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小川国務大臣 刑法等の一部を
改正する
法律案及び
薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の
執行猶予に関する
法律案について、その
趣旨を便宜一括して御
説明いたします。
近年、我が国においては、犯罪をした者のうち再犯者が占める割合が少なくない
状況にあることから、再犯防止のための取り組みが
政府全体の喫緊の課題となっており、効果的かつ具体的な施策を講ずることが求められています。この両
法律案は、犯罪者の再犯防止及び改善更生を図るため、刑の一部の
執行猶予制度を
導入するとともに、保護観察の特別遵守
事項の類型に
社会貢献活動を行うことを加えるなどの法整備を行おうとするものです。
この両
法律案の要点を申し上げます。
第一は、刑の一部の
執行猶予制度の
導入であります。現行の刑法のもとでは、懲役刑または禁錮刑に処する場合、刑期全部の実刑を科すか、刑期全部の執行を
猶予するかの選択肢しかありません。しかし、まず刑のうち
一定期間を執行して施設内処遇を行った上、残りの
期間については執行を
猶予し、相応の
期間、
執行猶予の取り消しによる心理的強制のもとで
社会内において更生を促す
社会内処遇を
実施することが、その者の再犯防止、改善更生のためにより有用である場合があると考えられます。
他方、施設内処遇と
社会内処遇とを連携させる現行の
制度としては、仮釈放の
制度がありますが、その
社会内処遇の
期間は服役した残りの
期間に限られ、全体の刑期が短い場合には保護観察に付することのできる
期間が限定されることから、
社会内処遇の実を十分に上げることができない場合があるのではないかという
指摘がなされているところです。
そこで、刑法を
改正して、いわゆる初入者、すなわち、刑務所に服役したことがない者、あるいは刑務所に服役したことがあっても出所後五年以上経過した者が三年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受ける場合、判決において、その刑の一部の執行を
猶予することができることとし、その
猶予の
期間中、必要に応じて保護観察に付することを可能とすることにより、その者の再犯防止及び改善更生を図ろうとするものです。
また、
薬物使用等の罪を犯す者には、一般に、薬物への親和性が高く、薬物事犯の常習性を有する者が多いと考えられるところ、これらの者の再犯を防ぐためには、刑事施設内において処遇を行うだけでなく、これに引き続き、薬物の誘惑のあり得る
社会内においても十分な
期間その処遇の効果を維持強化する処遇を
実施することがとりわけ有用であると考えられます。
そこで、
薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の
執行猶予に関する
法律を
制定し、
薬物使用等の罪を犯した者については、刑法上の刑の一部
執行猶予の要件である初入者に当たらない者であっても、刑の一部の
執行猶予を言い渡すことができることとするとともに、その
猶予の
期間中必要的に保護観察に付することとし、施設内処遇と
社会内処遇との連携によって再犯防止及び改善更生を促そうとするものです。
この刑の一部の
執行猶予制度は、刑の言い渡しについて新たな選択肢を設けるものであって、犯罪をした者の刑事
責任に見合った量刑を行うことには変わりなく、従来より刑を重くし、あるいは軽くするものではありません。
第二は、保護観察の特別遵守
事項の類型に「善良な
社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上に資する地域
社会の利益の増進に寄与する
社会的活動を
一定の時間行うこと。」、いわゆる
社会貢献活動を行うことを加えるなどの保護観察の充実強化のための法整備であります。保護観察対象者に
社会貢献活動を行わせることにより、善良な
社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上を図ることは、その再犯防止及び改善更生のために有益であると考えられることから、更生保護法を
改正して、
社会貢献活動を義務づけることを可能とするほか、規制薬物等に対する依存がある者に対する保護観察の特則を定めるものです。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、
刑法等の一部を
改正する
法律案及び
薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の
執行猶予に関する
法律案の
趣旨であります。
何とぞ、慎重に御
審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。