○
谷垣禎一君 私は、
自由民主党・無所属の会を代表して、昨日の
野田総理の
所信表明演説について質問いたします。(拍手)
先般の
民主党代表選では当初の劣勢を覆すための多数
派工作を優先し、かつ、代表・
総理就任後は
党内融和の人事に努められたためか、総理御自身の持論は、いまだはっきりと見えてまいりません。本日は、総理としての経綸を堂々と語っていただきたいと存じます。
まず、今般の台風十二号に伴う
豪雨被害につきまして、亡くなられた方に深く哀悼の意を表すとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
私も現地に伺いましたが、記録的な
集中豪雨によって甚大な被害が生じております。地域の孤立あるいは
土砂ダム崩壊のおそれといった住民の方々の不安を払拭するため、迅速な
激甚災害の指定と、
予算措置等による十分な対応を強く求めます。
また、
東日本大震災についても、
仮設住宅におられる方を含め、いまだ八万人を超える方々が不便な
避難生活を余儀なくされております。
こうした災害について、
被災地、
被災者に寄り添いながら、一人一人にきめ細かな
生活支援の手を差し伸べるとともに、
被災地全体としての
復旧復興を早期になし遂げることは、党派を超えた責務であります。
三月十一日以来、我が党は、長らく政権を担ってきたことで培った知識と経験、草の根のネットワークなど、持てる力を総動員し、その対応に当たってまいりました。
初期段階における
緊急物資の支援や政府への申し入れに始まり、
政策提言においても三次にわたって五百七十七項目を挙げ、精力的に働きかけました。
これらの提言に基づき、政府は十数本の法案を提出、成立させる運びとなり、それで足らざる部分についても、我が
党主導の
議員提出法案により、
復興基本法や
津波対策推進法などを初め、多々成立に至っております。
一日も早い
復旧復興をなし遂げるべく、腰の重い政権、行政府を日々督励することで、野党としての責務を果たしてまいったわけであります。
さらには、発災直後、政府が全力で
人命救助や原発の
鎮静化に当たるべく、
国会審議を一時取りやめ、その後は、各党、政府との
協議会を設置するなど、
国会運営においても十分に協力してまいりました。震災に係る
政府提出法案についても、合意を得るべく
修正案を提示することをもって
与野党協議に積極的に応じ、成立に至っております。
我が党は、この
復旧復興について、政権に全面的に協力するとともに、
自民党こそが、これらをなし遂げ、その任を担うにふさわしい政党だとの気概を持って、今後とも総力を挙げてまいることを国民の皆様にお約束いたします。
野田総理におかれても、こうした我が党の決意を真摯に受けとめ、政府・与党として十分な内容の
復旧復興対策を早急に取りまとめ、我が党にお示しください。その際は、胸襟を開いて協議に応じたいと存じます。
なお、我が党は、今後編成される第三次
補正予算については、
復旧復興施策や
経済対策を盛り込んだ十七兆円に及ぶ原案を七月上旬には
作成済みです。これは、既にさきの政権にも提案してありますので、十分に今後の予算に反映していただくとともに、既に
自民党が提出している三法案、すなわち、二重
ローン救済法案、
私学復旧助成法案、
原発事故調査委員会法案についても、
臨時国会において早急に結論を得るとの合意が与野党間でなされております。政府・与党は、
復旧復興を促進するため、その合意を迅速に履行されることを強く求めます。
さて、このたび
野田政権は、総理の醸し出す雰囲気が、上滑りな発言、行動を繰り返した鳩山元総理や菅前総理とは好対照をなしているとの受けとめもあり、ひとまず高い
支持率でスタートしましたが、かわったのは
民主党政権の表紙にすぎなかったことが、早くも露呈しつつございます。
すなわち、
一川防衛大臣の
安全保障の
素人発言、
小宮山厚生労働大臣の唐突なたばこ一箱七百円への
増税発言などが相次いだかと思うと、
鉢呂経済産業大臣が、失言と
福島県民を冒涜する子供じみた
振る舞いを繰り返した末、辞任するという事態に陥りました。
重厚に見える表紙を一枚めくった途端、浅薄な
思いつきと不用意な失言、行動の
オンパレードという
民主党おなじみのどたばたストーリーが繰り広げられており、しょせん中身は変わっていないのだなという思いを強くせざるを得ません。私は、党の綱領すらいまだ定まっていないという事実が、
民主党のこうした体質の根源と考えます。
政党は、本来、共通の
政治理念を持つ
政治家の集まりであり、政党には、その
政治理念を実現するための
政治目標を示した綱領があるのは当然です。我が
自由民主党は、自助、共助、公助の理念に基づく綱領を定めております。ところが、
民主党は、単に
政権交代だけを目的とした寄せ集め的な
選挙互助会にすぎないために、綱領がないという、国際的にもまれな政党となっております。
社会党の綱領の下にいた方々、国家より市民という
市民運動家、我が党から出ていかれた方、あるいは、
既存政党の壁に阻まれ、やむを得ず新党に身を寄せた方、あいている選挙区から当選した方々もおられます。このように、
野田総理という表紙の下には、とじられてすらいない薄っぺらな紙が、ただばらばら積み重なっているだけです。
このような、成立からして無原則、無責任、無秩序な
民主党が、
思いつきからくる不用意な発言、行動を繰り返す閣僚を輩出し、国家の大事にどのように臨むかについて無定見なまま右顧左べんし、時には児戯に類した
振る舞いを繰り返すのは、ある意味、当然の帰結とも言えます。
野田総理は、
民主党代表選の過程で、我が党や
公明党との大連立を、百一回プロポーズしてでもなし遂げたいとおっしゃいました。しかし、綱領すらない政党は、政党としての基礎的な要件を欠いており、
野田総理御自身は
民主党が大好きとおっしゃいましたが、我々から見れば、まだ
婚姻年齢にも達しておりません。
先ほど申し述べたとおり、
東日本大震災からの
復旧復興には党を挙げて協力してまいりますが、それ以上の課題をともに解決していこうという思いがおありになるのであれば、今のぬえのような状態から脱して、
民主党とは何者なのかというアイデンティティーをはっきりさせていただくため、綱領をしっかりつくっていただきたいと存じます。
民主党代表として、綱領をお定めになる気があるかどうか、お答えください。
復旧復興についての我が党の
協力姿勢は先ほど述べたとおりでありますが、政府・与党に構造的な問題があれば、野党が幾ら協力したところで、事をなすことはできません。
そこで、国政の
基本方針について、その方向を大きく左右する
民主党の
マニフェストについての
取り扱いを伺います。過去の過ちに対する真摯な反省、謙虚な姿勢を欠いていては、そこに何ら進歩はありません。
先般、我が党と
民主党、
公明党は、
民主党マニフェストの
見直しについて合意いたしました。
野田総理は、
内閣発足に際して、我々に対し、約束したことだから信頼してくださいと述べられました。その遵守を確約されたわけでありますが、公党間の合意は守られるのが当然であって、そもそも、
民主党代表選でこれを白紙に戻すかのような主張をする候補がいたこと自体が異常であります。しかも、その候補が相当数の得票を稼ぎ、かつ、
党内融和のかけ声のもとでその多くの
支持者が政権入りしたのを目の当たりにすれば、
幾ら野田総理御自身は誠実そうに見えても、果たして本当に三
党合意が守られるかについては、大きな危惧を抱かざるを得ません。
さらに申し上げれば、その
野田総理からして、
代表選で示したみずからの
政権構想の中では、今こそ、
マニフェストを含め
政権交代の原点に立ち戻るときと明言されており、一体どちらが本心なのか、はかりかねます。
まず伺いますが、この
代表選での
政権構想は三
党合意とは明確に矛盾しており、悪く言えば
野田総理は二枚舌をお使いになっているのではないかと考えますが、どのように理解したらよいか、総理の見解を伺います。
本当の誠意というものは態度にあらわれるものと考えますが、三
党合意の直後に、
民主党が組織を挙げて、「「
子ども手当」存続します。」という題名で、三
党合意で
子ども手当の
恒久制度化が決まったかのようなビラを三十五万枚も用意、配布し、党の機関紙にも同様の記事を掲載させたことは、唖然とさせられました。
三
党合意では、二十四年度以降の制度について、「
児童手当法に所要の改正を行うことを基本とする」と明確に記載されており、
報道各紙の受けとめも、
子ども手当廃止、
児童手当復活というものであったのに対し、舌の根も乾かぬうちに、何を根拠にこのような荒唐無稽な解釈を持ち出せるのか、理解しかねるものでありました。
最終的に我が党の抗議で撤回されたとはいえ、一向に過ちを認めようとせず、
自己弁護に終始し、公党間の信義どころか、国民をも欺き続ける
民主党の体質をまざまざと見せつけられたと感じたものでありました。
改めて、新たに
民主党代表になられた
野田総理に、この事件に対する御見解を伺うとともに、三
党合意を踏みにじった行為に対し明確な謝罪を求めます。その上で、三
党合意の解釈として、戻るべき原点は、
民主党マニフェストの
子ども手当ではなく、
自公政権時代の
児童手当であることを改めて明言していただきたいと存じます。
我が党では、今回の三
党合意について、
子ども手当については撤回され、
児童手当を復活させるとともに、その内容を拡充することが合意されたと
支持者に説明しておりますが、
野田総理の認識も同様であるかどうか、確認いたします。
子ども手当ビラにあらわれた
民主党の体質は、八月二十六日に公表された
マニフェストの
中間検証にも如実にあらわれております。
そこでは、既に国民の大多数がでたらめであったと認識している
民主党マニフェストが実行できない要因について、想定外の税収減、
ねじれ国会、さらには
東日本大震災といった
外的要因のせいであるというこじつけを行うことに終始しています。
マニフェスト策定時の
財源面の検討、検証が不十分であったという点についてはあくまで二の次という
取り扱いにされていますが、こうした順序で
マニフェスト未達成の要因が語られることについて、総理は適切とお考えでしょうか。真摯な反省が足りないと考えますが、お考えをお聞かせください。
具体的に申し上げれば、
マニフェストで九・一兆円行うこととされていた
歳出削減が二年間で二・六兆円にとどまったということについて、税収が減ったから、あるいは、
ねじれ国会があったから、財務副大臣や
財務大臣であった
野田総理や
行政刷新担当大臣であった
蓮舫大臣が大なたを振るえなかったとするのは、苦し過ぎる言いわけであります。さらには、この二年間の予算は震災前に策定されており、財源が捻出できなかったこととは全く無関係であります。
したがって、
マニフェストの
目標削減額がしょせん絵そらごとであったか、
野田総理や
蓮舫大臣が十分な仕事をされなかったか、いずれでしか説明できないはずですが、そのいずれとお考えか、総理の見解を求めます。
なお、これら
マニフェストの構造的な
問題点については、
民主党政権発足以来、鳩山元総理、菅前総理を通じて再三再四私から指摘してきた事柄でありますが、耳を覆って、一顧だにされませんでした。
野田総理はこれらを理解していただけるかと期待しておりますが、いかがでございますか。
マニフェストの
個別政策について、さらに申し上げます。
高校授業料無償化については、菅前総理が
退任間際のどさくさ紛れに
朝鮮学校の
無償化手続の再開を高木前
文部科学大臣に指示しましたが、これは、
国民不在の許しがたい暴挙です。朝鮮総連の傘下にあり、その
思想教育の是正も行わず、国際的、国内的な状況が
砲撃事件以前に戻ることとされた
手続再開の条件も満たされておりません。
三
党合意との関係でも、
高校授業料無償化について
見直しを行うこととなっている以上、
朝鮮学校を
無償化の対象とする是非についても、当然
見直しの俎上にのせてしかるべきであります。にもかかわらず、
民主党政権が勝手に
無償化手続の再開を決定し、
野田内閣になってもなおこれを撤回しないことは、重大な
背信行為と考えます。
直ちに撤回を求めますが、お考えを伺います。
さらには、三
党合意においては、「
高校無償化及び
農業戸別所得補償の平成二十四年度以降の制度のあり方については、
政策効果の検証をもとに、必要な
見直しを検討する」とされ、これらを含めて「二十四年度予算の
編成プロセスなどにあたり、誠実に対処すること」とされております。
これに対し、
野田総理が八月二十三日に
財務大臣として策定された平成二十四年度予算の
概算要求作業についてには「「高校の
実質無償化」及び「農業の
戸別所得補償」については、所要の額を要求する」とされており、
東日本大震災からの復旧・
復興対策に係る経費と同様の表現とされていることは問題と考えます。
こうした表現は、あたかも制度の維持に必要な金額は幾らでも要求できるかのような表現と言わざるを得ず、これに沿って
概算要求がなされるとすれば、
予算編成プロセスにおける誠実な
見直しを求めた三
党合意に明確に違背することになると考えますが、いかがでしょうか。
野田総理みずからが策定された文書にかかわる問題であります。御見解をお聞かせください。
この
朝鮮学校の
高校授業料無償化審査手続の
再開撤回と、九月末の
概算要求段階における
マニフェスト施策の
見直しは、
野田政権の三
党合意遵守に向けた試金石であります。我が党として、その動向を注視し、その実現を徹底的に求めていきたいと考えております。
民主党マニフェストは、結局、内実はばらばらで政党の体をなしていない
民主党ゆえに編み出された
欠陥商品です。すなわち、本来、限られた財源の使途については、かんかんがくがくの
党内議論を調整する必要があるはずですが、そうした総合的な調整が図られることなく、
子ども手当に関しては
小宮山議員、
高校無償化については
鈴木議員、
高速無料化は
馬淵議員、
年金改革については
古川議員といった、
分野ごとに最も大きな夢、つまり空論を語った議員の意見がことごとく採用され、いわば
最大公倍数のような安易な積み上げでつくられたのでありまして、そんなものが
実現可能性に乏しいのは当然のことであります。
今回の組閣では、閣内に、
小宮山厚生労働大臣、
古川国家戦略担当大臣といった、
マニフェストをめぐる混乱のそもそもの原因をつくった方々が顔をそろえており、これでは、
マニフェスト見直しがきちんと進むかについて、率直に懸念を感じます。
各大臣の任命に当たって、
マニフェスト策定に対する責任をきちんと考慮に入れ、それに対する真摯な反省を確認した上で任命を行われたのかどうか、総理に伺います。
改めて振り返れば、
マニフェストは、
ばらまき四
K政策や
年金制度改革のみならず、
後期高齢者医療制度の改革、
自動車関連諸税の
暫定税率の廃止、
温室効果ガスの二五%削減を初めとした
産業空洞化政策など、絵そらごとともいうべき空論の
オンパレードであり、
政策効果や
実現可能性の検証も十分になされておらず、また、実際にほとんど実現しておりません。また、コンクリートから人へというスローガンも、この相次ぐ大
規模災害を経験してみると、
被災地の不安をあおるものとしかなっておりません。果たして、その総括はなされたのでしょうか。
さらに、
野田政権は、
東アジア共同体構想の否定、
政調会への
法案事前審査制の導入、
事務次官会議及び
自公政権下の
経済財政諮問会議の事実上の復活など、
マニフェストからの逆走を加速化させており、もはや
マニフェストは、やるべき政策のポジティブリストではなく、やらない政策のリストか、やってはいけない政策のネガティブリストではなかったのかと思わせるほどであります。これでは、この
民主党マニフェストの上に成り立っている
民主党の現在の多数の議席、ひいては
民主党政権の
正統性は、完全に崩壊したと言わざるを得ません。
黒を白と言い続ける苦しい言いわけに終始するのではなく、潔く
マニフェスト全体を撤回し、有権者におわびをした上で信を問い直すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。
次に、
野田総理御本人の宰相としての資質に関して伺います。
総理は、過去二代の
民主党政権において、
財務大臣を初めとした要職、最
重要閣僚のポストにありました。いわば、その失政に関して
連帯責任を負うてしかるべき立場です。その総理から過去の反省について何ら聞こえてこないことは、無責任のそしりを免れません。この政権を担うことの
責任感も
所信表明演説からは感じられませんでしたが、まずは、この二年間の政権の総括、反省、みずからの責任について、総理の基本的な考えをお聞かせください。
また、無反省なのは
民主党政権のお家芸の感があり、新
政権発足直後から、
党役員や閣僚の無責任な放言がやまないところです。その中でも、
被災者の心を踏みにじる鉢呂前
経済産業大臣の
振る舞いは、とりわけ看過できません。この件は、泥にまみれて仕事をするための適材適所ではなく、
党内融和ばかりに心を砕いた不完全な組閣の結果であり、総理の
任命責任についても厳しく問わざるを得ません。
復旧復興の妨げとなる大臣を閣僚として任命したことに対して総理はどのような責任をとられるのか、誠意ある回答を求めます。
資質に関して、
野田総理の
政治家としての理念について伺います。
総理は保守の
政治家を標榜されているようですが、その実態は極めて疑わしいものがあります。先ほど述べた綱領なき政党に所属していることはもちろん、総理は、国民の生活が第一、
マニフェストの理念は堅持する、
中間層を厚くするとの姿勢です。
しかし、
マニフェストに掲げられた
ばらまき施策が
中間層を厚くするのではありません。
中間層とは、
自助努力による安定的な
経済成長に支えられた安定的な雇用とそれによって得られる所得によってつくられ、維持されていくものであります。
経済政策の基本はもとより、
ばらまきを排し、あくまで自助を重んじる保守の理念を全くもって理解されていないのか、あるいは
党内向けにあえて詭弁を弄しているのか、総理の見解を求めます。
それに加え、日教組のドンたる
輿石参議院議員を幹事長に据えて
党運営や政策について重責を担わせたこと、子供は家庭ではなく社会で育てるという理念に基づく
子ども手当を創出した
小宮山厚生労働大臣など、総理の
保守哲学に相反する人事についても、
保守政治家としての矜持を失い、党内の声に抗し切れなかった結果とも思えますが、総理の認識をお聞かせください。
一向にやまない
民主党の政治資金問題について伺います。
鳩山元総理の
子ども手当問題、小沢元代表の陸山
会事件、
前原政調会長の
外国人や
脱税関係企業からの献金問題、同じく
蓮舫行政刷新担当大臣の
脱税関係企業からの献金問題、そして
野田総理御自身も
外国人及び
脱税関係企業からの献金問題を抱えておられます。クリーンな政治を掲げる
民主党に蔓延するこの風土病について、だれからも十分な説明はなされてきませんでした。
総理は、国会においても
説明責任を果たすべきでありますが、この場においても、その経緯と責任について誠実な答弁を求めます。
これに関して、小沢元代表の
党員資格停止処分の
取り扱いについても、今後どのような方針で臨まれるのか、あわせてお答えください。
その他、内政、外交にかかわる政策の各論について伺います。
現在、政府・与党において検討されている第三次
補正予算について、その財源が大きく取りざたされております。さきの
民主党代表選において、
野田総理とそのほか四人の
候補者の間で最も大きな見解の相違が見受けられました。
しかし、財源なくして責任ある政治は行えません。第三次
補正予算の
復興財源は、
財政規律に対する揺るぎない決意を内外に示し、
国債市場への信認をも高めるべく、増税により償還を明確に担保された
復興債によってすべて賄うのか、
建設国債を発行することもあり得るのか、総理は明確にお答えください。
また、
日本郵政の株式の売却益を充てることも検討されているようですが、
問題点も多々指摘されており、政府・与党の統一された方針としての答弁を願います。
こうした中、政府の
税制調査会の議論は混沌としているようですが、
復興基本法、復興の
基本方針、さらには
野田総理が
代表選を通じて主張した方針とそごを来すような意見が
政府内部から平然と聞こえてくるところに、
民主党政権特有のガバナンスの欠如を感じます。
野田政権の一員である各府省の政務三役がこのような主張を繰り返すようでは、政権の体をなしません。
意見集約への総理の決意をお聞かせください。その上で、
党内融和を掲げる総理におかれては、ぜひ
挙党一致での覚悟を伴った具体的な成案を我々に示していただき、また、国民に問いかけていただくことを期待しますが、いかがでしょうか。
歳出削減については、はかばかしい実績が見られないことは先ほど申し上げたとおりでありますが、こうした状況を見るにつけ、一世を風靡した
事業仕分けとは一体何だったのかという思いを強くせざるを得ません。
昨年の
仕分けに至っては、
民主党政権のもとで
閣議決定に盛り込まれた施策や、
政治主導の名のもとに各
府省政務三役が
概算要求に盛り込んだ施策、さらには、一昨年の
仕分けで一
たん廃止とされたはずの施策までが
仕分けの対象とされており、マッチポンプショーもいいところでした。また、最も
仕分けの対象としてふさわしい
民主党の
マニフェスト自体が対象となってこなかったことは、不当と言わざるを得ません。
公開の場の議論をあえて避け、身内の検証にゆだねてきた結果が、先ほどの、
客観性を欠いた
マニフェストの
中間検証だったわけです。
野田総理は、その
担当者であった
蓮舫大臣を改めて
行政刷新担当大臣に任命しましたが、馬脚をあらわしたと言える
行政刷新会議にこれ以上何を期待しているのか。
蓮舫大臣も、目的は
財源確保のためではないと予防線を張られているようですが、総理のお考えを伺います。
消費税を含む
税制抜本改革については、平成二十一年度
税制改正法附則第百四条において二十三年度中にその法制上の措置を講ずることとされており、
次期通常国会には、いよいよ、
消費税率引き上げの幅と時期を含む具体的な
税制改革の内容を盛り込んだ法案が提出されることとなります。
まずは、法案を
スケジュールどおりに提出するのかどうか、総理の強い意思を再確認するとともに、これに向けてどのような準備を進めていくおつもりか、お答えいただきたいと存じます。
六月の
社会保障・
税一体改革成案策定の過程では、
民主党内では
経済状況の好転を実施の条件にすべきだなどといった意見が強く、
消費税率が一〇%に引き上がる時期も二〇一〇年代半ばなどとあいまいになりましたが、
消費税率の
引き上げ時期については、いたずらな先送りにつながらないよう、その考え方を整理する必要があると考えます。
その際、
民主党は
消費税率引き上げについて国民に信を問うこととしているものの、あくまで
引き上げ時期は、政治的な解散時期との関係ではなく、
経済情勢との関係で決せられるべきであり、
民主党の
自己都合の結果として、経済との関係で不適切な時期に
消費税率が上がることになっては本末転倒であります。
具体的には、
任期満了まで
引き上げ時期を先送れば、施行までに
法案提出後一年半以上という長い期間をあけることになり、タイミングを逸することになりかねません。むしろ、施行を前倒しし、その前に信を問うという判断も必要になるかと思いますが、いかがでしょうか。お答えください。
いずれにしても、
消費税を含む税制の抜本的改革については、先ほど申し述べた
東日本大震災からの
復旧復興対策経費に係る税制措置の動向なども踏まえつつ、総合的に具体的な設計を図る必要があります。まずは、
民主党内でお家芸の百家争鳴の状態を乗り越え、政府・与党一体の揺るぎない御提案として具体案をお示しいただいた上で我々も協議に応じるのが政党政治の王道ではないでしょうか。
歴代の
民主党政権の泣きどころでもある外交、
安全保障について伺います。
鳩山元総理は、普天間基地移設問題で迷走を重ね、沖縄県からの信頼関係も大きく損ねた上に、日米同盟にも大きな傷跡を残しました。
野田総理は日米同盟重視を掲げておられますが、この沖縄県との基本的な信頼関係が欠如したままで、今後、普天間問題をどのように解決に導くのか、具体的な答弁を求めます。
また、総理は、東アジア共同体などといった大ビジョンを打ち出す必要はないと考えておられるようですが、これは、鳩山政権の外交政策・理念を否定するものなのでしょうか。
外交・
安全保障政策については、
一川防衛大臣の
素人発言にはしなくもあらわれたように、当該分野についての経験不足の感は否めず、野党としても非常に心配するところであります。総理の基本的なお考えをお答えください。
福島原発事故の収束に向けた対応とエネルギー政策について、総理の
所信表明演説を伺う限り、今後の方向性は、いまだあいまいもことして、不透明との感が否めません。先の見通しが立たないままでは、
被災者の生活不安と企業の電力不足への懸念を払拭することもおぼつかないわけであります。
今後の
経済成長にも重大な影響を与えるこれらの問題について、菅前総理は脱原発を華々しく掲げました。
野田総理は、その内閣において
重要閣僚の座にあったことに加え、中心となって原発対応に当たった枝野前官房長官を
経済産業大臣に任命されましたが、この路線を引き継ぐのか、転換するのか、明確にお答えください。
本日は
野田政権の基本姿勢等について伺いましたが、予算委員会も開催せず、わずか四日で
臨時国会を打ち切るなど、これは、国民に対して
説明責任を全く果たさない暴挙であると言わざるを得ません。この与党の審議拒否に、断固抗議いたします。
大震災からの
復旧復興や円高対策等、国会で議論すべきことは山積しております。場外の
与野党協議ばかりを求めながらも
国会審議を行わないとは、本末転倒、国会軽視も甚だしい限りであり、これでは容易に協議に応じるわけにもまいりません。
なぜ早々に閉じるのか。本件は与野党の信頼関係を大きく損ねることでもあり、国民に対して納得のいく説明を総理に強く求めます。
野田総理は、国民から見放された鳩山元総理、菅前総理とは異なり、一見、ポピュリズムや
思いつきを排除した路線でスタートされましたが、
民主党の体質そのものが変わらない限り、早晩行き詰まることは必定であります。本来は
民主党の党内改革こそが必要なのでしょうが、
党内融和を強調する総理には、早くからその選択肢を放棄してしまったようであります。このままでは、国民のために泥臭く働く前に、
民主党の泥沼・泥縄体質にからめ捕られて、鳩山政権、菅政権同様に、奥底に沈んでいくだけに終わりかねません。
また、信なくば立たず。政権の
正統性がなければ、結局は国民の支持は得られず、立ち行かなくなることは必至であります。
マニフェストの
見直しや、かつてはあれほど我々を非難した、信を受けないままの総理たらい回し。あなたの著書によりますと、与党のトップが交代する際には民意を問うべきであるとまで言われているわけでありまして、政権の
正統性はもはや崩壊しているのは明らかであります。
野田政権や
民主党政権の本質はどこにあるのか、今後とも明らかにしていく必要がありますが、今般、こうした不都合な真実を覆い隠すべく、予算委員会も開かずに済ませようとしたことは、
民主党の構造的な隠ぺい体質が改善されていないことを示します。
今や
民主党は、
自民党を否定することによってのみまとまりを維持し、政権の座に居続けることだけがその存在目的となったことは、先般の不信任案の際の菅前総理と鳩山元総理の合意によって明らかとなりました。その
民主党から協力をと呼びかけられたところで、単に
国会運営を円滑にするための多数
派工作に堕してしまいかねません。
この
正統性なき政権が居座る理由に、震災復興を挙げております。しかしながら、
マニフェストを
見直したことで、虚偽で政権を簒奪したまま、
被災地も含めたすべての国民との契約違反の状態がこれ以上続くことに対して、どう弁明なさるのか。これには、正心誠意の真心ならぬ、下心も感じざるを得ません。
野田政権の政権運営は本当に真心からのものなのか、党内をまとめ、国民を欺くための中庸の殻をかぶった妥協の産物、二枚舌にすぎないものなのか、我々は、国民とともに厳しく見きわめなければなりません。
野田総理の人物が本物であれば、現下の政治的・政策的矛盾を解消し、
被災地のみならず、我が国が復興するための方法は一つしかないことをその真心から理解されることを期待し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕