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2012-03-22 第180回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十四年三月二十二日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      小川 敏夫君 ツルネン マルテイ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         西田 実仁君     理 事                 中村 哲治君                 松野 信夫君                 森 まさこ君                 桜内 文城君     委 員                 有田 芳生君                 江田 五月君                 小川 敏夫君                 田城  郁君                 谷  博之君             ツルネン マルテイ君                 松下 新平君                 丸山 和也君                 溝手 顕正君                 山崎 正昭君                 魚住裕一郎君                 井上 哲士君    衆議院議員        法務委員長代理  黒岩 宇洋君        法務委員長代理  柴山 昌彦君        法務委員長代理  大口 善徳君    国務大臣        法務大臣     小川 敏夫君    副大臣        法務大臣    滝   実君    大臣政務官        内閣大臣政務        官        大串 博志君        法務大臣政務官  谷  博之君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   安浪 亮介君        最高裁判所事務        総局刑事局長   植村  稔君    事務局側        常任委員会専門        員        田村 公伸君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       河内  隆君        法務大臣官房司        法法制部長    小川 秀樹君        法務省民事局長  原   優君        法務省入国管理        局長       高宅  茂君        文部科学大臣官        房審議官     常磐  豊君        文部科学省研究        開発局長     戸谷 一夫君        厚生労働大臣官        房年金管理審議        官        今別府敏雄君        厚生労働省職業        安定局派遣・有        期労働対策部長  生田 正之君        資源エネルギー        庁電力ガス事        業部長      糟谷 敏秀君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件) ○東日本大震災被災者に対する援助のための日  本司法支援センターの業務の特例に関する法律  案(衆議院提出)     ─────────────
  2. 西田実仁

  3. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 田城郁

    田城郁君 おはようございます。民主党・新緑風会の田城郁です。よろしくお願いいたします。  小川法務大臣の所信を受けまして、司法改革全般について御質問をさせていただきます。  その前に、東日本大震災から一周年たちました。心よりお亡くなりになりました国民皆様に哀悼の誠を表すとともに、被災地でいまだ、復興ではなく復旧だということで、多くの方がいろいろな事情で国への訴えの声を掛けております。被災者へ寄り添う支援というふうに言葉ではいろいろとされておりますけれども、具体的な実践が必要だというふうに感じております。  先日の日曜日に、私はJR気仙沼線の流された線路、あるいは名取市の仮設住宅などを視察をいたしまして、特に名取市の住民の皆様、お年寄りの方の声、本当に悲痛なものがありました。先が見えない、この仮設で終わるのかと考えると悔しい、土地も思った値段では買ってもらえないし、本当にとにかく希望が持ちたい、不安で仕方がない、異口同音にこのような声を発せられておりました。やはり復興ではなく、まだまだ復旧なんだなというふうにも感じました。  この震災復旧復興に際しての法務省の所管についての今後の課題は何でしょうか。いろいろと諸問題ありますけれども、法務大臣としての震災に相対する決意などをお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いします。
  6. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 委員指摘のとおり、この未曽有の大災害に遭われた被災者方々に対する対応というものは、これはやはり法務省も全力を挙げて取り組まなくてはいけないと思っております。法務省、言わば現場の官庁ではなくて、言わば法的基盤の整備ということが主たるところでございますが、やはり一番は、これから少しずつ被災者方々生活もある程度落ち着いてくると、やはり様々な分野で法的な問題というものが生じてくるんではないか。土地などの不動産の問題、身分関係の問題、雇用や会社の問題、様々な分野でやはりそうした法的な問題が出てくるときに、そうしたことに対してしっかりとした法的な解決のためのアドバイスをしっかり行うことが必要ではないかということで、これまでも法テラスにおきましてそうした法律支援というものを、出張所を四か所設けるなど取り組んでまいりましたが、更にこれをきめ細かく取り組んでいきたいと思っております。  また、法務省としましては、やはり土地がずれたというようなこともございますので、こうした不動産に関する問題、登記の関係とか様々なことがございますが、そうした面、被災者の立ち直りを、妨げになるということじゃなくて、更に後押しするような気構えでしっかりと取り組んでいきたいと、このように思っております。
  7. 田城郁

    田城郁君 ありがとうございます。  私も法務委員会一員でありますから、大臣と共に、しっかりと大臣のおっしゃられた方向性に基づいて東日本大震災復旧復興に共に協力し合って発展に向けていきたいと思います。よろしくお願いいたします。  次に、最高裁判所裁判官選任についてお伺いをいたします。  最高裁判所裁判官内閣任命によるとされておりますけれども、選任の過程を教えてください。また、最高裁判所長官あるいは最高裁判所意見は考慮されているのでしょうか。また、その際、非常に強い力を持っていると言われる事務総局はどのような役割を果たしているのでしょうか。お聞かせください。
  8. 河内隆

    政府参考人河内隆君) 最高裁判所判事任命選任についての御質問お答え申し上げます。  最高裁判事任命につきましては、三権分立の観点もあり、憲法上、内閣責任を持って行うこととされており、最高裁長官意見を聞いた上で内閣として決定しているところでございます。  その任命に際しましては、裁判所法上、識見の高い法律の素養のある四十歳以上の者で、十五人のうち少なくとも十人は十年以上高裁長官又は判事の職にあった者又は二十年以上これらの者を含む法曹の職にあった者、すなわち法曹の職にあった者とは裁判官検察官弁護士法律学教授等の職のことでございますが、こうした方であることが必要とされているところでございます。  したがいまして、これらの要件に合致する方で、その方のこれまでのキャリアや人格、識見等に照らしふさわしい方を総合的に勘案し、選考しているところでございます。  最高裁がその機能を十全に果たすためには、最高裁における事件審理を適切に遂行していただくためには、各小法廷人的構成がいずれもバランスの取れたものとなっていることが必要と考えております。このため、選考に際しましては、各小法廷事件処理状況やその出身分野構成など、最高裁の実情を踏まえることが不可欠と考えます。この意味から、候補者の選定に当たり、必要に応じ最高裁にも御協力をいただいているところでございます。  以上でございます。
  9. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 人事のことで、内閣が決めることでございますので、法務大臣という立場からはなかなか申し上げにくいんでございますが、適正な方が選任されるよう内閣一員として加わりたいと思っております。
  10. 田城郁

    田城郁君 次に、検察不祥事裁判所、この関係について少しお聞きをいたします。  大阪地検特捜部証拠改ざん事件に際して検察在り方が厳しく問題とされておりますが、元裁判官木谷明さんでしょうか、検察が描いた筋書どおりに事実認定するだけで、チェック機能を果たさず、検察を増長させてきたという意味裁判所責任も重い、裁判所もこれを機に審理在り方について議論すべきである、このように述懐をしております。  小沢一郎代議士裁判でも明らかなように、検察の恣意的な証拠改ざん供述調書の偽造が組織的かつ常態化している中で、つくられた起訴を受けた一方の裁判所が九九・九%の有罪率という状況は、冤罪をつくり出す大きな原因にもなっていると言えます。裁判所検察追認機関になっているのではありませんか。存在意義が問われていると思います。  この状況を受けて、どのような議論をしているのかお聞かせください。それぞれ、最高裁の方、そして大臣にもお聞きをいたします。よろしくお願いします。
  11. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 誠に委員指摘のとおり、検察捜査というもの、これは適正に行わなければならないものでございまして、大阪郵便不正事件に絡んで検察官証拠改ざんしたという事件、まさにあってはならないことが起きたということで、深く反省しなければならないと同時に、このようなことが絶対に繰り返されてはならないというものでございます。そうした観点からしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。
  12. 安浪亮介

    最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) 裁判所といたしましても、無実の者が罰せられるというようなことはあってはならないことと考えております。個々の事件におきましても、裁判官は、当事者から出されるいろいろな主張証拠を慎重に、また虚心坦懐に検討した上で裁判を行っていくべきものだと考えております。
  13. 田城郁

    田城郁君 次に、裁判官そして裁判所独立についてお聞きをいたします。  裁判所の中では裁判官統制という言葉があると聞いております。あるいは、陸上勤務海上勤務遠洋航海という言葉もあるとお聞きをしております。陸上最高裁海上は地裁、遠洋航海支部から支部へのたらい回しのことだそうです。裁判官統制に従わないと見せしめ的に航海に出されるというようなことも、現職なり元の裁判官異口同音お話をされておりますけれども、このような実態というのはあるんでしょうか、最高裁の方。
  14. 安浪亮介

    最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。  裁判官は、憲法の規定にありますとおり、良心に従いまして法と証拠に基づき気概を持って裁判を行っておるところでありまして、人事評価を意識して裁判をするような裁判官はいないと思っておりますし、またそのようなことはあってはならないというふうに考えております。  今委員指摘陸上勤務等お話でございますけれども、裁判官の場合は、全国に均質な司法サービスを提供する、あるいは地方と都市部勤務の公平を図るというようなことから、全国的な異動をしておるところでございますけれども、それに当たりましては適材適所の配置を考えておるところでございます。  以上でございます。
  15. 田城郁

    田城郁君 法廷外弁論とはどのようなことなんでしょうか。聞くところでは、例えば裁判所刑事部懇親会等検事が参加をしてきて、ああだこうだと言われるとか、裁判が終わった後に検事裁判室に入ってきて、あそこおかしいねとか、そういうような指摘をするという趣旨のことを元裁判官の方がおっしゃられております。  裁判官自己保身を図るのではないかという懸念は、国民司法への信頼の根幹を揺るがしかねない、そういう要素になります。国民が寄せられる司法への信頼のために、自己保身や圧力から解放されて、独立した裁判官が法と証拠に基づいて良心に従って裁判ができる環境が今こそ必要だと思います。  このような状況が私は保障されていないのではないかという疑念を今の御説明だけだとどうも拭い去れないというふうに思いますが、法務大臣管轄外ではございますが、今のお話などを聞いていて、一般論で結構ですから、感想など、あるいは何か言及することがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  16. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) もちろん、あるべき姿としては、これは裁判官良心に従って判断すべきものでありまして、検察官との言わば付き合いだとか、そうした法廷外事情とか、そういったことが考慮されては全くならないわけでございますが、しかし、今回のこの様々な、大阪事件でもございましたが、検察官がこうして、あってはならない証拠改ざん等がございました。  やはり、私も自分の経験も振り返ってみますと、検察官が少し裁判所に甘えていた部分もあるのではないかと。検察官がその信用というものを背景にして何らかの主張をすれば比較的裁判所も認めてくれていたと、厳しい吟味に遭うということがなかったとは言いませんが、そういった面で甘やかされていた面もあるのではないかというふうな感覚も持っております。  私は、やはり、検察は、裁判官姿勢云々はとにかく別にしまして、検察検察としてやはり自ら適正な捜査を行わなくてはならないという自覚をしっかり持って、これからの適正な捜査、そして適正、厳正な捜査を行うことによってしっかりと国民生活を守るという使命を果たす、そうした検察にしていきたいというふうに思っております。
  17. 田城郁

    田城郁君 裁判官人事評価についてお伺いをいたします。  裁判官の中には、無罪判決人事上不利になる、控訴審逆転無罪になると裁判官としての評価に響くということをおっしゃっている方もいらっしゃいます。これは平成二十二年の十月四日の朝日に報道として載っております。特に高裁裁判官は、すぐ後ろに最高裁があるので、最高裁に破られることを非常に気にするとの声もお聞きしております。  先日の私の質問で、最高裁判所から、個別の判決における判断内容や結論の当否そのもの人事評価に反映するということは、裁判官独立を侵害するおそれがあるのであってはならないと、実際の人事評価に当たっては、裁判官独立を侵すことのないよう今後とも慎重な運用を続けてまいりたいとの趣旨の答弁がございました。  しかし、前述したことを訴える裁判官存在をしている中で、最高裁はどのようにこの状況を受け止めるのでしょうか。司法に対する国民信頼裁判制度の存立に特に必要でありますから、通常の公務員以上の人事公明性が求められるというふうに思いますが、御所見をお伺いをいたします。
  18. 安浪亮介

    最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。  下級裁判所裁判官任命人事評価等についてお答えをさせていただきます。  下級裁判所裁判官は、最高裁判所指名した者の名簿によって内閣任命するとされております。その指名に当たりましては、下級裁判所裁判官指名諮問委員会にお諮りし、その答申を踏まえて指名がされているところでございます。この委員会委員には、学識経験者六名を含む十一名の委員構成されております。人的構成の面からも透明性が高く、かつ国民意見審議に反映されるよう意を用いているところでございます。  次に、人事評価の点でございますが、平成十六年度以降、客観性透明性の確保が重要であるとの観点から新しい人事評価制度運用がされております。この制度の下では、裁判官評価の基礎として、裁判所内部情報のみならず、裁判所外部からの情報にも配慮するものとされております。外部情報といたしましては、弁護士からの情報も多数寄せられております。  また、評価権者は、人事評価の際に裁判官から職務の状況に関します書面の提出を受け、裁判官と面談し、申出があれば裁判官にその評価書を開示することとされておりまして、さらに、裁判官の方で評価権者評価書記載内容について不服を申し出ることができるというふうにするなど、対話型の人事評価制度も実現しているところではございます。  制度として十分に透明性公正性を確保しているものと考えております。  以上です。
  19. 田城郁

    田城郁君 人事公明性を担保する方策などについて、提案も含めてちょっとお話をさせていただきます。  国家的に意義の大きい事件、例えば国策に影響を及ぼす行政処分に対する差止め、あるいは環境問題など国民への影響が大きい民事事件国民が注目する刑事事件などにおいて国家的利益に反する勇気ある判断を下した裁判官については、特にその後の人事異動を注意深く継続して見守るシステムが必要ではないかと、公開された中でですね。人事異動について公明性を高めることで、前回質問をさせていただきましたけれども、上ばかり見ているヒラメ裁判官になる必要がない状況をつくり出す必要があると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
  20. 安浪亮介

    最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) 前回お答えしたとおりでございます。人事評価を意識してばかりおりまして、そんなことで裁判をするというふうな裁判官がいてはならないと思っております。  今後とも、そういう観点から人事行政をきちっとやってまいりたいと考えております。
  21. 田城郁

    田城郁君 一つ提案がありまして、駄目なら駄目でも結構なんですが、そういう見守るシステムというのはあるんですか、誰がどこに行ったとか、要するに遠洋航海に出されたことも含めて、ちゃんと私たちなり市民、国民皆さんが見守れるシステムというのは、今ないんですよね。
  22. 安浪亮介

    最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) 裁判官異動につきましては官報で掲載されております。  ただ、それを、一人の裁判官が次はどこへ行った次はどこへ行ったというふうな形で、制度としてデータを蓄えてやっておるような外部機関というのはないだろうと思っております。
  23. 田城郁

    田城郁君 外部でも、内部からホームページに出すでも結構なんですけれども、答えるのに限界があると思いますからこれ以上問いませんが、そういう言葉はまだ生きているわけですよね。ヒラメ裁判官という言葉もまだあると、あるいは遠洋航海も含めてそういう言葉があると。そういう言葉は一切ありませんと、なければ自信を持ってお答えになるのではないかと思うんですが、実際にはあるから今までのようなお答えになっているのではないかと思いますので。  しかし、国民裁判所がもう頼みの綱なんですよね。被害者であれ、加害を受けたと冤罪を掛けられた者からしても、本当に裁判所がしっかりしてもらわないと、あくまでも法と証拠に基づいて良心に訴える裁判をしていただかなければ本当に国民のための開かれた裁判所ではないと思いますので、是非御検討をよろしくお願いをいたします。  冤罪を撲滅するためのお考えについて、法務大臣にお伺いいたします。  私の周りには冤罪で苦しんでいる方が大勢おります。鈴木宗男衆議院議員は、法治国家だから刑は甘んじて受けたが、私は無罪だというふうに主張をしております。佐藤優さんもそうです。足利事件の菅家さんは、無罪が晴れた今も、やっぱり犯人じゃないかと、そういう声に悩んでおります。布川事件のお二人も、失われた人生の大きさの何とも言えない不条理感にさいなまれております。JR浦和電車事件の七名も、執行猶予付きだろうがやっていないものはやっていないんだと主張しております。高知白バイ事件の片岡さんも無罪を晴らそうと再審を目指しております。そして、全く疑う根拠もなくなってしまった小沢一郎氏の裁判でも、またもや推論の積み重ねでの有罪などはあってはならないと私は思っております。  特に、政治的実権を握る者が少数派の人権を侵害しないようにするために、裁判官自己保身に走ることなく、法と証拠良心のみに基づいて少数派を擁護する勇気がある判断が下し得る状況をつくり出すことこそ、現在国家の運営を預かる与党民主党があえて意識して行わなければならない大きな課題であるとさえ私は言えるというふうに思います。  小川法務大臣一般論で結構ですから、国民期待にこたえる司法制度改革は実現されるのでしょうか。もう冤罪や誤判で苦しむ人をつくり出してはなりません。是非、お考えをお聞かせください。
  24. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まず、検察が適正でなければならないというのは、これはもう当然の前提でございますが、やはり検察が様々な不祥事があったからといって、しかしもう検察は要らないという議論は、これはないわけでございまして、やはり適正な捜査を行って、そして適正な処罰を求める、公訴提起するということの検察役割というものは、これは絶対に必要でございます。ただ、その役割があるからといって中に冤罪が紛れていいということには絶対になりません。罪のない人に対して罪責を負わせるということは、これはあってはならないことでございますし、間違った捜査で間違った公訴提起をするということは決して許されないことでございます。  検察としましては、一つ契機としまして、やはり大阪地検郵便不正事件というもので検事証拠改ざんしたという、あってはならない事件を起こしました。これも大きな一つ契機としまして、検察は一人一人の検察官としてのその使命についてもしっかり認識するとともに、やはり組織の中でも様々な観点からのチェックというものを設けまして、かかる冤罪事件を生むような間違った捜査、不適正な捜査、そして公訴請求というものはないようにこれからもしっかりと取り組んでいきたいと、そのように考えております。
  25. 田城郁

    田城郁君 私も、特捜などをなくしてしまえというような声については、そうではないだろうと私は今も思っています。本来果たすべき機能をしっかりと果たして国民に歓迎される、そういう検察であり特捜になってほしいと、その意味から厳しく私は御質問をするなり、最高裁裁判所皆さんにもそういう思いで私は期待を持って問題提起をさせていただいているということですから、共に司法改革を進めていくという立場でこれからもよろしくお願いします。  質問を終わります。ありがとうございました。
  26. 有田芳生

    有田芳生君 民主党有田芳生です。  今日は、歴史的危機にある検察の構造的問題について、民主党の元代表である小沢一郎さんの裁判にも触れながら御質問させていただきたいと思います。  まず大臣にお聞きをしたいんですが、秋霜烈日、秋の霜、烈しい日という四つの漢字ですけれども、この意味について、特に小川大臣は元検察官でもありますから、若き日の大臣思いも含めて、その意味についてお聞きしたいというふうに思います。
  27. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 検察官のバッジが、白い部分が秋の霜、中心の赤い部分が明るいというか燃える太陽というような模様を連想させるということで秋霜烈日というふうに言われておるわけでございますが、やはりこれは厳しい状況の中でも正義をしっかりと貫くというその気構えを一つのこの秋霜烈日という言葉の中に表したものだというふうに思っております。
  28. 有田芳生

    有田芳生君 一九八五年に伊藤栄樹さんが検事総長になられたときに、これは物すごく印象的な言葉で、多くの法律に余り詳しくない方々も覚えていらっしゃる方がいらっしゃるでしょうけれども、巨悪を眠らせないという言葉をお使いになりました。伊藤さんは、検事総長になってのインタビューの中で、検察官というのは遠山の金さんのように素朴な正義感というものを持続的に持っていなければいけないんだと、そのように語られて、巨悪は眠らせない、そういう名言を使われました。  私なども若いころは、本当に検察というのは巨悪を眠らせないために一生懸命頑張っていらっしゃるんだという思いも強かったんですが、同時に、検察の動きによってはいろんな検察ファッショというような批判があったときには、そういうところもあるんだなと思いつつも、しかし検察がやはり日本の司法の正義を体現しているものであると、そのように強く思ってきたんです。ところが、最近の検察在り方を見ておりますと、巨悪を眠らせないどころか、時に巨悪をつくり上げてしまうんではないかという懸念さえ抱かせてしまうそういう一連の事件、ケースというものが続いてきたというふうに思います。  それで、先日、小川法務大臣の所信表明をお聞きいたしました。その中で、三項目めに検察改革という項目がありまして、三行述べられておりますが、これを読んでも、いろんな具体的な課題があるからでしょうけれども、抽象的な項目列記になっておりまして、例えば、検察の再生に向けた種々の具体策を策定、実施しているところですと、最後のところは、引き続き検察改革に取り組んでまいりますと。これを一般国民が見たとき、どんなことをやるんだろうかというふうに感じられると思うんですよね。  そこで、小川大臣が就任中に是非ともこういう検察改革についてはどうしても実現していきたいんだという、そういう具体的な例を、お気持ちの中で優先順位があるのかどうかは分かりませんけれども、これだけはやっていかなければいけないという思い検察改革についてお尋ねいたしたいというふうに思います。
  29. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) この大阪郵便不正事件を受けて、検察改革の取組、これは江田法務大臣時代、私が副大臣をしていたころに、特捜部の起訴に当たっては上級庁がそれをチェックするとか様々な取組をいたしました。  ただ、私自身は、そうした取組も大事だけれども、やはり一つの根本、これは、検察というものはしっかりとその正義を実現する、不正は許さないということにある。まさにその純粋な気持ちで捜査を行って、そして適正な公判請求をするということだと思うんですが、これが間違えまして、大きい事件をやれば自分は出世できるとか、そうした本来の正義を実現する、言わば伊藤栄樹さんの言葉を借りれば、巨悪は眠らせないということを外れて、巨悪を挙げれば自分は出世できるとか、そうした間違った考え方が現れてくるようではこれはいけないわけでございます。  そうした意味で、私は、検察官評価在り方、あるいは検察官がその職務を行うについての気構えというものをもう一度原点に立ち返って、本当に国民期待する社会に対する不正というものを取り締まるんだと、それは純粋な気持ちとしてそれを行うんであって、自己の出世であるとかそうしたことではないんだということを認識する。むしろ、検察官としてはそうした大きな事件をやるか云々かよりも、一つ一つ事件を誠実に取り組むということが本来の検察在り方であり評価されるべき検察官像なんだと、こんな気持ちを持っております。
  30. 有田芳生

    有田芳生君 小川大臣が恐らく検察官の御体験の中からやっぱり感じられた御答弁だというふうに思います。  後にまた質問をさせていただきますけれども、可視化の課題など幾つもの課題がありますけれども、やはり検察そのものが、検察官一人一人が、それこそ検察官バッジを付けたときに、この思いで、これから日本の司法を守っていくんだというところが、恐らく、大きな事件を挙げれば出世できるんだとか、そういったものがじわじわと体質などになっていれば、やはりそこを取り除いていかないと検察信頼というものを取り戻せないというふうに思うんですよね。  私は、足利事件なども含めた北関東の連続幼女誘拐殺人事件の真相解明について、超党派であるいは家族会とともに今でも行動をしておりますけれども、菅家さんだけではなくて、やはりこの数年間を見ても、検察は何でこんなことをしてしまったんだろうかという点でいえば、あの富山県の強姦事件であるとか、あるいは鹿児島の志布志事件であるとか、そういった一連の問題点がずっと浮かび上がって報道をされてきて、みんな驚きましたよ。  そういうことがやはり最高検にも影響をしたんでしょう。二〇〇七年に起訴決裁の在り方についてのプロジェクトチームをつくりましたよね。それは、どういう理由で起訴決裁の在り方についてのチームをつくったんでしょうか。それについて、大臣から御意見伺いたいと思います。
  31. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 平成十九年に、そうしたより良い決裁の在り方を検討するプロジェクトチームを確かに御指摘のとおり設けました。  これは、何か具体的なことがきっかけということよりも、やはりその時点におきまして、検察において、この起訴決裁というものが適正に行われることが必要であるという問題意識を抱いてそのようなプロジェクトチームをつくったものと承知しております。
  32. 有田芳生

    有田芳生君 そういう前向きな取組がなされ始めたにもかかわらず、その三年後には大阪地検でフロッピーディスク改ざん問題が、これは朝日新聞のスクープによって明らかになりましたけれども、発覚をした。これで検察というのはもっともっと良くなる改善策が取られるんだろうと、例えば検察在り方検討会議も含めて前向きに進んでいくというふうに思っていたら、今度は、今年の二月には東京地検の虚偽報告書問題が発覚いたしました。  こういう問題を考えていったときに、先ほど小川大臣も語られましたように、単に一つ一つシステムというよりも、むしろ検察組織の体質として何か大きな問題がはらまれているんではないかというように考えるべきだというふうに思うんです。  そこで、大臣にお聞きをしたいんですけれども、こういった問題が発覚する背景の一つに、やはり出世主義の問題とか人間の業と言われるようなものもあるでしょうけれども、組織の体質の問題として、一つお聞きをしたいのは、起訴すれば九九・九八%が有罪になる、これは恐らく世界的に見ても珍しいんではないかという指摘もありますけれども、どうして起訴すれば九九・九八%もの有罪率になるとお考えでしょうか。
  33. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) これは、検察官の方で、疑わしいから、どちらだか分からないけど裁判所判断を得ようと、こういう考え方には立たないで、やはり公判請求する以上、起訴する以上、それは犯罪がしっかりと立証できるものと、こういう確信を持ったものについて起訴を行っているということから生じている結果だというふうに思っております。
  34. 有田芳生

    有田芳生君 もし分かればですが、諸外国と比べて、この有罪率というのは比較するとどういう特徴が見られますでしょうか。
  35. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) やはり日本のこの有罪率、我が国の有罪率が諸外国に比べても高いという状況でございます。
  36. 有田芳生

    有田芳生君 九九・九八%という数字で間違いありませんか。
  37. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 略式請求の罰金の事件も入れまして、その数字でございます。  なお、参考までに、アメリカにおける連邦事実審においては無罪率が〇・四%、イギリスの治安判事裁判所においては約二%、韓国における第一審においては約〇・五%と。ですから、相当無罪率が低い、すなわち有罪率が高いんでございますが、しかし、我が国はそれ以上に高いという有罪率の数字となっております。
  38. 有田芳生

    有田芳生君 さらに、検察庁が独自捜査をした場合、特に強制捜査をした場合、引き返すことはできるんでしょうか。あるいは、そういうケース、これまでこういう特徴的なケースがあったよというのがあれば教えていただきたいんですが。
  39. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 個別のことは別にしまして、強制捜査に着手しても起訴できるという状況にならなければ不起訴ということで捜査は終了しておるわけでございます。ですから、そうした意味で、強制捜査に着手したけれども公判請求に至らなかったというケースはこれまでもあると思います。
  40. 有田芳生

    有田芳生君 調書の任意性などについてのチェック機能というものは組織的に保障されているんでしょうか。
  41. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) これまでもいわゆる起訴決裁というもの、言わば検察官が取り調べたものについて起訴するに当たってはしかるべく上司が決裁をするという仕組みが、これはもうずっと以前からあったわけでございますが、この起訴決裁そのものも、取調べを担当した検事の主観的な考えだけでなくて、やはり客観的な上司の目から見ての評価というものを加えた上での決裁制度だと思います。  これがダイレクトに調書の任意性ということだけを示すものではありませんけれども、そうした調書の任意性、これは逆の言い方をすれば、別の言い方をすれば取調べの方法だというふうに思いますが、そうしたことも踏まえて決裁というものを通してチェックしていたのだというふうに思っております。  また、今回は特に大阪郵便不正事件を受けまして検察として新たに、その決裁、仕組み以上に、特捜部の直接の事件については上級庁が判断するなどの新たな仕組みというものを設けております。
  42. 有田芳生

    有田芳生君 刑事訴訟法の二百五十七条、公訴取消し、これは六法全書を見てもインターネットで調べても短い一文が示されているだけなんですが、ならば、この公訴取消しがあり得るとすれば、検察庁が公訴取消しをする場合、どういう手続が必要なんでしょうか。そういうものは規程があるんでしょうか。
  43. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 事務規程でございますね。刑事訴訟法にはございません。ただ、検察庁の事務の取扱いの訓令におきましては、平成三年の最高検の訓令、検事総長訓令ということでございますが、刑事訴訟法二百五十七条により公訴を取り消す場合には、検事正はあらかじめ検事長の指揮を受けなければならないと、このような指示をしております。
  44. 有田芳生

    有田芳生君 検察庁が公訴取消しをする場合、その地検を管轄する高等検察庁の検事長、さらには検事総長、さらには法務大臣にあてて詳しい報告書を提出をして、そういう了解が必要という理解でよろしいでしょうか。
  45. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 事務規程としましてはそのような規程はございません。先ほど申し上げました訓令だけでございます。
  46. 有田芳生

    有田芳生君 それを三長官報告と検事さんたちの間では理解されているんですけれども、それは間違いなんでしょうか。
  47. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 三長官といいますと、法務大臣は入っていないと思うんですが、検察庁の中の報告だと思いますが、一般的には事後報告、検察官が行った事件についての事務に対する事後報告が中心であると思います。  今回のこの公訴取消しは、公訴取消しする前に検事正は検事長の指揮を受けなければならないということでございますので、ちょっと三長官報告とは趣旨が違うかなと思っております。
  48. 有田芳生

    有田芳生君 佐賀市の農協背任事件にかかわって、私はもう冤罪をつくってしまったんだという反省をされた市川寛さんという、今は弁護士さんで、検事が、「検事失格」という単行本で、自分の体験をノンフィクションで発行されたんですけれども、その市川さんによれば、地検、検察庁が公訴取消しをするには、検事長、検事総長、法務大臣に詳しい報告を上げて、了解が必要であって、事実上公訴取消しというのは難しいんだと、そういうことを御自身の体験から記録されているんですが、そういう見解についてはどのようにお考えでしょうか。
  49. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まず、先ほど三長官の中に法務大臣は入っていないと言いましたが、誤りでしたので訂正させてください。法務大臣検事総長と検事長と、この三者の報告が三長官ということでございました。  それから、公訴取消しがなかなか難しいというお話でございました。実際に公訴取消しをする前に、事後報告ではなくて事前に検事正は検事長の指揮を受けるということでございますし、実際に担当するのは、公判担当しているのは地検の検事正ではなくて担当検事だと思います。担当検事が、言わば上司を通して検事正に上申を上げて、検事正が事前に検事長の指揮を受けなければならないと。こういう仕組みですから、そんなに頻繁にあるような、そして簡単に出るような事務の流れにはなっていないという印象は持っておりますが。  佐賀の具体的な事件におきまして、三長官報告がどうであったかというのは、済みません、今事実関係把握しておりませんので、お答えがちょっとしかねます。
  50. 有田芳生

    有田芳生君 有罪率が九九・九八%という非常に高い数字の下で、あるいは無罪になったときには報告書を提出しなければいけないというシステムの中で、やはりなかなか公訴取消しというのは難しいんだろうというのが私のような外部から見ている人間の感想なんですけれども。  じゃ、さらにもう一つですけれども、最近話題にもなってきた検察審査会ですが、検察審査会が強制議決をしたときに、それを取り消す道筋というのはあるんでしょうか。
  51. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 今の検察審査会法においてはそのような規定はありませんので、規定がないのだからそのような道筋はないものと思います。
  52. 有田芳生

    有田芳生君 今どうこうということではないんですが、今後そういった方向性というものも考えることが立法的にも必要かとも思うんですが、それはいかがでしょうか。
  53. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 一般論として述べさせていただきますと、やはりこの検察審査会法、言わば強制起訴制度というものが法改正されて施行されてまだ日がたっておりませんが、幾つかの例が出ております。これからそうした実際の例を踏まえて検討して、もし検討するべき課題があればやはり検討するべきものと、このように、大変一般論で恐縮でございますが、考えております。
  54. 有田芳生

    有田芳生君 先ほど触れました佐賀市農協の背任事件、これが〇一年だったと記憶しておりますけれども、このときに控訴審で別の人、異なる参考人の生年月日が同じになっている調書、人はそれぞれ違うんだけれども生年月日が同じであるということが、当時、控訴審で問題になったんですが、これは大臣、御存じでしょうか。
  55. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) ちょっとその個別具体的な事件内容まで承知しておらないんですが、人を取り違えた、あるいは意図的にすり替えたというようなことであれば、これは絶対にあってはならないもう言語道断の出来事だというふうに思いますが、いわゆる生年月日を誤記したということであれば、その誤記が供述者の特定のために言わば調書の証明力に影響を及ぼすことなのかどうか、個々的な裁判所判断だとは思いますが、一般論とすれば、とにかくそのような人の取り違えは絶対あってはなりませんし、と同時に、取り違えを推認させるようなこともあってはならないし、そうした供述者の属性あるいは特定をするためのそうした生年月日などを誤記するということもこれはあってはならないことでございますので、やはりきちんとした事務を行わなければならないなという感想を感じます。
  56. 有田芳生

    有田芳生君 たしか、それぞれの人が、参考人なんだけれども、たしか四人のうち三人が同じ生年月日というようなことになって、これは一体何だということで問題に当時なったと記憶しているんですけれども。  東京第五検察審査会でも、私は法務委員会で一昨年質問をさせていただきましたけれども、この第五東京検察審査会でソフトを使って無作為抽出で十一人の検察審査会の委員を選んだ、それについて最高裁にお聞きをしたいんですけれども、それぞれ二回検察審査会で選任がされていて、その十一人の平均年齢というのは何歳だったでしょうか。
  57. 植村稔

    最高裁判所長官代理者(植村稔君) お答えをいたします。  今委員指摘事件小沢一郎議員の審査事件思いますけれども、最初の一回目、起訴相当議決が二十二年の四月にございました。それから、二回目が二十二年の九月にございました。議決書ができたのは十月でしたので、その十月になって明らかになったわけでございますが、それぞれ議決時で平均年齢、当該議決のときの審査会議に出席された方の年齢を議決時の基準で算数をいたしますと、三十四・五五歳ということで一致をしたということでございます。
  58. 有田芳生

    有田芳生君 選挙人名簿から無作為に選んだ十一人、その一回目が平均年齢が三十四・五五歳、全く違う人々を十一人集めてみたら、それも三十四・五五歳。これは、私はもう不思議なことが世の中は起きるものだなと思って、数学の統計の権威にも話を当時聞きまして、こんなことがあり得るんでしょうかと聞いたら、いや、数学的にはあり得ないと言うんですよ。だけど、現実というのはままならぬもので、そういうこともあり得るのかと、そう理解するしかなかったんですが、しかし、それでも、そんなことはあるのかなという疑問は今でもあるんですよね。  さらに、じゃ、その人たちが、日本人の二十歳以上の人たちの平均年齢がたしか五十二歳ですから、検察審査会が無作為抽出のソフトで抽せんを二回やって、十一人がそれぞれ平均年齢三十四・五五歳、おかしなことだな、その内実が分からないかなというふうに思って、検察審査会の方々にもお話を伺ったことがあるんですよ。そうしたら、じゃ、議事録というのはあるんですかと聞いたら、いや、議事録はありません、会議録はありますというふうに答えられたんですよね。最高裁、そういう理解でよろしいんですね。
  59. 植村稔

    最高裁判所長官代理者(植村稔君) 検察審査会法の二十六条というのがございまして、ここで検察審査会議は公開しないとなっておりますが、その後、二十八条に今度は議事録の条文がございまして、その一項で、検察審査会議の議事については会議録を作らなければならないとされておりまして、会議録は存在いたします。
  60. 有田芳生

    有田芳生君 会議録というのは、私たちが一般に考える議事録とはまた違った中身なんでしょうか。例えば、こうやって質問、答弁が行われている、そういうものが記録されているんでしょうか、その会議録には。
  61. 植村稔

    最高裁判所長官代理者(植村稔君) 会議録に何を記載しなければいけないかというのは、今度は政令の方に決められておりまして、これは政令の二十七条の二項になります。そこで、ちょっと長くなってしまいますので一々読み上げるのはいかがかと思いますが、次に掲げる事項及び会議の経過を記載するということになっております。
  62. 有田芳生

    有田芳生君 何かよく分からないんですが、例えば小沢一郎さんについての第五東京検察審査会の会議録というものは、例えばAさんBさんCさん、十一人審査員いらっしゃるわけですから、その人たちがどういう意見を述べたのか、あるいは審査補助の弁護士さんがこのようなことを語ったと、そういうことはその会議録には記録されているんでしょうか。
  63. 植村稔

    最高裁判所長官代理者(植村稔君) 私どもとしては、会議録に書かなければいけないのが政令に決められているということしか分かっておりませんで、それ以上、会議録そのものを私どもは見るわけにもいきませんので、これ以上は分かりません。
  64. 有田芳生

    有田芳生君 やみの中なんですよ。これは、検察審査会の職員の方に私は話を聞きましたときに、その方がおっしゃるには、例えば審査補助の弁護士さんが審査員たちにこういうことを語ったというようなことも記録されていないと言うんですよ。じゃ、何が記録されているのかというと、そこに参加していたメンバー、何月何日何時から何時まで会議を行った、その程度だというふうに私は聞いているんですけれども、それを会議録というんでしょうか。
  65. 植村稔

    最高裁判所長官代理者(植村稔君) 私どもといたしましては、今の御質問、具体的な中身に入っておられますので、申し訳ございませんが、お答えする立場にないと思っております。
  66. 有田芳生

    有田芳生君 小川大臣、そういうことなんですよね。つまり、その東京第五検察審査会については、審査員の選任ソフトさえ何か手が加えられたんではないかというようなことまで週刊誌が大きく報じるほど中身が分からないんですよね。  だから、先ほど言いましたように、繰り返しますけれども、二回無作為に選んだ人たちが十一人、平均年齢が三十四・五五歳という数学、統計上はあり得ないことがこの日本、二十一世紀の日本で起きているということから、やはりこの東京第五検察審査会だけではなく、検察審査会で一体何が話し合われて、どのような議論があって、その結果こうなったんだということが外からはうかがい知れないんですよね。それが政治問題にも発展してきたので、様々な憶測を呼んでしまっているという現実があると思うんですよ。  だから、これからでも、検察審査会のありようについてその透明性なども含めて改善の余地は大きいと思うんですが、大臣、そこら辺はいかがでしょうか。
  67. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まず、選任等の手続等に関しては、私は、一つシステムですから当然透明性があってしかるべきだと思いますが、議事の中身につきましては、確かに透明性が必要ではないかという御意見も分かるんですが、ただ、この事柄の性質上、捜査機関が行ったその捜査を、言わば一件書類全部を引き継いで、その捜査資料に基づいて起訴するかどうかを検討するわけでございますが、その捜査の中身というのは言わば非常に広範囲なものでございまして、中には関係者、言わば嫌疑もないのに、しかし捜査の過程で嫌疑を掛けられたとか、あるいは被害者の方の言わばプライバシーなどがあって、絶対に公表、本人も公表されては困るでしょうし、捜査の過程で得た情報であってもやはり公表することはあってはならないような情報も含まれておるわけでございます。  ですから、そうした捜査情報検察審査会に行って、その議事を公開するとなりますと、その議事の中で本来人のプライバシーのために公にされてはいけないような情報が仮にあった場合にも、それが公表されてしまうというような面もございますので、やはりそうした面から捜査の密行性という、そのものを引き継いでいるという点からのこの検討もやはりしなくてはならないのかというふうに思っております。
  68. 有田芳生

    有田芳生君 民主党小沢一郎元代表の裁判については、皆さん御承知のように、四月二十六日に判決ということが決まり、まだそういう意味では進行中と理解してよろしいかと思いますが、一般の新聞報道を見ておりましても、これまで小沢元代表に対してとても厳しい立場検察情報も取材をしながら報道してきた読売新聞あるいは産経新聞、あるいは朝日新聞にしても、最近はやはり東京地検の問題点を大きく報道するようになりましたよね。それはやはり、皆さん御承知のように、田代政弘東京地検前検事、今は新潟地検ですけれども、その田代検事の偽造報告書問題に端を発しているというふうに思うんですよね。  私は、この問題というのは、もう大臣の御意見を伺うことはできないと思いますけれども、東京地検が起訴できなかった小沢一郎元代表の件について、東京第五検察審査会の強制議決を使いながら起訴に持っていったものではないかというふうに個人的には理解しているんですよ。それはなぜかというと、やはり偽造された田代政弘検事捜査報告書が議決書、強制起訴の議決書の中に引用されているからなんですよね。  私は、田代政弘検事が東京地検特捜部長の佐久間達哉さんにあてた、A4判でいうと七枚のこの偽造された捜査報告書を読んで驚きました。よくできているんです。とても分かりやすいんですよ。裁判所の文章とかいろいろ読んでいるとなかなか難しいんですけれども。ところが、この田代検事が五月十七日に石川知裕さんを任意で取り調べて、その翌日から数日間掛けて完成させたというこの捜査報告書、うまいな、ああ、分かりやすいなと思ったんです。それは文章構造を分析してもとても読みやすい。  最初に、石川代議士が、私自身も深く関与をした事実、だから私はこの事件に深く関与しているんだということを語ったということが引用されながら、次のところに行くと、公平性を明らかにするためだと思うんですが、こう書かれている。石川はいずれの点についても否定し、新たな供述を得ることはできなかった。そこから田代検事と石川さんとのやり取りがほぼ、ほとんどの部分を占めて一問一答で続いていくんですよね。こんなんだったら全面可視化すればいいのではないかと思うぐらいなんですが、石川さんがううんとうなり声を上げてしばらく考え込んだ後、本職と以下のやり取りをした。で、石川さんが、問題はそこですよね、そこをどうするかですよということでいろいろ話が続いていくんですが。  重大な問題は、そのやり取りの中で、やくざの手下が親分を守るためにうそをつくのと同じようなことをしていたら、あなたを支持した選挙民を裏切ることになりますよ、そういう文言があるんですよね。これ、なぜ重大かといいますと、やくざの手下が親分を守るためにうそをつくのと同じと捜査報告書では書かれているんですけれども、重大なのは、東京第五検察審査会の小沢ケースにかかわった検察審査会の審査補助員を務めた弁護士が、当時、検察審査会の会議の中でどのような話を選ばれた審査員の人たちにしたかというと、こう発言している。暴力団や政治家という違いは考えずに上下関係判断してください。だから、田代検事は、小沢ケースというのはやくざの手下が親分を守るためにうそをつくのと同じようなものだと、そういうことを言いながら、今度は、その報告書を読んだ、そして議決書にも書いた審査補助員は審査員たちにそのように説明しているんですよ。これは本人が語っていらっしゃる。  さらに問題なのは、この間、禁錮三年の求刑がありましたけれども、そのときも指定弁護士の論告の中には、共謀の理論として、暴力団組長の銃刀法違反事件最高裁判決を使っているんですよ。これは共謀の理論についてここで大臣の御所見を伺うことはしませんけれども、やはり暴力団とか過激派とか、そういった、どこがやったかは分かるけれども、その具体的な謀議を特定することが難しい、そういう暴力団とか過激派のケースと政治家のケースを一緒にしては駄目だと思うんですよ。  ところが、繰り返しますが、この田代検事の報告書、暴力団と政治家は同じようなものだと。それをまた指定弁護士が、審査員たちに言い、そしてまた論告求刑の中でも使われている。そうなると、やっぱり一連の流れが、この田代検事捜査報告書に端を発していると見ざるを得ないんですよね。だからこそ重要だというふうに思っているんです。  こういうことについて御答弁は難しいと思うので、そういう指摘、これまでマスコミでもされていないので、一連の流れがそうなっているということはここでどうしてもお伝えしたかったんですが。  そして、もう一つ大事なことは、田代検事が昨年十二月の陸山会裁判で証人として出廷したときにこう語っている。当時、つまり石川さんを取り調べた二十二年五月十七日ですか、当時はその危険性を自覚していなかったが、危険性というのは録音されているという危険性なんですが、当時はその危険性を自覚していなかったが、録音されていると分かっていればこのような取調べはしなかったと言うんですよ。これは田代検事御本人がおっしゃっている。だから、録音されていたら偽造文書なんかは作らなかったよということを自己表白されているわけなんですよね。  さらに、ここで大臣にこれは是非ともお聞きをしたいのは、全面可視化についてやらなければいけないというのは、やはり被疑者とか参考人だけではなくて、私は冤罪をつくってしまったと反省をされている元検事の市川寛さんがおっしゃっているんですけれども、取調べの全面可視化は被疑者、参考人が拷問に遭わないようにするため、拷問というのはかぎ括弧付きで、ひどい目に遭わないためもあるけれども、取り調べた側の検事が、ひょっとしたら俺が覚えていないだけじゃないのと悩んだり後悔しないためにも必要なのではないだろうかというふうに、一検事の、十二年少し検事生活があったんでしょうかね、反省されている。  だから、そう考えたときに、やはり田代検事の偽造捜査報告書問題も含めて、こういうときにこそ小川大臣のイニシアチブでもって可視化、取調べの全面可視化ということを是非とも実現させる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
  69. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まず、田代検事のその捜査報告書の点でございますが、今、現に進行中の裁判にかかわることでもございますし、本人が告発されているということもございますので、具体的な答弁は差し控えさせていただきたいと思っておりますが、ただ、事実と異なる内容捜査報告書が存在するということはこれはあってはならないことでございますので、私も重大な関心を持っておるということは述べさせていただきます。  また、可視化の問題ですが、確かに委員指摘のとおり、取調べの可視化は検察捜査がやりにくくなるということだけでなくて、やはり検察のその取調べが適正にされていたということが容易に裁判所で証明できるということで、不必要な任意性を争う裁判がなくなるという意味でメリットも、検察側にもメリットはあるわけでございます。そうした観点から、検察あるいは警察の方でも、もう取調べの可視化を導入しないということではなくて、導入するという方向性は向いてきたと。ただ、導入するに当たって、どういう内容の導入方法にするか、あるいは導入するに当たってほかにどのような条件をクリアするかという議論の方向になってきたということで、導入するという方向に向かってきたということは私は良かったと思っております。  私自身は、この取調べの可視化、これは何としてでも法制度として実現したいと、このように思っております。
  70. 有田芳生

    有田芳生君 今年の二月十八日の小沢一郎さんをめぐる政治資金規正法違反事件の決定を読みますと、そこの中で田代検事についてこう書かれている。田代検事の取調べは、個人的なものではなく、組織的なものであったとも疑われると。だから、単に個人の問題じゃないんだと、もっと上司の方もかかわっている可能性があるというふうに東京地裁は述べているんですよね。  さらに、これは読売新聞と朝日新聞が複数の検察幹部から直接話を聞いた内容として、その偽造された田代検事捜査報告書、それを一年前に東京地検は知っていたんだと、幹部は知っていたんだという報道、これもある一人の方の証言ではなくて複数の幹部から聞いているんですよ。そうなってくると、これ重大な問題が今私たちの前に存在して継続しているということだと思うんです。  さらに、もう時間がありませんので、小川大臣に是非ともお気持ちを語っていただきたいのは、一年前に東京地検が田代検事の偽造報告書を知っていて、それを徹底的に明らかにしないならば、やはり検察在り方検討会議が当時続いていたときなんですよね、だから、その人たちに対しても示しが付かないと思うんですが、もう時間ですので、最後に一言だけお願いいたします。
  71. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まさに裁判進行中、判決を目前にした裁判の事柄でありますので意見は差し控えさせていただきたいと思っておりますが、この報告書のことにつきましては重大な関心を持っておるというところでございます。
  72. 有田芳生

    有田芳生君 終わります。
  73. 丸山和也

    ○丸山和也君 自由民主党の丸山和也です。  今日は三点ですが、最初に、ちょっと順序は違うんですが、入国管理政策といいますか、そちらの方から少しお聞きしたいと思うんですけれども。  まず、これ過去にも何度か尋ねたんですけれども、大臣、そもそも日本は、入国管理局、それから入国管理ということを大臣所信の中でも述べられているんですけれども、いわゆる移民政策ということについて、それとの関連である程度政策があるんですかね。それとも、そういうものは全くないまま入管行政を遂行しているんでしょうか。これについては前から疑問に思っているんですけれども、一度も明確な答えが得られていないんですよね、この委員会でも。改めてお聞きしたいと思います。
  74. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 移民政策を取るかどうか、こういう政策になりますと、もう法務省だけの問題ではない、政府全体の政策方針だと思うんですが、ただ、私の考えでは、移民政策を取るということの必要性の前提として、我が国が少子高齢化社会ということがあると思うんです。ですから、私は、まず取り組むべきはこの少子高齢化社会、特にこの少子化ということを政治の力でしっかり取り組んでいくのが先決じゃないかというふうに思っております。
  75. 丸山和也

    ○丸山和也君 それも一つですよね。緊急に必要性を迫られていると。その少子化、高齢化が、福祉政策、もう全てですね、それから経済問題、それから全てに根底に大きく横たわって、今の政府も、まあ前の政府も随分苦しんでいるんですけれども。  しかし、一つの政策を、法案を作ってすぐ少子化が止まるという問題では、これはちょっと違うんですよね。ですから、大きな歴史のトレンドとして、少子化対策も、もう十年あるいはもっと前から言われていてずっとやってきたと思うんですね。今の政権ももちろんそういうことに予算配分をされたりしていると思うんですけれども、これはだけど、かといって急に、あるいは戦前のように一夫婦が五人、六人、あるいはもう十人ぐらいをつくるというような時代はなかなか来ませんし、それは大事ですけれども、少子化対策をするということだけでとても間に合わないと思うんで、やはり移民政策については、これは、それをどう実行するかということに入管行政が直接かかわってくるわけですから、これはもちろん法務省だけの問題じゃないんですが、法務省がやっぱり一つのオピニオンリーダー、あるいはそういう意識を持って考えていかないと、とてもこれ間に合わないと思うんですね。  それで、いろいろ、ヨーロッパなんかでも少子化が進んでいる国が大半ですから、いろんな識者の提言見ていますと、例えば結構日本でも知られているジャック・アタリさんなんという、フランスのたしか大統領補佐官だったかな、シラクさんのときだったかな、あの辺りでも、やっぱり日本はそういう対策に失敗しているということで、もうはっきり言って間に合わないだろうと、このままではね、言っていますよ。それで、やっぱり日本が、しかも少子高齢化の世界最先端を行っているんですよ、日本は、恐ろしいスピードで。これは、少子化対策を少しやるとか子ども手当をどうこうするというようなことでは、とてもとてももう全く間に合わないですよ。新幹線と人力車が競争するみたいなもので、あり得ないと思うんですよ。  だから、もう一度お聞きしますけれども、移民政策について考えてみようとするお気持ちはありませんか。
  76. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 委員の御指摘、全くごもっともだと思っておりますが、今の制度はやはり日本の社会に有益な人、もう少し平たく言えば何らかの技術を持っている人に、かなり限定的にこれを受け入れておるわけでございますが、これを更にいわゆる技術というものの要件をなくす、あるいは緩和するということになりますと、いわゆる単純労働者的な方が数もかなり多く入ってくるわけでございます。そうすると、やはり日本の雇用の問題にも影響を与えますし、また、そうした方が来れば日本の社会の在り方というものも少なからず変化があるのかなと思います。そうすると、そうしたことの社会、すなわち移民を受け入れることでこれからの日本の社会を考えていくんだということに関しましても、やはり国民的な理解をいただくことが大変に重要なことだというふうに思っております。  法務省としましては、言わば門番のようなものでございまして、政府がこういう枠で許せば、その許した枠の基準で出入国の管理を行うわけでございまして、法務省が出入国の管理を行ったからそれで政府の政策が変わるというものではないものでございます。ですから、この移民あるいは外国人労働者の受入れにつきましては、やはり国民的な理解を得られる中で政府としてもしっかり取り組んで、しっかりと議論する必要があるのかなというふうに思っております。
  77. 丸山和也

    ○丸山和也君 まさにしっかり議論する必要があるんですけれども、それがやっぱりなかなかなされないんですよね。  これちょうど、もう大分前なんですけれども、私の友人でもあったんですけれども、二〇〇四年の二月に元の入管局長、坂中英徳さんというのが、「外国人受け入れ政策は百年の計である」という、これは中央公論に出しまして、当時結構話題になりまして、彼は僕と同期で法務省へ入ったんですけれども、一時、それでそのまま入管で局長をやって退職したんですけれども。彼が、ずっと入管行政をやりながら、要するに移民政策を取るべきかどうかということについて随分悩みまして、この中では、やや若干ずれるかも分かりませんが、二〇〇六年から人口は減少に入っていくということを予測しまして、そして日本は、要するに縮小した社会を目指していくのか、それとも活力のある今の規模を維持する社会を目指して、維持しようと努力していくのか。ここでは移民政策を避けて通れないと。それで、移民政策を取れば多民族共生社会に当然なるわけですよ、もちろん単純労働も入ってきますからね。そうすると、抜本的な国家在り方そのものを変えていく覚悟がなきゃできないと。しかし、縮小する社会でいいんだということになれば、例えば人口が半減すると、五千万、六千万、七千万なのか、どのぐらいかを、ターゲットをある程度設けて、縮小した人口、縮小した生活、経済レベルも縮小していくと、当然なるだろうと、国際競争の中からもね。しかし、ややそれでもゆとりがあるという受け入れ方をする社会をつくっていくのかと。こういう大きな歴史的な価値観を定めていかなきゃ駄目だと、国民コンセンサスもつくってね、言っているんですよ。  それで、彼はやや結論的なことを、彼の見解では、日本の中で多民族共生社会というのは非常に難しいだろうという、どちらかというとそういう見解なんですね。日本は、やや単一民族に近いような文化をつくってきた国、それから、おっしゃったように、外国人がたくさん入ってきて共生がなかなかうまくやれるだけの経験も少ないんじゃないかということで、むしろ縮小社会でよしとするというような見解のように私は思えるんですけどね。  しかし、政府は、少子高齢化対策をしようと、デフレから脱却だ、経済規模も今世界第三位と言っていますけれども、頑張って何とか国際競争力も付けていこうということで、決して小さな社会、小さな国家を目指して、それでよしとしようとはしていないんですよね。それで、実際にはほとんど実効性がないような少子化対策だけを言っていて、これは当然シュリンクしていきますよ。そして、それでいいというなら、そういう国づくりを目指さなきゃならないと思うんですよ。  だから、移民政策というのは、単に外国人を、単純労働者を受け入れていいか悪いかというような問題じゃなくて、国家在り方ですね、国づくりそのものなんですよね、今となっては。そういう意味で、本当に真剣な議論がなかなかできていないというよりは非常に閉鎖的なんですよね、ここらがね。  私は、やや結論的に言うと、もう少し移民政策を大胆に入れていくべきだと思うんですけれども、それにしても、議論し、いろいろ検討しないととても進められないと思うんですね。そういう意味で、今の日本というのは、そういうことを考えないで何とか頑張っていけば、少子化もそれなりに防げて、あるいは回復して、あるいはこれだけの国家規模の、社会規模の国が維持できていくんだというようなまさに幻想の上に成り立っていると思うんですよ。農業にしろ、林業にしろ、漁業にしろ、いろんな部門だって、やっぱり日本は働き手がいないじゃないですか。こういう中で、空洞化も進んでいるし、やはり、例えば第一次産業をもっと活性化するということなら、あるいは介護、福祉とかそういう点での日本の働き手がいないというのなら、そういう外国人を入れるとか、かなりもうオープンに切り開いていかないと僕は難しいんじゃないかと思うんですけどね。  そういう意味では、この外国人政策、移民政策ということをもっと、法務省も中心になって、今のように特定の技術を持った優秀な人だけを選別して入れて、厳しく監視して、悪い外国人というか、何の能力もない外国人を入れない、排除していくと、こういう形だけで時代を見据えていないんじゃないかと思うんですが、いかがですか、大臣
  78. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 確かに今、移民ではありませんけれども、研修というような形で労働者を受け入れておるわけでございます。実際、しかし、今の日本のこの社会構造あるいは産業構造は、農業でも漁業でもあるいは工場の分野でも、そうした研修生の労働力に頼っているという面がございます。昨年のあの大震災の後、被災地域でないところでも、みんな驚いて研修生が帰ってしまって生産活動ができなくなってしまったというような話もしっかりと聞いております。  ですから、今の日本のこの社会構造がそうした外国人の労働力を必要としている状況になっているのかなという認識は持っておるわけでございますが、しかし移民となりますと、今度は研修生と違って帰っていただくわけではなくて、そのまま日本に生活していただいて、いずれは日本国籍を取得していっていただくということになるわけでございます。これを認めるとなりますと、まず、認めるかどうか、それから、どういう範囲で認めるかとか、様々な議論が必要かなというふうに思っております。  ただ、私は、委員指摘されるように、日本の社会構造そのものがやはり外国人に頼る部分がこれからも広がっていくんだという事実の認識はそのように思っております。また、これからの国際化社会の中で、日本という国が、いわゆる日本民族といいますか、この日本で生まれた人たちだけでやっていけるのかどうか、特に少子化対策も、取り組んではいても、将来の日本社会を日本人だけでやっていけるだけの状態にはなかなか難しいのではないかというふうに思いますと、やはり移民の問題、それから、移民ではなくてその前段階の外国人の労働者の受入れ、そうしたものもやはり真剣に議論をする必要があるなというふうには感じております。
  79. 丸山和也

    ○丸山和也君 今、研修生の言及をされたんですけれども、これはやっぱり大胆な移民なり労働力を取り入れない便法として使っているような面がありまして、しかも一定期間であるし、それから、必ず帰ることが前提になっていますから。  だから、とてもこういう、何というか、決して悪い制度じゃないんですけれども、取りあえずこの制度でこちょこちょこちょっとやっているようなことで、とても間尺に合わないし、またその研修制度を悪用したという、本来必要な方に使ってしまって、研修生でなくて単純労働に使っているということで、いろんな問題も非常に、事件にもなったりして、問題の発生している温床にもなっているんですね。  だから、研修制度を否定しませんけれども、やはり、大臣も、これからの日本社会が日本人だけで、働きだけでやっていけるのかと、大いに疑問だとおっしゃったとおりなので、やっぱり国際社会の中で日本が生きていくということであれば、これは移民政策を本当に考えなきゃいかぬと私は思っているんですね。  それで、是非、坂中さんが二〇〇四年に書いてからも、十年はないですけれども八年近くたって、やっぱり同じ問題がずっと問題としては提起されたままあって、しかし、大胆な発想の転換というか議論自身も余り起こってこないんですよね。APECはどうかとか、ああいうのは議論になりますけど。  それと、若干それますけれども、少子化対策というのであれば、やはり日本の社会においても出産ということと婚姻ということを切り離さなきゃ駄目ですよ。婚姻から出産というのもいいんですよ。だけど、子供を産むということを、婚姻、結婚からでしかほとんど正統として認めないような社会の中では、やっぱり非常に難しいでしょう。  例えばシングルマザーだとか、あるいは元々結婚はしないけれども子供だけ欲しいという、そういうことに対する社会政策とか価値観とか、そういうことをもっと広げていかないとなかなか、ヨーロッパ辺りを見ると、大体いわゆる日本でいう婚外子というのは五〇%を超えているんですよ。日本なんか一%とかそんなものじゃないですか、一%あるのかどうか知りませんけど。だから、非常に婚姻制度との縛りが強いんですよね。  いい悪いは別にして、そういう非常に堅苦しい社会とそれから今の経済状況の中で、少子化対策といったってなかなか子供は気楽に産めませんよ、教育費も高く掛かりますし。だから、そうであれば、もちろん私が考える移民政策も、それから婚姻制度と出産の問題も両方考える必要あると思うんですけれども、あらゆる手だてを取っていかないと、僕は少子化は止まらないと思いますよ。  それならば、やっぱり日本の人口を半減する、あるいは明治維新のころは幾らでしたかね、五、六千万、五千万ぐらいですか、ちょっとはっきり分かりませんけれども、江戸幕府が終わって明治維新ができたくらいの人口でやるんだと。それくらいの規模でやってよしと、それでややゆとりのある社会を築くんだと、大国じゃなくていいんだというなら、そういう国づくりを目指すべきだと思うんですよ。方針がないんですよ、はっきり言って、日本の国は。あの封建時代から西欧列強に侵略を免れようとして大国になって、日露戦争やって、第二次大戦やって敗北して、それからまた経済成長やって世界の第二の強国になったと、まあ経済的にね。それからまた今度、どんどんと少子化が進行して、これから先どうなるんだろうかと、はっきり言えば成り行き任せみたいなところがあるんですよね。  そういう意味で、いろんな角度から国の在り方、方向を定めるのはいいんですけど、やっぱりこの移民政策という観点からも、一つの軸として国の将来像をつくるということは、僕は日本がやっぱり一番手抜いている面だと思うんですよね。だからこれは、いろんなもう批判も議論も賛否両論起こると思うんですけど、恐れずに是非政府としてやってもらいたいと。  また、小川大臣も見識のある大臣だと思いますから、そういうリーダーシップを持ってこういう問題提起をしていただきたいと、そういうふうに思うんですけれども、いかがですか。
  80. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まず、先ほどの私の答弁の中で研修生を労働力というふうに表現した部分がございましたが、あくまでも研修生は発展途上国に対する技術の移転のための研修でございますので、その点をちょっと踏まえさせてください。  確かに、私もいわゆる団塊の世代でありますので、言わば非常に人口が多い。でも、私たちの世代がみんな寿命を迎えていなくなった後、日本の人口相当減ってしまうのかなと。減ってしまった中で、やはり若者、子供が少ないという、こういう構造が更に進んでいけばということで、日本はどうなるのかと。本当に我々がいなくなった後の日本というものをしっかりと見詰めたときに、確かに言わば深刻な問題だなというふうに思うわけでございます。  ですから、今すぐやはり移民となりますと、それを国民が受け入れるかどうかということもございますので、そうした国民意見も聞きながら、しっかりとした議論を広げていく必要があるのかなと、このように思っております。
  81. 丸山和也

    ○丸山和也君 是非、そういう問題提起というか問題意識を持って、随所でその問題提起をして議論を進めてもらいたいと思います。  先ほども言いましたジャック・アタリ氏なんかは、日本は完全に失敗したと、もうこれは回復不可能だろうなと言っているんですよ、そういう意味では、少子化という意味ではね。それから、経済的にやっぱり衰退していくのは、これはもう歴史的必然だと。日本は十年、二十年前に手を打つべきだったけれども失敗した、しかし今もそれについて手を打とうとしていないと、だから日本の復活はあり得ないだろうと。  これは一人の意見ですから、別にそれに負ける必要はないんですけれども、深刻な見方をすれば、やっぱり手を打っていないんですよ、はっきり言って。人口が減少していくということは全てに影響しますよ、これね。これだけのスピードで少子高齢化が進んでいる国というのは世界にないと思うんですね。  そういう意味ではモデルケースになると思うんですけれども、やっぱりそこに哲学とか思想とか、きちっとした国づくりの大きな、まさに百年の計というのがないということが、じりじりじりじり、気が付いたらいつの間にか落日だったということになるんじゃないかと思いますので、是非移民政策について前向きに検討していただきたいと思います。  それで、この点はこのくらいにしまして、次の、いわゆる先ほども質問ありましたけれども、検察審査会について有田議員からいろいろ御質問ありましたけれども、若干関連するんですけれども、やはりこの制度の問題点についても指摘されましたから、大臣は、今の検察審査会法ですね、これの意義については、いわゆる強制起訴をできるという、この意義についてはどのように考えておられるんですか。非常に問題が多いから見直しが必要だという見解なのか、これはこれで非常に意義がある制度だと思われているのか。そこら辺の現在の御見解はいかがなんでしょうか。
  82. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 強制起訴という制度がないこの審査会法改正以前は、検察審査会に申立てしても、あるいはその議決があっても、検察が結局判断は変わらないという例の方が多かったように思いますから、検察審査会、理念としてはなかなかいい制度だけど、実際には余り機能していないのかなというような声が多かった、まあ私自身もそういうふうに感じたこともございますが。そうした声を踏まえて、そうした経過を踏まえて、検察審査会が二回も起訴相当ということになれば強制起訴というふうに法改正がされたわけでございます。  これはこれで、そうしたこれまでの検察審査会の運営の中から出てきた改正でございますので、これが間違っていたとは思いません。やはり国民の声、司法というものは本来国民のものであるから、国民判断する、国民が参加するということで、私は理念的には正しい制度だと思っておりますが、ただ、これは実際に強制起訴制度というものが施行されて今三年目ですか、ちょっと何年目かは別にしまして、幾つかの例が実際に強制起訴されて、裁判結果がこれから順次出ていくという状況になります。そうした実際の、この法改正になった後、強制起訴制度ができた後の実際のこの運用状況というものを、やはりある程度事例が集まったところでしっかりと検証して、これは更に検討してみるべき点があればやはり検討してみなくてはいけないなと、こんな、一般論でございますが認識を持っております。
  83. 丸山和也

    ○丸山和也君 衆議院の方でも同じような、この点に関していろいろ質問が稲田議員からされていまして、大臣も大分突っ込まれて、見直しということはどういうことかと大分突っ込まれたように思うんですが、まあ一般論一般論だということで答弁かわされていたように思うんですけれども。  それは別にしまして、やはり強制起訴になった中国人船長の、つい先般強制起訴になりましたけれども、これについてお聞きしたいと思うんですけれども。  那覇地検は日中関係を考慮して処分保留のまま釈放したんですよね。その後、不起訴処分にしたと。それで、検察審査会が四月に起訴相当議決したと、地検が再び不起訴としたと、それで審査会は更に七月に起訴を議決したという、こういう流れでついに強制起訴になったわけですけれども、これもある意味では、複雑な事件というより、そもそも、これはあれですよ、公務執行妨害、船舶毀損罪、外国人漁業規制法違反という、明らかな故意犯ですよね、データもビデオでもありましたけれども。普通なら当然起訴になっていると。裁判、恐らく有罪になったでしょう、最終的に強制送還とかなったんじゃないかと思われますけれども。全く法手続を取らないで、放棄して釈放してしまったということに対するごうごうたる国民の怒りがあって、それで最終的にこういう強制起訴に至ったと思うんですね。だから、まさにこれは司法の放棄に対する民衆の怒りが再び法手続を要請し、それが形の上で実現したということだと私は理解しているんですね。こういうことが検察審査会法の改正のまさに成果だと思うんですね。  ただ、この件では、被告人は、実際もう起訴状を恐らく中国へ送達することも不可能じゃないかと思うんですけど、これは可能なんでしょうか、大臣
  84. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 中国との間に刑事共助条約がございますので、我が国はその条約に基づいて送達を中国政府に、当局に要請するということになります。その後のことは中国政府のことでございますので、私が今どうするということは差し控えさせてください。
  85. 丸山和也

    ○丸山和也君 そこまでは恐らく日本政府もやると思うんですね。ただ、見通しとして、それがこの当人に送達され、本人が法廷に出頭して裁判を受ける可能性は恐らく、恐らくというより全くといっていいぐらいないんじゃないでしょうか、常識的に。どう思われますか。
  86. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 共助条約を見ますと、相手国、協力を要請された国がそれを拒否できる事由についての条項がございます。ですから、中国政府がそうした拒否事由に該当すると判断して拒否するということも一般論としてはあり得るわけでございます。
  87. 丸山和也

    ○丸山和也君 中国政府は、尖閣諸島、あの領域、尖閣諸島は中国の領土だと、固有の領土だと言っているわけですよね。だから、日本が違法な活動をしているんだと、日本の方がむしろ違法行為をやったんだと。今はどうか知りませんけど、日本にも損害賠償を請求すると、こうまで言っていたぐらいですから、全くあり得ないわけですよね。そうすると、国民の怒りも強制起訴になったところで終わりということになってしまうわけですよね。  これは、形だけは法が生かされて強制起訴まで行ったんだけれども、全く実態がないということになるわけで、非常にむなしい結果になってしまった。日本は、尖閣諸島は固有の領土だと言い続けながらも、その刑事司法手続においては全く手を出せない、あるいはむしろ手を出せない状況を自らが作り出してしまっていると。こういうことで主権国家司法というのは成り立たないと思うんですね。最近における、いわゆる国益というか、国益、プライドをも含めて侵害された最も顕著な事件だと思う。  しかし、もう一つ大事なことは、これについての政府の釈明が一貫して虚偽であると思われることですよ。国際関係を、日中関係を考慮して釈放したと検事に言わせ、しかも全くそれが政治的に無関係の介入もない判断であったかのように言わせ、そして不起訴にし、強制起訴になっても、はいそれまでよと繕うわけですよね。  こういうことで事を済ませていくと、形的にはそのとおりであれば誰も文句も言えない。これ、強制起訴になっても恐らく公訴棄却でしょう、裁判はできません、出頭もないしと、それで終わりと。事なく終わらせたということになるかもしれませんけど。僕は、ある意味じゃこれは民主主義にとって非常に、こういうことはやっぱり一番ゆゆしきことだと思うんですね。事実を明らかにしない、形を整えてよしとすると。  要するに、民主主義の手続というのは形骸化しているということなんですよ、これ、中国人船長の。民主主義が形だけになり形骸化してきて、本当の実態を暴こうとしない、時の権力もそれを蓋して、形だけで形骸化を是とするということになってくると、やっぱり僕は、政治思想的には独裁への期待とか、あるいはそういう形骸化した民主主義の執行者に対するテロとか、こういうことを僕は正当化していく、誘発する環境が生まれると思うんですよ。だから、僕は、こういうことが繰り返していくなら、テロなり独裁願望というのは非常に大きくなってくると、そういうことが本当のやっぱり危機だと思うんですよね。単に船長を釈放したかどうかというだけの問題じゃなくて、不信感ですよ、だから。  時代はちょっと遡って、前に言いましたけれども、明治政府の大隈重信があの列強との条約、不平等条約の改正にいろいろやっていたんですけれども、やっぱりこれがなお不平等というか日本の国益を害するということで、来島恒喜に外務省の前で爆弾を投げ付けられて足が吹っ飛んでしまったと、こういう事件がありましたけれども、当人はその場で自害しましたけれども。あのころ、それがいいと言っているんじゃないんですよ、ただ、大隈重信が、それで彼の行為に対して、彼の行為は真に愛国の志から出たものであって自分はたたえるなんて言っているんですよね。それだけの度量がある政治家が今いるかどうか分かりませんけれども。また、最近はそういうテロも少ないですから、これはそれでいいんでしょうけれども、やっぱりいいかげんなことをとりわけ外交関係でやっていくと、怒りがどこかにマグマに達したときには、そういうことを是とする、それにしか訴えられないんだという空気を生むと思うんですよ、僕は。  だから、この中国人船長の釈放事件なんというのはやっぱり、何度も言いますけれども、当時の松本健一さんが産経新聞に九月二十六日に克明に書いていますよ、これ。官邸側の指示で検察が動いたと言えるか、それはそうですと。誰が関与したかということでは、少なくとも菅氏は関与していないでしょう、仙谷氏の可能性が高いと。彼は仙谷さんと親友ですよ、数十年の。彼がここまで言うということは、それはそれとしてきちっと認めた方がいいという判断が僕はあると思うんですよ。こういうこそくなことをやるんじゃなくて、官邸が一つ判断をしてやったんだと、そういうことで受けて立たないとやっぱり政治というものが死んでしまうよと。  彼は、この松本健一さんというのは日本の、決して右翼じゃないけれども、頭山満の研究なんか北一輝とか相当されていて、日本の右翼の研究を随分されている、純粋に思想的に。今はもうそれで自分はもう終わったと書いていますけれども。やっぱり歴史の証言ということはきちっとすべきだという覚悟をされたんだと思うんですよ。一見、仙谷氏なんかを裏切ったように見えますけど、決してそうじゃないと思う、僕は。こういう、ごまかしてはいけんと、特に権力は余りごまかしてはいかぬと、これだけの大きな国民的批判を受けたことに対してきちっとやっぱりやるべきだという一つの僕は正論だと思うんですね。  だから、僕は機会あるごとにいろいろなことを聞いているんですけれども、大臣も当時の大臣並びに政府の見解を踏襲されているばかりで、それ以上のことは今日も出ないと思いますけれども、やはりこの事件はそんなに風化させられるものではない、中国人船長の強制起訴をして、それで公訴棄却で終わって、ああよかったで終わる問題ではないということを是非肝に銘じていただきたい。答えは要りませんけれども。  それともう一つ、日本は中国に対して損害賠償を請求すると言っていたんですが、これはやったんですか、やっていないんですか。御存じだったらお答えいただきたい。
  88. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 中国政府ということではなくて、行為者に対して海上保安庁が船の損害の賠償請求はしたと聞いております。
  89. 丸山和也

    ○丸山和也君 結果はどうなりましたか。
  90. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) それは実現していないと聞いています。
  91. 丸山和也

    ○丸山和也君 やる気はあるんですかね。
  92. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) やはりこれも相手方が我が国の主権が及ばない国におりますので、なかなかその実現は難しい面があるとは思いますが。
  93. 丸山和也

    ○丸山和也君 時間がもう余りありませんので終わりますけれども、僕は決して反中国論者じゃなくて、将来的には防衛と考えたら、いずれ日中安保条約も必要になってくると思うんですよ、日米だけじゃなくて。そういうことも視野に入れながら、やはり中国とはきちっとした対応、毅然とした対応をしておかないと、それすらできなくなってくると思うんですよ。そういう意味で、是非、法務大臣として、日中の関係においても司法権の独立を損減することのないように、しっかり過去のことも含めてやっていただきたいとお願いして、私の質問を終わります。
  94. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  95. 西田実仁

    委員長西田実仁君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  96. 森まさこ

    ○森まさこ君 自民党の森まさこでございます。  小川法務大臣質問をさせていただきます。  小川法務大臣大臣所信を先日お伺いいたしました。それに対する質疑を本日三月二十二日にさせていただきますが、小川大臣の御就任が一月十三日ですから、それから二か月以上がたっての質問でございます。小川法務大臣法務大臣としてどのように法務行政を行っていくか、大切な本日の質疑の場だというふうに心得ておりますが、私、午前中の民主党の先生方の御質問、大変重大な問題について論点を挙げていただいたとは思っておりますが、その中に、小沢一郎民主党代表の個人のお名前がお二人とも出ていたということに対しては、私自身は違和感を感じたところでございます。  さて、小川法務大臣法務大臣東日本大震災に対する法務省の取組をどのようになさっていかれるかをお聞きしたいんですが、法務大臣大臣所信には東日本大震災に対する項目がございませんでした。私はそのことを大変残念に考えております。そのことも含めて、この大震災法務省として、法務大臣として、どのように取り組んでいかれるのか、お答えください。
  97. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) やはりこの未曽有の大災害に対する復旧復興支援というものは国を挙げて取り組むべきものだと思っております。法務省も国の一員として、当然ながら全力を挙げて取り組みたいと、このように考えております。
  98. 森まさこ

    ○森まさこ君 一年が経過をいたしました。今月十一日には、一周年の追悼式が福島県でも各地で行われましたけれども、津波被害による瓦れきは今なおそのままの有様でございます。また、突然日常を奪われて亡くなられた方の御無念と御遺族の悲しみを思いますと胸が痛みますが、この法務省のお仕事であられる戸籍や、それから土地の整理もいまだ見通しが付かないという状態にございます。特に、福島県の原発被害地域においては、土地家屋調査士さん等が立入りすることができない状態にございますので、そういったことに対しても、被災者、避難者の皆様思いを致して御答弁をいただきたかったと思うところでございます。  さて、それでは、法務大臣の所信の中に少しだけ大震災のことに触れられているのは、これは法テラスの法案、その中に一行、東日本大震災の方に取り組んでいると、出張所を出されているということを書かれております。  法テラスについては、いわゆる法テラス特措法が起草されて、この質疑の終了後、質疑や採決が予定されて、迅速な審議が行われることになっておりますので、なるべく早く施行されて、被災地皆様の法的サービスに役に立ったらというふうに願っております。  私ども法務委員会でも、国会が閉会をされてしまった後、一月に被災地を訪問し、福島県の法テラスも視察をしてまいりました。その中で、資力要件が付いておりますので、例えば住宅が津波で流されてしまい、法テラスに相談に行きたくても、保険が下りたというような場合には、資力があるとみなされてしまって相談に行けない等の事例が示されました。  そこで、大臣にお伺いをしますけれども、この法テラスの法案が成立をした後、なるべく早い施行をして、そのような問題点を解決していただきたいと思いますけれども、大臣思いはどのようなところにおありになるでしょうか、お答えください。
  99. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 法案が成立すれば、被災者のために少しでも早くお役に立てるよう、速やかに施行したいと思っております。
  100. 森まさこ

    ○森まさこ君 大臣が臨時出張所をお出しになったというふうに述べられておりましたけれども、法テラスの臨時出張所は今どちらにありますか。
  101. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 四か所設置いたしましたが、宮城県の南三陸町、宮城県の東松島市、宮城県山元町、岩手県大槌町でございます。
  102. 森まさこ

    ○森まさこ君 なぜ福島県にないのですか。
  103. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) いや、取り立てて福島県を除外するわけではございませんが、これからその必要度、状況に応じて検討したいと思います。
  104. 森まさこ

    ○森まさこ君 これから必要度を検討するというのでは到底納得がいきませんね。もう一年もたったんですけれども、福島県は必要がないと考えていたということですか。
  105. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) いえ、決して必要がないということではありませんが、出張所をつくるということは、やはりそれを支える地元の方々の協力や弁護士会の協力等様々な要素がございますので、まだその点が至っていなかったということでございます。現在、福島県においても出張所をつくるべく弁護士会と協議中でございます。
  106. 森まさこ

    ○森まさこ君 それでは、宮城県弁護士会、岩手県弁護士会に比べて福島弁護士会の協力がなかったということなんですか。
  107. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) いや、なかったということではございませんが、まだ現実に協議が調って出張所を開設するには至っていなかったということでございます。
  108. 森まさこ

    ○森まさこ君 私はこの法務委員会で何回も質問をさせていただいて、今日も質問をさせていただきたいと思っておりますが、毎回答弁が曖昧なので、最後まで私、追及したいと思っているのは、被災直後に、原発爆発直後に、避難地域にも指定もされていない相馬市、いわき市、これは浜通りでございます、津波の被害もございます、そういう地域から検察裁判所がいち早く逃げたという問題なんです。これに対して何回も質問していますが、納得のできる御答弁をいただいておりません。  そのように、この原発地域に隣接した浜通り地方が国家機関たる裁判所にも見放されておきながら、同じ法務大臣の下で、法テラスもまだ出張所がつくっていただいていない。法的なサービスのニーズは物すごく高いんですよ。津波の被害だけでなく、原発の損害賠償請求問題もあるんです。何で一年間、法テラスの出張所をつくらなかったんですか。
  109. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 決してつくらないという方針で動いていたのではなくて、つくるための関係機関との協議、これがまとまらず、現在まで残念ながら設置するということには至っていないということでございます。
  110. 森まさこ

    ○森まさこ君 関係機関との協議がまとまらないのはリーダーシップがないからじゃないですか。でも、宮城と岩手は関係機関の協議がまとまっているんでしょう。何でそれを、必要な法的サービスがある、国民の目線に立って、国民生活のために、関係機関がごちゃごちゃ言っていてもまとめて、法務大臣がつくらないんですか。こういうことを質問したかったのに、法務大臣が就任してから二か月も所信に対する質問もさせてもらっていないんですよ。その間、自殺者も出ているんです。  私は、この問題がこの法務省所管の問題だけじゃないから大変怒っているんです。民主党政権、野田政権の下で、福島県の被災の状況は全く良くなっていません。岩手、宮城と比べていつもいつも後回しなんです。  申し訳ないんですけれども、今の答弁納得できていないので、ほかの事例を挙げさせていただきますけれども、汚染稲わら事件というのがありました。農水省の所管でしょう、それはそうでしょう。だけれども、あの汚染稲わら、どうなっていると思いますか。一年たって、まだそこにあるんですよ。六十万ベクレル・パー・キログラム、何という数字ですか。それを何でそのままそこに置きっ放しなんですか。幼稚園の女の子がいるお宅のお庭ですよ。  その汚染稲わらを食べた牛、その牛は屠殺も禁止されています。農家の牛舎で飼っているんです。廃用牛といって、売ることもできない、殺すこともできない、餌食べるだけ、そこから出てくるふん尿、これも高い汚染されている。この牛、岩手県、宮城県はさっさと国が公用牧場に集約して管理しているじゃないですか。福島県だけそのままですよ。それのことについて政府に聞くと、こう言うんですよ、福島県だけ後回しにしているわけじゃない、いろいろな協議が時間が掛かるんです、被害が甚大だからできないんです。被害が甚大なところからやってくれないと困るんですよ。私は、この農水の問題だけでなく、法務の問題だけでなく、全ての問題が同じような状況だから、今日は非常に強く主張させていただきました。  法務大臣法テラスの出張所について、いち早く福島県の必要な地域に設置することを、その決意をお述べいただきたいと思います。
  111. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 当然のことながら、福島県にもやはり法テラスを十分県民の方が利用できるよう整えるということは、これは当然のことでございます。その運営に当たって必要な弁護士会との協議、こうしたものを積極的に進めて、なるべく早く設置できるように努力したいと思います。
  112. 森まさこ

    ○森まさこ君 先ほど私が言いました戸籍の整備、それから土地の再生等についてはどのようにお考えですか。
  113. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 戸籍の整備の方は、市役所と、あるいは町だったかな、戸籍が流失した部分がございましたが、これは法務局にありました副本等あるいはデータ等で復元作業は終わっております。  また、土地の問題につきましては、やはり相当広範囲に移動していると言われている部分もございます。そんな簡単にすっとできるような部分じゃないものがございますので、よくその地籍の調査等、土地の移動の状況等を十分広範囲に把握して、間違いがないように臨みたいと思っておりますが、いずれにしても、技術的な面も含めて可能な限り速やかに進めたいと、このように思っております。
  114. 森まさこ

    ○森まさこ君 それでは次に、福島地検が震災直後、三月に原発が爆発した直後、退避した問題について質問をさせていただきます。  この問題については、私、何度もこちらの委員会で、大臣が何回も替わりましたけれども、質問をさせていただいております。前の大臣の平岡大臣にも二回質問させていただきましたけれども、平岡大臣が大変不誠実な答弁をなさいました。  このことについては、このことというのは福島地検の相馬支部といわき支部ですけれども、原発が爆発した後、国から避難地域に指定されてないのに、そこに住民が住んでいるのに勾留中の被疑者を十人以上処分保留のまま釈放し、郡山という大変遠く、当時ガソリンがなかったので実質上行けない場所にまで避難をし、その結果、釈放された被疑者が再犯を犯したと、そういう問題でございますが、これに対して平岡大臣が、その問題については自分がもう訓示をしたから大丈夫だというふうにおっしゃいました。その訓示の内容というのはどういうものですか。
  115. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 平岡前法務大臣は、昨年九月の検察長官会同におきまして、全国の幹部検察官に対し、検察においては、震災後の混乱に乗じるような犯罪については厳正に対処するとともに、今回の経験を生かし、非常時の危機管理に万全を期するように訓示したところでございます。
  116. 森まさこ

    ○森まさこ君 私、それ、紙でいただいたんですよ。検察長官会同という会議で、全国の検察長官が集まる会議ですね。これが一年に一回か二回開かれているということです。その平成二十三年九月二十八日の会議で今大臣がおっしゃったように述べているんですが、その中のどこに、この福島県の相馬支部といわき支部が、原発の爆発後、避難地域でないのに避難をしたと、今後はそのようなことがないようにということがどこに書かれているんですか。
  117. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 確かに検察庁が先に閉庁したということ、これにつきましては大変に国民の理解を到底得られないことであるということで、深く反省しております。これはもう既に私からも述べてあるところでございます。  そうした中で、この訓示のどこかということは、具体的には書いてございませんが、この非常時の危機管理に万全を期するようと、この総論的な言葉の中にそれも含んでいるものと考えております。
  118. 森まさこ

    ○森まさこ君 大臣、本当にそれでいいと思うんですか。この訓示は何のためにしたんですか。
  119. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 今回、今委員が御指摘になったいわき支部の閉庁等も含めて、あるいは容疑者の釈放につきましても、関係官庁との連絡が不十分であるとか、そうした反省点がございました。そうしたことも踏まえて、今後、非常事態の場合の危機管理については、そうした一つの事例を踏まえて万全を期すようにということでございます。
  120. 森まさこ

    ○森まさこ君 記録に残さないようにという、究極の隠蔽体質の表れだと思いますけれども、大臣、この訓示を後から入ってきた検事さんが読んで、非常時の危機管理に万全を期すように、まあ当たり前のことだなと思って、それで終わりなんじゃないですか。あの福島原発の爆発のときに、ああ、うちの検察が住民を置いて逃げて、そのときに被疑者を町の中に逃がして、その人がまた犯罪を犯すなんていうことをしてしまったんだな、そのことはもう大変遺憾なことで、反省をして、もう二度と起こさないというふうに大臣から訓示があったんだなということ、分かりますか、これ読んで。
  121. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) そうした出来事があった直後の会同でございますので、訓示を受けた方はそうしたことを踏まえての訓示だなと理解しているものと思っております。  そして現実に、検察長官が会同で集まりましたその後、それぞれの勤務地に戻るわけでございますが、そうした趣旨で訓示が各検察庁において徹底されているものと考えております。
  122. 森まさこ

    ○森まさこ君 大臣の答弁は一々納得できません。だって、これを言われてあの事件のことを思い出す人いませんよ。そして、これをいただいて、検察長官が各地に戻って自分の検察庁で訓示をしたって、何にも伝わらないじゃないですか、現場の検事に何にも伝わらないじゃないですか。  どうやって現場の検事に周知しているんですか。
  123. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 具体的には、この参議院予算委員会におきまして森委員から具体的な指摘をいただいたわけでございます。その議事録を付けまして、各検察庁の方にこれを、こうした予算委員会指摘があったということの内容が分かるようにして訓示して、それを下に徹底させたわけでございます。議事録が付けてございますので、委員の御指摘事項は全て理解されているものと承知しております。
  124. 森まさこ

    ○森まさこ君 大変ずるいやり方ですね。自分たちの役所の文書には載せない。私が質問として言った議事録だけ載せていますから、後世には残りませんよ、記録が。議事録で、野党の議員が質問しただけじゃないですか。どうしてこれ記録に残さないんですか、どうして現場の検事に周知しないんですか。私はそういうやり方が、本当に被災地のことを思ってやっているのか、反省しているのか、心の底からもう不信感でいっぱいでございます。  次の質問に移らせていただきますけれども、大臣の今取りざたされております弁護士報酬の事件でございます。  これについては、私が二月二十八日に当委員会質問をさせていただき、その後、自民党においては、三月十六日に衆議院の法務委員会で柴山昌彦影の法務大臣から、それから稲田朋美衆議院議員から質問させていただき、さらに参議院の予算委員会で世耕弘成議員からも質問をさせていただいたところです。  その私どもの質問に対する大臣の答弁を全部まとめますと、大体事件の経緯が明らかになってまいりました。あたみ百万石というホテルですね、そのホテルの運営会社であるF社、F社の代理人弁護士小川大臣がなさっていたと。そして、小川大臣、その社長さんとは旧知の仲であると。そのF社が資金繰りに行き詰まって賃貸料を滞納しているので明渡しを求められた事件小川大臣が代理をしたと。そのときの着手金でございますが、着手金の委任契約書を作りましたかと私が二月二十八日に質問しました。大臣は長々長々と違うことをお述べになっていたので、私が、聞かれたことに答えてください、委任契約書を作りましたかと。もう時間切れの時間でしたけれど、やっと大臣が委任契約書は作っておりませんというふうに御答弁なさいました。そこで私は申し上げたんです。私も弁護士ですけれども、大変高額な着手金です。八千八百万円です。私も十七年間弁護士をやっていて、そんな高額な着手金、いただいたことがございません。稲田朋美衆議院議員も、弁護士を二十年やっていて、そんな高額な着手金はいただいたことがないと言っている。  その着手金、着手金ですよ、八千八百万円です。八千八百万円の委任契約書をなぜ作らなかったんですか。
  125. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まず済みません、一点訂正でございますが、議事録を付けた際の議事録を先ほど予算委員会と申し上げましたが、申し訳ございません、この参議院の当法務委員会でございます。  それで、今委員から御質問いただきました、まず一点、当然委員も御承知だと思いますが、法務大臣が受任したといいますと何か法務大臣就任後のようでございますが、私が大臣あるいは副大臣に就任する前のことでございます。  そして、着手金の契約書でございます。一審の着手時と二審の着手時とあるわけでございますが、一審の着手時につきまして、着手段階では、これ大変非常に複雑な事件でございます。単なる賃料未払ではなくて、そこに至るいきさつが大変複雑な事情がございまして、事件の仕事量の見通しが定かには分からない状況がございます。仕事量が分からないと着手した段階で具体的な金額を確定できないという事情がございましたので、その段階では、当事者の間で口頭で基本的には弁護士報酬規定どおりだよということの確認をしただけで、着手金の金額を明示した契約書というものは作成しておりません。  また、金額が算定できないと同時に、この依頼者は、過去にも私、依頼者が関係する会社等の訴訟事件を受任したことがあります。そうした意味で、大変に弁護士の報酬というものは分かっている方でございますが、その先方の方が直接、別にそんな契約書なんという堅苦しいものは作らなくていいよという、そうしたお話もございました。そうしたことから、そうした金額、着手金等報酬金額を明示した委任契約書は作成しておりません。第一審段階でございます。第二審の着手時におきましては、着手と同時に公正証書を作成しまして金額を明示しております。
  126. 森まさこ

    ○森まさこ君 常識外れです。  たしか、大臣就任の後の二月二十八日の質問民主党田城議員が、小川法務大臣大臣の御就任、大変おめでとうございますと述べた後に、大臣は、裁判官検察官そして弁護士法曹三者全てを経験されております類いまれな国会議員であり大臣であるというふうに思っております、豊かな経験、知見を遺憾なく発揮されて、この間も社会を騒がせている検察問題に対しても、合法的な検察運営を実現してほしいと強く思っておりますと述べられております。  しかし、私、その後申したんですけれども、三者経験なさっていると、三者それぞれ短い経験であるということも言えるんじゃないかというふうに言ったんですよ。弁護士経験も僅かなんじゃないですか。今おっしゃいましたね、弁護士の仕事量が分からないから着手金額を書けない。仕事量が分からないから着手金額を書けないとおっしゃいましたね。間違いありませんか。
  127. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 先般、田城委員から過分な言葉をいただいたわけでございますが、私、法曹三者を経験したことが余りいないという、珍しいという意味では自認しておりますが、それが私自身が大変そのことによって優れたであるとか、類いまれな人材であるということは、私自身は思っておりません。  それから、私の経験ですが、弁護士そのものは大変長くやっております。裁判官検察官を入れて八年間、その後、弁護士になったのが三十三歳かな、ですから今から三十年前ですので、言わば政治を志すまではずっと弁護士をやっておりましたし、志してからも弁護士をやっておりましたので、弁護士経験としては相当長いものだと思っております。  それから、着手金の着手時にその報酬金額を確定できないというのは、仕事量が分からない、その仕事量が分からないのは、弁護士経験で云々とかそういうことではなくて、訴訟行為としてどういう訴訟行為を行う必要があるのか、簡単に終わってしまうのか、それとも相手方の出方によって様々な攻撃、防御を尽くすわけでございます。その攻撃、防御が相手方の出方によっても変わってまいります。大変複雑な事件でありますが、現実には、こちらは言わば反訴を起こすというところまでかなり中身の濃い訴訟行為をやったわけでございますが、受任したその時点ではどこまでの訴訟行為をやるのかということが特定できない、確定できない。確定できない以上、その金額も確定できないと、こうした事情でございます。
  128. 森まさこ

    ○森まさこ君 大臣、語るに落ちています。私は、仕事量が分からないとおっしゃいましたねと聞いただけです。それを言えばいいんですよ。  仕事量が分からないのはどの事件も全部一緒です。弁護士なんて、事件が来たときに仕事量分かるわけないじゃないですか、別に占い師じゃあるまいし。どんな仕事量するか分からないんですよ。ただ内容証明を一本打つとかいうのだったらば、簡単に分かりますよ。そうじゃなくて、こんな裁判事例が来たときに、どの程度の訴訟行為に発展するか分からないって今御自分でおっしゃいましたけれども、全ての事件がそうなんです。だから、着手金というものは、昔、弁護士報酬規定というのがありましたけれども、大臣はそれに倣って金額を決めたというふうに前回おっしゃっておりましたけれども、大体の金額で着手金を決めて、あとは報酬のときにいただくんですよ、その仕事量に応じて。着手金がそれで足りないときには、途中でまた訴訟行為が発展したらそこでいただくんです。新たな例えば控訴審が起きたら、控訴審の着手金をいただくでしょう。大臣だって、控訴審のとき四千万もプラスしている、取り過ぎだと思いますけどね。  そういうふうになるんですから、仕事量が分からないから着手金を決められなかった。着手金を決められないから委任契約書も作らなかったというのは、全く言い訳になっていないんです。委任契約書で契約書を結べばいいんです。最初に一千五百万円いただいているじゃないですか。一千五百万円と書いて、あとは仕事量に応じて追加することもありと、みんなそうやって書いていますよ。何でそれを書かなかったのかと聞いていますけれども、多分、毎回答弁の言い訳が長過ぎますのでまた長く言い訳をするんでしょうけれども、私ども弁護士経験をやっている者が大臣に何回も質問させていただきましたけれども、不可解なんです。不可解なことが多過ぎるんです。何でこんなに高額な着手金なのか。着手金だけで八千八百万円ですよ。相手方の弁護士は勝ったのに八百万円しかもらっていないと。それなのに、負けた方の小川大臣がその十倍も請求している。  しかも、着手したときになぜ契約書を作っていないのか。契約書を作っていなかったのに、裁判に負けたときに何でそれを公正証書に作ったのか。公正証書に作って差押えを掛けているじゃないですか。それを客観的に見たら、本当は約束していなかったのに、裁判に負けて差押えを掛けられたから、自分たちの分がなくならないように公正証書を作ったと言われても仕方ないんじゃないですか、大臣。どう思われますか。
  129. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 私と依頼者との間だけで言えば、特に公正証書を作成して報酬金額というものを客観的に明示するという必要はございませんでした。私と依頼者の間ではお互いが十分に納得して、その報酬額について争いはないわけでございますから。  ただ、第三者が差し押さえてくるという事態が発生しました。第三者が差押えをしてくるという事態が発生したときに、こちらも言わば法律上のテクニックを駆使して、こちらも差押えによってその配当に参加するという手続を経るためにはこれは金額を明示した公正証書の作成でありますので、作成したということでございます。
  130. 森まさこ

    ○森まさこ君 この法務委員会をインターネットで御覧になっている方がたくさんいらっしゃいますので、分かりやすく私質問しているんですけどね。  今まで柴山議員や稲田議員が事実関係をずっと詰めてきました。何でああいうふうに詰めてきたかというと、すべてがおかしいんです。だって、弁護士がお仕事して一千五百万円の着手金。それでお仕事してきて裁判負けました。裁判負けて強制執行掛けられた。その三日後に公証人のところに行って、まあ検事出身の公証人かどうかこれから調べますけれども、公証人のところに行ってプラス三千三百万円して四千幾らの着手金に膨らませて公正証書を作り、さらに二審の分にも四千万の着手金をプラスして八千八百万円の、先にいただいた一千五百を抜いて七千三百万円の公正証書をわざわざ一審の判決で負けたのに作っているんですよ。  普通、弁護士だったら、一千五百万円ももらって、一人の弁護士でですよ、一千五百万円ももらって裁判やって、しかもそんなに一生懸命やったような跡がないですけれども、それで裁判負けたら、ああ、あのとき着手金もらっていなかったから後から下さいと言って公正証書を作るなんてことないですよ。柴山弁護士もこんな事例は見たことないと言っています。  しかも、その公正証書を作ったとき、公正証書一本だけじゃないんです。もう一本作っていますね。何作ったんですか。
  131. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 幾つかたくさんのことを言われるので、ちょっとこちらもいろいろ説明したい点があるんですが。  最後の一点だけに関して言えば、相手方がF社の売掛金と預金を差し押さえてきたわけでございます。そのためにF社は、従業員に払うべき給料の資金、それから熱海の業者に払う買掛金等の支払資金がなくなりました。払えなくなりました。ですから、そのまま従業員や熱海の業者を見殺しにすることができませんので、関連会社が急遽七千万円を用立てしたと。その七千万円について公正証書を作成したわけでございます。
  132. 森まさこ

    ○森まさこ君 利益相反ではないんですか。
  133. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 言われている趣旨は、F社の代理人をしていた私がF社を債務者とする公正証書を作成したことがという御趣旨だと思いますが、今申し上げましたように、この七千万円の融資そのものはF社の利益のために行ったことでございます。そして、F社の利益のために、F社の承諾を受けて、むしろ依頼に近い承諾を受けてそうした公正証書を作成したものでございますので、言わば本人の、元依頼者の承諾の下にやっておるわけですから、利益相反では、当たりません。
  134. 森まさこ

    ○森まさこ君 御自分の弁護士費用についても、破産管財人あてにそういった公正証書を作って強制執行を掛けている。そして、御自分の依頼者の取引先の代理人としてもやっている。御自分との関係でも利益相反じゃないんですか。
  135. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 自分との関係では、F社の依頼で訴訟を行ったその報酬ですから、利益相反でも何でもございません。ただ単にその報酬債権があるということでございますから、利益相反という問題は生じないと思いますが。
  136. 森まさこ

    ○森まさこ君 私は二重に利益相反だと思っています。ただ、依頼者の同意があればいいんだという形式上のことを大臣述べておられますが、依頼者の同意があったとしても、これは債権者のところに割って入っていってその財産をこちらに取るというものですから、依頼者と相手方だけの世界であれば問題ないと思いますけれども、これは私は弁護士倫理規程に違反すると思いますね。  先ほどの委任契約書の作成も、弁護士倫理規程に委任契約書は作成しなければならないと書いてある。その例外規定には先ほどの大臣の言い訳では当たらないんですよ。委任契約書を作ってきちんと職務執行するというのは、大臣が先ほどおっしゃったように、依頼者との関係だけでなく、それ以外の第三者、利益相関関係のある者、そして社会的に見ても公正さを保つためにあるんです。  大臣は先ほど弁護士経験は短いんじゃない、長いんだとおっしゃった。そうしたら、このような弁護士倫理規程も、私たち弁護士には研修がありますけれども、それできちっと研修をなさって身に付いているはずでございます。大臣弁護士法の一条には何が書いてありますか。
  137. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) それは社会正義に奉仕するという趣旨のことが書かれていると思いますが。
  138. 森まさこ

    ○森まさこ君 弁護士法の一条には、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする、そして、その二項に、弁護士はその使命に基づき、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。私どもは弁護士修習のときにこの一条を大事に心に秘めて弁護士の仕事に出ていったものでございます。  こういう精神からしますと、たくさんの零細企業等の債権者がいる中に、どう見ても、外見から見ると依頼者とぐるじゃないか、依頼者と、そしてその関連会社と弁護士がですよ。七千三百万円プラス、先ほどの債権者も七千万円ぐらいですか、一億幾らという公正証書を強制執行の三日後に作ってやっていくということが私はどうしても理解できません。  原告側弁護士の破産管財人に対する意見書を読み上げてみたいと思います。  小川氏について、その主張する全額について虚偽の債権届が出されたと見る可能性があります。仮にそうであれば、強制執行手続で虚偽の債権を主張して配当を得ようとする行為は、強制執行妨害罪、刑法九十六条の二に、破産手続で虚偽の債権を主張して破産財団から配当を得ようとする行為は、詐欺罪、刑法二百四十六条に該当する可能性のある行為です。まして小川氏は、社会正義を実現することを使命とする弁護士であって、さらに二〇一〇年九月二十一日以来、法務大臣の要職にあります。かかる行為が弁護士法上の懲戒事由に当たり、さらに政権全体のスキャンダルにもつながりかねない重大な不祥事であることは明らかです。破産者の破綻によって多くの従業員が職を失い、地域の取引先が重大な損害を被っているのを横目に、弁護士関係会社が共謀して虚偽の債権を届け出て配当をだまし取ろうとしたのであれば、その悪質さは際立っています。破産管財人は、一部であってもこれを容認する結果をもたらすべきではありませんというふうに記載されております。  以上、引用を終わりますけれども、この意見書を受けて、破産管財人の方はまだ認定をしていないということを伺っております。  私は、法務大臣がこのような疑われる行為をしておきながら、それに対する納得のできる御答弁をいまだなさっていないということで、法務大臣として信頼に値する人物ではないということを申し上げさせていただきまして、本日の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  139. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。  東日本大震災から一年経過をいたしました。本当に今なお多くの課題が残されているわけでございますが、その一つが福島の原発事故の賠償問題でございます。本当に福島は大変だなということで、私ども公明党も、先々週、三月十日、全国の県代表を郡山に集めまして、党の大会として、少しでも福島大丈夫なんだよということを示そうと思いましてそういう活動をしたわけでございますけれども、一年たって、本当に福島、また東北、震災地の復興に力を入れようと、そういうふうに決意を固め合ったところでございます。  ただ、やはり岩手や宮城と違って福島は原発事故の賠償が一番大事だなと、福島の復興はこの賠償問題解決なくして本当にないだろうというふうに思っております。  この賠償の案件でございますけれども、百万件を大きく上回るんではないかと。紛争性のある案件も十万件以上に及ぶ可能性があるというような文科省の報告にあるわけで、報道では、賠償対象者は百五十万以上と。あそこは人口二百万ですから、四分の三が賠償対象者というふうに思われるわけでございます。  それを本当に処理をしなきゃいけないということで、原子力損害賠償紛争解決センターというのが昨年の九月からADRとして受付を開始して、そして目標の審理期間は三か月というようなことでスタートしたようでございますが、現状では申立て件数千件を超えているようでございますが、和解に至ったのは数十件程度というふうに承知をしておりますし、また審理期間も目標を達成できていないような状況であるというふうに伺っております。  文科省にお聞きいたしますけれども、この紛争解決センターへの申立て件数、また申立ての結果、和解の成立なのか取下げなのか、また審理期間の状況、この三点について御報告をいただきたいと思います。
  140. 戸谷一夫

    政府参考人戸谷一夫君) 御説明申し上げます。  現在、三月二十一日現在でございますけれども、申立て件数といたしまして、受理いたしましたのが千四百十五件でございます。そのうち、和解として成立いたしましたのが三十件、それから、これまでの累計でございますけれども、取下げの件数が三十件、打切りの件数が十六件という状況でございます。さらに、先ほどの和解に至りました三十件も含めまして、現在、和解案として提示いたしておる案件数はこれまでの累積で七十八件でございます。
  141. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 審理期間はどの程度になっていますか。
  142. 戸谷一夫

    政府参考人戸谷一夫君) 審理期間につきましては、今まだ平均的な数字につきましてはちょっと今私押さえておりませんが、先ほど先生が御指摘されました、当初目的としていました三か月といったところから見ますと、相当時間が要しているということは事実でございます。
  143. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 このADRでの仲介手続、和解、この遅れている原因について文科省はどういうふうに分析をしているのか、御説明をいただきたいと思います。
  144. 戸谷一夫

    政府参考人戸谷一夫君) この紛争解決センターにつきましては、昨年の九月から十二月までの当初の三か月を一つの区切りといたしまして、活動状況報告を公表させていただいております。その中で、今御指摘のございました、和解につきましてなかなか状況が進んでいない原因といたしまして幾つかの点を整理しております。  まず、センター側の事情といたしましては、やはりかなり膨大な件数がある中で、今後いろいろ処理をしていくと、そういう意味から申し上げますと、今後の先例となるといったようなことから、当初の審理におきましてはかなり慎重を期したことというのをセンター側として挙げております。  それから、あと申立ての状況につきましては、本人申立てが申立て件数のうちの約八割ということで、大半が個人の方が必ずしも弁護士さん等々との相談もなく、個人でいろいろ御努力をされて申立てをされているという状況でございまして、そういった中で、その申請書の記載につきましては必ずしも十分ではないといったようなことから、調査等々の事実関係の確認、論点の整理にやはりどうしても時間が掛かるということがございます。  それから、あと東京電力側の事情ということでセンターの方で整理いたしておりますのは、全般的に被害者主張する損害を認めるか否かという点につきまして留保する場合がかなり多いといったようなこととか、それから中間指針、紛争審査会で作っております中間指針につきまして、本来であれば、類型化されていないものでも相当の因果関係があれば賠償の対象となるということでございますけれども、そういった中間指針で必ずしも類型化されていないものについては、その協議に対しまして必ずしも積極的ではないこと、そういったような点が整理されているところでございます。
  145. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そうですね。  それで、そういう報告書の中でも、去年の末現在で、仲介委員が百二十八名、調査官二十八名、和解仲介室職員が三十四名という、そういう体制のようでございますが、この報告書の中でも仲介委員調査官による事実調査に要する時間が予想以上に掛かったという理由も挙げられているわけでございます。  今年の一月に当法務委員会で仙台そして福島に視察にお伺いをし、そして福島県弁護士会からもいろいろお話を伺ったわけでございますが、仲介委員また調査官、弁護士で一生懸命頑張っていただいているわけでございますが、本人申立てで領収書の束をばっと持ってきて、それで調査官がエクセル片手に二日間掛かってまとめていると。弁護士の使い方、使い方というか、それ自体がちょっと余りにも負担が大き過ぎるんではないのか。弁護士でなくてもそういう整理はできるわけであって、人的あるいは物的体制というのは本当に拡充していかないと、もうこれ限界状態になっているんではないのかなと。  文科省にお伺いをしたいんですが、この紛争解決センターの人的体制の拡充についてどのように今取り組んでおいでになるか、御説明をいただきます。
  146. 戸谷一夫

    政府参考人戸谷一夫君) 御指摘の増員、人員の増強の件でございますけれども、調査官の職務につきまして、本来、弁護士さんとしての能力をフルに活用していただくためには、更に事務的なスタッフについて補強を十分していく必要があるということを考えております。  今現在、三月の二十一日に至りまして、事務職員はその後また増強いたしまして、現在四十六名にまで増えておりますが、今後更に、この事務職員につきましては、二十名ないし二十五名程度は七月までには増やしたいというふうに考えております。  それからさらに、仲介委員をお願いをする弁護士の先生方につきましても、現在の百二十七名では先ほどの千四百件以上に上る案件の処理についてはなかなか困難な点もございまして、この点につきましても、最低限数十名以上の弁護士の先生方に更に御協力いただくように今各方面に働きかけをさせていただいているところでございます。
  147. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 最高裁はお見えですか。  要は、今この紛争解決センターへ、法務省もそうでございますが、職員の派遣の要請があれば是非、できる限り御協力いただきたいと思うんですね。  要は、これ、まとまらなければ皆裁判所へ行くわけですね。当委員会の視察でも、震災後、事件数が減ったみたいな、そんな報告が高裁長官からも御説明があったと思いますが、しかしそれはまだ被災の初期の段階であって、この福島の原子力の損害賠償も、ここで、ADRでまとまらなければ一気にがあっと増えていくわけであって、そういうことを考えれば、最高裁も、裁判所もこのADRセンターへの職員の派遣を積極的に考えていただかなければいけないと思いますが、そこで最高裁の御所見を承りたいし、また法務大臣法務省としての御見解をお伺いをしたいと思います。
  148. 安浪亮介

    最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。  紛争解決センターの人的体制の整備につきまして、裁判所もこれに協力する必要があると考えております。  東京事務所が設置されました当初の平成二十三年の八月からは、室長といたしましてベテランの裁判官一名及び書記官一名を、また福島事務所が設置されました平成二十三年の九月には書記官一名を出向させたところでございます。その後も、今年の一月から、東京事務所に書記官一名を追加で出向させております。さらに、本年の四月一日からは、更に東京事務所に書記官二名を出向させる予定でございます。  この間、今申し上げましたとおり、必要な協力をしてまいってきているところでございまして、新しく出向させる者も含めまして、是非有効に活用していただければと考えております。
  149. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 今回の原子力損害は、大変に該当する方が委員指摘されるように多いものでございます。従来の裁判所だけの解決方法しか持たないと、大変な数が言わば司法救済を求めて、裁判所機能しなくなるというようなおそれが現実化するわけでございます。  そうした意味から、原子力損害賠償紛争解決センターを設けて、ここで主体的に解決していただくことによって、この原子力損害に関する紛争をより効率的に、そして多くの方に早期に解決していただこうという趣旨でございます。そうした趣旨に鑑みれば、これから更に紛争解決というものが飛躍的に増えると思いますが、そうした中で、これをしっかりと受け止められる活躍、行動をしていただきたいと、そのように考えております。
  150. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それで、先ほど八割方が本人申立てだという話でございますが、やはり本人じゃなくて、申立人代理人が整理して、証拠もきちっと、主張も整理し、証拠も整理して申し立てるというのが、これが一番本当に大事だなというふうに思うわけであります。  そんな中で、この間、先ほどの視察でお伺いした福島弁護士会、原子力発電所事故被害者救済支援センターを設けるなどして、そういう体制を整備して、無料で法律相談したり、あるいは安価に代理人に依頼できるような、そういうものを用意をしておいでになりました。また、弁護団をつくろうという、そういうような動きもあるというふうに承知をしております。  ただ、委員派遣の聞き取りの段階で弁護士の先生から伺ったんですが、被災者の間に、お金を払ってまで弁護士に依頼することへのすごい抵抗感があると。だって、我々は被害者だよと、知らないうちに放射能で、事故でやられてしまって、何でこの上金払って弁護士に支払をしなきゃいけないんだと、こういうようなことなんですね。  もちろん、ADRの方では、今月の十四日に弁護士費用についての賠償基準を公表して、和解金額の三%を目安に東電に負担させるというふうなことになったようでございますが、ある意味じゃ、交通事故は大体判決文の中でも例えば一割とか、そんなの出ますわね、そんなことがようやく整ってきたのかなと思いますが。  ここでお聞きしたいのは、大臣、所信の中で、国民にとってより身近でより利用しやすい司法を目指した司法制度改革は各制度の実施段階に入っていますと、今後は、その運用状況を見定めながら、さらに制度の成熟に向け努力してまいりますというふうに述べられているわけでございますが、今の八割本人申立てというのは、どう見ても、国民にとってより身近で利用しやすい司法という、そういう司法制度改革の理念と、浸透していないというか逆を行っているといいますか、理念と現実にギャップが余りにもあるんではないのかなというふうに思わざるを得ないわけでございますけれども、司法制度改革を推進してきた法務省責任者である法務大臣は今この点をどのように考えるか、見解を承りたいと思います。
  151. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) このいわゆる原子力損害賠償紛争解決センターそのものが非常に多くの紛争を解決しようという趣旨で設けられておるわけでございますが、八〇%が本人の申立てと、弁護士を委任していないということでございますが、恐らく、まだ数は少ないですけれども、これは紛争当事者の数が百万とか百五十万というようなことになりますと、弁護士の数からいって、とても弁護士が対応できる数ではないと思うんですね。  ですから、私としては、弁護士に依頼してというよりも、本人がこの紛争センターに来て、そこで弁護士が後見役として、言わば代理人として付いてくるのと同じぐらいの質の申立てになるように誘導して、それでいい解決ができればいいのかなと。ですから、弁護士を代理人で立てないことによる不利益というものがないような形で、その申立人の意見なり実態なりを把握して、そして適正な和解ができるような、そういう運用をすることの方が私はいいのかなと。  やはり、これは紛争そのものが巨大な紛争になるのでとても今の司法解決手段では応じ切れないという、そうした趣旨からすると、私は、弁護士がいないということがこの紛争解決センターの趣旨に反しているというのではなくて、むしろいなくてもどんどんいい解決ができるんだというような方向に持っていきたいなというふうにも思っております。  それからもう一つは、この後、法テラスの議員の皆様の御提案による法案ができますれば、今度は法テラスの方で、司法手段だけで、裁判所だけでなくてADRも法テラスの扶助の対象になります。そうすると、この紛争解決センターもこれからは法テラスの扶助の対象になりますので、そうした面からも被災者への法的なアドバイスというものが充実するのかなというふうにも思っておりまして、この後の審議におきましても、その法案の成立に期待しておるところでございます。
  152. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 何か問いをもって問いに答えたような、そんな気もしますけれども。  そこで、このADRの和解がなかなか成立しないということでございますが、これ、やはり和解ですから、当然申立てと相手側、両方の合意がなければいけないわけでございます。  原子力損害賠償支援機構とそれから東京電力が作成した特別事業計画、去年の十一月四日、経産大臣認定。これは、紛争処理の迅速化に積極的に貢献するため、提示される和解案については東電としてこれを尊重することとするというふうに書かれているわけでございます。ただ、先ほどの文科省の活動状況報告書では、東電側の原因として、財物価値喪失等や中間指針に具体的記載のない損害の賠償請求につき和解協議に消極的、かつ事件全般について認否留保が多いというような指摘がなされているところでございます。  もちろん、和解に至ったところもあるわけでございますが、それはきちっと評価したいと思っておりますが、しかし、先ほど来から言っているように、本人申立てが八割を占めていると、こういう状況だと途中で諦めてしまう被災者も出かねないなというふうに思っておりまして、東電は生活費が続かない被災者を兵糧攻めにして、生活費に窮した被災者が譲歩してくれることを待っているんではないかと、こういうような指摘も実はあるわけでございます。  そういう動き、そういう指摘もあるわけでございまして、東電側の態度についても今後も注意深く見守っていく必要があろうかと思っておりますが、これはやはり和解案尊重を遵守させるために指導監督を徹底していくべきであると思いますが、監督官庁である経産省からも、その辺の決意を伺いたいと思います。
  153. 糟谷敏秀

    政府参考人糟谷敏秀君) 委員指摘のように、東京電力は、昨年の緊急特別事業計画において、五つのお約束の一つとして和解仲介案の尊重というのを掲げております。私どもとしまして、この約束をたがえるようなことがあってはならないというふうに考えております。  それからまた、先ほどの報告にもありましたように、協議過程中において東京電力が答弁書の認否留保が多いといった指摘がございます。これにつきまして、原子力損害賠償円滑化会議というのを毎月やっておりまして、これは関係省庁、それから紛争解決センター、それから東電も入って定期的に現状を確認をし、円滑化のための対策を議論する会議でありますが、この二月の会議におきましてこういう指摘を受けまして、東京電力が指針外の損害も含めて相当因果関係が認められる損害を賠償するという姿勢を更に明確に示すこと、それからまた、被害者の実情に沿って主体的に親身、親切な賠償を徹底すること、それから、迅速な審理を促進するために答弁書等で早期に認否するなど仲介委員による論点整理などについて協力すること、こういったことを東京電力を含めて確認をしたところでございます。  これで終わるとは決して思っておりませんで、今後とも迅速かつ円滑な和解それから賠償が進められますように、経済産業省といたしましても一層しっかりと指導監督してまいりたいと考えております。
  154. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そこで、法務大臣、先ほどの答弁の中で若干出てまいりましたが、この審議の後、いわゆる法テラス特措法、衆議院から送られてまいりましたので審議されることになるわけでございますが、私も、やはりこの被災者救済のために、本当に身近で利用しやすいという制度をつくらなきゃいけないと。  二月七日にも予算委員会でも質問させていただきましたし、やはり資力要件、やっぱりこれ取っ払わないと、避難所にいてあなたは保険金もらいましたかもらっていませんかみたいな、いわゆる法律相談できるかどうかと差になってみたり、あるいはこのADRも活用できないという、そういうようなところ、やっぱり特例を認めて、特別措置法を作る必要があるなと、そんなふうに主張をさせていただきましたし、大臣からは検討していきたいと、そのとき、二月七日段階で御答弁をいただいたわけでございます。  衆議院で全会一致で送ってきたわけでございますが、参議院でもこれを全会一致で通したいなと思っておりますが、これでき上がった段階で、法務省としても是非、法テラスによる被災者法律援助事業、後押しをしていただきたいと思いますけれども、大臣の御所見をお伺いをしたいと思います。
  155. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) やはり、今回のこの震災あるいは原発事故に対する復旧復興というものは、これは国を挙げて全力で取り組むべきことでございまして、法務省としてもその姿勢でございます。そして、法務省としましてそれを具体化できる大きな柱の一つがこの法テラスの面でございますので、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。
  156. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そこで、法テラスを中心にちょっとお話をお伺いをしたいと思いますけれども。  私たち、一月の委員派遣で仙台の法テラスも行かせていただきました。震災対応の説明を受けたわけでございますけれども、被災地の出張所の話も説明がございましたし、また情報提供業務として、日弁連等との共催での電話相談、あるいは震災法テラスダイヤルの開設、コールセンターへ行ったわけでございますけれども、また実例QアンドAとか一冊ずつもらったわけでございますが、また避難所での巡回・出張相談、そういうふうに実施してきたと。本当に努力していただいているなというのが実感でございました。  こういう法テラスによる一連の被災者支援の取組について、法務大臣はどういうふうに評価されているのかお伺いしたいと思います。
  157. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 法務省としてもしっかり取り組みたいということでございますし、また取り組むところには十分な支援をしたいということでございます。これまでも法テラス、出張所等で御努力いただきましたこと、大変深く感謝いたしております。
  158. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 この後審議される東日本大震災に係る特別措置法、あるわけでございますけれども、今後の災害、首都直下七〇%みたいなことを言われている、あるいは西日本、三連動地震だと。あるいは台風だって場合によっては大洪水あったり、去年の台風十二号、十五号でも大きな災害に遭っている。やっぱりそこには法的に処理をしなきゃいけないことがいっぱいあるだろう。また、過疎地であったりしてそもそも弁護士さんがいないというか、専門職種の人が余りいないという地域になるわけでございますけれども、やはり災害対応の枠組みというもの、今回は東日本大震災でございますけれども、やっぱりそういうものを用意して、用意って、災害の用意って、でも、それは一つのインフラとしてやっぱりつくって、そういう枠組みを確立しておく必要があるんではないかと思うわけですよ。  嫌ですよ、大災害来るのは。だけど、やっぱりそれにしっかり対応できるようにしておかないと、毎回毎回、これ一年遅れですから、この特別措置法だって。用意しておけばもっともっと、ああ、ADRも使えるんだなと、弁護士さんに言えばできるんだなとかなってくるわけであって、是非そんな観点で、法テラスによる、この東日本だけじゃなくて災害対応というものをつくっておくべきではないかと思いますが、法務大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。
  159. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 確かに今回の経験を踏まえて、今後の災害に備えておくということは大変重要であるとも思っております。  ただ、この法テラスの民事法律扶助というのは、やっぱり理念そのものが、経済力がないために法的な救済を自ら求めることができない人に対して救済の道を開くというのがこの制度趣旨でございます。そうすると、今回は災害対策という面に重きを置いてその資力要件というものを取り外したわけでございますので、一般の法律扶助業務について資力要件を取り外すという議論ではなくて、やはり一つの災害対策だと思うのでございますね。ですから、災害対策の面からやはり今回のような措置を言わば基本法として残しておいて、あと地域指定を政令で行えばいいとかいう弾力的な運用というものは当然あってもいいかなとも思います。  法律扶助の精神と災害対策という面の必要性というものの兼ね合いから、これからその点を踏まえて議論をしていきたいと、検討していきたいというふうに思います。
  160. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 是非前向きに検討をしていただきたいなと思います。  もちろん、去年の秋からといいますか、本来であれば十二月にこの特措法を作ってしかるべきでございましたけれども、結果として、与野党のいろんな折衝の中で一年を超えてしまうわけでございまして、やはりその間の被災者思い考えた場合、この程度は準備しておいてもいいんではないのかなというふうに思うところでございます。  今、この法テラスがクローズアップされておりますが、これは平成十六年の六月に総合法律支援法が成立して法テラスという形でスタートするわけでございますけれども、この日本司法支援センターの中ではいろんな業務をやっているわけですね。情報提供、あるいは今話題にしております民事法律扶助、それから国選弁護もやっている、あるいは司法過疎対策、あるいは犯罪被害者支援ということもその業務の中でやっているわけでございます。  小川大臣もそうでしょうけれども、支援センターができる前は、例えば国選弁護というのは最高裁の予算でしたよね。その中で弁護士さんにお願いするについて、国選弁護料は幾らだとか安過ぎるとか、いろんな事件が起きたりしましたし、民事法律扶助も、弁護士会で贖罪寄附とかそういうのを集めながら、法務省から少しお金入れてもらってというようなことで我々は認識をしていたわけであります。  もっともっと、今、司法制度改革の中で、事前規制型の社会から事後救済型社会にしていこう、そうしたら、先ほど大臣の所信であったように、より身近に法的なアクセスポイントといいますか、そういうのをつくっていかなきゃいけない。こういう観点で、一括して総合法律支援という発想で支援センターをつくったというふうに私は承知をしておりますが、そもそもこの民事法律扶助制度、その支援センターの前、これ、どういうような沿革といいますか、ちょっとその辺、御説明をいただきたいと思いますが。
  161. 小川秀樹

    政府参考人小川秀樹君) お答えいたします。  民事法律扶助制度は、民事紛争の当事者が資力の乏しい場合であっても民事裁判などにおいて自己の正当な権利を実現することができるようにするため、弁護士費用などの立替えの援助を行うものでございます。  この民事法律扶助事業は昭和二十七年から財団法人法律扶助協会が実施しておりまして、国は昭和三十三年度から同財団に補助金を交付するということでございました。しかし、組織的、財政的基盤に弱点があったことから、平成十二年に民事法律扶助法が制定され、さらに、司法制度改革審議会の中で、民事法律扶助について更に総合的、体系的な検討を加えて一層充実を図るべきであるという御提言をいただいたわけでございます。  この提言を受けまして、先ほど来お話ございました総合法律支援法におきまして、民事法律扶助事業の適切な整備及び発展が図られなければならない旨の規定が設けられ、国としても総合法律支援の実施及び体制の整備に関する施策を総合的に策定し実施する責務を負うに至ったものでございます。  法テラスにおきまして、平成十八年十月の開業以来、法律扶助協会の業務を引き継いで、現在、民事法律扶助事業を実施しているところでございます。
  162. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 だから、要は、今まで、国選弁護もそうだし民事法律扶助も、長い歴史の中でやってきたものをこの日本司法支援センターでまとめて、さらに情報提供とか犯罪被害者支援であるとか、そういうこともやってきたというのが私たちの認識であるわけでございます。  この日本司法支援センター、これはもちろん法人格あると思いますけれども、会計処理も何かいろいろ、独立行政法人通則法の準用といいますか、そういうこともあるようでございますが、いわゆる今までの、先ほど昭和二十七年ですか、そういう歴史を踏まえて、いわゆる独立行政法人とこの日本司法支援センターとの差異といいますか、特殊性というか、どういうことに理解したらいいでしょうか。
  163. 小川秀樹

    政府参考人小川秀樹君) お答えいたします。  結論から申しますと、法テラスはその成り立ちが独立行政法人とは異なっておりまして、公的資金を受け入れて業務を行う関係で、独立行政法人の管理手法を利用し、条文なども準用してございますが、独立行政法人そのものではございません。  独立行政法人制度とは、各府省の行政活動から政策の実施部門のうち一定の事務事業について、あるいは特殊法人などが行っていた事務事業について、これを担当する機関独立の法人格を与えて業務の質の向上や活性化、効率性の向上などなどを図る、行政を効率化することを目的とするものでございます。  これに対しまして、法テラスが行っております業務は、元々司法制度改革の中で、国の機関が行っていたものが国の機関が行うのが必ずしも適当でないとされた業務、これは国選弁護でございますし、民間の法人が行っていたが当該法人が行っていたのでは十分な遂行が期待できないとされた業務、これは民事法律扶助でございます、こういった業務を効率的、効果的に行うために、独立行政法人の仕組みを利用した独立行政法人とは異なる組織形態の法人でございます。  また、法テラスの業務は司法に密接に関係することから、その業務運営に司法権の担い手である最高裁判所が適切に関与する仕組みを採用するなど、その意味でも通常の独立行政法人とは異なるものでございます。  以上でございます。
  164. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 確かに、例えば個人破産する場合、破産申立て費用がないよと、立て替えて民事法律扶助。じゃ、その立替え費用、回収するといったってなかなか難しいなと。さらに、その立替え費用をもって破産申立てといったら、司法支援センターの目的にも反するなというようなことがあるわけで、やっぱりそういう債権にも随分差があるんだろうなと私は理解をするものでございます。  また一方で、民間でも、民間といいますか、弁護士さんも弁護士法人をつくるわけですね。この支援センター、大体話で分かったんですが、民間の弁護士法人とこの支援センターとの差異というものはどういうふうに理解をしていけばいいでしょうか。
  165. 小川秀樹

    政府参考人小川秀樹君) お答えいたします。  弁護士法人は、弁護士を社員として弁護士業務を行うことを目的として設立された法人でございまして、その制度趣旨は、あくまで弁護士業務の共同化、専門化、総合化などを促進し、その基盤を拡大強化してサービスの質を向上させ、国民の利便性の一層の向上を図るというものでございます。したがいまして、弁護士法人の活動内容は、個々の弁護士法人によってもちろん異なる点はございますが、基本的には一般の弁護士の活動内容と相違はないということでございます。  弁護士法人の性質上、利益の配当もございますし、業務運営に当たりましては経営維持の観点も当然に考慮される上、法人として多額の債権、これを、特に資力の乏しい顧客に対する多額の債権を抱えるという事態はおよそ想定することは難しいだろうというふうに思っております。  これに対しまして、法テラスは、もとより弁護士業務自体を行う法人ではございませんで、先ほど来出ております民事法律扶助事業を始めとする総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的とする法人でございます。  その意味で、趣旨、業務内容等について差異があるということでございます。以上でございます。
  166. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 この後、この支援センターの特別措置法が審議されるわけでございますが、当局、法務省も、また最高裁も含めて、しっかりこの趣旨を体して後押しをお願いしたいなということを申し上げて、質問を終わります。
  167. 桜内文城

    ○桜内文城君 みんなの党の桜内文城でございます。  本日は、大臣の所信に対する質疑を幾つかさせていただきます。  まず最初に、法曹養成制度について、大臣も御検討をされるということをおっしゃっていらっしゃいます。法曹の養成に関するフォーラムで今検討を行っていらっしゃるとのことなんですけれども、現状、耳にするところからいたしますと、ロースクールの志願者が激減している現状があります。そういった意味でいえば、時間掛けて検討をと言っている場合ではもうなくなってきているんじゃないかと。将来の法曹の確保、そして質を高めていくということを考えていくと、もう検討はさっさとけりを付けて、もう制度改革、抜本的に当初の目的であります大変いい質の法曹をそれなりの数を確保していく、そのような改革が迫られていると思うんですけれども、そのスケジュール感ですとかあるいは方向性等について、今どんな感じでお考えなのか、お聞かせください。
  168. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) やはり質のいい法曹を広く輩出するという制度であってほしいわけでございますし、またそういう理念でロースクール制度を設けたわけでございますが、委員指摘のように志願者が減っているというのも事実でございます。  また、一方で、ロースクールを卒業して司法試験に受かる人の数も、制度設計では七割、八割のはずだったのが、到底その率に及ばないと。さらには、司法修習を終えた後、制度設計では三千人が法曹として輩出されるという設計でありましたが、二千人でしかないと。その二千人という現実の中でも、しかし、二千人でなお過剰感がある、研修所を出て弁護士資格取っても所属事務所がすぐには決まらないというような状況があるということで、大変に本来の目指した制度設計がそのままの形でうまく機能していない、でき上がっていないという現状がございます。その様々な点についてしっかり検討しようというふうに考えております。  まず、どこから説明するかというと難しいんですが、出口のところから言いますと、現実に、三千人を目指したが、今現状二千人しかいないと。ただ、これは制度設計においては、弁護士がそもそも司法分野だけでなくて、企業とか公務員とか様々な活動範囲というものを広げることによって三千人にしていこうという理念であったわけでございますが、どうもその幅広い活動範囲を広げるという部分がほとんどうまくいっていないという現状がございました。そうした点も踏まえて、この法曹養成制度をしっかり議論していこうということで法曹養成フォーラムを構成しておるわけでございますが、そうした意味で、経済産業省それから総務省等にも参加していただいて、いい法曹を輩出する、そしていい法曹が幅広く社会の様々な分野で活躍していただくという面からの議論を進めておるところでございます。  もちろんこの議論は早ければ早いほどいいわけでございますが、やはり関係する分野等も大きいものでございますし、また、制度というものを一度つくって、またすぐつくり直すということには余り好ましくございませんので、しっかりとした議論を踏まえて新たな法曹養成制度というものを構築したいということで、今慎重な議論を行っておるところでございます。ただ、議論ばかり時間が掛かってもしようがありませんが、フォーラムの方では論点整理が終わって、六月から具体的なまとめの議論を行っていくということでございますので、その議論の推移を、しっかりとした議論をしていただいていい点をいただきたいと、このように考えております。
  169. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。  こういった司法制度改革あるいは法曹養成制度改革に限らず、やはりいろんな利害関係者が当然いるわけでありまして、全部の意見を聞いていればとても改革ができない。特に、似たような事例で申しますと、やはり、例えば同じプロフェッショナルといいますか専門家という意味でいえば、医師の養成とか、今、医学部の定員というところで、まず入口のところで数を絞ってやっているわけです。それがいいかどうか、私は余り良くないと思うんですけれども、ただ一方で、医師国家試験、今年はどうやら何か合格率が九割超えたとのことでもあります。  やはり、ロースクールに対する志願者が激減しているというのは、三年使ってもあるいは二年使っても合格の見込みが大変薄いと。そうなると、その分時間も、若いころの時間も、またお金も普通の学部の学費よりも高いわけですから、そういったリスクに見合ったリターンがちゃんと得られるかというところが、学生さんが法曹を志望するのを諦める状況になっている大きな原因じゃないかなと私は考えるわけですけれども、もちろん、修習生の方々が例の貸費制であるとか給費制であるとか、そういったこともおっしゃいますけれども、やはり問題の本質は、私自身、これは一つ意見でしかないですけれども、やはり新規参入する際の、新しい人がこの業界に入っていく際の、その新規参入のハードルの高さといいますか、そこにあるんじゃないのかなというふうに考えております。  もちろん、三千人でも多過ぎたというような反省もあるかもしれませんけれども、それは現在、既に法曹として仕事をやっていらっしゃる人たちの論理であって、これから法曹になってみたいと、勉強をやりたいなと思っている人たちからすれば、一定のクオリティーさえ確保できれば、それだけ一生懸命勉強すれば必ず法曹になれるんだという目安がやっぱり立たないというのが、将来に対する希望が見えないという意味法曹への道をむしろ断念する、その大きな障害になっているんじゃないかと私は考えますので、別にこれはロースクールなり法曹養成に限らない話なんですけれども、なるべくならば、これまで既に資格を持っている方とかの既得権益を重視するのではなく、むしろそういった日本社会、別に法曹に限らずいろんなところに既得権益の塊がごろごろ転がっていまして、またこの我々のいる政治の世界もそうなんですけれども、そういった既得権益を一つ一つどけていく、その大きなきっかけになり得る大事な改革ではないかと私は考えております。  ですので、各方面の御意見をしっかりとお聞きになるという大臣の御姿勢も大事だとは思うんですけれども、ここは是非蛮勇を振るっていただいて、日本社会を根底から変えていくと、新規参入に要らぬ障害を設けないというような意気込みで、是非、法務大臣にはここはひとつ頑張っていただきたいなと思っています。  私が尊敬しております元Jリーグのチェアマンやっておられた川淵三郎さんの言葉で、時期尚早と言う者は百年たっても時期尚早と言うと、前例がないと言う者は二百年たっても前例がないと言うと。こういった言葉を残されて、それがいろいろ異論もあったJリーグ発足につながっていったとお聞きしております。  そういった意味でいえば、やはり新しい制度を導入していく、変えていく、特に今このロースクールの制度に変わったこと自体、私は一つの進歩だと思うんですけれども、やはりロースクールに入った以上しっかり勉強すれば、例えばアメリカのロースクールを模倣してつくられた制度だと思うんですけれども、せめてアメリカ並みに、しっかり勉強した学生さんはきちんと法曹資格が取れるというふうにしていけば、むしろそこからいろんな分野に、通常の法曹じゃない公務員であるとか企業内の弁護士であるとか法務担当者であるとか、そういったのもむしろ増えていく。そして、人数が増えることによって、競争していって質のいい人がしっかりした報酬を得ていくというふうにしないと、入口の部分を今のように絞ったままでは、幾ら法曹養成制度、どこをいじろうがなかなか出口が見えないということになろうかと思います。  ちょっと最後は私の意見ばかりでしたけれども、法務大臣の御意見をもう一度お伺いして、この質問は終わりたいと思いますけれども。
  170. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) ロースクール制度に変更しまして、確かに当初の制度設計と違う現状が起きているということでマイナスの部分だけ述べましたが、私は、ロースクール制度ができて、旧来の司法試験では恐らく法曹になれなかったと思われる法学部出身者でない方々が社会人あるいは他学部からロースクールに入って、それで法曹になった方がいらっしゃいます。こうした方々がちょうど出始めて、まさに法曹の現場に出始めて、これから活躍を始めるという場面でございますが、こうした方々が、まさに法学部でない様々な分野から法曹になられた方が、これから社会のいろんな面で活躍するという場面が出てくると思うんですね。そうした場合に、私は、このロースクール制度の変更が良かった面というものが現実化していくんではないかという、そうしたプラスの面も思っております。  そうしたプラスの面がよく、またこれがこれから法曹になろうという若者たち、学生たちに反映して、いい人材が集まってくれればいいなと、そのような希望を抱いております。
  171. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。  次の質問に移ります。  先ほども話題になりました法テラスについて、一般的な点についてお伺いいたします。  具体的には後ほど予定されております特措法の審議の中でお聞きしたいと思うんですが、まず、法テラスの現在の運営費交付金が他の独法と同様に交付されているわけでありますけれども、この運営費交付金、大体年間百五十億円前後とお聞きしておりますけれども、この算定方法を具体的にどんな感じで行っていらっしゃるのか、現状についてお伺いしたいということと、それから、業務を始めてもう既に五年ぐらいたっておりますけれども、直近の財務状況、大まかなところについて御説明いただければと思います。
  172. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) まず、運営費交付金の算出でございますが、これは、新たに始まる年度の予測される事業経費というものの予想額と、それから事業のために必要とされる運営費の予想額というものを算出しまして、その差額を交付金としていただくということでございます。  現状は、平成二十二年度の法テラスの財務諸表によりますと、二十二年度末における資産総額は百七十五億円、負債総額は百七十二億円でございます。また、二十二年度、同じ年度における経常費用は三百二十八億円、経常収益は三百二十七億円でございました。
  173. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。  後ほど、この後の審議の中で、もう少し特措法に関連する部分で質問をさせていただきたいと思います。取りあえず、法テラスは以上で終わりにします。  次に、大臣の所信の中でハーグ条約に関する国内法の整備について触れられております。これは大変大事なことだと私も感じておりますし、たまたま我が党で今年の一月にワシントンに出張で行った際、国務省ですとか上院の担当官なりと意見交換したんですけれども、向こうの方からハーグ条約早くやってよというような要望が出てきておりまして、結構国際的にも関心高いんだなということを感じた次第であります。  これはこれで是非着実に進めていっていただきたいと思うんですけれども、外国との間での関係だけではなくて、実は国内でも子の連れ去りといいますか、そういった事案というものが結構報告されて、報道もされておるところでございます。  私、以前は霞が関で役人やっておったんですけれども、離婚が多い職場というか、ところでもあるんですけれども、なかなか離婚した後に子供に会えなくて困っている元同僚ですとか知人とか結構いるんですね。  特に、男性の場合、協議離婚の際に、親権者の決定の審判において、継続性の原則、これが実際にあるかどうかは別として、最高裁の判例があるわけではないんですけれども、裁判習律といいますか慣行といいますか、要は、まず子供を自分の手元に確保した側が生活を継続すれば、むしろそれが認められると、家庭裁判所での審判上認められるということがあって、要は、御主人が仕事に行っている間に、険悪な関係になった奥さんが子供を連れて実家に帰るなりして、それからもう二度と会えなかったりですとか。その際に、ドメスティック・バイオレンスの、実際にはないにもかかわらず申立てが行われて、泣き寝入りせざるを得なかったという男性の事例もよく報道もされておりますし、実際私の身の回りでもそういった悩みを抱えている人がいらっしゃいます。  そういった意味で、まず国内でのこういった離婚に伴う子の連れ去り事案という意味でお伺いしたいのが、やはり親権者の決定の在り方が、もちろん法務大臣でいらっしゃいますので家庭裁判所の審判がどうこうとなかなか言えない立場とは思うんですけれども、政治家として大臣の見解をお聞きしたいと思っております。  というのは、やはり親権者の決定が、これまでの慣行上は継続性の原則というものにややとらわれているんじゃないかという批判があるところなんですけれども、ここはやはり子との面会交流とかそういった面もきちんと加味していくべきじゃないか。それが去年、民法七百六十六条の改正の趣旨でもあったと思うんですけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。
  174. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 離婚した夫婦の間の子供、子供から見れば両方が親でございますから、片方だけというのはやはり、もう片方によほどの子供にとって悪い事情がなければ、これは本来、子供の幸せのためにも父性、母性両方に触れることが好ましいのだと思いますが、しかし、現実には離婚した夫婦が一緒に住まない限り、子供はどちらかに住まなくてはならないというのが現実でございます。  これで、これをどちらに親権者がなるのか、監護権者をどうするかということは、これはひとえに家庭裁判所が全ての事情を考慮して決めることでありますが、私自身の感想としましては、親権者、監護権者が決まったときにそうでない方の親が、面会交流というものがまだまだ不十分なんではないかと。  私は、子供の幸せのために、親が会いたいという面ももちろんあるでしょうけれども、子供の幸せのために、やはり面会交流というものを今よりももっと利用しやすい、そして広げていくという議論が私はあってしかるべきではないかなというふうに思っております。
  175. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。  是非、面会交流の促進といいますと、これは厚生労働省にもかかわってくることかもしれませんけれども、是非、法務大臣としても力を尽くしていただきたい分野でございます。希望を述べておきます。  そういった意味で、今の民法の上では八百十九条で子の利益というものを重視して親権者を変更するなりも可能な立て付けにはなっております。どこまで制度化すべきなのか、あるいはできるのかということもあろうかとは思うんですけれども、例えば、今言われておるような事案からしますと、面会交流に不熱心な片方の親というものが、事実が積み重なっていった折には子の利益というものを尊重して親権者を変更するですとか、そういったやり方もあろうかと思っております。  具体的な事案に即してということになるのでなかなか制度化というわけにはいかないかもしれませんけれども、面会交流の促進という観点からすれば、そういった取組方も一つの選択肢としてあり得るんじゃないかなと思うんですけれども、これに対しても大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  176. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 親権者の変更はやはり手続的には設けられておるわけでございまして、その手続にのっとって、裁判官がどう判断するかはこれは裁判官判断でございますが、やはり連れ去りがあったかどうか、そうしたことも一つ事情として含めて総合的に判断するものだと思っております。  あと、私の個人的な感想ということで述べさせていただきますと、何で日本は面会交流というものがもっともっと広がっていかないのかなと。私は、つまり面会交流をさせない、つまり親権者、監護権者が面会交流に消極的だという中の一つで、面会交流させたらそのまま連れていかれちゃうんじゃないかというような不安があるからさせないというようなこともあると思うんですね。ですから、やはり面会交流をもっともっと両方が安心して、両方というか、監護権者の方が安心してそれに応じられるような体制づくりとか、そうしたものが、しっかりと検討していくべきだなというふうに思っております。
  177. 桜内文城

    ○桜内文城君 大変前向きな御答弁ありがとうございます。  是非そのような方向で、法務省だけじゃないとは思うんですけれども、政府としても取り組んでいっていただきたい分野でございます。  時間ですので、最後にお伺いしたいのは、現在、法制審で民法の債権関係それから会社法制について審議がされておるということが、所信の中でも触れられていらっしゃいます。  まず一般的に、一般的といいますか、その概要ですね、今どういった審議がなされているのか、内容とそれから今後のスケジュール感、いつごろどういった答申が出て法案化していくですとか、そういった事実関係についてお尋ねいたします。
  178. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 会社法制の方につきましては、昨年十二月七日に会社法制の見直しに関する中間試案の取りまとめが行われまして、これについてのパブリックコメントの手続に付しておるところでございます。  また、債権法部会におきましても、まだ取りまとめには至っておりませんが、どういう要望事項があるのかということを、言わば特に事項を定めないでパブリックコメントをいただいているというような状況でございます。  いずれにしましても、そうした状況で法制審議会で着実に進んではおるところでございますが、これがいつ結論が出るということを具体的にまだ申し上げられるような状況にはなっておらないところでございます。
  179. 桜内文城

    ○桜内文城君 法制審で御審議されているとのことですので、この委員会でそれにとやかく言うような立場では全然ないんですけれども、意見としてちょっとだけ述べておきますと、例えば民法の方ですね、例えば時効についてももちろん見直しといいますか検討がされていると思うんですけれども、私、たまたま過払い金訴訟ですとか貸金業法の改正等の議連にも参加しておるんですけれども、最高裁の判例でほぼ貸金業者から見れば永遠に時効が成立しないような解釈が数年前に最高裁から示されておりまして、さすがにちょっとこれいかがなものかと。もちろん、法解釈論としてはあり得ると思うんですけれども、実際のビジネスとしてやってこられた方々が、いわれのないといいますか、そこまで遡るんですかというような話が結構あるやにお聞きしております。  それで、ある種その業界がもうほぼ消滅したというような状況にもありますし、こういった点の検討は、今申し上げたように長くやっていればいいというものでもなくて、現実の問題も既に起こっている分野もあります。そういった意味では、できるものからなるべく早く改正等に取り組んでいただきたいという希望をお伝えしておきます。  そして、もう一つだけ最後に意見として申し上げておきますけれども、質問ではありません。  その中間報告、会社法制の方ですけれども、若干ざっと拝見したところなんですけれども、印象として言えば大変重要な論点を扱っていらっしゃると思うんですけれども、少しやや各論に入り過ぎているんではないのかなと。といいますのは、取締役会ですとか監査役の監査機能等について触れられているんですけれども、やはりガバナンスといいますか、元々の諮問にありました企業統治ということからしますと、やはり所有者としての株主ですとか、あるいは市場を通じたといいますか、資本市場を通じた規律ですとかそういった、そもそもガバナンスとは何なんだという点もしっかり議論していただいた上で、その大枠の中で各論を位置付けて議論をしていくという方向性も大事なんではないのかなと。  今議論されている内容は、これはこれで非常に重要なことだと思うんですけれども、印象といいますか意見として申し上げておきますと、やはり会社のマネジメントをどう規律していくのかというその根本に立ち返った議論も是非していただければ我々としても勉強になるなというふうに感じておるという点を指摘して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  180. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  法務局の登記等の公開事務に関してお聞きいたします。  いわゆる登記乙号事務と言われるこの事務を市場化テストによる民間競争入札で受託をしていたATGカンパニー、そしてアイエーカンパニーという両社が様々な法律違反を繰り返しているということを再三指摘をしてまいりました。虚偽の法人登記、労働者の同意のない両社間での雇用関係の変更、従業員の標準報酬月額を最低金額に虚偽申告をして年金保険料等をごまかしている、そして労災保険の人数も過少申告、こういった問題を指摘してきたわけですが、労働者の告発を受けまして、一月に両社に対して刑事罰が下っております。  極めて重大だと思いますが、まず、この両社と関係者にどういうような刑事罰が下ったのかお答えください。
  181. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 両社からの報告によりますと、一月三十一日付けで、健康保険及び厚生年金保険の被保険者の報酬月額に関し、真実の金額より低額の金額を記載した虚偽の届出を行ったということによりまして、両社についてそれぞれ罰金五十万円、関与した従業員につきまして一名五十万円、一名は三十万円の罰金刑に処せられたという報告を受けております。
  182. 井上哲士

    ○井上哲士君 厚労省に来ていただいておりますが、この未届けであるとか、そして標準報酬月額の虚偽の届出によって両法違反で罰金五十万という命令が下されたと、こういう例はこれまでにあるんでしょうか。
  183. 今別府敏雄

    政府参考人(今別府敏雄君) お答えいたします。  今、先生がおっしゃいましたような事案について、私どもで承知をするというような仕組みは現在ございません。
  184. 井上哲士

    ○井上哲士君 そういう例があることは承知されていないということでよろしいですか。
  185. 今別府敏雄

    政府参考人(今別府敏雄君) 今御答弁いたしましたように、そういうものを把握をするという仕組みはございませんが、私の方としては承知をしておりません。
  186. 井上哲士

    ○井上哲士君 本当に例のないものなんですね。極めて悪質な事案だということを示しております。こういう会社が、事もあろうに法務省の仕事を受託をして、国民の人権と財産を守る法務局の中で仕事をしているということは本当に問題だと思います。  法務省としては、こういう司法判断をどのように受け止めて、今どういう対処をされているんでしょうか。
  187. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) やはり遺憾なことだと思っております。  今回の事例につきましては、やはり従業員が安定的にその職に従事するという観点からも支障があるのではないかということで思っておりまして、こうした観点から両社に対して、健康保険法及び厚生年金保険法に定める手続の適切な履践をするようにと、そしてまた、社会保険諸法令の遵守を確保するために、社会保険労務士の確認を受けるなどの追加の体制を整備するようにというような指導を行っております。
  188. 井上哲士

    ○井上哲士君 私、最初にこの法務委員会で取り上げたのはもう一年四か月前なんですね。以来、決算委員会も含めまして五回目の質問になります。  この年金保険料のごまかしについては、労働者の給与明細やねんきん定期便という動かぬ証拠も示しまして、それもお渡しをして対応を求めてまいりました。昨年四月には、この登記乙号事務に関する業務上の違法行為が発覚をいたしまして、法務省はこの二つの会社を業務停止して、そしてコンプライアンス体制の構築等を指示をいたしました。その際にも私は、こういう法令遵守がそもそもできていない会社なんだから、入札の資格がなかったんだから、これはもう契約を解除すべきだということも申し上げました。しかし、法務省は改善指示ということにとどめまして、しかも、それへの期限内の回答が不十分だったにもかかわらず、期限を延ばしてやり直しをさせて、結局、契約を継続したわけですね。  内閣府に来ていただいておりますが、あの時点、つまり最初の期限に十分な回答がなかったという時点で契約解除は法的に可能だったと思いますけれども、いかがでしょうか。
  189. 大串博志

    大臣政務官(大串博志君) 個別の事例と申しますよりも、制度上の立て付けでありますけれども、本件に関しては、法務省において二十三年四月及び七月に公共サービス改革法第三十三条の二第六項の規定に基づく業務の一部停止及び同法第二十七条第一項に基づく業務の改善の指示を発出したもの、そういう事案だったというふうに承知しています。  制度の立て付けとしましては、同法二十七条第一項に基づく指示、今申し上げました指示でございますけれども、これに民間事業者が違反した場合には、同法第二十二条第一項第一号の規定により当該事業者との契約を解除することができると、立て付け上はそういうふうになっております。
  190. 井上哲士

    ○井上哲士君 つまり、最初、期限内に十分な回答がなかったわけでありますから、これは違反ということで対応できたはずなんですね。今年二月の官民競争入札の監理委員会の場でも法務省は契約解除ができたんじゃないかと、こういう発言があったというふうに聞いております。私はこの時点でやはり本来は契約解除すべきだったと思います。  厚労省に来ていただいておりますが、厚労省には昨年の三月の時点で労働者の給与明細であるとか、そしてねんきん定期便などの証拠をお渡しをして対応を求めてまいりましたけれども、この間、どういう対応がなされてきたんでしょうか。
  191. 今別府敏雄

    政府参考人(今別府敏雄君) お答え申し上げます。  昨年の五月に事業所があります岡山、東京で一斉に立入検査を実施をいたしました。その後も立入調査、事業所指導等を重ねてまいっておりまして、先般の、先ほどの御指摘のありました略式命令も受けて、今、両事業所の届出をきちんと作成をして提出をするように指導しておりまして、昨日時点で一部届出がなされたという状況でございます。
  192. 井上哲士

    ○井上哲士君 私が資料提供したのは三月九日でありまして、もう一年以上過ぎているわけですね。私、余りにも時間が掛かり過ぎていると思うんです。  法務省は、厚労省が調査中だと、処分も出されていないということを理由に、踏み込んだ対応をずっと先延ばしにしてきたわけですね。事務的ミスか故意なのかなかなか分からないというお話もありましたけれども、今回、略式命令に応じたということですから、虚偽だということを認めているわけですね、業者は。もう去年の九月に告発を受けて、検察は一月末にこういう略式起訴もし、罰金がされました。  なぜこんなに時間が掛かるのかということなんですが、会社の方はきちっとその厚労省の調査に対して適切な協力をちゃんとしてきたんでしょうか。
  193. 今別府敏雄

    政府参考人(今別府敏雄君) 先ほどもお答えをいたしましたように、去年の五月ですね、最初に立入調査をいたしましてから都合十五回ほどやり取りを、立入調査、事業所指導という形でしております。何分複雑な事案でございますので、これ、御承知のように、社会保険の適用につきましては従業員一人一人について確定をしていくという作業でございますので、そこは若干時間が掛かっておるとは思いますけれども、引き続き、今申しましたように、一部届け書が昨日までに出てきておりますので、適正な適用に努めてまいりたいというふうに考えております。
  194. 井上哲士

    ○井上哲士君 その従業員が一体どの会社に勤めているのかということを従業員も分からないし、会社も分からないと。だから、社会保険の関係が本当に分からない、ひどい状態だったわけですね。ですから、これはもう一年以上こういうことで掛かった。厚労省も御苦労だったと思いますが、私は、ちゃんと会社の方がきちっと適切な資料をそろえて出せば、うんと早い時期に解決をしたと思うんですね。  ですから、法務省はあの昨年七月の時点で契約解除をせずに回答期限を延長してやり直したわけですが、そしてその結果、コンプライアンスは改善をされたとして契約を続けました。しかし、元々の昨年四月の法務省のこの改善指示というのは、新たなコンプライアンス体制を構築すること、そして、コンプライアンスに係る取組計画を策定した上で実践、報告を行うことと、こういうふうになっていたんですよ。しかし、今お話がありましたように、五月から十五回も立入検査をしないと状況が分からないと。およそこの会社がこういう年金や健康保険にかかわる法律違反の実態を進んで明らかにして是正をするという姿勢でなかった。だから、ずっと一年間掛かってきたわけですよ。ですから、法務省に対しては、コンプライアンス体制はこうやりましたと、こうやりますという報告を受けていたのに、その間もずっと法律違反を続けていたんです。  ですから、これでなぜ改善されたと言えるのか。改善されていないんですよ。報告書だけ出して、ずっと続けていたんですよ。そうであるならば、元々昨年の段階での改善指示に違反しているんですから、これは私は直ちに解除命令ができる状況だと思いますけれども、なぜそれをやらないんでしょうか。
  195. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) ちょっと端的に質問に答えていないかもしれませんが、今回の罰金になった件は、罰金に処せられたのは今年の一月でございますけれども、その違法行為そのものはそれよりも前でございまして、昨年の四月、七月に発しました法務大臣指示、コンプライアンスを確立するようにという指示の前の出来事でございます。  そうした観点から、この四月及び七月に発したコンプライアンス体制を構築することということに直接に違反した行為があって処罰されたというのではないので、そこのところをちょっとどういうふうに考えるかというところを考えておるところでございます。
  196. 井上哲士

    ○井上哲士君 それは、ずっとこの会社は労働組合にしても労働者に対しても不誠実な態度を取り続けて、そして厚労省の指導にもまともな協力してこなかったんですよ。これ自身が法令遵守に反しているわけですね。それを、その最初の改善指示に対して報告をした後もずっと続けていたんですから、これで何で改善されたなんて言えるのかと。  私は、結局、法務省が委託した業務でこういうことが繰り返されているにもかかわらず、これを認め、業務が表面上できていれば続けさせるということは、こういう法律違反行為に法務省がお墨付きを与えていることになると、こういうことになると思いますが、そういう自覚はございますか。
  197. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 今回、こうした会社が様々な問題を起こしているということは、法務省としても大変に遺憾に思っておるわけでございます。そして、今回こうした件が起きたということを踏まえまして、新たな入札に関する様々な取扱方法を定めまして、過去に処分を受けた者は入札参加資格がないというような方向で今取りまとめを行っておるところでございます。  途中での解約といいますと、途中解約した後、どういうふうに業務を引き継ぐかというような問題がありますので、確かに委員がおっしゃられるようにすぱっとやるのもそれは一つ考え方かもしれませんが、しかし、私どもとしましては、国民が利用するその乙号事務に支障が生じてはならないという観点考えなくてはならないわけでございますので、委員がおっしゃるように気持ちよくすぱっとはなかなかいきにくい面もあるわけでございます。
  198. 井上哲士

    ○井上哲士君 国民が利用する、国民の人権と権利を守る乙号事務のその業務の場でこういう違法行為がずっと横行しているということが一番の問題なんですよ。そこをすぱっといかなかったら法務省に対する信頼なんかないですよ。登記事務に対する国民信頼は地に落ちますよ。だから私は申し上げているんですね。  今、今後入札の改善をすると言われましたけれども、例えば、このATGというのは二〇〇八年度入札から参入をして落札しておりますけれども、様々な不当労働行為で労働組合から告発されました。そうしますと、二〇一〇年度の入札にはもう参加していないんですね。二〇一〇年度の入札からは同じグループのアイエーカンパニーが参加して、多くを落札をしております。この間、この二つの会社に対して批判の声が上がりますと、二〇一〇年度からはやはり同じグループ企業のネットワークという会社が参加しておりますが、この会社は、かつて文科省関連の仕事で落札したけれども、履行体制ができないということで届出を辞退したと。そのことによって東工大とか文科省関係のところからは取引停止処分になっているんですよ。ところが、それは文科省の話だということで、法務省の入札には堂々と参加をしていると。こういうように、グループ内の企業が看板だけを書き換えて入札に参加していく。  様々な問題を起こした業者が排除できない、これはいけないと思いますが、これは改善されるんでしょうか。
  199. 原優

    政府参考人(原優君) 今回の平成二十四年度の入札実施要項案におきましては、委託業務の適正、確実な実施に当たっての基本的要件といたしまして、当該事業者が過去に委託を受けた事業を適正に実施していたということを必須項目としております。この過去に委託を受けた事業を適正に実施していたという要件は、法務省が委託している登記簿等の公開に関する事務に限定しているわけではございませんので、当該事業者が過去に行った全ての委託契約の履行状況評価して入札手続をするということを考えております。  したがいまして、過去に登記簿等の公開に関する事務以外の委託事業に関して問題があったという場合には、その内容いかんによっては、法務省が行いますこの入札の評価委員会におきまして受託事業者となるための必須項目が具備されていないと、こういう判断をされることがあり得るというふうに考えております。
  200. 井上哲士

    ○井上哲士君 問題ある業者が排除できることは必要でありますが、それだけでいいというわけではありません。  国民の財産、権利にかかわる業務で間違いがあってはなりませんし、迅速で良質のサービスが提供される必要があります。元々は実務経験者などを登記所ごとに置くことにしていたのを、〇八年から法務局単位に緩和をしておりますけれども、私どもが司法書士さんから聞きますといろんな問題が起きております。これはやっぱり登記所単位で実務者等を配置をすることが必要と考えますが、この点はどうでしょうか。
  201. 原優

    政府参考人(原優君) 今委員から御指摘いただきましたように、現在の登記簿等の公開に関する事務の委託におきましては、実務経験者又はこれと同等と認められる者を入札単位ごと、法務局単位ごとに配置することとしておりますけれども、平成二十四年度の入札の実施要項案におきましては、公共サービスの質の確保をより一層図るという観点から、各登記所ごとに配置するというふうに見直すことにしております。
  202. 井上哲士

    ○井上哲士君 これは登記乙号事務だけの問題ではないと思うんですね。  安ければいいという姿勢でこの公的な業務を官民競争入札で民間委託を進めてきた。私は、市場化テストそのものが見直されるべきだと思いますが、同時に、民間委託をする場合でも、国が委託した職場でいわゆる官製ワーキングプアが横行するであるとか、労働法規などの法律違反が放置をされるということになりますと、国の仕事でもこういうことなんだからということで、日本の労働条件全体を下げるような役割を果たしてしまうわけですね。  今、様々労働条件の悪化が労働者の暮らしをむしばんでいるときですから、むしろこういう公共サービス改革法に基づいて国が委託をした業務でこそ、いろんな意味で、賃金でも、労働法規を始めとした法令遵守の面でも、全体を底上げするような役割を果たすことが私はむしろ必要だと思いますけれども、内閣府、来ていただいておりますが、この点いかがお考えでしょうか。
  203. 大串博志

    大臣政務官(大串博志君) 今般の公共サービス改革法を通じて対象事業として入札をやっていただいているわけでございます。そういった事業でありまして、民間事業者なんでありますけれども、民間事業者として遵守すべき労働関係法令を含む法令を遵守することは、国の事業を受託している以上、これを徹底して守ってもらうということは当然の責務であると私たちも考えております。
  204. 井上哲士

    ○井上哲士君 これは当然の責務なんですね。  これは実際には、今法務省で起きているように、そういう事業を受託した業者が、年金の標準報酬月額をごまかし、虚偽の報告を出して罰金五十万を受けるというような、あってはならない事態が起きておりますが、これが、この改革法によっては、要するに禁錮以上じゃないと契約解除の条件にならないということを法務省は言って、結局ずっとこれが続いているという事態になっているわけですね。  ですから、問題は、どうこれを担保していくのかと。今、例えば、地方自治体などが発注する工事で、一定の賃金などの労働条件を確保して、それによって地域全体の労働を底上げするというような取組も行われているわけで、私は、賃金だけではなくて、法令遵守の面でもしっかりこういう公的な業務を委託したところに守らせていくということを担保する必要があると思います。  法務省は、一定の要項の改定をするわけでありますが、これ他省庁の業務でも起きている可能性は十分あるわけでありますから、低価格の入札をあおったり、過去に問題を起こした企業とか何の実績もない企業が、とにかく提案書さえ書けば受託できるようなことで、同じような事態を繰り返してはならないと思いますが、全体として、要項の見直しも含めた入札の仕組み全体を見直すことが必要かと思いますが、内閣府、いかがお考えでしょうか。
  205. 大串博志

    大臣政務官(大串博志君) 確かに、入札をすると、で、事業を落札するという関係にあります。その中で、もちろんその業務自体を適正に執行してもらうということは確かでありますけれども、今お話し申し上げましたように、労働関係法令を含む法令全体を遵守してもらう、徹底してもらうということはもう当然のことだというふうに思っています。  そのためには、例えば、今お話もありましたが、同法における対象事業については、当該事業に係る実施要項にその旨を明記することとか、あるいは入札参加事業者から法令を遵守する旨の誓約書を徴取するとか、そういったことが、本件に限らず全体のこととしても考えられるのではないかというふうに思っております。  いずれにしても、同法に基づく対象事業について、引き続き、民間事業者による適正な業務が実施されるよう、私たちとしてもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。
  206. 井上哲士

    ○井上哲士君 この問題は、まさに法務局のこの登記乙号事務への信頼、それから国民の権利にもかかわる問題でありますし、そこで働いてきた、そして現に働いている労働者の皆さんの権利にもかかわる問題であり、さらに全体の労働条件にもかかわっていく問題だと思っております。  それを踏みにじるような事態が現に起きているわけでありますから、ここは法務大臣、厳正な対応をお願いしたいと思いますが、改めて答弁を求めます。
  207. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) かかる行為が繰り返されないよう、きちんとしたコンプライアンス体制を確立するということを指示してありますが、これが確実に実行されるよう、しっかりと見守っていきたいと思っております。
  208. 井上哲士

    ○井上哲士君 繰り返しになりますが、まさに法務省の登記乙号事務の信頼、労働者の権利が懸かっている問題でありまして、私は、繰り返しますが、もうこれは契約解除をすべきだと。そして、そのための体制というのは至急にやれば十分取れるわけでありますから、そういう決断を改めて求めたいと思います。  そのことを申し上げて、質問を終わります。
  209. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     ─────────────
  210. 西田実仁

    委員長西田実仁君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、小川敏夫君が委員を辞任され、その補欠としてツルネンマルテイ君が選任されました。     ─────────────
  211. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  東日本大震災被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案の審査のため、本日の委員会法務大臣官房司法法制部長小川秀樹君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  212. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  213. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 東日本大震災被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案を議題といたします。  提出者衆議院法務委員長代理大口善徳君から趣旨説明を聴取いたします。大口善徳君。
  214. 大口善徳

    衆議院議員(大口善徳君) ただいま議題となりました東日本大震災被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。  昨年三月十一日の東日本大震災から一年が経過しました。しかし、その甚大な被害により、多くの被災者方々はいまだ苦しい状況に置かれています。また、原子力損害賠償紛争解決センターが昨年九月に和解の仲介申立ての受付を開始するなど、被災者方々の法的サービスに対するニーズは高まっています。  このような状況の中、日本司法支援センター、いわゆる法テラス被災地に出張所を設置し、被災者方々が必要な法的サービスを受けることができるように努めておりますが、民事法律扶助制度には資力要件が設けられていることなどにより、一部の被災者方々には必要な支援を円滑に行えないといった状況が生じています。  そこで、この法律案は、東日本大震災被災者方々裁判その他の法による紛争の解決のための手続及び弁護士等のサービスを円滑に利用することができるよう、東日本大震災被災者方々に対する援助のための法テラスの業務の特例を定めるものであり、法律案の内容は次のとおりであります。  まず、支援の対象とする被災者については、東日本大震災に際し災害救助法が適用された東京都以外の市町村の区域に平成二十三年三月十一日において住所、居所、営業所又は事務所を有していた国民又は我が国に住所を有し適法に在留する者をいうものとしております。  次に、東日本大震災法律援助事業として、被災者方々の資力を問わず、民事裁判等手続のほか、裁判外紛争解決手続、行政不服申立て手続であって、被災者を当事者とする東日本大震災に起因する紛争に係るものの準備及び追行を援助の対象とし、このために必要な費用の立替え、法律相談等を行うことができることとしております。  また、東日本大震災法律援助事業として実施した立替金の償還等については、その手続の準備及び追行がされている間は猶予するものとしております。  なお、この法律案は、公布の日から三か月以内で政令で定める日から施行することとしております。施行の日から起算して三年の時限立法としておりますが、失効が予定されている時期における被災者状況によっては延長も当然検討されるべきものと考えているところです。  以上が、本法律案の趣旨及び概要であります。  何とぞ、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
  215. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  216. 桜内文城

    ○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。今回の法テラス特措法について質疑をさせていただきます。  まず一つ目ですけれども、今回の特措法、震災復興関連ということで出てくるのが本来もっと早くすべきものではないかなという意味で、その趣旨には大変賛同するものでありますが、実は今回特措法が出てくる前から、私自身、法テラスに関しましては、この参議院の法務委員会におきましても、ちょっと会計処理が一体どうなのかという問題提起は過去、これまでもさせていただいてきたところでございます。  独立行政法人に準じた枠組みということですので、この説明文によりますと、パンフレットみたいなのがあるんですけれども、「独立行政法人とは、国民生活に欠かせない公共的な事業のうち、国が直接実施する必要はないが、民間に委ねると実施されないおそれがあるものを効率的・効果的に実施するため、」云々というふうな形が書いております。特にこの法テラスはやや特殊でありまして、法務省の所管法人なんですけれども、その業務が単に行政にとどまらず最高裁が設立や運営に関与しているということで、独立行政法人に準拠という形になっておる次第でございます。  先ほどの大臣所信に対する質疑の中で、魚住委員から民事法律扶助等につきまして歴史的な経緯につきましても質問していただきまして、私も大変勉強になったところでありますけれども、要は今回の特措法で、ある種、資力要件の撤廃ですとか、業務が拡大していくわけですよね。それ自体はもちろん震災対応ということでどんどんやっていただくべきことかと思うんですけれども、これまでの五年間、法テラスができての会計処理において、いかにもちょっとこれはどうなんだよという部分があるんですね。  具体的に言いますと、貸倒引当金の積立ての方法なんですけれども、一年以上償還されないものは全て破産更生債権に移し替えて、全額貸倒引当金を積むと。その分費用が掛かるわけですので、何といいますか、財務の健全性といいますか、をきちんと公表しているとは言い難いと。といいますのは、一般の弁護士法人に限らず、いろんな会社というのはもちろん貸倒引当金というのは勘定科目として持っておるわけですけれども、そこに対する会計処理の方法として他に例を見ない非常に特殊なやり方を取っているものですから、少なくとも国が今、大体年間百五十億円前後運営費交付金を投入しておりますし、どんどん業務はやっていただきたいところではあるんですけれども、会計処理という意味においてはしっかりと、他の法人と比べても、民間法人と比べてもちょっとこれ何でかなということがないような会計処理に改めるべきではないかと考えるんですけれども、その辺について御所見を伺います。
  217. 小川秀樹

    政府参考人小川秀樹君) お答えいたします。  御指摘ございましたように、法テラスでは、監査法人の了解の下ではございますが、一年以上償還のなかった債権は破産更生債権等に当たるとして、その全額について貸倒引当金を計上してございます。これは元々、民事法律扶助業務自体が資力の乏しい方に対する立替えということで、立替金の債権を取得するという、そういう性質のものでございます。加えて、担保を取るということはおよそ想定できませんので、その意味では、性質上不良債権を比較的抱えやすく、なおかつ担保はないという性質の法人でございます。  そのような前提で先ほど申しました一年以上償還のなかった債権をこれは実態調査をした結果、この後一年以上償還がなければ実際上も償還がなかったという、その調査を踏まえた上で破産更生債権等に分類をしているということでございまして、今申し上げましたように、民事法律扶助制度、これは立替え償還制という制度を取りますし、性質上やはり債権の相手方の資力が乏しいこと、あるいは担保がないことなどを考慮いたしますと、現在のような会計処理となるのはこれはやむを得ないのではないかというふうに思っております。  弁護士法人が例えば企業会計基準でやったとしても、恐らく実際上同じような債権の分類がされて、しかも担保がございませんので、やはり貸倒引当金として計上せざるを得ないということも十分考えられまして、その意味で、これは当然のことながら監査法人の監査も受けておりますし、私どもの方で考えますところ、法テラスの会計処理自体は適正であるというふうに考えておりまして、現時点において早急に見直す必要性があるとまでは現状から見て言えないのではないかというふうに考えております。  ただ、もっとも、法テラスの財務状況国民に分かりやすく公表するということは、これ当然、会計の適正処理という観点から重要でございますので、その点については、私どもも、今後とも引き続き法テラスに対して必要な助言などをすることによって適正化を図っていきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  218. 桜内文城

    ○桜内文城君 何でこんなことを言っているかといいますと、一年以上償還がなかったものに関しても後々戻ってくるものが幾らかあるという実績値なりを十分法テラスの側で把握していらっしゃるとのことですので、そういった意味でも、そういった実態に即してやっていらっしゃるということをきちんと示していただくというのは必要だと思っております。  ただ、そういうのが全くない中で、貸倒引当金、一年以上未収であればそのまますぐに立てちゃいますということだと、実際に後に返ってくる分もきちんと把握していらっしゃるんであれば、もっと精緻に貸倒引当金の設定というのはできるんではないかという指摘であります。  それともう一つは、監査法人の監査を受けていると、もちろん独法準拠ですので当たり前ではあるんですけれども。私自身、この独法会計基準の設定に関与してきてまいったわけですけれども、なかなかこういった会計処理されることまで基準設定者の側で想定していたかというと、それをちょっと超えているんですね。こういった会計処理というのを認める趣旨で会計基準を作ったわけでもありませんので、そこはいろいろ言い分もあるかと思いますけれども、十分国民に分かりやすく説明を果たしていただく必要はあろうかと思って、そこは指摘しておきます。  それから、次の質問に移ります。  今回の特措法、先ほど申しましたように、その趣旨には大変賛同するところでございますし、これからどんどん業務を被災地において行っていただきたいというふうに思うんですが、ちょっとこれ、ここまではどうかなと思う点があります。というのは、資力要件を撤廃するということで、どれだけお金持ちであっても利用できるようになると。  これは一つのやり方ではあると思うんですけれども、元々の例えば民事法律扶助業務の目的といいますか趣旨というのは、資力の乏しい国民などに対していろんな法律サービスを提供していくことを可能にするということであるとすれば、やや法テラス自体の性質を変えてしまうような今回の規定ではないかなというふうにも考えるわけですけれども、例えば資力要件の緩和とか、そういうのがなぜできなかったのか、その辺について理由を御説明いただければと思います。
  219. 柴山昌彦

    衆議院議員(柴山昌彦君) 議員立法の内容についての御質問ですので、提案者の方から答弁をさせていただきます。  今、桜内委員が御指摘になったように、元々の法テラスについては御指摘のような趣旨に基づきまして資力要件を設けておりました。しかしながら、今回については、やはり震災による混乱によりまして御指摘のような資力要件を判断するための帳票についても紛失してしまったりする場合がございますこと、それからまた、本来、民事扶助制度支援の対象となるべき被災者が、例えば義援金ですとか保険金等の一時金を得たばかりにそういった支援の対象外となることは、いかにもこれは一般の感情から懸け離れているだろうということもありまして、資力要件を撤廃をしたものであります。  東日本大震災が未曽有の大災害であり、特に様々な支援も必要だということを踏まえまして、今回はこの被災者に限定をしまして資力要件を撤廃したということが法テラスの基本的な理念、つまり所得が低い方に対する支援をするということに完全に違背をするということは考えておりません。  ただ、先ほどの御質問であるように、そういった高額所得者に対する会計処理がどうかということについては、これは私は十分検討するに足りる問題提起なのかなというように個人的に考えております。  以上でございます。
  220. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。  次の質問をさせていただきます。  今回、長期借入金の規定が盛り込まれたわけですけれども、元々、先ほど独法のそもそもの成り立ちというかについても読み上げましたけれども、特にこの法テラスのような独立行政法人準拠のものというのは、他の独立行政法人、例えばNEXCOみたいに何か巨大なインフラを造るですとか、そういった投資等を予定していない。逆に言うと、こういった長期借入金ですとか財投機関債とか発行する必要のない法人なわけですけれども、そういった意味で、今回長期借入金の規定が盛り込まれたことについて、法テラスの業務に照らしてやや違和感を覚えるところなんですけれども、これについてわざわざ盛り込まれた理由、それを教えていただければと思います。
  221. 大口善徳

    衆議院議員(大口善徳君) それでは、私の方からお答えさせていただきます。  今、桜内議員から御指摘のあった点でございますけれども、まず、このようなインフラ等の投資以外の場合であっても長期借入金の制度を設けることは法的には可能であると、こういうふうに考えております。現に、例えば独法の日本学生支援機構法に基づく学生への奨学金の貸与業務、また、これも独法の理化学研究所法に基づく研究所での科学技術に関する試験・研究業務の費用については長期の借入金制度が設けられております。  今回の特例法によりまして今後どの程度業務が増加するかということは、正確には見積もることは難しいわけでありますけれども、東日本大震災法律援助事業として、やはり資力の多寡を問わない、そして、問わないで当該支援事業を利用できるということにしたこと、また、本来の支援事業のメニューにないADR、特に原子力賠償紛争解決センター等がございます、そういうADRを明記する、また、行政不服審査に関する支援の事業も行うということでございますので、東日本大震災に起因して被災地での紛争解決のニーズが高まっているということ等に鑑みますと、この法案の施行によって法テラスの財政的な負担は増加することが想定されております。  ただ、私どもは、これは万が一の場合に備えて、念のために例外的な手段として設けさせていただきました。すなわち、予想外に事件数が増え、年度途中で予算が不足し、諸般の事情から補正予算等の手段も講じることができないような万が一の場合に備えて、念のために例外的な手段として長期借入金という資金調達の道も準備したということでございます。  このように、長期借入金の制度はあくまで万が一の場合に備えて設けたものでありますから、必要な予算はまずは通常どおり国で措置をすることが当然と考えております。また、年度途中、予算が不足した場合にも、まずは先に補正予算などの方法を考えるべきであると、こういうふうに考えております。
  222. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。  これで質問、時間なので終えますが、例えば日本学生支援機構ですとか、ある種、貸付けを行うことが主たる業務ですので、そういう金融面の業務を持たない、全然持たないわけじゃないんですけれども、ちょっとやはり違和感は残ります。また、そういった意味でいえば、法テラス自体の性質を変えるような規定ですので、本来であれば委員長提案と言わずしっかりと議論を尽くしていただきたかったなとは思いますが、大変いい法律であるとも思いますので、そこは趣旨には賛同いたします。  以上で終わります。
  223. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今年の一月に法務委員会委員派遣で被災地を訪れた際も大変強い要望があったものでありまして、昨年の臨時国会において、参議院の委員会から提案できないかという各党間の協議もあったわけでありますが、残念ながら間に合いませんでした。今回法案を提案をされた衆議院の法務委員会皆様にまず敬意を表します。成立すれば速やかに施行されるように、法務省始め関係機関にも要望をいたします。  昨年協議されていたものと若干変わっている点がありますので、まずその点について提案者にお聞きしますが、今後も大きな災害は予想されます。今回と同様の法的な支援が求められることになる。その際にも適用できるように、被害者東日本大震災その他の災害発生による特定非常災害の被害者とするという法改正も検討されておりました。今回の法案は、東日本大震災被災者に限定をされ、そのため援助事業も災害被害者援助事業から東日本大震災法律援助事業というふうに議論の途中からは変わったと思うんですが、こういうふうに限定をした理由はどういうことなんでしょうか。
  224. 黒岩宇洋

    衆議院議員(黒岩宇洋君) 井上委員の御質問お答えいたしますが、確かに委員指摘のとおり、本法案の検討段階においては、これも御指摘の特定非常災害特別措置法を改正いたしまして、東日本大震災被災者に限らずに、今後、特定非常災害として指定された災害の被害者も対象に含むとする案も検討されていたところでございます。  しかしながら、その後の検討過程におきまして、喫緊に必要とされているのはこの度の東日本大震災被災者に対する援助であると。その上、今回のような法的支援事業の要否については、私ども立法府としては、今後個々の、別々の災害の被害状況に応じて個別に判断していく必要があるとの判断に至ったことから、今回は対象を東日本大震災被災者に限定したものでございます。
  225. 井上哲士

    ○井上哲士君 急がれたということもあると思うんですが、やはり逆に言えば、今度新しい災害が起きたときにまた時間が掛かってしまうということもあるわけです。  先ほど、魚住委員に対する答弁も法務大臣ありましたけれども、やはりそういうことを考えますと、今後起き得る災害にも対応できるような立法を検討すべきだと思うんですが、検討はしたいと言われていましたが、前向きにこれやるということでいかがでしょうか。
  226. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) 確かに、今回のような大震災のような災害が起きないことを願っているわけですけれども、現実としまして、起きた場合にまた急いでやるよりも、恒久法があれば速やかに対応できるわけでございますので、そうした観点から検討してみたいと思います。
  227. 井上哲士

    ○井上哲士君 是非前向きにお願いをしたいと思います。  一点だけ確認ですが、東日本大震災関連の一連の法律では、名前は東日本大震災被災者になっていますが、長野県北部震災被災者も対象としていると思うんですが、この法案も同様だということで確認してよろしいですか。
  228. 黒岩宇洋

    衆議院議員(黒岩宇洋君) 簡潔にお答えします。  委員の御指摘のとおり、この法案の第二条第二項には「東日本大震災に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域」とありますけれども、これには長野県北部地震の被災者であって災害救助法が適用された地域も含まれる。ですから、結論からすれば、長野県北部地震も対象になるということでございます。
  229. 井上哲士

    ○井上哲士君 この支援の対象者について、これも昨年のまだ協議過程の段階では、資本金若しくは出資の総額が五千万以下の法人、若しくは常時使用する従業員の数が五十人以下の法人に拡大するということも盛り込まれておりました。一月の早い段階での新聞の報道にも、こういうふうに拡大するということが出たということがあって期待をされた方も多いかと思うんですが、今回はこの点は結局盛り込まれておりませんけれども、この理由はどういうことなんでしょうか。
  230. 柴山昌彦

    衆議院議員(柴山昌彦君) 井上委員指摘のように、一定の規模以下の法人について、この恩典を受けられるということも確かに検討いたしました。  ただ、資本金の額ですとか、あるいは従業員の人数といった形式的な基準を設けるということは必ずしも実態にそぐわない。経済的弱者に当たるような法人でしたら、例えば資本金は必ずしも大きくないけれども利益はたくさん上げているというような法人はどうするんだとか、様々な議論が出てきかねないわけです。そういうことを考えるとともに、そもそも法テラスが行う民事扶助制度というのは資力の乏しい自然人の方に支援の手を差し伸べるというような制度でもあったことから、今回はそういった、いわゆる法人、あるいは代理援助の制度ということを対象とはしなかったものであります。  ただ、そうはいっても、会社の、例えば代表取締役が個人的に法律相談を持ちかける、あるいは会社の債務について自らが連帯保証人になっていることから、その連帯保証債務についての相談を通じて必要な範囲で法人の相談というものが付随的に行われるというようなことは十分想定し得るわけでして、こういった形を取ることによって劇的に不都合が生じるというようには私どもは考えておりません。
  231. 井上哲士

    ○井上哲士君 今回、未曽有の災害の中で被災地のいろんな中小零細企業のいろんな被害があったわけですから、今回はこれは盛り込まれなかったわけですが、是非今後の検討としていくことが必要だろうと、こう考えております。  先ほど長期借入金の規定を盛り込んだ理由については答弁がありまして、本来的には補正予算等で対応されるべき問題だということがお話がありました。  阪神・淡路大震災のときにも特別の援助事業が実施をされまして、法律扶助相談でいいますと、三年間で一万三千八百四十三件、代理援助で二千三百二件というふうに聞いておるんですが、今回は被害の規模や範囲も更に大きいわけですけれども、法務省としては、本法案が施行されれば、どの程度の利用になると推定しているのか。そして、そのための予算的な手当ては長期借入金などが必要ないようにきちっと手当てするということでよろしいでしょうか。
  232. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) どの程度の利用件数を見込むかと言われても、今現在ちょっと確たるものがないんでありますが、この法テラスは年度で余りました予算をすぐ戻すということになっておりませんで、たしか四年間で使用できるということになっております。平成二十三年度の既定経費の中で残額がございますので、そのやりくりで当面賄いたいと思っております。
  233. 井上哲士

    ○井上哲士君 当面そういうことなんですが、むしろ今からずっと増えていくことでありますから、そういう際にもきちっと当然手当てをするということでよろしいですね。
  234. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) はい、そのつもりでございます。
  235. 井上哲士

    ○井上哲士君 阪神大震災と比較しても非常に復興は遅れております。原発事故の被害に遭っている福島の県民意識調査では、九割以上の方がまだ復興のめどが立っていないと言われているわけですね。提案者からも、三年後の失効の時期における状況では延長も当然検討されるべきものというふうに言われました。  阪神大震災のときと比較しますと、はるかにこの規模やそして長期化が予想されるということになれば、あらかじめもう少し長い期間を設定した方が良いのではないかと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  236. 大口善徳

    衆議院議員(大口善徳君) 井上議員の御質問お答えをしたいと思います。  この点は与野党協議で非常に議論になったところでございます。  それで、御指摘のように、今回の法テラスの業務の特例については三年間の時限立法と、ただ、復興が遅れている、また福島の状況もあるということからいいますと、この三年ということについてはいろいろ議論もございました。  そういう中で、やはり本法案の主眼が資力要件の撤廃に対するニーズ等について、一つのめどとして三年が経過すればある程度落ち着くのではないかと、こういうことが考えられる。そういう点で、この東日本大震災の被害は甚大でありますので、その失効が予定されている時期における被災者方々状況によってはやっぱり延長も当然検討すべきであると。こういうことで、時限立法ではあっても状況によって延長というのはほかの法案でも多く見られることであります。  ですから、そういう点で、あえてこの趣旨説明で、私どもが、三年の時限立法としておりますが、失効が予定されている時期における被災者状況によっては延長も当然検討されるべきものと考えているところですと、あえてこの趣旨説明に言及をさせていただいたところをよく御理解を賜ればと思っております。
  237. 井上哲士

    ○井上哲士君 終わります。ありがとうございました。
  238. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  東日本大震災被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  239. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、桜内君から発言を求められておりますので、これを許します。桜内文城君。
  240. 桜内文城

    ○桜内文城君 私は、ただいま可決されました東日本大震災被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に対し、民主党・新緑風会、自由民主党・たちあがれ日本・無所属の会、公明党、みんなの党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     東日本大震災被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 日本司法支援センターは、その資本金を政府及び地方公共団体が出資する組織(総合法律支援法第十七条第一項及び第三項)であること及び総合法律支援法第四十八条により準用する独立行政法人通則法第三十七条の規定(企業会計原則)の趣旨に鑑み、適正な会計処理に努めること。  二 東日本大震災法律援助事業においては被災者の資力の状況にかかわらず援助することになったことに鑑み、その運用状況及び日本司法支援センターの財務状況への影響を検証するため、次に掲げる事項を当分の間一年ごとに当委員会に対し報告すること。   1 東日本大震災法律援助事業における訴訟代理援助、書類作成援助及び法律相談援助別の実施件数並びに立替金額   2 東日本大震災法律援助事業における立替金に対する未償還金額の割合(貸倒率)  三 本法第四条に基づく長期借入金については、総合法律支援法第四十七条第五項において日本司法支援センターは長期借入金をすることが禁止されていることの特例措置であることを踏まえ、慎重な運用をすること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  241. 西田実仁

    委員長西田実仁君) ただいま桜内君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  242. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 全会一致と認めます。よって、桜内君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、小川法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。小川法務大臣
  243. 小川敏夫

    国務大臣小川敏夫君) ただいま可決されました東日本大震災被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  244. 西田実仁

    委員長西田実仁君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 西田実仁

    委員長西田実仁君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会