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2012-02-22 第180回国会 参議院 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十四年二月二十二日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         藤原 正司君     理 事                 大島九州男君                 外山  斎君                 島尻安伊子君                 山田 俊男君                 加藤 修一君                 松田 公太君     委 員                 江田 五月君                 玉置 一弥君             ツルネン マルテイ君                 友近 聡朗君                 白  眞勲君                 福山 哲郎君                 藤末 健三君                 舟山 康江君                 中山 恭子君                 野村 哲郎君                 水落 敏栄君                 若林 健太君                 石川 博崇君                 紙  智子君    事務局側        第一特別調査室        長        宇佐美正行君    参考人        帝京大学経済学        部教授      清水  學君        総合地球環境学        研究所研究部准        教授       窪田 順平君        独立行政法人国        際協力機構南ア        ジア部部長    中原 正孝君        社団法人日本水        道協会専務理事  尾崎  勝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題、地球環境問題及び食糧問題に関する  調査  (「世界の水問題と日本対外戦略」のうち、  アジアの水問題(中央アジア及び南アジアの水  問題と我が国取組)について)     ─────────────
  2. 藤原正司

    会長藤原正司君) ただいまから国際地球環境・食糧問題に関する調査会を開会いたします。  国際問題、地球環境問題及び食糧問題に関する調査を議題といたします。  本日は、「世界の水問題と日本対外戦略」のうち、アジアの水問題に関し、中央アジア及び南アジアの水問題と我が国取組について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、帝京大学経済学部教授清水學参考人総合地球環境学研究所研究部准教授窪田順平参考人独立行政法人国際協力機構南アジア部部長中原正孝参考人及び社団法人日本水道協会専務理事尾崎勝参考人に御出席をいただいております。  この際、御一言御挨拶を申し上げます。  各参考人におかれましては、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、各参考人から忌憚のない御意見を賜りまして今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず清水参考人窪田参考人中原参考人尾崎参考人の順でお一人十五分程度意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、清水参考人から御意見をお述べいただきます。清水参考人
  3. 清水學

    参考人清水學君) 御紹介にあずかりました帝京大学清水と申します。  私の名字は清水というので、名前だけは水に関係しているんですが、具体的には、私は水文学でもありませんし、水の技術的なことは全然分かりませんので、今日は主として中央アジアの水をめぐる国際関係というか、そこに焦点を絞らせていただいてお話をしたいと思います。  なお、今日は、いつもお世話になっております中山先生が、大変厳しい先生がいらっしゃるので特に緊張しております。  それでは、お配りしております地図がございますが、カラーの地図がございますけれども、これはもうあえて御説明することはないと思いますが、今日お話をさせていただくのは中央アジアの五か国、旧ソ連圏に属しておりました五か国でございます。それで、このうちタジキスタンだけが、タジク人だけがいわゆるペルシャ系民族でございまして、あとの四つの国の主要民族はいわゆるトルコ系、広義のトルコ系ということで若干違いますが、一つ中央アジアとしてまとめて考えたいと思います。  それで、御存じのように、中央アジアの水問題を考える場合に、幾つかの前提条件がございます。  一つは、一九九一年に、御存じのようにソ連が解体いたしまして、その過程中央アジアの五か国が独立いたしました。それまでは連邦国家構成国だったんですが、いわゆる完全独立ということになります。それ以降、各国がまず独立国家としての機構整備をしなくてはいけませんし、それから、一つの国としての国民的なアイデンティティーをつくる、それからあと市場経済化という、経済体制転換という、この三つの大きな課題を同時に遂行するということになりました。  その過程で、今まである意味ではソ連圏の中で、モスクワのある意味ではコントロール下で一定の調整を行っておりました水、エネルギー石油資源等の問題が、言わば調整役がなくなってしまうという状況になってしまって、いわゆる国民国家同士の国益が衝突するというような状況が出てまいりました。ですから、基本的にはスローガンとは別に統合よりも分離の力学が働きやすい、そういう状況がまだ続いているというふうに御理解いただけると思います。  それから、水にかかわりましては、ここは半乾燥乾燥地帯が主要でございまして、農業用水は基本的に天水への依存はできません。それで河川水地下水ということになりますが、その河川水といった場合に、やっぱりシルダリアアムダリアという大変大きな川があるんですが、これが中心であります。それで、シルダリアアムダリアは、ソ連時代はある意味では国内河川というふうに位置付けられることができたわけですけれども、しかし、ソ連邦が解体した後はある意味ではこれは国際河川に転化しちゃったということで、これが中央アジアの水問題を考える上で特有な条件であります。  それからさらに、水資源がこの地域に平等に分配されているということではありませんで、上流国にありますキルギス共和国タジキスタンにほぼ八割の水源、つまり氷河雪解け水ですが、これが集中しております。ですから、水源地が非常に偏っているというところに特徴がございます。  それから、後から窪田先生の方からお話があるんですけれどもソ連時代の負の遺産がかなり残っておりまして、その中にアラル海の枯渇という問題がございます。これは後からお話を伺えると思います。  それで、その次に二枚目のところで、中央アジアの五か国の本当に概観の大ざっぱな数字を出させていただいていますが、ここで見ると分かりますように、面積からいうとカザフスタンが抜群でございまして、日本の八倍ぐらいの面積ですが、人口は千六百万人ぐらいです。それに対して、ウズベキスタンは、面積日本の一・五倍ぐらいですけれども人口中央アジアで一番多い、約半分を占める二千七百六十万人ということでございます。その後、タジキスタンキルギストルクメニスタンは、人口からいうと五百万から七百万ぐらいのまた一桁小さい数字でございます。面積も小さいわけです。  現在のGDPの規模を見てまいりますと、全体の規模もございますけれども、やはり資源が、特に石油天然ガス資源に恵まれているところが相対的に高い一人当たり所得を享受しておりまして、それに対して、たまたま上流国になりますけれどもタジキスタンキルギスはその中でも非常に貧しいという状況であります。現在、カザフスタンが一人当たり所得が大体八千八百ドル程度ですが、その後トルクメニスタンがその半分ほど、それからウズベキスタンが更にその四分の一ぐらいになりまして、あとタジキスタンキルギスがもう一つ低いということで、所得格差かなり大きくなっている。つまり、元々あったわけですけれども、大きくなってきているというのが実情でございます。  それぞれの国の経済発展戦略というのがかなり独特なものがありまして、これについて時間を割くわけにはいきませんが、キルギス、それからカザフスタンタジキスタンが比較的市場経済化のテンポを速く進めてきたというふうに言えるんですが、トルクメニスタン、それからウズベキスタンはある意味ではゆっくりと、特にトルクメニスタンは非常に緩やかな形での改革を志向してきたということが言えると思います。  それで、今日の本題であります、この中央アジアの国の上流国下流国の間の係争事項、これがある意味では地政学的な問題として大変大きな問題になってきておりまして、今後ともこれは非常に重要な問題としてあり続けるだろうということが予想されるわけです。  それで、先ほど申し上げましたように、ソ連時代は言わばモスクワが事実上のコントロールをしておりましたので、下流国炭化水素燃料上流国に提供し、上流国下流国農業用河川水管理するというような構造が一応成立していたんですが、それが独立以降非常にぎくしゃくしてきております。それは、キルギスあるいはタジキスタン下流国から受け取っている、特に天然ガスですけれども、その代金の支払に滞ることになりますと、その支払の問題と同時に、近くにあるより低廉な水力発電によってエネルギーを供給しようという誘惑にどうしても駆られるわけです。  それで、以前は上流国は冬に水を蓄積して、そして春、夏に下流国農業用水用の、かんがい用水用の水を放出するという、こういう一つ伝統的放出があったんですけれども、これがシステムがずれ始めまして、発電ということを重視いたしますと、夏季に水を蓄積して寒い冬に放出するという方向にウエートがずれてきたわけです。そうすると、今度は下流国農業国であるウズベキスタン等にとっては大変困った問題を引き起こしがちということになります。それで、キルギスシルダリア川の支流ナリンという川があるんですが、そこの水管理、それからタジキスタンアムダリア支流ヴァクシュとか、この辺りの水管理で同じような方針を採用することになりました。  そしてさらに、争点をここ最近先鋭化させているのは、当面の電力需要電力を確保するという上流国動きだけではなくて、やや長期的な開発戦略として、場合によっては電力輸出までを視野に入れた大規模水力発電プロジェクト、これを再開、着手するということに、非常に何というか開発戦略を懸けようとしているところがあるからであります。  そして、具体的に申し上げますと、キルギスナリン川にカンバラタⅠとⅡという、これ実はソ連時代に作られた構想構想ができて、それで部分的には作られていたんですが、その後、手を付けられなくて、お金の問題もあって、これをもう一度再開する。タジキスタンヴァクシュ川にあるログンという水力発電プロジェクト、これもまた非常に大規模なんですけれども、こういうものをやろうという動きをし始めています。  これに対して、ウズベキスタンとしては、特に下流国の代表ですが、非常に激しく反発して、場合によってはウズベキスタンを経由してタジキスタンに入る輸送用のトラックがこの問題とかかわっていると見られる動きとしてストップさせられて、ある意味では非常にそういう問題にまで影響を及ぼすというような形になっております。  さらに、紛争を激しくしている理由の一つは、ソ連時代に形成された分業システムあるいはモノカルチャーと言ってもいいんですが、この発想が意外にまだ根強く生きているところがありまして、全てではありませんが、それが代表的なのはタジキスタンアルミ産業であります。タジキスタンは、現在輸出額の約六〇%がアルミニウムなんですが、面白いことに原材料のアルミナは全部輸入です。そして、低廉な電力を使うということによって比較優位を出そうということでやっているわけですけれどもタジキスタンは、今の発想では今後更に水力発電を強化して、またアルミ生産を拡大して、それを輸出として更にやろうという、そういう構想もまだ生きているということであります。  それで、そのためのログンダムについては、ここに注一というところで簡単に紹介してございますけれども、意外にソ連時代のものが歴史が古いということだけをちょっと見ていただければと思います。もちろん、現在ダムを建設したりする場合は新しい技術でやりますのでそのままではありませんが、発想そのものソ連時代からのものが生きているということでございます。  それで、三の方に参りまして、中央アジアの水・電力問題を取り巻く、今は上流国下流国の間の対立の問題を述べましたけれども、これをさらに、その外堀、外回りの国々との関係でこの中央アジアの水問題が一つ緊張を生み出しています。  それは一つは、ロシアは場合によっては上流国援助して、そして電力を場合によってはロシアに引くという可能性一つ考えている。それから中国は、今西部大開発の中でいわゆる新疆ウイグル自治区への電力供給可能性のある地域として例えば中央アジアを考えたいと。それからアメリカは、アフガニスタンの問題もありまして、アフガニスタンパキスタンへの電力供給としての中央アジアというようなことも考えておりますので、さらに、アフガニスタン復興についてはアムダリアの水まで使うということになってきますと、更に水の問題をめぐった緊張は緩和されることは当面予想されないということになります。  それから二番目は、この水の問題が政治ゲームの中に入り込んできております。  ちょうどリーマン・ショックで、特にタジキスタンキルギスは非常に大きな打撃を受けました。特に出稼ぎ労働者が最近非常に多くなっているのが現状ですが、その中で外貨危機に見舞われたわけですけれどもロシアがそのときにかなり大盤振る舞い的な援助を提案していました。しかし、その中には二つのカンバラタそれからログンダム建設再開援助するということになるわけですが、そうすると、今度は、下流国にとってみては、言わばウズベキスタンとかその他をある意味ではロシアが間接的にコントロールする問題とつながっていくというような形の地政学的な形の判断をいたします。そういうことで、それでまた状況が変わってまいりますと、ロシアは立場を少し変えてきまして、やっぱりこれは客観的な調査に基づいて再開を決めたいとか、下流国の合意を前提にするというような形で態度を変えたりしますけれども、これが政治ゲームの中に入り込んできているということが言えると思います。  最後に、時間がもう限られていますけれども、これは列挙していることでございまして、一つ中国プレゼンスが非常に急速に今中央アジアで拡大しているということでございます。中国商品もありますし、それからトルクメニスタンからウズベキスタンカザフスタンを経て中国の新疆省に既に二年前から天然ガスのパイプラインが開通しております。非常に長距離であります。  それから、ロシア中央アジア復権動き。  それから、先ほど申し上げた今旧ソ連圏出稼ぎ労働が急増しております。ソ連時代よりも人の動きがある意味では活発化しているというのが現状でございます。  あとアフガニスタン問題に関連して、アメリカNATO軍の作戦でパキスタン依存がどうしても不安定ということで、中央アジア戦略的地位が高まっているということがございます。  それから五番目は、これは静かな動きですけれどもイスラム復興というのは中央アジアでもこれは静かに、着実に進行しております。これはテロということじゃないんですが、ちょっとこれも最近を見る上の一つのあれでございます。  それで、最後になります。  日本はどのような援助が可能かということでございますけれども、先ほど申し上げたように、中央アジア諸国間の水問題、ダム建設問題というのは非常に高度に政治化しておりまして、これを片方に肩入れするような動きというのは日本としては恐らく取れないということで、これは直接関与というのは事実上、当面は難しいしということであると思います。  それから他方、むしろ省水省エネルギー技術やマネジメントに関するいわゆる地道な協力というのが、ある意味では中央アジア五か国共通利益ということで進められる課題一つだろうと思います。ソ連時代小規模かんがい施設というのは、かなり今メンテナンスが悪くてひどい状況であります。これはどうするのがいいというのはちょっと簡単な回答がないんですが、これも残された課題であります。  それから、市場経済化の中で、大規模農業から小規模農業への自営業的動きが、全てではないんですけれども一つの流れとしてあります。これについては、日本小規模農家経営経験を学ぶべきだとする声が現地からも時々聞こえてまいります。  それから、あと四番目は、中央アジア・プラス・ジャパンというのは二〇〇四年、日本側が提案をしているわけですが、これはダイアログですが、この考え方は、基本的には中央アジア結束をある意味では長期的に固めていくという方向への援助に重点を置きたいという発想がございます。これは、ある意味ではASEANの経験も考慮に入れているわけでございますけれども、現在、中央アジアの国が必ずしもまとまる方向ではなくて、ある意味では逆のベクトルもかなり強く働いていると。  しかし、長期的にはあの地域共通利益というのは様々な面でありますので、これはやはり中央アジア結束がまとまっていくという、そういう動きは、長期的な目で、やはり日本としてはそれが望ましいという姿勢をいつも表明しておく必要があるのではないかなと思います。  最後ですが、ちょっとした話題でございますけれども水管理の問題なんですが、この管理の問題で、最近は水利組合はどこの国もできているんですが、必ずしもうまくいっておりません。それで、実はソ連時代水管理の問題について大きな変化がありまして、ソ連が成立した一九二四年の段階では、実は中央アジア水管理の問題については、それ以前の伝統的なイスラムの法律に乗っかった形の水管理法かなり蓄積されておりまして、それをソ連自身が非常によく研究して、それを適用しようという時期がございました。  それが、スターリンが非常に力を持つようになった一九三〇年代ぐらいからこれが事実上消えてしまったんですが、現在再び、そんなこれにかなり水が足りないところでの水管理知恵があるのではないかということで、中央アジア行政官とかあるいは水の問題をやっている方がそういうものを掘り起こして、今もう一度それが使えないかというような動きがございます。  ですから、ソ連時代にも一つの、ソ連と言われる時代の中でも最初は比較的柔軟な動きがあったんですが、その後も非常に強引な大規模農業の中でそういう知恵が埋没してしまったと。それがまたひとつ、これが日本援助にどうつながるか、ちょっと私分かりませんが、私個人が非常に興味を持っていますので、ちょっと御紹介させていただきました。  ちょっと二、三分、時間をオーバーしてしまいましたけれども、大急ぎでございましたけれども、これで私のお話を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  4. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  次に、窪田参考人から御意見をお述べいただきます。窪田さん、よろしくお願いいたします。
  5. 窪田順平

    参考人窪田順平君) ただいま御紹介いただきました総合地球環境学研究所というところから参りました窪田と申します。短い時間ですが、少し中央アジアの水、特に環境問題にかかわって報告をさせていただきたいと思います。  私、それほど中央アジアと古くからかかわっていたわけではなくて、ここ六年ほど、この地球研というところの環境研究するプロジェクトをやっておりました。私どもは、特に環境問題の背景になっている、ここでいうと、歴史的な問題ですね、文化的な背景、特にこの地域は多民族、多文化の地域であるということを理解しないと援助等々もままならないということがありまして、その辺も含めて報告させていただければというふうに思います。  それで、今日の話題、簡単にこんなふうに用意してございます。(資料映写)  まず、概要を少し説明させていただきます。それで、それから水の環境問題、清水先生も御報告されたとおり、ここの問題はある意味では国際問題に尽きると言ってもよいかと思います。ただし、アラル海の問題だけではなくて、他の流域の問題もございます。時間の許す限り少し報告させていただきたいと思います。  それから、環境問題を考えるときに、やはりこれから温暖化の問題というのが避けることはできません。中央アジアの場合でも、むしろ水が少ないところだからこそ、その影響が強く出る可能性があるというふうに考えております。その部分を少し述べさせていただき、私見ではありますが、日本がどういうことができるのかというところまで行ければというふうに思っております。  中央アジア御存じのとおり、カザフ、ウズベクキルギスタジク、トルクメン、五か国ですが、やはり今、清水先生最後にもございましたが、中国プレゼンスというのが非常に大きくなっております。そういうことがあったわけではないですが、文化的にも、そういう意味では新疆ウイグル自治区というのはかつて同じところにあった地域というふうに考えて、私どもは、中央ユーラシアという言い方をしておりますが、そこで研究をしてまいりました。  この地域、モンゴルから、それからアフリカまでずっと、中央ユーラシア大陸真ん中乾燥域があるわけですが、ここの部分だけは高い山があって、そこの氷河で、そこから河川が流れてくるという特徴があります。ですから、中央ユーラシアというのはそういうところだというふうに理解してもらってもいいかもしれません。  さて、それで、出てきた河川は海につながってはおりません。砂漠のど真ん中で湖になって、そのまま消えております。この湖、ここ百年ほどの変化傾向幾つかの湖で出しておりますけれども、特に一九五〇年前後、六〇年前後から、アラル海だけではなくてたくさんの湖が急激に低下しています。これほとんど同じ問題で、上流側農業開発をやったことによって湖の縮小が起きています。ですから、アラル海問題というのは決してアラルの問題だけではなくて、この中央ユーラシア全て、中国から様々な、カスピ海のところまでつながっています。ただ、カスピ海はちょっと違っておりまして、これは後でできれば述べさせていただきたいと思います。  これはアラル海の写真、七〇年代以降、急激に小さくなりました。これは二〇〇九年八月ですが、一番上にあるのを小アラルと呼んでいますが、そこを除いてほぼ干上がりました。  それで、先ほど申し上げたとおり、なぜ干上がったかといえば、農業開発をやったからです。ですから、あらゆる環境問題がそうなのかもしれませんが、ここでは特に農業という人の生存、それから国家の収入、特にウズベク等々ではそれを支えている部分です。ですから、ある意味では、この環境問題を解決しようと思うと、国家政治経済社会構造あるいはその人々の暮らしに踏み込まないと解決ができないという極めて深刻な問題です。単純に技術を持っていけば解決するという話ではございません。  さて、過去はどうなのかという話を少しだけさせていただきます。  アラル海、急激な最近の変化が問題になっていますが、実は歴史的に見れば、何回か干上がったという経緯を持っています。近いところでは十二世紀、ちょうどチンギス・ハンがこの地域を征服した時代ですけれども、このころに一回、完全に干上がったという経験を持っています。この右下にある写真は底から見付かった当時の遺跡です。  それで、こんな遺跡が見付かって、そういう意味では極めて面白いんですが、ここで何を言いたいかというと、この地域環境変動というのは非常に大きい、特に水に関して非常に大きいということです。これはアラル海に流れ込むシルダリヤという流路沿いの遺跡の跡、何というんでしょうか、時期的にどの時期にどっちにあるというのを示しているんですが、実は大きく河川が振れています。アラル海に要するにシルダリヤが流れ込んでいなかった時代があるわけです。そういうのに応じて、農業集落もその時々で位置を変えているわけです。そうやって、この人たちは長い間、この地域の自然に適応してきたわけです。  一方、当然、遊牧というのがこの地域の大きな生業なんですけれども、遊牧の人たちも、これはどの時代にどの場所に草原があったかというのを復元したんですが、これ十三世紀が一番乾いていた時代、十七世紀というのは一番湿潤だった時代なんですが、随分草原の位置とか広さが違うんですね。こういうのに適応するためには、一つの場所にいたらやっぱり死んでしまうわけです。だから、集団として何をしていたかといったら、位置を変えていた。  だから、今の時代ではなかなかこういうことは受け入れられませんけれども、この地域のそういう意味では伝統的なものというのは、一か所にとどまって環境に耐えるということではなくて、環境に応じて場所を変え、そして生きてくる。ですから多文化、多民族の社会ができ上がっているわけです。これをきちんと理解しないと、中央アジア中央ユーラシアではなかなか話が見えてこないという部分があるのではないかと思います。  それで、若干まとめます。  それで、近代以前というのは、やはり気候変動が非常に大きい地域、これは私たちのように日本に住んでいるとなかなか分からないわけですが、人々は移動という形で、ある意味では非常に流動的な社会でした。ところが、ロシアそして中国の間でこの地域は二分されていきます。いわゆるグレートゲームの時代ですね。そのころから後、社会主義が入ってくるわけですけれども、一九三〇年代から計画経済というのが始まっていきます。その中で一番結局問題になるのは、そういう流動的、多民族の社会の中で、経済的、生態学、文化的な境界といわゆる政治的境界が不一致である、それによって起こる様々な問題というのが環境問題だと、それはアラル海もその一つだと思います。  アラル海問題を理解するときに一つ大事なことは、アラル海が干上がるということは計画上想定されていました。決して計画がずさんだったわけではありません。ソビエト連邦は干上がらせるつもりで干上がらせました。これは、ですから、ある意味では当時の政治と、それから科学者も加担していました、そういうことをすればこういうことが起きるのだと。私たちの要するに選択によってこれが起きたのだと、誰かのせいではなくて人間のせいであるということを私たちは忘れてはなりません。  九〇年代以降、ソ連邦崩壊と独立、市場主義経済への移行、先ほど清水先生が御説明されたとおりでございます。いわゆる国内河川から国際河川に変わり、中央政府による調整機能が喪失して、状況は完全にアラル海の場合に固定しています。ですから、そこはなかなか解決ができないというのが正直なところです。  ただし、様々な問題がまた新しく出てきています。氷河依存した河川だというふうに申し上げましたが、それに対して気候変動がかなり強く効いているという可能性がございます。  それで、アラル海の話。これがアラル海と、それから、今日お話ししている地域を大体示したところです。アラル海に二本赤い線を引いてございますが、シルダリアアムダリアという河川が流れ込んでおります。これ沿いに、ちょっと見にくいです、余り色がきれいではありませんが、茶色っぽい砂漠を示した中に緑の部分が少しございます。これがかんがい農地でございます。これが一九六〇年代以降非常に拡大したわけですが、簡単に言うと農地を広げた分だけ湖が小さくなるわけです。ですから、降ってきた雨がこれはその流域でまた全部大気に戻っていくんですけれども、単純な計算で、農地を増やせばそれだけ湖が減るわけです。だから、全く影響なく農業をやるということはできません。そこは、ですからどちらかを私たちは選ばざるを得ないわけです。そこを少し理解をいただきたいと思います。これがそのソ連時代に開かれた農地です。  それで、現在のアラル海、その一番北にある小アラルというのだけ。ここにシルダリアという一本の河川が流れ込んでいるんですが、ここにダムを築いてその水だけを、要するに広く拡散させずに一部に集中させて保全するという方策が取られました。カザフスタンが主としてやっております。国際的な協力もやっております。これ、随分効果が出ました。かなり魚も戻って、生態系もよく復活しております。ただし、この場所に限られていると。これ以上は恐らくなかなか難しいというところです。  それから、ほかにも幾つ国際河川がございます。中国動きがやはりなかなかこれから大事になってくるという意味で、中国カザフスタンの間に二本国際河川がございます。一本がイリ川と言われています。バルハシ湖という湖、これ、これでも瀬戸内海ぐらいあるんですけれども、ここに流れ込んでいる湖。それから、ここには出ておりませんけれども、現在のカザフスタンの首都に、アスタナに流れ込んでいるイルティシュ川というのがございます。二本とも中国からカザフへと流れ込んでおりますが、二本とも非常にこれ水争いになっております。中国とカザフの関係というのは原則的に良好ですけれども、水問題はこの二国間の唯一のとげなのかもしれません。  それで、このイリ川も実はアラル海での、何というんでしょうか、農地開発影響を強く受けています。当時、アラル海の流域というのは米をたくさん作っていたんですね。それを綿花に換えていくわけです。そのために、やっぱりどこかで米を作らなきゃいけないということでほかの地域が選ばれて、このイリ川も開発されたということになります。これ随分、バルハシ湖の百年ぐらいの水位変化ですが、この一番最後の一九七〇年以降、水位が低下しています。これはダムを造ったことによる水位低下で、実はバルハシ湖も干上がるのではないかというふうなおそれがあって、先ほどのアラル海と同じように途中で締め切ろうではないかというようなことがやはり起きました。  幸い、これは実はカザフスタン農業経済市場経済化の段階でほぼ、何というんでしょう、壊滅したといいますか、九〇年代の独立市場経済化のところで完全に農業が一回失速します。約半分に生産高が落ちるんですが、その結果としてこの湖は回復しました。ですから、農業をやめたことでこの湖は救われたわけです。ただし、その農民は大変苦しんでおります、要するに収入がなくてですね。この地域における水問題というのはそういうものだというふうに御理解いただければいいかと思います。  これは、その下流側での農業開発の様子です。衛星写真ですが、赤いところと白っぽいところがございます。赤いところがこれ水田なんですが、この白っぽいところは塩が噴き出してしまったところです。ですから、乾燥地で農業開発をやると塩害の問題というのは避けられません。はっきり言って、こう言うと反対する人がおられますけれども、私は無理だと思います。避けられないと思います。はっきり言って、これは避けられない。ですから、それはよっぽどうまくやらないとうまくいかない。こういう、何というんでしょうか、アラル海もそうですが、湖に近い平らなところで農業をやると必ずこうなります。もう少し山際の扇状地とかいい場所でやれば何とかなるんですが、そこの問題が非常に強くあります。  ダムのこれは影響を詳しく示していますが、先ほども言いましたとおり、これは日本ダムとは違うんですが、ダムの水面からの蒸発というのが非常に強く来ます。ですから、カプチャガイというダムを造ったんですが、それが、バルハシ湖の水位を減らした影響の半分はダムを造った水面からの蒸発です。これはアラル海でも非常に強く言われています。ですから、下流側で水量の調整のためにダムを造ると、その分、水を失うということがこの乾燥地では起きます。これは日本とかでは起きません。日本とかでは、ダムからも蒸発するんですが、ほかの状態と比べて変化がないんですね。これが、だから乾燥地の特徴です。だから、乾燥地でダムを造ることは水を失うことと言ってもいいのかもしれません。  さて、それから最後カスピ海の話です。  これは、カスピ海、全く違う種類の国際問題として、カスピ海の中に実は国境線をどういうふうに引くかということが非常に強く問題になっています。要するに、湖の底に眠っている資源をどこがどうやって取るかという問題になっておりまして、これを海として見るか、それから湖として見るかで国際法上の解釈が違いまして、各国間の争いに今なっています。  カスピ海は唯一、そういう意味では中央アジアでは水位が急激には減少しなかった湖です。周期的に変化しているんですが、ところが、皮肉なことに、一九七〇年代、八〇年代にカスピ海が一旦水位が低くなったんですね。そのときにカザフスタンが沿岸で油井ですね、石油開発石油用のリグを立てるんですね。ところが、その後で水位が上昇してきて、その油田が水につかってしまったんですね。それで、これ油の流出事故が起きまして、非常にここは大きな問題になっております。  ちなみに、湿地帯条約でラムサール条約というのがございますが、そのラムサールというのはこのカスピ海の一番南岸にある、イラン領にある湿地帯の名前です。ですから、ここは非常にそういう意味でも重要な場所ではあるんですが、なかなか国際的にも難しい問題になっております。  それから、ちょっと時間が来ておりますが、少しだけお話しさせてください。これから地球温暖化でどうなるかという話です。  氷河河川が支えられていると申しましたが、今その氷河が非常に縮小しております。これは、一九七〇年から三十年間に何割面積で減ったのかということを示しておりますが、場所によって違いますが、大きいところでは一〇%、二〇%の氷河面積が縮小しています。  氷河がどういう意味があるか。氷河の水そのものが河川になっているわけではなくて、氷河に降っている雪も併せて来るんですけれども、これが要するに失われると、氷河は天然のダムのように、一時的に水を貯留して、要するに雨の少ない時期にたくさん流してくれる。それは、例えば十年、二十年といった変動もありますし、季節的な部分もありまして、ある意味では非常に優秀な天然のダムなんですが、それがなくなると要するに急激な洪水が起きたり、渇水に悩まされたりということが予想されます。  それからもう一つ氷河湖の決壊の問題というのがございます。これは今ネパールとかブータンとかでも非常に大きな問題になっておりますが、氷河が縮小したところに湖ができてしまうんですね。それが、あるとき土手が解けてしまうと一気に流出するということが起きます。先日、和歌山の方で起きた天然ダムのことを思い出していただければいいと思いますが、それと同じものが要するに山の中で突然起きる。山の中の方は地元の人でも余りよく知りませんから、気が付いたら突然こういう洪水、あるいは土石流なんですが、それに襲われるということがブータン、ネパールでは非常に大きな問題になっておりますが、中央アジアもそれが増えているということがございます。  さて、最後、まとめさせていただきたいと思います。  それで、どこに問題があるのかという話はもう既に申し上げました。多民族、多文化な社会であるということをよく理解する必要があるということと、農業という生存あるいは国家を支えているもの自体に環境問題の原因があるということ、そのほかにも、当然公害型の環境問題も多数ございます。その辺も深刻なんですが、やはりその農業をめぐる問題というのが一番大きいのかなというふうに思っております。  何ができるか。私は研究者ですので、割と、一つは、やはりソ連邦崩壊による科学技術の弱体化というのが非常に気になります。それから、何というんでしょうか、気象、それから水文と言いますが、河川関係ですけれども、そういう観測データのネットワークというのがソ連時代にはきちんとあったんですが、非常に優秀なネットワークがあったんですが、それが今崩壊しています。実は、これ面白いんですが、各国でどれだけ川の水が流れているのかというのを今対立があるからといって表向きは情報をお互いに流していないんですが、彼らは元々同じ学校で育った人たちです。ですから、実は困ったときには今情報を流し合っているんですね、河川関係の人たちは。ところが、その世代がもうそろそろリタイアします。若い人たちは独立国で育っていますから、それがありません。したがって、これからそのネットワークの問題が非常に大きな問題になるというのが一つあるんじゃないかというふうに思っています。  それから、先日、カザフスタンアラル海についての公開シンポジウムというのを向こうの東大みたいなところでやったんですが、実は彼らはそれほどアラル海のことをよく知っていない。もうアラル海の話もそういう意味では二十年前の話になってしまったんですね。その意味では、やはりその環境教育というのをきちんとしなきゃいけないんじゃないかなということを強く感じております。  それから、先ほど清水先生も言われました、やはりこの地域農業を改善するということが環境問題とも強くかかわっております。  それから、最後に申し上げましたとおり、温暖化の問題、氷河湖等々の問題が重要になってくる可能性があります。これは衛星写真を解析することでかなり有益な警戒システムができます。今、JICAの支援を得てブータンとかでそれをやっているはずなんです、やっているんですが、私の知り合いが、同じようなことが多分ここでもできるはずで、これは非常に私はさっきの観測ネットワークと併せて是非、日本が支援していただきたいところだと思います。  それから、最後に、やはりこの国際的な水問題、簡単には解決しませんが、日本が、中国も含めてですけれども、多国間での調整協力の中である一定の役割を、限定的ではあると思いますが、根気よく続けていくということが非常に大事だと思います。  どうも、ちょっと時間を超過して申し訳ございませんでした。これで私の報告を終わりたいと思います。
  6. 藤原正司

    会長藤原正司君) どうも、窪田さん、ありがとうございました。  次に、中原参考人から御意見をお述べいただきます。中原参考人、お願いします。
  7. 中原正孝

    参考人中原正孝君) ただいま紹介いただきましたJICAの中原と申します。  本日は、南アジアの水問題とJICAの取組について述べさせていただきたいと思います。  私の南アジア部で所掌しております地域は、西からアフガニスタンパキスタン、インド、バングラデシュ、北の方でネパール、ブータン、南でスリランカ、モルディブと、計八か国で成り立っております。(資料映写)  このスライドを御覧になってお分かりのとおり、この地域は安全な水の確保といった課題のほかに、環境、気候変動の影響によるネパールやブータンにおける氷河湖決壊のリスクや、二〇一〇年、二〇一一年と二年連続してパキスタンで発生いたしました大洪水やバングラデシュでのサイクロンによる被災など、様々な水にかかわる課題がございます。  本日は、地域共通してニーズが大きく、JICAとしても大変積極的に取り組んでおります上下水道、安全な水の確保という課題に焦点を当てて述べさせていただきたいと思います。  最初に、南アジア人口と貧困について、ほかの地域と比較してみたいと思います。  まず、人口です。  二〇二八年には中国を抜いて十四億人を超える、また二〇五〇年には十六億人を超えて世界最大の人口を抱えるインドを筆頭といたしまして、南アジア世界で最も人口の多い地域となる見込みでございます。人口が増えれば、食料増産のための農業用水の増加とともに、工業用水や生活用水なども増加することが考えられます。  また、南アジア地域は依然として貧困層の割合が高く、人口はサブサハラ地域を上回り、世界の貧困層の約四割を占める最大の貧困地域でございます。このことは、南アジア地域が、安全な水とともにトイレや下水などの衛生環境改善のニーズが依然として大きいということを示しております。また、一人当たり所得が増えれば、一定の生活水準を支えたり、あるいは更に上げるための水需要というものは増加してくるものというふうに考えられます。  南アジアにおけるミレニアム開発目標の現状を示したものでございます。  濃い青の部分南アジアを示しております。この資料の中ではどういうわけか中心部に対象の人口の合計が出ておりませんが、まず左側の、安全な飲料水を継続的に利用できない人口は全世界で八億八千四百万人となります。うち南アジア地域は二億七百万人で、全体に占める割合は二三・四%と、サブサハラ・アフリカに次いで世界第二位でございます。右側の、下水やトイレなどの基本的な衛生施設を継続的に利用できない人口は全世界で二十五億三千三百万人、このうち南アジア地域は十億七千九百万人で、全体に占める割合は四二・六%と、最も高いものになっております。  さて、南アジアの水問題の特色についてでございます。  まず、水の需給ギャップの増大。人口の増加、特に都市人口の増加に伴い給水能力と需要とのギャップが大きくなっております。インドの首都デリーの給水時間は一日に僅か六時間でございます。インドの水源に乏しい小都市では数日に一、二時間程度の給水時間でございます。  二番目は、施設老朽化と脆弱な運営能力による高い無収水率。南アジアの国の多くは旧英国の植民地で、当時に布設した給排水管の老朽化が深刻な状況でございます。中には七十年から百年前のもので、老朽化に伴い漏水問題が顕著な地域が目立っております。漏水は、必要としている地区まで給水ができないばかりか、漏水箇所から汚水が混入し水質を悪化させるとともに、様々な水の関連した疾病の原因ともなっております。  三番目は、安全な水の確保でございます。南アジアには弗素や砒素という大きな問題がございます。インドでは弗素症の被害者が約六千六百万人に上るという報告がございます。また、砒素につきましてはインドの東側の西ベンガル州やバングラデシュの主に南西部において大きな問題となっております。  バングラデシュにおきましては、砒素の影響を受ける人は三千三百万人に上っております。ここに記載している人口、安全な水にアクセスできない人口が二千二百万人というのは、この砒素を受ける人たちに対して何らかの対応ができた後の人数でございます。  弗素は、長期の摂取により体が硬化し、最悪の場合、歩行困難となります。砒素は、皮膚の角化や、内臓、胎児に影響を与えるとともに、がんを発症することがございます。  四番目は、低い下水道の普及率でございます。上水道の普及率以上に下水道の普及はこの地域の大きな課題になっております。南アジアのほとんどの国で上水道へのアクセス率に比べて下水道のアクセス率は下回っております。  ここで取り上げているスリランカはその例外で、二〇〇八年の統計でございますが、上水へは九〇%、下水を含む衛生施設へのアクセスは九一%に達しております。  このような状況もあり、スリランカ政府は下水道を各家に接続する率を現在の二・三%から二〇二〇年までに七%まで改善することを目標としております。  これらの課題、これらの国に対してJICAとして取り組んでいることにつきまして述べさせていただきたいと思います。  まず、上水供給能力改善支援ということで、インドのデリーの上水道改善事業に今後取り組んでまいる予定でございます。多くの日本企業が進出している首都ニューデリー地区を含むモデル地域を対象に、現在朝夕の一日二回、合わせて六時間程度しか給水がされていない状況を、大きな新しい施設を建設することなしに既存の施設を改修することによりまして、インドにおける大都市の初の二十四時間連続均等給水を目指すものでございます。また、事業効果の表の中にございますとおり、現在の無収水率五〇%を一五%に減らすことも目標にしております。  続きまして、パキスタンでの老朽化施設の改善と水道事業体の能力強化支援の取組についてでございます。  パキスタンでは、無償資金協力技術協力を通じて水問題に取り組んでいる事例として取り上げております。パキスタンは、南アジア地域の中でも都市における人口の比率が約四割と比較的高く、パキスタン人口一億七千万人のほぼ半分を占めるパンジャブ州、その州都の上下水道公社を対象といたしまして、左側に見えます排水ポンプの更新を含めた排水能力改善の機材供与と、右側の技術協力で取り組んでおります水道公社の能力向上を目指すものでございます。このラホールにおける取組を元に、パンジャブ州のほかの都市に展開を図る予定でございます。  続きまして、バングラデシュにおける持続的な砒素対策プロジェクトについてでございます。  バングラデシュでは、地下の十五メートルから六十メートル程度の浅い層が砒素で汚染されていることから、当面の対策として、汚染の少ない地下百五十メートル以上の深井戸を代替水源として開発したり砒素の除去装置の設置などを進めております。このプロジェクト特徴といたしましては、住民が主体となって中央や地方の行政機関が支援する形で、三者が連携しながら砒素対策に取り組んでいる点でございます。この事業につきましては、豊富な経験を持つアジア砒素ネットワークと連携して取り組んでございます。  スリランカのキャンディ市の下水道整備事業でございます。  首都コロンボに次ぐスリランカ第二の都市キャンディ市は人口約十二万人でございますが、上水道の普及や人口、観光客の増加に伴い、汚水の排出量が増加する一方で十分な汚水処理が行われていないため、衛生状態や水源河川の水質が悪化しております。本事業は、有償資金協力により下水処理システムや貧困層を対象とした衛生設備の整備により、河川の水質を向上させ、地域の生活状態の改善と健康状態の改善に貢献することを目標としております。  ただいま述べさせていただきましたとおり、JICAは技術協力それから有償資金協力、無償資金協力という様々なプログラムを用いまして最も効果的、効率的な取組を図っているところでございます。  このスライドでは、南アジア地域の上水道分野でどの程度の支援を行っているかということでございます。二〇〇六年から二〇一〇年度までの五年間におきまして、南アジアでは円借款につきましては、上下水関連は第一位の二一・三%の事業を行っております。また、無償資金協力につきましては、当該の期間に実施しました金額のうち約一三%をこの上下水分野で活用しております。  また、様々な自治体や大学とも一緒になって連携をしているところでございます。  最近では、本年一月に横浜市とともにアジア地域の上水道事業経営・人材育成セミナーを開催し、南アジアから五か国、十五名の関係者が参加いたしました。また、横浜市はインドのムンバイ市と姉妹関係にあることから、今年の一月にムンバイ市を訪問して水を含む都市問題について意見交換を行いました。また、東京都の水道局も本年一月にバングラデシュを訪問し、今後の支援の可能性を検討しております。  このように、日本の自治体も積極的に南アジアの水問題に取り組むという姿勢を見せていただいているところでございます。  二十一世紀は水の世紀と言われるほど、南アジアに限らず、世界的な問題でございます。世界最大の貧困人口を抱える南アジアにおきましては、人間の安全保障にかかわる上下水道事業のニーズと優先度は大変高く、JICAといたしましても、日本企業の技術力と自治体の運営ノウハウを活用して、資金協力技術協力を組み合わせて、効率的、持続性の高い事業を今後も形成、支援してまいりたいと考えているところでございます。  御清聴ありがとうございました。
  8. 藤原正司

    会長藤原正司君) どうもありがとうございました。  お待たせしました。最後に、尾崎参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。尾崎参考人
  9. 尾崎勝

    参考人尾崎勝君) 日本水道協会の専務理事を務めています尾崎です。よろしくお願いします。  本日は、お話をする機会をいただきありがとうございます。事務局からは日本水道協会が取り組んでいる海外水ビジネスについてのお話ということでしたので、準備を進めてまいりました。昨日、南アジアなどでの活動についても触れていただきたいという要望がありましたので、現在取り組んでいるインドでの活動を最後お話しさせていただきます。(資料映写)  まず、主題とも関係しますので、日本水道協会の概要と活動について簡単に触れさせていただきます。  日本水道協会は、明治三十七年、協議会として発足しました。正会員は、水道事業体を運営している地方公共団体等、ほぼ全国の水道事業体全てが会員であります。昨年の十月時点で千三百五十二団体、企業などの賛助会員が五百三十二、大学の研究者など個人会員が四百九十二います。  主な活動は、水道事業に関するマニュアル、ガイドラインの作成、論文等を掲載した月刊誌の発行、約五十コースの研修事業、全国水道研究発表会の開催、経営や技術面での水道事業体への支援、水道管の検査や水道機器の品質認証の事業、それに今日のテーマにかかわる国際活動です。  また、震災など緊急時への対応が重要な業務であります。地震など災害時においては、全国の本協会のネットワークを生かして、応急給水・復旧を行っております。昨年三月十一日の東日本大震災に際しては、本協会に対策本部を設置し、全国から応援に駆け付ける水道事業体の調整当たりました。写真は応急給水、応急復旧の実施状況でありますが、これらの応援により、被災地での応急給水と早い復旧に貢献したところであります。  次に、本日の主題とも関係しますので、国内の水道事業の状況について簡単に触れさせていただきます。  我が国の水道は世界的にも高い水準にありますが、次の課題の対応に迫られております。一つは、料金収入の低迷。中小規模水道事業体の現状、つまり経営基盤が脆弱なこと。老朽化した施設の更新・再構築。一つは、頻発する地震等、自然災害への対策。一つは水質汚染事故等の被害。一つは熟練職員の大量退職に伴う技術の継承などであります。これらの課題を広域化推進と公民連携推進で解決しようと取り組んでおります。これらの課題が、後に述べますが、国際貢献ビジネスにつながるものと考えております。  さて、本題ですが、世界の水問題は深刻で、特に途上国では、不衛生な川の水を利用して病気になったり、水を確保するために子供や女性に大きな負担が掛かっていたり、水道があっても十分に整備されていないなど多くの問題があります。国連では、二〇一五年までに安全な水にアクセスできない人口を半分にしようというMDG、ミレニアム開発目標を定めております。世界各国が各方面から取組を行っておりますが、それでもまだ九億人近い人が安全な水にアクセスできない状況にあります。  途上国では、気候変動やエネルギー問題などグローバルな課題とともに、それぞれの国の発展段階に応じて水道の課題が顕在化しております。水道問題の課題解決には途上国内部での努力も重要でありますが、国外からの支援も欠かせません。国際機関の支援、JICAなどのODA、また、最近経済発展が著しい新興国はPPP形態で水道整備を進めることも多く、我が国ではこの点で出遅れております。  我が国がなぜ海外のPPP事業に出遅れているのか、これをフランス、英国との比較で見ますと、フランスでは、自治体から民間へ包括的に委託する形態で百五十年の歴史があります。一九九〇年代にフランス企業は一気に世界へ進出しました。イギリスでは、一九八九年にサッチャー首相のときに水道事業が民営化され、水道事業体の多角経営の一つで海外ビジネスに乗り出しました。  我が国では、水道事業は地方自治体でありまして、海外ビジネスは視野になく、また、民間は水道事業運営について全般の運営をやっていないためにノウハウがありません。このため、海外でのプレーヤーがいないという問題が顕在化し、この問題を解決しようと、二十二年六月の新成長戦略で、強い経済を実現するため、水道局等の公益事業体の海外展開策を策定、推進するということが一つの目標に掲げられました。  地方自治体の水道事業は、元々地域住民のために存在する地方公共団体が行う事業であるため、海外での業務が法的に可能かどうか不明確でありました。このことを受け、総務省を中心として政府の検討チームが附帯事業として可能との見解を出しました。ただし、留意点があり、それをクリアする必要があります。現地水道事業に乗り出す形態として、検討チームでは二つの例を挙げております。一つは、水道局の第三セクターが民間企業とコンソーシアムをつくって海外水道業務をやる形態、二つは、水道局が直接民間企業とコンソーシアムをつくって海外業務をやる形態であります。幾つかの水道事業体では、この政府の検討チーム報告が出る前から取組を始めていましたが、報告が出ましてから更に取り組む事業体が増えております。  先陣を切っている東京、大阪、横浜、北九州の水道事業体の取組を紹介したいと思います。  東京都の事例では、第三セクターである東京水道サービス株式会社を使う海外ビジネスの形態であります。下の図ですが、水道局は相手国中央政府や地方政府への働きかけや技術的なアドバイスを行い、第三セクターと民間企業が実際の事業を行うものです。平成二十二年一月に発表した経営計画の中でこれを位置付けて、その後、ミッション団を派遣するなど取組を進めております。ベトナムなど幾つかビジネスの芽が出てきております。  大阪市水道局の取組の事例ですが、右の図のように、水道局だけでなく、下水道、環境部門、それに経済界とともに大阪市水・環境ソリューション機構を設置し、取り組んでおります。また、大阪市水道局では、ISO22000という資格取得と姉妹水道の関係をきっかけに、ベトナムのホーチミン水道の水道整備に協力しながらビジネスに向け取組を進めております。  横浜市も、図のように、横浜ウォーターを設置し、海外業務を目指しております。JICA業務などで協力しているベトナム・フエ市やフィリピン・セブ市などの協力事業をてこに、ビジネスに向け取組を進めております。  北九州市の取組は、以前からJICA事業で友好都市としてつながりのあるカンボジア・プノンペン、ベトナム・ハイフォン、中国・大連などを対象に取組を進めております。カンボジアでは、既に官民連携で計画作成やコンサルタントの業務を受注しております。図に示された九か所の都市を対象にコンサルタント業務を行うものであります。  以上挙げた四つの水道事業体を含め、取組を始めている地方自治体は、現在十数か所になっております。これらの地方自治体が国際貢献ビジネスで目指すものとしては、ここにあるように三点を挙げることができます。  日本水道協会では、こうした水道事業体や産業界の活動を支援するため、一部写真に載せましたが、IWAという世界の水道関係者の集まりのネットワークに加わり、情報の収集、発信、各国水道協会との連携強化、JICA、厚生省の国際関係事業に協力、ISOの委員会活動などへ参加するなど様々な活動を行っております。  さて、南アジアでの活動ですが、本協会は、アジアでは東南アジアでの活動が多く、南アジアでの活動は少ないところですが、最近、水ビジネスを支援する厚生省の事業もあって、日本水道協会はインド水道協会との交流を深めております。交流により、互いの水道に関する情報交換を図り、また人的な交流を深め、インド側にとっては、インドの水道整備に役立つ可能性のある日本の水道技術や経営能力が見出せること、我が国にとっては、効果的な国際貢献や水ビジネスを展開するために役立つ情報、人脈が得られることを目的に実施しております。  今年、昨年、一昨年と水道協会の訪問団がインドを訪問しております。インドは広大な国です。マハラシュトラ州だけで約一億人の人口であります。どこか焦点を絞って調査する必要があると考え、インド水道協会の本部がマハラシュトラ州ムンバイにあることなどから、ここに焦点を当て、調査、視察を行っております。  この写真は、今年一月にチャッティスガール州ライプールで開催されたインド水道協会第四十四回年次総会のセミナーの模様であります。日本政府の厚生労働省の支援を得て、日本から水道事業体の東京都、横浜市、北九州市の代表者が日本の水道の経営や技術について発表を行い、また民間の企業からも発表が行われました。発表テーマは、都市の水道に関するものであります。  インド水道協会の年次総会後、インド水道協会と日本水道協会の間でメモを交換いたしました。インドでは一日のうち数時間、平均三時間か四時間しか水道を使えない状況であることから、それを改善して日本のように常時二十四時間水道が使えるようにするためのインドのプロジェクトにインド水道協会と日本水道協会が協力して活動しようと確認したものであります。マハラシュトラ州でもモデル的な事業を探すことから始めることにしております。この活動が、インドの水道整備に役立ち、また我が国のビジネスチャンスにつながればと考えております。  まとめになりますが、国際活動の目指すところを模式的に示したのがこの図であります。本協会や水道事業体の活動がアジア世界の水道の課題解決に役立つこと、それが、我が国の水道事業の活性化、産業界の活性化につながり、ひいては国内の課題解決や一層の高水準な水道サービスにつながり、一連の好循環のサイクルになればと考えております。  最後に、皆様の御支援を得て、我が国経済の成長と世界の水問題の解決の両方に結び付く成果を上げたいと思っております。それが、日本の水道の水準を上げ、国民のためになると信じております。  御清聴ありがとうございました。
  10. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  本日の質疑は、従来どおり、あらかじめ質疑者を定めずに行います。  まず、各会派一名ずつ指名させていただき、その後は会派にかかわらず発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。  質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言いただきますようお願い申し上げます。  なお、質疑の時間が限られておりますので、委員の一回の発言は三分程度となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願いしたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いします。  水落さん。
  11. 水落敏栄

    ○水落敏栄君 今日は先生方、ありがとうございました。貴重な御意見いただきまして、参考になりました。  実は素朴な疑問がありまして、実はつい二週間ちょっと前に、ODAの調査で、今はいなくなりましたが、友近議員、団長に、アフリカのモザンビークという国を訪ねてまいりました。そして、ザンビアと南アフリカと三国行ったんですが、実はそのザンビアの首都ルサカ市というのがありまして、百八十万人ぐらいの都市なんですね。そこの市街の未計画居住地、言い換えればスラム街ですけれども、そこの住環境改善策として、ODAがJICAを窓口として共同水栓五十五か所造ったんです。  ちなみに、その居住区七万二千人が住んでいるんですけれども、居住区に近いところに高い給水塔、これは三百立方メートル入る給水塔を造りまして、三キロ離れたところから大きな井戸を掘って、地下水水源としております。そこで、住民の皆さん、居住区の中にそれまでは浅い井戸を掘って、濁った水が出てくるのを澄まして上澄みだけを取って飲んでいたということで、病気が発症したり乳幼児が死亡する事例が多かったわけですね。ところが、きれいな水が供給されてからは病気も出なくなったし、人口も増えてきたと。水の大切さ、有り難さを痛感していると現地の方々は言っているんですけれども、その国の人々、住民が本当に必要なものにこたえることができたなと私は思いました。  ところが、その水ですけれども、実はリッターが日本円にして二円なんですね。家族が一日必要とする水が約十二リッターで、二十四円ぐらい必要だというんですね。この二十四円払えない家庭もあるわけなんです。  そこでお伺いするんですが、これは素朴な疑問なんですけれども一つは、民間企業がODAなり他の方法なり、官民が共同で相手国に対して交渉しなければ、このビジネスの交渉をしなければ、むしろ官が先に立って交渉しなければこの水ビジネスというのは無理なんじゃないだろうかなと、これ疑問に思うんですね。これが第一点です。  今も事例がございました東京都とか横浜市とか大阪市とか、こういう大都市ではその自治体の経済とかあるいは財政状況などを考慮して水道料金を決めておられるんだろうと思います。したがって、大きな赤字にならぬようになっているんだと私は推測しているんですけれども。ところが、申し上げたルサカ市のスラム街のように、十二リッター二十四円のお金を払えない家庭があるということは、その自治体の水の供給とか、水道事業としては成り立たないんじゃないだろうか。とにかく何かいい方法がないものだろうかなと、これ二つ目の疑問なんですね。  それからもう一つは、むしろ水道とか給水事業は公共性が高いものですから、その国の自治体とかの社会インフラの一環であって、発展途上国側としても必要なことは十分承知しているけれども、財政上からもこうした給水、水道などのビジネスを受け入れるのは難しいんじゃないだろうか、その国自体がですね。これが疑問の三点目なんですが。  本当に素朴な質問ですけれども、これについて中原先生尾崎先生お二人からちょっと御意見をお聞きしたいなと、このように思います。
  12. 藤原正司

    会長藤原正司君) それでは、先に尾崎先生でよろしいですか。
  13. 水落敏栄

    ○水落敏栄君 中原先生
  14. 藤原正司

    会長藤原正司君) 中原先生、よろしくお願いします。
  15. 中原正孝

    参考人中原正孝君) ありがとうございました。  南アジアにつきましても、自治体とそれから民間が組み合わさって現地の水ビジネスに入っていこうという動きがございます。ただ、先生がおっしゃられたとおり、まず、日本側でどのような優位性のある技術、しかもローコストなものを持っていくことができるか、それからもう一つは現地として受け入れられるものであるか。そこは、一つは水道料金の設定の仕方でございます。  具体的に申し上げますと、日本の民間企業が南アジアの水ビジネスに入っていくとした場合の優位性のある技術といたしましては、例えば、海水を淡水化する逆浸透膜、それからローコストでメンテナンスの要らない浄化装置、それから最近の例では水道管の改良版としましてダクタイル鋳鉄管というものがございます。それから、日本の自治体が大変技術を持っております無収水の削減技術、漏水をどうやって下げるか、あるいは水道料金の徴収をどういうふうに上げるかというものでございます。  今申し上げた、日本の企業では多くの上水道に関しまして得意な技術を持っているところでございますが、最初に申し上げました逆浸透膜というものは大変やはりコストが掛かるということで、例えばバングラの方で計算いたしましたところ、やはり現在の水道料金の十倍以上を住民が負担しなければいけないという結果がございました。  それからまた、メンテナンスフリーのろ過装置というものにつきましても、その初期投資を賄うには百年掛かるというような数字も出ておりますので、日本の企業が持っている技術が相手側の国民、住民の所得と、それから相手側の財政にどのように受け入れられるかということをよく比較して考える必要があるんだろうと思います。  最後の二つ目に申し上げました水道管、日本技術で大変薄く伸ばせてコストが安いダクタイル鋳鉄管、それから自治体の持っております無収水を下げる、要するにコストを掛けて生産した水に見合う分、水道事業者がコストをどんどん徴収できるという仕組みというものにつきましては日本の自治体も大変高い技術を持っておりますので、こういったところで取り組んでいく必要があるかと思います。  一つは、ローコストな初期投資、それから日本技術は大変高いスペックですので、場合によっては、相手に必要な仕様を下げたり、あるいは現地の企業と一緒になって生産していく施設というものが必要ではないかというふうに考えます。  以上でございます。
  16. 尾崎勝

    参考人尾崎勝君) 先生のおっしゃること、かなり理解できます。  まず、国際貢献、水ビジネス、この二つがあって、相手国によってはなかなかビジネスまでつながらない、そういうのもあるかなというふうに思います。国によって多分経済的な状況等違うので、そういう面があると思います。  これは今のポストではなくて前の東京都水道局長のときの水ビジネスを始めたときのある面の考え方を言いますと、国際貢献をまずベースにして、その先に、水が少しずつ確保すれば地域経済も成長してくると、そうすれば水道料金の負担もできるだろうというので、国際貢献をベースに、それに水ビジネスを付け加えていこうという感じで始まった。ただ、国によっては最初から民間とタイアップして水ビジネスのできる地域かなりあります。その辺で、それをうまく使い合わせながらやっていければというふうに考えております。  日本水道協会としても、両方を見ながら、JICAさんとも協力しながら考えていきたいなというふうに思っています。
  17. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  次に質問を受けます。  ツルネンさん。
  18. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 民主党のツルネンです。  清水参考人一つだけ質問させていただきます。  さっきの話の中ではちょっとしか触れなかったんですけれども中国プレゼンスの急速な拡大という言葉がありましたね。そこには中国の商品の浸透とかありましたけれども、これをもうちょっと詳しく知りたいのは、どういう形で拡大しているか。あるいは、拡大の場合は、中央アジアの国々の反応というか政府の反応がそれを歓迎しているか、あるいは一般の市民たちの反応が警戒しているかどうかということ。もうちょっと詳しくこのことについて説明してくだされば有り難いです。  以上です。
  19. 清水學

    参考人清水學君) ありがとうございます。  中国プレゼンスの拡大ということでございますけれども、一番一般の人々に印象深いのは、安い商品が大量に流入してきているという問題であります。それで、そこに入るルートなんですけれども中央アジアの中でWTOに加盟しているのは、今、キルギス共和国だけなんですね。それで、一旦中国製品が、特にキルギス一つのセンターになるんですが、新疆省からトラック輸送でもって大量に商品が入ってきます。それで、キルギスの首都でありますビシュケクと、あとウズベキスタンの近いところにあるカラスウというところがあるんですが、その二か所で非常に膨大な巨大な中国製品を特に販売するバザールができています。  それで、ビシュケクには伝統的なオシュバザールという物すごい大きなバザールがあったんですが、それとほぼ匹敵する規模のバザールでありまして、キルギス人でそこで働いている人がもう数千人になってくるという、つまり中国製品が入ってくることでそれを販売するための雇用が生まれて、もうそれが後に戻らないという形になっています。  それから、あとキルギスから、今度は恐らくスマグリングの形が多いと思うんですが、ウズベキスタンとかほかのところに今度は入っていくんですね。ですから、商品の問題が非常に大きいわけです。  その場合に一番問題なのは、伝統的ないわゆる地元の中小企業製品そのものが競争ができなくて潰れてしまうものがかなりあるということがやはり一つ大きな問題だと思います。  それで、中国製品がどのくらい売れているかということなんですが、こういうところで余り冗談を言うと不謹慎なんですが、地方の町であるスーパーみたいなところに行きまして、売り子さんに、実は日本から来たんですが、やはりせっかくキルギスに来たからキルギス製品を買いたいと、お土産に。そうすると、店の方がちょっと迷って、え、キルギスの製品というとちょっとと言って、ほとんど中国製品ですと。それで、もしどうしても純粋なキルギス製品をお求めでしたら私がそうですというふうに答えられたという、冗談です、本当の話ですけれども、そのくらいです。  それから、あと、いろいろな商売で入ってくる方がやっぱり増えていまして、それで例えば、これもキルギスなんかですと、例えば中国の、特にイスラム教徒の方なんですけれども、結婚広告を新聞に出して、キルギスの方と結婚したいという。そうすると、結婚すると、実は不動産を取得できるわけですね、奥さんを通じて。そういうような形で、かなり商売上で入ってくる。それと、キルギスの方も、娘を一人差し出せば一家が一緒に救われるというような形でそれに協力するというような、そんな実話も出てきております。  あと、国のレベルですけれども、これはやっぱりかなり警戒をしています。援助を受けながら警戒しています。それで、中央アジア中国の国境問題は一応基本的には全部解決されたということになっているんですが、ただ、私も実は例えばタジキスタン中国の間の画定された国境の地図を見たことがないんですね。それで、この辺りも実は国会でもかなり反感が出ていたりなっています。  それから、もう一つの事例ですが、先日、カザフスタンの西部の油田地域でカザフの労働者が騒いでちょっとトラブルがありました。そのトラブルの要因の一つですけれども、全部じゃないんですが、それは、中国からも働きに来ている人たちがいるんですが、最近状況が変わりまして、中国人、中国から来ている労働者の方がカザフの労働者よりも待遇がいいと、つまり中国がお金出しているんですけれども、そして自分たちの方が悪いということで、それが例えば不満のもとになったというふうなこともあります。  それで、政府側はかなり警戒しながら、しかし民間レベルではもう怒濤のように商品が入っているというのが実態であると思います。
  20. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 ありがとうございました。
  21. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  次、加藤先生
  22. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。四人の参考人、大変ありがとうございます。  今、国会では、中川秀直衆議院議員が代表をやっております水循環基本法の関係とか、あるいは水の安全保障の関係で外国人土地法の関係、さらには雨水利用推進法、そういった面についても国会で今後議論が深まっていくと私は思っていますけれども、今日いろいろな話をお聞きして、まず清水學参考人には、今、ある大国がメコン川上流で十五個のダムを造るということで、倫理的な問題もあるというふうに指摘する方もいらっしゃるんですけれども参考人は、私権と公有権の関係を含めて、国際水路の非航行用使用に関する国連協定、これを紹介していただいているわけですけれども、これ、私権とか公有権の中でどういうふうにそれをしのぎを削る中で整理されるかというのが非常に重要な問題だと思っておりますが、その辺、もう少し御説明いただければと思っています。  二点目は、適正な水管理をしなければいけないというふうになっているわけですけれども、これ、ほとんどもうアジェンダ21から出てきていますよね。だから、アジェンダ21に基づく持続可能な水管理動き、それは日本が積極的に対応しなければならないわけでありますけれども、その一九九二年のアジェンダが出た、あれから二十年たつと。だから、リオ・プラス20ということで、日本はそういう国際的な動きに対してどういうことを対応していかなければいけないかという点についてはどうお考えか。  それから、窪田参考人には、小欲知足の経済というか、先生は非常に懸念されていて、人間の行動の結果、今のような極めて厳しい状況になっているということで、仮に日本の生活水準と同じような、水使用も含めてですね、なっていくと地球が二・四個必要だとか、そういう話もありますが、人類が求めているのは大きな発想の転換だと、そう指摘されておりますけれども、その辺、発想の転換というのはどういうふうにお考えかということです。  それから、中原参考人については、今民間資金が非常にだぶついていて、食料とかエネルギーに投機的に向かっているわけですよね。これは非常にゆゆしき事態だと思っていますが、ただ、発展途上国のインフラ資金ニーズは非常に膨大である、一方で資金不足であると、このように指摘されております。PPPを導入するという話が展開されておりますけれども、なかなかここの資金不足の関係、PPPと簡単に言えない話だと思うんですよ。だから、ファンドをどうつくるかということを含めて、この辺どういうふうに考えていらっしゃるかというのが第一点目です。  二点目は……
  23. 藤原正司

    会長藤原正司君) そのぐらいにしてもらったらどうかなと。四人に聞かれるつもりでしょうから。
  24. 加藤修一

    ○加藤修一君 じゃ最後に、尾崎さんの方に。  次、尾崎さんの方は、RO技術関係ありますけれども、いわゆる国際規格化が非常に重要な段階に入ってきているということで、これ、日本はやはりそこはどういう基準をつくり上げるか、規格をつくり上げるか、国際的なルールを日本が率先してやっていかなければいけない、そういう戦略的な取組についてはどのように見解をお持ちかということで教えていただければと思っています。  以上です。
  25. 藤原正司

    会長藤原正司君) どうもありがとうございました。  清水窪田中原尾崎参考人、それぞれ順番にお願いします。よろしくお願いします。
  26. 清水學

    参考人清水學君) 御質問どうもありがとうございます。  私の能力から見てお答えできるのはちょっと限定されておりますので、その点で御容赦願いたいんですが。  メコン川の事例を挙げられまして、それで、国際河川におけるいわゆるトラブルというか、それをどういうような形で解決すべきかということについて、私は中央アジアの事例でちょっと簡単にお話しさせていただきたいと思いますけれども中央アジアでも、一応各国の水資源関係者が時々会ったり、あるいはウズベキスタンタジキスタンの間で閣僚同士の意見交換とかあるいは合意とかというところまで行くのがあるんですが、ただ、現実問題としてなかなか効果を発揮しておりません。  それで、まず、国際河川というものに対する考え方についての中央アジアの国々の間での共通の理解がまだできていない段階ではないかと思います。  例えば、いわゆる資源賦存国にその資源の処理をする権利があるという論理を、例えば一時期タジキスタンがそれを出しまして、それで、下流国は、上流国から流れてくる水に対して水の料金を支払うべきであるということで問題を提起したことがあります。しかし、これは、国際関係から見たらそんなことはほとんどあり得ないということで、下流国が物すごく反発しているわけですが、そのレベルから実は始まっているというのが実情でございます。  それで、中央アジア関係で水の問題について例えばシンポジウムか何かを主催やる場合、東京で来てやる場合とかあるんですが、その場合も、水問題そのものになりますと、中央アジア各国の代表が来て同じ場所で議論をするというのは、私の知る限り、事実上、国際会議というのはまだまだ可能ではありません。それで、例えば日本ウズベキスタンの代表の方が来たときに、条件としてほかの中央アジアの国の大使館の方は呼ばないでほしいというのが条件であったりということで、まだ対話の場所をこれからつくっていくという段階なんですね。  それで、外から何ができるかということはちょっと私も分かりませんけれども、できるだけ客観的なデータを少しずつ積み重ねていくという、そういう面で、例えば、日本がどのくらい入れるか分かりませんけれども、そういうところで、そういう非常に地道なところで協力するというか、そういう段階ではないかなというふうに考えております。  ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんけれども、取りあえず現状についてコメントをさせていただきます。
  27. 窪田順平

    参考人窪田順平君) 資料の方でお送りさせていただきました「シルクロードの人と水」の最後の説で、ちょっと、大きな発想の転換が必要であろうと、いささか大言壮語なことを書きました。これは実際に何をするという具体的な方策をきちんと持っておるわけではございませんけれども、考え方として、そこの前にも書いてございますけれども、こちらの資料、先にお渡ししている資料のところですが、発表資料の中ではそこまでは申しておりませんが、少し説明させていただきたいと思います。  これは常に言われることですけれども、先進国、特に日本のような国の生活レベルでのエネルギーあるいは食料の消費を、地球上全ての国がそれを賄うということはまずできないというのはもう皆様も御存じだと思います。私たちも分かっておるわけです。そういう意味では、今までは人間はシステムを、システムというか、人間の活動を広げる、発展させることがいいのだという原則にというか、みんな考えに立っておるわけですけれども、それをやれば地球は潰れるということをそういう意味では皆さんも分かっている、私たちは実は分かっている、そういうところに来ているのだということを考えるべきではないかという、あくまでもある意味では精神的な部分を申し述べさせていただきました。  具体的に、ただしそれは、実際に、じゃ、私たちが現在の生活をつつましくすればいい、あの原発のときにもそういう議論がございましたけれども、だから、そういうところまでは必ずしも言っておりませんけれども、そこまで言うつもりはございませんが、いずれにしろそこは考えなくてはならない。  現実に、これから途上国が発展してくる段階で、日本のようなレベルに達しない段階でそういう資源なりエネルギーなりあるいは経済上の制約あるいは人口構成の中で、日本かなり十分に経済的に発展した中で少子高齢化に立ち向かっていますけれども、そこまで行かない段階で少子高齢化によって経済が発展しなくなるという国が多分出るはずです。世界的に見れば、そういうところも含めてどういうふうにするのかということが今後課題であろうというふうな、ちょっといささか広く申し上げましたが、そういう意味でここは書いてございます。  以上でございます。
  28. 中原正孝

    参考人中原正孝君) インドを例で説明させていただきたいと思います。  先ほどスライドで御説明いたしましたとおり、インドは今後世界最大の人口を抱える国になるとともに、都市化が急速に進んでおります。インド内におきましても、上水道の整備への膨大なニーズがあるということで、おおよそ今後毎年五千億円程度の資金が必要だというふうに言われております。一方で、インド政府が公的な資金をこれだけ準備するというものはなかなか容易ではございませんので、ここに民間資金を投入したいというところで、インド国自体としては水分野でのPPP事業を進めていきたいという大きな一つの政策は確かにございます。  一方で、インドも含めて南アジアの多くの国の水道事業というものは、官が建設から、それから上水道管、配水管の維持管理や料金徴収までやっておりますので、民間のベースの契約で事業を行われるということに関しまして、インドにおいても、実際の水道公社に勤めている人たちからは、職を奪われるということで反対の動きがございます。それから、州政府と地方自治体との様々な水道行政に係る役割分担や規制のことなどもあって、インドにおいて上水道でPPPを進める必要性は非常に高いと言いつつ、多くのインフラの事業の中で、水については最もPPPが遅れている分野でございます。  一方で、加藤先生の方で、ファンドをどのようにつくるか、使うかということにつきまして、これはちょっと水の分野でではございませんけれども、昨年末に野田総理がインドを訪問されて、首脳会談の中で、ムンバイ―デリー間の産業大動脈に対して日本とインドが共同してそこの事業をつくっていくという中に、九十億ドルのファンドをつくって、そのうち半分程度日本がODAや民間の資金を用いてこの産業大動脈に関連する様々な事業を運営していこうという動きがございます。今後、この中で水について計画が策定されるということもあると思いますし、JICAの方も、このデリー―ムンバイの産業動脈の中でのインフラの事業に対しては積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  29. 尾崎勝

    参考人尾崎勝君) 規格化、標準化のお話についてですが、日本の上下水道は国際的に見ても高いレベルというか、最高水準にあります。規格化、標準化については、外国の方が先行しているところもありますが、その高い技術水準で個人的には何とか引っ張っていけるかなというふうに思ってはおります。  以上です。
  30. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  次に、お受けします。  松田さん。
  31. 松田公太

    ○松田公太君 みんなの党の松田公太です。  各参考人の皆様、本日はどうもありがとうございます。  私、尾崎参考人に質問が二つあります。  まず一つが、こちらの資料を拝見しておりまして、第三セクターを通ずるのか、また直接コンソーシアムをつくるのかという違いはあるかもしれませんけれども、各自治体が水事業を必要としているアジア各国への参入、これについてちょっとお聞きしたいんですけれども、これは全くフリーハンドで各々が考えて参入されていこうとされているのか、若しくは、例えば日本水道協会さんの中か外かは別として、ある程度、自分たちが例えばベトナムへ行くから、そこは余り、例えば競合になってしまうと大変なことになるから狙わずにほかの国に行ってねとか、そういう話合いを持って進められているのか。  というのは、資料を見ていますと、各自治体が、横浜市も、東京も、北九州も、大阪も、例えばベトナムに皆さん行かれているんですね。多分、何回も視察に行かれて何度も調査をされてということを繰り返されているんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そこら辺、どういうオーガニゼーション、形を取られてやっていらっしゃるのかということを御存じでしたら是非教えていただきたいのと、もう一つは、これも資料の中で先ほど御説明いただきましたけれども、フランスやイギリスは民営化を進めた。それによって水ビジネスへの参入が非常に積極的にスピーディーに行うことができたとありますけれども、民間へ移行することの成功例と失敗例と多々今世界各国出てきていると思うんですね。  この質問は若干今日の趣旨と違うかもしれませんけれども、例えばフィリピンとかマレーシアとかアメリカの一部の国、たしかアトランタだったと思いますけれども、民営化を一回して失敗して、それを公営に戻されているというような例もありますけれども、民間へ、これ先進国にちょっと限った質問なんですけれども、民間へ、民営化へ進める中でのキー・フォー・サクセスみたいな、キー・フォー・サクセスですね、こうやったら成功するんじゃないかというようなお考えがあったら是非教えていただければなと。例えば、アトランタではこういう部分が失敗だったから民営化が失敗して公営に戻されてしまったんじゃないかというような知見がおありでしたら是非教えていただければと。また、それに伴って、民営化をすることのメリット、デメリット、こういう部分があるんじゃないかと、個人的な考えで結構ですから、おありでしたら教えていただければと思います。
  32. 尾崎勝

    参考人尾崎勝君) まず第一点の質問なんですが、各国に支援というか、海外水ビジネス等を展開するときに、何かのきっかけがないといけないということで、先ほどもお話ししましたけれども、姉妹都市とか、向こうとの関係があるところをベースにやる、あるいはJICA等の付き合いの中で向こうに行っているとか、そういう流れの中でミッションの派遣に際して結構お付き合いをベースにやっています。そういう状況の中、各国、各都市がそれぞれの形としてのノウハウを持っています。  今の御質問のようなことが考えられましたので、日本水道協会あるいは各自治体等プラットホームというのをつくっています。各都市が、自治体がどこに対してどういうふうにやっているか情報交換して、なるべくラップしないように、あるところがやっているのにまたそこに行くのはやっぱり好ましくないでしょうねというようなことで情報交換してやっています。それが一点と。  もう一つ、大都市は海外展開を割にやるだけのある面の実力といいますか、そういうのが兼ね備えているんですが、中小都市でそういう技術とかそういう意欲があるところが単独ではできないということもありますので、そういう人はそこのプラットホームの中に入ってもらって、それでその中で共同してやるとか、そういう感じで連絡会みたいなものは設けております。  二点目の御質問は、非常に私個人的な考えで答えさせてもらいますと、水道はやはり命の水ということもありますので、やはり最終責任は公が取るということだと私自身は思っています。そういう状況の中で見ると、やはり民の方も一生懸命やってもらうんですが、やはりそこに、もうけ主義だけではない、人間の命を守っているというのがありますので、その部分をしっかり公が押さえた上で民間とのパートナーシップとかを進めていきたいなというふうに思います。民の力というのは、まさに先ほどROの膜じゃないんですが、技術的には物すごいものがあります。そういうものをうまく活用して、さらに民にも浄水場の運転管理とかそういうのを任してもいいと思っています。  そういう状況の中でうまく民と連携をして強化しなきゃ、例えば中小の小さい都市はもう単独ではなかなか、技術者もいなくなって、本当にこれを今後どうするのかなというようなところもありますので、そういうところも含めて民の力をお借りしないとできないと思います。ただ、最終責任はやっぱり公が担うべきだというふうに思っています。  以上です。
  33. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  次に、紙さん。
  34. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  参考人の皆さん、今日はありがとうございます。  私、最初に清水参考人にお聞きしたいと思うんですけれども中央アジアの水問題ということで最初にいただいたこの資料の中に書いてありますけれども、その七ページに、「水を巡る今日の問題で注目すべきは以下の点である。」ということで、「一方では地球環境問題および生存権の観点から水の国際公共財としての性格が強調されているが、他方では水のような「コモンズ(共有財産)」を商品化しようとする動きが見られる。」、それについての議論があるということが述べられています。一九九〇年代からそういうことというのが動きがあるんだと思うんですけれども、国連総会などでもこの水の権利にかかわっての決議が上げられたりということが近年あると思うんですけれども、その辺の現状がどうなっているのかということで、国連の動きで結構ですけれども、その辺りのことを御紹介いただきたいということが一つです。  それから、続いて尾崎参考人にお聞きしたいんですけれども、国連の人間開発報告書に水メジャーが進出をして水道料金が高騰してしまったと、それでもって貧困層の反発を受けて撤退したという報告があるわけですけれども、ボリビアの水戦争ということで、御存じだと思うんですけれども。水ビジネスを始めるに当たってこういう海外の実情も調べられたと思うんですけれども、うまくいかない例などの原因について分析されている中身をお聞きしたいということと、もう一つ、地方自治体の役割ということでいえば、やはり公共の福祉についての増進を図るということだと思うんですけれども国際貢献ということでいうんだけれども、率直に言って、営利活動を伴うこういうビジネス、水ビジネスということでやることとその福祉の活動ということとをどのように整理をされているのかということについてお聞きしたいと思います。
  35. 藤原正司

    会長藤原正司君) まず、清水さんからお願いします。
  36. 清水學

    参考人清水學君) 御質問どうもありがとうございます。  ちょっと、私は元々水問題そのものの専門でないので、きちんとその国連のあれをフォローしていないので余り責任あるちょっとお答えが実はできないんです、大変申し訳ないんですが。  ただ、先ほどの御質問に対してもお答えをしたんですけれども、水の問題というのが単に、いわゆる農業用水、それから工業用水、さらに生活用水という三つ、あえて分ければ三つのカテゴリーになるわけですけれども中央アジアをベースに見た場合、いずれも大きな問題を抱えていることは事実なんです。  それで、生活用水の問題についてはちょっとお話をしなかったんですけれども、現在、ソ連時代につくり上げたいわゆる給水システムが、結局、経済的な予算がないとかその他の問題を含めて、メンテナンスがほとんど行われていないところがかなりあります。それでその結果、水道水の質の問題で問題が出ているということと、それからあと日本援助の問題と関係するのかどうかちょっと分からないんですが、かんがい用水の問題についても物すごくメンテナンスが非常に悪いんですね。キルギスなんかも特にそうなんですけれども。それで、何とかしてそれを補修しないと水の量の確保もできないし、それから質的な面でも問題があるということになります。  それで、単に水の問題だけではなくて、やっぱり基本として考えておかなきゃいけないのは、ソ連時代の一定のシステムがあったのが、農業の民営化その他の中で新しいシステムに移行するんですが、その移行が必ずしもうまくいっていないんですね。  その中で、例えばこういう事例があります。各州で国立大学を独立してからつくっているんですが、キルギスで、例えば農学部なんかですね、ナリン州なんか行きますと驚くべきことを聞くんですね。例えば、獣医学科をつくったけれども先生もいるんですが、学生で入学希望者が一人もいないと。それはなぜかというと、仮に獣医になっても、農民がかなり疲弊化しているために恐らくお金を払ってもらえないだろうと。だから、獣医になっても生活できないというのが前から見えているので、それで獣医学科入らないという。  ところが、ソ連時代の場合は、恐らく水管理関係していると思うんですが、一定の、最小限の法的な規制はやっていたんですね。例えば、家畜何頭当たりは必ず獣医一人はいなくちゃいけないと。ソ連自身が全部崩れちゃっているので、それを全体として含めた、水も含めた農業の在り方というか、そういうものを、何というか、検討することが、今でも迫られているのが実情ではないかなと思います。  御質問にちょっと直接お答えできなくて申し訳ないのですが、取りあえずそれでお答えさせていただきます。
  37. 尾崎勝

    参考人尾崎勝君) 御指摘のとおり、水メジャーのやり方については一部批判をされているところもあります。  我々がといいますか、国際貢献ビジネスといいますか、水ビジネスの目指すところは世界の水問題を解決しようということで、その問題解決の支援をするというところに重点があります。支援をしたときに対価をもらうということもあってもいいというふうに思っています。ということで、物すごいもうけて、もうけ過ぎてやってしまうということは道義上いろいろあると思うんですが、やはり掛かった分をもらうと、少しある面でお払いしてもらうというのは、やはり我々としても、それだけのある面で貢献しているその対価をもらうことはやぶさかでないというふうに感じています。
  38. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  次にお受けします。舟山さん。
  39. 舟山康江

    ○舟山康江君 民主党の舟山でございます。今日はどうもありがとうございました。  どなたでも結構なんですけれども、いわゆる国際河川における水利権の在り方のようなものについてお分かりの方、教えていただきたいと思います。  この問題につきましては、国内でさえ都道府県によって上流の県と下流の県といろいろありまして、またそれこそ農業用水、工業用水いろいろと、本当にこの日本においてでさえかなり様々な細かい規則があり、いろんな問題が生じているわけであって、これが国が違った場合に非常に難しい問題だろうなというのはもう容易に想像が付くんですけれども中央アジアにおいては、特に非常にソ連崩壊後、国がばらばらになって、そこでいろんな難しい問題が顕在化しているというふうに思うんです。そういう中で、国際河川において権利が明確に決められているのかそうでないのか、そして、現在、どういうものによって今そのそれぞれの国が水を使っているのか。清水参考人の資料によれば、上流で、上流の国がダムを造って下流に流れなくなる、それが今非常に下流にとっては問題になっているというお話もありましたけれども、その辺の調整機能について組織があるのか、教えていただきたいと思います。  そしてもう一点、中央アジア、特にアラル海の枯渇の問題というのは非常に深刻だと思っておりますし、更に言えば、そのアラル海から引いたかんがい用水を利用した農業地帯が今非常に壊滅的な状況にあるということもよくテレビなんかでもやっておりますので、私も非常にその問題危惧をしているんですけれども、これは何か解決の方法があるのか、恐らく窪田参考人が今日も少し触れられておりましたけれども、その辺について御示唆をいただければと思います。  以上です。
  40. 藤原正司

    会長藤原正司君) じゃ、会長の一方的な指名でいきます。  まず最初の問いに対しては清水参考人、次に窪田参考人、お願いします。
  41. 清水學

    参考人清水學君) 御質問どうもありがとうございます。  私の報告あるいはレジュメでも一応書かせていただいているんですが、制度的には、例えば国際かんがい排水委員会というのも例えばありまして、インターナショナル・コミッティー・オン・イリゲーション・アンド・ドレナージ、ICIDというのがありまして、そして、ウズベキスタン国内委員会というのももちろんそれなりにそろってあります。各国でもあるんですが、その間で一応調整をやろうということにはなってはいるんですけれども、実際問題としては事実上政治問題になってしまうために残念ながら機能していないというふうに私は理解しています。  ですから、先ほど私の方から申し上げたように、結局いわゆるダムの建設についても下流国が合意しているわけじゃないんですね。合意しているわけじゃないのにある程度端緒的に手を付けるということになると、今度は下流国としては正式のルートでもって抗議することもあるんですけれども、しかしそれを別のやり方でもって、例えば中央アジアというのは全部いわゆる内陸国ですので、輸送、トランスポート、国内の地域のトランスポート、物すごく大事なんですね。そのトランスポーテーションを逆に言うと一時的にストップするような形で圧力を掛けるとか、そういうことになってしまうわけです。  ですから、いかにして話合いの場をうまく設定していくかということがまだ完全にできていないということが問題だというふうに思います。ですから、それを、いわゆるダムを仮に造った場合にどういう影響が現れるのか、水量、水の流れる流水の量とか、あるいは農業に与える影響とか、あるいはその環境への影響とか、こういうものをできるだけ第三者的な機関で両方とも納得できるような形の調査とかそういうものをやる試みですね、国連がどのぐらいできるかちょっとあれなんですが、そういうようなことをやっぱり外部からは進めていく以外には当面はちょっとないのではないかなというふうに考えています。
  42. 窪田順平

    参考人窪田順平君) アラル海の問題をちょっとお答えする前に、幾つか今までのことも含めて少し発言させていただいてもよろしいでしょうか。
  43. 藤原正司

    会長藤原正司君) 結構です。
  44. 窪田順平

    参考人窪田順平君) はい。  それでは、まず水に関する上下流の権利関係について申し上げます。  これは、水に関しては国際的な条約はきちんとございません。今その清水さんのところに出ている条約、今準備中ですが、きちんと締結され発効されているわけではございません。原則的に水については上流側が圧倒的に強いというのが国際的な常識です。それを何とか通常は二国間でネゴシエーションをして解決して、現実的には解決されるというのは一つ大きな部分。その意味では、そういうところがきちんとした法的な根拠がなかなかないという状態があります。  それで、それともかかわるんですが、例えばアラル海のように環境問題が起きたときにどういうふうになるのか、国際法的にそういうものが解決できるかということなんですが、国際法に関してはそういう意味では、皆さんも御存じのとおり、きちんとした司法機能というのはありませんよね。  で、国際司法裁判所というのがございます、ハーグに。環境問題に関して言うと、実はドナウ川をめぐって、チェコとハンガリーだと思います、上下流の関係にあるんですが、上流側で、どちらだったかな、チェコ、チェコの方でダムを造って利用することで、下流側のハンガリーだと思いますけれども、逆かもしれませんけれども、済みません、湿地帯の水がかれるとか、そういう問題が起きるというので、ダムを一方的にチェコが造り始めたことに関して、それが国際司法裁判所にかけられた。環境問題に関する、何というんでしょう、司法の場にかかった初めてのケースで、今のところ最後のケースなんです。  それは、なぜそうなるかというと、あの裁判所自体が、相手国がうんと言わない限りは要するに司法の場に乗っからないわけですね。ですから、そういう意味では、水の問題もそういう意味では国際法的にきちんとしたそういう場があるわけでは今のところないので、どうしようもない部分があります。やっぱり、原則的には上流国優位の原則というのが水問題に関してはあって、それがなかなか。  ただし、本当に、じゃ二十一世紀は水の世紀だと言われるほどに、戦争を予想する方も、センセーショナルな本なんか随分ありましたけれども、あったかというと、それほどでもありません。現実的には、やはりそれぞれの国で資源をある程度使わなくてはいけないという現実問題がありますので、何らかの形で解決しております。解決しているというか、両者が不満を、十分に満足のいく形で解決されていませんが、何となく解決されているというのが現実だろうというふうに思います。  それで、アラル海の問題です。要するに、今の一番先鋭的なポイントは、清水先生も説明されたとおり、キルギスウズベクの間の対立です。簡単に言うと、キルギスタンが要するに調整に応じない。ダムコントロールに関して、やはりキルギスの思いどおりにやっているというところが下流側はやはり気になるところなんですね。  それはやはり、清水先生も御説明されましたとおり、キルギスという国の安全保障にかかわって、エネルギーを要するに外せないという部分エネルギー以外に、水力エネルギー以外にいろんな意味キルギス、外せないというのが多分大きな一番のネックだろうと思います。バーターで下流側からガスをという話も何度もありましたし、それはEUやいろんなところがかかわってそれを調整しようとしているわけですが、なかなかうまくいかないというのが事実で、そこはなかなかうまくいかないかというふうに思います。  ただし、ウズベクに関して、それから水の消費という意味ではウズベクとトルクメン、この二か国が大きく使っています。その次がカザフだと思いますけれども、カザフは、先ほどお見せしましたとおり、小アラルは自分たちで守るという立場に立っているわけです。それは、カザフがある意味では農業に対して、自国は非常に石油資源、ガス資源を持っていますので、農業をそれほどやる必要はない。多少我慢しても大丈夫なんですね。  ところが、やはりウズベキスタンは外貨の大半をそういう意味では今でも綿花でかなり部分を稼いでいますので、それを簡単にはやめるわけにはいかない。一番の人口を抱えているのもウズベキスタンです。農作物自身も、たしかむしろウズベクは輸入国のはずです。カザフは作物の輸出国なんですが、そういう状況もあって、その意味では、ウズベクが簡単に農業をやめるというのはできません。  済みません、もうこれで終わります。あとは、ウズベクアラルからガス田を見付けて、今それを開発中です。ですから、それがアラル海の湖が水が戻ってきて、それが水につかってしまうこともウズベクにとっては望まないことです。その意味では、大アラルがなかなか戻るというのは現実的には難しいだろうというふうなのが私の考えです。  以上でございます。申し訳ありません、長くなりました。
  45. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございました。  中山先生。何せ中央アジアの主みたいな人ですから。
  46. 中山恭子

    中山恭子君 そんなことありません。  御指名くださってありがとうございます。  今日は、四人の先生方、非常に貴重な、また示唆に富んだお話をいただきましてありがとうございます。  清水先生はずっと中央アジアのことを昔からかかわっていただいておりまして、ありがとうございます。  先ほど先生がおっしゃられたように、この国際河川の問題、非常に難しい問題です。しかも、日本国際河川がありませんので、私自身も随分と何かお手伝いできないかと思いましたのですが、国際河川について手伝いをするというのは、日本人がですね、非常に難しいことだというふうに思っています。  ただ、非常に親日的な人々です。日本からのプレゼンスを、もっともっと日本からいろんな影響を受けたい、是非、日本の企業、それから経済、あらゆる面で日本が指導してほしい、日本の人々に指導してほしいというのがこの中央アジア五か国ともそうだと思います。そういう国でございますので、できることで協力をしていくというのは、国際社会の中で日本人と非常によく似た感情それから体質を持っている人々がここに住んでいるということを考えれば、いろんな意味で近い関係がつくられたら日本にとっても好ましいことですし、またそういう状況が出てきたらいいなと思っていますので、先生方の御指導の下でもっともっと中央アジアに対していろいろな影響を与えていただけたらというのがまず感想でございます。済みません。  清水先生国際河川については、さっき御質問をなさっていましたが、五か国ともそうしなければという思いは持っています。二〇〇〇年だったと思いますが、五人の大統領が集まって、このシルダリヤ、アムダリヤを国際河川化するためにどうしたらいいかという議論をしましてタシケント宣言というのを出しているんですが、ただ、このときも結局、結論付けられたのは、それぞれの大統領が国に戻って国際河川化するための努力を部下たちに研究調査しなさいというようなことを行おうというのがやっとやっと合意された文書だったと思います。その後、もう十年以上たっていますのでいろんな動きが出てきているかもしれませんが、そんなに進展しているとは思えません。  清水先生に水の私有化、商品化というようなことが大きなテーマとしてあるのではないかというお考えがあったかと思うんですが、その問題と、もう一つは、ウズベキスタンのあの綿というのは、ソ連時代モノカルチャー一つとして綿の生産を強制的に仕向けられたというのがございますが、ウズベキスタンがもっと本来の農業国として発展するための指導とか技術提供というのを日本からできるのではないかと思っておりまして、私自身は、農業高等学校というのをつくるときに日本から非常に大きな支援をしておりまして、これが相当数できていて、技術者が育つようにという思いでそんなことをしておりましたが、農業についての日本からの支援、指導というものをもうちょっと強化できないものだろうかというのが一点ございます。  それから、窪田先生には本当に貴重な、歴史も含めて、アラル海の近くに四千年前のお城があちらこちらにあります。当時はここをアムダリヤが通っていたんだろうなと思います。したがって、川が変わるたびにお城の位置が違ってくるという移動の生活というものがあったのだろうということは本当によく実感できるわけですけれども、そういうものを踏まえた上で、それでは今、アラル海を戻すという方向と違う何か動きというか、指導をお願いできないんだろうかという、現実を踏まえた上で。又は、日本で、中央アジアの人々を集めてというか、又は留学生でもいいんですが、その水問題について何らかの御指導をしていただけないものだろうかと。まず知らないです。  それから、済みません、中原参考人に。JICAは水道計を付ける作業をしてくれています、各戸別の家に。戸別の家庭では、あの山から流れてくる水を使うのにどうしてお金払わなきゃいけないんだといって水道計を付けることに非常に反発をした動きがあるんですが、それでもJICAがいろいろ戸別に説明しながらそういった指導をして動いてくれておりました。  そういった意味で、水というものの価値についての指導をしていただきながら、ウズベク政府なり市に協力を更に進めていただけたらなと思っております。  済みません、長くなってごめんなさい。尾崎参考人には、あそこの水道管、上水道、下水道ともソ連時代に造られたものでして、もう更新時期というか、ウズベキスタンを訪ねた日本の人々というのは必ずと言っていいくらいおなかを壊します。それほどに飲めない水でございます、水道があっても。これを飲める水に変えるという作業をしないといけない状態になっていると。もっとも、これは日本でもやらなければいけないことかと思うんですが、そういった意味で、中央アジアを念頭に置いて水道管、水道事業というものを考えていただけたら有り難いと思うんですが、いかがでしょう。  長い時間ごめんなさい。ありがとうございました。
  47. 藤原正司

    会長藤原正司君) 中央アジアの主に思いのたけを言っていただきました。  それでは、参考人の方、お願いします。清水参考人
  48. 清水學

    参考人清水學君) どうもありがとうございます。大先輩なんですけど。  それで、中央アジアのある意味では魅力みたいなところを中山先生、今おっしゃったんで、それ、全くそのとおりだと思います。本当に簡単な補足なんですけど、中央アジアというのはいろんな歴史が積み重なっているところでありまして、例えばトルコ系の遊牧民族の歴史があり、その上にペルシャ文明が重なり、それから今度はイスラムが重なって、それから今度はロシア文化が入り込んできて、それからソ連文化となって、そういうのが重なって、それがいろんな形でつくり上げてきた文化なんですね。  ですから、中央アジアは、例えば仏教の遺跡までありますし、それから、そういう意味では非常に魅力あるところで、しかも中国とかロシアとか、そういうところは非常に自分たちの領域としていろんな形でかなり生臭い形でかかわっていると思うんですね。日本は、むしろそういうことではなくて、ちょっと生臭いところは少し離れたところからかかわっているところのメリットですね、これをやっぱり生かしていくべきだなというふうに思います。感想です。  それから、あと、いわゆるウズベキスタンがどうしても水の問題にセンシティブにならざるを得ないというのは、おっしゃったとおり、やっぱり綿花輸出が今でもウズベキスタンというのは大変重要な外貨獲得源であって、そこから必ずしも逃れられないということがあると思います。ただし、ウズベキスタンも、できるだけ農業においても多角化をしたい、それから農業以外の工業分野でも産業の多角化をしたいという、そういう方針をちゃんと持っていますし、そのための努力を積み重ねてきております。そこでは、独立以降、最初は韓国からの援助で、援助というか、韓国からの投資で自動車工場ができたんですが、今、数万台の自動車をロシア輸出している段階にまでなりました。それで、部品もかなり作れるようになってきております。  それで、先ほどの話に戻りますけれども、私も、日本援助では、農業高校のところですね。これ、幾つか私、その後のアフター調査をやりました。それで、やはりあれによって、農業というのがかなり魅力のない産業というイメージ感が非常に強かったんですが、今でも強いことは強いんですけれども、それをどうやって魅力化していくかと、魅力的なものにしていくかということにおいて、農業高校への援助というのは一つのいいきっかけだったんじゃないかなというふうに私は理解しております。  日本の、あちらのアプローチなんですけど、やはりできるだけ農業の多角化あるいは産業構造の多角化という、そういう面で、どこの国もやっぱり心の底ではモノカルチャーから脱したいというふうに思っていますので、そういう分野へ日本がきめ細かいやっぱり援助を考えるべきだということについては、中山先生のおっしゃっておるとおりだと思います。  取りあえず、以上でございます。
  49. 窪田順平

    参考人窪田順平君) 中山先生、貴重な御意見ありがとうございました。原則的には私も、何というんでしょうか、教育の部分から入ること、これは非常に大事なことだろうと思います。  それで、カザフスタンは特にアルマティで非常にここ数年行って気になるというか、一番あれなことは、アメリカ、イギリス、それぞれ大学を持っております。彼らが資本を出して大学をつくっております。それは特にビジネススクール中心でやっているんですけれども日本はそういうところには全く投資ができない。できないのか、ちょっと僕も詳しい仕組みは分かりませんが、そういうところで特に例えば農業とかそういうところでの需要は非常に大きいだろうと思います。  それで、先ほどから申し上げましているとおり、農業かなりそういう意味では環境に負担を掛けざるを得ないという地域ですので、今、清水先生が言われたとおり、何らかの代替産業をそれなりに育成しない限りはなかなかその構造からは抜け切れないという部分があります。そういう意味で、やはり教育の部分、それから農業の細やかな育成、援助も含めて日本が寄り添っていくべきところというのは非常に多いだろうと思います。特に、やはり教育の部分では是非協力していただきたいと思います。  それからちょっとだけ、あとアラル海の問題とかかわってですが、やはり各国間、特に水の争いがある場合にはお互いが持っている情報を共有化、透明化するというのが紛争の解決の一番の最初のところです。かつてはそれをロシアが、ソ連邦がやっていたわけですね。ただ今、私もちょっと途中の説明でしたつもりですけれども、そこのネットワークが失われつつある。国際機関がそれを代替しようとしていますが、むしろ日本なんかが積極的にそれを是非やっていただけると、直接的な解決にはつながらないかもしれませんが、日本の貢献というのが国際的にも評価が高いものになる可能性が私はあると思います。  以上でございます。
  50. 中原正孝

    参考人中原正孝君) 水道メーターの設置の件につきましてですが、水道メーターを設置して、より料金の徴収率を上げるという行政側の気持ちだけでは、やはり適当ではないんだろうなというふうに思います。  先ほど、南アジアの大きな問題として上水を生産するに掛けたコストがなかなか回収できないという無収水率の改善というものは、やはり全体のサービスをどのように向上させるかという観点が一番大事だと思いますので、まず住民が必要とするときにちゃんと給水が行われる、それから漏水がなくなる、それから水道メーターを設置して壊れたものを取り替えて正しい料金を回収する、その料金は貧困層にも支払える料金をどのくらいに設定するかという、水道行政全体の中で考えていかなければいけないことだろうなというふうに思います。  幾つかの国では都市の貧困地域に、やはり今まで共同水栓を使われていたところに新しくメーターを設置したケースがございますが、その結果やはり自分の家に戸別に水が配水されると共同水栓の水の量が減りますし、しかもその上水を使うことによって正しく排水もされるということで、様々な面で改善されたという報告もございます。  もう一つは、やはり都市における貧困地域に何らかの新しい水道メーターという技術を持ち込むだけではなくて、やはり社会開発という点で、そのコミュニティーと行政をつなぐメカニズムというものを、例えば現地のNGOを活用するとか、スリランカでは青年海外協力隊がそのようなコミュニティー開発、上水におけるコミュニティー開発の役割を担ったこともございますけれども、そういうような総合的なアプローチも必要ではないかなというふうに考えます。
  51. 尾崎勝

    参考人尾崎勝君) 施設が劣化して更新時期に来ているということで、飲んだら下痢しちゃうという話は承りました。ちょっと調べてみたいと思いますので、よろしくお願いします。
  52. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  次に、石川さん。
  53. 石川博崇

    ○石川博崇君 本日は大変貴重な様々なお話、大変にありがとうございました。  まず、清水参考人窪田参考人に是非お伺いしたいのは、先ほどの中山先生お話にも関連するんですが、日本はこの中央アジアに対して地域協力、特にこの中央アジア・プラス・ジャパンですか、そういう形での外交政策を進めてきているわけですけれども、これに対する評価というものを是非お伺いしたいというふうに思っておりまして、もちろん、その地域協力の中では輸送、物流面ですね、それからエネルギー政策、あるいは今日のテーマであります環境・水分野というものがあるわけですけれども日本の、国際河川を有していないという中でこの地域協力にどれぐらい貢献できているのかと、この進めてきたものがどれくらい役に、現地で協力関係が進んでいると評価されているのか。もし改善点が、こういうところはもうちょっと改善したらいいんじゃないかという御意見なんかがあれば是非お二人からお聞かせいただければというふうに思います。  それから、中原参考人にお伺いしたいのは、南アジアでこうやってJICAとして水問題、様々取り組んでおられるわけでございますが、先ほど尾崎参考人からお話ありましたとおり、南アジアでの各地方自治体の水ビジネスという部分ではなかなか余り進んでいないのかなというふうに印象を受けております。もちろん、ODAを活用する上でひも付きであってはいけない、あるいはODAは要請主義であるという神学論争的な部分との兼ね合いもあろうかと思いますけれども、やはりこれだけ水ビジネスが非常に注目されており、国内的にも関心が高まっている中で、もう少しJICAとしてODAを活用した水ビジネスの展開に結び付いていけるような環境醸成をしていってはいかがかというふうに思うんですが、この辺について御意見があれば教えていただければと思います。
  54. 藤原正司

    会長藤原正司君) 石川さん、お三方でよろしいか。
  55. 石川博崇

    ○石川博崇君 はい。
  56. 清水學

    参考人清水學君) 日本中央アジアのかかわりでいわゆる中央アジア・プラス・ジャパンというのが二〇〇四年に日本側で提起しているんですが、これはダイアログということが付いているわけですね。つまり、対話の場所という意味が非常に強いと思うんです。それで、中央アジアの国々の間で確かにいろんな場で相互に協議する場所はあるわけですけれども、しかし、いわゆる政治的なあるいは問題も含めて、やはり現在はどこの国もまだ新しく国ができて、二十年たったわけですが、しかし、やっぱりまだ国民経済をどう構築するかという、そうすると、できるだけ国で、中で一つでまとまっていこうという動きになるわけですね。そうすると、以前ですと、例えばウズベキスタンのタシケントからサマルカンドへ行くときには、以前は非常に短いんですけれどもカザフスタンを経由して行くのが一番近かったんです。ところが、今その道をやっぱり通れなくなってしまって、結局大回りをしていくんですね。そうすると一時間以上時間が掛かる。そういう意味ではかなり不便なんだけれども、国民国家経済の構築とかで、どんどんどんどん自国の国益追求という形になっちゃっているんですね。  それで、私は日本の役割についてはこういうふうに考えているんですけれども、やはり中央アジアの国々は、かなりいろんな矛盾があるんですけれども、五か国が置かれている条件というのはやっぱり似ていると思うんですね。それで、ロシアあるいは中国、あるいはほかの国との、ちょっと囲まれていますし、内陸国であるし、それから、今までの歴史的な条件からいうと、かなり政治体制、経済体制も同じようなものを経験している。  そうすると、直面している問題というのはやっぱり一緒になって解決しなくちゃいけない課題かなりあると思うんですね。さっきおっしゃったように、例えば輸送にしても、どうしても陸路を通って隣の国を通っていかないと駄目なんですね。そういう面での協力というのはどうしても必要です。  それで、恐らく中央アジアでの地域協力というのは、本当に実体化していくというのは時間が掛かると思います。時間が掛かると思うんですけれども、しかしやっぱり中央アジアがまとまっていくことすごく大事だよということを、もちろん彼らが主人公ですけれども、外からもやっぱり言い続けている意味というのはあると思うんですね。  それで、ASEANのことを考えたときに、ASEANなんかも、最初もある意味ではばらばらだった面が非常に強かったんですが、しかし、歴史を積み重ねてくると、今ASEANというまとまりがあるということ自身が、ASEANの国々自身がやっぱりよかったと思っていると思うんですね、基本的には。  そういう意味では、中央アジアについても、かなり時間的には、すぐ成果は現れなくても長期的なビジョンで言い続けていくメリットという、これは日本の役割の一つとしてあるんじゃないかなというふうに私は考えているんです。  ですから、中央アジアはやっぱり同じ、まとまっていくべきだというのが、その理念を忘れちゃいけないというのが、私のあれです、その主張の位置付けです。
  57. 窪田順平

    参考人窪田順平君) 私は、二〇〇八年だと思いますが、外務省の開催したその東京でのダイアログに推薦者を出したので、呼んでいただいてちょっと入りました。そのときは環境に関して五か国全員集まって、二人ずつだったと思いますけれども、ダイアログ、JICAの関係の方々も込みで来ていただきました。私はそれ、中央アジアの各国の担当者、それなりに知り合いも多かったので結構ざっくばらんな話を聞きましたが、日本のこういう動きに対して非常に歓迎の意を表してくれていた。私は、それなりに、そういう意味では中央アジア五か国と日本がそれぞれと対等に付き合うということを見せるということで、そういう意味で私は、外務省がやっておられるダイアログに関しては、ある意味では評価は非常に高いだろうというふうに思っております。  それから、環境に関していいますと、環境意味アラル海に対してEU等も援助をしていますが、日本がそういう意味でEUに比べるとアラル海に、国際機関が幾つかあるんですけれども、それに対して直接的なドナーになっているわけではないので、若干そこでのプレゼンスは落ちるんですが。  例えば、中山先生もよく御存じだと思いますが、京都大学名誉教授の、清水さんも御存じだと思いますが、石田先生が今、干上がったアラル海で植林活動を続けておられます。私の大先輩ですが。それは日本大使館の草の根援助システムを活用しているはずですけれども、これはカザフでは非常に評価が高いです。そういう部分をきちんと現場にまで入って援助をしている国というのは意外に多くありませんので、日本もそれなりに評価が高いだろうというふうに思っています。  ですから、そういう形での日本援助というのを続けていくことが私は望ましいだろうというふうに思います。  以上でございます。
  58. 中原正孝

    参考人中原正孝君) 水ビジネスの推進を含めて民間企業の技術とそれから活力を活用するということにつきましては、JICAも積極的に取り組んでおります。具体的には、我々の組織の中に民間連携室というものを設置いたしまして、ここを通じて各民間企業のアイデアを実際にどのような形で事業に結び付けるかということを支援させていただいています。  具体的には、大きく二つに分かれまして、一つは途上国の貧困層を対象としたビジネス、BOPのビジネスを支援するもの、それからPPPのインフラについて民間企業様の方からの提案に対して支援をするということで、これ、BOPとPPPインフラの事業化に向けての調査に対してまず支援をしているところです。  例えば、BOPの方では、バングラデシュでよく見られる人力車の上に簡易のろ過装置を付けて、それが現地で事業化になるかどうかという調査を今実施しております。このような調査の結果、本当に事業化できるというものにつきましては、これも我々の事業の中で海外投融資という制度がございますので、これを通じて民間企業様の現地への進出に対して支援をしていくということを積極的に取り組んでいるところでございます。
  59. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  それでは、紙さん。
  60. 紙智子

    ○紙智子君 ちょっと先ほど時間がなくてお聞きできなかったんですけど、窪田参考人にお聞きしたいんですけれども、実は去年、調査会でこの場所に沖大幹先生に来ていただいてお話聞いたことがあったんですけど、その中で化石地下水を利用し続けることは深刻な問題をはらむという話がありまして、窪田参考人は、この資料の中でも化石地下水について、石油などと同じく有限な資源で、利用し続けるといつかは枯渇するというふうにおっしゃっておられます。それで、その化石地下水の枯渇という問題がどういう問題を生み出すのかということについてお考えをお聞きしたいというのと。  中原参考人については、水ビジネスなどの、これパッケージ型インフラ海外展開ということで言われているんですけれどもアジアや新興国で成長を日本に取り込むんだということなんですけど、実態について、投資をしてインフラなんかで建設進めても、実際の資材なんかは現地で調達するのがほとんどなんじゃないのかと。それから、雇用なんかも現地でやっぱり雇用するということになるんじゃないのかという、現状がどうなのかなということについてお聞きしたいと思います。
  61. 藤原正司

    会長藤原正司君) それじゃ、窪田先生、まず。そしてその後、中原先生、お願いします。
  62. 窪田順平

    参考人窪田順平君) 化石地下水について説明いたします。必ずしも中央アジアで深刻化しているという問題ではございませんが、少し説明させていただきます。  化石地下水と申しますのは、例えば一万年とかそういう時間スケールで古い時代に地層の中にとらえられた水を使うということです。これが今最も使われているのはアメリカのグレートプレーンです。オガララ帯水層という大帯水層ですが、この穀物を一番使っておるのは日本でございます。ですから、沖さんが言ったのはいわゆるバーチャルウオーターというやつですが、日本は食料を輸入することで大量の水を輸入しておりますが、それはアメリカから大半は来ておりますが、それは今申し上げた、でも、ちゃんとそれを沖さんたちは計算して、それほど、意外に多くないんですが、それでも化石地下水かなり消費しているという言い方になっております。  あと、かんがい農業世界的にやはり生産力が高いものですから、人口の多いところでは非常によくやられています。多いのが中国、それからインド、パキスタン、この三か国です。中国、それから、インド、パキスタン、ここの地下水は非常に深刻な状況にあります。ここは化石地下水と言うべきかどうか微妙なところですが、やはり地下水資源が枯渇していることは事実でございます。日本がその意味では特にアメリカの化石地下水かなり依存をしているということは私たちはよく理解しておくべきだろうというふうに思います。水の問題ではそういうふうになってございます。  以上でございます。
  63. 中原正孝

    参考人中原正孝君) 水ビジネスについてのパッケージインフラでございますけれども、現在、南アジアではまだ確立した水分野におけるパッケージインフラというものはでき上がっていないところです。  ただ、今御質問いただきました資材や雇用の調達につきましては、当然、水ビジネスとして日本企業が現場に進出した際には、ほかの現地企業との競争の上で、そこでの進出していく対象事業が経営として成り立つかどうかということによらざるを得ませんので、当然安くて良い技術を調達するということでは、資材やそれから雇用につきましても現地人材を相当活用していくということが必要ではないかというふうに考えます。
  64. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  次、若林先生。簡単にお願いします。
  65. 若林健太

    ○若林健太君 はい。  それじゃ、私、非常に基礎的なことをお伺いするかもしれませんが、中原参考人に。  先ほど、JICAとして民間ビジネスへの支援はBOPあるいはPPPというような手法に対する支援をと、こういうお話がありました。一方、その貧困エリアと言われるところでは、財政的にこちらのサービスに対応し切れないというようなところもあると、こういうお話ですが、ビジネスとして成り立つためには、ある程度その発展段階が進んだ国、進んだエリア、あるいは貧困のところにはなかなかできないと、こういう何か発展段階によってその対応が違うんではないかなと、こんなふうに思うんですけれども、その点どんなふうに、あるいは類型化できるか、見ることができるのかということを教えていただきたいと、こんなふうに思います。  それから、尾崎参考人に教えていただきたいと思うんですが、先ほど、水のビジネス、水というのは命の水だと、したがって公が最後は責任を持つべきだと、こういうお話でありました。しかし、公が責任を持つといっても様々な形態があると、民間で浄水場の運営やなんかを任せながら最後は責任を持つと、こういう形もあるでしょうと、こういうお話でありました。現状のように公営企業体のまま海外へ貢献をしていくという形、この形で本当にそれぞれの企業体にとってどういうインセンティブがあってこういう海外へ出ていくということがあるのか。もちろん国際貢献という高邁な思想はありますけれども、リスクを取って海外へ進出をする、そのインセンティブは何なのか、そこをしっかりつくらないと実は進んでいかないんじゃないのか。  私は地元長野県なんですが、長野県の企業体が、もしインセンティブがあって、それが我々地域にとってもかかわるビジネスが広がるというような可能性があるとすれば、こうしたこともどんどん進める中で日本の新たな地域のチャンスも広がっていくかもしれない。そんな意味で、どういう形でインセンティブというのはつくれるのかなと。それは、もし今の公営企業体ができないんであれば、もしかしたら、最終責任は公で持つと言いながら、国内の水の事業というのをもっともっと民営化しなければならない、こんな発想になるのかもしれない。  その辺についてどんなふうにお考えになるか、教えていただければと思います。
  66. 中原正孝

    参考人中原正孝君) 民間の進出ということで、ビジネスとして貧困は成り立つのかということですが、先ほど紙先生に対して申し上げましたとおり、ビジネスとして成功するには、日本企業であっても、労賃それから資材費についてどれだけ下げることができるかということを追求する必要があろうかと思います。例えば、最近バングラデシュではユニクロさんが進出してTシャツなど衣類を製造されておりますけれども、これも現地の人材や資材を活用して、可能な限り現地の人たちが購入できる価格に抑えることができるから現地に進出されているんだろうというふうに考えます。  もう一つは、貧困層の方は、例えば、日本で洗剤を買うときに大きなパッケージになりますけれども、その洗剤のパッケージを一回分の小さなものに小分けするとか、それから、これはJICAの技術協力で、インドで製造業の幹部の方を対象とした技術協力を長くやっておりますけれども、その研修を対象とした方の中から、例えばインドも大変夏は暑いので、野菜とかが長くもてるように冷蔵庫買いたいわけですけれども、普通の大きさの冷蔵庫はとても手が出ないので、小さな冷蔵庫、一台当たり五千円ぐらいで購入できる、日本でいうと保冷バッグみたいなですね、そのぐらいのサイズの冷蔵庫を企画して、これも経営として成り立っているということで、その仕様を、貧困の方が調達できるぐらいのスペックを下げて、現地の人が購入可能なようなレベルまで考えていくという様々な取組があろうかと思います。  以上でございます。
  67. 尾崎勝

    参考人尾崎勝君) 地方自治体が国際貢献ビジネスで目指すものということで、一応十五ページに書いておいたんですが、まず、アジア各国、途上国の人々の福祉の向上を目指そうと。もう一つが、日本経済の活性化とか民間企業の海外展開支援、地元経済への支援とか。三つ目が、多分御質問だと思うんですが、次世代を担う水道事業職員の育成、技術向上、収益の確保という。  この中の技術向上なんですが、現在の水道というのはかなり完成された水道で、今の若い人たちは、拡張時代のまさに原点から、浄水場を造って、そういう計画から何からを全部経験しているわけじゃないので、一部分を見ているので、海外へ行ってその全体を見てその課題を把握して、我々先輩たちがやってきたいろんなのとある意味でミックスしながら更に技術が磨けるという、かなり技術向上のチャンスではあると。それが次の更新とかあるいは再構築の中で生かされるということで、非常に大事な、つまり、技術の向上のためには非常に重要だというふうに認識しております。  次に、四ページに書いておったんですが、要するに、民間の活力をどうやってやる。水道事業は、やはり先ほども言いましたように、かなりいろんな課題を抱えています。技術継承というか技術職員がだんだんいなくなってくるとか、あるいは基盤、小さいのでなかなかスケールメリットがなくて非常に経営基盤も脆弱だとか、そういう中では、やはり幾つかの水道事業体が一緒になってやるというのも大事だろうということで、将来はもう少し大きな事業体をやはり目指さないと、水質検査なんかでも、かなりそういう部分を含めて効率よく、あるいは安全性の確保とかいうので大事なので、そういうものを目指そうと。  あともう一つ、それでもなかなか難しい面は、民間の人たちがその中で入ってくる。要は、浄水場の運転とかそういうのを、やはり民間の人たちは民間の中でこういうふうに、会社が浄水場を運転する、そういうのと、この自治体でやっている、この自治体はやっている、そうなると、かなりそこでまたノウハウが出てくる。そういうのもかなり重要になって、それがやはり経費の節減にも貢献できるだろうということで、財政基盤なんかもそういう形の中では改善されるんじゃないかなということで、民間のそういうものの進出というか、国内でもそういう形態が取られる、取らなきゃならないような状況になっているということで、最初四ページに、国内、国際、両方併せて、広域化と官民の連携の強化というのが大事だというふうにお話しさせていただきました。  以上です。
  68. 藤原正司

    会長藤原正司君) どうもありがとうございました。  加藤先生、お願いします。
  69. 加藤修一

    ○加藤修一君 手短に質問したいと思いますけれども中原参考人にお願いいたします。  インドの上下水道セクターの課題として、自然由来の弗素や砒素の関係の、そういう物質を含んでいるということで、これは前調査会で、リバース・テクノロジーということで、現地の実情に合わせた技術ということで、中間技術とか適正技術とか、そういう言われ方をしていると思いますけれども、天水、雨水ですよね。これ、インドなんかもそうですし、スリランカもバングラデシュも雨水は豊富にあると思うんですけれども、そういう雨水を利用したやり方についてはどういう展開が考えられているのか、普及状況というのはどうなんでしょうか。
  70. 中原正孝

    参考人中原正孝君) ありがとうございます。  特に砒素の部分につきましては、バングラでJICAが取り組んでいる事業が一番大きいわけですけれども、このスライドで紹介した事業では、砒素の除去装置ということを、設置と書いておりますけれども、これは、加藤先生が今おっしゃられた、例えば雨水をためたタンクの中で設置したり、それから、深い井戸の水は砒素に汚染されていますので、逆に浅いところの水をろ過装置を使ってきれいな水にしていくというものでございます。  バングラデシュ政府の方針としては、この雨水や浅い地下水の活用というのは、干ばつ等の影響を受けやすいということで、河川とかの表流水をこの砒素を含む地下水の代替水源として開発することを進めているところでございます。  それから、RO、逆浸透膜につきましては、先ほど申し上げたとおり、現地の維持管理や更新するコストが高いということから、なかなかバングラデシュのような大変貧しいようなところでは普及していくことが容易でないというふうに考えております。
  71. 藤原正司

    会長藤原正司君) ありがとうございます。  予定の時刻までまだ少しございますが、参考人に対する質疑はこの程度といたします。  一言、御挨拶申し上げます。  清水参考人窪田参考人中原参考人及び尾崎参考人におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。調査会を代表し、各参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十六分散会