○
参考人(
坂元浩一君)
坂元でございます。どうぞよろしくお願いします。本日は、貴重な
機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、
レジュメに沿ってお話ししますが、ちょっと冒頭で一点だけ、内容にもかかわることですので、お話ししたいことがございます。
本日
出席するに当たりまして、御依頼をいただいたのは二週間前の十五日でございまして、ちょっと私の
能力不足もありますけれ
ども、今回のテーマについて詳細にいろいろ調べてというところはなかなかできなかったものですから、私の
レジュメの中でもすぐお分かりになるかと思いますけれ
ども、
ODAの
枠組み、それからかなり根本的な原則の話を今日させていただきます。
ただし、四番目、最近の
動向としまして、ちょうど二か月前に
パリと北京に行きまして、
ODAの
援助の
動向、それからフランスを
中心とする
アフリカへの
支援の
状況、それから
中国政府の
援助政策について最新の
情報を持っております。過去三年間もそれについて
情報収集をしておりますので、最近の
動向を皆さんの御
参考に供したいというふうに思います。
それでは、一
ページを見ていただければと思います。
ちょっと自明のことではございますが、今日の
ODA、私
どもの
ODAを理解する場合、過去三十年間起こりました
援助政策の歴史というのをもう一回レビューをしたらどうかなというふうに思うわけです。年表の一九七〇年代末、ラテン
アメリカと
アフリカを
中心とする国が対外
債務返済困難に陥ったということです。直近の
国債価格の
低下ということはあるんですけれ
ども、第二次
世界大戦後の
政府主導型の
政策の
失敗、それから
援助の
失敗というところがあって、どうにもこうにも
金融危機、
経済危機に陥ったということでございます。
そこで、
危機管理をしなきゃいけないということで、一九八〇年から始まるんですけれ
ども、
アメリカ、
イギリス政府の
支援の下に
IMF、
国際通貨基金と
世界銀行主導で
経済自由化、
民営化を
政策条件とする
構造調整計画が始まったわけです。重要なことは、
経済全般に対する
政策は
強制的に実施されたと。
途上国からしますと、
国内政策に対する
強制というのが始まったということでございます。
まとめを下に書きましたので読ませていただきますと、残念なことに、
アフリカの
貧困国を
中心とする重
債務貧困国は
債務返済能力を再構築できませんで、
経済再建は
失敗に終わった。
日本を筆頭とする二
国間資金援助、これは一九九九年でございますが、そこで
債務の帳消しということが決まりました。それから、二〇〇五年に
IMF、
世界銀行の融資についても
全額免除ということが決まったわけです。
これが総論で、うまくいかなかったわけなんですけれ
ども、
成果としましては、重要なことは、とにかく被
援助国の
国内政策への
介入というのが一貫して取られてきたと。
経済自由化によるプラスの面はあるんですけれ
ども、被
援助国側の
自助努力を非常にそぐ結果となったというふうに理解しております。
続けまして三ですけれ
ども、それでは、そのようにうまくいかなかった面があるわけで、じゃ、その後の
政策をどうするのかというのが二〇〇五年ぐらいにきっちり決まったわけなんですけれ
ども、
債務を免除された
貧困国に対して、重要なのはその後で、多額の
無償援助による
貧困削減の
支援が打ち出されたということでございまして、
経済自由化のみならず、例えば
教育省の
予算管理など
政策介入が続いている、それから
援助体制の
欧州化も進んでいるということでございます。これは私、二〇〇五年と申し上げましたけれ
ども、実は一九九六年から
欧州主導で新たな
援助枠組みというのが二〇〇五年に向けてつくられて、二〇〇五年の
パリ宣言で
援助改革が高らかにうたわれたということでございます。
加えまして、一
ページの四でございますけれ
ども、
経済面での
政策介入に加えまして、二点、大きな
変化がありました。一点は、
アメリカ主導でその
政治の
民主化の
強制ということが行われたわけです。すなわち、
援助の
条件として
政治の
民主化が求められたというのがございます。二
ページに参りまして、二点目は、
同時多発テロ以降、
米英主導で
紛争国への
支援が進められてきたということでございます。こういう流れを踏まえて今日の
世界の
主要援助国の
援助計画というのは作られておりますし、
日本の
計画もそうではないのかというのが私の認識でございます。
それでは、
ODA政策の内容について説明させていきます。
二
ページ以降の説明は、皆さんがお持ちの
レジュメの十五
ページのところに、非常に単純なことで申し訳ございませんけれ
ども、国際協力の構成についてまとめておりますので、それに沿った形で、その図に対応する形でお話をしようということでございます。
まず、二
ページのところで、国際協力の手段の中の
ODAの位置付けということで、私の認識は、平和への
貢献というのは
ODA本来の目標ではないということを改めて考えてはどうかということでございます。
重要な例というのは
紛争国への
支援でございますけれ
ども、二〇一〇年の
ODAのあり方に関する検討でも平和への
投資というのが三本柱の
一つになっております。ただし、私としましては、
ODAやその他経済協力手段というのは、本来目指すのは被
援助国の経済的厚生の向上であると。付随して、我々
日本の経済的厚生の向上もあればいいなということではないのかと思うわけです。加えまして、社会サービスも本来は被
援助国の
政府が供与すべきものであって、社会セクターへの
支援というのも本来の
ODAの
中心ではないというふうに考えるわけです。
なぜ、これを申し上げるかといいますと、ここには書いておりませんけれ
ども、比較的多くの
国民の方が以下のように言っておられると思うんですね。例えば、何も、
アメリカ主導で戦争をやったイラクになぜ我々がたくさん
援助をしなきゃいけないのかと。あるいは、
状況は違いますけれ
ども、アフガニスタンになぜあれだけ多額の
援助をしなきゃいけないのかと。今度は
アフリカです。イギリスの植民地があるわけですね。そこの
紛争国に対して、なぜ我々が
アフリカまで行ってたくさんの
支援をしなきゃいけないんだというふうに多分思われているんではないのかと思うわけです。
その点で、この点、平和への
貢献というものの重要性を、今後の
在り方のところに書いてありますけれ
ども、改めて考える必要があるのではないのかと思います。
ちなみに
中国は、経済的厚生の向上と今私が申し上げたことをまさしく
中心に
支援しておりまして、我々、
中国の方とお話ししますと、我々の
援助はウイン・ウインなんだと、相手もウインで、我々
中国もウインなんだと、だから非常に
評価されるべきだというふうに言っておるわけです。
現状認識の二、二
ページの真ん中辺でございますけれ
ども、
紛争国支援というのは
米英主導によるものであって、
日本は彼らの要請にかなりこたえてきたというふうに考えております。内容はちょっとそこへ書いてありますが、飛びまして、今後の
在り方、二
ページの一番下でございますけれ
ども、同盟国
アメリカに協調してどの程度
ODAを使うのかというのを
日本側は主体的に決める必要があるだろうというふうに思います。以上です。
それでは、二の二、広義の経済協力の中の
ODAの位置付けということでございます。
これは十五
ページのブロックの左から二番目、広義の経済協力ということでございますけれ
ども、経済連携協定というのがあるわけなんですが、これは我が国と相手の国との間で経済連携協定ということで経済協力に関していろいろ議論するわけなんですが、そこで
ODAが余り考慮されていないんではないのかというふうに思うわけです。
ODAを考える場合に
民間協力との連携を考えなきゃいけないということが言われているわけなんですけれ
ども、そうすると、経済連携協定、広義の経済協力の中で
ODAをどう考えるかというのをしっかり考える必要があるんではないのかということで、今後の
在り方のところにちょっと書きました。
実際のところは、経済連携協定というのは厳しい交渉をしているわけですから、その場で別に
ODAは議論する必要はないとは思いますけれ
ども、その前後で、やはり
ODAをどう位置付けるのか、しっかり相手の
政府の方にもそういう
支援をしているんだということも伝えながら、結局、
利益の関連の経済、
民間の経済協力について話す必要があるだろうと、議論する必要があるだろうというふうに思います。
それでは、二の三に参ります。
今度は狭義の経済協力の中の
ODAの位置付けということで、十五
ページのブロックですと、左から三番目の狭義の経済協力ということでございます。このグループは十四
ページの我々がよく目にする
日本の狭義の経済協力という構成でございまして、それをちょっとひっくり返しまして、
民間が
中心ですので、
民間を上に、公的協力を下に持ってきて、
政府開発
援助の位置をそこに示しているわけです。
それでは三
ページに戻ります。
まず、二の三、
現状認識の一としまして、
ODAを
民間協力との関係でどの水準にするのかというのが明確でないというふうに感じます。
三
ページの
最後から二行目のところをちょっと読みますけれ
ども、先ほど申し上げました英米主導の
経済自由化というのは
ODAに関して
二つの重要な影響をもたらした。第一には、被
援助国で
政府自らの業務と公
企業の業務の
民営化が大々的に起こりましたので、結果として公的機関を対象とする
ODAにとっては
援助先が大幅になくなったということでございます。第二は、我々
援助する側にとっても、なるだけ
民間でやれることは
民間でやろうよということではないのかということでございまして、三行目のところですが、総合しますと、従来型の
ODAは減らすべきであるという方向で進んできたと。それでは今のその
ODAの議論でどういうことを書いているかといいますと、
民間協力との連携で実施されるべきというのはたくさん書かれているんですけれ
ども、重要なことは、
民間協力に比較して比重をどうするかと。
民間協力増えるから
ODAが増やすという話ではなくて、
民間協力との関係で
ODAをどういう比重にするのかというのを考える必要があるのではないのかというふうに思います。
それでは、
現状認識の二に参ります。四
ページの真ん中辺ですけれ
ども、
ODAの有償
資金協力と、その他
政府資金の有償
資金協力や
民間協力との間の業務の分担が明確でなくなってきました。
これはちょっと経済学をやっている私のテーマでもありますが、もう全般的に
世界規模で低い金利が実現しております。今後もそれは続くと思います。そうしますと、
ODA、OOF、
民間協力が低い金利の水準で並ぶということになりますので、そうしますと、今後の
在り方のところで書いてありますが、その中で
ODAの
役割というのを明確にする必要があるだろうということでございます。
それでは、二の四に参ります。二国間
ODAと多国間
ODAの関係でございます。
これは実は
ODAの中身に入る話でございまして、
レジュメの十五
ページの図の一番右側、枠の外で、
ODAの分類を結構二者択一的な形で議論をしたいということでございます。
まず、二国間
援助なのか多国間
援助なのかということで、四
ページに戻っていただきますと、その関係というのが重要であるけれ
ども、十分に検討しているのでしょうかということでございます。
四
ページはちょっと追加がございまして、ここでは
ODAだけで話していますが、実はOOFについても、当然二国間のOOFの供与のやり方と多国間のOOFの供与のやり方というのは関係するわけです。というのは、OOFの
資金が
IMFとかあるいは
世界銀行の金利の高い融資の基金として出されているわけでございます。
これは四
ページから五
ページについてちょっと書いておるんですけれ
ども、
日本政府としては、二国間
ODAを使って国際的なプレゼンスを高めたい、例えば国連の常任理事国になろうということで立候補したということで、それはうまくいかなかったわけですね。
ところが一方、
国際機関への拠出という形で、我が国はサミットの一員、それからG7の一員であるということ、それから
IMF、
世界銀行の常任理事国になっているということで、私流に言いますと
経済面の安全保障理事会では
日本は常任国になっておるというわけなんですけれ
ども、直近の
IMFの改革によりますと、
中国がもう
日本のほんの僅か後ろに入ってきたということになります。従来は
日本を含む五か国が常任国であったんですけれ
ども、そこに
中国が経済的な台頭を
背景に入ってきたということでございます。
ですから、
日本のプレゼンスというのはかなり減ってきたわけなんですけれ
ども、そうしますと、二国間
援助と多国間
援助をどのように関連付けて
支援していくのかという
視点も必要ではないのかというふうに思います。
それでは、二の五から、二国間
ODAの業務の方に入ります。
まず、
現状認識の一として、
無償援助は被
援助国の
自助努力をそぐというところがあるだろうというふうに思います。ということで、ちょっと時間がありませんので六
ページの方に行きますけれ
ども、
日本としては債権を放棄したわけですので、そこであえてまた多額の無償
資金協力を我々はするのかというところがまずあると思います。それでも相手国のために無償
資金協力のことは考えなきゃいけないということはありますけれ
ども、より注意して
規模や
タイプを決める必要があるというふうに考えるわけです。
六
ページの真ん中、
現状認識の二に参ります。
重
債務貧困国については、今申し上げましたように債権放棄をしている、しかも多くの欧米の識者の
方々が必ずしもその無償
資金協力の有効性について高く
評価しているわけでないということでありますので、技術
援助が今後重要でないのかということでございます。技術
援助の中身も、単に全て無償ということでなくて有償ということもあるかなというふうに思います。
七
ページに参ります。
現状認識の三、今、重点分野は社会インフラ、それから
貧困削減というふうになっておりますけれ
ども、果たしてそれが
ODAの
中心であっていいのだろうかと。ここでも多分
国民の方が以下のように言われているんではないのかと思うんですね。すなわち、各国の貧しい人の話というのは基本的にその国の人の話であって、そこを何も
アフリカまで行って、我々がそこの非常に貧しい人、あるいは教育だ、保健だというところにあえてたくさんの我々は
援助すべきなのかというふうに思っているんではないのかと思います。むしろ我々としては、ある意味では、ひょっとしたら有償とかほかの観点でもっと高い層の、相手の国の高い層の人を
支援するということもあっていいのではないかと思います。
七
ページの三、下の方の
ODA政策の立案、
現状認識の一と二というのは、今申し上げたことを総合的に考えられるような体制があった方がいいのではないのかということで、もう割愛させていただきます。
ちょっと時間があと一、二分しかありませんので、最近の
動向についてお話をします。
まず、
中国の
援助というのはもうかなり大きな
規模でして、
資金協力、
ODAとOOFの
資金協力だと多分
日本を凌駕するぐらいの
規模に達しているというふうに言われておりますが、ということで九
ページですね。
まず、OECD、DACの局長が言われたことというのが、まず、
アフリカの貧しいこの
地域、
世界でも最も発展の
可能性が低いサヘル
地域ですら、市場がかなりの問題を解決できるようになったということです。ということは、公的
援助の比重というのが下がるということになるかなというふうに思います。
そういう中で、それからプラス
中国等の台頭がある中で、その二番目のところですけれ
ども、今申し上げた、あるいは
日本がやっている西側主導の
援助改革というのはもうメーンストリームではないという
状況であります。そういう中で我々が今後従来型の
援助を進めていくのかということを考えなければいけないかと思います。
最後に、
中国の台頭についてでございますけれ
ども、四年連続
パリとか行っていますと、もう明らかに
中国の特に
アフリカへの進出はすごいという
状況でして、その中でちまちまと西側主導で細かくやっていることが果たしていいのかということを向こうの
方々が、フランスの
政府の
方々も考えているように思います。
最後に、十
ページの真ん中辺に横に書いておりますけれ
ども、外務省として高官レベルで
中国と協調してやっていこうということが決まっておるんですけれ
ども、私が知る限りはその後ちょっとその実際の
動向がないのではないのかということで、十
ページから十一
ページに雑駁でございますけれ
ども四点、具体的な提案をさせていただきました。その中の幾つかは
中国側の方の希望でもございます。
以上でございます。どうもありがとうございました。