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公述人(
池本美香君)
日本総合
研究所の
池本と申します。どうぞよろしく
お願いいたします。
私の方からは、今日は一枚物の今日の話の論点のメモとレポートを二点お配りさせていただいております。
一つは、
基本制度が出た
段階のものと、あとは、最近出しました七月二十日付けの
待機児童問題に対する新
システムの
評価というレポートでして、今日は、この二点の内容につきまして、
レジュメの方に沿いまして
意見を述べたいと思います。
まず、
子ども・
子育て新
システム関連法案につきまして、今日はまず、
評価できる点、それから残された課題という大きく二つのまとまりで話をさせていただきたいと思います。
まず、
法案の
評価できる点でございますが、最近まとめましたレポートでも詳しく書かせていただきましたけれども、
待機児童問題という非常に重要な問題に対しては一定の効果、かなり積極的な効果が認められるだろうということでございます。
ここで、私事ですが、私自身、この二月に
待機児童になりまして、四月に
仕事に復帰できるかという
状況に陥りました。そして、二月に
子供にスキーウエアを着せて自転車の前に乗せて、そしてもう
保育所探しでずっと冬を過ごしたというような
状況で、そのときに感じました疑問のことがかなりこの
制度によって解決されるということが分かりましたので、そこが
評価できる点ということです。
なぜかといいますと、
認可外
保育施設というのに対してこれまで全く
給付がなされていなかったわけですけれども、そこに対してもしっかり
教育・
保育給付を付けていくということが打ち出されましたし、また
原則認可の方針が出されたということは
評価できると思います。
私が復帰するために見付かったのは二つとも
認可外
保育施設でしたが、補助金がなかったために、
一つは月に十五万円という金額を提示されました。また、もう
一つについては、若干
保育料が安いので大丈夫かと思っていましたけれども、そこの質がどうなのかを調べてみましたところ、原則、
認可外
保育施設にしては年に一度
自治体なりがチェックをするという
仕組みになっているわけですけれども、東京都に
確認しましたところ、数が多過ぎてそこまで手が回っていないということで、実際にチェックが行われていないので、保護者としてはその質を
確認する手だてがないということもございました。
最終的に私は、三月末になりまして第一
希望の
認可園に空きが出て無事復帰できたというところでありますけれども、
待機児童になった経験を踏まえますと、まず
認可外
保育施設に対してもしっかりとした
給付が行われるということは非常に重要でありますし、また、きちんと
認可をしてそこに
給付がなされる、またそこの質が
自治体なりできちんとチェックされるということは非常に重要なことだと痛感をしたところですので、それが新
システムによって解決できることは非常に喜ばしいことであるというふうに考えております。
また、もう一点、レポートの方でまとめましたのは、公立
幼稚園が活用されていないというところでございまして、事例として、私、千代田区と品川区についてヒアリングをさせていただきましたけれども、千代田区の方は、公立
幼稚園のスペースを活用して、そこに
認可外
保育施設をつくる形で
待機児童をゼロにしたということを伺いました。
まさに、幼保の
制度が厚生労働省と文部科学省に分かれているところで、なかなかそこは活用できていなかったと思うんですけれども、公立
幼稚園の空き定員が、今
待機児童五百人以上いる
都道府県の空き定員が十万人ぐらいあるということでして、そこがきちんとこの
認可外
保育施設への
教育・
保育給付を活用するなどしてきちんと
保育施設に
提供されたならば、国基準の
待機児童二万五千人は十分解消できる可能性が大きいのではないかというふうに思っています。
そのようなことで、これまで
認可がされなかったというそういうところもありますし、小規模のもの、またそういう
認可外のものにきちんとお金が回っていなかったというところの問題がクリアされることで、
待機児童問題に関しては一定の効果が見られるのではないかというふうに考えております。
ただし、残された課題として、そのほかの部分ではまだまだ
子ども・
子育て新
システムという名前からイメージされるような内容にはなっていないのではないかというふうに感じております。
待機児童問題という、何か問題が発生してそれに対して対症療法的に対応するという部分については、かなり今回踏み込んだことができたように感じておりますけれども、もっとグローバルな視点で
世界が今どういうふうに動いているのかというようなことですとか、先ほど
吉田さんからも
お話ありましたけれども、いろんな
制度の組合せ、
総合的にどういった組合せがベストなのかということですとか、またどこに
投資をすれば最も効果が高いのかといった、そういった戦略的な
検討というのが今回十分なされていないというふうに感じております。
それについて、五点ほど
問題意識を挙げております。
第一は、
教育政策との関係について議論が十分でないのではないかということで、この点につきましてはお配りしております
資料二の方のレポートで詳しく論じておりますけれども、諸外国の動向を見ますと、諸外国でももちろん
女性の
社会進出ということ、また、
少子化による労働力活用の
必要性ということから
保育制度をいろいろと手直しをしているわけなんですけれども、その際に、
日本のように厚生労働省
中心の就労
支援という角度からだけではなく、
教育制度体系の
一つとして位置付けて、
制度自体も
教育制度体系に組み込むという国がかなり増えてきているということです。
今回、ここは
社会保障と税の
一体改革ということで、
社会保障を充実させていくという
観点で考えますと、そのときにも、
社会保障の充実は何も
給付をするだけではなくて、それぞれ個人が自立できるようにする
教育を充実させるということも
社会保障の中の
一つの重要な課題になってきておりまして、さらに、その
教育政策を、では良くするためにはどこが今問題かといった場合に、
乳幼児期がまだまだやれていないことが多いのではないかということで、
乳幼児期への
投資を活発化させてきているという
状況があります。
また、幼保一元化という部分につきましても、今回の
子ども・
子育て新
システムの議論の中では、
子ども家庭省を設置するなど、そういった形の福祉という形での一元化がイメージされていましたけれども、
教育制度として
学校教育体系に
保育制度を全部組み込むという国が幾つも出てきているということです。またさらに、
幼児教育の無償化ということも、各国そういう取組をする国が増えてきております。
また、
学童保育も、
日本では厚生労働省所管でございますが、
教育制度の方に含めて
学校と一元化する国が増えてきているということでして、そういった諸外国の動向も踏まえながら、
教育政策との関係を十分に議論する必要があるのではないかと思っております。
また、今回、
教育制度との関係という点では、
学校教育への株式会社参入に対する批判が強かったことから、
総合こども園法案が
認定こども園法の改正という形に落ち着いたような経緯もございますが、この株式会社参入に関しましても、諸外国では
学校教育自体に株式会社参入が進んでいる動きというのもございまして、その辺りの動向などもきちんとリサーチをして判断をした上で、
教育の方に
保育制度を組み込むということを
検討していただきたいというふうに考えています。
また、今回、
教育ということでは三歳以上の
学校教育という形で議論されることが多かったかと思いますけれども、三歳未満の部分の
教育ということを諸外国で議論する動きも出てきている中で、その部分も、
学校教育を三歳から区切るのがいいことなのかどうなのかということについても議論が必要かと感じております。
二点目ですけれども、
財源の
在り方について。今回、
事業主の負担はどこに持ってくるのかということもかなり議論されたということは
評価できるんですけれども、先ほど申し上げましたように、
保育制度を就労
支援ではなく
教育制度と仮に位置付けた場合に、そこに
事業主が負担をすべきなのかというまた新たな議論も出てくるのではないかと思っております。また、今回、
子ども・
子育て新
システムという、まあ名前はそういう全体的なことを言っていながら、
保育制度中心のところに議論が集中して、そこに
財源を投入するということに伴いまして、本来、
子供の福祉という
観点から健全育成の分野などについても積極的な
投資が必要なところが、予算が十分に回らないということは非常に心配をしているところでございます。
それから三点目は、
自治体の取組をチェックする
仕組みが十分でないというところです。これは、先ほども、
市町村の
責任を明確化して
保育を整備していくという
法案ができたことは
評価できるんですけれども、果たして
自治体が本当に積極的に取り組むかどうかが非常に保護者としては不安なところでして、きちんとそれを
自治体が積極的に取り組むようにさせるために、国が例えば
待機児童数、あるいは公的
施設がきちんと活用されているかですとか、そういったことの情報をきちんと公開をしていく、それによって市民がきちんとそれを把握し、
自治体に要望を出せるような形にしていく、そういう形が必要ではないかと思っています。
それから、今回、供給は、
基本的に
保育施設の供給を制約しないということではありますけれども、供給過剰の場合は
認可しなくてもよいということになっていますが、では、供給過剰とはどういうことなのかということについても慎重な議論が必要だろうと思います。二万五千人という、実際に申し込んで入れない人だけがカバーされればいいという問題ではなく、今の
日本の潜在
待機児童は八十五万人というような試算もなされていますし、また
日本の大学、大学院卒の
女性の就業率というのがOECD加盟三十四か国中三十二位という極めて低い水準にあるということで、これからはどんどん
女性の力を活用していかなければいけないということをきちんと把握した上で、供給の制約をなくしていくということが重要ではないかと思っております。
それから、
保育の質に関する議論も重要でして、先ほど少し
認可外
保育施設の質が非常に問題だということについては申し上げたんですけれども、今OECDでは
保育への
投資を積極化させているけれども、その
保育への
投資効果がどれだけ大きくなるかというのはその
保育の質に大きく左右されるんだという議論から、諸外国、
保育の質に関する議論が活発化しているわけでして、
日本もこれだけ限られた
財源をこれから
投資していくに当たっては、それが最大の効果を上げるように、安全、安心という最低限のところだけではなく、
教育の効果も十分に考えた上でその成果がきちんと発揮されるように、
保育の質に関する、そもそも
保育の質、良い質というのはどういうものかという議論も必要ですし、またそれをきちんと第三者機関が
評価をし、それを一般の保護者などにも情報公開していくということが必要ではないかと思っております。
最後の五点目ですけれども、これも先ほど
吉田さんの方から
お話ありましたけれども、ワーク・ライフ・バランスの議論が今回十分できていないというところです。育児休業
制度と育児休業
給付と
保育制度の関係には極めて密接な関係があると思いますが、そこの整理もきちんとしなければいけないと思っております。
また、特に
日本の場合は、
保育所の枠を確保するために、育児休業が取れるのにもかかわらずゼロ歳児から預けるという人が多数いるわけでして、そういう低年齢児の
保育の問題、あるいは長時間
保育の
子供への影響なども
検討する必要があるだろうと思います。
つい最近調べましたところ、
日本だけが
保育時間に関する統計が整備されていない。諸外国は大体一日六時間で週五日で三十時間ぐらいという、そういった
子供にとって負担になっているかというような、
子供の権利というか、
子供の
観点からの議論や情報が整備されていない、そこがまだまだ不十分であると思っております。
ワーク・ライフ・バランスというと
女性だけというふうにイメージされがちですが、男性そして
子供のワーク・ライフ・バランスの議論も必要ではないかと思っております。
以上、少々長くなりまして失礼いたしました。