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松富政府参考人 中東アフリカ局長の
松富でございます。
お
手元の
地域情勢の
資料の二ページから始めたいと思います。
中東・
アフリカ諸国の中で
テロ問題を抱えている国別の個別の情勢でございます。
まず第一に、二ページ目、アフガニスタンでございます。
アフガニスタンは、現在、治安面の
事案件数は増大してございます。一つには、二〇〇九年十二月にオバマ大統領が三万人の米兵増派というものを決めて集中的に治安
対処を行ったということが一点。この増派分の三万人は既に撤兵してございます。さらには、二〇一四年末に向けて、多国籍軍からアフガン治安
部隊に対して治安権限の移譲が行われているプロセスにあるという、この二点が主たる理由でございます。
この情勢の悪化の中で、例えば、アフガン
政府のタリバーンとの和平の責任者であったラバニ議長に対する暗殺が行われたり、さらに、本年の四月には、首都カブールで複数の同時
テロが行われる等、重大
事案も
発生してございます。特に後者については、我が方、
日本大使館も
被害を受けました。
他方で、いい方向としては、まず、昨年五月にウサマ・ビンラディンが殺害されたということ、さらには、先ほど申し上げた、アフガン治安
部隊の能力は徐々に
向上しつつあるという点が看取されると思います。
今後の治安の改善の鍵は、やはりタリバーンとの和解、再統合と、さらにはアフガン治安
部隊のさらなる能力
向上がポイントだと
考えてございます。この和解、再統合については、現在、アフガン
政府を中心にタリバーン側との水面下の接触は継続している模様でございます。
他方で、アメリカとパキスタン
関係の悪化が懸念材料ということになります。
この治安
部隊の育成については、先月のNATO首脳
会議で、治安権限移譲後、一五年以降もNATOとして
協力していこう、
国際社会としても
支援していこうということで合意が見られてございます。
さらに、来月、東京において、経済開発分野で国際
会議を行います。これも、二〇一四年を超えた
支援の継続の
枠組みを含めて、
国際社会としての
支援の
あり方を協議するという予定でございます。
次に、イエメンでございます。同じページ下段でございます。
イエメンは、
紅海、
アデン湾、さらには
アラビア海をへいげいする重要な国でございます。この国は、実は、
アラビア半島の
アルカイダというものが存在しますし、さらに言うと、治安面では、南部の分離主義、あと、北部においては、恐らくイランの
支援も受けたスンニ派の一派であるホーシー派の反乱ということで、治安面で多くの難しい問題を抱えている国でございます。
さらに、昨年来のいわゆるアラブの春の影響で大統領が退陣するという事態に至ってございますけれ
ども、この政治的混乱に乗じて、
アラビア半島の
アルカイダは南部州の都市を制圧するまでに伸長してございました。さらに、親大統領派と反大統領派に軍が分裂したということもございます。
こういう
状況の中で、ハーディーさんという方が新しい大統領になられたわけですけれ
ども、これは南部出身の方で、地元部族の
協力も得つつ、現在
アルカイダの掃討に注力しているということで、前進が見られるということでございます。
他方で、
アルカイダ側も反撃に出てございまして、首都で自爆
テロを敢行するなど、緊張が高まってございます。この
アルカイダについては、ソマリア等から難民に紛れて過激派分子が侵入しているという
情報がございます。
現在、イエメンは、
国際社会の仲介の中で、一四年二月の総選挙というものを目指して国民対話プロセスに入ってございます。
日本も、人道
支援、民主化
支援等で主要ドナー国になってございます。
次に、三ページ、北
アフリカ、
マグレブ諸国の
アルカイダというものが存在いたします。
これは、もともとはアルジェリアを拠点とするイスラム過激派組織でしたが、二〇〇六年ごろに
アルカイダのネットワークに参加したということでございます。それに伴って、
活動範囲もアルジェリア国内からサヘル広域に広がってございます。アルジェリア
政府は掃討に尽力していますけれ
ども、まだ根絶できていません。欧米人の誘拐が中心ということになってございます。
問題なのは、二〇一一年以降、リビアの混乱に乗じて、リビアのカダフィ大佐の兵器庫が開放された
関係で、武器がサヘル
地域に拡散いたしました。さらに、カダフィ大佐の傭兵と言われていたトゥアレグ族、これはリビアの南部とかニジェール、マリに広域に広がっていますけれ
ども、このトゥアレグ族の動きがやや不穏になっているということが要注意でございます。
同じく、そのお隣のチュニジアでも、最近
アルカイダ本体の活発な動きが見られます。
六月十日、
アルカイダの首領のザワヒリが声明を出して、チュニジア新政権に対してイスラム過激派は立ち上がるべきだという檄を飛ばしました。これは、一つには、チュニジアではムスリム同胞団を背景にした穏健イスラム勢力が政権をとってございますけれ
ども、この穏健ぶりが
アルカイダとしては気に入らないということ、さらに、この新しい政権が、憲法制定がマンデートなんですけれ
ども、経済
政策面でさしたる前進が見られず国民の不満が高まっているというところに着目した
アルカイダの動きだと思います。
もともとザワヒリはエジプト人でございまして、チュニジアの動静を細かく見ているなということが看取されるとございます。
このチュニジア、実は十日から一部過激派が暴れて、夜間外出禁止令が出ていました。十五日には解除されましたが、この暴動の動きと
アルカイダ本体との直接的な関連性を挙げるような物証はまだ出てきてございません。
次は、シリア、四ページですが、シリアでは、アサド政権の人民の弾圧とは別に、首都等で一連の
大型爆破
テロが
発生してございます。政権側は、全ての戦闘は全て
テロリストなんだ、特に
アルカイダなんだ、こう強弁していますけれ
ども、一部
事案についてはヌスラ戦線と名乗る団体が犯行声明を出してございますけれ
ども、実際誰がこのような爆破
テロをやっているのかについては、証拠は何も挙がってきていません。
他方で、六月十二日には、AQ本体がシリアにおけるイスラム戦闘員にビデオメッセージを流して、アサド政権を倒せという声明が出てございます。イラク戦争のときには、シリア国境を伝わってシリアからイラクにたくさんの
アルカイダ要員が流れ込んだと言われています。今現在その反対の方向に動いているというふうに
考えるのは、想像にかたくないと思います。
シリアについては、リビアの例と同じく、武器の拡散が懸念されてございます。特に、シリアは化学兵器を持っていると言われてございまして、これが
テロリストの手に渡ることが
国際社会の懸念の一つでございます。
我が国は、シリアについては、難民
支援とともに、
支援国
会合に出るほか、実は反
体制派諸派の
会合等にも
出席してございまして、細かくフォローしてございます。
あとはイラクの問題ですけれ
ども、イラクについては、昨年末に
米軍が完全撤収いたしました。その後、宗派、党派をめぐる
事案が多発してございます。
現在、シーア派のマリキ首相の暗殺を企てたとしてスンニ派の副大統領に逮捕状が出ている、こういう
状況になってございます。しかし、三月末にアラブ・サミットをバグダッドで
開催いたしまして、それを機に徐々に治安は安定しつつあると
考えています。他方、
アルカイダと見られる
テロ事案は、月に一回ないしは二回程度、散発的に
発生していると
考えています。
最後に、直接
テロというわけではございませんが、イランの問題ということなんですけれ
ども、イランについては、
テロ絡みではサウジの駐米大使暗殺未遂計画、さらに、インドやタイなどでイスラエルの外交官を狙った
事案などでイランの関与が疑われている
状況でございます。
核問題については、現在、
国際社会は制裁と対話ということで、制裁を
強化しながらEU3プラス3のチャネルでイランとの協議が始まっている。特に、本日からモスクワで第三ラウンドということでございます。
結果については、実は楽観視できるようないい材料はございません。そうなると、今後、六月二十八日からはアメリカの金融制裁、七月一日からはヨーロッパの石油禁輸、さらには保険、再保険の禁止ということで、本格制裁が稼働するという予定でございます。
日本については、イランの原油は減らしていくものの、
我が国のエネルギー事情や経済への影響を見きわめながら、急激な途絶は回避するというスタンスでございまして、先般、衆議院の方には、イラン石油の輸送をめぐる特別
措置法について採決いただいたところでございます。
とりあえず私の方からは以上で、あとは
アフリカの
説明にかわらせていただきます。