量的・質的緩和と申し上げましたが、私は量的な緩和も重要だし質的な緩和も重要だと思っておりまして、質的と申し上げた場合に非常に重要なのは、委員指摘のとおり、イールドカーブを全体として下げていくと。したがって、単に短期金利が低いというだけではなくて、長期金利も含めて市場の全体の金利が下がっていくということは、これは物価安定の目標に向けてプラスになる要因だと思います。  そのほかに、期待に働きかける、つまり、デフレ期待がなくなって二%の物価上昇期待に変わっていくという、期待に働きかけるという要因も非常に重要だと思いますし、それから、量的・質的緩和を通じて、言わば資産価格に影響を与えて、資産価格の面からまた経済に、あるいは物価にプラスの影響が出てくると。先ほども申し上げた長期金利を含めたイールドカーブ全体の低下、期待効果、そして資産価格を通じた効果というものを考えているわけでございます。
  20. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  ただ、今の御説明ですとなかなか分かりにくいところがあろうと思います。これ、岩田先生の、副総裁の本などを拝見していますと、長期国債日本銀行が買い切りオペをするということはどういう意味なのかというと、長期国債というのはそもそも本来的に何だといったら、政府が、まあ基金を積むときは別です、政府がその年度内に何か財を買う、あるいは賃金として出す、あるいはサービスを購入するという形で、すぐに物を買うということに変わると。  だから、長期国債を出すということは、何かすぐにこれは物を買うんだと。それを日本銀行が新たに発行をした紙幣で、まあかなり簡略化した言い方ですけれども、新たに発行した紙幣で購入をするということは、これは不換紙幣ですから物と紙の交換であると。だから、これは当然物価は上がるんだと、紙と交換をしたがる人間は突き詰めればいないというような感じの御説明をいただいているんですけれども、そういう解釈の仕方は総裁はなさいませんか。
  21. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) ただいまの委員指摘の点は、恐らく財政政策と言わば金融政策と組み合わさった形で景気あるいは物価影響を与えていこうというお話だと思いますが、それはまさに現在政府が進めようとしている三本の矢、つまり日本銀行は大胆な金融緩和を行う、量的、質的な大胆な緩和を行う、政府は機動的な財政運営あるいは成長戦略の追求を通じて言わば実需をつくり出していくと。  ですから、委員指摘の点は、端的に言えば、言わば中央銀行金融政策財政政策とがうまくマッチして行われるということだと思います。ただ、どこの国でもそうですけれども、中央銀行自体はあくまでも政府からの独立という下で金融政策の運営を行っていくということになろうかと思います。
  22. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  そういったトランスミッションメカニズムの話に移らせていただきたいと思うんですが、まさに期待に働きかけると申しますか、結果的に期待が変わるということで期待物価が上昇をすると。そして、期待物価が上昇して名目金利一定、ですから期待実質金利が下がるということで、そこから先のメカニズムをちょっと議論と申しますか、お尋ねをしたいと思いますが。  一般によく言われる言い方は、そういうふうに実質金利が下がっても金融機関からの融資は伸びないではないかとか、あるいは現実に伸びてこなかったではないかという批判の声がございます。でもこれは、その金融機関を通じたルートだけがデフレ脱却のルートではないことはこれは当然です。  例えば、企業が手元に現預金を今二百四十兆円ぐらい持っているんでしょうか、そのくらいの現預金を持っている。しかも、企業単独で見ると、これは麻生財務大臣もよくおっしゃるんですが、もうほとんど無借金になっているということになります。その二百三十兆、四十兆の手元の現預金、これは今銀行に預けている段階ではプラスの金利が付いていますけれども、期待物価が上がることによって期待実質金利がゼロ若しくはマイナスになるということでその二百三十兆円が動き出すというルートが言わばデフレ脱却の第一のステップになってくると思います。その次に金融機関からの貸出しが伸びるという形になるというふうに私は思いますけれども、そういったメカニズムが働いていくというふうに解釈をしてよろしいでしょうか。
  23. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私も、委員指摘のとおり企業が相当多額の手元流動性を持っておりますので、その取崩し、その場合には期待物価の上昇、期待実質金利の低下ということを通じて手元流動性を取り崩して設備投資あるいは運転資金に使っていくという、そういうチャネルというかルートというのは非常に重要だと思います。  もちろん、伝統的な、銀行が貸出しを増やしていくという形で投資を支えるという面もありますし、それから、委員もよく御承知と思いますけれども、社債とか株式を通じた、言わば資本市場を通じたチャネルもあるということで、複数チャネルがあると思いますが、現時点で、おっしゃったような手元流動性を取り崩して設備投資などに充てていくというチャネルというのも非常に重要であるというふうに思います。
  24. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  済みません、資産効果の方を言い忘れておりまして。まさに第三のチャネルとして、まあ今もう既に起きていることですけれども株高が生じると。まさに今、三月の二十八日です。三月三十一日が期末のところも多いわけですから、株が高くなると。その一方で国債の価値は上がっていると。時価評価でいくと上がるということになりますと、企業のバランスシートがかなり改善をされてくる。  あるいは、非常にお金を持っておられるような個人は株を持っておられることが多いと。株が随分と上がるということになると高額商品への消費が非常に多くなってくると。あるいは、まあ我々などそういった奢侈品は余り関係ありませんけれども、それでも公的年金ですとか私的年金には入っておりますから、公的年金、私的年金の中にもそういった株式というのは随分と入っているわけですね。  となりますと、株高といって、いや、あんなものは外国人のハゲタカファンドがもうけているだけだというような議論がよくありますけれども、時価評価ということを考えれば我々もいろんな形でメリットを受けているというふうに思うんですけれども、そういったルートについてもし、まあそうなんだよとか違うんだよというコメントがありましたらお願いします。
  25. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) ただいま委員指摘のとおり、資産効果という面は非常に重要だと思います。  最近の株高につきまして、外人の取得が多い、あるいは国内の、裏側からいいますと、国内の金融機関家計がある程度株を売っているという面が非常に強調されますけれども、委員指摘のとおり、株の大半は実は国内の金融機関企業家計が持っているわけでして、株価が上がることによる資産効果は実は国内こそ大きいわけでございます。それが設備投資住宅投資、あるいは消費などにもプラスの影響を与えるということは間違いないと思います。
  26. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  株の話になってまいりましたので、ちょっと株が絡む話になりますが、我が国量的緩和の時期、これは直接的には長期国債日本銀行が購入をするという形で行われたわけでありますけれども、この量的緩和金融政策なり、まあ財政政策については余りお答えになる立場ではないということなのかもしれませんけれども、そういった二つの政策面において量的緩和がどういうふうに効いたのか、あるいは効かなかったのかということについて、どうお考えでしょうか。
  27. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 量的緩和が行われましたときは、日本銀行が流動性を大量に供給したわけでして、その下でゼロ金利が継続するということで、金融システムの不安が高まっていた時期も含めて緩和的な金融環境を維持して景気を下支えしたのではないかというふうに思っております。  ただ、御承知のように、当時の日本銀行の経験、あるいはリーマン・ショック後の欧米の経験などを踏まえますと、量は非常に重要なんですが、量とともに質の面も重要であると。つまり、中央銀行のバランスシートで見ますと、負債の面のベースマネーが増えるということも極めて重要ですけれども、それとともに、資産側の中身がより金融緩和効果が実体経済に波及するようなものになるという面も重要であろうというふうに思っております。
  28. 金子洋一

    金子洋一君 今は過去の量的緩和のお話ですけれども、どういうものを買うかということによる効果とおっしゃったと思いますが、これは例えば、今後、量的緩和政策を取るとしたら、いかなるものが適切であるとお考えでしょうか。
  29. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) その時々の金融資本市場の動向を十分踏まえて適切な金融資産の購入ということになると思いますが、一般的に申し上げますと、やはり国債についてはより長期のものも含めてバランスの取れた購入をするということが必要だと思いますし、国債金利がベンチマークになっておりますので、その上にリスクプレミアム、様々な民間の金融資産は乗ってくるわけですので、そのリスクプレミアムがやや実体経済とかその他から踏まえると大き過ぎるというものについてはリスクプレミアムを下げるような、そういうリスク資産の購入ということも検討対象になると思います。
  30. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございます。  ただ、金融危機への対応でしたら、例えばCPを買うというのは分かるんですけれども、今の状況考えてみますと、金融危機とは我が国は全く関係ないと。ということになりますと、じゃ、ETFやREITをどのくらい大量に買えるのかというと、それこそ全部買っちゃうぐらいのことをやらなければ、その緩和としての量的には効果がないということになれば、やはりこれはなるべく長期の、残存期間が長い国債を買うべきではないかなと私は思うんですが、どうお考えでしょうか。
  31. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私も、基本的に委員の御意見に賛成でございます。
  32. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございました。  続きまして、別の問いに移らせていただきます。  よくこれは一般にこういうことをおっしゃる方がおいでなんですが、消費者物価が上がると直ちに名目金利も上がるというようなおっしゃり方をする方がおいでです。言わばフィッシャー効果が短期でも成り立つというふうにおっしゃっているのと全く同じだと思うんですが、これは、そういったフィッシャー効果が短期で成り立ってしまうのか、それとも長期でなければ成り立たないのかというのは、これから我が国金融政策考える上で非常に重要な点だろうと思います。  私は、短期では成り立たない、なぜならば、失業や遊休設備があるために、そういったところがあるうちはとてもそんなことは起きないんだというふうに考えておりますけれども、この物価上昇金利の上昇について、総裁はどのようにお考えになっているのか、教えてください。
  33. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 長期金利は、先行きの経済物価情勢に関する見通し、期待というものが非常に大きな影響を与えるわけですが、それに加えて、各種の債券の違い、様々なリスクがありますので、リスクの違いに応じた上乗せ、いわゆるリスクプレミアムが加わって形成されてくるというふうに思っております。  その場合、やはり委員の御指摘のような論点が非常に重要であるというふうに思っておりまして、中央銀行の立場からいいますと、一番重要な点は、この物価安定の目標というのは、インフレをもたらすわけでもないし、デフレをもたらすわけでもなくて、まさに適切な二%といった消費者物価上昇率を安定的に維持すると、そういうことを通じて言わば人々の予想物価上昇率をアンカーするという効果があるわけで、そういった下では、当然のことながら、長期金利の安定的な形成に資するんじゃないかというふうに思っておりますので、短期、長期のフィッシャー効果議論議論としていろいろあると思いますが、一番重要な点は、物価安定目標を持続的に、もちろん上下のいろいろな幅がありますし、欧米でもインフレーションターゲティングといってもフレキシブル・インフレーション・ターゲティングと言っているようなわけでございまして、一定の幅があると思いますが、やはり二%という予想物価上昇率をアンカーすることを通じて長期金利の安定的な形成に資するということが、当面の物価安定目標へのスムーズな移行も含めて、それから長期金利の安定的な推移も含めて、非常に重要であるというふうに思っております。
  34. 金子洋一

    金子洋一君 ありがとうございました。  続いて、最後の質問になりますが、現在の、これまでの日本銀行の方針ですと、二〇一四年中にベースマネー増加というのは止まる、そして二〇一四年以降は横ばいになるということになろうと思います。前の総裁であった白川前総裁が、それ以降については裁量的に運営をしていくというふうに発言をしたと伝えられております。  ただ、やはりそこで、先ほどの議論に戻ってしまいますけれども、裁量的に運営をしていくと言ってしまったのでは、これは金融緩和へのコミットメントがなくなってしまうのではないかと思いますけれども、総裁はいかがお考えでしょうか。
  35. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私も、二%の物価安定目標政策委員会で決めたわけでございまして、それを早期実現するということになっておるわけですから、当然、それが実現されるまで金融緩和を続けるということに尽きると思いまして、何よりもこの二%の物価安定目標を達成するというコミットメントを強く意識しながら、必要なことは何でもやるという対応でやっていきたいというふうに思っております。
  36. 金子洋一

    金子洋一君 是非、必要なことは何でもやる、そして国民のために全力で働くという意欲を持って今後も取り組んでいただきたいと思います。  以上でございます。ありがとうございました。
  37. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 民主党の大塚でございます。  黒田総裁におかれては、大変厳しい局面での総裁御就任、お祝い申し上げますとともに、大変国民の皆さんの期待も高いわけですので、頑張っていただきたいなというふうに思います。  今日は、そういう中で改めて総裁考え方を何点か確認をさせていただきたい点がございます。  今、お手元に二つ資料をお配りさせていただいていると思いますが、一つはグラフがございますね。お手元にございますでしょうか。お手元のものはカラーになっておられますか。財政赤字の実情のグラフなんですが、これは財政赤字の対GDP比で、もう解説はいたしませんが、大変厳しいという認識を私は持っておるんですが、総裁は日本の財政状況財政健全化や債務圧縮の必要な局面だというふうに認識しておられますでしょうか。
  38. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私も、現在の政府債務残高の名目GDP比が二〇〇%を超えるという極めて高いというか異常な状況は持続不能であるというふうに考えております。  ただ、これまでのところ国債市場は安定していて、財政運営に対する市場の信認は何とか維持されているように思いますけれども、しかし、財政に対する、あるいは国債に対する市場の信認をしっかり確保していくということが極めて重要でありまして、政府におかれて中長期的な財政健全化の道筋を明確にして、その実現に向けた財政構造改革を着実に進めていくということを強く期待するだけでなくて、まさにそれがないと財政あるいは国債に対する信認が失われて、国債市場が不安定になり、あるいは国債金利が高騰するということになりますと、経済政策全体として、金融政策も含めて非常に良くない影響を受けるということになると思いますので、この点は委員指摘のとおりでございます。
  39. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 時間が短いですので、是非端的にお答えいただければ幸いです。  お手元にもう一枚紙をお配りしたんですが、実は総裁のこの「財政金融政策の成功と失敗」という御著書を拝読しました。いや、非常によく書けている御著書で、さすがだなと思いました。  朗読はしませんが、一つ目の文章には、財政政策は裁量的に余り行うべきではないというお考えが書かれておられますが、今の財政状況の御認識と併せて、引き続きこういうお考え方で変わりはございませんですか。
  40. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 基本的に変わりございません。  ただ、欧米もそのとおりですが、リーマン・ショック後の世界的な不況に対抗して財政政策も活用して対応してきたわけでございまして、現在の日本の状況というのはリーマン・ショック直後の状況のようなことではございませんが、やはりまだデフレも続いている、経済もしっかり回復していないというところでございますので、短期的に財政政策を活用するということは適切だと思いますけれども、中長期的には持続はできないというふうに思います。
  41. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 この総裁の文章にも、大きな経済ショックのときということでありますので、それは私も同感であります。  もう一つ、二番目の文章を御覧いただくと、これはマンデル・フレミング・モデルについて御認識を書かれておられますけれども、非常にオーソドックスな理解をしておられて、私も同感なんですが、要するに財政政策は自国通貨高を通じて財政出動による内需の増分を外需の減少で相殺してしまうと。だから、極端に申し上げると、開放経済下では財政政策は無効であるというお考えに立っておられるという理解でよろしいですね。
  42. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) このマンデル・フレミングの理論につきましては、基本的に学界では正しいというふうに思われていますけれども、私もそれは正しいと思いますが、財政政策効果が為替レートの変動を通じて完全に一〇〇%なくなってしまうというところについては、多くの学者もそこまでは言っていないわけでございまして、財政政策効果が変動相場制の下である程度減殺されるということはそのとおりだと思います。
  43. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ここは重要なポイントでして、この文章の中にもありますように、財政拡張と金融引締めのポリシーミックスは非常に良くないと書いておられて、この御著書にも過去のマクロ経済政策の十の事例分析がされていて、九〇年から九五年の失敗はまさしくこれをやったんですね。その当時、私も日銀におりましたし、両側にいらっしゃる理事は両方とも私の上司でしたので、私も反省の意識を持ちながらお伺いしているわけです。  ということは、今の日本の経済状況では、財政健全化をしっかりアナウンスしながら、またアクションも起こしながら金融緩和していくという、こういう組合せだと思うんですが、ところが、ここに至るまでの総裁の御発言の議事録も全部読ませていただきましたけれども、三月四日の衆議院の議運の中田議員とのやり取りでちょっと気になる御発言があるんですね。  財政政策に関して、政治との距離感というのは十分認識していかなければならないが、他方で、政治情勢、あるいは政治家を通じて得られる国民の声というものも十分聞いていかなければならないと思っていると。  これなんか、いかにもやはり、先ほどのこの財政赤字のグラフでいうと、財政健全化を片方では叫びながら、事実上、こういう財政運営をしてきた財務省的お考えも若干、政治に常にフェース・ツー・フェースで向き合っておられたので、そういう雰囲気のある御発言だなと思ったんですけれども。  つまり、財政に、今るるおっしゃったようなスタンスと違って、やや甘い対応、巷間言われているような財政ファイナンス的対応をするリスク総裁はお持ちではないというふうに私は確信してよろしいでしょうか。
  44. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私も、中央銀行総裁として、財政ファイナンスになるようなことをやるつもりは全くございません。それは、財政の規律を失わさせるだけでなくて、中央銀行のクレディビリティーにも影響するというふうに思っております。
  45. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 とすると、今までの御発言と、そしてそのあらゆる手段を行使するというふうに言っておられるスタンスをドッキングさせると、やっぱり外債の購入というのをお考えになるべきだと私は思うんです。  外債の購入というのは、当然日本国債じゃありませんから、日本国債でバランスシート政策をやろうとすると、財政当局側にそういう意識がなくても、日銀が資産として買ってくれる可能性があると思うわけですね。外債であれば、そのリスク、つまり日本の財政当局にそういう財政規律の弛緩をもたらすリスクはありませんので、やはり私は外債購入は政策手段として検討すべきだと思うんですが、その点は、可能性はありますか、ありませんか。
  46. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) この点は様々な議論があるところでございますが、私は、外債購入ということは、言わば金融緩和という手段としては非常に様々な金融資産があるわけでございますので、金融政策手段としてそれを取らないと金融緩和ができないというような状況の下でそういう御判断が出てくるという可能性は否定しませんが、現時点では金融緩和手段としてはたくさんあるわけでございますので、そういったことを考えてはおりません。  それから、いずれにせよ、どういう形にせよ、外債を買うということは必ず介入であると、為替介入であるというふうに国際的に取られますので、そうなりますと、G7とかG20で言われていますように、為替は基本的に市場の決定に任せると。経済のファンダメンタルズから非常に乖離しているということであれば、単独あるいは協調で介入されるということもあるわけですが、為替を目的にしてそういったことをやるということは、今の国際的な言わば合意事項といいますか、そういうことから見て困難ではないかというふうに思っております。
  47. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ここが重要なポイントで、為替を目的にやるんじゃないんです。日銀のミッションを果たすために、バランスシートを拡大させる政策をやる上で、片方ではマンデル・フレミングのモデルの中で、日銀金融緩和をやりながら財政が拡張の方に走ってしまったら結局おかしなことになりますので、そうならないように中央銀行として注意力を発揮するとすると、幾つかある選択肢の中で外債というのは考えられる手段の一つであるということを申し上げているわけです。  一昨日、この委員会で麻生財務大臣とお話をして、日銀法四十条は日銀が外債を買うということを禁止することの法的根拠にはならないという御答弁がありましたので、私は日銀が外債を購入することについて既に法的には別に問題ないということがこの委員会の答弁で確認されたと思っていますので。  その上で、さらに総裁がその手段を封印してしまうと、もうこの段階であらゆる手段可能性を検討するといってマーケットの期待を物すごく高めたものをシュリンクさせてしまいますので、やはり私は、もう日銀総裁になられた以上、財務省的いろんなお立場は過去あったと思うんですけれども、あらゆる手段は否定しないということを言い続ける、そして財政当局が余り財政規律が弛緩するようであれば、あるいは政治の側が弛緩するようであれば、外債購入もあり得べしということを御主張されるべきだと思うんですが、もう一度お願いできませんか。
  48. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 委員の御意見、よく拝聴いたしました。その御趣旨もよく理解しております。  ただ、今の時点で外債を購入するという考えは持っておりません。可能な範囲でありとあらゆるオプションを検討して二%の物価安定目標を達成する、それもできるだけ早期に達成するということで全力を挙げてまいります。そのことは私どもとして絶対に果たさなければならない使命だというふうに思っております。
  49. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 是非よろしくお願いいたします。  その上で、グラフのもう片面を御覧いただくと、日米のマネタリーベースの推移を、左側のグラフは対名目GDP比で、右側のグラフは二〇〇八年の八月の客観的な水準を一〇〇として表したものですが、青はアメリカ、赤が日本ですので、右側のような見方をすれば相当日本は金融緩和がされていないということになるんですが、対GDP比で見ると世界最高水準を行っているわけですが、総裁はどちらでお考えになっておられますか。
  50. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) これはなかなか理論的には難しい問題点だと思いますが、委員恐らく御承知と思いますけれども、最近、この右のグラフで内外で様々な議論がされていることは事実でございますので、少なくともリーマン・ショック後の円の異常とも言うべき高騰ですね、その一つの要素にこのリーマン・ショック後の日米のマネタリーベースの推移のギャップがあったということは恐らく多くの方が認めておられると思います。
  51. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 どちらか一方で見るというべきものでもないということは私も理解しておりますが、是非左側のグラフも注視していかないとまずいことになりますので、よろしくお願いします。  最後になりますけれども、お配りした御著書からの引用の一番最後の文章ですが、御著書のあの十のエピソードを読むと失敗の連続なので、一九七〇年代からマクロ経済政策は全て失敗しているかのように読めてしまうんですが、決してそういうこともないと思うんですけれども。ここにも書いておられるように、総裁御自身も、この日本の財政赤字が膨らんでくる局面で主税局や国金局で働いておられたわけですね。やはり、日本の政策が、実は、昨日は安倍総理、今日、黒田総裁がいろいろと過去の政策の失敗を事後的に認めたことは、日本の政策論議にとって物すごく大きな前進だと思うんです。  というのは、過去に失敗した人たちが引き続きだんだんそのポストが上がって政策を担当するという日本は構造になっていますので、過去の失敗は失敗として客観的に認識をしていかないと、同じことの繰り返しないしは自分の在任中は過去の評価はグレーにしておくということになってしまいますので。そうであってはこの難局は乗り切れませんので、是非、この御著書の内容は二〇〇三年か四年ぐらいまでですから、そこから後もこの御著書のトーンで単刀直入に整理をしていただいて、今から五年間、しっかりと日本経済のかじ取りをしていただきたいと思いますので、そのことをお願いして、最後に一言御決意を伺って終わりにします。
  52. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) まさに委員指摘のとおりでございまして、結果的に見て誤っていたことは率直に反省して、それを踏まえて今後の正しい適切な金融政策の運営に役立ててまいりたいというふうに思っております。
  53. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 終わります。
  54. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 自民党の愛知治郎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、黒田総裁総裁御就任おめでとうございます。また、一方で、この大変な時期に日銀総裁という重責を担われますことに敬意を申し上げたいと存じます。私も、こういった状況の中で総裁の誕生を大変期待をしておりますし、是非頑張っていただきたいと思います。  私自身は、年はまだ若いんですが、もう結構、十年以上国会議員をやっておりまして、その間、日銀総裁も、速水総裁、福井総裁、白川総裁、そして黒田総裁、四人目ということになりますが、今日は、基本的な考え方、時間も限られておりますので、お伺いしたいと思います。  もう一点なんですが、私は、長くはやっていますけれども、金子先生や大塚先生みたいに専門家ではないので、ちょっと素人的な発想になると思いますけれども、是非分かりやすい議論をさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  まず、一点目の質問なんですけれども、デフレについてでありますが、そもそもデフレ、いつごろから始まったのか。一応十五年程度続いているということをおっしゃられておりますけれども、これはそれこそ速水総裁の時代から始まったという認識でよろしいのでしょうか。
  55. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) デフレの定義はいろいろ言われますけれども、一番一般的な定義というのは持続的な物価の下落でございまして、確かに、一九九八年の末ごろから消費者物価の前年比の上昇率がずっとマイナスで推移すると。二〇〇八年には世界的な一次産品価格の高騰で一時的にプラスになったことがございますが、基本的に一九九八年以来十五年デフレが続いていると。そういう意味では、ちょうど速水総裁のころからずっと物価の下落が続いているということは事実でございます。
  56. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ゆっくり後から分析すればそういう状況になると思うんですけれども、あの当時の議論は、そもそもデフレなのかどうかというのはなかなかはっきりした答えはなかったと思います。また、デフレじゃないかという議論をされたときにも、速水総裁はたしか、いいデフレ、悪いデフレという話で、別に問題があるデフレではないような見解をお持ちだったと思います。  今となってみると、その考え方自体は少し、やはりデフレは問題だ、しっかりそれを解決しなくちゃいけないという考え方を持たなくちゃいけなかったと思うんですが、一方で、あのときにやったのは、例えば量的緩和とかゼロ金利政策とか、これは今までなかった政策を大胆に取ってきたという認識も私は持っているんですけれども。  失敗、失敗という話が先ほどありましたけれども、先ほどのメッセージであるとか意識の問題は少し良くなかったかなと思うんですが、取ってきた政策自体はそれほど大きく間違っていたものとも思えないと思うんですが、その点、速水総裁から現在に至るまで、ちょっと長い話になりますけれども、時間が限られていますので、大きい話で結構でありますから、黒田総裁の認識を伺いたいと思います。
  57. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 委員指摘のとおり、九八年以来のデフレの中で日本銀行は様々な政策を取ってきたわけでして、いわゆるゼロ金利政策量的緩和というのも、これも世界に先駆けて行ったわけですね。  そういった意味では、速水総裁のときの金融緩和政策にせよ、その後の福井総裁の下での金融緩和政策、これは量的緩和の非常に大幅な拡大を行われたわけですね。それから、白川総裁の下では、いわゆる包括的金融緩和という考えで、量的な面もさることながら質的な面で、国債の大量の買入れのみならず、ETFとかREITとかCP社債なども買い入れるということで、それぞれの時期に様々な試みをされたと。それは、いろいろな面で世界に先駆けて行われたと。  ですから、その効果とかその波及過程というものは、世界で初めてやったわけですので、まだ十分分かっていない中で大変な努力をされたということは、私はそのとおりだと思います。ただ、残念ながら十五年にわたって結果的にデフレから脱却できなかったということから見ると、やはり量的にも質的にももう少し大胆な緩和をすべきであったと、これは後知恵かもしれませんけれども、そういうふうに思います。
  58. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございます。  もう一点伺いたいんですが、二〇〇八年ですか、平成二十年に物価が一・五%上昇という、それは外的な要因が大きいということだったんでありますけれども、それだけじゃなく、経済の好循環、多少なりともいい傾向が現れていたというのも私は記憶をしております。ただ一方で、その後にまさにリーマン・ショックが起きたり、日本では政権交代が起きたり東日本大震災が起きたりと、いろんな要素がありましたけれども、それ以前、そういった事象が起こる前は、多少なりともこのままうまくいくんじゃないかという見え方もしておりました。  改めてお伺いしますけれども、そういった大きなリーマン・ショック等の事象がなければ日本経済は復活したんじゃないかという認識は持っていないということでしょうか。つまりは、それまでの政策、やはりあのままでは結局デフレから脱却できなかったんだ、間違いだったんだという基本的な認識なのか、それとも、あれはあれでそういういろんな事象がなければうまくいっていたのか、お伺いしたいと思います。
  59. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 二〇〇八年、あるいは二〇〇六年、七年、八年の状況考えますと、確かにリーマン・ショック前に経済がある程度力強く回復しつつあったことは事実でございますが、物価はあくまでもこの二〇〇八年になって世界的な一次産品高騰の下で非常に上がったわけです。御記憶と思いますけれども、石油がたしか一バレル百四十五ドルとか、米の国際価格が三倍以上に一年ぐらいで上がったとか、極端な一次産品価格の高騰が全世界で起こりまして、日本の物価も一時的には二%ぐらいまで行ったわけでございますが、その大半の要因はやはり一次産品価格の高騰だったと思います。  そういう意味では、この部分はやはりカウントできないわけでして、仮に金融政策を二〇〇六年のような形で量的緩和から脱出するということがあってそのまま行ったときに物価が二%程度で安定したかと言われると、恐らくそれは難しかったと思います。
  60. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 分かりました。ありがとうございます。  では、ちょっと遡りまして、そもそも論に入りたいと思うんですが、デフレ、これの脱却が至上命題ということなんでありますけれども、そもそものデフレ要因ですね、何でこういう経済に陥ってしまったのか。今日の報告考え方についてもちょっと触れられておりましたけれども、改めて伺いたいと思います。  黒田総裁考えるこのデフレ、何でデフレ日本経済は陥ってしまったのか、その基本的な考え方をお聞かせいただきたいと存じます。
  61. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) デフレの原因はいろいろ内外にあると思いますが、初めのころは御承知のように不良債権問題が非常に大きくありましたし、円高が相当進んでしまったということもありましたし、新興国からの安値輸入品の流入とか、あるいは企業の低価格戦略とか、何かそういうものがいろいろ重なってあったことは事実でございます。  それから、先ほど申し上げたように、二〇〇〇年と二〇〇六年の金融緩和から引締めへの転換というのは、やはりデフレの悪化に影響を与えたという意味で金融政策デフレへの具体的な影響もあったと思いますが、デフレ自体は様々な要因が重なってきているわけでございます。  ただ、物価の安定を確保するという責務はどこの国でも中央銀行にあるわけでございますので、そういった様々なデフレ要因というか物価下押し圧力に抵抗して金融政策を運営することによって中期的に物価安定を確保する、持続すると。具体的に言えば、世界のほとんどの中央銀行は二%というのをターゲットにしていますけれども、そういった物価安定目標実現するということであろうと思います。
  62. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 この点は実は一番大事なんですね。先ほど過去の反省という話がありましたけれども、過去の事象とか現在の事象、それを正確に分析した上で正しい対処をしていかなければいけない。まず一番最初にしなくちゃいけないのはやっぱり分析だと思うんですね。  もう一つ、結果論からすると、物価の安定自体は、今二%と言いましたけれども、下落も含めて、この間非常に乱高下したわけではないですから、安定的に下がっていたのも別に問題があるわけではないというか、物価の安定という視点からすると間違いを犯したわけではない。いろんな視点があると思うんですけれども、ちょっと脱線しますので、デフレ要因ということについてお話をしたいと思います。  このお話、今、ペーパーを見ますと、規制緩和などに伴う流通の効率化という言葉がありますけれども、これは私はちょっと違うなと思います。というのは、流通が効率化したことでコストはもちろん下がりましたけど、その分、流通量は増えると思いますので、物がいろいろ回るということに関しては決してデフレ要因ではない、経済が活性化する要因の一つだと思いますので、マイナス要因ではないと思います。  一方で、私が考えデフレ要因というのは三つありまして、これはもう十年前からずっと言っているんですが、内外価格差の問題、それからニーズの変化、最後に金融です。この三本が一番問題。  内外価格差に関して言えば、御承知のとおり、中国等の安価な人件費、安い人件費の下に物がどんどん安い値段でできてしまう。つまり、一般に売っている物がどんどんどんどん安くなる。個別企業を出して恐縮ですけれども、例えばユニクロであるとか、安価ないい製品をどんどんどんどん流通させた。結果として物価はどんどん下がっていった。  これが一点でありますし、ニーズの変化に関して言えば、例えば服であるとかテレビ、電化製品もそうですし、車もエアコンも冷蔵庫も、全てにおいて物が手に入るようになったんですね、質のいい物が。だから、中等の物、普通の物というのはもう必要がなくなった。安くていい物か高付加価値の違う物か特別な物かということで、ニーズがどんどん変化をしてきた。これで今までの経済考え方は通用しなくなってきた。だからこそ社会構造を変えていかなくちゃいけなかったということがありました。  三点目は金融でありますけれども、あのときは不良債権の問題があって、貸し渋り、貸し剥がしがありましたので、いわゆる経済の血液が滞ってしまった。それをまず改善しなくちゃいけないという状況がありました。  一方で、今、ゼロ金利政策量的緩和の話ありましたけれども、それから二〇〇〇年、二千何年でしたか、引締めに転じたという話がありましたが、私の認識は、それほど引き締めたというよりかは、今までゼロ金利というのは余りにも異常な状況だったので、少し普通の、健全な状況に戻そうという動きをしていたにすぎないという私は認識なんですね。その点の考え方についてちょっと整理をしたかったんですが、黒田総裁考え方をお伺いします。
  63. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) あくまでも金融政策物価あるいは経済の動向との関連で適切な運営がなされなければならないというふうに思っておりまして、確かに例えば二〇〇六年の段階で経済回復基調にあったわけでございますが、物価は依然としてマイナスの状況であったわけですね。  そういう際に、金融政策をゼロ金利あるいは量的緩和から出口を探っていくというのが適切だったかどうかということになるわけでして、私は、後知恵かもしれませんけれども、やはり適切でなかったのではないかと。金融政策経済の全体を見ながらやるわけですが、やはり中央銀行としての最大の使命は物価の安定でございますので、物価の安定というときに、今の時点ではほとんどの国で二%程度消費者物価が持続的に上昇するというのが物価の安定だということになっているわけですね。そういった面からいいますと、物価が実際には下落していた状況金融政策を転換するというのは適切でなかったのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  64. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございます。  もう時間がなくなってきたので、あと何点かに絞りたいと思います。  まず、基本的な姿勢ではありますけれども、黒田総裁の、デフレ脱却に向けやれることは何でもやると、これは非常にいい、プラスのメッセージだと思います。是非どんどん何でもやっていってほしいと思います。  ただ、時期が限られておりまして、大体目安として二年というお話はされておりましたけれども、一方で政治を取り巻く状況というのもいろいろ難しい問題がありまして、一つは消費税であります。今年の夏には消費税を上げる上げないの判断をしなければならないんです、あっ、夏じゃない、秋口にはそういった判断をするんですが、これもまた明確な目標というか、義務ではないんですけれども、名目、実質、三%、二%という、その法律に数値が書かれております。それまである程度の、例えば物価上昇も含めた経済の好転要因というか、状況をつくり出す必要があります。  そんな悠長なことを言っていられないという状況もあるんですが、その点について、どれだけ、時期的に、どういった政策を打ち出していくのか、基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
  65. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私は、先ほどから申し上げていますとおり、財政の持続可能性を高める必要があると思っておりますので、財政再建は不可避の課題であると、政府として不可避の課題であると思っております。そういった観点から、特に消費税の引上げということについて与野党で合意されたというふうに認識をいたしております。  ただ、中央銀行といたしまして何よりもなすべきことは、まさに二%という物価安定目標を既に定めたわけでございまして、それをできるだけ早期実現するということも言っているわけでございますので、まさにそこに言われているとおり、物価安定目標をできるだけ早期実現すべく量的・質的緩和を大胆に進めていくということに尽きると思います。
  66. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 では、確認なんですが、消費税を上げたときには多少なりとも物価影響が出ると思うんですが、その消費税を上げることを前提に二年間で二%という発想ではなくて今考えておられるのか。安定的なのはもちろんそうなんですけれども、ある程度時期を区切ったときに消費税要因としてあるのかないのか、前提とするのかしないのかの考え方を伺いたいと思います。
  67. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 三%消費税率が上がった際に消費者物価指数にどの程度影響が出るかというのは、完全な転嫁を前提にしますと恐らく二%程度影響が出るんだと思いますが、その影響は、当然ですけれども一年たてば前年同月比というのは剥落してしまうわけでございまして、あくまでもそれは消費税という形の問題であって、やはり我々が消費者物価指数が二%の上昇になるというのは、そういった一時的なというか、短期的な物価上昇率の影響を前提にして行っているわけではなくて、あくまでも中長期的に安定的に二%程度で推移するということですので、消費税率が上昇したときに一時的に二%になるとか、あるいは二%を超えて上がるということ自体は、それが日本銀行金融政策によって二%の物価安定目標が達成されたとは考えません。  それは、二〇〇八年に一次産品の価格が非常に高騰して一時的に物価上昇率二%に達していますけれども、それはもう全く一時的なことでございまして、そういったことによる物価安定目標への到達というのは我々が考えているものではなくて、それはその部分を言わば除いて物価安定目標考えていかなければならないというふうに思っております。
  68. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 愛知治郎君、時間が参りましたのでおまとめください。
  69. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 ありがとうございました。  時間が来てしまいましたのでこれで終了させていただきたいと思いますが、実はまだまだ幾らでも、私、やってほしいこと、アイデア、多分非常にプラスになることだと思うんですけれども持ち合わせておりますので、またの機会に是非そういった議論をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  70. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子でございます。  黒田総裁、御就任おめでとうございます。また、今のこの大変な状況下で総裁をお引き受けいただいたことに敬意を表し、感謝申し上げたいと思います。  私は、黒田総裁市場とのコミュニケーションを重視して、やれることは何でもやるという姿勢を明確に発信されていることを強く支持申し上げたいというふうに思います。御発言の中で、この物価二%という目標について、日銀責任において二%を達成するという御発言もあったかと思います。これは、物価二%というのが金融政策だけで可能というお考えと同義であるかどうか、これをまずお伺いしたいと思います。
  71. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 中長期的には金融政策あるいは金融的な状況というものが物価に大きく影響するということは学界でも広く認められておりますし、中央銀行物価安定の責任を負っているというのは、これはどこの国でもそうでございます。ただ、確かにその時々の物価上昇率に影響する要素は多々ありますので、そういったものも勘案しながら二%をできるだけ早期に達成できるような金融政策を取ってまいりたいと思っております。  なお、政府が一方で機動的な財政政策とかあるいは中長期的な成長戦略を取るということを通じて経済全体が適切な成長を遂げる、持続的に成長するというような環境ができること自体は、物価安定目標実現に向けてスムーズに進めるという意味ではプラスになると思いますけれども、あくまでも物価安定の責務中央銀行にあるということで、全力を尽くして二%の物価安定目標達成に努めたいと思っております。
  72. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 ありがとうございます。  今の御発言、その御姿勢というのは、当然、政府と連携することが効果が高められるということを前提としながら、一歩前に出て日銀が主体的にこれを実現するのであるという、そういう決意が表れた御発言であるというふうに受け止めております。  次に、この物価二%の達成というのが様々これまでも議論されてきましたが、今、愛知委員からもありましたけれども、消費税が増税することによっても一時的に物価上昇影響するということ、またエネルギーの価格、輸入に頼っているエネルギーの価格、また為替レートによる輸入価格の変動等によっても物価が変わってくると思います。そうした変動とともに、やはり一番大切なことは、今デフレ状態物価を二%引き上げていこうということは、これは賃金を上昇させることによって物価を二%達成させようというのが本来の目的ではないかというふうに私は思います。  この賃金を上昇させるということが非常に重要なわけでありますが、金融緩和と、日銀金融政策賃金の上昇、これがどう結び付いていくのか、そのメカニズムをつくっていかなければならないと思っております。これについて伺いたいと思います。
  73. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 日銀内での調査によりますと、過去の物価動き賃金動きを見てまいりますと、ほとんど同時に起こっておるということのようでございますので、当然、物価が上がるときには賃金も上がっていくし、あるいは賃金が上がるときには物価も上がると。  御承知のように、今の時点では実はまだ物価はゼロないし低下しているわけですけれども、賃金の上昇が一部に見られるようになっているという意味では、今の時点ですと賃金の方があるいは先に上がっているのかもしれませんが、基本的には、賃金物価雇用というのは、言わば足取りを、平仄を一にして改善していくというふうに思っております。  そういった意味で、日本銀行の使命として物価の安定ということが一番大きいわけですが、その際にも、日銀法に書いてございますように、物価の安定を通じて健全な国民経済の発展に資するということになっておりますので、当然、日本銀行として、賃金雇用、その動きを十分注視してまいりたいと思いますし、必要に応じて、当然、政府との連携を強化していきたいと思っております。
  74. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 今、過去の経緯から、物価が上昇しているときには賃金も上昇しているというのがお話ありました。  諸外国を見ますと、やはり物価が二%ぐらいのときには賃金の上昇率も三%前後であると。しかしながら、政策を誤れば、特に日本は輸入価格に大きく影響を受けるところがありますので、円安になればその分物価が上昇してしまうというところがありますので、賃金が上昇しなくても物価が上昇してしまうという事態もあり得ると思います。そうならないように、しっかりと、賃金が上昇する前提となる産業の成長というものを図っていかなければならないと思います。  この金融緩和日銀金融緩和、今、力強く進めていただいていることによって、衆議院の財務金融委員会の中での議事録を見させていただきまして、黒田総裁は、今、期待が先取りしていますけれども株価が上昇してきていると、そうすることによって、まず大企業については資本市場から株式、社債発行によって資金調達ができるようになった、また、先ほど金子委員からもありましたけれども、手元流動性の取崩しという、そういった作用が生じてくるであろうというところがあります。また、個人については、住宅投資、これは非常に大きな消費投資の拡大効果がありますけれども、これも、長期の金利を引き下げるということによってこれも活性化してくるであろうという話がありました。  一番重要なのが中小企業金融であると思います。このことについては、総裁は、これは金融機関貸出態度いかんであるという御発言があったかと思います。私も全くそのとおりであると思います。中小企業が、数でいえば九九・七%が中小企業であると。そこに雇用される人のことも考えますと、この中小企業を伸ばしていくということが今非常に重要であるというふうに思います。  今回の補正予算、また本予算の中でも、中小企業の延命から再生にということで、認定支援機関等専門家による再生計画の策定支援、またそれとセットになったニューマネーの投入など、政策が、また予算が取られている状況でありますけれども、この中小企業、今資金繰りで苦しんでおられる方の財政状況を見ますと、過去の土地、不動産を買うときの借金、これに非常に苦しんでいると。その担保となっている資産を売却をしても返し切れないぐらいになっていると。  これは資産価格の下落ということが大きな要因であるというふうに思います。中小企業の場合は個人保証を求められる場合が多いので、売却をしても結局経営者がその残りを返済をしていかなければいけない。一部債務免除をされたとしても、まだそれに苦しんでいる。債務免除をされないで、整理を行わないでまだ返し続けている、その負担に苦しんでおられる方も非常にたくさんいます。  しかし、この資産価値の下落というのがその方々だけの責任であったとは思いません。やはり、日銀政府の政策によって資産の価格下落を招いてしまったという面が私はあると思います。  大きな銀行の場合には、公的資本の投入、また低金利政策によって低い金利で預金者の預金を預かり、そして、また住宅のローンや、また国債の購入など比較的安定をしたものを買ったりすることによって、貸付けを行うことによって銀行が安定的に利益を得られるような仕組みというのが提供されてきたと思います。これによって銀行も立ち直ってきたと思います。これは、国民の税金、また本来であれば得られていた家計の利子所得、これが銀行の方に移っていったことによって立ち直った面もあると思います。  しかし、中小企業の資産価値の下落については、個人保証をしていた経営者は自分で責任を負っているような、そういう状況にあることを考えると、これから事業を再生させていくに当たっては、その資産価値の下落による差額分について早く荷を下ろしてあげるということが日銀政府責任においても必要なのではないかというふうに私は考えております。  今、認定支援機関等が再生計画を作っていく基本的なスキームとしては、債権を放棄してもう事業をスリム化をして事業計画を立て直した上で、返せない借金については債権を放棄して、そして新しい事業にニューマネーを投入していくというような基本的なスキームだというふうに思いますけれども、法的な整理等を行わずに今の事業を継続したままスムーズにそちらの方に移行していけるような仕組みが必要だと思います。  これは、金融政策というよりも、税制面とか様々な法律的な仕組みによって作っていくべきものだというふうに思いますけれども、私が、日銀の、白川総裁が御在任のときだったと思いますけれども、非常にいい政策だというふうに思いましたのが、銀行が融資を増加させたら、その分、〇・一%の金利で比較的長期で、かつてなかったような期間の貸付けを行います、無制限に行いますということを打ち出されました。これは非常にいいと思います。これが中小企業金融にしっかりと回っていく、中小企業の事業再生に回っていくというスキームが必要であるというふうに思います。  一つのアイデアでありますけれども、銀行が中小企業に対して債権放棄をした場合に、それを評価をして日銀が低利で融資をするとか、そういったこともちょっと考えていただきたいというふうに思います。そして、中小企業が過去の債務がなければ事業の中で利益を出していける、従業員を雇っていけるという、そういう事業を倒産をさせないで続けさせていくような、そういった方向に是非日銀金融政策もお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  75. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 委員指摘のとおり、金融機関が貸出しを増加させた場合に、その増加させた額全額を限度として、〇・一%という非常に低い金利で三、四年貸すというスキームが導入されているわけですが、まだ実際にこれが動き出すのは今年の六月からでございます。ですから、その状況を十分見たいと思いますが、委員指摘の点も踏まえて、実際にどの程度中小企業金融に回っているのか、そういうことも点検していく必要があろうと。  そういう点検の中で、更に何ができるのかですね。具体的にはもちろん中小企業庁とか金融庁との話合いがなければ、日銀としてはあくまでも金融機関に対する融資でございますので、その金融機関自体がどういうことをするかということはやはり金融庁とか中小企業庁とよく話さなければならないと思いますが、御指摘の趣旨は十分理解いたしました。
  76. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 ありがとうございます。  今、日銀が超低金利金融緩和の政策を取っていることによって家計の利子所得というのも少なくなっているわけですけれども、ほかにも影響がございます。ちょっとテーマは変わるんですけれども、一つ申し上げたいというふうに思います。  北方領土隣接地域振興等基金というものがあります。この基金というのが、以前、例えば阪神・淡路のあの復興資金のようなものですと、基金を造成してその運用利息で復興していったようなことがありました。同じようなものがこの北方領土の隣接振興等基金でも造成をされて、昭和五十八年から平成三年までの間に基金百億円を積んでいたと。そして、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律によってできたものですが、この基金百億円の運用利益によって、世論の啓発事業、また元居住者の皆様の援護等の事業をしてきましたけれども、今の低金利の政策の影響を受けて、そこからもたらされる運用益が縮小をしています。  実は、北方領土隣接地域というのは北海道の根室市、標津町、中標津町、別海町、羅臼町でございますけれども、私は東京都の選出の議員ですが、出身がこの標津町なんです。元島民の方々とも大変親しくしておりますし、北方領土の日の全国大会とかデモ行進などにもできる限り行かせていただいてお話も伺っているんですけれども、皆様高齢になられていて、一九四五年当時ですと一万七千二百九十一人、島民の方が北方領土にお住まいになっていて、現在は、二〇一一年時点で七千四百十一人で、平均年齢も七十八歳ぐらいで、ずっと返還運動やってきたけれどもなかなか前に進まない。今回、安倍政権になって前に進むことを強く期待をされていますけれども。  そういう中で、啓発事業、北方領土に人が昔、日本人が住んでいたのかということも御存じない方もいらっしゃいますし、今、連合さんですとか全国的な組織で啓発活動、推進をしてくださっている方もいますけれども、やはり、修学旅行に北方領土隣接地に誘致をしたりとか、様々お金を掛けてやるべきことがありまして、この運用基金の縮小について政府としても御配慮を要請したいということで、内閣府の北方対策本部に最後お伺いしたいというふうに思います。
  77. 河合正保

    政府参考人河合正保君) お答え申し上げます。  委員指摘の北方領土隣接地域振興等基金、いわゆる北方基金でございますが、これは、国が百億円のうち八十億円を補助いたしまして、北海道に地方自治法上の基金として設置したものでございます。北海道におきましては、この基金の運用益を元に住民生活の安定、世論啓発、元島民の方々の援護等に関する事業に対し補助を行ってまいりました。  近年、低金利影響ございまして、北方基金の運用益が減少傾向にあります。このことに鑑みまして、政府といたしましても、まず国土交通省におきまして北方領土隣接地域振興等事業推進費補助金一億円、内閣府におきましては、北方領土隣接地域振興啓発経費二千五百万円及び元島民後継者対策推進経費二千四百万円を計上しておるところでございます。また、内閣府におきましては、平成二十四年度からは隣接地域への研修旅行に対する補助一千五百万円を行っているところでございます。  いずれにいたしましても、長年北方領土返還要求運動に携わってきた方々、特に先頭に立ってこられた元島民の皆様方の御高齢化も進行する中で、内閣府といたしましても、関係者の方々の御意見、御要望をよく承って、また関係各省とも連携し、北方領土問題の解決に取り組んでまいりたいと考えております。
  78. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 ありがとうございました。  低金利でいいことばかりではなくて、そのあおりも受けている小さなお声を是非聞いていただきたいと思いまして取り上げさせていただきました。  質問を終わります。ありがとうございました。
  79. 中西健治

    ○中西健治君 みんなの党の中西健治です。  半月前の議運での質問に続きまして、本日も質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、物価安定目標の達成時期についてですけれども、三月二十一日、本委員会におきまして、麻生財務大臣、三月二十一日といえば黒田総裁の新体制がスタートした日でありますけれども、その日に、二年で簡単に行くかいなと正直思わないではないというふうに麻生財務大臣は懐疑的な発言をされました。  黒田総裁は二年を念頭にと明言されておりますし、総裁を任命した政府の当事者である財務大臣がこのような発言をしていることについて、率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。
  80. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 一九九八年以来、十五年近くもデフレが続いておるわけでございまして、言わばデフレ心理というかデフレ期待日本経済全体の中で言わば浸透して定着してしまっているわけでございますので、これを打破して二%の物価安定目標早期に達成するというのが大変なことであるというか、困難を伴うことであるということは私も十分承知しております。  他方、十五年続いてきたものでございますので、ここで思い切った金融緩和を打ち出すことを通じて二%の物価安定目標早期に達成するというコミットメントを裏打ちすると。それを通じて期待にも働きかけるわけですし、さらには、具体的な金融が言わば実体経済に浸透していくということも行われるわけでございますので、私どもといたしましては、できるだけ早期に一日も早くそれを実現したいと思っておりまして、従来から諸外国の金融政策の浸透の効果のタイムスパンとして二年程度というのが多くの中央銀行考え方でございますので、そういったことも踏まえて二年程度というのを念頭に置いてできるだけ早期に達成しなければならないし、達成できるというふうに思っております。
  81. 中西健治

    ○中西健治君 麻生財務大臣の発言についての感想を求めているんですけれども。  ということは、麻生財務大臣の御懸念はまあもっともだと思うけれども、頑張りますと、そういうことですか。
  82. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) そのとおりでございます。
  83. 中西健治

    ○中西健治君 もっと前向きな答弁を期待していたんですが、是非頑張っていただきたいというふうに思います。  外国為替についての基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。  為替レートを決定する要素は市場参加者の期待ですとか貿易や投資などの需給など様々あるわけでありますけれども、ここで二点確認させていただきたいんですけれども、政府が限定的なケースで行う為替介入というのはやはり短期的な効果しか持ち得ないという認識はどうかということと、もう一つ、中長期的にはマネタリーアプローチ、すなわち二国間の金融政策の差が主たる為替レートの決定要因であると考えているかどうかということについてお聞かせください。  このマネタリーアプローチという言葉、まあ皮肉なことなんですけれども、白川前総裁がシカゴから帰ってすぐ、三十五年前ですけれども、書かれた論文というのが「マネタリー・アプローチによる国際収支・為替レートの実証分析」という論文でありました。あれから考え方が変わられたのかよく分かりませんが、黒田総裁はどのようにお考えになっているか、お聞かせください。
  84. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) いわゆる不胎化される介入、政府が行う介入が通常そうでございますが、そういうものの効果というのは事前にはなかなか分かりにくいと。ただ、短期的に効果を持つことは非常に多いわけでございますので、委員の御指摘のとおり、そういった介入は、短期的には効果を持つことが多いけれども、中期的にどの程度効果があるかというのは学界でも意見が分かれていると。  二番目の、中長期的な面でマネタリーアプローチと言われるようなアプローチがかなり有力であるということは、そのとおりだと思います。  なお、為替レートの長期のトレンドについては、御承知のように、購買力平価説というのが一番有力でございまして、十年、二十年という長い期間を取ると物価上昇率格差が為替の変化に対応するということが有力だと思います。
  85. 中西健治

    ○中西健治君 今も少し言及されましたけれども、為替介入は金融政策と共同で行うことによって、非不胎化介入ということになるんだと思いますけれども、より効果が高まるというふうにお考えでしょうか。
  86. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) それはそのとおりだと思います。というのは、非不胎化介入というのは不胎化介入プラス金融政策でございますから。
  87. 中西健治

    ○中西健治君 そういうことなのであれば、日銀金融政策手段として外債購入を取っておくべきじゃないかな、考えるべきなんじゃないかなということを申し上げたかったんですが、先ほど大塚委員とのやり取りとの繰り返しになってしまいますので、私からは是非とも考えるべきであるということを申し上げておきます。  続きまして、黒田総裁は、就任の会見でもそれから衆議院の方でも、日本の資産市場にバブルの懸念が生じているとは現在考えていないと、こういうことをおっしゃられております。この場合、資産市場というのは、債券の市場国債市場を念頭に置いていらっしゃらないと思います。それ以外というところだと思いますけれども。今の債券市場の参加者の中には、今もう既に国債はバブルだと、国債市場はバブルだということを言う方がいます。さらに、日銀が大胆な金融緩和を行うことによって長期債を大きく購入するということになったらバブルが更に大きくなってしまうのではないか、こんなような懸念を言う人がいます。  今日も、国債金利、この委員会の前に今日の動きを見たところ、また〇・〇三%、三ベーシスポイント金利が下がって〇・五一、十年物の国債金利、そんな状況になっています。十年前の九三年に〇・四四を付けた、それに接近しているということになってきておりますけれども、バブルの危険性があるのかどうか、国債バブルの危険性があるというふうに認識されているのかどうか、そこについての認識を教えてください。
  88. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 資産価格につきまして、常にバブルの要素があるかどうかというのは議論になるところでございます。  委員は債券市場と株式市場を念頭に置いてお話しになっていると思いますが、債券市場につきましては、当然ですけれども、どこの国でも中央銀行金融政策の一環として債券の売買のオペをしますので、それが債券市場の動向に影響を与える、金利影響が出るというのは、これは言わばそういうものを目的としてやっているわけでございますので当然でございますが、また、これも当然ですが、金融を締めているからといっていつまでも締めているわけでなくて、必要がなくなれば緩和しますし、逆に緩和しているからといって無制限に緩和するわけでなくて、物価安定目標が達成されればそうではなくなるでしょうし、あくまでもその時々の市場で成立する価格というのは金融政策の、何というんでしょうか、影響を受けていることは事実でございますが、それが直ちにバブルであるというふうにはなかなか言いにくいところがあると思います。  ただ、おっしゃる点はよく理解しておりまして、資産市場の動向というのは、特に株式市場にせよ債券市場にせよ十分注視してまいりたいと思っておりますが、ただ、何回も申し上げますが、国債その他債券市場についてオペをやっている立場からいえば、そのオペ効果が出るということ自体は意図したところでございますし、バブルとは言えないのではないかと思います。
  89. 中西健治

    ○中西健治君 ということは、オペを通じて、出口は随分先になりますから、需給が締まった状況というのは当面続くであろうから、バブルが破裂する危険というのはそんなに心配しなくてもいい、そういうようなことでしょうか。
  90. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 欧米の状況を見ましても、債券市場の価格というか金利の動向というのは、もとよりその金融政策によっても影響を受けますけれども、典型的には、欧州の現状を見ますと、金融政策は相当緩和されているわけですが、国によっては国の債務状況に対する不安から国債の価格が下落して金利が上がっているとか、あるいは金融システムの不安がある国ではそういった金融機関の調達する資金コストは上昇するということで、いろんな要素がありますので、金融政策だけでもとより金利が決まるものではないということはそのとおりだと思います。
  91. 中西健治

    ○中西健治君 先ほども少し議論がありましたが、デフレの原因、要因ということについてお聞きしたいと思いますが、中曽副総裁は就任会見で、人口の減少、特に労働人口の減少という要因デフレ要因として挙げられています。これは白川前総裁と同じ論旨だと思いますけれども、一方、岩田副総裁は人口要因説を明確に否定されております。  日銀としては、どちらの考え方もありますという認識でいるのか、お二人を統括されている黒田総裁にお聞きしたいと思います。
  92. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 経済分析のお話でございますので、これはいろいろな考え方があるというのは当然だと思います。  私自身は、人口の成長率というのが、デフレインフレに非常に大きな、あるいは主たる影響を与える要因であるとは思っておりません。  と申しますのは、世界を見ましても人口が減っている国は日本だけじゃなくていろいろあるわけですが、先進国にですね、そういった国がデフレに陥っておりません。それから、人口がでは増えている国はインフレになるかというと、先進国の中で人口が増えている国はいろいろありますけれども、そういう国が特に高いインフレ率になっているわけでもないということでは、余り人口増加率とインフレデフレとを密接に結び付ける考えは私は持っておりませんが、ただ、いろいろな局面で、人口増加率がマイナスになるということが企業設備投資とか企業に非常に何かネガティブな影響が与えられて、それが成長率にマイナスになり、あるいは悲観的な予想が広がっていくといったような局面があったかもしれませんが、基本的に人口増加率がマイナスになるとデフレになるという考えは持っておりません。
  93. 中西健治

    ○中西健治君 これまでの総裁の発言、そして今日の冒頭の説明を聞いておりましても、人口要因というのはあえて入れていないんだなというふうに思いましたので、総裁考え方はそこにあるということを確認させていただいたわけでございます。  もう一つ確認したいこととして、黒田総裁は、イールドカーブ全体に働きかける、引き下げるということをおっしゃられておりますけれども、岩田副総裁は、長期債の購入はマネタリーベース増大のためには必要だけれども、長期金利は上がることもあるし下がることもある、どちらでも構わない、このように書かれておりまして、金利は上がっても下がっても構わない、もうとにかく量だという、それで期待に働きかけるんだという考え方のようですが、そうではないということでよろしいでしょうか。
  94. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 量的緩和の経験は実は日本銀行が一番長いわけでございまして、その長い経験の中から量的緩和効果があることは分かりますけれども、より効果を持たせるために、やはり負債側のマネタリーベースだけではなくて資産側の具体的に購入する資産を多様化する、あるいはより長期のイールドカーブも下げる、あるいはリスクプレミアムを下げるということが量的緩和効果もより大きくなる、言わば金融緩和効果を一層大きくするゆえんであるというふうに思っております。
  95. 中西健治

    ○中西健治君 どうもありがとうございます。  最後の質問ですけれども、長期国債をこれから大量に購入していく方向性だろうというふうに思いますけれども、金融調節オペの対象が短期債から長期債に移っていく、若しくは広がっていくということになっていきますと、市中に存在する債券の満期構成というか満期プロファイルというものも変わってきます。そうしますと、今後、国債投資家、ディーラーと密に話していくことが必要になるんじゃないかなと、私の方の提案でもあるんですが、した方がいいというふうに思いますが、財務省理財局は、国債投資家懇談会ですとかディーラー懇談会ですとか、こんなようなのをかなり頻繁に行っております。  日銀オペの対象先と時折は話しているということだろうというふうに思いますけれども、それをもっと定期的に恒常化された形でやっていく、そうした方がいいんではないかなというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  96. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 黒田総裁、時間が参っておりますので、簡潔にお願いをいたします。
  97. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) はい。  財務省が発行者の立場として行っておられることと、日本銀行中央銀行として金融政策オペの対象としてどこが適切かという面で市場との対話を行う場合と少し違うと思いますけれども、御意見は十分考慮させていただきます。
  98. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 時間が参っております。
  99. 中西健治

    ○中西健治君 はい。  財務省の方で行っている懇談会に日銀も時々参加しているみたいですが、やはり財政ファイナンスとみなされないようにするためにもしっかりと分けた形でやるべきだということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  100. 広野ただし

    広野ただし君 どうも。生活の党の広野ただしです。二時間を過ぎましたのでお疲れだとは思いますが、是非またよろしくお願いしたいと思います。また、国会ですので、国民の皆さんも見ておられると思います。できるだけ分かりやすく、そしてまた、時間もちょっと十五分ということで私は限られておりますので、簡潔によろしくお願いをしたいと思います。  昨日も、安倍総理がここに座られて、税を主体だったんですが、お話をさせていただきました。このアベノミクス、三本の矢ということで進んでおります。しかし、パイを大きくすれば企業収益が上がり、所得が、賃金が上がり、そして需要が拡大をしていく、いい循環になると。これは非常に楽観的な見方なんですが、小泉政権のときにかなり緩やかな経済成長だったんですが、国民の皆さん、実際はほとんどその経済成長の実態を享受しない。簡単に言いますと、所得格差が付く、そして企業格差が付く、地域格差が付く、私はこの三つの格差がやっぱり経済運営において看過できない大事な視点だと、こう思っております。  そこで、中小企業金融日銀金融政策という観点でお話をしたいと思うんですが、企業向け、法人向け貸出し、昔、五百三、四十兆あったと思いますが、今は四百二十兆、貸出残高はそんなものだと思います。そのうち中小企業、これは銀行ばっかりじゃなくて、信金、信組も入れても大体二百五、六十兆というような貸出残高じゃないかなと思っております。まあ六、七割、やっぱり中小企業の重さがあるんだと。特に、大手企業は内部留保がありましたからそこはぐっと減ってきたんだと思いますが。そしてまた、この三月末に中小企業金融円滑化法が切れると。こういう中で、依然として、中小企業はまだ地域経済においては資金繰りに苦しんでおられる方々が、企業がいっぱいある、中小企業がいっぱいあるということであります。  そういうことについて、日銀金融政策としてどう考えられるのか、伺います。
  101. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 御指摘のとおり、中小企業に対する融資というのは、中小企業にとって非常に重要でございます。したがいまして、日本銀行といたしましても、金融機関に対する考査とか各種のモニタリングを通じて、金融機関が中小企業などに向けたいわゆる金融仲介機能を発揮する上で必要になる様々の能力、そういうものを高めるべく、指導と言うと失礼ですが、協力をしていきたいと思っております。  何よりも金融機関で重要なのは、やはり成長力のある企業とか事業分野に、そういうものを適切に見極めてそういうところに融資を拡大していくということに尽きると思いますので、中小企業金融円滑化法は終了するわけですが、引き続き日本銀行としても努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  102. 広野ただし

    広野ただし君 末端では、末端というか最前線の現場では、保証協会と金融機関とのリスクの押し付け合いみたいなことがやっぱりありまして、そういう中で、リスクを取るのは政府系に任せるというような考え方、あるいは金融機関の健全化というものを盾に、これは元々世界に雄飛する大手銀行、金融機関と地域のあれではダブルスタンダードになっているわけですけれども。私は、健全化というよりも、ここは本当に大変な、リーマン・ショック後からはい上がってくる大変な時期なわけですから、そこを短期的に見ないで、長期的な観点で中小企業担当金融機関の健全化を考えればいいんで、ここは中小企業の立場に立って、しっかりと裏打ちを日銀にもやっていただきたいと思っております。  もう一回お願いします。
  103. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私も委員と同意見でございまして、中小企業に対する融資が重要であることはそのとおりであり、一方で、銀行、金融機関が健全でなければそういった中小企業に対する融資も持続できないわけですので、一方で健全化を進めると同時に、他方で円滑な中小企業への融資が行われるということを共に実現していかなければならないと思っております。  なお、具体的なもちろん健全化の取組云々というのは、基本的には金融庁の、政府の役割でございますが、委員指摘のような点も踏まえて、十分中小企業金融の実態を点検しながら、中小企業に対する融資が円滑に進むように日本銀行としても努力してまいりたいと思います。
  104. 広野ただし

    広野ただし君 やはり、中小企業日本経済のまさに大宗を占める、九九%を占める中小企業が元気にならないと、地域経済も活性化をしない、そしてまたコミュニティーを守れないことになるんですね。またさらに、いろんな伝統文化を支えているという老舗もいっぱいあります。  ですから、ここは是非、中小企業関係機関の健全化というよりは、それは長期的には健全化であればいいんであって、やはりここは、危機的状況を早く脱却をするために是非中小企業に寄り添った金融政策を取っていただきたいと、こう思っております。  それと、二%の物価安定目標、このデフレ脱却デフレ脱却にはその二%物価安定目標はまずというところはあるかと思います。しかし、デフレ不況から脱却をする、デフレ不況から脱却しないと、これは持続的な経済発展ということにはならないわけですね。  ですから、まずデフレ脱却はあるけれども、デフレ不況脱却が本当にその次に来るのか。これは実体経済が付いてこないと駄目なんですが、二%まずありきでこう行きますと言っても、本当に実体経済が付いてくるのか。そこを分かりやすく御説明いただきたいと思います。
  105. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) この点はまさに一番重要な点でございまして、中央銀行といたしましては、当然二%の物価安定目標を達成するということが最大の使命でございますが、しかし、単に物価が二%上がっただけで日本経済が持続的な成長を遂げられるかどうかというのは議論のあるところでございます。  したがいまして、当然ですが、日本銀行としては、法律に定められているとおり、物価安定を通じて国民経済の健全な発展に資するという努力をいたしますとともに、政府と十分連携して、まさに物価安定が経済の持続的成長と両立するというか、まさに平仄を合わせて進むということに全力を挙げてまいりたいというふうに思っております。
  106. 広野ただし

    広野ただし君 それで、前白川総裁のときは、二%とはいうものの、二%以内で一%ということだったと思います。今の物価安定目標二%というのは、国際的に大体二%ですからという理由ぐらいしかないんですね。一%であったらなぜ駄目なのか、二%だったらなぜいいのかと、ここを御説明ください。
  107. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) これは政策委員会でも議論されたところでございますけれども、消費者物価指数はいろいろな要因から実態よりも少し高めに出るわけでございます。それに加えて、ある程度ののり代というか、そういうものがないと、景気が後退した、あるいは物価が下がり始めて金利がどんどんゼロに近づいてきたときに、伝統的なやり方で金融緩和を迅速に進めるということが難しくなりますので、そういったことを踏まえてほとんどの先進国で二%の消費者物価上昇率を物価安定の目標にしているということでございまして、今言ったような要因というのは日本においても同様に成立するということで、二%の消費者物価上昇率を物価安定目標とし定めたというふうに認識しております。
  108. 広野ただし

    広野ただし君 それで、この間の議運のときにもお聞きしているんですが、二%が達成をされる、これは一年後になるのか二年後になるのかあれですが、そしてその後も二%、こう行くわけですね。そうしますと、在任期間中、まあ大体八、九%上がると。おおよそ一割近く上がってくる。  ところで、実体経済からいって、じゃ国民所得、あるいは賃金、あるいは中小企業等々、本当に所得が上がって実体経済がそこに付いてくるのかと。付いてこなかったら、まさに物価は上がるけれども不況だと、そういうスタグフレーションということになりますが、そこの点はどうですか。
  109. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) これまでに日本経済が十五年にわたってデフレに苦しんできたということを脱却することが何といっても持続的な成長を遂げるための、それが十分条件だと思いませんが必要条件であるというふうに認識しておりますので、物価安定目標を達成するだけであらゆることがうまくいくというふうには思っておりませんけれども、何度も申し上げますが、政府と連携して、物価安定を通じて持続的な成長、成長の中には、当然ですけれども、賃金の上昇、所得の上昇、雇用の改善といったことも含まれるわけですけれども、そういうことが実現されなければならないし、実現できるというふうに思っております。
  110. 広野ただし

    広野ただし君 そういうスタグフレーションに陥らないように、これは三本の矢というところになるわけですね。  ということになってまいりますが、その中でいつも欠落をしますが、FRBは失業率の改善等を六・五ぐらいのことを言っています。イングランド銀行も、数値までは示さないけれども、そういうやっぱり所得の改善、雇用の改善ということも金融政策の視野にやっぱり入れているんですね。ここが、私は日銀さんの方はそこから欠落しているんじゃないかと、これが非常に懸念を持っておるんですが、いかがですか。
  111. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 米国のFRBはやや異例でございまして、御承知のように法律で物価の安定と雇用の最大化ということが使命として挙げられておりまして、そういった下で物価安定目標を運営しているわけでございます。他方、イングランド銀行も含めて、日本銀行も含まれますが、物価安定目標を設定した中央銀行も全て、当然ですけれども、雇用とか賃金とか経済の動向とかいうことも十分注視、モニターしながら物価安定目標達成に努力をしているということでございます。  FRBがややほかの中央銀行と違うということはそのとおりでございますけれども、ほとんどの中央銀行日本銀行と同じような仕組みで物価安定目標が運営されているというふうに思います。
  112. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 時間が参りましたので、おまとめをお願いします。
  113. 広野ただし

    広野ただし君 まとめをします。  いずれにしましても、この金融政策、そしてアベノミクスも、この三本の矢というのも、結局私は、元気な中間層、中間層が元気になる、そして元気な中小企業、そして元気な地域経済ということにならないと、これはやっぱり本当に経済が健全で豊かなことにはならない。日銀さんにも是非そういう視野でやっていただきたいと思います。  終わります。
  114. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。  黒田さん、良かったですね、今日は大体歓迎ムードで。私はちょっと違うんですけれども。  この十年、十年以上ですかね、速水さんのときから、もう御存じだと思いますけれど、リフレ派とは当時は言いませんでしたが、インフレターゲット派とかあったんですけど、個々のいろんな議員の方が入れ替わり立ち替わり日銀に対して国債買えとか株買えとかいろんな圧力を掛けて、私はそのときにいつも日銀を擁護して、圧力に屈しちゃいけないということを言ってきて、本当によく日銀擁護派といいますか、日銀派というふうに言われてきたんですけれど、黒田さんがなられてからは反日銀派で頑張ることになるかなと思っております。  もちろん、リフレをおっしゃる議員の中には金子さんのように純粋な学者肌の真面目な方もいらっしゃるんですけれど、実は大した話じゃなかったんですよ。そういう質問をする議員とふだん話すと、いや、大門さん、物価よりも株だよ、株上げてほしいんだと、株上げなきゃもう、ちょっと駄目なんだと。で、自分も株主だったりしているわけで、落選しましたけれど、その人は。とか、あるいは、政治の無策、失政を日銀のせいにするという雰囲気もあったりして、余り健全な話じゃないなと思って見ていたものですから、そういう面もありました。  それともう一つは、基本的な話なんですけど、やっぱり財政ファイナンスの問題とか、あるいは原因が、金融政策もあったかも分かりませんが、金融政策だけではないのに、過度に金融政策でこれを解決しようとすると、ちょっと違う方向の、ちょっとバブルを引き起こしたり、あるいは国債の下落の懸念も出るとかいうことがあるんで、余りまともな話じゃないんじゃないかなと思って聞いてきて批判をしてきたんですけれど、安倍さんになって、急遽そのリフレの方が一気にその政策になって、で、黒田さんと、こうなっていると思うんですよね。  今言った危惧はいまだ持っておりまして、実は日銀の皆さんとはずっといろんな議論をして、恐らくこの後ろに座っていらっしゃる方ほとんどは私とまだ同じ考えじゃないかと実は思うんです。まだまだそういう状況だと思うんで、非常に危惧しているところはあるんで、個人的に何の恨みもありませんけど、ちょっと厳しい質問をこれから、今日だけではなくてさせていただきたいと思っております。  一つは、今日もありましたけれど、これから二%になるまで無制限に幾らでもやる、何でもやると。これどういうことなんですかね。例えば二%に、今、大体百兆国債保有になってきていますけれど、百五十兆購入してもならなかった、二百兆になってもならなかったと。じゃ、もう本当に、それでもならないんなら、二%達成していないから三百兆でも買っていくと、こういうことを本気でお考えになっているんですか。いかがですかね。
  115. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 二%の物価安定目標を達成するというのが日本銀行としての最大の使命であるというふうに認識しておりまして、それをできるだけ早期実現するためにできることは何でもやるということでございます。具体的にどういった質的、量的な緩和を行うかということは政策委員会で十分審議して決めるということでございます。  無制限という言い方をよくECBのドラギ総裁とかあるいはFRBのバーナンキ議長が言われているわけでございます。ドラギ総裁が記者会見でよく言われますのは、エクスアンテには無制限と、もちろんエクスポストに無制限になるはずがないわけでございます。ただ、目的を達成するまでやれることは何でもやるという姿勢でいかないと、物価安定という目標が達成できなければ最大の使命が達成できないということになってしまいますので、中央銀行としては最大の使命が物価の安定、もちろん金融システムの安定ということも非常に重要な使命でございますが、この二つはどこの中央銀行でも最大の使命として、その達成のためにその時々で必要なことは何でもやると、できることは何でもやるという方向でやってきているし、やってこないと、困難な状況でその使命を達成するということがむしろ難しくなってしまうというふうに思っております。
  116. 大門実紀史

    大門実紀史君 何といいますか、決意を示すとか、精神論的なものならば、さっき言ったようなコミットメントの関係で分からなくはないんですよ、立場は違いますけれども。本気でやっちゃったら、本当に麻生さんも安倍さんもやめてくれと止めるんじゃないかと私思いますよ、本当に、そんな異常なことをやり始めると。そういうものだということをやっぱりきちっと把握しておかないと、無制限にやることは賛成ですみたいな、ちょっと変な話にやっぱりなりかねないなと思っております。  財政ファイナンスの問題というのも決していいかげんにしていい問題ではないと、それは多分黒田さんも、総裁もお感じだと思います。黒田総裁は、この間、財政ファイナンスはしないんだと、つまり国の財政赤字を日銀が補填するようなことはしないんだということははっきりと明言されております。  ただ、大事なのは、財政ファイナンスというのは、大体、中央銀行総裁財政ファイナンスしませんと言うのは当たり前の話でございまして、しますって言ったら大変なことになるわけですね。だから、当たり前のことをおっしゃっているだけなんですけれども、問題は、この財政ファイナンスになっているかどうかというのは、総裁のお言葉じゃなくて、これは世界が、あるいはマーケットが判断するんですよね。  そういう点でいきますと、例のあの銀行券ルールというのがありました。これはここで何度も議論して、銀行券ルールの範囲内でということはずっと、その枠内でということをおっしゃっていたんですよね。これは一つの物差しとしてそれなりの理屈があったなと思ってきているし、ずっとそれを一生懸命日銀説明してきたんですよね。ところが、もう既に実際問題として十兆円ほど超えちゃっています。銀行券ルールはもう形骸化しているわけですね。しかし、これが一つの今までの、財政ファイナンスしておりませんと、しませんという一つの物差しで、世間には一つの物差しとして見られてきたことなんですね、もう超えちゃってはいますけれども。  この銀行券ルールについて、黒田総裁はもう要らないと、廃止するというか、見直すとか、どうお考えでしょうか。
  117. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) この点につきましてはいろいろな機会に申し上げておりますけれども、当然検討対象になると、見直しの検討の対象になると思いますけれども、あくまでも全体としての質的・量的金融緩和というものを進める中で、政策委員会議論しながら決めていくことであるというふうに思っております。  財政ファイナンスをしないというのはどこの中央銀行でもそうでありまして、日本銀行としても財政ファイナンスをする気は全くございません。
  118. 大門実紀史

    大門実紀史君 そうすると、こう考えてよろしいですか。そういう財政ファイナンスなんてしないということは当たり前のことですから、しかし世の中がちゃんとそれを分かるようにする何らかの新しい物差しを、この銀行券ルールを変えるということも含めてお考えで、何もないということで、これから言葉だけでやりません、やりませんで続けるんじゃなくて、何らかの物差しは、今までと違うものかも分かりませんが、示す物差しをお考えになるということですか。
  119. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 御承知のように、FRBもイングランド銀行も中央銀行券ルールのようなものはもう実際上ないわけでして、それを超えて大幅な金融緩和をしているわけでございます。したがいまして、当然、質的、量的に大幅な金融緩和を続けるということになれば、既にもう日銀券ルールは上回った緩和をしているわけですから、今後それを更に上回るということになることは間違いないと思います。  そういった中で、財政ファイナンスをしないということの決意というか意義というものは何かといいますと、何といいましても、中央銀行というのは言わば金利ゼロの通貨、これは日銀券もありますし、日銀への当座預金もあると思いますけれども、金利ゼロで、特に日銀券につきましては言わば定義により金利ゼロでございますので、そういった日銀券が金利ゼロで発行されるというものが、言わばそういう権限を背景にして財政のファイナンスを助けるということになると、財政の規律の問題も出てくる。まあ、財政の規律は基本的には政府と国会の責任でございますけれども、他方で中央銀行のクレディビリティーにも影響してくるということから、財政ファイナンスしないということになっているわけでございますが、具体的にどういう形でそれを示すかということについては、十分政策委員会において議論をしていきたいと思っております。
  120. 大門実紀史

    大門実紀史君 指摘したような言葉だけの問題ではないと、これは。きちっと枠を、枠といいますか物差しをお作りになるべきだと。立場は違ってもこれは当たり前のことだというふうに申し上げておきたいし、今、黒田さんちょっと言っちゃいけないことを言われたんじゃないかなと思うんですけれども、今、銀行券ルールを超えて既にファイナンスしていると。ちょっとこれは後で訂正された方がいいと思いますし、やっぱりファイナンスしているというふうになっちゃいますからね、今、今自身ですね、と思います。  もう時間がありませんので、もう一点だけ別の話をお聞きしますが、政策審議委員の佐藤さんがなかなかいい、地方で講演をされているんですけれども、その中で、物価二%上がるときには賃金はやはり四%ぐらい上がるような経済的な土台がなきゃいけないということ、私も全くそのとおりだと思うんですけれども。  先ほど、結果責任として日本銀行責任があったという言い方で、だから、デフレ克服できなかった責任日銀責任が大きいということをおっしゃりながら、デフレになった原因にはいろいろありますということもまたおっしゃっているわけですね。そうすると、やっぱり、金融政策だけじゃなくて、昨日も麻生さんとか安倍さんと議論しましたけれども、やっぱり先ほどもあった実体経済の中で賃金を上げるべきだと、政策もぴしっとやるべきだと思いますけれども、物価賃金との関係でいくと、やっぱり、さっきもありましたが、賃金上がらないで物価だけ上がるというのは、一時あり得るかも分かりませんが、あってはいけないことでもあります。  そういう賃金について、もうちょっと踏み込んで、どうお考えか、お聞きしたいと思います。
  121. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 先ほども申し上げたとおり、賃金物価の関係につきましては、私どもの調査によりますと、賃金が上がるときには物価も上がる、物価の上がるときは賃金も上がるということで、比較的シンクロナイズしているようでございます。  そこで、賃金上昇と物価上昇の程度ですが、今言われた数字は、恐らくマクロ的に見て物価が二%上がって成長が二%、実質成長が、実質所得が二%上がるとすれば、賃金その他の名目的な報酬も四%上がるというお話ではないかと思いますけれども、もちろん、当然、賃金物価がシンクロナイズして上がっていくということになれば、物価の上昇率よりも実質所得が上がる分だけ賃金の上昇率が高くても別におかしくないと思いますが、その具体的な程度とかその在り方というのはその時々で少しずつ違うかもしれません。ただ、大まかに見れば、賃金物価というのはほとんどシンクロナイズして動いているということでございます。
  122. 大門実紀史

    大門実紀史君 それじゃ、今日はこれぐらいにしておきます。  ありがとうございました。
  123. 中山恭子

    ○中山恭子君 日本維新の会、中山恭子でございます。  黒田総裁、心から御就任、お祝い申し上げます。日本経済にとって喜ばしい人事であったと、そのように考えております。また、田中理事雨宮理事、よろしくお願いいたします。おめでとうございます。  今の大門先生のお話聞きながら、結構黒田さんも総裁として苦労するのかななどとちょっと心配をしております。どこの国も経験したことのないこの長期のデフレ脱却というこの時期に当たっての金融政策をつかさどるわけでございますから、日銀の中でも従来どおりの考えだけで押していくということでは成り立たないものと思いますので、皆様どうぞ大いに活発な議論を重ねて進めていただきたいと、そのように思っております。  黒田総裁とは旧大蔵省で御一緒、同じく共に勤務いたしておりましたし、特に一九七五年から七八年ではIMFで御一緒する経験がありました。当時、国際機関に勤務する各国のエコノミストたちとの間で激しい論戦を交わし、理論的に論破していらした、頼もしいなと思っていたことを懐かしく思い出しております。その後はアジア開銀総裁としてアジア各国の厚い信頼を得ておられるということは、私自身中央アジアの国の大使をしておりました経験から、ウズベキスタン共和国を始めとしてアジアの多くの友人たちから伝えられているところでございますので、日本におきましてもしっかりしたリーダーシップを取っていただけるものと期待しております。  さて、黒田総裁は国際社会に多くの知己をお持ちでいらっしゃるということですので、総裁は、現在の日本が国際社会の中で金融面でどのような立ち位置にあると考えられているのか、国際社会の日本の見る目をどのようにとらえていらっしゃるのか、御見解をお伺いいたします。
  124. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 私、過去八年少しアジア開発銀行の総裁として仕事をいたしまして、その経験から申し上げますと、日本の金融機関企業、また様々な個人の方も含めてアジアにおいて大活躍をしておられます。それは非常に高く評価されていると思いますが、他方で、日本経済自体は十五年続きのデフレの下で活力がやや低下しているということでございます。  その意味で、日本経済デフレから脱却して再び力強い持続的な成長経路に乗るということは極めて重要な課題であろうと思います。そのためには、日本銀行としては物価安定目標を達成してデフレからの脱却に全力を尽くすということであると思いますし、政府の方は競争力とか成長力の強化に向けた取組を強力に推進していただきたいと思います。そういうことを含めて日本経済が再び活力を取り戻すということは、日本にとっても必要ですし、アジアや世界からも非常に高く評価されると思いますし、そういうことを通じて日本の国際社会に対する影響力も増していくというふうに思っております。
  125. 中山恭子

    ○中山恭子君 今のお話のように、国際社会から日本が信頼される国となること、また、日本が活力を得てアジアの諸国又は国際社会に大いに貢献していくという、こういう国をつくっていく、非常に大事なポイントであろうかと思っております。  金融政策として二%程度の物価上昇目標にとおっしゃっておられますが、金融政策を取るに当たっては、非常に広い範囲の経済全体を、また国際社会全体の金融もあるかもしれませんが、特に日本の経済全体を見ていただいて金融政策を決定していくということが非常に大事なことだと思っております。  戦後六十八年を過ぎ、今、日本の経済情勢とか、経済だけではなくて日本の現状を見ますと、公共施設、社会インフラがもうほとんどが老朽化しております。こういった社会インフラをメンテナンスで維持するというだけではなくて、今後の百年の日本を考えた形の日本のインフラづくりというものを今しなければいけない、そういう時期にも差しかかってきております。また、明るい未来のことを考えれば、技術開発なども進めていかなければなりません。それから、東日本の復興という大きなテーマがあります。  そういった意味で、日本全体をどのように動かしていくのかという、そういう中で、しかもデフレ脱却するという事柄も併せて考えた上で、財政当局を指導するくらいの意気込みで金融政策をつくっていくということが大事であろうかと思っております。  こういったものは放置しておいてよいものではございませんので、しかも民間でできるというものではありません。政府がやっていかなければいけない事業でございます。もちろん、民間事業がこのこと、動きによって活力を取り戻してくる良いきっかけになるというふうには考えております。  こういった動きの中で、できれば、塔の中に閉じこもるのではなくて、あらゆるいろんな方々と接触し、また地方にも出向いていただいて、金融政策をつくるその基礎をしっかり持っていただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
  126. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) まさに委員指摘のとおり、日本経済は様々な課題に直面しているわけでございまして、その課題に適切に対応するということが政府及び日本銀行の重要な使命であるというふうに思っております。  もとより、日本銀行としては、中央銀行でございますので、あくまでも金融システムの安定と物価の安定と、そういったものを通じて健全な国民経済の発展に資するということに尽きるわけでございますが、御承知のように、日本銀行も全国に支店、出張所を張り巡らせておりまして、具体的な様々な対応をしておりますし、東日本大震災の際の緊急の措置なども講じたわけでございまして、そういった全国の状況を十分把握して金融政策を進めてまいりたいと。そういう際には、当然ですけれども、政府との連携ということが非常に重要ですので、一番典型的には、経済財政諮問会議の議員に私もなっておりますので、そういった場を通じて、あるいはもっと頻繁に政府と連携をして、今、日本の抱えている課題に適切に対処できるように努力してまいりたいというふうに思っております。
  127. 中山恭子

    ○中山恭子君 黒田総裁であればそれができると期待しているところでございます。  先ほど申し上げましたような日本の国づくりに当たっては、これだけ財政赤字が増えている中でその財源をどうするかという、ただ放置しておけない問題ですので、何とか工夫をして進めていかなければいけない時期だと考えておりまして、そのときのやり方というか財源の取り方というものを、是非あらゆる知見、英知を出して考えていただきたいと、そのように思っております。  今がそのときに当たるかどうかはちょっとはっきり分かりませんが、例えば、明治維新の際には太政官札を発行いたしました、もちろんその弊害もたくさんあったわけですけれども。それから、日露戦争では、国際社会、特にユダヤ系の資本からの借入れをいたしました。また、戦後直ちには世界銀行からオリンピックの前に借入れをして、日本の経済開発を進めました。私どもがおりましたときに、その六〇年代に借りた資金を、借金を七五、六年ごろにはもう全額返済、前倒し返済するけれどもどうかと世銀の方に迫ったことがあったのを覚えておりますが。  そういう形で、いっときの動きとして経済を活性化するための形、例えば百年、今、六十年、建設国債の償還期限ですが、百年に延ばすとか、ただ、その場合、私自身は赤字公債が六十年償還というのはちょっと納得できていないんですけれども、そういった公債のシステムも考えてみるとか、それから借入れでは、海外からの借入れを今する必要はないと思いますが、国内に資金が相当ふんだんにあり需要がないということであれば、需要のきっかけをつくるための資金を政府に認めるとか、ある意味では無利子の国債を引き受けるとか、いろんなアイデアがあるはずでございますので、その点について真剣に議論を重ねて適切な政策を取っていただきたいと。  このように、全てを拒否するのではなくて新しい発想も加えて、従来どおりではやっていけないはずでございますので、その辺り、大いに議論を重ねて良い知恵を出していただきたいと思っております。いかがでしょうか。
  128. 黒田東彦

    参考人黒田東彦君) 財政ファイナンスを行わないということは世界中央銀行で一致した考えでございまして、そういうことをいたしますと、むしろ財政の信認とか国債の信認とか中央銀行の信認を失う恐れがあるというふうに思っておりますので、基本的な財政ファイナンスを行わないということは変えることはできないと思います。  ただ、委員指摘のようないろいろな、政府の側でですね、どういった形で資金調達をするのかというのはその政府の側で、短期とか長期とか中期とか、あるいはその他もろもろの資金調達のやり方があるでしょうし、それから、民間資金をどういう形で導入するかというアイデアもいろいろあると思いますし、現時点では国債社債も含めて長期金利はかなり低位にありますし、政府市場で資金調達をする際に何か障害になるとか資金が十分でないということは恐らくないと思いますので、政府の側でいろいろなアイデアを出してやっていくと。  そういうことを、もちろん中央銀行としては財政ファイナンスはいたしませんけれども、アジア開発銀行の総裁をした経験から、アジアではいろいろな形で政府が資金調達をしているわけですが、その際には、よく言われますけれども、インフラの整備のPPPとか、その他いろんなことをやっております。というのは、やはりアジア諸国の政府も資金がそう潤沢なわけではなくて、やはりいろんな形で資金調達をしないといけないと。そのためのいろんな知恵を出してやっておりますので、そういったことはアイデアとしてはいろいろあり得ると思います。  ただ、何度も申し上げて恐縮なんですが、中央銀行としてはあくまでもやはり財政ファイナンスはしないという姿勢で、あくまでもどうやって二%の物価安定目標をできるだけ早期に達成すると、そういうことを通じて国民経済全体の健全な発展に資するようにするということになろうかと思います。
  129. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 中山恭子さん、時間ですのでおまとめください。
  130. 中山恭子

    ○中山恭子君 はい。  二%の達成のためにもそういった政策を取っていくということが重要であろうかと考えておりますので、総裁御自身のお考えを存分に発揮して、リーダーシップを取っていただきたいと思っております。  ありがとうございました。
  131. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 黒田総裁、長い間お疲れさまでございました。御健闘をお祈りをいたします。  本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会