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中村博彦君
ODA調査第四班について
報告いたします。
第四班は、去る一月七日から一月十五日までの九日間、ミャンマー、ラオス及びタイの三か国に派遣されました。
派遣議員は、石橋
通宏議員、二之湯智
議員、松田公太
議員、
山下芳生議員、そして私、
団長を務めさせていただきました
中村博彦の五名でございます。
第四班は、
訪問した
各国において、
東日本大震災に対する温かい御
支援に対し、心から
感謝の気持ちを申し上げるとともに、政府、議会、政党
関係の
要人や、在外公館、JICA事務所、
NGO関係者などと率直な
意見交換を行い、
現場主義を基本に、
我が国ODA案件の現状と
課題について
調査をしてまいりました。
まず、ミャンマーでは、民主化の進展をじかに見聞しつつ、
我が国ODAの本格的再開に向けていかに環境を整えていくかを中心に
調査を進めました。
首都ネピドーで
会談したテイン・セイン
大統領からは、三権分立の下、民主化の動きを後退させず、前に向かって進んでいく、まずは農業
開発を優先し、徐々に工業化を進めていくことを目指している、経済
開発、
貧困削減を進めていくためにも、延滞債務の削減、新規の
円借款の供与を願いたい旨の
発言がありました。また、ソー・テイン工業
大臣、ティン・ナイン・テイン国家計画経済
開発大臣などからも、アウン・サン・スー・チーさんの率いるNLD、
国民民主連盟などの政治
活動の自由、カレン族などの少数民族との和解の促進について決意が表明され、経済
開発、
貧困削減に向けた
ODAの本格的再開や、
人材育成のための
支援強化などについて言及がありました。特に、アウン・ミン鉄道運輸
大臣は、民主化が逆行することは不可能であると明言されました。さらに、ナンダー・チョー・スワ
国民代表院副議長からは、議会が幅広い
国民の代表による活発な議論によって民主的に政治を進めていく旨の考えが示されました。
ヤンゴンでは、NLDのニャン・ウィン中央執行
委員などや、チン民族党の党首、カチン族の宗教団体指導者を始め、少数民族政党代表者などとも
意見交換を行いました。その中では、民主化の流れを歓迎する一方、少数民族との和解に対する政府の姿勢について心配も示され、真の和平の実現なくして国の発展なしとの強い
意見が示されました。この点については、私どもも
大統領にお伝えし、民主化の進展と和平の実現を強く要請してまいったところです。
なお、ヤンゴンでは、南部近郊のティラワ
地区にある港湾
施設と隣接する場所に計画中の特別経済区域予定地を視察したことも付け加えておきます。ここは、将来は
ODA案件の対象と考えられ、豊かな
人口と資源に恵まれたミャンマーの潜在的成長力をうかがい知ることができました。
次に、ラオスでは、ラオスが目標とする二〇一五年のミレニアム
開発目標の達成、二〇二〇年の後発
開発途上国からの卒業に向けた
取組と、
我が国ODAによる
支援の在り方を軸に
調査を行いました。
ソムサワート副首相、ソマート公共
事業・運輸
大臣などからは、ラオスの第七次経済
社会開発計画の実現に向けた、
円借款の再開を始めとする
ODAによる
支援の強化について
発言があり、内陸国ラオスの特性を生かすための東西回廊など
交通網の更なる
整備、経済
社会開発を担う人材の育成、メコン川のダム
開発と環境保全の両立などについて言及がありました。スカン・ビエンチャン特別市長とは、ビエンチャンの古都の景観に配慮した都市計画に対するJICAの
役割と
ODAによる
支援について話し合いました。ラオス
国民議会のラオス
日本友好
議員連盟の皆さんとは、
議会間交流の強化について
意見の一致を見ました。
私たちは、ラオス国立大学におけるITサービス産業
人材育成プロジェクトを視察しました。IT
分野における人材不足が深刻化している一方で、高額な
授業料がネックとなり、履修学生の定員割れが生じております。IT基盤の強化と併せて、奨学金制度の充実など
技術協力案件の実効性を確保するための更なる努力が求められます。また、気象レーダー
施設を視察しましたが、台風の襲来増加といった近年の気候変動に
対応するため、ラオス国内の気象レーダーの増設はもとより、メコン川流域諸国を始め東
南アジア諸国における気象観測データ網の
構築に向けた
地域包括的な体制
整備の
必要性を感得しました。
次に、タイについては、昨年の洪水
被害に対する復旧復興への
支援、被災した日系
企業への
支援をどのように具体化していくかを柱に
調査に取り組みました。
まず、キティラット副首相、元副首相のウィラポン洪水対策
委員長、スラポン
外務大臣、スカムポン運輸
大臣と
意見交換を行いました。タイ側からは、
我が国の
支援に対しての謝意が表明されるとともに、復興やインフラの再
構築に向けた施策や予算措置の
状況、チャオプラヤ川の防災・治水対策に対するJICAを始めとする
我が国の
支援、被災した日系
企業に対する
支援、今後の
インフラ整備の在り方、防災
分野における国際協力の推進などについて考え方の提示があり、
意見交換を行いました。
続いて、バンコクの北にあるロジャナ工業団地を
訪問し、甚大な浸水
被害の実態を視察するとともに、工業団地の今後の防災対策と日系
企業の操業継続
支援策などについて工業団地
公社と
意見交換を行いました。
公社側からは、工業団地を囲む輪中堤という堤防の増強
工事に対する公的
支援の在り方などについて考えが示されました。さらに、ホンダ、ニコン両社では、被災
状況、復旧への
取組についてお話を伺うとともに、被災した工場の復旧や冠水した自動車のスクラップ作業を視察しました。両社とも、三月から四月の操業再開目標を掲げて懸命に復旧に努めておられました。
また、バンケン
浄水場において、
円借款、
無償資金協力、
技術協力の連携の成果を視察しました。洪水
被害に際しては、水道の安定供給の確保や水質の安全性に対してタイ
国民の理解を得る上で、JICAとの長年の協力
関係が生かされたとのことです。
続いて、今回の
調査を通じて気付いた点を申し述べます。
ミャンマーについては、
調査団
訪問後も、少数民族との和平合意の進展、民主化
活動家を含む政治犯の釈放、四月一日に無事
実施された国会
議員補欠選挙とその結果など、民主化の進展が見られています。今後、民主化の流れを更に進展させていくこと、全ての少数民族との和解が実現して
国民的和平が達成されること、成長の果実が全ての
国民の
生活向上につながることを目標に、延滞債務問題の解決、新規
円借款の供与を始め、
ODAの本格的再開に向けた具体的検討をミャンマー
国民の幅広い御
意見も取り入れながら進めていくべきものと存じます。
我が国政府もこの方向で検討を深めておりますが、
我が国からの
支援は政党
関係者も望んでおり、経済
開発と
国民和解を通じて民主化の更なる進展が期待できます。
具体的には、ミャンマー
国民の
生活向上に資することを念頭に、港湾、鉄道、
幹線道路、情報通信基盤などの
インフラ整備、経済特区などの投資環境
整備、経済
社会開発を担う人材の育成を主たる柱とし、
貧困削減や格差解消、少数民族居住
地域の発展、
社会福祉の
整備、労働問題の解決などを実現し得る
支援策を検討することを進言いたします。これらの
支援を通じて、豊かな
人口と資源を有し、地政学的にも重要な位置を占め、親日国の歴史を持つミャンマーの
国づくりに協力すべきものと存じます。
ラオスについては、去る三月のトンシン首相の訪日に際して
政府首脳間で協議されたように、ラオスの第七次経済
社会開発計画の実現に寄与するため、
円借款の再開に向けた検討を含め、
ODAを通じた
支援の更なる拡充を進めるべきです。
ラオスは、周囲を五か国に囲まれた内陸国で、海路へのアクセスがなく、国内市場も脆弱なため、いかに
周辺国への物流ルートを確保できるかが大きな鍵となります。また、首都ビエンチャン以外の自治体では、いまだ
道路網の
整備が遅れており、
地域住民が
学校や
病院に通うことのできない現状があります。電力の安定供給のための南部送電線計画を始め、
国民の生活を支える基盤
整備のために
ODA支援が展開されることを期待いたします。
タイについては、去る三月のインラック首相の訪日に際しての
政府首脳間での協議を踏まえ、洪水
被害に対する復旧復興への
支援として、タイ政府の計画を尊重しつつ、十億円の緊急
無償資金協力の具体的活用、JICAが作成したチャオプラヤ川の治水対策や水資源管理の具体化などの諸施策の
支援を進めるべきです。
今回の洪水災害は、改めて
日本経済とタイ経済との相互依存
関係の高まりを確認させてくれました。今後、被災した日系
企業の操業継続を
支援するため、工業団地を守る堤防の増強に対する
支援や金融面などを含む
支援など、きめ細かい
支援策をタイ政府と連携して取り組んでいく必要があります。
今回
訪問した三か国を始め、ASEAN諸国では、連結性の強化をキーワードに、
インフラ整備や制度面の共通化を通じて、経済的一体性を強化する
取組が進んでいます。また、メコン流域諸国に対しては、格差是正の
観点からも
支援の強化が求められています。
ASEAN諸国の経済
社会開発や経済統合は、域内の安定や平和の強化、市場の拡大など、
我が国の国益にとっても戦略的に重要な
取組であります。
我が国は引き続き、人々の
生活向上に資する
インフラ整備などのハード
分野と、
人材育成、
社会保護、
貧困削減などソフト
分野とをバランスよく組み合わせた
支援を進めること、JICAだけでなく
民間企業や
NGOを含めた
日本ブランドに対する厚い
信頼を活用すること、官民が連携して裾野の広い
取組を拡大することなど、
我が国の特色を生かした
ODAの
実施を進め、ひいては、ASEAN諸国の
経済発展を
我が国の新たな経済成長につなげていくことも大切であります。
訪問した三か国では、JICAの専門家、
青年海外協力隊、シニアボランティアの
方々や
NGOの
方々が、
日本の顔の見える援助を体現していただいておりました。これらの援助人材の育成、
ODAと
NGOの連携の拡大強化についても重点
課題として引き続き取り組むべきです。
さらに、厳しい経済財政
状況の中でありますが、
東日本大震災に際して多くの
開発途上国から心温まる御
支援が寄せられたことを踏まえ、国際的に目標であるGNI比〇・七%の達成に向けた額の
ODA予算の拡大を図り、二国間援助予算の確保や国際的な
支援の枠組みとの連携に配慮しながら、量と質の両面から、
我が国の国益に資する戦略的でめり張りのある
ODAの持続的な
実施、
国民が共感して、
国民に応援される
ODAの充実に努めるべきです。
最後になりますが、今回の
調査に御協力いただいた
訪問国や視察先の皆さん、また、在外公館、JICAなどの内外の
関係機関の皆さんに心から
感謝を申し上げます。
報告を終わります。