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2012-05-30 第180回国会 参議院 憲法審査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十四年五月三十日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員の異動  五月十六日     辞任         補欠選任      轟木 利治君     藤末 健三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         小坂 憲次君     幹 事                 江田 五月君                 鈴木  寛君                 中村 哲治君                 松井 孝治君                 川口 順子君                 西田 昌司君                 魚住裕一郎君                 江口 克彦君     委 員                 足立 信也君                 大久保潔重君                 大島九州男君                 川上 義博君                 今野  東君                 芝  博一君                 那谷屋正義君                 直嶋 正行君                 白  眞勲君                 姫井由美子君                 広野ただし君                 藤末 健三君                 藤原 正司君                 前川 清成君                 増子 輝彦君                 礒崎 陽輔君                 衛藤 晟一君                 片山さつき君                 佐藤 正久君                 中曽根弘文君                 藤井 孝男君                 藤川 政人君                 古川 俊治君                 丸山 和也君                 山谷えり子君                 白浜 一良君                 谷合 正明君                 西田 実仁君                 松田 公太君                 井上 哲士君                 福島みずほ君                 舛添 要一君    事務局側        憲法審査会事務        局長       情野 秀樹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基  本法制に関する調査  (東日本大震災憲法)     ─────────────
  2. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) ただいまから憲法審査会を開会いたします。  日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査議題とし、「東日本大震災憲法」について、事務局から報告聴取した後、討議を行います。  それでは、まず事務局から参考人質疑概要について報告聴取します。情野憲法審査会事務局長
  3. 情野秀樹

    憲法審査会事務局長情野秀樹君) 本日の自由討議に先立ちまして、参考人質疑概要について、便宜私から御説明をさせていただきます。  東日本大震災憲法テーマとした参考人からの意見聴取は、三回に分けて行われました。お手元にお配りしております資料に沿って、それぞれの小テーマごとに御説明をいたします。  なお、ここでは参考人方々の御意見の要約だけを申し上げることとしまして、それに対する委員先生方からの質疑につきましては、恐縮ではございますが、お配りしております資料の「主な発言項目」を御参照いただければと存じます。  それでは、資料の一枚目を御覧ください。  四月十一日の審査会では、大震災人権保障テーマとして御議論がなされました。  まず、ふんばろう東日本支援プロジェクト代表西條剛央氏からは、被災地に対する支援活動を通じて実感した人権に関する事柄を中心意見が述べられました。  具体的には、東日本大震災からの復旧復興において生存権及び幸福追求権を具体化していく上で個人情報保護法が障壁となった点、公平性を重んじる余り被災者の生活の質を上げることができないなど、人権保障にかかわる問題が生じていたことが紹介されました。また、抽せんによる入居で崩壊したコミュニティーを再形成するため、仮設住宅入居について柔軟な措置を講ずることの必要性についても述べられました。  続きまして、学習院大学法学部教授櫻井敬子氏からは、行政法の視点から大震災における憲法的な状況について意見が述べられました。  具体的には、人間的生存が脅かされる極限状況におけるニーズに対応するために、危機管理ないし緊急事態に関する規定を設けることが求められ、今回のような大規模災害では国や都道府県が前面に出るトップダウン型の仕組みが必要であると述べられました。また、実際の立法憲法と無関係に展開していかないよう、憲法価値個別法の指針として生かされるような仕組みを設けることの重要性が強調されました。さらに、人権保障システムとして、裁判所を憲法理念に合致する事後救済のための仕組みに立て直すことの必要性も挙げられたところでございます。  大阪大学大学院高等司法研究科教授の棟居快行氏からは、震災やその後の出来事が憲法を考える上で何を示唆しているかという観点からの意見が述べられました。  自然災害防止災害復興を行う国家国民権利行使調整主体としての国家は相入れない緊張関係に立つという認識を示され、また、憲法第十三条に規定する幸福追求権規定内容に生命、自由、幸福追求の順で価値序列を設け、防災復興のために人権制約が行われる場合にはこの序列に従ってなされることが必要である旨が述べられました。  次に、資料の二枚目を御覧ください。  四月二十五日の審査会では、大震災統治機構テーマとして御議論がなされました。  双葉町長井戸川克隆氏からは、福島第一原子力発電所が立地する町の町長としての立場意見が述べられました。  具体的には、双葉町における幸福追求権生存権が妨げられている現状報告され、原子力発電所事故において国と東京電力責任分担が不明確となっている点、政府から情報開示がなされていないことにより被害が拡大し、双葉町民政府から見捨てられたとの意識を持つに至ったことについて述べられました。  東北大学大学院法学研究科教授牧原出氏からは、行政学者として、また大学院の院長として、学生の安全確保大学復旧に取り組まれた経験に基づいて意見が述べられました。  そこでは、被災状況地域により多様である中、メディアが余りにも簡潔に全体像を発信し、人や物資、情報などのつながりをつくる役割を果たしていないとの分析がなされました。提案といたしまして、復興が進んだ地域が遅れた地域を牽引するシステムが必要である旨が述べられました。また、人的支援につきましては、個々の自治体広域連合のような横の連携が効果的であり、地域世界をつなぐことができる人材の育成が重要である旨が述べられました。  京都大学法科大学院教授大石眞氏からは、憲法学者として統治機構総論的課題について意見が述べられました。  日本国憲法統治機構は平常時を想定した権力分散型であり、緊急時に必要とされる迅速性機動性を求める対応システムが欠如しているとの認識が示され、その上で、緊急時に対応することができる仕組み及び効果的な統制の手段が必要である旨が提案をされました。具体的には、衆参両院間の権限関係の再検討のほか、緊急時に即した特例措置として、緊急財政処分緊急立法手続のような仕組みを検討する必要性が述べられました。  次に、資料の三枚目を御覧ください。  五月十六日の審査会では、大震災国家緊急権テーマとした御議論がなされました。  まず、上智大学法科大学院教授高見勝利氏は、国家緊急権大震災との関連に限定して取り上げ、それを憲法上明記することに消極的な立場から意見を述べられました。  憲法上、参議院緊急集会、政令への罰則委任規定が置かれたという制定経緯を踏まえれば、災害緊急事態現行憲法織り込み済みであるとの認識が示されました。また、東日本大震災に際しての自衛隊派遣治安出動ではなく、重大緊急事態には当たらないため、安全保障会議が開催されなかったのは当然である旨が述べられました。また、自由民主党日本国憲法改正草案における緊急事態条項について、災害有事を書き分ける工夫が必要ではないかといった指摘がなされるとともに、緊急事態基本法を制定する動きに対して、その法制化方向性に対する関心が示されました。  これに対しまして、駒澤大学名誉教授西修氏からは、国家緊急権憲法上明記することに積極的な立場から意見が述べられました。  東日本大震災被害規模等から災害緊急事態の布告と安全保障会議の開催が必要であった旨が主張され、また、参議院緊急集会は緊急時ではなく平常時に対応するものであり、憲法の真価は平時だけでなく有事においてこそ発揮されるべきである旨述べられました。緊急事態法制整備については、憲法国家緊急権規定した上で、緊急事態基本法個別法の三層構造で対応すべきことが主張されました。また、資料として世界憲法状況を示され、この二十年ほどの間に制定された憲法の全てにおいて国家非常事態対処規定が置かれていることが紹介されました。  以上が参考人意見概要でございます。  ありがとうございました。
  4. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 以上で事務局からの報告聴取は終了いたしました。  これより討議に入ります。  時間が限られておりますので、委員の一回の発言時間は五分以内で願います。お手元に配付をいたしております発言に当たっての留意事項にありますとおり、発言時間の経過につきましては、終了時間になりましたらベルを鳴らしてお知らせいたします。  まず最初に、各会派一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  民主党、江田五月君。
  5. 江田五月

    江田五月君 冒頭の御指名に感謝いたします。  当審査会問題意識は、昨年の東日本大震災という未曽有現場体験に照らして、現在の日本国憲法が機能したか、逆に憲法欠陥が明らかになったかを検証しようというもので、具体的事態に即した憲法論議こそが論点をえぐり出すことに資し、時宜にかなっているというものでした。一部の議論はやや抽象的に傾き過ぎたと思いますが、総じて私は、多岐にわたる震災対策のうち、私たちに反省を迫り今後の改善を必要とする場面は数多くあるものの、憲法現場機能という点から見る限りは、憲法に問題があり改正の必要が浮き彫りになったことはなかったと思います。もちろん、このことは一般論として憲法改正の必要はないという結論に結び付くものではありません。  被災現場状況は悲惨で、憲法第二十五条の描く姿とは大きく懸け離れていました。しかし、それは自然災害に起因するものであり、憲法欠陥ではありません。原発事故については、原子力安全行政が第二十五条の要請にかなうものであったかという問題は残るものの、この点の議論は深められていません。  逆に、憲法保障する自由権現場行政対応の障害になったかどうかという点では、特に問題点指摘はなかったと思います。風評被害は様々な場面で見られましたが、これに対して表現の自由を停止するなどの措置をとることは、必要でも有効でも妥当でもありません。  国の統治機構については、中央政府現場自治体との連絡調整現場自治体機能麻痺補完方法とか、ボランティア協力体制とか、様々な問題点を十分に検証し改善点を明らかにした上、今後に生かさなければなりません。しかし、これらも憲法の予定する統治機構にそもそも欠陥があるということではありません。  逆に、災害対処は元々基礎自治体が当たるべきで、これに都道府県や、さらに国が協力し補完することになっています。この点で、関係する県や国に大きな行政需要が寄せられ、大わらわになりました。また、その実行過程意思疎通などに様々なそごが生じたのも事実です。しかし、だからといって、基礎自治体権限を奪って県や国の直轄事務にしてしまうのは妥当でなく、制度効率化とか日常的な訓練とかによって改善すべきことで、憲法とのかかわりで考えれば、地方自治の充実こそが課題なのだと思います。  最後に、国家緊急権との関連では、議論は抽象的なレベルを出なかったと思います。国会は一般的には機能していたのであって、国会の運営上の問題は別として、国会とは別の立法回路をつくる必要は何もなかったと思います。参議院緊急集会も論じる余地はありません。  地方自治との関係で、中央政府権限集中する必要があったかどうかは一つ論点ですが、私は憲法上の特段の措置が必要だということはなかったと思います。私自身は、自治体消防と国の権限につき参考人にただしてみましたが、時間の制約もあり議論を深められませんでした。非被災自治体被災していない自治体消防による支援を求める際に、具体的には東京都の消防のことですが、若干の議論があったことは事実です。私としては、国と地方との円滑な協力関係確保という課題ではあっても、自治体消防という制度自体国家緊急権という観点から改める必要が浮き彫りになったということはないと思います。むしろ、参考人の考察がこうした具体的な現場状況を踏まえたものでないことが明らかになったのではないかと考えます。  災害対策法制原子力法制上、内閣総理大臣権限についての仕組みは現に存在しますが、現実には現場の悪戦苦闘がありました。しかし、これは憲法国家緊急権規定がないことが不都合を引き起こしたということではありません。私自身環境大臣としての職務の場面でも、災害廃棄物広域処理とか放射性廃棄物原子力施設外への飛散とかにつき法の欠缺があったことは事実で、ほかにも法律の不備への対処や解釈に当たっての決断はありました。しかし、これも今後の改善点にはなりますが、憲法問題ではないと思っています。  総じて有益な議論が行われ、良かったと思います。ありがとうございました。
  6. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) それでは次、自民党礒崎陽輔君
  7. 礒崎陽輔

    礒崎陽輔君 自民党礒崎でございます。  自由民主党は、四月二十八日の主権回復記念日に、サンフランシスコ平和条約発効六十周年を機に憲法改正草案を発表いたしました。党では平成十七年に新憲法草案を策定しておりますが、五十回以上の会議を重ね、それを新たに更新をしたものでございます。特に、GHQの指令で作られた我が国憲法をもっと日本らしい、日本人らしい、そして翻訳調日本語をもっと日本語らしいものにする、そういうことに意を払いました。  前文は全て変えました。しかし、主権在民平和主義基本的人権の尊重を継承するとともに、自助、共助の精神を強調いたしました。  天皇の章では、元号、国旗・国歌、それから天皇公的行為等を入れました。それから元首の規定も入れましたが、これらは現行制度の中で認められたことを改めて規定したものでございまして、象徴天皇制を変える考え方は取っておりません。  安全保障の章では、平和主義は全く変えておりません。自衛権国防軍、領土の保全等規定を設けましたが、これは世界標準に合わせたものでありまして、一定規模国家では当然のことであります。  人権の章では、幾つかの新しい人権を加えましたが、基本的な点は変えておりません。ただし、翻訳憲法であるために天賦人権思想のような書きぶりのところが多かったので、その辺の文言を直させていただきました。加えて、家族の相互の助け合いという精神を入れさせていただきました。  統治機構については、大きな改正はしておりません。今回は憲法全体の見直しを行うため、例えば一院制などの個別の課題は別途議論することの方が適当であると考えたからであります。  今回議論がありました緊急事態については、緊急事態の宣言ができるということと、その効果を幾つ規定をさせていただきました。東日本大震災反省を踏まえて、より政府が効率的に行動できるような体系を規定をいたしました。  憲法改正については、衆参両院の三分の二の賛成を過半数としたところであります。  憲法改正草案は、自民党の基本的な考え方を示したものでありまして、今後のこの憲法審査会における議論のベースにしてまいりたいと考えておりますが、現行憲法改正規定衆参両院で三分の二必要という現実を踏まえますと、自民党のこの憲法改正草案がそのまま憲法改正原案になるとは考えていないところであります。憲法審査会の前身である憲法調査会で各会派考え方が相当に分かりやすく整理されたものと承知をいたしております。国会で三分の二の賛成を得られる共通点を早く見出すことが必要であり、そのための具体的な作業に各会派共通の土俵の上で取り組むべきであると考えているところでございます。  その中で、今回議題となっております緊急事態法制というのは非常にある意味その字のとおり緊急性を要する課題であり、こうしたところを中心に各会派の御意見調整する、そういうふうに早く取り組むことが必要であると私は考えております。  以上であります。
  8. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、公明、白浜一良君。
  9. 白浜一良

    白浜一良君 公明党の白浜一良でございます。  当審査会東日本大震災憲法ということで三回にわたる議論をされてきたわけでございますが、私は二つの大きなことを感じております。  一つは、いわゆる緊急事態に対する法整備をせないかぬということでございまして、今、国会事故調がそれぞれ調査を検証をしているわけでございまして、最終的な報告を待たねばなりませんが、それが段階的にいろいろ報道をされております。  当時官房長官でございました、中心になってスポークスマンをされていたわけでございますが、枝野経済産業大臣発言をされておりまして、当初、いわゆる情報の集約それから発信に問題ありと、自らそれを反省しておっしゃっているわけでございます。また、総理現地へ行かれたことに対しても反対をしたと、こういうふうにおっしゃっているわけで。総理官房長官のときは国の指導するトップでございますが、非常に混乱されている姿がそういう発言に表れているわけでございまして、そのぐらいいわゆる緊急事態に対するシミュレーション、これは国が構えないと地方自治体も動けないわけでございますから、そういう法整備がされてこなかったと。それは今の政権だけを批判しているわけじゃございません。想像を絶するそういう災害に対して対処する法整備がされていなかったということは事実でございますし。  今朝の新聞を読みますと、福島県の佐藤知事がおっしゃっているわけでございますが、国からの避難指示が事前に連絡もなく出されたというふうに国を批判をされている。同時に、東京電力とは安全協定を結んで防災対策に取り組んできたが、うまく機能しなかった、安全協定法制化してほしいと、こういうふうに述べられておりまして、そして、県が市町村にきちっとこの避難指示を徹底できなかったということも、情報が錯綜して、組織上の問題があったと、こういうふうにお述べになっているわけでございますから。  だから、悲惨なそういう大地震でございましたけれども、対処するそういう法整備というものをやらなきゃならないと、そういうように実感をしております。直ちに国民の諸権利との調整というか、憲法に付け加えなければならない、憲法改正しなければならないというところまでの私は議論じゃないと思います。法整備をする中でそういう必要性があればやればいいんですけれども、まず法整備そのものができていないということを強く感じたということが一つでございます。  それから、もう一つ大きく感じていますことは、いわゆる現行憲法でございますが、国民の中に定着をしているとも言えるわけでございますが、余り一人一人にとっての憲法というか、国民一人一人にとっての憲法になっていないということを強く感じるわけでございます。  それは、震災当初、これは今まで考えられないような、全国の方々から義援金が集まりました、また大変な数のボランティア現地で手助けをしたわけでございます。当時は頑張れ日本ということで、強い日本人きずなというものが強調されて非常に感動のドラマがあったわけでございますが、しかし一方で、今問題になっていますように、この集約された瓦れき広域処理が進まない、そういう現実も一方であるわけでございまして、親日家のドナルド・キーンさんが、あのきずなとは何だったんだと、この現状に対する批判をされているわけでございますが。  私は、今の現行憲法国民の中に定着しているとも先ほど言いましたように言えるんですけれども、戦後、いわゆる護憲派改憲派と表面的な対立に終始してきたと。憲法の一条一条が国民にとってどういう意味があるのか、そういう内実化していくことをしていかなきゃならないと。精神というのは風化するわけでございまして、内実化するために、私は、現行憲法改正するという前提でいわゆる議論を進めるという、我が党は足らない理念条項を付け加えようという加憲論ではございますけれども、単に付け加えることに意味があるんじゃなしに、もう一度国民一人一人にとっての憲法を取り戻すために議論を促進すべきだということを強く感じましたので、会派を代表してお話をさせていただきます。
  10. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、みんなの党、江口克彦君。
  11. 江口克彦

    江口克彦君 みんなの党の江口克彦です。  憲法審査会において、東日本大震災憲法をめぐって三回にわたり参考人質疑を行ってまいりました。前回のテーマでありました国家緊急権本質は、憲法、具体的には人権保障権力の分立が一時停止されることにあり、人権保障、それから統治機構大震災議論は究極的に国家緊急権議論に結び付いていくものであります。  したがって、私も国家緊急権についての考えを中心に申し上げますが、まず二点について述べておきます。  第一は、人権保障についてであります。  地震、津波、さらに原子力災害という複合的な災害のため、憲法第十三条の幸福追求権、第二十五条の生存権、それから第二十九条の財産権などが侵害されている状況が今なお継続されております。政治の責任として、これに正面から向かい合い、被災された方々人権状況改善を図っていく必要があります。  第二は、統治機構全般にわたる問題であります。  東日本大震災への対応については、参考人からも政府自治体対処が必ずしも適切ではなかったということが指摘されております。これは、国家緊急権の話とは別に、国と地方関係を含む我が国統治機構そのもの制度疲労を起こしていることと必ずしも無関係ではないと考えます。戦後の経済成長を経た後、約二十年にわたる我が国閉塞状況を打開するために、内閣機能の更なる強化や道州制の導入など統治機構本質について議論を行う必要があると考えます。  さて、今般、我が党は、憲法上、非常事態法制整備を明記することを憲法改正基本的考え方において明らかにいたしました。これは、東日本大震災を踏まえ、我が国において自然災害を含む緊急事態への対応憲法レベルで十分に図られておらず、国民の安全に対する国家の責務が不十分であったのではないかとの認識によるものであります。  東日本大震災国家緊急権関係について、参考人質疑の中では、災害への対応は当然憲法の想定内であるとの発言がありました。そのような側面があることは否定できませんが、国家緊急権対応すべき事態は自然災害に限定されず、我が国の主権を始め国民の安全が著しく脅かされる事態も含まれることは明らかであります。これらの事態に対して国が万全の備えをして対応していくことは国民に対する国の責務であり、国家緊急権憲法に明記することは当然であります。  そして、冒頭に述べましたように、人権保障権力の分立が一時停止されることが国家緊急権本質であることに鑑みれば、一つ、非常事態を宣言する事態・対象、二つ、国民権利の制限が必要最小限度であること、三つ、内閣総理大臣による国の機関及び地方に対する直接の指示及び命令権の確保、四、非常事態の宣言についての国会承認、五つ、非常事態宣言の効果が継続する期間と解除の条件といった事項の大枠を憲法において規定し、さらにその具体化を下位法規の整備を通じて図っていくことが必要であると考えます。  立憲主義を守るための立憲主義の一時停止というジレンマを抱えた国家緊急権議論ですが、国民の安全という究極の目的のために憲法審査会で今後とも議論を深めて制度設計を行っていくことが必要であるということを申し述べまして、私の発言といたします。  ありがとうございました。
  12. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、共産、井上哲士君。
  13. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  甚大な被害をもたらした東日本大震災福島原発事故から一年以上たちましたが、復興は緒に就いたばかりで原発事故の収束もめどが付いていない、この現状憲法からどう見るかが議論になりました。三回の質疑を通じて、これは憲法の問題ではなくて憲法現実に生かされていないことに問題があるということが浮き彫りになったと考えます。  双葉町の井戸川町長が、野田総理双葉郡民は国民だと思っていますかと問いかけられたことを述べられ、町民は十三条の幸福追求権も二十五条の生存権も妨げられていると訴えられたことは重く受け止める必要があると思います。一たび重大事故が起きれば憲法のらち外に置かれるような原発と社会が共存できるかが問われております。また、安全神話を振りまき、事故後はSPEEDIの情報も伝えられず被害を拡大をした、なぜこのような事態になったかの調査、解明が必要だと考えます。  復興の在り方についても、阪神大震災のときには災害からの住宅や営業の復興も自己責任とされました。しかし、その後の憲法を掲げた世論と運動で被災者生活再建支援法ができ、東日本大震災ではグループを組めば営業施設の再建にも補助が可能になりました。しかし、被災地にはまだまだおよそ憲法価値の実現には程遠い実態があります。西條参考人が強調されたように、災害復興生存権及び幸福追求権を具体化をする、このことが大変重要だと考えます。  一方、震災を機に国家緊急権規定を設けるべきという、震災便乗ともいうべき改憲の議論もあります。  しかし、規定が必要だとする参考人も、今回の大震災については規定がなくても対応はできていると述べられました。一方、高見参考人は、憲法制定時の日本政府とGHQのやり取りも紹介しながら、憲法が今回のような大災害を想定しているということを陳述をされました。問題は、現行の法や制度が適切に働かなかったり、権限が有効適切に行使されなかったことにあります。参考人から、国家緊急権規定があれば、ふだんからの危機意識危機管理認識が違うとの意見もありました。しかし、歴史の教訓から見れば、そのような理由でこの規定を設けることにはならないと考えます。  大日本帝国憲法には、議会が閉会中で緊急の対応が必要なときは、天皇は法律に代わるべき勅令を発することができるという規定がありました。治安維持法の最高刑を死刑にして野蛮な弾圧を可能にしたのも、この緊急勅令によるものでありました。緊急事態が宣言されると、一時期的とはいえ、政府は独裁的な機関となり得、その活動内容については何の保証もなくなり、多くの国民が望まない方向に政府が暴走する可能性もあります。  憲法制定議会での憲法担当大臣の金森徳次郎氏が、行政当局にとっては緊急権は重宝だが、国民の意思をある期間有力に無視し得る制度であり、民主政治の根本原則を尊重するかの分かれ目だと答弁していることについて、参考人からは、この答弁の背景に、憲法制定の基本理念に民主主義の強化、とりわけ議会の強化、その下での統治システム整備があったと述べられたことは重要だと考えます。緊急時だといって国会権限政府に集中すればうまくいくのか、このことは私たちの現実からも乖離をしていると思います。  本震災に当たっては、国会は一定期間審議は中断をいたしましたけれども、各党議員がそれぞれの調査に基づいて行政の間違いや足らざるところを指摘し、是正をしたり、また議員立法で様々実現をしてきたことを見ても明らかだろうと思います。  最後に、今後の議論について、私は、審査会議論はこれで区切りとし、災害復興憲法価値をどう生かすかに国会は全力を挙げるべきだと考えます。議論を続けるとしても、今入口の段階であり、特定のテーマに絞って幾つかの小委員会をつくって議論をするようなやり方はやるべきじゃないと考えております。  以上です。
  14. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、社民、福島みずほ君。
  15. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  双葉町長が、井戸川町長が、双葉町における憲法十三条の幸福追求権憲法二十五条の生存権が妨げられていると、その現状をこの審査会発言されたことは極めて重いと思っております。憲法価値の実現、憲法が侵害されている状況を今全力で国会はやるべきだと思います。  先日、二十八日にも宮城県に行きました。至る所で聞くのは、やはり遅々として進まない復旧復興であり、被災地にこそ日本国憲法をという声を今回も聞きました。その意味で、憲法価値の実現をしっかりやっていくにはどうしたらいいかという議論こそ国会はすべきだと考えています。  また、参考人の一人の大石さんも、東日本震災への対応において、憲法に非常事態規定がないことによる問題は生じていないとの認識を示されたことも極めて大きいというふうに思っております。  国民と社会は、特に混乱を生じておりません。むしろ、行政側が混乱をしたり、あるいは情報公開をしないことによる問題点防災協定が不十分であったり、原発安全神話にのっとってきちっと対応してこなかったことが国民への被害を大きくさせたと思っております。  この中で、高見参考人が、参議院緊急集会、政令による罰則規定の制定過程から見れば、憲法において災害緊急事態織り込み済み発言をされたことも大きいというふうに思っております。  今こそ国家緊急権をということについて、二点申し上げます。  一点目は、私は高見教授の発言が非常に有益でした。これは、ちょっと長くなりますが、議事録から引用します。  「緊急事態宣言の下における法律に代わる政令の狙いが平常時では加えることのできない憲法上の基本的人権の制限にあることは、国家緊急権の定義からして明らかであります。とりわけ自民案の場合に、既に公共の福祉というこれまで憲法が用いてきた人権制限の限界を画する概念を破棄しておりますので、新たに導入された公益及び公の秩序という概念がどの程度国民権利、自由の制限の限界を指示する概念として機能するかは判例の集積を待って判断するほかありません。」、「民刑事上の公序、公益の概念がそのまま憲法上の人権制約の根拠に抜てきされたことで人権保障のハードルが顕著に低下するであろうということであります。したがって、平常時において既にその保障のハードルの低下している人権について、更に緊急事態宣言によって人権条項を停止し、政令によって無限の制限を加えるというのでありますから、ここではもはや評すべき言葉はありません。」。  二点目は、大日本帝国憲法下において、緊急勅令、戒厳大権、非常大権、財政緊急勅令という四つの国家緊急権が認められておりました。大津事件でもこの緊急勅令がされ、表現の自由が制限されております。また、大きいことは、関東大震災において戒厳令がしかれました。そのことについては、例えば戒厳令適用手続の違法性、朝鮮人大量殺害事件及び社会主義者殺害の誘発など、戒厳令の適用にも学者も批判を強めております。  結局、人権規定を停止、制限することで、このことによる極めて甚大な人権侵害が起きるということがあります。  二点目は、そのことを事後的にどう検証するかです。その緊急事態宣言を合憲か、そして違憲か、何が起きたか、過去に起きたことはもう取り返しが付かないわけですから、未来に向かってどうするか。しかし、その違憲か合憲かという極めて難しい議論をするのは、従来の裁判所では難しく、憲法裁判所などで違憲、合憲をきっちり議論する必要が出てくると。つまり、国家緊急権を導入するという単純な話ではなく、裁判制度も含めた、どう私たちはチェックするのかが必要だと考えております。  このように、今、国家緊急権議論するよりも、憲法価値の実現をこそということをこの憲法審査会議論すべきであり、まだ始まったばかりで、三つのあるいは二つの小委員会を設けて個別のテーマをやることについては社民党は反対をいたします。  以上です。
  16. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、改革、舛添要一君。
  17. 舛添要一

    ○舛添要一君 結論的に申し上げますと、もう少しこのテーマについて議論を深めたいということで、それは小委員会を設ける設けないということを超えて、是非もう少し議論を進めたいと思っております。  まず、国家緊急権、これは戦争のような場合にも自然災害の場合にもそうですけれども、何のためにこういう緊急権とか緊急事態規定するのかと。それは日本国民の生命と財産を守るということに尽きると思います。そのときに、これまでの憲法学上の議論だと、公共の福祉ということと基本的人権とのバランスの問題であったわけですから、それを超えてどうするのかと。  参考人の中にも、優先順位として生命、次が自由、次が幸福追求というような順番を挙げられた方がおられますけれども、この点について、今のこの二十一世紀の現代民主主義においてどういうところのバランスを取るのかというのが非常に問題になってくるというふうに思っております。  仮に戒厳令という、これはフランスなんかから始まりましたけれども、戒厳令というものを規定した場合に戒厳司令官を置かないといけません。じゃ、戒厳司令官というのは軍人なのか文民なのかという話になり得たときに、基本的に戒厳司令官というのは歴史的な経緯を言うと軍人であるべきであります。そのときに、日本国憲法上の文民統制ということとどういうふうに関連してくるのか。  それから、自衛隊の最高司令官はこれは内閣総理大臣であります。そして、その指示を受けて防衛大臣が具体的な指揮命令をやるわけですけれども、その総理大臣や防衛大臣の資質を超えたところで制度上どう規定するのかということもきちんと議論をしないといけないと思いますので、是非これは、過去の戒厳令、戒厳司令官、そういうものについて、歴史的経過を含めて少し専門家の意見聴取しながら検討してみたいというふうに申し上げたいと思います。  それから、緊急事態において取られました政令、昔でいえば勅令、緊急勅令のようなものについての違憲立法審査権の問題があります。  これは、要するに、立法府、国権の最高機関である我々国会、この立法権を侵害してまでやるものでありますので、事後的にこれを承認するかどうかというのは第一義的には立法府の仕事になると思いますけれども、そこのところで、じゃ、三権分立の中で司法の権限はどうするのかと。違憲立法審査権についての議論も、これもきちんとやらないといけません。一般的、抽象的な違憲立法審査なのか、個別的、具体的なのかということから始めまして、フランスのような憲法院のようなものを設けるのか設けないのか、こういうこととの絡みについてももう少し議論を深めたいというふうに思っております。  それと、今回は大震災に際してということでの議論でありましたけれども、内乱であるとかテロであるとか戦争であるとか、こういうときにどうするのかということは、先ほど具体的に戒厳令、戒厳司令官の話を出しましたけれども、少しやはり諸外国そして歴史上の検討をしたいというふうに思いますので、これは皆さんでお諮りいただいた上で、今後とも今言ったような点についての議論を深める形で国民の負託にこたえたいと思います。  以上です。ありがとうございました。
  18. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 各会派を一巡いたしましたので、以降、氏名標を立てられた方を指名してまいりたいと存じます。御発言が終わりましたら、氏名標を横にお戻しください。  それでは、今野東君。
  19. 今野東

    ○今野東君 ありがとうございます。今野でございます。  地震国の憲法として、国民の生命、財産を守るために大災害時に必要な権限の臨時的集中の仕組みというのは厳格な要件の下で議論をしなければならないとは思います。その議論の上で、足らざるところは法律の整備をあるいはしなければならないかもしれませんが、憲法に非常事態条項を盛り込むべきだという結論を導くのは、五月十六日の高見参考人指摘にもありました、参議院緊急集会憲法において災害緊急事態織り込み済みという意見からも分かるように、大震災を考えるときの便乗的論理ではないかと思います。  さて、この間、イギリスのBBC放送が読売新聞など世界の二十二か国で共同実施した世論調査の結果が五月十一日の読売新聞に載っておりました。世界に良い影響を与えている国はどこかという設問に対して、日本は五八%で世界のトップでありました。ドイツが二位で五六%、カナダが三位で五三%と続いています。昨年三月十一日の大震災福島原発事故を起こした後の日本へのこうした世界的な認識を大変有り難く思うとともに、私たちは憲法を論議する際にこうした世界の人々の認識を自覚する必要があるのではないかと思います。  この調査の一位と二位の日本とドイツは第二次大戦の敗戦国であります。  ドイツは、ナチス時代のドイツ企業による強制労働について、記憶・責任・未来財団をつくって謝罪と補償を実現しました。基金の総額は百億マルク、およそ五千四百億円でありますが、政府と企業が五十億マルクずつ拠出しています。企業の負担については、ドイツ全体の責任として戦後設立されたIT企業なども負担の対象になっています。ドイツのワイツゼッカー元大統領は、かつてポーランドに対して過去を謝罪した理由について、単なる倫理的要請ではなく、我々の国益なのだとも言っています。こうした指導者の姿勢こそ良い影響をもたらしているのではないかと思います。  日本も、憲法九条や非核三原則、武器輸出禁止などが良い影響の根底にあるのではないかと思います。世界の中で、とりわけ東アジアの中で日本憲法に盛り込まれた究極の平和への理念がどう評価されているか知る必要があるのではないかと思います。  震災後の憲法論議は、大きな歴史の流れを私たちがしっかりと把握し、世界に定着しているプラスの認識を伸ばしていく方向でのものであるべきだと私は考えております。
  20. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次、藤井孝男君。
  21. 藤井孝男

    ○藤井孝男君 審査会長、ありがとうございます。  私は、たちあがれ日本の藤井孝男でございますが、自由民主党と統一会派を組んでおりますけれども、たちあがれ日本として東日本大震災憲法について基本的な我が党の考え方を述べたいと思います。  我が党は、東日本大震災のような大規模災害に適切に対応するためにも、憲法緊急事態規定を新設すべきだという考えであります。また、昨年の東日本大震災への対応について現在国会でもいろいろ議論になっているところでありますけれども、国会では総理大臣個人の資質も問題になってきておりますけれども、ここでは総理大臣の資質を云々するよりも法令上の問題点指摘したいと思っております。  大きく分けまして三つの問題点があると思います。  第一に、東日本大震災という国家緊急事態に対して、総理大臣の下、情報収集、分析、対応方針の決定、発信という情報の一元化ができていなかったということであります。  危機管理の活動は首相官邸の一貫した指揮と統制の下に機能的に統合されている必要がありますが、現在の政府連絡本部は各省庁の出先機関ということでしかなく、総合調整の機能からは程遠い状況ではないかと思っております。原発事故等々ありましたけれども、そういった大きな災害等々について、こういった問題について、政府として、官邸といたしましても、財政あるいは経済、交通、計画停電、物資調達など、国民生活や危機管理の問題を首相権限の下で全般的な統制ができておりませんと政府連絡本部は有効に機能しません。実際に機能しなかったと思います。  第二番目といたしましては、原発事故という国家緊急事態に対する責任の在り方であります。  東京電力が当事者でありますから大きな責任を持つことは当然のことでありますけれども、しかし一方で、我が国のエネルギー政策の一環として、原発事故が発生する前までは、特に将来のいわゆる電力需給、供給と申しましょうか依存度に対して、CO2削減あるいは環境対策として原発による供給を五〇%を超えるということを国としても政府としても基本方針として掲げてきたわけでありますから、今般の原発事故に対するやはり第一義的責任は国が取るという、そういったことをもっとはっきりと言うべきではなかったかと思っております。  第三に、地震原子力発電所事故という複合災害に対して、災害対策基本法そしてまた原子力災害特別措置法、いわゆる内閣府と経済産業省、に基づいて二つの対策本部が設置され、相互の調整が不十分であったんではないかと思います。  そもそも、様々な緊急事態対応を平素から検討し、訓練を実施する恒常的な組織が残念ながら政府には存在しておりません。現在は、緊急事態があるたびに各省庁の寄り合いによる対策本部が設置される仕組みとなっています。やはり平素から様々な緊急事態を想定し、訓練し、体制を整えていくことこそ緊急事態に即応することができると思います。その意味で、現在の政府の体制では緊急事態の十分な対策が取れない状況になると言っていいと思います。  では、なぜ緊急事態対応が不十分なままなのか。その背景には、現行憲法緊急事態に関する規定が欠落していると言わざるを得ません。  憲法第五十四条には衆議院解散中の参議院緊急集会規定がありますが、これはあくまでも緊急事態において参議院緊急集会を開催することができるだけで、政府による緊急事態対応を根拠付ける条文とは言えないと思います。このように、緊急事態規定がないという憲法欠陥があったため、緊急事態に関する法整備も進んでまいりませんでした。  時間が参りましたのでこれより先は結論を申し上げますけれども、歴史的に見まして、大規模な事件や災害が起きるたびに個別の緊急事態対応する法律が整備されてきておりましたが、緊急事態に対する総合的な基本法は残念ながらいまだに制定されておりません。つまり、有事法制等については、平成十五年、十六年に法整備がなされましたけれども、そのときにたしか、自由民主党、民主党あるいは公明三党におきましては、平成十六年、緊急事態に対する対応整備する緊急事態基本法が合意されておりますが、これが残念ながら現在放置されたままであります。  そういったことを考えますと、やはりたちあがれ日本としては、現行憲法緊急事態規定を新設すべきだと考え、今後とも、是非ともこの平成十六年の与野党が合意したことに基づいて緊急事態基本法を早急に制定すべきだと考えております。  ありがとうございました。
  22. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次、西田昌司君。
  23. 西田昌司

    西田昌司君 自民党西田でございます。  今、藤井先生から御指摘あったところと随分私も重なる部分があるんですけれども、まず、この緊急事態、今回の大震災を契機にそのことについて条項を設けるべきだという意見あるんですけれども、私は、今回の地震につきましては、そもそも、その条項がないからどうこうという以前に、先ほど御指摘ありましたように、要するに政府自体が当事者能力がなかったと。特に、あの事故調なんかでその様子のことが少しずつ明らかになっておりますけれども、要するに、事故が起きて、それに対してありとあらゆる情報を集めてありとあらゆることをしなければならないという、その意識が欠落している、幾ら法整備をいたしましても結局は何にもならないと。やっぱりここは、政権担当者がまず自分たちの使命をしっかり自覚した政権運営をしていただかないと、法整備以前の私は問題が今回の震災ではたくさん反省として出てくるのではないかと思っております。  では、その上で、じゃ法整備はしなくてもいいのかというと、やっぱりこれはすべきであって、というよりも、元々この日本国憲法にはそういった緊急事態、非常事態の想定がなかった。というのは、元々このできたとき自身が、日本が占領されて事実上主権を失っていて、治めているのはGHQと。だから、もしも大震災、大災害、それから有事の、戦争のようなことがあっても、それを直接的に指揮していくのはGHQであるという大前提の下に作られているわけでありまして、そのことは憲法の前文を読んでも明らかなわけであります、九条もしかりでありますが。そういうことでありますから、特にこれから緊急事態、非常事態についての法整備はすべきだと思います。  この中でよく引き合いに出されました高見参考人からの、参議院緊急集会規定がそういう非常事態を想定しているんだと言われるんですけれども、私はこれはそうじゃないと思います。これは、要するに、非常事態を想定しているということは何かというと、憲法自体が、様々なその憲法の下に置かれている法律自体が緊急事態においては停止される、行政権がそれを優越してこの緊急事態対応するというのが緊急事態に備えるという意味でありますから、この参議院緊急集会があるからといってそのことが保障される仕組みにはなっていないんですね。ですから、まず、そのことも含め我々自身緊急事態について考えなきゃならないと思っています。  問題は、一部の委員の間から指摘されていますように、憲法精神を生かしていくとか憲法は想定しているんだという話ありますが、要は、そういう言葉に縛られてしまって憲法が書いてないことを想定しない又は議論しない、タブーとしてきたという風潮がこの五十年やっぱり続いてきたわけですから、我々がしなければならないのは、元々憲法に国の形を合わすんじゃないんですよ。我々の持っている価値観、国柄、国の形というものが本来憲法であった。しかし、それが占領中に我々のそういう価値観とは別のところで作られ、そしてそれが、主権を喪失しているときに、この緊急事態も含め占領軍が全てを牛耳るという大前提の中でつくられた価値観や法律の仕組みの上に今あるということ自体をもう一度我々はここで議論をしていくべきだと。  そういう意味で、何度も言っていますけれども、私自身は、憲法自体は手続的にも内容的にも憲法とはふさわしいものとは思えないと思いますけれども、そういうことを含めて、やっぱり国民共通認識を持っていくための議論をこの審査会を通じてこれからもしていきたいと思います。
  24. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、西田実仁君。
  25. 西田実仁

    西田実仁君 御指名ありがとうございます。公明党の西田実仁でございます。  今回のこの東日本大震災憲法議論で明らかになったことについて私なりにまとめさせていただきますと、大震災統治機構が機能不全となり、人権保障上の重大な問題が生じたことは明らかであります。参考人として出席をいただきました福島双葉町の井戸川町長は、憲法十三条、幸福追求権が妨げられている、また二十五条、生存権も妨げられているとして、自分たちは棄民か、基本的人権が損なわれていると、そのように切々と訴えておられました。私の地元の埼玉にも今も双葉町の皆様方がおられまして、そのことは目の当たりにしているところでもございます。  今後、予想される様々な非常事態に向けまして体制整備が不可欠であり、人権保障のための統治機構の在り方についてより踏み込んだ議論が必要であるというふうに私も思います。ただし、非常事態において、居住移転の自由や営業の自由等一定範囲の人権の制限が必要となる場合もあり得るが、その場合も国民の生存を確保するという、やはり国民人権を守るということを目的とすべきであると考えます。  その意味から、棟居参考人が言われました生命、自由、幸福追求という価値序列に従った比例原則という考え方は非常に参考となる御意見であったと私は思っております。すなわち、非常事態におきましては、国は生命を守るという最上級の人権を守るために、国家はその他の人権を今の価値序列に従って制限をするということに整理されるのではないかと思われます。  非常時における人権の制限というものは、あくまでも国民の生存を確保するという国民の最上級の人権を守るためという目的こそが大事であり、それとは無関係国家の利益を守るためでないということは確認をしておきたいと思います。つまり、国民主権の原理に立つのであれば、国民の利益と無関係国家の利益というのはあり得ず、人権制限の根拠もやはり人権保障に求める以外にはないのではないかと思われます。非常時においてこそ国民主権の徹底が必要であり、そうでなければ内容不明な国家の利益を守ることを理由に強権が発動され、広範な人権制限が行われる危険が生じてしまうのではないかと思われます。  なお、国家緊急権につきましては、なぜ国家なのか、緊急とはどのような事態なのか、またそれが権利なのか、誰が助かるのか等々について更に議論を深める必要があるのではないかというふうに思われます。また、そうした権利国家に認める際には、事後的に立法府による行政監視機能をより強めていく必要があると考えております。現行憲法六十六条、また七十三条、これから更に踏み込んで、内閣は法律を誠実に執行しなければならないという義務規定や、あるいは、国会は内閣による法律の執行の状況を常時監視しなければならないといった立法府による行政監視という機能をより強めていくといった議論憲法規定する必要があるのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  26. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、佐藤正久君。
  27. 佐藤正久

    佐藤正久君 ありがとうございます。自民党佐藤正久です。  今回は、震災と非常事態条項議論しておりますけれども、本来、我々にとって一番大事なのは、やっぱり国の独立時において独立をいかに確保するかという観点からもこの緊急事態条項議論しないといけない。その延長線上に私は大規模災害があると思っています。  先ほど西田先生が言われたように、諸国民の公正と信義に信頼して我々の安全と生存、命までを確保すると決めたと。この前の北朝鮮のミサイル発射対応を見ても、北朝鮮に我々の命まで、生存まで預けることはできない。そういうときに、中央政府が場合によっては個人の権利人権、特に一番には、生存権確保するためにはある程度の強制力を発揮しないといけないし、ましてや中央政府は国の独立を守るために地方政府権限まで抑えないといけないということも考えないといけないと私は思っています。そのために、この緊急事態条項が私は必要だと思っています。  その延長線において、今回の震災対応でも時の政権は、生存権というものを余り考えずに、どちらかというと個人の自由とかそういう部分に重きを置いたために、今回、災害対策基本法の百五条、これを適用しなかったと。実際、私がなぜ今回みたいな事態において緊急事態条項災害緊急事態を公布しないんですかと言ったら、まさに政府答弁は、個人の権利を抑えるようなそんな恐ろしいことはできませんというのが答弁でした。  では、今やらなくていつやるんだという部分、どちらかというと、昨日おととい大丈夫だったから明日あさっても大丈夫だという発想で我々はずっと来ているような気がするんですよね。立法府にとって大事なことは、最悪のケースに備えつつ最善を目指さないといけない。最悪のケースについていろいろと憲法から法律というのを考えていかないといけないのに、その部分がどちらかというと憂いなければ備えなし状態になっている。最悪のケースを備えないといけないのに、そこの部分が議論ですぽっと落ちている。考えもしない、議論もしていないという部分でずっと来ているような気がします。  結果的に、災害緊急事態を公布しなかったために、大事な生存権という観点でいえば、自衛隊、警察、消防が人命救助をやっているときにナンバープレートが付いた車は動かすことができませんでした。これは動かしていいという政令が出たのは三月二十六日、二週間たってからですから。これが、速やかにそういう災害緊急事態を出しておけば、そういう政令はもっと速やかにできたかもしれない。その背中の後押しをするのがやっぱり憲法における緊急事態条項だと私は思っています。  実際に、燃料が非常に東北の人、足らなかった。寒くて病院も大変だというときに、経済産業省がタンクローリー等を調達しました。だけど、途中から行かないんですよ、特に原発地域、怖いからと。原発周辺地域にいっぱい自治体があります、そこにも行かなかった。これはもう命令ができないんですよ、個人の権利があるから。でも、実際はそれによって病院等が寒くて非常に大変だった。  大事な生存権というものを災害事態においてもどこまで真剣に考えるか、そういう面でも、国家の非常時からとんとんとんとんと落としていくように、この条項をしっかり置いておくということが私は絶対大事だというふうに思います。  以上です。
  28. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、川口順子君。
  29. 川口順子

    ○川口順子君 ありがとうございます。  今回、災害憲法というテーマで、人権統治機構緊急事態にどう対応するかということについて非常に活発な議論が行われたということは、憲法審査会のスタートとして大変に私は喜ぶべきことであったというふうに思います。非常に皆様が熱心にやっていただいたことについて、自民党の筆頭幹事として大変に有り難く存じております。  いろいろな議論がありますが、今議論は緊急権について少し集中した感じもしますが、私も緊急権について一言思うことを申し上げたいと思います。  今までの議論の中で、憲法震災ということを考えたときに憲法改正は必要ないと思われるという発言が何人かの方からございました。本当にそうだろうかということを申し上げたいと思います。たまたま、大変な災害でありましたけれども、今回の災害はまあこういう状況でございますけれども、本来もっと問題であることが起こり得たということを私たちは肝に銘じなければいけない、そのときにどう対応するかということを考えておくべきであろうと思います。  今、佐藤議員が現状肯定ということでやっていくというのが日本人の今まで性格としてあったというふうにおっしゃいましたけれども、今回の災害から学ばなければいけないことは、私は、最悪の事態を考えて、それに更にどういう準備をするかということであると思っております。本当に憲法改正、緊急権を明定するということがなくてできたかどうか。  例えば、放射性物質に汚染された瓦れきのお話がありました。これを見る法律がないということは私が予算委員会で指摘をさせていただきましたけれども、この法律を作るまでにどれぐらいの時間が掛かったことか。それから、汚染されていない普通の瓦れき、この瓦れきの処理をするのに、これも国が直接にやるということができるようになるまで、国の代行権は特別立法を作らなければできなかった。これまでにも延々と時間が掛かっています。緊急権が仮に憲法に制定されていたとしたらば、これはもっと早くできたはずであるというふうに私は思っております。  それから、舛添委員もおっしゃいましたけれども、テロ、災害以外にもたくさんのことが起こり得る、これへの対応というのも十分かどうかということも考えておかなければいけないと思います。  報道で出てきている話に、政府は首都圏三千万人の避難が必要になるかもしれないという状況を考えた、心配をしたということがございました。三千万人の避難をするようなことが必要になったとしたらば、それに際して人権制約をしなければならないような事態は起こり得たと私は思っています。また、セメント、コンクリートを緊急に調達をしなければいけない可能性を考え、どうしたら調達をしたらいいかということを考えたという話も当時の内閣の関係者から私は直接に聞きましたけれども、これも、今までの普通の日本人が持っている人権あるいは財産権、そういったものを制約しなければいけない可能性というのも私はあったと思います。  反対をする議論に平和憲法との関連の話というのがございます。また、人権制約し過ぎるという議論もございました。今の民主主義の成熟度からいって、そしてITの進捗状況が非常に進んだ国に日本はなっている、あるいは国際的な世論がある、そういうような当時との変化を考えたときに、私は、緊急事態憲法に明定することの問題点、これはきちんと考えなければいけませんが、それはそれで相当に前と違う状況に今あるということを認識しなければいけないし、我々は日本の民主主義の成熟度をきちんと踏まえて議論をすべきであろうというふうに思います。  調査会でもこの点についてはいろんな議論がございました。これから詰めなければいけない問題点というのが緊急権についてもたくさんありますし、統治機構についても人権についてもあります。私は、特に緊急権に関心を持っておりますが、この調査会の報告平成十七年の報告にも言われたような様々な問題点、これを今問題点として野放しにしておいたままにしたら、我々は今度の震災で亡くなられた方に大変に申し訳ないと思わざるを得ないと、そういうふうに申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  30. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、礒崎陽輔君
  31. 礒崎陽輔

    礒崎陽輔君 二回目ありがとうございます。  先ほどはちょっと一般論を申し上げましたので、今の緊急事態の各論を少し申し述べたいと思います。  まず、昨年の東日本大震災のときに国民保護法の適用ができたらよかったねという話を自後よく聞きます。なぜ国民保護法の適用があったらよかったかというと、菅前総理が、災害対策本部と原子力災害対策本部、二つの本部があって大変だったという答弁を国会でもよく答弁していたんですけれども、例えば国民保護法であれば、武力攻撃事態対処本部で一本化しております。原子力災害が起きても武力攻撃事態対処本部が一緒に対処する、そういう形になっています。  それから、今回はかなり広範な避難をしていただきました。都道府県の区域を越える避難も含め、広域避難は国民保護法の方にきちんと書かれております。そのほか、廃棄物処理法の特例であるとか墓地埋葬法の特例とか、全部国民保護法には入っているわけでありまして、ちなみに申し上げれば文化財保護法の特例まで入っておりまして、本当にこれは、これは憲法というより法律でもできることでありますけれども、国民保護法を災害にも適用するということを考えてもいいんではないかと私思います。そういうことを総合的にやるためにも、憲法上の根拠を置くというのが一点であります。  それから、緊急政令について何回も御議論があっております。これも前回申し上げましたけれども、現行法制の中に、災害対策基本法の中に一件、国民保護法の中に二件、既にあります。現行法制にあるから憲法改正しないでいいじゃないかという御意見ももちろんあるでしょうけれども、これも憲法規定があった方がいいことは言うまでもありません。  先ほど治安維持法の話も出ましたけれども、そんな怖いものではありませんで、現在ある緊急政令は、一つはモラトリアムであります。いわゆる支払停止ですね。すぐにお金がなくて困るだろうから支払しなくてもいいよというモラトリアムの規定と、もう一つは、外国からの救援の受入れということで、多分これ通関の特例、すぐに物を入れてもいいよというような特例を決めるようなことでありまして、決してそんな怖いことを緊急政令で決めているわけじゃないわけであります。  そして、なぜ憲法上の規定が必要かということは、一点は、先ほどの国民保護法とも関係あるわけでありますけれども、国民保護法を作るときに国民へいろいろお願いしなきゃならぬことがある、それを全てやはり現行憲法では国民の協力としか規定できなかったわけです。これではなかなか国民生存権が守れない。やはり国民に少し嫌でも言うことを聞いてもらわなきゃならない場合がある、それをやっぱりきちっと書き込まなきゃならない。今の現行憲法下では国民の協力としか書けなかったところに憲法の限界があると、それは現実の問題であります。そしてまた、裏からいえば、私はそんなに人権制限があるとは考えないのでありますが、そのことをきちっと憲法上も、そういう緊急事態であっても人権の制限は最小限にすべきだということもきちんと書き込む、それも憲法上必要であろうということがあります。  したがって、その意味で、やっぱり国民に対して一定の指示ができるということ、それで、それについては人権の制限は極力小さなものにすると、そういう意味でも憲法規定が必要であると思います。  それで、どうしても憲法改正してもらわなきゃならぬ理由は一つあります。それは、国会議員の任期の延長であります。昨年は統一地方選挙に当たりましたから、地震後、地方議員の任期を延長して、選挙を延期したのは皆さん御承知のとおりでございます。国会議員の任期や選挙は、これは憲法に書いていますから、これは法律で延長することはできません。この一事で、もし例えば去年の衆議院議員の任期あるいは参議院議員の任期が三月や四月にあったら、大変なことに私はなっていたと思います。これはもう法律では絶対できないわけでありまして、憲法改正が必要な大きな私は理由であると思います。  以上が、幾つか申し上げましたけれども、緊急事態法制が必要な理由でございます。  これについて、戒厳令の研究もしたらどうかという御意見がありました。その研究をなさることは私は否定しませんが、私は全くそのようなものとは考えておりません。緊急事態の宣言というのは、あくまで緊急事態の何ができるかということもきちんと全部憲法に書き込み、その細かいことは全部法律の留保、法律の委任をして書くわけでございまして、何か緊急事態法制というと怖いことをするものだという頭で考え出すと、これは大変なことになります。決してそんなことを考えるのでなくて、あくまで先ほど言いました基本的人権の尊重を根本、根底に置きながら、緊急時の幾つかの特例を書く、それが私は緊急事態法制であると思いますので、是非そういう検討をお願いをいたしたいと思います。  以上です。
  32. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次、足立信也君。
  33. 足立信也

    ○足立信也君 民主党の足立信也でございます。  私もまずは国家緊急権のことから触れたいと思いますが、先ほど立憲主義の一時停止、これが必要であるかどうかという話になるんだろうと思っておりまして、やはり個別法の整理の中、あるいはその個別法を整理する中で、今項目を礒崎さん挙げられましたけれども、どの部分が憲法として必要欠くべからざる部分になってくるのかという議論が必要なのではなかろうかと、私自身はそのように思っております。  東日本大震災憲法というテーマでしたので、私なりに非常に大きな教訓を得たことを申し上げて問題提起をしたいと思っております。それは、今回の大震災で、個人の健康情報、あるいはそれを利用する、あるいは保存がうまくいっていない等々で個人の特定すらできなかった事態が非常にありました。それから、その人が必要としている介護やあるいは障害のサービスの必要性すら一切分からなくなっていた。これはまさに国民の生命に関することで、この点の問題点は非常な教訓として私はあったんだろうと思います。  そんな中で、個人情報保護法問題点については西條先生がちょっとだけ触れられました。私、今この事態で、個人情報保護法オバケというような感じになっていると思っておりまして、例えばそういう健康情報の共有とかに関しても、まず機関が手挙げ方式、そしてその中でも人も手挙げ方式というふうになっているわけでございまして、これは、個人情報保護の本来の法の趣旨からはその利用目的に沿った利用の仕方であれば何ら問題ないわけでございますから、ちょっと過剰反応になっているんではなかろうかと、そういう意識を持っております。  例を挙げますと、この国の二人に一人はがんになる時代ですけれども、このがんの成績というのは、一九九九年から数年間の僅か六つの県の統計でしかないわけですね。ナショナルデータとしては一切ない。  もう一つ挙げますと、先進国の中で結核に対するBCGの予防接種は日本が最もよくやっておりますが、先進国の中で結核の発症は最も多い。一体これは何なのかというようなことは、これは情報としてしっかり国が把握できる環境にしていないといけないことだと思います。  そこで、幹事の皆さんに提案としてお願いしたいんですが、個人情報保護というもののとらえ方が、国民の皆さん、それからまた議員によってかなり私は差があると思っておりますので、この東日本大震災憲法並びにその周辺の法ということに関連して、個人情報保護法についての検討もされたらいかがかなと、そういう提案をしたいと思います。  以上です。
  34. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次、片山さつき君。
  35. 片山さつき

    片山さつき君 ありがとうございます。  私は、今回の原発事故、それから将来起きるかもしれない原発テロや原発攻撃ということを考えますと、今回の緊急事態と大災害というものの中でもこれは特別なのではないかと考えて発言させていただきます。  震災発災以来、三十八回私は現地に入りました。福島は十回行ってないと思いますが。そういった中で、実際に担当者から見聞きしたこういう話がございます。担当者から直接聞きました。  原発の再爆発、爆発が起きるかもしれないと、もう事実上はメルトダウンをしているから、とにかく一日、二日の間で二万人なりの住民を二十キロ圏内から逃さなければいけないという状態があったはずです。当時の政府が民間バス会社にお願いしてバスを全部事実上使わせていただいて、ピストンで輸送したはずですよ。そのピストン輸送が、ガソリンが途中で足りなくなったんですね。そのときに、政府に幾らお願いをしても国民保護法等の事態を認定してくれず、政府が徴集するということをしてくれなかったんで、その民間複数企業は何をやったかというと、自分たちのコネで必死に集めて、たまたまうまく集まったのでバスが全部運べたという事実があります。  ほかにもそれに類するようなことはございましたが、今お話を伺っていると、責任ある現与党の方が緊急事態的なものに必ずしも前向きでない御発言があるんですが、それは、こういう事象、事態が現実にどう動いたかが分かった上でおっしゃっているんですか。これでまた起きたら、また一緒ですよ。  ですから、そういったことも含めて、私は憲法自民党案の起草委員の一人でもありますが、これが憲法規定されるということの意義は、今、礒崎議員からも発言があったように、最上位の法律において財産権なりその他の人権をある程度こういうときには制限しても、最大多数の方が助かるように、動くように、機能するようにしなければ全く意味がないわけですね。そのための緊急事態の条文ではないかというふうに考えております。  これから、南海トラフ巨大地震ですとか首都直下型地震の想定が政府により出され、考えられないぐらい深刻なものになっておりますが、これは起こり得る事態がもう政府として予測され、そこからたくさんの人を助けようと思ったら、避難経路の早期確保が非常に重要ですし、あるいは、こういう場所には恒常的に人が住まない、立ち入らないというようなエリア形成も必要です。私も長いこと行政をやっておりましたが、国、地方どちらのレベルにしても、このことが恐らく最大のネックになります。結局、土地を収用するとか移動していただくとか、道路を開けるとか避難路を開けるとか、これが確保できなければ、いかなる大震災防止も絵にかいたもちで、全く人が助かるようになりません。そのためには、この財産権侵害の最たるものである収用のようなものがほとんどできていないこの国では、憲法のところから規定しないと、実際、その下の法律でやっても動くとは思えません。  そういった意味でも、現実我が国震災に対する危機対応ができる国であるためには、必ずこういった条文の整備が必要と考えております。  以上です。
  36. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次、藤井孝男君。
  37. 藤井孝男

    ○藤井孝男君 二度目の御指名ありがとうございます。先ほど時間的制約がありましたので、言葉足らずの点がありましたので補足をさせていただきたいと思います。  憲法上、緊急事態規定がないという欠陥があったために緊急事態に対する法整備が進んでこなかったというふうに述べましたけれども、戦後の法整備の動向を振り返りますと、昭和三十四年の伊勢湾台風を受けて災害対策基本法が制定され、また昭和四十五年にハイジャック事件が起こってハイジャックに対する方針が策定され、また平成七年の阪神・淡路大震災を受けて災害対策本部が設置できるようになったわけであります。さらには、平成七年の地下鉄サリン事件が発生して官邸に二十四時間体制で情報を収集する体制が構築され、平成十一年の東海村ウラン事故を受けて原子力災害対策特別措置法が制定されました。  このように、大規模な事件や災害が起こるたびに個別の緊急事態に対する法律が整備されてきたわけですが、緊急事態に対する総合的な基本法は残念ながらいまだに制定されていません。  実は、有事関連といいましょうか、平成十五年、十六年には有事関連七法というのが整備されました。その際、自民、民主、公明三党が平成十六年五月二十日、緊急事態対応する体制を構築する目的で緊急事態基本法(仮称)の制定の必要性について合意いたしましたが、この基本法は制定はできませんで、残念ながら与野党の対立の中で放置されたままであります。もしこの緊急事態基本法が制定されていれば、さきの東日本大震災への対応はもっと良いものになったのではないかと考えます。我々は真摯に反省すべきだと思っております。  たちあがれ日本といたしましては、現行憲法緊急事態規定を新設すべきだと考えております。今年四月二十五日に公表した自主憲法大綱案でも非常事態条項を設けました。しかし、憲法改正には与野党の合意、国民投票の実施などが必要であり、時間が掛かります。よって、まずは平成十六年の与野党が合意した、三党が合意した緊急事態基本法を軸とした基本法を制定すべきだということで、あらゆる事態に対応できる恒常的な組織を、組織的な法整備整備していくべきだと考えております。  以上でございます。ありがとうございました。
  38. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、福島みずほ君。
  39. 福島みずほ

    福島みずほ君 二度目の御指名本当にありがとうございます。発言をしたくなりましたので、ありがとうございます。  東日本大震災対応において、憲法に非常事態規定がないことによる問題は生じていないとの認識を大石参考人は述べられました。そのとおりだと思います。行政の迅速性、そのことや、あるいは防災についての日ごろからの心構えや準備や、そういうことについては山ほど行政、国会反省しなければならない。しかし、憲法に非常事態規定がなかったからうまくいかなかったことなど誰も話してはいないというふうに思っております。  この国家緊急権、非常事態規定は極めて重いと思います。それは二つの点でです。  基本的人権の制限、停止が、それはできる、これは基本的人権が非常事態という名目で停止ができるということが大きなポイントです。そのことによって人権侵害が極めて起きるかもしれない。戦前、日本は、戒厳令、国家緊急権、作動しましたし、作動できました。そのことによって基本的人権が制限されたり廃止されたりしたことの問題点というのも、私たちは歴史の中から学ぶべきだと思っております。  二点目は、国家緊急権緊急事態というのは行政権が緊急という名の下に行えるわけで、国会立法権の剥奪、立法権、国の最高機関は四十一条で国会です。立法機関の最高位は国会です。しかし、国家緊急権あるいはこの非常事態規定というのは行政が国会を越えてやれるというところがポイントで、国会議員である私たちはそのことが本当にいいのかどうかということが必要だと考えます。  災害に対して予防しなければならない、様々な場合にシミュレーションして考えなければならないということは、それはもちろんのことです。そのことを私たちはやるべきです。しかし、憲法緊急事態規定を置く、そしてそれは細かい規定にはできず、かなり漠とした抽象的な規定でしかあり得ないわけですから、そのことで要するに政府に対して非常に強い剣か何かを渡すようなものであって、入れる必要はないと考えております。
  40. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、井上哲士君。
  41. 井上哲士

    ○井上哲士君 二回目の発言ありがとうございます。  国家緊急権規定がないことで、本当に今回の震災対応に問題がなかったのかという何人かの方から疑問が出され、幾つかの例が出されました。  例えば瓦れき処理の問題ですけれども、これはやはり政府がきちっとした説明を住民に対してできていないというところに一番の問題があるのであって、何か国の一方的な権限で押し付けたときに、一層私は住民との間で混乱が起きて進まないことにしかならないと思います。  それから、法律制定も時間が掛かったということでありますが、これも国会責任ではなくて、きちっとした法律の提案をするのに時間が掛かったわけでありまして、これも緊急権とは関係ないと思います。  それから、最悪の事態を想定をしておくべきだと、三千万人の避難も必要だったかもしれないということでありますが、それでは国家緊急権があったら三千万人の避難がスムーズにできたのかという問題でありまして、今回の原発災害にあっても、例えば、実際には事故を想定した訓練は行われておりましたけれども、まあ半日程度自宅を離れて帰るというぐらいの訓練しか行われていなかったわけですね。長期にわたって多くの人々が避難をするようなこと自体を想定をしていなかった、それから備蓄の問題にしてもそうでありますが、それが問題だと思います。そういうことを抜きに、何か政府国家緊急権を与えたらうまくいくかのように考えるのは全くの幻想であるし、むしろそのことを遅らすことを私は恐れます。  それから、国会議員の任期のお話もありました。  私は、参議院緊急集会というのはまさにそういうときのためにあるのであると思っておりまして、衆議院の任期が切れた後にも参議院がある、そして仮にダブル選挙というときにあっても半数は残るということで、三年間は緊急集会を開ける状況がある、その間に選挙はできるということだと思います。やはり国民からの与えられた任期を超えた国会があるということは避けるという考えだと思うんですね。  地方議員の場合は、あれは国会として決めて任期を延ばしました。しかし、国会政府の判断で国会議員の任期を延ばせるという言わば自作自演になるということは、やはり民主主義の正当性からいっても私は避けるべきだと思いますし、こういうことが国家緊急権の理由にはならないんではないかと思います。  以上です。
  42. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次、藤末健三君。
  43. 藤末健三

    ○藤末健三君 会長、御指名ありがとうございます。  私は、先ほど足立委員指摘されました個人の情報保護についてお話しさせていただきたいと思います。  足立委員は、医療、福祉における個人情報保護が行き過ぎていろんな応用を妨げているという御指摘がありまして、私も同様のことを、医療、社会福祉ではなく情報技術、ITの利用についてお話しさせていただきたいと思います。  現在、この国会におきましては税と社会保障共通番号の法案が提出されているわけでございますけれど、この議論を進める中で大きな壁となっておりますのが個人情報保護をどこまで進めるかという話でございます。  今、我が国におきましては、隣の国であります韓国に比べまして政府そして社会一般におけるITの利用が遅れているという状況でございますが、様々なところからお話をお聞きしていますと、個人情報保護をどこまでやればいいかというのが非常に見えにくいところがあり、やはり過剰に規制を掛けてしまい逆にシステムが使いにくくなっているというところがございますので、是非ともこの憲法の枠組みの中で個人情報保護の議論を、社会福祉、医療の分野以外に情報通信といった分野でも見て検討するべきではないかと思っております。  例えば、ITの利用を我が国において進めますと、様々なポイントがあると思っておりますが、一つございますのは、やはりきめ細かい社会保障、そして税制の執行ができるということでございます。ある論文を見ますと、税をきちんと管理できれば五兆円近くの増収になるんではないかという分析もございますし、また、社会福祉とこの税、収入というものを一体的に見ることができれば、例えば年金でも、多額の年金をもらいかつ配当金や家賃収入がある方々は少し年金を減らしてください、一方で、収入もなくそして資産もない方には年金を増やすといったきめ細かい社会福祉ができるようになるということ、これはひいては支出を抑えることにつながると思います。また、政府のいろんな活動の効率化が図れると思いますし、同時に利用者の、我々国民のサービスの向上も図れるということでございますので、個人情報保護というものの議論を是非ともこの情報通信の普及といった観点からも議論することを提案申し上げたいと思います。  以上でございます。
  44. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) それでは、丸山和也君。
  45. 丸山和也

    ○丸山和也君 ありがとうございます。  今日は総括的な意見ということでございますけれども、まず第一に、参考人からのいろんな意見表明もございましたけれども、現在、世界百数十か国、二百か国近くあると思いますけれども、百数十か国つぶさにいろんな憲法規定を調べたところ、いわゆる国家緊急事態に関する規定がないというのはほとんどないという発言がございました。日本とあとはデンマークだったかな、ちょっと記憶が定かでありませんけれども、ほとんどないと。もう皆無なんですよね。ということで、まずこれ一つをもっても、いかに我々の、何もなくても何とかなるという発想がいかに特異なものであるかということなんですよ。だから、まず原則的なことを、国際基準といいますか、考える必要があると思うんですね。  それと、これがなくても何とかなるじゃないか、何とかなったじゃないかというような発想じゃなくて、やっぱりこういう緊急事態を、国家の存在そのものにかかわってくるような緊急事態規定がないということが致命的欠陥であるということをまずこれは考えなきゃいかぬと思うんです。もちろん、そういうことについて、基本的人権とか、立法機能が停止するとか、いろんなことがありますけど、まさにそうせざるを得ないような国家緊急事態を想定すらしていないということでは国家そのものが成り立たないわけですよ、国家を考えること自体がね。  だから、そういう意味で、我々はもっと自然に帰って世界の常識に立って考えるべきだと思います。それが一点。  例えば、今回の原発事故を見ましても、これは収束宣言なんかやっていますけれども、とんでもないことで、例えば四号機の建屋の上の核燃料プール一つを見てくださいよ。これはどうなりますか。今やっといろんな突っかい棒入れたりしながら何とかやっていますけれども、これがもし同じようなあるいはそれに近いような地震が起こったとして、あれが倒壊でもしてごらんなさいよ、これどうなりますか。恐らく三千万人の避難では済まないと思いますよ。東京、関東圏全部が恐らく避難区域になると思いますよ。こういうことが明日起こってもおかしくないような本当に危ない状況がずっと継続しているわけですよ。  しかも、我々は去年三月十一日にこういうことを経験したにもかかわらず、取りあえず収まったということで、緊急事態規定を設けることからもやや非常に原則的な立場に立って後退しかかっているということですね。  私は、例えば四号機にしても広島原爆四千発分ぐらいの放射能があると言われているんですよね。だから、こういう危険な状況にあることを契機に、まさにこれは啓示ですよ、天の、我が国憲法がいかに不完全なものであるかということを啓示しているわけですから、ここは常識に基づいて、国家緊急規定世界の常識ですけれども、こういう規定をやっぱり設けるんだという勇気も必要だと思うんですよね、逆の勇気も。これは決して治安維持法復活とか戦争だとか人権侵害だ、暗黒国家というものじゃなくて、当たり前のことを当たり前の基準で考えるという勇気も必要だと思います。  そういう意味で、緊急規定に関する規定、あるいはこれだけでも憲法改正の中で最優先にしてやるべきだと私は思います。  以上です。
  46. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、前川清成君。
  47. 前川清成

    ○前川清成君 ありがとうございます。  私は、憲法という法が決して不磨の大典ではないと思っています。憲法もやがて七十歳を迎えます。見直すべき点は直ちに見直すべきだと、そういうふうな立場に立っております。  しかしながら、先ほど来の先生方の御議論を聞いておりますと、東日本大震災に無理やりにこじつけて憲法改正をもくろんでしまうのは、むしろ冷静な議論憲法に対する冷静な議論を遠ざけてしまうのではないかなと、そういうふうに思っています。  と申しますのも、例えば先ほど物資の運搬がうまくできないと、それがあたかも憲法二十九条に理由があるんだと、だから財産権制約をしなければならないと、こういうふうな御発言がありましたが、本当にその発言に先立って憲法二十九条の条文を読んでおられるのか、私は大変疑問に思います。と申しますのも、例えば憲法二十九条は、憲法二十九条二項ですが、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と書いてあります。したがいまして、憲法に原因があるのではなくて、もしも緊急事態に即応した個別具体的な法律が必要であれば、この国会個別法を定めることもできます。仮に法律がなかったとしても、憲法二十九条三項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と書いてあります。つまりは、正当な補償と引換えに財産権を一時的に収用することも可能であります。  したがいまして、今様々に指摘されていた議論というのは、むしろ憲法議論ではなくて個別法議論であると。憲法議論個別法議論とはこれは峻別して議論する必要があるのではないかと、私はそう思います。  二番目に、国家緊急権に関して申し上げては、国家緊急権の通説的な理解は、人権保障の全ての保障を一時的に停止することと、立法、行政、司法、その三権を一時的に、その三権分立も一時的に停止をすると、これが通説的な理解であります。ということは、例えばですが、東日本大震災が起こったときに、総理大臣が法律を作って、総理大臣が法律を執行して、そしてその法律について裁判が起こったら総理大臣自らが裁判をすると、このような内容が国家緊急権の分かりやすいイメージであります。そこまでの事態を本当に意図して、イメージして議論されているのか、もう少し私は冷静な議論が必要ではないかということを申し上げたいと思います。  以上です。
  48. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) それでは次、川口順子君。
  49. 川口順子

    ○川口順子君 先ほど瓦れきについて私が申し上げたことにつきまして井上委員から御発言があったので、更にその論点を深めさせていただきたいと思い名札を上げましたけれども、それについて申し上げる前に、私は緊急権について非常に重要だと思って発言をさせていただいております。そういう点で、東日本大震災に無理やりこじつけて議論を申し上げているわけでは全くないということを申し上げておきます。  それで、戻りまして瓦れきの話でございますけれども、私は井上委員発言が、いかに立派なナイフを内閣に緊急権という形で持たせたとしてもそれを使う能力のない内閣であれば意味がないという趣旨であれば、私も全く賛成をいたします。  先ほど私が申し上げた瓦れきの例につきましても、結果的には、問題指摘が予算委員会であって、それについて内閣が対応を取るということがなかったものですから、これは議員立法という形で我々が提起をさせていただき、国会を通したという経緯がございました。その過程で時間が掛かってしまったということですので、緊急権についても、それを使う力というのはもう内閣に依存をするというのはおっしゃるとおりであると思います。ただ、その発言が、時間が掛かってもとにかく対応できたんだから、あるいは瓦れきの処理について国が出るということがかえって混乱をさせるからということで緊急権が必要ないということであれば、私は異なる見解を持っております。時間が掛かったこと自体が非常に問題であります。  それからもう一つ瓦れきの処理についても、市町村が壊滅的状況にあり、県もその他のことで忙殺され余力がない状況で、瓦れきの処理は初めから、国が代行という形であれ国が自らという形であれ、やらなければいけなかった。それを、その法律の規定を待つことなく緊急権の下であればできたはずであるということを申し上げております。  瓦れきの話だけにこだわるつもりはございませんで、例えば今の緊急権、先ほど礒崎委員の方から、議員の任期の延長問題、これはもう憲法を変えざるを得ない話だということが御指摘があって、私もそのとおりだと思いますけれども、更にその点について、その関連のことについて申し上げれば、参議院緊急集会、これができなかったときに一体どうするのか。これは、今回の状況であればこういうことは可能であったわけですけれども、自然災害状況あるいはテロの対応によっては、国会議員が国会に登院をして、仮に衆議院が機能しない、解散中であるとしたらば参議院が登院をして、あるいは衆議院が解散中でなくても衆議院が登院をしてそこで法律を作るということがもうできないような状況というのも、我々は決して今が大丈夫だから大丈夫だという発想ではなくて、何が起こるか分からない、それに備えて国民の生命と財産を守るのだということで考えなければいけない。  テロというのは、平和憲法は我々は守っていきたいと私は思っておりますけれども、平和憲法があっても、テロ、それ自体では止めることはできない。テロがあったときには、テロに対応して何ができるか。これは緊急権というのが非常に必要になる。国会が機能しない状況も考えなければいけないという意味で申し上げております。  したがって、いろんな意味でやはり緊急権というのは非常に必要であるというふうに私は考えております。  以上です。
  50. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次、松田公太君。
  51. 松田公太

    ○松田公太君 御指名ありがとうございます。みんなの党の松田公太です。  この国家緊急権につきまして、私の個人的な経験を基にお話をさせていただきたいと思うんですが、大震災が起こった直後、私、あの翌々日に、物資を個人的にかき集めまして、トラックを運転して東北自動車道を使って運びました。その翌日は常磐自動車道、これも使って、また自分でトラックを運転し物資を運びました。それを何回も何回も繰り返しました。  先ほど佐藤さんのお話にありましたが、タンクローリー、一台も走っていませんでした。これだけ寒くてこれだけ凍え死にそうな人たちが多いという中で、石油がないのが問題だ、これが分かっていたにもかかわらず、タンクローリーが一台も走っていなかったんですね。これは私、個人的にとんでもない状況だと思いましたし、後で何が起こったのかを聞いて、もうこれはあり得ないことだな、人の生命が懸かっていることなのにこんな状況だったんだとあきれ果ててしまった次第でございます。  もう一点、これはたしか三月十八日だったと思いますけれども、その日、私は渡辺喜美代表とともに、タケコプターのような小さなヘリコプターを使って物資を運びました。いろいろ、例えばばんそうこうとかそういったものがないんだと、そういう話もあったので、包帯もないという話もありましたから、そのようなものも運んで、食料とともに宮城県に運ぼうと思ったんですけれども、いろいろ問題があって着陸許可が下りなかったんですね。  そのヘリコプター、私が思ったのは、着陸許可が下りなかったとしても、近くまで行って、ヘリコプターの機能を十分に使って、例えば一メーターぐらい、地面から、そこまで物を運んで降ろせばいいじゃないか、それによって物が壊れたり人がけがしたりということは防げるんじゃないか、それをやりましょうという話をしましたら、それは法律上できないんだと言われてしまったわけです。唖然としました。仕方なくそのときは庄内の空港に降りて、そこから車でまた運ぶ、非常に時間の掛かった作業、これをせざるを得なかったわけですけれども。  そのとき私が思ったのは、このような緊急事態において、法律で、例えばそれに反対する、国家緊急権に反対する皆さんのお話を聞いていますと、個別法として作っていけばいいじゃないか、峻別すればいいじゃないかという話がございますが、全てをやはり私、網羅し切ることはできないと思うんですね。だからこそ、この国家緊急権、これをしっかりと憲法の中に置いてこのような緊急事態対応するべきではないかなというふうに思っております。  以上でございます。
  52. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 他に御発言はございませんか。──他に御発言もないようですから、本日の調査はこの程度といたします。  本日はこれをもって散会といたします。    午後二時五十一分散会