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赤松(正)
委員 きょうから
憲法の各
章ごとの
検証が始まることに、私、深い感慨を抱きます。
実は、今から四年ほど前の
特別委員会で採決された、いわゆる
憲法改正手続法によって、実際に
憲法草案が提出されて
議論に供されるまでの間の
準備期間に、私
どもは
二つのことがなされるべきだと考えていました。
一つは、十八歳
投票制あるいは公務員の
政治活動など、残された
課題を詰めること、もう
一つは、
憲法のどこをどう変えるのか、あるいは変えずとも、
法律の適正な
運用、さらには、新たに
法律をつくるといった
対応でいくかどうかといった
検証を進める初めての作業に、少なくとも三年間を当てるということでありました。
不幸なことに、これらは全て放置され、手つかずのまま無為のときを一年も余計に過ごしたことは、まことに残念なことであります。
しかし、ようやくこの
国会で、
衆議院は与野党一致して、片方で
三つの懸案を処理する作業を進めながら、もう片方で、
憲法が今の時点でどのように展開されているかを各章逐条ごとに
検証し、審査する時間を持てることになりました。大変に重要で、得がたいことだと思います。ひとえに、
大畠章宏
会長の御尽力のたまものと感謝申し上げる次第でございます。
きょうから始まる作業につきまして、
憲法改正を
前提にするのかしないのか、この点をめぐって若干取り沙汰されている向きがあります。
この審査会はあくまで、過去における
調査会の
調査を受けて、そして、これから来る審査会での具体的な
憲法草案を審査する前に、
現行憲法を審査しようというものであります。したがって、あくまでニュートラルな
立場でつぶさに
現行憲法を点検するということが全ての主眼であります。
今、
中谷委員から、
自由民主党の考えておられる新しい
憲法改正草案についてかなり踏み込んだ御
発言があったということについては、若干遺憾に思います。ただ、
自由民主党はかなりこの
部分で進んだ
議論をされているので無理もないかなという気がするわけですが、あくまで、
現行憲法をどう見るのかというところに主眼を置いて、
自由民主党の考え方というものは従に置いていただきたいなという感じがするわけであります。
つまり、
憲法改正も
前提にしませんが、
憲法改正をしないということも
前提にしない、こういう、この審査会のきょうから始まる
議論であるということを言い出しべえとして改めて確認しておきたいと思う次第でございます。
いかに時局、政局が荒れようとも、それに惑わされたり、あるいは混乱させられることなく、かつて明治維新前夜に慶応義塾創始者の福沢諭吉先生が、上野の山の砲声が飛び交うのを尻目に、三田の山上で、経済学を初めとする学問を今こそ学ぶべきだとされた故事に見習って、真剣に、
日本国憲法のあるべき姿をめぐって、その
規定が行政においてどのように実行されているのかをつぶさに検討する作業に取り組んでまいりたいと思います。
この作業に入るのに、なぜ前文から入らないのかとの御指摘、御批判が一部にあります。それは、入らないんじゃなくて、全体の状況を
検証した上で一番最後に点検しようということであります。
前文は、それでなくとも
憲法改正論議の
象徴的位置づけを持ってきたことは事実で、いたずらな論争の具となってきました。この作業は、
憲法の
規定と行政執行の車の両輪がいかように展開しているのかを見るものであるため、むしろ、全体の
規定を総括する前文は、仕上げとして最後に取り上げる方がいいと判断したものであります。
さて、前置きが長くなりました。第一章
天皇についての公明党の
見解を申し上げます。
結論から言いますと、一条から八条までのこの章の中で、
明文改正を必要とする条はないと考えます。
法律改正、ここでは
皇室典範改正でありますけれ
ども、これについては検討を要するものが幾つかあると考えます。
課題としましては、先ほど事務方から、これまでの
議論を
整理して述べられましたように、第一条に関して、
天皇を
元首と
明記すべしとの
議論は、先ほどの
中谷委員の
発言にも見られるように根強くあります。
しかし、私
どもは、
元首と同様の扱いを今既に受けておられる
象徴天皇というあり方で、何らの不都合は生じていないと捉えております。これを
元首と
憲法に
明記しますと、かえって、これまで定着してきた
象徴の
意味合いが微妙に変化し、
国民主権の流れに逆行しかねない事態が起こると考えます。
現状では、国の形が
天皇を
元首としないと曖昧であるとの
立場にはくみせず、むしろ、この六十五年余りの間に定着してきた
元首的
象徴ともいうべき位置づけがふさわしいと思うのであります。
次いで、第二条については、
女性天皇を認めるかどうかという点について
皇室典範に委ねられている
現状をどう考えるかであります。
私
どもは、これを
皇室典範に委ねずに
明文改正する必要はなく、従来どおりでいいと思います。しかし、では、未来永劫、今の
皇室典範第一条にあるように、「
皇位は、
皇統に属する男系の男子が、これを
継承する。」との
規定でいいかどうか、これについては大いに
議論をする必要があるとの態度であります。
私
どもは従来から、
女性天皇については、
皇室典範の
改正論議に委ねるものの、方向性としては認める方向で検討をしてまいりました。
ただ、
男系男子でなければいけないか、それ以外あってはならないかどうかまでは
議論を尽くしていないというのが
現状であります。
第三条から第四条、六条、七条における
国事行為につきましては、今
規定されている十個の
国事行為のままで特段の不都合は生じていないとの考え方をとっております。
国事行為以外の
天皇の
行為、いわゆる
公的行為と位置づけられるさまざまな行事への参加など、いわゆる君主的側面を持ったものや伝統
文化行事などへの参加、さらには災害見舞いなどの伝統的側面について、
皇室典範に書き込まれるべしとの
意見がありますが、検討の余地は否定しないものの、特に現在のありようで不都合はないと考えておるところでございます。
なお、
国旗・
国歌や
元号をめぐっては、
憲法上に新たに
規定を置く必要はないと考えております。
以上、
現時点での公明党の考え方を申し上げました。