○松田学君
日本維新の会の松田学です。
私は、
日本維新の会を代表して、今回のG8サミット
出席等の報告に関して、総理に質問をいたします。(
拍手)
今回のサミットの成果として、総理は、アベノミクスが評価されたことを高らかに掲げておられます。恐らく、それは、
一連の危機を脱した後の世界経済が、成長の主役が不在なままであり、消去法的に、
日本に機関車の役割を果たしてもらおうという期待が集まったからではないかと思います。
かつて、七〇年代後半から八〇年代にかけてのサミットでは、西ドイツと
日本を念頭に置いた機関車論がしばしば
主張されました。
ドイツについては、近年においても、法人税率の引き下げ、
社会保障給付の削減、雇用ルールの変更などの、痛みを伴う構造
改革を断行して競争力を強化し、債務危機の欧州経済を支えてきたという実績があります。
ただ、このドイツのような役割を、世界経済に対して、今回、
日本が実際に果たせるかどうかは、未知数であります。
アベノミクスの第三の矢の成長戦略も、参院選で票を失いたくないからでしょうか、真に持続可能な成長につながる、痛みの伴う
改革は、先送りされています。
そして、そのドイツのメルケル首相からアベノミクスに対する懸念を何点か指摘されたのが、今回のサミットでもありました。それは、金融政策の出口戦略や、
日本の財政に対する懸念などでした。この真摯な問いに明確な答えを示せるかどうかが、アベノミクスへの国際社会での真の評価の決め手になるのではないでしょうか。
総理はメルケル首相に対してどのようにお答えになったのか、先ほど十分な御答弁がなかったので、私からも質問させていただきます。
総理は、サミットの場で、
日本経済のパフォーマンスを誇らしげに語ったとされています。
確かに、円安や株高で人々のマインドは好転しましたが、
日本の実体経済が顕著に改善してこれが大型の相場につながるかどうかは、別問題でした。現に、その後、相場はもとに戻り、本命の第三の矢の発表も、市場では、売りという結果になりました。
私
たちは、十五年にわたって続くデフレを克服しようとするアベノミクスの方向自体は正しいと考え、さきの衆院選後、一貫して支持してまいりました。
問題は、アベノミクスは、デフレ克服への必要条件の一部にすぎないということです。それだけでは不十分です。リスクも大きくなります。
今のところ、アベノミクスの成果は、お金を積んだことだけです。日銀のバランスシートの資産に国債というお金を積み、政府の予算を拡大して、公共事業にお金を積んでいるにすぎません。
大事なことは、成長戦略によってお金を回していくことであります。
アベノミクスのうち、まず、金融政策ですが、
日本は、金利が下限に張りついていて、マネーをふやしても金利が下がらない、流動性のわなに近い
状態にあります。そのもとでは、人々の期待を変え、予想インフレ率が上がることで実質金利が下がる、そういうルートでなければ金融政策の効果は出ません。
その前提は、金利が上がらないことですが、黒田日銀総裁は、先週の財務金融
委員会での答弁でも、長期金利はコントロールできないとしています。
また、先般、FRBのバーナンキ
議長の発言で世界の市場が混乱したように、政策の規模が大きければ大きいほど、それが市場では標準化してしまい、バランスシートのわずかな調整だけでも、市場に対して莫大なインパクトを与えるリスクが生じます。
日本の市場のボラティリティーが世界経済を混乱させることなく、日銀が決めた画期的な異次元緩和を生かしていくためには、金融と実体経済がどのようにかみ合って、
日本経済の成長経路がどのように描かれることになるのか、全体的な道筋を明確に示す必要があります。
総理はそうした説明
責任を今回のサミットでもきちんと果たしたのか、質問いたします。
次に、メルケル首相も心配した、
日本の財政についてであります。
財政審の先般の報告書では、
日本が奇妙な安定
状態にあると指摘しました。これは、企業の設備投資の伸び悩みが民間部門に余剰資金を滞留させ、これが銀行を通じて国債に運用されて低金利
状態となっていることで財政が回っているという姿であります。
デフレ克服とは、この奇妙な安定というものを崩すことにほかなりません。
いずれ、経済成長率が上がれば、長期金利は上昇し、これによる国債利払い費の増大に経済成長による税収増が追いつかず、財政を悪化させることにもなりかねません。
政府は、実質で二%、名目で三%の経済成長を想定していますが、長期金利が名目成長率を上回っている限り、政府債務残高の対GDP比は発散的拡大を続けます。政府が目標にしているプライマリーバランスを達成しても、名目成長率が長期金利を上回らない限り、同じです。そのようなケースは、
日本では、名目成長率がおおむね四%以上の、バブルのときしかありませんでした。
つまり、政府が理想とする名目三%の経済成長を達成しても、財政は、それだけで持続可能にはなりません。
今回のG8コミュニケで、
日本は信頼できる中期的な財政計画を定めるべきだとされました。経済成長とつじつまの合う中期財政計画は、果たして描かれ得るのでしょうか。それなしでは、アベノミクスが本当にサミットで評価されたことにはならないと思います。
政府のプライマリーバランス目標も、今の仕組みのままでは、
社会保障費に大きく切り込むか、
消費税率を一〇%からさらに引き上げなければ、達成できません。このような痛みの伴う
改革こそが、信頼できる計画の中身であります。
こうした計画策定を参院選後に先送りしたままでは、国際社会に対しても、有権者に対しても、まやかしをしていることになります。総理の御答弁を求めます。
日本の
政治は、長年、
選挙で票を失うことを恐れ、財政の不都合な真実から
国民の目を背けさせてきました。有権者の耳に痛いことであっても、真実を語り、
国民とともに
課題の解決を考えていくスタイルの、新しい
政治が今求められていると思います。
さて、
日本の経済運営で大事なのは、来年春に向けてどうするかです。
今般の公共投資の拡大が臨時異例の措置であるなら、来年度は、公共投資を平常レベルに戻すことが経済成長率にはマイナスに寄与することになります。これに来年四月からの消費増税が加わりますので、このままでは、財政が、二重の意味で、成長の足を引っ張る要因に転化します。
コミュニケでは、財政政策は、経済状況に応じて短期的には機動的となるべきだとされました。
日本政府として、何らかの財政追加を想定しているのか、来年度に向けたポリシーミックス戦略はあるのかどうか、質問いたします。
政府に頼らなくても、
日本には、本来、成長への潜在パワーが十分にあるはずです。それなのに、なぜ、失われた二十年の経済停滞が続いてきたのか。千五百兆円もの個人金融資産と、三百兆円近い世界断トツ一位の対外純資産を有する国でありながら、豊かさを実感できないのはなぜなのか。
それは、戦後続いてきた、統制的で既得権益を保護するさまざまな制度や仕組みが行き詰まっているのに、これを根本から変える、本物の
改革が行われてこなかったからであります。
改革こそが、本当の意味での成長戦略です。
普通の
国民にお金が回るようにするためには、
日本人が積み上げてきた資産を、
日本人の豊かさのために、
社会保障や相互扶助のために活用できるよう、賢い経済運営、賢い社会システムが必要です。そのためには、業界団体や既得権益に
選挙の票を依存せず、一般の
国民や消費者の
立場に立って、ネクスト・ジャパン、新しい
日本を組み立てる
政治が必要です。
総理は、
日本を取り戻す、ジャパン・イズ・バックという言葉を使っておられます。
しかし、大事なのは、かつての
日本に戻ることではありません。時代の変化にふさわしい、新しいストーリーを歩む
日本の姿を描くことだと思います。
総理が強調するような、世界経済を牽引する役割を
日本が本当に果たすためには、
日本の未来に対する国際社会の信頼を醸成しなければなりません。総理は今回のサミットでそれをどのように示すことができたのか、質問いたします。
さて、アベノミクスの成長戦略もそうでありましたように、今回のG8のコミュニケも、大々的に
課題を並べただけのように見えます。
以下、
日本として
具体的に何をすべきかが明らかではない項目について質問いたします。
まず、コミュニケにありますFTAの推進ですが、総理も、TPPなどの推進で成長力を高めると表明しておられます。
そのためには、例えば、
農業については、高関税などの水際規制方式から、先進国にふさわしい手法である直接支払いの財政方式へと、
農業保護政策の抜本的な転換を決断し、これを米の関税の段階的削減と整合的に組み合わせながら実現していくロードマップをきちんと描く必要があるのではないでしょうか。
農業に限りません。真の
改革を進めるなら、
改革の先にある、
日本の将来像を示す必要があります。
選挙で不利になることを恐れてレトリックに逃げているようでは、成長戦略にはなりません。総理の御認識を伺います。
また、TPPや、アメリカとEUとの間のFTAなど、世界は、新たな経済秩序やルールづくりに向けて、大きく動き出しています。ここでイニシアチブをとれるよう、
日本が目指す国際経済秩序のビジョンを総理はG8で提起することができたのでしょうか。
次に、今回のG8で英国から提起された三つのT、貿易、税、透明性のうち、税について御質問いたします。
グローバル経済の進展とともに、各国間での税制の調和がますます必要になっています。総理も税逃れ対策の重要性を提起したようですが、これは、法人税引き下げ競争を避けることを意図したものなのでしょうか。法人税の実効税率が著しく高い
日本の場合、税制の調和のために求められているのは、むしろ、
日本の実効税率の引き下げではないでしょうか。総理の御認識を伺います。
また、コミュニケには、脱税との闘いとして、各国間の自動的な情報交換のためのモデルの策定などがうたわれています。その
具体的な内容はどのようなものになるのか、御説明をお願いします。
日本の場合、こうした情報交換に必要なデータが他国と比べて未整備だという指摘もあります。脱税やマネロンなどへの対策への国際的な要請に応えていく上で、
日本は、税や資産などの捕捉に必要な基本的なインフラ整備を急ぐ必要があります。今
国会でマイナンバー
法案が
成立しましたが、今後、これを預金や資産などにも拡張することを早急に検討すべきと考えます。
私
たち日本維新の会は、
社会保障における、世代の自立を提唱しています。現役世代にいたずらに負担を求めることなく、高齢世代の中において世代内相互扶助を推進していくためにも、資産がきちんと捕捉できるインフラ整備は不可欠だと考えます。
最後に、今回のサミットの成果として、総理は、北朝鮮の核問題と拉致問題について、
我が国の国益を踏まえた明確な
立場を
主張できたことを強調しています。この点については、私
たちも評価いたします。
他方で、重要なのは、近年経済パワーが低下してきた
日本が、これから、何を売り物にして国際社会での存在を築いていくかであります。
超高齢化社会と成熟経済へと移行する中で、これからの
日本に必要なのは、安全保障でも、さまざまな分野での
課題解決の上でも、
日本は一体世界のために何をしようとしている国なのかという問いに答えられる国になることだと思います。この点について、今回のサミットに
出席されて何を感じられたのか、総理の所見を伺います。
日本が、真に自立した国家として、世界の中で新しい存在と新しい経済成長を築いていくためには、個人や地方の自立と挑戦を妨げているさまざまな制度や仕組みを再設計する必要があると考えます。そのためにこそ、国の
統治機構の組みかえという第四の矢が必要であります。
私
たちは、憲
法改正や道州制のみならず、今
国会でも財政
責任法案を初め数々の
議員立法を提案させていただきましたが、それが
審議されないまま
国会が閉会を迎えようとしているのは、まことに残念であります。次の
国会での実りある
審議を期待して、私の質問を終了いたします。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕