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参考人(
井戸敏三君)
兵庫県の
井戸でございます。また、
関西広域連合の
連合長も兼ねております。どうぞよろしくお願いいたします。ただ、これからの話は、どちらかというと、
知事とか
連合長の
立場ではございません、
井戸の
立場でお話をさせていただきますということを御了解いただきたいと存じます。
お
手元に
参考資料を整理させていただいていますので、この筋立てに従いまして説明をさせていただきたいと思います。私はかなり
堺屋先生の弟子であると自称しておりますので、相当共通的な認識があるかもしれませんが、それはお許しをいただきたいと存じます。
まず、
分権自立型行政システムを構築しなくてはならないということでありますけれども、今
EU諸国が金融不安で相当痛め付けられておりますが、しかし戦後ずっとヨーロッパで
優等生だったのは
ドイツであります。
日本は
優等生の一人としてかなり
評価を受けてきたわけでありますけれども、この二十年、デフレで
経済を脱却できずに悩んでおります。私は、何が違うのかといったときに、
ドイツの場合は敗戦の際に徹底的に
分権化しました、構造的に
分権化しました。
日本は逆に
傾斜生産方式を取るなどと象徴されますように、徹底的に
中央集権化しました。
中央集権の
優等生と
分権の
優等生が
ドイツと
日本だったわけです。その
中央集権の
優等生が一九八五年から以来、大変大きな試練に差しかかって現在に至っていると、こういうふうに大きな流れ、理解した方がいいと思います。
それは、(1)に書かせていただいているような、
分権が求められる幾つかの背景があります。
一つは、
堺屋先生も触れられましたが、標準一律の発想から
多様性への
価値観の
多様化が随分進んできているということです。それから、
中央集権構造や
東京一極
集中構造では対応できないという限界が見えてきたことです。特に
災害や大震災、あるいは危機に対してどうするのかということが答えがありません。それから、
サプライサイドから
デマンドサイドへと書かせていただいておりますように、物が不足する
時代は
供給側が支配をいたしますが、物があり余ってくる
時代は
消費者の
選択に合わせていかざるを得ません。成熟
社会というのはそういう
社会なはずです。また、
地域社会への価値をもっと優先していこうではないか、
先生のおっしゃっておられる
地域優先という発想にもつながるのではないかと思います。また、少子高齢化への対応というのは、多様な対応があります。
地域の特性に合わせた対応をすべきです。セーフティーネットを張らなきゃいけませんが、実情に応じた対応の自由度がなくてはなりません。
そういう意味で
地方分権が求められているのではないでしょうか。
国と
地方との役割の基本原則は、もう言うまでもありません。
外交、
防衛、
通貨、司法など、国は役割を純化すべきです。
地方はその他の内政全般を担う、そういう構造にすることが基本なのではないでしょうか。基礎的
自治体である市町は住民に身近なサービスを担い、県は
広域自治体として広域
調整や専門的・先導的分野のサービスを実施していくようにすべきだと考えます。
三番目で言っていることは、
権限と財源と責任を一致させないといけないということであります。
結局、
行政分野ごと、
制度ごとに今、国、都道
府県、
市町村がそれぞれ分担し合ってしまっているんです。一番卑近な介護保険
制度は、
制度構築を見ても、半分は保険で半分は公で持つわけですが、その公の半分を国が持ち、その残りの半分を県と市町が持ち合っています。ですから、みんなかかわり合っている形になっているので、誰が一番責任を持っているのか。現場サービスの責任は
市町村だと言いながら、直ちに県が助けないからいけないんだという話になります。県が助けないからいけないんだと言われるから
制度が悪いんだという話になっていくわけです。
そういう形で、融合型システムだと私は言っていますが、融合型システムを変えていかないといけない、自立型システムに変えていかないといけないということなのではないか、このように思っております。
あと幾つかの点は現状説明なんでありますが、
地方財政が恒常的に
赤字になっているということはもう繰り返すまでもありませんけれども、平成二十四年度の
地方財政計画で見ましても、財源不足額が十三・七兆、一六・七%になっている。ここ十年、
黒字化したことはないということを念のためにグラフ化させていただきました。
続きまして、
地方財政の状況でこの十年比較いたしましたときにどうなっているか。真ん中の丸印がありますが、
地方一般財源総額は、平成十五年五十八兆から、平成二十四年は五十六・五兆、約二兆減っております。つまり、ほぼ横ばいか縮減されているわけです。ところが、
社会保障関係費は十三兆から二十二兆、九兆円増えております。一般財源横ばいなのに
社会保障関係が九兆円増えている。これを何で埋めてきているかというと、それは単独施策を縮減して見直してきているからなんです。こういう実態をいつまで続けられるんだろうかというのが、今の我々が当面している課題であります。
社会保障・税一体改革の課題として整理をさせていただきましたが、
社会保障関係費の
地方単独
事業費は総額六・二兆円だ、これは国会にも
資料として提出されたはずでございますが、一方で二兆六千億円が今回の一体改革で積算されておりますけれども、あと残りに対する対策は十分とは言えません。しかも、まだ増強していく必要がございます。
あわせまして、
社会保障の中身についての見直しをもっときちんとしていただく必要があるのではないか、こんなふうに考えています。
例えば年金
制度なども、受給資格期間、
議論になっていますが、短くする。あるいは高齢者であっても、つまり六十を超えても、負担能力のある人からは年金掛金を取る。そして、高齢者であっても高所得者には年金あげない、それくらいの割り切りが必要なのではないか。
あるいは医療保険
制度ですと、どの医療保険に所属するかによって負担が違います。協会けんぽ、健保組合、共済組合、国保、国保組合、それぞれのどれに所属するかによって負担が異なる。こんなおかしな
制度はない。というのは、医療サービスは一律で受けます、
社会保険診療報酬
制度、一方で負担の方はばらばら、これはおかしいのではないでしょうか。
あるいは介護保険
制度もそうです。例えば余りにも高過ぎる介護という問題とか、あるいは高所得の高齢者の利用料金の負担をどう考えるかとか、あるいは二号被保険者の範囲を、四十歳以上になっていますが、これをどうするかとか、いろいろな
考え方はありますが、やっぱり見直さざるを得ないような状況になっているのではないでしょうか。
そのことを是非国会の場で、特別
委員会つくられるようでありますが、その場で
議論してほしいな、こう願っております。
七番目に、
地方税財源の充実と
地方交付税の確保ということを申し上げました。
地方税財源、是非よろしくお願いしますということでありますし、
地方交付税の確保をどうぞ、
地方を維持するための不可欠な財源でありますので、その点につきまして触れさせていただきました。
私は、将来的には、現行の
地方交付税原資であります国税と増強される
地方税を再編した
地方共同税というものをつくりまして、これの財源
調整は、第三者機関、
地方団体等がつくります第三者機関に委ねるという、そういう方式を構築すべきだと考えております。
広域自治体の在り方に入らせていただきます。
三ページでございますが、今、
関西広域連合が発足いたしました。一年四か月ほどでございますけれども、それなりに
機能をし、
評価を受けているのではないかと考えております。
まず、この広域連合をつくりました第一の目的は、
関西全体の広域
行政を担う責任主体をつくろうということでございました。例えば防災ということを考えましたときに、防災は、各都道
府県、
市町村ももちろんそれぞれ役割に応じてありますし、国も果たさなきゃいけませんが、東南海・南海地震というような広域
災害に対しての対応すべき機関がないという実態にあったわけであります。広域防災を
関西全体として取り組む、主体的な取組を進められる主体をつくろう、責任主体をつくろう、これがある意味で
関西の広域
行政を展開する機関をつくろうという第一の目的でございました。
第二の目的は、国の出先機関の事務の受皿をつくろうということでありました。国からは常に、
分権を主張し国の事務を移譲しろといいましたときに、都道
府県をまたがる事務はどうするんですか、誰が担うんですか、そんな機関がないじゃないですかというのが常に根源的な反論でございました。その反論を許さないぞというのが第二番目の理由でございます。また、
地方自治法では、国から、都道
府県の入っております連合ならば、ダイレクトに事務を移譲することができる規定が定められております。その規定を活用する、つまり連合から国に対して移譲を要請する、そのような目的でございます。
三番目に書かせていただいておりますのは、象徴的な我々の込めた意味でございまして、今まで
分権社会をつくれ、つくれと国に要請するばかりでございました。しかし、今回我々は、自らが
関西全体として取り組める
関西広域連合をつくり上げたわけでございます。主体的に今の現行
制度で取り得る施策を取って受皿づくりをしたわけでありまして、単に国に要請し続けているのではなく、我々が我々自身の責任でもってそのような機関をつくり上げた、ここのところを是非
評価していただきたいと考えております。
執行体制としての特色は、補完性の原則をベースにしながら、
府県だけではなかなか達成できないような広域
行政に限って進めていこうではないかということが第一。第二は、業務首都
制度を導入することにいたしました。つまり、全部の事務をその
関西広域連合の事務局で行うという体裁を取らずに、広域防災ですと
兵庫県が主たる役割を取る、観光・
文化ですと京都が主たる役割、広域産業ですと
大阪、広域医療・徳島、環境保全・滋賀、職員研修・和歌山、資格
試験・
大阪、山陰ジオパーク・鳥取というような業務首都
制度を採用しております。このために肥大な組織をつくらないで済んでいる。各県の既存の組織を兼務形態で活用しているということでございます。
組織としては、現行
制度上は独任制でありますけれども、一人で運用するには大き過ぎるということもございますので、各
府県知事により構成される
委員会制を規約でもって採用いたしております。連合議会は構成
府県の議会から選出された議員によって構成し、全員で構成する常任
委員会を
一つつくっております。また、
理事会も設置いたしております。四ページの上の表はそのような動きを整理したものでありますが、併せまして、幅広く住民から
意見を聴取するための協議会を設けさせていただいて、年に二回開催をさせていただいております。
この中で、七分野への取組につきましては、これまで一年間掛けまして分野別の広域計画を作り上げてきました。今年度はこの広域計画の実施計画作りを推進し、対応力を増そうといたしております。
国の出先機関対策でありますけれども、我々は丸ごと移管を主張しております。
権限も
お金も人員も全て一切広域連合に移していただいたらどうでしょうかとしております。
その狙いは、本来ですとふさわしい事務を仕分しまして、そしてそれに応ずる人員を配置しまして、それに対応する
お金を付けて、そしてそれぞれ移譲するというのが本来なんですが、今まで、戦後六十年間、その主張をし続けてきましたけれども、いつもその仕分の森に迷い込んでしまって出口が見えなくなってしまうというのがこれまでの経験でありました。だからこそ、今回はもう何も
議論をなしにみんないただこう、いただいた上で料理は我々がさせてもらいましょうというような発想で丸ごと移管を主張させていただいております。
第一弾として、
経済産業局、
地方整備局、
地方環境事務所の三事務所を取りあえず受けて、第二弾として、例えば
地方農政局などを、
地方運輸局などを受けていこう、こういう形にいたして協議を進めさせていただいております。
若干誤解がありまして、例えば今回、近畿整備局なども大変活躍いただきましたので、そのような意味で近畿整備局などの
機能がなくなってしまうんじゃないかというような誤解があるのですが、丸ごと移管ですし、我々は
機能をなくそうと言っているのではありません。五ページの上に書いておりますように、住民ガバナンスの強化ですとか、二重
行政の解消ですとか、縦割り
行政、総合
行政とのつなぎですとか、こういう見地から要請をしているということを是非御理解いただきたいと思います。
首都
機能のバックアップ構造の構築についても提案をいたしております。細かい説明は省略しますが、是非、国会や各府省庁の
事業継続計画、BCP、これを
制度化していただきたい、このことを要請させていただきます。
時間がだんだんなくなってきたんですが、道州制でございますが、私は大変問題のある
制度だと思っております。
道州制の実像がはっきりしていません。どうも
府県の在り方だけが
議論されて、国の統治機構全体の
議論が進んでいません。現在、道州制について
議論されているときに、各省再編法制などについて、あるいは国会
機能の見直しについて触れられたということを聞いたことがありません。また、そういう意味での合意形成ができるのかという疑問があります。あわせまして、
府県合併をさせるだけの国の
行政改革や財政再建の手段に使われてしまうのではないかというおそれもあります。また、道州制というようなコンパクトな
仕掛けをつくりますと
中央支配が徹底する、そういうおそれがあるのではないかと考えております。また、財政や自治立法権などについての担保をどうするのかとか、あるいは住民の意思の反映をどのようにしていくのか、小さなところは切捨てかとか、あるいは、道州がいわゆる憲法で保障されている
地方自治の本旨の観点からいって本当に
地方自治体と言えるんだろうかというようなことが問題になるはずであります。
広域連合は、
府県の存続が
前提とされています。道州は、
府県を廃止して複数
府県の規模の道州を設置するもので、実質的には私から見ると国による強制的な
府県合併、
府県が嫌だと言っているだけではないか、こういう感じをいたしております。
広域連合が
機能すれば道州は要らないのではないか、こう思います。
あと、適正規模を考慮した
基礎自治体の在り方についてであります。
大都市制度につきましては、
大都市が基礎的
自治体と言えるのかどうか。横浜三百七十万、
大阪二百七十万、名古屋二百三十万、これだけの規模で基礎的
自治体と言えるんでしょうか。しかも、公選首長は一人。区には議会がなく、区長も選挙で選ばれておりません。民主的コントロールが
機能すべきとする住民自治の観点から課題があるのではないでしょうか。
災害発生時とか危機管理だとか、区民への説明責任などを果たし得るような体制をつくる必要があるのではないかと思います。
したがいまして、適正規模を考慮した
大都市制度の在り方を検討すべきではないかと思います。
あわせて、基礎的
自治体の在り方についても検討すべきです。小規模な
市町村に対しての県の補完措置というような
制度も検討に値するのではないかと思います。
特に大きな
大都市につきましては、都制を活用することが考えられると思います。サービス
行政は区に、そして区は議会と
公選区長を持つ。そして、インフラ整備や広域
行政は都が行う。都制は現に架空の存在ではありません、
地方自治法上の
制度であります。
特別市構想というのが指定都市から、政令市から提案されておりますけれども、指定都市を特別市にしたとしても基礎的
自治体の
機能をどう考えるかという問題に逢着します。これに解決を図るために特別区をつくって区長と
区議会を置くのだとすれば、全く都道
府県を増やすのと同じことになってしまうのではないでしょうか。
そういうために、私はやはり、三層制の構造を変えれば何とかなるということではなくて、国と
地方との事務分担や財源の再配分をきちんと行うことが基本なのではないか、そして広域
行政には広域連合などの
制度を活用することで対応できるのではないか、このように考えている次第でございます。
少しオーバーしました。どうぞよろしくお願いいたします。