○中屋
委員 ありがとうございました。
もちろん、大きな、
法曹養成制度全体が重要であるという認識は、私もそのとおりだと思っております。一方で、今回の
改正案の審議という点では、
給費制の存続かあるいは
貸与制への移行かということもまた一つ大きな要素だと思いますが、この問題については、私自身は個人的に激しい葛藤を覚えながら、この間
考えてまいりました。
考えれば
考えるほど自分自身の中に二つの思いが並び立って、どちらの側に立つべきかと非常に
考えさせられました。政治とはそういうことなのかもしれませんけれども、大変苦しい思いをしたところであります。
まず一つ目の立場は、現在、
法曹を目指して日夜勉学に励んでおられる方々への心情的な共感です。
この件に関しては、皆様御存じのとおり、若い
法曹の方々やまた
法科大学院に在学しておられる方々、
修了生の方々から切々とした訴えを伺っております。私自身、現在三十三歳ですが、約十年前、ほかの学部の文系の
大学院に二年間、籍を置いたことがございます。また、友人の中にも、
研究者を目指して頑張ってきた
人たちが何人もおりまして、そういった方々のことを思うと、この決断というのは大変に重たいものだなというふうに感じております。
学部時代の同級生たちが、
社会に出て給料をもらって、
社会人として手腕を磨いて、その結果、保護者も安心しているという、人生のレールに順調に乗っているのを横目で見ながら、ひたすら机や本棚やコピー機に向かっている日々でありまして、このことを思うとき、私自身の経験を幾つか思い出したんですが、個人的な経験ですけれども、二つをちょっと御
紹介したいと思います。
まず一つ、
大学院生のときですが、学部時代の友人が結婚することになりました。結婚式に招かれまして、それで共通の友人からメールで、友人一同、それぞれ御祝儀は三万円でそろえようじゃないかという提案が来たんです。友人が持っていく御祝儀の金額としては大体常識的な金額だろうと思うんですが、当時、私には三万円というのは物すごい大金で、それだけの余裕がなくて、そのメールに対して、自分は頑張って一万円しか出せないから、どうか金額をそろえるということは勘弁してもらいたいという返事をして、気まずい雰囲気をつくったことを覚えています。今でも覚えているんですから、当時はかなり惨めな気持ちになったということです。
もう一つ、
大学院に入学するとき、学部でも奨学金を借りていましたので、修士課程の最後まで行けば合計で四百万円の
借金を背負うことが確定していました。そのとき、ふっと不安になって、もし返し終わる前に自分が死ぬようなことがあったらどうなるだろう、親に
借金を残してもし死んでしまったら本当に親不幸だなと思って、そういうときに親に心配かけないようにと思って、そのとき初めて、死亡保険金が五百万円ほどの、月々の掛金が二千円足らずの生命共済に加入しました。これは本当に切実な気持ちであったんです。
何が言いたいかといいますと、学部を出てそのまま
大学院に進んだ若者にとっては、たとえ人生の先輩方にとってはそう大きくないように見える金額であったとしても、想像もつかない、途方もない大金なんだということなんです。今回、若い方々が連日声を上げておられたことの背景にそういった切実な心情があるということは、痛いほどに伝わってきました。
しかし、なぜそこで私自身に葛藤が生じたかということなんですけれども、私自身はもう一つの
問題意識も持っているからです。
一つは、今回の
貸与制への移行ということは、何年もかけて進められてきた
司法制度改革において予定されていた内容でもあって、またしかも、
司法試験合格者の大幅な増加とプロセスとしての
養成ということと一体不可分のものであるということにかんがみれば、いつまでも従来の
制度のままで残すということはできないだろうというふうに思うところであります。
また、昨年の延長の際に
指摘された
事項を踏まえて
フォーラムでの
議論がなされ、今回、このような経済的事由による一時的な返済猶予という条項が加わったという経過を見ても、これ以上の延長は難しいのではないかなというふうに私個人は感じているところであります。
最後に一言申し上げたいと思うんですけれども、
大学生時代に飛び交っていた言葉の一つに、奨学金を借りるというのは今の自分が将来の自分に対して
借金をしているんだということをよく言い合っていました。そうとも言えるんですけれども、この年齢になって奨学金をやっと完済したという喜びの声を周囲の友人から聞くときに、また別の見え方もしてきました。
それは、この期間、長い間お互いよくも何とか生き抜いてこられたなという実感であり、同時に、奨学金というものは、
充実した高等
教育を受けることでよりよい職業生活を、あるいはもっと広く、よりよい人生を生きようと決意した過去の自分から現在の自分に対しての投資でもあったということであります。
法曹を目指す皆さんの人生が実り多いものであるということを私自身も心から願って、また、今後とも
司法制度改革の
議論に真摯に向き合っていきたいということをお誓いして、済みません、時間になりましたので、私の
質疑を終わりたいと思います。
きょうはありがとうございました。