○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。
私は、公明党を
代表し、ただいま
議題となりました
野田総理大臣の
アジア太平洋経済協力会議出席等に関する
報告について
質問いたします。(
拍手)
野田総理、公明党は、
日本の
国内政策との整合性を図りつつ、
日本の
成長に資する形での二国間
EPAやFTAの締結を
推進し、
アジア太平洋地域に二十一世紀型の
自由貿易圏を構築することには、基本的に
推進の立場であります。
しかし、今回の
APEC首脳会議に際し、
政府が、
日本の
国民に十分な
説明もしないまま、国会での
議論も全く不十分なまま、そして、肝心の
政府・
与党内での明確な
結論も得ないまま、あなたが
TPP協定への事実上の
交渉参加の
表明をしたことについては、まことに拙速と批判せざるを得ません。拙速とは、早いだけでできが悪いという意味でありますが、このような
判断をされた
総理に、強く、冒頭抗議申し上げます。
同様に、
国内の
議論が未成熟のまま国際公約としてしまった消費税増税策と同じように、今回の拙速な
判断は、
民主党政権の
外交姿勢の致命的な欠点を象徴しております。その欠点とは、すなわち、戦略性のない
二枚舌外交をしているということであります。
その証拠に、
首脳会議直後の
日米首脳会談の
発言内容をめぐり、
日米両
政府で、看過できない
見解の相違が発生しております。ホワイトハウスの公式声明文によれば、
野田総理は
オバマ大統領にすべての
物品・
サービスを
貿易自由化交渉のテーブルにのせると
発言したことになっております。一方、
総理は、帰国後の国会審議でその
発言を否定しながらも、この声明文の訂正は求めないという、非常に不可解な言動を貫いておられます。
このような
総理の不可解な姿に、多くの
日本の
国民は、既に強い不安感を持っているのではないでしょうか。
そもそも、
国内と国外で異なる
説明をする戦略性のない
二枚舌外交は、今に始まったことではありません。沖縄の普天間移設問題についても、
政権交代直後の鳩山
内閣時代の大失態により、深刻な膠着状態に陥っております。
時の
総理から最低でも県外を約束された沖縄県民にとって、この問題はもはや覆水盆に返らずであり、以前の合意は盆の上には載っておりません。盆の上に載っていない水を飲めと言われても、そこにないのですから、飲めないのです。ところが、
米国政府から見ますと、二〇〇六年の
日米合意は有効のままなので、合意という水はまだ盆の上に載っております。よって、アメリカ
政府は、
日本政府に、早くその水を飲めと言ってくるわけであります。
野田政権は、まさに今、そのはざまで苦しんでいるわけでありますが、これこそまさに自業自得、戦略性のない
二枚舌外交の結果であります。
このような経緯から、多くの
国民が、今回の
TPP参加問題が第二の普天間になるのではないかという深い懸念を持っているということを厳しく
指摘し、以下、具体的に
総理に
質問いたします。
まず、
総理はなぜ、
TPP協定の
交渉参加を決める前に、
アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPの実現に向けた他の道筋を追求する努力をしなかったのでしょうか。
従前の
APEC首脳会議声明においては、
TPPに併記される形で、ASEANプラス3、ASEANプラス6という枠組みも明示されておりますし、ASEANを除いた日中韓のFTAの実現を優先した方が
日本の
経済成長に資するという専門家の意見もございます。
政府が
TPP参加の
メリットの根拠として提示している
内閣府経済社会総合研究所の川崎研一客員主任研究員のGTAPモデル
試算の結果を見ても、
日本のGDP増加率の比較で、必ずしも
TPPが上位とは限らない数値となっております。具体的には、
TPPの場合〇・五四%、日中FTAで〇・六六%、日中韓FTAで〇・七四%、日中韓プラスFTAで一・〇四%でございます。
野田総理は、本日の
報告の中で、
TPPが
唯一交渉が
開始されている枠組みであることを強調しておりますが、そもそも
日本主導で
交渉してもおかしくない日中韓FTA等の実現の努力を怠って、
TPP交渉にだけ参加する姿勢は、全く説得力に欠けます。
米国主導の
TPP以外の枠組み構築への努力は全くする気がないのですか。
総理の答弁を求めます。
野田総理が今回拙速に
TPP交渉参加の決断をした背景には、
交渉段階から入らなければ
TPPのルールメーキングに参加できず、
日本に不利な枠組みになってしまうとの懸念があったと
指摘されています。
しかし、そもそも
TPPは、その
出発点である環太平洋戦略的
経済連携協定、通称P4協定に明らかなように、全
品目の
関税撤廃が最大の特徴であり、最大のルールであります。ところが、
総理を初め
野田内閣の閣僚は、国会では、あたかも特定のセンシティブ
品目について
例外扱いができるかのような
発言を繰り返しております。
改めて伺いますが、今後の
TPP交渉参加へ向けた
協議あるいは
交渉参加後の
協議において、
日本がこれまでの二国間FTA、
EPAにおいて常に除外または再
協議の
対応をしてきた農林水産品を含む九百四十
品目について、
関税撤廃の
対象から除外することは本当に可能とお
考えですか。
また、もし
総理が可能と
考えていらっしゃるのなら、その
考えをアメリカの
オバマ大統領にハワイで明確に伝えたのかどうか、明快に御答弁をいただきたいと思います。
一方、一部の専門家からは、今回の
交渉参加表明は遅過ぎるとの
指摘もあります。なぜなら、
日本が
TPP協定の
交渉に仮に参加できるとしても、既に参加している九カ国の同意手続が今後必要であり、参加できるのは早くて来春という見通しがあるからです。一体、
総理は、いつ
交渉に参加できると
考えて今回の決断をしたのでしょうか。
また、もし、参加した時点で、ルールメーキングがかなり進んでしまい、
日本の主張が余り反映されていない
段階となると、笑い話にもなりません。なぜなら、参加する
段階というのは九カ国の同意を得ているわけでありますから、その時点で参加を撤回すると、
日本の国際的信用は地に落ちるからであります。
ということは、参加撤回の選択肢はないというのが
外交常識であります。にもかかわらず、
TPP参加への賛否で党内が割れてしまっている
民主党の党内事情のためか、
政府・
与党の幹部の一部は、あたかも途中での
TPP参加撤回の選択肢があるかのように公言をしております。これは普天間移設問題が迷走したときと全く同じ構図であり、私は深い懸念を持っております。
野田総理、
TPP参加撤回の選択肢はあると本当にお
考えですか。この
質問への答弁で、普天間のときのように再び
国民を欺くようであれば、もはや、あなたの
総理辞任では済まされないほど重大な問題になります。そのことを
認識された上で、率直にお答えをいただきたい。
次に、
TPPと
農業について伺います。
このテーマをめぐる
議論では、
日本の
農業は規制と
関税に
保護された
産業であり、国際
競争力が弱いという主張が頻繁になされ、それを前提に、
日本の
農業再生のためにも
TPP参加はよい契機であるとの意見も聞かれます。
しかし、
関税がゼロになりますと、稲作などの土地利用型
農業は
日本で壊滅的打撃を受けることは、火を見るより明らかであります。
日本の農地の集約は、
民主党政権の
再生目標でも一区画二十から三十ヘクタールであり、とてもではないが、一区画百ヘクタール規模のオーストラリアには及びません。土地
条件の格差、これは
農家の努力では乗り越えられないものであります。
野田総理は、国会で、
TPPに参加するしないにかかわらず、
日本の
農業再生支援を
強化する決意を繰り返し述べておられますが、その具体的内容は何でしょうか。もし、一部の欧米諸国をモデルに所得補償
措置の
強化をするならば、莫大な
財源が必要であり、その
財源確保の手法についても語らなければ、説得力はありません。この点についての
総理の答弁を求めます。
また、
TPP参加により、
食料自給率が低下する
可能性があります。
民主党は、マニフェストにおいて、現在四〇%の自給率を五〇%まで引き上げることを明記しておりますが、この公約も断念されたと理解してよろしいのでしょうか。
これから
世界人口が百億人へ向かって増加していくと言われる中で、食料の確保が中長期的に困難になることが予測されておりますが、そういったときに
日本の食料の対外依存率を高めることは、国家の
安全保障リスク上の問題が大きくあります。
総理の
見解を伺います。
TPP参加の影響は、
日本の国境を守っている離島にも及ぶ
可能性があります。
日本全体の島の数は六千八百五十二島でありますが、現在、人が住んでいる有人離島の数は四百二十一にすぎません。この数は、終戦直後からほぼ半減いたしております。ただでさえ超高齢化と人口減少に苦しむ離島でありますが、例えば、
TPP参加により砂糖の
関税などが
撤廃されますと、一部の離島の基幹
産業であるサトウキビ
農業は壊滅し、離島のさらなる無人島化が進むことが懸念されます。
私は、現在、公明党離島振興
対策本部長として、来年度末に期限を迎える離島振興法の改正案をつくる与野党実務者
協議に参加しておりますが、その中では、離島の定住促進が最大の
課題であります。それは、島嶼国
日本の国境はほとんど離島によって形成されており、また、その離島に、さまざまな不利
条件の中でも、暮らしてくださる
国民の方々がいるからこそ、国境が守られているという
認識に基づいております。
野田政権の閣僚には、この基本的
認識が欠如しているのではありませんか。
TPP参加が離島に与える影響並びに国境を守っている離島定住者に与える影響について、
総理がどのような
認識をお持ちか、率直にお答えをいただきたいと思います。
次に、
TPPと
日本の雇用問題について伺います。
TPP参加の最大の
メリットは、
日本の輸出
産業の活性化との
指摘があります。確かに、
関税がゼロになれば、
日本製品の
競争力は高まり、輸出が活性化され、
経済成長を押し上げる
可能性があります。
しかし、製造業を中心として、
日本の工場が昨今の円高なども背景に
海外移転をふやす傾向がさらに強まると、その工場で雇用される人の大半は外国人労働者となり、
日本人労働者の所得向上には必ずしもつながりません。
日本企業の
海外工場で、安い人件費で雇われた外国人が製造した製品が、
日本に
関税なしで逆輸入され、それを所得がふえない
日本人が購入する、こんな事態が待っているとすれば、これも余り
メリットとは言えないのではないでしょうか。
野田総理の、
TPP参加が
日本の雇用に与える影響についての
見解を伺います。
中国や韓国の
TPP参加の
可能性についても、
総理の見識を伺います。
TPPへの
日本参加を主張する方々は、過去十年間で急激な
経済成長を実現した隣国の
中国や韓国に対抗する手段として、
TPPの意義を強調する傾向があります。しかし、
中国も韓国も、
両国ともいまだに
TPP参加の意向を示しておりません。韓国経済は
貿易依存率が八〇%を超えており、最も
TPPに前向きになりそうな国ですが、それでも
TPPに参加しておりません。
野田総理は、なぜ
中国や韓国が
TPPに参加しないのか、その理由についてどのような
見解をお持ちでしょうか。また、あわせて、将来的にこの
両国が本当に
TPPに参加するのかどうか、どのような見通しをお持ちなのか。答弁を求めます。
最後に、
野田総理は、
TPPについて、バスに乗りおくれるなと言わんばかりの姿勢を示されてきました。しかし、きょうお聞きしたような数多くの懸念事項にははっきりと答えず、
国民に十分な
説明をしないままでは、運賃が幾らか明示されていない、行き先も表示されていないようなバスに乗れと言っているのと同じであります。そんなバスには、だれも乗りません。
早期に国会に
TPPに関する
特別委員会を設置し、
日本に対する
メリット、デ
メリットを徹底的に
国民の前で
議論することを求め、私の
代表質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣野田佳彦君
登壇〕