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2012-04-18 第180回国会 参議院 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十四年四月十八日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      玉置 一弥君     柳田  稔君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         藤原 正司君     理 事                 大島九州男君                 外山  斎君                 山田 俊男君                 加藤 修一君                 松田 公太君     委 員                 江田 五月君             ツルネン マルテイ君                 友近 聡朗君                 白  眞勲君                 福山 哲郎君                 藤末 健三君                 舟山 康江君                 柳田  稔君                 熊谷  大君                 佐藤 正久君                 中山 恭子君                 橋本 聖子君                 水落 敏栄君                 若林 健太君                 石川 博崇君                 紙  智子君    事務局側        第一特別調査室        長        宇佐美正行君    参考人        東京大学大学院        工学系研究科都        市工学専攻教授  滝沢  智君        株式会社資源・        食糧問題研究所        代表取締役    柴田 明夫君        立命館大学政策        科学部教授    仲上 健一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題、地球環境問題及び食糧問題に関する  調査  (「世界の水問題と日本対外戦略」のうち、  アジアの水問題(アジアの水問題への取組の課  題)について)     ─────────────
  2. 藤原正司

    会長藤原正司君) ただいまから国際地球環境・食糧問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、玉置一弥君が委員を辞任され、補欠として柳田稔君が選任されました。     ─────────────
  3. 藤原正司

    会長藤原正司君) 国際問題、地球環境問題及び食糧問題に関する調査を議題といたします。  本日は、「世界の水問題と日本対外戦略」のうち、アジアの水問題に関し、アジアの水問題への取組課題について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授滝沢智参考人株式会社資源食糧問題研究所代表取締役柴田明夫参考人及び立命館大学政策科学部教授仲上健一参考人に御出席をいただいております。  この際、一言御挨拶を申し上げます。  各参考人におかれましては、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、各参考人から忌憚のない御意見を賜りまして今後の調査会参考にしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず滝沢参考人柴田参考人仲上参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、滝沢参考人から御意見をお述べいただきます。滝沢参考人
  4. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 東京大学滝沢と申します。よろしくお願い申し上げます。  お手元に資料のコピーが配付されていると思いますが、それに沿いまして進めさせていただきたいと思います。(資料映写)  本日、私の話は、アジア地域における水問題の現状水ビジネス国際展開に向けた取組という題目で発表させていただきます。発表の内容でございますが、前半部分は、アジア各国水不足、それから水質の問題についてお話をさせていただきたいと思います。後半部分は、日本取組ということで、日本水ビジネス国際展開に向けた取組、それから今後の展望についてお話をさせていただきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。  初めに、水資源不安定化ということですが、タイで大きな洪水がございましたけれども、そういった洪水被害があるとともに、これは二年前ですけれども、中国メコン川の上流域で非常に大きな規模渇水がございまして、メコン流域水不足に悩んだということですけれども、新聞報道されている、海外新聞でも報道されるぐらい大きなことだったと。例えて言うと、中国の貴州、雲南を中心とした被害規模ですけれども、渇水が五か月以上続いて、被害人口としては一千八百万人、また家畜が一千百万頭ぐらい死んだということがございます。  お隣、中国参考アジア地域全般の水問題の状況について御説明をさせていただきたいと思いますが、これは統計データからまとめました中国水需要水利用の変化でございます。一九八〇年以前のデータについてはそれほど信頼性がないデータかもしれませんが、その後は定期的にデータが取られているという状況です。  御覧のグラフの中で、全般的に上昇傾向はまだまだ続いております。水需要は非常に増えているんですけれども、中でも農業用水がほぼ頭打ちになっているのに比べて、生活用水あるいは工業用水、いわゆる都市で使う水が非常に増えている、今後も増えていくだろうという予測がなされております。  こうした中で、水の不足ということだけではなくて、水質の問題というのも顕在化してきております。これも海外のジャーナルに報道されたものですが、中国水質汚染問題が中国全般経済活動あるいは生活に大きな影響を及ぼすといったようなことが報道されております。  中国全般中国には七大水系という、中国全体の河川を七つに分けておりますが、このうち、水質基準がⅠ類というところからⅤ類というところまで五段階にあります。Ⅴ類よりも超過という、更にもっと悪いと、これを入れますと六段階ということになりますが、この分類の中で、中国水質分類の中でⅠ類からⅢ類は飲用水、飲み水の水源として使えると、Ⅳ類以上は水質が悪いので飲み水には使えないということでございますが、御覧いただきますと、Ⅰ類からⅢ類が多いのは南の方の長江、揚子江等ですが、北の方に行きますと、松花江、これはハルビンを流れている川ですが、淮河、遼河海河というようなところではⅢ類までの飲料水水源として使えるところが二〇%ないし三〇%ぐらいということで、非常に汚染が進んでいるということが分かります。  一つ例を出しますと、これは中国水質データをまとめたものですが、この海河流域、北京市を含む流域ですけれども、Ⅰ類、Ⅱ類、Ⅲ類というのは水色から緑色ですが、この河川流域を見ますと、水色あるいは緑色の範囲に入るところがほとんどなくて、赤の濃い色になっている、つまり水質が非常に汚濁されているという河川が非常に増えているということでございます。水が足りないというところに加えまして、水質汚濁が進んでいると。  これは飲料水水源にもなっております湖あるいは大型のダムでございますが、これも水質類型がⅠ類からⅤ類あるいはⅤ類超過というところにありますが、飲料水水源として使えるのはⅢ類まででございますが、この表の一番下を見ていただきますと、Ⅰ類は〇%、それからⅡ類が七・一%、Ⅲ類が二一・四%で、全体として飲料水水源として使える湖は三割、三〇%以下しか残っていないということで、非常に大きな問題になっております。  こういった水質汚濁の問題に加えて、水質汚染事故と申しますけれども、様々な工場からの事故等水源汚染が引き起こされているということでございます。これは二〇〇五年に松花江ハルビンの付近で起こった大規模水質汚染事故報道ですけれども、そのとき、新聞報道日本でも大分報道されましたが、中国河川、七割は汚染されているという報道がありまして、今申し上げましたとおり飲料水として使えるのは三割ぐらいだということで、大体の割合が一致しておりますけれども、七割は飲料水としては使えないような河川になってしまっているという現状でございます。  たまたま私、その水質汚染事故のときにハルビンにおりましたけれども、その事故対応ということで、急にそういった汚染に対する対応策を考えておりますが、そのときはそういった対応策が元々できておりませんで、やっていたのは、この下段、下の真ん中にありますけれども、水源活性炭をたくさん注入して汚染対応をすると、それもどちらかというと人がたくさん集まって作業をしながら活性炭を入れていくということで、なかなかこういった作業では大規模汚染に追い付かないという問題もありました。  こういった問題が、中国を例に申し上げましたけれども、中国だけではなくて、アジアのいろいろな国で、経済開発に伴いまして、水の不足それから水質汚染問題というのが増えております。  もう一つ、特に都市部人口水需要が増えているということを申し上げましたけれども、こちらのグラフは、これも国連統計から取ったものですけれども、二〇〇八年に世界人口、今七十億人ぐらいありますけれども、その当時六十六億人と言われていましたけれども、およそ半分が都市に住んでいるというふうに言われております。こちらのグラフの線を見ていただきますと、アーバンと書いてある都市人口は今後も増加していきますが、ルーラルと書いてある農村人口に関してはアジア地域も含めてそれ以上増えないと、余り増えないという傾向がございます。  こういう中で、都市人口のうちおよそ三分の一、三割がスラムというところに住んでいます。三十三億人のうち大体三〇%ですから、十億人ちょっとがスラムというところに住んでいて、そういう方々がどういう生活をしているかというと、この写真にありますけれども、これはジャカルタで撮った写真ですけれども、河川沿い生活をしている、水道は来ていないと。どうしているかというと、この河川の水を生活用水に使い、洗濯をしておりますけれども、生活用水に使い、それから後ろの方を見ていただきますと、これはトイレなんですけれども、いかだの上にトイレがあって、そのままトイレにも使っていると。もっと奥の方を見ていただきますと、いかだがどんどんどんどんたくさんつながっていて、実は一つの水をいろんなことに繰り返しながら使っていて、上流で排せつされた水をそのまま下流で子供が水浴びをしたり体を洗ったり食器を洗ったり、そういうような形で暮らしていると。それが衛生上非常に大きな問題になっているということでございます。  飲み水の問題に限らず、水質汚染の問題、いろんな健康影響を引き起こしておりまして、これ、トラコーマという目の病気ですけれども、ベトナムハノイというところで調査しました。一人当たり一日使える水の量、これは日本ですと、東京ですと家庭用水で二百五十リッターぐらい使っていると思いますけれども、水の事情の悪い地域では三十リッター、四十リッター、あるいはそれ以下しか使えません。ハノイで、ちょっと古いデータですが、一九九九年に調査したところ、使える水の量が少ないと、それだけこの目の病気にかかる率も高い。子供たちは、暑いですからこういう形で川に入って、そのまま手も目も洗わずに上がってくる、その結果、こういった病気に感染するということでございます。  表流水はそういう形で大腸菌その他の感染症汚染されていることが多いんですが、それ以外の水源として地下水がございます。地下水は通常、清澄できれいだというふうに考えられているんですが、地域によっては地質から出てくるような汚染物質というのがございまして、その代表的なものの一つ弗素があります。  弗素は、我々の歯磨きのチューブに入っていて虫歯から歯を守るといった効果がある反面、これを経常的に恒常的に摂取しますと、歯あるいは骨に弗素が沈着してこういった健康被害が生じる。これは歯医者さんが調査している事例ですけれども、男の子の歯の状態を調べている。それから、真ん中の御老人は長くこの地下水を飲んでいたために骨折してしまうといった問題があります。  それから、もう一つの問題として、地下水の問題として砒素による汚染というのがございます。これ、我々が調査した一つ事例ですけれども、バングラデシュあるいはウエストベンガルと言われているインドの地方でこの砒素汚染、大規模に進行しておりますけれども、それ以外にアジアの様々な地域地下水がこういった砒素によって汚染されているということが分かっています。  これは幾つかのコミュニティーで測ったものですが、砒素グラフAsと書いてある真ん中にあるグラフですけれども、このAsと書いてある砒素の濃度ですが、日本基準、あるいはベトナムもそうなっていますが、WHOの基準は十マイクログラム、十というところが飲料水基準ですが、多くの地下水でこの十という基準を超えたレベルに達しているということでございます。  振り返りまして、我が国、日本がどういう形で上下水道の整備をしてきたかということについて御説明を申し上げたいと思います。  今や水道あるいは下水道サービス日本では当たり前のサービスというふうになっておりますが、振り返ってみますと、日本もオリンピックのころの渇水、あるいは雨が降ったときの洪水、それから隅田川の汚染という問題がありました。  こういった問題に対して上下水道の建設を進めまして、今現在、一昨年度末のデータを見ますと、水道普及率は九七・五%、これは全国ですけれども。それから、下水道普及率は七三・七%という高いレベル普及率を達成しております。  それだけではなくて、農業用水あるいは工業用水の水を一トン使った場合にどれだけの生産をできるかということですが、特にそのジャパンと書いてあるところのインダストリー産業用水工業用水については世界に比べても非常に高い生産高を誇っています。これだけ日本産業は水の使い方が非常に効率がいいというところで、これが日本強み一つだろうというふうに考えております。  こういった日本の様々な経験あるいは強みを、先ほど申し上げました水に困っているアジアの、中国もそうですけれども、アジアの様々な国に対していろいろな形で貢献ができないか。その貢献の中に、これまで日本が力を注いでまいりましたODAだけではなくて、ビジネスという視点も入れて貢献ができないかというのがここ数年の動きでございます。  これは経済産業省がまとめたデータでございますが、水分野上水道海水淡水化工業用水、再利用下水というような分野に分けたときに、これからどれぐらいの需要があるかといったことをまとめております。上段が二〇二五年の予測値でございまして、括弧で囲んだ少し小さな字が二〇〇七年の実績値でございますが、各分野ともこういった水分野で高い需要伸びが期待されるというふうに思われております。  その中で、伸び率が高い分野として海水淡水化あるいは工業用水の再利用といったことがございますし、それから金額として大きなところは、やはり上水道あるいは下水サービスといった都市上下水道サービスだというふうに考えられております。  これまで日本は、世界の水のODAにおきまして、これは国連とか国際機関を含めても五分の一以上の貢献をしております。バイラテラルで考えますと四〇%ぐらいの貢献率だというふうに考えられておりまして、非常に高い割合貢献をしてきたわけですけれども、これからはODAだけに限らず、更に発展させた形で水分野ビジネスパートナーアジアあるいはそれ以外の地域に広げていくといったことが課題でございます。  こういった水ビジネス動きですけれども、そもそも一九九〇年ごろ、世界で水に対する投資の資金が足りない、それをどうするか、あるいは途上国水道事業体運営効率が非常に悪い、それをどういうふうにして改善するかといった中でこういった、PPPと言われていますけれども、公民連携あるいは官民連携水事業をやっていこうという流れがありました。  そもそものきっかけは、イギリスやニュージーランドあるいはチリなどで民営化して、それが成功例だというふうに伝えられたことが大きなきっかけになっております。その後、こちらの表にありますが、九〇年代を通じて世界各国でこういったPPPによる水道事業というのが拡大してまいりました。  最近は少し見直しもありまして、PPP事業、本当に成功しているのかということが疑問として投げかけられておりますが、これは世界銀行の研究者がまとめた事例でございまして、左側の円グラフを見ていただきますと、七年以上継続したPPP事業の評価ということをしておりまして、継続中が八五%、契約満了後公営化したのが七%、契約を解除したところが八%で、一五%は失敗といいますか公営に戻っておりますが、八五%は継続中だということですが、そのうち失敗といいますか再公営化した地域というのは割と偏っておりまして、サブサハラアフリカというアフリカ地域と、それからラテンアメリカにそういった事例が多いというふうな報告がございます。  もう一つ水メジャーというような言葉がございますけれども、世界民営化市場、二十年ぐらい前に始まっておりますけれども、その後、二〇〇〇年に入りましてその市場が大きく変わってきております。何が変わったかというと、元々水メジャーと呼ばれているような世界の大手五社が市場の八〇%から九〇%を占めているというふうに考えられていたんですが、二〇〇〇年を越えて過去十年を見ますと、上のグラフにございますように、市場そのものは、マーケットそのもの世界で拡大しておりますが、その中で割合を深めているのは一番上のピンク色の棒でございまして、それはその他ということで、世界のうちメジャーが占めている割合がだんだんだんだん減ってきて、それ以外の様々なプレーヤーといいますか企業がこの分野に参入してきている。それは、その中には地元企業も含まれているということでございます。  そういった中で、周回遅れといいますか二十年遅れ日本が今水ビジネスということを言っているわけですが、何を目指すかということなんですが、これは一つ事例でございますが、上段中国水道事例です、下段日本水道事例ですが。中国、一番左側は、浄水場の中で水質をモニタリングしているモニタリングスペースです。上段中国事例で、下段日本事例。それから真ん中は、下が日本浄水場、これは水が入っているんですけれども、非常にきれいな。中国の場合は、こういう中で、ホテルに行ってもこの水は飲めませんというレベルになっています。  すなわち、水が足りないのは確かなんですけれども、どのレベルサービスを求めているかというのは国によって違っていまして、どんな国でも日本と同じレベルサービスを求めているという、そういうふうに考えるのはやや勘違いがあるかもしれない。もしビジネスとしてやるのであれば、相手の国が求めている適切な水準のサービスをいかに低価格で提供することができるかというところが非常に重要になっていまして、日本レベルまではまだいいよという国に対して日本レベルを無理やり押し付けるということではなかなかビジネスにはならない、そこは少し注意が必要だろうというふうに思います。  開発途上国における水インフラ市場の問題でございますが、冒頭申し上げましたとおりに、潜在的な需要というのは非常に大きくあります。水の不足、それから水需要の増加、水の不足、それから汚水、排水処理の問題、水質汚濁の問題、こういったところにインフラをしっかりと造っていかなきゃならないという潜在的な需要があるんですが、それをビジネスとしてとらえるためには顕在化した市場にしていかなければいけない。  その顕在化した市場というのは何かというと、それを誰が主体になって進めるかということですが、日本のように国や自治体資金確保手段、つまり信用力があってお金を借りてこれるとか、そういう状況にならないとビジネスは実際には顕在化してこない。あるいは、個人や企業にその水のコストを支払うだけの支払能力意思があるか、そういったことをきちっと見極めないと、潜在的な市場があるよということと、それが顕在化して実際にビジネスができるということは少し違うということは十分に気を付けなきゃいけない。  課題は、この潜在的な市場があるというのは確かなんですが、これをいかに顕在化した市場に持っていくかというところが重要だろうと思います。  一つ考え方は既に顕在化した市場を攻めるということですが、海水淡水化あるいは工業用水のリサイクルについては中東産油国を含めて支払意思能力のある国々があります。こういったところを中心ビジネスを広げていくというのが一つ考え方ですし、もう一つは、顕在化するための努力と、それから国あるいは地方自治体からの強力な支援をする。例えば、水やPPPに対する法制度や規制の確立とか、それから相手国あるいは自治体事業資金確保手段支援、それから水に関連した相手国地元市場日本企業だけが利益を得るのではなくて、相手企業相手国企業も育成しつつ両者がその利益をシェアするような形の地元の振興、それから相手国国民の啓発ですね、支払意思の向上。こういったことに関しては、民間企業よりも恐らく日本の国、あるいは自治体方々、あるいは我々大学のような人間も含めて、そういったセクターがより強力に関与できるのではないかというふうに考えております。  それから、もう一つの点ですが、日本では大きな浄水場を造って、そこから、あるいは大きな下水処理場を造ってそこで集中的に処理すると、この方が効率がいいということで進んでいきましたが、海外では徐々に分散型の水処理、あるいは分散型の水道ということが進んでいます。これは、待っていてもいい水質の水が来なければもう自分たち処理するしかないという意思の下で、こういった分散型、小さな処理がだんだんだんだん普及していくと。それが余りに普及してしまうと、そこに日本型の大きな浄水場を造りませんかという話を持っていってもなかなか受け入れてもらうのが難しい状況になってしまうということですので、相手国政府等も含めてしっかりとこういった話をしていかなきゃいけないというふうに思います。  ちょっと時間が参りましたので、あと技術の話を少し載せましたけれども、全体の話は以上で終了したいというふうに思います。  最後に一枚だけ、水ビジネス、今後の課題取組というスライドを用意いたしました。  これは、先月横浜で水ビジネス関係のワークショップ、シンポジウムをやりましたけれども、そこで出たいろいろな意見を私の方で取りまとめたスライドでございます。  一つは、マーケット顕在化に向けた努力が必要だと先ほど申し上げました。それから、部品供給については日本は強いと言われていますが、これを事業運営に持っていかなければいけない。それを実施するために、トラックレコードと書いてありますが、幾つかの実績をできるだけ早く付けていかなきゃいけない。そのためにはどういう市場があるかということをしっかりと見極めることが重要だということで、上記に向けた様々な努力が必要だというふうに考えてございます。  まとめもありますが、時間が来てまいりますので、以上で私の発表を終わりにしたいと思います。  御清聴ありがとうございました。
  5. 藤原正司

    会長藤原正司君) 滝沢参考人、どうもありがとうございました。  次に、柴田参考人から御意見をお述べいただきます。柴田参考人、お願いします。
  6. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 資源・食糧問題研究所柴田と申します。よろしくお願いいたします。  私の方は、前段で世界の食料問題について申し上げまして、次に水の話に進めていきたいと思います。(資料映写)  初めに、日本の食料生産を各国、主要国と比較したものであります。  日本は、八百万トンの米を中心に大体年間一千万トンの食料を生産しております。ほかの国と比べますと、例えばイギリスなどは人口、国土面積半分でありますけれども、三千万トンの穀物を生産しております。ドイツは五千五百万トンというレベルの穀物を生産しております。日本が一千万トンの国内穀物生産で済んでいるというのは、実は、もう一つ、三千万トン近い穀物を海外から輸入しているという、こういうことであります。実は、この輸入分は不足でありますけれども、この不足と、国内生産のよく過剰と言われています、過剰と不足が併存しているというのが日本の特色、特徴であります。  実は、不足分の三千万トンというのは、水の輸入、バーチャルウオーターの輸入でもありますし、大きな、そういう意味では国際社会に水の輸入という格好で日本は負担を強いているということも言えるかと思います。  世界の食料市場の動向でありますけれども、このグラフは過去六十年間の年平均の小麦とトウモロコシと原油価格の推移を見たものであります。七〇年代、八〇年代、九〇年代と、今振り返りますと低位安定した推移をしておりましたけれども、二〇〇〇年代に入ってステージが変わるように価格が上がってきております。この安い食料時代というのは終えんしたと、こんなふうに見ております。  背景でありますけれども、世界的な食料需給の逼迫が予想される。その中心は、中国影響が大きくなってきているということであります。バイオエタノール等の生産も拡大しておりまして、今食料市場においては三つの性格の争奪戦が強まってきていると。国家間の奪い合い、エネルギー市場との奪い合い、それから水と土地をめぐって農業分野と工業分野、あるいは都市生活分野との奪い合いであります。  食料というのは、今までは言わば太陽の光と水と土地があれば幾らでも再生産可能な無限の資源でありましたが、だんだん有限の資源化の性格を帯びてきている。資源問題といえば希少性の問題でありましたけれども、今世紀に入ってからは徐々に希少性とは関係のなかった食料とか水とか温暖な気候とか多様な生物とか、こういうものも新たな希少性の問題をはらみ出したというところが非常に気になるところであります。  穀物の価格でありますけれども、二〇〇八年のリーマン・ショック前のときに過去最高レベルに達しました。リーマン・ショックで急落しましたけれども、下がったとはいえ、見ていただくと、これはシカゴの大豆、小麦、トウモロコシの価格でありますが、昔の十年に一度干ばつで大相場が出る、その高値が安値に変わっただけでありまして、穀物価格のステージは大きく変わってきております。足下、再びこれは上昇の兆しが見られるということであります。  穀物に限らず、石炭とか鉄鉱石、銅地金、原油、天然ゴム、あらゆる資源価格を時間軸五十年ほどで眺めてみますと、二〇〇〇年代に入ってから大きくこの価格の上昇が見られるようになったという点が特徴であります。投機マネーの影響はもちろん大きいわけですけれども、価格とは一体何かと。あらゆる情報が圧縮されたものが価格でありまして、その価格がこういう具合で均衡点が変わるような動きをしているということは、需給が大きく変わってきている、需給の構図が変わってきているということであります。  食料については、特に二〇〇〇年代に入ってから、これは穀物の生産、消費、期末在庫率の動きでありますが、二〇〇〇年に入ってからのいわゆる市場の拡大が著しくなってきております。消費はこの十年間、前年を下回ることなく過去最高を更新し続けているということであります。生産がこれに追い付いて足下の生産は過去最高レベルでありますけれども、異常気象等、干ばつ等で減産になれば投機マネーが入り価格が上昇する、期末在庫率も二割を維持するのがやっとと、こういうふうな状況であります。  穀物の在庫の特に三分の一以上は中国で在庫されていると、こういう状況であります。米とトウモロコシは世界の半分が中国の在庫であります。  市場が拡大している背景の一つの要因は人口の増加であります。昨年十月、国連によりますと、世界人口は七十億を超えた。この人口をどう見るかということでありますが、働き手として見れば、経済成長を押し上げるというわけで、むしろ好ましいことでありますけれども、消費者の口として見れば、あらゆる食料を含め資源を食べ尽くしていくという、こういう点では、地球が無限であれば問題ないわけですけれども、今、均衡点価格が上がったり資源の争奪戦が始まったりということは、もう既にこの地球は無限ではないという、こういう見方に切り替える必要があるなということであります。  人口の増加は、これ下の方で、マルサスの問題でありますけれども、幾何級数的に人口は増えていくけれども食料生産は直線的にしか増えない。しかしながら、生産性が上がって近代化してくる中で、その直線の立ち位置はずっと上に上方シフトしたわけですけれども、これが徐々に伸びが低下してくるだろうと、こういう懸念があります。  需要サイドの要因というのは中国でありまして、中国のGDP、七八年に改革・開放をしてからもう三十二年が過ぎ、平均成長率が一〇%で成長しますと、そのGDPの規模というのは幾何級数的な姿を示すようになった。今後も、しかしながら、日本のGDPを追い抜いたわけでありますけれども、人口で割るとまだまだ一人当たり四千四百ドル弱ということで、成長が必要であります。しかし、成長すれば、資源、エネルギー、食料、こういったもののまた需要が拡大してくるということであります。  中国人口の増加も背景にありまして、増加する人口の約半分が都市部生活すると。十万人以上の人が住む地域都市でありますけれども、六百六十近い都市人口の半分が住む。都市化をすれば、核家族化が進み世帯数が増える、食生活が一気に改善してくるという中で肉の消費が増える、そういう中で食料の需要が拡大しているわけであります。  この部分は、中国、九〇年代までの量の消費から質を伴う消費に拡大してきているということであります。  輸入も増えてきて、トウモロコシ、大豆などは、特に大豆は五千七百万トンという輸入規模になっています。トウモロコシは、これまで自給してきたものが二〇〇九年以降自給ができなくなって純輸入国に転じてきている。右側のはUSDAの二〇二一年までの見通しでありますが、一貫して輸入が拡大していくと、こういう見方になっております。  資源戦略も明確に打ち出してきておりまして、二〇〇八年以降、供給量を確保する、備蓄の拡充、需要サイドからの省エネ、省資源を徹底させると、こういうふうな戦略を中国は打ち出してきております。  アメリカにおいては、右の上にエタノール向けの消費量の拡大がなかなか止まらないという、そういう、青い部分でありますけれども、姿になっております。一方で、赤いグラフ部分、輸出でありますが、輸出の足下、絶対数が減ってきて、生産に占める輸出の比率も下がってきているという状況であります。長期的にも、右下でありますけれども、世界の在庫率は低下していく、アメリカの在庫率は低下していくという見通しであります。  生産を増やせばいいんですけれども、この青い棒グラフ部分でありますが、耕地面積はもう頭打ちであります。専ら単収を引き上げてきていますけれども、単収の伸びはだんだん鈍化してきているという状況にあります。長期的に見ても、世界の食料の需給というのは逼迫傾向をたどるというのが多くの国際機関の見通しになっております。  加えて、様々な自然の反逆とも受け取れかねない問題が生じてきていると。除草剤の効かないスーパー雑草が急繁殖するとか、こういったことも指摘されております。気象も、異常気象の頻発化というのは肌身に感じるところであります。  それから、水の問題でありますけれども、地球上の水のうち利用できるのが大体一万分の一というところで、水自体は循環資源であって増えもしなければ減りもしないわけですけれども、一方で需要はこのように急拡大している。今、食料の生産のために七割が消費されていますけれども、工業用水都市生活用水需要が拡大するという格好になってきております。  特に水の利用という面では、世界人口の六割が集中するアジアで、しかも急速な経済成長が見られます。一方で、降水量でいきますと、大体年間、世界の三割弱、淡水のシェアで二七%ということで、アジアにおいて最もこの水の問題というのは先鋭的に現れてくる可能性が高いわけであります。地下水においても、先ほど滝沢先生の方から指摘がありましたが、砒素汚染の問題というのも深刻化しているということであります。  水の需要、これ、先ほどちょっと申し上げまして、四十年で倍増すると、人口伸びを上回る形で伸びているということであります。  ここはちょっと飛ばしたいと思いますが、バーチャルウオーターの話であります。  それから、国内においては、右下のように、ちょっと細かな表で恐縮でありますが、日本の場合には大体年間千七百ミリを国土面積に掛けますと水の賦存量というのは六千五百億トンということでありますけれども、実際に利用されているものはこの左側の八百五十二億トンということで、蒸発した部分を除いて水資源量の二〇%ぐらいにとどまっているということであります。これは、国内の水資源のフル活用の方向へ切り替える、こういう必要があるのではないかと思います。  その一つは、沿岸部湧水地における水資源の活用ということで、例えばこの特定港湾の高知県宿毛湾など、湧水地の水を、国内の各地域はもとより、場合によっては海外への輸出も可能ではないかと。雨水の農業への有効利用とか、あるいは水道においても、おおむね下流のところに浄水場があるということで、重たい水を重力に逆らって排水していくという、こういうふうな状況にもなっていますので、なるたけ上流地点に浄水場を変えることによって電力を始めエネルギーの削減効果が得られるんじゃないか、こういうことも言われております。  これは、例えば国内資源のフル活用というところでは、木材なども、同時に水源涵養林としての木材もフルに活用していく必要があるなと。海外においては過伐採で問題になっているけれども、御承知のように、日本の場合には木を切らないことによる問題が生じているということであります。  それから、水のビジネスということであれば、左側のように、その地域地域によって必要とされる水の性格が異なるということでありますが、特に経済発展の段階に応じて、発展がまだ低いレベルの場合には上水道、それから第二段階になりますと下水道、そして第三段階であれば海水の淡水化を含めた造水、排水の処理と、こういうものが必要になってくるということであります。  これは、先ほど滝沢先生の御指摘の部分と重なりますので、飛ばしたいと思います。  水ビジネスの三つのパターンというところでは、上下水道関連ビジネス規模の面では、ここでありますけれども、二番目、節水、リサイクル、水の高度利用というところも一つビジネスの領域であります。それから、BOPビジネスということで、ベース・オブ・ザ・エコノミック・ピラミッド、非常に低所得層における水のビジネスというところがこれからは注目されるのかなと。  水は、膜による水処理市場というのも急速に伸びてきて、一方で右のように淡水化のコストもかなり下がってきております。一トン当たり一ドルを切るような状況にもなってきておりますので、この淡水化のビジネスも期待できるわけであります。  ここはちょっと技術的なところで飛ばしたいと思いますが。  一方で、水ビジネスの難しさというところでは、先ほどの大きな資金難、ファイナンスが問題であるというところであります。それから、一方で、この生命の糧としての水と、ビジネス、商品としての水と、いわゆるコモンズの、地域の共同資源なのか商品なのかという、こういう根本的な問題も出てきているなということであります。  ここは次に行きたいと思うんですが。  中国水ビジネス市場、これは参考までで、急速に、問題を抱えつつ、潜在的な市場が非常に大きいということであります。  日本企業群としましては、よく言われておりますように、水処理の機器関連とかエンジニアリング、あるいは商社と、要素部分では力を持っているわけですけれども、一貫した開発から最終的な水道事業、そして下水道、料金の回収、こういうふうなところではなかなか力がまだ発揮できないという問題であります。  資源の問題、水の問題というのは、結局はこの地球の限界に対して活動がより活発化している、この帰結ではないかと、こういうふうなことであります。  以上であります。
  7. 藤原正司

    会長藤原正司君) 柴田参考人、どうもありがとうございました。  次に、仲上参考人から御意見をお述べいただきます。仲上参考人、お願いします。
  8. 仲上健一

    参考人仲上健一君) 立命館大学の仲上と申します。今日はどうもありがとうございます。  私のテーマは、メコン川の流域開発問題ということに焦点を当てて御報告させてもらいたいと思います。(資料映写)  報告内容はこの四点でございます。  私の自己紹介につきましては、後で見ていただければというふうに思います。  メコン川というのを理解するためには、このように整理いたしました。一つは、非常に長い川で四千九百キロメーター、流域面積は七十九万五千五百平方キロメーター、そして、チベット高原から雲南省、そしてミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムを縦断して南シナ海に至るという非常に特色を持った河川です。もう一つの特色は、雨季と乾季の流量が非常に大きく異なるというのが特徴で、雨季の総流量は四千七百五十億トン、そして乾季の総流量は七百八十八億トンというふうになっております。国別にもいろいろな状況があり、そしてもう一つの特色は、メコン川流域には大小含めておよそ百二十五の支流があり、また非常に多くの小流域を形成しているというのがメコン川の特色です。  この特色につきましては、それぞれのデータを各国比較できるような形で整理をいたしております。  この図は、経済産業省の方で日メコン経済産業協力イニシアティブというような形で、現在、アジアのみならず、全世界がこのメコン流域にいろいろなインフラストラクチャーを造るということで、特に国道、有名なのは東西経済回廊、南部経済回廊、南北経済回廊という道路、そして橋、港が今一斉に造られている状況でございます。  こういう中で、メコン川を理解するためには、その歴史を知らなければいけないと。今日はそのことをるる申し上げる時間はございませんが、まず第一期として戦略的要衝としてのメコンということで、このメコンの有史以来の歴史があるんだということが第一期でございます。  第二期は、開発の中心としてのメコンということで、特に第二次世界大戦後、メコン川に関心を示したのは国連アジア極東経済委員会、エカフェとアメリカでございました。そこでいろいろな調査が行われ、下の方に書いてございます、一九五七年にホイラー報告書、これが出まして、これがこのメコン川の開発に関する基本的な報告書になっております。さらに、この報告書を受けまして、カンボジア、ラオス、タイ、当時の南ベトナム流域の四か国が一九五七年にメコン川下流域調査調整委員会、通称メコン委員会を創設をするという中で、みんなの合意の下に開発を考えようというメコン・スピリットというのがこのときに出ました。  それで、第三期は、その考え方に基づいて開発を進めようというのがありましたが、域内における混乱により停滞が行われました。特にベトナム戦争の影響は非常に大きかったというのが第三期です。それの中でも更に調査が行われて、特に日本との関係では、日本企業が担当したラオスのナム・グム・ダム、それから南ベトナムのセー・サン上流の計画調査ということで、一九六〇年代にも深く日本政府はかかわっております。  次、そのような中で、第四期としまして経済発展が行われます。これはメコン委員会の中で、一九九〇年代になって冷戦が終結をいたしまして、そして一九九五年四月にメコン川流域の持続可能な開発のための協力協定が調印をされまして、これを受けまして正式にメコン川委員会が設置いたしました。  メコン川委員会の特色をここで整理いたしておりますが、まず、基本的には持続可能な開発というテーマがこの基本になっております。さらには、二〇〇二年の会合で中国がステートメントを出すなどで、次々にこのメコン委員会に大きな影響力を持ってきたというのが特色になっております。  その中で、委員会の目的を、より焦点を当てて、流域管理、そして一九九九年から二〇〇三年の戦略計画ということで、コアのプログラム、そしてサポートプログラム、そしてセクタープログラムというような課題を整理をいたしました。二〇〇六年には戦略計画ということで、二〇〇六年から二〇一〇年ということで、十二項目という統合的なプログラムが今メコン流域では展開をいたしております。  こういう中で、二〇〇九年十一月六、七におきまして日本・メコン地域諸国の首脳会議が行われて、非常に日本の役割の重要性が再確認され、そしてその成果として東京宣言と行動計画が発表されました。この特色は、一言で言いますと、緑あふれるメコンに向けた十年、グリーン・メコン・イニシアティブの開始ということでスタートしたわけです。この中身は、従来の開発に加えて、持続可能な開発、流域環境保全、統合的水管理というような理念がこのメコン川の開発に入ってきたわけでございます。  その中で、メコンの問題を、水問題を特にどのように考えるかという背景といたしまして、次のスライドにございますアジアの水問題というのは、先ほどのお二人の参考人からございましたように、非常に深刻であると同時に重要な問題であるということで、水問題を悪化させないように各国政府は水資源の管理を始めなければいけないと。と同時に、水ストレスは既に深刻で、各国政府と地域社会が真剣に対策に乗り出さない限り、更に厳しい状況に追い込まれるというような認識が共通にございます。  このことを受けまして、日本では、二〇〇七年十二月に第一回アジア・太平洋水サミットというのが行われました。これは三つの課題を整理して、水供給と衛生の課題、そして水と災害、そして水と食料というような課題を設定して、そして目標を数値的に明確にしたという重要な意味を持っております。  こういう中で、メコン委員会が今どのように評価されているのかというのがこの点でございます。一つは、九五年の協定の下で、水利用プログラム、流域開発計画というのが行われましたけれども、現在は、その実際の活動は、加盟国の開発テーマを列挙することが中心で、そのため、加盟各国の開発プロジェクトに対する支援の窓口と化して個別の国内プロジェクトの実施にかかわるだけだと。援助を提供する側はMRCに対する信認度を低下するとともに、MRCを経過しないで直接対象国を支援するようになり、MRCの存在意義が今大きく損なわれている事態に現在なっているという評価になっております。  こういう中で、メコン川の流域についての現状ということで、現在は第三次五か年計画、〇九から二〇一三年に基づきまして、持続可能な開発を志向した統合的水資源管理を実施をするということと同時に、持続可能な開発を理念に掲げて環境に対する負荷を最小限にすると主張して、本流における水力発電のダムの建設計画を遂行と。従来は、本流におきましてダムを造るというのは非常に難しい問題がありましたが、現在はもう実行され、更に展開をするというようなことになっております。  これに対しまして、援助国、下流国、環境NGOから強い反発を受けると。また、上流国、中国によるメコン川の本流でのダム開発が現在多く、十四近く進んでおります。これに対しまして、下流国、特にタイとの深刻な対立が起こっているということで、一言で言いますと、メコン川委員会におきましても内憂外患というような形で、例えば、内憂に関しましては、域内で最も影響力の強いタイと電力を輸出したいラオスの思惑が一致したり、経済発展のためのMRCもこれに支援せざるを得ないということで、ある面ではメコン委員会が建設側と反対をしている反対勢力との板挟みになっている状況。また、外患といたしましては、実害が出ると対立が表面化するために、どのようにこの問題をアセスメントすればいいかと。三番目に、MRCに利害調整の機能がないということになれば、もうMRCの存在危機が、非常に危うくなってきているというようなことで、現在はこのメコン委員会についての評価そのものが大きな課題になっております。  それで、例えば、新たな課題といたしまして気候変動の問題があります。これにつきましては、メコン川流域のIPCCのみならず各国政府も研究をいたしております。気温は〇・七九度上がり、流域の北部においてもっと上昇するというような形で、非常に、例えば洪水の可能性も増大をすると、乾季における降水量が減少するというような形で、水災害及び干ばつへの適応策が喫緊の課題であるという認識はメコン委員会も持っております。  そういう中で、昨年度、このタイを始め、これはタイだけではなくて、ラオス、カンボジアでも非常に降水量が平年と比べて大きく、約一・四から一・七倍ほど変化がありました。この傾向は更に高まっていく可能性はあるというふうに考えております。  そういう中で、タイの被害、特に洪水発生県五県、そして死者が七百五十二人、行方不明者が三人というような事態が起こりましたけれども、このことを、二〇一一年度の教訓をベースに二〇一二年度は更に対策が必要だ、事前の対策が必要だというふうに考えております。  そういう中で、メコン川流域の水問題ということで、どのようにメコン委員会は考えているかということで先ほどのことを整理いたしますと、メコン川主流におけるダム開発動向は、上流地域における中国サイドに四つのダム、さらに十二以上のダムが計画をされていると。下流部においては、主流部で十地点でダム開発が計画されているという、このダム開発動向が非常に活発に動いております。そして、中国とMRC諸国間における関係ということで、下流部の諸国の主張では、環境、農業、漁業へのインパクト、これはあるというだけではなくて、例えばベトナムなどでは、特に最下流になりますベトナムでは非常に大きな影響があり、従来の主要産業である農業、漁業が成り立っていかないというまでの強い主張がございます。また、中国も、立場はもうメコン川の利用に関しては同等の権利を有するんだというような形で、この国際間の対立というのはますます緊迫をしていくんではないかというふうに考えております。  そういう面では、プロジェクトにおきましてもメコン水系の水資源の管理やそれを取り巻く環境についての言及というのが、いろいろ重要であると言いながら見られていないという中でこの被害というのが報告をされ、これをどう調整するかというのがメコン委員会の課題になっております。  そういう中で、三番目に、メコン川流域の政策的課題をどのようにとらえるかということで、一つは、先ほどの東京の会議でございましたように、第一点の持続可能な経済発展と。  この地域中国の発展及びインドの発展に連動して更に発展をする、特にインフラ整備が進む中で確実に発展するだろうと、そういう中では、やはり経済交流が持続可能な発展を保障するためにも、メコン川流域諸国のみならず近隣諸国とどのような経済依存関係を確立するかが重要であるというような形で、まさに単なるメコン川の水資源問題ではなくて、中国、そしてメコン地域、インドの発展を踏まえた経済依存関係の確立というのが重要になっております。特に、日本の関係では、メコン地域とは非常に深い関係が歴史的にもあり、かつ友好な関係がありますので、そこにどのようなリーダーシップを取るかというのが重要になると思います。  二番目に、流域環境保全の問題でございますが、水資源開発事業におきましては、戦略的環境アセスメントの導入とともに、少数民族の生活保障、感染症などの人間の安全保障の視点が重要であると。特に、水危機と戦略的適応策についての方策の検討が求められるというような形で、気候変動とも関連して新たな流域環境保全が必要だと。  三番目に、統合的水管理ということで、いろいろなセクターがございます。この複雑なセクターにおきまして、国際機関、国家、そして地方政府、企業、市民、NGOなどのステークホルダーの調整が必要になり、そこのことを踏まえて、統合的水管理の共通の認識が必要ではないかというふうに考えております。  最後に、政策提言というほどまでのことではございませんが、メコン川流域をどのようなガバナンスで考えることが重要であるかというので、四点ほど整理しました。  一つは、メコン川流域開発の持続的発展と環境保全ということで、アジア世界の経済発展を保障するための流域環境保全政策を構築するという形で、流域の保全ということと経済発展をどう調和させるかというのが一点でございます。  二番目は、メコン川委員会の基本的精神はメコン・スピリットということでございますが、もう既に中国及びインドとの関係が非常に大きくなった中で、さらに、日本との関係を踏まえて新たなメコン・スピリットの確立が要るのではないかというのがこのメコン川流域のガバナンスの重要な視点ではないかというのが二点目です。  三点目は、メコン川流域ガバナンスと日本取組ということで、長い歴史、古くからいえば山田長政以来の長い歴史があります。そういう中で、技術、経済に裏打ちされた存在感をアピールするということが重要ではないかと。  四番目に、水への希望ということで、二十一世紀は水の時代、そしてアジアの時代という面で、水の安全保障という視点でこのメコン川流域にそれを確立することが重要ではないかというふうに考えております。  そういう中で、例えばメコン川流域への日本のかかわり方ということで、非常に現在成功している例といたしましては、今、環境改善技術の輸出ということで北九州市によるカンボジアへの水道技術協力、これはもう十年も前から行われております。  こういう面で、急速な経済発展に伴って環境悪化が顕在化している中で、この日本の技術は、非常に丁寧にかつ確実に、そして継続的に行われるという高い評価が行われております。そういう中で、戦略性については中国、インドとは大分異なっておりますが、こういう一個一個仕事をきちんと行っていくというのが非常に高い評価を行われていると。例えば、日本の一村一品運動なども非常にカンボジア、ラオス、またタイでも高く評価されているというような技術がございます。  もう一点は、気候変動の適応策に関しましては、日本がこれまで蓄積した治水技術、例えば治水ダム、スーパー堤防、地下の貯水池、そのようなものの活用、また雨季における多過ぎる水と乾季における少な過ぎる水への両面の対策、こういうふうなシステムを導入することによって、日本のプレゼンスというだけではなくて、真にウオーターセキュリティーに対する対応策ができるのではないかというふうに考えております。  以上でございます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  9. 藤原正司

    会長藤原正司君) 仲上参考人、どうもありがとうございました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  まず、各会派一名ずつ指名をさせていただき、その後は会派にかかわらず発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。  質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようお願い申し上げます。  なお、質疑の時間が限られておりますので、委員の一回の発言は三分程度となるように、また、その都度答弁者を明示していただきますようにお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。  藤末さん。
  10. 藤末健三

    ○藤末健三君 参考人の先生の方には、貴重なお話を本当にありがとうございました。  私は民主党の藤末と申します。  私自身、水の話にはすごく興味を持っておりまして、今までODAの関係でいきますと、エジプトの日本水道事業や、あとカンボジアの井戸の事業、あとベトナム河川の開発なども現地に行って拝見させていただきました。  その中で非常に感じましたのは、やはり、今日もお話ございましたが、我々のいろんな支援のプロジェクトが統合化されていないという形でございまして、例えばエジプトでありましたら、造るだけ造ってあとはメンテナンスをしておりませんでした。したがって、水道日本ODAで造ったプロジェクトは止まっているという状況。また、カンボジアにおきましても同様でございまして、初め計画を作り井戸を掘っていく、途中で砒素が見付かりましたのでそれは止まったままという状況で、非常にやりっ放しじゃないかなという状況が非常に大きかったと思います。  三人の先生方にお聞きしたいのは、やはり我々の日本の水技術は非常に進んだものと思うんですが、滝沢先生からお話ありました経済産業省の実は研究会も、私は野党時代に経済産業委員会でいろんなことを見た中で提案させていただいて動き出したというところもございます、実は。ただ、その後いろいろ役所の方に議論していただいたにもかかわらず余りにも遅々として進み方が遅いというふうに思っておりまして、三人の先生方にお願いしたいのは、我々が国会の方から国会議員としていろんな提案が政府にできますので、我々がこの委員であり、そして国会議員としてどういうことがお役に立てるかという知恵をちょっとお三方にいただければと思いますので、是非よろしくお願いいたします。  ありがとうございます。
  11. 藤原正司

    会長藤原正司君) それでは、まず滝沢参考人からお願いいたします。
  12. 滝沢智

    参考人滝沢智君) ただいまの御指摘の点ですけれども、一つは、水に関するいろんな地域で多様な事情があるということですね。  日本にいますと、日本水資源、まあ飲料水水道水に限りますと八割近くが、八〇%近くがダムを造って表流水を開発して、こういった技術は非常に日本が進んでいて経験もあるんですけれども、海外に行きますと、小さな井戸を使っていたり、いろんな水源でそれぞれの課題があるんですが、そういったものが十分に整理された形になっていない。  どういう問題が、あらかじめ起こり得る問題、先ほどの井戸の砒素の問題も、この地域であればこういう課題があり得るということを前提に入っていけば、出てその時点で慌てるということは多分ないと思うんですが、そういった情報が、個別にそこの地域に行った方々はいろいろ経験としては持っているんだけれども、どこかにしっかりとした情報として、これからその地域ODAをやるんでも開発をするんでも、行く人がちゃんとそこの情報が容易に取れるような形で整理されていないと、誰かが十年前に行って失敗したんだけどまた行って同じような問題があるとか、そういうことになりがちですので、水の問題は日本と同じだという頭では行かずに、海外の水問題は非常に多様だという前提で入っていく。そのためには、これまでいろんな地域に専門家も出て、ODAであれば専門家も出ていますし、議員の先生方も行かれていると思うので、そこを何とか統合的に分かりやすく伝えるような情報源というか、情報ソースが整理されていればいいというふうに思います。  もう一点、水ビジネスといえども、顕在化していないというふうに先ほど言いましたけれども、需要はあるんですけれども、その需要を、いかにお金が回ると、水が供給されるというだけじゃなくて、お金の面でもいかに需要家からお金を回収して、それを借りてきたお金を返すような仕組みをいかにつくるかというところまで立ち入って考えていかないと、なかなかその需要があるというだけではビジネスに結び付かない。そこがちょっとまだ十分な取組でないところじゃないかと思います。
  13. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) ほとんど先生のお話のとおりなんですけれども、基本的には一般的な支援の枠組みに対してやはり現地のニーズというのはニッチなニーズでそれぞれ違うわけでありますから、とにかく現地で進めていって問題点をくみ上げる、それをまた一般的なルールに取り込んでいくと、こういうふうな仕組みが必要なのかなという気がいたします。  以上です。
  14. 仲上健一

    参考人仲上健一君) どうもありがとうございます。  水の付き合いは非常に長い付き合いということで、例えば、十年というのは援助する側から見れば長いように見えるんですけれども、地元の人によれば十年でも百年でも長く付き合ってほしいというのがやっぱり根底にあると思います。  そういう面では、よく評価されるのはファースト・イン、ファースト・アウトというので、問題を発見してこんな問題だというのは評価されるんですけれども、日本のやり方はラスト・インでラスト・アウトで一番評価されない方式で、私はそういう両方じゃなくて、ロングステイというか、やっぱり今の若い人は非常にそういう気持ちが高くて、この国の発展のためには自分の人生をささげてもいいという人たちが、もう二十年、三十年ではなくて何世代にもわたってこの地域の水問題とかかわるんだというような形になれば、例えば中国の太湖という大きな湖があります。そこに浄化槽を一個造るのにせいぜい二千万ぐらいでできます。しかも、地元も非常にお金がこのごろありますので、そこを一個造り、将来的には太湖の周りを二千個造るというような形で実績があれば、もうその代わり一生太湖の周りに住むんだというような形の方式が今後求められていくんではないかなというふうに思います。  そういう面では、先ほどハノイとかバングラデシュでも砒素の問題を、日本の場合、砒素の対策技術を導入で、後、引き揚げるんですけれども、例えばスイスの会社とかそういうところは、二、三人の人がもう何十年の単位でそこに住んで新しい技術を普及して、その問題が解決するまでもう一生ここにおるんだという覚悟の下にやればまた付き合い方も違ってくるというようなことで、切替えが僕は必要ではないかなというふうに個人的には思っております。
  15. 藤原正司

    会長藤原正司君) どうもありがとうございました。  それでは、次の質問を受けます。  自民党の山田先生、お願いします。
  16. 山田俊男

    ○山田俊男君 先生方、貴重なお話を大変ありがとうございました。  水不足は必ず生ずるという先生方のお話であったかというふうに思うんですが、その中でも、柴田先生のお話にもありましたが、食料の問題も含めまして、大変な食料の高騰だったり、それからコストの高騰だったり、それから水不足が生ずるということなわけですね。相当の混乱や、それから超インフレといいますか、そういうことも含めて生ずると。  ただ、お話それぞれありまして、先生方の中にもいろんな期待感があるわけで、一つは、水の浄化といいますか、浄水が技術的に可能かどうか、膜のお話もありました。それから二つ目には、海水の淡水化ができるかどうかということですね。もう相当程度やっているんだけれども、コスト高いよというお話もあります。三つ目は、節水やリサイクルがどんなふうにできるかということもあります。四つ目には、牛肉等、水を大いに必要とするものについての生産を転換していくということ、それで農産物の種類、食料の種類を変えることによってどの程度節水が可能かということがあるというふうに勉強させてもらったんですが。  これらのことについて、これ、先生方にだからお聞きしたいんですけれども、大きくは、世界の人類はちゃんと知恵や、それから節度や、それからそれぞれの国に対する配慮を生かしてちゃんと克服できていけるというふうにお考えになるものでしょうかね、これが一つ。  二つ目は、それとも、大変な混乱を経過しながら、どうですかね、議論のありました金融ビジネスみたいなものがそれぞれ介入してバランスを取っていくといいますか、一定のバランスを取っていくという、これは二番目の話は大変な混乱を経た上での話になるのかというふうに思うんですが、これ、どんなふうにお考え、まあよく勉強されてきた先生方ですから、この深刻なこれらの問題についてどんなふうに展望されているのかなということをお聞きしたいということです。
  17. 藤原正司

    会長藤原正司君) 質問はどなたが。
  18. 山田俊男

    ○山田俊男君 先生方にそれぞれお願いできたら。簡潔にいただければいいです。
  19. 藤原正司

    会長藤原正司君) それでは、まず、逆に仲上先生からお願いします。
  20. 仲上健一

    参考人仲上健一君) 節度は持って生きることができるかということで、まあ欲望は無限として、ある程度の水の大事さが、環境問題も大分意識が高まったように、水の大事さが認識できるような教育と同時に、そういう生活スタイルが重要なんだということで、私はできるのではないかと。やっぱり、できないというふうになれば答えが出てこないので、できるという前提でどのようにすればいいかというのが一つの私の考え方です。  それと同時に、水問題は人々の命の問題であり、また人々の生活の問題ですので、それが金融ビジネスの中で、特にもうお二人の先生が言われましたような水ビジネスの中で、水問題をどこまでかかわっていいかというのは一種の倫理観も要るのではないかと。これ以上やったらもう、お金はもうけたけれども人の命がなくなったという問題は、それは政府としても政治としても一定の枠をはめないと、無限の欲望に対してはやっぱり人間の命の方がもっと大事なんだというのを僕は強調した方がいいのではないかというふうに思っております。
  21. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 非常に難しくて、しかも極めて重要な問題提起だと思うんですけれども、基本的に、価格の上昇、要は水の問題とかこういった資源の問題をいわゆる市場のメカニズムで解決していいのか、あるいはもうちょっと共同管理的なこういう仕組みが必要なのかということになるかと思うんですけれども、大きなやはり流れというのは、グローバル化が進んでくる中で好むと好まざるとにかかわらず市場メカニズムというのが進み出している。食料も水も言ってみれば分配の問題だという見方もありますけれども、強制的にこれを分配してしまった場合に何が起こるか。多分、食料などは、翌年は価格が暴落して、食料の生産はかえって減産してもっと深刻な問題が起きてしまうというのも、そういう懸念もあるわけですね。だから、共同管理が本当はできればいいわけですけれども、今、G7、G8の世界ではなくて、G20で、Gゼロだと、もうそれぞれの国が国益を追求して資源の争奪戦に動いているという状況ではなかなか難しいわけであります。  したがって、私は、一つの期待というのは、価格の上昇というのは単にそれが困ったという話ではなくて様々な技術革新を促していくと、こういう一つきっかけになる。日本はその中で、日本の得意技というか役割というのは、資源、水に関する四つのリとか三つのリとか言われますが、リプレースであり、リサイクルであり、リデュースであり、こういった技術面での対応で補っていくということなのかなという気がいたします。
  22. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 水の問題は幾つかの区分けができると思うんですが、ざくっと分けますと、水があるところの水の問題。水はたくさんある、雨も降るんだけれども、人口も増えて水質が悪くなってという地域の問題。それから、水が絶対的に足りない、非常に乾いていてそもそも水がないという地域の問題があると思います。  水があるところの問題は、これはいろんな工夫で解決の仕方があるんじゃないかと実は私は考えております。しかし、その水が圧倒的にないところで人口が増えて水需要が増えると、元々水がないわけですから非常に厳しい状況になる。しかも、その水がないところでも、水はないけれども石油資源があるとかお金があるところは海水淡水化も含めていろんな技術で解決があると思うんですが、水もない、だけどお金や資源もないところは、例えて言えばアフリカ幾つかのサブサハラと言われているような地域ですが、こういうところで人口が増えて水需要が増えて、さらに気候変動のようなことがあってもっと乾燥化してしまうと、いわゆる環境難民とかそういったことも考えられると思います。  ここは非常に厳しいところでありまして、日本も、日本中心になってどういう解決策が考えられるかということを、その国だけに任せるのではなくて、国際社会が何らかの形で解決策を一緒に考えてあげるということが大事だろうというふうに考えております。
  23. 藤原正司

    会長藤原正司君) 次、質問を受けます。  松田先生。
  24. 松田公太

    ○松田公太君 ありがとうございます。みんなの党の松田公太と申します。  まず最初の質問は滝沢参考人柴田参考人、そして二つ目の質問が仲上参考人にお聞きしたいと思います。  最初の質問ですけれども、これは滝沢参考人お話の中であったことですけれども、潜在市場から顕在市場へということで、マーケット自分たちでつくっていくんだと、こういう話だと思います。私も本当にそれに賛同いたします。  柴田参考人も、お話をお伺いしている以上は多分それに御同意いただいているんじゃないかなというふうに思いますが、実際、潜在市場から顕在市場へ変えるためにもうちょっと具体的にどのような手法があるのか、もちろんODA等考えられると思うんですけれども、例えばそのODAを行った場合に、どのようにそれを実際のビジネスチャンスに、プライベートセクターのビジネスチャンスにつなげていくべきだと思われるか、他国の例えばいい例があったら是非それも教えていただければというふうに思います。  二つ目の質問は仲上参考人にお願いしたいんですけれども、これは、国別の流量につきましては、メコン川で最も比率が高いラオス、三五%ということですが、ラオスについてお聞きしたいと思います。  ラオスは、十分御存じだと思いますが、中国からの投資が急増したわけですね、二〇〇〇年から。特に二〇〇〇年から二〇一〇年ぐらいまでは急増しまして、たしか日本の六倍ぐらいの投資を受けていたんじゃないかなというふうに記憶しております。その中で、中国との関係、依存度がどんどん高まってきたんですけれども、トンシン首相になられてからその政策を方向転換されまして、非常にちょっと中国の方が強引な手法があるということで危機感を感じたらしく、日本に対して協力、援助、これを求めてきました。実際、今年の一月、ODA調査班の一員としてラオスの方に伺わせていただいたんですけれども、副首相や大臣とお会いしたときに、ダム建設の協力、支援、これを直接依頼されたんですね。  いろんな問題点は先生のお話からあるというふうに感じたんですけれども、ただ、私はやはり今後の日本の外交のためにも、ビジネスチャンスのためにも、これは非常に大きなチャンスじゃないかなというふうに思っています。  実際、我々がそのダム建設、これを支援するということになりましたら、どのような点に留意しながらやるべきか、これを是非教えていただければと思います。
  25. 藤原正司

    会長藤原正司君) 一点目は柴田参考人だけでよろしいか。
  26. 松田公太

    ○松田公太君 お二方です。
  27. 藤原正司

    会長藤原正司君) それでは、まず一点目について滝沢参考人柴田参考人。  まず、滝沢参考人、お願いします。
  28. 滝沢智

    参考人滝沢智君) いかにして顕在化市場にするかということですが、これは海外で成功した事例というのは幾つかあると思います。先ほどおっしゃられたプノンペンとか、それからこれ日本民間企業もかかわっておりますけれども、マニラウオーターの事例と。サービスレベルが改善していくプロセスの中で支払意思も上がっていくという事例があります。こういった事例を少しでも増やしていくということが重要だろうと思います。  もう一つは、いろいろな国で規制や制度、枠組みがしっかりしていないという課題があると思います。ある東南アジアの国で、例えば首都圏の水道のマスタープランを作った、こういうものを造ろうというマスタープランを作ったんですが、そのための建設資金はどこから出てくるんですかということを聞くと、それはまた別ですと。それはどこかの国がODAで持ってきてくれるんじゃないかという期待とか、お金とプランが付いていないフィジカルなプランはあるんですけれども、それをファイナンスするためのお金をどこから持ってくるのかということがきちっとリンクできていないんですね。そういったプラン作りの弱さということも多分あるだろうと思います。何かを造るというのであれば、市民が受益者として払うのか、国が税金でどれぐらい持ってくるのか。ODAでやるのであれば、どこの国とそれが可能なのかといったお金のプランと一緒にやっていかなければ、それはしょせん絵にかいたもちになってしまって、いつまでたってもプランはあるのに全然実現しない、そういうところがいっぱいあるんだと思います。  そこをいかに改善するかということですが、これは民間企業に、よし、頑張ってくださいと言うだけではなかなかできなくて、やっぱりGGといいますか、政府同士でそういったことが重要ですよということをしっかりと相手とかかわりながら、そういうお金の面も含めて相談に乗っていくといった、もっと距離を縮めてお金の面も何らかの形で相談、全部を出すということではなくてもっと相談に乗ってあげると。マスタープランの始めのところからそれをやっていかないといけないんじゃないかなという気がしております。
  29. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 最も優先されるのは、潜在市場から顕在化といっても、潜在市場のところでニーズがまず飲み水、安全な水へのアクセスが非常に高い地域において具体的に彼らに安全な水をいかにして供給できるのかという、こういうところがビジネスの前に必要なのかなという気もするんですけれども、やはり例えばグラミン銀行とヴェオリアがバングラデシュで行ったような、少ない投資でもって水を与えていくような仕組みをつくっていく。とにかく、やはりそうした小さな動きでも、いかにその資金を工面していくのかというのが重要でありますので、そこに日本などもまず何らかの形で協力していくということが必要なのかなと。  ベースを広げていくことによって経済成長をやはり促し、皆が豊かになって、最終的には海水の淡水化とかいっても、基本的にはそれは水源の確保、安全な水の確保のあくまでも補完的な位置付けだと思うんですね。基本的にはいかに安全な水源を確保して供給していくのか、ここが重要であって、そこはいきなりはなかなかビジネスライクでは進んでいかないような気がいたします。
  30. 藤原正司

    会長藤原正司君) 二点目について、仲上参考人、お願いします。
  31. 仲上健一

    参考人仲上健一君) どうも御質問ありがとうございます。  非常に重要な御質問で、今メコン地域ではこの問題が非常に重要に議論をされております。特に中国影響というのは非常に大きいと同時に、ラオスも小さい国ながら、このダム建設については、非常に被害を受けると同時に、建設をすることによって電力計画、国の発展を求めていこうというような形で現在その方向性を探っているというところで、現在の状況はダム、ラオスの中に十、そしてカンボジアに大きいダムができて、そしてダム、戦略的な環境アセスメントは大体終わる中で、次の手段として、一九九五年にPNPCAというような形で一種の協定ができています。  これは、ダムを造った場合に、いろいろなことをやる場合に、MRCに報告して諮問を受け同意を得るというようなことを、手続を経なければいけないというようなことで、もし現在の、今先生の質問にありましたような、ダム建設に関しましてその合意を得たらもう確実に建設をされると。ところが、その影響そのものの審査する時間なり、審査する内容なり、また影響の大きさなりがそう簡単には把握できないと。しかし、その中で、そのMRCが簡単に結論を下した場合は、多分MRCの権威が下がるだけではなくて、ラオスと今度ベトナムの対立、また、カンボジアとラオスの対立はもっと激化すると。特に日本が、ラオスとの関係は今現在非常に友好な関係ですけれども、この問題に日本が、言わばラオスのダム建設計画に関しまして、アセスメントも得意ですし、この問題に言わばゴーサインを与えるような形になれば、今度はラオスの問題ではなくて日本にも、やはりかなり全世界から非難をされる可能性が僕は高いと思っています。  そういう面では、日本も環境アセスメント、戦略的アセスメントの能力がありますので、そういう面では、この問題について的確な評価をして、そして的確なサジェスチョンをしなければ、日本は何のためにそういうASEAN地域とかかわりを持っているんだという、中国から見ても、今度は日本に対する一つの批判なり攻撃の材料に僕はなるんではないかというふうに見ております。  というのは、今回のダムが第一個目で、あと十二個のダムが本流に予定されています。そうしたら、もうそれ以降のダムの建設にも影響を与えると同時に、それに対してどういう見識を持った行動が日本ができるかどうかというのはかなり注目されたことでございますので、先生が一月に行かれた質問というのは物すごく意味が大きい課題だというふうに思って、日本としても責任を持った対応が要るんではないかというふうに思っております。
  32. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  次の質問を受けます。  石川先生。
  33. 石川博崇

    ○石川博崇君 公明党の石川でございます。  三人の先生方、今日は大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。  先ほどの松田先生の御質問にも非常に関連するんですが、私も、最初滝沢参考人がおっしゃられた潜在市場から顕在市場へということを非常に関心深く伺わせていただきました。しかし、その顕在市場にするに当たって、やっぱり特に今低所得の地域、国における市場顕在化、そしてそれに対して必要なファイナンスの確保というのは、なかなか言うはやすく行うのは難しの課題なんではないかなというふうに思っておりまして、そこについてもう少し詳しくお聞きしたいんですが、例えば、この水ビジネスがその地域全体の経済の活性化にもつながる、例えば工業用水という形にして、その地域の工業の活性化、そしてその地域のひいては水ビジネスへのファイナンスへも将来的に結び付いていくような、そういう取組というのは考えられないのか、あるいはそういうことをやっている地域があるのかということを是非お聞かせいただきたいなというのが一つ。  もう一つ、低所得地域のみならず中所得地域においてはPPPの活用とか、あるいはもう一つ、低所得ではBOPの活用とかそういったものも進んできていると思うんですけれども、そうしたものが今後どれぐらい可能性というものを秘めているのか、滝沢参考人柴田参考人から是非御意見をお聞かせいただければなというふうに思います。
  34. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 大変的確な御指摘だと思うんですけれども、水で顕在化する市場にするというときに、やはり日本企業だけが行ってもうかるという仕組みはあり得ないだろうと思うんですね。相手国の中で水に関連した企業をうまく育成していく。  例えば、日本の水ですと、上下水道で五兆円とか六兆円とか言われていますけれども、管工事組合から始まって、地域も含めて、大きな企業ももちろんありますけれども、地域の中でいろんな事業主体が水の分野で仕事をして、それで生活をしている人たちがいるわけですね。そういう人たちがやっぱり水を支えているという状況があって、当然仕事ですからそれで生活ができているわけですね。そういう人たちは当然、サポーターといいますか、水をしっかりと守っていきましょう、水道を支えていきましょう、下水道でもそうですけれども、そういう人たちが育ってきてやっぱりサポーターがいるということになってくると思うんですね。残念ながら、途上国を見ますと、そういった産業現状では余りありません。ですから、サポーターがそういう意味ではいないわけですね。  ですから、水だから水だけでいきましょうということではなくて、水に関連したいろんな、水分野って非常に裾野が広くて、小さなパイプから水道メーターから、いろんな小さな産業もあるんですね。そういった産業で、現地でつくれるもの、現地でやれる産業をうまく育成して、現地の中で雇用機会も増やしながら、産業を育成しながら、日本企業もそういうような中でお手伝いをしていくというような仕組みを産業振興の部分とうまく生かしていくことが、もう一つ私、重要なことかなというふうに考えております。
  35. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 潜在市場から顕在化というときに、先ほど水ビジネス、工業を発展をさせてとありますけれども、何というか、経済の発展段階に応じて、もうそれぞれに今必要な水というのがあるわけですよね、ニーズがあるわけですね。だから、経済発展していって工業化が進んでいくと、また工業用水なり、もっと高度な水というのが必要になってくるわけですけれども、それまでのつなぎの時間というのは非常に長いこと掛かるわけで、今、そういう面でいくと、より深刻な水の問題というのは、足下の飲料水に、安全な水にいかにアクセスできるのかというふうなところが例えば一つ日本支援課題、対象になってくると思うんですね。  それで、先ほどのようにもっと中段階の発展のときの水のニーズと、みんな要はばらばらだということなんですね。終始一貫はしていないんで、じゃ、より深刻な、安全な水へのアクセスというふうなところでいくと、やはり、例えば浄化機器、簡単な浄化機器ですけれども、汚れた水を通すことによって、取りあえず足下の飲料水は確保できるとか、そういうふうな支援の仕方というのもあるんでしょうし。  例えば、日本企業ですと、山梨県の浄水関連の企業などは、膜で浄化するのではなくて、いわゆる石を逆に積み上げて、通常は上から下に落として浄化していくんですが、下から上に石の積み上げるノウハウを持っているわけですね。それで原虫とかそういうものを除いてしまうという、こんな技術も持っているようでして、まあオーソドックスな技術ですけれども、海外においては応用が可能じゃないかなという気がするんですね。  そういうものを個別の案件でそのニーズに応じて支援していくというのが、まずはそこの安全な水のニーズがあるところには必要だと思うんですけれども。
  36. 藤原正司

    会長藤原正司君) よろしいですか、石川君。
  37. 石川博崇

    ○石川博崇君 PPPとBOPの可能性について。
  38. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) BOPも私はかなり期待しているんですが、ただ、そこで例えば日本人が一人その中で介在していると、もうそれだけでBOP、そのコストで成り立たないというふうな問題がありますので、なかなか現実には難しいのは難しいんですよね。だから、採算、市場メカニズム以外の部分での支援というのが必要になってくると思うんですね。
  39. 藤原正司

    会長藤原正司君) どうもありがとうございました。  次、質問を受けます。  紙さん。
  40. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子です。  三人の参考人の先生、どうも今日はありがとうございます。  最初に、滝沢参考人からお聞きしたいんですけれども、水ビジネスの展開の成功に向けてということで事前にいただいている資料の中に書いてありましたが、後半部分のところで、水道経営の成功の鍵は、外部から持ち込んだ技術よりも、住民自らが主体的に関与をして効率的な経営システムをつくり上げることにあるように思われると。海外での事業として成功するためには、日本流の高度に完成されたシステムを一度忘れて、謙虚に現地住民の知恵や創意工夫から学ぶことが重要であるというふうに述べられているわけです。  この住民自らが主体的に関与するということが重要であるということの意義というか、その辺のところを、もし実際それでうまくいっている例があるのであれば、それもちょっと紹介いただきたいということがまず一つ。  柴田参考人には、穀物の国際的な需給関係と食料自給率についてなんですけれども、穀物の価格の高騰が、投機マネーの動きとか中国やインドやブラジルや、こういう国々、新興国での需要の拡大に原因があるということもさっきお話しされているんですけれども、やっぱり世界的なそういう動向を見ると、食料の自給率というものを高めていかないといけないというふうに思うわけです。  その食料自給率を高めるためには増産ということが必要になるわけですけれども、その点で、国内政策的にはどういうことが大事なのかということと、外交交渉、それがどうあるべきかということの御認識を伺いたいということ。  それから、仲上参考人には、水危機への戦略的な適応策と統合的水管理というのが書いてありますけれども、その中で、近年の気候変動、気候の変化は、メコン流域においては、自然界の生態系に影響を与え、農業と食料供給にも打撃を与えることになるだろうというふうにありまして、これから想定されるその中身というか、具体的などういうことが想定されるのかということについてお聞きしたいと思います。  じゃ、よろしくお願いします。
  41. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 住民の関与についてですけれども、世界中どこでも水の値段、水道料金が上がるということに賛成する住民の方はいなくて、絶対反対だというところが多いんですね。しかし、その水の原価、供給するための原価と比べると、多くの国で原価割れといいますか、原価よりも非常に低い値段で設定されていまして、差額はどうしているかというと、税金で補填するとか、そういうような状況になっているわけですね。  これは、やっぱり水の値段が、じゃ、携帯電話の料金に比べて高いか低いかというと、恐らく通信料の方が途上国でもたくさん払っているんですが、支払えないから高いというのじゃなくて、やはり水って本来ただじゃないか、特に雨の多い東南アジアなんかは、水なんてそこにあるんだからただじゃないかというベースからいいますから、ちょっとでも上がるとそれは高いということなんですが。それは、水を造るためにどんな努力が必要なのか、ダムを開発して、浄水、水をきれいにして皆さんの家庭に送るというサービスのためにどういうところでお金が掛かっているかということを十分御理解いただけないので、上がったら高い、高いという形になると思うんですね。  住民の関与が必要だというのは、何も途上国なりアジアだけではなくて、日本でもやはりそういったいろんなプロセスがあって、そこでどれぐらいお金が掛かるかということをむしろ住民にディスクローズして、お示しして、こういうお金が掛かっていますと、そのサービスに比べて幾らぐらい払えるんですかということを御判断いただくということが必要なんだろうと思うんですね。  そういったプロセスの中で、全て水道局側で全部秘密にしているんではなくて、そういう情報を提供しながら水道の料金なりを設定していくという中で、やはり住民のかかわりという、あるいはむしろ私自身は、住民の、ただであるべきだと、本来ただであるべきだという考え方を一度忘れていただいて、どのレベルサービスに対してどれぐらい払えるかということを白紙の状態から考えていただく、そのためには住民ができるだけいろんな機会で、早い機会で関与していただくということが必要だろうと思います。なかなか大きな都市では難しいですけれども、小さな規模水道ですと、こういうことをやって、非常に支払意思が高くて、自分も経営にまで関与してこようというような水道は東南アジアでもあります。
  42. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 世界的な食料の需給の逼迫というのが予想されるわけですけれども、国内においては、まだ過剰が問題だという、こういうふうな見方で、米の生産調整が依然として行われているわけです。私は、生産調整を行っているがゆえに、水の利用も、水資源もフルに利用されていないんですね。生産者の意欲も失われ続けてきているわけであります。  これは、やはりもう政策的には切り替えて、もう国内の例えば水田は水田としてフルに活用していく、農家の手かせ足かせを外して思いっ切り生産してもらう、そのときに初めて水が足りない、水源涵養林が荒れ放題になっているとか地域のコミュニティーが崩壊してしまっているとか、こういう問題がより鮮明になってくると思うんですね。  その上で、言わば農業に対するストレステストみたいなものを一回やってみる必要があると思います、早急にですね。その上で生産力が発揮されれば、これは結果として自給率が上がってくるわけであります。自給率の引上げが目標、目的ではなくて、生産力を引き上げる。生産力は、単に農地があればいいという話ではなくて、水も人材も地域コミュニティーも森林も、全部この地域資源を丸ごと保護、保全していく、こういう方向が今必要であると思うんですね。  じゃ、水田をフル活用して大増産になってしまうじゃないか、こういう心配もあるわけですけれども、まず、そのぐらいの復元力が日本の農業に残されていればまだ安心なんですけれども、多分にそういう大増産には至らないような気がするんですね。その能力というのはまさに失われている。仮に大増産になった場合には、私は輸出に活路を開くということで、これは生産者だけで解決する問題ではなくて、商社始め食品産業海外にマーケティングを行っていく。国内はフルに生産をし競争力のあるものを輸出に向けると、こういうことですね。早急に切り替えていく必要があるなと思います。
  43. 仲上健一

    参考人仲上健一君) どうもありがとうございます。  「水危機への戦略的適応策と統合的水管理」という本を出しました。それは、従来は気候変動があるかどうか分からないというような時代、もう十年前はそんな時代ですけれども、そのときには緩和策というふうな形でなるべく起こらないようにしましょうと。それが、二十一世紀になりますと、もう起こるのはほぼ確実だというようなレベルから、今はかなり、特にIPCCの第四レポートぐらいからはもうかなり確実にどれくらいの数量で起こるというのがほぼ分かり始めて、そして、それをベースにメコン川流域の各国も二〇二〇年、二〇五〇年、二一〇〇年の数値も大体出しています。そういう面では、一般論じゃなくて、今先生言われたような、もう具体的な課題とどう対策をするのだというのが今近々の課題になっております。ということを背景に、昨年度もタイ、ラオス、カンボジアでも被害が起こったという面では、まず被害の形では、森林、それから田畑、そして河川、そして河口も、かなりどれくらいの影響度があるというのは数値的に出ております。  これに対して、ああ、その程度かと見るのではなくて、特にこの地域に関しましては約七割から八割がやっぱり農林水産業生活をしているという、生活の打撃というのはかなり、単なる自然的な問題ではなくて、そういう打撃も起こるし、特に森林の破壊などでその固有の民族、例えばベトナムでも約六十の民族が山村地域生活しています。そういう民族自身の生活も非常に破壊されていくというような個別の問題。従来では、経済中心に考えて、そういう個別の民族の問題は小さな問題というふうに言われていましたけれども、文化的生活環境も大きな問題だというふうに考えております。  そこで、統合的水管理、それに対して、例えばダムを造ったり、いろいろそういう問題が起こらないような対策をするというのが簡単にできるかどうかといいますと、先ほど御質問をいただきましたように、そう国際的な調整はうまくいかないという中で、やはり問題の領域をいろんな視点で、例えば持続可能性とか水の保全性とか、いろいろな視点で何が大事なのかという考え方をやっぱり整理をしていくと同時に、やはり対策をする場合に、説明責任、そして透明性、公平性、効率性というふうに言われていますけれども、国によって立場が違うので、国内での透明性、そして説明責任というのは一定の暗黙の了解があっても、こういう国際社会の領域では、今まで議論をしなくても通じた社会が新たにこういうふうな問題の中でやる場合には、統合的にそういうことが、ルールとしましょうというための議論が必要ではないかというふうに思っております。  そういう中では、やっぱり被害が確実にこれだけ来て、これだけの影響が出て、それに対してみんなでまとめて、メコン地域だけではなくて、アジア地域、そして日本も含めて先進国もこの問題をどう解決するかというような合意をまずやって、そしてその次には、そのことをするための対策としてのメニューをたくさん、これは日本でもたくさんのメニューがあります。それを、この部分は適用できるかどうかという、一方の押し付けではなくて、やっぱり対話によってそのメニューを見て、そしてそれを持続的に観察していくという時代が始まったのではないかというふうに思っております。  以上です。
  44. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  一応、各会派一名ずつの御質問をお受けいたしました。  これから各委員個々の御質問をお受けしたいと思いますが、初めて会長質問させていただきます。  まず、仲上参考人にお聞きしたいんですが、メコン川は中国に端を発する国際河川です。ところが、国際河川であればあるほど、その流域の利害調整というものが大変難しくなってくると同時に重要だと思いますが、先生のお話ではMRCの存在意義がだんだん低下している、利害の調整能力が低下しているというふうにおっしゃっていますが、こういう分野日本が果たすべき役割はあるんでしょうかどうかということが、仲上先生。  それから、滝沢先生、水道の蛇口をひねって水が飲めるのは日本だけではないかというふうに言われております。ほとんどはまあ水と呼べないような水なんですが、そういう中にあって、今、例えば滝沢先生のこの中国水質汚染見させていただいても、中国というのは大変水が不足している地域です。こういう中で、私は水も石油も石炭もガスも同じ戦略物資だと。日本のように少資源国にとって戦略物資を持つか持たないかというのは大変大きな意味を持つと思いますが、日本のこういう技能だ、技術だ、あるいは人材だというものは、今後アジア地域の水問題に関してそれなりの影響力を持ち得るものかどうか、お尋ねしたいと思います。  二点お願いします。
  45. 仲上健一

    参考人仲上健一君) どうもありがとうございます。  今非常に重要な御質問で、このような国際河川を調整できるのかということで、従来の考え方と今はかなり私は違ってきているんじゃないかと。それは、やっぱりこの地域が、従来は、日本の直接投資の対象国としてはタイもあり、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーもあり、非常に、だんだん、重要だという日本の思いといいますか、それに対して、そういう諸国はそれを受け入れてくれて、そして日本にとっても非常に友好関係が続いてきたと。  しかし、それは一つのステージで、次のステージは、もっとこの国を戦略的に重要だと考えている中国があり、そしてインドがあり、その場合、見た場合には、ある面ではもう日本のこの五十年間、六十年間との関係は、重要というよりもまあある面では普通だと。もっと重要なのは、より戦略的な発想ができ行動ができる中国、インドとの関係にどう対応していくかがやっぱり重要ではないかというふうに見られた場合に、日本としては何ができるかというのを私もよく考えた場合は、答えは、やっぱり日本らしく誠実にきちんとやっていって、その国の一番必要としているもの、例えば水だけではなくて交通インフラで、例えばそういうバスの公共施設をきちんと造るとか、安全性の問題とか、教育の問題とかいうことをきちんきちんと、戦略性がないと言われるけれども、そういうパーツをきちんきちんとしてやることが僕は日本の次のステップではないかと。そこの中に日本が出ていって、中国、インドと戦略的な争いをするようなやり方はかえって反発を招くんじゃないかなというふうに私は思っております。
  46. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 日本の水の技術者ですけれども、今、日本上水道下水道の技術者、五〇%ぐらいは五十代だというふうに言われております。この方々は十年たつと退職を迎えまして、その後は急速にその技術者が減っていきます。そういう意味では、日本、これまでは水道下水道を造ってきて、この水の分野でたくさん技術者がいるでしょうと。確かに今現在ではいるんですけれども、十年後にその方々はもう現役を退きますので、海外にまで、もう日本国内だけでも大変なのに海外にまでその方々が出ていって、まあシニアボランティアとかそういうことはありますけれども、活躍するほどの人材がいるかというと、先を見ると非常に心配な状況です。  まず、国内をやっぱりしっかり、将来支える技術者をどういうふうに育てていくのか。もちろん、人口が減っていく中で各自治体で技術者がだんだんだんだん減っていくのはやむを得ない部分もありますけれども、しっかりとした根幹を支える技術者を日本国内でしっかりとしなければ、とても海外にまで人を出して海外貢献をするというところには行かないと思いますね。そういった認識をしっかりと持って、しかし、その海外の中でビジネスのチャンスもあれば貢献ということもありますので、そういったことができる人材も片ややっぱりしっかりと育てていかないといけないということだと思います。
  47. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  それでは、質問を受けます。  舟山さん。
  48. 舟山康江

    ○舟山康江君 民主党の舟山と申します。今日はどうもありがとうございました。  まず、仲上参考人に、今の会長の質問と少し関連して続けて質問させていただきたいんですけれども、私も、このメコン川のような国際河川の場合に、どのようにその関係国がそれぞれ連携して上手に水の利用調整をしていくのかというのが非常に重要なのかなと思っております。  これが、翻って国内に目を転じてみましても、国内は別に国境を接しているわけじゃありませんけれども、やはり上流の県と下流の県といろんな調整があり、水利権調整などがあったりして、やはりそれはそれで非常に難しいわけですね。それが、国が違い、また発展段階も違うとなったときに、非常に難しいと思っております。  そういう中で、日本の協力というのは、恐らく日本を含め海外からの様々な協力というのは、もちろん技術、ハードの協力もそうですけれども、私は、何かこういった国際河川で一番必要なのは、技術協力もさることながら、そういう仕組みづくりというんでしょうか、調整のシステムづくりというものに対して、日本が例えば今の国内での水利権調整のいろんな知見を生かせる、そういう余地があるのか、どういうところで協力できるのか、また、これ日本のみならず世界のほかの先進国がどういう協力ができるのか、その辺について御知見があればお伺いしたいと思います。  それから、柴田参考人に対しましては、水の問題と含めて食料の問題について私からもお聞きしたいんですけれども、先生の資料の最初の方にあります、今後の食料市場について五点、逼迫の要因というんでしょうか、食料需給の逼迫の要因五点書かれておりますけれども、やはりこれに加えて、事前にいただきました先生の資料も拝見いたしますと、やはり水の制約というのは非常に大きいわけですね。これ、水も関係しますけれども、加えて水の制約。  とりわけ、この中で特筆されておりますけれども、アメリカですね。アメリカは、やはり世界一の食料輸出国で、日本にとってはもう最大の輸入先国であるというところで、今はいつでも輸入できるという前提で日本の食の今の構造が成り立っていますけれども、これを拝見いたしますと、もういつアメリカで食料生産ができなくなるのか本当に分からないような、もう水の制約でいつできなくなるか分からないような状況だと思っております。  そういう中で、もしアメリカの状況を御存じであれば教えていただきたいんですけれども、こういう状況に対してアメリカ国内でもやはりある程度深刻に受け止めているんだと思いますけれども、アメリカ国内でこの問題に対して今後どのように対処しようとしているのか、もしお分かりであれば教えていただきたいと思います。  そういう意味では、多分、今は食料、まだ輸出競争の時代ですけれども、今後恐らく輸入競争、奪い合いになっていくというふうに思っておりまして、そういう観点でいえば、本当にきちんと、水という一般的には最大の制約要因になっている問題が日本ではさほど深刻な問題ではない、やはり水に関してはかなりまだまだ余裕のある状況ですので、その制約条件のない日本がやはりもっと国内生産力を高めていくというのは、これは世界に対する義務でもあるのかななんて思っておりまして、その辺も含めて教えていただきたいと思います。  それから、滝沢参考人にお聞きしたいんですけれども、やはり同じく事前にいただきました資料の中に、途上国においてのなかなか水事業がうまく進んでいない要因の一つとして、様々な水分野で汚職が起きやすい構造があるんだというような御指摘がこの参考資料にありました。  これはアフリカの例で書いてありますけれども、やはりこれも技術を供与したところでシステムがうまく回るシステムになっていなければなかなか持続的に機能していかないのかなと思いますけれども、アジアにおいてこういった問題はやはりアフリカと同じく起きているのか、何かネックを取り払えば進むような部分があれば、そこについて教えていただきたいと思います。
  49. 仲上健一

    参考人仲上健一君) どうもありがとうございます。  先ほどから重要な問題の中で、技術の問題は日本としては優位性があるけれども、本当にこの難しい問題に対して解決の道筋なり、ある意味では仕組みができるのかと。特に、日本という、ある面ではメコンなり、離れている国が、過去の付き合いはあったけれどもできるのかという面では、私はそう簡単にはできないというふうに思っています。しかし、日本がやる意味があるかどうかというよりも、その国のその地域の繁栄のためにはやっぱりそれをつくらなければいけないと。  そのときの一つの方法は、例えば先進国でいいますと、ドイツを中心にライン川というのがあります。これはライン川の百年以上の歴史で、その水質基準も管理のルールもかなり、ドイツの場合又はオランダの場合も、ずっと国際河川のルールというのは百年以上の歴史があります。そういう中で、データを取って、どういうルールをきちんと守ろうという、精神の面でこういうふうな管理の仕方というのがあります。もちろんそのために、もしそれを守らない場合はこれだけのお金を、罰金を払うとかいうふうな一つの経済的なルールがあったり、例えばエジプトのナイル川、これもエジプトだけではなくて約十か国近い国際河川ですけれども、そこもやっぱりナイルの利用についての国際的ないろいろ機関があります。  そういう面では、その国際機関を、その地域のものだけではなくて、国際的な基準ではこれが最低限守るべきことなんだと、そしてこのルールをつくることについて、日本は今度、二〇一二年、日本でその会議が、日本・メコンの委員会がありますけれども、その中で提言をするというような形で、例えばこの仕組みの中で一番今厳しく言われているのは、そのような仕組みをつくっても本当にうまくいくのかどうかと。そして、もし、機構も変わり人も替わりガバナンスも変わる中で、脆弱性といいますか、本当にできないんではないかという不安の要素がどこにあり、その歴史的な背景からいえばそんなことできないというような無理な点を明確にして、じゃ、そこまでこの地域に合わないならばこういうルールづくりはやめましょうというような形で、先ほど言いました新たなるメコン・スピリットの提言を議論の俎上にのせるといいますか、そういう面では、第一回アジア・太平洋水サミット、九州大分県別府で行われました。そういう面では、日本はその先陣を切ってそういう守ろうと言うことができた立場に現在あるんです。  第二回は今度タイで行われる予定ですけれども、そういう中で、少し日本としてはこんなことを、メコン・スピリットに対して、この十五年間の歴史を踏まえてこういうことをしましょうということは僕は提言はできて、そのイニシアティブは取れていくんではないかというように私は思っております。
  50. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 舟山先生の方から極めて重要な指摘があったと思うんですけれども、アメリカの農業、食料の位置付けでありますけれども、八〇年代まではアメリカは、小麦、トウモロコシ、大豆、年間消費量の五割、六割という在庫を持って、世界のパンかごの役割を果たしてきました。しかしながら、九〇年代に入りますともう低在庫戦略を取り出して、アメリカはそんなに信頼のできる輸出国ではなくなってきているなという印象があります。  何がアメリカを変えたのか。八〇年代までは東西冷戦が残っていましたから、食料の不足国に対して支援をしていかないとこれは共産化、ソ連化していくと、こういうふうなことに対処をしてきたんだと思うんですね。しかし、冷戦構造終われば、もうさっさと市場原理主義の下に低在庫戦略を取り出した。そのツケが今回ってきているわけであります。  今のところ、食料の穀物の生産は過去最高レベル生産量になっていますが、在庫率はもう一割を切って過去最低レベルになってきています。そういう中で、今後、その生産の増加が期待されるのかというと、なかなか私はおぼつかないのかなと。その一つの要因はやはり水の制約ということになってくるかと思うんですね。  これは複合的な話でありまして、アメリカの中西部の水はいわゆるオガララ帯水層という化石水をベースにしている。これは七〇年代から指摘されていまして、その枯渇の問題でありますけれども、今は点滴かんがいとかいう形でもうかなりの節水農法をやってきております。一方で、作物も水の不足に耐性を持ったGM作物が普及すると、こういうふうな構図であります。一方で、水については、アメリカ国内でシェールガスの革命が起こっておりまして、これは水圧破壊法という格好で大量の水資源を使いながらこういった資源を開発していく。  全て連動する話の中で、やっぱり水というのがこれからアメリカの国内において非常なエネルギーの制約、食料の制約になりかねないと思っております。だからこそ、アメリカは今後信頼の置ける輸出国と安心してはいられなくなるということを考えますと、日本の国内の農業資源あるいは地域資源というのをしっかりともう一度見直していく必要があるなと思っております。  農業は、野菜、果物は生産額で見ればかなり伸びておりますけれども、やはり食料といった場合には腹もちのするカロリーの高い穀物であります。ここの部分はいかんせん衰退傾向がやまないと、こんな気もしております。時間は余りないわけであります。
  51. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 食の問題は水の分野に限らないと思うんですが、私、水以外の分野のことは余りよく存じ上げませんので水分野に限ってお話ししたいと思いますけれども、これはインドのある大きな都市水道の幹部の方に聞いたお話ですけれども、水道で有収率ということがございます。有収率というのは収入があった割合でございまして、供給した水のうち何割水道料金を払ってくれたか。これは、日本ではごく例外を除いて極めて一〇〇%に近いわけですけれども、海外に行くとこの割合が七〇%とか、悪いところだと六〇%。四〇%ぐらい払わないんですね。じゃ、誰が払わないのかというと、そのインドの事例ですと、一番払わないもう最先端はどこかというと、政府機関なんです。これは、実はインドに限らなくて、多くの都市で政府機関がまず払わない。まず隗より始めよじゃないですけれども、政府機関が払っていないものを一般市民が水道料金を払おうという気になるかという問題があります。  残念ながら、どこの国に行っても、水道というのは、政府の中で一番上のというか、非常に大きな影響力を持ったポジションにはなくて、どちらかというと、まあまあマイナーなというか、一部局にすぎない。そうすると、やっぱり政府の中でも発言権のあるような省庁や組織があると、そこはもうずっと払っていないからもう払わないということになってしまうんですね。そういうような状況がございますので、そういった中でみんなが料金を払わなきゃいけないだろうという考え方にはなりにくいと。そうすると、影響力を個人的にもあるいは政治的にもいろんな形で行使すれば払わなくて済むのかというような考え方がどうしても蔓延しちゃうと、それはもう政府機関に限らず払わない人がどんどんどんどん増えてきてしまうという問題があります。  これまで日本支援等で、ODA等も含めて、どちらかというと技術的な分野への支援が多かったんですけれども、これからやはり重要なのは、過去三か年、JICAの支援で、今のインドの話もそこで出たんですけれども、ガバナンスとかマネジメントにかかわるようなアジア地域水道のトップレベル、局長さんとかそれに近い方ですね、そういう方を日本にお招きして、日本はどうやって料金をちゃんと回収しているのかというようなことをお見せして、またディスカッションして、どういう問題があるか、そこで出てきた話なんですけれども、実は政府機関が払ってくれなくてこれは困っているというような話が出てきたんですね。それを改善するためにはどうしたらいいかというような議論をしました。  残念ながら三年でこれ切れちゃったんですけれども、是非、先生方、こういう機会ですので、もし可能であれば、これまでどちらかというと日本の技術援助というのは、技術援助ですから、本当に、漏水をどうやって直しますかとか、そういうレベル支援が多かったんですが、幾ら漏水直しても、払わない人が四割もいると、それはもう漏水どころの問題ではないんですね。それを改善するためには、やっぱり現場で頑張っている人も大事ですけれども、トップの方の考え方が変わらない限りはどうしてもそこは改善できない。そのためには、その技術支援の中に是非とも、アジア水道も含めた、あるいは市や行政の幹部も含めて支援をして、日本に来ていただいて日本といろんな意見交換をするような機会を来年度以降も何らかの形で設けていただけると大変有り難いなと、そんな気がいたします。
  52. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  では、質問を受けます。  大島さん。
  53. 大島九州男

    大島九州男君 どうも先生方、今日は本当にありがとうございます。  それでは、先生方にそれぞれ御質問をしたいと思うんですが、滝沢先生、今おっしゃった本当に意識の問題、水をお金で買うというのは、日本の人も最近、考えたらガソリンより高いものを買って飲んでいるわけですが、その水の大切さというものが、やはり意識的にお金を払ってまでもというのがあるのかなというのをちょっと今感じさせていただいたんですが。  先生がここに、分散型の水処理の普及ということで、こういう分散型でやる地域、それから日本の浄水のような形、これはまた、もっと逆に言うと、田舎というか後進国ですから、広い土地と時間的な余裕もいろいろあるでしょうから、例えば広い面積を使った余り機械設備の必要のない浄水場、こういうものは、大変メンテとかそういうものにお金が掛からないような部分でそれぞれの地域に合わせたやり方があるんだろうと思うので、世界でいうと、大体そういった広い面積を利用して余りコストが掛からないような浄水場をやるようなところ、それからこの分散型の方が向いているとか、今の日本のような浄水場はもうある程度発展した国はもう行っているんだろうから、この二つぐらいなのかなと思ったりするんですけど、地域的にはどういうものがどういうところに向いているかというのをちょっと教えていただければ有り難いというのが一つ。それをお願いします。  それで、柴田先生、食料の関係なんですけれども、ちょっと外国というよりは日本を考えたときに、やはり我々が国民の生命、財産を守るといえば日本のやっぱり国内の自給率というか食料をしっかり担保することが必要だというふうに思うんですが、先生は今の日本の農業政策とか今後のやはり日本の国民の食の安全というものについてどのような御見解をお持ちかということを教えていただきたいと思います。  それから、仲上先生には、私もラオスの議連にも入らせていただいていて、ラオスに行くと非常に大変親日で有り難いんですけれども、先ほどの話にもあるように、中国がどんどん投資をしていっておりますし、共産圏でもありますが、日本は今後ラオスにどういうふうなかかわり方で、いろんな支援とか、一緒にやることもいろいろ必要なんでしょうけれども、我々がラオスと付き合っていく上での心構えというのをもしあったら教えていただきたいと思います。  以上です。
  54. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 二点御質問をされたと思うんですが、一つ分散型と集中型ということで、最近は、分散型の方がいいんだ、地域分散型の方がいいんだというようなお考えをお持ちの方々もいると思うんですが、それはその地域にもよるんですけれども、その中で、分散型になってしまうと、なかなかその水、日本企業が出ていって、そこでそのビジネスをつくるというのが難しくなってくる。一つ一つのスケールが小さいので、そこで利益を出すということがなかなか難しくなってしまう。  ですから、世界の、特にアジア水道がどんどんどんどんもしこれから分散型に行くんだとすると、日本企業はそれをもう今から念頭に置いて、じゃ、分散型、小さな規模でも利益出すにはどうしたらいいんだということを考えていかないと、日本と同じように大きな施設を入れて、そこで利幅といいますか一回当たりの売上げが大きいわけですからきちっと利益が確保できると、そういう念頭でずっとビジネスを考えていたら、実はもう分散型でどんどんどんどんアジアが広まっていたら、そのビジネス機会の喪失というか、合わなくなってしまうわけですね。  ですから、アジア動きは実は日本よりもある意味では早く分散型に行っているかもしれませんし、あるいは中国なんかですと、水質がそんなに良くないわけですけれども、各アパートあるいは非常に住宅団地の中でそんなに良くない水質で来ても、中に小さな浄水場みたいな、膜を使ったり、そういうのを造った団地がどんどんどんどんできてきて、そうなると、日本のように浄水場を非常にいいものを造りますといっても、それは要らない、そこそこの水でいいからうちは自分で処理するというふうに、そうなってしまうと、どこのところで日本ビジネス機会を探すのかという、ビジネス機会を喪失してしまいます。そういう動きがあるということをしっかり認識して、日本企業でもし出ていくんだったら、その中でどこでこれからビジネスチャンスを見ていくのかということを考えなければいけないんだろうと思います。  それから、メンテナンスといいますか、非常にメンテナンスが掛かるものと簡易なシステムというお話ですけれども、これは、アジアを見ますと、そのメンテナンスが簡易なシステムというのは残念ながらそんなに多くない。残念ながらといいますか、幸いというのか、多くないと思います。  やはり、日本は少し山の方に行くと非常に清澄な水あるいはきれいな地下水があって、ほとんど何もしなくても飲めるような水がたくさんありますけれども、東南アジアに行きますと、やはり川に行くと、メコン川もそうですが、非常に濁度が高い、濁りが多い。それから、地下水をくみ上げると今度は砒素弗素が出てきちゃうということで、何にもしなくてもいい水がある国といったら、やはり日本は国土が非常に恵まれているなという私は感想を持っていまして、やはり何らかの処理が必要だというふうに考えております。  これはどう考えるかですけれども、ビジネスとして考えるのであれば、やっぱりメンテナンスが必要なところに行って、それなりのメンテナンスで売上げを稼いでいくというような仕組みの中でしかやはりビジネスにならないんだと思うんですね。そういう意味では、逆にビジネスチャンスがあるんだろうというふうに思います。
  55. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 食料の安全保障の問題でありますけれども、今まで国民というか我々は、食料に関しては海外から安い価格で良質のものを幾らでも調達できるという、この三つの安定、価格と品質とそれから供給、これを享受してきたわけですけれども、ここのところ、この三つの安定がもはや保障されないというか、脅かされつつあるという認識であります。価格はもう安くないんですね。たまたま円高で相殺されている部分がありますけれども、海外の穀物の価格、穀物に限らずコーヒーも砂糖ももう歴史的な高値に値上がりしているわけであります。  こういう中で、日本幾つか既に買い負け現象みたいなものが起こっております。中国などがもっと高い値段で買ってしまう。それから、日本の消費者が好む、何というか、例えば大豆であれば有機栽培でノンGMOがいいんだと、こういう好みをなかなかもう満たされなくなりつつあります。  もう一つの買い負けは、買うタイミングですね。スーパー、コンビニのバイヤーの方、九〇年代に会社に入って、食料品の値段というのはもう安いのが当たり前だと、こういう認識であります。しかし、原料はもう上がっているわけですね。これを、高い原料を買っていいものかどうか迷っている間に買いそびれてしまうというような問題が起こっています。  品質についても、だんだんだんだん、私は離れる農業と言っているんですけれども、日本の輸入先が離れてくるわけであります。距離が離れる。フードマイレージという話がありますが、距離が離れるし、それから食べるまでの時間が冷凍保存技術等の発達で離れてくる。さらに、現地で付加価値が付けられて食料品が輸入される。離れに離れてくると、中身がブラックボックス化してまいります。そこにいろんな不祥事が生じた場合に、国民は、消費者は、やっぱりこれは安全なのか、安心なのか、こういう問題になるわけですね。  そういう中で、国内のくっつく農業というか、国内の農業を見直す動きが始まってきているわけであります。大きな流通に対して小さな流通の見直しが始まっているんですけれども、果たしてこういう動きに対して国内の農業がこたえていけるのかといった場合に、非常におぼつかないなという気がいたします。  先ほどの野菜、果物は経営的にはうまくいっているところは多いんですけれども、問題はやっぱりこのもうからない米の生産とかあるいは小麦、大豆、こういった土地利用型の農業は完全に衰退傾向をたどっていると。  よく、経済が発展すれば農業のウエートはどんどん下がってくるんだと、こういう見方ありますけれども、日本の場合は、この過去二十年間経済成長していない中でどんどんどんどん衰退していると。四百六十万ほど二十年前にあった農家は、今や二百六十万ぐらいまで減っているわけです。高齢化はどんどん進んでいるわけです。待ったなしなんですね。したがって、一刻も早く国内の生産力を見直していく必要があるなと。  食料安全保障に関しては、食料・農業・農村基本法というのがありますけれども、ここで三つの点を組み合わせるんだと、こういうことをうたっているんですけれども、国内の生産力、それから備蓄、そして輸入と、皆それぞれおぼつかなくなってきています。生産力は衰えているんですね。それから、備蓄は米百万トンです。これで足りるのか。中国は、五億トンの需要に対して、これは穀物全体ですけれども、三億トンの設備を造って二億トンを積み上げていると。もう転ばぬ先のつえを、五年、十年先に対して手を打っているんですね。日本は転ばぬ先のつえを後ろについているという、こういう感じがしますので、早急に見直す必要があると。それは、もう農業資源、地域資源をフルに活用していく方向で見直すということだと思います。
  56. 仲上健一

    参考人仲上健一君) ラオスの話題が大分出ましたけれども、私もラオスというのはある面では物すごい調整の、今までやってきた国で、これからも必要な国。特に、ベトナムにも、またカンボジアにも、タイにも、大国に囲まれて、その割には土地の面積が大きくて人口は非常に少ない、例えば六百万人ぐらいで。その中で、やっぱり平和な国として言わば生きるしか道がないんではないかと。  そういう中で、日本とラオスとの関係は、非常にラオスの人は日本が好きで、日本の人もラオスの人が好きという、相思相愛の関係だというふうに思っていますけれども、こんなことを言っても余り意味がなくて、そういうことよりも、やっぱり人材とか企業とか政府、そういうふうなそれぞれの役割が何をすべきかというような形で、特に中国とラオスとの関係でいえば資源というふうに見ているんですね、ラオスを。  それよりも、例えばラオスの十年後、百年後を見た場合に、この広大な国を、例えば森林とか農業とかそういうものを支えるような付き合い方、例えばエコツーリズムとかアグリビジネスとか、そういう農業も支えていくというような形で、日本の持っている力だけではなくて、ラオスの固有の力を持っていく必要があるんじゃないかなというのが一点と、もうちょっと積極的には、やはり広大な森林がありますので、そのCO2の排出そのものも、日本がかなりラオスとの関係を強化するとかいうふうな形で、現在のラオスの安定を図るような、経済的支援だけではなくて、先ほど言ったCO2の排出などの枠組みをやっぱり新たな議論としてしていく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。
  57. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  中山先生。
  58. 中山恭子

    ○中山恭子君 今日は本当に貴重なお話、また多くの示唆に富むお話を三人の参考人方々から伺えて大変有り難いと思っております。  私からは、お三方に、政府、国に対して、国が何をやるべきか、そういったことに、何というんでしょう、御指導というかお話をいただければ有り難いと思っておりますが、例えば、滝沢先生のお話の中で、民間企業が、どう言ったらいいんですか、ビジネスとして、それぞれの地域いろんな、水問題というのは本当にその地域によって全て質も違い種類も違うものだと思いますが、そういった中でビジネスとして日本が対応できる問題、又は、例えば私はソ連圏の中の国のイメージでは、水道施設などはある程度あるけれども、もうほとんどぼろぼろになってしまってしっかりしたものではないので、飲料、飲用としては使えないような水道になっている。そのときに、ビジネスとしてそれぞれの地域企業産業を育成しながら協力できるのではないかというようなお話がありましたが、そういった形の協力というのが、もちろん民間だけでできればいいんですけれども、そういった中で政府がかかわれる分野というのがどういうものがあるのか。  また、この写真で、ジャカルタのこの写真を見れば、見返りが全くなくても、日本の国として公共の誰でもが使えるような水場を造るというような仕事を日本としてやるというようなことも一つ考え方ではないか。もちろん、日本の国の人々の了解も必要ですけれども、そういったことも考えられるのではないかなどと思いながら、是非こういった貧困地域を、貧困をなくすというだけではなくて、その水の問題で解決していくということに日本が多く貢献していくということを国内で了解を取っていけたらどうだろうかというような思いがしておりました。  また、柴田先生の中に、水ビジネス国際展開にはリスクを取って進出するプレーヤー、インテグレーターの育成が不可欠であるというようなお話がありますが、この場合にも、日本の国内でも水道事業が、何というんでしょう、利益を上げるような形になっていないような中で、民間だけに任せておけるのか、それともそこには国として何らかのかかわりを持っておかしくないのかといったような観点から、もちろんほかの食料の問題からでもよろしいんですが、御示唆をいただけたら有り難いと思っております。また、先ほどの国内の食料問題というのは、水問題だけではなくて、私たちは大いに関心を持って今後は対応していかなければいけない問題だと思っておりますが。  また、仲上先生から、メコン川の貴重なお話を伺いました。私自身は、これまで国際河川というのはその地域が解決するものであるかと。しかも、ここにかかわった場合には、水というのは物すごい大きなテーマで、いわゆる国と国の争いを引き起こしかねないような非常に機微な問題なので、日本がかかわることというのを非常にちゅうちょするような思いでこれまで来ておりましたが、仲上先生のお話を伺っていると、逆に直接の利益のない日本として、国際河川についても何らかのかかわりを持って貢献できる可能性があるのかなというような思いがしておりまして、これは私にとりましては非常にショッキングな思いでございました。  そういった中で、日本政府として何をしたらいいのか、又は政府の中に、もし、今後の話として、どこの省に置くのかは別ですが、この水問題というものを国際的な面も含めて担当する部署というか、政府の中にそういった考え方をつくり上げていくような、そういうことをこの調査会として何らかの方向が出せたら、これをきっかけにして、大変有り難いかなと思っています。  ちょっと長くなってごめんなさい。よろしくお願いいたします。
  59. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 政府として何ができるか、何を期待するかということですけれども、一つは、水というのは我々毎日毎日使っているものでありますけれども、極めて政治的な影響、あるいは、悪く言うと干渉を受けやすいものではないかと思います。先ほどの、政府が払わないということもそうですし、それから水道の料金の設定なんかでも、どうしてもいろいろな意味で政治的な関与を受けるものです。  そういうものでありますので、例えば日本企業が単独で出ていって水でビジネスをするということは、現状ではなかなかやっぱり難しい。そのための下地づくり、制度づくり、しっかりと料金を徴収しましょう、正しい料金に設定しましょうというようなことから含めて、やはり対話ができるのは、個人、民間の企業ではなくて政府ではないかと思うんですね。そういった制度づくりについて、更により一層政府の皆様に強力に推し進めていただけたら幸いでございます。  もう一点は、政府の中でまとめて水問題を取り扱う部署というような御提案も今お聞きしましたけれども、もう一点、水の特徴って非常に多様で、いろんな人がいろんな形でその水問題にかかわっているんですね。多様であればあるほど、いろんな情報が集めればたくさんあるんだけれども、現状では、個々の専門家が持っていたりとか、いろんな情報が散在していてなかなかその情報の有効な活用が図れないという問題があると思います。  是非とも、こういった情報をうまく取りまとめられるような仕組みあるいは制度を活用していただいて、逆にその集めた情報を、これは、これからは全てODAでやるという時代でもないですし、あるいは水ビジネスで全部がやれるかといったら、当然利益が出る部分しかやはりできないと思いますので、その間に落ちてしまう部分、先ほどのインドネシアのお話もありましたけれども、アフリカに行けばもっとあれが極端な形で出ています。  そういうところで、例えば日本のJOCV、協力隊の方々とかNGOの方々とかいろんな現地で頑張りたいという若者はいるんですが、残念ながら経験もないですし知識もない。そういった方々支援をしたり情報を提供したりするようないい仕組みがあると、専門家として経験豊富な方々が持ったいろんな知識や経験をそういった若い方に伝えていくような仕組みができるんじゃないかなというふうに考えております。
  60. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 水資源、食料もそうですけれども、やはり根本的な問題というか、市場原理に任せておけば、それは効率的な資源の配分が可能になるわけですけれども、一方で、水というのは、地元で元々その歴史、風土の中でただで使っていたという地元共有資源というか、コモンズという、そういう性格を持ったものでありますから、それに対して、市場化というか商品化というか、値段を付けて、水道、安全な水ではあるけれども値段が付いてしまって、それに今度は支払うことのできない人々が出てきてしまうという、こういうふうなまた問題があって、そうすると、この間にやはり政府というか公的な機関がつなぎの間介入していくということは必要なんだと思うんですね。
  61. 仲上健一

    参考人仲上健一君) ありがとうございます。  メコン川でも、地域の問題というのは非常に水問題起こっていますけど、それを例えば町役場、知事がカンボジアならカンボジア政府に文句を言っても、もうそれは中国のダムの影響で、カンボジア政府としては何も言えないということで、地元の人はもう言わば政府にも文句は言わない、被害が起こってもしようがないというような状態はやっぱり続いております。  そういう中で、やはりこういうことは問題だという指摘だけでは解決できないという面で、私は二つほど考えています。  一つは、やはり人材育成ということで、外務省の方では無償支援の人材育成、JDSというのがもう十年以上続いておりますけど、ラオスからもカンボジアからも優秀な学生がかなり日本に来て、そして今戻ってもう政府の重要な職、またメコン川委員会にも就職をしております。そういう面で、やはり日本で学んで日本のシステムを理解して、そしてそこで重要な役割を、ポストを担うということはかなり有効な方法ではないかというふうに思っております。  それと同時に、世界的には日本というのは非常に中立的な意味があって、ハイレベルの教育ができるというようなシステムで参考になる国としては、やっぱりオランダが水問題では、例えば水質管理でも洪水管理でも世界的、先進的な経験があります。そういう中で、やっぱり水の中心の大学があって、そこで全世界の水の技術者、管理者をもう百年近く呼んで、そしてそこから全世界に輩出しているというような形で、日本のこの百何十年の歴史、もう水の治水技術もオランダのデ・レーケさんから学んだようなものですけれども、近代技術は。  そういう面では、少し日本はそういう役割、人材育成の短期的な役割と同時に長期的な役割をするようなことは今絶対必要だというふうに思っております。
  62. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  それから、中山先生の指摘はまた理事会でみんなで話し合ってみましょう。  次に質問を受けます。  ツルネンさん。
  63. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 民主党のツルネンマルテイです。  滝沢参考人に二つの質問があります。これは、中国の水問題、特に汚染の問題について日本は何をできるかというよりも、中国は今その問題にどのように取り組んでいるかという、そういう情報を是非教えていただきたい。  参考人の五ページには、中国水質汚染問題のことが書いてありますね。多くの川が中国にあります。そして、生活排水とか工場排水とか農業排水によって恐らくかなり汚染されています。その汚染を減らすためにはどのような取組をどの程度取組をしているかということ、例えばどの程度下水道が進められているかということですね。結局、汚染をなくすためにはその排水をそのまま浄化なしで流すということは何らかの形で防がなくちゃならない、これをどういうふうに取り組んでいるか。  もう一つの質問は、中国では飲み水をどういうふうに提供されているかということ。例えば、私たちはアジアとかアフリカの国々に行くと、少なくとも外国人がそこでペットボトルで水を買います。恐らく大きな町では、あちこちで一般のそこの国の国民もペットボトルで飲んでいますね。そうすると、もう一つの方法は、川の水を飲み水まで浄化できないときは、例えば雨水とか井戸はどの程度飲み水のために中国で使われているか。  この二つのことについて簡単にお願いします。
  64. 滝沢智

    参考人滝沢智君) まず第一点ですけれども、中国水質の問題ですけれども、今、中国水質規制を全国的に掛けまして規制をしようとしているところですが、これはなかなか、規制、制度がある、基準があるということと実際にそれが守られているかということがやっぱりかなり乖離がありまして、先ほどのガバナンスの問題、水問題に対して、これは飲み水だけじゃなくて排水の方もいろんな意味でその規制に対して政治的な干渉も受けやすい、制度はあるけどそこまできつく強制しなくてもいいじゃないかというような干渉があると、なかなか制度ができてもそれが守られていないというような現実が多分あるんだろうと思います。  それに対して、下水道の整備ですけれども、大都市中国下水道整備、これは急速に進んでおります。確かに水質汚染問題はあるんですけれども、都市部の下水処理に関しては非常に大きな投資をしておりまして、少しずつ改善はしていくところだろうと思います。  その一方で、先ほどお見せした資料にもありますけれども、都市部がどんどんどんどん大きくなっていきますので、下水道を造っても都市が大きくなる、水をたくさん使うということですので、ある種のイタチごっこといいますか、幾ら造ってもどんどんどんどん人が増えてまだ下水がたくさん出てくるという、今そういう状況にあるんだろうと思います。ただ、非常に大きな投資をしているのは間違いないと思います。  それで、もう一つ、飲み水はどうしているかということなんですが、これは日本の水技術が進んだという一つの背景は、日本水道を造って水を供給した時代というのは、例えばペットボトルのボトル水とかは余りなかった、余り普及していなかったんじゃないかと思うんですね。それから、浄水器というのも、今はありますけど余りなかった。やはり飲み水は水だ、水が臭くて飲めないというようないろんな御批判があって、それじゃもっといい水にするためにはどうしたらいいかという研究開発をし、施設を造り、今は高度浄水処理、東京都なんかはおいしい水を造りますということを進めているんですね。  ところが、先ほどの分散型の話にも絡みますけれども、今現在、中国だけじゃないですけれども、ペットボトルの水はあります。それから、マンションでも高級なマンションほどいい水処理システムが入っているんですね。水処理システムがいいところに入っているというのが、いいマンションに入っているというのが一つのステータスシンボルになっているという状況にありますので、そういうところに入っている人が大本にある浄水場の高度浄水処理に対してお金を払うべきだと考えるかどうかということですね。なかなかそういうふうには多分ならないと思います。中国人の知り合いと話してもなかなかそうならなくて、私はとてもいい浄水システムのあるこういう高級マンションに住んでいるというのがステータスになっていたら、もう水そのものがステータスになって、もう格差ができちゃって、その状態で固定してしまうと、大本の水を良くしようというふうにならないんですね。  ですから、いろんな水を得る手だてが今はあるという状況が、逆にその大本の根本的な問題を解決しなきゃいけないというところに意見が集約しないという状態が今生じていて、それがやはり水道なり下水道なりを進めていく一つの障害になっているんじゃないか、これからもっとそういう問題が生じていくんじゃないかという気がしております。
  65. 柴田明夫

    参考人柴田明夫君) 一つは、技術というよりもソフトの面も重要だなと思うんです、制度の面ですね。やはり、中国で水の無駄遣いがやまないというのは、例えば中水、上水に対して中水、再処理水というものがありますけれども、この再処理水の値段が上水よりも高くなってしまう。要するに、水道料金が安過ぎるという問題があると思うんですね。  だから、節水、水を何段階も有効に利用していくというのがなかなか進まないという問題もあって、その制度面でも日本は、日本水道料金の設定の仕方とか、あるいは国民の節水意識とか、こういうものを中国の方によく、制度を輸出するといったらあれですけれども、見習ってもらうとか、こういうことが重要かなと思うんですね。安過ぎるという問題、これから値段をある程度上げていく中で国民の節水意識を高めるという、こちらからのアプローチも必要だと思います。
  66. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  質問を受けます。  じゃ、二度目お願いします。
  67. 松田公太

    ○松田公太君 済みません、ちょっと二ラウンド目になってしまいますが。  これは滝沢参考人にお聞きしたいんですけれども、お話の中で、二十年遅れ日本にとってチャンス到来だというお話がありましたが、世界の水市場を見ると、成功しているのが例えばイギリスとかフランスで、いち早く民営化を進めた国々じゃないかなというふうに感じるんですね。  これについてどう思われるかという質問なんですけれども、やはり民営化した方がそういったビジネスには有利なのか、また日本が将来的に水を民営化していく、この方向性、これが果たして可能だと思われるかどうか、若しくはメリット、デメリット、お考えでしたら教えていただければと思います。
  68. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 民営化するのがいいかどうかというのは、いろんな考え方があると思うんですが、イギリスに関しては、一番最初に何をしたかというと、いきなり民営化したわけではなくて、イギリス全国にあった小さな水道をまとめたんですね。そのまとめた段階では民営化はしていません。大きな水道会社にしたんです。地域に小さな水道会社があったのを大きな水道会社にした、この段階では公営です。その後に、サッチャーさんの時代に、一九八九年だと思いますが、水道に限らず、いろんなものを民営化するという二段階で進んでいます。  フランスに関しては、コンセッションと言われている民営化もありますけれども、もう一つ段階で、フランスの人たちが言うアフェルマージュという段階があって、これは公の側が施設のその経営権みたいなものをある程度持っていながら、かなりの分を民に移譲して民のマネジメントをしてもらうと、そういう段階がありまして、イギリスのように完全に民営の会社にして株を売り買いするという状況にはフランスはちょっとない、少し違うということがあります。  民営化しているかどうかということのその是非ですけれども、一つは、海外に出ていくときに、やはり日本民間企業が、これまで水道事業そのものを経営した経験のある民間企業日本はありませんので、現状ではなかなか、海外に出ていったときに、じゃ民営でやりますといったときに、でもあなたは、おたく、自分の国でもまだ経験していないのにどうして私の国で民営でやれるんですかということを聞かれたときに答えられない、実際には入札にも参加できないという問題があります。是非、そういう機会を増やすという意味では、何らかの形で民の関与をこれまで以上に増やしていくということが多分重要だと思います。  それから、二十年遅れのということで、遅れているという意味では余り良くない面もありますけれども、先ほどのスライドにもお見せしたように、世界で民営化がすばらしい、絶対民営化がいいんだというふうにみんながそう思った時代というのは一九九〇年ごろにありましたけれども、しかし、いろんな形で見直しが来て、水メジャーと言われているところが徐々にその世界の中での役割がだんだん小さくなっていって、むしろローカルなプレーヤーの方が重要になってきている時代、つまり、二十年たつとだんだんだんだん物の考え方や仕組みというのは変わってきています。ですから、今の仕組み、それから十年後にどうあるべきかということをしっかりととらえていけば、二十年遅れでもチャンスは巡ってくるんじゃないかなという気はしております。
  69. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  質問ありますか、ほかに。  紙さん。
  70. 紙智子

    ○紙智子君 すごく参考になる御意見をいろいろ共感しながら聞いておりました。  それで、これまで参考人の方が来られたときに度々聞いてきて、それで、水道事業についていろいろ維持管理含めるとどうかというふうに言ったら、リターンについては余りないということですとか、利益はなかなか出にくいということも含めて、そういう声も多く出されたように思うんですけれども、これは柴田先生か滝沢先生かどちらかだと思うんですけれども、水については、一つは公共財という見方と、それから商品というような見方というのはあると思うんですけれども。  やっぱり、何というんだろう、商品ということで民営化でもって進んでいくといったときに、例えばボリビアみたいな国で、民営化をしようということで一旦したんだけれども、水道料金がそれこそ上がって、それでその水が手に入らない貧しい人たちがいて、それでこれに対する問題が上がってということがあったときに、国連というか、そういうところを、やっぱり世界の中で起こったときに調整するということでは、国連なんかでのその議論だとかそういうことをめぐって何かあるのか、行動なり議論されていることがあればちょっと紹介をいただきたいなと思ったんですけれども。
  71. 滝沢智

    参考人滝沢智君) 私は、問題が起こってから調整するというのはほぼ解決不可能ではないかと思っていまして、もちろん既に問題があるところは何とかしていかなきゃいけないんですが、これからもし取り組むのであれば、問題が起こらないように最初からやっぱり住民の意見を何かの形で聞きながら進めていくと。トップダウンで決めてこういうふうに民営化しましたという形でやるんではなくて、何らかの形で住民の意見も聞きながら進めていく、その中で、やっぱり理解も深めて反対なり異論が出ないような形で少しずつ進めていく方が間違いなく賢いやり方で、もし異論が出たらどこかに仲裁してもらえばいいというのはほとんど仲裁不可能、水争いの仲裁というのは不可能じゃないかなというふうな気がします。  水道事業利益が出ない、上がりにくいということなんですけれども、これは国内でいえば、これは公共で自治体がやっておりますので、当然ながらそれほど大きな利益が出ないような形でその水道料金設定されておりますので、ほとんど出ていないということだと思いますけれども、海外水道事業、特に民営化されているところで見ると、出ないと言いつつも、それは何と比べるかということですが、とても利益が出るような金融商品と比べれば当然出ないんですけれども、そうでないものと比べれば安定確実に十年、二十年決まった何%かの利益が確実に上がるというものに設定することも可能です、それはきちっとマネージすればですね。むしろ、そんなに大きなリターンがなくても、少しずつ確実に利益が上がっていった方が、年金資金のような形でですね、長期間お金が使えるものであればその方がいいと思っている投資家の方は、そういうところに投資する投資家も世界の中ではいるということだろうと思います。
  72. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  予定の時刻までまだ少しございますが、参考人に対する質疑はこの程度といたしたいと存じます。  一言、御挨拶申し上げます。  滝沢参考人柴田参考人及び仲上参考人におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。調査会を代表し、各参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼とさせていただきます。本当にありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十六分散