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山川参考人 おはようございます。
エナジーコンシャスの
山川文子と申します。
私は、個人で執筆や講演などを通じて、
家庭の
省エネに関しての情報発信をしております。現在の立場になる以前は、一般財団法人
省エネルギーセンターにおきまして、
家庭の
省エネ広報を主に担当しておりました。前職を含めて二十年以上、御
家庭の
省エネに関しての仕事をしておりますので、その中で、
消費者と実際に接して、
消費者の
省エネ意識ですとか、実際の
省エネ行動がどれぐらいできているかなどについては、それなりに把握をしておるつもりです。
本日は、
消費者の視点で、
家庭の
省エネを進める上で必要と思われることについて、
改正省エネ法に関連した点を含めて、幾つかお話をさせていただきます。
なお、本日の内容は、私が
消費者と現場で直接接してきた中で得た
経験、自身の体験に基づいた話や考えであるということで御了承いただきたいと思います。
お手元に
資料を一枚用意しております。
まず、
家庭の
省エネは、
省エネに配慮した
暮らし、
省エネ性能が高い機器を使う、住宅の
省エネ性能を上げる、大きくこの
三つの要素があります。
省エネに配慮した
暮らしというのは、今お使いの機器を上手に使って
省エネをするもので、特に新たにお金を負担しない、もしくはほとんど使わない、ほとんど
投資を伴わない、そういったものです。また、機器の使い方だけではなく、例えば、夏に窓をあけて、風を通して涼しく暮らす、そういった
暮らし方の工夫も含まれております。
二点目の、
省エネ性能が高い機器を選ぶについては、機器の購入時に、より
省エネ性能の高い機器を選択するということです。現在の
省エネ法におきましては、
エネルギー利用機器の
トップランナー制度が
導入されておりますし、関連してラベリング
制度などがあるということです。
三点目の、住宅の
省エネ性能を上げるにつきましては、住宅の
断熱、気密性能を上げるということで、当然、
冷暖房エネルギーの削減につながるということでございます。今回の
改正省エネ法に関しては、窓や
断熱材に関する
トップランナー制度の
導入が盛り込まれているということです。
この
三つの要素に加えまして、
エネルギー使用状況の把握というところがあると思います。
本日は、この中から、
エネルギー使用状況の把握に関連して、
エネルギーの見える化について、また、住宅の
省エネ性能を上げるについてお話をさせていただきます。
まず、
エネルギーの見える化の部分です。
御
家庭の皆様にとっては、
電気などの
エネルギーというのは目に見えませんので、
使用している実感を感じづらいという点があります。
電力会社などから検針票というのが毎月届きますけれども、これは過去一カ月の
状況でありまして、現時点でどれだけ
消費しているかというのは残念ながらわからないということです。もしリアル
タイムで
消費状況を簡易に見ることができれば、
使用実感が湧いて、無駄への気づきにつながりますし、
省エネ行動を促す、そういう
効果が期待できます。
例えば、
エアコンをつけると
消費量の数値が大きくふえる、それから、グラフの表示で棒が大きく伸びるとか、そういうことが見えれば、無駄に使わないようにしようという意識が働いて、行動の変化が期待できるということです。また、時間
帯別の
消費状況がわかれば、
電力の
ピークカット、
ピークシフトといったところの行動も期待できるということです。これが見える化の
効果ということになります。
なお、自宅全体での
消費状況だけではなく、できれば家電製品ごとに、なるべく細分化した見える化ができれば、より
効果的な
省エネ行動につながると思います。
消費者の多くは、御自身の
家庭で使っているいろいろな家電製品の
消費電力を御存じない方がほとんどです。私は、
東日本大震災直後の計画停電が行われていた時期に、幾つかの御
家庭を実際に訪問して、節電のアドバイスをするような機会がございました。
いずれの御
家庭も、自分はかなり節電を頑張っていますというようなことをおっしゃっていましたが、千ワットぐらい
消費する
電気ストーブを使っていたとか、毎日ホームベーカリーでパンを焼いていますなんというところが一方で見られたというようなケースがありました。私が持参した
消費電力がはかれる計測器でそういう機器の
消費電力をはかってお見せしますと、こんなに
電気を使っている機器とは思わなかったですというような感想を口にしていらっしゃいました。
また、見える化というのは、
省エネ効果を実際に確認するという意味でも
効果があると思います。
例えば、テレビは画面が明るいほどたくさん
電気を使いますので、少し画面の明るさを抑えれば
省エネになります。実際に私が御
家庭に伺ってアドバイスをするときに、現在の明るさの設定での
消費電力をはかってお見せして、少し明るさを下げてまたお見せすると、何ワット下がったというのが実際に目で見てわかりますので、そうすると非常に訴求力が増すというようなことを実感として感じております。
二〇一一年の夏の節電で、その前の夏に比べて
電気代が二割減った、三割減ったというような、周囲のいろいろな声を実際に聞きました。一方で、いろいろな節電を自分なりにやってみた結果での
効果なんだけれども、実際にどこが
効果的だったかがちょっとわからなかったというようなお話も聞いております。
効果的な
省エネをこれから継続して行うということを考えますと、いろいろなところの見える化というのは非常に大事な点だと思います。
なお、
効果的な
省エネには、見える化と同時に、やはり適切な情報提供というものも必要になります。
一昨年以降、
消費者の節電意識が高まりまして、取り組みが非常に進んだと思います。この要因の
一つは、やはりメディアやメーカーなどから節電についての情報の露出が非常に多かったというのが挙げられます。
消費者の方がふだんごらんになっているテレビの番組、いつも読んでいる雑誌などから情報を手に入れられたというような
効果は大きかったと思います。今後も、適切でわかりやすく具体的な情報提供の工夫というのをやっていく必要があると感じております。
続きまして、住宅の
断熱性能のお話をさせていただきます。
まず、
断熱性
向上の事例ということで、私の家に内窓を設置したことについて御紹介をしたいと思います。
私の家は築三十年以上の集合住宅の中階層、真ん中のところに住んでおりまして、ベランダに面したリビングルームに大きな窓がついております。その窓は、アルミサッシの単板
ガラス。一枚の
ガラスということです。非常に
冷暖房のききが悪く、また、
暖房をしても足元が寒いというような
状況が長年あったので、二〇一一年の冬に複層
ガラスの内窓をつけました。既存の窓はそのままで、内側にもう
一つ、複層の
ガラスをつけております。
お手元の
資料の図1をごらんいただけますでしょうか。左側のグラフが内窓の設置前、右側のグラフが内窓設置後のものです。
暖房期間中のある一日の夕方から翌朝までの室温の
データをとっております。設置前後で、外の気温が近い日を選んでおります。グラフの青い線が室内の天井付近、水色の線が
部屋の中央、赤色が床付近、黄緑が外気温でございます。
両方のグラフの1と書かれているところが、
暖房停止後の温度低下の様子の部分です。設置前は
暖房停止後一時間で三度、五時間で四・七度ぐらい低下していますが、設置後は一時間で一・三度、五時間で三・二度と改善していることが数字でわかります。
そして、2と書かれているところは、
暖房を入れる前、つまり、前日に
暖房を停止して寝た翌朝の
状況ということになります。設置前が十五度
程度ですけれども、設置後は十七・五度ぐらいということで、ここも数字で確認ができます。内窓をつけたことで熱が逃げにくくなったということがこれでわかると思います。体感的にも、冬、外出先から帰ってきますと、家の寒々した感じが随分和らいだなということを感じております。
3のところをごらんください。左のグラフ、設置前については、
暖房時の天井付近と床付近の温度差が約五度あります。一方、右の設置後は約三・五度ということで、上下温度差も小さくなっております。さらに、床付近の温度のところを見ますと、設置前が十二度
程度でしたが、設置後は十四度
程度に上昇ということで、実際に足元の寒さは軽減していて、
暖房中に寒いので
暖房設定を上げるということがなくなりました。
これは
実験室のような設置前後が全く同一の条件ではないのですけれども、あくまでも実住宅の事例の
一つということでお伝えしたいと思います。
配付
資料の図2は、
暖房中の窓の表面温度を計測している画像です。温度が高いほど赤に近い色、温度が低いほど青に近い色で示されます。左側の画像は、内窓をあけた状態で、画像の真ん中部分の青色のところが内窓設置前の単板
ガラスだけの状態というふうに考えてください。右側の画像が内窓を閉めた
状況です。
設置前が青色に対して、設置後の右側の画像は緑からオレンジ色になっていて、表面温度が上がっているというのがこれでわかります。寒いとか暖かいとかいう体感というのは、室温もそうですけれども、周囲のものにも影響されますので、そういう意味で、その点でも
効果があったというのがわかります。
設置前後の
暖房エネルギー消費量の計測ができていないんですけれども、先ほどのグラフでもわかりますとおり、内窓の設置によって
暖房時の室内の熱が外に逃げにくいということが確認できていますので、
省エネ効果もあったということが推察できます。
冷暖房の
エネルギー消費が、
使用する機器の
省エネ性とか使い方だけではなくて、住宅の
断熱性能も影響しているということを認識していない
消費者はまだまだ多いです。
消費者の考える冬に足元が寒いというところに対する対策は、床に十分な
断熱材を入れるのではなくて、床
暖房を入れるですとか、足元用の
暖房機器を使う、こういう考えになりがちです。また、例えば夏に住宅の最上階が非常に暑いというのがありますが、屋根や天井の
断熱強化でそれが抑制できるというところにはなかなか思いが及ばないというのが通常です。
消費者はどうしても、住宅の外装とか内装、キッチンなどの設備に関しては自分自身で積極的に情報を収集して選択をするのですが、
断熱材や窓に関しては工務店さんやメーカーさん任せという傾向があるのではないかと思います。住宅の建築とか購入というのは一生に一度あるかないかの機会ですので、
消費者にはこだわりたい点というのがやはりたくさんあるわけです。そういう意味で、完成した後に壁に覆われて目に見えない
断熱材などというのは、どうしても優先度が低くなってしまいがちです。
このような実態を踏まえますと、住宅の
断熱性能の
向上を
消費者の行動や選択に委ねるだけでは不十分ですので、今回の
省エネ法の
改正で、窓や
断熱材に対する
トップランナー
基準が
導入されて、
省エネ性能の高い建材が市場に多く出てくるということで、
消費者が特に意識しなくても住宅の
省エネ性能が上がるという仕組みは、非常に現実に即した
効果的な仕組みだと私は考えております。
なお、それだけではなくて、
消費者の住宅の
省エネ性能
向上についての認識を上げて、より性能の高い部材を選んでいただくための情報提供や、工務店やメーカーなど、供給側からの積極的な働きかけ、情報提供もやはり必要だと感じております。
その際に、住宅の
断熱性能の
向上は、
省エネという側面だけではなく、快適性、健康へのよい影響、住宅の長寿命化といったものにもつながるということを同時に伝える、これが
消費者への訴求度を高めることにつながると感じております。例えば、
暖房を切って寝た翌朝、朝起きるのがつらくないとか、結露が抑制できて毎朝の窓拭きが楽になる、こういった快適性の
向上につながる具体的なメリットは、
消費者にとってやはり大きな魅力だと思います。
省エネは、我慢ではなく、無駄を省くことで
エネルギーを合理的に使おうということで、それはやはり継続的な
省エネ行動につながってくるものだと考えております。また、
省エネ性能の高い機器を選ぶ、家をつくる、そういったことは、決して快適性を損なわずに
省エネを進めることができる方法だと感じます。
一昨年以降の
電力供給不足によって、
消費者の
省エネ意識は大きく
向上しております。この機運を無駄にせず、成果につなげるための仕組みや工夫が非常にいいタイミングで必要とされていると思います。
どうもありがとうございました。(拍手)