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政府参考人(
日原洋文君) それでは、恐縮でございますが、お
手元の
資料を御覧いただきます。クレジットが付いてなくて申し訳ありません。「
タイの
洪水について
平成二十三年十一月三十日」と書いた横紙の
資料でございます。
一枚おめくりいただきますと、
利根川と
チャオプラヤ川の
比較ということで、まず、
タイの
水害の前に、
チャオプラヤ川がどういう
河川であるかということを簡単に御
説明いたしたいと思います。
表がございます。
利根川と
チャオプラヤ川を
比較いたしますと、
流域面積で約十倍、それから
河川延長で約三倍の長さを持つ大
河川でございます。大きな
特徴は、
河床勾配と書いてあるものでございますけれども、
下流からほとんど
勾配がない、要は平べったい
土地であるというのが一番大きな
特徴になってございます。
それとも関連いたしますが、川における
洪水流下能力というのが非常に小さいということで、
観測史上最大流量というのが書いてございますけれども、
チャオプラヤ川の場合には約六千トン、
下流の方ですと、表の外に書いていますが、三千トンぐらいしか流れないということで、非常に平べったいところに大きな雨が降ると、そこにたまったままなかなか水が抜けないと。逆に言うと、
洪水もじわっと増えてじわっと減っていくと、そういう地形になっているということでございます。
それともう
一つ、
上流に
ダムがございまして、
二つの大きな
ダムで、合わせて二百三十億トンの
ダムを持っております。
左下に
日本の
ダム書いてございますが、
利根川の全
ダム合計して八億トン弱でございますから、約三十倍。あるいは、
日本の全部の
ダムを合計したものの三分の二の規模を
ダムで持っておりますが、先ほど申しましたように、なかなか水が引かないものですから、そういう
意味において
洪水調節としてそもそも機能しなかったということがございます。後でその辺は補足させていただきます。
二ページ目を御覧ください。
航空写真でございますけれども、この青い
部分が、
右側の図の青い
部分が水がつかった
湛水域の
部分でございます。
上流から
下流に向けてじわじわと移動しているのがお分かりいただけるかと思います。左側が
標高の図でございますけれども、極めて低い
標高に大きな
エリアがあるということがお分かりいただけるかと思います。
三ページでございます。
今年は、非常に
チャオプラヤ川
流域、雨が多かったということでございますが、
チャオプラヤ川に限らず、メコン川の
流域においても非常に雨が多かったということで、これは、そういう
意味ではカンボジアあるいはミャンマーの方でも非常に雨としては多いわけですけれども、要は
農業的土地利用がなされているということで大きな話題になっていないということでございます。
四ページを御覧いただければと思います。
これは、
チャオプラヤ川
流域における
降雨量の
比較ということでございます。ちょっと見にくいですが、細い赤の線でかいてある
部分が
チャオプラヤ川の
流域を示しております。その中に
累積降雨がどのようになっているかというのを
色別に分けておりますが、二〇一一年は非常に赤や黄色の
部分が多いということがお分かりいただけるかと思います。
数字が書いてございますが、これが七月から九月の
累積の
平均降雨量でございます。平年に比べて約五割増しの雨が降ったということがお分かりいただけると思います。
五ページが、
具体の
被害でございます。
お
手元の
資料は十一月十八日
時点ということで、一番騒ぎが大きかった
時点の
数字を入れてございます。
死者につきましては五百九十四名、
行方不明者二名となっています。最近の
情報では
死者六百名を超えたというような
情報も一部の報道でなされているところでございます。
退避区域が、ここに書かれているような非常に広い
区域において
退避が行われたということでございまして、図の中に色の塗ったところが
洪水被害が起きた
区域ということでございます。
特に
交通機関で、
ドンムアン空港、旧
国際空港でございますが、今は
国内線中心になってございますが、そちらが閉鎖されたということで、特にここには
被害者救済センターが置かれていたということもあって、大変大きな話になってございます。それから、国鉄など
長距離鉄道はかなり
影響を受けてございます。そのほか、
交通等においても種々
被害が生じたところでございます。
六ページを御覧いただければと思います。特に
日系企業への
影響というものを書いたものが六ページでございます。
七つの
工業団地におきまして
洪水が発生しておりまして、そのうち、特に上から
二つ目、
ロジャナ工業団地には
日系企業が百四十七社、その次の
ナワナコン工業団地は
日系企業百四社ということで、
大変日系企業が多かったということから様々な問題が生じたところでございます。
それから、七ページを御覧いただければと思います。
そのうち、
ロジャナ工業団地というところでございます。ここは
ニコンなどの
日系企業が入っているところでございます。
チャオプラヤ川の
流域におきましては、大体
流域全体では、
治水の
安全度といいますけれども、何年に一遍ぐらいの
洪水に耐えられるように
河川整備が行われているかという考えでいうと、大体十年に一遍ぐらいの雨に耐え得る
程度しか現在
整備が進んでおりません。
したがいまして、
工業団地としては独自にもう少し
整備を、
安全度を高める必要があるということで、五十年に一度の
洪水に耐えられるような高さということで、二・五メートルの
防水堤というものを
工業団地の周囲に巡らしまして
対応しておったわけでございますけれども、ここに書いてございますように、十月中旬には水深が二・八メートルに達したということで、
工業団地の中も外も区別なく、
エリア全体が水没したという
状況になったわけでございます。
その後、
タイ政府からの要請を踏まえまして、十一月五日の日に
政府として
国際緊急援助隊を派遣いたしまして、
国土交通省が所有します
排水ポンプ車十台を
現地に送り、十九日から
排水作業を開始したところでございます。
現在は、
ロジャナ工業団地につきましては
排水作業を完了いたしまして、その後、六ページの図をちょっと御覧いただければと思いますけれども、
右側に
工業団地の
位置図が書いてございますが、
真ん中のやや右上というんでしょうか、
ロジャナ工業団地というのがやや右上のところにございます。そこが
最初に
排水作業を行っているところでございまして、その後、そこが終えたということで、
左下の方に移ってまいりまして、ちょうど
真ん中辺りですけれども、
ナワナコン工業団地、それから、その更に下の方に
バンカディ工業団地というところの
排水作業を今行っております。あわせまして、
ナワナコン工業団地のすぐ近くに
アジア工科大学という
大学がございますので、そこの
排水作業を行っているという
状況でございます。
八ページでございます。
後ほど
経済産業省さんから詳しくお話あるかもしれませんが、
タイの
水害が
日本の
サプライチェーンに
影響したということで、特にソニー、
ニコンという
デジタルカメラの
主力工場が
被害を受けたということで、全
世界の
生産が
影響が生じていると。あるいはトヨタ、ホンダという
自動車メーカーにつきましても、様々な
部品等におきまして
影響が生じているということでございます。
九ページでございます。
バンコクの
洪水対策がどうなっているかということでございます。
この赤のラインで引いたものが、
キングスダイクと呼んでおります、王の
堤防という
意味だそうでございますけれども、一九八三年に大きな
洪水がございまして、それを踏まえまして、
バンコク市内を守るということからこの
堤防整備を進めてまいりまして、二〇一〇年に完成した
堤防でございます。
バンコクというか、
タイの
治水につきましては、先ほど申しました、基本的に元々
農業圏でございましたので、
市街地だけをこの
堤防で守って、それ以外は水があふれてもしようがないというか、ある
意味では水があふれることによって農地が肥沃になるという面もあって、それを許容していたわけでございますけれども、それが今回のようにだんだんだんだん
市街地が進んでくると、その辺がなかなか難しくなってくるということでございます。
それで、十ページは
政府における
国土交通省の取組ということでございます。
まず
最初に、
洪水に関します
専門家、それから
排水に対します
専門家を
現地に派遣いたしたところでございます。それから、
国際緊急救助隊ということで、
空港施設の
関係の
専門家あるいは
鉄道施設の
専門家、それから先ほど申しましたような
排水の
専門家というものを派遣いたしまして、それぞれ必要なアドバイス、あるいは
具体の
排水作業等を行ってきているということでございます。
それから、十一ページは同じように
排水の
関係でございます。
それから、四番のところなんでございますけれども、今後、
タイ政府等の
状況を踏まえまして、産学官併せました
調査団を派遣して、今後の
対応策を講じていきたいというふうに考えてございます。
ちょっと残り僅かな時間でございますけれども、今回の
水害の
特徴を四点ほど申し上げさせていただきたいと思います。
一つは、
上流に
ダム群がある、
ダムが
二つあると申しましたけれども、いずれの
ダムも
かんがい及び発電を
目的とした
ダムでございまして、
洪水調節を直接の
目的としていなかったということでございます。もちろん雨季に関しては容量を空けておりましたけれども、そうはいっても、完全な
意味での
洪水調節というものは持っていなかったというのが
一つの
特徴でございます。
二つ目の
特徴は、先ほども何回か申しましたけれども、元々
農業的土地利用であって、
洪水はあふれさせることを当然と考えていた中に、
工業団地でありますとか
空港でありますとかそういった都市的な機能が生じたということで、そこの問題が生じているということでございます。関連いたしまして、この
キングスダイクの中と外、あるいは運河の水門を開ける閉めるということで
上下流の対立というものも生じているということでございます。
それから、
情報の
管理で、
洪水が上から
下流に向けて流れてくるわけでございますけれども、いつ、どの
タイミングでどれぐらいの
洪水が来るかという
情報がきちんと流されていなかった、あるいは
ハザードマップそのものができていなかったということで、それぞれ
避難体制が十分取られなかったということがあろうかと思います。
最後に、
治水に関しましての
担当部局が
王立かんがい局、
天然資源環境省、あるいは
首都圏の
首都圏庁排水下水局等々、あるいは内務省の
災害軽減局と分かれておりまして、
水系一貫とした
河川管理が行われていなかったために、どの
タイミングでどういうふうな行動を起こすかということがきちんと行われなかったということがあろうかと思っています。
そういった点も踏まえまして、先ほどの十一ページの一番
最後に書いてございますけれども、
防災パッケージという形で
日本の
国際貢献の一環として今後こういったものも、ハード、ソフト含めた全体的な
防災の在り方というものを
我が国として
国際貢献として図っていきたいというふうに考えておるところでございます。
以上でございます。