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鈴木寛君
是非そのような
方向でお願い申し上げたいと思いますが、
厚労省にちょっとお尋ねをいたします。
厚労省はいろいろな
医療需要、特に
医師需要の
シミュレーションをしておられます。ただ、大体
医療ニーズが、これから例えば二〇三五年にかけて少なくとも二〇%以上増加するだろうということは、いろんな統計、いろんな学説によっても、これは
厚生省も含めて、大体そういう、少なく見積もっても二〇%増加するであろうと。
その背景として、六十五歳以上
人口が二〇三五年に向けて二七%増える、あるいは七十五歳以上
人口でいえば五七%増えるということでありますし、あるいは
死亡者数、これは
一つの
医療ニーズに相関すると思いますが、これ四二%増えると。あるいは、
がんの罹患の
患者数は二〇%で、
がん関係で亡くなる方の
死亡者数が三八%増。
循環器の
入院が一九%、
脳梗塞の
入院が二八%、
認知症が
入院が三三%それぞれ増加すると、こういう
医療ニーズがあるという予想がございます。
これについては多くの
人たちがそう違わない
認識を持っているわけですが、
供給体制の方がかなりばらついておりまして、
厚生省のを見ますと、これはいわゆる
医療費の問題といわゆる
マンパワーのところがやや混同されているという感じもしないわけでもないわけですけれども、例えば、要するに
合理化によって二〇%ぐらい例えば
在院日数とかを削減できるのでというような
シミュレーションの
前提があるんですけれども、
在院日数が減って、これ大体、思い浮かべていただければいいと思うんですけど、
手術の前後というのは非常に、何というんでしょうか、
ケアが必要になります。そして、退院間近になりますとだんだんだんだんいわゆる
ケアの
必要性が減ってくる、特に
医師については
コメディカルの
皆様方にお任せできる部分が増えてくると、こういうことだと思うんです、基本的には。
そうすると、
在院日数を短期間にするということと、それによって当然
入院費について、
医療費については確かに二〇%減らせるのかもしれませんけれども、
医師を始めとする
専門人材の
必要数というのが直ちにそれが二割減るというわけではございませんで、そこはやはり
手術ないしいろいろな処置をするところにかなり集中的に高度な、特に
医師を始めとする
人材がかかわるわけですから、やっぱりそういうこともきちっと念頭に入れていただきたいということと、それから、やはり
医師不足なぜ起こったかというと、余りにも過酷な
労働条件であります。
過労死認定水準の月八十時間を超える
医師の、特に
勤務医の長時間
労働というものが常態化していると。これ率直に申し上げて、労基署が入ればほとんどアウトと、なかなか
政府はそういう用語では言えませんけれども。これが余りにも広範なので、これを厳正に適用するとそもそも
医療が崩壊してしまうと。こういう同じ
厚生省と
労働省の中で全く矛盾したといいますか、ただこれが余りにも長く続き過ぎてきたので、どこから手を付けていいのかと、こういうことなのであります。
そこで、しかしながら、
医師のそうした献身的な
努力によるというのはもうこれ限界だということで、
自民党政権の後半期から、
舛添大臣のころから大きく
方針転換をされてきたわけであります。これは与野党でのいい議論がなされたと思っておりますが。
やはり、今後きちっとこの際見据えていく上では、
労働基準法というのはきちっと守るんだ。それが、
医師が
裁量労働なのかどうなのかという、こういう
法律論は別に置きまして、やはり
医師にはちゃんと英気を養っていただいて、
体力も気力も十分な状態で
手術に臨んでいただくと、そのことが
医療安全の
観点からも、あるいは
治療効果を上げるという
観点からも必要であります。ですから、私は
解釈論の話をしているわけではありません。
それからもう
一つは、
女性医師の
比率。これ、
女性医師の
比率は二〇三五年になりますと三割弱ぐらいになるわけであります。私は、このことは大変望ましいことだと思います。
患者の
比率も五割を超えるわけでありますから、
女性の
方々がですね。そういう中で
医師、
医療者の側もまさに
男女共同でいろいろな
診療科で参画されるということは大変望ましいことだと思います。しかし結局
女性医師ということになりますと、当然出産や育児というものをきちっと織り込んで、そして
女性医師がステージに応じて働ける時間というものをちゃんと考慮に入れたやはり
需要見通し、あるいは
供給見通しですね、ということをしていただきたいというふうに思います。
それからもう
一つは、これまでは基本的にお
医者さんというのは亡くなるまで働くと。こういう
前提でありますけど、やはりさすがに、まず一般的な仕事というのは六十歳までが現役とされていて、もちろんその後、
健康相談とかいろいろな
健康教室のそういうことに従事していただくということは大変望ましいことでありますけれども、やはり
メスは、もちろん例外はあります、しかし
メスは基本的に置いていただくと。そして、後進の
指導や
病院の管理とかやっぱりそういうことに向かっていただく、あるいは
聴診器は置いていただくということが、これも
患者の
サイドといいますか、お
医者さんにかかる
サイドからしますと、であります。そうしますと、やっぱり六十歳以上の
医師数というのはこれから非常に増えていくわけであります。そういうこともきちっとカウントをしていただきたいと思いますし。
それからもう
一つは、我が国は
医療イノベーションということで、
ライフイノベーションと
グリーンイノベーションをまさに
国家戦略で掲げているわけです。
地域医療人材の
不足も深刻でありますけど、それ以上に深刻なのはまさに
研究医療人材、これが大変に枯渇をしている。二、三十年前は
東京大学医学部の約四分の一は
研究に進みましたけれども、今は一人かゼロか数人かと、こういう
状況であります。
アメリカは一方で一年間に約千人ぐらい
研究分野に行くわけですね。そういう中で、もう
臨床研究の
論文数も減っているし、もちろん基礎も減っているしと、こういうことであります。じゃ、誰が
医療イノベーションを担うのかといったときに、大変お寒い限りであります。こうしたことは
東大の前の
医学部長の
清水孝雄先生なんかもおっしゃっておられますが、まさに
研究医療人材。
それから、私は、この
医師不足というのは
日本だけの
課題ではございません。特にこれから
高齢化をいたします中国を始め
アジアの国においては大変な
医療ニーズあります。あるいはインドあるいは東
南アジア、
南アジアに参りますと、まだまだその
医療体制自体がきちっと整ってないということで、私は、
日本の
医師の能力というのはこれは世界一ですから、こうした人をむしろ世界の
医療水準を引き上げることで貢献することでもって
国際社会において名誉ある地位を占めるというのは、これは
経済成長戦略のみならず
国家戦略、
外交戦略、あるいは
安全保障戦略としても重要だと、このように思っておりまして、
是非、
国際医療人材、こうしたことも考えていただきたいと思います。
そして、何よりも今回分かったことは、いつどこで何どき今回の三月十一日のような大
災害が起こらないとも限らない、そういったことがいろんなところで予測されているわけです。今回、本当に
大学病院だとかあるいは公的な
病院が協力をしていただきました。やはり
オールジャパンでこうしたことを想定して、そして、一旦こうした
災害がありますと、かなりその復旧に
最低でも五年とか十年とか掛かると。そうすると、その分をトータルとして見積もっておかないと、今度どこかで何かあったときに、またどうやってその
医師を、
医療者を提供するんでしょうかというようなことも含めて、
医師の
需給の
見通しというものを、もう一度、震災というものを踏まえて、そして
国家戦略というものを踏まえて、あるいは年齢あるいは
男女ということを踏まえて、それから、今まで
オールジャパンのことを言ってきましたが、この
分野、よくよく見てみますと、西
日本は割と足りているけれども、特にやっぱり東
日本が足らないということであります。特に
東北はそういうことであります。
それから、
関東圏におきましても、これは
日本政策投資銀行が算出をした調査がございますけれども、二〇〇五年に比した二〇二五年、千人当たりの
医師数の
増減割合というのを見ますと、東京はこれからマイナス二〇・〇四%、
神奈川県は二一・四六%、千葉県は二〇・二六、埼玉県は二〇・三一。つまり、なぜこうなるかというと、当たり前でありまして、
関東圏において、
後期高齢者、この言葉は余り使いませんが、七十五歳以上
人口あるいは六十五歳以上
人口が急速に増えていくということでございます。
神奈川県もまさに
高齢化、余りにも急速な
高齢化ということに大変悩んでおられるという
お話を先般も知事さんがされていましたけれども、こうしたことも考えて、
東西バランスなども考えたもう一度
医療需給見通しというものを立てていただきたい。
これ、結局これを見誤りまして、将来、十年後、二十年後、三十年後に、
医師養成というのは
最低でも十年掛かります、あのときミスカリキュレート、要は推定を誤っていたと、結果、本当に必要だといったときに、お金はそれは直ちに増やしたり減らしたりできますけれども、
人材というのは直ちに増やしたり減らしたりできません。そういう
意味では、きちっと、まさに今回は
想定外だったということは言えないわけでありますから、きちっといろいろなケースを想定して、そして
国民の命を守ると。
これ、ちょうど我々の世代が六十五歳とか七十五歳になるころに掛かっていく問題なんですけれども、今このまま行きますと、例えば
関東圏など、もちろん
東北はもう既に大変ですが、
関東圏などの私
たちのジェネレーションはどうなるかというと、病気になって
長期療養になってもお
医者さんに診てもらえないと。むしろ亡くなってから死亡診断書書いて初めてお
医者さんが来てくれると、こういう
状況が言われているわけであります。
あのときにきちっと
見通しをしっかり立てておけばよかったということで二十年後、三十年後に悔やむことのないように、
是非、この辺りしっかりと、常にこのエビデンスというものを示した上で、
国民の皆さんに
説明の付くこうした
シミュレーション、きちっとしていただきたいと思いますが、
厚生労働省、いかがでしょうか。