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2011-03-23 第177回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十三年三月二十三日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      米長 晴信君     外山  斎君      大門実紀史君     井上 哲士君      吉田 忠智君     山内 徳信君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         前田 武志君     理 事                 植松恵美子君                 川上 義博君                 水戸 将史君                 森 ゆうこ君                 礒崎 陽輔君                 猪口 邦子君                 衛藤 晟一君                 加藤 修一君                 小野 次郎君     委 員                 有田 芳生君                 一川 保夫君                 梅村  聡君                 大野 元裕君                 小見山幸治君                 行田 邦子君                 武内 則男君                 外山  斎君                 徳永 エリ君                 友近 聡朗君                 中谷 智司君                 西村まさみ君                 平山  誠君                 安井美沙子君                 吉川 沙織君                 米長 晴信君                 磯崎 仁彦君                 片山さつき君                 川口 順子君                 佐藤ゆかり君                 塚田 一郎君                 西田 昌司君                 長谷川 岳君                 福岡 資麿君                 丸山 和也君                 山田 俊男君                 山谷えり子君                 石川 博崇君                 草川 昭三君                 長沢 広明君                 桜内 文城君                 井上 哲士君                 大門実紀史君                 片山虎之助君                 山内 徳信君                 吉田 忠智君    事務局側        常任委員会専門        員        藤川 哲史君    公述人        日本金融財政研        究所所長     菊池 英博君        京都大学教授   藤井  聡君        東北福祉大学教        授        岩淵 勝好君        元外務省国際情        報局長・元防衛        大学校教授    孫崎  享君        拓殖大学海外事        情研究所長・同        大学院教授    森本  敏君        東京外国語大学        大学院総合国際        学教授      酒井 啓子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成二十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成二十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成二十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 前田武志

    委員長前田武志君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成二十三年度一般会計予算平成二十三年度特別会計予算及び平成二十三年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成二十三年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、経済財政社会保障について、公述人日本金融財政研究所所長菊池英博君、京都大学教授藤井聡君及び東北福祉大学教授岩淵勝好君から順次御意見をお伺いいたします。  まず、菊池公述人にお願いいたします。菊池公述人
  3. 菊池英博

    公述人菊池英博君) おはようございます。御紹介いただきました菊池英博でございます。  それでは、御指名でございますので、私から公述を開始させていただきます。  まず、お手元にかなり欲張って多くの資料を用意しております。まず、この「消費税は〇%にできる」という本がございます。それから、クリアフォルダの中にこの書類が入っておりまして、その一部、飛び出しているのがありまして、附箋が付いたところがございますが、この附箋が付いたのを引っ張り出していただきまして、これに基づいて公述をいたします。せっかくのチャンスでございますから、資料を多めに用意をいたしました。  本日申し上げたいことは、かねがねの私の主張でございますけれども、日本財政危機ではございません。これは壮大な虚構です。そのことをデータを基にしてお話しいたします。しかも、このデータは全て政府財務省内閣府が出しているデータを分析したものです。したがって、根拠もしっかり書いてございます。そういう意味で、このデータをここに用意しておきました。  それから、その本のこのデータの中には「日本財政の正しい考え方」という私の考え方をペーパーにまとめてございます。これは今御覧いただいておりますこの本の最後のところに書いてあるんですが、これが私の考え方でございまして、ここをベースにしながら申し上げたいと思います。  それで、私が消費税はゼロ%にできるというのは、何もゼロ%にしろということを申し上げているわけではないんです。景気を振興させてもっとデフレを解消すれば、消費税に頼らないで財源幾らでもあるということです。日本財政危機ではございません。それから、財源幾らでもあります。そのことを今日申し上げたいと思います。  実は、私はこの参議院の予算公聴会にお招きいただきましたのは二度目でございまして、ちょうど十年前の二〇〇一年の三月十五日でございました。そのときにどんなことを言ったかなと思ってメモを出してみますと、そのときにこんなことを申していますね。  日本財政は総借入れから政府が保有している金融資産を引いた純債務できちっと見るべきなんだと、そうすれば日本は決して財政危機ではありません、財政危機を正しく把握するにはその純債務で見るべきですと。この時点つまり十年前の時点緊縮財政とかいう話がかなり出ていたんですね。マスコミも盛んにはやしていましたが、これは全く間違いであると。それで、もしここでそういう緊縮財政をやりますと、結局、経済成長が止まり、デフレが加速し、同時に財政赤字は拡大しますということを申し上げました。  十年後の今日、実はそのとおりになっております。これは二〇〇一年からの小泉構造改革の結果です。必然的な結果です。意図的にされたんです。本日もこの席上で、日本財政危機ではない、緊縮財政を継続いたしますと日本は本当に財政危機どころか、日本経済が破滅に向かってしまうということをきちっと申し上げたいと思います。  それでは、レジュメがございますので、時間の関係がございますので要所だけをお話しして、後ほど細かいところは御質問をいただければと思います。  まず、テーマでございますが、日本財政危機ではない、政策危機である。財政危機は壮大な虚構である。政権が交代したのに、菅政権になってから一段と国民だましが続いているということです。  要旨は次の四点です。  一、自公政権構造改革国民をだまし、意図的に税収が上がらない脆弱な経済にしてしまった。この政策理念根拠が新自由主義市場原理主義で、これは悪魔の経済学です。  二番目、政権が交代したのに、菅政権になってから自公政権以上のデフレ政策が続いています。鳩山政権のときにはそうじゃなかったんです。見直しが進んでいました。現在は菅デフレです。  三番目、日本財政危機ではございません。政策危機です。日本は既に平成恐慌に陥っております。平成ニューディール政策実行急務です。日本は世界一財源の豊富な国です。財源幾らでもあります。埋蔵金も、ここにデータを用意してまいりましたが、五十兆はすぐ出ます。どこにあるか、きちっと用意してあります。  四番目、経済成長路線に復活させれば消費増税なしで社会福祉財源は出てまいります。  では、各項目に入ってまいりますと、まず一番、主なところをずっと読んでまいります。小泉構造改革による数々の国民だまし、何とこれが菅政権になってから復活しているんです。  まず第一に、デフレは一九九八年から始まっております。これはGDPデフレーターという指標で取るのがデフレ指標として正しいのでございますが、御案内のとおりです。これは一九九八年からずっと続いています。既にもう十五年目を迎えています。  デフレなのに緊縮財政を取った、それから金融緩和だけでデフレが解消できると、これが小泉構造改革だったわけですが、これでは、金融だけで解消できないということは、もう立証されました。ところが、今でもマネーだけを解消すればいいなんという説があるんですね。これは自民党さんにもありますし、民主党さんにも実はあるんです、一部。ただ、これは過去の小泉構造改革十年間でマネーを緩めただけじゃ駄目だということはもう立証されています。  それから、二番目。需要が減少をしているのに供給サイドの問題と称して労働法の改悪、解雇を自由にしましたね。大手企業はというと収益は激増、中小企業は倒産とか撤退は増加する。地方シャッター通りゴーストタウンです。それで、経済規模が縮小したと。百兆円の国民の預貯金が実は国内を圧縮して海外に出ております。まさに本当に驚くべきことです。これはデータもございます。  三番目。実質GDPの増加の国民だまし名目減少実質が増加する、つまり名目GDP減少をしていて、ところが実質的GDPが増加しているからこれは経済成長ですなんというのが、ずっとこのことが言われてきたんです。今でも言われています。これは全くのでたらめです。  実質成長といいますのは、そこに書きましたとおり、名目GDPからGDPデフレーターを引いたものなんですよ。GDPデフレーターマイナスでしょう。マイナスマイナスはプラスになるんですから全くごまかしもいいところですが、今でも続いているんですよ。その結果、ごまかされた結果、名目GDPはどうかといえば、一九九七年は五百十三兆ありました。二〇〇九年は四百七十五兆、これは更にこのまま行きますともう一挙に四百兆に向かいます。  四番目。日本民間政府投資不足なんです。投資が既に回収超過です。ところが、公共投資は更に落とそうとしている。しかも、民間に対して投資を創造しようというインセンティブがありません。  五番目、ああ、六番目ですね、公共投資乗数効果。これは一以下だといって内閣府のモデルがあります。これは全く偽装モデルです。どこが偽装されているかもデータはございますから。これは本当に恐るべきことなんですね。私はここまで、政府が客観的なモデルまで改ざんしているとは思いませんでしたけれども、この辺のことをきちっと指摘されたのは宍戸駿太郎先生という方で、たしかここでは、私、テレビで拝見いたしましたら、自見庄三郎さんという今は大臣をやっていらっしゃる方が何か指摘をされておられたと記憶しておりますが、そのことでございます。  それから、七番目。歴史的に数値目標というもの、財政改善数値目標は全部失敗しております。日本では今、三度目の失敗に向かっているんですね。  一回目の失敗は、九七年の橋本財政改革。これは、五年で財政赤字GDPの三%以内にしようという計画を立てたんですね。しかも、これは法律を作ったんですよ。これが大失敗だった。だから、竹下元総理が法制化したことが失敗だったなとおっしゃったそうです。これは自民党さんのある政治家の方から教えていただきました。ところが、今、自民党さんでは法制化しようという動きがありますね。これは大変なことですよ、法制化されることは。これはよく反省していただきたい。  それから、二度目の失敗は、二〇〇二年から基礎的財政収支均衡策、これを取ってきて、小泉構造改革税収が上がらない日本にしちゃったんですから。経済は結果ですから。全て失敗です。  三度目、まさに菅さん、菅総理になられてから、二〇一〇年の六月に基礎的財政収支を二〇二〇年に均衡すると、そういうまた数値目標を立てられましたね。ところが、経済情勢財政赤字の度合いは、その二〇〇二年の小泉構造改革が始まるときよりも悪くなっていますから、これは今の、構造改革のときのデフレ以上のデフレ菅デフレです。  それから、アメリカでも実は数値目標をやって二回失敗しているんですよ。御存じと思いますが、一回はレーガン、一九八五年、二回にはパパブッシュ、一九八九年からで失敗した。だから、パパブッシュはその後落選しましたね。クリントンになりました。  それで、この中の最大国民だまし財政危機だということです。そこで、それをちょっとデータで見ていただきたい。レジュメのところに附箋が付いておりますね。この附箋のところをちょっと開けてくださいますか。附箋を開けていただきますと、ここに表がございます。これは、一番上に書いてありますとおり、純債務で見た日本財政というデータでございます。先生方予算委員の方ですから十分御案内かと思いますので、やや釈迦に説法のようなことがありましたらお許しください。  まず第一に、このデータ、上にありますのが、左側が粗債務財務省が出す財政数字です。それから、右の方が金融資産、これは内閣府が毎年出しています。大体一年半ぐらい遅れますけれども、確報を出しております。  問題は、まず第一に、粗債務中身なんです。ここにあります債務、見ていただきますと、合計のところに九百十九兆ってありますね。これは財務省が出しました二〇一〇年十二月末、昨年末の数字でございます。この中身をよく見る必要があるんです。まず、一般会計特別会計に分けて考えますと、上の方の長期債、これは一般会計です。六百二十八兆。それから、下の借入金財投債政府短期証券特別会計、二百九十一兆。ざっと三百兆が特別会計です。  特別会計って一体何だろうかと。御案内のとおりですが、その下を御覧ください。図解してみますとこうなるんですよ。特別会計の内訳というのは、実は国家が投融資活動をやっているんですよ。それで、二つに分かれます。一つは財政投融資特別会計外国為替特別会計です。財政投融資特別会計はざっと二百兆ありまして、ここで借入金財投債で調達した資金政府系金融機関を通して一番右にある企業とか個人、地方自治体、外国政府などに貸し付けているわけです。だから、元利金はこういう最終借入人が返してくれるんです。  それから、その下、政府短期証券。これはざっと百十兆ありますが、ここで集めた国民お金外国為替特別会計に入れまして、そこでドルを買って、ほとんどがアメリカ国債を買っております。ざっとこれで、目減りして九十五兆になっていますが、つまり百兆のものが国民から召し上げられてアメリカ国債を買う形になっている。それで、結局返してくれる。この元利金を返済してくれるのはアメリカ政府であり、一部日本の銀行に預金していますからね、そういうところなんですね。  そうすると、これで御案内のとおり、特別会計債務というのは、政府債務であっても国民が負担しなければ債務ではありません。だから、これを入れて九百兆だ、さあ大変だ、増税だというのは全く国民だましもいいところです。これは自民党さんがもうこの十年間本当にやってきたことです。ところが、民主党さんになられてからもまだ改善されていないんですよね。是非改善していただきたい。特に菅さんには積極的にこのことをおっしゃっていただきたい。菅さんは、大変だとか、何でしたっけ、G7へいらして、ギリシャのようになるとおっしゃったようですけれども、これは本当に最大の錯覚でございます。失礼でございますが、これは私、一国民として言わざるを得ません。  ですから、一番上に参りますね、そうすると、特別会計というのは、そういうことで除くべきだと。そうすると、一番上の長期債務、六百二十八兆とあります。しかし、これも、その右の方を見ていただきますと、社会保障基金というのが二百兆ございます。これは、我々の年金ですとか、それから健康保険、こういうものの国民が拠出しているお金の集積したものです。この部分国債も八十兆からかなり買っておりますから、資金が循環しておりますね。これ、ある程度必要なんですね。国民から取り上げますから、それによって国債に回すということは、資金循環ですから、これ必要なことなんです。  そういうことを考えますと、長期国債六百二十八兆も実は二百兆ぐらいはそういうもので担保されておりますから、その差額が純債務で、四百兆ぐらいです。これは中央政府債務です。ただし、地方政府債務は百兆ぐらいございますから、実際には五百兆ぐらいあると思いますが。最近盛んに政府が、財務省なんかが発表するのは、債務をどんどんいろんなものを入れてかさ上げしているようですが、この実態を見ますと決してそんなに大したことではございません。これが要するに財政危機ではないという証拠です。  それでは、どうしたらいいか。恐縮でございますが、二ページ目に行ってくださいますか。メモの二ページ目、よろしゅうございますか。この二ページ目を御覧ください。時間の関係がございますから、項目だけを読んでいきます。  現在は政策危機なんです。財政わな金融わなに落ち込んでいます。金利をゼロにしても借り手はありません。デフレ下での緊縮財政をやる。デフレが促進される。名目GDPは減る。経済規模も縮小する。数値目標によってまた財政危機だとあおる。またデフレが進みますね。経済はどんどん縮小していきます。  それで、こういう時期でして、既に日本平成恐慌に陥っておりますから、平成ニューディール政策実行急務でございます。その三番目、下へ行きまして、ニューディール政策として私が提案申し上げたいのは、三年間で百兆円の緊急補正予算を組んでいただきたい、きちっと計画を立てて。アメリカが、例えばオバマが二〇〇九年に大統領になりましたね。あのときに、すぐ二月に組んだのは七十兆円の緊急補正予算です。あれ、二年間です。今年ぐらいで切れるものですから、今いろいろ考えているんですけど。いずれにしましても、アメリカ債務国財政赤字の国ですよ。債務国ですよ、アメリカは。それが思い切ったことをやった。日本は世界一の債権国ですから、こんなことは幾らでもすぐできる。三年百兆というのは、そういうところのヒントからも得ています。  それで、支出内容としては、その細かい点は時間の関係がありますので省略させていただきますが、まずやっぱり生活が第一、これで政権が交代したんです。民主党さんは最近は生活が第一というのは看板から外されているそうですけど、とんでもない話です。生活が第一だから国民民主党政権を選んだんです。これを忘れないでいただきたい。  それから、こういうふうに出しましたときには、法人税所得税最高税率は引き上げるべきです。
  4. 前田武志

    委員長前田武志君) 菊池公述人にお願いいたします。時間が過ぎておりますので、そろそろおまとめを、佳境に入ってきたところで恐縮でございますが、おまとめ願います。
  5. 菊池英博

    公述人菊池英博君) はい。分かりました。恐縮でございます。  それで、地方税フラット税制を廃止していただくということが必要だと思います。  その次のページに行きまして、財源でございますが、これはそこに書きましたとおりかなりございまして、埋蔵金から五十兆、それから建設国債を五十兆ぐらい出してもいいと思います。それで、財源根拠になるものは、下にあるということがございます。  最後に申し上げたいことは、日本財源は十分あります。ですから、ゼロ金利国債というのも、無利息国債も出してもいいと思いますし、日銀が国債を保有すればこれは無利息国債です、御案内のとおりと思いますが。  それで、最後に申し上げたいのは、こういう三か年計画初年度として、初年度として、東日本大災害の緊急補正予算三十兆を今年の四月に是非組んでいただけないか。思い切ったことを一括して、しかもプランを、方向を出して、これが国民が望んでいるんです。ちまちまこそこそやってもこれは駄目です。金は幾らでもあるんですから。その点を強く要望して、公述を終わらせていただきたいと思います。  どうも御清聴ありがとうございました。
  6. 前田武志

    委員長前田武志君) ありがとうございました。  次に、藤井公述人にお願いいたします。藤井公述人
  7. 藤井聡

    公述人藤井聡君) 京都大学藤井でございます。  この度はかような機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。  ただいま菊池先生公述なさいました大規模財政出動と、この財政出動の今お話をお聞きしながら私の方からお話し申し上げたいと考えておりましたのが、先ほど菊池先生がおっしゃった大規模財政出動中身、この部分をこの度の大震災を受けて申し上げたいというふうに考えているところでございます。  まず、この度の大震災におきまして犠牲になられました皆様方の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災地方々に改めてお見舞い申し上げたく存じます。  言うまでもございませんが、今何よりもなすべきことは、被災地方々に対する救助、救援でございます。そして、それと同時に、我々日本人は、この国難の危機を回避するための方途を全力で考え始めなければならないというふうに考えてございます。  ところが、ともすれば、日本はこの瀕死の重傷から立ち直ることができないのではないかと、そのような漠とした不安、ある種の絶望感をお持ちの方々も少なくないのではないかというふうにも感じてございます。  しかも、地震専門家は、三十年以内にこの大震災被害を更に上回るとさえ言われている東海地震南海地震東南海地震の各地震が起こる確率が五〇%から八七%にも上るということを明らかにしております。さらに、この度の大震災の何倍もの被害をもたらすであろうと言われている首都直下型地震が三十年以内に起こる確率が実に七〇%にも上るということを明らかにしています。  折しも日本は、かつて世界第二位であった一人当たりのGDPが長年のデフレ不況のためにいつの間にか二十位前後にまで凋落し、経済大国地位そのものがぐらつき始めているというところでございました。その弱り目にたたり目と言わんばかりにこの度の巨大震災が襲ったのであります。そして、更なる巨大震災の影にもおびえている、それが今日の日本のひ弱な悲しい姿でございます。  しかし、それらを全て踏まえましても、なお私は確信していることがございます。それは、ここでうろたえずに冷静に状況を判断しつつなすべき対策をきちんと行うことができれば、この国難の危機を回避し、必ずや我が国は復活することができるということであります。そして、どのような国難をも乗り越えられるような強靱な強い国家になることができるということでございます。  では、そのために何が必要なのか、それについてお話をいたしたいと思います。  そもそも、我々日本人は、さきの大戦の敗戦後の時代を戦後と呼び、列島改造論に象徴されるような豊かになるとのビジョンを掲げ、今日まで努力を重ねてまいりました。そして、豊かさの頂点を極めたバブルが崩壊した後もなお、豊かさに代わる新しいビジョンが持てないままに今日に至っております。しかし、その間、日本経済デフレのために凋落し続け、失業率も自殺者数も飛躍的に伸びてしまいました。そんな時代に高度成長もバブルも知らない新しい世代が求めているのは、今や既に豊かさではなく生き残ることそのものになっていったのであります。それと同時に、多くの国民がリストラや倒産の影にもおびえております。ここでもまた多くの国民が、豊かさではなく生き残ることそれ自体を求めているのであります。  そんな時代のただ中に起こったのが今回の大震災でありました。そして、この大震災によって、今や自分自身のみではなく、町や村、そして日本そのものが生き残ることができないのではないか、そんな漠とした不安に日本中が決定的に覆われることになったのであります。  つまり、我々が求めているのは、かつて求めていた豊かさでは既にないのであります。今必要なのは、何があっても滅びない永続的な繁栄を続け得る強靱さなのであります。言うならば、豊かさを追い求めた戦後復興の時代が、かの三月十一日に決定的に終えんしたのであります。そして、我々は今、強靱さを目指した震災復興の時代のただ中に生きることとなったのであります。だからこそ、豊かさを求めた列島改造論に代わる新しいビジョンとして、数々の巨大震災をも乗り越えることができる強靱さ、すなわち、英語で言いますところのレジリエンス、このレジリエンスを求める列島強靱化論をここに強く提案申し上げる次第でございます。  お手元にお配りしてございますのが日本復興計画資料でございます。  さて、この列島強靱化論でありますが、この内容を日本復興計画という緊急提案書にまとめてございます。委員先生方にお配りいたしてございますが、国民皆様も、当方、藤井聡のホームページにて公表してございますので、是非御覧いただければと存じます。  この緊急提案は、二つの計画から構成されております。一つは東日本復活五年計画、もう一つは列島強靱化十年計画であります。つまり、五年を掛けて東日本を復活し、十年を掛けてどんな危機をも乗り越えられる強靱な国家をつくり上げる、それを目指すわけであります。  まず、前半の東日本復活五年計画でありますが、これは東日本の産業、経済、社会を五年でよみがえらせることを目指すものでございます。そのためには、国、自治体、民間等の日本の総力を挙げた復興活動が不可欠であることは言うまでもありません。一日も早い居住環境、生産基盤の復旧を急がねばなりません。そして、この復興が目指すべきビジョンは、ふるさとの再生であります。東日本は我が国日本のふるさとの象徴であります。だからこそ、日本の永続的な繁栄を企図する以上、このふるさとは絶対に取り戻さなければならないのであります。  さて、このふるさとの再生に当たっては、直接的な救済はもちろんのこと、就労支援型の救済を行うことが重要と考えております。つまり、例えば食料や物資を直接支援するという形の救済に加えて、救済のための事業を起こし、雇用を創出し、その雇用の機会を被災者の方々に提供申し上げるというわけでございます。これによって力強いふるさとの再生を目指すのであります。  そして、そうした雇用の機会を創出する一つの仕組みとして、東日本ふるさと再生機構の設立、これを提案いたしたいと思います。例えば、この機構を東日本の復活までの時限付きのものとして、国が主体的に出資する法人として様々な復興事業を推進していくわけであります。なお、こうして創出された例えば数万規模の雇用機会を、被災者の方々に加えて、ふるさと再生を願う全国の若者たちを始めとした皆様に提供するということも考えられるというふうに思います。  さて、国や自治体あるいは上記のような機構が行う諸事業のためには総額で何十兆という予算が必要となります。しかし、今の日本にはそんなお金はないんじゃないかとお考えの方もおられるかもしれません。しかし、それは既に菊池先生がお話しなさいましたように、完全なる事実誤認であります。菊池先生がおっしゃったとおり、デフレ下にある我が国では資金需要が冷え込んでおり、銀行では皆さんの預貯金のうち百五十兆円以上ものお金を貸し付ける相手が民間に見当たらない、その結果、国債しか運用ができないというような状況になっているのであります。そのせいもあり、長期金利は低くなっております。しかも、我が国の国債は自国通貨建てであり、かつ九割以上が内債という事実を踏まえますと、いわゆる破綻という状況からは完全に程遠い状況にあるというのが我が国の実態なのであります。言い換えますなら、我が国は今、国債による財源調達が完全に可能な状況にあるというわけであります。  ただし、国債発行によって少なくとも一時的に金利が上昇するリスクがあることは否定できません。しかし、そうしたリスクは、日本銀行との協調、すなわちアコードを行うことで回避可能であります。つまり国債発行とともに日銀が国債を市中から買い取るオペレーション、積極的な金融政策を同時並行で行うことが望ましいわけであります。なお、その際には、適正なインフレ水準に収まるよう、各種の金融政策等によって適宜、裁量的に調整していくということが必要であることも申し添えておきたいと思います。そのほか、子ども手当等の所得移転のための財源被災地に移転するという考え方、あるいは被災地への所得移転を促進するための寄附金税額控除や被災地特別減税なども考えられるというふうに思います。  さて、こうした復興活動を進める一方で、どうしても避けなければならないことが一つございます。それは、過激な自由貿易を推進するTPPであります。  そもそも、TPPはデフレ下で余っている過剰な供給分を海外への輸出に振り向けようとするものでありました。しかし、大震災の今、国内の過剰な供給分を振り向ける対象は、海外ではなく被災地であることは明白であります。さらに、東北地方日本の食料供給地帯でもあり、今回のTPP加入によって更に壊滅的なダメージを受けることもまた明白であります。したがって、この被災地にTPP参加による諸外国からの安い農産品という第二の津波が来襲すれば、ふるさとの再生どころか、ますます壊滅的な被害を被ることは必定なのであります。  そもそも、せっかく農地を復旧しようとしても、TPPによってどうせ将来使えなくなるんだという気分が支配的になれば、復興に向けた士気ががた落ちになることはもうこれもまた明白であります。だからこそ、被災した農業地帯が復興に専心できるように、TPP交渉不参加の決定の明言が是が非でも必要とされているのであります。こうした理由から、政府が東日本の復興を目指すというのなら、それとは逆方向のTPPは絶対に避けなければならないのであります。  さて、以上の東日本復活五年計画と並行して、日本の永続的な繁栄を期する列島強靱化十年計画を強力に推進することを提案いたしたいと思います。もちろん、初期数年間は東日本復活に注力する必要がありますが、その復活の程度に応じて余力を結集し、日本全体の強靱化を図るわけであります。まずは、百兆円前後もの被害をもたらすと言われている首都直下型、東海・南海・東南海地震への対策が急務であります。  それと同時に、最悪で七十兆円もの被害が懸念されている首都を直撃する大洪水への対策も不可欠であります。例えば、現在中止されている八ツ場ダムを始めとしたダム事業やスーパー堤防事業が洪水対策としても重要な意味を持つことは、工学的に明白であります。しかも、各地域のダムによる水力発電はこれからの電力計画の観点からも重要なものとなるでありましょう。なお、原子力政策の見直しは、今回の事故の結果を科学的に分析した上で冷静に議論されるべきことであることは、一言申し添えておきたいと思います。  さらには、物流網、エネルギー・電力系統網については、平常時において過剰に効率化することを差し控え、まさかの被災時を想定した二重化等が必要となるでありましょう。例えば、東海側の大地震を想定した日本海側の交通インフラの強化が必要とされているわけであります。なお、そうしたインフラが日本海側の平時の発展に資するものであることは言うまでもありません。  このようなインフラの強靱化に加えて、産業構造そのものの強靱化も不可欠であります。まさかの被災時にどのようにして事業を続けていくかという計画、いわゆるBCPの策定が企業、自治体、国といったあらゆるレベルで必要とされています。ついては、BCP策定の義務化も視野に収めた立法的議論が必要と考えます。  さらに、エネルギーや食料といった基本的な物資については、まさかのときを平時から想定し、可能な限り自給率を高めるとともに、備蓄量を一定確保することも必要でありましょう。  最後に、当方からの公述を終えるに当たり、どうしても申し上げなければならないことがございます。  今回の予算の中でも、かつての選挙でマニフェストに掲げられていたコンクリートから人への予算は踏襲され、公共事業が大きく削られたままであり、かつ更に公共事業関係費が削られようとしております。  もちろん、この度の地震津波は、例えば日本一とも言われた堤防ですら軽々と乗り越えるほどの巨大な破壊力を持ったものでありました。しかし、ほとんど報道されてはおりませんが、堤防によって津波から守られた町があったことも事実なのであります。さらには、公共事業関係費によって進められたリスクコミュニケーションという取組の中で、地震から逃げるべきだということを人々に地道に伝え続けたことで、あの地震津波から逃げることができ、助かった人々がおられたことも事実なのであります。  したがいまして、コンクリートから人へといった、公共事業を削減する方針がなければ亡くならずに済んだ方々が多数おられたということは間違いないというふうに考えられるわけであります。それを思いますと、かえってお亡くなりになる人の数が増えてしまうようなコンクリートから人へなるスローガンに基づく予算編成は、断じて許すことができないのであります。  更に言いますなら、そのような、実際には破滅的であるものの、一定の集票効果が見込めるような軽薄で耳当たりの良い甘いスローガンを、国民の生命と財産を守るべき政治に直接、間接にかかわる人々には、もう二度と口になさらないでいただきたいと強く祈念せずにはおれません。  今国会で議論されております予算案におきましても、是非ともその点、最大限の御配慮を賜りますよう、一専門家として声を大にして申し上げたいと思います。  いずれにしても、東日本、そして日本そのものの復活は、冷静に考えれば考えるほどに十二分に可能であることが見えてまいります。そのための財源は我が国の中に確かにあるのであります。そして、技術立国日本にはその技術力も十二分にあるのです。それを思えば、東日本、そして日本の復活のために今足らないものは政治決断だけなのであります。すなわち、東日本を復活させんとする政治決断、日本を強靱な国にせんとする政治決断こそが今強く求められているのであります。  是非とも、東日本が復活し、日本が数々の巨大地震を含めた様々な国難をも乗り越え得る強靱な国になるための政治決断を下されんことを改めてお願い申し上げまして、私の公述を終えたいと思います。  どうもありがとうございました。
  8. 前田武志

    委員長前田武志君) ありがとうございました。  次に、岩淵公述人にお願いいたします。岩淵公述人
  9. 岩淵勝好

    公述人岩淵勝好君) 岩淵でございます。  まずもって、被災者に重ねてお見舞い申し上げたいと思います。  私の大学でも、二十人以上の学生とまだ連絡が取れておりません。今後は復興の予算措置をよろしくお願い申し上げておきたいというふうに思います。  ところで、関東地方の各家庭は、毎日のように繰り返される長時間の計画停電に振り回され、真っ暗な中で悲惨な耐乏生活を強いられております。これに対して東京二十三区だけは、一部を除いて停電ゼロという特別扱いを受けております。無論、重要な施設がある都心部は停電させられませんが、周辺部の一般住宅地まで停電ゼロというのはどう考えても納得できず、近県住民三千万人の怒りが渦巻いております。これは不公平、不公正、あるいは差別ではないでしょうか。民は貧しきを憂えず、等しからざるを憂えます。停電は今後も長く続きますので、蓮舫さんに任せっきりにせず、政治主導で善処していただきたいと思います。  では、本題に入ります。  まず、資料の一枚目、人口推計を御覧いただきたいと思います。  国勢調査をベースに近く新しい推計が出てきますが、大きなトレンドは変わっていません。総人口は、一億二千七百七十七万人から百年後に四千四百五十九万人に減少します。特に生産年齢人口は、八千四百四十二万人から二千二百六十三万人とほぼ四分の一に激減してしまいます。今年の生産年齢人口は八千百五万人ですが、来年は七千九百九十八万人で一気に百七万人も減少します。逆に高齢者は百三万人増える見通しです。団塊の世代が六十五歳の高齢者に達するため、日本は高齢化の胸突き八丁、ピークを迎えているということを御承知おきいただきたいというふうに思います。  こうした高齢化をストップさせる方法が一つだけあります。国連人口部が二〇〇〇年に出したレポートによりますと、先進国は退職年齢を七十五歳に引き上げること、特に日本は七十七歳に引き上げれば高齢化を防げるということであります。  これは笑い事ではありません。既に米国は年金の支給開始年齢を二〇〇四年から毎年二か月ずつ繰り下げ、現在六十六歳に達しております。二〇二七年に六十七歳、高齢化率が一二%台で日本の半分しかなく、合計特殊出生率が二・〇を超えて高齢化が全然進んでいない米国が将来の高齢化に備えているわけであります。ドイツも来年から繰り下げ、二〇二九年に六十七歳に達します。英国は二〇四四年に六十八歳まで繰り下げる方向であります。  日本は報酬比例部分を再来年から三年に一歳ずつ繰り下げますが、男女とも六十五歳にそろうのは二〇三〇年です。余りにも遅いと言わざるを得ません。早急に七十歳支給開始のスケジュールを国民に提示して、生活設計を見直すよう求めるべきだと思います。  議論されている三号問題は、お粗末過ぎて話になりません。論外です。解決策としては、空期間にカウントすると同時に追納期間を拡大して混乱を防ぐしかないというふうに思います。  次に、高齢者医療制度については、厚生労働省の改革案がかつての老人保健制度と非常に似通っていて、ある意味で先祖返りをしているというふうに言わざるを得ません。現行制度の方がまだましだというふうに思います。  次に、子ども手当ですが、私は、政治に虐待された子ども手当と呼んでおります。最大の問題は、国民の反感が極めて強くなってしまったことであります。一・五七ショック以来、二十年にわたって少しずつ積み上げてきた国民の子育て支援に対する理解と共感を一気に吹き飛ばし、あたかも子ども手当を受け取っていることが悪いことであるかのようなマイナスイメージを国民に植え付けてしまったことであります。  その原因は、第一に、財源もないのに過大な夢を振りまいたこと。巨額の予算を投入して国民の反感を買ったのですから、愚劣なばらまき政策と言わざるを得ません。これは言い尽くされていますので、改めて申し上げる必要はないと思います。  第二の原因は、扶養控除廃止や財政負担などで実質的な負担が増える一般国民の不公平感を増幅したこと。言うまでもなく、国家財政は、担税力に応じて税を徴収し、一旦プールした上で必要に応じて配分するものであります。ところが、今回は、負担と給付を直接リンクさせ、得組と損組に仕分して、いわゆる見える化するという無神経な改革に走ったため、多くの国民のやっかみと反発を招いてしまったのではないでしょうか。  第三の問題は、子供の数に関係なく一律にばらまいたことです。資料の二枚目を御覧いただきたいのですが、先進諸国で一律に支給している国は見当たりません。英国は第二子以降減額していますが、ほとんどの国は子供の数が多くなるほど手当を増額しています。ドイツは、第三子、第四子と子供の数が多くなるほど支給額を優遇しています。合計特殊出生率二・〇を達成したフランスは、第一子をゼロにして、第三子以降はどんどん加算しています。福祉先進国のスウェーデンに至っては、直近のレートで第一子一万四千円ほどですが、分かりやすく換算いたしますと、第二子は一万五千円、第三子一万八千円、第四子二万五千円、第五子二万八千円、第五子は第一子の二倍です。  大陸諸国は家族政策、北欧は男女共同参画と大義名分は違いますが、なぜ子供の数が増えると加算するのかというと、最大の狙いが少子化対策であることは言うまでもありません。巨額の財源を投入するのですから、政策目的に沿って配分するのはイロハのイであります。ただひたすら一律に配分するのでは政治ではありません。一見平等のように見えても平等ではなく悪平等、選挙目当ての単なるばらまきとしか言いようがありません。  第四の問題点は、所得制限を外したこと。先進国はいずれも所得制限なしですが、なぜかというと、大量の外国人労働者や旧植民地からの移民を抱えているため、所得制限を掛けると社会の中核を担う中間層以上は支給されなくなって、単なる貧困対策に陥ってしまうからであります。これでは国民の理解を得られず、しかも優秀なDNAを子孫に残しにくくなるので所得制限を外しているのであります。  日本はどうかというと、ほぼ単一民族で、ヨーロッパのような問題はないのに、児童手当時代にはあった所得制限をわざわざ外してしまったので、高所得層が新たに支給されて金持ち優遇の批判を浴び、国民の反発に拍車を掛けてしまいました。国民の連帯感を維持するためには所得制限が必要です。一例を申し上げれば、一千万円程度でもいいのではないかというふうに思っております。  子ども手当は一昨年の政権交代で実現しましたが、余りに欠陥が多いため、出生数の増加にはほとんど効果が上がっていません。昨年の出生率は、出生率は……(発言する者あり)黙って聞きなさい。昨年の出生率はやや上がる見込みですが、これはなぜかというと、出産適齢期の女性がどんどん減少しているためでありまして、肝心の出生数は一昨年に比べほぼ横ばいにとどまりました。巨額の財源を投入した新制度は大失敗だったと断定せざるを得ません。  以上の理由から、子ども手当を廃止して児童手当を復活させるべきです。ただし、子ども手当の大幅削減や廃止はもとより、児童手当に戻して、更に大幅に削減し震災復興対策に回すとか、少子化対策をおろそかにした自民党に至っては防衛費に使うなどといった議論もあるようですが、これは短絡的で、バターどころか子供のミルクを取り上げて大砲を造るアナクロニズムと言わざるを得ません。  子育て支援を更に充実しなければ日本の将来はありません。国家百年の大計を間違えないようにしっかり議論していただきたいと思います。  以上で終わります。
  10. 前田武志

    委員長前田武志君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 川上義博

    ○川上義博君 おはようございます。  被災に遭われた方に、まず心からお見舞いを申し上げたいと思います。  今日は、お三方の公述人、御苦労さまでございます。三人の方が大変激しい、熱血あふれる公述人でありましたけれども、予算に何とか反映をするための意見を聴きたいということでありました。  そこで、菊池先生に、先ほど、いずれにしろ金融緩和だけでは駄目なんだという意見がありましたけれども、ワルラスの法則というのが御案内のようにあるんですね。これは、今の需給ギャップというのはお金が不足なんだと、資金不足であるからデフレなんだと。だから、お金でそのギャップを埋めてやればいいというのがワルラスの法則なんですね。その辺りのことを先生はどのように、当然、財政出動金融緩和、量的緩和は必要だと思うんですね。だから、お金だけでは駄目だというのは、これはちょっと当たっていないんじゃないかなというふうに思います。  それと、これは藤井先生と菊池先生にお尋ねなんですけれども、阪神・淡路のときに前年対比で予算が一三〇%上がったんですね。景気は回復したんです。ところが、一部に今増税をするんだと、それで補うんだという意見があるんですけれども、その後、三年後に消費税導入して景気が物すごく冷えたんですね。だから、増税をして本当にこの時期にいいのかどうかということなんですね、前例がありますから。だから、財政出動するということを一番主眼に置いて、増税はしないというのが私は本道だと思うんでありますけれども、その辺りをお二人の先生にお聞かせいただきたいと思います。
  12. 菊池英博

    公述人菊池英博君) それじゃ、今、川上先生の御質問に対して私の見解を述べさせていただきます。  まず、デフレのときに、よく、ずっと本なんかを見ても、デフレは貨幣的な現象なんだと、だから金を緩めればいいんだということをおっしゃる方、今でも多くいらっしゃいます。これは一面の理ではあります。  しかし、過去十年間もうはっきり言えたことは、金融幾ら緩和しても実はデフレは解消しなかったということなんですね。これはもう硬い言葉で、経済学の言葉で流動性のわなというような言葉がございます。つまり幾らお金を出して、借りてちょうだい、借りてちょうだいといっても、実は借りる人は借りたお金で事業を起こさなきゃいけませんね。デフレですと結局は物価が下がってきますから、なかなか採算が立ちにくい。だからどうしても控えちゃう。だから、金融を、お金を、マネーを置いていた方がいいんじゃないかということになりますから、結果的にはデフレのときにはなかなか民間投資は出にくいわけです。そして、これが極端な場合はゼロ金利にしても民間投資マイナスになる、これが流動性のわなといいますか、要するに、デフレのときに幾ら金を緩めてもやっぱり民間投資は出てこないんだ、これが実を言いますと過去十年間日本で証明されたんですね。  ですから、それと、しかもこの十年間では金を緩めよう、緩めようとしました。だから、一時は日本銀行にあります各銀行の当座預金で三十五兆円まで増やしました。しかし、そのお金はどこへ行ったかというと、全部国内には使われないでニューヨークに向かって、結局は投機マネーになったと。だから、ニューヨークのあのバブルを助長したマネーの三分の一、人によっては半分は日本から来たと言われています。  ですから、これは、結局デフレのときにはマネーを緩めただけじゃ駄目だと。だから、デフレのときには、需要が足らない、それを補うには民間投資では駄目、したがって政府デフレ投資をきちっとしなけりゃいけない、だから結局政府投資が必要なんです。  ですから、私が申し上げたさっきのような形で、百兆円の三年間実行、毎年三十兆、それで政府がそういう方針をばちっと出す。それと同時に、民間投資をしやすいように、私の考えは、民間には投資減税をしたらいい、投資をして正規社員を雇ったら減税してあげますよというのが私はいいと思います。そういうことをきちっとやるのがよろしいと思います。  それから、二番目に先生の御質問でございますね。この際、災害復興費を調達するというような意味で増税をしたらどうかということです。  これは率直に申し上げて、私はもうどうしてこんな発想が出てくるのかなと思って、大変不思議に思います。やっぱり今、国民は一番困っているし、それは増税をなさるとおっしゃった、これは新聞によりますとどなたがおっしゃったか分かりますけれども、どういうふうにお考えか細かいことは分かりませんが、いずれにしても消費税を上げようということだと思いますが、消費税というのは大衆大課税ですから、こんなときに消費税を上げるというようなことにすれば、当然それは国民の購買力を奪います。  そして、まさに川上先生が今おっしゃったとおり、一九九五年の大震災のときに大変復興で公共投資が出たと。しかし、それを補う、カバーするような意味でも九七年に消費税を三から五%に上げましたね。これによって結果的には、あのときは財政支出も大幅にカットしましたから、あのときの緊縮財政が大きな災いになってその後の金融大恐慌も引き起こしたんです。金融大恐慌を引き起こしたのは橋本財政改革です。これです。これははっきりしています。このことをしっかり認識すべきです、現在。反省すべきところは事実で反省すべきです。  ですから、現在、消費税を上げるようなことは絶対すべきではありません。現在は、先ほど申し上げたとおり、もう幾らでもお金はありますから、しっかりと、まず埋蔵金五十兆、すぐ出ます。それからあと建設国債も出して、これはちゃんと日銀とうまくタイアップしていけば金利は上がらないで済みます。可能なんです。  そういう形で復興の指示を是非とも与党の方々は先頭に立って御指導をいただきたいというふうに私は思います。
  13. 前田武志

    委員長前田武志君) 次に、藤井公述人でございますが、その前に、川上義博委員の質疑はたしか増税に疑念を表されたと思いますが、もう一度ちょっとそこを質疑として言われたらどうですか。
  14. 川上義博

    ○川上義博君 いや、もうお分かりでしょう。
  15. 前田武志

    委員長前田武志君) そうですか。はい。  それでは、藤井公述人
  16. 藤井聡

    公述人藤井聡君) ただいまの菊池先生のお話をお聞きしながら、私が言うべきことがほとんどなくなってしまったんじゃないかなというぐらいきちんと今お話をお伺いしたところでありますが、今回の復興計画の観点から申し上げますと、この「緊急提案」の六ページに、「重要な留意事項」ということで、「東日本の「復活」を妨げる二つの阻害要因」というのを書かせていただいているんですけれども、実は、一つは先ほど公述申し上げましたTPPの加入でありますけれども、実はもう一つは「増税」ということで書かせていただいております。これはもうまさに御指摘のとおり、今増税をすると景気が冷え込んでしまうというところが問題であります。  これは、もう少し細かく申し上げますと、税収というものはGDPと税率とのある種の掛け算になっているわけでありますけれども、もし税率がGDPに影響しないとすれば、税率を上げれば税収は上がるんですけれども、実は税率を変えるとGDPも変わるという自明の関係があって、デフレの状況下において増税してしまうと余計に税収が下がってしまうということが、これはもう簡単に数理的にも出てくる、実証的にもそれは、先ほど橋本政権下というお話もございましたですけれども実証されている話でございますので、今は絶対に増税は避けなければならないというタイミングであります。  ただし、一言申し添えるとするならば、本当に日本経済が力強く、それこそ五年六年連続、例えば二・五%から三・五%程度の成長名目GDPでずっと遂げるというようなことができれば、それはかなり元気じゃないかということになれば、増税という議論を始めてもいいことになるかもしれません。その辺りは裁量的に判断をしていくということが大事ではないかなというふうに思います。  以上でございます。
  17. 川上義博

    ○川上義博君 増税で、我が政権の、菅デフレとおっしゃいましたけれども、菅政権増税をという、やろうとしているんですね、やろうとしている。小野理論というのがありまして、小野さんが菅さんに相当いろんなことをおっしゃっているんですけれども、これは増税してその税収で雇用を増やして医療とか介護の分野に、それが最終的には景気が良くなると、こういう理屈なんですけれども、増税して景気回復した例というのは、私は今までの歴史の中であるのかなと思うんですね。多分ないと思う、増税して景気が良くなったというのは私は見当たらないと思うんですけれども、それが可能なんでしょうかということを菊池先生にお尋ねしたいんですね、実際今そのようなことをやっていくことが。  それと同時に、藤井先生に、この地震を見るとインフラの整備がまだまだ不十分だったということで、強靱な計画をしなければいけないということなんですけれども、どういった分野に、重点的に本当にどういった分野に公共投資を具体的にこれからやったらいいのかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  18. 菊池英博

    公述人菊池英博君) 川上先生の御質問でございますが、この小野理論と言われますかね、率直に言って私もこういった理屈は初めて聞いたわけでございます。  結局、こういうことが言えるんだと思います。まず、小野先生がおっしゃいますのは、まず増税をする、それで、例えば増税をして税収を上げる、そして、それをそっくり社会保障、そちらに出す、そういうふうにすれば、これはプラス・マイナス・ゼロだから、結果的にマイナスの影響はないし、むしろプラスの方が大きいと。プラスの方が大きいとお考えだからそういう御発言もされておられるし、菅総理もそういうお考えを強くお持ちのようでございます。  しかし、これはちょっと、大変私はおかしいと思います。といいますのは、まず増税をいたしますと、増税の効果というのは物すごく強いんですよ、増税というのは庶民から、国民から強制的にその富を吸い上げるわけですから。そういたしますと、例えば消費税を上げる、そうすると、そのマイナス効果の方がその後、支出をするよりもずっと大きいわけです。例えば、消費税を上げますと、五%から一〇%に引き上げるということをいたしますと、五年後のGDPというのは大体四十兆ぐらい落ちるんです。これは、宍戸先生という企画庁の審議官をやっておられた日本の世界的なモデルの権威者がございますが、この先生が計算したモデルで計算しました。  ですから、消費税を引き上げる、増税をすることによるマイナス効果は非常に大きい。名目GDPががたんと、しかも徐々に徐々に落ちていきますからね、これは。かなりきついです。そうすると、じゃ、その分だけ支出をするとしても、支出をするプラス面も確かにあります。しかし、マイナスの方がずっと大きいと思います。  それから、税収の面から見ればプラス・マイナス・ゼロですから、そういう意味での財政再建にはなりませんね。むしろ、経済を弱体化させるという方向の方が強いと思いますから、このお考えは私は賛成できないんでございます。  よろしゅうございますか、これで。
  19. 藤井聡

    公述人藤井聡君) 具体的に強靱化のためにどういうインフラ投資が必要かということでございますが、まず第一に、建物の耐震強化というものが阪神・淡路以降随分進められてはいるんですけれども、まだまだ補強すべきところがたくさん残っています。そもそも、一旦建てられたものの耐震強化というのは、あえて耐震強化の施工をしないといけませんので、それがまだ終わっていないところがたくさんあります。それの補助金を徹底的にやっていくということがまず一つ挙げられます。これは非常に基礎的なところでありますけれども、それに加えてインフラの多重化であります。  先ほど公述でも申し上げましたですけれども、東海地方地震というものが非常に危惧されているわけでありますけれども、それが一旦寸断されますと、東海地方というのは新幹線、高速道路、一号線等々が一つのところに全部まとまっているんですね。そこが壊滅的なダメージを受けると東西の物流というものが全然駄目になってくるかもしれないと。それを復旧するために数か月ももし掛かったとすると、もうこれ日本経済に計り知れないダメージを及ぼす。  そういうことを考えますと、当然ながら山の中に通すというのもありますし、先ほど公述でも申し上げましたように日本海側のルートというものをもっと強靱化していくと。その日本海側のルートを、日本海側と東海側の間のインフラ網というものをきちんとつくっていくということがまず重要であると思います。これは我々の専門用語ではリダンダンシー、冗長なネットワークをつくっていくということであります。  このリダンダンシーの議論は、実は今、東西の国土軸に関しては今申し上げたとおりでありますけれども、さらに地方の中核都市とそれぞれの地方都市の間も複数ルートを確保していくことが必要であります。例えば中越地震のときに、リダンダンシーが一定確保されておりましたので、一つの道路が駄目になったんですが、すぐにもう一つの道路で救援することができたという事実がございます。それがないと本当に見捨ててしまうことになってしまうんですね。ですから、平時においてはそれほど効率的ではないと思われかねないものでも、そういうまさかのときのために確実にこのリダンダンシーを確保していくということが不可欠であります。  それともう一つは、実はもう日本の土木技術はかなり耐震強化してきましたので、今回の震度七の地震でも壊れなかったインフラというのがたくさんあったんですが、それでも残念ながら壊れた体育館とか橋とかもあったのは事実なんですね。  それはなぜかというと、一つは、財源が少ないということもあるんですけれども、もう一つは、実は老朽化が激しくなっているんですね。そもそも日本のインフラというのは高度成長期のころにたくさん造り始めたんですけれども、それがちょうど五十歳という、もう本当に定年退職時代を、もう高齢化の時代を迎えておりまして、それに対してきちんとした投資をしないとちょっとした揺れですぐ潰れてしまうと。私の試算によりますと、日本全国の橋梁を、橋を全部きちんと老朽化対策するためには八十兆円も掛かるというようなお金が試算されているんですね。これ、四十年ゆっくり掛けてやっても、年間二兆円ずつ橋だけで要るんですね。それで、もうほったらかしておくと、ふだんやったらおちおち歩いていると大丈夫なんですが、地震が来るとすぐ潰れてしまうと。  ですから、こういうものが、これ橋だけではなくて、堤防とか、場合によってはダムなんかにあると、これはもう取り返しの付かないことになりますので、是非そういうようなところの対策というものが必要になってくるというふうに考えているところでございます。
  20. 川上義博

    ○川上義博君 どうもありがとうございました。時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございます。
  21. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 自由民主党の福岡資麿と申します。  まず冒頭に、今回の東日本大震災でお亡くなりになられた方、心から御冥福をお祈りいたしますとともに、被災に遭われた方全ての方々に心からお見舞いを申し上げさせていただきたいというふうに思います。  また、今日は、三人の公述人方々、お忙しいところ本当にありがとうございました。私は、前の質疑者と違って、大変参考になるいろいろなお話を承ることができたというふうに思っております。いろいろ、それに基づいて質問をさせていただきたいと思います。  まず、基本的な考え方についてお伺いをさせていただきたいと思います。  今、菅総理は、第三の道ということを提唱されているわけであります。第一の道というのが、公共事業中心の経済政策ということ。第二の道というのが、行き過ぎた市場原理主義に基づく経済政策ということを御本人はおっしゃっているわけです。そして、目指すべき第三の道は、新たな需要に雇用を生み出すことで成長のきっかけとするということをおっしゃっておりまして、その分野として、介護であったり、また医療であったり、子育てであったり、環境、こういった分野を挙げておられるわけであります。  私自身、自民党の厚生労働の部会長代理を仰せ付かっておりますので、医療とか福祉とか、そういった部分の重要性というものは十分認識をしているつもりであります。しかしながら、民間の試算とかでは、医療とか介護についてはほかの産業に比べて労働生産性が低いんだというような指摘もされておるわけであります。  福祉財源を確保するためにも、そこはやはり強い経済を復活させるために、まずは景気浮揚策、それは企業の支援策であったり公共投資であったり、そういったものだというふうに思いますが、そういったものにまず重点を置いて、それで経済を活性化させた上でそこで得た税収を福祉に回すということが私は本来のあるべき姿ではないかというふうに思っておりまして、医療とか介護の雇用を確保することをまず優先的に行っていくということで成長を促すということについては非常にプロセスとして容易ではないような気がするわけでありますが、その点についてのお考えをまず三人の先生方からお伺いしたいと思います。
  22. 菊池英博

    公述人菊池英博君) まず第一に、菅総理がおっしゃっておられる三段階の道ですね、第三の道、つまり、あらゆる需要を喚起して雇用を促進すると。この方針は正しいと思いますし、いいと思います。ですから、公共投資中心に行き過ぎてもいけないでしょうし、特に市場原理、これはもう日本を惨たんたる形にしてしまったわけですね、先ほど冒頭申し上げましたとおり。この惨たんたる状況にしたのはまさに市場原理主義、新自由主義の政策だったんです、十年間ですね。もう結論が出ているわけです。第三の、まさに雇用を増進していく、これは大切だと。  そこで、問題なのは、どういう分野で雇用を促進し、それが同時に日本経済全体にとってプラスになっていくか、それから長期的になるかと、こういうことですね。これは、確かに今民主党さんは一つの新しい政策を立てていらっしゃいます。それを中心にやっぱり具体化していただいていいんじゃないかと思うんです。何といいましても生活が第一というスローガンは本当にやはり大きいと思うんです。恐らく、野党の方でもそんなに反対はされないと思うんです、このこと自体はね。どういうふうにしてそれを具体化していくかについては、議論は分かれるでしょう。  それで、私が先ほど、時間がありませんでしたからちょっと書きませんでしたけれども、例えば、じゃ、どういうところに、先ほど申したとおり、私が申したような三か年計画で思い切って百兆出せというふうに言うかといいますと、生活に密着した公共投資、それから社会的インフラ投資、脱石油・新エネルギーの関連投資、それから低炭素、医療、介護、福祉、観光、IT、教育、科学技術等への集中投資。  それで、今民主党さんが出されていますね、新成長戦略については幾つかいろいろ書いてあるんですよ。そのそれぞれの項目については私は賛成です。ただ、どれにウエートを置いて、どうやってそれを具体化するかということをもう少しお考えになるといいんじゃないか。それで、どうも民主党さんが今の菅政権になられてからはそれを民間に委ねられている感じがするんですね。  ところが、先ほどから申し上げているとおり、デフレでは民間投資というのは出てこないんですよ、ますます冷え込んでいますから。だから、それをきちっとして引っ張り出すのは政府であり、政府投資なんですよ。そして、民間投資を引き出すようにしていく。こういう政策をきちっと出すことだ。こういうことが正しいといいますか、現在の適切な道だと思います。そうすることによって、やはり日本経済というものを何とかして、現在のこのマイナス成長、ずっと続いているマイナス成長からもっとプラス成長にする。  例えば、さっき申したとおり、三年百兆を出したところで、GDPデフレーターはようやく三年目ぐらいにプラスになるぐらいだと思いますよ。それで、今のデフレは本当に深刻なデフレで、国民は意識がまだ乏しいんですよ。実は真綿で首を絞められているんです。徐々に徐々に絞められて、もうそろそろ窒息ですよ。どおんと来て、ああいう震災が来ちゃって、事の重大性を何か我々にしっかり考えなさいよと言われているような気もいたしますけれどもね。  いずれにしましても、今回のケースといいますか、長期的に見て、だから最初の百兆のうちの三十兆は四月早々に補正を組んでいただいて、そういうところ、まず東北地方の災害の復興、開発、これをきちっとしてプランを立てる。しかも、それによって住宅にしてもあるいは港湾施設にしても、先ほど藤井先生も御指摘でございましたが、そういう新しい次元に立って、そこから国づくりを新たにつくっていくんだと、そういう視点でやっていくのが望ましいんじゃないかと思います。
  23. 藤井聡

    公述人藤井聡君) 第一の道、第二の道、第三の道という、そういう分類がどこまで妥当なのかというところは議論のあるところかと思いますが、少なくとも、世の中の役に立つ仕事を起こして、仕事をつくって、その仕事を通してみんなが働けるようになって、みんなが幸せになっていくというのが、これが雇用と経済の全ての基本だと思います。それで考えますと、本当に必要な需要というものを起こして、それを通して雇用をつくっていくと、これはもう一つ目も二つ目も三つ目もなく当然のことであると思います。  その点で考えますと、第一の道が仮に否定されるとすると、その前提はいわゆる公共投資というものが不要である、公共投資をやることが日本国民の幸せにとって妨げになるというような場合においては第一の道はやめなければならないというような話はあるかもしれません。しかしながら、今公述申し上げましたように、今本当に求められているのはそういう公共投資であって、まず復旧というのはこれは公共事業でありますから、今もう全国の建設業者の方はもう工事を差し止めて、ふだんの発注を全部差し止めて、全て東北地方、東日本に注力させてくれというようなお願いを政府に言っていらっしゃるという記事も載ってるぐらいでございますから、今本当に求められているのはいわゆる公共事業であるというふうに言えると思います。それが一点目であります。  したがって、それに、平時においても、その復旧復興だけではなくて、先ほど御質問の中でもお答え申し上げましたですけれども、老朽化対策とかレジリエンス対策とかリダンダンシーの確保とか、いろんな意味において公共事業が必要であるということだけではなくて、例えば港をきちんと大きくしていくというようなことで、日本の国際競争力というのが今本当に傷つき始めているんですけれども、これ、「公共事業が日本を救う」という拙著の中で詳しく書かせていただいているんですけれども、港が必要であったり、空港とのアクセスが必要であったり、道路のサービス水準というものは日本が世界の中でも先進国の中で最低水準であるというような客観的なデータもありますから、それをきちんと道路を造っていくということで経済力をつくっていくとかいうような形で、詳しくは今申し上げられないですけれども、そこに本当に日本国民の暮らしのために必要な公共事業があるんですね。  ですから、それに基づいて雇用をつくっていくというのは、医療とか福祉とかというものが本当に必要とされているので、それに基づいて雇用をつくっていくというのと同じような話であると思います。あとは、そのさじ加減をどうするかというのは是非国会の皆様方で御議論をいただければと思いますけれども、それは、公共事業は要らないと言うのは福祉が要らないと言っていることとほとんど同じように私には聞こえてまいります。したがって、是非バランスある御議論をお願いしたいというように思います。それが一点目であります。  二点目は、これは一言で申し上げますと、乗数効果の議論ということになるわけでありますけれども、これをあえて申し上げますと、よくこれ、学生に申し上げるときにいつも、かき氷を思い出しなさいと、こう言うんですけれども、かき氷というのはちょっと蜜掛けると、何かちょろっと掛けたら何かこう、こんなんで大丈夫かなと思って上から掛けて、不安なんですけど、食べたら結構全部甘いんですね。ところが、その蜜を根元に何かストローか何か突っ込んで入れてしまったら、上全部甘くなくて下だけ甘いということになるんですね。これが乗数効果と。  これは何を言うているかというと、最終需要であるところの本当のサービス産業だけに投資をしたりとかすると、全体は甘くならない、景気が良くならないんですね。ところが、公共事業というものは、橋を一個造るためにも輸送は要る、鉄は要る、コンクリートは要る、それからもう卸売までいろんな産業が、機械屋さんは要るし、その油も要る、ねじも要る、ばねも要る、何もかも要るようになる。  ですから、経済を全体が連関するためには、上から蜜を掛けるような景気対策が公共投資なんですね。これで逆に分かりにくかったかもしれませんけれども、いつも学生には、学生はいつも苦労しているのかもしれませんけれども、分かりやすいと思いながらこれはいつも、これが乗数効果なんである。すなわち、産業連関しているので、乗数効果が高いものという意味では公共事業というのは高いのは当然なのであって、それがケインズ先生がおっしゃっていたことであるというのが二点目のことでございます。  以上でございます。
  24. 岩淵勝好

    公述人岩淵勝好君) 学生を預かる者として、最近の超氷河期ということは大変に頭が痛いところでございます。  それにつきまして一、二点要望を申し上げたいと思うんですけれども、菅総理の言われる、一に雇用、二に雇用、三に雇用というのは、これはもうもろ手を挙げて大賛成でありまして、それほど重要なことであるというふうに思います。  ただ、言葉はちょっときつくなるかもしれませんけれども、経営者というのは企業最大利益を追求する種族でありまして、行儀は甚だよろしくない、社会全体のことを考えているかというと、それほどのことでもないというのが現実であります。ですから、過去のことを申し上げてなんですけれども、雇用の規制緩和を、これは自民党民主党両方責任があると思うんですが、なさったこと、それから最近では就職協定がなくなった、これは別に政府の責任というわけではありませんけれども、そうした規制がなくなると、みんなそれぞれ好き勝手自分のやりたいことをやってしまうというのが残念ながら最近の経営者の通弊であろうというふうに思います。  一人一人の雇用ということでいいますと、私にとって比較的身近な福祉、介護などの業界は極めて待遇が悪い。これは皆さんの努力で大分良くなってきたとは申しますけれども、しかし、例えば保育の現場も今や介護とほぼ同じぐらいの状況でありまして、いわゆるこの福祉関係というのが極めて劣悪な雇用条件に置かれているということでありますので、ここのところはちゃんとした手当てをしないと、雇用対策とはいっても学生に自信を持って勧められませんね、そういう点では。  ということでありまして、社会全体にとっても雇用の空洞化がどんどんどんどん進んでおりまして、雇用の空洞化がよく言われておりますけれども社会保障制度の空洞化につながって、年金の不払、それから様々な社会保険の落ちこぼれ問題が発生しております。ですから、これは日本の将来にとって極めてゆゆしき問題でございますので、目先にはどうということ以上に、これから先できるだけ雇用の規制を逆に強化していただきたいというふうに思います。  民間活力とか民間に任せればうまくいくというのは、ごくごく、多分神話、伝説の世界だろうというふうに私は思っております。ですから、そこのところは国会の先生方に強く、今まで雇用規制の緩和が一体何をもたらしたかということの反省も含めて、しっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。よろしく。
  25. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 ありがとうございます。  それぞれの先生方から大変興味深いお話をお聞きすることができました。  岩淵公述人にもう一点お聞きさせていただきます。  岩淵公述人、宮城県出身ということで、今回、御親戚、御友人を含めて、被災に遭われた方たくさんいらっしゃるとしたら、心からお見舞いを申し上げさせていただきたいと思います。  先ほど、公述の中で一つ、承っている中でちょっと補足して御説明いただきたいと思いましたのは、年金の支給年齢を上げるお話をされました。それによって国の財政負担が軽くなるということについてはまあ理解できるんですが、それによって出生率が回復するというようなお話をされたと思いますが、そこから出生率回復に至るまでの、どういう根拠でそういうことになるのかということについてちょっと補足をしていただければと思います。
  26. 岩淵勝好

    公述人岩淵勝好君) 誤解を招いたとすれば遺憾でありますけれども、それは前後関係が逆で、高齢社会を乗り切るためには年金の支給開始年齢の引上げというのが避けて通れないということを申し上げたわけでありまして、そのことによって出生率が上がるということとは直接関係はないというふうに思います。
  27. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 ありがとうございます。  次に、藤井先生にお伺いをさせていただきたいと思います。  先生が昨年出されたこの「公共事業が日本を救う」という本が刊行されたときに、私もすぐに購読して、読ませていただきました。実はその中に「「巨大地震」に備える」という章がありまして、その記述の中にも、宮城県沖については三十年以内の発生率が九九%というようなことも書いていただいた上で、警鐘を鳴らされていたわけであります。今回のその想定を超える規模というのはあったわけでありますが、本当にもっと国として備えておくべきことはなかったのかというようなことも考えていかなければいけないというふうに思います。  先ほど、公共投資分野についてはいろいろな具体例について先生からお話をいただきました。ただ、例えば民間の建築物とかでも大分老朽化進んでいるものとかもありますし、例えば高度成長期に建てられたマンションとかが今どんどん古くなってきていて、ただその五分の四の建て替えの条項のハードルが非常に高くてなかなかその建て替えも少ない。そういうのが震災となって崩れてしまったときに非常に町全体に危険を及ぼす可能性があるというのは、この間のクライストチャーチの地震でも明らかになったわけであります。  また、電力供給という意味でも、関西と関東と周波数が違うということで、関西の方は電力が余っていてもなかなか関東に十分送れない。そういった中で、例えば変電所の数増やすとか、もう思い切って周波数統一を目指すとかということも含めて、そういった部分について民間部分でこういうことを地震に備えて進めていかなければいけないようなことがあるとすれば、それについて先生の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  28. 藤井聡

    公述人藤井聡君) 民間部分に関しまして、まず政府からの補助という点におきまして、今いろんな自治体さんの方でも進めていらっしゃる耐震補強の補助というものの補助率の引上げとか、その辺りのところが当然考えられるかと思います。それをもう一度見直すというのは、既にもういろんな自治体さんで始められていると思います。それが一点でございます。  民間さんの取組として、実は、BCPと先ほど申し上げましたですけれども、例えば一つの事業が駄目になったときに、それですぐにほかのもので代替するというようなことで事業をずっと続けていこうとすることをあらかじめ考える、これがBCP、事業継続計画でありますけれども、それをきちんと考えていく上で、幾つかの法制度上の緩和事項の問題があろうかというふうに思います。  例えば、事前にいろいろな業種間で、地震でまさかのときにこちらが潰れたらそれで代替しましょうという話合い、これをきちんと平時でやるためにはどうしても独占禁止法との絡みが出てまいります。したがって、まさかのときのためにこの独占禁止法の運用の規定というものを緩和していくというような議論が一つ大切ではないかなというふうに思われます。そうすることで、産業のいろんな業種間の中でのいろんな、まさかのときのためにタッグを組めるような格好をつくっていくということが必要かと思います。  同様に、労働法制に関しても、こちらからこちらの会社に行っているときに、こちらの命令系統に従えないというような契約があったりとかですね、その部分を、まさかのときにこの人は、いや、僕ちょっと法律的にここで手伝われへんからいうことで、それで復帰も何もしないというふうなことになるのはこれは誠におかしいことでございますから、まさかのときはある程度、平時の効率化を目指すような法制度を緩和するというようなところをきちんと考えていく必要があろうかと思います。この問題は、立法の段階において余りにも平時のことについて考え過ぎていて、いわゆるこういうまさかのときのことに対する配慮が少なかったんじゃないかなと思います。  今申し上げたのは、立法の中できちんと平時と異常時というこの二つをきちんと見据えた上で、過度な効率化というのは、実はこれ、漢字で言いますと脆弱性を助長するものでありますから、ですから強靱化のためにはある種、ある程度のトレードオフというかバランスが必要になってくるんですね。それを感じた法律の見直しというのをいろんなところで必要になってくると思います。  すなわち、何かの被害があったときに、みんなで仲よくしないと、一致団結しないと立ち向かえないということであります。ですから、きちんとみんなが仲よくなれるような、業界の中で仲よくなるようにしておかないといけない。そのために、西と東でヘルツが違うというのもこれまた一つの問題なんですけれども、これは歴史的な経緯があってなかなか難しいところはあるんですけれども、そこの部分をきちんとコンバートするような事業をきちんと進めておくとかいうふうなことも考えられるかとも思います。  そういうふうな形で、いわゆるリダンダンシーとか冗長性とか、過度な効率性を目指すのではなくて、まさかのことを常に考えながらやっておかないと物すごい大痛手を被ると。それがまさに今、電力で東日本を今覆っているところであって、これが電力が少ないからといって工場が、これ、例えばほかの地域に日本国内で移転するのならば日本全体のGDPはそれほど変わらないですけれども、これを機に海外にいろんな工場が抜けていくことになれば日本経済的凋落は更に進んでしまうということが危惧されます。  したがって、それを回避するためにも、例えばその移転のための税額の補助とか、国内であれば補助をするとかいうようなことも考えていったりとか、いずれにしても、まさかのときを考えるような法制度というものをもっと考えていく必要があろうかと思います。  以上でございます。
  29. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 ありがとうございました。  岩淵公述人にもう一点お伺いをさせていただきたいというふうに思います。  先ほど、子ども手当等についてはいろいろ御意見を承りました。私も、その所得制限等を含めて、そういうことあってしかるべきだというふうに思いますが、もう一つ、社会的問題として待機児童の問題があるわけでございます。  やはり、預けたくても預ける場所がないということについては切実なニーズとしていろいろな方から上がってきているわけでありまして、そういった中で、その解決策の一つというわけではありませんでしょうけど、幼保の一体化という議論がこの度出てきています。現場は非常に今それで混乱をしているというのが実情だというふうに思いますが、今の示されている幼保一体化案について先生の御見解をお聞かせいただければと思います。    〔委員長退席、理事森ゆうこ君着席〕
  30. 岩淵勝好

    公述人岩淵勝好君) その前に、先ほどの質問の中で、もし年金の支給開始年齢の引上げということによって国民の年金に対する信頼が高まり社会が安定化してくるということになれば、ある程度出生率の向上に役に立つんではないかということでありますが、直接的にはなかなか難しいところであります。  今の幼保一体化の問題でございますけれども、私はこの方法で、厚生省案でそのまま進んでいって差し支えないというふうに思っております。それはどういうことかといいますと、現場が混乱しているというのは、これはもう当初から言われていたことでありまして、厚生労働省あるいは文部科学省の役人に言わせますと、もう絶対にできないということを当初から強く言っておりました。それが、この政治主導で曲がりなりにも一つの方向性が出てきたということは私自身評価しております。  具体的には、それぞれに、例えばお受験幼稚園とか多額の寄附、何かそういうのを温存するということなどでやや問題点があるように言われておりますけれども、そういう意味で言いますと、国の財政に頼らずに独立独歩をやっていけるところはそれはやっていっていいわけでありますし、国の財政が必要なところというのはこれから先、国が国の負担分、助成金をかなり絞り込んでいくというふうに見ております。当然のことながら、日本社会保障制度もほとんど経済的なインセンティブを働かせて制度に誘導していくというのが常でありますので、そういう意味でいえば、その助成金あるいは国の負担金を幼保一体化した形、そういうところに集中的に投資していくというようなことが想定されますので、いずれそれほど時間が掛からずに混乱は収束していくのではないかなというふうに見ております。
  31. 福岡資麿

    ○福岡資麿君 まだまだ用意していた質問ありますが、時間が参っておりますので、これで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  32. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  最初に、この度の東日本大震災で亡くなられた皆さんに衷心より哀悼の意を表したいと思います。同時に、今もって極めて厳しい生活を繰り広げております被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。  また、本日は、御多忙の中、三人の公述人の皆さんから大変な有益な御意見をいただいたと思っております。誠にありがとうございます。  まず、東日本大震災関係について述べてまいりますと、私はやはり国会は復興・防災・エネルギー国会と命名してもよいぐらいに議論を深めていくべきだと思っておりますし、時機を得て東日本大震災のいわゆる復興計画、将来の大規模震災に対する防災計画などを抜本的に見直す議論はもちろん必要でありますし、また復興庁の創設ということが言われておりますけれども、私は防災計画などについてもやっぱり省庁横断的に統合的にやっていく必要があると思いますので、やはり防災庁ですか、そういった創設についても検討をしなければいけないのではないかなと、そんなふうに思っております。  また、既に東京都のイニシアチブで八都県市のFEMA、これが動き始めておりますので、そういったことが非常に参考になるんではないかな、こんなふうに考えておりまして、また、原子力については、ブレーキに当たる規制官庁、それからアクセルに当たる推進官庁がありますので、それはやはり分離していくことも検討に入れていかなければいけないんではないかなと、そんなふうに思っている次第であります。  国家は、大規模災害が起こったときにはまず国民の生命、身体、財産、これを守ることが第一の大きな使命でありますけれども、さらに財政でいうならば、私は、国家財政に大きな負担をもたらさないように事前にいかなる仕組みを考えるかと、これを準備しておくかと、それが非常に大事であると思っておりますので、日本においてはもう言うまでもない話でありますけれども、巨大都市を襲う巨大災害が憂慮されておりますし、これは日本に限らずアジア全般に対して言える話だと思っております。  日本被害想定を考えてまいりますと、首都の直下型地震で百十二兆円、これは間接、直接両方合わせてでありますけれども、東海地震が三十七兆円、東南海・南海地震は合わせて五十七兆円と、総額二百兆円を超える規模になるわけでありますので、これは東日本大震災の復旧復興を十分に議論していかなければならないわけでありますけれども、ただ、それはそれとして当然やっていかなければいけませんが、将来のリスクファイナンス、これをどうするかということが非常に私は大事だと思っておりまして、やはり政府が災害が起こった後に少しでも国債発行に過度な依存をしなくてもいいような仕組み、そういう復旧復興計画が円滑にいくように、災害リスクに対して、起こる場合にいかにファイナンスをするかということが仕組みとしてつくり上げておく必要があると、そういうふうに考えております。  例えば、具体的な例を申し上げますと、これは多くの先進国などにおいては行われておりますけれども、日本はまだまだこれからの段階だと私は思いますけれども、大規模な災害リスクに対する復興資金問題をうまく分散するという、そういう民間保険、その機構があると。そういうものがあって、国ももちろん関与しておりますけれども、カリブ海諸国などにおきましてはハリケーンと地震が非常に多いと。そういうことで国際保険市場にうまく乗って住宅資産や商業資産のほとんどの災害リスクを国際保険や大災害再保険市場、これに転嫁するような仕組みをつくっているわけですよね。  だから、そういうのをやはり私はアジア太平洋、日本も当然含むわけでありますけれども、そういう仕組みを是非つくっていくべきではないかなと、そんなふうに思っておりまして、この点については菊池公述人に、こういう仕組みをどうつくるかということが非常に大事だと思っておりますので、この辺についての御意見があればお聞きしたいと思います。
  33. 菊池英博

    公述人菊池英博君) 大変広範囲にわたって、今先生のお話をお聞きするだけで私も勉強になる次第でございますが。  確かに、こういう大災害は、これやはり戦争と同じじゃないでしょうか。私は、基本的な認識はそういうような角度で考えるべきじゃないかと、基本的に。ですから、そういう事態に遭遇したときに、じゃ、どう対処するかと。  まず、取りあえずは今回の東日本の災害に関してでございますが、じゃ、いろいろと復興庁をつくるとか、それから災害庁をつくるとかいろいろあると思うんですけど、私は、実はそういうものをつくってどの程度機能するかについてはちょっと疑問を持っているんですね。といいますのは、やっぱりこれは官僚組織に依存いたしますと、またそれぞれの地域でそこだけでは済まないことがたくさんあるわけです。現在はそれぞれの省庁が縦割りできちっとした組織を持って、地方組織も全部そうですからね、なっているわけです。  ですから、そういうものをやるよりは、やっぱり官邸の中にこれ相応のものをきちっと立ち上げて専担の閣僚を置くとか、そしてその指示は各省庁にもちゃんと行き渡るというような組織系統の方がよろしいのではないかと私は思います。  それから二番目には、今おっしゃられましたこういう災害に対して保険の面からどうするかということですが、これは確かに、御案内のとおり国際保険なんかはかなり進んでいることは進んでいますね。民間の保険会社は全部再保険をかなり掛けておりますから。今回でもちょっと聞きますと、実損部分はそんなにないんじゃないかという意見もございます。大体再保険はかなりしておりますし、それから地震保険関係のこともかなり進んでいますから。ただ、そうはいっても民間保険の支出というのは相当出ますし、それから今後のことを考えますと、こういうことに対してどう対処するかと。  これは、まさに戦時中のことを考えますと、御存じのとおり再保険を受け入れたというのは政府です。日本の場合でもね。だから、これはどこの国でもそうです。どこの国でもそうです。第二次世界大戦のときに各国とも全部、保険会社、再保険制度というのは取れませんからね、もう。ですから全部これを、再保険を受け入れていったのは政府でございます。ですから、そういう意味では、まず一義的には国内の保険会社と政府との関係、ここの関係で再保険制度、リスク離散して、いざというとき緊急リスクに対しての再保険というのを政府としても関与するんだということをはっきりさせておくと。これはもちろん民間として国際的にそういう再保険網を整備することは大切だと思います。    〔理事森ゆうこ君退席、委員長着席〕  それから三番目の御案内の、今度は資金の問題でございますね。これはやっぱり、これまた戦争のことを考えますと、特に戦勝国であったアメリカのことを考えますと、これも御案内かと思いますが、一九三〇年代にアメリカは大恐慌で、大恐慌を解決できないまま実は戦争に突入したんですね。それで結局これが始まりまして、大恐慌から戦争に入ったと。これ一九三九年からもう戦争で、アメリカの参戦は一九四一年でございます。それからずっと戦争が始まったんです。このときには、ずっと政府国債を出しまして、そしてそれを市場でどんどん消化していく形にしました。  そのときのやり方は、政府国債を出しますね。で、まあ今日五百万ドル出したと。そうしますと、中央銀行のフェデラル・リザーブ・バンクのワシントン、中央銀行がその五百万ドルを買い上げると。そういうことをずっと続けたんです。ずっと続けたんです。これによって、実は一九三三年から一九四七年までですね、ずっと金利を安定させたんです。短期は〇・三七五、長期は二・七五でずっと安定しました。そういう政策を取って、国家と中央銀行が一体となって戦争に伴う対応をしたんですね。日本でも、結局、非常に現実的に考えられるのはこの考えだと思うんですよ。  先ほど藤井先生もいいことをおっしゃられて、大変私も尊敬しておりますが、ちゃんと日銀と政府がアコードを結ぶべきだと、まさにそのとおりなんです。私も申しましたとおり、先ほど百兆の大規模な補正予算を組めと、組んでほしいということを申し上げましたが、これによっても金利は、今申し上げたような日銀と政府が一体化すれば金利は上がりません。これは大恐慌のときに証明済みです。証明済みです。ですから、それ相応のことをきちっとやるべきだと。  その後、確かに大恐慌の後どう処理したかということはございますが、ちょっと長くなりまして、もう一言申しますと、そのときには確かに中央銀行が持った、保有した国債が多くなったんですね。中央銀行が国債を保有しますと、これ、ゼロ金利国債なんですよ、さっき申し上げたとおり。それで、結局、さらには民間もかなり持っていましたから、そうすると、民間が持っていたときに、まあ民間、平時に戻りますと金利が上がってまいりますから、その金利リスクを全部政府が負ったんですよ。全部を負った。そういうことによって、金利の市場、国債のリスク、価格が下がります。それを全部政府が負って、そして民間にはその負担を負わせないということを大恐慌から第二次世界大戦後のアメリカでやりました。  これなんかは、我々としては大変参考になるのではないかと思います。
  34. 加藤修一

    ○加藤修一君 ありがとうございます。大変参考になりました。  それでは、岩淵公述人にお願いなんですけれども、今回の大震災があったときは仙台の方にいらっしゃったということで、今更に大地震の恐ろしさを味わったと思っておりますが、被災地のいわゆる生活基盤は根こそぎ流されているわけですよね。言うまでもなく、学校や保育所、幼稚園といった子供の教育育成機関も甚大な影響、被害を受けているということでありますけれども、厚生労働省は厚生労働省なりに子供の育成の関係を含めていろいろやっているようでありますけれども、こういう教育・保育施設の整備、教育、保育士の確保、そして子供の精神面でのケアといった、そういうソフト、ハードの面ですね、こういった面についてどういう支援が要請されていると考えるか、あるいは被災地における子供・子育て支援としていかなるものを今後進めていくべきかと、この点が第一点と。  もう一点は、自助、公助、共助の関係を含めて、これは、NPOは特に共助の関係について非常につながっている話でありますけれども、災害におけるNPOの役割、もちろん今、今国会においてもNPO法案の改正ですか、あるいは優遇税制の関係についても出てきている話でありますけれども、それはNPOの活動がもっともっと充実していけるようにやっていく中身になっているわけでありますけれども、今後のこの災害とNPOの活動について、どのような関係性についてお考えがございますでしょうか。
  35. 岩淵勝好

    公述人岩淵勝好君) 大変恥ずかしながら、私仙台にいる予定だったんですが、その前に地震が起こってしまって、まだ現地踏んでないというのは大変お恥ずかしい話なんですが、ということであります。  それで、被災地における子育て支援という観点から申し上げますと、PTSDとか様々な形の子供の心のケアということが大分重要になってくるということはもちろんでございますけれども、あえて私、長期的なことをお願いしたいと思っているんですが、かつて東北地方というのは出生率が日本で一番高くて六・〇前後だったんですね。それが今や、九州地方はずっと上位に上がっていますが、東北地方はどんどんどんどん下がっているというような状況です。今回の震災を経て更にこれから先出生率がどんどんどんどん落ちていく、そういうおそれが非常に強いというふうに思っております。  でありますので、例えば保育所の再建、それから幼稚園の再建ももちろんでございますけれども、そういったところに大きなウエートを掛けながら、しかもなおかつ、さっきおっしゃいましたように、NPOの活躍がもっともっと進むように、実は私どもの大学はボランティアを単位化しておりまして、大変に盛んなところなんです。でありますので、学生諸君が今も被災地で大変に頑張っているところでございますけれども、そういうことが、そのボランティア、NPOの活動がやはりもう少し社会の支援あるいは理解を得られるように、法改正をなさるようでありますけれども、ひとつ一段の御助力をお願いしたいというふうに思います。  今回も、やはり町役場がなくなったり、いろんな形で行政が活動できないところを様々な形でNPO、ボランティアが現地へ乗り込んで頭の下がるような努力をなさっているということでございますので、ひとつこれからの社会、特に何事も行政頼りにしない社会をつくるためにも、先生方の御助力をよろしくお願い申し上げたいと思います。  ありがとうございます。
  36. 加藤修一

    ○加藤修一君 どうもありがとうございます。  それじゃ、藤井公述人にお願いしたいんですけれども、これ首都圏直下型ということも想定せざるを得ないわけなんですけれども、それをどういうふうに対処するかという中に、やはり首都圏が持っている様々な情報の関係、バッファー、代替機能等を含めて、これは首都圏の周辺に災害が比較的少ないところもあるんですね。私、群馬県に住んでおりますけれども、災害が少なくて有名なところなんですけれども、そこに引っ張るという話では決してないわけですけれども、そういうバッファー機能をどうつくり上げるかということもこれは非常に大事だと思います。  それから、先ほどBCPの話がありました、事業継続計画をどう立てるかと。これは義務化をしなければいけないという話をおっしゃりたいと思っておりますが。保険会社にはいわゆる巨大な集積リスクの保険金支払に備えたいわゆる準備金ってありますよね。異常危険準備金というのがこれは法律的に認められているわけなんですけれども、一般の企業はそれは認められていない。だから、幾らそれを積んだとしてもやっぱり税金を取られるわけなんですね、無税にはならないと。だから、そういう面における法律を改正しなければいけないなというふうに私は思っているんですけれども、この辺についてどのようにお考えですか。
  37. 藤井聡

    公述人藤井聡君) どうもありがとうございます。  おっしゃるとおりで、準備金を削るという概念はやはり効率化の概念とかそういうもので、まさかのときのことを考えずにつくられている法制度の中での話でございますから、是非その方向で考えていくということが必要ではないかと改めて感じました。  それと、先ほどの首都直下型のお話もございましたですけれども、やはりひところ首都移転という議論が非常に盛んにされておりましたですけれども、ここ十年二十年ほとんど議論されなくなっておりますですね。当然ながら首都の移転という議論は、元々出てきたのは、やっぱり過密過ぎるのでいろんな意味でよろしくないので分散しましょうという話はあったんですけれども、一番大きなモチベーションは当然ながら地震が怖いと、もうこの一点だったんですね。その恐怖感を日本全体が雰囲気として忘れつつあったということだと思うんですね。もちろん、今の現状と首都移転と呼ばれるものの間には無限のバリエーションがありますから、どういうバリエーションをどう議論するのかということは議論はあるところだと思いますけれども、いずれにしても、このまま一極集中していていいというわけでは決してないという点は、これは改めて考えないといけないと思います。  ちなみに、政府の中の、国土交通省の中には首都移転を考える部局というのはまだ残ってございますので、そこの部分についてきちんとそれを中心に考えていくということも大事ではないかなと思います。  以上です。
  38. 加藤修一

    ○加藤修一君 時間が残り少なくなりましたが、最後に一点、菊池公述人にお願いしたいんですけれども、リスクファイナンスの関係で、中越もそうですし阪神・淡路もそうなんですけれども、宝くじを使っていますよね、震災の関係で復旧復興をしなければいけないということで。  これは、準備金を震災が起こったときにどう準備するかということを考えた場合に、これもリスクファイナンスの関係で法律を変えなければいけない、今は自治体に全部行っちゃう話ですから、国がその辺のことも含めて、今はジャンボ宝くじだって二千五百億円ぐらい集まるわけですから、そのうちの半分近くは地方自治体に行っているわけですよね。それと似たような仕組みを私はつくるべきだと思っておりますが、ちょっとその辺について何かお考えがあれば。
  39. 菊池英博

    公述人菊池英博君) この災害復興の資金をどういうふうに国民に協力していただくかということですね。確かに宝くじを買っていただくというのも、これも一案だと思います。ただ、余り当たりの悪い宝くじだと国民も協力しないかもしれませんから、これなかなか難しいんですけれども。やっぱり、いかに国民に今回の災害の負担を分担していただくかということは、確かにやはり国家的な見地から考えてもいいことだと思います。  ただ、私は、さっき申し上げましたとおり、だからといって消費税増税みたいな形で広く浅くと称して結果的に消費税を固定化させようとするような考え方は反対です。それからやっぱり、この時点国民増税を求めると、しかも庶民にですよ、増税を求めるのは余り感心はしません。  ただ、私は、ここでもう過去十年間を考えましてこういうことが言えるんですよ。どこにこの企業、要するに、小泉構造改革の結果一番富が蓄積したところはどこかといいますと、大企業ですよ。大企業は既に二〇〇一年から二〇〇六年まで、これ実際に国会で出たデータですよ、で見ますと、全体で剰余金は二十兆増えています。それから配当金は五兆増えています。二〇〇六年度までです。それから、その後を見ますとざっと剰余金は三十兆、配当金は七兆ぐらい増えていると。これはもう確かだと思います。  したがって、やっぱりこの際、大企業にもっと多くの、そういう剰余金こんなにあるじゃないかと、そしたら負担していただくというのが一つの大きな国民的見地から必要なことだと思います。これはむしろ先生方の政治主導でお願いしたいと思っているんです。ですから、そういう面で。  それからもう一つは、もうこれから、妙な形で、何といいますか、焼け太りと言うと言葉は悪いですが、そういうような形にならないように、もしそういうふうに現象が起きれば、そこの部分は必ず税収とかあるいは何らかの形でむしろペナルティーとして徴収するという方向が必要じゃないかと私は思います。
  40. 加藤修一

    ○加藤修一君 ありがとうございました。
  41. 桜内文城

    ○桜内文城君 みんなの党、桜内文城でございます。  まずもって、今回の大震災でお亡くなりになりました皆様方に対しまして哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様方にお見舞いを申し上げます。  本日は、三人の公述人皆様方、大変参考になる御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。元々は、この災害が、大地震が起きます前に策定されました来年度政府予算案に対する公聴会ということですけれども、こういった地震、その復興に対する予算なり政策というものも含めて今日はお考えをお聞かせいただきたいと考えております。  まず、災害の話に入ります前に、先ほどもお話に出ましたけれども、菅政権におきます成長戦略といいますか、第三の道ということについて菊池公述人藤井公述人にお聞きいたしたいと思います。  成長といいますと、やはり生産性それから資本、労働、生産性が一番最後だと思うんですけれども、この三要素があるというふうに言われております。  第一の道、これ、そもそも第一の道、第二の道、第三の道というのは菅さんの恐らく造語だと思うんですけれども、第一の道として公共投資を挙げられております。それは恐らくコンクリートから人へという民主党のスローガンにも当てはまるかと思います。  それから、第二の道というのが新自由主義市場原理主義。これは私なりに解釈いたしますと、民間投資をむしろ増やしていく、特に生産性の高い分野に資本や労働を移していく、そういった考え方だと私は理解しております。  そして、第三の道としまして、まず政府の新成長戦略で言われておりますように、需要を引き上げていく、あるいは需要のある分野において雇用を増やしていく、そういった考え方が取られております。雇用を増やして、それによって家計の最終消費支出が増えていけば成長していくんじゃないかと、こういった先ほどもありましたいわゆる小野理論というものに乗っかっておるのかなというふうに考えております。  まず一つ目の質問、お二人に対する質問ですけれども、この第三の道に対する評価をお尋ねしたいと思っております。  私はこうやって参議院議員やる前は大学で社会会計ですとか公会計の学者をやっておったんですけれども、社会会計の面からいいますと、政府が雇用を直接増やそうとする場合、何ができるかといいますと、医療ですとか介護ですとか、その報酬を引き上げるなり、そういった分野で雇用を増やしていく、これはもちろん可能ではあります。  ただ、社会会計的に言いますと、世の中で生産された付加価値を政府が税金なりの形でそういった分野に移転していくことでありまして、もちろん政府最終消費支出が増える分、統計上GDPはその分増えますけれども、そこから先、家計にその所得が移転された分が消費に充てられなければ、いわゆる乗数効果といいますか、それ以上にGDPが増えることはない。また、家計の側から見ますと、もちろん、そういった支出、政府の支出というのは税金なりあるいは増税してでもファイナンスされているわけですので、家計の所得自体は増えない。こういった中で本当に成長というものが可能なのか。  特に、政府がそういうふうに直接雇用を増やすことのできる分野というのは、介護であるとか医療、医療といいましても、高度医療ではなくて、一般の方々がかかる風邪ですとか、あるいはお年寄りが日々行かれるような治療でして、とても何か付加価値の高い分野におけるものでもなく、また消費に限定されますので、効果が、資本を食い潰すだけというふうにも私は考えております。お二人の御意見をお聞きしたいと思います。
  42. 菊池英博

    公述人菊池英博君) 結局、今何が一番日本で欠けているかというまず認識でございますが、私は、投資がもう回収超過になって投資不足になっていると、これが結局名目GDPをずっとマイナスにしている現象なんですね。  まず、公共投資でいいますと、二〇〇七年度から公共投資回収超過です。さらに、この回収超過はむしろ加速しております。それから二番目に、民間投資でいいますと、これまた小泉構造改革が始まってから回収超過がきつくなってまいりまして、それで二〇〇六年、七年ぐらいはむしろ回収超過だと。それからちょっと回復はしてきましたけれども、また、残念ながら菅政権になりましてからはデフレやっぱりムードですから、消費税を上げるとおっしゃったときに民間はこれはデフレだなと思っちゃいます。投資も落ちてきます。  ですから、これ、投資をいかに官民共に引き上げるかと、これが、基本的認識が必要なんだと思います。そのときにおっしゃるのは、じゃ生産性の高い分野とか低い分野とかいうことですけれども、今非常にいろんな分野で誤解されていると思いますのは、日本はだんだんと少子化になっていくから、だから投資も余りしなくていいんだとか生産性も低くなっていくかというと、これ逆なんですね。少子化ということは何かといいますと、御案内のとおり、今まで五人でやっていたものを四人でやってくれということですよ。そうだったら、その分だけ生産性を上げなきゃいけないんですよ。生産性を上げるものは投資です。投資以外にはありません。もちろん技術がありますよ。技術革新がそれを促進しますけれども、ベースのものはやっぱり投資ですから、だからその認識をしっかりと持つべきなんじゃないかと、まず思います。  それから二番目には、先生のおっしゃるまさに第三の道の評価ということですけれども、これも先ほどの御質問のときに申しまして、今の菅総理がおっしゃっているような第三の道、これは方向としては私は正しいと思います。ただし、それが公共投資は必要ないんだということではないんですよね。さっき申しましたとおり、投資が足らないんだから、問題は公共投資中身なんですよ。中身なんです。それはさっき申し上げたとおり、国民生活が第一というスローガンで、それはもう大変な立派なスローガンだし、今も一段と評価している。それに関連するものをしっかりと公共投資の分野で出していけばいいと。これは先ほど藤井先生のおっしゃった方向と中身の面では一致してくると思いますけれども、そういうふうな方向をきちっと考えるべきなんじゃないかと。  それから、生産性、生産性といいますけれども、このデフレのときには短期間の生産性を測定することは非常に難しいです。むしろ落ちています。二年、三年で上がる方向にしなきゃいけない。だから、それには、二、三年でよく、生産性が今投資したって落ちるんだとか、人が少ないじゃないかといいますけれども、そうじゃなくて、さっきのような基本的な認識に立ってきちっと成長分野と思われる必要なところに投資政府がし、民間投資も引き合いに出して、それで二年、三年見て、そうすれば生産性は必ず上がってきます。デフレが解消すれば生産性は上がるんですよ。そのことをきちっと認識すべきじゃないのかなと私は思います。
  43. 藤井聡

    公述人藤井聡君) 第三の道の議論でございますけれども、第三の道という議論と小野先生の理論というものとで少し実は乖離があるなというふうにまず考えております。  小野先生がおっしゃっているのは、民間よりも政府の方が効率的に経済活動ができると、貯蓄をしないので効率的に経済活動ができるので、税収で吸い上げて効率的に財政出動をやっていこうと、これが小野理論なんでありますけれども、現在やられておりますのは実は財政出動で、財政出動までは一緒なんですけれども、所得移転を結構重視されているんですね、子ども手当とかあるいは高速道路無料化とか。これは単なる所得移転と。財政出動にも二種類ありまして、所得移転と投資という二種類があって、所得移転は単にあっちからこっちに移るだけですのでGDPは伸びないわけであります。その一方で、投資をするとGDPが伸びていくと。したがって、税収で吸い上げて所得移転をすると、これは小野先生がおっしゃっていることとも既に違うというのが一点であります。  二点目は、やはり税収が及ぼす経済に対するネガティブなインパクトというものを小野先生の理論においては少し過小評価されているんじゃないかなという点が申し上げられると思います。したがって、何度か繰り返して申し上げておりますけれども、増税をするということでGDPそのものに否定的な影響を及ぼすということで、小野理論そのものも非常にこれは懐疑的に私は考えております。したがって、菅政権のやられている所得移転型の財政出動も、増税という小野理論に関しても、私は非常に懐疑的に思っております。それが二つ申し上げたいことであります。  更に申し上げたいことは、今行われているところの次に投資部分でありますが、雇用創出の部分でありますけれども、例えば介護とか医療とか、インタビューでは林業というようなお言葉もあったりとか、非常に全て大事なわけでありますけれども、雇用の割合を統計で見ますと、圧倒的にそんなに大きくないんですね、GDPの対比率もそれほど大きくない。ところが、何度も申し上げていますように、公共事業関係の雇用者は全体の八%から九%おられて、たしかGDPも六%あると。非常に巨大な業種なわけですね。ですから、そういうところを削って非常に小さなところの投資を増やしても、これは元々産業としての基礎体力が違ってくるという部分があって、経済効果というのは非常に限定的になるという意味でも、この三つ目の点でも、現在の方針というのを、この前提を第三の道と呼ぶとするならば、私としては六十点はあげられないという形でございます。  以上でございます。
  44. 桜内文城

    ○桜内文城君 質問もっと用意していたんですが、この一問で終わります。  ありがとうございました。
  45. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史でございます。お忙しい中、本当にありがとうございます。  今日は本当にすばらしい公述人がそろわれたというふうに思います。十年ぐらいここで、公聴会で質問していますけど、大抵は御用学者的な方が多いんですけれども、今日はどなたも政府の肩を持たないという、本当に心から敬意を表したいというふうに思います。  まず菊池公述人にお伺いいたしますが、ほとんど我が党と似たお考えだと、我が党の推薦かと思いましたけれども、違うらしいですが、東北関東大震災は、私も行ってまいりましたけれども、大変大規模な震災でございます。復興財源について少しお聞きしたいんですけれども、先ほどもちょっとございましたけれども、世界の例、歴史的な例を見ても、相当の復興計画財源も必要だというところでいきますと、積立財源どう使う、あるいは税の在り方を変える、あるいは借金ですね、復興国債を発行する、この三つぐらいが主な手段だというふうに思います。  それで、先ほどもございましたが、税の在り方としては私も負担能力のあるところに、もちろん今は大企業も円高とかで大変なんですけれども、やっぱり相対的に負担能力のあるところにお願いするというのが当たり前の考え方だと思います。  復興国債の方なんですけれども、藤井公述人資料によりますと、復興国債を日銀が買い切りオペで買うと。これも非常時ですからあり得ることかと思うんですが、それだけやりますと、国会でも長い間インフレターゲット論の議論がありまして、いろんな中央銀行としての規律の問題とかありますので、それを全面的に否定するわけではありませんが、やっぱり民間も引き受けてもらうという発想が重要かと思います。その点では、菊池公述人が言われたように、内部資金が余っている企業の、そのお金が巡り巡って投機マネーに流れてまた円高なんかになるよりは、やっぱりこの国難を背負ってもらうといいますか、そういう民間の余っている余剰資金に復興国債を引き受けてもらうという考え方について、菊池公述人藤井公述人にお伺いしたいと思います。
  46. 菊池英博

    公述人菊池英博君) 確かに、復興財源をどう考えるか、これは決して今回の復興財源だけじゃなくて、デフレ脱却財源ですね、これをどう考えるかという中でまず復興財源から入ると、こういうように私自身は考えたいと思っているわけです。  それで、まさにこういうときには、何回も申し上げますけれども、やっぱり財源というのは、まず第一に本当に特別会計の中に財源がないのかどうか。野田財務大臣はありませんとおっしゃいますが、私が分析いたしましたところ、実は手元に資料ございますけど、二〇〇九年度の特別会計、昨年の三月決算したのを見ますと、八十兆円埋蔵金はございます。これは社会保障を除いてですよ。そのうち幾つか何かすぐ使えないのもありますけれども、四、五十兆はこれはもう法律を改正するだけで使えます。ですから、こういうものはまず危機に際してきちっと放出して、それをまず財源の第一にすべきじゃないかと思いますね。だから、増税ということをおっしゃる前にはまずこれをしっかりして、これが実は一番大切な、まあ何というんでしょうか、財政規律のイロハじゃないかと思っているんですが、そういうことをまずすべきだと思います。  それから二番目には、確かにそれだけでも足りません。ですから、その次についてはやっぱり建設国債と、あるいは復興国債と名付けるか、いずれにしてもそういうものを出す必要があると。そのときには、先ほどもちょっと触れましたけれども、過去例えば十年間ぐらい見て、一番、内部留保、蓄積の高い企業はどこかといえば、これは有価証券報告書を見ればすぐ分かることですけれども、そういうところにやっぱり負担していただくということだと思いますよ。そして、これをほっておきますと、結局そういう方たちも国内も投資できなくなっちゃうんですよね、投資しようと思ったって、到底。  例えば、法人税を今回下げるというふうにおっしゃって、民主党さんはそういう法案も出しておられますけれども、しかし逆に言えば、余剰金がそんなにあって、そのうち法人税を下げるのは本当に適切かなと私もちょっと個人的には思わざるを得ないんですね。そして、法人税を下げるならちゃんと目的をはっきりして、投資減税と申しましたけれども、ちゃんと雇用を育成する、そして正規社員を雇う、それを前提にするような形、ひも付きにすべきだというのが私の考え方なんですね。  それで、いずれにしても、今回の場合には、災害の方に戻りますが、やはり大企業がそういうふうな形で余剰金があるんですから、大企業だけじゃありません、中小企業さんでもやっぱり、じゃ、今のところあるからちょっと協力しようという方もいらっしゃるかと思いますよ。日本人、今回見ても物すごく協力的ですよね。だから、そういうことは政治主導できちっとやっていただいたらよろしいんじゃないかと思います。  それからもう一つ、中央銀行に持たせると、それがかなり将来的に禍根を生じないだろうかという御案内ですよね。これは確かにそうなんですけれども、日本が今考えなければいけないことは、対外的には債権国なんですよ。純債権が二百七十兆あるんですよ。それで、その収入だけで、利息、配当は十五兆から二十兆近く毎年来ているわけです。それ、国内がデフレだから、みんな使わないからまた海外へ再投資している。再投資すると、ドルになっちゃって円高になってみんな損しちゃう。まさにそういう物すごいジレンマに陥っちゃったんですね。  ですから、これを流動化して国内に使ってもらうためには、建設国債を出して日銀にやっぱり、まあ私は日銀の直引受けじゃなくて、先ほど大恐慌のときにアメリカがやったというような形ですね。つまり、今日例えば五兆出しましたよ、そうしたら日銀は市場に出ている既発債、既に発行している債を五兆買えばいいんです。市場で資金がツーツーだったら金利は上がりませんよ。ですから、そういう操作をきちっとやっていけばいいんじゃないか。  それで結局、じゃ日銀の保有国債がかなり累増してくるかもしれません。しかし、日本経済全体から見ますと、対外的に債権があれば、日銀がその部分国債として保有して市場に資金を出しているということは、対外債権を国内で一部流動化しているということなんですよ、流れでいいましてね。ですから、これはもっとやってもいいんだと、私はこういうふうに考えております。
  47. 藤井聡

    公述人藤井聡君) 御質問の点、国債の管理といいましょうか、それのどういうふうに運用していくかというところでございますが、緊急提言の四ページ、五ページ辺りにその辺り記載させていただいているんですけど。  基本的に私のストーリーとして考えておりますのは、まず現状のアコードがなくても、市中から相当程度、国債というものは資金を調達することができるだろうというのが一点であります。ただ、大量に出し続けておりますと、そのうち金利の管理が難しくなってくるかもしれないという意味で、最終的にアコードできちんとそれを抑えておこうというのが、これがストーリーであります。  あとは細かいところなんですけれども、市中で国債をより効率的に調達していくための幾つかのテクニカルな方法があろうかと思います。これ小さい字で脚注で書かせていただいていたんですけれども、例えば政府系金融資産を担保とした国債とか、あるいは利回り等を調整することで償還期限まで売却を抑制するような国債とか、これは、後者の方はアメリカの戦後のときにアメリカが実際にやったような経験もありますので、そういうことをやっていくことで、さらに、CDSの動向を見ながらいろいろと市場管理をきちんとしていくということをちゃんとウオッチしていくということも、民間国債の管理の中で政府がちゃんとウオッチしておけばいいだろうと。しかも、そこで結構やばいなということに、危ないなということになりましても、アコードがあればそれできちんと安全だということで、もう盤石の体制で国債による資金調達というのは可能であるというふうに技術的には考えております。
  48. 大門実紀史

    大門実紀史君 どうもありがとうございました。
  49. 片山虎之助

    片山虎之助君 片山虎之助でございます。  先生方、大変貴重な御意見ありがとうございました。それにしても、歯切れはいいし、迫力がありますね。議員の方が押されぎみですよ。本当にありがとうございました。  特に、先生方が言われる経済成長の必要性や積極財政あるいは公共事業の見直しには私も大変共感いたしました。  三月七日に私はここで質問させてもらったんですよ、代表質問というんでしょうかね、総理以下に。十一日が大震災の日ですから、四日前なんですよ。  そこで、私は、そのときのテーマは社会保障と税の一体改革なものだから、社会保障の安定的な財源のために消費税を上げるというのは、それはまあしっかりした一つの考え方であるけれども、総理、そう簡単にいきませんよと言ったんです。国民は薄々はやむを得ないと思っている、しかし安易な引上げは絶対反対なんですよと。そのためには経済をしっかりする、強い経済をつくる、そのためにはさらにデフレの脱却と地方の元気回復が要るんですと。地方は今本当に疲弊している、デフレはなかなか脱却できないと。そのためにはいい公共事業を、財政出動していい公共事業をやらにゃいけませんと、公共投資をやらにゃいけませんと。それをできるだけ地方に優先的に配分することが消費税引上げの大きな前提になるんですと。まあ四日前ですからね、まだ震災が起こるなんて総理は分からないから、例によっておざなりの答弁ですよ。  しかし、民主党政権がやったことは、政権交代してまず最初にやったのは、子ども手当の財源を出すために耐震工事の経費を削ったんですよ、約千八百億円。これがコンクリートから人へなんですよ。今逆でしょう。子ども手当を削って震災の財源を出そうとしている。それは、菅さんはそのときの総理じゃないけれども、私は、民主党には大いに反省してもらわにゃいかぬと、本当にそういうふうに思っておりますよ。これはある意味では天が我が国に与えた試練なので、これは乗り越えていかにゃいかぬと、こう思っております。  そこで、私余り時間がないものですから、本来、今日は先生方に来年度のこの予算についての評価を聞くあれなんですよ、この予算についていいか悪いか、何点なのか。これはどうせ一次補正、二次補正で大幅に直さにゃいけません。この予算をこのまま使うわけにいきませんよ。  そこで、辛辣な、先生方の思い切った御意見を是非、来年度のこの予算について、もうこんなものやめてしまえでも結構ですから、ひとつお聞かせいただきたいと、こう思いましてね。  それは岩淵先生もお願いします。私は高齢者なものですから、定年制を延ばすことも大賛成だし、働かせる方が医療費が安いんですよ。年金をもらってもらうよりは働いてもらって稼いでもらう。ただ、ワークシェアリングの必要はありますよ。そういうことを考えて、そういうことを含めて御意見を賜れば有り難いと思います。  よろしくお願いします。
  50. 前田武志

    委員長前田武志君) 菊池公述人。時間が余りありませんので、まとめてください。
  51. 菊池英博

    公述人菊池英博君) かいつまんで申し上げます。  私は、基本的にコンクリートから人へというスローガンは、実は賛成なんです。というのは、どうしてかといいますと、やっぱり、先生はもう長年自民党さんでいらっしゃいましたからちょっと失礼な言い方になるといけませんけれども、やはり、俗に新聞なんかで熊しか出ないところに道路を造ったとか言われますが、それは極端な例にしても、やはりもう少し生活に密着した面に投資をしてほしいなということはみんな思っていたと思うんですよ。それがまさにコンクリートから人への表現になったと思います。  それで、しかも、もう一つは子ども手当ですね。子ども手当を増額するというのも私は賛成です。どうしてかというと、やっぱり子供は社会的に保護していかなきゃいけないと。それから、先ほど岩淵先生からデータがございましたけれども、どこの国でもやってきたことです。ですから、民主党さんがこの際こういうことを思い切ってやられたことは画期的なことだと私は思っています。非常に評価しています。  ただ、ここの事態に至って、非常にやはり財源の問題がありますね、予算の問題。ですから、子ども手当については来年度予算についても増額の方向ですけれども、この辺のところは今後どういうふうに考えられるのかということはちょっと再検討されてもいいのかなとは思いますけれども、これは別の法案でございますから。  それからもう一つ、この予算案につきましては是非早く通していただきたい。通した上で補正予算というものをしっかり考えていただきたいと思うんです。それで、補正予算については、私も冒頭申し上げましたとおり、かなり三年百兆と大胆に申し上げましたけれども、その一年度としてさっき、繰り返しますが、東北震災についての具体化、そしてそれをどういうふうにしていくかです。それで、今出ている予算財源をもっと、あっちをカットしてもこっちをカットしても非常に難しい局面もあろうかと思いますから、この予算については早く出していただいた上で、それで補正の段階で新しい形でやっていく。  それで、補正予算の重要なことは投資を促進するということです。投資が足らないんです。さっきからくどいほど申し上げて恐縮でございます、先生御案内のとおりで。ですから、そのためにやると。それはまず、デフレだから民間投資は出てこないですから、地方地方はもう本当にゴーストタウンですよ。ですから、そこに対してどう投資するか。だから、公共投資も従来型のというよりは生活に密着した投資ですね。  さっき藤井先生がおっしゃられたとおり、償却済みで更新投資をしなきゃいけないお金、分野というのはかなりあるんですよ。数字でも二十兆、三十兆はすぐ出てくる。橋でもいつ落ちるか分からない。今回でも東北の地方でもそういうのががつんと最初に落ちたかもしれない。そういったものを中心にしていく。  ですから、投資中心の補正予算を組んでいただきたいというのが私の意見でございます。
  52. 藤井聡

    公述人藤井聡君) スローガンでございますのでよく議論をされますコンクリートから人へ、これは本当に何を意味しているのかというのは我々よくかみしめないといけないところであると思うんですが、実はこれは公共事業を減らして社会保障費を増やすと、ありていに言うとそういうことでございます。  この流れは実は政権関係なく、もう九〇年代からずっと営々と繰り返されているもので、九〇年代に実は両予算はどちらも十五兆円でほぼ同じだったんですね。ところが、今やもう公共事業関係費は五兆何がしと。社会保障費は三十兆近くになって、もう今や、昔は同じであったにもかかわらず、今はもう四倍、五倍の違いができてきていると。確かに、公共事業の全てが全て効率的だったのかというと、それはそうではないと私思います。しかしながら、もう三分の一近くにまで落としてきた中で、もう本当に確かに不要なところも削られたのかもしれないですけれども、本当に必要なものまで削られてきて、徹底的に削られてしまっているんですね。これは是が非でも見直さないといけない。  折しも菊池先生がおっしゃったように、今日本経済にとって必要なのは投資なんです。そして、投資の中でも最も効率的なものがポテンシャルとしてあるのは公共投資なんです。民間投資も当然必要なんですけれども、公共投資はみんなが使えるんです。したがって、上手な公共投資を、公共事業を上手にやれば経済が発展しないわけがないんです。ですから、それをまずお考えの上、今回の予算はすぐ変えられないのかもしれないですけれども、補正の点に関しては是が非でもそれをお考えいただきたいと。  並びに、社会保障費に関しても、公共事業費に関してこれだけ見直しが物すごく、もう私の知り合いの中でも物すごく効率化されています。社会保障費の中に効率化するところがあるのかないのか、是非そういう議論もお始めいただきたいというふうに考えてございます。  以上でございます。
  53. 岩淵勝好

    公述人岩淵勝好君) 流れを見ていますと、子ども手当などはイの一番に切り裂かれるような状況になりつつあるように感じておりますけれども、今回の子ども手当の改正といいますか、それについていえば、旧児童手当に比べて負担が増えてしまう人たちを救済するという、そういう目先の帳じり合わせみたいなところもありますので、一概に今年のままということになると極めて困ったことになるというふうに思います。  さはさりながら、どうしても削るというふうにおっしゃるんでしたら、その見返りというわけではありませんけれども、先ほど申し上げた保育所の復旧とかあるいは産科医療の充実とか、つまり被災地でも子供が産めるような、そういう体制を整えるというような形を整えれば国民の理解もある程度得られるんではないかなというふうに思っております。  以上。
  54. 片山虎之助

    片山虎之助君 ありがとうございました。
  55. 吉田忠智

    吉田忠智君 社会民主党・護憲連合の吉田忠智でございます。  まず、この度の大震災で犠牲となられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。また、現在も昼夜を分かたず被災者の支援や原発事故対策に尽力されておられる皆様に深甚の敬意を表します。  本日は、三人の先生方には大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  時間の制約もありますので、三人の先生方に一括して質問をさせていただきます。  まず、菊池先生に質問をします。  菊池先生は、先ほどのお話を大略申し上げますと、二〇一〇年度末の政府債務は九百十九兆円であるが、金融資産は五百十三兆円あるので純債務は差引き四百六兆円であり、そう心配することはない。むしろ現下のデフレを克服するためには三年間で百兆程度の政府投資を行うべきである、そうすれば財政も黒字に転じ、債務も縮小し、消費税も更にゼロ%にできると主張されておられます。  しかしながら、最近は財務省のキャンペーンもだんだん功を奏しまして、国民はもうぼちぼち消費税を引き上げなければならないんじゃないかというふうに思われる方々も何か少しずつ増えているような印象を受けますし、菅首相自身も思い込んで、いろんなところでいろんな場で言われておるわけであります。  先ほど菊池先生からお話ありましたように、二〇〇一年にもこういう形で参考人として述べられて、それから先生の言われたとおりに今なっておるわけでありますけれども、現実に、私も先生と同感でありますが、先生の思われる政策がなぜ実行されずに今日まで至ってきたのか。もう少し掘り下げて先生のお考えをお伺いしたいと思います。  一括して行きますので、次に藤井先生、私は事前にペーパーをいただきまして、緊急提案、日本復興計画、それから東日本復活五年計画、それから列島強靱化十年計画を発表されています。非常に傾聴に値する計画でありまして、政府も参考にすべきである、そのように考えております。東日本の復興はもとより、今後発生が予想される首都直下地震東海地震、また東南海・南海地震に備えるためにも諸対策を講じていく必要がある、そのように考えています。  藤井先生に二つお伺いをします。  一つは、専門家の立場で今回の大地震をどのように見られたか。確かに三陸沿岸は何回も津波に襲われて、防災対策を講じているはずなんですよね。しかしながら、もう予想を上回る千年に一度と言われる地震、津波が起こったからどうしようもないんだというふうに言い切れるのかどうか、その点について一点。  それからもう一つは、先生も「公共事業が日本を救う」という本を出されまして、私も読ませていただきましたけれども。私は、公共事業そのものが否定されたんじゃなくて、やっぱりこの間、政官業の癒着に象徴される公共事業の執行するシステムそのものが問題視されてきたんじゃないかと、そのように思いますが、その点について御意見をお伺いします。  それから、岩淵先生にお伺いします。  先生は一番最後に、少子化対策が最重要だ、予算を削るべきではないというお話もございました。ある雑誌の投稿の中で、少子化対策においては四つの最重点課題として、一つ、若者の正規雇用、それから二つ目がワーク・ライフ・バランス、三つ目が子育て支援サービス、四つ目が産科・小児科医療の整備を複合的に取り組まないとどうにもならない、そのように述べておられます。私も全く同感でありますが。  全部もう言っていただくには時間が足りませんので、特に一番目に挙げられた若者の正規雇用をどのように具体的に進めるべきかについてお伺いをします。
  56. 菊池英博

    公述人菊池英博君) まず、十年前に今日と同じような、財政を締めたら税収が減ってマイナス成長になるよと申し上げた、十年後そのとおりになったと申し上げました。実はそのとおりなんですが、なぜ私の考え方実行されなかったかということです。  大変僣越でございますが、お袋の中にこういうのが入っているんです。これ、一枚ですね、一番最後に、文芸春秋、エコノミストは役に立つか、これ二〇〇九年七月号の文芸春秋に出た、二十五人のエコノミストのランク付けが出ております。恐縮ですが、これできたらお出しいただきたい。実はこれを私出すつもりは全くなかったんですが、ちょっとふと昨日思い付いてこれを入れたんです。これを見ていただきますと、大変僣越なんですけれども、私が一番上にいるんです。つまり一番役に立つ。  それで、これはどういう格付かといいますと、この東谷暁さんという方がムーディーズの、ムーディーズというのは御存じのとおり社債とか国債の格付をする会社です、その基準に基づいて査定をしたんですね、エコノミスト。そうした結果、何か私が一番上にランクされちゃった。私自身が驚いているんです。  ただし、これを見て私がもっと驚いたことは、真ん中辺から下に、まあムーディーズの格付では不良債権です。そういう人の中に何と竹中平蔵さんや、失礼ですがお名前出ているから申しますと、ここに並みいるような先生方、これは実は、自公政権時代ずっと政府の要衝の言わばアドバイザーであられた学者先生です。それから、残念ながら民主党政権になってもこの何人かの方は今いらっしゃるんですね。したがって、まあ厳しい言い方をして大変僣越でございますけれども、ムーディーズの格付で不良債権と格付されるようなエコノミストの意見を聞いておられたら、結果は不良債権しか出ないんですよ。ですから、これが現状です。  なぜこういうことになったかといえば、やっぱり一つはマスコミ。それから、財務省を始め、失礼ですが財務省の方にもこういうふうな、何といいますか財政危機国民に宣伝するためにこういう学者先生方を支援をやられていたんでしょう。それから、やはりマスコミですね。これは大手新聞とテレビ、本当に本質を伝えようとしていません。  例えば、純債務なんという言葉を、皆さん、マスコミでお聞きになったことございますか。実は、幾つかの、「エコノミスト」とか「Voice」だとか、そういったものにはちょこちょこ出ています。私の意見をやっています。しかし、私はそんな有名人でもありませんから、そういうマスコミ、テレビなんかにお呼びじゃありませんし、こういう機会はありません。しかも、私みたいな意見の方は結構いらっしゃるんですよ。いらっしゃるけれどもそれが政治に反映されてこなかったのが過去なんです。  ですから、私は、民主党政権さんに是非お願いしたいことは、これが実はチェンジなんですよ。チェンジなんです。実は、鳩山先生始め、鳩山総理のときはその方向はスタートしたんです。私は本当にそう思いました。だから、基礎的財政収支均衡策、二〇一〇年六月二十二日の閣議で決定されましたね。あれは……
  57. 前田武志

    委員長前田武志君) 菊池公述人に申し上げます。  御高説をもっと聞きたいところなんですが、時間があと一分でございます。
  58. 菊池英博

    公述人菊池英博君) はい、一分で結構です。
  59. 前田武志

    委員長前田武志君) いやいや、残りの公述人も含めて。
  60. 菊池英博

    公述人菊池英博君) しかし、それは、実をいいますと鳩山総理は反対されていたんです。ですから、すっかりまた昔の構造改革に戻られたのが現在の菅政権じゃないかと思います。それをまたチェンジしていただきたい、これを私はお願いし、それが新しい時代だと思っています。
  61. 藤井聡

    公述人藤井聡君) 二つ御質問をいただきました。  まず第一点でありますが、専門家として今回の地震をどう評価するか。実は、私どもの専門家の友人は、もうすぐに現地に向かっていろいろと、あそこの橋は落ちたのかどうか、どこの堤防がもったのか、あるいはリスクコミュニケーションで働きかけた人々が逃げれたかどうかと見に行っているんですね。残念ながら、崩れたところもあればもったところもあります。したがいまして、我々専門、我々といいましょうか、日本の技術力でもってして、努力したかいがあって救われた命というものは確かにあることを我々一つ一つ今確認しているところであります。  当然ながら、我々の想定をかなり上回る大きなものでありましたですけれども、我々が、もし日本のそういう技術が何にもそこに投入されてなければ、恐らくはこの被害では済まなかったであろうということを我々実感として感じております。それが一点目でございます。  もう一点目でありますけれども、確かに公共事業について批判されるべき点があったということについて、私は決して否定はいたしません。しかしながら、その否定に乗って、ありとあらゆる情報がマスメディア中心に流布されていたわけでありますが、その中には、専門的には全く、もう完全なる事実誤認が本当にたくさん含まれていて、それは言われ過ぎであると、そこまで言われるほど悪いという、もう明らかにバランスを逸しているというのが実情でありました。したがって、是非バランスを取り戻していただきたいというのが私がその本を書かせていただいたときの、「公共事業が日本を救う」という本を書かせていただいたときの思いでございます。  以上でございます。
  62. 岩淵勝好

    公述人岩淵勝好君) 手短に。  まず、正規雇用を増やすにはどのようにすべきかという御質問でございますので、簡単に申し上げますと、もう財政出動のシステムを含む正規雇用促進法とでも言うべきそういう法制度を整えるべき時期にもう既に来ているのではないか。もう既に四十代まで正規雇用から外れている、そんなばかな社会というのは長続きするわけがありませんので、ひとつよろしくお願いします。
  63. 吉田忠智

    吉田忠智君 ありがとうございました。
  64. 前田武志

    委員長前田武志君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  65. 前田武志

    委員長前田武志君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成二十三年度総予算三案につきまして、公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して御礼を申し上げます。  本日は、平成二十三年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、外交・安全保障について、公述人外務省国際情報局長・元防衛大学校教授孫崎享君、拓殖大学海外事情研究所長・同大学院教授森本敏君及び東京外国語大学大学院総合国際学教授酒井啓子君から順次御意見を伺います。  まず、孫崎公述人にお願いいたします。孫崎公述人
  66. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 孫崎でございます。よろしくお願いいたします。  二月十三日、琉球新報は次の報道をいたしました。鳩山前総理、普天間で証言。抑止力は方便。断念理由は後付け。官僚抵抗、県外交渉せず。抑止力は方便は、日米関係の根幹に触れる問題です。まず、これを論じたいと思います。  抑止力とは一体何なのか。一つには核の抑止力、一つには日本領土の防衛、特に係争地の防衛です。  核の抑止力から見てみたいと思います。安全保障の大家キッシンジャーは、著書「核兵器と外交政策」で、モーゲンソーも、著書「国際政治」で核の傘に懐疑的に述べています。より鮮明に述べたのは、一九八六年六月二十五日付け読売新聞に次の記事が出ました。日欧の核の傘は幻想。ターナー元CIA長官と会談。我々はワシントンを破壊してまでも同盟国を守る考えはない。アメリカが結んできたいかなる防衛条約も核使用に言及したものはない。日本に対しても、有事のときには助けるだろうが、核兵器は使用しない。中国が米国に対して大規模に核攻撃できるようになったときには、中国の核に対する核の傘は基本的にはありません。  次に、島の防衛を見てみたいと思います。  昨年、NHK日曜討論で普天間問題が論じられ、私も参加しました。そのとき、辺野古移転を主張する人が次のように言われました。日本には領土問題がある、日本側の主張を貫くには米軍が必要だ。本当にそうなんでしょうか。安保第五条は、日本国の施政の下にある領域における武力攻撃に自国の憲法上の規定及び手続に従って対処すると言っています。北方領土、竹島、いずれも日本の管轄でないので安保条約の対象外です。  では、尖閣諸島はどうか。今は安保条約の対象です。しかし、二〇〇五年の「日米同盟 未来のための変革と再編」の役割の部分で島嶼防衛は日本となっています。共同ではありません。  中国が攻めた場合を想定してみたいと思います。ここで自衛隊が守り切ればいい。しかし、守り切れなかったらどうなるのでしょう。管轄は中国に行きます。尖閣は日本の管轄地ではなくなります。そうなると、安保条約との関係でどうなるでしょうか。対象から離れます。  アーミテージ元国務省副長官は、著書「日米同盟VS中国・北朝鮮」で次のように言っています。日本が自ら守らなければ、(日本の施政下でなくなり)我々も尖閣を守ることができなくなるのです。アーミテージは元国務省副長官として責任ある立場にありました。結局、どちらにしても米国は出てこないのです。  それだけではありません。軍事的に出ることが可能であろうか。二〇一〇年十月三日付け産経ニュースは次の報道をしました。日米両防衛当局が大規模な統合演習を実施することが明らかになった。第一段階では、尖閣諸島が不法占拠された場合、日米両軍で制空権、制海権を瞬時に確保。第二段階は、陸上自衛隊の空挺部隊が尖閣諸島に降下し、投降しない中国軍をせん滅。  この計画には大きい欠陥があります。何が問題か。日米両軍で制空権、制海権を瞬時に確保する部分です。制空権、制海権を確保するということは、中国の軍艦を撃沈し、中国の戦闘機を撃墜することである。それは米国が中国との戦争に入ることを意味する。米国は、尖閣諸島は係争地である、領有権問題で米国は日中いずれの側にも付かないとの立場です。中立とみなしている島の防衛に米国軍が中国と戦う、このようなことを米国議会が認めることは困難と見ざるを得ません。  かつ、これは軍事的に実現できない。一つだけ言及します。二〇一〇年十一月十四日付けワシントン・タイムズ紙は、中国のミサイルは米軍基地を破壊する、八十の中短距離弾道弾、三百五十のクルーズミサイルで在日米軍基地を破壊すると報じました。中国は米国と対峙するときに日本の米軍基地をミサイル攻撃して滑走路や管制機能を破壊すればいい。いかに優れた航空機の数をそろえても、基地が機能麻痺になれば利用不可能である。  こうして見ると、米国の抑止力がどこまで強力かを見ると極めて疑問です。その意味で、鳩山元総理が抑止力は方便と言ったのはおおむね正しいことです。普天間問題は新たに見直すべきです。沖縄は県内移転を認めることはない。あり得ないことをあたかも実現可能とすることこそ長期的に日米関係を損ないます。米国の対応を懸念されると思います。  しかし、普天間問題で日米軍事協力が根本的に壊れることはない。したがって、日米関係が悪化することはない。外交的に適切に処理すれば基本的に問題ない。米国にとって日本の軍事基地は極めて重要です。財産価値でいえば世界の米軍基地の約三〇%です。受入れ国の基地支援は日本は全世界の五〇%以上、全NATO諸国の一・六倍以上です。在日米軍基地は米国にとり世界で最も重要です。米国はこれを損なうわけにはいかない。普天間基地は、財産価値で見ると、日本での全米軍基地の二十分の一にも達していません。  台頭する中国に対して、日本には軍事的に対応する選択肢はありません。まず、この事実を冷静に認識することが必要です。だとすれば、いかに平和的に処理し相互に発展する方途を模索するか、ほかに道はない。  ではどうするか。  一つは、係争地、すなわち尖閣諸島では武力衝突をしないよう工夫することです。  既に枠組みはあります。尖閣諸島を係争地と認識すること。米国ですら、尖閣をめぐり日中は係争である、米国はどちら側にもくみしないとしています。領有権ではどちら側にもくみしないとしています。  第二に、棚上げについての日中の了解を尊重すること。  一九七八年のトウ小平副首相、園田外務大臣会談を見れば、園田外務大臣が棚上げ方式を実質的に認めたことは極めて明確です。かつ、棚上げ方式は、日本実質支配を認めていること、中国が武力行使をしないことを暗に認め、日本に有利なものです。  第三に、漁業協定を尊重することです。  多くの人は認識していませんが、先般の漁船衝突事件を防ぐシステムが既に存在しています。河野太郎氏は、二〇一〇年九月二十八日のブログで次のように記載しています。「尖閣諸島を含む北緯二十七度以南の水域では、お互いが自国の漁船だけを取り締まる。」、「海上保安庁は、尖閣諸島周辺の領海をパトロールし、領海内で操業している中国船は、違法行為なので退去させる。操業していない中国漁船については無害通行権があり、領海外に出るまで見守る。」。九月の事件の際、海上保安庁の行動がこの日中漁業協定の精神に完全に沿っていたか、疑問があります。  第四に、経済的結び付きを強化し、武力紛争は結局自国に不利に働くという仕組みをお互いにつくることです。  今日、誰もフランスとドイツは戦争するとは思わない。しかし、両国は、第一次大戦、第二次大戦と戦った。では、なぜ今日、誰もフランスとドイツが戦争すると思わないのか。ドイツ、フランスは、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体条約を契機に、憎しみ合いから協力による実利に移行した。アデナウアー西独首相は次のように言った。この石炭鉄鋼共同体が口火となり他の分野でも類似の過程が進むであろう、そうなれば欧州のがんとも言うべきナショナリズムが壊滅的打撃を受けるであろう。  終戦当時の独仏の憎しみ合いは日中関係の比ではない。日本・中国関係も、憎しみ合いを越え複合的相互依存関係を樹立したフランス・ドイツ間の歴史を学ぶべきである。  最後に、安全保障とともに日米関係の大きい課題であるTPPについて言及したい。  もしTPPに入ることによって国民健康保険の枠組みが壊される可能性があるとしたら、TPPに賛成しますか。もしTPPに入ることによって保険でカバーされる範囲が狭まる可能性があるとしたら、皆さんは賛成しますか。  十二月一日、日本医師会はTPPに対する見解を公表しました。その中で次のように言っております。TPPへの参加によって、日本の医療に市場原理主義が持ち込まれ、最終的には国民皆保険制度の崩壊につながりかねない面もあることが懸念される。具体的な懸念事項としては、日本での混合診療の全面解禁による公的医療保険の給付範囲の縮小を指摘しております。  TPPは慎重に検討すべきものです。二〇〇九年の時点ですら、ジェトロ地域別統計によれば、日本の輸出は、東アジアは二百九十八億ドル、米国百一億ドル、ASEAN五十二億ドルです。日本が今最も考えるべき枠組みは、米国市場ではない、東アジアです。中国、韓国もTPP参加には慎重な姿勢をしております。  ありがとうございました。
  67. 前田武志

    委員長前田武志君) ありがとうございました。  次に、森本公述人にお願いいたします。森本公述人
  68. 森本敏

    公述人(森本敏君) 本日、当予算委員会の公聴会に参考人としてお招きいただき、大変光栄に存じます。  初めに、今回の東北方面太平洋沖地震においてお亡くなりになられた皆様方、たくさんの方々に衷心より御冥福をお祈りし、同時に、被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。  安全保障というのは、本来、国家の領土、主権、国民の生命、財産あるいは繁栄を守ることにあるわけで、その意味で今回の大震災日本の安全保障にとって戦後最も深刻で重大な事件であったと考えます。  そもそも国家の安全保障上の脅威には、事態の様相によって有事と緊急事態というふうに法的には分けてありますけれども、今回の大震災は言わば緊急事態、有事ではないということでありますけれども、その実態は国家にとって有事に準ずる深刻な事態であり、このような場合、国は速やかに緊急事態の発令を行い、一定期間、国内のあらゆる活動を政府が一貫して統制するというのが近代国家のありようだと思います。  私は、今回の大震災によって、日本人が戦後築き上げてきた社会生活、消費生活の既存の概念が多くの部分で成り立たなくなってしまっており、従来、言わば物欲主義、拝金主義というか、もう電気は、水は、とにかくお金を出せば使える、いつでも使える、そういう前提で我々の生活を享受してきた、こういった既存の概念というのは今や何か根本的に反省されるべき機会、時期に来ているのではないかと思います。当然に我々の生活の中で存在するものが存在しないという状況の中で、これから生き抜くためにどういう生き方をすればよいのかということを一人一人が考える時期になっているということではないかと思います。  この地震の前から、既に近年、日本は国際社会においてその国力や存在感がみるみると低下し、国内も内向き現象になり、学生も留学する人がどんどん減り、ごく一部の富裕層が個人資金やその住居、住民票までも国外に出して、日本にもはや期待を捨てるという人々が見られることは実に深刻な事態であると思います。今回の災害に際して見られた原発事故で日本国家に対する信頼感と格付がもしこれから減るということになれば、更に我々は深刻な問題だと受け止めなければならないということでありますが、しかし、この問題を何とか切り抜けて、資源や財政、こういうものに抜本的な改革を進めて国内を改善し、日本の国力の向上の手だてを再考すべき時期に来ているんだろうと思います。  国内はこういうことですが、周りを見渡すと、東アジアは依然として、中国やロシア、北朝鮮におけるリーダーシップの交代を含む国内政治要因あるいは対外政策の路線の変更などによって、昨年からかなり東アジアは中東湾岸に次ぐ不安定な地域になりつつありますが、この状態は依然として改善されておらず、加えて中東湾岸地域の状態は、今から酒井公述人が御説明いただけるものと期待していますけれども、このつまり国内における大災害、それから周辺の、特に東アジアと中東湾岸情勢といういろいろな新しい環境変化の中で日本国がそのかじ取りをしなければならない、これが今日我が国が置かれている安全保障上の深刻な環境変化であると思います。  今回の地震に対して私は、安全保障の面から幾つか今の時点で、まだ十日もたっておりませんけれども、しかしどうもこれから考えなければならない幾つか深刻な問題があるのではないかと思い、そのことをまずお話ししたいと思います。  第一は、今申し上げたように、緊急事態基本法あるいは国家安全保障基本法など基本的な法令がないこともあるのですが、やはり今回立ち上げていただいた政府の対策本部の活動が必ずしも統一的に管理されているとは思えず、官房長官も原発でほとんど忙殺されており、安全保障会議も活用されておらず、いろいろな国内の現象、例えば計画停電だとか一部の買占めだとか、あるいは物流だとか交通とか情報などは、これら政府対策本部の所掌とは必ずしもなっておらず、僅かに防災担当大臣の下に被災者生活支援対策本部が立ち上がって八十人ぐらいの職員が活動していますけれども、これはあくまで被災者の生活を支援するための活動に限定されており、その権限も防災大臣の権限の所掌内であるという限定されたものであります。  そういうことから、なかなか現地にいろいろな活動がトータルで進まないことにやはり多くの国民がいら立ちを感じているのではないかと思います。これをどのように効率的にすればよいのかということは今回の大きな反省ではあったわけですが、今後のことを考えると、これはかなり抜本的に対策を講じておく必要があると思います。  今回の災害は規模が極めて甚大であったこともあり、地方自治体が十分に機能しなかったことも御覧のとおりであります。このような場合、数県を含む広域の活動を統制する組織をつくり、訓練を行い、基準を決めるという必要があると思います。とりわけ、自治体が持っておるべき住民票だとか土地台帳だとか戸籍などの基本的資料が全くなくなってしまっている地方自治体があるわけで、こういった基本資料を複数作成してトータルで管理するシステムも検討する必要がありますし、また今回のような部分的な被災地の形がなくなってしまったことから、行政機構というのを改めて見直す時期に来ているのではないかと思います。  残念ながら、災害の規模が大きかったこともあり、災害対策基本法及びその基本法に基づく防災組織などがほとんど活動できなかったことも大いに反省する点であると思います。  他方において、自衛隊の活動は目覚ましかったわけですが、御覧のとおり、今回、東北方面総監部にいわゆる統合任務部隊を初めて置いて、ここで一括管理して統合部隊の活動をやっているわけですが、陸上自衛隊には海、空と違って総隊の組織がなく、この総隊の組織がないことが陸上自衛隊の活動を非常に複雑にしたということも問題ですし、かつ自衛隊の活動というのは、本来、法的に言えば、内閣総理大臣の命以外には、いわゆる地方自治体である県知事の要請に基づいて災害派遣を行うということですが、現地の活動を聞き及ぶ限り、もうほとんどそういうことではなく、場合によってはボランタリー活動や民間の活動、あるいは警察の要請を受けて自衛隊がどんどんと活動しなければならないというような事態が起こっているわけで、この自衛隊というものといわゆるそれ以外の一般の国民というものの活動をどのようにこれから調和していくかということは新しい法的な問題点であると考えます。  今回の災害の中で最も深刻であったのは言うまでもなく原発の事故でありますが、これは想像を超える地震災害に対するシステムが必ずしもできていなかったということを証明したものであり、今回は日本人の知恵で臨機応変の危機管理的な対応措置を続けていて、かなり難しい問題を次々に解決し、峠は越したのではないかと思いますが、しかしながら、東京電力という一企業に国家的な安全管理の責任を任せているという体質はやはり制度としてどこかおかしく、現場における東電の社員あるいは自衛隊、警察、消防などの現地の職員が昼夜を問わず努力をしたことに対し内外から評価が高いことはそれはそれとして、一方、この原発に関する日米間の情報交換あるいはアメリカ日本政府の対応措置に対する極めて深い不信感というものが残ったことは、今回の事故処理を極めて複雑にしたという点は否定できないんだろうと思います。  いずれにしても、今回、米軍の活動が阪神大震災のときとは比べ物にならないぐらい深い、質、量とも充実した大変内容のある活動であったわけですが、これも実は、今後日米間でどのような司令部機能を立ち上げていくかという教訓を残したのではないかと思います。各国から入ってきた救援部隊もそれぞれ活動をしてくれたわけですが、しかし、なかなか語学、あるいは後方支援、あるいは交通手段、あるいは法的な措置等を考えると、軍隊以外の救援部隊の受入れ体制が必ずしも十分でなかったということも我々の大きな反省であると思います。  いろいろこういった問題を挙げてみると、まだまだ我々が深くこの問題を注意をして、今後一定の期間を置いた後で各活動をした人から全て教訓を聞き取って、今後のために改善すべき点を改善すべきであると思いますが、日本人は責任ある人がミスマネジメントをしたことをなかなか正直に教訓として残さないというある種の恥の文化を持っているので、今回は例外なくこれらを全てテーブルの上にのせて記録に残し、全ての人にこれを共有し、今後の教訓とすべきであると思います。  最後に、幾つか今後やるべき課題として、第一は、やはり国家の緊急事態基本法あるいは安全保障会議などをきちっと設置して、事態を発令し、総理大臣の権限を強化し、国内のいろいろな活動を一括統制するという制度を確立しておく方が望ましかったのではないかと思います。復興庁の設置も重要だと思いますが、自衛隊の組織の在り方や要員の編成の仕方なども反省点が多かったのではないかと思います。日米間で合同司令部をつくることは今後の大きな課題であると思いますし、また、この種の大規模の災害に、特に地震に伴う津波をいかにして防止し、通報連絡をするシステムをもう一度つくり直して危機管理体制を強化することも、我々これから立ち向かわなければならない仕事であると思います。  いずれにせよ、まだ人々が多く苦しんでいる途中で全ての結論を簡単に導くことは危険であると思いますけれども、今のこの難事を我々の努力で切り抜けて新しい日本を再生するために、今まで我々が凝り固まっていた既存の概念をどのように打ち払って、新しい日本を再生するかという観点に立って努力をする必要があるのではないかと思います。これが今日我が国が抱えている安全保障上の最も深刻で重大な問題であると、かように考えて、私の公述を終わります。  委員長、以上でございます。
  69. 前田武志

    委員長前田武志君) ありがとうございました。  次に、酒井公述人にお願いいたします。酒井公述人
  70. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 本日は、お招きいただきましてありがとうございました。東京外国語大学の酒井でございます。  さきの公述人先生方お二方が専ら安全保障あるいは危機管理、対米関係ということに焦点を当てた御報告をされたのに対しまして、私は中東政治を専門にしているということから、現在国際情勢の中で最も変動の中心になっております中東の政治変化、これについて簡単に解説と若干の提言といいましょうか、サジェスチョンをできればと思っております。  御存じのように、一月十四日にまずチュニジアでジャスミン革命が起こりまして、長年政権の座にあったベンアリ大統領が民衆の手によって追放されるという、中東では三十年ぶりの民衆革命が発生いたしました。  この素手の民衆による政権の交代という試みは瞬く間に周辺国に波及いたしまして、隣国のエジプトでは二月十一日にムバラク政権が終えんを遂げるという激変を迎えました。その後、この民衆革命の波はイエメン、ヨルダン、リビア、バハレーンといった中東主要諸国に広がっておりますけれども、チュニジア、エジプトで発生いたしました民衆革命の成功という、あるいはそのエジプト、チュニジアにおける市民運動の新しさに比べまして、現在リビアやバハレーンで起こっている情勢というのは相変わらずの力による鎮圧という形態を取り、古いタイプの問題の解決方法に向かっているように見受けられます。  エジプト、チュニジアが流血と全面的な武力衝突を回避した、言ってみれば市民社会成熟型の民衆革命であったということに対して、リビアにおいては未熟な暴発型の武力対立となっておりまして、御存じのように、国際社会の軍事介入を現在招いているという状況です。そして、バハレーンにおきましては宗派対立の波及が懸念されておりまして、これもまたサウジを中心とした周辺産油国がバハレーンに対する干渉を強めております。こうしたリビアやバハレーンなど波及先の情勢によっては、エジプトやチュニジアで発生した自力による平和裏の民主化推進という成功例を逆行させるネガティブな結果をもたらしかねないという状況にあります。  本日の私の報告においては、こうしたエジプト型の市民社会成熟型の政権交代のパターンをいかに国際社会が支援することが肝要であるか、そして同時に、国際社会の軍事介入に対する二重基準や石油消費国が自国権益を最優先させて現地の民主化を阻害しているというようなイメージを再び中東諸国に植え付けないために、リビア、バハレーン情勢に慎重な対処が必要であるということを申し上げたいと思います。  まず、成功例というふうに申し上げましたチュニジアやエジプトでの政権交代がどのような形で行われたのかということについて、かいつまんで説明いたします。  中東諸国におきましては、体制の違いはあれ、いずれの政権も長期政権で、民衆の政治参加に制約があり、民主化が進んでこなかったという共通点がございます。こちらは、配付いたしました資料最後に各国の政権の体制比較を付けておりますので、そちらを御覧いただければ概観できるかと思います。  それがなぜ今年になって一気に反発が噴出したのかという点につきましては、一部にはインターネットの普及などが指摘されておりますけれども、私は必ずしも直接的な原因ではないというふうに考えております。むしろ、今年に入ってからの民衆運動の盛り上がりには、特にエジプト、チュニジアでは、数年前から徐々に形成されていた若者による非イデオロギー的な超党派の市民運動が果たした役割が大きいと考えております。エジプトでは、二〇〇八年ごろから経済的、社会的不満を掲げた社会運動が生まれ、特に青年の不満代弁の場となっておりました。この社会運動は、今申し上げましたように、イデオロギー的には偏向せず、労働運動からイスラム運動、リベラル派など各勢力を抱合した点が大変新しい点になっております。それまでの中東諸国における反政府運動は、専ら左派民族主義系の運動かイスラム主義系の運動、どちらかしかなかった。それに対して、第三の潮流を生み出したのがエジプトの事例だというふうに考えられます。  こうした市民運動に集う若者にとって、議会政治にも十分な信頼を寄せられない、エジプトやチュニジアでは部分的な制約された議会活動が展開されておりましたけれども、そうした議会の場を通じない、あるいは政党に対する不信感が高まった結果、このような街頭行動を中心とした反政府運動が盛り上がったということが言えると思います。  そして、今回のこのエジプト、チュニジアでの革命が大変重要だと私が考えている点は、この反政府活動の中で、従来見られたような反米あるいは反イスラエルといった外交的なスローガン、あるいは宗教的な、イスラム万歳といったような宗教的なスローガンがほとんど姿を潜めていたという点にあります。そして、このように反米、反イスラエル、あるいはイスラム万歳といったようなスローガンが姿を消すことによって、アメリカを中心とした国際社会がこうした中東の政変に対して抱く不安感、将来に対する不安感を払拭することができたということが言えます。これがエジプト、チュニジアでの革命の成功要因の最大の点だったというふうに私は見ております。  特に、このエジプトでの反政府活動が盛んになった際に、イスラエルではしきりにエジプトの将来の政権がイラン化するのではないか、つまり反米的、宗教的な急進的な政権になるのではないかということを主張して、アメリカがムバラク政権の崩壊を阻止するように介入するべきであるというような訴えかけをしてまいりました。しかしながら、よく情勢を見ておりますと、このような反米性あるいは宗教的な急進性といったものはエジプトの反政府運動には全く見られなかった。結果、アメリカはこうしたイスラエルの主張に賛同することなく、過度な介入を避けて民衆の自力での政権交代を見守るという結果になります。  このことによって、アメリカのイメージ、アラブ諸国におけるアメリカのイメージが大きく変わるということになります。アメリカの中東におけるイメージというのは、イラクあるいはアフガニスタンで代表されますように、軍事力をもって中東諸国の内政に干渉する国であるというイメージがイラク戦争以来定着してまいりました。それが今回のエジプトの政変においてアメリカが距離を取ったということは、アメリカのイメージを大きく変える大変画期的な転換点だったというふうに私は見ております。  これに対して、逆行するのがリビア及びバハレーンの状況ということが言えると思います。  まず、リビアでの反政府運動でございますけれども、エジプトやチュニジアと比較いたしまして、余りにも準備不足な状態で立ち上がることになります。特に、カダフィ政権を批判する余り、体制全体を敵に回すというような形で反政府活動が展開されていった。これは、イラクの事例でも見られますように、サダム・フセインに対しては反対するけれども、サダム・フセインを取り巻く大きな体制、バース党与党体制等、そうした体制全体を敵に回すことは大変大きな混乱を招くという事例が既にイラクであったわけですが、そのイラクと同じような形でリビアでは体制全体を敵に回した反政府活動が暴発的に発生したということになります。  そして、こうした反政府活動が真っ先に国際社会に支援を求めたということも、自力での政権転覆能力のなさを逆に露呈する形になった。EUを中心とした国際社会は介入を余儀なくされるわけですけれども、ここにおいてはどこまで介入すべきかというような合意が必ずしも取れていない。それこそカダフィ政権を最終的に転覆するまで介入を続ける必要が実は反政府側からすればあると考えているわけですけれども、しかし、それだけの介入をするには大変大きなコストを払う準備が国際社会にどれだけあるのかという、大変イラク戦争以来、国際社会が抱えてきたジレンマを、同じジレンマを今リビアで進行形で抱えるということになっております。  リビアの事例に関しては、これはある意味でリビア原油に依存するのは専らイタリア、フランスといったヨーロッパ諸国でありまして、リビアの原油が今輸出が不安定になっておりますけれども、こちらは少なくとも日本の原油輸入に影響を与えるような形にはなっておりません。いずれにいたしましても、サウジを中心とした湾岸産油国の増産体制によってリビアの原油の輸出減はこれは補われておりますので、供給不足を招くというような状況には今のところ至ってはおりません。  しかし、より懸念されるのは湾岸で起こっておりますバハレーンでの状況であります。バハレーンという国は、これは湾岸産油国の中では比較的議会活動への要求が強く、市民運動が成立してきた、湾岸の封建的な体制の中では珍しく政治参加度合いの強い国であるというふうに言われております。しかし、このバハレーンにおいて昨年末に行われた選挙で大幅な政府による選挙介入が行われ、反体制活動家が逮捕されるというような状況がございました。そうしたことを背景にいたしまして、エジプト、チュニジアでの革命以降、即座にバハレーンでも反政府活動が激化しております。  バハレーンが厄介な点は、三割と言われる少数派のスンニ派の王制、しかも外来王制でございますけれども、元々はアラビア半島からやってきた王族の支配というような外来王制に対して、人口の七割を占めるシーア派の住民が長年政治参加を求めて反発を強めてきたというような宗派対立の側面を持っております。こうしたバハレーンでの状況に対して、現在サウジアラビアが部隊を派遣するといったような形で民主化運動を押しとどめるという方向で介入を開始しております。  ここで問題になりますのが、先ほど申し上げましたように、リビアでは民主化運動側を支援する形で国際社会が介入しているという形を取っておりますけれども、バハレーンでは逆に周辺国、サウジを中心とした周辺国が民主化要求を鎮圧するという形での介入が続けられております。そして、少なくとも欧米を中心とした国際社会はそれを容認するというような形を取っております。  これは、長年言われておりました国際社会の中東政治に対するいわゆるダブルスタンダード、欧米の権益のあるところでは民主化運動を抑圧し、そうではないところでは逆に反政府側を支援するというような、あくまでも欧米の利益関係に基づいた介入になっているというイメージを強く打ち出す結果になっているということが言えるわけです。これは、先ほど申し上げましたように、エジプトでの政権交代、民主化運動が欧米あるいは国際社会の過度な介入を招かずに平和裏に民主化を実現したということに対して、せっかく特にアメリカのイメージなどが向上したのに対して逆行する流れになっているということが懸念されます。  そこで、私が申し上げたいことは、こうしたエジプト型の国際社会に依存しない形の政権交代あるいは民主化といったような芽がせっかく生まれた今であるので、そうした流れを後押しするような形で国際社会がより積極的にアピールしていく必要がある。日本の場合は特に湾岸諸国において大きな石油に対する依存が強いわけですので、そうしたことを踏まえて、バハレーン情勢に関して日本はもう少し国際社会のイメージを改善するような外交を展開することが可能なのではないかというふうに考えております。  以上で私の方の報告は終わりにさせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。
  71. 前田武志

    委員長前田武志君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  72. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 民主党の森ゆうこでございます。  三人の公述人の先生におかれましては、大変貴重な御意見、誠にありがとうございました。心から御礼を申し上げます。  まずもって、この度の大震災で被災されました全ての被災者の皆さんに心からお見舞い申し上げますとともに、犠牲になられました皆様の御冥福を心からお祈り申し上げる次第でございます。  まず、孫崎公述人、そして酒井公述人に伺いたいんですけれども、今、酒井公述人からもお話がございましたこの中東情勢、酒井公述人には、今後どのような形で推移していくのか、そして日本はこの中東の民衆革命に対してどのようなスタンスで臨めばいいのか、特に米国との関係をどのように考えていけばいいのか。  といいますのも、イラクのときに酒井公述人の方から、あのアメリカ型民主主義、西洋型民主主義を押し付けては必ず失敗するだろうと。先生が御指摘されたとおり今の状況になっておりまして、そこに日本は追従する形で、必ずしも日本の対応の仕方が正しかったと言えない、もう一回きちんと反省すべきであるというふうに思っておりますので、そういう意味で、今後の中東情勢の見通し、そして日本が米国とどのように米国の世界戦略の中でお付き合いをしていけばいいのかということを伺っておきたいと思いますし、孫崎先生には、先ほども日米同盟の真実の姿ということで御著書もお出しになりましたけれども、今回の震災で非常にシンプルなことが明らかになったと、たしか一昨日のツイッターでお書きになっていらっしゃったと思うんですけれども。我々は幻想を捨てて真実を見るべきであると、我が国を守るのは当然我が国民であって、自国のことはまず自国で守らなければならないという非常にシンプルなことにもう一度目を向けるべきであって、それと同時に、日米同盟の真実、そこにもきちんと目を向けなければいけないということで、もう一度その辺り、そして、今の中東情勢に関しまして、今後、米国の世界戦略といいますか中東戦略の中で恐らく日本に対しても何かいろんなお話があるかと思うんですけれども、我々の取るべき道といいますか、そういうことについて御示唆をいただければというふうに思います。
  73. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 御質問ありがとうございました。  今後の推移ということでございますが、非常に流動的でございますので、一つ間違えば大変大きな暴力的な衝突が広がっていくというような可能性も含み考えていかなければいけないかと思います。  そういった中で日本ができること、特に対米関係を含めて日本がどう対応するべきかという点につきまして、先ほども申し上げましたように、私は、やはり湾岸諸国に目を向けて慎重に対応していくべきであろうと思います。  湾岸諸国は、いずれにいたしましても、米国に対する依存というのが非常に高い体制がほとんどでございます。そして、湾岸諸国の今の王制あるいは首長制体制をアメリカは維持するという方向で来るだろうと思います。  しかしながら、同時に、バハレーンで起こっているようなことは、ある意味ではエジプトやチュニジアで起こっているような大変、健全なといいますか、当然の流れと考えられるような民主化要求運動でありますから、そういったものをどういうふうにうまく吸い上げていくかという、その政治参加の道を促すような側面支援が必要になってくると。ここでアメリカが動けない部分日本が多少何らかの形で助言なり対応を取っていくということが可能ではないかと私は考えておりますし、あともう一つ言えるのは、このバハレーンの状況が過度な宗派対立を呼び覚ます契機になっております。  宗派対立に対しては、これはアメリカは大変敏感過ぎるほどの対応を取っておりまして、とりわけ、イランが背後にいてシーア派をコントロールしているというようなイメージを持ちがちでございます。しかしながら、それに対して日本は、孫崎大使もおられますけれども、イランとは、かなりアメリカとは違った対応を取ってきております。そこで、イランを仮想敵国のような形で対応するような国際社会の流れに対して、日本は中立的、冷静な姿勢を示すことができるのではないか。それは、恐らくアメリカと違った外交政策の展開の余地のある部分だろうと私は考えております。  以上です。
  74. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) まず、今回の原子力発電所の問題は、もしも自衛隊が出なかったとすれば、私は東京に住むことも厳しくなるような情勢が出てきたと思います。それを、自衛隊が出ていって、そして消防庁が出ていって抑えたということですね、これが第一、非常に重要なポイントです。かつ、米国自身もこの危機はスタートから知っていた。そして、国務長官を始め、日本政府に対して支援の申入れをしていたと思います。  このような状況でありましたけれども、東京電力の管理能力がなかった。それから、主管する経済産業省の能力がなかった。これでもって、ある時期、私は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、大変な事態が来ると思って出ていったんだろうと思います。この出ていったのは確証があったわけですね。この確証を取り戻したのは自衛隊です。我が国の危機を守ったのは自衛隊なんです。  米国は危機を知っていました。そして、いろいろな物資を届けるということを言いました。しかし、現場に行ったのは自衛隊なんです。我が国を守るのは自衛隊。アメリカはアドバイスはするでしょう、しかし国自体を守るのは自衛隊だということをしっかり認識して、我が国の安全保障を今もう一度考える時期に来ていると、こう思います。
  75. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 孫崎先生には、先ほどお尋ねしたことで、そういう意味で、今後の米国との関係の中で、今ほどの、先ほどの中東の問題も大変気になるものですから、その辺の関係はどのように対処すればよろしいでしょうか。
  76. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 米国は日本にとって非常に重要な相手です。ですから、この米国といろんな形で相談し、いろんな形で協力するということは当然です。しかしながら、我が国の国益と米国の国益とは必ずしも一致しません。今、日本の中で米国の国益に追随することだけが日本の国益であるというような考え方を持っているのが、余りにも政界、官界、経済界に多過ぎる。ここを根本的に見極め、考えていくという時期に今回来ていると思います。
  77. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 アメリカ考え方も、メディアは報道いたしませんけれども、実は日本に対して今までとは違う関係の在り方を模索している人たちもいる。しかし、その人たちと我が民主党政権自体もなかなかうまくコミュニケーションが取れていないのではないかという指摘があって、これまでのブッシュ共和党政権のそういう、いわゆるネオコンと言われる人たちとの関係ばかり、その人たちの声のみを聞き過ぎているのではないかというような指摘がございますけれども、この点については孫崎公述人はどのようにお考えでしょうか。
  78. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) まず、普天間問題のときに日本に対しては大変な圧力が来ました。しかし、このような圧力を掛けることによって日米関係を取り進めていくということは良くないということはニューヨーク・タイムズなんかに出ています。  そして、いま一つ申し上げたいのは、例えば中国の問題、中国の問題では最近オバマ政権は、できるだけ関係を強くしよう、経済的な結び付きを強くしようとしていることですから、単に軍事的に対決ということだけでは進んでいません。残念ながら日本の多くの人たちは、軍事的に中国と対決する、その中に日本が食い込むということが正しいという選択をしていますけれども、これは少なくともオバマ大統領が現在取っている政策ではありません。
  79. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。  森本公述人と孫崎公述人がそれぞれお二人とも同時に出演された朝生テレビをちょっと私も見ていたんですけれども、この日米同盟の在り方、特に先ほどの尖閣問題、その尖閣で有事があったときにアメリカがどうするのかということについて、先ほど孫崎公述人ははっきりと、〇五年の合意によってこれは、島嶼部分は、まずは、もちろん当然のことですけれども、自衛隊が対処すると。これは係争地域であって、アメリカは中立の立場ですから、必ずしもアメリカがコミットするとは限らないということを明確におっしゃっているわけですけれども、森本公述人におかれましてはこれらの孫崎公述人の指摘に対してどのようにお考えか、御意見をお聞かせください。
  80. 森本敏

    公述人(森本敏君) 国家がその領土を守るのは国家の基本的な義務であり、同時に権利でありますので、日本が領有権を主張している尖閣諸島の領土を自らの手で自ら守るというのは、これは国家の基本的な義務であります。そのために国家の自衛力を使うということも、これは場合によってはあり得るということです。  一方、安保条約は、安保条約第五条で、日本の施政の下における領域における日米いずれか一方に対する武力攻撃があった場合、武力攻撃に対して共同の対処をすると。もちろん、その前にいろんな前提が、条約上の言葉が付いていますが、その中身を省略すると、したがって、安保条約上は、日本の領土である限り、その日本の領有権、日本の施政の下にある領土に対する武力攻撃があった場合、条約上、米国が日本と共同で対処をして行動するということは安保条約の趣旨であります。  しかしながら、これは日本の固有の領土に第三国が武力攻撃があった場合、条約上、アメリカの法的な義務があるとはいえ、先ほど申し上げたように、国家の領土を守るのは日本の固有の責任でありますので、まず自らがその責任を果たすために努力をする。足らざるところをアメリカが補うということもありましょうし、共同して対処するということもありましょう。しかし、これ全くしないと、アメリカは条約上の義務が必ずしも果たされていないということだと思います。  ただ、これは領土が武力攻撃によって侵略されたという国際法上の事態があった場合であります。領有権を係争しているような外交上の問題にアメリカが、第三国、同盟国といえども、同盟国と第三の国と領有権を係争しているときに、その領有権の問題にアメリカが干渉したり、あるいは武力攻撃を受けていないようなレベルの問題にアメリカが介入するということは、原則としてアメリカはない、あるいはそれをしないという方策を取っていることは、これは既定の事実であると思います。
  81. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 今、森本公述人もおっしゃったとおり、私は尖閣問題がマスコミで報じられたときに、あるいは前原前外務大臣がクリントンさんに会って、あたかもこれ尖閣に何かあったらもうすぐアメリカが出てくるんだというような、そういう方向で、何というんでしょうか、報道がなされる、またそういうふうに錯覚させる、これは非常におかしなことであったというふうに思います。  もう最後、時間がございませんので質問はさせていただきませんけれども、本日は、実は、今回のことは国家緊急事態宣言を、今災害対策基本法にそれは、今の法制でもございますので、国家緊急事態を私は宣言すべきであると。もう緊急災害対策本部は設置されておりますけれども、やはり、まさしく有事に匹敵するような事態でありますので、そういう事態を宣言し、そして、今ある限りの法律でもすぐ対処できるものはありますので、もっと危機感を持って対応すべきであるということで、ただし、いわゆる有事法制、平時のうちにしっかりと我々立法府で考えていかなければならないというふうに思っているということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  82. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 自由民主党の塚田一郎です。  まずもって、今回の東日本巨大地震、津波でお亡くなりになられた多くの方々、そしてまた被災された皆様に対して心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。  また、今日は、本当に三人の貴重な御発言をいただきました。公述人皆様には感謝を申し上げます。  先ほどから孫崎先生を始めお伺いをしながら思ったことは、もっともなことをおっしゃっているなというふうに私自身思いました。自らの国を自らの手で守るということは、これはもう基本でありまして、国家の、それについて誰も多分異論を唱える方はいらっしゃらないと思うんですね。  問題は、日本の場合、その先の議論がないということに私は問題の本質があると思っております。つまり、自らの国を守るということは、自主防衛力の強化ということが当然その先の議論になければならないわけで、当然このことは憲法九条改正も含めて根本的な国の在り方をどう考えるか、その中で自主防衛の在り方を考えるという、この部分に入ると、突然に日本の場合はその議論がトーンダウンをしてしまう、このこと自身、私は非常に大きな問題だと常々思っております。私自身は九条も含めて改憲論ですから、当然積極的に議論をしていくべきだと思います。  先ほど、拡大核抑止の話で、中国、ロシアに対する拡大抑止は効かないんじゃないかというような御指摘もありました。もしそうだとすれば、普通の自立国家であれば、日本という国がですよ、核の、持つということの選択も含めたタブーのない議論をするというのが本来の姿なんだと私は思っています。しかし、そこで議論が途絶えてしまうことがまさに日本の安全保障議論の大きな私は問題だと常々思っているわけですが。  孫崎先生にまずお伺いをしたいんですけど、先生の御主張をそのまま解するとすれば、当然その憲法九条の問題も含めて日本の自主防衛力あるいは核に対する議論、これをやっていくべきだというふうになると思うんですが、その点についていかがお考えでしょうか。
  83. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 私は、自主防衛を強化すべきであるということは常々申し上げております。そして、一九六九年の外務省内部の文書、これは、局長が集まり、多分、次官が主宰した会議において、米軍には漸次撤退してもらう、それを自衛隊が埋めるという方向を出していますから、これは憲法改正という手続を取らなくてもできることでありますし、その論理は現在も正しいと思っております。  そして、かつ、日本の核の保有の問題については議論すべきであるということを私は、一九八六年、ハーバード大学に行きまして、それを自分の研究論文の発表といたしました。その当時は、日本が核を持つという可能性についても、私自身なりにどちらかというと前向きに考えていました。しかしながら、今日我々が相手にすべきロシアとそして中国というものを考えたときに、日本で独自の核をある程度持っても、それはロシアの攻撃あるいは中国の攻撃を止める抑止力にはならない。抑止力が起こるためには、相手の国をほとんど完全に全滅でき得るぐらいの核の力を持って初めて抑止力が出ますから、中途半端な核を持って、そしてロシアと中国の核に我々で対処できるという幻想を持つのは非常に危険だと思っております。
  84. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  森本先生、この点について、日米の同盟関係も含めて先生はどのようにお考えですか。同じ質問です。
  85. 森本敏

    公述人(森本敏君) 自主防衛という言葉は、本当のところ正しく定義しないといけないのですが、自主防衛というのは非常におかしな言葉で、本来国が国家の防衛を自主的にやるというごくごく当たり前のことで、これを否定している国は世界で余りないのではないかと思います。  私が考える自主防衛というのはそういうことではなくて、日本が防衛をするときに、例えば日米安保体制の下で日米協力をする場合でも、日本の防衛のために必要なシステム、つまり装備とそれから法的な枠組みは日本がまず主体的にあって、足らざるところをアメリカに補ってもらうという意味での自主防衛であって、アメリカの代わりに日本で全部やるという意味ではありません。  ところが、そこで一番問題なのは、日本の領域の中で日本が個別自衛権を行使して行うような防衛についてはそれでよいのですが、日本の領域の外に出た場合この自主防衛というのはどういうことになるのかというと、自主防衛というのが、言葉を間違って、どういう防衛力を持つかということだけで議論するとむしろ非常におかしなことになって、その防衛力をどのような目的で、どのような様相でどのように使うのか、行使できるのかということの方がむしろこの自主防衛の中の大きな役割を占めているわけです。  そこですぐに議論になるのは集団的自衛権という議論になるんですが、私はこういう議論を取りません。つまり、集団的自衛権よりも重要なことは、日本の領域の外で日本が正当に日本の防衛のために武力を行使できる、武器を使用できる、国家の防衛のために武力を行使でき武器を使用できる、これがなければ集団的自衛権もあるいは自主防衛もないということなので、持っておる防衛システム、つまり装備の点に問題があるのではなく、この防衛力を領域の外でどのように使うのかという基本的な政策の在り方、その根拠となる法的な枠組みの方が自主防衛の根幹を成す重要な議論であると考えているわけです。  拡大抑止については、これまた同じ議論ですが、私は、日本が固有に核を開発をし、実験を行い、これを保有するということは孫崎公述人と同じ論理で効率的でないと。効率的でないんですけれども、ただ、一つだけ少し意見が違いますのは、孫崎公述人のお話だと相手に対して完膚なきまで核攻撃で破壊できる能力を持ってなかったら核の抑止にならないという議論でしたが、私は、核の抑止というのは、ある程度の核を持っていて、相手が手を出すと、実は、出したことによって得られる利益よりも受ける損害の方が大きいかもしれないと思って相手が思いとどまるに必要な核があれば一定の効果を示すのではないかと。それはどれだけかというと、相手と同じく、あるいは相手を上回る核戦力が必ずしもなくてもよい。例えばイギリスだとかフランスだとかパキスタンは、どこの国を想定しているか知りませんが、相手を全く核で破壊できるだけの核を持っていなくても、核の抑止がある程度成り立っているのではないかと思うんです。  だから、それが相手の持っている総力の何分の一なのか、半分なのか三分の一なのか分かりませんが、全く同様の、同等の核戦力がなくても核の抑止の機能はある程度果たせるんではないかと。その点については少し考え方が違うわけで、基本的な物の考え方がどこか間違っているとか、あるいはどこか食い違っているとかいうことではないと理解しております。
  86. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  中東情勢について酒井先生にお伺いしたいんですが、いわゆるリビアへの多国籍軍の攻撃が始まっているわけで、これについてなんですけれども、いわゆるフランス、イギリスが積極的な姿勢を取っているのに比べてアメリカは非常に腰が引けていると。当然イラクの二の舞になるリスクを回避したいという思惑もあるでしょうし、果たしてどこまでアメリカが今回のことに介入できるのかということで、既にもうNATOに権限を移譲するとかいう議論も出ているわけですね。  そうすると、果たしてこのリビアの状況が今後収束をしていって、うまく地域の安定化に導かれるのかどうかということが非常に気になってくるところですが、その点をどういうふうに見られているかということが一点。  もう一つは、いわゆる欧米が介入する形での中東の民主化というモデルがだんだん機能しなくなっているんではないか、今のアメリカの状況も含めて。この辺りについて、今後も含めてどのように考えられているか、お聞かせいただきたいと思います。
  87. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 御質問ありがとうございました。  リビアに関してですが、アメリカが腰が引けていると。これは当然だと思います。イラク、アフガニスタンの繰り返しをしたくないというのは非常に強いですし、同時に、先ほど申し上げましたように、エジプトの事例でアメリカはようやく、アメリカは軍事介入をする国なんだというイメージをエジプトの事例で払拭したわけですね。  払拭したときに、また古きあしきイメージを復活させたくないというのがありますから、最低限の介入にとどめたい。ただし、これはまたイラクと同じではありますけれども、その独裁に対して立ち上がった民衆に対してアメリカとして何も手を出さないのは、やはり民主化を推し進めるアメリカとしてはいかぬだろうということで関与をしております。  しかし、実質的には引く方向で来ておりますし、御質問の、アメリカがもし引いてNATOに権限を移譲した場合に今後リビアは安定するのかという御質問ですが、私は、逆にアメリカが関与することで事態が混乱し、安定化しなかったケースの方が圧倒的に多い。これは二番目の御質問につながりますけれども、アメリカが介入して民主化するという方向は、これまで軒並み失敗してきているわけですね。  あるいは、失敗しないにしても非常に時間が掛かってコストが掛かってきているということを考えれば、アメリカが引いてリビアが不安定化するという懸念はむしろしなくてもよろしいのではないか。これは逆に言うと、アメリカがいてもいなくてもリビアが不安定化する懸念はいずれにしても非常に高い。これは国際社会の総体として、慎重な形でどのような配慮を利かせた介入の仕方を考えていくかということは、これは欧米に限らず全体で考えていくべき点だと思います。  以上です。
  88. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  次に、自衛隊の役割についてちょっと森本先生にお伺いしたいんですが、今回の災害対応で自衛隊が多大なる貢献をしたことはもう本当に我々敬意を表しておりますし、感謝に堪えないという思いであります。  一方で、その自衛隊の活動に対するニーズが非常に多様化をしてしまってきているために、本来の自衛隊に対する、我々がこういうことを災害対策で対応としてしてもらいたいということを超えて、いろんなことが自衛隊に要求をされているという側面があるんではないかなということを最近考えることが大変あります。  こういったところを、本来の自衛隊のミッションとしてどういった形の命令系統、先ほど知事あるいは総理大臣からということがありましたが、そういう点も含めて、先生どのようにお考えになるか、あるいは自衛隊の定員の削減ということが新しい防衛大綱でも言われているようですけれども、この辺りについてどう考えられるか、これをまずお聞かせいただきたいと思います。
  89. 森本敏

    公述人(森本敏君) 御質問の中に幾つも複雑な問題が複合されて入っているのでなかなか整理をして説明しにくいのですが、第一にまず、御案内のとおり、自衛隊が国内で活動する場合にはきちっとした法的権限に基づいて活動するというのが法の決まりであり、またそれは厳格に守らなければならないということで、これは総理たる自衛隊の最高指揮官の命に従って法律に基づいて出る以外は、災害派遣については、自衛隊法に基づいて、地方自治体の長である県知事の要請に基づいて出ると。阪神大震災の教訓を生かして、それ以後、実は知事が要請できない場合というのがこれはあり得る、論理的にはあり得るわけで、県知事庁舎、県知事以下が全部被害に遭われた場合には要請さえできない。その場合には、緊急の場合、防衛大臣がそのような場合、自主的に自衛隊に命じて出るということがあり得るわけです。  このような根拠に基づいてきちっとやる、行われるという活動を今回もずっと繰り返してきたわけですが、現実の問題としては、十万人の部隊が非常に広範囲にわたって活動し、それを一括して仙台の東北方面総監に統合任務部隊という今までにない部隊指揮官を一人、だから、交代がない部隊指揮官を一人だけ二十四時間置いて、普通の部隊指揮官というのは必ず副司令官だとか副長だとかいろいろいるんですけれども、一切交代のない指揮官を一人置いて、彼に全権を委任して、大臣と総理が指揮監督しておられる。  すると、分かりやすく言ってしまうと、全ての県知事が個々の要請を全部するだけ。それぞれの県の組織、機能がきちっと維持されておればよいですが、末端の部隊で、もう緊急で、もうそんな県知事を通して自衛隊に要請するなどのいとまが到底考えられないか、そういう手続も知らないような人が自衛隊の方に、姿を見付けて、これを何とかしてくれと言ったときに、いや、県知事に言ってくださいというそういう冷たい対応が、冷たいかどうかは別として、そういう対応がなかなか現地でできないような事態が実はこの一週間以上起こっているわけです。  はっきり分かりやすく言ってしまうと、例えば給水車がもう本当に水が欲しいというところに届けようとしていると。その給水車を見付けた人がわあっと集まってきて、その中の水を下さいと泣くように頼むと。それを結局車を止めて皆さんに分け与えていたら、結局あちらに行くときに一滴もなかったと。そういう事態は、よく考えてみると、その人たちが県知事なのかと、県知事の要請を受けて自衛隊にいろいろな行動を頼んでいるのかというと、手続的には非常に難しい話で、しかしながら、そういう応急の措置をしなければならないような事態があらゆるところで起きてきたわけです。  さっき申し上げたように、だから、法は法なんですが、実際にいろんな人が集まって、ボランティア活動も入っている、NGOも入っている、お医者さんもいる、地方公共団体もおれば消防隊も警察もいると。あらゆる人の要請を受けて、自衛隊がその任に応じて、彼らのリクワイアメントに応じるためにどのようなシステムをつくったらよいのかということを、この地震を機にもう一度、やっぱり根本に立ち返って考えてみる必要があるという趣旨のことを先ほど申し上げたわけです。  これとの関連でいうと、人員が非常に足らないということはかねてから言われていて、今回の大綱でも陸上自衛隊の定員を減らしたわけですけれども、今回は自衛隊は非常に広範な活動をしながら、既にこの新大綱に基づく自衛隊の在り方をどのようにすればいいのかということを、もう先を見ながら実施をしつつ、全体計画の見直しを同時に並行的に作業して、いずれその結果はトータルで、まとめて明らかになると思いますけれども、今申し上げたように計画はあくまで計画で、目の前に予想だにしなかった事態が起きた場合に、それに対応して柔軟に対応できるような計画でなければいけないわけで、私は結論から申し上げると、今の陸上の要員は明らかに国家の要請には満たない、足らない、定員そのものが不足しているという事態に立ち至っているのではないかと考えているわけです。  以上です。
  90. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  もう一点、森本先生にお伺いしたいんですが、福島第一原子力発電所の対応について、先ほどちょっと気になることをおっしゃっていたんですけど、アメリカも不信感を持っていると。情報が開示されないというふうなことについてだと思うんですが、この辺りについて、この事故の対応をどのようにするべきだったのか、あるいはどういうふうにリスクマネジメントを政府がやるべきかという点について、先生のお考えがあったらお聞かせいただきたいんですが。
  91. 森本敏

    公述人(森本敏君) 以下は私が想像で申し上げるので、これは実際に自分で正しく検証しないといけない部分があって、今から私が申し上げることは必ずしも私の確信ではないのですが、今までこの約十日間の間に私が見聞きしてきたことをトータルで私なりに解釈すると、実はアメリカも多くの原発を持っているわけですが、アメリカのみならず他の先進諸国は、日本が今回直面したこの種の事故を、恐らくこの種の規模の事故をどこでも経験していないということで、スリーマイルはもう本当に、今回日本で起きた原発の事故から比べれば本当にマイナーな事故で、極めて小規模なものできちっとマネージできたわけですが、だから今回事故が起きたのはチェルノブイルとスリーマイルの間ぐらいにある極めて規模の大きな、しかも全く様相の違う事故です。  したがって、何をみんな考えるかというと、できるだけこれを支援したい。と同時に、支援をしながら、そこから教訓を得たい。どちらかというと、その教訓を得たいということに恐らく各国の関心があるんではないかと思います。  アメリカはたくさんの支援を申し出てきています。幾つかの機材も借りました。専門家の知識も借りました。多分、私の想像ですが、しかしながら、彼らが、この事故にたくさん、三百人以上の人が派遣されていますが、彼らが得て持って帰る教訓の方が、彼らが日本に支援したものよりはるかに価値の高いものになるんではないかと考えているわけです。国とはそういうものであって、自分の国益になるからこそ、犠牲を負って、人間を出し、支援をしてきているわけですから、そういう意味では国益とは冷厳なものであると思います。  その際、アメリカがなぜここまで乗り込んできたかということについては、事故発生以来、必ずしも東京電力を含め日本が、アメリカが欲しいと思っている情報を全て共有できるような状態で提供できなかったことが彼らの不信感と不満にあって、したがって、実際に見ようとして専門家を派遣し、あるいはグローバルホークを毎日原発の上空に飛ばして実際に直接自分で情報収集をしているということであり、それは彼らが、繰り返しになるが、アメリカの国益につながると思っているからだと思います。  そういう意味では、この種の事故というのは、御承知のとおり、日本は、例えば一つ例を取れば、何キロ以内の人をどこかに避難させるという基準を日本はIAEAの基準を採用しているわけですが、アメリカにはアメリカの基準があって、アメリカにははるかにもっと避難すべき範囲が、日本が今適用しようとしている範囲より広いわけです。そういう措置についても実はアメリカは恐らく不信感を持っていて、日本にいるアメリカ人、在日米軍の兵士に影響が及ぶようなこの種の日本の措置についても実際に確かめ、その措置が正しいのかどうかということを自分の目で確かめながら、アメリカにとって将来の教訓にしようと思って日本に派遣されているというか、派遣してきているのではないかと、かように考えているわけです。  繰り返しになるが、私はこれ、一〇〇%私の申し上げたことに確信があるということではありませんが、今まで見聞きした限りで私の持っている印象を申し述べたところでございます。  以上です。
  92. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  もう時間もないので最後の質問にいたしますけれども、先ほど森本先生が緊急事態基本法、これかつて国会でも議論があって果たせていない法律、立法でありますけれども、こういうものをやはり統合的にそれぞれの災害対策の法律のトータルとして考えるべきだという御指摘をいただいたわけですが、これは当然、立法府として今回のこの事態を受けて非常に重要な議論になってくると思いますが、この点について、森本先生もう少し、一言コメントいただければと思いますが。
  93. 森本敏

    公述人(森本敏君) 御承知のとおり、小泉政権下の下で有事法制が、一連の法整備が行われた際、結局あのときも、御記憶にあると思いますが、有事法制の一番の基本的な枠組みは、まず周辺事態法から先に制定をして日本の領域の外にある緊急事態に対する法制をやって、その後に日本が武力攻撃を受けた場合のいわゆる武力攻撃事態対処法及びその関連法を後で作っていったわけです。そのときに、当時の小泉総理は何度も、テロもある、災害もある、いろいろあると言って、周辺事態法でも武力攻撃事態法でも適用できないような、いわゆる有事ではない緊急事態に対して常に発言をしておられるが、その法整備は結局残ったわけですね。  残ったので、平成十二年と十三年でしたか、僕も正確に覚えていないんですが、二回にわたって、当時自民党と公明党と民主党の代表が実際の名前で、幹事長の名前で緊急事態基本法を制定するということを明文で約束をし、それが先延ばしになって、翌年もう一度、緊急事態基本法を制定するということを重ねて文書で三党で約束をして、その後、それは立ち消えになっているということであり、今回、このような基本法がもしあれば恐らく事態が発令になり、この発令に基づいて総理がその法に基づいて必要な権限が行使できたのではないかと思っていたので、したがって、是非とも立法府において今回の大災害を機に緊急事態基本法の制定を進めていただきたいと、このように考えたわけであります。  以上でございます。
  94. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございました。これで終わります。どうもありがとうございました。
  95. 石川博崇

    ○石川博崇君 まず冒頭、今回の東日本大震災被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々に対して哀悼の意を表させていただきたいと思います。  また、本日は、大変御多忙の中、三名の公述人皆様にお越しいただき、大変に参考になるお話を賜りましたこと、心から感謝申し上げます。  私自身、議員になる前、外務省の職員として、アラビストの端くれとして十四年間働いてきた人間として大変に参考になりましたし、特に孫崎大使、また森本先生は大先輩であられる方でございますし、また、酒井公述人におかれましては、二〇〇三年のイラク戦争直後のときに、先生がバグダッドに入られるときにお供をさせていただいて、アンマンから陸路を十時間、武装警備員を付けて走り抜けたことをいまだに昨日のことのように思い返します。そういう意味で、大変尊敬する三人の公述人先生方に僣越でございますが質問をさせていただきたいと存じます。  まず最初に、今回の地震、特に福島第一原発の事故というこの事象は、日本の外交の中で、特に軍縮・不拡散の外交戦略にもある意味大きな転換を迫らせることになるかもしれないという事象ではないかというふうに考えております。  この点について孫崎大使及び森本先生にお伺いしたいんですが、今の国際社会におけるNPT体制、核の不拡散とそれから核の平和利用という大きな柱の中で、核の不拡散の方はどうしてもP5中心になってしまう部分がある中で、平和利用という部分においては、日本が特に耐震技術あるいは原子力技術、高い技術によって旗振り役を果たしてきたということがあろうかと思います。  例えば、イランの核問題におきましても、EU3プラス3、英仏独とそれから米中ロが中心になって取り組んでいる中にあって、日本の持つ高い耐震技術、原子力技術というものがある意味日本の重要な外交カードとして使えてきた部分があるんだと思いますが、今回のこの福島第一原発事件を受けて、その信頼に一定の傷が付いてしまったということは否めないのではないかと思います。  アメリカを始めとする各国が避難地域を日本と違った基準で示したこと、またIAEAの事務局長、天野事務局長が訪日して菅総理に直接更なる情報開示を求めるといったようなことが生じてしまったこと自体が、国際社会が日本への不信感を表したという象徴的な事例ではなかったかと思いますが、今後、この日本の軍縮・不拡散外交を立て直す、あるいは信頼を取り戻すためにどういった努力をしていかなければならないか、その点について御質問をさせていただければと思います。
  96. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 今回の事故でもって原子力に対する依存をどこまで進めたらいいかという問題は、私は根本的に国際社会を変えたと思います。既に、ドイツ、アメリカ、オーストリア、こういうところはいろんな措置をとっております。したがって、日本が原子力の平和利用の旗頭になるというものは、多分それは終わったんじゃないかと思います。これが一点。  それから、日本関係ないというような、少し直接関係ないようなお話ありました不拡散のことについて一言申し上げたいと思います。  今、北朝鮮であれイランであれ、これらの国の拡散が非常に心配されております。そのときに一番何をしなきゃいけないか。基本的には、北朝鮮であれイランであれ、なぜ核に依存しようかとすると、それは自分の国の体制と国に脅威があるという不安があるわけですね。したがって、核の不拡散を推進するためには、一番大事なことは、どの国であれ、相手の国の体制と国を軍事力で破壊するということはしないんだと、このメッセージを出していくことというのが非常に重要なんですね。ところが、残念なことに、核を保有しようとする北朝鮮、同じくイラン、これの体制の変換を望んでいますから、もしこの政策を推進するとすれば、それはこれらの国々が核兵器を持とうとする、そういうことですから、我々は北朝鮮政策あるいはイラン政策において体制変換をするというメッセージは少なくとも抑えるべきだと、こう思っております。
  97. 森本敏

    公述人(森本敏君) 私は、今回のいわゆる福島第一原発の事故については、そもそもこの原発そのものの設計上の信頼度から見て、全く設計上の信頼度を上回る地震と津波が起こり、そしてそれは普通に考えれば、原子炉そのものの安全性を考えれば、その程度の事故、その程度の津波、その程度の地震に耐え得るものにしておくのが本来あるべき姿ではないかということは、言うべくして簡単ではありますけれども、しかし、この炉、日本で設計したものではないんですけれども、今回の事故を何とか食い止めようとして、歯を食いしばってたくさんの人がその身を挺して今この事故の処理に当たっている。  このマネジメントが正しかったかどうかというのは、これは後で検証されるべきだと思いますが、私は、人間がつくったものは人間の知恵で乗り越えられないはずがないと思っているそういう人間なので、これを日本人の知恵で何とか乗り切って、大きな教訓が残れば、今、日本の中にやっぱり原発は危険だから自分の地元にある原発はやめてもらおうなどという意見が散見されますけれども、しかし私は全く逆で、この事故こそ人類が我々に与えた誠に貴重な、そしてどうしても我々が乗り切っていかなければならない大きな試練であって、この教訓を日本が持ったということ自身が、たくさんの人の犠牲の上に立って非常に国家としては、こういう表現は良くないのですが、誠にまたとない資産を日本は持つということになるんではないかと思います。また、そうあってほしいと私は思います。  だから、今回の事故をもって原発そのものに対するネガティブな感情、ネガティブな考え方にむしろならずに、これを乗り越えて日本が、安全でより信頼性の高い原子力開発あるいは機器の設計と、もっと安心して使えるような原子炉をこれから造り、それを管理していくということに自ら国力を投じて身を投じるということをやるべきなのではないかと。私は、むしろこの事故をポジティブに受け止める責任が日本にはあるのではないかと、かように考えているわけです。
  98. 石川博崇

    ○石川博崇君 ありがとうございます。  私も、今回の事故を奇貨として、更に日本が耐震技術については世界の最先端を行くという実績を更に積み重ねていってほしいと期待する一人でございます。  続きまして、森本先生にお伺いしたいんですけれども、今回の地震あるいは震災の対策に当たって国際協調というものが果たしてうまくできたのか。具体的な検証というものはこれからやっていかなければいけないんではないかと思うのですが、大変に有り難いことに、百三十か国、また三十三もの国際機関が支援のお申入れがあり、また多くの国の緊急援助隊が次から次へと日本に来て活動に当たってくれたんですけれども、先日実は、例えばユニセフあるいはUNHCRあるいはWFPといった代表の方々と話しておりますと、三月十一日、地震が起きてすぐ、様々な支援物資の申入れを行ったけれども、その後具体的にどこに行ってほしいというオファーが来ていなくて動けないという状況が続いているというお話を伺いました。外務省の方に伺ったところ、申入れ自体は官邸に上げているけれども、現地のニーズとの調整が行えていないと。したがって、オファーはあったけれども、それを受け入れる状態が整っていないということを言っておりまして、大変にある意味残念だなというふうに思いました。  これだけの激甚災害である、日本の国難である災害に当たって、せっかくの様々な申出がある中で、それを有効に、また効率的に活用していく。日本はこれまで海外の支援には様々な形で、アフリカ、東南アジア等取り組んでまいりましたが、日本国内のこういった災害に対して国際社会と一致協力して取り組んでいくという体制がこれまで経験が余りなかったということが今回の反省点として大変あるのではないかなと。  そういう意味で、今後想定される東海大地震あるいは首都直下型大地震に当たって、こういう国際社会からの協力をどういうふうにマネージしていくのかということをきちんと立て直していかなければならないのではないかと思うんですけれども、この辺について森本公述人、御意見お伺いさせていただければと思います。
  99. 森本敏

    公述人(森本敏君) この点については三点申し上げようと思います。  一つは、たくさんの国からたくさんの物資、支援をいただいたことは大変有り難く、こういうことを日本人としては余り言ってはならないかもしれませんが、日ごろ、戦後何十年もにわたって日本がいろいろな国に対して気を配り、その都度いろいろな協力をしてきた結果もあってこのようにたくさんの国から厚意が与えられたというふうに思い、そのことは、我々の努力のある種の結集であり有り難いことだと我々は受け止めるべきであると思っています。  しかし、今御質問あったように、日本の国内でさえ、地域でのリクワイアメントを取りまとめ、物資を効率的に物流としてどこかにまとめ、それを配給するというシステムが当初の間なかなか効率的にならなかったので、結局のところは、受け取ったものを、例えば自衛隊の東北方面総監の直接の部隊の物流センターに全部そこへほうり込んで、各地方公共団体その他から要請があったものをこうやって分けるという、そういうことをやってきたわけです。  しかし、それは数日たってからであって、当初は確かに、いただいたものが外国のものですから、それを日本人がすっとそのまま、地方地方方々がそのまま使えるということになかなかならないものもあり、何が書いてあるかも分からないようなものもあったわけで、そこは各国の大使館が行って通訳をして、これがどういうものであるかという説明をしてなお日本人がそれを使えるか使えないか、口にすることができるのかどうかさえもなかなか難しいという、そういうものが随分あったわけで、そこはやっぱりこれから、そういった各国の援助をどのようにして受け止め、これをどのようにして物流として配給するか、デリバリーするかというシステムをもう少しつくらないといけないという、それは非常に大きな教訓が残ったと思います。  第二は、あとは人員の問題ですけれども、各国からたくさんおいでいただいた方々は意外に報道に出てこないですね。名前を申し上げないですけれども、例えば我々の東アジアの近隣諸国からおいでいただいた。成田に入ってきたときはカメラに映って、後どういう活動をしていただいたかということがよく分からないんですね。  これはどうしてそうなっているかというのはいろんな原因があると思いますけれども、ほとんど言葉が通じないし、それから動く際にも動くための輸送の手段も要りますし、日本の手続も理解していない人が入ってくるわけですから、各国の大使館が付きっきりで、しかも受取方は、日本でいうと消防庁が受け取っていただいて、防衛省でも警察でも県でもなかったわけです。したがって、行くところが非常に限られ、かつ活動できるところが限られ、しかも思い切ったことをやるのに必要な法的な権限という問題も一つの大きな制約要因になって、これも、物とは別に人間がおいでいただいたときに、どのように気持ちよくその実力を発揮して日本の中で支援に協力をしていただけるかというシステムは、これは相当これから考えないといけないと思うんです。  実はこの点については、第三に、各国で、アジアの中で最近多国間の災害救助の訓練をARFの傘下でやっているんですが、これに参加する部隊というのはほとんど軍隊なんです。この二月もインドネシアで二回目、去年はフィリピンで一回目がありましたが、各国の部隊が入ってきていわゆるディザスターリリーフというマルチのオペレーションをやるということで、NGOだとか一般の方々がもう少し参加できるような広範な多国間の訓練とレギュレーションというんですか、そういったものをもう少し進めないと、なかなか、多数国間でこの種のディザスターリリーフをやるときに、効率よくすっと入れて、法的権限が与えられてアクセスも与えられて便宜も与えられてその人たちのニーズにすっと応じられるというのは、我が方が行く場合でもなかなか難しいということなので、結局我が方は何をやるかというと、多国間の枠、受皿があって、そこの中に要員として入るか国際赤十字の中に入るか、そういう方法しかないわけですよね。  だから、なかなかやっぱり、急にこの種の事態が起きたときに外国との支援協力関係を組織的につくるための仕組みというのはまだまだ不十分で、今回非常にたくさんの教訓が残ったのではないかと、このように聞いております。  以上でございます。
  100. 石川博崇

    ○石川博崇君 ありがとうございます。  それでは最後に、今回の事件と中東との関係について酒井先生にお伺いしたいと思います。  今回の、特に福島第一原発の事故を受けて、日本の電力供給体制の在り方、それからエネルギー安全保障の在り方、エネルギーの安定供給の在り方を今後しっかりと見直していかなければいけないと。そうはいっても、日本の電力供給の四割を原子力が占めている中にあって、完全にこの原子力推進をやめるということはいかない中にありますが、いずれにしても、代替エネルギーの今後の重要性をどう考えていくのか、さらには化石燃料、石油、また天然ガスといった、特に今、日本が九割の原油の輸入を依存している中東地域との関係強化というものはしっかりと今後考えていかなければいけない課題だと私は十分に認識しております。  そういった中にあって、特に世界最大の石油埋蔵量の上位三か国を占めるサウジ、イラン、イラクといった地域との関係強化、そして上流も含めた石油権益の確保というものは日本の外交課題にとって非常に大事だと思うんですけれども、先ほど酒井先生からお話のあった、いわゆるジャスミン革命のその影響というものが湾岸地域にどの程度及んでくるのかということは、世界市場にも大きな影響を及ぼしかねない、また日本の国益にも経済にも多大な影響を及ぼしかねない大変に重要な問題だと考えております。  先ほど酒井先生から、バハレーンの例を挙げられて、その民主化を後押しするような外交というものをというお話もございましたが、これ、もう少しできればかみ砕いて、具体的にどのようなことが日本に、この湾岸地域に対して外交政策として取ることが可能か、教えていただければと存じます。
  101. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 御質問ありがとうございました。  石川先生の方がよく御存じかと思いますけれども、日本は湾岸地域の石油に基本的に大幅に依存しておりますので、その意味では、サウジアラビア、イラン、イラクからの石油、そしてアラブ首長国連邦からの安定供給をいかに確保するかというのは、これはもう最も重要なことだと思います。  その点ではアメリカも、湾岸産油国の安定化を図るという意味では、アメリカのその利益、利益といいましょうか、今インタレストと日本のインタレストが変わることはないわけですけれども、しかしながら、先ほどちょっと申し上げましたように、やはり問題の収拾が、体制の安定化を重視する余り、武力で今現在発生している民主化運動を抑え付けるということになりますと、これは逆に暴発する可能性がある。とりわけ、先ほど申し上げましたように宗派対立に波及するということになりますと、私が一番気にいたしますのはやはりイラクですけれども、せっかく安定したイラクが、日本も大変大きな支援をして支えてきたわけですけれども、そうしたイラクでようやく収まった宗派対立が、バハレーンでの宗派対立の激化によってまた連動して、また不安定化していくという危険性があり得るということを考えると、繰り返しになりますけれども、アメリカ方のシーア派がイランの挑発に乗ってその安定性を乱しているというような考え方から一歩距離を置いて、いかに宗派対立に終始しない形で制度的な政治改革をバックアップしていくかというようなところで努力していく必要があると。特にイラクに関しては、やはり石油の安定供給が必要になりますので、引き続き支援を続けていくというのが肝要かと思います。
  102. 石川博崇

    ○石川博崇君 ありがとうございました。  以上で終わります。
  103. 小野次郎

    ○小野次郎君 こういう質問をさせていただく機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  まずもって、今回の震災で亡くなられた方々の御冥福をお祈りさせていただくとともに、今なお厳しい状況に置かれています被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。また、自衛隊を始め、現地で今日も本当に命懸けの救難あるいは復興のための努力をされている全ての方々に心から敬意を表したいと思います。  それでは、まず森本公述人にちょっと御意見を聞かせていただきたいことがございます。  先ほど、まず、森本さんが有事法制の話、平成十二年か十三年かとおっしゃいましたけど、私の記憶では、小泉内閣ができたのが平成十三年の四月ですから、十四年の通常国会で決着が付かなくて十五年の通常国会まで延びたと、十四年と十五年だったというふうに記憶いたしております。  早速質問に入りますけれども、私も役所に長くいまして、災害対策の法制とか原子力災害の法制とか、それなりに主管ではないにしても一緒に勉強させてもらったわけですけれども、やはり役人というか公務員というのは、正常時というか平時のことはよく説明、整理ができるんだけれども、異常なときというか非常時のことをどうするかというのを考えるのは苦手なんだなと、私改めて感じます。つまり、災対の関係も原子力災害の関係も、それなりに非常時のことをどうするかということを考えた制度をつくってあったはずなんだけれども、実際に事が起きてしまうと、やはりしゃくし定規で、そのとおりやったんじゃ事案の解決に余り一〇〇%の効果が上がらないという感じを持っているんじゃないかと思います。私自身もそう思っています。  そこでお伺いしたいのは、危機管理という視点から考えたときに、縦割りの弊害というのはどうやったら超越することができるんでしょうか、危機の場合においてですね。そのことをもし御意見がありましたら森本さんにお話を聞かせていただきたいと思います。
  104. 森本敏

    公述人(森本敏君) 危機管理というのを学問的に言うのは余り適当でないんですが、学問的に言いますと、つまり危機管理というのは、何かしら極めて重大な事態が起こることを未然に予見をし、察知をし、対応措置をとっておくというプリベンションといいますか、予防という措置と、事態が起きてから、起きたことによって受ける被害、損害をできるだけミニマイズする、最小限に食い止め、現状に戻す、復興するという、リスクマネジメントというのとコンシークエントマネジメントという二つの要素ができていて、どちらかというと、本来であれば、未然に防ぐために法を作り、体制をつくり、訓練を行い、それが実際に起きたときに適応できるように人間の知恵を凝らしてやるという、その一つの大きな、何といいますか、循環サイクル、これがある種の危機管理という作業であると学問的には言われているわけです。  その際、重要なことは、実は危機管理というのを決める最も決定的な要素は、七、八割方情報機能なんです。つまり、全く何も分からないのでは何も手が打てないんです。できれば情報が未然にあるか、あるいはなくても、事態が起きたら極めて速やかに、だから迅速にです、しかも多量に、しかも正確な、この三つの複雑な矛盾する要素を持っておる情報が、意思決定者、つまり決断をする人にきちっと提言をされ、届けられ、決断をする人がその権限に基づいて決断を行い、この決断に基づいて実施を求め、実施をやったことに対して常に是正をやる、このサイクルで危機管理が動いているわけです。  その際、縦割りの弊害とは、情報とか命令を執行するときに、一人が全ての権限を持って一貫した統制された指揮統制をやると一番良いんですが、そうではなくて、今回のように、計画停電は何か東電がやって、要請ベースでやっておられるようだとか、あるいは、情報はどこから来るか分からないが、どうもどこかにあるようだ、それから、物流はどうもうまくいっていないけど、みんな苦労している、どこかに行ったらあるようだって、そういうのでは実は危機管理はできないんです。危機管理は、一つの機能のところに全ての機能が集中し、そこに聞けば全て分かり、そこから全ての命令が出せ、そこから全ての実行が行われるという一貫した組織活動があって初めて危機管理がより有効になるわけです。  日本の縦割り社会というのがこの危機管理ができない一番体質的に難しい問題を抱えているということなので、したがって、さっきから議論になっているように、そのような場合に、例えば緊急事態基本法というものを作って、こういう事態があったときには緊急事態が発令になって、ある種の戒厳令が発令になって、総理が各省の大臣の権限を全て一手に引き受けて、総理官邸か本部かが各省の大臣の権限をも自ら指導できる、指示できるという一貫した危機管理体制ができれば、それが一番望ましいということなんだろうと思います。だから、縦割りと危機管理というのは、実は非常に相矛盾する体質を持っているということなのではないかと思います。
  105. 小野次郎

    ○小野次郎君 ありがとうございました。  私も同じような意見でございまして、やっぱり偉大なる常識持った、覚悟を持った政治家こそがこの危機管理のときには絶対必要なんだろうと思います。  時間の関係がございまして次の質問に進ませていただきますが、酒井公述人にお伺いいたします。    〔委員長退席、理事森ゆうこ君着席〕  先ほどの同僚の石川議員の質問とも関連するんですが、私たち日本人はどうしても石油の関係で中東との結び付きを考えておりますので、石油産出国、さっき湾岸諸国の話が出ましたけれども、には、意識的にも資料、雑誌に載っていればよく読もうと思うんですけれども、この間から革命がありましたチュニジアとかになると何か遠い国というイメージがありまして、印象が薄いところもあるんですが、酒井公述人の御説明を伺っても、御報告を聞いても、非石油産出国あるいは石油産出国を横断的に今中東にいろんな動きが出てきているわけでございますが、特に私が伺いたいのは、この非石油産出国の安定化というか民主化に対して日本の外交はどのような形で貢献することが可能なのか、酒井さんの御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  106. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 御質問ありがとうございます。  中東の安定性を考える際に、もちろん石油、産油国の問題というのは大変重要ですが、中東で国際社会に対する不信感があるとすれば、それは国際社会が産油国あるいは石油の安定供給ということだけに集中して、それ以外の政治的なアンバランス、いわゆる不公平というようなものに対して無視を続けてきたということが根底にあろうかと思います。  そして、その根底にあるのがやはりイスラエルとの関係かと思います。エジプトにいたしましてもチュニジアにいたしましても、中東和平の問題に関しては、イスラエルと外交関係を持つ、あるいは徹底的に敵対するわけではないという関係にありながら、しかしながら、イスラエルに対して劣位、何というんでしょうか、アッパーハンドを握れないという非常にフラストレーションを持つ国なわけです。  そうした国々の政治改革の重要性といいますのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり民意を反映した政権が中東和平交渉に臨むことによって、より中東和平の交渉が実を持つということになります。これまでエジプトやチュニジアで起こっていたことの多くは、政府は中東和平交渉でイスラエルとの交渉を進めるけれども、民衆がそれに反発して、逆に暴発して、暴力的な反イスラエル、反米行動に出るというような形になりますから、今回のエジプトでの政変はそれがうまく調整される、ある程度民意を反映しつつ、かつ対イスラエル交渉も十分進めていくというような政権が成立する可能性の高い契機だと思いますので、そうした点を重視して、日本外交としては中東和平に対してもより尽力をしていくという方向を取るべきかと思います。
  107. 小野次郎

    ○小野次郎君 孫崎さんにも御質問したかったところですが、時間がないものですから、今日は大変失礼させていただきます。どうもありがとうございました。  これで終わります。
  108. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  まず、今回の震災の犠牲者の方、また被災者の方々に哀悼の意とそしてお見舞いを申し上げたいと思います。  まず孫崎公述人にお聞きいたしますが、今後の日中関係の問題です。  両国政府は戦略的互恵関係ということを言ってきたわけでありますが、一方で中国脅威論というのが常に議論があります。このいわゆる中国脅威論についてどのようにお考えかということが一つ。  それと関連しまして、先ほどの公述の中でも、中国との経済一体化が日本にとっていい選択なんだということを述べられました。今政府が進めようとしていますTPPについて言いますと、中国は慎重にしておりますし、むしろアメリカは東アジア中心の経済統合にくさびを打つような思惑もこれにあるわけですね。例えば、外務省の元事務次官の方の論文を読みますと、このTPPというのは強い安保をつくるんだと、東アジアに大きな経済体ができるというのは幻想であって、むしろアメリカとの一体化を選ぶというその安保の問題なんだということも含めて言われているわけですが、こういう議論についてどのようなお考えをお持ちか、お願いいたします。
  109. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 中国の軍事的な脅威が増えるということは事実だと思います。私は、多分、これから二十年、三十年の時限を考えれば、中国の軍事予算日本の十倍、このような状況になっております。  その中で、中国の中にも、軍事的に物事を解決しようという人たちと、それから、緊密な関係を持ち、平和的な関係で世界情勢をコントロールしようとする両派がいると思います。流れは私は多分後者だと思います。したがって、中国の中の基本的に世界の安定と自国の経済を発展させるというグループとできるだけ連携を持っていく、これが日本の生きる道ではないかと思います。  先ほどから私の説明でも申し上げましたように、日本経済は、これからは中国市場と韓国、こういう東アジアであることがもう間違いないんですね。米国のGEの会長ですら、これからの世界は中国の経済力とどう関係を持つかということですから、この枠組みをつくるということが一番重要であると。それに対して、TPPのように、もしもこれに対抗するというような形で経済システムをつくろうとしても、それは日本にとって必ずしも望ましいことではない。どうやって東アジアの国々と経済的な連携を増やせるか、これが枠組みづくりの一番重要なことだと思います。
  110. 井上哲士

    井上哲士君 もう一点、日本と中国、そして中米関係についてお聞きするんですが、非常に今これらの相互依存関係は深まっておりまして、アメリカ国債最大の保有国も日本ではなくてもう中国になっております。こういう経済関係の変化がアメリカの北東アジア政策にどんな影響を与えているのか。例えば、台湾関係法ができた当時とは随分経済関係が違っているわけですが、これはどのようにお考えでしょうか。
  111. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 私は、アメリカの対中国政策は二つの大きなグループの綱引きだと思っております。一つは、金融を中心としてあるいは産業界を中心として中国との連携を図っていかざるを得ないというグループ。もう一つは、俗に言われる産軍共同体、軍需産業とそれから国防総省とこのグループ。これは各々方向性が違うと思います。前者はできるだけ連携を深める、後者はある意味では中国の包囲網をつくっていく。両者のグループともアメリカの世界では非常に力が強い。どちらかがやっつけられるということはないと思います。  したがって、米国の対中政策は、仲よくしようというグループとそれから対決姿勢というものと、これの相互のものが時々変わっていくと、こういうようになっていると思いますが、先ほど申し上げましたように、私は、ここ直近の二か月ぐらいの米国の内政を見ますと、産業界のグループ、財政の方が産軍共同体よりは少し力が強いような気がしますが、これがそのまま続くということではない、常に闘いが続くと思います。
  112. 井上哲士

    井上哲士君 次に、酒井公述人にお聞きいたしますが、やはり中東問題を考える上でアメリカの中東政策を抜きに考えられないと思うんですが、これまでのパレスチナ問題の推移やこのアメリカの中東政策が今回の中東各国の様々な国民の意識や行動にどういう影響を与えたとお考えかということが一つ。  それから、エジプトに余り介入しなかったということで、アラブ諸国のこれまでのアメリカのイメージが払拭をされたというお話があったんですが、これは、そういうふうに政策をアメリカが転換したと考えるのか、それともなかなか手が出せない中でうまく振る舞ったと考えるべきなのか、その辺はいかがお考えでしょうか。
  113. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 御質問ありがとうございます。  アメリカのこれまでの中東政策が今回の革命といいますか、民衆の動きにどういう影響を与えたかという御質問だと思いますけれども、これは先ほど申し上げましたように、中東の各国は民主化運動を進める際に、民主化運動を進めて、その結果、アメリカが介入して逆に抑え付けられるという経験をむしろしてきたわけですね。ですので、その経験が逆に、いかにアメリカの介入をもたらさない形で、アメリカの同意を得るような非イデオロギー的な革命といいましょうか、政権転覆を行うかということをかなり模索した結果ということになろうかと思います。ですから、そういう意味では、最初から極めてアメリカを強く意識したやり方を取っております。  アメリカもそうしたメッセージはよく伝わったと思いますので、政策転換というよりは、そのメッセージを受け取って、自力の政権交代をむしろバックアップするという形を今回は取ったということになるだろうと思います。  よろしいでしょうか。
  114. 井上哲士

    井上哲士君 森本公述人に一点だけ。  今回の原発問題が安全保障上大事だということがあったんですが、アメリカの場合、アメリカ軍も被曝した地域に入らないというふうになったぐらい、非常に独立した第三者委員会、安全委員会の権限が強いわけですが、日本はそういうものがありません。こういう点についてどのようにお考えでしょうか。
  115. 森本敏

    公述人(森本敏君) 今回、自衛隊が、皆様案内のとおり、原発の事故に直接大変な犠牲を払って活動しているということは、もうよくよく御承知のとおりだと思います。    〔理事森ゆうこ君退席、委員長着席〕  従来、自衛隊にはその種の特殊な技術と装備を開発する化学学校みたいな学校があって、生物化学兵器及びその種の放射能等にどうやって対応するかという部隊と研究のシステムがきちっとあるわけで、そこで必要な訓練等をやっているわけですけれども、今回は十分に、今回の活動に従事した隊員が使わなければならない装備がその置かれている環境には必ずしもヒットせず、かなりアメリカから必要な機材とか装備だとか服装を借りたり供与したという状態です。  これは、日本の自衛隊が例えばどこかの国と核戦争をするとかということを本来は余り想定しておらず、しかも深刻な核の攻撃を受けることに対して日本の防衛力が作用するということを、もちろん限定的ですけれども、今まで研究もあり装備もありましたけれども、まだそこはアメリカほど十分に整っていないということは、今回相当深刻に受け止めたのではないかと思います。  したがって、今回、どのような教訓が出てくるかまだ分かりませんけれども、私が昨日の段階で聞いた限りでは、そのような準備を今まで陸海空自衛隊が全て持っているということではなかったので、かなりアメリカ側に依存をして協力を得たということではなかったのかと思います。
  116. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。
  117. 片山虎之助

    片山虎之助君 片山虎之助でございます。  三人の先生方、貴重な御意見ありがとうございました。  時間が大変短うございますので、申し訳ないんですが、質問だけまずやらせていただいて、後は、済みませんが、時間の範囲でお答え賜れば大変有り難いと思います。  去年の秋の尖閣諸島中国漁船衝突事件は大変な衝撃的な事件でございまして、我々あの一連の過程を見ながら、日本の処理は私は悪かった、最悪だったと、こういうふうに思いますよ。法治国家でありながら、筋を通さずに、結局は中国の圧力に屈して、しかも政治の主導、責任で決めずに、結局、那覇地検に丸投げをして、丸投げを受けた那覇地検は、法と証拠に基づかずに政治判断を入れて船長の処分保留のまま釈放。また、そのビデオの流出も、一般公開すればいいんですと我々は思いましたけれども、この一連のあれは私はもう大変残念だったと、こういうふうに思います。その評価を是非、孫崎先生と森本先生にお願いしたいですね。  それから、中国は海洋進出の強い意欲を持っておりますから、これで私は諦めたと思わない。今回の一連の事件もかなり意図的、計画的であったと私は思います。似たような事件が起こって、中国漁船が大挙押し寄せてきて、場合によっては尖閣諸島の一部を占拠する、こういうときに、こういうことになったらどういう対応ができるか、すべきかと、この点について是非まずお二人の先生にお願いいたしたい。  それから二つ目は、今回の大震災ですね。今一生懸命関係者努力しています。私は涙ぐましい努力だと思いますけれども、しかし皆さんが言われるのは、やっぱり司令塔がない、指揮命令系統が定かでない、どじどじでばらばらではないかと、こういうことが言われている。阪神・淡路とは違いますよ。違いますけれども、あのときは小里さんという人を震災特命大臣にして、彼は神戸に乗り込んで、全部一身に責任を持って仕切ったんですね。  私は、今回も大臣を三人増員する、何をどうするというよりも、きちっと責任を持つ、そういう大臣、強力なる大臣を決めて、そこに権限を集めるものは、全部集まりませんけれども、集中をして、きちっとした有能な事務補佐体制を充実して、その上で各省が私は協力するのが一番なんです。官僚組織というのはこういうことが一番強いんですよ、きちっと組織で決まったことをちゃんちゃんと一定の時間の中にやるというのが。  この各省が、どうももう一つ私は、各省に悪いんですけれども、協力体制が整っていないんじゃないかと、政治主導のツケがこういうところに現れているんじゃないかと、こういうふうに考えているわけでありまして、森本先生の言われる非常事態の法律や何かもいいですよ。ただ、先生に申し訳ないんですが、幾らか統制色が強いですよね。私は戦争中を思い出した。まあしかし、非常時ですから場合によっては要るんです、そういう立法も。そういうことを含めて御意見を承りたい。  それから、酒井先生には、まあ今盛んにリビアが出るものですから、カダフィさんというのは、まあこれはいろんな意見がありますけれども、一種の悪いながら愛きょうありますよね。石油の関係もある。リビアはどうすべきなんですか。しかし、すべき論は別にして、どうなるんですか。それを明快に酒井先生からお伺いいたしたいと思います。  以上であります。
  118. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 御存じの方がどれくらいおいでになるか分かりませんけれども、一九七八年四月、百隻以上の中国の漁船が入ってきました。そのときにどうなったんでしょう。まず、海上保安庁の船が行きました。出ていけと言っても行きませんでした。二週間残りました。そして、中には発砲することも覚悟せよと中国側は言っているような感じだったと思います。そして、それが解決できたのは、中国政府が、トウ小平がもしもそのままいたら党員を剥奪するということで、中国政府が入ることによって解決したんですね。  これから尖閣諸島、私は中国はますます高飛車に出てくる可能性があると思います。しかし、それを軍事的に解決しよう、海上保安庁でしよう、自衛隊でしようとしてもそれはできることではないということで、いかに外交的で解決するかということを考えるよりしようがない。そして、それは中国にはかつてトウ小平のような人がいた、周恩来のような人がいた、いないわけではない。ここの関係をどうするかということが一番重要であって、それが先ほど申し上げましたように棚上げであり、日中漁業協定であり、そういうものを十分にすべきだと思います。  それから、私も一言、かつて官庁にいた人間として、いろんなものを集めるのはいいんですけれども、基本は責任を持つ、組織が責任を持つということなんです。今回も責任を持つのは一番は東京電力だったんです。東京電力が責任を持つことをやったのか。それから次いで、原子力政策というのは、ほかの政策とは違って安全保障を確保することが政策なんです。したがって、その責任を通商産業省、現在の経済産業省、ここがちゃんとやったのかと。ここが一番大きい問題だと思います。拡散して束ねればいいというものでもない。それぞれが一番に責任を持つ人間、これがちゃんとした責任を果たすことが一番重要だと思います。
  119. 森本敏

    公述人(森本敏君) まず、尖閣諸島の処理について、片山先生の御見解に全く異論はありません。  それから、じゃ、今後どうしたらいいかということについて、私は少し孫崎公述人と違う感じを持っているのは、中国というのは、南シナ海でもそうですが、ちゃんと手段を決めて、確実に長い時間を掛けて、ステップを踏んで徐々に実効支配のところに手を出してくると。その手を出してくるのは間違いないと思います。  でも、それをやはり思いとどまらせるのは、外交でやれば一番良いのですが、本当にそれが望ましいのですが、そうならないときにどうしたらよいかということを考えるのが安全保障であって、それにはやはり実効支配を自ら日本がまず高めるということです。  できたら、やっぱりあの島には、本当は国有地にしてもらって必要な施設をきちっと造って、韓国が竹島にやっているように自らの主権を自ら示すということをまずやり、それから、周りに、領海に近づく中国というものに対応できる抑止の機能を持っておくということがまず必要で、外交はその上に立ってやるべきことということなのではないかなと私は考えているわけです。  それでもう一つ、災害については孫崎公述人のおっしゃったとおりで、まさに責任を誰が負い、誰が実行するかと、その一点に懸かっていると思いますが、私も役人だったので、役人の側に立って今回のオペレーションを見ると、やっぱり政治家が役人の持っている総力というか、自分たちの、我々の積み重ねてきた組織の力というものを信じて、それをうまく機能させるようにしてほしかったなと思いますし、またそうあればきちっと機能すると。上で責任を取るという態度をきちっと示し、ごろごろ動かれる必要は全然ない、どっしり座って官僚組織に全てを任せて、責任だけは俺が取るんだと、それで僕は機能したんだろうと思いますし、またそうあってほしいというふうに考えているわけです。  以上です。
  120. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 簡単に御説明いたします。  リビアはどうなるかということですけれども、カダフィ自身はまず逃げません。亡命しません。妥協しません。生き延びる方策を最後まで模索する。そして生き延びた暁には、大量の報復を今回反旗を翻した人たちに行うというのがどうなるかということだと思います。どうすべきかという点については、新政権、一応暫定政権が立っております、暫定政権がカダフィを何らかの形で逮捕するなりなんなりの形で裁くというのが一番ベストな形だと思います。
  121. 片山虎之助

    片山虎之助君 ありがとうございました。
  122. 山内徳信

    山内徳信君 私は、質問に入ります前に、この度の未曽有の災難に遭われた方々、そして尊い命を失われた方々含めて、あの地域の全ての人々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。  さて、私は、今日は大変いい勉強をさせていただきましてありがとうございます。聞きながら少しメモをしましたから、読み上げて、最初に質問をお二方にいたします。お答えは時間の範囲内で結構でございますから、よろしくお願いいたします。  さて、私たちは、ややもすると遠いところの動きはよく見えます。したがいまして、今日、酒井先生が立派に中東の動きをまとめていただきまして、大変いい勉強になりました。三十年前後の長期独裁政権は民衆の革命によって倒れていきました。沖縄県民は戦後六十六年、私は、エジプトの大統領が三十年にして倒れたというニュースを聞いたときにさっと私の頭に浮かんだのは、沖縄はその倍の六十六年、米軍基地の圧制の下、そしてそれは今も続いておるということが頭に浮かびました。  そういうふうに、この日本の国内、沖縄県内においても民衆の革命が進んでおることを意識的に気付こうとしない人々がおることを私は残念に思っております。日米安保の負担を押し付けられ、七五%の理不尽な基地、今も続いております。そして、それが県民の生活環境の破壊、精神的な圧力、本当に数え上げますと切りがありません。  日本政府は今日まで沖縄県民からの必死の訴えを続けても一向に聞き入れませんでした。したがいまして、沖縄における民衆革命といいますのは、安保容認、基地容認でありました沖縄県知事さんを始め、市町村長たち、そして県議会も超党派になって新しい基地を、普天間の代替という名の下に、海を埋めて自然を破壊して、ジュゴンのすむ海を破壊して基地を造るということは、これは自然への冒涜であります。そう言った方は鳩山由紀夫総理でございました。したがいまして、私は、沖縄県内において静かに民衆革命が今進んでおると見ております。これは後ろに下がっていくことはないと思っております。  そこで、米下院軍事委員会委員会が三月十五日に公聴会を開いております。グアム移転計画について質問に立ちましたハワイ州選出のハナブサ議員は、移転費の日本負担分について、東日本大震災の発生を受け、日本は移転計画よりも国土再建を進めていくのではないかと、日米両政府の合意どおりに拠出できるかどうかについて疑問を提示しております。日本にあっても、国民感情として、未曽有の災難から国民生活再建、被災地域の復興を優先することが日本政府の姿勢でなければいけないと思います。  この際、莫大な予算を掛けて普天間飛行場の代替施設を辺野古の海を埋めて新しい基地を造るのではなく、対米交渉を通して、普天間飛行場の閉鎖、返還をアメリカに要求すべきであると思います。そのことについて、酒井先生の御見解をちょうだいしたいと思います。  そして次に、孫崎先生にお伺いいたします。  日本を襲った巨大地震、巨大津波は日本人の想像力を超えるもので、大自然の脅威を見せ付けられました。人間は自然の猛威の前になすすべなく、無力でありました。加えて、福島第一原発事故は国民に大きな恐怖と生活に大きな影響を与えております。被災地域、被災者の実態を明らかになるにつけ、想像を絶するものであります。
  123. 前田武志

    委員長前田武志君) 山内委員、時間が迫っていますから、おまとめください。
  124. 山内徳信

    山内徳信君 時間がありませんから結論だけ申し上げますが、その復興のためには何十兆という多大な予算が掛かると思います。  したがいまして、ここも同じことになりますが、新しい基地を造ってアメリカに提供する、そういう時代じゃないと思います。したがいまして、辺野古新基地建設、東村にジャングル戦を想定したヘリパッド、六地区に造ろうとしております。そういうことが許されるのでしょうか。孫崎先生の率直の御意見を伺いたいと思います。
  125. 酒井啓子

    公述人(酒井啓子君) 御質問ありがとうございました。  ただ、私は沖縄の情勢につきまして、あるいは御指摘のありました情報については不勉強ながら承知しておりません。研究者でございますので、不十分な情報の下に回答を、お答えするというのは差し控えさせていただきたいと思います。
  126. 前田武志

    委員長前田武志君) 森本先生にされますか。
  127. 山内徳信

    山内徳信君 いや、先生の気持ちも含めて、ひとつ孫崎先生、お願いします。
  128. 孫崎享

    公述人(孫崎享君) 冒頭申し上げましたように、沖縄県民の認識は変わり、ますます強くなって、県内の移転はないと思います。  したがって、それを前提で日本政府は行動を取るべきであると、こう思っております。
  129. 山内徳信

    山内徳信君 ありがとうございました。  終わります。
  130. 前田武志

    委員長前田武志君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げます。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後三時二十七分散会