○志位和夫君 私は、
日本共産党を
代表して、
野田総理に
質問いたします。(
拍手)
まず、
東日本大震災と
原発事故の
復興財源について伺います。
大震災から八カ月近くが経過し、
被災地では
復興に向けて懸命の
努力が続けられていますが、生活となりわいの再建は遅々として進んでいません。
原発事故はなお収束の見通しが立たず、放射能被害は拡大し、賠償と
除染のおくれが
被災者をさらに苦しめています。
復興を進める上で、その財源をどう確保するかが最大の問題となっています。
今回の大震災は、かつてない地震・津波災害に原発災害が加わるという未曾有の規模の大災害です。すべての
被災者の生活となりわいの
基盤を回復し、原発災害への全面賠償と
除染を進め、
地域社会全体の
復興を進めるという大
仕事は、これまでの古い
政治の枠組みの
もとで、財源枠をあらかじめ決め、その範囲内で
施策を行うという小手先の姿勢では、到底なし遂げることはできません。
総理に伺います。
復興を本格的に前進させようとすれば、
住宅再建への
支援額、
支援対象の抜本的拡大、店舗、工場の
復旧のための直接
支援の
創設を初め、従来の枠組みを超えた新しい対策がどうしても必要です。加えて、原発対策には特別の財源が必要となります。
あらかじめ決めた財源枠の範囲の中でという姿勢でなく、必要なことは何でもやる、そのために、これまでの古い枠組みを聖域なく
見直し、大胆に財源を確保するという姿勢が強く求められると
考えますが、いかがですか。
この点で、
政府・
与党の姿勢はどうでしょうか。
政府・
与党は、
復興財源として、十五年間で、八・八兆円の所得税、住民税の増税など、庶民増税を中心に十一・二兆円の増税を行おうとしています。ところが、その一方で、
法人税減税は、この大震災の
もとでも、財界に言われるまま予定
どおり実施し、
政府が行うとしている課税ベースの拡大を含めても、
法人税減税による税収減は、十五年間で総額十二兆円に上ります。
総理、十五年間で庶民増税を中心に十一・二兆円の増税を行っても、総額十二兆円の
法人税減税を行えば、差し引きでマイナス八千億円。庶民増税は、すべて、
法人税減税で消えてしまうではありませんか。これでは、
復興のための財源は一円も生まれず、借金がふえるだけではありませんか。
庶民増税は大企業減税の財源づくりが目的ではありませんか。
答弁を求めます。
日本共産党は、財源問題を
解決する上で、地震・津波災害の
復興財源、一般の
復興財源と、原発災害の賠償、
除染などのための財源、原発災害対策財源をそれぞれ確保する、その抜本的方策として、次の
提案をするものです。
第一に、一般の
復興財源は、古い
政治の枠組みに切り込む歳出歳入の
見直しで確保すべきです。
歴代
政権が聖域としてきた米軍への思いやり
予算や米軍基地関連
予算、政党助成金を廃止するだけでも、十五年間に五兆円の財源が生まれます。歳入では、
法人税減税と証券優遇税制の延長、大企業と大資産家への減税のばらまきをやめれば、年間一・七兆円、十五年間で二十五兆円を超える財源が生まれます。
これらを実行すれば、庶民増税なしに
復興財源を確保することは可能です。
政府が
被災地の
復興に
責任を持って取り組むというのならば、歴代
政権が聖域にしてきたこれらの分野にメスを入れることは避けて通れないと
考えますが、いかがですか。
第二に、原発災害対策の財源をどう確保するか。
賠償と
除染に係る費用は巨額のものとなることが予想されます。環境省の試算でさえ、今後
除染が進められることになる年間
追加被曝線量一ミリシーベルト以上の
地域は、一万一千六百平方キロ、国土の三%に及ぶとされています。ところが、
政府が
提出した第三次
補正予算案で計上された
除染予算はわずかに二千四百億円、来年度
予算と合わせても一・二兆円です。これでは、余りに少ない、本腰を入れて
除染に取り組む姿勢とはほど遠いと
考えますが、いかがですか。
賠償と
除染に係る費用は、第一義的には、事故を引き起こした加害者である東京電力が負担すべきです。同時に、東電を初め電力業界は、核燃料サイクル計画などのために使用済み核燃料再処理等引当金を初め約十九兆円の積み立てを計画的に行っており、既に四・八兆円の積立残高があります。
しかし、使用済み核燃料の再処理と核燃料サイクルは、原発以上に危険きわまりないものであり、中止すべきものであります。
そこで、この積立金を、つまり原発埋蔵金を、国が一括して管理する基金に移して、原発賠償・
除染・廃炉基金を
創設し、原発災害対策の財源として活用することを
提案するものであります。
電力業界だけでなく、原子炉メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など、原発ビジネスを
推進し巨額の利益を上げてきた原発利益共同体に所属する大企業にも、基金への応分の拠出を求めるべきであります。
原発を
推進してきた
日本原子力産業協会に属する主要百社の内部留保の合計は八十兆円にも上ります。これらの大企業には、資金を拠出する社会的
責任とともに、十分な体力もあります。
総理は、十月七日の党首会談で私がこの
提案を行った際、御指摘の原発
関係のお金については、今後、エネルギー政策全般を見直す中で洗い出し、洗い出したお金は可能な限りそちらの方向、賠償と
除染に使っていくとお答えになりました。私は、
総理が、この言明を直ちに具体化、実行し、原発災害対策のための巨額の財源を賄う抜本的方策をとることを強く要求します。
答弁を求めます。
次に、
TPP交渉参加問題について
質問いたします。
政府・
与党が十一月中旬の
APEC首脳会議で
TPP交渉への
参加表明を行うことを念頭に
検討を進めていることに、広範な
国民の不安と怒りが広がっています。
TPP参加がもたらすものは何か。私は、四つの大問題について
総理の
見解をただすものです。
第一は、これが大震災からの
復興への最大の妨げになるという問題です。
今、
被災地では、大震災によって破壊された農地を
復旧するための懸命の作業が続けられています。しかし、岩手県、宮城県、
福島県の三県で来年度までに営農が再開できると見込まれている農地の面積は、農林水産省の試算で、わずか三七%にとどまっています。
農地を
復旧しても
TPPによる米価の暴落で
地域農業はつぶされてしまう。
TPPへの参加を
検討していると聞いただけで
復興への気持ちがくじかれてしまう。
総理は、
被災地からのこの痛切な声にどうこたえますか。
被災地の主要産業である
農林水産業への打撃をどう
考えているのですか。
総理は、大震災からの
復興を最優先
課題と言いました。その
言葉が真実であるならば、今なすべきは
TPP参加ではありません。壊された農地の
復旧に全力を挙げ、生産、加工、流通
一体で
農林水産業のインフラ
復旧に全力を挙げることではありませんか。
答弁を求めます。
第二は、
国民への食料の安定供給を土台から壊すという問題です。
TPPとは、農産物も含めて、すべての品目の関税をゼロにする協定です。関税ゼロとなったら、農水省の試算によりますと、食料自給率は四〇%から一三%に急落し、米生産の九〇%は破壊され、農林水産物の生産は四兆五千億円も減少します。
一方、
政府は、昨年三月に、食料自給率を五〇%に
引き上げる食料・農業・農村基本計画を閣議決定しています。自給率五〇%と関税ゼロがどうやって両立できるのか、
総理、
国民にわかるように具体的に
説明していただきたい。
政府は、十月、現在一戸当たり平均二ヘクタールの耕地面積を、今後五年で十倍まで拡大し、二十から三十ヘクタールにするという大規模化の方針を打ち出しました。この方針自体が、中小農家、兼業農家を切り捨てるという大問題をはらんだものですが、たとえ二十から三十ヘクタールにしたところで、平均耕地面積が二百ヘクタールの
アメリカ、三千ヘクタールのオーストラリアとどうやって競争せよというのか。
既に一戸当たり平均耕地面積が二十二ヘクタールとなっている北海道でも、
TPPに参加したら、農業と関連産業、
地域経済が二・一兆円もの損失をこうむることが道の試算で明らかにされています。どんなに大規模化したところで、
アメリカやオーストラリアとの競争が不可能であることは、火を見るより明瞭ではありませんか。
どの国でも、自国の主要な農産物を関税で守ることは、当たり前に行われています。
既に
日本の輸入農産物の平均関税率は一二%まで下がり、EUの二〇%、メキシコの四三%、韓国の六二%、インドの一二四%と比較しても、
日本は世界で最も農業が開かれた国になってしまっています。
地球的規模での食料
危機と飢餓の広がりの中で、自給できる力を持ちながら、自国の農業を破壊し、外国からの食料に頼る道を選ぶことは、世界にも顔向けできない行為だと
考えますが、
答弁を求めます。
第三は、
TPPでは、農業と食料だけでなく、暮らしと経済のあらゆる分野が交渉対象とされ、米国の対日要求が強要されるという問題です。
TPPとは、関税撤廃だけでなく、関税以外の貿易障壁、非関税障壁の撤廃を大
原則とした協定です。そして、これまで、米国の通商
代表部の報告書などでは、次のような対日要求が列挙されてきました。
食の安全にかかわっては、牛肉のBSE対策で
日本が行っている月齢制限などの
規制の
緩和、残留農薬や食品添加物の
規制の
緩和、遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃など、
日本国民の食の安全を脅かす要求が列挙されています。
医療にかかわっては、混合診療の全面解禁、株式会社の病院経営への参入、血液製剤の輸入
規制の
緩和などの要求が並んでいます。
保険のきかない医療が拡大し、お金持ちしかよい医療を受けられなくなる、医療に利益第一が持ち込まれるもので、不採算部門の切り捨てや
地域からの医療
機関の撤退が進むことなどが強く危惧されております。
政府調達にかかわっては、米国は、
政府や地方
自治体の官公需、物品購入や公共
事業に
アメリカ企業を参入させることを要求しています。
それぞれの地方
自治体が行っている中小企業、地元企業への優先発注などが非関税障壁として排除されれば、
地域経済は深刻な打撃を受けることになります。
農業以外のこれらの懸念に対し、
政府は、
TPPの交渉対象になっていないと弁明しています。
TPPお化けなどと中傷する
議論もあります。確かに、これらの対日要求の中には、
TPPのこれまでの交渉では
議論されていないものもあります。しかし、
日本が参加すれば、交渉対象となる可能性が大いにあります。
総理に、二点伺いたい。
第一、今例示した
アメリカによる対日要求の諸項目が
TPPの交渉対象にならないという
合意あるいは保証がありますか。
第二、これらの諸項目が
TPPの交渉対象になったとき、一つでもノーと言えるものがありますか。あるならば、具体的に明示していただきたい。
答弁を求めます。
第四に、
総理は、
TPPに参加すれば世界経済の成長を取り込むことができると述べていますが、そんな保証がどこにあるかという問題であります。
仮に
日本が交渉に参加して
TPPが十カ国の枠組みになったとしますと、日米だけで十カ国のGDPの九一%を占めることになります。つまり、
日本にとっての
TPP参加とは、事実上の日米FTA締結となる。より正確に言えば、例外なしの関税撤廃を
原則とする日米FTAの締結と同じことではありませんか。
それでは、
TPP参加によって
アメリカへの輸出がふえるでしょうか。
アメリカへの輸出の最大の障害となっているのは、関税ではありません、
円高とドル安です。
TPP参加による関税撤廃と
円高・ドル安によってもたらされるのは、
アメリカからの一方的な輸入拡大ではないですか。そして、それがもたらすのは三百五十万人もの失業者だということは、農水省の試算でも示されているとおりであります。失業者が町にあふれれば、労働者の賃下げ、家計と内需の縮小が一層深刻になるでしょう。
総理、
TPP参加によって、世界経済の成長を取り込むどころか、
アメリカの対日輸出戦略に
日本が取り込まれる、これが真実の姿ではありませんか。それは、
日本経済を成長させるどころか、内需縮小と衰退への道ではありませんか。
日本共産党は、
アメリカに
日本を丸ごと売り渡す、このような亡国の
政治には断固として反対を貫きます。従属の論理ではなく、お互いの経済主権、食料主権を尊重した平等互恵の経済
関係の確立にこそ
日本の未来があるということが私
たちの確信であります。
次に、
沖縄の米軍基地問題について
質問します。
この間、日米防衛相会談が行われ、
日本側は、
辺野古移設の
日米合意の強行に向けた第一歩として、年内に
環境影響評価書を
沖縄県に
提出することを確約しました。米側は、これを歓迎し、
環境影響評価が終了したら、直ちに
沖縄県に対して埋立申請を行うよう要求しました。
私は、県内移設反対、普天間基地の閉鎖、撤去という
沖縄県民の総意を無視し、県民の
頭越しに事を進めようという
政府の強権的姿勢に強く抗議いたします。
沖縄タイムスは、社説で「民主主義が泣いている」と書きました。琉球新報は、社説で「多くの県民の目には「日米同盟」のためなら手段を選ばぬ「強権国家」としか映らないだろう」と書きました。
総理は、民主主義が泣いている、強権国家という
沖縄の批判にどうこたえますか。
稲嶺名護市長がオール
沖縄で県内移設を受け入れる
状況にないと断言しているように、県内移設反対は、もはや、揺らぐことのない
沖縄県民の総意であります。私が
総理に問いたいのは、
沖縄で形づくられたこの総意、噴き出している怒りの根源に何があると
認識しているのかという根本問題です。
私は、
沖縄県民の総意の根源には、戦後六十六年にわたる異常な基地の重圧が忍耐の限界を超えているという、重い歴史の累積があると
考えます。
なぜ、
沖縄本島の一八%も占める基地が存在するのか。
もともと、
沖縄の米軍基地は、太平洋戦争の末期、凄惨な地上戦を経て米軍が占領した際に、住民を十二の収容所に強制的に囲い込み、広大な民有地を強奪して建設されたものでした。
普天間基地がつくられた場所には、民家も、役所も、郵便局も、墓地も、サトウキビ畑もあったんです。さらに、一九五一年以降、米軍は、銃剣とブルドーザーで民家と農地を押しつぶして基地を拡張しました。ハーグ陸戦法規は、占領下の略奪や私有財産の没収を禁じています。
沖縄の基地は、生まれながらにして国際法違反の基地なのであります。
総理にはそういう
認識がありますか。
答弁を願いたい。
こうしてつくられた米軍基地によって、戦後六十六年間、
沖縄県民は耐えがたい苦しみを背負わされてきました。
沖縄県民の心に共通して刻まれている痛ましい事件、事故があります。
六歳の少女が、強姦され、殺されて、海岸に打ち捨てられた由美子ちゃん事件。小学校に米軍機が墜落して、たくさんの児童が亡くなった宮森小学校の惨事。米軍機から落下傘で降下されたトレーラーに少女が自宅の庭で押しつぶされて亡くなった隆子ちゃん事件。島ぐるみの怒りが噴き上がった、一九九五年の少女暴行事件。
沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した、あわや大惨事というあの事故。これらは、
沖縄県民ならばだれもが知る、忘れようにも忘れることができない、心に深く刻み込まれた悲劇であります。
県内移設反対、二十一世紀の今になって新しい海兵隊の基地をつくることは絶対に許さないという県民の総意は、こうした歴史の痛みと苦しみの累積の上につくられたものなのであります。
総理にはそういう
認識がありますか。そういう
認識が少しでもあるならば、
アメリカに命じられるまま、使い走りのように、県民の
頭越しに力ずくで新基地建設を押しつけるなどという愚かな
行動はとれないはずであります。
沖縄問題を
解決する道は一つしかありません。それは、
辺野古移設の
日米合意を白紙に戻し、普天間基地の無条件撤去を求めて、米国
政府と本腰の交渉を行うことです。
そのことを
総理に強く求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣野田佳彦君
登壇〕